説明

ハイブリッド発電装置

【課題】自然エネルギを利用した発電装置の発電効率を向上する。
【解決手段】本発明のハイブリッド発電装置Wは、風車1と太陽電池パネル7とを備えている。風車1は、鉛直方向に延びる風車回転軸Aw回りに回転可能な回転部材21と、中凹状の凹曲面に形成された反射面を有する羽根4と、羽根4を回転部材21の回転と同期して風車回転軸Awを中心に公転可能に支持するとともに、支持部材回転軸As回りに回転可能に支持する支持部材(羽根支持部材30、下側アーム26)とを含んでいる。各羽根4が風を受けて公転することにより回転部材21を回転させる第1のモードと、太陽電池パネル7が、各羽根4に対応して反射面の焦点位置に位置付けられるように支持部材に支持されるとともに、各羽根4を反射面が太陽を仰ぐ姿勢にして、各羽根4の反射面により反射させた太陽光を各太陽電池パネル7に集光させる第2のモードと、に切り替え可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電と風力発電とのハイブリッド発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】

従来より、安全で環境に負荷をかけない自然エネルギ源として、太陽エネルギを利用し、太陽の光エネルギを直接電気エネルギに変換して利用する太陽光発電が注目されている。太陽光発電において、太陽電池を、建物の屋根、屋上、壁面等に、固定して設置するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−155265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一定位置に固定された太陽電池においては、太陽との相対角度が最適な角度になるのは1日の日照時間のうち短い時間に限られ、残りの時間帯の発電効率が低いという問題がある。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自然エネルギを利用した発電装置の発電効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るハイブリッド発電装置は、鉛直方向に延びる風車回転軸を有する風車と、少なくとも2つの太陽電池パネルと、を備えており、上記風車は、上記風車回転軸回りに回転可能な回転部材と、上記風車回転軸に対して周方向に配置された少なくとも2つの羽根と、上記羽根を上記回転部材の回転と同期して上記風車回転軸を中心に公転可能に支持するとともに、該風車回転軸に対して垂直な方向に延びる支持部材回転軸回りに回転可能に支持する支持部材と、を含んでおり、上記各羽根は、中凹状の凹曲面に形成された反射面を有するとともに、該羽根の長手方向が鉛直方向となる起立姿勢と上記反射面が上方を仰ぐ倒伏姿勢とに変更可能に上記支持部材に支持されており、上記各羽根を上記起立姿勢にして、該各羽根が風を受けて公転することにより上記回転部材を回転させる第1のモードと、上記太陽電池パネルが、上記各羽根に対応して上記反射面の焦点位置に位置付けられるように上記支持部材に支持されるとともに、上記各羽根を倒伏姿勢にして上記反射面が太陽を仰ぐ姿勢にして、上記各羽根の反射面により反射させた太陽光を上記各太陽電池パネルに集光させる第2のモードと、に切り替え可能に構成される。
【0006】
上記の構成によると、このハイブリッド発電装置は、第1のモードでは、風車回転軸に対して周方向に配置された各羽根を起立姿勢にし、その各羽根を風力によって公転させて回転部材を回転させる。つまり、その回転部材に発電機を連結し、回転部材の回転によって発電機を駆動することによって、ハイブリッド発電装置は風力発電システムの風車として機能する。
【0007】
また、このハイブリッド発電装置は、第2のモードでは、各羽根を倒伏姿勢にして、各羽根の反射面が太陽を仰ぐ姿勢にして、各羽根の反射面により反射させた太陽光を各太陽電池パネルに集光させる。つまり、各羽根の反射面とその反射面の焦点位置に位置付けられる太陽電池パネルとによって、太陽光を集光し、電気エネルギを得ることによって、ハイブリッド発電装置は太陽光発電システムの発電装置として機能する。
【0008】
このように、ハイブリッド発電装置は、風力発電システムの風車として機能させることと、太陽光発電システムの発電装置として機能させることとが、切り替え可能である。そのため、風の状況や太陽の照射状況に応じてモードの切り替えを行うことにより、自然エネルギを利用した発電システムの発電効率を高めることが可能である。
【0009】
また、太陽光を羽根の反射面により反射させて各太陽電池パネルに集光させることにより、太陽電池の出力を向上させて、太陽電池パネルの面積を低減でき、コストを低減することが可能である。つまり、太陽光を太陽電池パネルに集め、太陽電池パネルに照射される光のエネルギ密度を高めることにより、同じ出力を少ない面積の太陽電池パネルで得ることが可能である。
【0010】
また、例えば、風力発電システムの風車と、太陽光発電システムの発電装置との双方を設置する場合に比べて、設置面積が小さくなり、設置効率の向上が図られる。
【0011】
ここで、各羽根は、第2のモードにおいて、1つの回転凹曲面上に配置されて支持部材に支持されており、第2のモードにおいて、支持部材を太陽の移動に追従して移動させる太陽追尾手段をさらに備えており、太陽追尾手段は、太陽光の照射方向を検知するセンサと、各羽根が配置された回転凹曲面の中心軸と太陽光の照射方向とが平行となるように支持部材を駆動する駆動手段とを有する、としてもよい。
【0012】
こうすることで、太陽追尾手段の駆動手段が支持部材を移動させることにより、各羽根が1つの回転凹曲面上に配置された状態で支持部材と一対となって移動する。太陽光の照射方向が回転凹曲面の中心軸に平行であり、各羽根の反射面の焦点位置に位置付けられた太陽電池パネルへの集光効率が向上する。したがって、太陽光発電におけるエネルギ変換効率が向上する。
【0013】
また、各羽根は、羽根の横断面が円弧翼型であり、反射面は、羽根の翼弦方向に円弧形状とし、各太陽電池パネルは、各羽根の翼弦方向の中央に相対向する位置に位置付けられる、としてもよい。
【0014】
こうすることで、第2のモードにおける集光効率がさらに向上し、太陽光発電システムにおけるエネルギ変換効率がさらに向上する。
【0015】
また、各羽根を、該羽根の長手方向に延びる羽根回転軸回りに自転可能に支持部材に支持し、風車本体は、第1のモードにおいて、各羽根の公転に伴い各羽根の風向に対する角度を所定の角度に制御する角度制御手段をさらに含み、角度制御手段は、風向に対して風車回転軸を挟んだ一側では、羽根の角度を、羽根に発生する抗力が風車本体の回転力となる角度にする一方、風車回転軸を挟んだ他側では、羽根の角度を、羽根に発生する揚力が風車本体の回転力となる角度にする、としてもよい。
【0016】
従来の抗力型風車では、風向に対して風車回転軸を挟んだ一側では、羽根に発生する抗力によって風車本体の回転力が得られるものの、風車回転軸を挟んだ他側では、羽根に発生する抗力が風車本体の回転力にならない上に、風車本体の回転力を減少させることになり、エネルギ変換効率が低下していた。
【0017】
これに対し、上記の構成では、各羽根を羽根回転軸回りに自転可能にするとともに、角度制御手段によって、風向に対して風車回転軸を挟んだ一側では、羽根に発生する抗力が風車本体の回転力となるように羽根の角度を制御し、風車回転軸を挟んだ他側では、羽根に発生する揚力が風車本体の回転力となるように羽根の角度を制御するため、風車本体の回転力を減少させることがなく、風力発電システムにおけるエネルギ変換効率が向上する。
【0018】
また、各羽根の横断面を円弧翼型としたときには、羽根に発生する揚力が大きくなるため、風車本体のトルク向上が図られる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明のハイブリッド発電装置によると、羽根を、太陽光を集光させる反射板としても機能させることによって、1つの発電装置によって風力および太陽光の双方のエネルギを利用することが可能となり、自然エネルギのエネルギ変換効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本実施形態に係るハイブリッド発電装置Wは、風力エネルギと太陽光エネルギとのそれぞれを電気エネルギに変換するものであり、風車1と発電機と太陽追尾手段とを備えている。このハイブリッド発電装置Wは、風力によって回転する形態(風力発電モード)と、太陽光を集光するための反射板として羽根を利用することにより、太陽光を集光する形態(太陽光発電モード)とに切り替えることが可能にされている。風の強い時期(主に冬)は風力発電モードとし、風の弱い時期(主に夏)は太陽光発電モードに切り替えて利用する。
【0022】
(発電装置の構成)
図1は、本発電システムに用いられるハイブリッド発電装置Wの全体を概略的に示した図であり、このハイブリッド発電装置Wは、回転部材21および、この回転部材21の周方向に等間隔に配置された6つの羽根4を含む風車1と、風車1を回転可能に支持する支持体91およびトラスフレーム92とを備える。
【0023】
回転部材21は、矩形形状の枠体に構成されており、板状の2枚の縦フレーム21aが鉛直に配置されて側部を構成し、板状の2枚の横フレーム21bが水平に配置され上端と下端とを構成している。
【0024】
支持体91は、円形状の基板90と、基板90上に配置されたハウジング94、基板90から放射状に延びる3本の脚部93を有している。
【0025】
ハウジング94内には、発電機および後述する太陽追尾手段の第1駆動モータ等が収納されている。
【0026】
トラスフレーム92は、回転部材21の上方に配置されたトラス支持部95から、支持体91の脚部93と同じ基板90の円の周方向位置に放射状に延び、下端が脚部93に接続固定されている。
【0027】
トラス支持部95には、上側軸部材22が回転可能に支持されている。この上側軸部材22の下端が、回転部材21の上側の横フレーム21bに取り付けられている。
【0028】
ハウジング94には、下側軸部材23が回転可能に支持されている。下側軸部材23の下部は、ハウジング94内に延び、発電機および太陽追尾手段の第1駆動モータが連結されている。下側軸部材23の上部は、回転部材21の下側の横フレーム21bに取り付けられている。
【0029】
そうして、回転部材21は、支持体91、トラスフレーム92およびトラス支持部95に支持されて、上側および下側軸部材22,23の回転と一体的に、風車回転軸Aw回りに回転する。
【0030】
回転部材21の上部における縦フレーム21a間には、円盤状のアーム支持部材24が水平に配置されている。アーム支持部材24には、周方向に等間隔を空けてそれぞれ径方向の外方に延びる、6つの上側アーム25が取り付けられている。
【0031】
回転部材21の下部における縦フレーム21a間には、円盤状の羽根支持部材30が、風車回転軸Awに対して垂直な方向に延びる支持部材回転軸As回りに回転可能に支持されている。支持部材回転軸Asは、羽根支持部材30の円の中心を通る軸である。羽根支持部材30には、各上側アーム25と同じ周方向位置でそれぞれ径方向の外方に延びる下側アーム26が取り付けられている。各下側アーム26は、羽根支持部材30の回転と一体的に支持部材回転軸As回りに回転する。
【0032】
アーム支持部材24、上側アーム25、羽根支持部材30および下側アーム26は、回転部材21の回転と一体的に風車回転軸Aw回りに回転する。
【0033】
各羽根4は、各上側アーム25の先端部と、各下側アーム26の先端部とを互いに連結するように縦向きに配置された状態で、各上側アーム25および各下側アーム26によって支持される。これによって、各羽根4は、回転部材21の回転と同期して、風車回転軸Awを中心として回転(公転)する。各羽根4は、風力発電モードにおいては、略鉛直に配置された起立姿勢に配置される。
【0034】
各羽根4は、図2および3に示すように、フレーム40と、このフレーム40の一側面側に張り付けられた外板としての布材44とによって構成されている。フレーム40は、等間隔を空けて平行に並んだ複数の(図例では4個の)桁41と、この4つの桁41の間で長手方向に所定の間隔を空けて配設されて、各桁41を互いに連結する複数の(図例では6個の)リブ42とによって構成されている。
【0035】
この布材44は、風車Wにおいて風を受ける部分となる他に、後述するように、羽根4を反射板として用いる際にその反射面44aとなる部分である。そのため、少なくとも反射面44aとなる側の表面は、その反射率が高いことが望ましく、一例として樹脂コーティングをした布に、アルミ蒸着を施すことによって反射率を高めた布材44を用いてもよい。なお、羽根4において反射面44aとなる側は、図2において図示される側である。
【0036】
上記各桁41は、図3に示すように、その長手方向に放物線状に湾曲している一方、各リブは、図2に示すように、円弧状に形成されており、これにより、各羽根4は、縦断面形状が放物線形状であり、横断面形状が円弧翼型となっている。
【0037】
なお、以下の説明では、図2において右上側となる側を羽根4の上側、左下側となる側を羽根4の下側と呼ぶとともに、左側となる側を羽根4の前縁、右側となる側を羽根4の後縁として、その左右方向を翼弦方向と呼ぶ。また、図3において上向きとなる面側を羽根の圧力面側、下向きとなる面側を羽根の負圧面側と呼ぶ。
【0038】
各羽根4の上端部には、上部ブラケット45が固定されており、この上部ブラケット45には、上方に延びる上部回転軸45aが取り付けられている。この上部回転軸45aは、上部ブラケット45における翼弦方向の中央位置から前縁側にずれた位置に設けられている。また、各羽根4の下端部には、下部ブラケット46が固定されており、この下部ブラケット46には、下方に延びる下部回転軸46aが、上部回転軸45aと同様に翼弦方向の中央位置から前縁側にずれた位置に取り付けられている。
【0039】
さらに、各羽根4の上部および下部ブラケット45,46には、風力によって付勢される羽根4の角度を所定の角度に制御するために、揚力用規制部材47と抗力用規制部材48とが設けられている。具体的には、上部ブラケット45には、その前縁近傍で上方に突出した棒状の上部揚力用規制部材47aが取り付けられている。下部ブラケット46には、その前縁近傍で下方に突出した棒状の下部揚力用規制部材47bが取り付けられている。
【0040】
上部ブラケット45にはさらに、その後縁近傍で上方に突出した棒状の上部抗力用規制部材48aが取り付けられている。下部ブラケット46には、その後縁近傍で下方に突出した棒状の下部抗力用規制部材48bが取り付けられている。
【0041】
上部回転軸45aは、図4に示すように、上側アーム25の先端部に支持される。つまり、上側アーム25の先端部の内部には、下端面に開口する挿入穴25aが開けられている。上部回転軸45aの先端部は、2つのベアリング25bを介して挿入穴25aに挿入されて、上部回転軸45aが、上側アーム25に対して回転可能に支持されている。上部回転軸45aは、挿入穴25aに挿脱可能に支持されている。
【0042】
下部回転軸46aは、下側アーム26の先端部に支持される。つまり、下側アーム26の先端部の内部には、上端面に開口する挿入穴26aが開けられている、下部回転軸46aの先端部は、上部回転軸45aと同様に、2つのベアリング26bを介して挿入穴26aに挿入されて、下部回転軸46aが、下側アーム26に対して回転可能に支持されている。下部回転軸46aは、挿入穴26aに挿脱可能に支持されている。
【0043】
このように、上部回転軸45aが上側アーム25の先端部に対して回転可能に支持される一方、下部回転軸46aが下側アーム26の先端部に対して回転可能に支持されることにより、羽根4は、羽根回転軸Ab回りに回転(自転)可能とされている。なお、羽根回転軸Abは、図2に示すように、翼弦方向の中心に対して前縁側に所定距離だけずれた位置に位置している。
【0044】
ハイブリッド発電装置Wが風力発電モードのときには、各羽根4は、風を受けて風車回転軸Awを中心として公転するに伴い、風向に対する角度が所定の角度となるように、羽根回転軸Ab回りに所定の回転角度範囲で自転する。
【0045】
すなわち、羽根回転軸Abが翼弦方向の中央に対して前縁側にずれていることで、羽根4はその前縁が風上側となるように風力によって付勢され、公転に伴い風車本体1の径方向に対する羽根4の角度は変化する。
【0046】
各上側アーム25および各下側アーム26の先端側にはそれぞれ、上部、下部揚力用規制部材47a,47bが干渉する揚力用規制部材受部50が取り付けられている。各揚力用規制部材受部50と上部、下部揚力用規制部材47a,47bとが干渉することによって、図7に示すように、風向に対する羽根4の角度が所定の角度に規制される。具体的には、揚力用規制部材47は、風車回転軸Awを挟んだ他側(図7における左側)における風下側で、羽根4の揚力の方向L1が風車1の接線方向に略一致するように、風向に対する羽根の角度を規制する。そうすることによって、羽根4の揚力によって風車1の回転力が得られるようにする。ここで、揚力用規制部材47は、風車本体1の径方向に対する羽根4の角度、換言すれば上側または下側アーム25,26の長手方向に対する羽根4の角度を公転に対して一定にする。
【0047】
各上側アーム25および各下側アーム26の基端側には、上部、下部抗力用規制部材48a,48bが当接する抗力用規制部材受部51が取り付けられている。各抗力用規制部材受部51と上部、下部抗力用規制部材48a,48bとが干渉することによって、図7に示すように、風向に対する羽根4の角度は所定の角度に規制される。具体的には、抗力用規制部材48は、風車回転軸Awを挟んだ一側(図7における右側)で、羽根4の抗力の方向が風車1の接線方向に略一致するように、風向に対する羽根4の角度を規制する。そうすることによって、羽根4の抗力によって風車1の回転力が得られるようにする。ここで、抗力用規制部材48は、風車本体1の径方向に対する羽根4の角度、換言すれば、上側または下側アーム25,26の長手方向に対する羽根4の角度を公転に対して一定にする。
【0048】
上述したように、ハイブリッド発電装置Wは、太陽光発電モードにおいては、各羽根4を太陽光を集光するための反射板として利用する。
【0049】
太陽光発電モードにおいて、各羽根4は、その圧力面側、すなわち反射面44aが上方を挑む倒伏姿勢に配置される。
【0050】
具体的には、各羽根4は、上側、下側アーム25,26の各挿入穴25a,26aから上部、下部回転軸45a,46aを抜き、各羽根4の負圧面側の布材44に設けられた固定部49(図6にのみ示す)を各下側アーム26の先端に取り付けることで、下側アーム26に固定される。羽根支持部材30と下側アーム26によって、太陽光発電モードにおいて、羽根4を支持する支持部材が構成される。
【0051】
下側アーム26に固定された羽根4は、1つの回転凹曲面上に配置され、6つの羽根4全体の形状がいわゆるパラボラアンテナ形状に近い状態にある。
【0052】
太陽光発電モードにおいては、図5および図6に示すように、各羽根4に対応して、太陽電池パネル7が取り付けられる。この太陽電池パネル7は、太陽光エネルギを電気エネルギに変換する光電変換素子を有するものである。
【0053】
各太陽電池パネル7は、各羽根4の反射面44aに相対するとともに、放物線形状を有する羽根4の長手方向に対しては、その焦点に相当する位置でかつ、羽根4の翼弦方向に対してはその中央に相当する位置に位置付けられる。つまり、この太陽電池パネル7は、下側アーム26に固定された支持パイプ71に支持されている。この支持パイプ71は、各羽根4の基端側よりも風車本体1の内側の下側アーム26にその下端が取り付けられており、下側アーム26に対して垂直上方に延びるとともに、太陽電池パネル7が取り付けられる上部が羽根4に向かって折れ曲がっている。
【0054】
各太陽電池パネル7は、下側アーム26に対して固定されているため、羽根4の移動に伴って移動するので、太陽電池パネル7と羽根4との相対的な位置は常に一定であり、太陽電池パネル7は、羽根4の焦点に相当する位置に位置する。
【0055】
そうして、後述するように、羽根4の反射面44aで反射した太陽光は、羽根4の向きに拘わらず、常に太陽電池パネル7に集光されるようになる。
【0056】
ここで、羽根4の布材44は、図3に示すように、フレーム40に張り付けられ、各桁41と各リブ42とによって区画されるので、全体として反射面44aは厳密な曲面を構成していない。こうすることで、各桁41および各リブ42によって区画された反射面ごとに、焦点をずらしている。したがって、反射面44aで反射された太陽光が、太陽電池パネル7上の1点に集中して過度に強力な光が照射されず、太陽電池パネル7の焼損を防止することができる。
【0057】
ハイブリッド発電装置Wは、太陽光発電モードにおいて、太陽追尾手段を有している。太陽追尾手段は、太陽の位置を検知する太陽追尾センサ32と、羽根4を支持する羽根支持部材30の向きを調節する駆動手段としての第1駆動モータおよび第2駆動モータ31とからなる。
【0058】
太陽追尾センサ32は、羽根支持部材30の上面中央に取り付けられている。この太陽追尾センサ32が、太陽の位置を検知し、太陽光が羽根支持部材30の上面に対して垂直な方向から入射するように、第1駆動モータと第2駆動モータ31が羽根支持部材30の向きを調節する。つまり、太陽追尾手段は、太陽の方位角と仰角とを、風車回転軸Awおよび支持部材回転軸As回りの2軸で追尾するものである。
【0059】
第1駆動モータは、ハウジング94内に配置され、回転部材21の下側軸部材23に連結されており、この下側軸部材23を回転させることにより、羽根支持部材30を風車回転軸Aw回りに回転させる。
【0060】
第2駆動モータ31(図1にのみ示す)は、羽根支持部材30を支持部材回転軸As回りに回転させる。具体的には、第2駆動モータ31は、回転部材21の下部の横フレーム21b上に設けられている。この第2駆動モータ31の駆動によって、第2駆動モータ31の側方の縦フレーム21aに取り付けられた下側プーリー32が回転する。下側プーリー32の上方の縦フレーム21aには、上側プーリー33が取り付けられている。下側プーリー32と上側プーリー33とには、伝動ベルト34が架けられている。上側プーリー33の回転に伴って、羽根支持部材30が支持部材回転軸As回りに回転するようになっている。
【0061】
各羽根4は、羽根支持部材30の回転と一対にパラボラアンテナ形状を保ったまま向きを変える。各太陽電池パネル7は、各羽根4の移動に拘わらず、羽根4との相対的な位置が常に一定であり、太陽電池パネル7は羽根4の焦点に相当する位置に位置する。羽根支持部材30の上面に対して垂直な方向から入射した太陽光は、各羽根4の反射面44aで反射して、焦点位置にある太陽電池パネル7に集光する。つまり、太陽光を太陽電池パネル7に集め、太陽電池パネル7に照射される光のエネルギ密度を高めることにより、 反射面44aを太陽電池として構成する場合に比べて、太陽電池パネルの面積を低減でき、太陽電池のコストを低減することができる。
【0062】
また、各羽根4が下側アーム26に固定され、1つの回転放物面上に配置された状態で、羽根支持部材30と一対に移動する。そして、太陽追尾手段により、太陽光の照射方向が回転放物面の中心軸に平行、すなわち、各羽根4の長手方向の放物線の軸に対して太陽光が平行に照射されるので、太陽電池パネル7への集光効率が向上する。したがって、太陽光発電モードにおけるエネルギ変換効率が向上する。
【0063】
また、各羽根4が、その横断面が円弧翼型であり、反射面44aが、その翼弦方向に円弧形状であるので、太陽光発電モードにおける集光効率がさらに向上し、エネルギ変換効率がさらに向上する
(風力発電モード)
次に、ハイブリッド発電装置Wの、風力発電モードにおける動作について、図7を参照しながら説明する。図7は、風車回転軸回Awに沿って風車1を上方から見た図であり、図7では、風車回転軸Aw回りの公転に伴う風向に対する羽根4の角度の変化を、1つの羽根4について示している。なお、図7において、風車1は時計回りに回転し、風向は紙面上側から下側に向かう方向とする。また、図7に示す、各上側アーム25先端の白丸は羽根回転軸Abを示している。
【0064】
風力発電モードにおいては、各羽根4の上部、下部回転軸45a,46aが上側アーム25および下側アーム26に支持され、各羽根4は起立姿勢にされる。
【0065】
羽根回転軸Abは、上述したように、羽根4に対し、その翼弦方向の中央位置に対して前縁側にずれて設定されているため、羽根4は、風力によってその前縁が風上側に、その後縁が風下側になるように付勢される。
【0066】
ここで、図7におけるR1で示す公転角度位置においては、風力によって付勢される羽根4は、抗力用規制部材48が抗力用規制部材受部51と干渉することとなり、それによって、羽根4は、その翼弦方向が風車本体1の径方向にほぼ一致する向きとなる(図4において一点鎖線で示す羽根4の状態)。この状態では、羽根4の抗力の方向(図7の矢印D参照)が、風車1の接線方向に略一致する。そうして、羽根4の抗力が風車1の回転力となり、羽根4は、R1の公転角度位置からR4の公転角度位置への移動する。なお、この移動の間、羽根4と風車1の径方向とのなす角度は、抗力用規制部材48と抗力用規制部材受部51との干渉により一定にされる。
【0067】
次に、R4の公転角度位置からR5の公転角度位置に羽根4が移動する間に、その前縁が風上側に、その後縁が風下側になるように、羽根4は風力によって図7における時計回りに自転する。そして、R6の公転角度位置において、揚力用規制部材47と揚力用規制部材受部50とが干渉し(図4において二点鎖線で示す羽根4の状態)、羽根4は風向に対して所定の角度を有する向きとなる。これにより、羽根4の揚力の方向(図7の矢印L1参照)が風車1の接線方向に略一致し、羽根4の揚力が風車1の回転力となる。そうして、羽根4はR6の公転角度位置からR9の公転角度位置へと移動する。なお、この移動の間、羽根4と風車1の径方向とのなす角度は、揚力用規制部材47と揚力用規制部材受部50との干渉により一定にされる。
【0068】
R9の公転角度位置からR12の公転角度位置の間は、風向に対する羽根4の角度が略0°となるため、風車1の回転力はほとんど得られないものの、各位置において、羽根4と干渉するものもないため、風車1の回転に対する抵抗もほとんどない。したがって、R9の公転角度位置までの風車1の回転力によって、羽根4がR12の公転角度位置まで移動する。
【0069】
R12の公転角度位置からR1の公転角度位置に羽根4が移動する間に、風力によって付勢される羽根4の抗力用規制部材48が、抗力用規制部材受部51と干渉する。このようにして羽根4は、公転を繰り返し、その公転によって回転部材21が風車回転軸Aw回りに回転する。
【0070】
したがって、本実施形態に係る風車1は、風車回転軸Awを挟んだ一側(図7では右側)においては、羽根4の抗力により風車1の回転力が得られ、その他側(図7では左側)においては、羽根4の揚力により風車1の回転力が得られる。このことにより、風車1の回転力を減少させることがなくなり、エネルギ変換効率が向上する。
【0071】
つまり、従来の抗力型風車では、風向に対して風車回転軸を挟んだ一側では、羽根の抗力によって風車本体1の回転力が得られるものの、風車回転軸を挟んだ他側では、羽根の抗力が風車本体1の回転力にならない上に、風車本体1の回転力を減少させることになり、エネルギ変換効率が低下していた。
【0072】
これに対し、上記風車1は、従来の抗力型風車において風車1の回転力を減少させていた側、つまり図7における左側においても回転力が得られることになるのである。つまり、揚力用規制部材47と揚力用規制部材受部50とを備えることによって、風車回転軸Awを挟んだ他側の風下側において、羽根4の揚力を風車1の回転力とすることができる。その結果、エネルギ変換効率をさらに向上させることができる。
【0073】
また、各羽根4は、その横断面形状が円弧翼型であることにより、羽根4の揚力が大きくなるため、風車1のトルコ向上が図られる。
【0074】
さらに、上記風車1では、羽根回転軸Abを羽根4の翼弦方向中央に対してずらして設定するとともに、羽根4の公転に伴う、その羽根4の風向に対する角度の制御を抗力用規制部材48と揚力用規制部材47とによって行うため、羽根4の角度制御が自動的に行われることになる。そのため、羽根4の角度制御のためのエネルギが不要である。すなわち、羽根4の公転位置を電気的に検出したり、羽根4を電気的に回転させたりする必要がなくなり、発電システムにおいて、余分なエネルギを消費することが抑制される。
【0075】
(太陽光発電モード)
次に、ハイブリッド発電装置Wの、太陽光発電モードにおける動作について説明する。
【0076】
太陽光発電モードにおいては、各羽根4の上部、下部回転軸45a,46aを、上側アーム25および下側アーム26の各挿入穴25a,26aから抜き出す。そして、各羽根4の固定部49を下側アーム26に固定させて、その反射面44aが上方を仰ぐ倒伏姿勢に配置する。
【0077】
この状態において、各下側アーム26に太陽電池パネル7の支持パイプ71を固定する。これによって、太陽電池パネル7は、羽根4の反射面44aに相対して、その焦点に相当する位置に位置付けられる。
【0078】
そして、各羽根4の向きを、太陽光の照射方向に応じて調整する。
【0079】
具体的には、太陽追尾センサ32が太陽を検知する。この太陽追尾センサ32の検知に基づいて、羽根支持部材30の上面が太陽光の照射方向に対して垂直となるように、羽根支持部材30の向きを調整する。つまり、第1駆動モータが、羽根支持部材30を風車回転軸Aw回りに回転させることにより、太陽の方位角に対する各羽根4の向きの調整を行う。一方、第2駆動モータ31が羽根支持部材30を支持部材回転軸As回りに回転させることにより、太陽の仰角に対する各羽根4の向きの調整を行う。
【0080】
そうして、各羽根4が配置される回転凹曲面の中心軸に対して平行に太陽光が照射されるように、羽根支持部材30の向きを調整し、各太陽電池パネル7に太陽光を集光する。それにより、各太陽電池パネル7において太陽光エネルギが電気エネルギに変換される。
【0081】
このように、太陽光の照射方向に応じて、羽根4および太陽電池パネル7の位置を自動的に調整するので、太陽光の集光効率が向上する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態に係るハイブリッド発電装置Wは、風力発電システムの風車として機能させることと、太陽光発電システムの発電装置として機能させることとが、切り替え可能であるため、自然エネルギを利用した発電システムの稼働率を高めることができる。
【0083】
また、上記ハイブリッド発電装置Wのみを設置すればよいため、例えば風力発電システムの風車と、太陽光発電システムの発電装置との双方を設置する場合に比べて設置面積が小さくなり、設置効率の向上が図られる。
【0084】
なお、上述の実施形態は、本発明の例示であって、本発明はこの例に限定されるものではない。
【0085】
例えば、以下のような構成としてもよい。
【0086】
すなわち、上記実施形態では、風車1の備える羽根を6枚としたが、羽根の枚数はこれに限られず、2枚以上であれば任意に設定することが可能である。
【0087】
また、上記実施形態では、各羽根4は、その横断面形状が円弧翼型であったが、羽根4の横断面形状はこれに限らず、適宜設定することができる。
【0088】
さらに、上記実施形態では、羽根4の角度を制御する手段として、羽根に揚力用規制部材47を抗力用規制部材48とを設けたが、羽根4の角度を制御する手段はこれに限られない。例えば、羽根と係合することによって羽根を公転に伴い自転させるガイドレールと、風車回転軸回りに回動可能に設けられたガイドレールを、風向に応じて風車回転軸を挟んだ他側における風上側の所定位置に位置付ける移動手段とを有するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明は、風力エネルギと太陽光エネルギとを利用したハイブリッド発電装置に有用であり、特にその発電効率を高める上で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド発電装置において、風力発電モードの場合の全体を示す概略斜視図である。
【図2】羽根の斜視図である。
【図3】羽根の縦断面図である。
【図4】羽根と上側アームおよび下側アームとの支持部分を拡大して示す一部破断の側面説明図である。
【図5】太陽光発電モードにおけるハイブリッド発電装置の全体を示す概略斜視図である。
【図6】太陽光発電モードにおけるハイブリッド発電装置の一部を示す概略側面図である。
【図7】羽根の公転に伴う羽根の自転の様子を拡大して示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 風車
4 羽根
7 太陽電池パネル
21 回転部材
26 下側アーム(支持部材)
30 羽根支持部材(支持部材)
31 第2駆動モータ(駆動手段、太陽追尾手段)
32 太陽追尾センサ(センサ、太陽追尾手段)
W ハイブリッド発電装置
Aw 風車回転軸
As 支持部材回転軸
Ab 羽根回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる風車回転軸を有する風車と、
少なくとも2つの太陽電池パネルと、
を備えており、
上記風車は、
上記風車回転軸回りに回転可能な回転部材と、
上記風車回転軸に対して周方向に配置された少なくとも2つの羽根と、
上記羽根を上記回転部材の回転と同期して上記風車回転軸を中心に公転可能に支持するとともに、該風車回転軸に対して垂直な方向に延びる支持部材回転軸回りに回転可能に支持する支持部材と、
を含んでおり、
上記各羽根は、中凹状の凹曲面に形成された反射面を有するとともに、該羽根の長手方向が鉛直方向となる起立姿勢と上記反射面が上方を仰ぐ倒伏姿勢とに変更可能に上記支持部材に支持されており、
上記各羽根を上記起立姿勢にして、該各羽根が風を受けて公転することにより上記回転部材を回転させる第1のモードと、
上記太陽電池パネルが、上記各羽根に対応して上記反射面の焦点位置に位置付けられるように上記支持部材に支持されるとともに、上記各羽根を倒伏姿勢にして上記反射面が太陽を仰ぐ姿勢にして、上記各羽根の反射面により反射させた太陽光を上記各太陽電池パネルに集光させる第2のモードと、に切り替え可能に構成されたハイブリッド発電装置。
【請求項2】
請求項1のハイブリッド発電装置において、
上記各羽根は、上記第2のモードにおいて、1つの回転凹曲面上に配置されて上記支持部材に支持されており、
上記第2のモードにおいて、上記支持部材を太陽の移動に追従して移動させる太陽追尾手段をさらに備えており、
上記太陽追尾手段は、太陽光の照射方向を検知するセンサと、上記各羽根が配置された回転凹曲面の中心軸と太陽光の照射方向とが平行となるように上記支持部材を駆動する駆動手段と、を有するハイブリッド発電装置。
【請求項3】
請求項1または2のハイブリッド発電装置において、
上記各羽根は、該羽根の横断面が円弧翼型であり、上記反射面は、該羽根の翼弦方向に円弧形状であり、
上記各太陽電池パネルは、上記各羽根の翼弦方向の中央に相対向する位置に位置付けられるハイブリッド発電装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つのハイブリッド発電装置において、
上記各羽根は、該羽根の長手方向に延びる羽根回転軸回りに自転可能に上記支持部材に支持されており、
上記風車本体は、上記第1のモードにおいて、上記各羽根の公転に伴い該各羽根の風向に対する角度を所定の角度に制御する角度制御手段をさらに含み、
上記角度制御手段は、風向に対して上記風車回転軸を挟んだ一側では、上記羽根の角度を、上記羽根に発生する抗力が上記風車本体の回転力となる角度にする一方、上記風車回転軸を挟んだ他側では、上記羽根の角度を、該羽根に発生する揚力が上記風車本体の回転力となる角度にするハイブリッド発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−332917(P2007−332917A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167789(P2006−167789)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(505115670)
【出願人】(505117102)
【出願人】(505117054)白浜町 (3)
【出願人】(505117331)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【出願人】(505115706)高田機工株式会社 (7)
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)
【出願人】(591020445)立山科学工業株式会社 (71)
【出願人】(506209075)有限会社メカトロリンク (1)
【出願人】(391066146)村上鉄工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】