説明

バリアントNFKBIBの癌関連エピトープに対する抗体およびその使用

本願は、バリアント核因子κ-B阻害因子β(NFKBIB)のエピトープに対する癌特異的抗体の重鎖および軽鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列および核酸配列を提供する。さらに、本願は、癌特異的抗体、および毒素または標識に付着した癌特異的抗体を含むイムノコンジュゲート、ならびにそれらの使用法を提供する。本願は、本明細書中の癌特異的抗体を使用した診断法およびキットにも関する。さらに、本願は、バリアントNFKBIBの新規の癌関連エピトープおよび抗原、ならびにそれらの使用を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願
本願は、新規の抗体および抗原、ならびに癌を処置し検出するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
2000年には、世界中で推定2200万人が癌に罹患しており、620万人の死亡がこの種類の疾患に起因した。毎年、1000万を超える新しい症例が出現し、この推定は今後15年で50%増大すると予想されている(WHO,World Cancer Report.Bernard W.Stewart and Paul Kleihues,eds.IARC Press,Lyon,2003(非特許文献1))。現在の癌処置は、侵襲的手術、放射線治療、および化学療法に限定されており、これらは、全て、身体像および/または生活の質に対して、重度の副作用、非特異的な毒性、および/または外傷性の変化を引き起こす可能性がある。癌が、化学療法に対して不応性になり、それによって、さらなる処置オプションおよび成功の可能性が低下する場合もある。他と比べて予後の悪い癌もあり、ほぼ常に致命的であるものもある。さらに、比較的高い処置成功率を有しているが、高い発生率のため、やはり主要な死因となっている癌もある。
【0003】
現在の癌処置の欠点の原因のうちの一つは、影響を受ける組織および細胞に関する選択性の不足である。外科的切除は、必ず、「安全域」として一見正常な組織の除去を含み、それが、罹患率および合併症のリスクを増加させることがある。また、腫瘍細胞が散在している可能性がある、影響を受けた器官または組織の機能を維持または回復する可能性がある健康な組織の一部も、必ず除去される。放射線および化学療法は、非特異的な作用様式のため、多くの正常細胞を死滅させるかまたはそれらに傷害を与えるであろう。これは、重度の悪心、体重減少および体力低下、脱毛等のような重篤な副作用をもたらすことがあり、その後の人生において二次癌を発症するリスクを増加させることもある。癌細胞に対するより大きな選択性を有する処置は、正常細胞に害を与えず、従って、成果、副作用プロファイル、および生活の質を改善するであろう。
【0004】
癌処置の選択性は、癌細胞に対して特異的であって、正常細胞には見出されない分子を標的とすることにより改善され得る。次いで、これらの分子は、抗体に基づく診断薬もしくは治療薬の標的として、または機能を改変することができる薬物のため、使用され得る。
【0005】
IkBタンパク質は、NF-kBに結合し、部位特異的かつ酵素特異的なリン酸化、フィードバック遺伝子調節、および細胞質コンパートメントと核コンパートメントとの間の転移の複雑な系を通して、その活性を調節する、構造的に関連した細胞内タンパク質のファミリーである。このファミリーのメンバーはいくつか同定されており、IkBα、β、ε、γ、およびBCL-3を含む(NF-kB経路の概説に関しては、Hayden & Ghosh,Genes Dev 18:2195-2224,2004(非特許文献2)を参照のこと)。IkBタンパク質間の配列可変性は、機能性の重要な違いをもたらす。
【0006】
IkBβは、最初、TRIP-9として同定され、NF-κ-B阻害因子β、NF-κ-BIB、I-κ-B-β、IκBβ、IkB-β、IkB-B、甲状腺受容体相互作用タンパク質9、およびTR相互作用タンパク質9とも名付けられている。二つの主要なスプライスバリアント、即ち、IkBβ1およびIkBβ2が報告されている。これらのアイソフォームは、分解およびNF-kBに対する効果に大きく影響するC末端配列において異なっている。その結果として、β2アイソフォームは、β1アイソフォームより、細胞質に制限されており、遅く分解されるようである(Hirano et al.,Mol Cell Biol 18(5):2596-2607,1998(非特許文献3))。β2アイソフォームは、HT-29ヒト結腸癌細胞系からの細胞質抽出物の中のIkBβの優性の型として報告された(Inan et al.,Mol Carcinogenesis 29:25-36,2000(非特許文献4))。ヒトIkBβ1タンパク質は、炎症性疾患および自己免疫疾患の処置のために提唱されており(米国特許第5,952,483号(特許文献1))、ヒトIkBβ1に類似したウサギIkBβタンパク質は、NF-kBにより誘導される遺伝子活性化に関連した障害の処置のために提唱されている(米国特許第5,597,898号(特許文献2))。
【0007】
NF-kB-IkBβ複合体は、一般に、静止状態の細胞の細胞質に保持され、それにより、NF-kBの転写活性を阻止している。部位特異的な、シグナルにより誘導されたIkBβのリン酸化によって、複合体は解離し、IkBβはユビキチン-プロテアソーム経路を通した分解のためにタグ化される。遊離NF-kBは、核に移動し、そこで、DNAに結合し、様々な遺伝子の発現を調節する(Malek et al.,JBC 276(48):45225-235,2001(非特許文献5))。細胞質中にNF-kBを保持するIkBβの能力は、一部、C末端PESTドメインのリン酸化、およびさらなる分子の複合体との会合と関連しているようであり(Chen,Wu and Ghosh,JBC 278(25):23101-106,2003(非特許文献6);Chu et al.,Mol Cell Biol 16(11):5974-84,1996(非特許文献7))、従って、β1アイソフォームとβ2アイソフォームの間で変動する。新たに合成された、または低リン酸化されたIkBβは、核へ移動することができるかもしれず、遺伝子転写活性を防止するかまたは阻止することなく、NF-kBに結合する能力を保持している(Tran et al,Mol Cell Biol 17(9):5386-99,1998(非特許文献8))。対照的に、NF-kBは、IkBαと結合した場合には、細胞質に厳密には保持されず、複雑な輸入輸出機序(その平衡は、静止状態の細胞の細胞質への局在に有利である)を通して核と細胞質との間を行き来する。NF-kBの局在化および活性を制御するIkBαおよびIkBβの能力の違いは、一部、IkBβ分子に見出され、α型には見出されないタンパク質インサートによると考えられている(Chen,Wu and Ghosh,JBC 278(25):23101-106,2003(非特許文献6))。IkBタンパク質の役割および特異的調節は、完全に理解されたとは決して言えないが、これらのタンパク質が細胞質性であること、いくつかは核と細胞質との間を移動することができること、および、いずれも、細胞増殖、アポトーシス、炎症に対する応答の調節において、そしておそらく癌において重大な役割を有している可能性が高いこと、は一般に認められている。
【0008】
癌細胞におけるIkBα遺伝子の変異が報告されているが、現在のところ、IkBβアイソフォームについては報告されていない(Cabannes et al.,Oncogene 18:3063-70,1999(非特許文献9))。IkBαおよびIkBβの過少発現および過剰発現も、癌細胞におけるNF-kB経路の調節異常と関係付けられている(JBC 274(26):18827-835,1999(非特許文献10))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,952,483号
【特許文献2】米国特許第5,597,898号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】WHO,World Cancer Report.Bernard W.Stewart and Paul Kleihues,eds.IARC Press,Lyon,2003
【非特許文献2】Hayden & Ghosh,Genes Dev 18:2195-2224,2004
【非特許文献3】Hirano et al.,Mol Cell Biol 18(5):2596-2607,1998
【非特許文献4】Inan et al.,Mol Carcinogenesis 29:25-36,2000
【非特許文献5】Malek et al.,JBC 276(48):45225-235,2001
【非特許文献6】Chen,Wu and Ghosh,JBC 278(25):23101-106,2003
【非特許文献7】Chu et al.,Mol Cell Biol 16(11):5974-84,1996
【非特許文献8】Tran et al,Mol Cell Biol 17(9):5386-99,1998
【非特許文献9】Cabannes et al.,Oncogene 18:3063-70,1999
【非特許文献10】JBC 274(26):18827-835,1999
【発明の概要】
【0011】
概要
本発明者らは、新規の抗体および抗原を同定した。具体的には、本発明者らは、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、乳癌、皮膚癌、卵巣癌、頭頸部癌、前立腺癌、および肺癌を含むいくつかの型の癌細胞に結合する、新規の癌特異的抗体を同定した。重要なこととして、この抗体は、正常組織には有意に結合せず、従って、癌の治療および診断のための適当な候補である。本発明者らは、新規抗体が特異的に結合する抗原も同定した。
【0012】
さらに、本発明者らは、新規癌関連抗原を同定した。具体的には、本発明者らは、癌細胞の表面上に発現されるIkBβのバリアントを同定した。具体的な態様において、新規癌関連抗原は、癌細胞の表面上に発現されるIkBβアイソフォーム2(IkBβ2)のバリアントである。
【0013】
本発明者らは、抗体をクローニングし、配列決定し、抗体の軽鎖および重鎖の可変領域ならびに相補性決定領域1、2、および3の配列を決定した。
【0014】
従って、本願は、アミノ酸配列SGDKLGDKYAC(SEQ ID NO:8)を含む単離された軽鎖相補性決定領域1(CDR1);アミノ酸配列QDSKRPS(SEQ ID NO:9)を含む単離された軽鎖相補性決定領域2(CDR2);およびアミノ酸配列QAWDSSTVV(SEQ ID NO:10)を含む単離された軽鎖相補性決定領域3(CDR3);ならびにアミノ酸配列SYAMH(SEQ ID NO:5)を含む単離された重鎖CDR1;アミノ酸配列

を含む単離された重鎖CDR2;およびアミノ酸配列

を含む単離された重鎖CDR3を開示する。
【0015】
本願は、アミノ酸配列SGDKLGDKYAC(SEQ ID NO:8)を含む軽鎖CDR1;アミノ酸配列QDSKRPS(SEQ ID NO:9)を含む軽鎖CDR2;アミノ酸配列QAWDSSTVV(SEQ ID NO:10)を含む軽鎖CDR3;アミノ酸配列SYAMH(SEQ ID NO:5)を含む重鎖CDR1;アミノ酸配列

を含む重鎖CDR2;およびアミノ酸配列

を含む重鎖CDR3をコードする、単離された核酸配列も提供する。
【0016】
本願において開示されるさらなる局面は、本願の軽鎖CDR1、CDR2、および/またはCDR3(SEQ ID NO:8〜10)を含む単離された軽鎖可変領域、ならびに本願の重鎖CDR1、CDR2、および/またはCDR3(SEQ ID NO:5〜7)を含む単離された重鎖可変領域である。一つの態様において、軽鎖可変領域は、図1Bに示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)を含む。もう一つの態様において、重鎖可変領域は、図1Aに示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を含む。
【0017】
本願は、本明細書に開示された軽鎖可変領域をコードする単離された核酸配列、および本明細書に開示された重鎖可変領域をコードする単離された核酸配列も含む。一つの態様において、軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、図1Bに示される核酸配列(SEQ ID NO:3)を含む。もう一つの態様において、重鎖可変領域をコードする核酸配列は、図1Aに示される核酸配列(SEQ ID NO:1)を含む。
【0018】
本願のもう一つの局面は、本願において開示された少なくとも一つの軽鎖相補性決定領域(即ち、SEQ ID NO:8〜10のうちの一つもしくは複数)、および/または本願の少なくとも一つの重鎖相補性決定領域(即ち、SEQ ID NO:5〜7のうちの一つもしくは複数)を含む結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片である。本願は、本明細書に開示された軽鎖可変領域および/または本明細書に開示された重鎖可変領域を含む結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片も提供する。
【0019】
上述のように、本発明者らは、本願の結合タンパク質が結合する抗原も同定した。従って、本願は、IkBβアイソフォーム1(IkBβ1)、IkBβアイソフォーム2(IkBβ2)、およびIkBβの癌関連バリアントを含むIkBβタンパク質に結合する結合タンパク質を提供する。一つの態様において、癌関連バリアントはIkBβ2のバリアントである。
【0020】
さらに、本願は、抗体および抗体断片のような本願の結合タンパク質、ならびに薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、または安定剤を含む組成物を提供する。
【0021】
さらに、本願は、本願の結合タンパク質をコードする単離された核酸配列を提供する。
【0022】
本願のもう一つの局面は、(2)エフェクター分子に付着した(1)癌細胞上の抗原または分子に結合する本願の結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片、を含むイムノコンジュゲートである。本願のさらなる局面は、(2)エフェクター分子に付着した(1)癌細胞により取り込まれる抗原または分子に結合する本願の結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片、を含むイムノコンジュゲートである。好ましい態様において、エフェクター分子は、(i)直接または間接的に検出可能シグナルを生じることができる標識、または(ii)細胞毒性であるか、細胞増殖抑制性であるか、もしくは癌細胞の分裂能および/もしくは転移能を防止するかもしくは低下させる癌治療剤である。好ましくは、癌治療剤は毒素または細胞毒である。一つの態様において、イムノコンジュゲートは、SEQ ID NO:67により定義されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
本願は、本願のイムノコンジュゲートをコードする単離された核酸配列も提供する。一つの態様において、単離された核酸配列は、SEQ ID NO:67により定義されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする。もう一つの態様において、単離された核酸配列はSEQ ID NO:66を含む。
【0024】
本願は、本明細書に開示されたイムノコンジュゲートを含む組成物、ならびに癌を処置するかまたは防止するための医薬および診断目的のための医薬の製造のためのイムノコンジュゲートの使用も提供する。さらに、本願は、本明細書に開示されたイムノコンジュゲートを投与することにより癌を処置するかまたは防止する方法、および関連するキットを提供する。
【0025】
本願のさらなる局面は、以下の工程を含む、対象における癌を検出するかまたはモニタリングする方法である:
(1)結合タンパク質-抗原複合体が生じるよう、該対象から採取された試験試料を、癌細胞上の抗原に特異的に結合する本願の結合タンパク質またはイムノコンジュゲートと接触させる工程;
(2)試験試料中の結合タンパク質-抗原複合体の量を測定する工程;および
(3)試験試料中の結合タンパク質-抗原複合体の量を対照と比較する工程。
【0026】
もう一つの局面は、エフェクター分子が、直接または間接的に検出可能シグナルを生ずることができる標識である、本願のイムノコンジュゲートを含む診断剤である。
【0027】
本願は、本願の結合タンパク質のうちの一つと特異的に結合することができる単離されたタンパク質、核酸配列、およびそれらの使用も含む。
【0028】
上述のように、本発明者らは、本願の結合タンパク質が結合する抗原を同定した。従って、本願には、IkBβの癌関連バリアントを含む、単離されたタンパク質が含まれる。本願には、IkBβの癌関連バリアントをコードする単離された核酸配列も含まれる。
【0029】
本願には、IkBβの癌関連バリアントと結合する結合タンパク質も含まれる。
【0030】
本願には、癌の処置および診断における本願の抗原の使用も含まれる。
【0031】
従って、本願には、試料中の細胞上の本願の抗原を検出し、その際、抗原が細胞上に検出された場合、それを癌の指標とすることを含む、対象における癌を検出するかまたはモニタリングする方法が含まれる。本願には、試料中の細胞による本願のIkBβの癌関連バリアントのRNA発現を検出し、その際、IkBβの癌関連バリアントのRNA発現が検出された場合、それを癌の指標とすることを含む、対象における癌を検出するかまたはモニタリングする方法も含まれる。
【0032】
本願には、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、または安定剤と共に、有効量の、本願の抗原、本願の抗原をコードする単離された核酸配列、または本願の抗原をコードする核酸配列を含む組換え発現ベクターを含む薬学的組成物も含まれる。
【0033】
本願のさらなる局面は、対象において免疫応答を誘発するための、本願の抗原、本願の抗原をコードする単離された核酸配列、または本願の抗原をコードする核酸配列を含む組換え発現ベクターの使用である。
【0034】
本願のさらなる局面は、癌を処置するかまたは防止するための、本願の抗原、本願の抗原をコードする単離された核酸配列、または本願の抗原をコードする核酸配列を含む組換え発現ベクターの使用である。
【0035】
さらに、本願には、有効量の、本願の抗原、本願の抗原をコードする単離された核酸配列、または本願の抗原をコードする核酸配列を含む組換え発現ベクターを、対象または対象由来の細胞へ投与することを含む、対象における癌を処置するかまたは防止する方法が含まれる。
【0036】
本願には、有効量の、本願の抗原、本願の抗原をコードする単離された核酸配列、または本願の抗原をコードする核酸配列を含む組換え発現ベクターを、対象または対象由来の細胞へ投与することを含む、本願の抗原に対する免疫応答を対象において誘導する方法も含まれる。
【0037】
本願のその他の特色および利点は、以下の詳細な説明より明白になるであろう。しかしながら、この詳細な説明から、本願の本旨および範囲に含まれる様々な変化および修飾が、当業者には明白になると考えられるため、詳細な説明および具体例は、本願の好ましい態様を示してはいるが、例示のため与えられているに過ぎないことが理解されるべきである。
【0038】
以下、図面に関連して本願を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】VB1-204のμVH3鎖のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、SEQ ID NO:1および2)を示す。
【図1B】VB1-204のλVL3鎖のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、SEQ ID NO:3および4)を示す。
【図2】VB1-204の腫瘍プロファイリングを示す。黒色腫(A-375)、肺(A-549)、膵臓(CFPac-1およびPanc-1)、肝臓(Hep-G2)、乳房(MB-231、MB-435S、およびSK-BR-3)、前立腺(DU-145)、および卵巣(SK-OV-3)腫瘍細胞系を、100μg/mLのVB1-204と共にインキュベートし、フローサイトメトリーにより、FITCとカップリングしたヤギ抗ヒトH&L抗体を用いて、結合した材料を検出した。二回の独立の実験からの蛍光中央値(MF)を対照抗体で割ったものの平均値が表される。
【図3】共焦点顕微鏡検によるVB1-204の取り込みの査定である。A-375細胞を、4℃でVB1-204(100μg/mL)と共にインキュベートし、洗浄し、60分間37℃に加温した。細胞を固定し、透過性化し、抗ヒトIgMビオチン化抗体により標識し、続いて、FITCとカップリングしたストレプトアビジンと共にインキュベートした。(A)白色の矢印により示された標識の周縁表面分布を示す、4℃での60分間のVB1-204のインキュベーション後のA-375細胞の蛍光標識。(60X x 3)拡大率。(B)37℃での60分間の抗体結合細胞のインキュベーション後、細胞は、取り込まれた抗体による細胞内染色を示す。(60X x 3)拡大率。
【図4】図4Aは、増加する濃度のVB1-204のA-375癌細胞に対する反応性を、フローサイトメトリーにより測定することにより決定された、VB1-204の飽和曲線を示す。図4B:ラインウィーバーバーク法。結合定数をラインウィーバーバーク法により決定した。
【図5】VB1-204により免疫沈降させられ探索された、精製膜画分に由来するタンパク質のウェスタンブロットを示す。
【図6】VB1-204による免疫沈降後の、陰性細胞系PANC-1と比較した、陽性CFPAC-1細胞系に由来する膜抽出物のMS分析である。
【図7A】腫瘍細胞系A:CFPAC-1のMS分析からのペプチドの同定を示す。IkBβ2へマッピングされた各細胞型から回収されたペプチドは、下線が引かれ、太字になっている。
【図7B】腫瘍細胞系B:A-375のMS分析からのペプチドの同定を示す。IkBβ2へマッピングされた各細胞型から回収されたペプチドは、下線が引かれ、太字になっている。
【図7C】腫瘍細胞系C:MB-231のMS分析からのペプチドの同定を示す。IkBβ2へマッピングされた各細胞型から回収されたペプチドは、下線が引かれ、太字になっている。
【図8】デノボシーケンシング(de-novo sequencing)により回収されたペプチド、およびIkBβ2に対応するマッピングされた位置を示す。回収された配列は太字になっている。回収されたペプチドからのバリアントアミノ酸には、下線が引かれている。
【図9A】中性ペプチドMr(calc):1986.9720のモノアイソトピック質量を示す。フィックスト・モディフィケーション(Fixed modifications):カルバミドメチル(C)。イオンスコア(ions Score):47。期待値(Expect):1e+002。マッチ(赤色太字):8本の最も強いピークを使用して、3/176フラグメントイオン。
【図9B】中性ペプチドMr(calc):1070.5542のモノアイソトピック質量を示す。フィックスト・モディフィケーション:カルバミドメチル(C)。バリアブル(Variable)モディフィケーション:M1:酸化(M)。イオンスコア:52。期待値:7.7e+002。マッチ(赤色太字):25本の最も強いピークを使用して、10/80フラグメントイオン。
【図9C】中性ペプチドMr(calc):1203.5811のモノアイソトピック質量を示す。イオンスコア:98。期待値:7.2e-06。マッチ(赤色太字):6本の最も強いピークを使用して、4/68フラグメントイオン。
【図10】VB1-204により免疫沈降した、CFPAC-1の全細胞溶解物または精製膜画分に由来するタンパク質のウェスタンブロットを示す。ブロットは、VB1-204または市販の抗IkBβ抗体により探索されたものである。
【図11−1】VB6-204のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:66)およびアミノ酸(SEQ ID NO:67)を示す。
【図11−2】図11−1の続きを示す図である。
【図11−3】図11−2の続きを示す図である。
【図12】CFPAC-1細胞におけるVB6-204の細胞毒性を示す。
【図13】阻害剤DEABの存在下(パネルAおよびC)または非存在下(パネルBおよびD)でのaldefluor反応性の分布、ならびにC33A細胞へのVB1-204の特異的な結合(パネルCおよびD)を示す、C33A細胞を用いたフローサイトメトリー結果を示す。
【図14】阻害剤DEABの存在下(パネルAおよびC)または非存在下(パネルBおよびD)でのaldefluor反応性の分布、ならびにDU-145細胞へのVB1-204の特異的な結合(パネルCおよびD)を示す、DU-145細胞を用いたフローサイトメトリー結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
(A)定義
「細胞」という用語には、単一の細胞のみならず、複数の細胞または細胞の集団も含まれる。細胞への薬剤の投与には、インビトロ投与およびインビボ投与の両方が含まれる。
【0041】
「全身投与」という用語は、本明細書において使用されるように、イムノコンジュゲートおよび/または他の癌治療薬が、注射(皮下、静脈内、筋肉内等)、経口投与、吸入、(局所用のクリーム剤もしくは軟膏剤等のような)経皮投与もしくは局所適用、坐剤適用、またはインプラントによるもののような、便利な様式で全身投与され得ることを意味する。インプラントは、サイラスティック膜のような膜、または繊維を含む、多孔性、非多孔性、またはゼラチン質の材料のものであり得る。坐剤は、一般に、0.5〜10重量%の範囲の活性成分を含有している。
【0042】
「アミノ酸」という用語には、天然に存在するアミノ酸の全てが含まれ、修飾アミノ酸も含まれる。
【0043】
「抗体」という用語は、本明細書において使用されるように、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびキメラ抗体を含むものとする。抗体は、組換え起源のものであってもよいし、かつ/またはトランスジェニック動物において作製されたものであってもよい。「抗体断片」という用語は、本明細書において使用されるように、非限定的に、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、それらの二量体、ミニボディ、ダイアボディ、および多量体、多重特異性抗体断片およびドメイン抗体を含むものとする。抗体は、従来の技術を使用して断片化され得る。例えば、F(ab')2断片は、抗体をペプシンにより処理することにより作成され得る。得られたF(ab')2断片は、Fab'断片が生成するよう、ジスルフィド架橋を還元するために処理され得る。パパイン消化は、Fab断片の形成をもたらすことができる。Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体断片、およびその他の断片は、組換え技術によって合成されてもよい。
【0044】
「本願の抗体または抗体断片」という用語は、本明細書において使用されるように、少なくとも一つの本願の軽鎖相補性決定領域(即ち、SEQ ID NO:8〜10のうちの一もしくは複数)および/または少なくとも一つの本願の重鎖相補性決定領域(即ち、SEQ ID NO:5〜7のうちの一つもしくは複数)を含む。一つの態様において、抗体または抗体断片は、軽鎖CDR配列(即ち、SEQ ID NO:8〜10の全て)および/または重鎖CDR配列(即ち、SEQ ID NO:5〜7の全て)を含む。もう一つの態様において、抗体または抗体断片は、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列(軽鎖可変領域)および/またはSEQ ID NO:2のアミノ酸配列(重鎖可変領域)を含む。本願の抗体または抗体断片には、本願の抗原に結合する抗体または抗体断片も含まれる。本願の抗体または抗体断片には、正常細胞には実質的に結合することなく、癌細胞に結合することができるような、それらの配列の機能性バリアントも含まれる。
【0045】
「本願の抗原」という用語は、本明細書において使用されるように、本願の結合タンパク質が結合することができる抗原をさし、IkBβアイソフォーム1(IkBβ1)、IkBβアイソフォーム2(IkBβ2)、および/またはIkBβの癌関連バリアント、ならびにそれらの断片または一部分(例えば、IkBβの癌関連バリアントの細胞外ドメイン)を含む、IkBβタンパク質を含む。「IkBβアイソフォーム1またはIkBβ1」という用語は、本明細書において使用されるように、SEQ ID NO:28により定義されるタンパク質をさす。「IkBβアイソフォーム2またはIkBβ2」という用語は、本明細書において使用されるように、SEQ ID NO:27により定義されるタンパク質をさす。「IkBβの癌関連バリアント」または「バリアントIkBβ」という用語は、本明細書において使用されるように、癌細胞表面上に発現され、非癌細胞上には有意に発現されないIkBβの新規バリアントをさす。本願の一つの態様において、IkBβの癌関連バリアントは、NFk-Bの阻害性調節因子としてIkBβと同一の機能を有するが、異なる細胞内局在(即ち、細胞膜上)を有する。もう一つの態様において、IkBβの癌関連バリアントは、SEQ ID NO:32および/または36により定義されるアミノ酸配列を含む。さらなる態様において、IkBβの癌関連バリアントは、SEQ ID NO:30により定義されるアミノ酸配列を含む。付加的な態様において、IkBβの癌関連バリアントは、SEQ ID NO:30により定義されるアミノ酸配列からなる。さらなる態様において、IkBβの癌関連バリアントは、26位、27位、31位、34位、39位、106位、111位、および112位より選択される1個または複数個のアミノ酸が、別のアミノ酸に置換されているか、または化学的に修飾されているSEQ ID NO:27の配列を含む。さらなる態様において、置換または化学的修飾は、未修飾タンパク質(即ち、SEQ ID NO:27)と比べて変化している領域の疎水性の増加をもたらす。付加的な態様において、置換は、以下のうちの一つまたは複数である:P026V、D027L、P031V、P034V、E039W、E106V、E111V、および/またはK112A。本願のもう一つの態様において、IkBβの癌関連バリアントには、通常はIkBβに存在しない一つまたは複数の膜貫通ドメインを有するIkBβが含まれる。一つの態様において、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:53または54のアミノ酸配列を含む。一つの態様において、IkBβの癌関連バリアントは、IkBβ2のバリアントである。
【0046】
「少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、溶液中での二つの相補的な核酸分子の間の選択的なハイブリダイゼーションを促進する条件が選択されることを意味する。ハイブリダイゼーションは、核酸配列分子の全部に、または一部分に起こる可能性がある。ハイブリダイズする部分は、典型的には、少なくとも15(例えば、20、25、30、40、または50)ヌクレオチド長である。当業者は、核酸二重鎖またはハイブリッドの安定性が、Tmにより決定されることを認識するであろう。Tmは、ナトリウム含有緩衝液においては、ナトリウムイオン濃度および温度の関数である(Tm=81.5℃-16.6(Log10[Na+])+0.41(%(G+C)-600/l)、または類似方程式)。従って、ハイブリッド安定性を決定する洗浄条件におけるパラメーターは、ナトリウムイオン濃度および温度である。既知の核酸分子と類似しているが同一ではない分子を同定するためには、1%のミスマッチが、約1℃のTmの減少もたらすと想定され得、例えば、>95%の同一性を有する核酸分子が求められる場合、最終洗浄温度は約5℃低下するであろう。これらの考察に基づき、当業者は、適切なハイブリダイゼーション条件を容易に選択することができるであろう。好ましい態様において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が選択される。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを達成するためには、以下の条件が利用され得る:上記方程式に基づくTm-5℃での5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5×デンハート液/1.0%SDSでのハイブリダイゼーション、それに続く、60℃での0.2×SSC/0.1%SDSの洗浄。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、42℃での3×SSCでの洗浄工程が含まれる。しかしながら、別の緩衝液、塩、および温度を使用しても、等価なストリンジェンシーが達成され得ることが理解される。ハイブリダイゼーション条件に関する付加的な案内は、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.,2002、およびSambrook et al.,Molecular Cloning:a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001に見出され得る。
【0047】
「結合タンパク質」という用語は、本明細書において使用されるように、本願の癌関連抗原のようなもう一つの物質に、特異的に結合するタンパク質をさす。一態様において、結合タンパク質は抗体または抗体断片である。
【0048】
「インビボ投与に適した生物学的に適合性の型」とは、毒性効果より治療効果の方が優っているような、投与される物質の型を意味する。
【0049】
「癌」という用語には、本明細書において使用されるように、本願の結合タンパク質、好ましくは、本願の抗体または抗体断片が結合する、任意の癌が含まれる。
【0050】
「癌細胞」という用語には、癌もしくは腫瘍を形成する細胞、形質転換された細胞、または癌もしくは腫瘍を形成する細胞になりやすい細胞が含まれる。
【0051】
「相補的な」という用語は、標準的なワトソンクリックの相補性の規則に従い塩基対合することができるか、またはストリンジェントな条件の下で特定の核酸セグメントにハイブリダイズすることができる核酸配列をさす。
【0052】
「保存的なアミノ酸置換」とは、本明細書において使用されるように、あるアミノ酸残基が、タンパク質の所望の特性を妨害することなく、もう一つのアミノ酸残基に交換され得るようなものである。
【0053】
「対照」という用語は、本明細書において使用されるように、癌を有しているか、または有していないことが既知の対象または対象の群に由来する試料をさす。
【0054】
「放出制御系」という用語は、使用されるように、本願のイムノコンジュゲートおよび/または他の癌治療薬が、制御された様式で投与され得ることを意味する。例えば、マイクロポンプは、制御された用量を腫瘍の区域へ直接送達し、それにより薬学的組成物のタイミングおよび濃度を微調節することができる(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,vol.2,pp.115-138を参照のこと)。
【0055】
「ペプチドの誘導体」という用語は、官能的な側鎖の反応により化学的に誘導体化された一つまたは複数の残基を有するペプチドをさす。そのような誘導体化された分子には、例えば、遊離アミノ基が、アミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル鎖、クロロアセチル鎖、またはホルミル基を形成するよう誘導体化された分子が含まれる。遊離カルボキシル基は、塩、メチルエステルおよびエチルエステルもしくはその他の型のエステル、またはヒドラジドを形成するよう誘導体化され得る。遊離ヒドロキシル基は、O-アシル誘導体またはO-アルキル誘導体を形成するよう誘導体化され得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、N-im-ベンジルヒスチジンを形成するよう誘導体化され得る。20種の標準的なアミノ酸の一つまたは複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有しているペプチドも、誘導体として含まれ得る。例えば:プロリンは4-ヒドロキシプロリンに置換され得;リジンは5-ヒドロキシリジンに置換され得;ヒスチジンは3-メチルヒスチジンに置換され得;セリンはホモセリンに置換され得;そして、リジンはオルニチンに置換され得る。
【0056】
「癌の検出またはモニタリング」という語句は、対象が癌を有しているか否か、癌の程度、癌の重度、および/または癌のグレードを決定する方法または過程をさす。
【0057】
「直接投与」という用語は、本明細書において使用されるように、非限定的に、腫瘍内、血管内、または腫瘍周囲に、癌治療薬が投与され得ることを意味する。例えば、単回もしくは複数回の腫瘍への直接注射により、連続的もしくは非連続的な腫瘍への灌流により、癌治療薬のリザーバーの導入により、徐放装置の腫瘍への導入により、徐放製剤の腫瘍への導入により、かつ/または腫瘍への直接適用により、癌治療薬は投与され得る。「腫瘍への」投与の様式には、腫瘍の区域への癌治療薬の導入、または腫瘍の区域へ実質的に直接流入する血管もしくはリンパ管への癌治療薬の導入が含まれる。
【0058】
「有効量」という語句は、本明細書において使用されるように、所望の結果を達成するために必要な投薬量および期間において有効な量を意味する。治療薬の有効量は、疾患の状態、動物の年齢、性別、体重のような因子に従って変動する可能性がある。投薬計画は最適の治療的応答を提供するために調整され得る。例えば、いくつかの分割された用量を毎日投与してもよいし、または、治療的情況の緊急性により示されるように、比例して用量を低下させてもよい。
【0059】
「免疫応答の誘発」または「免疫応答の誘導」という用語は、本明細書において使用されるように、例えば、体液性または細胞性いずれかの免疫系の応答を開始させるか、引き金を引くか、引き起こすか、増強するか、改善するか、または強化することを意味する。免疫応答の開始または増強は、以下に限定はされないが、抗体アッセイ(例えば、ELISAアッセイ)、抗原特異的細胞障害性アッセイ、およびサイトカインの産生(例えば、ELISPOTアッセイ)を含む、当業者に公知のアッセイを使用して査定され得る。好ましくは、本願の単離されたタンパク質、核酸配列、または組換え発現ベクター、および本願の方法は、細胞性免疫反応、より好ましくは、T細胞応答を誘発するかまたは増強する。
【0060】
「重鎖相補性決定領域」という用語は、本明細書において使用されるように、抗体分子の重鎖可変領域内の過可変性の領域をさす。重鎖可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端へと、重鎖相補性決定領域1、重鎖相補性決定領域2、および重鎖相補性決定領域3と呼ばれる三つの相補性決定領域を有する。
【0061】
「重鎖可変領域」という用語は、本明細書において使用されるように、重鎖の可変領域をさす。
【0062】
「本願のイムノコンジュゲート」という用語は、本明細書において使用されるように、(2)エフェクター分子に付着した(1)本願の結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片を含む。エフェクター分子は、以下に限定はされないが、(i)直接または間接的に検出可能シグナルを生じることができる標識、または(ii)細胞毒性であるか、細胞増殖抑制性であるか、もしくは癌細胞の分裂能および/もしくは転移能を防止するかもしくは低下させる毒素のような癌治療剤を含む、癌細胞へと送達されることが望まれる任意の分子であり得る。「本願の免疫毒素」という用語は、エフェクター分子が、細胞毒性であるか、細胞増殖抑制性であるか、または癌細胞の分裂能および/もしくは転移能を防止するかもしくは低下させる毒素のような癌治療剤である、イムノコンジュゲートをさす。
【0063】
「単離された核酸配列」という用語は、本明細書において使用されるように、組換えDNA技術により作製された場合には、細胞材料または培養培地を実質的に含まず、化学合成された場合には、前駆化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まない核酸をさす。単離された核酸は、その核酸が由来する核酸に天然に隣接している配列(即ち、核酸の5'末および3'末に位置する配列)も実質的に含まない。「核酸」という用語は、DNAおよびRNAを含むものとし、二本鎖または一本鎖のいずれかであり得、センス鎖またはアンチセンス鎖を表す。さらに、「核酸」という用語には、相補的な核酸配列が含まれる。
【0064】
「単離されたタンパク質」という用語は、組換えDNA技術により作製されたか、または培養細胞もしくは組織試料から入手された場合には、細胞材料および/または培養培地を実質的に含まず、化学合成された場合には、前駆化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まないタンパク質をさす。
【0065】
「軽鎖相補性決定領域」という用語は、本明細書において使用されるように、抗体分子の軽鎖可変領域内の過可変性の領域をさす。軽鎖可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端へと、軽鎖相補性決定領域1、軽鎖相補性決定領域2、および軽鎖相補性決定領域3と呼ばれる三つの相補性決定領域を有する。
【0066】
「軽鎖可変領域」という用語は、本明細書において使用されるように、軽鎖の可変領域をさす。
【0067】
「修飾型ブーガニン(bouganin)」という用語は、本明細書において使用されるように、PCT/CA2005/000410、およびUS2005-0238642 A1として公開された米国特許出願第11/084,080号に記載されたような、免疫応答を活性化する傾向が低下している修飾型ブーガニンを意味する。一例において、修飾型ブーガニンは、以下のアミノ酸配列(SEQ ID NO:11)を有する:

【0068】
「核酸配列」という用語は、本明細書において使用されるように、天然に存在する塩基、糖、および糖間(骨格)結合からなるヌクレオシド単量体またはヌクレオチド単量体の配列をさす。その用語には、天然には存在しない単量体を含む、修飾された配列もしくは置換された配列、またはそれらの一部分も含まれる。本願の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA)またはリボ核酸配列(RNA)であり得、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシルを含む、天然に存在する塩基を含んでいる可能性がある。配列は、修飾された塩基を含有していてもよい。そのような修飾された塩基の例には、アザアデニン、デアザアデニン、アザグアニン、デアザグアニン、アザシトシン、デアザシトシン、アザチミジン、デアザチミジン、アザウラシル、およびデアザウラシル;ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンが含まれる。
【0069】
「試料」という用語は、本明細書において使用されるように、癌についてアッセイされ得る対象に由来する任意の液体、細胞、または組織試料をさす。
【0070】
「配列同一性」という用語は、本明細書において使用されるように、二つのポリペプチド配列の間の配列同一性のパーセンテージをさす。二つのポリペプチド配列の間の同一性のパーセンテージを決定するためには、二つの配列の間の最も高度のマッチが入手されるよう、BLOSUM 62スコアリングマトリックス(Henikoff S.and Henikoff J.G.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919)およびギャップオープニングペナルティ(gap opening penalty)10およびギャップエクステンションペナルティ(gap extension penalty)0.1と共に、Clustal Wアルゴリズム(Thompson,JD,Higgins DG,Gibson TJ,1994,Nucleic Acids Res.22(22):4673-4680)を好ましくは使用して、そのような二つの配列のアミノ酸配列が整列化される(ここで、配列のうちの一方の全長の少なくとも50%がアラインメントに含まれる)。最も高度のマッチが二つの配列の間で入手され、同一アミノ酸の数が二つの配列の間で決定されるよう、配列を整列化するために使用され得るその他の方法は、SmithおよびWaterman(Adv.Appl.Math.,1981,2:482)により改訂されたような、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.,1970,48:443)のアラインメント法である。二つのアミノ酸配列の間の同一性のパーセンテージを計算するその他の方法には、当技術分野において一般に認識されており、例えば、CarilloおよびLipton(SIAM J.Applied Math.,1988,48:1073)により記載されたもの、ならびにComputational Molecular Biology,Lesk,e.d.Oxford University Press,New York,1988,Biocomputing:Informatics and Genomics Projectsに記載されたものが含まれる。一般に、そのような計算にはコンピュータプログラムが利用されるであろう。これに関して使用され得るコンピュータプログラムには、GCG(Devereux et al.,Nucleic Acids Res.,1984,12:387)BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul et al.,J.Molec.Biol.,1990:215:403)が含まれるが、これらに限定はされない。
【0071】
「対象」という用語は、本明細書において使用されるように、動物界の任意のメンバー、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトをさす。好ましい態様において、対象は、癌を有していると推定されるか、または有している。
【0072】
「癌の処置または防止」という語句は、本明細書において使用されるように、癌細胞複製の阻害、癌形成細胞への細胞の形質転換の防止、癌の蔓延(転移)の阻害、腫瘍成長の阻害、癌細胞数もしくは腫瘍成長の低下、癌の悪性グレードの減少(例えば、増加した分化度)、または癌関連症状の改善をさす。
【0073】
本明細書において使用されるように、「バリアント」という用語には、実質的に同一の方式で本願のタンパク質または核酸分子と実質的に同一の機能を果たす本願のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の修飾または化学的等価物が含まれる。例えば、本願のタンパク質のバリアントには、非限定的に、保存的アミノ酸置換が含まれる。本願のタンパク質のバリアントには、本願のタンパク質への付加および欠失も含まれる。さらに、バリアントペプチドおよびバリアントヌクレオチド配列には、そのアナログおよび誘導体が含まれる。本願の癌関連抗原のバリアントとは、癌細胞上に発現され正常細胞上には発現されないタンパク質配列を意味する。
【0074】
(B)相補性決定領域および結合タンパク質
(i)軽鎖および重鎖の相補性決定領域および軽鎖および重鎖の可変領域
本願は、アミノ酸配列SGDKLGDKYAC(SEQ ID NO:8)を含む単離された軽鎖相補性決定領域1(CDR1);アミノ酸配列QDSKRPS(SEQ ID NO:9)を含む単離された軽鎖相補性決定領域2(CDR2);およびアミノ酸配列QAWDSSTVV(SEQ ID NO:10)を含む単離された軽鎖相補性決定領域3(CDR3);ならびにアミノ酸配列SYAMH(SEQ ID NO:5)を含む単離された重鎖CDR1;アミノ酸配列

を含む単離された重鎖CDR2;およびアミノ酸配列

を含む単離された重鎖CDR3を提供する。
【0075】
本願には、上に開示されたCDR配列により認識されるのと同一の抗原に結合することができるCDR配列のバリアントも含まれる。
【0076】
本願の付加的な局面は、本願の軽鎖CDR1、CDR2、および/またはCDR3を含む単離された軽鎖可変領域(SEQ ID NO:8〜10)、ならびに本願の重鎖CDR1、CDR2、および/またはCDR3を含む単離された重鎖可変領域(SEQ ID NO:5〜7)である。一つの態様において、軽鎖可変領域は、図1Bに示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)を含む。もう一つの態様において、重鎖可変領域は、図1Aに示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を含む。
【0077】
本願には、上に開示された単離された軽鎖可変領域および単離された重鎖可変領域により認識されるのと同一の抗原に結合することができる単離された軽鎖可変領域および重鎖可変領域のバリアントも含まれる。
【0078】
本願には、本願により開示された配列の化学的等価物を含む、SEQ ID NO:5〜10、2、および4のアミノ酸配列のバリアントが含まれることを、当業者は認識するであろう。そのような等価物には、実質的に同一の方式で、本明細書に開示された特定のタンパク質と実質的に同一の機能を果たすタンパク質が含まれる。例えば、CDR配列の機能性バリアントは、ネイティブCDR配列により認識される抗原に結合することができるであろう。例えば、等価物には、非限定的に、保存的アミノ酸置換が含まれる。
【0079】
一つの態様において、軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3のバリアントアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:5〜10との少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに最も好ましくは95%の配列同一性を有する。
【0080】
もう一つの態様において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域のバリアントアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:2および4との少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに最も好ましくは95%の配列同一性を有する。
【0081】
本願は、本願の軽鎖可変領域をコードする単離された核酸配列および本願の重鎖可変領域をコードする単離された核酸配列も提供する。一つの態様において、単離された核酸配列は、図1Bに示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)を含む軽鎖可変領域をコードする。もう一つの態様において、単離された核酸配列は、図1Aに示されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を含む重鎖可変領域をコードする。さらなる態様において、軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、図1Bに示される核酸配列(SEQ ID NO:3)を含む。付加的な態様において、重鎖可変領域をコードする核酸配列は、図1Aに示される核酸配列(SEQ ID NO:1)を含む。本願には、本願の軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードする核酸配列のバリアントも含まれる。例えば、バリアントには、少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で、本願の軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードする核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列が含まれる。
【0082】
本願は、アミノ酸配列SGDKLGDKYAC(SEQ ID NO:8)を含む軽鎖CDR1;アミノ酸配列QDSKRPS(SEQ ID NO:9)を含む軽鎖CDR2;アミノ酸配列QAWDSSTVV(SEQ ID NO:10)を含む軽鎖CDR3;アミノ酸配列SYAMH(SEQ ID NO:5)を含む重鎖CDR1;アミノ酸配列

を含む重鎖CDR2;およびアミノ酸配列

を含む重鎖CDR3をコードする単離された核酸配列も提供する。
【0083】
本願には、上述のCDR配列および可変領域配列のバリアントをコードする単離された核酸配列も含まれる。
【0084】
バリアント核酸配列には、少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で、SEQ ID NO:5〜10、2、および4に示されるアミノ酸配列、ならびにそれらのバリアントをコードする核酸配列にハイブリダイズする核酸配列が含まれる。
【0085】
(ii)結合タンパク質
本願のもう一つの局面は、少なくとも一つの本願の軽鎖相補性決定領域(即ち、SEQ ID NO:8〜10のうちの一つもしくは複数)および/または少なくとも一つの本願の重鎖相補性決定領域(即ち、SEQ ID NO:5〜7のうちの一つもしくは複数)を含む、結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片である。そのような結合タンパク質は、本明細書中、「本願の結合タンパク質」、好ましくは、「本願の抗体または抗体断片」とも一般に呼ばれる。
【0086】
一つの態様において、結合タンパク質は、それぞれ、アミノ酸配列

を含む軽鎖相補性決定領域1、2、および3;ならびに、それぞれ、アミノ酸配列

を含む重鎖相補性決定領域1、2、および3を含む。本願は、図1Bに示される軽鎖可変領域(SEQ ID NO:4)および/または図1Aに示される重鎖可変領域(SEQ ID NO:2)を含む結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片も提供する。
【0087】
当業者は、実質的に同一の方式で、上に開示された結合タンパク質と実質的に同一の機能を果たす、上に開示された配列の化学的等価物を含む、上に開示された特定の結合タンパク質のバリアントが、本願に含まれることを認識するであろう。結合タンパク質の機能性バリアントは、上に開示された結合タンパク質と同一の抗原に結合することができるであろう。一つの態様において、結合タンパク質は、IkBβアイソフォーム1(IkBβ1)、IkBβアイソフォーム2(IkBβ2)、および/またはIkBβの癌関連バリアントを含む、IkBβタンパク質に結合する。
【0088】
本発明者らは、本願の結合タンパク質が結合する抗原を同定した。従って、本願は、IkBβアイソフォーム1(IkBβ1)、IkBβアイソフォーム2(IkBβ2)、および/またはIkBβの癌関連バリアントを含むIkBβタンパク質に結合する結合タンパク質を提供する。
【0089】
上述のように、本願の結合タンパク質は、癌細胞の表面に結合し、非癌細胞の表面には有意に結合しない。従って、本願には、IkBβの癌関連バリアントの細胞外ドメインに結合する結合タンパク質が含まれる。IkBβの癌関連バリアントの構造は、コンピューターモデリングを使用して当業者によって予測され得る。例えば、市販のソフトウェアまたはサービスが使用され得る(Protein Explorer by Martz,Eric.(2000年11月30日にサブミット。2003年4月30日に最終更新)http://molvis.sdsc.edu/visres/molvisfw/titles.jspを参照のこと)。一つの態様において、SEQ ID NO:30により定義されるタンパク質のコンピューターモデリング。
【0090】
一つの態様において、細胞外ドメインは、SEQ ID NO:27または30のアミノ酸52〜97に含まれるか、またはそれを含む。
【0091】
もう一つの態様において、細胞外ドメインは、

に含まれるか、またはそれを含む。
【0092】
もう一つの態様において、細胞外ドメインは、SEQ ID NO:27または30のアミノ酸38〜98:

に含まれるか、またはそれを含む。
【0093】
もう一つの態様において、本願の結合タンパク質は、SEQ ID NO:27または30のアミノ酸38〜102:

を含むペプチドに結合する。
【0094】
ある種の態様において、抗体または抗体断片は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgE、IgM、またはIgDの定常領域のような重鎖定常領域の全部または一部分を含む。好ましくは、重鎖定常領域はIgM重鎖定常領域である。さらに、抗体または抗体断片は、κ軽鎖定常領域またはλ軽鎖定常領域の全部または一部分を含むことができる。好ましくは、軽鎖定常領域はλ軽鎖定常領域である。
【0095】
ヒトモノクローナル抗体を作製するためには、抗体産生細胞(リンパ球)を、癌を有するヒトから採集し、標準的な体細胞融合手法により骨髄腫細胞と融合させ、それにより、これらの細胞を不死化し、ハイブリドーマ細胞を得ることができる。そのような技術は、当技術分野において周知である(例えば、KohlerおよびMilstein(Nature 256:495-497(1975))により最初に開発されたハイブリドーマ技術、ならびにヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.,Immunol.Today 4:72(1983))、ヒトモノクローナル抗体を作製するEBVハイブリドーマ技術(Roder et al.,Methods Enzymol,121:140-67(1986))、およびコンビナトリアル抗体ライブラリーのスクリーニング(Huse et al.,Science 246:1275(1989))のようなその他の技術)。ハイブリドーマ細胞を、癌細胞と特異的に反応性の抗体の産生について、免疫化学的にスクリーニングし、モノクローナル抗体を単離することができる。
【0096】
癌細胞上の抗原または分子のような特定の抗原または分子に対して反応性の特異的な抗体または抗体断片は、細胞表面成分を有する細菌において発現された、免疫グロブリン遺伝子またはその一部分をコードする発現ライブラリーをスクリーニングすることによっても作成され得る。例えば、完全なFab断片、VH領域、およびFV領域は、ファージ発現ライブラリーを使用して、細菌において発現され得る(例えば、Ward et al.,Nature 341:544-546(1989);Huse et al.,Science 246:1275-1281(1989);およびMcCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)を参照のこと)。
【0097】
本願には、本願の抗体または抗体断片と同一の抗原に結合する全ての抗体および抗体断片が含まれる。当業者は、本願の抗体および抗体断片と同一の結合特異性を有する他の抗体および抗体断片を見出すために、結合アッセイが使用され得ることを認識するであろう。後に例示されるように、競合結合アッセイが、そのような他の抗体を見出すために使用され得る。
【0098】
フローサイトメトリーを使用して競合アッセイを実行する前に、一定数の癌細胞に対して最大結合を与える本願の抗体(Ab1)の最低濃度が決定される。計106個の細胞を、指数増殖期の培養物から採集し、4℃で、1時間、様々な抗体濃度と共にインキュベートする。細胞を洗浄し、4℃で、付加的な時間、適切な検出抗体と共にインキュベートする。洗浄後、細胞をフローサイトメトリーにより分析する。各試験抗体について、抗体濃度に対して蛍光中央値をプロットすることにより、データから飽和曲線を作成する。
【0099】
競合アッセイのため、癌細胞を上記のように調製し、一定濃度の抗体(Ab1)によりデュプリケートで処理する。一定濃度とは、上で決定されたような一定数の癌細胞に対して最大結合を起こす抗体の最低濃度である。Ab1添加の直後に、変動する濃度の、可能性のある阻害性抗体(Ab2)を、各チューブに添加し、混合物を4℃で1時間インキュベートする。各試験試料(Ab1+Ab2)についての蛍光中央値の読み取りからバックグラウンド蛍光(PBS-5%FCS)を差し引くことにより、阻害率および最大蛍光中央値の変化の両方を、計算する。次いで、その結果を、Ab1単独の蛍光中央値(最大結合)からバックグラウンドを引いたもので割る(下記参照)。100を掛けることにより、阻害結果のパーセントを入手する。レプリケートの平均を、それぞれの標準誤差と共に、抗体濃度に対してプロットする。以下の式が阻害率を計算するために使用される:
PI=[(MF(Ab1+Ab2)-MFBgd)/(MFAb1-MFBgd)]×100
[式中、PI=阻害率;MF(Ab1+Ab2=Ab1+Ab2混合物について測定された蛍光中央値;かつMFBgd=PBS-5%FCSによるバックグラウンド蛍光中央値]。
【0100】
従って、本願は、以下の工程を含む方法により同定され得る、癌細胞上の抗原に結合することができる結合タンパク質を提供する。
(1)一定数の癌細胞に対して最大結合を生じる最低濃度の本願の結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片(Ab1)と共に、一定数の癌細胞をインキュベートし、Ab1の蛍光中央値(MFAb1)を測定する工程;
(2)Ab1および癌細胞にAb2を添加し、蛍光中央値(MF(Ab1+Ab2))を測定することにより、二つ以上の濃度の試験結合タンパク質(Ab2)を試験する工程;
(3)バックグラウンド中央値蛍光(MFbgd)を測定する工程;
(4)PI(PI=[(MF(Ab1+Ab2)-MFBgd)/(MFAb1-MFBgd)]×100)を計算する工程;ならびに
(5)PIを対照PI値と比較し、その際、対照PIとの統計的有意差を有するPIを、試験結合タンパク質が癌細胞上の本願の抗原に結合することができることの指標とする工程。
【0101】
当業者は、抗原に対する親和性を増加させることにより、本願の結合タンパク質またはイムノコンジュゲートを修飾するため、親和性成熟技術を使用することができることを認識するであろう。
【0102】
二つの戦略が、抗体の結合親和性を増強するためにルーチンに使用される。一つのアプローチは、抗原結合に関与するキー残基を同定するため、Ab-Ag複合体の結晶構造の解明を利用する(Davies D.R.,Cohen G.H.1996.Interactions of protein antigens with antibodies.Proc Natl.Acad.Sci.U.S.A.93,7-12)。続いて、相互作用を増強するため、それらの残基を変異させることができる。他方のアプローチは、B細胞により産生された免疫グロブリンの親和性成熟を駆動するインビボの抗原刺激を模倣する。免疫応答の成熟の間、免疫グロブリンの可変領域は、体細胞変異を受ける(Mc Heyzer-Williams M.2003.B-cell signaling mechanism and activation.Fundamental Immunology,Fifth edition,195-225)。免疫系に高度に特異的なこの過程は、極めて高率の点変異の導入を特徴とする。それは、可変領域をコードするDNA断片内にのみ起こり、保存されたドメインには起こらない。次いで、体細胞変異を受けたバリアント抗体を発現するB細胞を、より高親和性の免疫グロブリンの選択をもたらす、抗原により媒介される選択に供する。この現象をインビトロで複製するため、ランダム過程または標的過程のいずれかにより、変異を導入するため、いくつかのアプローチが使用されている。ランダム変異は、エラープローンPCR、チェーンシャフリング、または変異誘発(mutator)大腸菌株を使用して導入され得る(Clackson T.Hoogenboom N.R.,Griffiths A.D.and Winter G.1991 Making antibody fragments using phage display libraries.Nature 352,624-628,Hawkins R.E.,Russell S.J.and Winter G.1992.Selection of phage antibodies by binding affinity.Mimicking affinity maturation.J.Mol.Biol.226,889-896,Low N.,Holliger P.and Winter G.1996.Mimicking somatic hypermutation:affinity maturation of antibodies displayed on bacteriophage using a bacterial mutator strain.J Mol.Biol.260,359-368)。この戦略は、リボソーム、ファージ、または酵母のようなディスプレイ技術を用いて反応性クローンが選択される、大きいライブラリーの作出をもたらす(Min L.(2000).Applications of display technology in protein analysis.Nat.Biotechnol.18,1251-1256)。
【0103】
軽鎖および重鎖のCDR、特に、CDR3の標的変異は、抗体親和性を増加させるための有効な技術であることが示されている。CDR3の3〜4アミノ酸のブロックまたは「ホットスポット」と呼ばれる特別な領域が、変異誘発の標的とされる。Yangらは、4個のCDR残基を変異させることにより、抗HIV gp120 Fab断片の420倍の増加を報告した(Yang W.P.,Green K.,Pinz-Sweeney S.,Briones A.T.,Burton D.R.and Barbas C.F.III.1995.CDR walking mutagenesis for the affinity maturation of a potent human anti-HIV-1 antibody into picomolar range.J.Mol.Biol.,254,392-403)。C6.5 scFvのVH CDR3における3個の変異と組み合わせられたVL CDR3における1個の変異は、1230倍増加した親和性を与えた(Schier R.,McCall A.,Adams G.P.,Marshall K.W.,Merrit H.,Yin M.,Crawford R.S.Weiner L.M.,Marks C.and Marks J.D.1996.Isolation of picomolar affinity anti-c-erbB-2 single-chain Fv by molecular evolution of the complementary determining regions in the center of the antibody binding site.J.Mol.Biol.,263,551-567)。
【0104】
「ホットスポット」とは、インビボで体細胞過変異が起こる配列である(Neuberger M.S and Milstein C.1995.Somatic hypermutation.Curr.Opin.Immunol.7,248-254)。ホットスポット配列は、ある種のコドンにおけるコンセンサスヌクレオチド配列と定義され得る。コンセンサス配列はテトラヌクレオチドRGYW[ここで、RはAまたはGのいずれかであり得、YはCまたはTであり得、WはAまたはTのいずれかであり得る]である(Neuberger M.S and Milstein C.1995.Somatic hypermutation.Curr.Opin.Immunol.7,248-254)。さらに、ヌクレオチドAGYによりコードされるセリン残基は、潜在的なホットスポット配列に相当する、TCNによりコードされるものより優勢に、可変ドメインのCDR領域に存在する(Wagner S.D.,Milstein C.and Neuberger M.S.1995.Codon bias targets mutation.Nature,376,732)。構造分析は、CDRループ、特にCDR3ループが、抗原結合に最も大きく寄付することを示した(Giudicelli V.,Chaume D.and Lefranc M.P.2004.IMGT/V-QUEST,an integrated software program for immunoglobulin and T cell receptor V-J and V-D-J rearrangement analysis.Nucleic Acids Res.32,435-440)。従って、本願の各抗体の重鎖および軽鎖のCDRのヌクレオチド配列を、ホットスポット配列およびAGYコドンの存在についてスキャンする。軽鎖および重鎖のCDR領域の同定されたホットスポットを、International ImMunoGen Ticsデータベース(IMGT,http://imgt.cines.fr/textes/vquest/)を使用して、重鎖および軽鎖の生殖系配列と比較する(Davies D.R.,Padlan E.A.and Sheriff S.1990.Antibody-antigen complexes.Annu.Rev.Biochem.59,439-473)。生殖系列と同一の配列は、体細胞変異が起こっていないことを示唆する;従って、インビボで起こる体細胞事象を模倣したランダム変異を導入する。対照的に、異なっている配列は、何らかの体細胞変異が既に起こっていることを示す。インビボ体細胞変異が最適であったか否かは未だ決定されていない。CDR内の埋め込まれたアミノ酸または保存されたアミノ酸をコードするホットスポットは、変異誘発されない。これらの残基は、通常、埋め込まれているため、全体構造にとって重大であり、抗原と相互作用する可能性は低い。さらに、体細胞変異が優勢に起こった生殖系列配列内の予測された位置と、配列を比較することができる(Tomlinson I.M.,Cox J.P.L.,Gherardi E.,Lesk A.M.and Chotia C.1995.The structural repertoire of the human VIdomain.EMBO J.14,4628-4638,Tomlinson I.M.,Walter G.,Jones P.T.,Dear P.H.,Sonnhammer E.L.L.and Winter G.1996.The imprint of somatic hypermutation on the repertoire of human germline V genes.J.Mol.Biol.256,813-817)。類似した戦略が、BL22 scFvの親和性成熟のために適用された。重鎖のCDR3に導入された点変異は、様々なCD22陽性細胞系における結合活性の5〜10倍の増加をもたらした(Salvatore G.,Beers R.,Margulies I.,Kreitman R.J.and Pastan I.2002.Improved cytotoxic activity toward cell lines and fresh leukemia cells of a mutant anti-CD22 immunotoxin obtained by antibody phage display.Clinical Cancer research,8,995-1002)。また、CDR1ループおよびCDR2ループの様々なアミノ酸の変異も、3〜7倍の範囲の増加した親和性を有する変異体を生じた(Ho M.,Kreitman J.,Onda M.and Pastan I.2005.In vitro antibody evolution targeting germline hot spots to increase activity of an anti-CD22 immunotoxin.J.Biol.Chem.,280,607-617)。
【0105】
ランダム過程または標的過程のいずれかにより、変異が導入された後は、抗体を発現させ、機能について査定する。例えば、機能性スクリーニングは、結合に基づくことができる。次いで、機能が査定された後は、既知の方法を使用して、選ばれた抗体のDNA配列決定を実施することができる。
【0106】
もう一つの態様において、Harvey,Bら(PNAS 2004 June 22;101(25):9193-8)により記載されたペリプラズム空間タンパク質提示法(anchored periplasmic expression)(APEx)法が、本願の結合タンパク質またはイムノコンジュゲートの親和性成熟のために使用される。
【0107】
従って、本願には、IkBβアイソフォーム1(IkBβ1)、IkBβアイソフォーム2(IkBβ2)、および/またはIkBβの癌関連バリアントを含むIkBβタンパク質に対する結合タンパク質の親和性を増加させるため親和性成熟された本願の結合タンパク質が含まれる。
【0108】
本願は、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、または安定剤と共に、本願の結合タンパク質、好ましくは、抗体および抗体断片を含む組成物も提供する。
【0109】
さらに、本願は、本願の結合タンパク質をコードする単離された核酸配列を提供する。本願には、これらの核酸配列のバリアントも含まれる。例えば、バリアントには、少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で、本願の結合タンパク質をコードする核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列が含まれる。
【0110】
(C)癌関連抗原
本発明者らは、本願の結合タンパク質が結合する抗原(IkBβアイソフォーム1(IkBβ1)、IkBβアイソフォーム2(IkBβ2)、および/またはIkBβの癌関連バリアントのようなIkBβタンパク質を含む)を同定した。癌関連抗原は、癌細胞の表面上に発現され、正常細胞の表面上には有意に発現されない。従って、本願には、本願の結合タンパク質のうちの一つに特異的に結合することができる単離されたタンパク質、および核酸配列、ならびにそれらの使用が含まれる。
【0111】
本願には、新規癌関連抗原、即ち、IkBβの癌関連バリアントが含まれる。一つの態様において、IkBβの癌関連バリアントは、癌細胞の表面上に発現され、非癌細胞上には有意に発現されない。さらなる態様において、IkBβの癌関連バリアントは、NFk-Bの阻害性調節因子としてIkBβと同一の機能を有するが、異なる細胞内局在(即ち、細胞膜上)を有する。もう一つの態様において、IkBβの癌関連バリアントは、SEQ ID NO:32および/または36により定義されるアミノ酸配列を含む。さらなる態様において、IkBβの癌関連バリアントは、SEQ ID NO:30により定義されるアミノ酸配列を含む。付加的な態様において、IkBβの癌関連バリアントは、SEQ ID NO:30により定義されるアミノ酸配列からなる。さらなる態様において、IkBβの癌関連バリアントは、26位、27位、31位、34位、39位、106位、111位、および112位から選択される1個または複数個のアミノ酸が、別のアミノ酸に置換されているか、または化学的に修飾されている、SEQ ID NO:27の配列を含む。さらなる態様において、置換または化学的修飾は、未修飾タンパク質(即ち、SEQ ID NO:27)と比べて変化している領域の疎水性の増加をもたらす。付加的な態様において、置換は、以下のうちの一つまたは複数である:P026V、D027L、P031V、P034V、E039W、E106V、E111V、および/またはK112A。本願のもう一つの態様において、IKBβの癌関連バリアントには、通常はIKBβに存在しない一つまたは複数の膜貫通ドメインを有するIKBβが含まれる。一つの態様において、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:53または54のアミノ酸配列を含む。一つの態様において、IkBβの癌関連バリアントはIkBβ2のバリアントである。
【0112】
当業者は、本願において開示された配列の化学的等価物を含む、上述のアミノ酸配列のバリアントが、本願に含まれることを認識するであろう。そのような等価物には、実質的に同一の方式で、本明細書に開示された特定のタンパク質と実質的に同一の機能を果たすタンパク質が含まれる。例えば、等価物には、非限定的に、保存的アミノ酸置換が含まれる。
【0113】
一つの態様において、バリアントアミノ酸配列は、SEQ ID NO:30、32、36、53、または54の配列との少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。
【0114】
本願には、本願の新規癌関連抗原の使用が含まれる。例えば、癌を処置するかもしくは防止するために使用され得る、または対象における癌を検出するかもしくはモニタリングするために使用され得る、または癌を処置するかもしくは防止するための医薬の製造において使用され得る、結合タンパク質およびイムノコンジュゲートを作成するための、本願の新規癌関連抗原の使用。
【0115】
さらに、本願は、本願の新規癌関連抗原をコードする単離された核酸配列を提供する。本願には、これらの核酸配列のバリアントも含まれる。例えば、バリアントには、少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で本願の新規癌関連抗原をコードする核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列が含まれる。
【0116】
(D)イムノコンジュゲート
本願には、(2)エフェクター分子に付着した(1)本願の結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片、を含むイムノコンジュゲートが含まれる。一つの態様において、本願の結合タンパク質は、癌細胞上の抗原または分子に結合する。一つの態様において、抗原または分子には、IkBβアイソフォーム1(IkBβ1)、IkBβアイソフォーム2(IkBβ2)、および/またはIkBβの癌関連バリアントのようなIkBβタンパク質が含まれる。
【0117】
好ましい態様において、エフェクター分子は、(i)直接または間接的に検出可能シグナルを生じることができる標識、または(ii)細胞毒性であるか、細胞増殖抑制性であるか、もしくは癌細胞の分裂能および/もしくは転移能を防止するかもしくは低下させる毒素のような癌治療剤である。そのようなイムノコンジュゲートは、本明細書中、「本願のイムノコンジュゲート」とも一般に呼ばれる。
【0118】
本願の一態様において、エフェクター分子は癌治療剤である。癌治療剤は、好ましくは、細胞毒性であるか、細胞増殖抑制性であるか、または癌細胞の分裂能および/もしくは転移能を防止するかもしくは低下させる毒素である。従って、本発明の一つの局面は、(2)細胞毒素のような癌治療剤に付着した(1)本願の結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片、を含むイムノコンジュゲートである。
【0119】
もう一つの態様において、イムノコンジュゲートは取り込まれ、癌治療剤は細胞のタンパク質合成を阻止し、細胞死をもたらす細胞毒素である。重要なこととして、大部分の正常細胞は、癌細胞上に存在する抗原を広範に発現しないため、イムノコンジュゲートに結合し、それを取り込むことができず、毒素またはその他の癌治療剤の殺傷効果から保護される。
【0120】
多様なエフェクター分子が、本願のイムノコンジュゲートにおいて使用され得、多数のそのようなエフェクター分子は、細胞内で活性を有する分子である。従って、本願の一態様において、イムノコンジュゲートは癌細胞により取り込まれる。
【0121】
好ましい態様において、エフェクター分子は、癌治療剤、より好ましくは、非限定的に、ゲロニン、ブーガニン、サポリン、リシン、リシンA鎖、ブリオジン(bryodin)、ジフテリア毒素、レストリクトシン(restrictocin)、シュードモナス外毒素A、およびそれらのバリアントを含む、リボソーム不活化活性を有するポリペプチドを含む、細胞毒素である。タンパク質がリボソーム不活化タンパク質である場合、タンパク質が細胞にとって細胞毒性であるためには、イムノコンジュゲートが、癌細胞と結合した際に取り込まれなければならない。従って、本願の一態様において、エフェクター分子は細胞毒素であり、イムノコンジュゲートは癌細胞により取り込まれる。
【0122】
一つの態様において、毒素はブーガニンまたはシュードモナス外毒素Aおよびそれらのバリアントである。もう一つの態様において、毒素は、修飾型ブーガニンまたは細胞結合ドメインを欠くシュードモナス外毒素Aの短縮型である。さらなる態様において、毒素は、T細胞エピトープを実質的に欠くブーガニンまたはアミノ酸252〜608からなるシュードモナス外毒素Aの短縮型である。
【0123】
その他の非限定的な態様において、癌治療剤には、DNAを破壊するよう作用する薬剤が含まれる。従って、癌治療剤は、非限定的に、エンジイン(例えば、カリチアマイシンおよびエスペラミシン)ならびに非エンジイン低分子薬剤(例えば、ブレオマイシン、メチジウムプロピル-EDTA-Fe(II))より選択され得る。本願に従い有用なその他の癌治療剤には、非限定的に、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ジスタマイシン(distamycin)A、シスプラチン、マイトマイシンC、エクチナサイジン、デュオカルマイシン/CC-1065、およびブレオマイシン/ペプレオマイシン(pepleomycin)が含まれる。
【0124】
その他の非限定的な態様において、癌治療剤には、チューブリンを破壊するよう作用する薬剤が含まれる。そのような薬剤には、非限定的に、リゾキシン/マイタンシン、パクリタクセル、ビンクリスチンおよびビンブラスチン、コルヒチン、オーリスタチン、ドラスタチン10、MMAE、ならびにペロルシドAが含まれ得る。
【0125】
その他の非限定的な態様において、本願のイムノコンジュゲートの癌治療薬部分には、非限定的に、Asaley NSC 167780、AZQ NSC 182986 、BCNU NSC 409962 、ブスルファンNSC 750 、カルボキシフタラートプラチナ(carboxyphthalatoplatinum)NSC 271674 、CBDCA NSC 241240 、CCNU NSC 79037 、CHIP NSC 256927 、クロラムブシルNSC 3088 、クロロゾトシンNSC 178248 、シスプラチンNSC 119875 、クロメソン(clomesone)NSC 338947 、シアノモルホリノドキソルビシンNSC 357704、シクロジソン(cyclodisone)NSC 348948、ジアンヒドロガラクチトールNSC 132313、フルオロドパン(fluorodopan)NSC 73754 、ヘプスルファム(hepsulfam)NSC 329680 、ヒカントンNSC 142982 、メルファランNSC 8806 、メチルCCNU NSC 95441 、マイトマイシンC NSC 26980 、ミトゾラミド(mitozolamide)NSC 353451 、ナイトロジェンマスタードNSC 762 、PCNU NSC 95466 、ピペラジンNSC 344007 、ピペラジンジオンNSC 135758 、ピポブロマンNSC 25154 、ポルフィロマイシンNSC 56410 、スピロヒダントインマスタードNSC 172112 、テロキシロン(teroxirone)NSC 296934 、テトラプラチン(tetraplatin)NSC 363812 、チオテパNSC 6396、トリエチレンメラミンNSC 9706、ウラシルナイトロジェンマスタードNSC 34462、およびYoshi-864 NSC 102627を含むアルキル化剤が含まれ得る。
【0126】
その他の非限定的な態様において、本願のイムノコンジュゲートの癌治療剤部分には、非限定的に、アロコルヒチン(allocolchicine)NSC 406042、ハリコンドリン(Halichondrin)B NSC 609395、コルヒチンNSC 757、コルヒチン誘導体NSC 33410、ドラスタチン10 NSC 376128(NG-オーリスタチン由来)、マイタンシンNSC 153858、リゾキシンNSC 332598、タキソールNSC 125973、タキソール誘導体NSC 608832、チオコルヒチン(thiocolchicine)NSC 361792、トリチルシステインNSC 83265、ビンブラスチン硫酸塩NSC 49842、およびビンクリスチン硫酸塩NSC 67574を含む抗有糸分裂剤が含まれ得る。
【0127】
その他の非限定的な態様において、本願のイムノコンジュゲートの癌治療剤部分には、非限定的に、カンプトテシンNSC 94600、カンプトテシンNa塩NSC 100880、アミノカンプトテシンNSC 603071、カンプトテシン誘導体NSC 95382、カンプトテシン誘導体NSC 107124、カンプトテシン誘導体NSC 643833、カンプトテシン誘導体NSC 629971、カンプトテシン誘導体NSC 295500、カンプトテシン誘導体NSC 249910、カンプトテシン誘導体NSC 606985、カンプトテシン誘導体NSC 374028、カンプトテシン誘導体NSC 176323、カンプトテシン誘導体NSC 295501、カンプトテシン誘導体NSC 606172、カンプトテシン誘導体NSC 606173、カンプトテシン誘導体NSC 610458、カンプトテシン誘導体NSC 618939、カンプトテシン誘導体NSC 610457、カンプトテシン誘導体NSC 610459、カンプトテシン誘導体NSC 606499、カンプトテシン誘導体NSC 610456、カンプトテシン誘導体NSC 364830、カンプトテシン誘導体NSC 606497、およびモルホリノドキソルビシンNSC 354646を含むトポイソメラーゼI阻害剤が含まれ得る。
【0128】
その他の非限定的な態様において、本願のイムノコンジュゲートの癌治療剤部分には、非限定的に、ドキソルビシンNSC 123127、アモナフィド(amonafide)NSC 308847、m-AMSA NSC 249992、アントラピラゾール誘導体NSC 355644、ピラゾロアクリジンNSC 366140、ビサントレン(bisantrene)HCL NSC 337766、ダウノルビシンNSC 82151、デオキシドキソルビシンNSC 267469、ミトキサントロンNSC 301739、メノガリルNSC 269148、N,N-ジベンジルダウノマイシンNSC 268242、オキサントラゾール(oxanthrazole)NSC 349174、ルビダゾン(rubidazone)NSC 164011、VM-26 NSC 122819、およびVP-16 NSC 141540を含むトポイソメラーゼII阻害剤が含まれ得る。
【0129】
その他の非限定的な態様において、本願のイムノコンジュゲートの癌治療剤部分には、非限定的に、L-アラノシンNSC 153353、5-アザシチジンNSC 102816、5-フルオロウラシルNSC 19893、アシビシンNSC 163501、アミノプテリン誘導体NSC 132483、アミノプテリン誘導体NSC 184692、アミノプテリン誘導体NSC 134033、葉酸代謝拮抗薬NSC 633713、葉酸代謝拮抗薬NSC 623017、Baker's可溶性葉酸代謝拮抗薬NSC 139105、ジクロロアリルローソン(dichlorallyl lawsone)NSC 126771、ブレキナルNSC 368390、フトラフル(ftorafur)(プロドラッグ)NSC 148958、5,6-ジヒドロ-5-アザシチジンNSC 264880、メトトレキサートNSC 740、メトトレキサート誘導体NSC 174121、N-(ホスホノアセチル)-L-アスパルテート(PALA)NSC 224131、ピラゾフリン(pyrazofurin)NSC 143095、トリメトレキサートNSC 352122、3-HP NSC 95678、2'-デオキシ-5-フルオロウリジンNSC 27640、5-HP NSC 107392、α-TGDR NSC 71851、アフィディコリングリシネート(aphidicolin glycinate)NSC 303812、ara-C NSC 63878、5-アザ-2'-デオキシシチジンNSC 127716、β-TGDR NSC 71261シクロシチジンNSC 145668、グアナゾールNSC 1895、ヒドロキシ尿素NSC 32065、イノシングリコジアルデヒドNSC 118994、マクベシン(macbecin)II NSC 330500、ピラゾロイミダゾールNSC 51143、チオグアニンNSC 752、およびチオプリンNSC 755を含むRNAまたはDNAの代謝拮抗薬が含まれ得る。
【0130】
もう一つの非限定的な態様において、イムノコンジュゲートの治療的部分は核酸であってもよい。使用され得る核酸には、アンチセンスRNA、遺伝子、またはその他のポリヌクレオチド、チオグアニンおよびチオプリンのような核酸アナログが含まれるが、これらに限定はされない。
【0131】
本願は、(2)間接的にまたは直接、検出可能シグナルを生ずることができる標識であるエフェクター分子に付着した(i)本願の結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片、を含むイムノコンジュゲートをさらに提供する。これらのイムノコンジュゲートは、癌のインビボの検出のような研究または診断的な適用のために使用され得る。標識は、好ましくは、直接または間接的に、検出可能シグナルを生ずることができる。例えば、標識は、3H、14C、32P、35S、123I、125I、131Iのような放射線不透過性(radio-opaque)もしくは放射性同位元素であってもよいし;フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリンのような蛍光(フルオロフォア)もしくは化学発光(発色団)化合物であってもよいし;アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、もしくは西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素であってもよいし;造影剤であってもよいし;または金属イオンであってもよい。
【0132】
もう一つの態様において、イムノコンジュゲートは間接的に検出可能である。例えば、イムノコンジュゲートに対して特異的であり、かつ検出可能な標識を含有している二次抗体が、イムノコンジュゲートを検出するために使用され得る。
【0133】
本願の結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片は、結合タンパク質をエフェクター分子と会合させるか、または連結することができる任意の手段によって、エフェクター分子に付着させられ得る。例えば、結合タンパク質は、化学的手段または組換え手段によりエフェクター分子に付着させられ得る。融合体またはコンジュゲートを調製するための化学的な手段は、当技術分野において公知であり、イムノコンジュゲートを調製するために使用され得る。結合タンパク質とエフェクター分子とをコンジュゲートさせるために使用される方法は、癌細胞上の抗原に結合する結合タンパク質の能力に干渉することなく、結合タンパク質をエフェクター分子と接合することができなければならない。
【0134】
本願の結合タンパク質は、エフェクター分子に間接的に連結されてもよい。例えば、結合タンパク質は、いくつかの型のうちの一つのエフェクター分子を含有しているリポソームに直接連結されてもよい。エフェクター分子および/または結合タンパク質を固体表面に結合させることもできる。
【0135】
一つの態様において、結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片、およびエフェクター分子は、いずれもタンパク質であり、当技術分野において周知の技術を使用してコンジュゲートさせられ得る。二つのタンパク質をコンジュゲートさせることができる利用可能なクロスリンカーは数百存在する。(例えば、"Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking".1991,Shans Wong,CRC Press,Ann Arborを参照のこと)。クロスリンカーは、一般に、結合タンパク質、好ましくは、抗体もしくは抗体断片、および/またはエフェクター分子の上の利用可能な反応性官能基、またはそれらに挿入された反応性官能基に基づき選ばれる。さらに、反応基がない場合には、光活性化可能なクロスリンカーを使用することができる。ある種の場合、結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片と、エフェクター分子との間にスペーサーを含めることが望ましい可能性がある。当技術分野において公知の架橋剤には、同種二官能性の薬剤:グルタルアルデヒド、ジメチルアジピミデート(dimethyladipimidate)、およびビス(ジアゾベンジジン)、ならびに異種二官能性の薬剤:mマレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドおよびスルホ-mマレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドが含まれる。
【0136】
ある種の状況において、本願の結合タンパク質は、エフェクター分子の化学的付着のため、特定の残基で操作され得る。当技術分野において公知の分子の化学的付着のために使用される特定の残基には、リジンおよびシステインが含まれる。クロスリンカーは、結合タンパク質上に挿入された反応性官能基およびエフェクター分子上の利用可能な反応性官能基に基づき選ばれる。
【0137】
結合タンパク質-エフェクター分子タンパク質融合体を、組換えDNA技術を使用して調製してもよい。そのような場合には、キメラDNA分子がもたらされるよう、結合タンパク質をコードするDNA配列が、エフェクター分子をコードするDNA配列に融合される。キメラDNA配列は、融合タンパク質を発現する宿主細胞へトランスフェクトされる。融合タンパク質を細胞培養物から回収し、当技術分野において公知の技術を使用して精製することができる。
【0138】
標識であるエフェクター分子の、結合タンパク質との付着の例には、Hunter,et al.,Nature 144:945(1962);David,et al.,Biochemistry 13:1014(1974);Pain,et al.,J.Immunol.Meth.40:219(1981);Nygren,J.Histochem.and Cytochem.30:407(1982);Wensel and Meares,Radioimmunoimaging And Radioimmunotherapy,Elsevier,N.Y.(1983);およびColcher et al.,"Use Of Monoclonal Antibodies As Radiopharmaceuticals For The Localization Of Human Carcinoma Xenografts In Athymic Mice",Meth.Enzymol.,121:802-16(1986)に記載された方法が含まれる。
【0139】
一つの態様において、イムノコンジュゲートは、SEQ ID NO:67により定義されるアミノ酸配列を含む。本願には、この配列のバリアントも含まれる。
【0140】
本願は、本願のイムノコンジュゲートをコードする単離された核酸配列も提供する。一つの態様において、単離された核酸配列は、SEQ ID NO:67により定義されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする。もう一つの態様において、単離された核酸配列はSEQ ID NO:66を含む。
【0141】
本願には、これらの核酸配列のバリアントも含まれる。例えば、バリアントには、少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で本願のイムノコンジュゲートをコードする核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列が含まれる。
【0142】
(E)タンパク質の調製
本願の軽鎖および重鎖の相補性決定領域、軽鎖および重鎖の可変領域、抗体および抗体断片、イムノコンジュゲート、ならびに新規癌関連抗原のような本願のタンパク質は、いくつかの方式のうちの任意のもので調製され得るが、最も好ましくは、組換え方法を使用して調製されることを、当業者は認識するであろう。
【0143】
従って、本願の核酸分子を、本願のタンパク質の良好な発現を確実にする適切な発現ベクターへ、公知の様式で組み込むことができる。可能な発現ベクターには、ベクターが使用される宿主細胞と適合性である限り、コスミド、プラスミド、修飾されたウイルス(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)が含まれるが、これらに限定はされない。発現ベクターは「宿主細胞の形質転換に適している」。これは、発現ベクターが、本願の核酸分子、および核酸分子に機能的に連結された、発現に使用される宿主細胞に基づき選択された調節配列を含有していることを意味する。機能的に連結された、とは、核酸の発現を可能にする様式で、核酸が調節配列に連結されていることを意味するものとする。
【0144】
従って、本願は、本願の核酸分子またはその断片、ならびに挿入されたタンパク質配列の転写および翻訳のために必要な調節配列を含有している本願の組換え発現ベクターを企図する。
【0145】
適切な調節配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳動物、または昆虫の遺伝子を含む多様な起源に由来し得る(例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載された調節配列を参照のこと)。適切な調節配列の選択は、後述のように選ばれた宿主細胞に依存し、当業者によって容易に達成され得る。そのような調節配列の例には、転写のプロモーターおよびエンハンサー、またはRNAポリメラーゼ結合配列、翻訳開始シグナルを含むリボソーム結合配列が含まれる。さらに、選ばれた宿主細胞および利用されるベクターに依って、複製起点、付加的なDNA制限部位、エンハンサー、および転写の誘導可能性を付与する配列のようなその他の配列が、発現ベクターに組み込まれてもよい。
【0146】
本願の組換え発現ベクターは、本願の組換え分子により形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞の選択を容易にする選択可能マーカー遺伝子も含有し得る。選択可能マーカー遺伝子の例は、ある種の薬物に対する耐性を付与するG418およびハイグロマイシンのようなタンパク質、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、または免疫グロブリンもしくはその一部分、たとえば、好ましくはIgGである免疫グロブリンのFc部分、をコードする遺伝子である。選択可能マーカー遺伝子の転写は、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、またはホタルルシフェラーゼのような選択可能マーカータンパク質の濃度の変化によってモニタリングされる。選択可能マーカー遺伝子がネオマイシン耐性のような抗生物質耐性を付与するタンパク質をコードする場合には、形質転換体細胞はG418により選択され得る。選択可能マーカー遺伝子が組み込まれた細胞は生存し、その一方で、その他の細胞は死滅する。これは、本願の組換え発現ベクターの発現を可視化しアッセイすること、特に、発現および表現型に対する変異の効果を決定することを可能にする。関心対象の核酸とは別のベクターに選択マーカーが導入されてもよいことが認識されるであろう。
【0147】
組換え発現ベクターは、組換えタンパク質の増加した発現;組換えタンパク質の増加した可溶性;およびアフィニティ精製においてリガンドとして作用することによる標的組換え体タンパク質の精製における補助、を提供する融合モエティをコードする遺伝子を含有していてもよい。例えば、融合タンパク質の精製後の、融合モエティからの組換えタンパク質の分離を可能にするため、タンパク質分解切断部位を標的組換えタンパク質に付加することができる。典型的な融合発現ベクターには、それぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを組換えタンパク質に融合させるpGEX(Amrad Corp.,Melbourne,Australia)、pMal(New England Biolabs,Beverly,MA)、およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)が含まれる。
【0148】
組換え発現ベクターは、形質転換された宿主細胞を作製するため、宿主細胞へ導入され得る。「により形質転換された」、「によりトランスフェクトされた」、「形質転換」、および「トランスフェクション」という用語は、当技術分野において公知の多くの可能な技術のうちの一つによる、核酸(例えば、ベクター)の細胞への導入を包含するものとする。本明細書において使用されるように、「形質転換された宿主細胞」という用語には、本願の組換え発現ベクターにより形質転換されたグリコシル化可能な細胞も含まれるものとする。原核細胞は、例えば、電気穿孔または塩化カルシウムにより媒介される形質転換によって、核酸により形質転換され得る。例えば、核酸は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウムとの共沈殿、DEAE-デキストランにより媒介されるトランスフェクション、リポフェクチン、電気穿孔、または微量注入のような従来の技術を介して哺乳動物細胞へ導入され得る。宿主細胞を形質転換しトランスフェクトするのに適している方法は、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)およびその他の実験教科書に見出され得る。
【0149】
適切な宿主細胞には、多様な真核宿主細胞および原核細胞が含まれる。例えば、本願のタンパク質は、酵母細胞または哺乳動物細胞において発現され得る。その他の適切な宿主細胞は、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1991)に見出され得る。さらに、本願のタンパク質は、大腸菌のような原核細胞において発現されてもよい(Zhang et al.,Science 303(5656):371-3(2004))。さらに、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)のようなシュードモナスに基づく発現系が使用されてもよい(米国特許出願公開US2005/0186666、Schneider,Jane Cら)。
【0150】
本願を実施するために適している酵母および真菌の宿主細胞には、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア(Pichia)属、またはクルイベルミセス(Kluyveromyces)、およびアスペルギルス(Aspergillus)属の様々な種が含まれるが、これらに限定はされない。酵母S.セレビシエにおける発現のためのベクターの例には、pYepSec1(Baldari.et al.,Embo J.6:229-234(1987))、pMFa(Kurjan and Herskowitz,Cell 30:933-943(1982))、pJRY88(Schultz et al.,Gene 54:113-123(1987))、およびpYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,CA)が含まれる。酵母および真菌の形質転換のためのプロトコルは、当業者に周知である(Hinnen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1929(1978);Itoh et al.,J.Bacteriology 153:163(1983)、およびCullen et al.(BiolTechnology 5:369(1987)を参照のこと)。
【0151】
本願を実施するために適している哺乳動物細胞には、とりわけ、COS(例えば、ATCC No.CRL 1650または1651)、BHK(例えば、ATCC No.CRL 6281)、CHO(ATCC No.CCL 61)、HeLa(例えば、ATCC No.CCL 2)、293(ATCC No.1573)、およびNS-1細胞が含まれる。哺乳動物細胞における発現を指図するために適している発現ベクターは、一般に、プロモーター(例えば、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40のようなウイルス材料に由来するもの)を含み、その他の転写および翻訳の制御配列も含む。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8(Seed,B.,Nature 329:840(1987))およびpMT2PC(Kaufman et al.,EMBO J.6:187-195(1987))が含まれる。
【0152】
本明細書に提供される教示によれば、適切な型の発現ベクターを植物、トリ、および昆虫の細胞へ導入するためのプロモーター、ターミネーター、および方法も、容易に達成され得る。例えば、一つの態様において、本願のタンパク質は、植物細胞から発現され得る(アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)ベクターの使用を概説しているSinkar et al.,J.Biosci(Bangalore)11:47-58(1987)を参照のこと;とりわけ、PAPS2022、PAPS2023、およびPAPS2034を含む植物細胞のための発現ベクターの使用を記載しているZambryski et al.,Genetic Engineering,Principles and Methods,Hollaender and Setlow(eds.),Vol.VI,pp.253-278,Plenum Press,New York(1984)も参照のこと)。
【0153】
本願を実施するために適している昆虫細胞には、ボンビクス(Bombyx)種、トリコプルシア(Trichoplusia)種、またはスポドテラ(Spodotera)種の細胞および細胞系が含まれる。培養昆虫細胞(SF9細胞)におけるタンパク質の発現のために利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAc系列(Smith et al.,Mol.Cell Biol.3:2156-2165(1983))およびpVL系列(Lucklow,V.A.,and Summers,M.D.,Virology 170:31-39(1989))が含まれる。
【0154】
または、本願のタンパク質は、ラット、ウサギ、ヒツジ、およびブタのような非ヒトトランスジェニック動物において発現されてもよい(Hammer et al.Nature 315:680-683(1985);Palmiter et al.Science 222:809-814(1983);Brinster et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4438-4442(1985);Palmiter and Brinster Cell 41:343-345(1985)、および米国特許第4,736,866号)。
【0155】
本願のタンパク質は、固相合成(Merrifield,J.Am.Chem.Assoc.85:2149-2154(1964);Frische et al.,J.Pept.Sci.2(4):212-22(1996))または同種溶液中での合成(Houbenweyl,Methods of Organic Chemistry,ed.E.Wansch,Vol.15 I and II,Thieme,Stuttgart(1987))のようなタンパク質の化学において周知の技術を使用して、化学合成により調製されてもよい。
【0156】
タンパク質のような他の分子とコンジュゲートした本願のタンパク質を含むN末端融合タンパク質またはC末端融合タンパク質は、組換え技術を通して、融合により調製され得る。得られた融合タンパク質は、本明細書に記載されるような選択されたタンパク質またはマーカータンパク質に融合した本願のタンパク質を含有している。本願の組換えタンパク質を、公知の技術により、他のタンパク質にコンジュゲートさせてもよい。例えば、WO 90/10457に記載されたような異種二官能性チオール含有リンカー、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ-プロプリオネート)、またはN-スクシンイミジル-5チオアセテートを使用して、タンパク質をカップリングさせることができる。融合タンパク質またはコンジュゲートを調製するために使用され得るタンパク質の例には、免疫グロブリンのような細胞結合タンパク質、ホルモン、増殖因子、レクチン、インスリン、低密度リポタンパク質、グルカゴン、エンドルフィン、トランスフェリン、ボンベシン、アシアロ糖タンパク質グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、赤血球凝集素(HA)、および短縮型mycが含まれる。
【0157】
従って、本願は、本願の軽鎖および重鎖の相補性決定領域、軽鎖および重鎖の可変領域、抗体および抗体断片のような結合タンパク質、イムノコンジュゲート、ならびに本願の新規の単離されたタンパク質のような、本願のタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供する。さらに、本願は、本願の核酸配列または組換え発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0158】
(F)治療法ならびに結合タンパク質および免疫毒素の薬学的組成物
本発明者らは、本願の結合タンパク質が、IkBβ1、IkBβ2、およびIkBβの癌関連バリアントを含むIkBβタンパク質に対する特異性を示すことを示した。IkBβタンパク質は通常は細胞内にある。しかしながら、本発明者らは、癌細胞が、癌細胞の表面上に検出可能なIkBβのバリアントを発現することを示した。従って、本発明者らは、本願の結合タンパク質が癌細胞に対する特異性を示すことを示した。さらに、本発明者らは、本願の結合タンパク質が癌細胞により取り込まれることを示した。従って、本願の結合タンパク質は、造影剤、放射性薬剤、または細胞毒性薬剤のような、生理活性を有するかまたは医学的に妥当な薬剤の、標的送達のために使用され得る。
【0159】
一つの態様において、本願は、癌を有するかまたは有すると推測される対象に、有効量の本願のイムノコンジュゲートを投与することを含む、癌を処置するかまたは防止する方法を提供する。もう一つの態様において、本願は、癌を処置するかまたは防止するための医薬の製造のための、有効量の本願のイムノコンジュゲートの使用を提供する。さらに、本願は、同時の、別々の、または連続的な癌の処置または防止のための医薬の製造のための、付加的な癌治療剤の使用をさらに含む、有効量の本願のイムノコンジュゲートの使用を提供する。本願は、癌を処置するかまたは防止するための有効量の本願のイムノコンジュゲートの使用も提供する。さらに、本願は、同時の、別々の、または連続的な癌の処置または防止のための付加的な癌治療剤の使用をさらに含む、有効量の本願のイムノコンジュゲートの使用を提供する。
【0160】
本願の一つの態様において、癌には、非限定的に、胃癌、結腸癌、前立腺癌が含まれ、子宮頸癌、子宮癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、扁平上皮癌、胃腸の癌、(乳管癌、小葉癌、および乳頭癌のような)乳癌、肺癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、(急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、および慢性骨髄性白血病のような)白血病、脳の癌、神経芽腫、肉腫、直腸癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮体癌、形質細胞腫、リンパ腫、ならびに黒色腫も含まれる。もう一つの態様において、癌は、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、乳癌、皮膚癌、卵巣癌、頭頸部癌、前立腺癌、または肺癌である。付加的な態様において、癌は結腸癌、膵臓癌、または腎臓癌である。
【0161】
癌を有する細胞を選択的に阻害するかまたは破壊する本願のイムノコンジュゲートの能力は、癌細胞系を使用してインビトロで容易に試験され得る。本願のイムノコンジュゲートの選択的な阻害効果は、例えば、癌細胞の細胞増殖の選択的な阻害を証明することにより決定され得る。
【0162】
毒性は、細胞生存性に基づき測定されてもよく、例えば、イムノコンジュゲートに曝された癌細胞培養物および正常細胞培養物の生存性を比較することができる。細胞生存性は、トリパンブルー排除アッセイのような公知の技術により査定され得る。
【0163】
もう一つの例において、多数のモデルが本願のイムノコンジュゲートの有効性を試験するために使用され得る。Thompson,E.W.ら(Breast Cancer Res.Treatment 31:357-370(1994))は、腫瘍細胞により媒介される細胞外マトリックスのタンパク質分解、および再構成された基底膜(コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、マトリゲル、またはゼラチン)の腫瘍細胞浸潤を測定することによる、インビトロのヒト乳癌細胞の浸潤性の決定のためのモデルを記載した。その他の適用可能な癌細胞モデルには、培養卵巣腺癌細胞(Young,T.N.et al.Gynecol.Oncol.62:89-99(1996);Moore,D.H.et al.Gynecol.Oncol.65:78-82(1997))、ヒト濾胞性甲状腺癌細胞(Demeure,M.J.et al.,World J.Surg.16:770-776(1992))、ヒト黒色腫細胞系(A-2058)および繊維肉腫細胞系(HT-1080)(Mackay,A.R.et al.Lab.Invest.70:781-783(1994))、ならびに肺扁平上皮細胞系(HS-24)および腺癌細胞系(SB-3)(Spiess,E.et al.J.Histochem.Cytochem.42:917-929(1994))が含まれる。胸腺欠損ヌードマウスにおける腫瘍の移植、ならびに腫瘍の成長および転移の測定を含む、インビボ試験系も記載されている(Thompson,E.W.et al.,Breast Cancer Res.Treatment 31:357-370(1994);Shi,Y.E.et al.,Cancer Res.53:1409-1415(1993))。
【0164】
本願のイムノコンジュゲートは、インビボ投与のために適している生物学的に適合性の形態で、対象への投与のための薬学的組成物へと製剤化され得る。物質は、ヒトおよび動物を含む生存生物に投与され得る。治療的に活性な量の本願の薬学的組成物の投与とは、所望の結果を達成するのに必要な投薬量および期間での有効量と定義される。例えば、物質の治療的に活性な量は、疾患の状態、個体の年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する本願の組換えタンパク質の能力のような因子によって変動する可能性がある。投薬計画は最適の治療的応答を提供するために調整される可能性がある。例えば、いくつかの分割された用量を毎日投与してもよいし、または、治療的情況の緊急性により示されるように、比例して用量を低下させてもよい。
【0165】
従って、本願は、本願のイムノコンジュゲート、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む、癌を処置するかまたは防止するための薬学的組成物を提供する。好ましい態様において、薬学的組成物中のイムノコンジュゲートのエフェクター分子は、癌治療剤、より好ましくは、毒素である。
【0166】
本願のイムノコンジュゲートを含む薬学的調製物は全身投与されてもよい。薬学的調製物は、癌部位に直接投与されてもよい。投与経路に依って、化合物を不活化する酵素、酸、およびその他の天然条件の作用から化合物を保護するための材料でイムノコンジュゲートをコーティングしてもよい。
【0167】
本願の一つの局面によると、イムノコンジュゲートは直接投与によって患者に送達される。本願は、少なくとも終点を達成するために十分な量で投与され、必要に応じて、薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物を企図する。
【0168】
本願は、癌を処置するための手術の前、間、または後に、有効量の本願のイムノコンジュゲートを投与することを含む、術後合併症のリスクを低下させる方法も提供する。
【0169】
本明細書に記載された組成物は、有効量の活性物質が、薬学的に許容される媒体と混合物中で組み合わせられるような、対象に投与され得る薬学的に許容される組成物の調製のためのそれ自体公知の方法により調製され得る。適切な媒体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(Remington's Pharmaceutical Sciences,20th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,USA,2000)に記載されている。これに基づくと、組成物は、排他的にではないが、適切なpHを有し生理学的液体と等張の緩衝溶液に含有された、一つまたは複数の薬学的に許容される媒体または希釈剤と合わせられた物質の溶液を含む。
【0170】
薬学的組成物には、非限定的に、凍結乾燥粉末または水性もしくは非水性の無菌の注射可能な溶液もしくは懸濁物が含まれ、それらは、意図されたレシピエントの組織または血液と実質的に適合性の組成物を与える抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および溶質をさらに含有していてもよい。そのような組成物中に存在してもよいその他の成分には、例えば、水、(トゥイーンのような)界面活性剤、アルコール、ポリオール、グリセリン、および植物油が含まれる。用時調製型の注射用の溶液および懸濁物は、無菌の粉末、顆粒、錠剤、または濃縮された溶液もしくは懸濁物から調製され得る。イムノコンジュゲートは、例えば、これに限定はされないが、患者への投与前に滅菌水または生理食塩水で再構成される凍結乾燥粉末として供給されてもよい。
【0171】
本願の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含む可能性がある。適切な薬学的に許容される担体には、薬学的組成物の生物学的活性の有効性に干渉しない、本質的に化学的に不活性かつ非毒性の組成物が含まれる。適切な薬学的担体の例には、水、生理食塩水溶液、グリセロール溶液、エタノール、N-(1(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレシルホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)、およびリポソームが含まれるが、これらに限定はされない。そのような組成物は、患者への直接投与のための形態を提供するため、適切な量の担体と共に、治療的に有効な量の化合物を含有しているべきである。
【0172】
組成物は、非限定的に、塩化水素酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来するもののような、遊離アミノ基により形成されたもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来するもののような、遊離カルボキシル基により形成されたものを含む、薬学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0173】
本願の様々な態様において、薬学的組成物は、直接全身投与されるか、または腫瘍の区域に直接投与される。
【0174】
薬学的組成物は、癌を有する、哺乳動物、好ましくは、ヒトを含む動物を処置する方法において使用され得る。投与されるイムノコンジュゲートの投薬量および型は、ヒト対象において容易にモニタリングされ得る多様な因子に依るであろう。そのような因子には、癌の病因ならびに重度(グレードおよびステージ)が含まれる。
【0175】
本願のイムノコンジュゲートを使用した癌処置の臨床的成果は、医師のような当業者によって容易に識別可能である。例えば、癌の臨床マーカーを測定するための標準的な医学的試験が、処置の効力の強力な指標となり得る。そのような試験には、非限定的に、身体検査、パフォーマンス・スケール(performance scales)、疾患マーカー、12誘導ECG、腫瘍測定、組織生検、膀胱鏡検査、細胞診、腫瘍の最長直径の計算、X線検査、腫瘍のデジタルイメージング、生命徴候、体重、有害事象の記録、感染エピソードの査定、併用薬の査定、疼痛査定、血液または血清の化学、尿検査、CTスキャン、および薬物動態学的分析が含まれる。さらに、イムノコンジュゲートおよびもう一つの癌治療薬を含む組み合わせ治療の相乗効果を、単独療法を受けている患者との比較研究により決定することができる。
【0176】
認可された癌治療の過半数において、癌治療は、他の癌治療と組み合わせて使用されている。従って、本願は、少なくとも一つの付加的な癌治療と組み合わせられた本願のイムノコンジュゲートを使用して、癌を防止するかまたは処置する方法を提供する。他の癌治療は、イムノコンジュゲートの投与の前に、重複して、同時に、かつ/または後に投与され得る。同時投与される場合、イムノコンジュゲートおよび他の癌治療薬は、単一製剤で投与されてもよいし、または別々の製剤で投与されてもよく、別々に投与される場合には、任意で、異なる投与様式により投与されてもよい。一つまたは複数のイムノコンジュゲートと一つまたは複数の他の癌治療との組み合わせは、腫瘍または癌に対抗するために相乗的に作用する可能性がある。他の癌治療には、非限定的に、2,2',2'-トリクロロトリエチルアミン塩酸塩、4'4-(1,2-エタンジイル)ビス(1-イソブトキシカルボニルオキシメチル-2,6-ピペラジンジオン、5,6-ジヒドロ-5-アザシチジン、5-ヒドロキシ-2-ホルミルピリジンチオセミカルバゾン、6-アザウリジン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アブリン、アシビシン、アクラルビシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アロコルヒチン、α-フェトプロテイン、α-チオデオキシグアノシン、アルトレタミン、アミノカンプトテシン、アミノグルテチミド、アミノプテリン、アモナフィド二塩酸塩(amonafide dihydrochloride)、アモナフィドL-マレート、アムサクリン、アナストロゾール、アンシタビン塩酸塩、アンジオゲニン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンジオスタチン、アントラマイシン、アントラピラゾール、アフィディコリングリシネート、アスパラギナーゼ、オーリスタチンE、自己の細胞または組織、アザシチジン、アザセリン、アジリジン、カルメット・ゲラン桿菌、カルメット・ゲラン桿菌生ワクチン、ベンゾテパ(benzotepa)、ベタメタゾン、β-チオグアニンデオキシリボシド、ベバシズマブ、ビオマイシン(biomycin)、ビカルタミド、ビサントレン(bisantrene)、ブレオマイシン、ボルデノン(boldenone)、ブレキナル、ブセレリン、ブスルファン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリチアマイシン、カルステロン(calusterone)、カペシタビン、カルボプラチン、カルボコン、カルボキシフタラートプラチナ(carboxyphthalatoplatinum)、癌胎児性抗原ペプチド1、癌胎児性抗原ペプチド1-6D、カルムスチン、カルビシン、カルジノフィリンA、CC-1065、セツキシマブ、クロラムブシル、酢酸クロマジノン、クロロゾトシン、クロモマイシン、シスプラチン、クラドリビン、クロメソン(clomesone)、コルヒチン、コルヒチン誘導体、コルチゾール、コルチゾン、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン(cyclodisone)、シクロホスファミド、シタラビン、サイトカラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デメコルチン、デニロイキンジフチトクス、デオキシドキソルビシン、デキサメタゾン、ジアンヒドロガラクチトール、ジアジコン(diaziquone)、ジクロロアリルローソン(dichloroallyl lawsone)、ジフテリア毒素、ディスタマイシンA、ドセタキセル、ドラスタチン10、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドロロキシフェン(droloxifene)、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュボリマイシン(duborimycin)、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、エダトレキサート、エフロールニチン、エリプチニウム(elliptinium)、エメチン、エミテフール(emitefur)、エンドスタチン、エノシタビン、エピルビシン、エピチオスタノール、エルロチニブ塩酸塩、エスペラミシン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、臭化エチジウム、エトグルシド、エトポシド、ファドロゾール、フェンレチニド、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロドパン(fluorodopan)、フルタミド、ホルメスタン、ホスフェストロール、ホテムスチン、ガリウム硝酸塩、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムツズマブオゾガマイシン、グルココルチコイド、ゴセレリン、グラミシジンD、グアナゾール、ハリコンドリン(halichondrin)B、ヘプスルファム(hepsulfam)、ヘキセストロール、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒカントン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォサミド(ifosamide)、メシル酸イマチニブ、インプロスルファン、イノシングリコジアルデヒド、インターフェロン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン-12、インターロイキン-15、インターロイキン-18、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-2、インターロイキン-6、インターロイキン、イリノテカン、イプロプラチン(iproplatin)、L-アラノシン、ラパチニブジトシラート、イリノテカン塩酸塩、レンチナン、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、リュープロリド酢酸塩、リュープロリド酢酸塩、レバミソール、リドカイン、ロムスチン、ロムスチン、ロニダミン、ルコルテウム(lucorteum)、リンホカイン、リンホトキシン、マクベシン(macbecin)II、マクロファージ炎症性タンパク質、マンノムスチン、マイタンシン、メクロレタミン塩酸塩、メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メピチオスタン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メトトレキサート誘導体メツレデパ(meturedepa)、モノメチルオーリスタチンE、ミルテホシン、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ミトゾラミド(mitozolamide)、モピダモール、モルホリノドキソルビシン、変異型腫瘍特異抗原、ミコフェノール酸、N-(ホスホノアセチル)-L-アスパラギン酸、N,N-ジベンジルダウノルビシン、神経増殖因子、ニロチニブ、ニルタミド、ニムスチン、ニトラシン(nitracine)、ノガラマイシン、非自己の細胞または組織、オブリメルセン、エストロゲン、OGX-011、オリボマイシン、オステオネクチン、ONYX-015、オキサリプラチン、パクリタクセル、パクリタクセル誘導体、1-(2-クロロエチル)-3-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジル)-1-ニトロソ尿素、ペグアスパルガーゼ、ペントスタチン、ペプロマイシン、ペルホスファミド(perfosfamide)、フェネステリン(phenesterin)、プリカマイシン、ピペラジン誘導体、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ピポスルファン(piposulfan)、ピラルビシン、ピリトレキシム、ピロキサントロン(piroxantrone)、血小板由来増殖因子、プラスミノゲンクリングル5、プリカマイシン、ポドフィロトキシン、リン酸ポリエストラジオール、ポリグルタミン酸カンプトテシンポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロカバジン(procabazine)、プロカイン、プロパゲルマニウム、プロプラノロール、シュードモナス外毒素、ポリサッカライドK、プテロプテリン(pteropterin)、ピューロマイシン、ピラゾフューリン(pyrazofurin)、ピラゾロアクリジン、ピラゾロイミダゾール、ラルチトレキセド、ラニムスチン、ラゾキサン、組換えヒト顆粒球単球コロニー刺激因子、レチノイド、リゾキシン(rhizoxin)、リシンA、リツキシマブ、ロキニメックス、セリンプロテアーゼ阻害剤、ソラフェニブトシル酸塩、スピロゲルマニウム、スピロムスチン(spiromustine)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スニチニブリンゴ酸塩、クエン酸タモキシフェン、テガフール-ウラシル、テモゾロマイド、テニポシド、テヌアゾン酸、テロキシロン(teroxirone)、テストラクトン、テトラカイン、テトラプラチン(tetraplatin)、サリドマイド、チオコルヒチン、チオグアニン、チオプリン、チオテパ、トラベクテジン、トロンボスポンジン-I由来ペプチド、組織プラスミノーゲン活性化因子、トポテカン、トレミフェン、トラスツズマブ、トレチノイン、トリアジネート、トリアジコン、トリエチレンメラミン、トリロスタン、トリメトレキサートグルクロン酸塩、トリプトレリン、S-トリチル-L-システイン、トロホスファミド、ツベルシジン、腫瘍壊死因子様サイトカイン、組換え腫瘍壊死因子ファミリータンパク質、ウベニメクス、ウラシルマスタード、ウラシル、ウレタン、バンデタニブ、VEGFアンチセンスオリゴヌクレオチド、ビンブラスチン、硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、yoshi-864、ジノスタチン、ゾルビシンを含む、他の癌治療剤が非限定的に含まれる。
【0177】
もう一つの態様において、本願の一つまたは複数のイムノコンジュゲートは、非限定的に、放射線、手術、遺伝子治療、副作用を制御する薬剤(例えば、抗ヒスタミン剤、抗悪心剤)、癌ワクチン、血管形成阻害剤、免疫モジュレーター、抗炎症薬、免疫抑制薬、抗原の発現を増加させる薬剤、癌治療化学療法剤と関連したその他の薬剤(即ち、免疫治療薬、光増感剤、tk阻害剤、抗生物質、代謝拮抗薬、DNAを破壊するよう作用する薬剤、チューブリンを破壊するよう作用する薬剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、サイトカインおよび増殖因子、ホルモン治療薬、ビンカアルカロイド、植物アルカロイド、抗有系分裂剤)を含む、癌治療または治療剤のカテゴリーのうちの一つまたは複数と組み合わせて投与され得る。
【0178】
実際、そのような処置を必要とする患者への有効量のイムノコンジュゲートの投与は、臨床的に有意な効力を有するもう一つの癌治療薬の用量を低下させる可能性がある。そのような他の癌治療薬の低下した用量の効力は、イムノコンジュゲートと共に投与されない限り、観察され得ない。従って、本願は、低下した用量の一つまたは複数の他の癌治療薬を投与することを含む、腫瘍または癌を処置する方法を提供する。
【0179】
さらに、そのような処置を必要とする患者に対するイムノコンジュゲートを含む組み合わせ治療は、標準的な処置計画の継続時間またはサイクル数と比較して、比較的短い処置時間を可能にする可能性がある。従って、本願は、比較的短い継続時間で、かつ/またはより少ない処置サイクルで、一つまたは複数の他の癌治療薬を投与することを含む、腫瘍または癌を処置する方法を提供する。
【0180】
従って、本願によると、イムノコンジュゲートおよびもう一つの癌治療薬を含む組み合わせ治療は、癌処置全体の毒性(即ち、副作用)を低下させることができる。例えば、低下した用量のイムノコンジュゲートおよび/または他の癌治療薬を送達した場合、かつ/またはサイクルの継続時間(即ち、単一の投与の期間または一連のそのような投与の期間)を低下させた場合、かつ/またはサイクル数を低下させた場合に、単独療法または別の組み合わせ治療と比較して低下した毒性が観察される可能性がある。
【0181】
従って、本願は、イムノコンジュゲートおよび一つまたは複数の付加的な抗癌治療薬を、任意で、薬学的に許容される担体の中に含む、薬学的組成物を提供する。
【0182】
本願は、任意で、一つまたは複数の他の癌治療薬と組み合わせられた、有効量のイムノコンジュゲートを、癌を処置するための使用に関する説明書と共に含む、キットを提供する。キットは、補助剤も含む可能性がある。例えば、キットは、注射器のような対象にイムノコンジュゲートを注射するための機器;イムノコンジュゲートの保管もしくは輸送のための容器;および/または薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、もしくは安定剤を含んでいてもよい。
【0183】
上述のように、イムノコンジュゲートとの組み合わせ治療は、付加的な癌治療薬の投与に対して癌または腫瘍を感作する可能性がある。従って、本願は、低下した用量の癌治療薬の前、後、または同時に、有効量のイムノコンジュゲートを投与することを含む、癌の再発を防止し、処置し、かつ/または防止するための組み合わせ治療を企図する。例えば、イムノコンジュゲートによる初期の処置は、ある用量の癌治療薬によるその後のチャレンジに対する癌または腫瘍の感受性を増加させる可能性がある。この用量は、癌治療薬が単独で、またはイムノコンジュゲートの非存在下で投与される場合の標準的な投薬量の低い範囲に近いか、またはそれ未満である。同時に投与される場合、イムノコンジュゲートは、癌治療薬とは別々に投与されてもよく、かつ、任意で、異なる投与様式を介して投与されてもよい。
【0184】
別の態様において、付加的な癌治療薬の投与は、イムノコンジュゲートまたは結合タンパク質に対して癌または腫瘍を感作する可能性がある。そのような態様において、付加的な癌治療薬は、イムノコンジュゲートまたは結合タンパク質の投与前に与えられ得る。
【0185】
一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ5〜10、11〜20、21〜40、または41〜75mg/m2/サイクルの範囲の用量の、シスプラチン、例えば、PLATINOLまたはPLATINOL-AQ(Bristol Myers)を含む。
【0186】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ2〜3、4〜8、9〜16、17〜35、または36〜75mg/m2/サイクルの範囲の用量の、カルボプラチン、例えば、PARAPLATIN(Bristol Myers)を含む。
【0187】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ0.25〜0.5、0.6〜0.9、1〜2、3〜5、6〜10、11〜20、または21〜40mg/kg/サイクルの範囲の用量の、シクロホスファミド、例えば、CYTOXAN(Bristol Myers Squibb)を含む。
【0188】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ0.5〜1、2〜4、5〜10、11〜25、26〜50、または51〜100mg/m2/サイクルの範囲の用量の、シタラビン、例えば、CYTOSAR-U(Pharmacia&Upjohn)を含む。もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ5〜50mg/m2/サイクルの範囲の用量の、シタラビンリポソーム、例えば、DEPOCYT(Chiron Corp.)を含む。
【0189】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ15〜250mg/m2/サイクルの範囲または0.2〜2mg/kg/サイクルの範囲の用量の、ダカルバジン、例えば、DTICまたはDTICDOME(Bayer Corp.)を含む。
【0190】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ0.1〜0.2、0.3〜0.4、0.5〜0.8、または0.9〜1.5mg/m2/サイクルの範囲の用量の、トポテカン、例えば、HYCAMTIN(SmithKline Beecham)を含む。
【0191】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ5〜9、10〜25、または26〜50mg/m2/サイクルの範囲の用量の、イリノテカン、例えば、CAMPTOSAR(Pharmacia&Upjohn)を含む。
【0192】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ2.5〜5、6〜10、11〜15、または16〜25mg/m2/サイクルの範囲の用量の、フルダラビン、例えば、FLUDARA(Berlex Laboratories)を含む。
【0193】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ200〜2000mg/m2/サイクル、300〜1000mg/m2/サイクル、400〜800mg/m2/サイクル、または500〜700mg/m2/サイクルの範囲の用量の、シトシンアラビノシド(Ara-C)を含む。
【0194】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ6〜10、11〜30、または31〜60mg/m2/サイクルの範囲の用量に、ドセタキセル、例えば、TAXOTERE(Rhone Poulenc Rorer)を含む。
【0195】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ10〜20、21〜40、41〜70、または71〜135mg/kg/サイクルの範囲の用量の、パクリタクセル、例えば、TAXOL(Bristol Myers Squibb)を含む。
【0196】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ0.5〜5mg/kg/サイクル、1〜4mg/kg/サイクル、または2〜3mg/kg/サイクルの範囲の用量の5-フルオロウラシルを含む。
【0197】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ2〜4、5〜8、9〜15、16〜30、または31〜60mg/kg/サイクルの範囲の用量の、ドキソルビシン、例えば、ADRIAMYCIN(Pharmacia&Upjohn)、DOXIL(Alza)、RUBEX(Bristol Myers Squibb)を含む。
【0198】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ3.5〜7、8〜15、16〜25、または26〜50mg/m2/サイクルの範囲の用量の、エトポシド、例えば、VEPESID(Pharmacia&Upjohn)を含む。
【0199】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ0.3〜0.5、0.6〜0.9、1〜2、または3〜3.6mg/m2/サイクルの範囲の用量の、ビンブラスチン、例えば、VELBAN(Eli Lilly)を含む。
【0200】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬はおよそ0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、または0.7mg/m2/サイクルの範囲の用量の、ビンクリスチン、例えば、ONCOVIN(Eli Lilly)を含む。
【0201】
もう一つの態様において、付加的な癌治療薬は、およそ0.2〜0.9、1〜5、6〜10、または11〜20mg/m2/サイクルの範囲の用量のメトトレキサートを含む。
【0202】
従って、組み合わせ治療は、投与されたイムノコンジュゲートおよび/または付加的な癌治療薬に対する癌または腫瘍の感受性を増加させる可能性がある。このようにして、より短い処置サイクルが可能となり、それにより毒性事象が低下する可能性がある。サイクル継続時間は、使用される特定の癌治療薬によって変動する可能性がある。本願は、連続投与投与もしくは不連続投与、またはいくつかの部分投与へと分割された一日用量を企図する。特定の癌治療薬のための適切なサイクル継続時間は、当業者によって認識されるであろう。本願は、各癌治療薬の最適の処置スケジュールの継続的な査定を企図する。当業者のための具体的な指針は、当技術分野において公知である。例えば、Therasse et al.,2000,"New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors.European Organization for Research and Treatment of Cancer,National Cancer Institute of the United States,National Cancer Institute of Canada," J Natl Cancer Inst.Feb 2;92(3):205-16を参照のこと。
【0203】
イムノコンジュゲートは、注射、経口投与、吸入、経皮、または腫瘍内のような任意の適切な方法により投与され得、他の癌治療薬は、同一のまたは別の投与様式により患者へ送達され得ることが企図される。さらに、複数の癌治療薬を患者へ送達することが意図される場合、イムノコンジュゲートおよび他の癌治療薬のうちの一つまたは複数が、ある方法により送達され、その他の癌治療薬は別の投与様式により送達されてもよい。
【0204】
(G)結合タンパク質および免疫毒素を使用した診断法および薬剤
本願の結合タンパク質は、癌細胞の表面に選択的に結合し、正常細胞には有意に結合しない。従って、結合タンパク質は、癌の診断において使用され得る。
【0205】
従って、本願は、癌細胞が存在するか否かを決定するため、単独で使用されてもよいし、または本願の治療法の前、間、もしくは後に使用されてもよい、診断法、薬剤、およびキットを含む。
【0206】
一つの態様において、本願は、以下の工程を含む、対象における癌を検出するかまたはモニタリングする方法を提供する。
(1)結合タンパク質-抗原複合体が生じるよう、対象から採取された試験試料を、癌細胞上の抗原に特異的に結合する本願の結合タンパク質またはイムノコンジュゲートと接触させる工程;
(2)試験試料中の結合タンパク質-抗原複合体の量を測定する工程;および
(3)試験試料中の結合タンパク質-抗原複合体の量を対照と比較する工程。
【0207】
一つの態様において、抗原はIkBβ1、IkBβ2、および/またはIkBβの癌関連バリアントのようなIkBβタンパク質である。
【0208】
本願は、本願の結合タンパク質またはイムノコンジュゲートのうちのいずれか、および癌を診断するための使用に関する説明書を含む、癌を診断するためのキットをさらに含む。キットは、補助剤も含む可能性がある。例えば、キットは、本願の結合タンパク質もしくはイムノコンジュゲートを直接もしくは間接的に検出するための薬剤のような付加的な試薬;結合タンパク質もしくはイムノコンジュゲートの保管もしくは輸送のための容器;および/またはその他の緩衝液もしくは安定剤を含むことができる。
【0209】
診断適用において使用するため、本願の結合タンパク質、好ましくは、抗体または抗体断片を、3H、14C、32P、35S、123I、125I、131Iのような、放射線不透過性または放射性同位元素;フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、またはルシフェリンのような蛍光(フルオロフォア)または化学発光(発色団)化合物;アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、または西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素;造影剤;または金属イオンのような検出可能マーカーにより標識することができる。上記のように、抗体または抗体断片のような結合タンパク質に標識を付着させる方法は、当技術分野において公知である。
【0210】
本願のもう一つの局面は、
(1)対象から採取された試験試料の中の本願の抗体の量を測定する工程;および
(2)試験試料中の本願の抗体の量を対照と比較する工程
を含む、対象における癌を検出するかまたはモニタリングする方法である。
【0211】
一つの態様において、本願の抗体の量は、例えば、ELISAにより、試験試料中の本願の抗体の量を測定することにより測定される。もう一つの態様において、本願の抗体の量は、例えば、RT-PCRにより、試験試料中の本願の抗体をコードする核酸の発現レベルを測定することにより測定される。
【0212】
(H)抗原の薬学的組成物、方法、および使用
本発明者らは、癌細胞の表面上に存在し、正常細胞の表面上には有意に発現されない抗原を同定した。従って、この抗原は、癌を処置し防止するための治療において使用され得る。上述のように、IkBβ1およびIkBβ2のようなIkBβタンパク質は、通常は、膜貫通ドメインを含有しておらず、通常は、細胞の表面上に発現されない。従って、本願の抗原は、癌を処置し防止するための治療において標的として使用され得る。例えば、IkBβの癌関連バリアントまたは(細胞外ドメインのような)その一部分は、免疫応答をインビボで誘発するために使用され得る。さらに、本願は、癌を検出するかモニタリングするための本願の抗原の使用を含む。
【0213】
(i)薬学的組成物
本願の一つの態様は、適切な希釈剤または担体と混和された有効量の本願の抗原を含む薬学的組成物である。本願のもう一つの態様は、適切な希釈剤または担体と混和された、有効量の本願の抗原をコードする単離された核酸を含む薬学的組成物である。本願のさらなる局面は、適切な希釈剤または担体と混和された、有効量の本願の抗原をコードする核酸配列を含む組換え発現を含む薬学的組成物である。一つの態様において、本願の抗原はIkBβの癌関連バリアントである。
【0214】
例えば、本願の薬学的組成物は、癌を処置するかまたは防止するために使用され得る。さらに、薬学的組成物は、細胞の表面上に本願の抗原を発現している癌細胞に対する免疫応答を対象において誘発するために使用され得る。
【0215】
薬学的組成物は、上述のように調製され投与され得る。薬学的組成物は上述のような他の抗癌治療剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0216】
投与フォーマットに関わらず、免疫感作剤(即ち、本願の抗原もしくはそのバリアント、および/またはそれらをコードする核酸配列、および/または組換え発現ベクター)、ならびに/または組成物を、アジュバントと同時免疫感作する場合、免疫原性が有意に改善され得る。一般的に、アジュバントはリン酸緩衝生理食塩水中の0.05〜1.0パーセント溶液として使用される。アジュバントは、免疫原の免疫原性を増強するが、それ自体は必ずしも免疫原性ではない。アジュバントは、免疫系の細胞への遅い持続的な免疫原の放出を容易にするデポー効果を生ずるため、投与部位の近くに局所的に免疫原を保持ことにより作用する。アジュバントは、免疫原デポーへと免疫系の細胞を誘引し、免疫応答を誘発するためにそのような細胞を刺激することもできる。そのため、本願の態様には、アジュバントをさらに含む薬学的組成物が包含される。
【0217】
アジュバントは、宿主の免疫応答を改善するため、例えば、ワクチンに対する免疫応答を改善するため、長年にわたり使用されてきた。(リポ多糖のような)内因性アジュバントは、通常、ワクチンとして使用される死滅したまたは弱毒化された細菌の成分である。外因性アジュバントは、典型的には、抗原に非共有結合的に連結され、宿主の免疫応答を増強するために製剤化される免疫モジュレーターである。従って、非経口的に送達された抗原に対して免疫応答を増強するアジュバントが同定されている。しかしながら、これらのアジュバントのうちのいくつかは、毒性であり、望ましくない副作用を引き起こすことがあるため、ヒトおよび多くの動物において使用するのに適していない。実際、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム(一般的に集合的にミョウバンと呼ばれる)のみが、ヒト用ワクチンおよび獣医学的ワクチンにおいてアジュバントとしてルーチンに使用されている。ジフテリアおよび破傷風のトキソイドに対する抗体応答を増加させるミョウバンの効力は、十分に確立されている。にも関わらず、それは限界を有している。例えば、ミョウバンは、インフルエンザ予防接種には無効であり、矛盾して、他の免疫原による細胞性免疫応答を誘発する。マウスにおいて、ミョウバンアジュバントを用いて抗原により誘発される抗体は、主として、いくつかのワクチン剤による保護にとっては最適でない可能性があるIgG1アイソタイプのものである。
【0218】
広範囲の外因性アジュバントが、免疫原に対して強力な免疫応答を刺激することができる。これらには、膜タンパク質抗原と複合体化したサポニン(免疫刺激複合体)、鉱油を含むプルロニック重合体、死滅マイコバクテリアおよび鉱油、フロイント完全アジュバント、ムラミルジペプチド(MDP)のような細菌産物、およびリポ多糖(LPS)、ならびにリピドAおよびリポソームが含まれる。
【0219】
本願の一つの局面において、本明細書に記載された本願の態様のいずれかにおいて有用なアジュバントは、以下の通りである。非経口免疫感作のためのアジュバントには、(水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、およびヒドロキシリン酸アルミニウムのような)アルミニウム化合物が含まれる。標準的なプロトコルに従って、抗原を、アルミニウム化合物と共に沈殿させるか、またはアルミニウム化合物に吸着させることができる。RIBI(ImmunoChem,Hamilton,MT)のようなその他のアジュバントも、非経口投与において使用され得る。
【0220】
粘膜免疫感作のためのアジュバントには、細菌毒素(例えば、コレラ毒素(CT)、大腸菌熱不安定毒素(LT)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)毒素A、および百日咳毒素(PT)、またはそれらの組み合わせ、サブユニット、トキソイド、もしくは変異体)が含まれる。例えば、ネイティブコレラ毒素サブユニットB(CTB)の精製された調製物が有用である。アジュバント活性を保持しているのであれば、これらの毒素の断片、ホモログ、誘導体、および融合体も適切である。好ましくは、低下した毒性を有する変異体が使用される。適切な変異体は、記載されている(例えば、WO 95/17211(Arg-7-Lys CT変異体)、WO 96/6627(Arg-192-Gly LT変異体)、およびWO 95/34323(Arg-9-LysおよびGlu-129-Gly PT変異体))。本願の方法および組成物において使用され得る付加的なLT変異体には、例えば、Ser-63-Lys、Ala-69-Gly、Glu-110-Asp、およびGlu-112-Asp変異体が含まれる。(様々な起源(例えば、大腸菌、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)、サルモネラ・チフィムリウム(typhimurium)、またはシゲラ・フレキシネリ(Shigella flexneri))の細菌モノホスホリルリピドA(MPLA)、サポニン、またはポリラクチドグリコリド(PLGA)マイクロスフェアのような)その他のアジュバントも、粘膜投与において使用され得る。
【0221】
粘膜および非経口の免疫感作のため有用なアジュバントには、ポリホスファゼン(polyphosphazene)(例えば、WO 95/2415)、DC-chol(3b-(N-(N',N'-ジメチルアミノメタン)カルバモイル)コレステロール(例えば、米国特許第5,283,185号およびWO 96/14831)、ならびにQS-21(例えば、WO 88/9336)が含まれる。
【0222】
対象は、当業者に公知であるような従来の経路により、本願の抗原、それらをコードする単離された核酸配列、および/または組換え発現ベクターを含む薬学的組成物により免疫感作され得る。これには、例えば、粘膜(例えば、眼、鼻腔内、経口、胃、肺、腸、直腸、膣、もしくは尿路)表面を介した免疫感作、非経口(例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、もしくは腹腔内)経路を介した免疫感作、または結節内免疫感作が含まれ得る。好ましい経路は、当業者には明白であるように、免疫原の選択に依る。投与は、一回用量で達成されてもよいし、または間隔を置いて繰り返されてもよい。適切な投薬量は、免疫原自体(即ち、ペプチドであるか核酸であるか(より具体的には、その型))、投与経路、および予防接種される動物の状態(体重、年齢等)のような当業者によって理解される様々なパラメーターに依る。
【0223】
本願は、任意で、一つまたは複数の他の癌治療薬と組み合わせられた、有効量の本願の抗原を、その使用に関する説明書と共に含むキットを提供する。キットは、補助剤も含む可能性がある。例えば、キットは、注射器のような対象に本願の抗原を注射するための機器;本願の抗原の保管もしくは輸送のための容器;アジュバント;および/または薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、もしくは安定剤を含むことができる。一つの態様において、本願の抗原はIkBβの癌関連バリアントである。
【0224】
(ii)治療法
上述のように、本願の抗原は、癌細胞上には存在するが、正常細胞上には有意に存在しない。従って、本願の抗原または(細胞外ドメインのような)その一部分は、癌を防止するかまたは処置するための治療法において使用され得る。さらに、本願の抗原または(細胞外ドメインのような)その一部分は、対象において免疫応答を誘発するため、例えば、ワクチンにおいて使用され得る。
【0225】
本願の一つの態様は、癌を処置するかまたは防止するための医薬の製造における本願の抗原の使用である。本願のもう一つの態様は、対象における免疫応答を誘発するための医薬の製造における本願の抗原の使用である。
【0226】
本願には、癌を処置するかまたは防止するための医薬の製造における、本願の抗原をコードする単離された核酸配列の使用も含まれる。さらに、本願には、対象における免疫応答を誘発するための医薬の製造における、本願の抗原をコードする単離された核酸配列の使用も含まれる。
【0227】
本願のさらなる態様は、癌を処置するかまたは防止するための医薬の製造における、本願の抗原をコードする単離された核酸配列を含む組換え発現ベクターの使用である。また、本願には、対象における免疫応答を誘発するための医薬の製造における、本願の抗原をコードする単離された核酸配列を含む組換え発現ベクターの使用も含まれる。
【0228】
本願の付加的な態様は、有効量の本願の抗原を対象に投与することを含む、癌を有しているか、または有していると推測される対象において癌を処置するかまたは防止する方法である。さらに、本願には、有効量の本願の抗原をコードする単離された核酸配列を対象に投与することを含む、癌を有しているか、または有していると推測される対象において癌を処置するかまたは防止する方法が含まれる。さらに、本願には、有効量の本願の抗原をコードする単離された核酸配列を含む組換え発現ベクターを対象に投与することを含む、癌を有しているか、または有していると推測される対象において癌を処置するかまたは防止する方法が含まれる。
【0229】
本願のもう一つの態様は、有効量の本願の抗原を対象に投与することを含む、癌に対する免疫応答を対象において誘導する方法である。さらに、本願には、有効量の本願の抗原をコードする単離された核酸配列を対象に投与することを含む、癌に対する免疫応答を対象において誘導する方法が含まれる。さらに、本願には、有効量の本願の抗原をコードする単離された核酸配列を含む組換え発現ベクターを対象に投与することを含む、癌に対する免疫応答を対象において誘導する方法が含まれる。
【0230】
一つの態様において、本願の抗原はIkBβの癌関連バリアントである。
【0231】
(iii)診断法
本願の抗原は、癌細胞上に発現され、正常細胞上には有意に発現されず、従って、細胞の表面上の本願の抗原の検出は、癌の診断法として使用され得る。さらに、IkBβの癌関連バリアントのRNA発現の検出が、癌の診断法として使用され得る。
【0232】
本願の一つの態様は、試料中の細胞上の本願の抗原を検出し、その際、本願の抗原が細胞上に検出された場合、それを癌の指標とすることを含む、対象における癌を検出するかまたはモニタリングする方法である。
【0233】
多数の技術が、細胞上の本願の抗原を検出するために使用され得る。例えば、本願の抗原の細胞表面発現を検出するため、イムノアッセイにおいて、本願の結合タンパク質を使用することができる。当業者は、ウェスタンブロット、免疫沈降後のSDS-PAGE、免疫細胞化学、FACS、タンパク質アレイ等を含む多数の技術が、本願の抗原の細胞表面発現を検出しかつ/または定量化するために使用され得ることを認識するであろう。
【0234】
本願のもう一つの局面は、試料中の細胞によるIkBβの癌関連バリアントの発現を検出し、その際、IkBβの癌関連バリアントの発現が検出された場合、それを癌の指標とすることを含む、対象における癌を検出するかまたはモニタリングする方法である。一例において、IkBβの癌関連バリアントをコードするRNA発現産物を、細胞におけるIkBβの癌関連バリアントの発現を検出するために使用することができる。IkBβの癌関連バリアントをコードするmRNA、またはIkBβの癌関連バリアントをコードするmRNAに特異的にかつ/もしくは選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、cDNA、DNA、RNA、PCR産物、合成DNA、合成RNA、もしくは天然に存在するヌクレオチドもしくは修飾されたヌクレオチドのその他の組み合わせを検出することにより、RNA発現産物を検出するかまたは定量化することができることを、当業者は認識するであろう。
【0235】
RT-PCR、リボヌクレアーゼ保護アッセイおよびS1ヌクレアーゼアッセイのようなヌクレアーゼ保護アッセイ、ならびにノーザンブロット等を含む多数の方法が、細胞におけるIkBβの癌関連バリアントのRNA発現を検出しかつ/または定量化するために使用され得る。
【0236】
当技術分野において公知の方法を使用して、本願の抗原および/またはIkBβの癌関連バリアントをコードするmRNAの単離の後に、ゲノム変異を検出することもできる。
【0237】
一つの態様において、IkBβの癌関連バリアントはIkBβ2のバリアントである。
【0238】
(I)その他の方法
IkBβは、NFk-Bの阻害性調節因子である。そのため、IkBβは、細胞増殖、アポトーシス、および炎症に対する応答の調節において有意な役割を果たす。IkBβは、通常は、細胞の表面上に見出されない。通常は、リン酸化されていないIkBβは、細胞の細胞質内でNFk-Bに結合し、NFk-Bが細胞の核に入るのを防止している。対照的に、IkBβの癌関連バリアントは少なくとも一つの膜貫通ドメインを有し、癌細胞の表面上に存在する。従って、理論に拘束はされないが、IkBβの癌関連バリアントは、癌細胞においてIkBβの正常な役割を破壊している可能性がある。従って、本願には、癌細胞におけるIkBβの癌関連バリアントの活性をモジュレートするか、または癌細胞におけるIkBβの活性を回復もしくは交換することにより、対象における癌を処置するかまたは防止する方法が含まれる。
【0239】
本願の一つの態様において、対象における癌を処置するかまたは防止する方法は、癌関連バリアントIkBβの発現もしくは機能を防止するかもしくは減少させること、または癌細胞におけるIkBβの正常な機能を回復するかもしくは交換することを含む。
【0240】
IKBβ遺伝子の癌関連バリアントの転写物に対して反応性のアンチセンス、三重ヘリックス、またはリボザイム分子の使用を含む、標準的な技術が、細胞におけるIkBβの癌関連バリアントの発現を防止するかまたは減少させるために使用され得る。
【0241】
例えば、アンチセンス核酸分子、即ち、関心対象のポリペプチドをコードするセンス核酸に相補的である分子、例えば、二本鎖cDNA分子のコーディング鎖に相補的であるか、またはmRNA配列に相補的である分子の作製のため、標準的な技術を利用することができる。従って、アンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合することができる。アンチセンス核酸は、コーディング鎖全体に相補的であってもよいし、またはその一部分、例えば、タンパク質コーディング領域(もしくはオープンリーディングフレーム)の全部もしくは一部分にのみ相補的であってもよい。アンチセンス核酸分子は、関心対象のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコーディング鎖の非コーディング領域の全部または一部分に対してアンチセンスであってもよい。非コーディング領域(「5'および3'の非翻訳領域」)とは、コーディング領域に隣接し、アミノ酸へと翻訳されない5'および3'の配列である。
【0242】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50ヌクレオチド長、またはそれ以上の長さであり得る。本願のアンチセンス核酸は、当技術分野において公知の手法を使用して、化学合成および酵素ライゲーション反応を使用して構築され得る。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、または分子の生物学的安定性を増加させるか、もしくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成された二重鎖の物理的安定性を増加させるために設計された様々に修飾されたヌクレオチドを使用して、化学合成されてもよく、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドが使用され得る。アンチセンス核酸を作成するために使用され得る修飾されたヌクレオチドの例には、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンが含まれる。または、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス方向にサブクローニングされた(即ち、挿入された核酸から転写されるRNAは、関心対象の標的核酸とアンチセンスの方向にあるであろう)発現ベクターを使用して生物学的に作製されてもよい。
【0243】
対象に投与されるアンチセンス核酸分子は、関心対象のポリペプチドをコードする細胞mRNAにハイブリダイズするかまたは結合し、それにより、例えば、転写および/または翻訳を阻害することにより、発現を阻害するよう、インサイチューで作成される。ハイブリダイゼーションは、安定的な二重鎖を形成する通常のヌクレオチド相補性によるものであってもよいし、または、例えば、DNA二重鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合には、二重らせんの主溝内での特異的相互作用を通したものであってもよい。本願のアンチセンス核酸分子の投与経路の一例には、組織部位への直接注射が含まれる。または、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的とするため修飾され、次いで、全身投与されてもよい。例えば、全身投与のため、アンチセンス分子は、例えば、アンチセンス核酸分子を細胞表面の受容体または抗原に結合するペプチドまたは抗体に連結することにより、選択された細胞、例えば、T細胞または脳細胞の上に発現された受容体または抗原に特異的に結合するよう修飾され得る。アンチセンス核酸分子は、下記のベクター、例えば、遺伝子治療ベクターを使用して、細胞に送達されてもよい。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するためには、アンチセンス核酸分子が強力なpol IIまたはpol IIIプロモーターの制御下に置かれたベクター構築物が好ましい。
【0244】
関心対象のアンチセンス核酸分子は、αアノマー核酸分子であり得る。αアノマー核酸分子は、通常のα単位とは反対に、鎖が相互に平行に並ぶ特異的な二本鎖ハイブリッドを、相補的なRNAと共に形成する(Gaultier et al.,1987,Nucleic Acids Res.15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子は、2'-o-メチルリボヌクレオチド(Inoue et al.,1987,Nucleic Acids Res.15:6131-6148)またはキメラRNA-DNAアナログ(Inoue et al.,1987,FEBS Lett.215:327-330)も含むことができる。
【0245】
リボザイムとは、相補的な領域を有するmRNAのような一本鎖核酸を切断することができる、リボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNA分子であり、やはり標準的な技術を使用して作成され得る。従って、リボザイム(例えば、(Haselhoff and Gerlach,1988,Nature 334:585-591に記載された)ハンマーヘッド型リボザイム)は、触媒的にmRNA転写物を切断し、それにより、そのmRNAによりコードされたタンパク質の翻訳を阻害するために使用され得る。関心対象のポリペプチドをコードする核酸分子に対する特異性を有するリボザイムが、IkBβの癌関連バリアントをコードするcDNAのヌクレオチド配列に基づき設計され得る。例えば、活性部位のヌクレオチド配列が、切断されるヌクレオチド配列に相補的である、テトラヒメナL-19 IVS RNAの誘導体が構築され得る(Cechらの米国特許第4,987,071号;およびCechらの米国特許第5,116,742号)。または、特異的なリボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNAを、RNA分子のプールから選択するため、関心対象のポリペプチドをコードするmRNAを使用してもよい。例えば、Bartel and Szostak,1993,Science 261:1411-1418を参照のこと。
【0246】
3重らせん構造も、周知の技術を使用して作成され得る。例えば、標的細胞において遺伝子の転写を防止する3重らせん構造が形成されるよう、ポリペプチドをコードする遺伝子の調節領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的とすることにより、関心対象のポリペプチドの発現を阻害することができる。一般には、Helene,1991,Anticancer Drug Des.6(6):569-84;Helene,1992,Ann.N.Y.Acad.Sci.660:27-36;およびMaher,1992,Bioassays 14(12):807-15を参照のこと。
【0247】
様々な態様において、例えば、安定性、ハイブリダイゼーション、または分子の可溶性を改善するため、核酸組成物を、塩基モエティ、糖モエティ、またはリン酸骨格において修飾することができる。例えば、核酸のデオキシリボースリン酸骨格を、ペプチド核酸を作成するために修飾することができる(Hyrup et al.,1996,Bioorganic & Medicinal Chemistry 4(1):5-23を参照のこと)。本明細書において使用されるように、「ペプチド核酸」または「PNA」という用語は、デオキシリボースリン酸骨格がシュードペプチド骨格に交換され、4種の天然の核酸塩基のみが保持されている核酸模倣体、例えば、DNA模倣体をさす。PNAの中性の骨格は、低イオン強度条件の下で、DNAおよびRNAとの特異的なハイブリダイゼーションを可能にすることが示されている。PNAオリゴマーの合成は、Hyrup et al.,1996(前記);Perry-O'Keefe et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14670-675に記載されたような標準的な固相ペプチド合成プロトコルを使用して達成され得る。
【0248】
PNAは、例えば、PNAに親油性の基もしくはその他のヘルパー基を付着させることにより、PNA-DNAキメラを形成させることにより、またはリポソームもしくは当技術分野において公知のその他の薬物送達技術を使用することにより、例えば、安定性または細胞取り込みを増強するため、修飾され得る。例えば、PNAおよびDNAの有利な特性が組み合わされたPNA-DNAキメラを作成することができる。そのようなキメラは、DNA認識酵素、例えば、RNAse HおよびDNAポリメラーゼが、DNA部分と相互作用することを可能にする一方で、PNA部分が高い結合親和性および特異性を提供するであろう。PNA-DNAキメラは、塩基スタッキング、核酸塩基間の結合の数、および方向に関して選択された適切な長さのリンカーを使用して連結され得る(Hyrup,1996(前記))。PNA-DNAキメラの合成は、Hyrup,1996(前記)およびFinn et al.,1996,Nucleic Acids Res.24(17):3357-63に記載されたようにして達成され得る。例えば、標準的なホスホラミダイトカップリング化学および修飾されたヌクレオシドアナログを使用して、支持体上でDNA鎖を合成することができる。5'-(4-メトキシトリチル)アミノ-5'-デオキシ-チミジンホスホラミダイトのような化合物を、PNAとDNAの5'末との間のリンクとして使用することができる(Mag et al.,1989,Nucleic Acids Res.17:5973-88)。次いで、5'PNAセグメントおよび3'DNAセグメントを有するキメラ分子を作製するため、PNA単量体を、段階的な様式でカップリングすることができる(Finn et al.,1996,Nucleic Acids Res.24(17):3357-63)。または、5'DNAセグメントおよび3'PNAセグメントを有するキメラ分子を合成することもできる(Peterser et al.,1975,Bioorganic Med.Chem.Lett.5:1119-11124)。
【0249】
その他の態様において、オリゴヌクレオチドは、(例えば、インビボの宿主細胞受容体を標的とするための)ペプチドのようなその他の添付された基、または細胞膜(例えば、Letsinger et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553-6556;Lemaitre et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:648-652;国際公開W0 88/09810を参照のこと)もしくは血液脳関門(例えば、国際公開W0 89/10134を参照のこと)を介した輸送を容易にする薬剤を含んでいてもよい。さらに、ハイブリダイゼーションにより誘発される切断剤(例えば、Krol et al.,1988,Bio/Techniques 6:958-976を参照のこと)またはインターカレーティング剤(例えば、Zon,1988,Pharm.Res.5:539-549を参照のこと)によって、オリゴヌクレオチドを修飾することもできる。この目的のため、オリゴヌクレオチドを、もう一つの分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーションにより誘発される架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーションにより誘発される切断剤等にコンジュゲートすることができる。
【0250】
本願のもう一つの局面は、IkBβの発現または機能を回復または交換することを含む、対象において癌を処置するかまたは防止する方法である。一つの態様において、これは、IkBβの癌関連バリアントの発現または機能を防止するかまたは減少させることを含む、対象において癌を処置するかまたは防止する方法と組み合わせて行われる。
【0251】
本願のもう一つの局面は、癌を防止するかまたは処置するために使用され得るIkBβの癌関連バリアントの発現または活性をモジュレートすることができる化合物を同定する方法である。本願の一つの態様において、癌を防止するかまたは処置する能力に関して化合物を同定する方法は、以下の工程を含む:
(a)IkBβの癌関連バリアントを発現する細胞を試験化合物と接触させる工程;および
(b)IkBβの癌関連バリアントの発現または機能を決定する工程;および
(c)IkBβの癌関連バリアントの発現または機能を対照と比較し、その際、対照と比較されたIkBβの癌関連バリアントの発現または機能の減少を、癌を防止するかまたは処置するために有用な化合物の指標とする工程。
【0252】
本願のもう一つの局面は、膜貫通型IkBβタンパク質および/または本願の抗原の存在を検出する目的のための、組換え型の本願の抗原および/または同様に修飾されたその他のIkBタンパク質もしくはそれらの断片、または対応する核酸配列の調製物である。検出は、修飾されたIkBタンパク質または本願の抗原をコードするタンパク質、遺伝子、および/またはmRNAを検出することからなり得る。組換え型は、抗体を調製するため、または患者もしくは対象の循環系に存在する抗体を検出するために使用され得る。
【0253】
上記の開示は、本願を一般に説明している。以下の具体的な実施例を参照することにより、さらに完全な理解が入手され得る。これらの実施例は、例示目的のためにのみ記載され、本願の範囲を限定するためのものではない。状況が示唆するかまたは好都合にするような、形態の変化および等価物の置換が、企図される。具体的な用語が本明細書において利用されたが、そのような用語は、記述のためのものであって、限定を目的とするものではない。
【0254】
以下、非限定的な実施例によって、本願を例示する。
【実施例】
【0255】
実施例1:VB1-204モノクローナル抗体の作成および配列決定
IgM MAbであるVB1-204は、乳癌患者のリンパ節から作成された。
【0256】
メッセンジャーRNAをハイブリドーマ細胞から単離し、逆転写酵素を使用して第一鎖相補DNA(cDNA)を合成した。次いで、そのcDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により重鎖および軽鎖の抗体断片を単離するために使用した。VHおよびλのコンセンサスフレームワーク領域のPCRプライマーを、それぞれ、重鎖および軽鎖を増幅するために使用した。
【0257】

【0258】
注:鎖を単離するため、ある種のコンセンサス配列については、混合された塩基を含む5'プライマーの混合物を使用する:R=A+G、S=C+G、W=A+T、Y=C+T、D=A+T、H=A+C、K=T+G、B=T+C+G、M=A+C
【0259】
PCR反応は、以下のものを含有している50μLの反応容量を含んでいた:
10×PCR緩衝液 5μL
2mM dNTP 5μL
プライマー5' 20pmol
プライマー3' 20pmol
Taq DNAポリメラーゼ 2.5U
DNA鋳型 50ng
【0260】
PCRのためのサイクリング条件は以下の通りであった:94℃1分、62℃1分、および72℃1分を計30サイクル、その後、72℃10分の最終伸長。VHドメインは、2ラウンドの30サイクルを使用して入手された。最初の30サイクルでは、5'VHプライマーおよび3'プライマー-1を用いた。次いで、一次PCR反応物1μLを、5'VHプライマーおよび3'プライマー-2を使用して再増幅した。
【0261】
増幅されたPCR産物を分離するため、1%アガロースゲル上での電気泳動を使用した。関心対象のバンドを、Qiaquickゲル抽出キットを使用して切り出し、精製し、TOPO pCR 2.1クローニングベクターへクローニングし、373 DNAシーケンサーを使用して配列決定した。配列の分析は、重鎖および軽鎖のサブクラスが、それぞれ、VH3(図1A)およびVL3(図1B)であることを示した。軽鎖および重鎖の可変領域は図1(SEQ ID NO:1〜4)に示される。VB1-204のCDR配列は表1(SEQ ID NO:5〜10)に示される。
【0262】
実施例2:腫瘍細胞との反応性の測定による抗体プロファイリング
VB1-204を、7つの異なる型の上皮癌(図2)を表す腫瘍細胞との反応性に関して、フローサイトメトリーにより試験した。結果は表2に要約される。MF値は、2回の別々の実験からの、対照抗体に対する蛍光中央値の平均増加倍率を示す。ゼロ値は、対照抗体に比べて反応性がないことを示す。最も強力な結合は、CF-Pac-1細胞系およびMB-231細胞系に対するものであり、その次は僅差でA-375であった。従って、VB1-204は、腫瘍細胞の膜に局在する抗原に結合する。
【0263】
実施例3:腫瘍マイクロアレイ対正常組織マイクロアレイの比較による抗体プロファイリング
重要正常組織の低密度(LD)アレイ上でVB1-204を試験し、アイソタイプ対照(IgM骨髄腫)と比較した(表3A)。肺、結腸、および肝臓組織の膜にはある程度の染色があったが、正常重要組織の膜染色は最小であると見なされた。試験された全ての正常組織からの細胞の細胞質に、有意な染色が見出され、このことから、正常細胞中に存在する細胞内タンパク質との結合が示唆された。
【0264】
次いで、VB1-204の反応性を、高密度(HD)ホルマリン固定腫瘍組織マイクロアレイにおいて試験した(表3B)。正常組織とは異なり、VB1-204反応性は、肝臓、結腸、肺、膵臓、および腎臓の膜上に検出された。組織試料毎の膜染色の頻度は、結腸において最も高かった。膜染色は、様々な発生率、強度、および陽性細胞パーセンテージで、肝臓、結腸、腎臓、膵臓、および肺において検出された。
【0265】
実施例4:共焦点顕微鏡検によるVB1-204取り込みの査定
VB1-204を、取り込みに関して査定するため、VB1-204および対照抗体(細胞へ取り込まれる抗体であることが公知の5E9)を使用した。細胞表面結合VB1-204が取り込まれるか否かを決定するため、レーザー走査型共焦点顕微鏡検の補助による、蛍光分布および細胞内染色の直接視覚化を使用した。A-375細胞を、4℃で、VB1-204(100μg/mL)または対照抗体と共にインキュベートした。細胞の洗浄後、試料の半分を1時間37℃に加温し、他方の半分は4℃のままにした。(ホルムアルデヒドの溶液により)固定した細胞および固定していない細胞を、フルオレセイン標識二次抗体により標識した。5E9陽性対照抗体により見られたように、4℃で60分間VB1-204と共にインキュベートされたA-375細胞は、蛍光標識の周辺表面分布を示した(図3A)。図3Bに示されるように、VB1-204により処理された細胞を37℃に加温することにより、60分以内に細胞内染色のパターンが明らかとなり、このことから、VB1-204/抗原複合体の取り込みが示された。
【0266】
実施例5:VB1-204の結合親和性
VB1-204の結合親和性を査定するため、フローサイトメトリーを使用した。飽和曲線を入手するため、ある範囲の抗体濃度を、2時間、一定数の腫瘍細胞(A-375)に対して試験した。値および図表分析は、Sigma Plot(Jandel Scientific,San Rafael,CA)を使用して作成された。ラインウィーバーバーク法によりKDを決定するため、決定された蛍光中央値の逆数を、抗体濃度の逆数の関数としてプロットした。直線を作成し、曲線の勾配からKDを計算した(図4Aおよび4B)。解離定数KD値は、以下の方程式により決定された:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/IgM)[式中、F=バックグラウンドを差し引いた蛍光中央値]。Fmaxはプロットから計算された。図4Aおよび4Bに示されるように、VB1-204の解離定数は5×10-9Mと計算された。
【0267】
実施例6:抗原の単離および同定
VB1-204に結合した膜会合型抗原を単離し同定するため、腫瘍細胞系A375(黒色腫)、HepG2(肝細胞癌)、MB 231(乳癌)、CF-PAC-1およびPANC-1(膵臓癌)、ならびにDU-145(前立腺癌)を使用した。これらの細胞系は、フローサイトメトリーによる腫瘍細胞プロファイリングに基づき選択された。細胞系はATCCから購入され、ATCCの指針に従い培養された。
【0268】
抗原のVB1-204との結合の予備的な特徴決定
VB1-204を、腫瘍細胞系の膜抽出物からタンパク質を免疫沈降させるために使用した。次いで、精製されたタンパク質を、SDS-PAGEゲル上で分離し、続いて、それをVB1-204を使用したウエスタンブロッティングに供した。およそ34kDaのバンドに加え、65±2kDaのバンドが、1D-PAGE上に検出された。精製されたタンパク質を、65℃で最長60分間、2%SDSにより還元した後、全てのバンドが、全ての反応性細胞系において一貫して見られたおよそ34kDaの単一の強力なバンドへと崩壊した。これらの実験からのデータは、VB1-204抗原を、N-グリカンによりマスキングされたエピトープを有する「ブロット可能な」抗原として分類した。図5Aおよび5Bに見られるように、強力なおよそ34kDaは、全ての陽性細胞系において観察された。バンドの強度は、その特定の細胞系における抗原発現のレベルも反映する。
【0269】
質量分析およびタンパク質同定
陽性細胞系CFPAC-1および陰性細胞系Panc-1の膜の膜画分からのタンパク質を、VB1-204により免疫沈降させ、ProteomeLab(商標)PF-2D系で分離した。図6に見られるように、10.85分目に溶出する単一のピークは、陽性細胞系において観察され、陰性細胞系には存在しなかった。
【0270】
組み合わせられたMS分析の結果は、腫瘍細胞系CFPAC-1、A375、およびMB231の上のVB1-204の抗原を、IkBβ2のバリアント型として同定した。最も高い確率に基づくスコア(probability-based score)を有するタンパク質における位置にマッピングされた、データベース配列と100%マッチであった、これらの細胞系から最初に回収されたペプチドが、図7A、7B、および7Cに示され、表4(SEQ ID NO:31〜52)に含まれる。例えば、最も高いプロテインスコアを有し、最も妥当な同定を表した、IkBβ2(SEQ ID NO:27)、IkBβ1(SEQ ID NO:28)、およびIkBβ2 β概念(conceptual)バリアント(SEQ ID NO:29)に対してマッピングされた、細胞系CFPAC-1から入手されたペプチドが示される。一次MS分析またはその後のフラグメンテーションにおいて入手された全ての細胞系から回収された全てのペプチド、および(下記の)バリアントペプチドとして同定されたペプチドを、組み合わせ、図8において、IkBβ2(SEQ ID NO 30)のバリアントにおける位置にマッピングした。それらは表4(SEQ ID NO:31〜52)にリストされる。
【0271】
ペプチド1985.978172および1070.468308のMSフラグメンテーション
デノボシーケンス同定によって、配列に100%マッピングされたものに加え、バリアントペプチドが同定された。ナノソース上にインストールされた不連続ナノスプレーヘッドを、その目的のため使用した。衝突エネルギーは48Vであり、カーテンガスおよびCADガスはそれぞれ25および6に維持され、試料は、安定なマスイオンフラグメンテーションを入手するため、1.667分間(100サイクル)のサイクルに供された。ペプチドのうちの2個(1985.978172および1070.468308)のMS/MSフラグメンテーションは、図9Aおよび9Bに示されるフラグメントイオンを与えた。ペプチドマス1985.978172からのペプチド

およびペプチドマス1070.468308からのペプチド

は、隣接配列においてIkBβ2との100%の相同性を示したが、中間の配列は有しておらず、従って、新規配列の同定が示された。それらの配列は、膜貫通ドメインの特徴的な疎水性を有する二つのバリアント領域をもたらす8個のアミノ酸変化を含む。これらの領域は、およそ

である。膜貫通ドメインの正確なスパンは、使用されたタンパク質構造モデリングアルゴリズムに依ってわずかに変動する。疎水性バリアントドメインは、IkBβの野生型領域により分離されている。あるペプチド((402.800000,3+)からの1205.378172(SEQ ID NO:35))のMS/MSフラグメンテーションは、IkBβ2との100%の相同性を示す、図9Cに示される付加的なフラグメントイオンを与えた。
【0272】
実施例7:癌細胞系抽出物からのIkBβ2の免疫沈降
腫瘍細胞系CFPAC-1に由来する精製された膜および全細胞抽出物の両方からタンパク質を免疫沈降させるため、VB1-204を使用した。次いで、精製されたタンパク質を、SDS-PAGEゲル上で分離した。分離されたタンパク質を、VB1-204、ならびにIkBβ1アイソフォームおよびIkBβ2アイソフォームの両方を認識する市販の抗体を使用したウェスタンブロットにより分析した。市販の抗体は、kBβのアミノ酸56〜145をカバーする組換えペプチド配列に対して産生されたものである(Abnova、HOOOO4793-M01)。この領域は、IkBβ2の癌関連バリアントにおいて(106位、111位、および112位に位置する)3個のアミノ酸変化を含有しており、バリアントの推定細胞外部分(およそアミノ酸38〜102)も含有している。図10は、VB1-204は全細胞溶解物および膜画分の中に存在するタンパク質に結合するが、市販の抗体は全細胞溶解物タンパク質にのみ結合することを示している。全てのバンドが同一のMWである。VB1-204は、細胞内に位置する野生型IkBβも膜型も検出するが、市販の抗体は細胞内野生型のみを検出し、その癌関連バリアントとの結合は、免疫原性ペプチドのアミノ酸変化により防止されていることが、これらのデータから示唆される。
【0273】
実施例8:VB1-204に由来する免疫毒素の細胞毒性
VB1-204の可変領域を、癌の処置において使用するためのイムノコンジュゲートを操作するために使用した。植物毒素ブーガニンの修飾型を、VB1-204のFab型に融合させた。
【0274】
VB6-204の操作
EcoRI-ApaI-CH-de-bouganin-AflII-XhoI/pING3302プラスミドに挿入されたEcoRI-PelB-VH204-ApaI断片およびAflII-PelB-6xHis-VL204-CL-XhoI断片を作出することにより、VB6-204構築物を操作した。操作した断片を、アラビノース誘導可能araBADプロモーターの制御下でpING3302 Xomaベクターへ直接クローニングした。L-(+)アラビノースにより誘導すると、関心対象の遺伝子に隣接しているPelBリーダー配列の存在によって、培養上清中にタンパク質が分泌された。VL-CLドメインのN末端に位置するヒスチジンアフィニティタグのため、Ni2+キレーティング捕獲法を使用した精製が可能であった。
【0275】
EcoRI-PelB-VH204-ApaI断片は、鋳型としてのPelBプラスミドおよびVB1-204-VH DNAプラスミド、ならびに以下のプライマーを使用して、スプライスオーバーラッピングエクステンション(Splice Overlapping Extension)ポリメラーゼ連鎖反応法により組み立てられた:

【0276】
EcoRI-PelB-VH204-ApaIを構築し増幅するため、上にリストされた4つのプライマー全てを使用して、2段階スプライスオーバーラッピングエクステンションPCRアプローチを行った。EcoRIおよびApaIの制限部位(太字)は、EcoRI-ApaI-CH-de-bouganin-AflII-XhoI/3302ベクターへのPelB-VH204のクローニングを容易にするために追加された。PCR反応は、以下のものを含有している50μLの反応容量を含んでいた:
10×PCR緩衝液 5μL
2mM dNTP 5μL
50mM MgCl2 2μL
プライマー5' 20pmol
プライマー3' 20pmol
Taq DNAポリメラーゼ 2.5U
DNA鋳型 50ng
PCRのサイクリング条件は以下の通りであった:94℃1分、62℃1分、および72℃1.5分を計20サイクル、その後、72℃10分の最終伸長。
【0277】
工程1
一次PCR反応は、プライマー1および2、ならびにPelB鋳型を含んでいた。これは、EcoRI制限部位を含むPelB領域を5'末に含み、PelBリーダーシグナルを3'末に含む断片(131bp)を与えた。
【0278】
別のPCR反応において、PelBリーダーシグナルおよびVHドメインの開始部分が5'末に隣接し、ApaI部位を含むCHドメインの21ヌクレオチドが3'末に隣接するVH204断片(438bp)を作成するため、204VH鋳型と共に、プライマー3および4を使用した。
【0279】
工程2
次のPCR反応において、EcoRI-PelB-VH204-ApaI断片(548bp)を作製するため、各PCR産物からの1μLと共に、プライマー1および4を使用した。
【0280】
AflII-PelB-6xHis-VL204-CL-XhoI断片は、鋳型としてのVB1-204軽鎖DNAプラスミド、および以下のプライマーを使用して、スプライスオーバーラッピングエクステンションポリメラーゼ連鎖反応法により組み立てられた:

【0281】
AflII-PelB-6xHis-VL204-CLXhoIを構築し増幅するため、上にリストされた6つのプライマー全てを使用して、2段階スプライスオーバーラッピングエクステンションPCRアプローチを行った。AflIIおよびXhoIの制限部位(太字)は、EcoRI-ApaI-CH-de-bouganin-AflII-XhoI/3302ベクターへのAflII-PelB-6xHis-VL204-CL-XhoIのクローニングを容易にするために追加された。
【0282】
工程1
一次PCR反応において、5'末でAflII制限部位に隣接し、3'末で6xHisタグに隣接するPelB断片(195bp)を増幅するため、プライマー1および2を使用した。
【0283】
二次PCR反応において、5'末で6xHisに隣接し、3'末でCLドメインの最初の21ヌクレオチドに隣接する6xHis-VL204断片(379bp)を増幅するため、VB1-204軽鎖鋳型と共に、プライマー3および4を使用した。
【0284】
CL鋳型と共にプライマー5および6を用いて三次PCR反応を実施し、3'末にXhoI制限部位を含有しているλコンスタント軽鎖(327bp)を得た。
【0285】
工程2
次のPCR反応において、AflII-PelB-6xHis-VL204-CLXhoI断片(833bp)を作製するため、プライマー1および6を各PCR産物からの1μLと共に使用した。
【0286】
配列が確証された後、PelB-VH204断片を制限酵素EcoRIおよびApaIにより消化し、同酵素により予め消化されたEcoRI-ApaI-CH-de-bouganin-AflII-XhoI/3302ベクターへとライゲートした。10Fコンピテント細胞をライゲーション反応物により形質転換し、テトラサイクリンが補足されたLB寒天プレートへ播種した。プラスミドPelB-VH204-CH-de-bouganin-AflII-XhoI/3302の制限マッピングにより、インサートの存在を確認した。次いで、AflII-PelB-6xHis-VL204-CLXhoI断片を、制限酵素AflIIおよびXhoIにより消化し、同酵素により予め消化されたPelB-VH204-CHde-bouganin-AflII-XhoI/3302ベクターへとライゲートし、VB6-204を操作した。正確なインサートの存在を配列決定によって確認した後、発現のため大腸菌E104細胞へと構築物を形質転換した。6LのTBの発酵物からVB6-204タンパク質を精製し試験した。VB6-204イムノコンジュゲートのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:36)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO:37)は、図11に示される。
【0287】
VB6-204タンパク質の細胞毒性
VB6-011の細胞毒性はMTSアッセイにより測定される。簡単に説明すると、抗原陽性細胞および抗原陰性細胞を1ウェル当たり1000細胞で播種し、37℃で3時間インキュベートした。続いて、様々な濃度のVB6-204およびde-ブーガニンを細胞に添加し、5日後、細胞生存性を決定する。5日間のインキュベーション後、抗原陽性細胞系では、有意な細胞死のため、VB6-204のIC50計算値が決定される。対照的に、抗原陰性細胞系では、細胞が生存性を維持しているため、IC50は決定されない。
【0288】
実施例9:癌幹細胞アッセイ
癌幹細胞との反応性を査定するため、VB1-204の結合を、aldefluor(ALDH1)染色と併せて使用した。一般に、高いALDH染色を有する腫瘍細胞は、自己再生能を有し異種移植片において腫瘍を発生させることができる癌幹細胞画分を表す。高いALDH1活性は、患者において、ある種の化学療法薬に対する耐性を付与し、新たな腫瘍の伸長およびその後の再発をもたらすと考えられている(Wicha MS,Liu S and Dontu G.2006,Cancer Res.66,1883-1890;Ginestier C,Hur MH,Charafe-Jauffret E et al.2007,Cell Stem Cell,1,555-567)。子宮頚部細胞系C33Aおよび前立腺細胞系DU-145のALDH1陽性細胞へのVB1-204の結合を測定するため、2色フローサイトメトリーを使用した。C33AおよびDU-145のALDH1陽性亜集団へのVB1-204の結合は、癌幹細胞に対する可能性のある有用性を強調する。
【0289】
実験設計:簡単に説明すると、2×105個の細胞を37℃で30分間aldefluor試薬と共にインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、25μg/mLのVB1-204の存在下で4℃で2時間インキュベートした。細胞に結合したVB1-204を、ビオチン化ヤギ抗ヒトH&L、続いてストレプトアビジンCy5を使用して検出した。ヒトIgM抗IdであるIgM Melanomaを、陰性対照として使用した。同様に、反応の阻害剤DEABの存在下で、aldefluor染色の特異性も証明した。
【0290】
結果:結果は図13および14に示される。データの分析は、C33A細胞およびDU-145細胞の2.98%および4.2%が癌幹細胞マーカーaldefluorに関して陽性であることを示した(図13Bおよび14Bの右下四分の一部分)。図13Cおよび14Cの左上四分の一への細胞プロファイルのシフトにより示されるように、VB1-204はC33A細胞(92.5%)およびDU-145細胞(96.8%)の過半数に結合する。図13Dおよび14Dは、C33A(2.3%)およびDU-145(5.0%)のALDH1陽性細胞も、VB1-204の存在下で右上四分の一にシフトすることを示した。このデータは、VB1-204がC33AおよびDU-145の癌幹細胞画分に結合すること、およびVB1-204により認識される抗原が癌幹細胞画分に存在することを示唆する。
【0291】
現在のところ好ましい例であると見なされるものに関連して本願を説明したが、本願は開示された例に限定されないことが理解されるべきである。反対に、本願は、添付の特許請求の範囲の本旨および範囲に含まれる様々な修飾および等価な配置を内含するものとする。
【0292】
全ての公開、特許、および特許出願が、あたかも個々の公開、特許、または特許出願が、各々、参照により完全に組み込まれると特別に個々に示されたかのごとく、参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0293】
(表1)VB1-204のCDR配列

【0294】
(表2)フローによる腫瘍細胞反応性の抗体プロファイリング

【0295】
(表3A)VB1-204に関する重要正常組織のLDアレイ

スコアリングは、0〜3+のスケールで評価された。0=染色なし、および0を超えるが1+未満である微量の染色。グレード1+〜3+は、増加した染色の強度を表し、3+は強い染色である。
【0296】
(表3B)VB1-204による高密度腫瘍組織マイクロアレイ染色

スコアリングは、0〜3+のスケールで評価された。0=染色なし、および0を超えるが1+未満である微量の染色。グレード1+〜3+は、増加した染色の強度を表し、3+は強い濃茶色の染色である。頭頚部癌には、気管、喉頭、扁桃腺、咽頭、軟口蓋、舌、口腔、および口唇の癌が含まれていた。括弧内の値は、スコア化された範囲で染色された細胞の最も高いパーセンテージを示す。
【0297】
(表4)IKKβ2(TRIP-9)およびバリアントに対応するペプチド、ならびにそれぞれのマス計算値のリスト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群より選択される、単離された相補性決定領域(CDR):
SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む単離された軽鎖CDR1またはそのバリアント;
SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む単離された軽鎖CDR2またはそのバリアント;
SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む単離された軽鎖CDR3またはそのバリアント;
SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む単離された重鎖CDR1またはそのバリアント;
SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む単離された重鎖CDR2またはそのバリアント;および
SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む単離された重鎖CDR3またはそのバリアント。
【請求項2】
請求項1記載の相補性決定領域をコードする単離された核酸配列またはそのバリアント。
【請求項3】
以下からなる群より選択される、単離された可変領域:
SEQ ID NO:8、9、および/もしくは10により定義される軽鎖相補性決定領域を含む単離された軽鎖可変領域またはそのバリアント;ならびに
SEQ ID NO:5、6、および/もしくは7により定義される重鎖相補性決定領域を含む単離された重鎖可変領域またはそのバリアント。
【請求項4】
軽鎖可変領域がSEQ ID NO:4のアミノ酸配列またはそのバリアントを含む、請求項3記載の可変領域。
【請求項5】
単離された重鎖可変領域がSEQ ID NO:2のアミノ酸配列またはそのバリアントを含む、請求項3記載の可変領域。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項記載の可変領域またはそのバリアントをコードする、単離された核酸配列。
【請求項7】
SEQ ID NO:3の配列を含む、請求項6記載の単離された核酸配列。
【請求項8】
SEQ ID NO:1の配列を含む、請求項6記載の単離された核酸配列。
【請求項9】
SEQ ID NO:8、9、および/もしくは10により定義される軽鎖相補性決定領域を含む結合タンパク質またはそのバリアント。
【請求項10】
SEQ ID NO:5、6、および/もしくは7により定義される重鎖相補性決定領域を含む結合タンパク質またはそのバリアント。
【請求項11】
SEQ ID NO:8、9、および/もしくは10により定義されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域;ならびに/またはSEQ ID NO:5、6、および/もしくは7により定義されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域を含む、結合タンパク質またはそのバリアント。
【請求項12】
SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:36、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含むタンパク質に結合する、請求項9〜11のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項13】
前記タンパク質が膜貫通型タンパク質であり、かつ結合タンパク質が前記タンパク質の細胞外ドメインに特異的である、請求項12記載の結合タンパク質。
【請求項14】
競合結合アッセイにより同定され得る、癌細胞上の抗原に結合することができる結合タンパク質であって、
競合結合アッセイが、
(1)一定数の癌細胞を、該一定数の癌細胞に対して最大結合を生じる最低濃度の請求項23〜33のいずれか一項記載の結合タンパク質(Ab1)と共にインキュベートし、Ab1の蛍光中央値(MFAb1)を測定する工程;
(2)二種以上の濃度の試験結合タンパク質(Ab2)を、Ab2をAb1および癌細胞に添加することにより試験し、蛍光中央値(MF(Ab1+Ab2))を測定する工程;
(3)バックグラウンドの蛍光中央値(MFbgd)を測定する工程;
(4)PI=[(MF(Ab1+Ab2)-MFBgd)/(MFAb1-MFBgd)]×100である、PIを計算する工程;ならびに
(5)PIを対照PI値と比較する工程であって、対照PIと統計的に有意な差を有するPIが、癌細胞上のSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:36、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含むタンパク質に試験結合タンパク質が結合できることを示す、工程
を含む、結合タンパク質。
【請求項15】
抗体である、請求項9〜14のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項16】
抗体が抗体断片である、請求項15記載の結合タンパク質。
【請求項17】
抗体断片が、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFV、ds-scFv、それらの二量体、ミニボディ(minibody)、ダイアボディ(diabody)、もしくは多量体、または二重特異性抗体断片である、請求項16記載の結合タンパク質。
【請求項18】
請求項9〜17のいずれか一項記載の結合タンパク質をコードする単離された核酸配列。
【請求項19】
請求項9〜17のいずれか一項記載の結合タンパク質および薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、または安定剤を含む組成物。
【請求項20】
(1)以下の(2)に付着した、癌細胞上の抗原に結合する請求項9〜17のいずれか一項記載の結合タンパク質と
(2)細胞毒性があるか、細胞増殖抑制性であるか、または癌細胞の分裂能および/もしくは転移能を防止するかもしくは低下させる癌治療薬と
を含む、イムノコンジュゲート。
【請求項21】
癌治療薬が細胞毒である、請求項20記載のイムノコンジュゲート。
【請求項22】
細胞毒がリボソーム不活化ポリペプチドである、請求項21記載のイムノコンジュゲート。
【請求項23】
細胞毒が、ゲロニン、ブーガニン(bouganin)、サポリン、リシン、リシンA鎖、ブリオジン(bryodin)、ジフテリア、レストリクトシン(restrictocin)、およびシュードモナス外毒素A、またはそれらのバリアントからなる群より選択される、請求項21記載のイムノコンジュゲート。
【請求項24】
細胞毒が、修飾ブーガニンまたはそのバリアントである、請求項21記載のイムノコンジュゲート。
【請求項25】
細胞毒が、アミノ酸252〜608からなる短縮型のシュードモナス外毒素Aまたはそのバリアントである、請求項21記載のイムノコンジュゲート。
【請求項26】
免疫毒素が癌細胞により取り込まれる、請求項20〜25のいずれか一項記載のイムノコンジュゲート。
【請求項27】
SEQ ID NO:67のアミノ酸配列を含む、請求項20記載のイムノコンジュゲート。
【請求項28】
請求項20〜27のいずれか一項記載のイムノコンジュゲートをコードする単離された核酸配列。
【請求項29】
SEQ ID NO:66の核酸配列を含む、請求項28記載の単離された核酸配列。
【請求項30】
薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、または安定剤と共に、請求項20〜27のいずれか一項記載のイムノコンジュゲートを含む組成物。
【請求項31】
癌を処置するかまたは防止するための、有効量の請求項20〜27のいずれか一項記載のイムノコンジュゲートの使用。
【請求項32】
同時の、別々の、または連続的な癌の処置または防止のための、一つまたは複数のさらなる癌治療剤の使用をさらに含む、請求項31記載の使用。
【請求項33】
有効量の請求項20〜27のいずれか一項記載のイムノコンジュゲート、および癌を処置するかまたは防止するためのその使用に関する説明書を含む、癌を処置するかまたは防止するためのキット。
【請求項34】
以下の工程を含む、対象における癌を検出するかまたはモニタリングする方法:
(1)結合タンパク質-抗原複合体が生じるよう、該対象から採取された試験試料を、癌細胞上の抗原に特異的に結合する請求項9〜17のいずれか一項記載の結合タンパク質と接触させる工程;
(2)試験試料中の結合タンパク質-抗原複合体の量を測定する工程;および
(3)試験試料中の結合タンパク質-抗原複合体の量を対照と比較する工程。
【請求項35】
癌細胞上の抗原に結合する請求項9〜17のいずれか一項記載の結合タンパク質、およびその使用に関する説明書を含む、癌を診断するためのキット。
【請求項36】
(1)以下の(2)に付着した、癌細胞上の抗原に結合する請求項9〜17のいずれか一項記載の結合タンパク質と
(2)直接または間接的に検出可能シグナルを生じる標識と
を含む、診断剤。
【請求項37】
標識が、放射性同位元素、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、造影剤、または金属イオンである、請求項36記載の診断剤。
【請求項38】
請求項36または37のいずれか一項記載の診断剤およびその使用に関する説明書を含むキット。
【請求項39】
請求項2、6、7、8、18、28、または29のいずれか一項記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
【請求項40】
請求項39記載の組換え発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項41】
SEQ ID NO:30、32、36、53、もしくは54のアミノ酸配列、またはそれらのバリアントを含む、単離されたタンパク質。
【請求項42】
SEQ ID NO:30のアミノ酸配列またはそのバリアントからなる、請求項41記載の単離されたタンパク質。
【請求項43】
26位、27位、31位、34位、39位、106位、111位、および112位より選択される1個または複数個のアミノ酸が、別のアミノ酸に置換されているか、または化学的に修飾されている、SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含む、単離されたタンパク質。
【請求項44】
置換が、P026V、D027L、P031V、P034V、E039W、E106V、E111V、および/またはK112Aのうちの1個または複数個である、請求項43記載の単離されたタンパク質。
【請求項45】
請求項41〜44のいずれか一項記載の単離されたタンパク質をコードする単離された核酸配列。
【請求項46】
請求項45記載の核酸配列を含む組換え発現ベクター。
【請求項47】
以下の工程を含む、対象における癌を検出するかまたはモニタリングする方法:
試料中の細胞上の請求項41〜46のいずれか一項記載の単離されたタンパク質を検出する工程であって、単離されたタンパク質が該細胞上に検出された場合、癌が示される、工程。
【請求項48】
以下の工程を含む、対象における癌を検出するかまたはモニタリングする方法:
試料中の細胞による請求項41〜46のいずれか一項記載の単離されたタンパク質のRNA発現を検出する工程であって、単離されたタンパク質が検出された場合、癌が示される、工程。
【請求項49】
適切な希釈剤または担体と混和された、有効量の請求項41〜46のいずれか一項記載の単離されたタンパク質またはその断片を含む、薬学的組成物。
【請求項50】
アジュバントをさらに含む、請求項49記載の薬学的組成物。
【請求項51】
適切な希釈剤または担体と混和された、有効量の請求項45記載の単離された核酸配列または請求項46記載の発現ベクターを含む、薬学的組成物。
【請求項52】
アジュバントをさらに含む、請求項51記載の薬学的組成物。
【請求項53】
癌を処置するかまたは防止するための、請求項41〜44のいずれか一項記載の単離されたタンパク質またはその断片の使用。
【請求項54】
対象において免疫応答を誘発するための医薬の製造における、請求項41〜44のいずれか一項記載の単離されたタンパク質またはその断片の使用。
【請求項55】
癌を処置するかまたは防止するための、請求項45記載の単離された核酸配列または請求項46記載の組換え発現ベクターの使用。
【請求項56】
対象において免疫応答を誘発するための、請求項45記載の単離された核酸配列または請求項46記載の組換え発現ベクターの使用。
【請求項57】
以下の工程を含む、癌を防止するかまたは処置する能力に関して化合物を同定する方法:
(a)請求項41〜44のいずれか一項記載の単離されたタンパク質を細胞の表面上に発現する細胞を、試験化合物と接触させる工程;
(b)単離されたタンパク質の発現または機能を決定する工程;および
(c)単離されたタンパク質の発現または機能を対照と比較する工程であって、単離されたタンパク質の発現または機能が対照と比較して減少していることが、癌を防止するかまたは処置するために有用な化合物であることの指標である、工程。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−505795(P2011−505795A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535185(P2010−535185)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/CA2008/002076
【国際公開番号】WO2009/067800
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(510242185)ヴィヴェンティア バイオテクノロジーズ インコーポレーティッド (4)
【Fターム(参考)】