説明

ハイブリッド自動車およびその制御方法

【課題】内燃機関の出力軸が回転しているときにギヤ機構のギヤ間のガタをつめるための押し当てトルクを出力するよう電動機を制御する押し当て制御を解除条件の成立に応じてより適正に解除する。
【解決手段】エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26が回転しているときに、ギヤ機構60(プラネタリギヤ30、減速ギヤ35,ギヤ列61,デファレンシャルギヤ62)のギヤ間のガタをつめるための押し当てトルクTpを出力するようモータMG2を制御する押し当て制御が実行される。そして、押し当て制御の実行中に予め定められた第1および第2押し当て制御解除条件のうちの少なくとも一つが成立したときに、成立した押し当て制御解除条件に応じた第1または第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpが値0に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のギヤを有するギヤ機構を介して車軸に動力を出力可能な内燃機関と、ギヤ機構に接続された電動機と、電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備えたハイブリッド自動車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、動力を入出力可能な第1モータと、駆動軸とエンジンの出力軸と第1モータの回転軸とに接続された遊星歯車機構(動力分割機構)と、駆動軸に接続された第2モータとを備え、ブレーキトルクの増加に応じてクリープトルクの要求値であるクリープトルク要求値を減少させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、車両が停止中であるという第1条件およびエンジンが負荷運転状態であるという第2条件を含む切替条件が成立した場合に、当該切替条件が成立していない場合に比べて、クリープトルクを大きな値に設定することで、第2モータから出力されるトルクが略零となることを回避するようにしている。これにより、車両停車中にクリープトルクが小さく設定される(第2モータから出力されるトルクが略零になる)ことに起因して遊星歯車機構(動力分割機構)内の各ギヤ同士の押し当て力が低下しないようにして、エンジンの出力トルクの脈動により各ギヤ同士の歯打ち音が発生することを抑制することができる。このような第2モータから出力されるトルクが略零となることを回避する制御、すなわち、第2モータから遊星歯車機構を含む駆動系のギヤ機構の各ギヤ同士を押し当てるための押し当てトルクを出力する押し当て制御は、一般に、エンジンのトルク脈動やピストン摩擦等に起因して駆動系のギヤ機構の各ギヤ同士に歯打ち音が発生するのを抑制することを目的とするため、基本的にエンジンの出力軸が回転しているときに実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−89543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような押し当て制御は、押し当てトルクの出力が不要または不能になったときや、押し当てトルクの出力により運転者に違和感を与えてしまうおそれがあるときには、できるだけ速やかに停止されることが望ましい。その一方で、押し当て制御を直ちに停止させると、却って運転者に違和感を与えてしまうおそれもある。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車およびその制御方法は、内燃機関の出力軸が回転しているときにギヤ機構のギヤ間のガタをつめるための押し当てトルクを出力するよう電動機を制御する押し当て制御を解除条件の成立に応じてより適正に解除することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
複数のギヤを有するギヤ機構を介して車軸に動力を出力可能な内燃機関と、前記ギヤ機構に接続された電動機と、前記電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備え、前記内燃機関の出力軸が回転しているときに前記ギヤ機構のギヤ間のガタをつめるための押し当てトルクを出力するよう電動機を制御する押し当て制御を実行するハイブリッド自動車において、
前記押し当て制御の実行中に予め定められた複数の押し当て制御解除条件のうちの少なくとも一つが成立したときに、成立した押し当て制御解除条件に応じた緩変化処理を伴って前記押し当てトルクを値0に設定する押し当てトルク設定手段を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のハイブリッド自動車では、内燃機関の出力軸が回転しているときに、ギヤ機構のギヤ間のガタをつめるための押し当てトルクを出力するよう電動機を制御する押し当て制御が実行される。そして、押し当て制御の実行中に予め定められた複数の押し当て制御解除条件のうちの少なくとも一つが成立したときに、成立した押し当て制御解除条件に応じた緩変化処理を伴って押し当てトルクが値0に設定される。このように、押し当て制御解除条件に応じて、押し当てトルクが出力された状態から当該押し当てトルクが値0になるまでの時間を変更することで、押し当て制御解除条件の内容に応じて押し当てトルクの速やかな出力停止と車両ショックの発生の抑制との何れを優先するかをより極め細やかに選択することが可能となる。従って、本発明のハイブリッド自動車では、押し当て制御を解除条件の成立に応じてより適正に解除することが可能となる。
【0009】
また、本発明のハイブリッド自動車は、複数のシフトポジションの中から運転者に所望のシフトポジションの選択を許容するシフトポジション選択手段と、運転者によるブレーキ踏力に応じた摩擦制動力を出力する摩擦制動手段とを更に備えてもよく、前記複数の押し当て制御解除条件は、前記蓄電手段の電圧が所定電圧以下となったこと、停車状態で運転者により前記シフトポジションが変更されたこと、停車状態で前記ブレーキ踏力が所定踏力以下となったこと、および前記車両が微動したことを含んでもよく、前記押し当てトルク設定手段は、前記押し当て制御の実行中に前記蓄電手段の電圧が前記所定電圧以下となったときには、第1の緩変化処理を伴って前記押し当てトルクを値0に設定すると共に、前記押し当て制御の実行中に、停車状態で運転者により前記シフトポジションが変更されたこと、停車状態で前記ブレーキ踏力が所定踏力以下となったこと、および前記車両が微動したことの少なくとも何れか一つが成立したときには、前記第1の緩変化処理に比べて前記押し当てトルクを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って該押し当てトルクを値0に設定するものであってもよい。
【0010】
このように、押し当て制御の実行中に蓄電手段の電圧が所定電圧以下となったときに第1の緩変化処理を伴って押し当てトルクを値0に設定することにより、車両ショックの発生の抑制を優先しながら電動機からの押し当てトルクの出力を停止して蓄電手段を保護することができる。一方、押し当て制御の実行中に停車状態で運転者によりシフトポジションが変更されると、運転者の意図した車両の進行方向とは逆向きのトルクが押し当てトルクとして電動機から車両に付与されて運転者に違和感を与えてしまう可能性もある。このため、押し当て制御の実行中に停車状態で運転者によりシフトポジションが変更されたときには、第1の緩変化処理に比べて押し当てトルクを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクを値0に設定することにより、車両ショックの発生を抑制しつつ、押し当てトルクの出力を速やかに停止させて運転者に違和感を与えないようにすることが可能となる。また、押し当て制御の実行中に停車状態でブレーキペダルのブレーキ踏力が所定踏力以下となったときに、第1の緩変化処理に比べて押し当てトルクを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクを値0に設定することにより、車両ショックの発生を抑制しつつ、押し当てトルクの出力を速やかに停止させて押し当てトルクにより車両が微動したり振動が発生したりすることを抑制して運転者に違和感を与えないようにすることができる。更に、押し当て制御の実行中に車両が微動したときに、第1の緩変化処理に比べて押し当てトルクを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクを値0に設定することにより、車両ショックの発生を抑制しつつ、押し当てトルクの出力を速やかに停止させて車両の微動を抑え、運転者に違和感を与えないようにすることができる。
【0011】
更に、本発明のハイブリッド自動車は、前記蓄電手段の放電に許容される電力である放電許容電力を設定する放電許容電力設定手段を更に備えてもよく、前記押し当てトルク設定手段は、車速が所定車速以上となったこと、退避走行状態となったこと、および、前記放電許容電力が所定値以下となったことを含む即時解除条件の少なくとも何れか一つが成立したときに、直ちに前記押し当てトルクを値0に設定するものであってもよい。このように、押し当て制御の実行中に車速が所定車速以上となったときに、電動機からの押し当てトルクの出力を直ちに停止させることにより、押し当てトルクの出力により走行制御に支障をきたすのを抑制することができる。また、押し当て制御の実行中に退避走行状態となったときに電動機からの押し当てトルクの出力を直ちに停止させることにより、押し当てトルクの出力により退避走行に支障をきたすのを抑制することができる。更に、押し当て制御の実行中に蓄電手段の放電許容電力が所定値以下となったときに、電動機からの押し当てトルクの出力を直ちに停止させることにより、蓄電手段の放電を抑制して当該蓄電手段を保護することができる。
【0012】
また、本発明のハイブリッド自動車は、動力を入出力可能な第2の電動機を更に備えてもよく、前記ギヤ機構は、前記電動機に接続された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記第2の電動機の回転軸とに接続された遊星歯車機構と、前記車軸に接続されたデファレンシャルギヤと、前記駆動軸と前記デファレンシャルギヤとを連結する複数のギヤとを含むものであってもよい。
【0013】
本発明のハイブリッド自動車の制御方法は、
複数のギヤを有するギヤ機構を介して車軸に動力を出力可能な内燃機関と、前記ギヤ機構に接続された電動機と、前記電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備えたハイブリッド自動車の制御方法において、
(a)前記内燃機関の出力軸が回転しているときに前記ギヤ機構のギヤ間のガタをつめるための押し当てトルクを出力するよう電動機を制御する押し当て制御を実行するステップと、
(b)前記押し当て制御の実行中に予め定められた複数の押し当て制御解除条件のうちの少なくとも一つが成立したときに、成立した押し当て制御解除条件に応じた緩変化処理を伴って前記押し当てトルクを値0に設定するステップと、
を含むものである。
【0014】
この方法のように、押し当て制御解除条件に応じて、押し当てトルクが出力された状態から当該押し当てトルクが値0になるまでの時間を変更することで、押し当て制御解除条件の内容に応じて押し当てトルクの速やかな出力停止と車両ショックの発生の抑制との何れを優先するかをより極め細やかに選択することが可能となる。従って、この方法によれば、押し当て制御を解除条件の成立に応じてより適正に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。
【図2】実施例のハイブリッドECU70により実行される押し当て制御解除ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関として構成されたエンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続されたギヤ機構60と、ギヤ機構60に連結された駆動輪63a,63bと、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がそれぞれギヤ機構60に接続されたモータMG1およびモータMG2と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやり取りするバッテリ50と、駆動輪63a,63bや図示しない従動輪のブレーキを制御するためのブレーキアクチュエータ92と、インバータ41,42を介してモータMG1およびMG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52と、ブレーキアクチュエータ92とブレーキ用電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という)94とを有して駆動輪63a,63bや図示しない他の車輪に摩擦制動力を出力可能な電子制御式油圧ブレーキ装置(摩擦制動手段)90と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)70とを備える。
【0018】
ギヤ機構60は、モータMG1の回転軸に接続されたサンギヤ31、エンジン22のクランクシャフト26にダンパ28を介して接続されたキャリア34および駆動軸としてのリングギヤ軸32aに接続されたリングギヤ32を有するプラネタリギヤ30と、モータMG2の回転子に接続されると共にリングギヤ軸32aに接続された減速ギヤ35と、リングギヤ軸32aに接続されたギヤ列61と、ギヤ列61と駆動輪63a,63bとに接続されたデファレンシャルギヤ62とを含む。
【0019】
モータECU40は、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号に基づくモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2といったモータMG1,MG2に関するデータを計算する。バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、バッテリ50の蓄電割合SOCを算出したり、蓄電割合SOCと所定の充放電制約とに基づいてバッテリ50の充放電要求パワーPb*を算出したり、バッテリ50の蓄電割合SOCとバッテリ50の温度とに基づいてバッテリ50の充電に許容される電力である充電許容電力としての入力制限Winとバッテリ50の放電に許容される電力である放電許容電力としての出力制限Woutとを算出したりする。また、バッテリECU52には、バッテリ50の電圧を検出する図示しない電圧センサからのバッテリ50の端子間電圧Vbが入力される。
【0020】
電子制御式油圧ブレーキ装置90を構成するブレーキアクチュエータ92は、運転者によるブレーキペダル85の踏み込み操作に応じて、あるいは、運転者によるブレーキペダル85の踏み込み操作とは無関係にブレーキホイールシリンダ96a〜96dへの油圧を調整して駆動輪63a,63bや他の車輪に摩擦制動力を作用させることが可能なものである。ブレーキECU94は、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルストロークセンサ86からのブレーキペダルストロークBSに基づいて運転者によりブレーキペダル85に加えられたペダル踏力(ブレーキ踏力)Fpdを計算すると共にペダル踏力Fpdに基づいて運転者により要求されている要求制動力を設定する。そして、ブレーキECU94は、要求制動力と予め定められた回生分配比設定用マップとを用いて電子制御式油圧ブレーキ装置90に対する要求摩擦制動力を設定し、要求摩擦制動力に基づいて電子制御式油圧ブレーキ装置90の分担分に応じた摩擦制動力が駆動輪63a,63bや他の車輪に作用するようにブレーキアクチュエータ92を制御する。また、ブレーキECU94は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの信号に基づいてブレーキアクチュエータ92を制御すると共に、必要に応じてブレーキアクチュエータ92の状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0021】
ハイブリッドECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッドECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。また、ハイブリッドECU70は、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ブレーキECU94と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ブレーキECU94と各種制御信号やデータのやりとりを行なう。
【0022】
上述のように構成された実施例のハイブリッド自動車20では、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*が計算され、この要求トルクTr*に応じたトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようにエンジン22とモータMG1とモータMG2とが制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の制御モードとしては、要求トルクTr*に見合うパワーがエンジン22から出力されるようにエンジン22を制御すると共にエンジン22から出力されるパワーのすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求トルクTr*とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合うパワーがエンジン22から出力されるようにエンジン22を制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力されるパワーの全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22を停止して要求トルクTr*に基づくトルクをリングギヤ軸32aに出力するようにモータMG2を駆動制御するモータ運転モード等がある。また、実施例のハイブリッド自動車20では、車速Vが予め定められた間欠禁止車速以上であるときにエンジン22の運転停止が禁止されると共に、車速Vが間欠禁止車速未満であるときに、エンジン22を自動的に停止・始動させる間欠運転が実行される。
【0023】
また、実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の始動処理中や、エンジン22の運転中すなわちエンジン22の負荷運転中や自立運転中(アイドル運転中)、エンジン22の停止処理中といったエンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26が回転しているときに、ギヤ機構60(プラネタリギヤ30、減速ギヤ35,ギヤ列61,デファレンシャルギヤ62)に含まれるギヤ間のガタをつめるためのトルクである押し当てトルクTpをモータMG2から出力する押し当て制御が必要に応じて実行される。押し当てトルクTpの値は、エンジン22の始動制御や、負荷運転制御、自立運転制御(アイドル運転制御)、停止制御のそれぞれについて実験・解析等により予め定められる。
【0024】
次に、実施例のハイブリッド自動車20において、上述した押し当て制御を解除する際の動作について説明する。図2は、押し当て制御の実行中にハイブリッドECU70により実行される押し当て制御解除ルーチンの一例を示すフローチャートである。図2に示す押し当て制御解除ルーチンの実行が開始されると、ハイブリッドECU70は、まず、車速センサ88からの車速V、シフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、バッテリ50の端子間電圧Vbや出力制限Wout、運転者によりブレーキペダル85に加えられたペダル踏力Fpd、モータMG2の回転子の回転位置、退避走行フラグの値といった制御に必要なデータを入力する(ステップS100)。ここで、バッテリ50の端子間電圧Vbや出力制限Woutは、バッテリECU52から通信により入力され、ペダル踏力Fpdは、ブレーキECU94から通信により入力され、モータMG2の回転子の回転位置は、回転位置検出センサ44により検出された値がモータECU40から通信により入力される。退避走行フラグは、ハイブリッド自動車20に何らかの異常が発生したことにより予め定められた退避走行制御が実行されているときにハイブリッドECU70によりオンされるものである。
【0025】
ステップS100にて必要なデータを入力したならば、ハイブリッドECU70は、押し当て制御を直ちに解除すべきか否かを判定する(ステップS110)。実施例のステップS110では、押し当て制御の実行中に車速Vが所定車速V1(例えば、1〜2km/h)以上になったこと、押し当て制御の実行中に退避走行状態となったこと、および押し当て制御の実行中にバッテリ50の出力制限Woutが所定値Wout1以下になったことを含む即時解除条件の少なくとも何れか一つが成立したときに、押し当て制御を直ちに解除すべきと判断される。なお、所定値Wout1は、バッテリ50の劣化を抑制するための出力制限Woutの下限値として実験・解析等により予め定められる。そして、ステップS100にて入力された車速V、出力制限Woutおよび退避走行フラグの値に基づいて即時解除条件の少なくとも何れか一つが成立していると判断された場合には、押し当て制御を直ちに解除すべく、押し当てトルクTpを値0に設定し(ステップS120)、本ルーチンを終了させる。
【0026】
このように、押し当て制御の実行中に車速Vが所定車速V1以上となったときに、モータMG2からの押し当てトルクTpの出力を直ちに停止させることにより、押し当てトルクTpの出力により走行制御に支障をきたすのを抑制することができる。また、押し当て制御の実行中に退避走行状態となったときにモータMG2からの押し当てトルクTpの出力を直ちに停止させることにより、押し当てトルクTpの出力により退避走行に支障をきたすのを抑制することができる。更に、押し当て制御の実行中に出力制限Woutがバッテリ50の劣化を抑制するための下限値である所定値Wout1以下となったときに、モータMG2からの押し当てトルクTpの出力を直ちに停止させることにより、バッテリ50の放電を抑制して当該バッテリ50を保護することができる。
【0027】
ステップS110にて、上述の即時解除条件の何れもが成立しておらず押し当て制御を直ちに解除すべきではないと判断された場合には、予め定められた第1押し当て制御解除条件が成立しているか否かを判定する(ステップS130)。実施例において、第1押し当て制御解除条件は、押し当て制御の実行中にバッテリ50の端子間電圧Vbが予め定められた保護開始電圧Vref以下となったことを含む。そして、ステップS100にて入力した端子間電圧Vbが保護開始電圧Vref以下となったと判断された場合には、第1の緩変化処理(第1のレート処理)を伴って押し当てトルクTpを値0に設定し(ステップS140)、本ルーチンを終了させる。第1の緩変化処理は、押し当てトルクTpが出力された状態から比較的小さい第1レート(第1の単位時間あたりの変化量)で押し当てトルクTpを値0まで徐々に低下させる処理である。これにより、押し当てトルクTpの出力が急激に停止されること、すなわち、駆動軸に出力されるトルクの変化に起因した車両ショックの発生の抑制を優先しながらモータMG2からの押し当てトルクTpの出力を停止して(押し当て制御を解除して)、バッテリ50を保護することができる。
【0028】
また、ステップS130にて、上述の第1押し当て制御解除条件が成立していないと判断された場合には、予め定められた第2押し当て制御解除条件が成立しているか否かを判定する(ステップS150)。実施例において、第2押し当て制御解除条件は、押し当て制御の実行中に停車状態で運転者によりシフトレバー81が操作されてシフトポジションSPが変更されたこと、停車状態で運転者によりブレーキペダル85に加えられたペダル踏力Fpdが所定踏力Fpdref以下となったこと、および、停車状態からハイブリッド自動車20が微動したことを含む。ここで、所定踏力Fpdrefは、車両停車中にモータMG2から押し当てトルクTpを出力しても車両が動き出すことのないような摩擦制動力を駆動輪63a,63bや他の車輪に付与可能なブレーキペダル85のペダル踏力として実験・解析等により予め定められる値である。そして、ステップS100にて入力したシフトポジションSP、ペダル踏力Fpd、およびモータMG2の回転子の回転位置に基づいて第2押し当て制御解除条件のすべてが成立していないと判断された場合には、再度ステップS100以降の処理を実行する。なお、ステップS150では、ハイブリッド自動車20が停車状態から例えば数cm程度移動しているときに、当該ハイブリッド自動車20が停車状態から微動したと判断される。
【0029】
これに対して、ステップS100にて入力したシフトポジションSP、ペダル踏力Fpd、およびモータMG2の回転子の回転位置に基づいて第2押し当て制御解除条件の少なくとも何れか一つが成立していると判断された場合には、第2の緩変化処理(第2のレート処理)を伴って押し当てトルクTpを値0に設定し(ステップS160)、本ルーチンを終了させる。第2の緩変化処理は、押し当てトルクTpが出力された状態から上記第1レートよりも大きい第2レート(第2の単位時間あたりの変化量)で押し当てトルクTpを値0まで徐々に低下させる処理である。すなわち、第2の緩変化処理は、第1の緩変化処理に比べて、押し当てトルクTpを急峻に減少させて押し当てトルクTpが出力された状態から押し当てトルクTpが値0になるまでの時間を短くするものである。
【0030】
すなわち、押し当て制御の実行中に停車状態で運転者によりシフトポジションSPが変更されると、運転者の意図したハイブリッド自動車20の進行方向とは逆向きのトルクが押し当てトルクTpとしてモータMG2からハイブリッド自動車20に付与されて運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。例えば、シフトポジションSPがパーキングポジションに設定されている状態で押し当てトルクTpが車両進行方向のトルクとしてモータMG2から出力されているときに、シフトポジションSPがパーキングポジションからリバースポジションに変更されると、運転者は車両後方側への移動を意図しているにも拘わらず押し当てトルクTpは車両進行方向のトルクとして出力されるため、運転者に違和感を与える可能性がある。このため、押し当て制御の実行中に停車状態で運転者によりシフトポジションSPが変更されたときに、第1の緩変化処理に比べて押し当てトルクTpを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定(押し当て制御を解除)することで、押し当てトルクTpの出力が急激に停止されること、すなわち、駆動軸に出力されるトルクの変化に起因した車両ショックの発生を抑制しつつ、押し当てトルクTpの出力を速やかに停止させて運転者に違和感を与えないようにすることが可能となる。
【0031】
また、押し当て制御の実行中に停車状態でブレーキペダル85のペダル踏力Fpdが所定踏力Fpdref以下となったときに、第1の緩変化処理に比べて押し当てトルクTpを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定することとで、車両ショックの発生を抑制しつつ、押し当てトルクTpの出力を速やかに停止させて押し当てトルクTpによりハイブリッド自動車が微動したり振動が発生したりすることを抑制して運転者に違和感を与えないようにすることができる。更に、押し当て制御の実行中にハイブリッド自動車20が微動したときに、第1の緩変化処理に比べて押し当てトルクTpを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定することで、押し当てトルクTpの出力が急激に停止されること、すなわち、駆動軸に出力されるトルクの変化に起因した車両ショックの発生を抑制しつつ、押し当てトルクTpの出力を速やかに停止させて車両の微動を抑え、運転者に違和感を与えないようにすることができる。
【0032】
以上説明したように、実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26が回転しているときに、ギヤ機構60(プラネタリギヤ30、減速ギヤ35,ギヤ列61,デファレンシャルギヤ62)のギヤ間のガタをつめるための押し当てトルクTpを出力するようモータMG2を制御する押し当て制御が実行される。そして、押し当て制御の実行中に予め定められた第1および第2押し当て制御解除条件のうちの少なくとも一つが成立したときに、成立した押し当て制御解除条件に応じた緩変化処理、すなわち第1押し当て制御解除条件が成立した場合には第1緩変化処理、第2押し当て制御解除条件が成立した場合には第2緩変化処理を伴って押し当てトルクTpが値0に設定される(ステップS130−S160)。このように、成立した押し当て制御解除条件に応じて押し当てトルクTpが出力された状態から当該押し当てトルクが値0になるまでの時間を変更することで、押し当て制御解除条件の内容に応じて押し当てトルクTpの速やかな出力停止と車両ショックの発生の抑制との何れを優先するかをより極め細やかに選択することが可能となる。従って、実施例のハイブリッド自動車20では、押し当て制御解除条件の成立に応じて押し当て制御をより適正に解除することが可能となる。
【0033】
また、実施例のハイブリッド自動車20は、複数のシフトポジションの中から運転者に所望のシフトポジションSPの選択を許容するシフトレバー81(シフトポジション選択手段)と、運転者によるペダル踏力(ブレーキ踏力)Fpdに応じた摩擦制動力を出力するブレーキアクチュエータ92(摩擦制動手段)とを含み、第1押し当て制御解除条件は、バッテリ50の端子間電圧Vbが保護開始電圧Vref以下となったことを含み、第2押し当て制御解除条件は、停車状態で運転者によりシフトポジションSPが変更されたこと、停車状態でペダル踏力Fpdが所定踏力Fpdref以下となったこと、および車両が微動したことを含む。そして、実施例のハイブリッドECU70は、押し当て制御の実行中に第1押し当て制御解除条件が成立したときには、第1の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定すると共に、押し当て制御の実行中に第2押し当て制御解除条件の少なくとも一つが成立したときには、第1の緩変化処理に比べて押し当てトルクTpを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定する。
【0034】
このように、押し当て制御の実行中に第1押し当て制御解除条件が成立したとき、すなわち押し当て制御の実行中にバッテリ50の端子間電圧Vbが保護開始電圧Vref以下となったときに第1の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定することにより、車両ショックの発生の抑制を優先しながらモータMG2からの押し当てトルクTpの出力を停止してバッテリ50を保護することができる。一方、押し当て制御の実行中に停車状態で運転者によりシフトポジションSPが変更されたときには、第1の緩変化処理に比べて押し当てトルクTpを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定することにより、車両ショックの発生を抑制しつつ、押し当てトルクTpの出力を速やかに停止させて運転者に違和感を与えないようにすることが可能となる。また、押し当て制御の実行中に停車状態でブレーキペダル85のペダル踏力Fpdが所定踏力Fpdref以下となったときに第1の緩変化処理に比べて押し当てトルクTpを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定することにより、車両ショックの発生を抑制しつつ、押し当てトルクTpの出力を速やかに停止させて押し当てトルクTpによりハイブリッド自動車20が微動したり振動が発生したりすることを抑制して運転者に違和感を与えないようにすることができる。更に、押し当て制御の実行中にハイブリッド自動車20が微動したときに、第1の緩変化処理に比べて押し当てトルクTpを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定することにより、車両ショックの発生を抑制しつつ、押し当てトルクTpの出力を速やかに停止させてハイブリッド自動車20の微動を抑え、運転者に違和感を与えないようにすることができる。
【0035】
更に、実施例のハイブリッドECU70は、押し当て制御の実行中に車速Vが所定車速V1以上となったこと、退避走行状態となったこと、および、バッテリ50の出力制限Woutが所定値Wout1以下になったことを含む即時解除条件の少なくとも何れか一つが成立したときに、直ちに押し当てトルクTpを値0に設定する。このように、押し当て制御の実行中に車速Vが所定車速V1以上となったときに、モータMG2からの押し当てトルクTpの出力を直ちに停止させることにより、押し当てトルクの出力により走行制御に支障をきたすのを抑制することができる。また、押し当て制御の実行中に退避走行状態となったときにモータMG2からの押し当てトルクTpの出力を直ちに停止させることにより、押し当てトルクTpの出力により退避走行に支障をきたすのを抑制することができる。更に、押し当て制御の実行中にバッテリ50の出力制限Woutが所定値Wout1以下となったときに、モータMG2からの押し当てトルクの出力を直ちに停止させることにより、バッテリ50の放電を抑制して当該バッテリ50を保護することができる。
【0036】
なお、第1および第2押し当て制御解除条件は、上述のものに限られるものではなく、押し当てトルクTpの出力が不要または不能になった場合や、押し当てトルクTpの出力により運転者に違和感を与えてしまうおそれがある場合の他の条件を含んでもよい。また、上述した複数の押し当て制御解除条件の何れかが成立したときに、第1もしくは第2の緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定するか、または、押し当てトルクTpを直ちに値0に設定するかは、上記実施例に限られるものではない。更に、実施例のハイブリッド自動車20は、動力を入出力可能なモータMG1(第2の電動機)を更に備え、ギヤ機構60は、モータMG2に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aとエンジン22の出力軸とモータMG1の回転軸とに接続されたプラネタリギヤ(遊星歯車機構)30と、車軸に接続されたデファレンシャルギヤ62と、リングギヤ軸32aとデファレンシャルギヤ62とを連結するギヤ列61とを含むが、本発明は、電動機と、当該電動機以外の動力発生源と、電動機と動力発生源と車軸との間に配置されたギヤ機構とを含むものであれば、他の如何なる形態のハイブリッド自動車に適用されてもよい。
【0037】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、複数のギヤを有するギヤ機構60を介して車軸に動力を出力可能なエンジン22が「内燃機関」に相当し、ギヤ機構60に接続されたモータMG2が「電動機」に相当し、モータMG2と電力をやり取り可能なバッテリ50が「蓄電手段」に相当し、押し当て制御の実行中に予め定められた複数の押し当て制御解除条件のうちの少なくとも一つが成立したときに、成立した押し当て制御解除条件に応じた緩変化処理を伴って押し当てトルクTpを値0に設定するハイブリッドECU70が「押し当てトルク設定手段」に相当し、複数のシフトポジションの中から運転者に所望のシフトポジションSPの選択を許容するシフトレバー81が「シフトポジション選択手段」に相当し、運転者によるペダル踏力(ブレーキ踏力)Fpdに応じた摩擦制動力を出力する電子制御式油圧ブレーキ装置90が「摩擦制動手段」に相当し、動力を入出力可能なモータMG1が「第2の電動機」に相当し、モータMG2に接続されたリングギヤ軸32aとエンジン22の出力軸と第2の電動機の回転軸とに接続されたプラネタリギヤ30が「遊星歯車機構」に相当し、車軸に接続されたデファレンシャルギヤ62が「デファレンシャルギヤ」に相当し、リングギヤ軸32aとデファレンシャルギヤ62とを連結するギヤ列61が「複数のギヤ」に相当する。
【0038】
ただし、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0039】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジンECU、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータECU、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、52 バッテリECU、60 ギヤ機構、61 ギヤ列、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、70 ハイブリッドECU、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルストロークセンサ、88 車速センサ、90 電子制御式油圧ブレーキ装置、92 ブレーキアクチュエータ、94 ブレーキECU、96a〜96d ブレーキホイールシリンダ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のギヤを有するギヤ機構を介して車軸に動力を出力可能な内燃機関と、前記ギヤ機構に接続された電動機と、前記電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備え、前記内燃機関の出力軸が回転しているときに前記ギヤ機構のギヤ間のガタをつめるための押し当てトルクを出力するよう電動機を制御する押し当て制御を実行するハイブリッド自動車において、
前記押し当て制御の実行中に予め定められた複数の押し当て制御解除条件のうちの少なくとも一つが成立したときに、成立した押し当て制御解除条件に応じた緩変化処理を伴って前記押し当てトルクを値0に設定する押し当てトルク設定手段を備えることを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド自動車において、
複数のシフトポジションの中から運転者に所望のシフトポジションの選択を許容するシフトポジション選択手段と、
運転者によるブレーキ踏力に応じた摩擦制動力を出力する摩擦制動手段とを更に備え、
前記複数の押し当て制御解除条件は、前記蓄電手段の電圧が所定電圧以下となったこと、停車状態で運転者により前記シフトポジションが変更されたこと、停車状態で前記ブレーキ踏力が所定踏力以下となったこと、および前記車両が微動したことを含み、
前記押し当てトルク設定手段は、前記押し当て制御の実行中に前記蓄電手段の電圧が前記所定電圧以下となったときには、第1の緩変化処理を伴って前記押し当てトルクを値0に設定すると共に、前記押し当て制御の実行中に、停車状態で運転者により前記シフトポジションが変更されたこと、停車状態で前記ブレーキ踏力が所定踏力以下となったこと、および前記車両が微動したことの少なくとも何れか一つが成立したときには、前記第1の緩変化処理に比べて前記押し当てトルクを急峻に減少させる第2の緩変化処理を伴って該押し当てトルクを値0に設定することを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド自動車において、
前記蓄電手段の放電に許容される電力である放電許容電力を設定する放電許容電力設定手段を更に備え、
前記押し当てトルク設定手段は、車速が所定車速以上となったこと、退避走行状態となったこと、および、前記放電許容電力が所定値以下となったことを含む即時解除条件の少なくとも何れか一つが成立したときに、直ちに前記押し当てトルクを値0に設定することを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のハイブリッド自動車において、
動力を入出力可能な第2の電動機を更に備え、
前記ギヤ機構は、前記電動機に接続された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記第2の電動機の回転軸とに接続された遊星歯車機構と、前記車軸に接続されたデファレンシャルギヤと、前記駆動軸と前記デファレンシャルギヤとを連結する複数のギヤとを含むことを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項5】
複数のギヤを有するギヤ機構を介して車軸に動力を出力可能な内燃機関と、前記ギヤ機構に接続された電動機と、前記電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備えたハイブリッド自動車の制御方法において、
(a)前記内燃機関の出力軸が回転しているときに前記ギヤ機構のギヤ間のガタをつめるための押し当てトルクを出力するよう電動機を制御する押し当て制御を実行するステップと、
(b)前記押し当て制御の実行中に予め定められた複数の押し当て制御解除条件のうちの少なくとも一つが成立したときに、成立した押し当て制御解除条件に応じた緩変化処理を伴って前記押し当てトルクを値0に設定するステップと、
を含むハイブリッド自動車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−148645(P2012−148645A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7883(P2011−7883)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】