説明

ハロゲンランプ、ランプ取付装置、加熱装置

【課題】減圧封止部を直接クランパーで支持することが可能なハロゲンランプを実現する。
【解決手段】ハロゲンランプ11の減圧により封止された封止部151,152の外周にV溝181,182を設け、この部分に位置決めと取り付けを兼ねることのできるクランパーで支持可能とする。これにより、封止部151,152を支持するだけの簡単な構造で確実にハロゲンランプ11の取り付けの実現が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機やプリンタなどのトナー定着などに用いられるハロゲンランプおよびこのハロゲンランプを取り付ける取付装置、この取付装置にハロゲンランプが取り付けられた加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機の定着用器に使用されるハロゲンランプには、従来ピンチシール方式で製造された封止部が用いられており、このピンチシール封止は、構造上、肉厚が薄くなり強度が弱くなるため、封止部にセラミックス製のベースを取り付け、セラミックベース部を金属製のクランパーにて支持する取付方法が用いられている。(例えば、特許文献1)
また、最近ではピンチシールの封止方法に代え、減圧封止により封止部を用いたハロゲンランプも考えられている。(例えば、特許文献2)
【特許文献1】特開2001−210454公報
【特許文献2】特開平9−320547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、ピンチシール方法により形成された封止部は、封止部の肉厚が薄くなり封止部強度が弱くなってしまうことから、封止部に一端セラミック製のベースを取り付け、ベースの円筒部をクランパーで支持することでランプを支持している。このため、ベースそのものが必要であったり、ベースを取り付ける作業が必要であったりするのに加え、ベースそのもののスペースが必要であることから省スペース化には問題があった。
【0004】
また、特許文献2の技術は、減圧封止によるハロゲンランプの製造方法についてだけで、ランプの取り付けについての説明はないが、ランプ両端のセラミックベースの円筒部分を、円筒形状に切り抜いたステンレス製のクランパーで支持するものと考えられ、特許文献1と同様に問題があった。
【0005】
この発明の目的は、減圧封止により封止された封止部を有するハロゲンランプ、このランプを取り付ける取付装置、この取付装置に取り付けられた加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明の請求項1のハロゲンランプでは、石英バルブ内に挿入したタングステンコイルと、該コイル両端に一端をそれぞれ溶接した一対のモリブデン箔と、該モリブデン箔の他端に電力供給用の導入線をそれぞれ溶接し、前記モリブデン箔の上部の前記バルブを減圧封止により封止した封止部と、を具備するハロゲンランプにおいて、両端の前記封止部の少なくとも一方の外周に取り付けるための溝を形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2のランプ取付装置では、請求項1の溝にクランパーを取着し、該クランパーを被取付部に取り付けたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3のランプ取付装置では、石英バルブ内に挿入したタングステンコイルと、該コイル両端に一端をそれぞれ溶接した一対のモリブデン箔と、該モリブデン箔の他端に電力供給用の導入線をそれぞれ溶接し、前記モリブデン箔の上部の前記バルブを減圧封止により封止した封止部と、を具備するハロゲンランプにおいて、減圧封止により封止された前記封止部を介して前記バルブを弾性のクランパーで附勢し、該クランパーを被取付部に取り付けたことを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項4のランプ取付装置では、石英バルブ内に挿入したタングステンコイルと、該コイル両端に一端をそれぞれ溶接した一対のモリブデン箔と、該モリブデン箔の他端に電力供給用の導入線をそれぞれ溶接し、前記モリブデン箔の上部の前記バルブを減圧封止により封止した封止部と、を具備するハロゲンランプにおいて、減圧封止により封止された前記封止部は、クランパーを用いて被被取付部に取り付ける場合に前記クランパーにより締め付け作用により支持したことを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項5の加熱装置では、上下に配置され少なくとも一方は加熱される第1および第2のローラと、前記第1または第2のローラ内に配置された請求項2または3記載のランプ取付装置と、予めトナーが転写された複写紙が前記第1および第2のローラとの間を移動させて前記トナーを定着させる手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、封止部が減圧により封止されたハロゲンランプを、寸法精度良く、熱歪みによる応力の発生を抑えた取り付けが実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1、図2は、この発明のハロゲンランプの一実施形態について説明するための、図1は構成図、図2は図1要部を拡大して説明するための構成図である。
図1、図2において、11は管型白熱電球の一種であるハロゲンランプである。ハロゲンランプ11は、例えば定着用等のヒータとして多用され、放射透過性を有する石英ガラス製等のバルブ12を有する。バルブ12には、その内部に耐火性金属の電気抵抗線の一例であるタングステンフィラメント13が熱源として同心状に収容される。このフィラメント13は、バルブ12内で軸方向に複数配設されたアンカー14により、バルブ12に対する同心状態が保持される。また、バルブ12内には、アルゴン等の不活性ガスとともに、所容量のハロゲンガスを封入し、その軸方向に減圧封止により封止して封止部151,152を形成する。封止部151,152内にはバルブ12と膨張係数が近似した導電性の例えばモリブデン(Mo)で形成された矩形箔状の金属箔161,162をそれぞれ埋設している。
【0014】
減圧による封止は、封止部以外で一旦ランプを封止し、封止部を含むランプ内部を減圧にした状態で、モリブデン箔を気密封止させるものである。この封止方法は、石英ガラスの肉厚がピンチシールによる封止方法のように偏ることがないことから封止部強度が向上する。
【0015】
金属箔161の一端にはフィラメント13の一端131が、金属箔162の一端にはフィラメント13の他端132がそれぞれ接続される。金属箔161の他端は電力を供給するための導入線171に、金属箔162の他端は電力を供給するための導入線172にそれぞれ接続する。
【0016】
封止部151,152の外周にはハロゲンランプ11を取り付けるためのV溝181,182をそれぞれ形成する。V溝181,182は、封止部151,152を形成するときに合わせて形成する。
【0017】
なお、V溝181,182は両側の封止部151,152に形成したが、何れか一方でも構わない。
【0018】
この実施形態では、予めハロゲンランプ11の封止部151,152に一体的にそれぞれ取り付けるためのV溝181,182が形成されていることから、ハロゲンランプ11の取り付けが簡単なものとなる。
【0019】
図3〜図8は、この発明のランプ取付装置の一実施形態について説明するためのもので、図3は上面図、図4は図3の一部を拡大して示す上面図、図5は図3の側面図、図6は図5の一部を拡大して示す上面図、図7は図3要部の拡大斜視図、図8は図3の左側から見た正面図である。
【0020】
この実施形態は、図3〜図6に示すように、上記したハロゲンランプ11の封止部151,152に形成されたV溝181,182に、弾性を有する例えばステンレス製のクランパー31,32を用いて例えばシャーシ33(図5参照)に形成される被取付部34,35に取り付けたものである。
【0021】
クランパー31,32は、図7に示すように、封止部151,152に形成されたV溝181,182に係合される係止部71と被取付部34,35に取り付けられる取付部721,722から構成される。クランパー31,32の係止部71にそれぞれ封止部151,152のV溝181,182に係合させた状態で、取付部721,722をF1,F2方向に付勢させると、係止部71はF3,F4方向に付勢されてV溝181,182が確実に支持される。図4に示すように、取付部721,722が矢印方向に付勢される状態を被取付部34,35で保持することで、クランパー31,32を支持している。
【0022】
この実施形態によれば、減圧封止部を直接クランパーで支持することにより定着用のヒートローラの大幅な寸法短縮が可能となり、延いては定着ローラの大幅な小型化を実現することができる。
【0023】
ところで、封止部151,152に形成されるV溝181,182は、両方に設ける必要はなく、少なくとも何れか一方に形成されたV溝に対し、クランパーを係合させればよい。
【0024】
この場合、V溝が形成されない封止部側は、封止部の所望の位置に例えばクランパーを取り付ければよい。両方にV溝181,182を形成した場合と同様に、簡単な作業工程により確実な位置づけされた取り付けが実現できる。また、V溝が形成されない封止部側は、熱膨張によるクランパーとの間の応力が発生しないことから、バルブの破壊を防止することができる。
【0025】
クランパー31,32の係止部71は、取付部941,942をF1,F2方向に付勢させることにより、F3,F4方向に付勢させハロゲンランプ11を取り付けているとしたが、予め、係止部71を小さくしておき、図7のF3,F4とは逆方向に広げながらV溝に係合させても構わない。
【0026】
ところで、図3〜図6で説明したランプ取付装置の実施形態では、V溝を形成したが、クランパーをF1,F2方向に付勢させた状態で被取付部に取り付ける場合に、クランパーの係止部71がF3,F4方向に付勢されることから、この付勢力を利用すれば必ずしもV溝がある必要はない。
【0027】
この場合でも簡単な作業工程により確実な位置づけされた取り付けが実現できるばかりか、熱膨張によるクランパーとの間の応力が発生しないことから、バルブの破壊を防止することができる。
【0028】
図9〜図14は、この発明のランプ取付装置の他の実施形態について説明するためのもので、図9は上面図、図10は図9の一部を拡大して示す上面図、図11は図9の側面図、図12は図11の一部を拡大して示す上面図、図13は図9要部の拡大斜視図、図14は図9の左側から見た正面図である。なお、図3〜図8と同一の構成部分には同一の符号を付し、ここでは異なる部分について説明する。
【0029】
この実施形態は、図9〜図14に示すように、上記の実施形態で形成したV溝181,182を無くし、弾性を有する例えばステンレス製のクランパー91,92を用い、シャーシ33(図11参照)等に形成された被取付部34,35に取り付けたものである。
【0030】
クランパー91,92は、図13に示すように、バルブ12の長手方向の両側を掛合させる係止部93と被取付部34,35に取り付けられる取付部941,942から構成される。クランパー91,92の係止部93を封止部151,152とバルブ12の境121,122にそれぞれ図中Fl,Fr方向に付勢させた状態で、取付部941,942をF1,F2方向に付勢させると、係止部93はF3,F4方向に付勢されてハロゲンランプ11が確実に支持される。図10に示すように、取付部941,942が矢印方向に付勢される状態を、被取付部34,35でクランパー31,32を保持することより、クランパー31,32を取り付けている。
【0031】
このように、簡単な構成と作業工程により、ハロゲンランプ11は、確実に位置づけされた状態で取り付けできる。また、クランパー31,32は、ハロゲンランプ11の封止部151,152の端部より内側に形成でき、より省スペースにすることにも寄与している。
【0032】
図15は、ハロゲンランプ11が取付けられた図3〜図8で説明のランプ取付装置100を用いて複写機等のトナーを定着させるこの発明の加熱装置の一実施形態について説明するための概略的な構成図である。
【0033】
図中201,202は上下に対向配置された長尺の加熱ローラで、これら加熱ローラ201,202はアルミニウムや鉄製の管状体それぞれの表面に、シリコンゴムやテフロン(登録商標)などの被覆材203,204で被覆されている。
【0034】
また、加熱ローラ201,202のうちのほぼ中心軸上には、ハロゲンランプ11で構成されるランプ取付装置100が図示しない支持部材を介して配設されており、図示しない電源部に接続して通電されると、ハロゲンランプ11のフィラメントがそれぞれ発熱して加熱ローラ201,202がヒートアップ(昇温)する。
【0035】
図示しない転写ドラムなどからトナーTが所定分布状態に転写された複写紙Pを矢印方向に回転するヒートアップされた加熱ローラ201,202間に送り込ませることで、複写紙Pおよび前の工程で塗布されたトナーT1が上下から加熱され、加熱されたトナーT2が溶融後複写紙P上に定着し、所定の文字や図柄などとして描かれる。
【0036】
ハロゲンランプを定着用として用いたときは、ヒートローラの温度分布を均一に保つために、配熱分布がヒートローラに対して正しい位置に配置される必要がある。この実施形態の場合、ハロゲンヒータの封止部がクランパーにより所望の配熱分布が得られる位置決めを実現することができる。
【0037】
ランプ取付装置100に取り付けるハロゲンランプ11の数は、1灯(本)に限らず、2灯以上の複数灯であってもよい。また、加熱ローラ81,82はいずれも加熱ローラである必要はなく、一方は加圧ローラであってもよい。
【0038】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、V溝が形成されない側は、導入線に取り付け金具を溶接し金具を被取付部に取り付ければよい。さらに、クランパーには1本のハロゲンランプの封止部を取り付けるだけでなく、形状を変えることにより2本以上も取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明のハロゲンランプの一実施形態について説明するための構成図。
【図2】図1の要部を拡大して説明するための構成図。
【図3】この発明のランプ取付装置の一実施形態について説明するための上面図。
【図4】図3の一部を拡大して説明するための構成図。
【図5】図3の側面図。
【図6】図5の一部を拡大し一部を切り欠いて説明するための構成図。
【図7】図3の要部を拡大して説明するための斜視図。
【図8】図6の左側から見た状態について説明するための正面図。
【図9】この発明のランプ取付装置の他の実施形態について説明するための上面図。
【図10】図9の一部を拡大して説明するための構成図。
【図11】図9の側面図。
【図12】図11の一部を拡大し一部を切り欠いて説明するための構成図。
【図13】図9の要部を拡大して説明するための斜視図。
【図14】図12の左側から見た状態について説明するため正面図。
【図15】この発明のトナー定着装置の一実施形態について説明するための概略的な構成図。
【符号の説明】
【0040】
11 ハロゲンランプ
12 バルブ
13 フィラメント
14 アンカー
151,152 封止部
161,162 金属箔
171,172 導入線
181,182 V溝
31,32,91,92 クランパー
33 シャーシ
34,35 被取付部
71,93 係止部
721,722,941,942 取付部
100 ランプ取付装置
200 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英バルブ内に挿入したタングステンコイルと、該コイル両端に一端をそれぞれ溶接した一対のモリブデン箔と、該モリブデン箔の他端に電力供給用の導入線をそれぞれ溶接し、前記モリブデン箔の上部の前記バルブを減圧封止により封止した封止部と、を具備するハロゲンランプにおいて、
両端の前記封止部の少なくとも一方の外周に取り付けるための溝を形成したことを特徴とするハロゲンランプ。
【請求項2】
前記溝にクランパーを取着し、該クランパーを被取付部に取り付けたことを特徴とする前記請求項1のランプ取付装置。
【請求項3】
石英バルブ内に挿入したタングステンコイルと、該コイル両端に一端をそれぞれ溶接した一対のモリブデン箔と、該モリブデン箔の他端に電力供給用の導入線をそれぞれ溶接し、前記モリブデン箔の上部の前記バルブを減圧封止により封止した封止部と、を具備するハロゲンランプにおいて、
減圧封止により封止された前記封止部を介して前記バルブを弾性のクランパーで附勢し、該クランパーを被取付部に取り付けたことを特徴とするランプ取付装置。
【請求項4】
石英バルブ内に挿入したタングステンコイルと、該コイル両端に一端をそれぞれ溶接した一対のモリブデン箔と、該モリブデン箔の他端に電力供給用の導入線をそれぞれ溶接し、前記モリブデン箔の上部の前記バルブを減圧封止により封止した封止部と、を具備するハロゲンランプにおいて、
減圧封止により封止された前記封止部は、クランパーを用いて被被取付部に取り付ける場合に前記クランパーにより締め付け作用により支持したことを特徴とするランプ取付装置。
【請求項5】
上下に配置され少なくとも一方は加熱される第1および第2のローラと、
前記第1または第2のローラ内に配置された請求項2または3記載のランプ取付装置と、
予めトナーが転写された複写紙が前記第1および第2のローラとの間を移動させて前記トナーを定着させる手段とを具備したことを特徴とする加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2007−173081(P2007−173081A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369971(P2005−369971)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】