説明

ハイブリッド車両

【課題】断線や破損等を防止した上で、電動機と電気機器とを接続する配線を効果的にレイアウトできるハイブリッド車両の提供する。
【解決手段】エンジンに供給される燃料を貯留する燃料タンク54が車両の中央部に配置され、高圧線63は、車幅方向における両側に配置された一対のサイドフレーム35の内側で、かつ、車両を上方から見て燃料タンク54と高圧線63の少なくとも一部とが重なるように配策されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体寸法を変更せずに車室内の容積を拡大する技術として、フロアパネルの中央部分(フロントシートの下方)に燃料タンクを配置した、いわゆるセンタータンクレイアウトを採用する構成が知られている。
【0003】
また、近年では、エンジン及びモータをパワープラントとするハイブリッド車両に、上述したセンタータンクレイアウトを採用することが検討されている。例えば、特許文献1では、パワープラントを車両前側に搭載するとともに、エンジンに燃料を供給する燃料タンクをフロントシートの下方に、モータのエネルギー源であるバッテリを有するIPU(インテリジェントパワーユニット)をラゲッジスペースの床下空間に搭載する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−62780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したハイブリッド車両では、排気ガスが流通する排気系や、燃料タンクと給油口とを接続する燃料供給系、車両の各種電装品を電気的に接続する電装配線等に加えて、モータとIPUとを電気的に接続する高圧線(三相線)を、フロアパネルの下面に沿わせて配策する必要がある。この場合、特にモータとIPUとを接続する高圧線は、断線や破損等を防止するために、可能な限り車幅方向中央部を配策させたいという要請がある。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1においては、上述した高圧線等のレイアウトについて何ら記載されていない。
ここで、センタータンクレイアウトで採用する燃料タンクは、一般的な燃料タンクに比べて比較的高さ方向に低く、車幅方向に長いため、この燃料タンクが車両中央部に配置されることで、フロアパネルの下面における上述した各種配線等の配策スペースが制限される。そして、この状態で高圧線を追加することで、フロアパネルの下面でのレイアウトがより困難になる。
【0007】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、断線や破損等を防止した上で、電動機と電気機器とを接続する配線を効果的にレイアウトできるハイブリッド車両の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、内燃機関(例えば、実施形態におけるエンジン)及び電動機(例えば、実施形態におけるモータ)を有するパワープラントと、車両(例えば、実施形態におけるハイブリッド車両10)の後側に配置され、前記電動機に電力を供給する蓄電装置(例えば、実施形態におけるバッテリモジュール)を有する電動機用電気機器(例えば、実施形態におけるIPU)と、前記電動機及び前記電動機用電気機器を接続する配線(例えば、実施形態における高圧線63)と、を有するハイブリッド車両において、前記内燃機関に供給される燃料を貯留する燃料タンク(例えば、実施形態における燃料タンク54)が前記車両の中央部に配置され、前記配線は、前記車両の幅方向における両側に配置された一対のサイドフレーム(例えば、実施形態におけるサイドフレーム35)の内側で、かつ、前記車両を上方から見て前記燃料タンクと前記配線の少なくとも一部とが重なるように配策されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、前記配線は、前記燃料タンクの上方を跨ぐように配置され、前記燃料タンクの上面の一部には、前記配線が通過する凹部(例えば、実施形態における凹部54a)が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載した発明は、車両(例えば、実施形態におけるハイブリッド車両10)の前側に配置され、内燃機関(例えば、実施形態におけるエンジン)及び電動機(例えば、実施形態におけるモータ)を有するパワープラントと、車両の後側に配置され、前記電動機に電力を供給する蓄電装置(例えば、実施形態におけるバッテリモジュール)を有する電動機用電気機器(例えば、実施形態におけるIPU)と、前記電動機及び前記電動機用電気機器を接続する配線(例えば、実施形態における高圧線63)と、を有するハイブリッド車両において、前記内燃機関に供給される燃料を貯留する燃料タンク(例えば、実施形態における燃料タンク54)が前記車両の中央部に配置され、前記燃料タンクの上面であって、前記車両の幅方向における一端側の肩部には、前記配線が通過する配線通過部例えば、実施形態における凹部54a)が備えられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載した発明は、前記車両の前後方向に沿って配策され、前記内燃機関から排出される排気ガスが流通する排気管(例えば、実施形態における排気管66)を備え、前記配線と前記排気管との間に熱緩衝部(例えば、実施形態における第2遮蔽板82)が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載した発明は、前記排気管の上流側には、コンバータ(例えば、実施形態におけるコンバータ67)が接続され、前記コンバータと前記配線との間には、前記コンバータと前記配線とを、前記前後方向で区画する隔壁(例えば、実施形態における第2遮蔽板82)が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載した発明は、前記配線の下方には、前記配線を下方から覆う接地ガード(例えば、実施形態における接地ガード86)が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載した発明は、前記燃料タンクは前記車両のフロントシート(例えば、実施形態におけるフロントシート13)の下方に配置され、前記車両を制御するための電気配線(例えば、実施形態における電装配線65)を有し、前記電気配線及び前記配線は、前記燃料タンクを間に挟んでそれぞれ配策されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載した発明は、前記車両のリヤシート(例えば、実施形態におけるリヤシート16)と前記燃料タンクとの間には、前記リヤシートに着座した乗員の足を載置可能なステップ部(例えば、実施形態におけるステップ部18)が形成され、前記ステップ部の下面は、前記燃料タンクの下面よりも高く配置され、前記電気配線及び前記配線は、前記燃料タンクの後方において前記ステップ部の下面に沿って前記幅方向の中央部まで配策されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載した発明は、前記車両のリヤシートは、シートバック(例えば、実施形態におけるシートバック15)を前方に折り畳むことで、シートクッション(例えば、実施形態におけるシートクッション14)が下方に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載した発明によれば、センタータンクレイアウトのように車幅方向に長い燃料タンクを採用した場合であっても、狭い配策スペースを効果的に利用してサイドフレームの内側に配線を配策できる。そのため、配線を側突等の影響から保護でき、配線の断線や破損等を防止できる。
【0018】
請求項2に記載した発明によれば、燃料タンクに凹部を形成し、この凹部内に配線を通すことで、フレームやフロアパネルの形状、その他の配線等のレイアウトを変更せずに配線をレイアウトできる。この場合、燃料タンクの上面側は、満タン付近の場合のみしか燃料が貯留されない使用頻度の少ない部位であるため、この部位に凹部を形成した場合であっても、実際に使用するタンク容量にはほとんど影響を与えることがない。そのため、タンク容量の低下を抑制した上で、配線を効果的にレイアウトできる。
さらに、燃料タンクの凹部内に配線を通すことで、配線の周囲が燃料タンクに囲まれることになる。これにより、配線を保護して、配線の断線や破損等を防止できる。
【0019】
請求項3に記載した発明によれば、サイドフレームを有していない車両においても、燃料タンクの配線通過部内に配線を通すことで、配線を車幅方向中央部に配置して、配線を保護した上で、効率的にレイアウトできる。
【0020】
請求項4に記載した発明によれば、排気管の放射熱から配線を保護できる。これにより、配策スペースが制限されている場合であっても、排気管と配線を接近させることが可能となり、レイアウト性をより向上できる。
【0021】
請求項5に記載した発明によれば、コンバータと配線との間を車両の前後方向で区画する隔壁を設けることで、仮に前後方向への衝撃入力時においてコンバータと配線とが接近したとしても、隔壁により配線を保護できる。これにより、前後方向への衝撃入力の影響から配線を保護でき、配線の断線や破損等を確実に防止できる。
【0022】
請求項6に記載した発明によれば、配線を下方からの衝撃(砂利の飛散や路面との接触)から保護できるので、配線の断線や破損等をより確実に防止できる。
【0023】
請求項7に記載した発明によれば、燃料タンクを間に挟んで、電気配線及び配線をそれぞれ引き回すことで、燃料タンク側方の狭い配策スペースに電気配線及び配線を効果的にレイアウトできる。
【0024】
請求項8に記載した発明によれば、燃料タンク側方に引き回した電気配線及び配線をステップ部の下面に沿わせて配策することで、電気配線及び配線を車両の下面から突出させることなくレイアウトできる。
【0025】
請求項9に記載した発明によれば、シートバックの折り畳み時においてシートバックの背面とラゲッジスペースの床面とのフラット化を図り、車室内のスペースを有効活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態におけるハイブリッド車両の概略構成図(側面図)である。
【図2】車体フレーム及びフロアパネルを下方から見た平面図である。
【図3】車体フレーム及びフロアパネルを下方から見た斜視図である。
【図4】図2のX部斜視図である。
【図5】図2のY部斜視図である。
【図6】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図7】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図2のC−C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(ハイブリッド車両)
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、ハイブリッド車両の概略構成図(側面図)である。なお、図中において、矢印FRは車両の前後方向における前方を示している。
図1に示すように、本実施形態のハイブリッド車両10(以下、車両10という)は、車体の後部開口部を開閉可能とするテールゲート10aを備えたハッチバック式の車両であり、車体フレーム31(図2参照)の前側にパワープラントである図示しないエンジン(内燃機関)及び三相のモータ(電動機)が搭載されている。また、車体フレーム31上には、フロアパネル33が設けられている。
【0028】
図2は車体フレーム及びフロアパネルを下方から見た平面図であり、図3は下方から見た斜視図である。また、図4は図2のX部斜視図であり、図5は図2のY部斜視図である。
図2〜図5に示すように、車体フレーム31は、車両10の車幅方向(図2中左右方向)外側において前後方向に沿って延在する一対のサイドシル34(サイドシルインナ)を備え、各サイドシル34間には前後方向に沿って延在する一対のサイドフレーム35が設けられている。サイドフレーム35は、サイドシル34の前端部よりも前方に延び、サイドシル34の前端部とサイドフレーム35の中間部分とがアウトリガー36を介して接合されている。また、サイドフレーム35の中間部分及び後端部には、各サイドフレーム35間を掛け渡すフロントクロスメンバ41及びミドルクロスメンバ42が接合されている。ミドルクロスメンバ42は、サイドフレーム35よりも車幅方向外側に延在して、サイドシル34の中間部分にも接合されている。
【0029】
サイドシル34の後端部には、前後方向に沿って延在する一対のリヤサイドフレーム43が接合されている。リヤサイドフレーム43は、後方に向けて互いの距離が接近するように延在しており、その前側同士を掛け渡すようにリヤクロスメンバ44が接合されている。
【0030】
車体フレーム31上には、車体フレーム31の略全体を覆うようにフロアパネル33が設けられている。フロアパネル33は、例えば鋼板をプレス成型して形成されたものであり、曲げ剛性を高めるために適所にビードが形成されている。具体的に、フロアパネル33は、前後方向においてサイドフレーム35の中間部分からリヤクロスメンバ44に至るまで形成されたフロントフロア51と、リヤクロスメンバ44からリヤサイドフレーム43の後端部までを覆うリヤフロア52とを有している。
【0031】
フロアパネル33は、車体の前後方向についての曲げ剛性を確保するためのフロアトンネル32が一体成型された部材である。フロアトンネル32は、フロアパネル33の車幅方向中央部において、断面形状が台形をなして前後方向に延在している。
図1に示すように、フロントフロア51上における中央部には、シートクッション11及びシートバック12を有するフロントシート13が設置されている。そして、フロントフロア51におけるフロントシート13の前方には、フロントシート13に着座した乗員の足を載置可能なステップ部17が形成されている。また、図1,図2に示すように、フロントフロア51におけるフロントシート13の下方、具体的にはサイドフレーム35、フロントクロスメンバ41、ミドルクロスメンバ42、及びフロントフロア51で囲まれた領域は、燃料タンク収納部53を構成している。そして、この燃料タンク収納部53内には、エンジンに供給される燃料を貯留する燃料タンク54が収納されている。すなわち、本実施形態の車両10は、燃料タンク54が車両10の前後方向及び幅方向中央部に配置された、いわゆるセンタータンクレイアウトを採用している。
【0032】
また、図1,図2に示すように、フロントフロア51上における後部には、シートクッション14及びシートバック15を有するリヤシート16が設置されている。そして、フロントフロア51におけるリヤシート16の下方には、フロアトンネル32を間に挟んで、一対の凹部55が形成されている。凹部55の前側は、前方にかけて斜め上方に傾斜しており、リヤシート16に着座した乗員の足を載置可能なステップ部18を構成している。
【0033】
なお、リヤシート16は、シートバック15がシートクッション14に対して前傾可能とされるとともに、シートバック15を前方に二つ折りに倒した状態で全体を下方、かつ斜め前方に移動させる、いわゆるダイブダウン収納が可能となっている。すなわち、リヤシート16は、シートクッション14に対してシートバック15を起立させた着座状態(図1実線D1)と、シートバック15を折り畳んだ状態で、リヤシート16を凹部55の内側に落とし込んだダイブダウン状態(図1中破線D2)とに移動可能に構成されている。なお、ダイブダウン状態D2においては、シートバック15の背面と、ラゲッジスペース19(リヤシート16の後方空間)の底壁を構成するフロアボード20と、がフラットに配置される。
ここで、本実施形態の車両10は、上述したようにセンタータンクレイアウトを採用しているため、フロアパネル33の低床化を図り、リヤシート16の下方空間を有効活用できる。そのため、リヤシート16のシートバック15の背面とラゲッジスペース19のフロアボード20とのフラット化を確実に図ることができる。
【0034】
リヤフロア52は、フロントフロア51における凹部55の後端部から段差56をもって立ち上がり、リヤサイドフレーム43の後端部まで延在している。リヤフロア52の中央部には、下方に向けて凹み形成されたIPU収納部57が形成されており、このIPU収納部57内にモータに電力を供給する図示しないIPU(電動機用電気機器)が収納される。なお、IPUは、バッテリモジュール(蓄電装置)や、インバータユニット、DC−DCコンバータユニット(いずれも不図示)等の各電気機器がケーシング内にユニット化されたものである。インバータユニットは、直流電源のバッテリからモータに電力を供給するとき、直流から交流に変換する。また、車両10の減速時等において、エンジンの出力または車両10の運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリに蓄電する際、発電機として機能するモータが発生する回生電力を、交流から直流に変換してバッテリに蓄電する。また、DC−DCコンバータユニットは、インバータユニットによって変換された高圧の直流電圧を降圧させる。
【0035】
図6は図2のA−A線に沿う断面図であり、図7は図2のB−B線に沿う断面図であり、図8は図2のC−C線に沿う断面図である。
ここで、図2〜図8に示すように、本実施形態の車両10では、燃料タンク54内に燃料を供給するための燃料供給系61(図2参照)と、エンジンの排気ガスを車両10後部に導く排気系62と、モータとIPUとを電気的に接続する高圧線63と、車両10のブレーキを操作するブレーキ系64と、車両10の各電装品(不図示)に電気的に接続された電装配線65と、がフロアパネル33の下面に沿うように配策されている。
【0036】
排気系62は、エンジンの各気筒から排出される排気ガスを集合させるエキゾーストマニホールド(不図示)と、エキゾーストマニホールドに接続された排気管66とを備えている。また、排気管66には、排気浄化を行なう周知のコンバータ67が接続されており、コンバータ67の下流にはサブマフラ68が配置されている。サブマフラ68の下流には、メインマフラ69が接続されており、サブマフラ68及びメインマフラ69により排気音は低減される。
【0037】
具体的に、コンバータ67は、燃料タンク54よりも前方においてフロアトンネル32の内側に収容された状態で配置され、コンバータ67の後部から排気管66が延在している。排気管66は、フロアパネル33の下面に沿って車両後方に向けて延在し、フロントクロスメンバ41を跨いだ後、燃料タンク54(燃料タンク収納部53)の前側で車幅方向外側に向けて屈曲し、フロントクロスメンバ41と燃料タンク54との間を車幅方向外側に向けて延在している。さらに、排気管66は、サイドフレーム35を車幅方向に跨いだ後、後方に向けて屈曲されている。そして、排気管66は、サイドフレーム35とサイドシル34との間でサブマフラ68に接続された後、車両後方に向けて延在している。この際、フロアパネル33の下面とサイドフレーム35とサイドシル34との間の空間は、サブマフラ68が収容されるサブマフラ収容部71を構成している。
さらに、排気管66における下流側は、リヤサイドフレーム43の内側に沿って延在しており、車両10の後端部において、メインマフラ69に接続されている。メインマフラ69からは、排気系62を流通した排気ガスを大気に放出する排気口70が車両10の後方に向けて開口している。
【0038】
燃料供給系61は、エンジンに供給される燃料が流通する図示しない燃料供給パイプ、車両10の後側部に設けた給油口78と燃料タンク54とを接続するフィードパイプ72(図2参照)、燃料タンク54とフィードパイプ72の上流端とを接続し、燃料タンク54内のエア抜き用のブリーザパイプ73とを有している。フィードパイプ72及びブリーザパイプ73は、燃料タンク54の上面に接続され、燃料タンク54の後面側に引き出されている。そして、フィードパイプ72及びブリーザパイプ73は、ミドルクロスメンバ42の上方を跨いで車両10後方に延在しており、フロアトンネル32の内側を通ってIPU収納部57の前側で車幅方向外側(排気系62とは反対側)に向けて屈曲されている。
【0039】
電装配線65は、フロアパネル33の下面に沿って、車両20の前後方向全域に亘って配策されている。具体的に、電装配線65は、フロアトンネル32の内側を車両10後方に向けて延在し、燃料タンク54(燃料タンク収納部53)の前側で車幅方向外側に向けて屈曲されている。この際、電装配線65は、燃料タンク54の前側の領域で排気管66及び高圧線63とは反対側に振り分けられている。その後、電装配線65は、燃料タンク収納部53内において燃料タンク54の車幅方向一端側を回り込んだ後、燃料タンク54の後方でステップ部18の下面に沿って車幅方向中央部まで導かれている。車幅方向中央部まで導かれた電装配線65は、再びフロアトンネル32の内側を後方に向けて延在している。
【0040】
なお、ステップ部18の下面は、ミドルクロスメンバ42の下面及びフロントフロア51の凹部55の下面よりも上方に配置されており、電装配線65はミドルクロスメンバ42の下面及び凹部55の下面よりも下側に突出することはない。すなわち、ミドルクロスメンバ42とフロントフロア51の凹部55との間は、電装配線65や後述するブレーキ系64、高圧線63を車幅方向中央部まで導く案内路25を構成している。
【0041】
また、ブレーキ系64は、図示しない各前輪及び後輪のブレーキに油圧を作用させるための複数のブレーキワイヤ75を備えている。各ブレーキワイヤ75は、電装配線65に並走して、フロアトンネル32の内側及び燃料タンク54の車幅方向一端側を通った後、前輪及び後輪のブレーキにそれぞれ導かれている。なお、フロアパネル33には、電装配線65とブレーキワイヤ75とをまとめて支持する複数の結束部材76が、電装配線65とブレーキワイヤ75との延在方向に沿って間隔を空けて設けられている。
【0042】
高圧線63は、車両10前側に搭載されたモータと、車両10後側のIPU収納部57内に搭載されたIPUとを電気的に接続するものであり、モータのU相、V相、W相に対応した三相線である。高圧線63は、モータの端子部から引き出されてフロアトンネル32の内側を車両10後方に向かって延在し、燃料タンク54(燃料タンク収納部53)の前側で車幅方向外側に向けて屈曲されている。この際、高圧線63は、燃料タンク54の前側の領域で電装配線65及びブレーキワイヤ75とは反対側に振り分けられている。その後、高圧線63は、燃料タンク収納部53内において燃料タンク54の車幅方向他端側を回り込んで、ミドルクロスメンバ42を跨いだ後、車幅方向内側に屈曲され、上述した案内路25を通って車幅方向中央部まで導かれている。車幅方向中央部まで導かれた高圧線63は、燃料タンク54の後方で再びフロアトンネル32の内側を後方に向けて延在している。そして、高圧線63はIPU収納部57内に引き込まれた後、IPU収納部57内でIPUに接続されている。なお、フロアパネル33には、高圧線63を支持する支持部材77が、高圧線63の延在方向に沿って間隔を空けて設けられている。
【0043】
このように、燃料タンク54に対して前側のフロアトンネル32内には、排気系62(コンバータ67)、高圧線63、ブレーキワイヤ75、及び電装配線65がまとめて配策される。一方、燃料タンク54に対して後側のフロアトンネル32内には、燃料供給系61(フィードパイプ72及びブリーザパイプ73)、高圧線63、ブレーキワイヤ75、及び電装配線65がまとめて配策されている。また、燃料タンク54を間に挟んで車幅方向一端側には、電装配線65及びブレーキワイヤ75が配策される一方、車幅方向他端側には、排気系62及び高圧線63が配策されており、ミドルクロスメンバ42を跨いだ後、それぞれ案内路25を通って車幅方向中央部に集合されている。
【0044】
ここで、燃料タンク54に対して前側のフロアトンネル32内には、高圧線63、ブレーキワイヤ75及び電装配線65と、コンバータ67との間を遮蔽する第1遮蔽板(熱緩衝部)81が設けられている。この第1遮蔽板81は、コンバータ67からの放射熱を遮るものであり、フロアトンネル32におけるコンバータ67側の外周縁からフロアトンネル32内面に沿って設けられ、高圧線63、ブレーキワイヤ75及び電装配線65と、コンバータ67との間を下方に向けて延在している。すなわち、第1遮蔽板81は、コンバータ67の上方及び両側方を覆うように設けられている。
【0045】
また、燃料タンク54の前側において、高圧線63及び排気管66は燃料タンク54の前面に沿って互いに車幅方向外側に沿って並走するように延在しており、これら高圧線63と排気管66との間には、両者間を遮る第2遮蔽板(熱緩衝部、隔壁)82が配置されている。この第2遮蔽板82は、フロントフロア51の下面から後方に向かうにつれ斜め下方に延在するとともに、車幅方向において中央部からサイドフレーム35に至るまで形成されている。そして、第2遮蔽板82の下面に沿って排気管66が、第2遮蔽板82の上面に沿って高圧線63が配策されている。
【0046】
高圧線63は、燃料タンク収納部53における車幅方向他端側の上部空間85を前後方向に沿って配策されている。この場合、上述した燃料タンク54は、下面が車体フレーム31の下面と略面一に配置された扁平形状のものであり、その車幅方向他端側における肩部は前後方向に沿って凹み形成された凹部54aが形成されている。これにより、凹部54a、サイドフレーム35の内側、及びフロントフロア51の下面で囲まれた領域(凹部54aと燃料タンク収納部53の内面との間)には、上述した上部空間85が形成され、この上部空間85内に高圧線63が配策されている。そのため、高圧線63と燃料タンク54とは、燃料タンク54の車幅方向他端側で上下方向から見て重なるように配置されている。
【0047】
また、高圧線63は、上部空間85を通過した後、後方に向かうにつれ斜め下方に傾斜し、ミドルクロスメンバ42を下方から跨いでいる。そのため、高圧線63とミドルクロスメンバ42とが交差している交差部位は、高圧線63の延在方向において最下点に位置する部位である。そこで、フロントフロア51には、交差部位の高圧線63を下方から覆うように接地ガード86が設けられている。接地ガード86は、交差部位及びその周辺を覆う凹状の部材であり、その外周部分がフロントフロア51、サイドフレーム35及びミドルクロスメンバ42の下面に設けられている。
【0048】
このように、本実施形態では、燃料タンク54の車幅方向他端側で上下方向から見て燃料タンク54に重なるように高圧線63を配置する構成とした。
この構成によれば、センタータンクレイアウトのように車幅方向に長い燃料タンク54を採用した場合であっても、狭い配策スペースを効果的に利用してサイドフレーム35の内側に高圧線63を配策できる。そのため、高圧線63を側突等の影響から保護でき、高圧線63の断線や破損等を防止できる。
【0049】
また、燃料タンク54の肩部に凹部54aを形成し、この凹部54aと燃料タンク収納部53の内面との間に高圧線63を通すことで、フロアパネル33の形状やその他の配線等のレイアウトを変更せずに高圧線63をレイアウトできる。この場合、燃料タンク54の肩部は、満タン付近の場合のみしか燃料が貯留されない使用頻度の少ない部位であるため、この部位に凹部54aを形成した場合であっても、実際に使用するタンク容量にはほとんど影響を与えることがない。そのため、タンク容量の低下を抑制した上で、高圧線63を効果的にレイアウトできる。
さらに、燃料タンク54の凹部54aと燃料タンク収納部53の内面との間に高圧線63を通すことで、高圧線63の周囲が燃料タンク54やサイドフレーム35等に囲まれることになる。これにより、高圧線63を保護して、高圧線63の断線や破損等を防止できる。
【0050】
また、排気系62と高圧線63とが並走して延在する部分に両者間を遮る遮蔽板81,82を配置することで、排気系62の放射熱から高圧線63を保護できる。これにより、配策スペースが制限されている場合であっても、排気系62とその他の配線やパイプを接近させた状態で配策させることが可能となり、レイアウト性をより向上できる。
また、排気管66と高圧線63とを第2遮蔽板82により車両前後方向で区画することで、仮に前突時等においてコンバータ67が後方に移動したとしても、第2遮蔽板82により高圧線63を保護できる。これにより、前突等の影響から高圧線63を保護でき、高圧線63の断線や破損等を確実に防止できる。
【0051】
さらに、高圧線63におけるミドルクロスメンバ42との交差部分において、高圧線63を下方から覆うように接地ガード86を設けることで、高圧線63を下方からの衝撃(砂利の飛散や路面との接触)から保護できる。これにより、例えば高圧線63が車体フレーム31より下方に突出している場合であっても、高圧線63の断線や破損等をより確実に防止できる。
【0052】
また、電装配線65や、ブレーキワイヤ75、高圧線63が燃料タンク54を回り込む際に、電装配線65及びブレーキワイヤ75と、高圧線63とを燃料タンク54の幅方向両側に振り分けて回り込ませることで、燃料タンク54と燃料タンク収納部53との間の空間に電装配線65や、ブレーキワイヤ75、高圧線63を効果的にレイアウトできる。
さらに、サイドフレーム35の後方において、ステップ部18とミドルクロスメンバ42との間の案内路25に、電装配線65、ブレーキワイヤ75、及び高圧線63を導くことで、電装配線65、ブレーキワイヤ75、及び高圧線63を車両10の下面から突出させることなくレイアウトできる。
【0053】
ところで、本実施形態の車両1では、燃料タンク54をフロントシート13の下方に配置することで、低床化を図ることができるため、リヤシート16をダイブダウン収納可能に構成できる。そのため、シートバック15の背面とラゲッジスペース19のフロアボード20とのフラット化を図り、車室内のスペースを有効活用できる。
一方で、車両1の低床化を図ることで、車高が低くなり、フロアパネル33下の配策スペースがさらに制限されることになる。これに対して、上述した実施形態の構成を採用することで、低床化の車両1であっても、断線や破損等を防止した上で、モータとIPUとを接続する高圧線63を効果的にレイアウトできる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述したレイアウトは、単に一例であり、適宜設計変更が可能である。
また上述した実施形態では、前後方向に沿って延在するサイドフレーム35を有する車両10に本発明を適用した場合について説明したが、サイドフレーム35を有していない車両についても本発明を適用することが可能である。すなわち、サイドフレーム35を有していない車両においても、燃料タンク54の凹部(配線通過部)54a内に高圧線63を通すような構成を採用すれば、高圧線63を車幅方向中央部に配置して、高圧線63を保護した上で、効率的にレイアウトできる。
【符号の説明】
【0055】
10…ハイブリッド車両(車両) 13…フロントシート 14…シートクッション 15…シートバック 16…リヤシート 18…ステップ部 54…燃料タンク 54a…凹部 63…高圧線(配線) 65…電装配線(電気配線) 66…排気管 82…第2遮蔽板(熱緩衝部、隔壁) 67…コンバータ 86…接地ガード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及び電動機を有するパワープラントと、
車両の後側に配置され、前記電動機に電力を供給する蓄電装置を有する電動機用電気機器と、
前記電動機及び前記電動機用電気機器を接続する配線と、を有するハイブリッド車両において、
前記内燃機関に供給される燃料を貯留する燃料タンクが前記車両の中央部に配置され、
前記配線は、前記車両の幅方向における両側に配置された一対のサイドフレームの内側で、かつ、前記車両を上方から見て前記燃料タンクと前記配線の少なくとも一部とが重なるように配策されていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記配線は、前記燃料タンクの上方を跨ぐように配置され、
前記燃料タンクの上面の一部には、前記配線が通過する凹部が形成されていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
車両の前側に配置され、内燃機関及び電動機を有するパワープラントと、
前記車両の後側に配置され、前記電動機に電力を供給する蓄電装置を有する電動機用電気機器と、
前記電動機及び前記電動機用電気機器を接続する配線と、を有するハイブリッド車両において、
前記内燃機関に供給される燃料を貯留する燃料タンクが前記車両の中央部に配置され、
前記燃料タンクの上面であって、前記車両の幅方向における一端側の肩部には、前記配線が通過する配線通過部が備えられていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
前記車両の前後方向に沿って配策され、前記内燃機関から排出される排気ガスが流通する排気管を備え、
前記配線と前記排気管との間に熱緩衝部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記排気管の上流側には、コンバータが接続され、
前記コンバータと前記配線との間には、前記コンバータと前記配線とを、前記前後方向で区画する隔壁が設けられていることを特徴とする請求項4記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記配線の下方には、前記配線を下方から覆う接地ガードが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項7】
前記燃料タンクは前記車両のフロントシートの下方に配置され、
前記車両を制御するための電気配線を有し、
前記電気配線及び前記配線は、前記燃料タンクを間に挟んでそれぞれ配策されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項8】
前記車両のリヤシートと前記燃料タンクとの間には、前記リヤシートに着座した乗員の足を載置可能なステップ部が形成され、
前記ステップ部の下面は、前記燃料タンクの下面よりも高く配置され、
前記電気配線及び前記配線は、前記燃料タンクの後方において前記ステップ部の下面に沿って前記幅方向の中央部まで配策されていることを特徴とする請求項7記載のハイブリッド車両。
【請求項9】
前記車両のリヤシートは、シートバックを前方に折り畳むことで、シートクッションが下方に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−40893(P2012−40893A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181123(P2010−181123)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】