説明

ハードバイアスのシード構造を有する磁気センサ

【課題】
ハードバイアスのシード構造を有する磁気センサを提供する。
【解決手段】
データ密度増加させるため縮小したギャップ間隔を提供する新規なハードバイアス構造を有する磁気センサ。本磁気センサは、磁気シールド上で形成される第1および第2の側面を備えるセンサ積層体を含む。薄い絶縁体層は、センサ積層体の側面上および最下部シールド上に形成される。Cu−Oを含む下地層は、絶縁体層上に形成され、ハードバイアス層は下地層上に形成される。下地層にCu−Oを使用することにより、下地層をより薄くすることができつつ、その上方に形成されるハードバイアス層中でも優れた磁気特性を維持することを可能にする。下地層の膜厚縮小により、ギャップ間隔(最上部および最下部磁気シールド間の間隔)が縮小され、そのことは次にデータ密度の増加を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気データ記録に関し、特に、読み取りギャップ厚を縮小し、自由層のバイアシングを改善するための新規なシード層構造を備えるハードバイアス構造を有する、磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの中心は磁気ディスクドライブと呼ばれるアセンブリである。磁気ディスクドライブは回転磁気ディスクと、回転磁気ディスク表面近傍にあるサスペンションアームにより懸架される書き込み/読み取りヘッドと、サスペンションアームを揺動して回転ディスク上の選択された円形トラックの上に書き込み/読み取りヘッドを配設するアクチュエータとを含む。書き込み/読み取りヘッドは、エアベアリング表面(ABS:Air bearing surface)を有するスライダに直接接して位置する。ディスクが回転していない場合、サスペンションアームはスライダにディスクに接触するようバイアスをかけるが、ディスクが回転している場合、回転ディスクにより空気が旋回する。スライダがエアベアリング上に乗る場合、書き込み/読み取りヘッドは回転ディスクに磁気印加を書き込むことと回転ディスクから磁気印加を読み取ることとに使用される。書き込み/読み取りヘッドは、書き込み/読み取り機能を実行するためのコンピュータープログラムにしたがって動作する処理回路に接続される。
【0003】
書き込みヘッドは、少なくとも1つのコイルと、1つの書き込み極と、1つ以上の戻り極とを含む。コイルに電流が流れている場合、生じる磁界は磁束を書き込み極を介して流し、その結果書き込み極のチップから書き込み磁界が放射される。この磁界は近傍の磁気ディスクの一部を局所的に磁化し、1ビットのデータを記録するのに十分な強度である。書き込み磁界は、その後、磁気媒体の軟磁性裏打ち層(magnetically soft under−layer)を介して進行し書き込みヘッドの戻り極へ戻る。
【0004】
巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magnetoresistive)センサまたはトンネル接合磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistiv)センサのような磁気抵抗センサは、磁気媒体から磁気信号を読むために使用することができる。センサは、非磁性導電層(センサがGMRセンサである場合)、または、以下、固定層および自由層と呼ぶ、第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に挟まれる、薄膜で非磁性の電気的絶縁性バリア層(センサがTMRセンサである場合)を含む。磁気シールドは、センサ積層体の上下に位置付けられ、第1および第2の電気的リード線としても機能することができるため、電流が自由層、スペーサ層および固定層の平面に対し垂直方向に進行する(電流垂直面(CPP:Current−Perpendicular−to−Plane)モード)。固定層の磁化方向はエアベアリング表面(ABS)に対し垂直方向に固定されており、自由層の磁化方向はABSに対し平行に位置するが、外部からの磁界に応じて自由に回転する。固定層の磁化は、典型的には反強磁性層との交換結合により固定される。
【0005】
固定層および自由層の磁化が互いに平行である場合、伝導電子の散乱は最小化され、固定層および自由層の磁化が互いに反平行である場合、伝導電子の散乱は最大化される。読み取りモードでは、スピンバルブセンサの抵抗は回転ディスクからの磁界の大きさに対しおおよそ直線的に変化する。センス電流がスピンバルブセンサを介して伝導する場合、抵抗変化が引き起こす電位変化が検知され再生信号として処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
データ密度を最大化するために、センサの読み取りギャップを最小化することが必要である。読み取りギャップは、センサの最上部および最下部に形成される磁気シールド間の距離である。しかし、このギャップが縮小されるとともに、磁気自由層の安定したバイアシングの維持に関して問題が生じる。したがって、頑強な磁気バイアスを提供可能でありつつ、読み取りギャップを縮小させることができ、未来の磁気ディスクドライブに必要とされ求められているデータ密度の向上を達成する構造へのニーズは依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1および第2の側面を有するセンサ積層体と、センサ積層体の側面近傍に各々あり、各々Cu−Oを含む、第1および第2の下地層と、第1および第2の下地層のうちの1つの上方に各々形成される第1および第2のハードバイアス層とを含む、磁気センサを提供する。
【0008】
センサ積層体は最下部磁気シールド上に形成することができ、絶縁体の薄膜層はセンサ積層体側面上および最下部磁気シールド上に形成することができる。その後、下地層はこの絶縁層上に形成することができ、ハードバイアス層は下地層上に形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
下地層としてCu−Oを利用することにより、有利には、下地層を、従来可能とされてきた限度よりもさらに薄く作成することができる上、その上に形成されるハードバイアス層中の優れた磁気特性を依然として提供する。下地層の膜厚の縮小は、ギャップ間隔(上部シールドと下部シールドとの間の距離)を縮小させる。これは結果として、本磁気センサが使用される磁気記録システムのデータ密度を効果的に向上させる。
【0010】
これらの、および他の発明の特徴および利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことによって明らかになるであろう。図面において同一の番号は各図を通して同一の要素を示す。
【0011】
本発明の本質および利点ならびに好ましい使用形態に対するより十分な理解のため、以下の詳細な説明を添付図面と併せて参照されたい。ただし、図面は縮尺によらない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を例示するディスクドライブシステムの概略図である。
【図2】スライダのABSの図であり、これに接して設けられる磁気ヘッドの位置を示す。
【図3】本発明の方法により組み立てられるであろう磁気抵抗センサの一例のABSの図である。
【図4】本発明の実施形態に係る磁気センサを製造する方法を示す。
【図5】本発明の実施形態に係る磁気センサを製造する方法を示す。
【図6】本発明の実施形態に係る磁気センサを製造する方法を示す。
【図7】本発明の実施形態に係る磁気センサを製造する方法を示す。
【図8】本発明の実施形態に係る磁気センサを製造する方法を示す。
【図9】本発明の実施形態に係る磁気センサを製造する方法を示す。
【図10】本発明の実施形態に係る磁気センサを製造する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するために現在考慮される最良の実施形態を以下に述べる。この記載は、本発明の一般的な原理を例証する目的でなされるものであり、本発明で請求する発明概念を制限することを意図しない。
【0014】
ここで図1を参照すると本発明を具体化するディスクドライブ100が示されている。図1に示すように、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112は軸114上に支持され、ディスクドライブモータ118によって回転する。各ディスク上への磁気記録は、磁気ディスク112上、同心のデータトラック(図示せず)の環状パターン形状をとる。
【0015】
少なくとも1つのスライダ113が磁気ディスク112近傍に位置付けられ、各スライダ113は1つ以上の磁気ヘッドアセンブリ121を支持する。磁気ディスクが回転すると、スライダ113はディスク表面122上方を半径方向内側および外側へ移動し、磁気ヘッドアセンブリ121は所望のデータが書込まれている磁気ディスクの異なるトラックへアクセスすることができる。各スライダ113はサスペンション115を介してアクチュエータアーム119に取り付けられる。サスペンション115はディスク表面122に対してスライダ113にバイアスをかける軽微なばね力を提供する。各アクチュエータアーム119はアクチュエータ手段127に取り付けられる。図1に示すアクチュエータ手段127はボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)であってもよい。VCMは固定の磁界内で移動可能なコイルを備え、コイルの移動方向および移動速度は制御部129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0016】
ディスク記憶システムの動作中、磁気ディスク112の回転により、スライダ113とディスク表面122との間にエアベアリングが生成され、スライダに上向きの力または浮力を及ぼす。エアベアリングはこのようにサスペンション115の軽微なばね力を平衡させて、通常動作の間、小さく実質的には一定間隔で、スライダ113をディスク表面から離してわずかに上方で支持する。
【0017】
ディスク記憶システムの様々な構成要素は、動作中、アクセス制御信号および内部クロック信号のような制御部129によって生成される制御信号により制御される。典型的には、制御部129は論理制御回路、記憶手段およびマイクロプロセッサを含む。制御部129は、ライン123上には駆動モータ制御信号、またライン128上にはヘッド位置制御信号およびシーク制御信号といった制御信号を生成し、様々なシステムの動作を制御する。ライン128上の制御信号は、所望の電流プロファイルを提供し、ディスク112上の所望のデータトラックへスライダ113を最適に動かし位置付ける。書き込み/読み取り信号は記録チャネル125を介して書き込み/読み取りヘッド121へ、および書き込み/読み取りヘッド121から、通知される。
【0018】
図2を参照して、スライダ113における磁気ヘッド121の向きをより詳細に分かることができる。図2はスライダ113のABSの図であり、同図から分かるように誘導性の書き込み/読み取りセンサを含む磁気ヘッドは、スライダの後縁に位置する。上述した典型的な磁気ディスク記憶システムおよび添付の図1は、描写目的のみのものである。ディスク記憶システムは多数のディスクおよびアクチュエータを含んでもよく、各アクチュエータはいくつかのスライダを支持してもよいことは言うまでもない。
【0019】
図3は、本発明の実施形態に係る磁気センサ300のエアベアリング表面(ABS)を示す図である。センサ300は、第1の磁気シールド304と第2の磁気シールド306との間に挟まれるセンサ積層体302を含み、第1および第2の磁気シールド304、306は、磁気シールドとしても電気的リード線としても機能するよう電気的に伝導性の磁性材料から作成可能である。
【0020】
センサ積層体302は、磁気固定層構造308、磁気自由層構造310、ならびに、自由層構造308と固定層構造310との間に挟まれる非磁性のバリア層またはスペーサ層312を含むことができる。センサ300が巨大磁気抵抗効果(GMR)センサである場合、非磁性層312はCuのような電気的伝導材料である。他方では、センサ300がトンネル接合磁気抵抗センサ(TMR)である場合、層312は薄膜で、電気的絶縁材料である。
【0021】
キャッピング層314はセンサ積層体の最上部に形成可能であり、製造中にセンサ積層体302の他の層を保護する。センサ積層体302の上方の層に所望の結晶粒構造を発生させるため、シード層316もまたセンサ積層体の最下部に提供されてもよい。
【0022】
固定層構造は第1の磁気層318および第2の磁気層320を含み、第1および第2の磁気層318、320が、層318と層320との間に挟まれる非磁性反平行結合層322を通じて互いに反平行結合される、反平行結合構造をとることができる。非磁性反平行結合層は厚さ約4オングストローム(1オングストローム=0.1nm)のRu層とすることができる。IrMnまたはPtMnといった材料で作成される反強磁性材料層(AFM(anti−ferromagnetic)層)は、ABSに垂直な第1の方向に層318の磁化を強固に固定するため、層318と交換結合することができる。層318、320の間の反平行結合は、反対方向すなわち層318の磁化と反平行でありさらにABSに垂直な方向に層320の磁化を固定する。
【0023】
磁気自由層構造310は、矢印326によって示されるような、空気ベアリング表面に対し全体的に平行方向にバイアスされる磁化を有するが、外部から印加される磁界に応じてその方向を変更することができる。磁化の方向326は、ハードバイアス層328、330との静磁的結合によってこの方向に維持される。ハードバイアス層328、330は、Co−PtまたはCo−Pt−Crといった材料から作成することができる。この材料が所望の結晶粒構造(後述する)で形成される場合、この材料は硬磁性特性を有し層328、330にその磁化を維持させ、自由層310の磁化326をバイアスする安定したバイアス磁界を提供する。
【0024】
ハードバイアス層328、330は、薄膜絶縁層332によりセンサ積層体302からも最下部シールド304からも分離され、薄膜絶縁層332にはアルミナのような材料が可能である。この層332は、動作中、センス電流がシールド304とシールド306との間を、ハードバイアス層328、330を介して短絡するのを防ぐ。
【0025】
上記のごとく、層328、330が強磁性バイアスを提供するためには、ハードバイアス層328、330が所望の結晶粒構造を有することが必要である。ハードバイアス層328、330がこの結晶粒組織を有することを確実にするために、層328、330はシード層334上に堆積され、シード層334はハードバイアス層の前に堆積され、シード層334はその上に堆積されるハードバイアス層328、330上で所望の結晶粒構造を引き起こす。非磁性キャッピング層336もハードバイアス層328、330の上方に提供され、上方のシールド306からハードバイアス層328、330を磁気的に分断する。これらのキャッピング層336は、Taといった材料または別のそのような適切な材料から作成されることができる。
【0026】
センサの性能に重要なパラメータの1つはセンサのギャップ間隔である。図3をなおも参照して、ギャップ間隔GS(Gap Spacing)は磁気シールド304と磁気シールド306との間の間隔である。センサの読み取り可能なデータのビット長を決定するため、このギャップ間隔GSは重要である。したがって、ギャップ間隔GSが小さいほど、磁気ビットが小さくなり記録システムのデータ密度が大きくなる。ギャップ間隔GSを狭くするために、ハードバイアス層328、330の膜厚を縮小させることが必要である。このことは、しかし、ハードバイアス層328、330によって提供され、自由層310を安定化するための磁化の量を減少させることになり、そのためハードバイアス層328、330の膜厚において縮小可能な量は制限されている。実際は、しかし、側部領域の全体構造にはハードバイアス層328、330だけでなく、絶縁体層332、シード層334およびキャッピング層も含む。したがって、理論上これらの他の層332、334または336のうちのいずれかを縮小することにより、ギャップ厚を縮小できるかもしれない。しかし、信頼性と安定性の観点から層332および336の縮小可能な量には制限がある。
【0027】
上記のごとく、シード層334はハードバイアス層328、330における自由層のバイアシング特性を良好に維持するために必要である。しかし、さらに上記のごとく、シード層334の膜厚はギャップ間隔GSに寄与する。したがって、ギャップ間隔GSを最小化するためにできるだけシード層334の膜厚を縮小することが望ましいであろう。先行技術ではシード層に関して、しかし、その膜厚が約30オングストローム以下に縮小される場合、シード層がハードバイアス層中で所望の結晶粒組織を効果的に維持する能力を失うという問題が経験されてきた。Cr−Moのような従来のCrベースの体心立方(BCC:Body Centered Cubic)材料がシード層に使用されると、シード層膜厚が30オングストローム以下であれば硬磁性特性を達成することができないという点で問題がある。この場合、ハードバイアス層は必要とされる結晶構造を達成することなく軟磁気特性を示す。この状態では自由層にバイアスする安定した磁界を印加することはもはや不可能であり、ハードバイアス層の効果は無くなる。
【0028】
本発明は、しかし、ハードバイアス層328、330中で良好な特性を維持することができる新規なシード層334を提供することにより、シード層334が非常に薄く(例えば3nm以下に)作られる場合でさえもこの制限を克服する。本発明では、シード層334はCu−Oから作成され1〜2nmまで薄くすることができる。それは今まで使用されたシード層での可能であった膜厚よりはるかに薄い。このことは、自由層バイアシング強度を失うことなくギャップ間隔GSのさらなる縮小を可能にする。加えて、自由層310とハードバイアス層328、330との間のギャップは縮小することができる。また、ハードバイアス層328および330からの磁界は、自由層へより効果的に導入することができる。このことは、より従来型のCrベースのシード層と比較すると、同じギャップ間隔GSにおいてハードバイアス磁界の約20%増を予期できることを意味する。その結果、磁気ヘッドの安定性の向上および解像度の改善を達成することができる。
【0029】
Cr−Mo下地層を使用する先行技術の構造では、フィルム厚が30オングストローム未満の場合、保磁力が急落し軟磁性の特性を示した。Cr−Mo下地層が薄く作られる場合、Co−Pt結晶構造は六方最密充填構造(HCP:Hexagonal Close Packed)構造から面心立方格子(FCC:Face Centered Cubic)構造へ変化し、このことが硬磁性特性を示さなくなる要因であると考えられた。一方、Cu−Oが下地層334に使用された場合、下地層334の厚さが30オングストローム未満だった時さえハードバイアス層328、330の保磁力の急落はなく、また、下地層334がわずか10オングストロームだった場合には1500Oe(エルステッド)(1Oe=約79.577A/m)の保磁力を達成した。高い残留磁束密度であったことも明らかであり、ハードバイアス層328、330の良好な特性を示した。下地層が薄く作られた時さえ、ハードバイアス層328、330の結晶方位は大きく変化せず、その結果良好な硬磁性特性を提供することが可能であった。
【0030】
図4から図10は、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドを製造する方法を示す。図4について、第1の磁気シールド402は、Co−FeまたはNi−Feのような磁気的および電気的に伝導性の材料から作成される。その後、複数のセンサ層404が全面的な薄膜状に最下部シールド402の上に堆積される。センサ層404は図3のセンサ積層体302を構成する材料層のすべてを含むことができ、他のセンサ構造の使用も可能である。一連のマスク層406がその後センサ層404上に堆積される。マスク層406は、センサ層404上に形成されたハードマスク層408、ハードマスク層408上に形成された画像転写層410、および画像転写層410上に形成されたフォトレジスト層412を含むことができる。ハードマスク層408は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)のような化学機械研磨への耐性がある材料から作成されることが望ましい。画像転写層にはデュリミド(DURIMIDE(登録商標))のような可溶ポリイミド材料が可能で、また反射防止被膜としても機能することができる。マスク406は他の付加的な、または別の層を含むことができるが、しかし、この構造はほんの一例である。
【0031】
図5について、フォトレジスト層412がフォトリソグラフによりパターン成形され、同図に示すようなマスク形状を定義し、このことによりセンサ幅が定義可能である。その後、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)が施され、層408、410上にフォトレジストマスク412のパターンを転送するためマスク412によって保護されないマスク層408、410の一部を除去し、図6に示す構造を得る。その後、イオンミリングが施され、下に横たわるセンサ層404上にマスク406の構造を転送するため、マスク層406によって保護されていないセンサ層404の部分を削除することにより、図7に示す構造を得る。このイオンミリングは、フォトレジスト(図6)および画像転写層410の一部を最も除去し、図7に示す縮小されたマスク積層体406を得る。
【0032】
図8について、一連の層はハードバイアス構造を提供するために堆積される。初めに、電気的絶縁層802が堆積される。これは酸化アルミニウム層であることが好ましく、さらに原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)のような共形堆積工程により堆積されることが好ましい。その後、新規な下地層804が絶縁体層802上に堆積される。下地層804は酸化銅材料であるCu−Oから作成される。Cu−O下地層は、Ar/O混合ガス雰囲気中でのスパッタ蒸着により堆積されることが好ましい。Cu−O下地層804は約30オングストローム以下の厚みで堆積可能である。本発明の1つの可能な実施形態では、Cu−O下地層804は、約20sccm(standard cubic centi meter per minute)(1sccm=1.68875E−3 Pa・m3/sec)のArガス流量下、スパッタ蒸着チャンバ内で10〜20オングストロームまたは約15オングストロームの厚みに堆積可能である。
【0033】
下地層804が堆積された後、ハードバイアス層材料806が堆積される。この層806は、Co−PtまたはCo−Pt−Crから作成されることが好ましい。その後、ハードバイアス層806上にハードバイアスキャッピング層808が堆積される。ハードバイアスキャッピング層808はTaのような非磁性材料とすることができるが、同様に別の材料も可能である。最後に、化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)耐性材料層(CMP耐性材料)810がCMPストップ層810を提供するために堆積される。この層810はダイヤモンドライクカーボン(DLC)のような材料とすることができる。代わりに、キャッピング層808がCMPに耐性の材料である場合、この層808はCMPストップ層として機能することができ、付加的層810は必要ではない。層802、804、806、808は、層808がセンサ積層体404の上面と同じ高さになるような、膜厚に堆積されるのが望ましい。
【0034】
実験の結果、下地層804の堆積中、チャンバに導入される酸素の割合が少ない場合、印加されたハードバイアス層806はその保磁力および残余飽和磁束密度がいずれも小さく、軟磁性特性を示した。しかし、酸素の量が増加されるとともに、硬磁性特性は改善し、そのため保磁力と残留磁束密度は増加した。構造解析の結果、Cu膜形成中の酸素の量が少ない場合、Cu−OがCuのようにFCCの構造を有したが、酸素の量が増加した場合、C軸が優先配向面である単斜晶系結晶のCu−Oが形成されたことを示した。Cu−O上面の原子配列はBCC構造(110)面に近いが、上面単位格子の軸比は面内で1.6であり、これはHCP構造のCo−Pt(100)の軸比と実質的に同じである。BCC構造(Cr−Moなど)では、この軸比は1.4であり、したがって、BCC構造にHCP構造のCo−Ptが積層される場合、圧縮応力および引張応力が面内に生じ、その結果、必要とされるHCP構造はハードバイアス層の結晶構造中で達成されず、硬磁性特性は薄いCr−Mo膜では達成されないと信じられている。
【0035】
Co−PtのようなHCP構造を有する硬磁気バイアス層がこの方法で形成される時、下地層804においてCu−Oを使用することにより、10〜20オングストロームという十分に小さな下地層804フィルム厚において、従来よりも高い保磁力および高い残留磁束密度を達成することが可能である。
【0036】
層802、804、806、808、810を堆積した後、化学機械研磨が施され残りのマスク層410を削除しかつ構造を平坦化する。その後、迅速な反応性イオンエッチング(RIE)を施すことができ、残りのCMPストップ層408、810を除去し図9に示される平面構造を得る。
【0037】
その後、別のマスキング、イオンミリングおよびリフィル工程を構造の後端(例えばストライプ高さ)を定義するために施すことができる。この工程は、当業者によく知られており、ここでは明瞭化を目的とした非常に詳細な記述はしない。その後、センサ構造がこのように形成され、上部磁気シールド1002は電気めっき工程によって形成可能で、図10に示される構造を得る。最下部シールド402のように、最上部シールド1002は、Ni−FeまたはCo−Feのような導電性磁性材料から形成可能である。
【0038】
Cu−O下地層のy方向薄膜化によりもたらされる効果を確認するため、有限要素法を使用してTMR素子に印加されたハードバイアス電界強度を計算した。計算において、読み取り素子の形状は、既存のヘッド素子形状(トラック幅35nm、シールド間距離(GS)30nm)、標準シールド形状および標準の磁気ハードバイアス膜形状を想定した。更に、材料パラメータについて、シールドの透磁率は2000とし、磁区制御膜の磁気パラメータは実効値とした。このモデルを使用して、Cu−O下地層および従来の下地層による、各磁区制御膜の磁気モーメントに対する磁区制御膜の磁界を計算した。
【0039】
膜厚35オングストロームの従来型Cr−Mo下地層を有する構造と、膜厚わずか15オングストロームの新規なCu−O下地層を有する構造とで、飽和磁束密度分布を比較した。下地層が厚い場合、上層シールド層とハードバイアス層との間のギャップは狭かった。その結果、磁束は低い透磁率であるシールド側部に漏洩する可能性が高く、自由層領域に印加された磁束は小さかった。
【0040】
さらに、ハードバイアス層の単位面積当りの飽和磁束密度(tBr)に関し、従来構造(45オングストローム厚Cr−Mo下地層を有する)のバイアス磁界を15オングストローム厚Cu−O下地層を有するセンサと比較した。結果、tBrは200Gμmとみなされた。Cu−O下地層の場合、実証された磁区制御膜の磁界は従来の下地層と比較して約20パーセント大きく、このことによりCu−Oの効果を確認することができた。
【0041】
さらに新規なCu−Oシード層の利点を確立するために、従来の下地層およびCu−O下地層を備える実際の磁気センサを作成した。バイアス磁界強度を両タイプのセンサについて測定した。抵抗への磁界依存性を調整によって得た。ハードバイアス磁界を比較した場合、Cu−O下地層が使用された時、任意のハードバイアス膜厚で高いハードバイアス磁界が得られたことが分かった。また、上に議論されたように、Cu−O下地層それ自身を薄くすることができる。これらの結果は概ね計算結果と一致していた。
【0042】
様々な実施形態を上に説明したが、例示のためにのみ提示され制限するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲以内にある他の実施形態もまた当業者には明らかであろう。したがって、発明の幅および範囲は上記の典型的な実施形態のうちのいかなるものによっても制限されるべきでないが、下記の特許請求の範囲およびそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0043】
100 ディスクドライブ
112 磁気ディスク
113 スライダ
114 軸
115 サスペンション
118 ディスクドライブモータ
119 アクチュエータアーム
121 磁気ヘッドアッセンブリ
122 ディスク表面
123、128 ライン
125 記録チャネル
127 アクチュエータ手段
129 制御部
300 磁気センサ
304、306、402、1002 磁気シールド層
302 センサ積層体
308 磁気固定層構造
310 磁気自由層構造
312 非磁性層
314、336、808 キャッピング層
316、334 シード層
318、320 磁気層
322 反磁性材料層
326 磁化の方向
328、330、806 ハードバイアス層
332、802 絶縁層
334 シード層
404 複数のセンサ層
406 マスク層
408 ハードマスク層
410 画像転写層
412 フォトレジスト層
802 絶縁体層
804 下地層
806 ハードバイアス層
808 ハードバイアスキャッピング層
810 CMPストップ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の側面を有するセンサ積層体と、
前記センサ積層体の側面近傍に各々あり、各々Cu−Oを含む、第1および第2の下地層と、
前記第1および前記第2の下地層のうちの1つの上方に各々形成される第1および第2のハードバイアス層と
を含む、磁気センサ。
【請求項2】
前記第1および前記第2の下地層の膜厚が各々30オングストローム以下である、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記第1および前記第2の下地層の膜厚が各々10〜20オングストロームである、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第1および前記第2の下地層の膜厚が各々約15オングストロームである、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記第1および前記第2のハードバイアス層の各々の上方に形成される非磁性キャッピング層をさらに含む、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第1および前記第2のハードバイアス層の各々がCo−Ptを含む、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記第1および前記第2のハードバイアス層の各々がCo−Ptを含む、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記第1および前記第2のハードバイアス層の各々がCo−Pt−Crを含む、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記第1および前記第2の下地層が各々ほぼ体心立方構造である上面を有する、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記下地層が、面内軸比が1.6の上面を有する、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項11】
最下部磁気シールドと、
前記最下部磁気シールド上に形成され第1および第2の側面を有するセンサ積層体と、
前記センサ積層体の側面上および前記最下部磁気シールド上に、各々形成される第1の絶縁層および第2の絶縁層と、
少なくとも前記第1および前記第2の絶縁層のうち1つの一部分の上方に各々形成され、各々Cu−Oを含む第1および第2の下地層と、
前記第1および前記第2の下地層のうち1つの上方に各々形成される第1および第2のハードバイアス層と
を含む、磁気センサ。
【請求項12】
前記第1および前記第2の下地層の膜厚が各々30オングストローム以下である、請求項11に記載の磁気センサ。
【請求項13】
前記第1および前記第2の下地層の膜厚が各々10〜20オングストロームである、請求項11に記載の磁気センサ。
【請求項14】
前記第1および前記第2の下地層の膜厚が各々約15オングストロームである、請求項11に記載の磁気センサ。
【請求項15】
前記第1および前記第2のハードバイアス層の各々の上方に形成される非磁性キャッピング層をさらに含む、請求項11に記載の磁気センサ。
【請求項16】
前記第1および前記第2のハードバイアス層の各々がCo−Ptを含む、請求項11に記載の磁気センサ。
【請求項17】
前記第1および前記第2のハードバイアス層の各々がCo−Ptを含む、請求項11に記載の磁気センサ。
【請求項18】
前記第1および前記第2のハードバイアス層の各々がCo−Pt−Crを含む、請求項11に記載の磁気センサ。
【請求項19】
前記第1および前記第2の下地層が各々ほぼ体心立方構造である上面を有する、請求項11に記載の磁気センサ。
【請求項20】
前記下地層が、面内軸比が1.6の上面を有する、請求項11に記載の磁気センサ。
【請求項21】
ハウジングと、
前記ハウジング内に保持される磁気媒体と、
前記ハウジング内に枢動可能に搭載されるアクチュエータと、
前記磁気媒体近傍にあり、駆動のため前記アクチュエータと接続されるスライダと、
前記スライダ上に形成される磁気センサと
を含む磁気ディスクドライブであって、
前記磁気センサは、
第1および第2の側面を有するセンサ積層体と、
前記センサ積層体の側面近傍に各々あり、各々Cu−Oを含む、第1および第2の下地層と、
前記第1の下地層および前記第2の下地層のうちのいずれかの上方に各々形成される第1および第2のハードバイアス層と
を含む、磁気ディスクドライブ。
【請求項22】
前記第1および前記第2の下地層の膜厚が各々30オングストローム以下である、請求項21に記載の磁気ディスクドライブ。
【請求項23】
前記第1および前記第2の下地層の膜厚が各々10〜20オングストロームである、請求項21に記載の磁気ディスクドライブ。
【請求項24】
前記第1および前記第2の下地層の膜厚が各々約15オングストロームである、請求項21に記載の磁気ディスクドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−4166(P2013−4166A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137694(P2012−137694)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【出願人】(503116280)エイチジーエスティーネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】