説明

バクチオール組成物およびその調製方法

本発明は、不純物、特にフラノクマリン不純物類の濃度が低いバクチオール組成物(UP246)を提供する。本発明はさらに、バクチオール組成物を分離、精製および分析するための改良法を提供する。さらに本発明は、精製したバクチオール組成物およびその配合物を、シクロオキシゲナーゼ(COX)、リポキシゲナーゼ(LOX)により仲介される種々の疾患および状態、軽度の炎症状態、ならびに種々の微生物感染症の予防又は治療に使用する方法を提供する。本発明方法は、その必要があるホストに、有効量の本発明組成物を、医薬的に許容できるキャリヤーと共に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物、特にフラノクマリン不純物類の含量が低い、バクチオール(bakuchiol)組成物およびそれに関連する配合物に関する。本発明は、バクチオール組成物を分離、精製および分析するための改良法を提供する。さらに本発明は、シクロオキシゲナーゼ(COX)、リポキシゲナーゼ(LOX)により仲介される種々の疾患および状態、軽度の炎症状態ならびに種々の微生物感染症を予防又は治療するために、精製バクチオール組成物およびその配合物を使用する方法をも提供する。
【背景技術】
【0002】
以下にその構造を示すバクチオールは、芳香族環上に1個のヒドロキシル基および不飽和炭化水素鎖をもつフェノール系化合物である。それはオランダビユ(補骨脂)(Psoralea corylifolia L.)(マメ科(Luguminosae))の種子およびソラレア・グランデュロサ・L.(Psoralea glandulosa L.)(狭義のマメ科(Papilionaceae))の気生部分(aerial part)から単離された。
【0003】
【化1】

【0004】
植物オランダビユから抽出されたバクチオールは、抗腫瘍、抗酸化活性(Haraguchi et al. (2002年9月) Phytother Res. 16(6): 539-544)、細胞毒性((1989年12月) 薬学雑誌 109(12):962-965)、抗菌活性(Newton et al. (2002年1月) J Ethnopharmacol. 79(l);57-67)、および肝保護活性(Cho et al. (2001年11月) Planta Med. 67(8): 750-751)をもつことが示された。それは、トポイソメラーゼII阻害薬であることも示された(Sun et al. (1998年3月) J Nat Prod. 6l(3): 362-366)。バクチオールはPTPlB活性を用量依存性で阻害し、20.8 +/- 1.9μMのIC50値を示す(Kim et al. (2005年1月) Planta Med. 71(l): 87-99)。放射性ヨウ素化バクチオールの製造、および抗腫瘍薬としてのインビトロ評価が、Batapら((2005年3月) Appl Radiat Isot. 62(3): 389-393)により報告された。バクチオールのテルペノイド鎖は、その抗酸化活性に重要であると報告された(Adhikari et al. (2003年9月) Chem Res Toxicol. 16(9): 1062-1069)。
【0005】
バクチオールは、口腔病原体に対する抗菌薬の開発に有用な化合物であり、虫歯を予防又は治療するために食品添加剤および口内洗浄剤中に使用するための大きな可能性をもつことも報告された(Katsura et al. (2001年11月) Antimicrob Agents Chemother. 45(11): 3009-3013)。抗炎症活性および解熱活性に基づくオランダビユ活性抽出物の分画により、バクチオールが他の3種類の活性化合物:シクロバクチオール(cyclobakuchiol)AおよびBならびにアンゲリシン(angelicin)と共に分離された(Backhouse et al. (2001年11月) J Ethnopharmacol. 78(1): 27-31)。報告によれば、バクチオールは白血球機能、たとえば炎症部位におけるエイコサノイド産生、遊走および脱顆粒を制御し、弱い分泌型および細胞内PLA2阻害薬である。それは、それぞれヒト好中球および血小板ミクロソームによるLTB4およびTXB2の形成を用量依存性で低下させる(Ferrandiez et al. (1996年9月) J Pharm Pharmacol. 48(9): 975-980.)。それは、RAW 264.7マクロファージにおいて核内転写因子-カッパBを不活性化することにより、誘導性一酸化窒素シンターゼ遺伝子の発現をも阻害する(Pae et al. (2001年9月) International Immunopharmacol. l(9-10): 1849-1855)。バクチオールがミトコンドリアの脂質過酸化を阻害することも報告された(Haraguchi et al. (2000年8月) Planta Med. 66(6): 569-571)。オトロビウム・プベッセンス(Otholobium pubescens)(マメ科(Fabaceae))からのバクチオールの分離および分離されたバクチオールの抗高血糖活性が、Krenisky et al. Biol Pharm Bull. (1999年10月) 22(10): l137-1140)に記載されている。さらに、バクチオールおよび他の多数のクマリンタイプの化合物を含有するBuguzhi(オランダビユの果実)剤と呼ばれる粗抽出物は、骨治癒を促進すると報告された(US 2004/0043089A1)。
【0006】
したがって、バクチオールは種々の疾患および状態の予防又は治療に使用するためのきわめて大きな可能性をもつ生物活性天然物である。しかし、主に天然源中のこの化合物の濃度が低く、かつ共存する有毒化合物があるため、その使用について現在は多くの制限がある。ソラレア属植物から分離したバクチオール組成物の使用に関する主な問題のひとつは、ソラレン類、たとえばソラレン(psoralen)およびイソソラレン(isopsoralen)の存在である。それらの構造を以下に示す。フラノクマリン類としても知られるソラレン類は、多くの果実および野菜を含めた植物における天然二次代謝産物である。
【0007】
【化2】

【0008】
ソラレンを含有する植物および合成ソラレン類の取扱い、局所適用および摂取には、多数の健康上のリスクが伴う。ソラレン類は光毒性物質として周知であり、紫外線に対する皮膚の感受性を高め、皮膚癌を促進する(Epstein (1999) Med. Surg. 18(4): 274-284)。ソラレンは、成長阻害を誘発することがラットで示された(Diawara et al. (1997) Cancer Lett. 114(1-2): 159-160)。ソラレア属植物の粗抽出物による生腺毒性は、視床下部-下垂体-性腺系の破壊と直接関連があるとされた(Takizawa et al. (2002) J. Toxicological Sciences 27(2): 97-105)。ソラレン類であるベルガプテン(bergapten)(5-メトキシソラレン)およびキサントトキシン(xanthotoxin)(8-メトキシソラレン)を雌ラットの飼料中に入れて経口投与すると、出産率、着床部位数、仔の匹数、黄体数、受胎子宮および空の子宮の重量、ならびに循環エストロゲン濃度が用量依存性で低下した(Diawara et al. (1999) J. Biochem. Molecular Toxicology 13(3/4): 195-203)。ソラレン類は肝酵素CYPlAlおよびUGT1A6のmRNAを誘導することも示された;これは、生殖毒性ならびに卵胞機能低下および排卵低下の所見を、エストロゲン代謝がソラレンにより増強されたことにより説明できることを示唆する(Diawara et al. (2003年5-6月) Pediatr Pathol Mol Med. 22(3): 247-58.)。ソラレンおよびイソソラレンは、ソラレア属種子の乾燥重量の約0.1〜2%、エタノールその他の有機溶媒による粗抽出物の重量の約1〜20%を占める。バクチオール組成物、特に植物源から分離したものの純度および安全性を高めるために、有毒化合物、たとえばソラレンおよびイソソラレンならびに他のクマリン類を除去する方法が、なお求められている。
【0009】
細胞膜からアラキドン酸(AA)が放出されて代謝されると、幾つかの異なる経路で前炎症性代謝産物が生成する。議論の余地はあるが、炎症に至る最も重要な2つの経路は、リポキシゲナーゼ(LOX)およびシクロオキシゲナーゼ(COX)により仲介される。これらはそれぞれロイコトリエンおよびプロスタグランジンを生成する平行した経路であり、これらが炎症反応の開始と進行に重要な役割をもつ。これらの血管作用性化合物はケモタキシンであり、組織への炎症細胞の浸潤を促進し、炎症反応を持続させる作用をもつ。
【0010】
COX酵素の阻害は、大部分の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)に属する作用機序である。COX酵素には2つの異なるイソ型(COX-1およびCOX-2)があり、これらは約60%の配列相同性をもつが、発現プロフィールおよび機能が異なる。COX-1は構成型酵素であり、生理的に重要なプロスタグランジンの産生に関連するとされている;プロスタグランジンは正常な生理機能の調節、たとえば血小板凝集、胃の細胞機能の保護、および正常な腎機能の維持を補助する(Dannhardt and Kiefer (2001) Eur. J. Med. Chem. 36: 109-26)。第2イソ型COX-2は、前炎症性サイトカイン、たとえばインターロイキン-lβ(IL-lβ)および他の成長因子により誘導される型の酵素である(Herschmann (1994) Cancer Metastasis Rev. 134: 241-56; Xie et al (1992) Drugs Dev. Res. 25: 249-65)。このイソ型は、アラキドン酸(AA)からのプロスタグランジンE2(PGE2)産生を触媒する。
【0011】
COXとLOXに対する二重特異性を示す阻害薬は、アラキドン酸代謝の多数の経路を阻害するという明らかな有益性をもつであろう。そのような阻害薬は、プロスタグランジン(PG)の炎症作用および多数のロイコトリエン(LT)の炎症作用を、それらの産生の制限により遮断するであろう。この作用には、アナフィラキシーの遅反応性物質としても知られるPGE2、LTB4、LTD4およびLTE4の血管拡張作用、血管透過作用および走化作用が含まれる。これらのうちLTB4が最も効力の高い走化作用およびケモキネシス作用をもつ(Moore (1985) Prostanoids: pharmacological, physiological and clinical relevance, Cambridge University Press, ニューヨーク, pp. 229-230)。
【0012】
COX阻害薬の作用機序は大部分の一般的なNSAIDのものと重なるので、COX阻害薬は、炎症が重大な役割をもつ一過性皮膚状態および慢性疾患において、炎症に伴う痛みおよび腫張を含めた多数の同じ症状の処置に用いられる。したがって、これらの炎症仲介物質の産生に関与する酵素は、慢性関節リウマチ、骨関節炎およびアルツハイマー病などの疾患の発病に関与する炎症の処置を目標とする多数の新規薬物の開発に際して標的となった。
【0013】
一過性皮膚状態には、軽度の擦過傷または接触性皮膚炎、ならびにプロスタグランジンおよびロイコトリエン経路と直接関連する皮膚状態、たとえば皮膚過色素沈着症、加齢斑、白斑(vitilago)、全身性エリテマトーデス、乾癬、癌、メラノーマ、および哺乳類の他の皮膚癌に伴う炎症の処置が含まれる。COX阻害薬の用途が拡張されて、全身性エリテマトーデス(SLE)(Goebel et al. (1999) Chem. Res. Toxicol. 12: 488-500; Patrono et al. (1985) J. Clin. Invest. 76: 1011-1018)、およびリウマチ性皮膚状態、たとえば強皮症などの疾患を含むようになった。COX阻害薬はリウマチ性ではない炎症性皮膚状態、たとえば乾癬の軽減にも用いられ、これらの場合、プロスタグランジンの過剰産生により起きる炎症の軽減が直接に有益となっている可能性がある(Fogh et al. (1993) Acta Derm Venerologica 73: 191-193)。最近、全身性硬化症患者の皮膚に5-リポキシゲナーゼが過剰発現すると報告された。このことから、LOX経路が全身性硬化症の発病に重要であるという可能性、および有効な療法標的である可能性が示唆された(Kowal-Bielecka (2001) Arthritis Rheum. 44(8): 1865)。さらに、アレルゲン注射部位でCOX-2および5-LOX両方の酵素活性が上昇することは、二重COX/LOX阻害薬を初期および後期両方の皮膚アレルギー反応症状の処置に使用できることを示唆する(Church (2002) Clin. Exp. Allergy. 32(7): 1013)。
【0014】
プロスタグランジンおよびロイコトリエンは、創傷、火傷、熱傷、アクネ、微生物感染症、皮膚炎、ならびに皮膚の他の多数の疾患および状態の生理的および病的経過に際しても重要な役割をもつ。熱傷または薬品熱傷の後に著しく増大したシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ活性を伴う前炎症カスケードの活性化は、十分に文献に記載されており、その後の重篤な症状および多臓器不全に至る可能性のある免疫機能不全の発現に重要な役割をもつ(Schwacha (2003) Burns 29(1): 1;He (2001) J. Burn Care Rehabil. 22(1): 58)。
【0015】
抗炎症薬としての使用のほか、COX阻害薬の他の有望な役割は癌の処置におけるものである。多様なヒト悪性疾患においてCOXの過剰発現が証明されており、COX阻害薬は皮膚腫瘍を伴う動物の処置に有効であることが示された。作用機序は完全には理解されていないが、COXの過剰発現はアポトーシスを阻害し、腫瘍形成細胞タイプの侵襲性を高めることが示された(Dempke et al. (2001) J. Can. Res. Clin. Oncol. 127: 411-17; Moore and Simmons (2000) Current Med. Chem. 7: 1131-1144)。COX産生のアップレギュレーションが皮膚の日光性角化症および扁平上皮癌の発症に関与することが示唆された。DNA損傷により生じた病変部にもCOX量の増加がみられた(Buckman et al. (1998) Carcinogenesis 19: 723)。したがって、COXの発現およびタンパク質機能を抑制すると、炎症反応が低下し、結果的に癌に進行するのが低下すると思われる。事実、インドメタシンおよびセレブレックス(Celebrex(商標))などのCOX阻害薬は、紫外線誘発による紅斑および腫瘍形成を処置するのに有効であることが認められた(Fischer (1999) Mol. Carcinog. 25: 231; Pentland (1999) Carcinogenesis 20: 1939)。最近、リポキシゲナーゼの過剰発現も、上皮腫瘍の発症(Muller (2002) Cancer Res. 62(16): 4610)およびメラノーマの発癌(Winer (2002) Melanoma Res. 12(5):429)に関連することが示された。リポキシゲナーゼ経路から産生されるアラキドン酸(AA)代謝産物は、腫瘍増殖関連のシグナル伝達に重要な役割をもつ;これは、リポキシゲナーゼ経路の阻害が癌進行の阻止に有効な標的となるはずであることを示唆する(Cuendet (2000) Drug Metabol Drug Interact 17(4): 109;Steele (2003) Mutat Res. 523-524: 137)。したがって、二重COX/LOX阻害活性をもつ療法薬の使用は、癌の予防的化学療法に著しい利点をもたらす。
【0016】
アクネは毛包脂腺ユニットの慢性疾患であり、皮脂腺による皮脂の過剰産生、毛胞上皮剥離、細菌増殖および炎症を特徴とする。ホルモン平衡異常、微生物感染および炎症が、アクネ発症に関連する3つの主因である(Toombs (2005) Dermatol. Clin. 23(3): 575-581; Nishijima et al. (2000) J. Dermatol. 27(5): 318-323)。アクネの予防又は治療のための現在の療法薬には、抗炎症薬、たとえばレチノイド、抗菌薬およびホルモン性薬物が含まれる(Leyden (2003) J. Am. Acad. Dermatol. 49(3 Suppl): S200)。
【0017】
アクネに関連する主な細菌種はプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)およびグラム陽性表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)である(Perry and Lambert (2006) Lett. Appl. Microbiol. 42(3): 185-188)。現在の療法薬には、過酸化ベンゾイル、ならびに他の抗菌薬、たとえばアンピシリンおよびゲンタマイシンが含まれる(Fermandez et al. (2005) Expert Rev. Anti Infect Ther. 3(4): 557-591)。残念ながらプロピオニバクテリウム・アクネスおよび表皮ブドウ球菌の両方による薬物耐性が報告された(Nishijima et al. (2000) J. Dermatol. 27(5): 318-323)。
【0018】
抗炎症薬、たとえばレチノイド(Millikan (2003) J. Am. Acad. Dermatol. 4(2): 75)およびCOX阻害薬サリチル酸(Lee (2003) Dermatol Surg 29(12): 196)の局所適用も、アクネの処置のための有効かつ安全な療法であることが臨床的に証明された。さらに、アクネ、乾癬、日焼け、結節性紅斑、低温型グロブリン血症、スイート症候群、全身性肥満細胞症、じんま疹、皮斑様脈管炎および結節性脈管炎を含めた定型および非定型皮膚病の療法薬としての非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の使用については、十分に文献記載されている(Friedman (2002) J. Cutan Med. Surg. 6(5): 449)。
【0019】
歯周疾患は、歯の支持組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨、および歯の周囲の他の組織)の一部または全部の炎症および感染症である。歯肉炎(歯肉)および歯周炎(歯肉および骨)は、2つの主な歯周疾患の形態である。国立歯牙頭蓋顔面研究所(National Institute of Dental and Craniofacial Research)が配布した米国口腔情報(National Oral Information)によれば、米国成人の80%が現在何らかの形の歯周疾患を伴うと推定される。歯周疾患は清浄な歯にペリクルが形成されたとき開始する。このペリクルは好気性グラム陽性菌(大部分は放線菌属(actinomyces)および連鎖球菌属(streptococcus))を引き付け、これらが歯に付着して歯垢を形成する。数日以内に歯垢は肥厚し、下層の細菌は酸素が尽きて嫌気性の運動性杆菌およびスピロヘータが歯肉下領域に群落を形成し始める。嫌気性菌が放出する内毒素は、炎症、歯肉組織破壊、さらに骨損失を引き起こす。歯周疾患には下記のように特徴づけることができる4つの主な段階がある。歯周疾患に起因する顕微病変が若干の患者の肝臓、腎臓および脳にみられたという点で、歯周疾患の破壊的影響は歯の衛生および健康以外にも及ぶ。
【0020】
【表1】

【0021】
歯周疾患を処置するための現在の方法は、感染の抑制を主な目標とするものに限られている(Genco et al. (1990) Contenporary Periodontics, The CV. Mosby Company, セントルイス, pp. 361-370.)。一般的な抗菌薬または抗歯垢薬には、クロルヘキシジン(chlorhexidine)、トリクロサン(Triclosan)、フッ化スズ、リステリン(Listerine)、過酸化水素、塩化セチルピリジニウムおよびサンギナリン(sanguinarin)アルカロイドが含まれる。抗菌性口内洗浄剤、消毒用チップ、抗生物質ゲル/マイクロスフェア、および酵素抑制薬ドキシサイクリン(doxycycline)の処方は、歯周疾患を治療および抑制するために好ましい非-機械/物理的選択肢である。残念ながら、現在のところ炎症を抑制し、かつ感染を阻止する機能をもつ、単一の歯周医薬はない。
【0022】
以上の全般的記載および以下の詳細な記載は例示および説明のためのものにすぎず、特許請求の範囲に記載した本発明を限定するためのものではないことを理解すべきである。
【発明の開示】
【0023】
発明の概要
本発明にはバクチオールを含む新規な組成物が含まれ、これは不純物、特にフラノクマリン不純物類を実質的に含まない。この組成物を、本明細書中でUP256とも呼ぶ。ある態様において、本発明の組成物はマメ科(Luguminosae)、狭義のマメ科(Papilionaceae)、クスノキ科(Lauraceae)およびモクレン科(Magnoliaceae)を含めた科の植物から得られるが、これらに限定されない。他の態様において、本発明の組成物はソルレア属(Psorlea)、サッサフラス属(Sassafras)、モクレン属(Magnolia)およびアストラクチローデス属(Astractylodes)を含めた属の植物から得られるが、これらに限定されない。好ましい態様において、植物はオランダビユ(補骨脂)(マメ科)またはソラレア・グランデュロサ・L.(狭義のマメ科)を含めた群から選択されるが、これらに限定されない。本発明の組成物は、植物全体から、または種子、幹、樹皮(bark)、側枝(twig)、塊茎(tuber)、根、根皮(root bark)、若芽(young shoot)、根茎(rhixome)、花および他の生殖器官、葉および他の気生部分を含めた(これらに限定されない)1以上の各植物部分から分離される。
【0024】
本発明組成物中のバクチオールの量は、抽出方法および粗抽出物の精製の程度に応じて約14〜100重量%の可能性がある。1態様において、組成物中のバクチオールの量は30〜100%である。他の態様において、組成物中のバクチオールの量は、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%よりなる群から選択される。好ましい態様において、組成物中のバクチオールの量は約30%である。
【0025】
不純物には、本発明のバクチオール組成物中に望ましくない物質がいずれも含まれる。一般に、バクチオール組成物中に存在する不純物は、天然源からの分離および合成方法を含めて、それらを調製するために用いたプロセスの結果である。たとえば、バクチオールを天然源から分離する場合、不純物にはフラノクマリン類、たとえばソラレン、イソソラレンおよび他のクマリンタイプの成分が含まれる。
【0026】
本発明には、天然源から得られるバクチオールおよび関連化合物の粗組成物を分離および精製するための改良法も含まれる。これらの組成物を分離および精製するための改良法は、これらの化合物を植物源から抽出し、粗抽出物を塩基性溶液で加水分解し、カラムクロマトグラフィー、抽出に続く結晶化、溶媒分配、再結晶、およびその組合わせを含めた方法(これらに限定されない)で精製する工程を含む。粗抽出物をこの方法で精製したものは、フラノクマリン不純物類、たとえばソラレンおよびイソソラレンを本質的に含まない。したがって、これらの化合物に関連する光毒性、局所刺激性、発癌性および生殖毒性の可能性は本質的に排除される。本発明方法による分離および精製後のこれらの組成物の純度は、約27〜100%から選択される範囲にある。
【0027】
本発明にはバクチオール組成物の分析方法も含まれ、これにより不純物の検出および定量が可能になる。本発明のこの態様において、バクチオール組成物の分析方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により組成物を分析する工程を含む。HPLC分析により、混合物中の種々の成分を定量することができ、ソラレア属植物中のバクチオール、ソラレン、イソソラレンおよび他の天然成分を追跡して、抽出、加水分解および精製プロセスの指針とするための手段も得られる。
【0028】
本発明には、COXおよびLOXにより仲介される、皮膚、口腔、歯および歯肉の疾患および状態を予防又は治療する方法も含まれる。COXおよびLOXにより仲介される、皮膚、口腔、歯および歯肉の疾患および状態を予防又は治療するこの方法は、その必要があるホストに、フラノクマリン不純物類を実質的に含まない有効量のバクチオール含有組成物を、医薬的に許容できるキャリヤーと共に投与する(好ましくは局所投与する)ことを含む。前記のように、本発明組成物中のバクチオールの量は27〜100%である。好ましい態様において、組成物中のバクチオールの量は約30%である。同様に前記のように、好ましい態様においてバクチオールはソラレア属植物に含まれる植物(1種類以上)から分離される。
【0029】
COXおよびLOXにより仲介される皮膚の疾患または状態には、アクネ、ふけ、日焼け、熱傷、局所創傷;真菌、微生物およびウイルス感染により起きる軽度の炎症状態;白斑、全身性エリテマトーデス、乾癬、癌、メラノーマ、ならびに哺乳類の他の皮膚癌;紫外(UV)線、化学薬品、熱、風および乾燥環境への曝露により生じる皮膚損傷;しわ、皮膚のたるみ(saggy skin)、目の周囲のしわおよびくま、皮膚炎、ならびに皮膚の他のアレルギー関連状態が含まれるが、これらに限定されない。COX/LOXにより仲介される口腔、歯および歯肉の疾患および状態には、歯周疾患、口腔前癌状態、口腔癌、および他の口腔悪性疾患、歯肉および歯の知覚過敏;義歯の理学的移殖、外傷、傷害、歯軋りおよび他の軽度の損傷により口腔、歯肉または舌に起きる後遺症、歯髄炎、刺激、痛みおよび炎症;歯垢および歯石、歯の脱灰、タンパク質分解および虫歯(齲食)(caries、decay)が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明にはさらに、骨関節炎および慢性関節リウマチの病的状態による全般的な関節の痛みおよび硬直、運動性欠如ならびに身体機能喪失;月経痙攣、動脈硬化症、肥満症、糖尿病、アルツハイマー病、呼吸器系アレルギー反応、慢性静脈不全、乾癬、慢性緊張性頭痛、片頭痛、炎症性腸疾患、前立腺癌および他の充実性腫瘍を含めた(これらに限定されない)、COXおよびLOXにより仲介される他の疾患および状態を予防又は治療する方法が含まれる。
【0031】
COXおよびLOXにより仲介される他の疾患および状態を予防又は治療するこの方法は、その必要があるホストに、フラノクマリン不純物類を実質的に含まない有効量のバクチオール含有組成物を、医薬的に許容できるキャリヤーと共に投与することを含む。前記のように、組成物中のバクチオールの量は27〜100%である。好ましい態様において、組成物中のバクチオールの量は約30%である。同様に前記のように、好ましい態様においてバクチオールはソラレア属植物に含まれる植物(1種類以上)から分離される。
【0032】
さらに本発明には、細菌感染、ウイルス感染または真菌感染を含めた(これらに限定されない)微生物感染により仲介される皮膚、口腔、歯または歯肉の疾患および状態を予防又は治療する方法であって、その必要があるホストに、フラノクマリン不純物類を実質的に含まない有効量のバクチオール含有医薬組成物を、医薬的に許容できるキャリヤーと共に投与することを含む方法が含まれる。微生物感染により仲介される皮膚、口腔、歯肉および歯の疾患および状態には、ふけ、アクネ、足白癬;虫歯、歯肉炎、歯周炎、歯髄炎、義歯の理学的移殖、外傷、傷害、歯軋り、新生物および他の変性過程で起きる歯周状態、白質、ペリクル、歯垢、歯石ならびに着色よりなる群から選択される歯周疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
1態様において、細菌はプロピオニバクテリウム・アクネスまたは表皮ブドウ球菌から選択される。
本発明組成物は当業者に既知のいかなる方法でも投与できる。投与方法には経腸(経口)投与、非経口(静脈内、皮下および筋肉内)投与および局所投与が含まれるが、これらに限定されない。好ましい態様において、本発明組成物は局所投与される。本発明による予防又は治療方法は、その必要がある患者に、不純物、特にフラノクマリン不純物類を実質的に含まない療法有効量のバクチオール含有組成物を、体内または局所投与することを含む。
【0034】
以上の全般的記載および以下の詳細な記載は例示および説明のためのものにすぎず、特許請求の範囲に記載した本発明を限定するためのものではないことを理解すべきである。
【0035】
好ましい態様の詳細な記述
本発明には、不純物濃度の低いバクチオール組成物(UP246)が含まれる。本発明には、バクチオール組成物を分離および精製するための改良法が含まれる。本発明にはバクチオール組成物を分析する方法も含まれ、これにより種々の不純物を検出および定量することができる。さらに本発明には、精製したバクチオール組成物およびその配合物を、シクロオキシゲナーゼ(COX)、リポキシゲナーゼ(LOX)により仲介される種々の疾患および状態、軽度の炎症状態、ならびに種々の微生物感染症の予防又は治療に使用する方法が含まれる。
【0036】
本明細書中で本発明の各観点を述べるために種々の用語を用いる。本発明の構成要素の記述を明確にするための補助として、以下の定義を示す。
単数の語は1以上のそのものを表わすことを留意すべきである。したがって、単数の語、“1以上の”、および“少なくとも1”は互換性をもって用いられる。
【0037】
本発明中で用いる“バクチオール”は、次式の化合物を表わす:
【0038】
【化3】

【0039】
式中の中心の二重結合は、シスまたはトランスのいずれであってもよい。構造がバクチオールに関連するフェノール化合物もこの定義に含まれる。
本発明中で用いる用語“不純物”には、バクチオール組成物中に望ましくない物質がいずれも含まれ、一般にこれらは天然源からバクチオールを分離する際に生じる。不純物という用語には、ソラレン、イソソラレンおよび他のクマリンタイプの不純物を含めた(これらに限定されない)群から選択されるフラノクマリン化合物が含まれるが、これらに限定されない。不純物は、これらの組成物を得るための合成プロセスで生じる不純物をも表わす。
【0040】
本発明中で用いる“療法”は、治療および/または予防を含む。療法という語を用いる場合、これはヒトおよび他の動物に関連する。
“医薬的または療法に有効な用量または量”は、目的とする生物学的結果を誘発するのに十分な投与レベルを表わす。その結果は、疾患の徴候、症状もしくは原因の軽減、または目的とする生体系の他のいずれかの変化であってよい。
【0041】
“プラセボ”は、疾患の徴候、症状もしくは原因を軽減しうる目的とする生物学的結果を誘発するために医薬的または療法に有効な用量または量の物質を、不活性物質で置換したものを表わす。
【0042】
“ホスト”または“患者”は、本明細書に記載する組成物を投与する、生存しているヒトまたは動物対象である。したがって、本明細書に記載する発明は動物およびヒトへの適用に使用でき、用語“患者”または“ホスト”を限定とみなすべきではない。動物に適用する場合、用量範囲は動物の体重を考慮して下記に従って決定できる。
【0043】
本明細書全体に種々の引用文献を示したことを留意されたい。各引用文献の全体をそれぞれ本明細書に援用する。
本発明にはバクチオールを含む新規な組成物が含まれ、これは不純物、特にフラノクマリン不純物類を実質的に含まない。この組成物を、本明細書中でUP256とも呼ぶ。ある態様において、組成物はソラレア属植物から選択される植物(1種類以上)から得られる。好ましい態様において、植物はオランダビユ(補骨脂)(マメ科)またはソラレア・グランデュロサ・L.(狭義のマメ科)を含めた群から選択されるが、これらに限定されない。本発明の組成物は、植物全体から、または種子、幹、樹皮、側枝、塊茎、根、根皮、若芽、根茎、花および他の生殖器官、葉および他の気生部分を含めた(これらに限定されない)1以上の各植物部分から分離される。
【0044】
本発明組成物中のバクチオールの量は、抽出方法および粗抽出物の精製の程度に応じて約14〜100重量%の可能性がある。1態様において、組成物中のバクチオールの量は30〜100%である。他の態様において、組成物中のバクチオールの量は、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%よりなる群から選択される。好ましい態様において、組成物中のバクチオールの量は約30%である。
【0045】
不純物には、本発明のバクチオール組成物中に望ましくない物質がいずれも含まれる。一般に、バクチオール組成物中に存在する不純物は、天然源からの分離および合成方法を含めて、それらを調製するために用いたプロセスの結果である。たとえば、バクチオールを天然源から分離する場合、不純物にはフラノクマリン類、たとえばソラレン、イソソラレンおよび他のクマリンタイプの成分が含まれる。
【0046】
本発明には、天然源から得られる粗製のバクチオール組成物を分離、分析および精製するための改良法も含まれる。これらの組成物を分離および精製するための改良法は、これらの化合物を植物源から抽出し、粗抽出物を塩基性溶液で加水分解し、カラムクロマトグラフィー、抽出に続く結晶化、溶媒分配、再結晶、およびその組合わせを含めた方法(これらに限定されない)で精製する工程を含む。この方法で精製した粗抽出物は、フラノクマリン不純物類、たとえばソラレンおよびイソソラレンを、本質的に含まない。
【0047】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりバクチオール組成物を分析する方法を、実施例1(表1)に示す。HPLC分析により、混合物中の種々の成分を定量することができ、ソラレア属植物中のバクチオール、ソラレン、イソソラレンおよび他の天然成分を追跡して、抽出、加水分解および精製プロセスの指針とするための手段も得られる。
【0048】
実施例2に記載する6種類の異なる有機溶媒系を2組の抽出条件下で用いて、植物源からのバクチオール抽出の効率を評価した。結果を表2に示す。表2を参照すると、多数の有機溶媒のいずれかおよび/またはその組合わせを用いてバクチオールをソラレア属植物から抽出できることが分かる。種々の抽出物中のバクチオールの量は、最大29.1重量%から13.7重量%の範囲であった。石油エーテル抽出により粗抽出物中の最高純度のバクチオールが良好な回収率で得られると判定された。粗抽出物の代表的なHPLCクロマトグラムを図1に示す。この図を参照すると、粗抽出物はバクチオールならびにフラノクマリン不純物類ソラレンおよびイソソラレンを含有していたことが分かる。実施例3に、70℃の石油エーテルによる大規模抽出を記載する。
【0049】
カラムクロマトグラフィーによる粗バクチオール抽出物の精製効率を、実施例4に示す。8種類の異なるタイプの樹脂を、それらがバクチオールをフラノクマリン不純物類から分離する能力について個々に評価した。シリカゲルおよびCG-161樹脂は両方とも満足すべき分離を示した。しかし、工業的規模での粗植物抽出物のカラムクロマトグラフィー分離は、粗植物抽出物が複雑であるためこれらの試料の装填容量がきわめて低いのはもちろん、高価な装置および試薬ならびに熟練者が必要であるという点で、一般に経済的にみて実現できない。
【0050】
実施例5〜7に、バクチオールをフラノクマリン不純物類から分離するための新規な経済的方法を記載する。この方法は、これらの不純物を含有する組成物を塩基で処理することを含む。下記のスキームにより示すように、説明のためにNaOHを用いて塩基処理すると、フラノクマリン類のラクトン環が開くことによりそれらは対応するカルボン酸塩に変換され、次いでこれらを多様な方法で混合物の残部から容易に分離することができる。
【0051】
【化4】

【0052】
塩基性溶液は、ラクトン環を開くのに使用できるいかなる塩基からも選択でき、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化リチウムが含まれるが、これらに限定されない。種々の濃度およびpHをもつようにこの溶液を選択して、前記の酸塩への変換を最大にすることができる。反応の速度、効率および収率を最大にするために、反応混合物を種々の温度および圧力下で加熱することもできる。
【0053】
クマリン類がそれらの各カルボン酸塩に完全に変換されるのを確実にするために、反応経過をHPLCで追跡することができる。加水分解の前と後の粗組成物のHPLCクロマトグラムを図2AおよびBに示す。反応が完了した時点で(HPLCにより判定)、反応液を多様な方法で処理することができる。これにはカラムクロマトグラフィー、抽出に続く結晶化、溶媒分配、再結晶、またはその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。こうして精製した粗抽出物は、フラノクマリン不純物類、たとえばソラレンおよびイソソラレンを本質的に含まない。
【0054】
実施例5〜7を参照すると、多様な条件下で加水分解し、続いて溶媒分配すると、フラノクマリン類ソラレンおよびイソソラレンがバクチオール組成物から効率的に除去される。さらに、バクチオールの純度は約10〜30%から30〜50%に高まる。溶媒分配に使用できる有機溶媒には石油エーテル、酢酸エチル、エチルエーテル、ヘキサン、クロロホルム、プロパノール、ブタノールおよび塩化メチレン、ならびに他の水-非混和性の有機溶媒が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
実施例7に記載する1態様においては、粗製反応混合物を直接カラムに装填し、続いて極性溶媒で溶離する。この態様によれば、70〜100%のバクチオールを含む組成物を得ることができる。実施例7では、加水分解後に粗製反応混合物を直接CG-161 cdカラムに装填し、続いてメタノールで溶離して、高純度(約99%)のバクチオールを得た。この態様により他のタイプの樹脂を使用でき、これにはXAD (Amerlite)、CG-71/CG-161、または他のタイプのポリスチレン;イオン交換樹脂およびシリカゲルが含まれるが、これらに限定されない。水、メタノール/水、エタノール/水、アセトン/水、およびアセトニトリル/水、ならびに他の組合わせの極性溶媒(これらに限定されない)を含めた群から選択される溶媒でカラムを溶離することができる。加水分解前より加水分解後の方がカラム装填容量がはるかに高いことは注目に値する。さらに、フラノクマリンを含まないこれらの高純度バクチオール組成物の色は淡褐色で、色および有効物質組成ともにきわめて安定であり、このためそれらは配合、貯蔵および化粧用に特に適切である。
【0056】
別態様においては、粗製反応混合物をまず有機溶媒で抽出し、続いてさらにクロマトグラフィーおよび/または溶媒分配および/または再結晶により精製することができる。前記のように、抽出方法およびその後の精製の程度に応じて、約30〜100%を含むバクチオール組成物を容易に得ることができる。
【0057】
本発明には、精製したバクチオール組成物およびその配合物を、シクロオキシゲナーゼ(COX)、リポキシゲナーゼ(LOX)により仲介される種々の疾患および状態、軽度の炎症状態、ならびに種々の微生物感染症の予防又は治療に使用する方法が含まれる。フラノクマリン類を含まないこれらの新規なバクチオール組成物(本明細書中でUP256と呼ぶ)の生物学的特性および安全性を、実施例8〜11の記載に従って評価した。
【0058】
実施例8では、高純度UP256組成物(MH-258-12-08、純度99%)をCOX-1およびCOX-2両酵素の阻害について試験した。UP256は両酵素に対して有効な阻害活性を示した。COX-1に対するIC50は2.34μMと判定され、一方、COX-2に対するIC50は78μMと定量された。したがって、この組成物は一般的なCOX阻害薬よりバランスのとれたCOX-1およびCOX-2酵素の調節をもたらす。たとえば、COX-2よりCOX-1に対して150倍以上有効なCOX-1選択的阻害薬であるアスピリンは、消化器副作用を引き起こす。逆に、COX-1よりCOX-2に対して50〜200倍高い有効性をもつCOX-2選択的阻害薬であるビオックス(Vioxx)(商標)、セレブレックス(Celebrex)(商標)およびベクストラ(Bextra)(商標)はそれほどの消化器損傷を起こさないが、これらのCOX-2選択的薬物は心血管リスクを高める。これらに対し、本明細書に開示する新規組成物は、COX-1選択的NSAIDにより起きる胃刺激およびCOX-2選択的阻害薬により負荷される心血管リスクなしに、最良のエイコサノイド経路調節をもたらす。
【0059】
UP256によるCOX阻害の作用機序がNSAIDによるものと全く異なることも重要である。アスピリン、ビオックス(商標)、セレブレックス(商標)およびベクストラ(商標)は、COX酵素に共有結合により不可逆的に結合して、緊密に結合した酵素-阻害薬複合体を形成する。この相互作用により、酵素の活性部位およびサイドポケットが完全に変化し、酵素が破壊される(Walker and Kurumbal et al. (2001) Biochem. 357: 709-718)。これに対し、UP256はより弱い可逆的結合によってCOX酵素を阻害する。この相互作用プロセスでは、COX酵素の構造および機能が不可逆的に変化することはなく、その結果、はるかに良好な耐容性および安全性プロフィールが得られる。
【0060】
実施例9には、LOX阻害アッセイを記載する。LOXを阻害すると、慢性炎症の症状に直接関連する食細胞性ロイコトリエンの蓄積が減少し、消化器副作用の可能性も低下する。そのような有効性を実施例9で証明する。実施例9を参照すると、高純度UP256組成物MH-258-12-08(純度99%)を4種類の濃度で、ヒト5-リポキシゲナーゼ(5-LOまたは5-LOX)酵素に対して二重試験した。用量応答およびIC50(酵素活性を50%阻害するのに必要な濃度)の測定により、COX-2阻害活性を確認した。用量応答曲線を図6に示す。LOX阻害のIC50は3.41μMと判定された。したがって、UP256はロイコトリエン産生を有意に低下させるという有益性をさらに備えている。このロイコトリエン産生低下は、イブプロフェン(ibuprofen)など伝統的な非ステロイド系抗炎症薬よりはるかに優れている。
【0061】
実施例10には、UP256の抗菌活性を測定するために設計した実験を記載する。実施例10を参照すると、UP256を8種類の濃度で、6種類の異なる微生物の阻害について二重試験した。UP256は、最小有効濃度1μg/mLで、2種類の特定の微生物、プロピオニバクテリウム・アクネスおよびグラム陽性表皮ブドウ球菌を阻害することが認められた。これらの微生物は両方とも、アクネ、皮膚炎および他の皮膚感染症と直接関連がある。UP256は、30μg/mLの濃度で中等度の毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)阻害も示した。有毛表皮糸状菌(Epidermophyton floccosum)、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)またはピチロスポルム・オバーレ(Pityrosporum ovale)に対しては阻害がみられなかった。
【0062】
実施例10の記載に従って、UP256を30%および70%の濃度で、マウスにおける急性毒性について試験した。被験マウスに経口1日量2g/kgを14日間投与した。マウスは体重増加および血液化学に関して有害作用を示さなかった。さらに、調べた主要臓器のいずれにも毒性はみられなかった。結論として、体重、血液検査および組織学的データは、処置グループについて対照グループと差がなかった。14日間の試験で、有害作用はみられなかった。したがって、UP256は確実な安全性プロフィールをもつと結論できる。
【0063】
さらに、UP256はlog P = 6.13の分配係数をもつ。化合物の分配係数は、その親水性/親油性バランスの熱力学的尺度、したがって潜在的な生物学的利用能を示す。6.13の分配係数をもつことは、送達系中に配合した際にこの化合物が高い細胞膜透過性および生物学的利用能をもつことを意味する。
【0064】
したがって本発明には、COXおよびLOXにより仲介される、皮膚、口腔、歯および歯肉の疾患および状態を予防又は治療する方法が含まれる。COXおよびLOXにより仲介される、皮膚、口腔、歯および歯肉の疾患および状態を予防又は治療するこの方法は、その必要があるホストに、フラノクマリン不純物類を実質的に含まない有効量のバクチオール含有医薬組成物を、医薬的に許容できるキャリヤーと共に投与する(好ましくは局所投与する)ことを含む。前記のように、本発明組成物中のバクチオールの量は27〜100%である。好ましい態様において、組成物中のバクチオールの量は約30%である。同様に前記のように、好ましい態様においてバクチオールはソラレア属植物に含まれる植物(1種類以上)から分離される。
【0065】
COXおよびLOXにより仲介される皮膚の疾患または状態には、アクネ、ふけ、日焼け、熱傷、局所創傷;真菌、微生物およびウイルス感染により起きる軽度の炎症状態;白斑、全身性エリテマトーデス、乾癬、癌、メラノーマ、ならびに哺乳類の他の皮膚癌;紫外(UV)線、化学薬品、熱、風および乾燥環境への曝露により生じる皮膚損傷;しわ、皮膚のたるみ、目の周囲のしわおよびくま、皮膚炎、ならびに皮膚の他のアレルギー関連状態が含まれるが、これらに限定されない。COX/LOXにより仲介される口腔、歯および歯肉の疾患および状態には、歯周疾患、口腔前癌状態、口腔癌、および他の口腔悪性疾患、歯肉および歯の知覚過敏;義歯の理学的移殖、外傷、傷害、歯軋りおよび他の軽度の損傷により口腔、歯肉または舌に起きる後遺症、歯髄炎、刺激、痛みおよび炎症;歯垢および歯石、歯の脱灰、タンパク質分解および虫歯(齲食)が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
本発明にはさらに、骨関節炎および慢性関節リウマチの病的状態による全般的な関節の痛みおよび硬直、運動性欠如ならびに身体機能喪失;月経痙攣、動脈硬化症、肥満症、糖尿病、アルツハイマー病、呼吸器系アレルギー反応、慢性静脈不全、乾癬、慢性緊張性頭痛、片頭痛、炎症性腸疾患、前立腺癌および他の充実性腫瘍を含めた(これらに限定されない)、COXおよびLOXにより仲介される他の疾患および状態を予防又は治療する方法が含まれる。
【0067】
COXおよびLOXにより仲介される他の疾患および状態を予防又は治療するこの方法は、その必要があるホストに、フラノクマリン不純物類を実質的に含まない有効量のバクチオール含有組成物を、医薬的に許容できるキャリヤーと共に投与することを含む。前記のように、本発明組成物中のバクチオールの量は27〜100%である。好ましい態様において、組成物中のバクチオールの量は約30%である。同様に前記のように、好ましい態様においてバクチオールはソラレア属植物に含まれる植物(1種類以上)から分離される。
【0068】
さらに本発明には、細菌感染、ウイルス感染または真菌感染を含めた(これらに限定されない)微生物感染により仲介される皮膚、口腔、歯または歯肉の疾患および状態を予防又は治療する方法であって、その必要があるホストに、フラノクマリン不純物類を実質的に含まない有効量のバクチオール含有組成物を、医薬的に許容できるキャリヤーと共に投与することを含む方法が含まれる。微生物感染により仲介される皮膚、口腔、歯または歯肉の疾患および状態には、ふけ、アクネ、足白癬;虫歯、歯肉炎、歯周炎、歯髄炎、義歯の理学的移殖、外傷、傷害、歯軋り、新生物および他の変性過程で起きる歯周状態、白質、ペリクル、歯垢、歯石ならびに着色よりなる群から選択される歯周疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
1態様において、細菌はプロピオニバクテリウム・アクネスまたは表皮ブドウ球菌から選択される。
本発明組成物は当業者に既知のいずれかの方法で投与できる。投与方法には経腸(経口)投与、非経口(静脈内、皮下および筋肉内)投与および局所投与が含まれるが、これらに限定されない。好ましい態様において、本発明組成物は局所投与される。本発明による予防又は治療方法は、その必要がある患者に、不純物、特にフラノクマリン不純物類を実質的に含まない療法有効量のバクチオール含有組成物を、体内または局所投与することを含む。
【0070】
本発明による予防又は治療方法は、その必要があるホストに、合成した、および/または単一植物もしくは複数植物から分離した、療法有効量のUP256(バクチオール)、ならびに医薬的に許容できるキャリヤーを、全身または局所投与することを含む。UP256の純度には、この化合物を採取および精製するために用いた方法に応じて30〜100%が含まれるが、これに限定されない。好ましい態様において、有効な無毒性量のUP256用量は、一般に局所配合物の全重量を基準として0.001〜100%、および/またはホストの総体重を基準として0.001〜200 mg/kgの範囲から選択される。当業者は、処置すべき個々の疾患に最適な用量をルーティンな臨床試験により判定することができる。
【0071】
本発明には、合成した、および/または単一植物もしくは複数植物から分離したUP256(バクチオール)、ならびに医薬的に許容できるキャリヤーの種々の組成物を、酵素、受容体、微生物および他のインビトロおよびインビボモデルにより評価して配合物を最適化し、目的とする生理活性を得ることが含まれる。本発明の組成物は、当業者に既知のいずれかの方法で投与することができる。投与方法には、経腸(経口)投与、非経口(静脈内、皮下および筋肉内)投与および局所投与が含まれるが、これらに限定されない。本発明による処置方法は、その必要がある患者に、合成した、および/または単一植物もしくは複数植物から分離した、療法有効量のUP256(バクチオール)を、体内または局所投与することを含み、その際、バクチオールはフラノクマリン不純物類を実質的に含まない。1態様においては、本発明組成物を局所投与する。局所投与のための方法には練り歯磨き、ゲル剤、軟膏剤、口内洗浄剤、チューインガム、チンキ剤、ドリンク剤、および他の既知の医薬配合物が含まれるが、これらに限定されない。練り歯磨き中に配合する場合、本発明組成物の含量はバクチオール0.1〜2重量%である。
【0072】
本発明組成物は医薬組成物として配合することができ、これは他の成分、たとえば医薬および/または化粧用として許容できる賦形剤、佐剤および/またはキャリヤーを含有する。たとえば、処置されるホストが耐容できる賦形剤中に本発明組成物を配合することができる。賦形剤は、薬物の希釈剤またはビヒクルとして用いられる不活性物質である。そのような賦形剤の例には、水、緩衝液、塩類溶液、グリセリン、水和シリカ、プロピレングリコール、酸化アルミニウム、カラゲナン、セルロースガム、二酸化チタン、リンゲル液、デキストロース溶液、マンニトール、ハンクス液、保存剤、および他の生理的平衡塩類水溶液が含まれるが、これらに限定されない。非水性ビヒクル、たとえば固定油、ゴマ油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドも使用できる。他の有用な配合物には、増粘剤、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含有する懸濁液が含まれる。賦形剤は、少量の添加剤、たとえばEDTA、DDTA二ナトリウム、BHA、BHT、クエン酸ジアンモニウム、ノルジヒドログアヤレト酸(nordihydroguaiaretic acid)、没食子酸プロピル、グルコン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ヒドロキノンt-ブチル、SnCl2、H2O2、および2,4,5-トリヒドロキシブチロフェノン、ビタミンC、ビタミンE、ならびに等張性および化学的安定性を高める他の物質を含有することもできる。配合物のpHを調整するための物質の例には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、三リン酸五ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、過酸化カルシウム、リン酸緩衝液、炭酸水素緩衝液、トリス緩衝液、ヒスチジン、クエン酸塩およびグリシン、またはその混合物が含まれる。着香剤の例には、チメロサール、m-またはo-クレゾール、ホルマリン、果実エキスおよびベンジルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。標準的な配合物は液体または固体のいずれであってよく、固体は適切な液体に装入して投与用の懸濁液剤または液剤にすることができる。たとえば非液体配合物の場合、賦形剤はデキストロース、ヒト血清アルブミン、保存剤などを含むことができ、投与前にこれに無菌の水または塩類溶液を添加することができる。
【0073】
本発明の1態様において、組成物は佐剤またはキャリヤーを含有することもできる。佐剤は一般に、特定の生物活性薬剤に対する哺乳類の生物学的応答を全般的に高める物質である。適切な佐剤には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:フロイントアジュバント;他の細菌細胞壁成分;アルミニウム、カルシウム、銅、鉄、亜鉛、マグネシウム、スズをベースとする塩類;シリカ;ポリヌクレオチド;トキソイド;血清タンパク質;ウイルスコートタンパク質;他の細菌由来の調製物;ガンマインターフェロン;ブロックコポリマー系アジュバント、たとえばハンターのタイターマックスアジュバント(Hunter's Titermax adjuvant)(Vaxcel.TM., Inc., ジョージア州ノルクロス);Ribiアジュバント(Ribi ImmunoChem Research, Inc.から入手できる, モンタナ州ハミルトン);ならびにサポニン類およびそれらの誘導体、たとえばQuil A(Superfos Biosector A/S, デンマーク)。キャリヤーは一般に、処置されるホストにおける療法用組成物の半減期を延長する化合物である。適切なキャリヤーには、制御放出ポリマー配合物、生分解性埋込み剤、リポソーム、細菌、ウイルス、油、エステルおよびグリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
1態様において、組成物は制御放出配合物として調製され、これは本発明組成物をホストに徐々に放出する。本明細書中で用いる制御放出配合物は、本発明組成物を制御放出ビヒクル中に含む。適切な制御放出ビヒクルは当業者に既知であろう。好ましい制御放出配合物は生分解性(すなわち生体内侵食性)である。
【0075】
本発明の療法薬は、療法用組成物を局所投与するための当業者に既知のいずれか適切な手段で局所投与できる。これには軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、もしくはクリーム剤、または乳剤、パッチ、包帯剤もしくはマスク、非粘着性ガーゼ、包帯、綿棒もしくは拭い布(cloth wipe)が含まれるが、これらに限定されない。これらの局所製剤をいずれかの患部に、局所投与のためのいずれか既知の標準的な手段で局所適用することができる。療法用組成物は、投与方法に応じて多様な単位剤形で投与できる。個々の送達様式について、本発明の療法用組成物を本発明の賦形剤中に配合することができる。本発明の療法薬をいずれかのホスト、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに投与することができる。具体的な投与様式は、処置すべき状態に依存するであろう。
【0076】
1態様において、適切な軟膏剤は、局所配合物の全重量を基準として一般に0.001〜100%の範囲から選択される有効な無毒性量の目的濃度のUP256(バクチオール)、65〜100%(好ましくは75〜96%)の白色ワセリン、0〜15%の流動パラフィン、および0〜7%(好ましくは3〜7%)のラノリンまたはその誘導体もしくは合成均等物からなる。他の態様において、軟膏剤はポリエチレン-流動パラフィンマトリックスを含む。
【0077】
1態様において、適切なクリーム剤は、前記のように、合成した、および/または単一植物もしくは複数植物から分離した、目的濃度のUP256(バクチオール)と共に、乳化系を含む。乳化系は、好ましくは下記のものからなる:2〜10%のポリオキシエチレンアルコール(たとえば商標Cetomacrogol TM 1OOOで入手できる混合物)、10〜25%のステアリルアルコール、20〜60%の流動パラフィン、および10〜65%の水;ならびに1種類以上の保存剤、たとえば0.1〜1%のN,N"-メチレンビス[N'-[3-(ヒドロキシメチル)-2,5-ジオキソ-4-イミダゾリジニル]尿素](Imidurea USNFの名称で入手できる)、0.1〜1%の4-ヒドロキシ安息香酸アルキル(たとえば、Nipa Laboratoriesから商標Nipastatで入手できる混合物)、0.01〜0.1%の4-ヒドロキシ安息香酸ブチルナトリウム(Nipa Laboratoriesから商標Nipabutyl sodiumで入手できる)、および0.1〜2%のフェノキシエタノール。
【0078】
1態様において、適切なゲル剤は、高度に架橋した三次元ポリマーマトリックス中に液相が拘束された半固体系からなる。この液相は下記のものを含むことができる:水、ならびに目的量のUP256(バクチオール)、0〜20%の水混和性添加剤、たとえばグリセロール、ポリエチレングリコールまたはプロピレングリコール、および0.1〜10%、好ましくは0.5〜2%の増粘剤:これは天然物、たとえばトラガカント、ペクチン、カラギーン、寒天およびアルギン酸、または合成もしくは半合成化合物、たとえばメチルセルロースおよびカルボキシポリメチレン(カルボポール(carbopol));ならびに1種類以上の保存剤、たとえば0.1〜2%の4-ヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)またはフェノキシエタノール-ディファレンシャル(differential)。他の適切な製剤は下記のものからなる:目的量のUP256(バクチオール)、ならびに70〜90%のポリエチレングリコール(たとえば40%のポリエチレングリコール3350および60%のポリエチレングリコール400を含有するポリエチレングリコール軟膏;米国国民医薬品集(USNF)に従って調製)、5〜20%の水、0.02〜0.25%の酸化防止剤(たとえばブチル化ヒドロキシトルエン)、および0.005〜0.1%のキレート化剤(たとえばエチレンジアミン四酢酸(EDTA))。
【0079】
前記で用いた用語ワセリンには、クリーム剤または軟膏剤の基剤である白色ワセリンおよび黄色ワセリンが含まれる。用語ラノリンには、天然羊毛脂および精製羊毛脂が含まれる。ラノリンの誘導体には、それらの物理的または化学的特性を変更するために化学修飾した特定のラノリンが含まれ、ラノリンの合成均等物には特定の合成または半合成化合物および混合物が含まれ、これらは既知であり、医薬および化粧品の技術分野でラノリン代替品として用いられており、たとえば代用ラノリンと呼ばれる。
【0080】
使用できるラノリンの適切な合成均等物のひとつは、商標Softisan(商標)で入手できる物質であり、Softisan 649として知られる。Dynamit Nobel Aktiengesellschaftから入手できるSoftisan 649は、天然植物脂肪酸、イソステアリン酸およびアジピン酸のグリセリンエステルである;それの特性はH. HermsdorfによりFette, Seifen, Anstrichmittel, Issue No. 84, No.3 (1982), pp. 3-6に考察されている。
【0081】
適切な軟質剤またはクリーム剤の基剤の成分として前記に述べた他の物質およびそれらの特性は、標準的な参考資料、たとえば薬局方に述べられている。Cetomacrogol 1000はCH3(CH2)m(OCH2CH2)nOHの式をもつ;式中のmは15〜17、nは20〜24であってよい。ブチル化ヒドロキシトルエンは2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールである。Nipastatは、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル、プロピルおよびブチルの混合物である。
【0082】
本発明組成物は、医薬の常法により調製できる。たとえば、前記組成物は下記に従って簡便に調製できる。高められた温度、好ましくは60〜70℃で、ワセリン、流動パラフィン(存在する場合)、およびラノリンまたはその誘導体もしくは合成均等物を互いに混合する。次いでこの混合物を室温に冷却し、ムピロシン(mupirocin)水和結晶質カルシウム塩、ならびにコルチコステロイドおよび他のいずれかの成分を添加した後、撹拌して確実に適切な分散物にする。
【0083】
投与方式に関係なく、具体的な用量はホストのおおまかな体重に従って算出される。前記の配合物それぞれによる処置に適切な用量を判定するのに必要な計算のさらに微妙な調整は当業者によってルーティンに行われ、本明細書に開示する用量情報およびアッセイ法を考慮して多大な実験なしに当業者がルーティンに行う作業の範囲内にある。これらの用量は、用量決定のための確立したアッセイ法を適切な用量-応答データと組み合わせて用いて確認できる。
【0084】
本明細書に記載する発明はヒトと同様に動物への適用にも使用でき、用語“ホスト”を限定的に解釈すべきでないことを留意すべきである。動物に適用する場合、前記に従って動物の体重を考慮して用量範囲を判定することができる。
【実施例】
【0085】
以下の実施例は説明のためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0086】
実施例1.HPLCによるバクチオール、ソラレンおよびイソソラレンの定量方法
後記に従って得られた抽出物、画分および新規組成物中のバクチオール、ソラレンおよびイソソラレンの量を、PhotoDiode Array検出器(HPLC/PDA)およびLuna Phenyl-hexylカラム(250 mm x 4.6 mm)を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。目標化合物をアセトニトリル(ACN)水勾配(36%−100% ACN、12分かけて)、続いて100% ACNによりさらに3分間、カラムから溶出させた。用いた詳細なHPLC条件を表1に示す。このHPLC分離のクロマトグラムを図1に示す。市販の純粋なバクチオール、ソラレンおよびイソソラレンを定量標準品として用い、保持時間およびUVピーク面積に基づいて目標化合物を同定および定量した。バクチオール、ソラレンおよびイソソラレンの保持時間は、それぞれ18.19分、7.33分および7.95分であった。
【0087】
【表2】

【0088】
実施例2.ソラレア属植物からバクチオールを抽出するための一般法
リストシェーカー
フラスコに溶媒(100 mL)およびオランダビユ(Psoralea corylifolia)種子粉末(10 g)を添加し、混合物をリストシェーカー(wrist shaker)上で室温において1時間振とうした。次いで混合物をフィルターに通し、濾液を採集した。新たな溶媒を用いてこの抽出プロセスをさらに1回繰り返し、濾液を合わせて回転式蒸発器で溶媒を除去し、残留物を高真空下で乾燥させた。
【0089】
還流
フラスコに溶媒(50 mL)およびオランダビユ種子粉末(10 g)を添加し、混合物を40分間還流した。次いで溶液を濾過し、新たな溶媒を用いてこの抽出プロセスをさらに2回繰り返した。濾液を合わせて蒸発させ、乾燥抽出物を得た。
【0090】
上記の抽出法に従って、試料植物材料を下記の溶媒で抽出した:ジクロロメタン(DCM)、EtOAc、アセトン、MeOH、石油エーテル(沸点35〜60℃)および石油エーテル(沸点60〜90℃)。次いで実施例1の記載に従って抽出物をHPLC分析により分析した。結果を表2に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
実施例3.ソラレア属植物からのバクチオールの大規模抽出
オランダビユ種子粉末(2 kg)および9 Lの石油エーテル(沸点60〜90℃)を、20 Lのフラスコ中で回転式蒸発器上において7O℃の水浴内で1時間回転させた。次いで溶液を別個の容器内へデカントし、溶媒を真空下で除去した。このバイオマスに新たな溶媒を添加し、この抽出プロセスをさらに3回繰り返した。抽出液を合わせて蒸発させ、21%のバクチオールおよび3%のソラレン/イソソラレン(重量)を含む粗抽出物(MH-258-01-01) 335 gを得た。
【0093】
実施例4.バクチオール抽出物精製のための種々のクロマトグラフィー法の評価
オランダビユ種子から実施例2に記載した方法で分離した粗溶媒抽出物(MH-206-70-1)を精製するための種々のクロマトグラフィー法を評価して、フラノクマリン類が混入していない、特にソラレン/イソソラレンが混入していない、高純度バクチオールを得るための手段としてクロマトグラフィーを使用する可能性を判定した。要約すると、フラノクマリン不純物をバクチオールから除去するために、空のカラムカートリッジ(内径1.3cm、体積20 mL、Bio-Radから)に種々の媒体を充填し、種々の溶媒で溶離した。画分(画分当たり10 mL)を試験管内に採集し、シリカゲルTLCプレートを用い、20% EtOAc/石油エーテルで展開して分析した。目標化合物バクチオール、ソラレンおよびイソソラレンをそれらの保持時間に基づいて同定した;保持時間は標準液を用いて判定された。結果を表3に示す。
【0094】
【表4】

【0095】
実施例5.オランダビユの種子から分離した石油エーテル抽出物の加水分解
オランダビユの種子から実施例3の記載に従って分離した石油エーテル抽出物(25 g; MH-258-01-01)を、1 Lの丸底フラスコ内で500 mLのNaOH溶液(56.5 mM)と混合した。溶液を加熱マントル内で1時間還流した。少量の溶液を定期的にフラスコから採取し、実施例1の記載に従ってHPLCにより分析した。ソラレンおよびイソソラレンのピークが完全に消失したことをHPLC分析が示した後、反応を停止した。次いで反応混合物を室温に冷却して、固体含量約36 mg/mLの濃褐色溶液(MH-258-10-01)を得た。
【0096】
20 mLの加水分解液(MH-258-10-01)に、分液ろうと(150 mL)内でDCM (20 mL)を添加した。混合物を10分間振とうし、層を分離させた。DCM層を分液ろうとの下から取り出し、20 mLの新たなDCMでさらに1回、抽出を繰り返した。有機層を合わせて真空下での回転蒸発により溶媒を除去して、118 mgの組成物(MH-258-07-01)を得た。これは31%のバクチオールを含有し、フラノクマリン混在物質を含まなかった(図3)。
【0097】
20 mLの加水分解液(MH-258-10-01)に、分液ろうと(150 mL)内で石油エーテル(20 mL)を添加した。混合物を10分間振とうし、層を分離させた。石油エーテル層を分液ろうとの上から取り出し、20 mLの新たな石油エーテルでさらに1回、抽出を繰り返した。有機層を合わせて真空下での回転蒸発により溶媒を除去して、136 mgの組成物(MH-258-07-02)を得た。これは41%のバクチオールを含有し、フラノクマリン混在物質を含まなかった(図4)。
【0098】
実施例6.オランダビユの種子から分離したメタノール抽出物の加水分解
オランダビユの種子から実施例2の記載に従って分離した乾燥メタノール抽出物(MH-293-68-01)を、撹拌機/ホットプレート上の2 Lビーカー内で、1 LのNaOH溶液(DI水中、44 gのNaOH)と混合した。この溶液を沸騰状態で2時間撹拌した。必要に応じて水をビーカーに添加して、全体積を約1200 mLに維持した。2時間後、溶液を室温にまで放冷し、次いで600 mLを分液ろうとに移した。石油エーテル(250 mL)を添加し、混合物を10分間振とうし、層を分離させた。石油エーテル層を分液ろうとの上から取り出し、新たな溶媒で抽出を繰り返した(3回)。有機抽出液を合わせて真空下での回転蒸発により溶媒を除去して、2.25 gの組成物(MH-293-74-01)を得た。これは51%のバクチオールを含有し、フラノクマリン混在物質を含まなかった。
【0099】
実施例7.オランダビユの種子から分離した石油エーテル抽出物の加水分解に続くカラムクロマトグラフィーによる精製
オランダビユの種子から実施例3の記載に従って分離した石油エーテル抽出物(25 g; MH-258-01-01)を、1 Lの丸底フラスコ内で500 mLのNaOH溶液(56.5 mM)と混合した。溶液を1時間還流した。少量の溶液を定期的にフラスコから採取し、実施例1の記載に従ってHPLCにより分析した。ソラレンおよびイソソラレンのピークが完全に消失したことをHPLC分析が示すまで、反応を進行させた。次いで反応混合物を室温に冷却して、固体含量約36 mg/mLの濃褐色溶液(MH-258-10-01)を得た。
【0100】
この溶液(MH-258-10-01) 150 mLを、予め調製したCG-l61cdカラムに装填した。この予め調製したカラム(5×l3cm)は、4カラム体積のDI水で平衡化した300 mLのCG-161cd樹脂を収容していた。装填材料(MH-258-10-01)をカラムの上に供給し、2500 mLのDI水で溶離してカラムをpH 7にし、続いて2500 mLの70% MeOH/水、および4500 mLの90% MeOH/水で溶離して、バクチオールを溶出させた。バクチオールが完全にカラムから溶出するまで、溶出液をTLCによりモニターした。バクチオールのみを含有する溶出液(2L)を合わせて真空下で蒸発させて、溶媒を除去した。この方法で、フラノクマリン類が混入していない高純度のバクチオール(2.3 g) (純度99%、MH-258-12-08および-09)を得た(図5を参照)。前後のバクチオール画分を同様に採集し、合わせて真空下で蒸発させた。これらの画分から2.4 gの量の組成物(MH-258-12-07および-10)を得た。これは70%のバクチオールを含有し、フラノクマリン類は混入していなかった。CG-161cdカラムの装填容量は、CG-161cd樹脂1 Lにつき粗製加水分解溶液400 mLと推定された。分離後、Clorox、続いてMeOHおよび4カラム体積のDI水で洗浄することにより、CG-161cdカラムを回復させた。これを数年間、再使用できる。
【0101】
実施例8.精製バクチオールによるCOX-1およびCOX-2の阻害
COX-1およびCOX-2活性を阻害する化合物をスクリーニングするために、両酵素のペルオキシダーゼ活性の阻害を利用したハイスループットインビトロアッセイ法が開発された(Needleman et al. (1986) Annu Rev Biochem. 55: 69)。要約すると、試験する組成物または配合物を固定量のCOX-1およびCOX-2酵素に対して力価判定した。開裂性の過酸化物発色団をアッセイに含有させ、補因子としてのアラキドン酸の存在下で、各酵素のペルオキシダーゼ活性を視覚化した。一般に96ウェルフオーマットでアッセイを実施した。10 mg/mLの原液から100% DMSOに装入した各阻害薬を、室温で下記の濃度範囲を用いて三重試験した: 0、0.1、1、5、10、20、50、100および500μg/mL。各ウェルに下記のものを添加した:150μLの100 mMトリス-HCl、pH 7.5、ならびにトリス緩衝液中に希釈した10μLの22μMヘマチン(Hematin)、DMSO中に希釈した10μLの阻害薬、および25単位のCOX-1またはCOX-2酵素。これらの成分を回転式プラットホーム上で10秒間混合し、続いて20μLの2 mM N,N,N'N'-テトラメチル-p-フェニレンジアミン二塩酸塩(TMPD)および20μLの1.1 mMアラキドン酸を添加して反応を開始した。プレートを10秒間振とうし、次いで5分間インキュベートした後、570 nmで吸光度を読み取った。阻害薬濃度-対-阻害率%をプロットし、等温線に沿って半最大点をとり、X軸上の濃度と交差させることによりIC50を判定した。次いでこのIC50をアッセイにおける酵素単位数に対して正規化した。高純度(99%)バクチオール試料(MH-258-08)をCOX-1およびCOX-2両方の阻害について試験した。結果を次表4にまとめる。
【0102】
【表5】

【0103】
実施例9.精製バクチオール(MH-258-12-08)による5-リポキシゲナーゼの阻害
前後のように、炎症反応に関与する最も重要な経路のひとつは、非ヘム、鉄含有リポキシゲナーゼ(5-LOX、12-LOXおよび15-LOX)により生じる。これらは脂肪酸、たとえばAAを酸化して5-、12-および15-HPETEを生成し、次いでこれらのをロイコトリエンに変換するのを触媒する。リポキシゲナーゼ阻害アッセイを、公表された方法(Carter et al. (1991) J. Pharmacol. Exp. Ther. 256(3): 929-937;Safayhi et al. (2000) Planta Medica. 66: 110-113)により実施した。5-LOXをヒトPBML細胞から単離し、基質としてアラキドン酸を用いた。被験物質および陽性対照を1% DMSOに溶解した。HBSS(ハンクス平衡塩類溶液)をインキュベーション緩衝液として用いた。プレインキュベーション時間は37℃で15分間であり、続いて同温度で15分間インキュベートした。このアッセイは、EIA定量によりLTB4形成を検出する。高純度バクチオール(99%バクチオール、#MH-258-12-08)を10μM、1μM、0.1μMおよび10 nMの濃度で、5種類の濃度の陽性対照-NDGAに対比して二重試験した。用量応答曲線を図6に示す。バクチオール(純度99%)による5-LOX阻害についてのIC50は3.41μMであった。
【0104】
実施例10.精製バクチオールの抗菌活性
高純度バクチオール試料(純度99%; #MH-258-12-08)の抗菌活性を、公表された方法(Modugno et al. (1994) Antimicrobial Agents & Chemotherapy 38: 2362-2368; Misiek et al (1973) Antimicrobial Agents & Chemotherapy 3: 40-48)により評価した。要約すると、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(グラム陽性, ATCC 12228)を37℃で20時間、ミュラー-ヒントンブロス(Mueller-Hinton Broth)培地で培養した。プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)(ATCC 6919)を37℃で2日間、強化クロストリジウム培地で培養した。被験物質および陽性対照を1% DMSOにインキュベーション体積1 mLで溶解した。評価時間は1日間であった。濁り度測定を定量法として用いた。高純度バクチオール試料(純度99%; #MH-258-12-08)を100μg/mL、30μg/mL、10μg/mL、3μg/mL、1μg/mL、0.3μg/mL、0.1μg/mLおよび0.03μg/mLの濃度で、陽性対照−それぞれ、表皮ブドウ球菌については0.1μg/mLのゲンタマイシン、プロピオニバクテリウム・アクネスについては0.1μg/mLのアンピシリン−に対比して二重試験した。表皮ブドウ球菌およびプロピオニバクテリウム・アクネスの両方に対して、1μg/mLのバクチオールが有意の阻害を示した。この高純度バクチオール試料は毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)(ATCC 9533)の活性も、適度の濃度30μg/mLで阻害した。最後に、有毛表皮糸状菌(Epidermophyton floccosum)(ATCC 18397)、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)(ATCC 36299)およびピチロスポルム-オバーレ(Pityrosporum ovale)(ATCC 38593)については阻害がみられなかった。
【0105】
実施例11.精製バクチオールの急性毒性の評価
2種類の純度レベルのバクチオール(UP256)(純度約20%の試料および純度99%の試料)の試験により急性毒性試験を行った。4〜5週令の雌ICRマウス(Harlan)40匹を14日間の試験に用いた。マウスに100 mLの急性用量、すなわち各被験物質につき1日当たり約2 g/kg(体重)を毎日投与した。最初の10匹のマウスに20.7%のバクチオールを含有する組成物を投与し、第2グループの10匹のマウスに99%のバクチオールを含有する組成物を投与した。UP256組成物を水に懸濁して注射器で投与した。20匹のマウスには、対照グループとして水を投与した。すべてのマウスの体重を、ベースライン、3つの中間点、および最終点を含めて測定した。飼料および水の摂取量もすべてのグループについて観察した。2週間にわたって、異常な健康状態または行動があれば記録した。すべてのマウスの剖検を14日目に完了し、完全血液スクリーニングのために全グループから血液を採集した。各グループからランダムに抜き出した2匹のマウスからは、病理組織学的検査のために腎臓と肝臓の組織も摘出した。すべての血液検査および病理検査がAntech Diagnosticsにより行われた。
【0106】
対照を含めた全グループについて計算した平均体重は、2週間の試験期間にわたって増加し続けた。体重減少を示したマウスはなく、飼料/水摂取量は全グループについて同じ状態が維持された。研究者に対する攻撃(すなわち噛むなど)および互いの攻撃(すなわちケージ内での争い)は、対照マウスと比較して処理マウス間での行動にわずかな有意差があった。これは、雄性ホルモンであるアンドロゲンを投与したマウスに予想される行動である。すべてのマウスの剖検が、いずれの臓器にも肉眼的異常または変化を示さなかった。血液検査は、処理グループが対照と比較して正常であることを示した。タンパク質、酵素および鉄の濃度は、ICRマウスについての正常値の範囲内にあった。腎臓および肝臓組織を何らかの微細な臓器変化の評価のために病理組織学的検査へ送った。そのレポートは、腎臓に有意の変化がなく、肝臓の肝細胞核はマウスについて正常な限界内にあると報告した。検査したいずれの組織切片にも、実質的な炎症または新生物の証拠はなかった。
【0107】
結論として、処理マウスについて体重、血液検査、および組織学的データのすべてが対照グループと比較して同等であった。14日間の試験で、いずれのUP256試料についても有害作用はみられなかった。したがって、両純度レベルのUP256とも(純度20%および99%)確実な安全性プロフィールをもつと結論できる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】ソラレア属植物からの代表的な抽出物のHPLCクロマトグラムを示す。2種類のフラノクマリン−ソラレンおよびイソソラレン−が抽出物中に等量存在する。
【図2A】ソラレア属からの代表的な抽出物の、水酸化ナトリウム加水分解反応の前(図2A)のHPLCクロマトグラムを示す。
【図2B】ソラレア属からの代表的な抽出物の、水酸化ナトリウム加水分解反応の後(図2B)のHPLCクロマトグラムを示す。
【図3】31%のバクチオールを含むUP256試料(MH-258-07-01)のHPLCクロマトグラムを示す。
【図4】41%のバクチオールを含むUP256試料(MH-258-07-02)のHPLCクロマトグラムを示す。
【図5】99%のバクチオールを含むUP256試料(MH-258-12-08)のHPLCクロマトグラムを示す。
【図6】UP256組成物(#MH-258-12-08 −●−)による酵素5-リポキシゲナーゼ(5-LO)活性の阻害の用量応答曲線を、陽性対照NDGA(−■−)と対比してグラフで示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラノクマリン不純物類を実質的に含まないバクチオール含有組成物。
【請求項2】
バクチオールが植物から分離されたものである、請求項1の組成物。
【請求項3】
植物がソラレア属(Psoralea)植物から選択される、請求項2の組成物。
【請求項4】
植物がオランダビユ(Psoralea corylifolia L.)(マメ科)またはソラレア・グランデュロサ・L.(Psoralea glandulosa L.)(狭義のマメ科)から選択される、請求項3の組成物。
【請求項5】
組成物が、種子、幹、樹皮、側枝、塊茎、根、根皮、若芽(young shoot)、根茎、花および他の生殖器官、葉および他の気生部分から選択される植物部分、又は植物全体から分離されたものである、請求項3の組成物。
【請求項6】
組成物中のバクチオールの量が約27〜100重量%である、請求項1の組成物。
【請求項7】
組成物中のバクチオールの量が少なくとも30%である、請求項6の組成物。
【請求項8】
フラノクマリン類がソラレンおよびイソソラレンから選択される、請求項1の組成物。
【請求項9】
フラノクマリン不純物類を実質的に含まないバクチオール含有組成物の調製方法であって、
a)バクチオールを含有する植物を有機溶媒で抽出し;
b)工程a)で得た有機抽出物を塩基で処理し;そして
c)この混合物を精製して、該不純物を含まないバクチオール組成物を得る
工程を含む方法。
【請求項10】
前記精製の方法が、カラムクロマトグラフィー、抽出に続く結晶化、溶媒分配、再結晶、およびその組合わせよりなる群から選択される、請求項9の方法。
【請求項11】
シクロオキシゲナーゼ(COX)およびリポキシゲナーゼ(LOX)により仲介される、皮膚、歯、口腔または歯肉の疾患および状態を予防又は治療する方法であって、その必要があるホストに、フラノクマリン不純物類を実質的に含まない有効量のバクチオール含有医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項12】
組成物中のバクチオールの量が27〜100重量%である、請求項11の方法。
【請求項13】
COXおよびLOXにより仲介される皮膚の疾患および状態が、日焼け、熱傷、アクネ、ふけ、局所創傷;真菌、微生物およびウイルス感染により起きる軽度の炎症状態;白斑、全身性エリテマトーデス、乾癬、癌、メラノーマ、ならびに哺乳類の他の皮膚癌;紫外(UV)線、化学薬品、熱、風および乾燥環境への曝露により生じる皮膚損傷;しわ、皮膚のたるみ、目の周囲のしわおよびくま、皮膚炎、ならびに皮膚の他のアレルギー関連状態よりなる群から選択される、請求項11の方法。
【請求項14】
口腔、歯肉および歯の疾患および状態が、歯周疾患、口腔前癌状態、口腔癌、および他の口腔悪性疾患、歯肉および歯の知覚過敏;義歯の理学的移殖、外傷、傷害、歯軋りおよび他の軽度の損傷により口腔、歯肉または舌に起きる後遺症、歯髄炎、刺激、痛みおよび炎症;歯垢および歯石、歯の脱灰、タンパク質分解および虫歯(齲食)よりなる群から選択される、請求項11の方法。
【請求項15】
投与経路が、局所、エアゾル剤、坐剤、皮内、筋肉内および静脈内投与よりなる群から選択される、請求項11の方法。
【請求項16】
投与経路が局所である、請求項15の方法。
【請求項17】
組成物を、非粘着性ガーゼ、包帯、綿棒、拭い布、パッチ、マスク、洗浄剤、防腐剤、溶液剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤もしくは乳剤、液剤、パスタ剤、石鹸、または散剤を用いて投与する、請求項16の方法。
【請求項18】
医薬組成物がさらに、医薬的、皮膚科学的又は化粧的に局所投与するのに適切である一般的賦形剤、ならびに場合により佐剤および/またはキャリヤー、および/または通常放出用もしくは制御放出用ビヒクルを含む、請求項11の方法。
【請求項19】
骨関節炎および慢性関節リウマチの病的状態による全般的な関節の痛みおよび硬直、運動性欠如ならびに身体機能喪失;月経痙攣、動脈硬化症、肥満症、糖尿病、アルツハイマー病、呼吸器系アレルギー反応、慢性静脈不全、乾癬、慢性緊張性頭痛、片頭痛、炎症性腸疾患、前立腺癌および他の充実性腫瘍よりなる群から選択される、COXおよびLOXにより仲介される他の疾患および状態を予防又は治療する方法であって、その必要があるホストに、フラノクマリン不純物類を実質的に含まない有効量のバクチオール含有医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項20】
微生物感染により仲介される皮膚、口腔、歯または歯肉の疾患および状態を予防又は治療する方法であって、その必要があるホストに、フラノクマリン不純物類を実質的に含まない有効量のバクチオール含有医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項21】
微生物感染が、細菌感染、ウイルス感染または真菌感染よりなる群から選択される、請求項20の方法。
【請求項22】
細菌が、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)または表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)から選択される、請求項21の方法。
【請求項23】
皮膚、口腔、歯または歯肉の状態が、ふけ、アクネ、足白癬、局所創傷;虫歯、歯肉炎、歯周炎、歯髄炎、義歯の理学的移殖、外傷、傷害、歯軋り、新生物および他の変性過程で起きる歯周状態、白質、ペリクル、歯垢、歯石ならびに着色よりなる群から選択される歯周疾患よりなる群から選択される、請求項20の方法。
【請求項24】
投与経路が、局所、エアゾル剤、坐剤、皮内、筋肉内および静脈内投与よりなる群から選択される、請求項20の方法。
【請求項25】
投与経路が局所である、請求項24の方法。
【請求項26】
組成物を、非粘着性ガーゼ、包帯、綿棒、拭い布、パッチ、マスク、洗浄剤、防腐剤、溶液剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤もしくは乳剤、液剤、パスタ剤、石鹸、または散剤を用いて投与する、請求項25の方法。
【請求項27】
医薬組成物がさらに、医薬的、皮膚科学的又は化粧的に局所投与するのに適切である一般的賦形剤、ならびに場合により佐剤および/またはキャリヤー、および/または通常放出用もしくは制御放出用ビヒクルを含む、請求項20の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−540551(P2008−540551A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511297(P2008−511297)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/018006
【国際公開番号】WO2006/122160
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(504000568)ユニゲン・ファーマシューティカルス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】