説明

ハイドロリック式の作動装置を備えた、特に自動車の内燃機関に用いられる、調節可能なカムシャフト

特に自動車の内燃機関に用いられる調節可能なカムシャフトであって、
−2つのシャフト、すなわちそれぞれ1つの、カムに固く結合されたインナシャフト(2)およびアウタシャフト(1)が、互いに相対的に回転可能であり、
−このような相対運動を発生させるために、両シャフトの一方の端部にハイドロリック式の作動装置(5)が設けられており、
−該作動装置(5)内で互いに相対的に回転可能な作動エレメント(6,7)が、それぞれ前記両シャフト(1,2)の一方のシャフトに固く結合されており、
−アウタシャフト(1)が、前記作動装置(5)に対して隣接して、前記両シャフト(1,2)を定位置の対応支承部(4)内に支承する支承リング(3)に少なくとも固く結合されている形式のものにおいて、該カムシャフトが、ハイドロリック液供給装置に関してスペース的に小さく形成されることが望まれる。
この目的のために、このようなカムシャフトが以下の特徴によりすぐれている:
−前記作動装置(5)の、前記両シャフト(1,2)に固く結合された作動エレメント(6,7)のうちの少なくともいずれか一方の作動エレメントが、それぞれ少なくとも部分的に端面側で、支承リング(3)を含めて前記両シャフト(1,2)に関して少なくともアウタシャフト(1)の支承リング(3)によって形成される結合面(8)に密に接触しており、
−前記結合面(8)が、軸方向に延びる複数の貫通孔によって前記作動装置(5)のハイドロリック室とハイドロリック液供給通路(9,10,11,12)との間で貫通されており、
−該ハイドロリック液供給通路(9,10,11,12)が、両シャフトを通って、かつ/または両シャフト(1,2)の間を通って、かつ/またはアウタシャフト(1)と支承リング(3)との間にそれぞれ形成された環状ギャップ(10IV,11IV)を通って、前記結合面(8)から、支承リング(3)の周面に設けられた装入範囲にまで通じており、
−該装入範囲が、それぞれ1つの供給通路(9,10,11,12)の装入範囲に対応する周方向環状通路(9´´,10´´,11´´,12´´)に開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の、ハイドロリック式の作動装置を備えた、特に自動車の内燃機関に用いられる、調節可能なカムシャフト、つまり
−2つのシャフト、すなわちそれぞれ1つの、カムに固く結合されたインナシャフトおよびアウタシャフトが、互いに相対的に回転可能であり、
−このような相対運動を発生させるために、両シャフトの一方の端部にハイドロリック式の作動装置が設けられており、
−該作動装置内で互いに相対的に回転可能な作動エレメントが、それぞれ前記両シャフトの一方のシャフトに固く結合されており、
−アウタシャフトが、前記作動装置に対して隣接して、前記両シャフトを定位置の対応支承部内に支承する支承リングに少なくとも固く結合されている形式の、特に自動車の内燃機関に用いられる、調節可能なカムシャフトに関する。
【0002】
このようなカムシャフトでは、ハイドロリック式の作動装置を作動させるために必要となるハイドロリック液の供給が、できるだけ少ない構成スペースしか必要としないことが望ましい。
【0003】
この問題は冒頭で述べた形式のカムシャフトにおいて、請求項1の特徴部に記載の特徴を有する構成、つまり
−前記作動装置の、前記両シャフトに固く結合された作動エレメントのうちの少なくともいずれか一方の作動エレメントが、それぞれ少なくとも部分的に端面側で、支承リングを含めて前記両シャフトに関して少なくともアウタシャフトの支承リングによって形成される結合面に密に接触しており、
−前記結合面が、軸方向に延びる複数の貫通孔によって前記作動装置のハイドロリック室とハイドロリック液供給通路との間で貫通されており、
−該ハイドロリック液供給通路が、両シャフトを通って、かつ/または両シャフトの間を通って、かつ/またはアウタシャフトと支承リングとの間にそれぞれ形成された環状ギャップを通って、前記結合面から、支承リングの周面に設けられた装入範囲にまで通じており、
−該装入範囲が、それぞれ1つの供給通路の装入範囲に対応する周方向環状通路に開口している
ことにより解決される。
【0004】
請求項2には、本発明の有利な構成が記載されており、この場合、支承リングが、内側範囲と、該内側範囲に固く被せ嵌められた外側のアウタリングとを有しており、供給通路が、前記結合面内で両環状範囲に、つまり内側範囲にもアウタリングにも接している
請求項3および請求項4は、特に本発明による調節可能なカムシャフトにおいて使用可能となる支承リングの有利な構成に関する。この支承リングは、該支承リングを通って案内されるべきハイドロリック液、つまり特に加圧下にある潤滑オイルを導入するための、軸方向でスペース節約的に形成された複数の周方向環状溝を備えている。
【0005】
本発明は、特に自動車における内燃機関のカムシャフトに関連して、支承リングのために必要となる圧力オイル潤滑ならびにこのために働く手段を、作動装置に潤滑オイルをハイドロリック液として供給するためにも使用するという一般的な思想に基づいている。
【0006】
以下に、本発明の有利な実施例を図面につき詳しく説明する。
【0007】
図1は、カムシャフト作動装置のハイドロリック液供給部の第1実施例を示す図であって、
(a)は、調節可能なカムシャフトの端範囲を、図1(b)のA−A線に沿って断面した縦断面図であり、
(b)は、図1(a)に示したカムシャフトの端部を端面側から見た図であり、
(c)は、カムシャフトの、図1(a)に示した端部の斜視図であり、
図2は、図1の実施例の場合よりも少数の供給通路と、インナシャフトおよびアウタシャフトの端範囲の別形式の構成とを有するハイドロリック液供給部の、図1に示した構成に対する択一的な別の実施例を示す図であって、
(a)は、図2(b)のA−A線に沿ったカムシャフトの端範囲の縦断面図であり、
(b)は、図2(a)に示したカムシャフトの端範囲を端面側から見た図であり、
(c)は、図2(b)のC−C線に沿った、図2(a)に示したカムシャフトの端範囲の縦断面図であり、
図3は、半径方向で分割されて形成された支承リングを介して行われるハイドロリック液供給の変化実施例を示す図であって、
(a)は、カムシャフトの、前記支承リングを有する端範囲の斜視図であり、
(b)は、支承リングを有する図3(a)に示したカムシャフト端範囲における支承リングの内側の環状範囲と、この環状範囲に被せ嵌め可能なアウタリングとを別個に示す分解図であり、
(c)は、図3(g)のC−C線に沿った、図3(a)に示したカムシャフト端区分の縦断面図であり、
(d)は、図3(c)に示したカムシャフト端区分を半径方向外側から見た図であり、
(e)は、図3(c)に示したカムシャフト端区分のE−E線に沿った断面図であり、
(f)は、図3(c)に示したカムシャフト端区分のF−F線に沿った断面図であり、
(g)は、図3(c)に示したカムシャフト端区分を端面側から見た図であり、
図4は、図3に示した構成に相応するカムシャフト端範囲における支承リングに設けられたハイドロリック液供給通路の変化実施例を示す図であって、
(a)は、端区分を半径方向外側から見た図であり、
(b)は、図4(a)に示したカムシャフト端範囲の端部を端面側から見た図であり、
(c)は、図4(b)のC−C線に沿ったカムシャフト端区分の縦断面図であり、
(d)は、図4(c)のD−D線に沿ったカムシャフト端区分の断面図であり、
(e)は、図4(c)のE−E線に沿ったカムシャフト端区分の縦断面図であり、
図5は、複数の周方向環状通路を備えた支承リングを種々の方向から見た概略図および断面図で示しており、
(a)は、斜視図であり、
(b)は、半径方向外側から見た図であり、
(c)は、縦断面図であり、
(d)は、図5(b)のD−D線に沿った断面図であり、
(e)は、図5(b)のE−E線に沿った支承リングの断面図であり、
図6は、図5に示した支承リングの環状通路の択一的な別の実施例を示す図であって、
(a)は、半径方向外側から見た図であり、
(b)は、1つの環状通路をD−D線に沿って断面しかつ、組み付けられていない状態におけるシールリング装置を別個に示す分解図であり、
(c)は、図6(a)のC−C線に沿った縦断面図であり、
(d)は、図6(a)のD−D線に沿った支承リングの断面図であり、
(e)は、図6(d)のE−E線に沿った支承リングの縦断面図であり、
図7は、支承リングの外側の環状通路のさらに別の択一的な実施例を示す図であって、
(a)は、半径方向外側から見た図であり、
(b)は、図7(c)のB−B線に沿った支承リングの断面図であり、
(c)は、支承リングをこの支承リングの軸方向で見た図である。
【0008】
図1に示した構成
調節可能なカムシャフトについては、この図面では軸方向の端範囲しか図示されていない。カムシャフトはこの範囲では、外側のアウタシャフト1と、このアウタシャフト1内に同心的に支承された内側のインナシャフト2とから成っている。アウタシャフト1には、支承リング3が被せ嵌められて、たとえば収縮嵌めによってアウタシャフト1に固く結合されている。カムシャフトはこの支承リング3を介して、定位置の対応支承部4内に回転可能に支承されている。
【0009】
本実施例ならびに後続の全ての実施例は、それぞれ自動車の内燃機関の調節可能なカムシャフトに関する。このような調節可能なカムシャフトでは、アウタシャフト1に、このアウタシャフト1にそれぞれ固く結合された第1のカムが設けられている。インナシャフト2には第2のカムが固く結合されていると同時に、アウタシャフト1に回転可能に支承されている。第2のカムとインナシャフト2との間の固い結合は、アウタシャフト1に設けられた切欠きを通じて行われる。調節可能なカムシャフトのこのような構造自体は一般に知られているので、本実施例ではカムシャフトの構造の詳しい説明ならびに相応する図面による図示は行わない。
【0010】
アウタシャフト1とインナシャフト2とを互いに相対的に相互に回転させるためには、ハイドロリック式の作動装置5が働く。このハイドロリック式の作動装置5は図1の(a)にのみ一点鎖線で示されている。この作動装置5は互いに相対的に回転可能な2つの作動エレメント、つまり第1の作動エレメント6および第2の作動エレメント7を有している。第1の作動エレメント6は支承リング3に、第2の作動エレメント7はインナシャフト2に、それぞれ固く結合されている。この結合は、第1第2の両作動エレメント6,7においてインナシャフト2と、アウタシャフト1と、このアウタシャフト1に固く結合された支承リング3との端面側の端範囲に対する当付けが与えられるように形成されている。これにより、両作動エレメント6,7と、アウタシャフト1、インナシャフト2および支承リング3との間には、それぞれ端面側の結合面が与えられており、これらの結合面は一緒になって「結合面8」として定義される。
【0011】
ハイドロリック式の作動装置5にハイドロリック媒体を供給するためには、図示の実施例では、合計4つの供給通路9,10,11,12が設けられている。これらの供給通路9,10,11,12の、作動装置5の外部に位置する範囲は、それぞれダッシュ符号(´)なしに示されるが、作動装置5の内部に位置する部分範囲には、それぞれダッシュ符号が付与されている。供給通路9,10,11,12の数は、構造および作動装置5により発揮させたい機能に左右される。特に作動装置5の公知の構成において、インナシャフト2とアウタシャフト1との間の相対運動の他に、両シャフト1,2全体が、定位置の支承装置に対して回転角調節可能であることも望まれる場合には、4つの供給通路9,10,11,12が必要となる。
【0012】
個々の供給通路9,10,11,12の配置形式および延在形式については、以下に詳しく説明する。
【0013】
供給通路9は作動装置5の外部では支承リング3においてしか延びておらず、そしてこの支承リング3から端面側の結合面8を介して、作動装置5の第1の作動エレメント6に設けられた対応する供給通路9´と連通している。供給通路9は一方の端部では軸方向でカムシャフトに対して平行に結合面8に開口しており、他方の端部では半径方向で支承リング3の外周面に設けられた環状通路9´´に開口している。この供給通路9の製作は一方では結合面8を起点として延び、他方では環状通路9´´を起点として延びる、互いに交差した盲孔により行われる。環状通路9´´には、対応支承部4に設けられた対応する導入通路9´´´からハイドロリック液が、つまり本実施例では潤滑オイルが、加圧下に供給される。
【0014】
次の供給通路、つまり第1の供給通路9に対して直接に隣接した第2供給通路10は、やはり結合面8と、支承リング3の外周面に設けられた環状通路10´´との間に延びている。この供給通路10への潤滑オイル供給は、前で説明した供給通路9への潤滑オイル供給と同じやり方で行われる。同じことは、以下に説明する第3の供給通路11および第4の供給通路12についても云える。供給通路9とは異なり、第2の供給通路10は支承リング3の内部で互いに交差する盲孔からは構成されていない。供給通路10は支承リング3の半径方向の全厚さを貫いて延びる半径方向の孔と、アウタシャフト1と支承リング3との間の半径方向の環状ギャップ10IVとから成っている。この環状ギャップ10IVには、結合面8を介して、もしくは結合面8を通じて、作動装置5の内部で供給通路10´が対応しており、この場合、この供給通路10´と環状ギャップ10IVとは、流れが導通するように互いに連通している。環状ギャップ10IVにより、支承リング3はこの支承リング3の、軸方向で前記環状ギャップ10IVに並んで位置する範囲を介してアウタシャフト1に装着固定されている。
【0015】
第3の供給通路11は構造および延在パターンに関しては、前で説明した供給通路10に類似している。この供給通路11も、環状通路11IVを介して対応する供給通路11´に開口していて、結合面8を越えて作動装置5内にまで通じている。環状通路11IVを供給通路11の半径方向に延びる範囲に接続するためには、アウタシャフト1を貫いて案内された半径方向の孔11が働く。
【0016】
第4の供給通路12は供給通路11と同様に支承リング3の内部に半径方向の孔を有している。この孔は、アウタシャフト1に設けられた対応する半径方向の貫通孔12を介して、インナシャフト2の内部に設けられた互いに交差した盲孔に通じている。供給通路12のこれらの盲孔の軸方向に延びる範囲は、結合面8を越えて、作動装置5内部に設けられた対応する供給通路12´にまで通じている。
【0017】
この構成の特別な利点は以下の点にある。
【0018】
インナシャフト2には、カムシャフト内部でのその軸方向の端部にまで大きな外径を付与することができる。これにより、良好なねじり剛性が得られる。インナシャフト2の全長にわたって実現可能な、一定不変の直径に基づき、インナシャフト2の製作可能性が簡単にされる。特に多数の供給通路が設けられていてよく、この場合、各供給通路はそれ自体個々に制御され得る。これらの供給通路の配置は特に作動装置5への、軸方向力なしの一連のハイドロリック液供給を可能にする。
【0019】
図2に示した構成
この実施例では、2つしか設けられていない供給通路109,209の構成が、図1に示した実施例における供給通路9の構成に対応している。この場合、図1に示した供給通路9の構成と、図2に示した供給通路109の構成とは一致している。異なっているのは、図2に示した実施例で設けられている第2の供給通路209の構成だけである。
【0020】
第2の供給通路209の構成が異なっているのは、カムシャフトの対応する端範囲の構成が図1の実施例の場合とは異なっていることにのみ帰因する。この場合、インナシャフト2は一方では軸方向でアウタシャフト1の対応する端部を越えて突出しており、他方では直径段付けされて、小直径を有する区分を形成している。
【0021】
できるだけ小さな、特に半径方向の構成スペース容積を有する支承リング3の規定の寸法に基づき、環状通路109´´に軸方向で隣接した環状通路209´´により潤滑オイルの供給を受けなければならない第2の供給通路209は、支承リング3の内部でのその半径方向の延在パターンに関して構成スペース上の制約を受けて、供給通路109の当該範囲に対して周方向にずらされなければならない。さらに、この供給通路209の半径方向の範囲はアウタシャフト1を貫いて貫通案内されなければならない。この場合、供給通路209のこの半径方向の範囲は、インナシャフト2の減径された端区分により形成される環状通路13に開口することができる。この実施例では、カムシャフトの、支承リング3により形成された端部における軸方向で自由な端部に向かって、作動装置5(図示しない)から支承リング3に設けられた雌ねじ山14にねじ込まれた管片によって環状通路209´´の閉鎖が行われる。この管片内にはインナシャフト2が回転可能に支承されている。環状通路13を供給通路209の延在経路に組み込むことにより、この供給通路209の半径方向の範囲および図1に示した実施例による結合面8への供給通路209の出口は簡単に周方向で種々異なって延びることができる。
【0022】
図3に示した構成
図1に示した構成とは異なり、この場合にもやはり2つの供給通路309,409しか示されていない。しかし、基本的にはこの実施例は、2つよりも多い供給通路のためにも、つまり図1に示した構成による4つの供給通路のためにも適している。同じく2つの供給通路しか示されていない図2に示した構成に対する相違点は、図3に示した構成では半径方向で分割された支承リング3が使用される点にしかない。この半径方向で分割された支承リング3は、内側の環状範囲3´と、この内側の環状範囲3´に被せ嵌められた外側のアウタリング3´´とから成っている。アウタリング3´´は、たとえば内側の環状範囲3´にしばり嵌めされ得る。これにより、両支承リング部分3´,3´´の間には固い結合が提供される。支承リング3を内側範囲3´とアウタリング3´´とに分割することにより、カムシャフトの端部から軸方向で供給通路309よりも大きく遠ざけられている方の供給通路409を、支承リング3の内側範囲3´の内部で変向させることができ、この場合、この供給通路409は他方の供給通路309と一緒に支承リング3の半径方向内側に位置する範囲でアウタシャフト1の外部に案内され得るようになる。すなわち、アウタシャフト1を半径方向で切り欠かなくて済むようになる。このことが製作的にどのように簡単に可能となるのかは、図3の(f)から明瞭に判るような供給孔もしくは供給通路409のアングル形の延在パターンにより判る。このようなアングル形の延在パターンは分割された支承リング3´,3´´の場合には極めて簡単に形成され得るが、しかしワンピースの支承リング3の場合には簡単に形成され得ない。
【0023】
支承リング3の分割された構成では、外側のアウタリング3´´と内側のリング範囲3´とが互いに異なる材料から成っていてよく、しかもこの場合、それぞれ当該範囲に課せられた要求に適合されていてよい。すなわち、たとえば外側のアウタリング3´´はトライボロジ的に特に適当な材料から成っていてよく、それに対して内側のリング範囲3´は、駆動力を吸収しかつ伝達し得るようにするために高強度の材料から形成され得る。供給通路は支承リングの分割された構成の場合、少なくとも部分範囲においてフライス削りされて形成され得る。これにより、純然たる穿孔加工を施された供給通路に比べて容易に、方向を変化させる延在パターンを形成することができる。特に、大直径の1つの孔が構成スペース的に実現不可能である場合には、多数の小さな孔をまとめて、より大きな所要流過横断面を形成することができる。支承リング3はカムシャフトへの組付けの前に、つまりアウタシャフト1への組付けの前に、加工完了されていてよく、このことは製造時間、コストならびに品質に対して好都合に作用する。
【0024】
図4に示した構成
図4に示した構成は、図3に示した供給通路409を例にとって、半径方向で分割された支承リング3においてフライス削りされたオイル供給横断面がどのように実現され得るのかを明瞭に示している。
【0025】
図5〜図7に示した支承リング構成
以下にさらに詳細に説明するこれらの支承リング構成は、本発明の枠内で特に有利に使用され得る構成である。しかし、基本的にこのことは本発明による調節可能なカムシャフトとは無関係にあらゆる場所で、軸方向で相並んで位置する複数の環状通路と、支承リングのできるだけ軸方向に短い構成とにおいて、支承リングの外周面に位置する環状通路から支承リングを通じて液体を案内したい場合に使用され得る支承リング構成である。
【0026】
図5に示した支承リング構成
支承リング30の外周面は軸方向で互いに隣接して延びる複数の環状通路31を有している。これらの環状通路31は機能的には、図1に示した支承リング3の構成における環状通路9´´,10´´,11´´,12´´に相当している。環状通路31からは、半径方向の孔32が延びており、これらの孔32は支承リング30の内周面に通じている。個々の環状通路31はそれぞれシールリング33を有しており、これらのシールリング33はそれぞれこれらの環状通路31の軸方向の両側縁に接触している。環状通路31の当付け側縁に対するシールリング33の確実な当付けのためには、環状通路31の底部に環状通路31の全周にわたって分配されて取り付けられたアンカ34が働く。これらのアンカ34は溝底部から半径方向に突出したピンの形でシールリング33のための軸方向の受けとして働く。
【0027】
シールリング33は、支承リング30が、たとえば図1に示した対応支承部4の構成による対応支承部に支承される場合には、環状通路31を相互に密に仕切るために働く。上で説明したシールリング33の配置形式により、複数の環状通路31が軸方向で相並んで位置している場合に支承リング30の軸方向で短い構造を達成することができる。このことは、シールリング33が本発明よればそれぞれ独立した環状ウェブに収納されなくて済むことにより可能となる。上で説明したようにシールリング33を用いて形成された、軸方向で相並んで位置する2つの環状通路31の場合、軸方向でこれらの環状通路31の間に、それ自体はシールリング33でライニングされていない別の環状通路31が位置していてよい。この場合、互いに隣接したシールリング33が、リールリングなしの環状通路31のための軸方向の仕切り壁の機能を引き受ける。
【0028】
図6に示した支承リング構成
この支承リング構成は環状通路の構成に関しては原理的に、図5に示した構成に対する択一的な構成を有している。この択一的構成は、環状通路31の隣接した溝側縁におけるシールリング33の位置安定化のために、これらの環状通路31の底部に取り付けられたアンカ34が設けられていない点にのみある。位置固定はこの場合、シールリング33自体に組み込まれた保持手段によって行われる。これらの保持手段は種々様々な形式を有していてよく、基本的には、当該環状通路31を通る液体流を過剰に妨害することなしに当該環状通路31の側縁にシールリング33を位置固定するために働くだけでよい。
【0029】
図6(b)に示した分解図には、2つのシールリング33が図示されている。これらのシールリング33はいわゆる1つの「タンデムリング」にまとめられている。このようなまとめ合わせは、それぞれ周面にスリットを付与された2つのシールリング33がその一方の突合わせ端部のところでブリッジ部材35を介して互いに結合されていることにより与えられている。このブリッジ部材35からは、突合わせギャップを埋めるために、たとえばH字形の横断面を有するウェブ36が延びており、このウェブ36はシールリング33の、突合わせギャップの第2の端部を形成する端部に設けられた軸方向の間隙内へ突入している。
【0030】
当然ながら、このようなタンデムリングの場合に、タンデムリングの、相互間隔を置いて保持したいシールリングパートナの間に、全周にわたって分配されたスペーサを設けることも可能である。この場合、それぞれ両パートナシールリングのうちの少なくとも一方のパートナシールリングに固く結合されていることが望まれるスペーサは、該スペーサが一方ではシールリング33のテンション特性を不都合に損なわないように、そして他方では対応する環状通路31の内部での液体分配を妨げないように取り付けられていればよい。
【0031】
図7に示した支承リング構成
この構成による支承リングは、不変の直径を有する外周面を有している。この外壁には、支承リング30の半径方向の孔32が開口している。
【0032】
環状通路31はこの実施例ではシールリング33により形成される。これらのシールリング33は軸方向でそれぞれ互いの間に半径方向の孔32を挟み込むようにして、支承リング30の外壁範囲に設けられた収容溝内に形状接続的に、つまり係合に基づいた嵌合により、挿入されている。これらのシールリング33がそれぞれ実質的に支承リング30の全周にわたって、一貫して延びる支承リング材料内に支承されていて、半径方向の孔32の範囲でのみ直接的にまたは間接的にこれらの孔32に隣接しているので、この場合にも当該支承リング30の軸方向で短い構造を達成することができる。
【0033】
支承リングは外方へ向かってテンション力を発揮する、周方向スリットを備えたピストンリング状のリングであってよく、かつ金属またはプラスチックから成っていてよい。
【0034】
もちろん、弾性的に伸縮可能な材料から成る閉じたシールリングを使用することも可能である。このようなシールリングは、ほぼH字形の横断面を有していてよい。この場合、「H」字体の2つの縦棒に相当する直立した脚部はシールリングタンデムのシールリング33として働き、「H」字体の横棒に相当するセンタウェブはスペーサとして働く。このセンタウェブは当然ながら貫流開口を備えていなければならない。
【0035】
上で説明した全ての実施例を含めて本発明にとっては、一般にさらに次のことが云える。
【0036】
明細書および後続の特許請求の範囲に記載されている全ての特徴は、単独の形でも、任意の形に互いに組み合わされた形でも、本発明によって重要となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】カムシャフト作動装置のハイドロリック液供給部の第1実施例を示す図であって、 (a)は、調節可能なカムシャフトの端範囲を、図1(b)のA−A線に沿って断面した縦断面図であり、 (b)は、図1(a)に示したカムシャフトの端部を端面側から見た図であり、 (c)は、カムシャフトの、図1(a)に示した端部の斜視図である。
【図2】図1の実施例の場合よりも少数の供給通路と、インナシャフトおよびアウタシャフトの端範囲の別形式の構成とを有するハイドロリック液供給部の、図1に示した構成に対する択一的な別の実施例を示す図であって、 (a)は、図2(b)のA−A線に沿ったカムシャフトの端範囲の縦断面図であり、 (b)は、図2(a)に示したカムシャフトの端範囲を端面側から見た図であり、 (c)は、図2(b)のC−C線に沿った、図2(a)に示したカムシャフトの端範囲の縦断面図である。
【図3】半径方向で分割されて形成された支承リングを介して行われるハイドロリック液供給の変化実施例を示す図であって、 (a)は、カムシャフトの、前記支承リングを有する端範囲の斜視図であり、 (b)は、支承リングを有する図3(a)に示したカムシャフト端範囲における支承リングの内側の環状範囲と、この環状範囲に被せ嵌め可能なアウタリングとを別個に示す分解図であり、 (c)は、図3(g)のC−C線に沿った、図3(a)に示したカムシャフト端区分の縦断面図であり、 (d)は、図3(c)に示したカムシャフト端区分を半径方向外側から見た図であり、 (e)は、図3(c)に示したカムシャフト端区分のE−E線に沿った断面図であり、 (f)は、図3(c)に示したカムシャフト端区分のF−F線に沿った断面図であり、 (g)は、図3(c)に示したカムシャフト端区分を端面側から見た図である。
【図4】図3に示した構成に相応するカムシャフト端範囲における支承リングに設けられたハイドロリック液供給通路の変化実施例を示す図であって、 (a)は、端区分を半径方向外側から見た図であり、 (b)は、図4(a)に示したカムシャフト端範囲の端部を端面側から見た図であり、 (c)は、図4(b)のC−C線に沿ったカムシャフト端区分の縦断面図であり、 (d)は、図4(c)のD−D線に沿ったカムシャフト端区分の断面図であり、 (e)は、図4(c)のE−E線に沿ったカムシャフト端区分の縦断面図である。
【図5】複数の周方向環状通路を備えた支承リングを種々の方向から見た概略図および断面図で示しており、 (a)は、斜視図であり、 (b)は、半径方向外側から見た図であり、 (c)は、縦断面図であり、 (d)は、図5(b)のD−D線に沿った断面図であり、 (e)は、図5(b)のE−E線に沿った支承リングの断面図である。
【図6】図5に示した支承リングの環状通路の択一的な別の実施例を示す図であって、 (a)は、半径方向外側から見た図であり、 (b)は、1つの環状通路をD−D線に沿って断面しかつ、組み付けられていない状態におけるシールリング装置を別個に示す分解図であり、 (c)は、図6(a)のC−C線に沿った縦断面図であり、 (d)は、図6(a)のD−D線に沿った支承リングの断面図であり、 (e)は、図6(d)のE−E線に沿った支承リングの縦断面図である。
【図7】支承リングの外側の環状通路のさらに別の択一的な実施例を示す図であって、 (a)は、半径方向外側から見た図であり、 (b)は、図7(c)のB−B線に沿った支承リングの断面図であり、 (c)は、支承リングをこの支承リングの軸方向で見た図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車の内燃機関に用いられる調節可能なカムシャフトであって、
−2つのシャフト、すなわちそれぞれ1つの、カムに固く結合されたインナシャフト(2)およびアウタシャフト(1)が、互いに相対的に回転可能であり、
−このような相対運動を発生させるために、両シャフトの一方の端部にハイドロリック式の作動装置(5)が設けられており、
−該作動装置(5)内で互いに相対的に回転可能な作動エレメント(6,7)が、それぞれ前記両シャフト(1,2)の一方のシャフトに固く結合されており、
−アウタシャフト(1)が、前記作動装置(5)に対して隣接して、前記両シャフト(1,2)を定位置の対応支承部(4)内に支承する支承リング(3)に少なくとも固く結合されている形式のものにおいて、
−前記作動装置(5)の、前記両シャフト(1,2)に固く結合された作動エレメント(6,7)のうちの少なくともいずれか一方の作動エレメントが、それぞれ少なくとも部分的に端面側で、支承リング(3)を含めて前記両シャフト(1,2)に関して少なくともアウタシャフト(1)の支承リング(3)によって形成される結合面(8)に密に接触しており、
−前記結合面(8)が、軸方向に延びる複数の貫通孔によって前記作動装置(5)のハイドロリック室とハイドロリック液供給通路(9,10,11,12)との間で貫通されており、
−該ハイドロリック液供給通路(9,10,11,12)が、両シャフトを通って、かつ/または両シャフト(1,2)の間を通って、かつ/またはアウタシャフト(1)と支承リング(3)との間にそれぞれ形成された環状ギャップ(10IV,11IV)を通って、前記結合面(8)から、支承リング(3)の周面に設けられた装入範囲にまで通じており、
−該装入範囲が、それぞれ1つの供給通路(9,10,11,12)の装入範囲に対応する周方向環状通路(9´´,10´´,11´´,12´´)に開口している
ことを特徴とする、特に自動車の内燃機関に用いられる調節可能なカムシャフト。
【請求項2】
支承リング(3)が、内側範囲(3´)と、該内側範囲(3´)に固く被せ嵌められた外側のアウタリング(3´´)とを有しており、供給通路(409)が、前記結合面内で両環状範囲(3´,3´´)に、つまり内側範囲(3´)にもアウタリング(3´´)にも接している、請求項1記載の調節可能なカムシャフト。
【請求項3】
特に請求項1または2記載の調節可能なカムシャフトの支承リングにおいて、少なくとも個々の周方向環状通路(31)が設けられており、該周方向環状通路(31)が、支承リング側で、支承リング(30)の外周面に係合した環状溝と、該環状溝の側縁にそれぞれ接触した、半径方向で支承リングの外周面を越えて突出したシールリング(33)とによって形成されており、該シールリング(33)が、支承リング(30)に関して結合されていないスペーサ(36)または前記環状通路(31)の底部に固定されたアンカ(34)を介して位置固定されていることを特徴とする支承リング。
【請求項4】
特に請求項1または2記載の調節可能なカムシャフトの支承リングにおいて、少なくとも個々の環状通路(31)が設けられており、該環状通路(31)が、支承リング側で、支承リング(30)の、一貫して直径の等しい外周面内に係合した、直径の等しい支承リング外周面を半径方向外側へ向かって越えて突出したシールリング(33)によってのみ形成されていることを特徴とする支承リング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−528871(P2008−528871A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553449(P2007−553449)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000039
【国際公開番号】WO2006/081789
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(506292974)マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26−46, D−70376 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】