説明

ハロゲン化アミドエステルおよびそれによる内部電子供与体

開示されるのは、プロ触媒組成物における内部電子供与体として適切であるハロゲン化アミドエステルである。本プロ触媒組成物を含有するチーグラー−ナッタ触媒組成物は、改良された触媒活性および/または改良された触媒選択性を呈し、ならびに広い分子量分布を有するプロピレン系オレフィンを生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハロゲン化アミドエステルならびに、それらを含有するプロ触媒組成物および触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系ポリマーへの世界的需要は、これらのポリマー向けの用途がますます多岐にわたり、かつより高度化しているため、増大し続けている。広い分子量分布(MWD)を有するオレフィン系ポリマーが、例えば、熱成形;パイプ−、発泡−、ブロー成形;およびフィルムにおいてますます拡大する用途を見出している。広いMWDを有するオレフィン系ポリマー、特にプロピレン系ポリマーの製造向けのチーグラー−ナッタ触媒組成物が知られている。チーグラー−ナッタ触媒組成物は、典型的に、塩化マグネシウムまたはシリカなどの金属もしくはメタロイド化合物上に担持された遷移金属ハロゲン化物(すなわちチタン、クロム、バナジウム)から構成されるプロ触媒を含み、このプロ触媒は、有機アルミニウム化合物などの助触媒と錯体を形成している。しかし、チーグラー−ナッタ触媒によって生成される広いMWDを有するオレフィン系ポリマーの製造は、通例、厳正な工程管理を要する単一反応器工程、および/または多数の反応器を要する一連の反応器工程に限定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オレフィン系ポリマー向けの新たな用途が長年続いて現われると想定すると、改良されたかつ様々な特性を有するオレフィン系ポリマーのための技術の必要性が認識される。より少ない工程的制約およびより少ない設備で、広い分子量分布(MWD)を有するオレフィン系ポリマー、特にプロピレン系ポリマーを生成させるチーグラー−ナッタ触媒組成物が望ましいものであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ハロゲン化アミドエステル、およびプロ触媒および触媒組成物におけるその使用を対象とする。ハロゲン化アミドエステルを含有する触媒組成物は、オレフィン重合方法において用途を見出している。本ハロゲン化アミドエステル含有触媒組成物は、高い触媒活性、高い選択性を有し、ならびに高いアイソタクティシティおよび広い分子量分布を有するプロピレン系オレフィンを生成させる。
【0005】
一実施形態において、ハロゲン化アミドエステルが提供される。このハロゲン化アミドエステルは以下の構造(I)を有する。
【0006】
【化1】

【0007】
〜Rは、同一でありまたは異なっている。R〜Rのそれぞれは、水素、ハロゲン、および炭素原子1〜20個を有する非環状アルキル基から選択される。R〜Rの少なくとも1つは、非環状アルキル基である。ArおよびArは、同一でありまたは異なっている。ArおよびArのそれぞれは、炭素原子6〜20個を有するアリール基および炭素原子7〜20個を有するアリールアルキル基から選択される。ArおよびArの少なくとも1つはハロゲン化されている。
【0008】
一実施形態において、プロ触媒組成物が提供される。このプロ触媒組成物は、マグネシウム部分と、チタン部分と、内部電子供与体(internal electron donor)とを組み合わせたものを含む。この内部電子供与体は、ハロゲン化アミドエステルを含む。このハロゲン化アミドエステルは、以下の構造(I)を有する。
【0009】
【化2】

【0010】
〜Rは、同一でありまたは異なっている。R〜Rのそれぞれは、水素、ハロゲン、炭素原子1〜20個を有するヒドロカルビル基、および炭素原子1〜20個を有する置換したヒドロカルビル基から選択される。ArおよびArは、同一でありまたは異なっている。ArおよびArのそれぞれは、炭素原子6〜20個を有するアリール基および炭素原子7〜20個を有するアリールアルキル基から選択される。ArおよびArの少なくとも1つはハロゲン化されている。
【0011】
一実施形態において、触媒組成物が提供される。この触媒組成物は、プロ触媒組成物と、助触媒とを含む。このプロ触媒組成物は、ハロゲン化アミドエステルである内部電子供与体を含む。このハロゲン化アミドエステルは、構造(I)を有する。
【0012】
一実施形態において、オレフィン系ポリマーの製造方法が提供される。この方法は、重合条件下において、オレフィンを触媒組成物と接触させるステップを含む。この触媒組成物は、構造(I)のハロゲン化アミドエステルを含む。この方法はさらに、オレフィン系ポリマーを形成するステップを含む。
【0013】
本開示の一利点は、改良されたプロ触媒組成物を提供することである。
【0014】
本開示の一利点は、オレフィン系ポリマーの重合のための改良された触媒組成物を提供することである。
【0015】
本開示の一利点は、フタル酸エステルを含まない触媒組成物およびそれから製造されるフタル酸エステルを含まないオレフィン系ポリマーを提供することである。
【0016】
本開示の一利点は、広い分子量分布および/または高いアイソタクティシティを有するプロピレン系ポリマーを生成させる触媒組成物である。
【0017】
本開示の一利点は、単一反応器において広い分子量分布を有するプロピレン系ポリマーを生成させる触媒組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、ハロゲン化アミドエステル、およびそれを含有するプロ触媒/触媒組成物、ならびにそれらから生成されるオレフィン系ポリマーを対象とする。本明細書において使用される用語、「ハロゲン化アミドエステル」は、構造(I):
【0019】
【化3】

(式中、R〜Rは、同一でありまたは異なっている)を有するアミドエステルである。R〜Rのそれぞれは、水素、ハロゲン、および炭素原子1〜20個を有するヒドロカルビル基から選択される。ArおよびArは、同一でありまたは異なっている。ArおよびArのそれぞれは、炭素原子6〜20個を有するアリール基および炭素原子7〜20個を有するアリールアルキル基から選択される。ArおよびArの少なくとも1つはハロゲン化されている。言い換えると、少なくとも1つのハロゲン原子(F、Cl、Br、I)が、Arおよび/またはArのいずれかに結合している。
【0020】
〜Rの2つ以上が連結して、単環状もしくは多環状構造を形成することができる。Arおよび/またはArは、単芳香族または多芳香族構造とすることができる。Arおよび/またはArは、直鎖、分岐鎖、非環状もしくは環状置換基を含むこともできる。Arおよび/またはArの非限定例には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基およびフェナントレニル基が含まれる。
【0021】
本明細書において使用される用語、「ヒドロカルビル」または「炭化水素」は、分岐もしくは非分岐の、飽和もしくは不飽和の、環状、多環状、縮合もしくは非環状化学種ならびにこれらの組合せを含む、水素および炭素原子のみを含有する置換基である。ヒドロカルビル基の非限定例には、アルキル−、シクロアルキル−、アルケニル−、アルカジエニル−、シクロアルケニル−、シクロアルカジエニル−、アリール−、アラルキル、アルキルアリール−およびアルキニル基が含まれる。
【0022】
本明細書において使用される用語、「置換したヒドロカルビル」または「置換した炭化水素」は、1種または複数の非ヒドロカルビル置換基で置換しているヒドロカルビル基である。非ヒドロカルビル置換基の非限定例は、ヘテロ原子である。本明細書において使用される、「ヘテロ原子」は炭素または水素以外の原子である。ヘテロ原子は、周期表のIV、V、VIおよびVII族からの非炭素原子とすることができる。ヘテロ原子の非限定例には、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、SおよびSiが含まれる。置換したヒドロカルビル基は、ハロヒドロカルビル基およびケイ素含有ヒドロカルビル基をも含む。本明細書において使用される用語、「ハロヒドロカルビル基」は、1種または複数のハロゲン原子で置換しているヒドロカルビル基である。
【0023】
一実施形態において、R〜Rの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つが、炭素原子1〜20個を有するヒドロカルビル基である。さらなる実施形態において、RおよびRのそれぞれが、炭素原子1〜20個を有するヒドロカルビル基、または炭素原子1〜6個を有するヒドロカルビル基である。
【0024】
他の実施形態において、RおよびRのそれぞれが、炭素原子1〜20個を有するヒドロカルビル基、または炭素原子1〜6個を有するヒドロカルビル基である。
【0025】
本開示は、ハロゲン化アミドエステルを提供する。一実施形態において、構造(I)のハロゲン化アミドエステルは、R〜Rを含み、それぞれが同一でありもしくは異なっている。R〜Rのそれぞれが、水素、ハロゲン、および炭素原子1〜20個、または炭素原子1〜6個を有する非環状アルキル基から選択される。R〜Rの少なくとも1つ、または少なくとも2つが、非環状アルキル基である。非環状アルキル基は、ハロゲン、ケイ素原子およびこれらの組合せから選択されるメンバーで置換できる。
【0026】
ArおよびArは、上記において考察したアリール基および/またはアリールアルキル基であり、ArおよびArの少なくとも1つ、またはそれぞれが、ハロゲン化されている。
【0027】
一実施形態において、ハロゲン化アミドエステルは、構造(II):
【0028】
【化4】

(式中、R11〜R13の少なくとも1つ、およびR21〜R23の少なくとも1つは、ハロゲン原子である)を有する。
【0029】
一実施形態において、構造(II)のR12およびR22のそれぞれが、塩素および/またはフッ素から選択される。
【0030】
一実施形態において、構造(II)のR12およびR22のそれぞれが、塩素から選択され(塩素化アミドエステル)および/またはフッ素から選択され(フッ素化アミドエステル)、ならびにR〜Rの少なくとも1つまたは少なくとも2つが、炭素原子1〜20個を有するヒドロカルビル基である。さらなる実施形態において、RおよびRのそれぞれが、炭素原子1〜20個を有するヒドロカルビル基、または炭素原子1〜6個を有するヒドロカルビル基である。
【0031】
一実施形態において、構造(II)のR12〜R22のそれぞれが、塩素および/またはフッ素から選択される。RおよびRのそれぞれが、炭素原子1〜20個を有するヒドロカルビル基、または炭素原子1〜6個を有するヒドロカルビル基である。
【0032】
フッ素化アミドエステルの非限定例には、下記が含まれる。2−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−3−メチルブチル4−フルオロベンゾエート、3−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−メチルペンタン−2−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−5−メチルヘキサン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2,5−ジメチルヘキサン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2,2,5−トリメチルヘキサン−3−イル4−フルオロベンゾエート、3−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2,6−ジメチルヘプタン−4−イル4−フルオロベンゾエート、2−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−3−メチル−1−フェニルブチル4−フルオロベンゾエート、2−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−メチルペンチル4−フルオロベンゾエート、3−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−5−メチルヘキサン−2−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−6−メチルヘプタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2,6−ジメチルヘプタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2,2,6−トリメチルヘプタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、5−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2,7−ジメチルオクタン−4−イル4−フルオロベンゾエート、2−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−メチル−1−フェニルペンチル4−フルオロベンゾエート、2−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−3,3−ジメチルブチル4−フルオロベンゾエート、3−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4,4−ジメチルペンタン−2−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−5,5−ジメチルヘキサン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2,5,5−トリメチルヘキサン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2,2,5,5−テトラメチルヘキサン−3−イル4−フルオロベンゾエート、3−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2,2,6−トリメチルヘプタン−4−イル4−フルオロベンゾエート、2−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−3,3−ジメチル−1−フェニルブチル4−フルオロベンゾエート、3−(4−フルオロベンズアミド)−2−フェニルプロピル4−フルオロベンゾエート、4−(4−フルオロベンズアミド)−3−フェニルブタン−2−イル4−フルオロベンゾエート、1−(4−フルオロベンズアミド)−2−フェニルペンタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、1−(4−フルオロベンズアミド)−4−メチル−2−フェニルペンタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、1−(4−フルオロベンズアミド)−4,4−ジメチル−2−フェニルペンタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、1−(4−フルオロベンズアミド)−5−メチル−2−フェニルヘキサン−3−イル4−フルオロベンゾエート、3−(4−フルオロベンズアミド)−1,2−ジフェニルプロピル4−フルオロベンゾエート、3−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−3−イソプロピル−5−メチルヘキサン−2−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−6−メチルヘプタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−2,6−ジメチルヘプタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−2,2,6−トリメチルヘプタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、5−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−5−イソプロピル−2,7−ジメチルオクタン−4−イル4−フルオロベンゾエート、2−((4フルオロベンズアミド)メチル)−2−イソプロピル−4−メチル−1−フェニルペンチル4−フルオロベンゾエート、3−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−3−イソプロピル−4−メチルペンタン−2−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−5−メチルヘキサン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−2,5−ジメチルヘキサン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−2,2,5−トリメチルヘキサン−3−イル4−フルオロベンゾエート、3−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−3−イソプロピル−2,6−ジメチルヘプタン−4−イル4−フルオロベンゾエート、2−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2−イソプロピル−3−メチル−1−フェニルブチル4−フルオロベンゾエート、3−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−3−イソブチル−5−メチルヘキサン−2−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−イソブチル−6−メチルヘプタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−イソブチル−2,6−ジメチルヘプタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、4−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−4−イソブチル−2,2,6−トリメチルヘプタン−3−イル4−フルオロベンゾエート、5−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−5−イソブチル−2,7−ジメチルオクタン−4−イル4−フルオロベンゾエート、4−(4−フルオロベンズアミド)ペンタン−2−イル4−フルオロベンゾネート、および2−((4−フルオロベンズアミド)メチル)−2−イソブチル−4−メチル−1−フェニルペンチル4−フルオロベンゾエート。
【0033】
塩素化アミドエステルの非限定例には、下記が含まれる。2−((4−クロロベンズアミド)メチル)−3−メチルブチル4−クロロベンゾエート、3−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−メチルペンタン−2−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−5−メチルヘキサン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2,5−ジメチルヘキサン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2,2,5−トリメチルヘキサン−3−イル4−クロロベンゾエート、3−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2,6−ジメチルヘプタン−4−イル4−クロロベンゾエート、2−((4−クロロベンズアミド)メチル)−3−メチル−1−フェニルブチル4−クロロベンゾエート、2−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−メチルペンチル4−クロロベンゾエート、3−((4−クロロベンズアミド)メチル)−5−メチルヘキサン−2−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−6−メチルヘプタン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2,6−ジメチルヘプタン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2,2,6−トリメチルヘプタン−3−イル4−クロロベンゾエート、5−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2,7−ジメチルオクタン−4−イル4−クロロベンゾエート、2−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−メチル−1−フェニルペンチル4−クロロベンゾエート、2−((4−クロロベンズアミド)メチル)−3,3−ジメチルブチル4−クロロベンゾエート、3−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4,4−ジメチルペンタン−2−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−5,5−ジメチルヘキサン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2,5,5−トリメチルヘキサン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2,2,5,5−テトラメチルヘキサン−3−イル4−クロロベンゾエート、3−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2,2,6−トリメチルヘプタン−4−イル4−クロロベンゾエート、2−((4−クロロベンズアミド)メチル)−3,3−ジメチル−1−フェニルブチル4−クロロベンゾエート、3−(4−クロロベンズアミド)−2−フェニルプロピル4−クロロベンゾエート、4−(4−クロロベンズアミド)−3−フェニルブタン−2−イル4−クロロベンゾエート、1−(4−クロロベンズアミド)−2−フェニルペンタン−3−イル4−クロロベンゾエート、1−(4−クロロベンズアミド)−4−メチル−2−フェニルペンタン−3−イル4−クロロベンゾエート、1−(4−クロロベンズアミド)−4,4−ジメチル−2−フェニルペンタン−3−イル4−クロロベンゾエート、1−(4−クロロベンズアミド)−5−メチル−2−フェニルヘキサン−3−イル4−クロロベンゾエート、3−(4−クロロベンズアミド)−1,2−ジフェニルプロピル4−クロロベンゾエート、3−((4−クロロベンズアミド)メチル)−3−イソプロピル−5−メチルヘキサン−2−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−6−メチルヘプタン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−2,6−ジメチルヘプタン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−2,2,6−トリメチルヘプタン−3−イル4−クロロベンゾエート、5−((4−クロロベンズアミド)メチル)−5−イソプロピル−2,7−ジメチルオクタン−4−イル4−クロロベンゾエート、2−((4クロロベンズアミド)メチル)−2−イソプロピル−4−メチル−1−フェニルペンチル4−クロロベンゾエート、3−((4−クロロベンズアミド)メチル)−3−イソプロピル−4−メチルペンタン−2−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−5−メチルヘキサン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−2,5−ジメチルヘキサン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−イソプロピル−2,2,5−トリメチルヘキサン−3−イル4−クロロベンゾエート、3−((4−クロロベンズアミド)メチル)−3−イソプロピル−2,6−ジメチルヘプタン−4−イル4−クロロベンゾエート、2−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2−イソプロピル−3−メチル−1−フェニルブチル4−クロロベンゾエート、3−((4−クロロベンズアミド)メチル)−3−イソブチル−5−メチルヘキサン−2−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−イソブチル−6−メチルヘプタン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−イソブチル−2,6−ジメチルヘプタン−3−イル4−クロロベンゾエート、4−((4−クロロベンズアミド)メチル)−4−イソブチル−2,2,6−トリメチルヘプタン−3−イル4−クロロベンゾエート、5−((4−クロロベンズアミド)メチル)−5−イソブチル−2,7−ジメチルオクタン−4−イル4−クロロベンゾエート、4−(4−クロロオロベンズアミド)ペンタン−2−イル4−クロロベンゾネート、および2−((4−クロロベンズアミド)メチル)−2−イソブチル−4−メチル−1−フェニルペンチル4−クロロベンゾエート。
【0034】
一実施形態において、構造(II)のR12およびR22のそれぞれがフッ素であり、ならびにRおよびRのそれぞれがメチル基である。
【0035】
一実施形態において、構造(II)のR12およびR22のそれぞれがフッ素であり、ならびにRおよびRのそれぞれがメチル基である。
【0036】
一実施形態において、構造(II)のR12およびR22のそれぞれがフッ素であり、ならびにRおよびRのそれぞれがイソプロピル基である。
【0037】
一実施形態において、構造(II)のR12およびR22のそれぞれがフッ素であり、ならびにRおよびRのそれぞれがイソブチル基である。
【0038】
一実施形態において、構造(II)のR12およびR22のそれぞれがフッ素であり、Rがイソプロピル基であり、ならびにRがイソブチル基である。
【0039】
一実施形態において、構造(II)のR12およびR22のそれぞれが塩素であり、ならびにRおよびRのそれぞれがメチル基である。
【0040】
一実施形態において、R12およびR22のそれぞれが塩素であり、ならびにRおよびRのそれぞれがメチル基である。
【0041】
一実施形態において、R12およびR22のそれぞれが塩素であり、ならびにRおよびRのそれぞれがイソプロピル基である。
【0042】
一実施形態において、R12およびR22のそれぞれが塩素であり、ならびにRおよびRのそれぞれがイソブチル基である。
【0043】
一実施形態において、R12およびR22のそれぞれが塩素であり、Rがイソプロピル基であり、ならびにRがイソブチル基である。
【0044】
本ハロゲン化アミドエステルは、本明細書中に封入されている2つ以上の実施形態を備えることができる。
【0045】
一実施形態において、プロ触媒組成物が提供される。このプロ触媒組成物は、マグネシウム部分と、チタン部分と、内部電子供与体とを組み合わせたものを含む。言い換えると、このプロ触媒組成物は、プロ触媒前駆体と、ハロゲン化アミドエステルと、場合によってハロゲン化剤と、場合によってチタン酸塩とする薬剤との反応生成物である。内部電子供与体は、構造(I):
【0046】
【化5】

(式中、R〜Rは、同一でありまたは異なっている)のハロゲン化アミドエステルを含む。R〜Rのそれぞれは、水素、ハロゲン、および原子1〜20個を有する置換/非置換のヒドロカルビル基から選択される。ArおよびArは、同一でありまたは異なっている。ArおよびArのそれぞれは、原子6〜20個を有するアリール基および炭素原子7〜20個を有するアリールアルキル基から選択される。ArおよびArの少なくとも1つはハロゲン化されている。
【0047】
〜Rの2つ以上が連結して、上記において考察した環状もしくは多環状構造を形成できる。ArおよびArは、上記において考察した任意の化合物または構造とすることができる。この内部電子供与体は、上述のハロゲン化アミドエステルのいずれともすることができる。
【0048】
本プロ触媒組成物は、内部電子供与体の存在においてプロ触媒前駆体をハロゲン化/チタン酸塩とすることによって生成される。本明細書において使用される用語、「内部電子供与体」は、プロ触媒組成物を形成する間に添加されもしくは生成されて、得られたプロ触媒組成物中に存在する1種もしくは複数の金属に、少なくとも1対の電子を供与する化合物である。この内部電子供与体は、ハロゲン化アミドエステルである。どんな特定の学説にも捉われようとせずに、ハロゲン化およびチタン酸塩とする間に、内部電子供与体は、(1)活性部位の形成を制御し、(2)マグネシウム系担体上のチタンの位置を制御し、それにより触媒の立体選択性を増大させ、(3)マグネシウムおよびチタン部分のそれぞれのハロゲン化物への変換を促進し、ならびに(4)変換の間ハロゲン化マグネシウム担体の結晶子サイズを制御すると考えられる。こうして、内部電子供与体を提供することは、立体選択性の増大したプロ触媒組成物をもたらす。
【0049】
プロ触媒前駆体は、マグネシウム部分化合物(MagMo)、マグネシウム混合金属化合物(MagMix)、または安息香酸エステル含有塩化マグネシウム化合物(BenMag)とすることができる。一実施形態において、プロ触媒前駆体は、マグネシウム部分(「MagMo」)前駆体である。「MagMo前駆体」は、唯一の金属成分としてマグネシウムを含有する。MagMo前駆体はマグネシウム部分を含む。適切なマグネシウム部分の非限定例には、無水塩化マグネシウムおよび/もしくはそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシドもしくはアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、ならびに/またはカーボネート化マグネシウムジアルコキシドもしくはアリールオキシドが含まれる。一実施形態において、MagMo前駆体は、マグネシウムジ−(C1〜4)アルコキシドである。さらなる実施形態において、MagMo前駆体は、ジエトキシマグネシウムである。
【0050】
MagMixは、マグネシウムと、少なくとも1種の他の金属原子とを含む。他の金属原子は、IIIB〜VIIIB元素の主族金属もしくは遷移金属、または遷移金属とすることができる。一実施形態において、遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、Zr、NbおよびHfから選択される。さらなる実施形態において、MagMix前駆体は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆体」は、式MgTi(ORを有し、式中Rは、炭素原子1〜14個またはCOR’(式中、R’は、炭素原子1〜14個を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である)を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基であり;それぞれのOR基は同一もしくは異なり;Xは独立に塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素であり;dは0.5〜56または2〜4であり;fは2〜116または5〜15であり;およびgは0.5〜116または1〜3である。
【0051】
一実施形態において、プロ触媒前駆体は、安息香酸エステル含有塩化マグネシウム材料である。本明細書において使用される、「安息香酸エステル含有塩化マグネシウム」(「BenMag」)は、安息香酸エステル内部電子供与体を含有する塩化マグネシウムプロ触媒(すなわち、ハロゲン化プロ触媒前駆体)である。BenMag材料は、ハロゲン化チタンなどのチタン部分を含むこともできる。安息香酸エステル内部供与体は反応活性であり、プロ触媒合成の間に他の電子供与体によって置き換えることができる。適切な安息香酸エステル基の非限定例には、安息香酸エチル、安息香酸メチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸メチル、p−エトキシ安息香酸エチル、p−クロロ安息香酸エチルが含まれる。一実施形態において、安息香酸エステル基は安息香酸エチルである。適切なBenMagプロ触媒前駆体の非限定例には、Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から入手可能な商標名SHAC(商標)103およびSHAC(商標)310の触媒が含まれる。
【0052】
一実施形態において、BenMagプロ触媒前駆体は、構造(IV)
【0053】
【化6】

(式中、R〜Rは、H;F、Cl、Br、I、O、S、N、PおよびSiを含むヘテロ原子を含有できるC〜C20ヒドロカルビル基であり、ならびにR’は、F、Cl、Br、I、O、S、N、PおよびSiを含む1種もしくは複数のヘテロ原子を場合によって含有できるC〜C20ヒドロカルビル基である)を有する安息香酸エステル化合物の存在における、任意のプロ触媒前駆体(すなわち、MagMo前駆体またはMagTi前駆体)のハロゲン化の生成物である。R〜Rは、HおよびC〜C20アルキル基から選択され、ならびにR’は、C〜C20アルキル基およびアルコキシアルキル基から選択されることが好ましい。
【0054】
内部電子供与体の存在においてプロ触媒前駆体をハロゲン化/チタン酸塩とすることにより、マグネシウム部分と、チタン部分と、内部電子供与体(ハロゲン化アミドエステル)とを組み合わせたものを含むプロ触媒組成物が生成される。一実施形態において、マグネシウム部分とチタン部分とは、それぞれ塩化マグネシウムおよび塩化チタンなどのハロゲン化物である。特定の理論に捉われずに、ハロゲン化マグネシウムは、その上にハロゲン化チタンが堆積され、ならびにその上に内部電子供与体が組み込まれる担体であると考えられる。
【0055】
得られたプロ触媒組成物は、全固形分重量に対して、約1.0重量パーセント〜約6.0重量パーセント、または約1.5重量パーセント〜約5.5重量パーセントまたは約2.0重量パーセント〜約5.0重量パーセントのチタン含量を有する。固体プロ触媒組成物中のチタン対マグネシウムの重量比は、約1:3と約1:160の間、または約1:4と約1:50の間、または約1:6と約1:30の間が適切である。内部電子供与体は、約0.1重量パーセント〜約20.0重量パーセント、または約1.0重量パーセント〜約15重量パーセントの量で存在する。内部電子供与体は、約0.005:1〜約1:1、または約0.01:1〜約0.4:1の内部電子供与体対マグネシウムのモル比でプロ触媒組成物中に存在できる。重量パーセントは、プロ触媒組成物の全重量に基づいている。
【0056】
プロ触媒組成物中のエトキシド含量は、前駆体金属エトキシドの金属ハロゲン化物への変換の完全さを示す。ハロゲン化アミドエステルは、ハロゲン化の間、エトキシドがハロゲン化物に変換されるのを助ける。一実施形態において、プロ触媒組成物は、約0.01重量%〜約1.0重量%、または約0.05重量%〜約0.5重量%のエトキシドを含む。重量パーセントは、プロ触媒組成物の全重量に基づいている。
【0057】
一実施形態において、この内部電子供与体は、混合内部電子供与体である。本明細書において使用される「混合内部電子供与体」は、(i)ハロゲン化アミドエステル、(ii)得られたプロ触媒組成物中に存在する1種または複数の金属に、1対の電子を供与する電子供与体成分、および(iii)場合によって他の成分である。一実施形態において、この電子供与体成分は、安息香酸エチルおよび/または安息香酸メトキシプロパン−2−イルなどの安息香酸エステルである。混合内部電子供与体を有するプロ触媒組成物は、上記において開示したプロ触媒生成手順によって作製することができる。
【0058】
一実施形態において、内部電子供与体および/または混合内部電子供与体は、フタル酸エステルを含まない。
【0059】
一実施形態において、プロ触媒組成物は、フタル酸エステルを含まない。
【0060】
本プロ触媒組成物は、本明細書において開示される2つ以上の実施形態を備えることができる。
【0061】
一実施形態において、触媒組成物が提供される。本明細書において使用される「触媒組成物」は、重合条件下でオレフィンと接触させるとオレフィン系ポリマーを形成させる組成物である。この触媒組成物は、プロ触媒組成物と、助触媒とを含む。このプロ触媒組成物は、本明細書において開示される構造(I)または構造(II)を有するハロゲン化アミドエステルである内部電子供与体を有する、上述のプロ触媒組成物のいずれかとすることができる。この触媒組成物は、場合によって、外部電子供与体および/または活性制限剤(activity limiting agent)を含むことができる。
【0062】
一実施形態において、この触媒組成物の内部電子供与体は、上記において開示した混合内部電子供与体である。
【0063】
この触媒組成物は、助触媒を含む。本明細書において使用される「助触媒」は、プロ触媒を活性な重合触媒に変換させることが可能な物質である。この助触媒は、水素化、アルキルもしくはアリールアルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、およびこれらの組合せを含むことができる。一実施形態において、この助触媒は、式RAlX3−n(式中、n=1、2または3であり、Rはアルキルであり、およびXはハロゲン化物またはアルコキシドである)によって表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物である。適切な助触媒の非限定例には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリ−n−ヘキシルアルミニウムが含まれる。
【0064】
一実施形態において、この助触媒はトリエチルアルミニウムである。アルミニウム対チタンのモル比は、約5:1〜約500:1、または約10:1〜約200:1、または約15:1〜約150:1、または約20:1〜約100:1、または約30:1〜約60:1である。他の実施形態において、アルミニウム対チタンのモル比は、約35:1である。
【0065】
一実施形態において、本触媒組成物は、外部電子供与体を含む。本明細書において使用される「外部電子供与体」(または「EED」)は、プロ触媒形成と独立に添加され、金属原子に1対の電子を供与することが可能である少なくとも1つの官能基を含む化合物である。「混合外部電子供与体」(または「MEED」)は、2種以上の外部電子供与体の混合物である。特定の学説に捉われずに、触媒組成物中に1種または複数の外部電子供与体を提供することは、フォルマント(formant)ポリマーの次の特性:タクティシティ(すなわちキシレン可溶性材料)のレベル、分子量(すなわちメルトフロー)、分子量分布(MWD)、融点および/またはオリゴマーレベルに影響を及ぼすと考えられる。
【0066】
一実施形態において、この外部電子供与体は、下記の一種または複数から選択することができる:ケイ素化合物、二座化合物(bidentate compound)、アミン、エーテル、カルボン酸エステル、ケトン、アミド、カルバミン酸エステル、ホスフィン、リン酸エステル、亜リン酸エステル、スルホン酸エステル、スルホン、スルホキシド、および上述のものの任意の組合せ。
【0067】
一実施形態において、EEDは、一般式(III)を有するケイ素化合物である:
SiR(OR’)4−m (III)
(式中、Rは、それぞれの出現において独立に、水素またはヒドロカルビルまたはアミノ基であり、場合によって、1つもしくは複数の14、15、16もしくは17族ヘテロ原子を含有する1種または複数の置換基で置換される)。Rは、水素およびハロゲンを計算に入れずに、20個までの原子を含有する。R’はC1〜20アルキル基であり、およびmは0、1または2である。一実施形態において、Rは、C6〜12アリール、アルキルアリールもしくはアラルキル、C3〜12シクロアルキル、C1〜20直鎖アルキルもしくはアルケニル、C3〜12分岐鎖アルキル、またはC2〜12環状アミノ基であり、R’はC1〜4アルキルであり、およびmは1または2である。
【0068】
EED向けの適切なケイ素化合物の非限定例には、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシラン、例えばジシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン(DCPDMS)、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシランなど、およびこれらの任意の組合せが含まれる。
【0069】
一実施形態において、EEDは二座化合物である。「二座化合物」は、C〜C10炭化水素鎖によって分離された、少なくとも2つの酸素含有官能基を含む分子または化合物であり、酸素含有官能基が同一もしくは異なっており、少なくとも1つの酸素含有官能基がエーテル基またはカルボン酸エステル基であり、この二座組成物はフタル酸エステルを除外している。この二座組成物のための適切な酸素含有官能基の非限定例には、カルボン酸エステル、カーボネート、ケトン、エーテル、カルバミン酸エステル、アミド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスフィン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステルおよびホスフィンオキシドが含まれる。C2〜10分子鎖中の1個もしくは複数の炭素原子は、14、15および16族からのヘテロ原子で置換できる。C2〜10分子鎖中の1個もしくは複数のH原子は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アルキルアリール、アラルキル、ハロゲン、または、14、15もしくは16族からのヘテロ原子を含有する官能基で置換できる。適切な二座化合物の非限定例には、ジエーテル、コハク酸エステル、ジアルコキシベンゼン、アルコキシエステルおよび/またはジオールエステルが含まれる。
【0070】
一実施形態において、二座化合物は、3,3−ビス(メトキシメチル)−2,5−ジメチルヘキサン、4,4−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタンおよび9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンなどのジエーテルである。
【0071】
一実施形態において、二座化合物は、2,4−ペンタンジオールジ(ベンゾエート)、2,4−ペンタンジオールジ(2−メチルベンゾエート)、2,4−ペンタンジオールジ(4−n−ブチルベンゾエート)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートおよび/または2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエートなどのジオールエステルである。
【0072】
一実施形態において、カルボン酸エステルは、安息香酸エチルおよび4−エトキシ安息香酸エチルなどの安息香酸エステルである。
【0073】
一実施形態において、外部電子供与体は、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルおよび/または亜リン酸トリ−n−プロピルなどの亜リン酸エステルである。
【0074】
一実施形態において、外部電子供与体は、1−メトキシビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2−メチルプロパン酸メチルおよび/または3−メトキシ−2−メチルプロパン酸エチルなどのアルコキシエステルである。
【0075】
一実施形態において、外部電子供与体は、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジ−n−ブチルおよび/または2,3−ジイソブチルコハク酸ジエチルなどのコハク酸エステルである。
【0076】
一実施形態において、外部電子供与体は、1,2−ジエトキシベンゼン、1,2−ジ−n−ブトキシベンゼンおよび/または1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼンなどのジアルコキシベンゼンである。
【0077】
一実施形態において、外部電子供与体は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのアミンである。
【0078】
さらに、EEDは、前述のEED化合物のいずれか2種以上を含み得るMEEDとすることができると理解される。
【0079】
一実施形態において、本触媒組成物は、活性制限剤(ALA)を含む。本明細書において使用される「活性制限剤」(「ALA」)は、高温(すなわち約85℃を超える温度)で触媒活性を低下させる材料である。ALAは、重合反応器の変動状態(upset)を阻止、もしくはさもなければ防止し、重合方法の連続性を確保する。通例、チーグラー−ナッタ触媒の活性は、反応器温度が上昇すると増大する。チーグラー−ナッタ触媒はまた通例、生成されるポリマーの軟化点温度付近で高い活性を保持する。発熱重合反応によって生じる熱は、ポリマー粒子が集塊を形成する原因となり、最終的にポリマー製造方法の連続性を崩壊させるに至る恐れがある。ALAは、高温で触媒活性を低減させ、それにより反応器の変動状態を防止し、粒子の集塊化を低減(または防止)し、重合方法の連続性を確保する。
【0080】
ALAは、EEDおよび/またはMEEDの成分とすることができ、またはしなくてもよい。活性制限剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、コハク酸エステル、ジオールエステルおよびこれらの組合せとすることができる。カルボン酸エステルは、脂肪族もしくは芳香族モノ−もしくはポリカルボン酸エステルとすることができる。適切なカルボン酸エステルの非限定例には、安息香酸エステル、脂肪族C2〜40モノ/ジカルボン酸のC1〜40アルキルエステル、C2〜100(ポリ)グリコールのC2〜40モノ−/ポリカルボン酸エステル誘導体、C2〜100(ポリ)グリコールエーテルおよびこれらの任意の組合せが含まれる。さらなるカルボン酸エステルの非限定例には、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステルおよびセバシン酸エステルならびにこれらの混合物が含まれる。さらなる実施形態において、ALAは、4−エトキシ安息香酸エチルまたはミリスチン酸イソプロピルまたはセバシン酸ジ−n−ブチルである。
【0081】
本触媒組成物は、上述の外部電子供与体のいずれかを、上述の活性制限剤のいずれかと組み合わせて含むことができる。外部電子供与体および/または活性制限剤は、別々に反応器中に添加することができる。別法として、外部電子供与体および活性制限剤は、予め一緒に混合し、次いで触媒組成物に添加し、かつ/または混合物として反応器中に添加することができる。混合物において、2種以上の外部電子供与体または2種以上の活性制限剤を使用することができる。適切なEED/ALA混合物の非限定例には、ジシクロペンチルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;ジシクロペンチルジメトキシシランとポリ(エチレングリコール)ラウレート;ジイソプロピルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;メチルシクロヘキシルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;メチルシクロヘキシルジメトキシシランと4−エトキシ安息香酸エチル;n−プロピルトリメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;ジメチルジメトキシシランとメチルシクロヘキシルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;ジシクロペンチルジメトキシシランとテトラエトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;ジシクロペンチルジメトキシシランとテトラエトキシシランと4−エトキシ安息香酸エチル;ジシクロペンチルジメトキシシランとn−プロピルトリエトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;ジイソプロピルジメトキシシランとn−プロピルトリエトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;ジシクロペンチルジメトキシシランとミリスチン酸イソプロピルとポリ(エチレングリコール)ジオレエート;ジシクロペンチルジメトキシシランとジイソプロピルジメトキシシランとn−プロピルトリエトキシシランとミリスチン酸イソプロピル;ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0082】
本触媒組成物は、本明細書において開示される2つ以上の実施形態を備えることができる。
【0083】
一実施形態において、オレフィン系ポリマーの製造方法が提供される。この方法は、重合条件下においてオレフィンを触媒組成物と接触させるステップを含む。この触媒組成物は、ハロゲン化アミドエステルを含む。このハロゲン化アミドエステルは、本明細書において開示される任意のハロゲン化アミドエステルとすることができる。この方法はさらに、オレフィン系ポリマーを形成するステップを含む。
【0084】
この触媒組成物は、プロ触媒組成物と助触媒とを含む。このプロ触媒組成物は、本明細書において開示される任意のプロ触媒組成物であり、内部電子供与体として構造(I)または構造(II)のハロゲン化アミドエステルを含む。助触媒は、本明細書において開示される任意の助触媒とすることができる。この触媒組成物は、場合によって、これまでに開示した外部電子供与体および/または活性制限剤を含むことができる。
【0085】
オレフィン系ポリマーは、プロ触媒組成物中に存在する、構造(I)または構造(II)の内部電子供与体に対応するハロゲン化アミドエステルを含有する。一実施形態において、このオレフィン系ポリマーは、プロピレン系オレフィン、エチレン系オレフィン、およびこれらの組合せとすることができる。一実施形態において、このオレフィン系ポリマーは、プロピレン系ポリマーである。
【0086】
1種または複数のオレフィンモノマーを重合反応器中に導入して触媒と反応させ、ポリマーを、またはポリマー粒子の流動床を形成することができる。適切なオレフィンモノマーの非限定例には、エチレン、プロピレン、C4〜20α−オレフィン例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが含まれる。
【0087】
本明細書において使用される「重合条件」は、本触媒組成物とオレフィンとの間の重合を促進して所望のポリマーを形成するのに適した、重合反応器内の温度および圧力パラメーターである。重合方法は、1基、または2基以上の重合反応器内で操業される気相、スラリーまたはバルク重合方法とすることができる。したがって、重合反応器は、気相重合反応器、液相重合反応器またはこれらの組合せとすることができる。
【0088】
重合反応器中に水素を供給することは、重合条件の構成要素であると理解される。重合の間、水素は連鎖移動剤であり、得られたポリマーの分子量(および対応してメルトフローレイト)に影響を及ぼす。重合方法は、予備重合ステップおよび/または予備活性化ステップを含むことができる。
【0089】
一実施形態において、この方法は、外部電子供与体(および場合によって活性制限剤)をプロ触媒組成物と混合するステップを含む。外部電子供与体および/または活性制限剤は、助触媒と錯体を形成し、触媒組成物とオレフィンとの間で接触させる前に、プロ触媒組成物と混合(予備混合)することができる。他の実施形態において、外部電子供与体および/または活性制限剤は、独立に重合反応器に添加することができる。
【0090】
一実施形態において、オレフィンはプロピレンであり、場合によってエチレンおよび/または1−ブテンである。この方法は、1つまたは複数の下記の特性を有するプロピレン系ポリマー(プロピレンホモポリマーまたはプロピレンコポリマー)を形成するステップを含む:
メルトフローレイト(MFR)約0.01g/10分〜約800g/10分、または約0.1g/10分〜約200g/10分、または約0.5g/10分〜約150g/10分、または約1g/10分〜約70g/10分;
キシレン可溶物(xylene solubles)含量約0.5%〜約10%、または約1%〜約8%、または約1%〜約4%;
多分散指数(PDI)約5.0〜約20.0、または約6.0〜約15、または約6.5〜約10、または約7.0〜約9.0;
コモノマーが存在する場合、約0.001重量%〜約20重量%、または約0.01重量%〜約15重量%、または約0.1重量%〜約10重量%(ポリマーの全重量に対して)の量で存在する;かつ/あるいは
内部電子供与体(ハロゲン化アミドエステル)または混合内部電子供与体(ハロゲン化アミドエステルおよび安息香酸エステル)が約1ppb〜約50ppm、または約10ppb〜約25ppm、または約100ppb〜約10ppm存在すること。
【0091】
本開示は、オレフィン系ポリマーの他の製造方法を提供する。一実施形態において、プロピレンを、ハロゲン化アミドエステルを含む触媒組成物と接触させて、プロピレン系ポリマーを形成するステップを含むオレフィン系ポリマーの製造方法が提供される。プロピレンと触媒組成物との間の接触は、重合条件下において第1の重合反応器内で生じる。この方法はさらに、プロピレン系ポリマーの存在において、エチレンと、場合によって少なくとも1種の他のオレフィンとを接触させるステップを含む。エチレンと、1種もしくは複数のオレフィンと、プロピレン系ポリマーとの接触は、重合条件下において第2の重合反応器内で生じ、プロピレンインパクトコポリマー(propyrene impact copolymer)を形成する。
【0092】
一実施形態において、第1の反応器および第2の反応器は直列で操業され、それにより第1の反応器の流出物(すなわちプロピレン系ポリマー)は、第2の反応器に装入される。さらなるオレフィンモノマーが第2の重合反応器に添加されて、重合を継続する。さらなる触媒組成物(および/または任意の組合せの個々の触媒成分、すなわち、プロ触媒、助触媒、EED、ALA)を、第2の重合反応器に添加することができる。第2の反応器に添加されるさらなる触媒組成物/成分は、第1の反応器に導入される触媒組成物/成分と同一または異なることができる。
【0093】
一実施形態において、第1の反応器において生成されるプロピレン系ポリマーは、プロピレンホモポリマーである。このプロピレンホモポリマーは、第2の反応器に装入され、そこでこのプロピレンホモポリマーの存在において、エチレンとプロピレンとが互いに接触される。これにより、プロピレンホモポリマー連続(またはマトリックス)相と、プロピレン系コポリマー(すなわちプロピレン/エチレンコポリマー)もしくはエチレン系コポリマー(すなわちエチレン/プロピレンコポリマー)から選択される不連続相(またはゴム相)とを有するプロピレンインパクトコポリマーが形成される。この不連続相は、この連続相内に分散される。
【0094】
プロピレンインパクトコポリマーは、Fc値、約1重量%〜約50重量%、または約10重量%〜約40重量%、または約20重量%〜約30重量%を有することができる。本明細書において使用される「フラクションコポリマー(fraction copolymer)」(「Fc」)は、異相コポリマー(heterophasic copolymer)中に存在する不連続相の重量パーセントである。Fc値は、プロピレンインパクトコポリマーの全重量に基づくものである。
【0095】
プロピレンインパクトコポリマーは、Ec値、約1重量%〜約100重量%、または約20重量%〜約90重量%、または約30重量%〜約80重量%、または約40重量%〜約60重量%を有することができる。本明細書において使用される「エチレン含量」(「Ec」)は、プロピレンインパクトコポリマーの不連続相中に存在するエチレンの重量パーセントである。Ec値は、不連続(またはゴム)相の全重量に対するものである。
【0096】
本オレフィン系ポリマー製造方法は、本明細書において開示される2つ以上の実施形態を備えることができる。
【0097】
定義
本明細書における元素の周期表への全て参照は、CRC Press, Inc.、2003による出版および版権のPeriodic Table of the Elementsを指すものとする。また、1つまたは複数の族(Group or Groups)を任意に参照する場合も、族番号を決める上で、IUPACシステムを使用してこのPeriodic Table of the Elements中に反映された1つまたは複数の族を参照するものとする。そうでないと言及され、文脈から明らかであり、または当技術分野で慣例であるということがない限り、全ての部またはパーセントは、重量に基づく。特に、合成技術の開示、定義(本明細書において提供されるどんな定義とも矛盾しない範囲まで)および当技術の一般的知識に関して、米国特許の実施目的のため、本明細書で参照されるどんな特許、特許出願または公開の内容も、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている(または、その同等の米国版が参照によりそのように組み込まれている)。
【0098】
本明細書において引用されるいかなる数的範囲も、任意の低値と任意の高値の間に少なくとも2単位の隔たりがある場合、1単位の増加分における、低値からより高値までの全ての値を含む。一例として、成分の量、または組成もしくは物理的性質の値、例えばブレンド成分の量、軟化温度、メルトインデックスなどが、1と100の間にあると記述される場合、1、2、3などの全ての個々の値と、1〜20,55〜70,197〜100などの全ての小範囲が、本明細書において明白に列挙されることを意図している。1未満の値については、1単位は、適宜0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなされる。これらは、特に意図される場合の一例に過ぎず、列挙された低値と高値の間の数値の全ての可能な組合せが、本明細書において明白に言及されるとみなすことができる。言い換えると、本明細書において引用されるどんな数的範囲も、言及される範囲内の任意の値または範囲を含む。本明細書において考察されている、メルトインデックス、メルトフローレイトおよび他の特性を参照した数的範囲が引用されている。
【0099】
本明細書において使用される用語「アルキル」は、分岐もしくは非分岐の、飽和もしくは不飽和の非環状炭化水素基を指す。適切なアルキル基の非限定例には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(または2−メチルプロピル)などが含まれる。これらのアルキルは、炭素原子1〜20個を有する。
【0100】
本明細書において使用される用語、「アリール」または「アリール基」は、芳香族炭化水素化合物から由来する置換基である。アリール基は、合計6〜20個の環原子を有し、別々のもしくは縮合した1つまたは複数の環を有し、アルキルおよび/もしくはハロ基で置換できる。1つまたは複数の芳香環は、とりわけ、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびビフェニルを含むことができる。
【0101】
本明細書において使用される用語、「アリールアルキル」または「アリールアルキル基」は、脂肪族および芳香族構造の両方を含有する化合物である。用語「アリールアルキル基」には、「アラルキル基」(少なくとも1つのアリール基で置換したアルキル基)および/または「アルキルアリール基」(少なくとも1つのアルキル基で置換したアリール基)が含まれる。
【0102】
本明細書において使用される用語、「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種以上のポリマーのブレンドである。このようなブレンドは、混和することができ、または混和しない(分子レベルで相分離されない)でもよい。このようなブレンドは、相分離でき、または相分離しなくてもよい。このようなブレンドは、透過電子顕微鏡法、光分散、X線分散および当技術分野で知られる他の方法で測定して、1つもしくは複数のドメイン配置を含むことができ、または含まなくてもよい。
【0103】
本明細書において使用される用語「組成物」には、この組成物ならびに、この組成物の材料から生成される反応生成物および分解生成物を含む、材料の混合物が含まれる。
【0104】
用語「含む(comprising)」およびその派生語は、どんな追加的成分、ステップまたは手順の存在も、これが本明細書において開示されるか否かにかかわらず、排除する意図のものではない。どんな疑いも避けるように、用語「含む」の使用によって本明細書において特許請求される全ての組成物は、そうでないと言及されない限り、任意の追加的添加物、補助剤または、ポリマー化合物もしくはそれ以外の化合物のいずれであっても含んでよい。これに反して、用語「本質的に、からなる(consisting essentially of)」は、それに続く任意の引用範囲から、実施可能性について本質的ではないものを除く、どんな他の成分、ステップまたは手順も排除するものである。用語「からなる(consisting of)」は、具体的に記述または掲げられていないどんな他の成分、ステップまたは手順も排除するものである。用語「または(or)」は、特に言及されない限り、掲げられたメンバーを個々に、ならびに何らかの組合せとして指すものである。
【0105】
本明細書において使用される用語、「エチレン系ポリマー」は、大部分の重量パーセントのエチレンモノマー重合物(重合可能なモノマーの全重量に基づいて)を含み、場合によって少なくとも1種のコモノマー重合物を含むことができるポリマーである。
【0106】
用語「オレフィン系ポリマー」は、ポリマーの全重量に基づいて、大部分の重量パーセントのオレフィン例えばエチレンまたはプロピレンを、重合した形態で含有するポリマーである。オレフィン系ポリマーの非限定例には、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが含まれる。
【0107】
用語「ポリマー」は、同一または異なる型のモノマーを重合させるステップによって調製した高分子化合物である。「ポリマー」には、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどが含まれる。用語「インターポリマー」とは、少なくとも2種の型のモノマーまたはコモノマーの重合によって調製したポリマーである。インターポリマーには、コポリマー(通常、2つの異なる型のモノマーもしくはコモノマーから調製したポリマーを指す)、ターポリマー(通常、3つの異なる型のモノマーもしくはコモノマーから調製したポリマーを指す)、テトラポリマー(通常、4つの異なる型のモノマーもしくはコモノマーから調製したポリマーを指す)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
本明細書において使用される用語、「プロピレン系ポリマー」は、大部分の重量パーセントのプロピレンモノマー重合物(重合可能なモノマーの全重量に基づいて)を含み、場合によって少なくとも1種のコモノマー重合物を含むことができるポリマーである。
【0109】
本明細書において使用される用語、「置換したアルキル」は、上記において定義され、その中で、アルキルの任意の炭素に結合した1個もしくは複数の水素原子が他の基例えばハロゲン、アリール、置換したアリール、シクロアルキル、置換したシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換したヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、シリルなど、およびこれらの組合せによって置き換えられるアルキルと記述されたアルキルである。適切な置換したアルキルには、例えば、ベンジル、トリフルオロメチルなどが含まれる。
【0110】
試験方法
メルトフローレイト(MFR)は、ASTM D 1238-01試験法に従って、プロピレン系ポリマーについての重量2.16kgにより230℃で測定される。
【0111】
キシレン可溶物(XS)は、樹脂を熱キシレン中に溶解し、この溶液を25℃まで冷却させた後、溶液中に留まる樹脂の重量パーセントである(ASTM D5492-06によるXS重量方法)。XSは、次の2つの手順の1つにより測定される:(1)Viscotek法:0.4gのポリマーを20mlのキシレンに、130℃で30分間撹拌して溶解する。次いで、この溶液を25℃まで冷却し、30分後不溶ポリマー部分を濾別する。得られた濾液は、1.0ml/分で流れるTHF移動相によりViscotek ViscoGEL H−100−3078カラムを使用しフローインジェクションポリマー分析によって解析する。このカラムを、45℃で作動する光分散、粘度計および屈折計検出器を有するViscotek Model 302 Triple Detector Arrayに繋いだ。機器較正は、Viscotek PolyCAL(商標)ポリスチレン標準により維持した。(2)NMR法:XSは、その全内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,539,309号中に記述されるH NMR方法を使用して測定される。これらの方法の両方が、ASTM重量方法に対して較正される。
【0112】
多分散指数(PDI)は、TA Instrumentsにより製造された応力制御動的分光計であるAR−G2レオメーターによって、Zeichner GR、Patel PD(1981)「A comprehensive Study of Polypropylene Melt Rheology」、Proc. of the 2nd World Congress of Chemical Eng., Montreal, Canadaによる方法を使用して測定される。ETCオーブンを使用して、温度を180℃±0.1℃に制御する。窒素を使用して、オーブン内部をパージし、酸素および湿分による劣化から試料を守る。一対の直径25mmコーンおよびプレート試料ホルダーが使用される。試料を圧縮成形して、50mm×100mm×2mmの小板(plaque)とする。次いで試料を19mm平方に切断し、底部プレートの中央に装填される。上部コーンの外形は、(1)コーン角度:5:42:20(度:分:秒);(2)直径:25mm;(3)切頭(truncation)ギャップ:149ミクロンである。底部プレートの外形は、25mm円筒である。
【0113】
試験手順:
(1)コーンおよびプレート試料ホルダーは、ETCオーブン内において180℃で2時間加熱される。次いで窒素ガスのブランケット下でギャップをゼロにする;
(2)コーンを2.5mmに上げ、試料を、底部プレートの上面に装填する;
(3)開始時間調整2分間;
(4)上部コーンを直ちに下げて、正常な力であることを観察することによって、試料上部に幾分もたれ掛けさせる;
(5)2分後、上部コーンを下げることによって、試料を165ミクロンギャップまで圧縮する;
(6)正常な力を観察する。正常な力が<0.05ニュートンまで下がる場合、コーンおよびプレート試料ホルダーの端部から、さじによって過剰の試料を除去する;
(7)上部コーンを再び、149ミクロンである切頭ギャップまで下げる;
(8)これらの条件下で発振周波数掃引(Oscillatory Frequency Sweep)試験が行われる:
(i)180℃で5分間、試験を遅延させる;
(ii)周波数:628.3r/s〜0.1r/s;
(iii)データ収集速度:5点/ディケード;
(iv)ひずみ:10%;
(9)試験が完了すると、TA Instrumentsにより提供されるRheology Advantage Data Analysisプログラムによってクロスオーバー弾性率(Gc)が検出される;
(10)PDI=100,000÷Gc(単位Pa)。
【0114】
最終融点(TMF)は、試料中の最も完全な結晶を融解させる温度であり、ならびにアイソタクティシティおよび固有ポリマー結晶性の指標である。試験は、TA Q100示差走査熱量計を使用して行われる。試料は、0℃から240℃まで80℃/分の速度で加熱され、同一速度で0℃まで冷却され、次いで同一速度で150℃まで再加熱され、150℃で5分間保持し、次いで1.25℃/分で150℃から180℃まで加熱される。TMFは、この最後のサイクルから、加熱曲線の終わりのベースラインの開始点を計算するステップによって測定される。
【0115】
試験手順:
(1)標準として高純度インジウムにより機器を較正する。
(2)機器ヘッド/セルを、窒素の一定流量50ml/分で常にパージする。
(3)試料調製:
30−G302H−18−CX Wabash圧縮成形機(30トン)を使用して、粉末試料1.5gを圧縮成形する:(a)混合物を接触させて230℃で2分間加熱する;(b)試料を、同一温度で圧力20トンにより1分間圧縮する;(c)試料を45°Fまで冷却し、圧力20トンで2分間保持する;(d)小板を、約同一サイズの4個に切断し、それらを一緒に積み重ね、試料を均斉にするためステップ(a)〜(c)を繰り返す。
(4)試料小板から試料の一片(好ましくは5〜8mgの間)の重量をはかり、それを標準アルミニウム試料パン(平皿)中に密封する。試料を入れた密封パンを、機器ヘッド/セルの試料側に置き、空の密封パンをレファレンス側に置く。自動サンプラーを使用する場合、いくつかの異なる試料試験片の重量をはかり出し、シーケンスのため機械を設定する。
(5)測定:
(i)データ記憶:オフ
(ii)240.00℃まで80.00℃/分で昇温
(iii)1.00分間恒温
(iv)0.00℃まで80.00℃/分で降温
(v)1.00分間恒温
(vi)150.00℃まで80.00℃/分で昇温
(vii)5.00分間恒温
(viii)データ記憶:オン
(ix)180.00℃まで1.25℃/分で昇温
(x)方法終了
(6)計算:2本のインターセプト(interception)によりTMFを決定する。高温のベースラインから1本の直線を引く。高温側の曲線の端部に近い曲線の曲りを通して他の直線を引く。
【0116】
例として、および限定を意図することなく、本開示の実施例を以下に提供する。
【実施例】
【0117】
1.ハロゲン化アミドエステルの合成
2−シアノ−2−イソブチル−4−メチルペンタン酸エチルおよび2−シアノ−2−イソプロピル−3−メチル酪酸エチル:
【0118】
【化7】

500ml丸底フラスコに磁気攪拌機を取り付け、2−シアノ酢酸エチル(11.3g、0.1モル)および無水DMF(120ml)を装入する。撹拌している溶液に、無水DMF(40ml)中の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(30.4g、0.2モル,1.0当量)の溶液を1滴ずつ添加する。添加が完了した後、混合物は、さらに1時間撹拌する。このフラスコを、氷水浴中で冷却し、DMF(40ml)中のヨウ素(0.2モル、1.0当量)の溶液を1滴ずつ添加する。混合物を室温まで昇温させ、全ての出発物質が生成物に変換されるまでさらに14時間撹拌する(GCによりモニターする)。この混合物を氷水に注入し,ジエチルエーテルで抽出する。合わせたエーテル抽出物を水および食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥する。濾過後、濾液を濃縮し、残渣を真空中で蒸留し、無色液体としての生成物を生じる。
【0119】
2−シアノ−2−イソプロピル−3−メチル酪酸エチル:収率67%;1H NMR: δ 4.24 (q, 2H, J = 7.0 Hz), 2.28 (七重線, 2H, J = 7.0 Hz) 1.30 (t, 3H, J = 7.0 Hz), 1.07 (d, 6H, J = 7.0 Hz), 1.01 (d, 6H, J = 6.5 Hz).
【0120】
2−シアノ−2−イソブチル−4−メチルペンタン酸エチル:収率88%;1H NMR: δ 4.26 (q, 2H, J = 7.0 Hz), 1.82-1.90 (m, 4H), 1.63-1.70 (m, 2H), 1.34 (t, 3H, J = 7.0 Hz), 1.04 (d, 6H, J = 6.0 Hz), 0.89 (d, 6H, J = 6.0 Hz).
【0121】
2,2−ジ置換3−アミノプロパノール:
【化8】

【0122】
窒素パージした1000ml三首丸底フラスコに、磁気攪拌機、冷却器および滴下漏斗を取り付ける。粉末水素化リチウムアルミニウム(0.14〜0.18モル)を添加し、続いて無水THF(140〜180ml)を添加するが、これらは、市販の、THF中1.0M水素化リチウムアルミニウムによって置き換えることができる。撹拌しながらエーテル(約200ml)中の2−シアノカルボン酸エチル化合物(0.06〜0.08モル)の溶液を1滴ずつ添加して、この混合物をゆるやかな還流に保つ。添加が終わると、混合物を加熱して、3時間ゆるやかに還流させる。冷却した後、このフラスコを氷水浴中に置く。水を注意深く添加し、固体が白色に変わるまでこの混合物を撹拌する。濾過後、固体をさらなるエーテルで洗浄し、濾液を濃縮し、残渣を真空中で乾燥し、白色固体または粘着性油としての生成物を生じ、これを、さらに精製せずに直接アクリル化反応に使用することができる。
【0123】
2−アミノメチル−2−イソプロピル−3−メチルブタン−1−オール:収率71%;1H NMR: δ 3.72 (s, 2H), 2.93 (s, 2H), 2.65 ( br.s, 3H), 1.97 (七重線, 2H, J = 8.8 Hz), 0.95 (d, 6H, J = 8.5 Hz), 0.94 (d, 6H, J = 9.0 Hz).
【0124】
2−アミノメチル−2−イソブチル−4−メチルペンタン−1−オール:収率75%;1H NMR: δ 3.54 (s, 2H), 2.77 (s, 2H), 2.65 ( br.s, 3H), 1.58-1.70 (m, 2H), 1.21 (d, 2H, J = 7.0 Hz), 1.20 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 0.88 (d, 6H, J = 8.0 Hz), 0.87 (d, 6H, J = 8.5 Hz).
【化9】

【0125】
1000mL丸底フラスコに、3,5−ジメチルイソオキサゾール(9.7g、0.1モル)および水(200ml)を装入する。この溶液に、1.0M水酸化カリウム水溶液(200mL)を添加する。ニッケル−アルミニウム合金(1:1,32g、0.2モル)を一部ずつ1時間にわたって添加する。さらに約2時間後、反応混合物をセライト上で濾過し、固体をさらなる水で洗浄する。濾液を塩化メチレンで1回抽出する。水溶液を、濃HClで酸性とし、乾固するまで濃縮する。この残渣に、水酸化カリウム(10M、5.0ml)を添加し、この混合物を塩化メチレンで抽出し、抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥する。濾過後、濾液を濃縮し、残渣を真空中で乾燥し、粘結性油としての生成物9.0g(87%)を生じ、これを直接次のアシル化反応に使用する。1H NMR (2種の異性体が約1:1.3): δ 4.10-4.18 (m, 1Ha), 3.95-4.00 (m, 1Hb), 3.37-3.41 (m, 1Ha), 3.00-3.05 (m, 1Hb), 2.63 ( br.s, 3Ha+3Hb), 1.42-1.55 (m, 2Ha+1Hb), 1.12-1.24 (m, 6Ha+7Hb).
【化10】

【0126】
250ml丸底フラスコに、アミノアルコール(0.02モル)、ピリジン(0.04モル、1.0当量)および塩化メチレン(50ml)を装入する。このフラスコを氷水浴中に浸漬し、塩化ベンゾイル(0.04モル、1.0当量)を1滴ずつ添加する。添加が終わった後、フラスコを室温まで加温し、混合物を1晩撹拌する。GCによりモニターして反応が終わると、混合物を塩化メチレンで希釈し、水、飽和塩化アンモニウム、水、飽和重炭酸ナトリウムおよび食塩水で結果として(consequently)洗浄する。この溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮する。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製して、無色油または白色固体として生成物を生じる。
【0127】
Brueker 500MHzもしくは400MHz NMR分光計で、溶媒としてCDCl(ppmとして)を使用してH NMRデータが得られる。
【0128】
上述の合成によって生成されたアミドエステルを、以下の表1中に提供している。
【0129】
【表1】

【表2】

【0130】
2.プロ触媒の調製
プロ触媒前駆体(表2に示した重量による)および2.52ミリモルの内部電子供与体(すなわちハロゲン化アミドエステル)を、機械的攪拌機を取り付け、底部濾過部を有するフラスコに装入する。TiClとクロロベンゼンとの混合溶媒(体積により1/1)60mlをこのフラスコに導入する。この混合物を115℃まで加熱し、250rpmで撹拌して60分間同温度のままとした後、液体を濾別する。混合溶媒60mlを再び添加し、撹拌しながら同一の所望温度で30分間反応を継続させ、続いて濾過する。この方法を1回繰り返す。得られた固体を、周囲温度で70mlのイソ−オクタンを使用して洗浄する。濾過により溶媒を除去した後、固体を、N流によりまたは真空下で、乾燥する。
【0131】
【表3】

【0132】
MagTi−1は、平均粒径50ミクロンを有し、組成MgTi(OEt)Clを有する混合Mag/Ti前駆体(米国特許第6,825,146号の実施例1により調製したMagTi前駆体)である。SHAC(商標)310は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,825,146号の実施例2により作製した、内部電子供与体として安息香酸エチルを有する安息香酸エステル含有触媒(平均粒径27ミクロンを有するBenMagプロ触媒前駆体)である。それぞれの得られたプロ触媒組成物についてのチタン含量を、表3中に掲げている。内部供与体についてのピークは、GC分析からの滞留時間に対応している。さらなるキャラクタリゼーションは行われない。
【0133】
【表4】

【0134】
3.重合
重合は、1ガロンオートクレーブ中において液体プロピレンで行われる。状態調節の後、反応器に1375gのプロピレンと目標量の水素とを装入し、62℃に持って行く。0.25ミリモルのDCPDMSを、7.2mlのイソオクタン中の0.27Mトリエチルアルミニウム溶液に添加し、続いて鉱油中の5.0重量%プロ触媒スラリーを添加する(実際の固体重量は、以下の表中に示される)。この混合物を、反応器に注入して重合を開始する前に、周囲温度で20分間予備混合する。この予備混合した触媒成分を、高圧触媒注入ポンプを使用して、イソオクタンと一緒に反応器中にフラッシュする。発熱した後、温度を67℃に制御する。全重合時間は1時間である。
【0135】
4.ポリマー試験
ポリマー試料は、沈降かさ密度、メルトフローレイト(MFR)、キシレン可溶物(XS)、多分散指数(PDI)および最終融点(TMF)について試験される。指定されない限り、XSはViscotek法を使用して測定される。
【0136】
以下の表4に示されるように、アミドエステルのハロゲン化は、SHAC(商標)310前駆体およびMagTi−1前駆体の両方について触媒生産性および/またはポリマー特性を向上させる。
【0137】
【表5】

【0138】
内部電子供与体としてハロゲン化アミドエステルを使用すると、従来のDiBPプロ触媒と比較してMWDが広くなる。BenMagプロ触媒前駆体(すなわちSHAC(商標)310)を使用すると、対応するEEDについて広いMWDを維持しながら、触媒活性およびXSが著しく改良される。
【0139】
ハロゲン化アミドエステル内部供与体およびSHAC(商標)310前駆体から作製したプロ触媒は、高い触媒活性、より低いXSおよびより高いTMFを示す。その上、得られたポリマーのPDIは、DiBP系プロ触媒にDCPDMSを使用して達成することができるPDIよりも際立って高い。
【0140】
5.外部電子供与体
【0141】
【表6】

【表7】

【0142】
低いタクティシティ(高いXS)のためDiBP系プロ触媒については有用ではない多くのEEDが、ハロゲン化アミドエステル系プロ触媒で使用するのに適している。驚くべきことに、ハロゲン化アミドエステルプロ触媒についてのPDIへのEEDの効果は、DiBP系プロ触媒に使用した場合の同一EEDの効果と異なっている。例えば、EEDとしてTEOS、BMMDMHおよびTEPを使用したDiBPプロ触媒から生成したポリプロピレンのPDI値は、EEDとしてDCPDMSを使用したDiBPプロ触媒から生成したポリプロピレンのPDI値よりも低い。これに反して、これらの同一のEEDを使用してハロゲン化アミドエステルプロ触媒から生成したポリプロピレンのPDI値は、EEDとしてDCPDMSを使用したDiBP系プロ触媒から生成したポリプロピレンのPDI値よりも高い。XSへの効果も異なっている。DiBP系プロ触媒について非アルコキシシランEEDは高いXSをもたらすが、他方で同一の非アルコキシシランEEDがハロゲン化アミドエステルプロ触媒については低いXSを呈する(表5)。多くのポリマーの最終使用用途について低いXSは基本的必要要件である。さらに、本出願人らは、驚くべきことに、EED特に非シランEEDにより、ハロゲン化アミドエステル触媒および得られたポリマーについて用途可能性が広がることを見出している。上記の表5に示されるように、EEDを使用してポリマー特性を操作し、ハロゲン化アミドエステル系プロ触媒の特性変動範囲を広げることができる。
【0143】
【表8】

【0144】
重合反応中へのALA導入は、触媒系に自己制限特性を与えることにより工程操作性を向上させる。ミリスチン酸イソプロピル(IPM)および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート(2,2,4-trimethyl-1,3-pentanediol dibenzoate)(TMPnDODBz)などのカルボン酸エステルが、適切な自己制限剤である。EED/ALA混合物がハロゲン化アミドエステル系プロ触媒と一緒に使用される場合、この触媒は高い触媒活性を示し、得られたポリマーは低いXS、高いPDIおよび高いTMFを示す(表6)。EEDは、単独でも、またはALAと組み合わせて使用できる。
【0145】
ハロゲン化アミドエステルプロ触媒を、様々なEED単独と、またはALAと組み合わせて使用すると、高い触媒活性、低いXS、高いPDIおよび高いTMFが得られる。
【0146】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されずに、下記の特許請求範囲の範囲内に入ることになる実施形態の一部および種々の実施形態の要素の組合せを含めた、これらの実施形態の修正された形態を含むことを特に意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(I):
【化11】

(式中、R〜Rは同一でありまたは異なり、R〜Rのそれぞれは、水素、ハロゲン、および炭素原子1〜20個を有する非環状アルキル基からなる群から選択され、ならびにR〜Rの少なくとも1つが非環状アルキル基であり、ならびに
ArおよびArは同一でありまたは異なり、ならびにArおよびArのそれぞれは、炭素原子6〜20個を有するアリール基および炭素原子7〜20個を有するアリールアルキル基からなる群から選択され、ならびにArおよびArの少なくとも1つはハロゲン化されている)を有するハロゲン化アミドエステル。
【請求項2】
ArおよびArのそれぞれが、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基およびフェナントレニル基からなる群から選択される、請求項1に記載のハロゲン化アミドエステル。
【請求項3】
〜Rの少なくとも2つが、炭素原子1〜6個を有する非環状アルキル基である、請求項1または2に記載のハロゲン化アミドエステル。
【請求項4】
構造(II):
【化12】

(式中、R11〜R13の少なくとも1つ、およびR21〜R23の少なくとも1つは、ハロゲンである)を有する、請求項1から3のいずれかに記載のハロゲン化アミドエステル。
【請求項5】
12およびR22のそれぞれが、塩素およびフッ素からなる群から選択される、請求項4に記載のハロゲン化アミドエステル。
【請求項6】
およびRのそれぞれが、炭素原子1〜6個を有するヒドロカルビル基である、請求項1から5のいずれかに記載のハロゲン化アミドエステル。
【請求項7】
およびRのそれぞれが、炭素原子1〜6個を有するヒドロカルビル基である、請求項1から6のいずれかに記載のハロゲン化アミドエステル。
【請求項8】
マグネシウム部分と、チタン部分と、ハロゲン化アミドエステルを含む内部電子供与体との組み合わせ
を含むプロ触媒組成物。
【請求項9】
ハロゲン化アミドエステルが、構造(I):
【化13】

(式中、R〜Rは同一でありまたは異なり、R〜Rのそれぞれは、水素、ハロゲン、炭素原子1〜20個を有するヒドロカルビル基および炭素原子1〜20個を有する置換したヒドロカルビル基からなる群から選択され、ならびに
ArおよびArは同一でありまたは異なり、ならびにArおよびArのそれぞれは、炭素原子6〜20個を有するアリール基および炭素原子7〜20個を有するアリールアルキル基からなる群から選択され、ならびにArおよびArの少なくとも1つはハロゲン化されている)を有する、請求項8に記載のプロ触媒組成物。
【請求項10】
安息香酸エステルを含む、請求項8または9に記載のプロ触媒組成物。
【請求項11】
ハロゲン化アミドエステルを含む内部電子供与体を含むプロ触媒組成物と、
助触媒と
を含む触媒組成物。
【請求項12】
ケイ素化合物、二座化合物、ジエーテル、ジオールエステル、カルボン酸エステル、アミン、亜リン酸エステルおよびこれらの組合せからなる群から選択される外部電子供与体を含む、請求項11に記載の触媒組成物。
【請求項13】
カルボン酸エステル、ジエーテル、ジオールエステルおよびこれらの組合せからなる群から選択される活性制限剤を含む、請求項11または12に記載の触媒組成物。
【請求項14】
重合条件下において、オレフィンを、ハロゲン化アミドエステルを含む触媒組成物と接触させるステップと、
ハロゲン化アミドエステルを含むオレフィン系ポリマーを形成するステップと
を含む、オレフィン系ポリマーの製造方法。
【請求項15】
オレフィンがプロピレンであり、約5.0〜約20.0の多分散指数を有するプロピレン系ポリマーを形成するステップを含む、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2013−521228(P2013−521228A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555138(P2012−555138)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2011/026029
【国際公開番号】WO2011/106497
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】