説明

ハイブリッド車両の制御装置および制御方法

【課題】走行モードを適切に選択することができ、それにより、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置および制御方法を提供する。
【解決手段】充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動機に供給してハイブリッド車両を走行させたときの駆動効率の予測値である所定の仮想電力使用効率に応じて、充電走行モードにおける総合燃料消費である第2総合燃料消費が設定されるとともに、ENG走行モードにおける総合燃料消費である第1総合燃料消費と第2総合燃料消費との比較結果に基づいて、ハイブリッド車両の走行モードが選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源としての内燃機関および発電可能な電動機を有するハイブリッド車両の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車両の制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このハイブリッド車両は、第1変速機構および第2変速機構から成るデュアルクラッチトランスミッションを備えており、その走行モードには、動力源として、内燃機関のみを用いるENG走行モードと、電動機のみを用いるEV走行モードと、内燃機関の動力の一部を用いた電動機による回生を行うことによってバッテリを充電する充電走行モードが含まれる。また、この従来の制御装置では、走行モードが、車速に応じて選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−173196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電走行モード中、内燃機関の動力の一部を用いた電動機による回生によってバッテリに充電された電力は、その後、ハイブリッド車両の走行に用いられる。このため、充電走行モードの選択を行う上で、バッテリに充電された電力をその後、電動機に供給してハイブリッド車両を走行させたときのハイブリッド車両の駆動効率を考慮することは、ハイブリッド車両の良好な燃費を得ることにつながる。これに対して、上述したように、従来の制御装置では、車速に応じて走行モードを選択しているにすぎないので、ハイブリッド車両の良好な燃費を得ることができないおそれがある。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、走行モードを適切に選択することができ、それにより、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、動力源としての内燃機関3および発電可能な電動機4と、電動機4との間で電力の授受が可能な蓄電器(実施形態における(以下、本項において同じ)バッテリ52)と、入力された動力を駆動輪DW、DWに伝達可能な変速機構とを有するハイブリッド車両の制御装置において、内燃機関3のみを動力源とするENG走行モードにおけるハイブリッド車両の総合燃料消費である第1総合燃料消費を記憶する第1記憶手段と、内燃機関3を最適燃費線近傍で運転するとともに駆動輪DW、DWに要求される要求駆動力に対する内燃機関3のトルクの余剰分を用いた電動機4による回生を行う充電走行モードにおけるハイブリッド車両の総合燃料消費である第2総合燃料消費を記憶する第2記憶手段と、を備え、第2総合燃料消費は、充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動機4に供給してハイブリッド車両V’を走行させたときのハイブリッド車両の駆動効率の予測値である所定の仮想電力使用効率に応じて設定されており、第1総合燃料消費と第2総合燃料消費との比較結果に基づいて、ENG走行モードおよび充電走行モードのうち、より小さい総合燃料消費が得られる走行モードを選択することを特徴とする。
【0007】
このハイブリッド車両の制御装置によれば、内燃機関の動力や電動機の動力が、変速機構によって駆動輪に伝達される。また、内燃機関のみを動力源とするENG走行モードにおけるハイブリッド車両の総合燃料消費である第1総合燃料消費が、第1記憶手段によって記憶される。さらに、充電走行モードにおけるハイブリッド車両の総合燃料消費である第2総合燃料消費が、第2記憶手段によって記憶される。この充電走行モードは、内燃機関の燃料消費が最小になる最適燃費線近傍で内燃機関を運転するとともに、要求駆動力に対する内燃機関のトルクの余剰分を用いた電動機による回生を行う走行モードである。
【0008】
ここで、ハイブリッド車両の総合燃料消費は、ハイブリッド車両におけるエネルギ源としての燃料が、ハイブリッド車両の走行エネルギに最終的に変換されることを想定したときの、最終的な走行エネルギに対する燃料量の比などを表す。このため、この総合燃料消費を低減することは、ハイブリッド車両の燃費を向上させることにつながる。また、充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動機に供給してハイブリッド車両を走行させたときのハイブリッド車両の駆動効率は、充電走行モードにおける総合燃料消費に影響を及ぼす。
【0009】
これに対して、上述した構成によれば、第2総合燃料消費が、所定の仮想電力使用効率に応じて設定されている。この仮想電力使用効率は、充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動機に供給してハイブリッド車両を走行させたときのハイブリッド車両の駆動効率の予測値である。したがって、充電走行モードにおける総合燃料消費である第2総合燃料消費を、仮想電力使用効率に応じて適切に設定することができる。
【0010】
さらに、ENG走行モードにおける総合燃料消費である第1総合燃料消費と、充電走行モードにおける総合燃料消費である第2総合燃料消費との比較結果に基づいて、ENG走行モードおよび充電走行モードのうち、より小さい総合燃料消費が得られる走行モードが選択される。以上により、より小さい総合燃料消費が得られる走行モードを適切に選択でき、それにより、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。
【0011】
前記目的を達成するために、請求項2に係る発明は、内燃機関3と、発電可能な電動機4と、電動機4との間で電力の授受が可能な蓄電器(実施形態における(以下、本項において同じ)バッテリ52)と、内燃機関3の機関出力軸(クランク軸3a)および電動機4からの動力を第1入力軸13で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第1変速機構11と、機関出力軸からの動力を第2入力軸32で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第2変速機構31と、機関出力軸と第1変速機構11との間を係合可能な第1クラッチC1と、機関出力軸と第2変速機構31との間を係合可能な第2クラッチC2とを有するハイブリッド車両の制御装置1において、内燃機関3のみを動力源とするENG走行モードにおけるハイブリッド車両の総合燃料消費(総合燃料消費率TSFC)である第1総合燃料消費(第1総合燃料消費率TSFC1)を記憶する第1記憶手段と、内燃機関3を最適燃費線近傍で運転するとともに要求駆動力に対する内燃機関3のトルクの余剰分を用いた電動機4による回生を行う充電走行モードにおけるハイブリッド車両の総合燃料消費である第2総合燃料消費(第2総合燃料消費率TSFC2)を記憶する第2記憶手段と、を備え、第2総合燃料消費は、充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動機4に供給してハイブリッド車両Vを走行させたときのハイブリッド車両の駆動効率の予測値である所定の仮想電力使用効率に応じて設定されており、第1総合燃料消費と第2総合燃料消費との比較結果に基づいて、ENG走行モードおよび充電走行モードのうち、より小さい総合燃料消費が得られる走行モードを選択することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、内燃機関の機関出力軸と第1変速機構の第1入力軸が第1クラッチによって互いに係合するとともに、機関出力軸と第2変速機構の第2入力軸との係合が第2クラッチで解放されているときには、内燃機関の動力は、第1変速機構の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪に伝達される。また、機関出力軸と第1入力軸との係合が第1クラッチで解放されるとともに、機関出力軸と第2入力軸が第2クラッチによって互いに係合しているときには、内燃機関の動力は、第2変速機構の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪に伝達される。さらに、電動機の動力は、第1変速機構の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪に伝達される。
【0013】
また、内燃機関のみを動力源とするENG走行モードにおけるハイブリッド車両の総合燃料消費である第1総合燃料消費が、第1記憶手段によって記憶される。さらに、充電走行モードにおけるハイブリッド車両の総合燃料消費である第2総合燃料消費が、第2記憶手段によって記憶される。この充電走行モードは、内燃機関の燃料消費が最小になる最適燃費線近傍で内燃機関を運転するとともに、要求駆動力に対する内燃機関のトルクの余剰分を用いた電動機による回生を行う走行モードである。
【0014】
ここで、ハイブリッド車両の総合燃料消費は、ハイブリッド車両におけるエネルギ源としての燃料が、ハイブリッド車両の走行エネルギに最終的に変換されることを想定したときの、最終的な走行エネルギに対する燃料量の比などを表す。このため、この総合燃料消費を低減することは、ハイブリッド車両の燃費を向上させることにつながる。また、充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動機に供給してハイブリッド車両を走行させたときのハイブリッド車両の駆動効率は、充電走行モードにおける総合燃料消費に影響を及ぼす。
【0015】
これに対して、上述した構成によれば、第2総合燃料消費が、所定の仮想電力使用効率に応じて設定されている。この仮想電力使用効率は、充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動機に供給してハイブリッド車両を駆動する際におけるハイブリッド車両の駆動効率の予測値である。したがって、充電走行モードにおける総合燃料消費である第2総合燃料消費を、仮想電力使用効率に応じて適切に設定することができる。
【0016】
さらに、ENG走行モードにおける総合燃料消費である第1総合燃料消費と、充電走行モードにおける総合燃料消費である第2総合燃料消費との比較結果に基づいて、ENG走行モードおよび充電走行モードのうち、より小さい総合燃料消費が得られる走行モードが選択される。以上により、より小さい総合燃料消費が得られる走行モードを適切に選択でき、それにより、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、第2総合燃料消費は、次式(A)で表され、充電走行モード中、第2総合燃料消費が最小になるように、変速段の選択を行うことを特徴とする。
第2総合燃料消費=(第1燃料消費量+第2燃料消費量)/(走行エネルギ+E V走行エネルギ) ……(A)
ここで、第1燃料消費量:充電走行モード中にハイブリッド車両の走行用に供給された 分の内燃機関の燃料量
第2燃料消費量:充電走行モード中に電動機による回生用に供給された分の内 燃機関の燃料量
走行エネルギ:充電走行モードにおけるハイブリッド車両の走行エネルギ
EV走行エネルギ:充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動 機に供給してハイブリッド車両を走行させたときのハイブリ ッド車両の走行エネルギの予測値
【0018】
この構成によれば、充電走行モード中、変速段の選択が、上記式(A)で表される第2総合燃料消費が最小になるように行われる。上述した走行エネルギ、EV走行エネルギ、第1および第2燃料消費量のそれぞれの定義から明らかなように、第1燃料消費量は、充電走行モードにおいて走行エネルギを得るために供給された分の内燃機関の燃料量である。したがって、第1燃料消費量および走行エネルギは、互いに対応する関係にあり、前者と後者との比は、単位走行エネルギ当たりの内燃機関の燃料消費量に相当する。また、第2燃料消費量は、充電走行モード中に回生用に供給された分の内燃機関の燃料量であり、当該回生により蓄電器に充電された電力がその後、EV走行エネルギを得るために用いられる。したがって、第2燃料消費量およびEV走行エネルギは、互いに対応する関係にあり、前者と後者との比は、単位EV走行エネルギ当たりの内燃機関の燃料消費量に相当し、前述した仮想電力使用効率の逆数に相当する。
【0019】
以上の関係の走行エネルギ、EV走行エネルギ、第1および第2燃料消費量を用いて式(A)により表される第2総合燃料消費は、ハイブリッド車両の最終的な走行エネルギ(蓄電器に充電され、その後出力されるエネルギを含む)に対する、この最終的な走行エネルギを得るために供給された燃料量の比を適切に表す。また、第2総合燃料消費には、仮想電力使用効率が良好に反映される。したがって、この第2総合燃料消費を用いて、ハイブリッド車両の総合燃料消費が最小になるように、変速段の選択を適切に行うことができる。
【0020】
また、第1および第2変速機構の動力伝達効率が互いに異なる場合があり、その場合には、第1および第2変速機構のそれぞれの変速段ごとに適切に規定された第1および第2総合燃料消費を用いて、変速段の選択を適切に行うことができるので、上述した効果を有効に得ることができる。
【0021】
請求項4に係る発明は、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、電動機4および蓄電器の少なくとも一方の温度(バッテリ温度TB)が、電動機4および蓄電器の少なくとも一方に対して設定された所定温度以上のときに、電動機4の出力が制限されることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、電動機および蓄電器の少なくとも一方の温度が、当該少なくとも一方に対して設定された所定温度以上のときに、すなわち、当該少なくとも一方が比較的高温状態にあるときに、電動機の出力が制限される。したがって、当該少なくとも一方の温度上昇を抑えることができる。
【0023】
請求項5に係る発明は、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、蓄電器の充電状態(充電状態SOC)が所定値以下のときに、第1総合燃料消費と第2総合燃料消費との比較結果に基づく走行モードの選択に代えて、内燃機関3の動力の一部を用いた電動機4による回生を強制的に行う強制回生モードが選択されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、蓄電器の充電状態が所定値以下のとき、すなわち、蓄電器の充電状態が比較的小さいときに、第1総合燃料消費と第2総合燃料消費との比較結果に基づく走行モードの選択に代えて、内燃機関の動力の一部を用いた電動機による回生を強制的に行う強制回生モードが選択される。したがって、この回生により充電状態を増大させることができ、蓄電器の過放電を回避することができる。
【0025】
請求項6に係る発明は、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、ハイブリッド車両V、V’には、ハイブリッド車両V、V’が走行している周辺の道路情報を表すデータを記憶するカーナビゲーションシステム66が設けられており、カーナビゲーションシステム66に記憶されたデータに基づき、ハイブリッド車両の走行状況を予測する予測手段(ECU2)をさらに備え、予測されたハイブリッド車両の走行状況にさらに応じて、走行モードの選択を行うことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、ハイブリッド車両の走行状況が、ハイブリッド車両が走行している周辺の道路情報を表すデータに基づき、予測手段によって予測されるとともに、予測されたハイブリッド車両の走行状況に応じて、車両の走行モードが選択される。これにより、車両の走行状況に適した走行モードを選択することができる。例えば、ハイブリッド車両が下り坂を走行すると予測されているときには、下り坂の走行中に電動機による回生により蓄電器の充電量が増大することが予想されるので、ENG走行モードを選択したり、上り坂を走行すると予測されているときには、上り坂の走行中に電動機による内燃機関のアシストが必要になると予想されるので、前もって蓄電器を充電するために、充電走行モードを選択したりすることができる。
【0027】
請求項7に係る発明は、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、充電走行モード中、第2変速機構31により内燃機関3の動力を変速した状態でハイブリッド車両Vが走行しているときに、第1変速機構11の変速段として、第2変速機構31の変速段よりも低速側の変速段が選択されることを特徴とする。
【0028】
一般に、電動機では、その回転数が高いほど、その発電効率が高い。上述した構成によれば、充電走行モード中、第2変速機構により内燃機関の動力を変速した状態でハイブリッド車両が走行しているときに、第1変速機構の変速段として、第2変速機構の変速段よりも低速側の変速段が選択される。これにより、充電走行モードにおける電動機の回転数を上昇させることができるので、その発電効率を高めることができる。
【0029】
請求項8に係る発明は、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、充電走行モード中、第2変速機構31により内燃機関3の動力を変速した状態でハイブリッド車両Vが走行しているときに、第1変速機構11の変速段として、電動機4の発電効率が高くなるような変速段が選択されることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、充電走行モード中、第2変速機構により内燃機関の動力を変速した状態でハイブリッド車両が走行しているときに、第1変速機構の変速段として、電動機の発電効率が高くなるような変速段が選択される。したがって、充電走行モードにおける電動機の発電効率を高めることができる。
【0031】
請求項9に係る発明は、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置1において、充電走行モード中、蓄電器の充電状態(充電状態SOC)が所定値以下のときに、第1および第2変速機構11、31の変速段として、電動機4の発電効率が高くなるような変速段が選択されることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、充電走行モード中、蓄電器の充電状態が所定値以下のときに、第1および第2変速機構の変速段として、電動機の発電効率が高くなるような変速段が選択される。したがって、蓄電器の充電状態が所定値以下で、蓄電器の充電状態を早期に増大させる必要があるときに、電動機の高い発電効率を得ることができ、それにより、蓄電器のより大きな充電量を得ることができる。
【0033】
前記目的を達成するために、請求項10に係る発明は、内燃機関3と、発電可能な電動機4と、電動機4との間で電力の授受が可能な蓄電器(実施形態における(以下、本項において同じ)バッテリ52)と、内燃機関3の機関出力軸(クランク軸3a)および電動機4からの動力を第1入力軸13で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第1変速機構11と、機関出力軸からの動力を第2入力軸32で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第2変速機構31と、機関出力軸と第1変速機構11との間を係合可能な第1クラッチC1と、機関出力軸と第2変速機構31との間を係合可能な第2クラッチC2とを有するハイブリッド車両の制御方法において、内燃機関3のみを動力源とするENG走行モードにおけるハイブリッド車両の総合燃料消費(総合燃料消費率TSFC)である第1総合燃料消費(第1総合燃料消費率TSFC1)を設定し、内燃機関3を最適燃費線近傍で運転するとともに要求駆動力に対する内燃機関3のトルクの余剰分を用いた電動機4による回生を行う充電走行モードにおけるハイブリッド車両の総合燃料消費である第2総合燃料消費(第2総合燃料消費率TSFC2)を、充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動機4に供給してハイブリッド車両Vを走行させたときのハイブリッド車両の駆動効率の予測値である所定の仮想電力使用効率に応じて設定し、第1総合燃料消費と第2総合燃料消費との比較結果に基づいて、ENG走行モードおよび充電走行モードのうち、より小さい総合燃料消費が得られる走行モードを選択することを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、請求項2に係る発明による効果を同様に得ることができる。
【0035】
請求項11に係る発明は、請求項10に記載のハイブリッド車両の制御方法において、第2総合燃料消費は、次式(B)で表され、充電走行モード中、第2総合燃料消費が最小になるように、変速段の選択を行うことを特徴とする。
第2総合燃料消費=(第1燃料消費量+第2燃料消費量)/(走行エネルギ+E V走行エネルギ) ……(B)
ここで、第1燃料消費量:充電走行モード中にハイブリッド車両の走行用に供給された 分の内燃機関の燃料量
第2燃料消費量:充電走行モード中に電動機による回生用に供給された分の内 燃機関の燃料量
走行エネルギ:充電走行モードにおけるハイブリッド車両の走行エネルギ
EV走行エネルギ:充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動 機に供給してハイブリッド車両を走行させたときのハイブリ ッド車両の走行エネルギの予測値
【0036】
この構成によれば、請求項3に係る発明による効果を同様に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態による制御装置を適用したハイブリッド車両を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態による制御装置のECUなどを示すブロック図である。
【図3】選択マップの一例である。
【図4】第1総合燃料消費マップの一例である。
【図5】第1充電時燃料消費マップの一例である。
【図6】第2充電時燃料消費マップの一例である。
【図7】第2総合燃料消費マップの一例である。
【図8】総合燃料消費マップの一例である。
【図9】本発明による制御装置を適用した、図1とは異なるハイブリッド車両を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、この実施形態により限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。図1に示すハイブリッド車両Vは、一対の駆動輪DW(一方のみ図示)および一対の従動輪(図示せず)などから成る四輪車両であり、動力源としての内燃機関(以下「エンジン」という)3および電動機(以下「モータ」という)4を備えている。エンジン3は、複数の気筒を有するガソリンエンジンであり、クランク軸3aを有している。エンジン3の燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期などは、図2に示す制御装置1のECU2によって制御される。
【0039】
モータ4は、いわゆるモータジェネレータである、一般的な1ロータタイプのブラシレスDCモータであり、固定されたステータ4aと、回転自在のロータ4bを有している。このステータ4aは、回転磁界を発生させるためのものであり、鉄心や三相コイルで構成されている。また、ステータ4aは、車両に固定されたケーシングCAに取り付けられるとともに、パワードライブユニット(以下「PDU」という)51を介して、充電および放電可能なバッテリ52に電気的に接続されている。このPDU51は、インバータなどの電気回路によって構成されており、ECU2に電気的に接続されている(図2参照)。上記のロータ4bは、磁石などで構成されており、ステータ4aに対向するように配置されている。
【0040】
以上の構成のモータ4では、ECU2によるPDU51の制御によって、バッテリ52からPDU51を介してステータ4aに電力が供給されると、回転磁界が発生し、それに伴い、この電力が動力に変換され、ロータ4bが回転する。この場合、ステータ4aに供給される電力が制御されることによって、ロータ4bの動力が制御される。
【0041】
また、ステータ4aへの電力供給を停止した状態で、動力の入力によりロータ4bが回転しているときに、ECU2によるPDU51の制御によって、回転磁界が発生し、それに伴い、ロータ4bに入力された動力が電力に変換され、発電が行われるとともに、発電した電力がバッテリ52に充電される。また、ステータ4aを適宜、制御することによって、ロータ4bに伝達される動力が制御される。以下、モータ4で発電するとともに、発電した電力をバッテリ52に充電することを適宜、「回生」という。
【0042】
さらに、ハイブリッド車両Vは、エンジン3およびモータ4の動力を車両の駆動輪DWに伝達するための駆動力伝達装置を備えており、この駆動力伝達装置は、第1変速機構11および第2変速機構31などから成るデュアルクラッチトランスミッションを有している。
【0043】
第1変速機構11は、入力された動力を、1速段、3速段、5速段および7速段のうちの1つにより変速して駆動輪DWに伝達するものである。これらの1速段〜7速段の変速比は、その段数が大きいほど、より高速側に設定されている。具体的には、第1変速機構11は、エンジン3のクランク軸3aと同軸状に配置された第1クラッチC1、遊星歯車装置12、第1入力軸13、3速ギヤ14、5速ギヤ15、および7速ギヤ16を有している。
【0044】
第1クラッチC1は、乾式多板クラッチであり、クランク軸3aに一体に取り付けられたアウターC1aと、第1入力軸13の一端部に一体に取り付けられたインナーC1bなどで構成されている。第1クラッチC1は、ECU2によって制御され、締結状態では、クランク軸3aに第1入力軸13を係合させる一方、解放状態ではこの係合を解除し、両者13、3aの間を遮断する。
【0045】
遊星歯車装置12は、シングルプラネタリ式のものであり、サンギヤ12aと、このサンギヤ12aの外周に回転自在に設けられた、サンギヤ12aよりも歯数の多いリングギヤ12bと、両ギヤ12a、12bに噛み合う複数(例えば3つ)のプラネタリギヤ12c(2つのみ図示)と、プラネタリギヤ12cを回転自在に支持する回転自在のキャリア12dとを有している。
【0046】
サンギヤ12aは、第1入力軸13の他端部に一体に取り付けられている。第1入力軸13の他端部にはさらに、前述したモータ4のロータ4bが一体に取り付けられており、第1入力軸13は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。以上の構成により、第1入力軸13、サンギヤ12aおよびロータ4bは、互いに一体に回転する。
【0047】
また、リングギヤ12bには、ロック機構BRが設けられている。このロック機構BRは、電磁式のものであり、ECU2によりON/OFFされ、ON状態のときに、リングギヤ12bを回転不能に保持するとともに、OFF状態のときに、リングギヤ12bの回転を許容する。なお、ロック機構BRとして、シンクロクラッチを用いてもよい。
【0048】
キャリア12dは、中空の回転軸17に一体に取り付けられている。回転軸17は、第1入力軸13の外側に相対的に回転自在に配置されるとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。
【0049】
3速ギヤ14は、回転軸17に一体に取り付けられており、回転軸17およびキャリア12dと一体に回転自在である。また、5速ギヤ15および7速ギヤ16は、第1入力軸13に回転自在に設けられている。さらに、これらの3速ギヤ14、7速ギヤ16、および5速ギヤ15は、遊星歯車装置12と第1クラッチC1の間に、この順で並んでいる。
【0050】
また、第1入力軸13には、第1シンクロクラッチS1および第2シンクロクラッチS2が設けられている。第1シンクロクラッチS1は、スリーブS1a、シフトフォークおよびアクチュエータ(いずれも図示せず)を有している。第1シンクロクラッチS1は、ECU2による制御により、スリーブS1aを第1入力軸13の軸線方向に移動させることによって、3速ギヤ14または7速ギヤ16を、第1入力軸13に選択的に係合させる。
【0051】
第2シンクロクラッチS2は、第1シンクロクラッチS1と同様に構成されており、ECU2による制御により、スリーブS2aを第1入力軸13の軸線方向に移動させることによって、5速ギヤ15を第1入力軸13に係合させる。
【0052】
また、3速ギヤ14、5速ギヤ15、および7速ギヤ16には、第1受動ギヤ18、第2受動ギヤ19および第3受動ギヤ20がそれぞれ噛み合っており、これらの第1〜第3受動ギヤ18〜20は、出力軸21に一体に取り付けられている。出力軸21は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、第1入力軸13と平行に配置されている。また、出力軸21には、ギヤ21aが一体に取り付けられており、このギヤ21aは、差動装置を有するファイナルギヤFGのギヤに噛み合っている。出力軸21は、これらのギヤ21aやファイナルギヤFGを介して、駆動輪DWに連結されている。
【0053】
以上の構成の第1変速機構11では、遊星歯車装置12、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18によって1速段および3速段のギヤ段が構成され、5速ギヤ15および第2受動ギヤ19によって5速段のギヤ段が、7速ギヤ16および第3受動ギヤ20によって7速段のギヤ段が、それぞれ構成されている。また、第1入力軸13に入力された動力は、これらの1速段、3速段、5速段および7速段のうちの1つによって変速され、出力軸21、ギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して駆動輪DWに伝達される。
【0054】
前述した第2変速機構31は、入力された動力を、2速段、4速段および6速段のうちの1つにより変速して駆動輪DWに伝達するものである。これらの2速段〜6速段の変速比は、その段数が大きいほど、より高速側に設定されている。具体的には、第2変速機構31は、第2クラッチC2、第2入力軸32、第2入力中間軸33、2速ギヤ34、4速ギヤ35、および6速ギヤ36を有しており、第2クラッチC2および第2入力軸32は、クランク軸3aと同軸状に配置されている。
【0055】
第2クラッチC2は、第1クラッチC1と同様、乾式多板クラッチであり、クランク軸3aに一体に取り付けられたアウターC2aと、第2入力軸32の一端部に一体に取り付けられたインナーC2bで構成されている。第2クラッチC2は、ECU2によって制御され、締結状態では、クランク軸3aに第2入力軸32を係合させる一方、解放状態ではこの係合を解除し、両者32と3aとの間を遮断する。
【0056】
第2入力軸32は、中空状に形成され、第1入力軸13の外側に相対的に回転自在に配置されるとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。また、第2入力軸32の他端部には、ギヤ32aが一体に取り付けられている。
【0057】
第2入力中間軸33は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、第2入力軸32および前述した出力軸21と平行に配置されている。第2入力中間軸33には、ギヤ33aが一体に取り付けられており、ギヤ33aには、アイドラギヤ37が噛み合っている。アイドラギヤ37は、第2入力軸32のギヤ32aに噛み合っている。なお、図1では、図示の便宜上、アイドラギヤ37は、ギヤ32aから離れた位置に描かれている。第2入力中間軸33は、これらのギヤ33a、アイドラギヤ37およびギヤ32aを介して、第2入力軸32に連結されている。
【0058】
2速ギヤ34、6速ギヤ36、および4速ギヤ35は、第2入力中間軸33に回転自在に設けられ、この順で並んでおり、前述した第1受動ギヤ18、第3受動ギヤ20および第2受動ギヤ19にそれぞれ噛み合っている。さらに、第2入力中間軸33には、第3シンクロクラッチS3および第4シンクロクラッチS4が設けられている。両シンクロクラッチS3およびS4は、第1シンクロクラッチS1と同様に構成されている。
【0059】
第3シンクロクラッチS3は、ECU2による制御により、そのスリーブS3aを第2入力中間軸33の軸線方向に移動させることによって、2速ギヤ34または6速ギヤ36を、第2入力中間軸33に選択的に係合させる。第4シンクロクラッチS4は、ECU2による制御により、そのスリーブS4aを第2入力中間軸33の軸線方向に移動させることによって、4速ギヤ35を第2入力中間軸33に係合させる。
【0060】
以上の構成の第2変速機構31では、2速ギヤ34および第1受動ギヤ18によって2速段のギヤ段が構成され、4速ギヤ35および第2受動ギヤ19によって4速段のギヤ段が、6速ギヤ36および第3受動ギヤ20によって6速段のギヤ段が、それぞれ構成されている。また、第2入力軸32に入力された動力は、ギヤ32a、アイドラギヤ37およびギヤ33aを介して第2入力中間軸33に伝達され、第2入力中間軸33に伝達された動力は、これらの2速段、4速段および6速段のうちの1つによって変速され、出力軸21、ギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して駆動輪DWに伝達される。
【0061】
以上のように、第1および第2変速機構11、31では、変速された動力を駆動輪DWに伝達するための出力軸21が共用化されている。
【0062】
また、駆動力伝達装置には、リバース機構41が設けられており、リバース機構41は、リバース軸42と、リバースギヤ43と、スリーブS5aを有する第5シンクロクラッチS5を備えている。ハイブリッド車両Vを後進させる場合には、ECU2による制御により、スリーブS5aをリバース軸42の軸線方向に移動させることによって、リバースギヤ43をリバース軸42に係合させる。
【0063】
さらに、図2に示すように、ECU2には、クランク角センサ61から、CRK信号が入力される。このCRK信号は、エンジン3のクランク軸3aの回転に伴い、所定のクランク角ごとに出力されるパルス信号である。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン回転数NEを算出する。また、ECU2には、電流電圧センサ62から、バッテリ52に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が、入力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ52の充電状態SOCを算出する。
【0064】
さらに、ECU2には、バッテリ温度センサ63から、バッテリ52の温度(以下「バッテリ温度」という)TBを表す検出信号が入力される。また、ECU2には、アクセル開度センサ64から車両のアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度APを表す検出信号が、車速センサ65から車速VPを表す検出信号が、入力される。また、ECU2には、カーナビゲーションシステム66に記憶された、ハイブリッド車両Vが走行している周辺の道路情報を表すデータが適宜、入力される。
【0065】
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されており、上述した各種のセンサ61〜65からの検出信号や、カーナビゲーションシステム66からのデータに応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、ハイブリッド車両Vの動作を制御する。
【0066】
以上の構成のハイブリッド車両Vの走行モードには、ENG走行モード、EV走行モード、アシスト走行モード、充電走行モード、および減速回生モードが含まれる。各走行モードにおけるハイブリッド車両Vの動作は、ECU2によって制御される。以下、これらの走行モードについて順に説明する。
【0067】
[ENG走行モード]
ENG走行モードは、エンジン3のみを動力源として用いる走行モードである。ENG走行モードでは、エンジン3の燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期を制御することによって、エンジン3の動力(以下「エンジン動力」という)が制御される。また、エンジン動力は、第1または第2変速機構11、31により変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0068】
まず、第1変速機構11により1速段、3速段、5速段および7速段のうちの1つでエンジン動力を変速する場合の動作について、順に説明する。この場合、上記のいずれの変速段においても、第1クラッチC1を締結状態に制御することによって、第1入力軸13をクランク軸3aに係合させるとともに、第2クラッチC2を解放状態に制御することによって、クランク軸3aへの第2入力中間軸33の係合を解除する。また、第5シンクロクラッチS5の制御によって、リバース軸42に対するリバースギヤ43の係合を解除する。
【0069】
1速段の場合には、ロック機構BRをON状態に制御することによって、リングギヤ12bを回転不能に保持するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2によって、第1入力軸13に対する3速ギヤ14、5速ギヤ15および7速ギヤ16の係合を解除する。
【0070】
以上により、エンジン動力は、第1クラッチC1、第1入力軸13、サンギヤ12a、プラネタリギヤ12c、キャリア12d、回転軸17、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達され、さらにギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して、駆動輪DWに伝達される。その際、上記のようにリングギヤ12bが回転不能に保持されているため、第1入力軸13に伝達されたエンジン動力は、サンギヤ12aとリングギヤ12bとの歯数比に応じた変速比で減速された後、キャリア12dに伝達され、さらに、3速ギヤ14と第1受動ギヤ18との歯数比に応じた変速比で減速された後、出力軸21に伝達される。その結果、エンジン動力は、上記の2つの変速比によって定まる1速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0071】
3速段の場合には、ロック機構BRをOFF状態に制御することによって、リングギヤ12bの回転を許容するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、3速ギヤ14のみを第1入力軸13に係合させる。
【0072】
以上により、エンジン動力は、第1入力軸13から3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達される。この場合、上記のように3速ギヤ14が第1入力軸13に係合しているため、サンギヤ12a、キャリア12dおよびリングギヤ12bは一体に空転する。このため、3速段の場合には、1速段の場合と異なり、エンジン動力は、遊星歯車装置12で減速されることなく、3速ギヤ14と第1受動ギヤ18との歯数比によって定まる3速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0073】
以下、同様に、5速段の場合には、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、5速ギヤ15のみを第1入力軸13に係合させる。これにより、エンジン動力は、第1入力軸13から5速ギヤ15および第2受動ギヤ19を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ15、19の歯数比によって定まる5速段の変速比で変速される。
【0074】
7速段の場合には、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、7速ギヤ16のみを第1入力軸13に係合させる。これにより、エンジン動力は、第1入力軸13から7速ギヤ16および第3受動ギヤ20を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ16、20の歯数比によって定まる7速段の変速比で変速される。
【0075】
次に、エンジン動力を第2変速機構31により2速段、4速段および6速段のうちの1つで変速する場合の動作について、順に説明する。この場合、これらのいずれの変速段においても、第1クラッチC1を解放状態に制御することによって、クランク軸3aへの第1入力軸13の係合を解除するとともに、第2クラッチC2を締結状態に制御することによって、第2入力軸32をクランク軸3aに係合させる。また、第5シンクロクラッチS5の制御によって、リバース軸42に対するリバースギヤ43の係合を解除する。
【0076】
2速段の場合には、第3および第4シンクロクラッチS3、S4の制御によって、2速ギヤ34のみを第2入力中間軸33に係合させる。これにより、エンジン動力は、第2クラッチC2、第2入力軸32、ギヤ32a、アイドラギヤ37、ギヤ33a、第2入力中間軸33、2速ギヤ34および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達され、さらにギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して、駆動輪DWに伝達される。その際、エンジン動力は、2速ギヤ34と第1受動ギヤ18との歯数比によって定まる2速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0077】
以下、同様に、4速段の場合には、第3および第4シンクロクラッチS3、S4の制御によって、4速ギヤ35のみを第2入力中間軸33に係合させる。これにより、エンジン動力は、第2入力中間軸33から4速ギヤ35および第2受動ギヤ19を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ35、19の歯数比によって定まる4速段の変速比で変速される。
【0078】
6速段の場合には、第3および第4シンクロクラッチS3、S4の制御によって、6速ギヤ36のみを第2入力中間軸33に係合させる。これにより、エンジン動力は、第2入力中間軸33から6速ギヤ36および第3受動ギヤ20を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ36、20の歯数比によって定まる6速段の変速比で変速される。
【0079】
[EV走行モード]
EV走行モードは、モータ4のみを動力源として用いる走行モードである。EV走行モードでは、バッテリ52からモータ4に供給される電力を制御することによって、モータ4の動力(以下「モータ動力」という)が制御される。また、モータ動力が、第1変速機構11により1速段、3速段、5速段および7速段のうちの1つで変速され、駆動輪DWに伝達される。この場合、これらのいずれの変速段においても、第1および第2クラッチC1、C2を解放状態に制御することによって、クランク軸3aに対する第1および第2入力軸13、32の係合を解除する。これにより、モータ4および駆動輪DWとエンジン3との間が遮断されるので、モータ動力がエンジン3に無駄に伝達されることがない。また、第5シンクロクラッチS5の制御によって、リバース軸42に対するリバースギヤ43の係合を解除する。
【0080】
1速段の場合には、ENG走行モードの場合と同様、ロック機構BRをON状態に制御することによって、リングギヤ12bを回転不能に保持するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、第1入力軸13に対する3速ギヤ14、5速ギヤ15および7速ギヤ16の係合を解除する。
【0081】
以上により、モータ動力は、第1入力軸、サンギヤ12a、プラネタリギヤ12c、キャリア12d、回転軸17、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達される。その結果、モータ動力は、ENG走行モードの場合と同様、1速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0082】
3速段の場合には、ENG走行モードの場合と同様、ロック機構BRをOFF状態に制御することによって、リングギヤ12bの回転を許容するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、3速ギヤ14のみを第1入力軸13に係合させる。これにより、モータ動力は、第1入力軸13から、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達される。その結果、モータ動力は、ENG走行モードの場合と同様、3速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0083】
5速段または7速段の場合には、ENG走行モードの場合と同様にして、ロック機構BR、第1および第2シンクロクラッチS1、S2を制御する。これにより、モータ動力は、5速段または7速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0084】
なお、EV走行モード中、第1変速機構11の変速段は、モータ4の高い駆動効率が得られるように、設定される。
【0085】
[アシスト走行モード]
アシスト走行モードは、エンジン3をモータ4でアシストする走行モードである。アシスト走行モードでは、基本的に、エンジン3の良好な燃費が得られるように、エンジン動力を制御する。また、運転者から駆動輪DWに要求されるトルク(以下「要求トルク」という)TRQと車速VPで定まる要求駆動力に対するエンジン動力の不足分が、モータ動力によって補われる。要求トルクTRQは、検出されたアクセル開度APに応じて算出される。
【0086】
アシスト走行モード中、エンジン動力を第1変速機構11によって変速しているとき(奇数段のとき)には、モータ4と駆動輪DWとの変速比は、第1変速機構11で設定されている変速段の変速比と同じになる。一方、エンジン動力を第2変速機構12によって変速しているとき(偶数段のとき)には、モータ4と駆動輪DWとの変速比は、第1変速機構11の1速段、3速段、5速段または7速段のいずれかの変速比を選択することが可能である。
【0087】
また、アシスト走行モード中、例えば、エンジン動力を2速段で変速しているときには、プレシフトにて第1変速機構11の変速段を選択し、モータ動力を、第1変速機構11を介して出力軸21に伝達する。この場合、出力軸21の第1〜第3受動ギヤ18〜20は、奇数段の変速段の歯車および偶数段の変速段の歯車の両方と噛み合った状態にあり、偶数段で変速されたエンジン動力と、奇数段で変速されたモータ動力とを、合成することが可能である。なお、第1クラッチC1は解放状態に制御され、それにより、エンジン動力は、第1変速機構11を介しては駆動輪DWに伝達されない。また、プレシフトする第1変速機構11の変速段は、ハイブリッド車両Vの走行状態に応じて、自由に選択することができる。
【0088】
[充電走行モード]
充電走行モードは、エンジン動力の一部をモータ4で電力に変換し、発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ52に充電する走行モードである。充電走行モードでは、基本的に、エンジン3の良好な燃費が得られるように、エンジン動力を制御する。また、車速VPおよび要求トルクTRQで定まる要求駆動力に対するエンジン動力の余剰分を用いて、モータ4による回生が行われる。
【0089】
アシスト走行モードの場合と同様、充電走行モード中、エンジン動力を第1変速機構11によって変速しているとき(奇数段のとき)には、モータ4と駆動輪DWとの変速比は、第1変速機構11の変速段の変速比と同じになる。また、エンジン動力を第2変速機構12によって変速しているとき(偶数段のとき)には、モータ4と駆動輪DWとの変速比は、第1変速機構11の1速段、3速段、5速段または7速段のいずれかの変速比を選択することが可能である。
【0090】
また、充電走行モード中、例えば、エンジン動力を2速段で変速しているときには、プレシフトにて第1変速機構11の変速段を選択し、発電に伴って発生するモータ4の制動力を、第1変速機構11を介して出力軸21に伝達する。この場合、出力軸21の第1〜第3受動ギヤ18〜20は、奇数段の変速段の歯車および偶数段の変速段の歯車の両方と噛み合った状態にあり、偶数段で変速されたエンジン動力と、奇数段で変速されたモータ4の制動力とを、合成することが可能である。なお、第1クラッチC1は解放状態に制御され、それにより、エンジン動力は、第1変速機構11を介しては駆動輪DWに伝達されない。また、プレシフトする第1変速機構11の変速段は、ハイブリッド車両Vの走行状態に応じて、自由に選択することができる。
【0091】
[減速回生モード]
減速回生モードは、車両の減速走行中に、駆動輪DWの動力を用いてモータ4による回生を行う走行モードである。減速回生モードでは、第1および第2クラッチC1、C2は、EV走行モードの場合と同様にして制御される。また、駆動輪DWの動力は、ファイナルギヤFGや、ギヤ21a、出力軸21、第1変速機構11を介して、変速された状態でモータ4に伝達される。モータ4に伝達された駆動輪DWの動力は、電力に変換され、バッテリ52に充電される。それに伴い、モータ4から駆動輪DWに、発電した電力に応じた制動力が作用する。
【0092】
減速回生モード中、第1変速機構11の変速段は、モータ4の高い発電効率が得られるように設定される。また、EV走行モードの場合と同様、第1および第2クラッチC1、C2によりクランク軸3aに対する第1および第2入力軸13、32の係合を解除することによって、モータ4および駆動輪DWとエンジン3との間が遮断されるので、駆動輪DWの動力がエンジン3に無駄に伝達されることがない。
【0093】
なお、減速回生モード中、モータ4による制動力が十分に得られないときには、エンジンブレーキによる制動力を得るために、第1クラッチC1を締結することも可能である。
【0094】
次に、前述したENG走行モードおよび充電走行モードの間での走行モードの選択と、両走行モードにおける第1および第2変速機構11、31の変速段の選択について、説明する。走行モードおよび変速段の選択は、車速VPおよび要求トルクTRQに応じ、図3に示す選択マップを検索することによって、行われる。この選択マップでは、車速VPおよび要求トルクTRQに対して、ENG走行モードおよび充電走行モードの領域がそれぞれ設定されており、それぞれの走行モードの領域は、変速段ごとの領域に区分されている。
【0095】
図3において、「ENG1」〜「ENG5」は、走行モードがENG走行モードで、かつ、エンジン3と駆動輪DWの間の変速比を定める変速段(以下「エンジン側変速段」という)が1速段〜5速段である領域を、それぞれ示している。また、「E1M1」「E2M1」「E3M3」「E4M3」および「E5M5」はいずれも、充電走行モードの領域を示している。また、充電走行モードにおける変速段の領域として、「E1M1」「E3M3」および「E5M5」は、エンジン側変速段、およびモータ4と駆動輪DWの間の変速比を定める変速段(以下「モータ側変速段」という)の両方が、1速段、3速段および5速段である領域を、それぞれ示している。さらに、「E2M1」は、エンジン側変速段が2速段で、かつモータ側変速段が1速段である領域を、「E4M3」は、エンジン側変速段が4速段で、かつモータ側変速段が3速段である領域を、それぞれ示している。
【0096】
例えば、選択マップにおいて、車速VPおよび要求トルクTRQで定まるハイブリッド車両Vの運転点がENG1の領域にあるときには、走行モードとして、ENG走行モードが選択されるとともに、エンジン側変速段として、1速段が選択される。また、ハイブリッド車両Vの運転点がE1M1の領域にあるときには、充電走行モードが選択されるとともに、エンジン側変速段およびモータ側変速段として、1速段が選択される。なお、図3は、便宜上、1速段から5速段までの変速段の領域を示しているが、実際には、6速段および7速段の領域も設定されている。
【0097】
この選択マップは、ハイブリッド車両Vの総合燃料消費率に基づき、以下に述べるようにして設定される。ここで、総合燃料消費率とは、ハイブリッド車両Vにおけるエネルギ源としての燃料が、ハイブリッド車両Vの走行エネルギに最終的に変換されることを想定したときの、最終的な走行エネルギに対する燃料量の比である。まず、図4に示す第1総合燃料消費マップを設定する。この第1総合燃料消費マップは、ENG走行モードにおける総合燃料消費率(以下「第1総合燃料消費率TSFC1」という)を、車速VPおよび要求トルクTRQに対して、変速段ごとに規定したものである。第1総合燃料消費率TSFC1は、ENG走行モードにおける、エンジン3の燃料消費量と、この燃料消費量分の燃料によって得られたハイブリッド車両Vの走行エネルギとの比(燃料消費量/走行エネルギ)を表す。
【0098】
また、第1総合燃料消費マップは、エンジン3の効率(出力/入力)と、第1および第2変速機構11、31における複数の変速段間の動力伝達効率の差とに応じて、実験により予め設定される。この動力伝達効率は、第1および第2変速機構11、31のそれぞれにおける出力トルクと入力トルクとの比である。これらのエンジン3の効率および動力伝達効率は、車速VPおよび要求トルクTRQに応じて定まる。図4では、ハッチングによって、第1総合燃料消費率TSFC1の大小を示している。また、第1総合燃料消費マップは、実際には、1速段〜7速段にそれぞれ対応する複数のマップで構成されており、図4は1速段の例である。
【0099】
次に、充電走行モードにおける総合燃料消費率(以下「第2総合燃料消費率TSFC2」という)を変速段ごとに規定するマップを設定する。充電走行モード中、エンジン3のトルク(以下「エンジントルク」という)は、燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期を介して、BSFCボトムトルクになるように制御される。このBSFCボトムトルクは、車速VPおよび変速段で定まるエンジン回転数NEに対して、最小の燃料消費率が得られるトルクである。これにより、エンジン3は、その燃料消費率が最小になる最適燃費線近傍で運転される。また、充電走行モード中、要求トルクTRQに対するエンジントルクの余剰分を用いて、モータ4で発電を行うとともに、発電した電力がバッテリ52に充電される。充電された電力は、その後、前述したアシスト走行モードやEV走行モードにおいて用いられる。
【0100】
以上から、第2総合燃料消費率TSFC2は、次式(1)で表される。
TSFC2=(FC1+FC2)/(VE+VEEV) ……(1)
ここで、FC1:充電走行モード中にハイブリッド車両Vの走行用に供給された分のエ ンジン3の燃料量(以下「第1燃料消費量」という)
FC2:充電走行モード中にモータ4による回生用に供給された分のエンジン 3の燃料量(以下「第2燃料消費量」という)
VE:充電走行モードにおけるハイブリッド車両Vの走行エネルギ(以下 「走行エネルギ」という)
VEEV:充電走行モード中にバッテリ52に充電された電力をその後、モータ 4に供給してハイブリッド車両Vを走行させたときのハイブリッド車 両Vの走行エネルギの予測値(以下「EV走行エネルギ」という)
【0101】
以上の点を考慮して、第2総合燃料消費率TSFC2を規定するマップは、次のように設定される。まず、図5に示す第1充電時用燃料消費マップを設定する。この第1充電時用燃料消費マップは、第1充電時用燃料消費率を、車速VPおよび要求トルクTRQに対して、変速段ごとに規定したものである。この第1充電時用燃料消費率は、充電走行モード中にハイブリッド車両Vの走行用に供給された分のエンジン3の燃料量と、この燃料量分の燃料によって得られたハイブリッド車両Vの走行エネルギとの比であり、上記式(1)における(第1燃料消費量FC1/走行エネルギVE)に相当する。
【0102】
第1充電時用燃料消費マップは、第1総合燃料消費マップと同様、エンジン3の効率と、第1および第2変速機構11、31における複数の変速段間の動力伝達効率の差とに応じて、実験により予め設定される。図5では、図4と同様、ハッチングによって、第1充電時用燃料消費率の大小を示している。また、第1充電時用燃料消費マップは、実際には、1速段〜7速段にそれぞれ対応する複数のマップで構成されており、図5は1速段の例である。
【0103】
次に、図6に示す第2充電時用燃料消費マップを設定する。この第2充電時用燃料消費マップは、第2充電時用燃料消費率を、車速VPおよび要求トルクTRQに対して、変速段ごとに規定したものである。また、第2充電時用燃料消費率は、充電走行モード中にモータ4による回生用に供給された分のエンジン3の燃料量と、前述したEV走行エネルギとの比であり、前記式(1)における(第2燃料消費量FC2/EV走行エネルギVEEV)に相当する。第2充電時用燃料消費マップは、エンジン3の効率と、第1および第2変速機構11、31における複数の変速段間の動力伝達効率の差と、モータ4の発電効率と、バッテリ52の充電効率と、仮想電力使用効率とに応じて、実験により予め設定される。
【0104】
ここで、発電効率は、モータ4で発電された電気エネルギとモータ4に入力されたトルクとの比であり、車速VPおよび要求トルクTRQに応じて定まる。充電効率は、バッテリ52に充電された電気エネルギとバッテリ52に供給された電気エネルギとの比であり、第2充電時用燃料消費マップの設定にあたっては、所定値であるとみなされる。
【0105】
また、仮想電力使用効率は、充電走行モード中にバッテリ52に充電された電力をその後、モータ4に供給してハイブリッド車両Vを走行させたときのハイブリッド車両Vの駆動効率の予測値であり、予測放電効率、予測駆動効率および予測動力伝達効率を互いに乗算した値に相当する。これらの予測放電効率および予測駆動効率はそれぞれ、バッテリ52の放電効率およびモータ4の駆動効率の予測値であり、予測動力伝達効率は、第1および第2変速機構11、31のそれぞれの変速段の動力伝達効率の予測値である。なお、仮想電力使用効率は、第2充電時用燃料消費マップの設定にあたっては、所定値(例えば80%)であるとみなされる。
【0106】
また、図6では、図4と同様、ハッチングによって、第2充電時用燃料消費率の大小を示している。さらに、前述したように、エンジン側変速段が偶数段のときには、モータ側変速段として、第1変速機構11の1速段、3速段、5速段または7速段のいずれかを選択することが可能である。このため、第2充電時用燃料消費マップとして、実際には、エンジン側変速段およびモータ側変速段の両方が1速段、3速段、5速段および7速段の場合のマップが設定されるとともに、エンジン側変速段が2速段、4速段、または6速段の場合については、モータ側変速段が1速段、3速段、5速段または7速段の場合のマップが、3×4=12通りの組合せで設定されている。図6は、エンジン側変速段およびモータ側変速段の両方が1速段の例である。
【0107】
次に、第1充電時用燃料消費マップ(図5)および第2充電時用燃料消費マップ(図6)に応じて、図7に示す第2総合燃料消費マップを設定する。この第2総合燃料消費マップは、第2総合燃料消費率TSFC2(式(1))を、車速VPおよび要求トルクTRQに対して、変速段ごとに規定したものである。
【0108】
図7では、図4と同様、ハッチングによって、第2総合燃料消費率TSFC2の大小を示している。また、図6に示す第2充電時用燃料消費マップと同様、第2総合燃料消費マップとして、実際には、エンジン側変速段およびモータ側変速段の両方が1速段、3速段、5速段および7速段の場合のマップが設定されるとともに、エンジン側変速段が2速段、4速段、または6速段の場合については、モータ側変速段が1速段、3速段、5速段または7速段の場合のマップが、3×4=12通りの組合せで設定されている。図7は、エンジン側変速段およびモータ側変速段の両方が1速段の例である。
【0109】
次いで、第1および第2総合燃料消費マップ(図4・図7)に応じて、図8に示す総合燃料消費マップを、変速段ごとに設定する。この総合燃料消費マップでは、第1総合燃料消費マップにより規定される第1総合燃料消費率TSFC1、すなわちENG走行モードにおける総合燃料消費率と、第2総合燃料消費マップにより規定される第2総合燃料消費率TSFC2、すなわち充電走行モードにおける総合燃料消費率とを比較し、より小さい総合燃料消費率TSFCが得られるように走行モードの領域が設定される。
【0110】
図8では、図4と同様、ハッチングによって、総合燃料消費率TSFCの大小を示している。また、図6に示す第2充電時用燃料消費マップと同様、総合燃料消費マップとして、実際には、エンジン側変速段およびモータ側変速段の両方が1速段、3速段、5速段および7速段の場合のマップが設定されるとともに、エンジン側変速段が2速段、4速段、または6速段の場合については、モータ側変速段が1速段、3速段、5速段または7速段の場合のマップが、3×4=12通りの組合せで設定されている。図8は、エンジン側変速段およびモータ側変速段の両方が1速段の例である。
【0111】
次いで、上記のように変速段ごとに設定された複数の総合燃料消費マップを重ね合わせることによって、前述した選択マップ(図3)が設定される。この重ね合わせの際、複数の変速段の間で最も小さい総合燃料消費率TSFCが得られるように、それぞれの変速段の領域が、選択マップにおいて設定される。なお、本実施形態では、ECU2のROMには、選択マップのみが記憶され、第1および第2総合燃料消費マップ、第1および第2充電時用燃料消費マップ、ならびに総合燃料消費マップ(図4〜図8)は、記憶されず、選択マップの設定に用いられるだけである。
【0112】
また、図3に示すように、選択マップでは、エンジン側変速段が偶数段(2速段、4速段、6速段)に設定された場合には、モータ側変速段は、エンジン側変速段よりも1段、低速側の変速段に設定される。例えば、エンジン側変速段が2速段の場合には、モータ側変速段は1速段に設定される。さらに、充電走行モード中、選択マップに基づいて、第2総合燃料消費率TSFC2(式(1))が最小になるように、変速段が選択される。
【0113】
また、ECU2は、アシスト走行モード中、検出されたバッテリ温度TBが所定温度以上になったときには、モータ4の出力を制限し、モータ4によるエンジン3のアシストを制限する。この場合、アシストを制限した分を補うように、エンジントルクを増大させる。また、EV走行モード中、バッテリ温度TBが所定温度以上になったときには、EV走行モードを禁止し、走行モードを、ENG走行モード、充電走行モードまたはアシスト走行モードに切り換える。また、アシスト走行モードに切り換えたときには、上記のようにモータ4の出力が制限される。
【0114】
さらに、充電状態SOCが所定の下限値以下のときには、強制回生モードが選択され、それにより、エンジン動力の一部を用いてモータ4による回生が強制的に行われる。この強制回生モード中、変速段の選択は、前述した選択マップに代えて、第3総合燃料消費マップ(図示せず)に基づいて行われる。この第3総合燃料消費マップは、車速VPおよび要求トルクTRQに対し、総合燃料消費率TSFCを、強制回生モード中について変速段ごとに規定したものである。また、第3総合燃料消費マップに基づいて変速段を選択した場合には、第1および第2変速機構11、31の変速段として、モータ4の発電効率が高くなるような変速段が選択される。
【0115】
また、ECU2は、前述したカーナビゲーションシステム66に記憶された、ハイブリッド車両Vが走行している周辺の道路情報に基づいて、ハイブリッド車両Vの走行状況を予測する。そして、選択マップに加え、予測されたハイブリッド車両Vの走行状況にさらに応じて、走行モードの選択を行う。これにより、例えば、ハイブリッド車両Vが下り坂を走行すると予測されているときには、下り坂の走行中に前述した減速回生モードによりバッテリ52の充電量が増大することが予想されるので、ENG走行モードが選択され、上り坂を走行すると予測されているときには、上り坂の走行中にアシスト走行モードが選択されると予想されるので、前もってバッテリ52を充電するために、充電走行モードが選択される。
【0116】
また、本実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、本実施形態におけるクランク軸3aおよびバッテリ52が、本発明における機関出力軸および蓄電器にそれぞれ相当する。また、本実施形態におけるECU2が、本発明における予測手段に相当する。さらに、本実施形態における要求トルクTRQ、バッテリ温度TBおよび充電状態SOCが、本発明における要求駆動力、蓄電器の温度および蓄電器の充電状態にそれぞれ相当する。また、本実施形態における総合燃料消費率TSFC、第1および第2総合燃料消費率TSFC1、TSFC2が、本発明における総合燃料消費、第1および第2総合燃料消費にそれぞれ相当する。
【0117】
以上のように、本実施形態によれば、エンジン3のクランク軸3aと第1変速機構11の第1入力軸13が、第1クラッチC1によって互いに係合するとともに、クランク軸3aと第2変速機構31の第2入力軸32との係合が第2クラッチC2で解放されているときには、エンジン動力は、第1変速機構11の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪DWに伝達される。また、クランク軸3aと第1入力軸13との係合が第1クラッチC1で解放されるとともに、クランク軸3aと第2入力軸32が第2クラッチC2によって互いに係合しているときには、エンジン動力は、第2変速機構31の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪DWに伝達される。さらに、モータ動力は、第1変速機構11の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪DWに伝達される。
【0118】
また、走行モードおよび変速段の選択が、選択マップ(図3)に基づいて行われる。選択マップでは、第1総合燃料消費率TSFC1すなわちENG走行モードにおけるハイブリッド車両Vのそれぞれの変速段の総合燃料消費率TSFCと、第2総合燃料消費率TSFC2すなわち充電走行モードにおけるハイブリッド車両Vのそれぞれの変速段の総合燃料消費率TSFCとを比較し、より小さい総合燃料消費率TSFCが得られるように、走行モードの領域が設定されるとともに、第1および第2変速機構11、31の複数の変速段の間で最も小さい総合燃料消費率TSFCが得られるように、それぞれの変速段の領域が設定される。さらに、第2総合燃料消費率TSFC2を規定する第2総合燃料消費マップが、バッテリ52の充電効率および所定の仮想電力使用効率に応じて設定される。以上により、より小さい総合燃料消費率TSFCが得られる走行モードを適切に選択できるとともに、総合燃料消費率TSFCが最小になる変速段を適切に選択することができ、したがって、ハイブリッド車両Vの燃費を向上させることができる。
【0119】
また、第1変速機構11(奇数段)および第2変速機構31(偶数段)では、後者の方がギヤの噛み合い数が多く、また、偶数段の場合には、アイドラギヤ37を介してリバース軸42が連れ回されるため、より大きな損失が発生する。この損失は、摩擦損失や各ギヤの潤滑油をかき回すことなどにより発生するものであり、通常3%程度になる。摩擦損失は、熱損失に変換される。また、前述したプレシフトを実施した場合には、駆動輪DWにエンジン動力を伝達する第2変速機構31に加え、第1変速機構11が、出力軸21を介して係合した状態で連れ回されており、モータ4を回転させる動力などが余分に必要となる。これに対して、本実施形態によれば、第1および第2変速機構11、31のそれぞれの変速段ごとに適切に設定された第1および第2総合燃料消費率TSFC1、TSFC2を用いて、変速段の選択を行うことができるので、上述したハイブリッド車両Vの燃費を向上させることができるという効果を、有効に得ることができる。
【0120】
さらに、充電走行モード中、前記式(1)(TSFC2=(FC1+FC2)/(VE+VEEV))で表される第2総合燃料消費率TSFC2が最小になるように、変速段を選択するので、ハイブリッド車両Vの総合燃料消費率TSFCが最小になるように、変速段の選択を適切に行うことができる。また、検出されたバッテリ温度TBが所定温度以上のときに、モータ4の出力が制限される。したがって、バッテリ温度TBの上昇を抑えることができる。
【0121】
さらに、充電状態SOCが下限値以下のとき、強制回生モードが選択されることによって、エンジン動力の一部を用いてモータ4による回生が強制的に行われる。したがって、充電状態SOCを増大させることができ、バッテリ52の過放電を回避することができる。この強制回生モード中、第1および第2変速機構11、31の変速段として、前述した選択マップに基づくことなく、モータ4の発電効率が高くなるような変速段が選択される。したがって、充電状態SOCが下限値以下で、充電状態SOCを早期に増大させる必要があるときに、モータ4の高い発電効率を得ることができ、それにより、バッテリ52のより大きな充電量を得ることができる。
【0122】
また、カーナビゲーションシステム66に記憶された、ハイブリッド車両Vが走行している周辺の道路情報を表すデータに基づいて、ハイブリッド車両Vの走行状況が予測されるとともに、予測されたハイブリッド車両Vの走行状況に応じて、走行モードが選択される。これにより、ハイブリッド車両Vが下り坂を走行すると予測されているときには、下り坂の走行中に減速回生モードによりバッテリ52の充電量が増大することが予想されるので、ENG走行モードを選択できるとともに、上り坂を走行すると予測されているときには、上り坂の走行中にアシスト走行モードが選択されると予想されるので、前もってバッテリ52を充電するために、充電走行モードを選択することができる。
【0123】
さらに、選択マップにおける変速段の領域から明らかなように、充電走行モード中、第2変速機構31によりエンジン動力を変速した状態でハイブリッド車両Vが走行しているときに、第1変速機構11の変速段として、第2変速機構31の変速段よりも低速側の変速段が選択される。すなわち、第1変速機構11の変速段として、モータ4の発電効率が高くなるような変速段が選択される。したがって、モータ4の発電効率を高めることができる。
【0124】
また、本発明は、図9に示すハイブリッド車両V’にも適用可能である。同図において、図1に示すハイブリッド車両Vと同じ構成要素については、同じ符号を付している。図9に示すハイブリッド車両V’は、ハイブリッド車両Vと比較して、前述した第1および第2変速機構11、31に代えて、変速機構71を備える点が主に異なっている。
【0125】
この変速機構71は、有段式の自動変速機であり、入力軸72および出力軸73を有している。入力軸72は、クラッチCを介してクランク軸3aに連結されており、入力軸72には、モータ4のロータ4bが一体に取り付けられている。クラッチCは、第1および第2クラッチC1、C2と同様の乾式多板クラッチである。
【0126】
また、出力軸73には、ギヤ73aが一体に取り付けられており、このギヤ73aは、前述したファイナルギヤFGのギヤに噛み合っている。出力軸73は、これらのギヤ73aやファイナルギヤFGを介して駆動輪DW、DWに連結されている。以上の構成の変速機構71では、入力軸72には、エンジン動力およびモータ動力が入力されるとともに、入力された動力は、複数の変速段(例えば1速段〜7速段)の1つで変速され、駆動輪DW、DWに伝達される。また、変速機構71の動作は、ECU2によって制御される。
【0127】
このハイブリッド車両V’に本発明による制御装置を適用した場合にも、走行モードの選択や、変速段の選択、走行モードの選択が、上述した制御装置1の場合と同様にして行われるので、その詳細な説明については省略する。これにより、上述した実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0128】
なお、変速機構71を、エンジン動力およびモータ動力の双方を変速した状態で駆動輪DWに伝達するように構成しているが、エンジン動力のみを変速した状態で駆動輪DWに伝達するように構成してもよい。あるいは、エンジン動力を変速した状態で駆動輪DWに伝達する変速機構と、モータ動力を変速した状態で駆動輪DWに伝達する変速機構を、それぞれ別個に設けてもよい。さらに、変速機構71は、有段式の自動変速機であるが、無段式の自動変速機(CVT)でもよい。
【0129】
なお、本発明は、説明した実施形態(図9に示す実施形態を含む)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、モータ動力の制限を、バッテリ温度TBが所定温度以上のときに行っているが、これに代えて、または、これとともに、センサなどで検出されたモータ4の温度が対応する所定の温度以上のときに行ってもよい。それにより、モータ4の温度の上昇を抑えることができる。
【0130】
また、実施形態では、走行モードおよび変速段の選択を、第1および第2総合燃料消費マップ(図4・図7)を用いて設定された選択マップ(図3)に基づいて行っているが、例えば、次のようにして行ってもよい。すなわち、変速段ごとに設定された第1および第2総合燃料消費マップをそれぞれ、ROMなどの記憶手段に記憶し、検出された車速VPおよび要求トルクTRQに応じ、第1総合燃料消費マップを検索することによって第1総合燃料消費率TSFC1を算出するとともに、第2総合燃料消費マップを検索することによって第2総合燃料消費率TSFC2を算出する。そして、算出された第1および第2総合燃料消費率TSFC1、TSFC2をリアルタイムで比較し、より小さい総合燃料消費率TSFCが得られる走行モードを選択するとともに、複数の変速段から、総合燃料消費率TSFCが最も小さな変速段を選択してもよい。
【0131】
この場合、第2総合燃料消費マップは、車速VPおよび要求トルクTRQに対して第2総合燃料消費率TSFC2を規定するのに対し、バッテリ52の充電効率は、バッテリ温度TBに応じて変化する。このため、例えば、バッテリ52の充電効率をバッテリ温度TBに応じた所定のマップ検索によってリアルタイムで算出するとともに、算出されたバッテリ52の充電効率に応じて、第2総合燃料消費マップをリアルタイムで更新してもよい。さらに、実施形態では、第2総合燃料消費マップを、第1および第2充電時用燃料消費マップに応じて設定しているが、例えば、充電走行モードにおける総合燃料消費率を規定するマップとして、仮想電力使用効率が反映されていないものを作成し、このマップを仮想電力使用効率に応じて補正することにより、第2総合燃料消費マップを設定してもよい。また、実施形態では、ハイブリッド車両V、V’の総合燃料消費を表すパラメータとして、総合燃料消費率TSFC(第1および第2総合燃料消費率TSFC1、TSFC2)を用いているが、総合燃料消費量を用いてもよい。
【0132】
さらに、実施形態(図1)では、第1および第2変速機構11、31のそれぞれの複数の変速段を、奇数段および偶数段に設定しているが、これとは逆に、偶数段および奇数段に設定してもよい。また、実施形態では、第1および第2変速機構11、31として、変速された動力を駆動輪DWに伝達するための出力軸21が共用化されたタイプのものを用いているが、出力軸が別個に設けられたタイプのものを用いてもよい。この場合、第1〜第4シンクロクラッチS1〜S4を、第1入力軸13および第2入力中間軸33ではなく、出力軸に設けてもよい。さらに、実施形態では、クラッチC、第1および第2クラッチC1、C2は、乾式多板クラッチであるが、湿式多板クラッチや、電磁クラッチでもよい。
【0133】
また、実施形態では、本発明における電動機として、ブラシレスDCモータであるモータ4を用いているが、発電可能な他の適当な電動機、例えばACモータを用いてもよい。さらに、実施形態では、本発明における蓄電器は、バッテリ52であるが、充電および放電可能な他の適当な蓄電器、例えばキャパシタでもよい。また、実施形態では、本発明における内燃機関として、ガソリンエンジンであるエンジン3を用いているが、ディーゼルエンジンや、LPGエンジンを用いてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0134】
V ハイブリッド車両
V’ ハイブリッド車両
DW 駆動輪
1 制御装置
2 ECU(予測手段)
3 エンジン
3a クランク軸(機関出力軸)
4 モータ
11 第1変速機構
13 第1入力軸
31 第2変速機構
32 第2入力軸
C1 第1クラッチ
C2 第2クラッチ
52 バッテリ(蓄電器)
66 カーナビゲーションシステム
71 変速機構
TRQ 要求トルク(要求駆動力)
VP 車速
TB バッテリ温度(蓄電器の温度)
SOC 充電状態(蓄電器の充電状態)
TSFC 総合燃料消費率(総合燃料消費)
TSFC1 第1総合燃料消費率(第1総合燃料消費)
TSFC2 第2総合燃料消費率(第2総合燃料消費)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としての内燃機関および発電可能な電動機と、当該電動機との間で電力の授受が可能な蓄電器と、入力された動力を駆動輪に伝達可能な変速機構とを有するハイブリッド車両の制御装置において、
前記内燃機関のみを前記動力源とするENG走行モードにおける前記ハイブリッド車両の総合燃料消費である第1総合燃料消費を記憶する第1記憶手段と、
前記内燃機関を最適燃費線近傍で運転するとともに前記駆動輪に要求される要求駆動力に対する前記内燃機関のトルクの余剰分を用いた前記電動機による回生を行う充電走行モードにおける前記ハイブリッド車両の総合燃料消費である第2総合燃料消費を記憶する第2記憶手段と、を備え、
前記第2総合燃料消費は、前記充電走行モード中に前記蓄電器に充電された電力をその後、前記電動機に供給して前記ハイブリッド車両を走行させたときの当該ハイブリッド車両の駆動効率の予測値である所定の仮想電力使用効率に応じて設定されており、
前記第1総合燃料消費と前記第2総合燃料消費との比較結果に基づいて、前記ENG走行モードおよび前記充電走行モードのうち、より小さい総合燃料消費が得られる走行モードを選択することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
内燃機関と、発電可能な電動機と、当該電動機との間で電力の授受が可能な蓄電器と、前記内燃機関の機関出力軸および前記電動機からの動力を第1入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪に伝達可能な第1変速機構と、前記機関出力軸からの動力を第2入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で前記駆動輪に伝達可能な第2変速機構と、前記機関出力軸と前記第1変速機構との間を係合可能な第1クラッチと、前記機関出力軸と前記第2変速機構との間を係合可能な第2クラッチとを有するハイブリッド車両の制御装置において、
前記内燃機関のみを前記動力源とするENG走行モードにおける前記ハイブリッド車両の総合燃料消費である第1総合燃料消費を記憶する第1記憶手段と、
前記内燃機関を最適燃費線近傍で運転するとともに前記要求駆動力に対する前記内燃機関のトルクの余剰分を用いた前記電動機による回生を行う充電走行モードにおける前記ハイブリッド車両の総合燃料消費である第2総合燃料消費を記憶する第2記憶手段と、を備え、
前記第2総合燃料消費は、前記充電走行モード中に前記蓄電器に充電された電力をその後、前記電動機に供給して前記ハイブリッド車両を走行させたときの当該ハイブリッド車両の駆動効率の予測値である所定の仮想電力使用効率に応じて設定されており、
前記第1総合燃料消費と前記第2総合燃料消費との比較結果に基づいて、前記ENG走行モードおよび前記充電走行モードのうち、より小さい総合燃料消費が得られる走行モードを選択することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記第2総合燃料消費は、次式(A)で表され、前記充電走行モード中、前記第2総合燃料消費が最小になるように、前記変速段の選択を行うことを特徴とする、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
第2総合燃料消費=(第1燃料消費量+第2燃料消費量)/(走行エネルギ+E V走行エネルギ) ……(A)
ここで、第1燃料消費量:充電走行モード中にハイブリッド車両の走行用に供給された 分の内燃機関の燃料量
第2燃料消費量:充電走行モード中に電動機による回生用に供給された分の内 燃機関の燃料量
走行エネルギ:充電走行モードにおけるハイブリッド車両の走行エネルギ
EV走行エネルギ:充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動 機に供給してハイブリッド車両を走行させたときのハイブリ ッド車両の走行エネルギの予測値
【請求項4】
前記電動機および前記蓄電器の少なくとも一方の温度が、前記電動機および前記蓄電器の前記少なくとも一方に対して設定された所定温度以上のときに、前記電動機の出力が制限されることを特徴とする、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記蓄電器の充電状態が所定値以下のときに、前記第1総合燃料消費と前記第2総合燃料消費との前記比較結果に基づく前記走行モードの選択に代えて、前記内燃機関の動力の一部を用いた前記電動機による回生を強制的に行う強制回生モードが選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記ハイブリッド車両には、当該ハイブリッド車両が走行している周辺の道路情報を表すデータを記憶するカーナビゲーションシステムが設けられており、
当該カーナビゲーションシステムに記憶されたデータに基づき、前記ハイブリッド車両の走行状況を予測する予測手段をさらに備え、
当該予測されたハイブリッド車両の走行状況にさらに応じて、前記走行モードの選択を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記充電走行モード中、前記第2変速機構により前記内燃機関の動力を変速した状態で前記ハイブリッド車両が走行しているときに、前記第1変速機構の変速段として、前記第2変速機構の変速段よりも低速側の変速段が選択されることを特徴とする、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
前記充電走行モード中、前記第2変速機構により前記内燃機関の動力を変速した状態で前記ハイブリッド車両が走行しているときに、前記第1変速機構の変速段として、前記電動機の発電効率が高くなるような変速段が選択されることを特徴とする、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
前記充電走行モード中、前記蓄電器の充電状態が所定値以下のときに、前記第1および第2変速機構の変速段として、前記電動機の発電効率が高くなるような変速段が選択されることを特徴とする、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項10】
内燃機関と、発電可能な電動機と、当該電動機との間で電力の授受が可能な蓄電器と、前記内燃機関の機関出力軸および前記電動機からの動力を第1入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪に伝達可能な第1変速機構と、前記機関出力軸からの動力を第2入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で前記駆動輪に伝達可能な第2変速機構と、前記機関出力軸と前記第1変速機構との間を係合可能な第1クラッチと、前記機関出力軸と前記第2変速機構との間を係合可能な第2クラッチとを有するハイブリッド車両の制御方法において、
前記内燃機関のみを前記動力源とするENG走行モードにおける前記ハイブリッド車両の総合燃料消費である第1総合燃料消費を設定し、
前記内燃機関を最適燃費線近傍で運転するとともに前記要求駆動力に対する前記内燃機関のトルクの余剰分を用いた前記電動機による回生を行う充電走行モードにおける前記ハイブリッド車両の総合燃料消費である第2総合燃料消費を、前記充電走行モード中に前記蓄電器に充電された電力をその後、前記電動機に供給して前記ハイブリッド車両を走行させたときの当該ハイブリッド車両の駆動効率の予測値である所定の仮想電力使用効率に応じて設定し、
前記第1総合燃料消費と前記第2総合燃料消費との比較結果に基づいて、前記ENG走行モードおよび前記充電走行モードのうち、より小さい総合燃料消費が得られる走行モードを選択することを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項11】
前記第2総合燃料消費は、次式(B)で表され、前記充電走行モード中、前記第2総合燃料消費が最小になるように、前記変速段の選択を行うことを特徴とする、請求項10に記載のハイブリッド車両の制御方法。
第2総合燃料消費=(第1燃料消費量+第2燃料消費量)/(走行エネルギ+E V走行エネルギ) ……(B)
ここで、第1燃料消費量:充電走行モード中にハイブリッド車両の走行用に供給された 分の内燃機関の燃料量
第2燃料消費量:充電走行モード中に電動機による回生用に供給された分の内 燃機関の燃料量
走行エネルギ:充電走行モードにおけるハイブリッド車両の走行エネルギ
EV走行エネルギ:充電走行モード中に蓄電器に充電された電力をその後、電動 機に供給してハイブリッド車両を走行させたときのハイブリ ッド車両の走行エネルギの予測値

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−52796(P2013−52796A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193017(P2011−193017)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】