説明

バリア膜被覆プラスチック容器の製造方法及びその製造装置

【課題】本発明の目的は、安全かつ高速で、プラズマによる損傷が無いガスバリア薄膜を立体形状のプラスチック容器に低温で成膜することを可能とし、しかもプラズマCVD成膜装置と比較して高価な機材を必要としない製造装置で稼動しうる安価な被膜プラスチック容器の製法を提供することである。
【解決手段】本発明に係るバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法は、プラスチック容器を収容した真空チャンバの内部に炭素源原料ガスを供給し、炭素源原料ガスを熱触媒体に吹き付けて炭素源原料ガスを分解して化学種を生成させ、かつ、ホットワイヤーから金属種を揮発させ、容器の内表面又は外表面の少なくともいずれか一方に化学種及び金属種を到達させることによって金属種含有DLC薄膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物として、例えば、品質面から酸化を嫌い且つ容器壁から炭酸ガスの逃散がないことを必要とするビール等のアルコール飲料又は同様に酸化を嫌う清涼飲料を入れることに適した、酸素ガス及び炭酸ガスのバリア性を有する飲料用プラスチック容器に関する。より詳しくは酸素ガス及び炭酸ガスのバリア層として、外表面と内表面の少なくとも一方に、食品・飲料分野でも安全かつ低コストで成膜可能な金属種含有DLC薄膜を被覆した、 軽量で、耐衝撃性があり、リサイクル性に優れたプラスチック容器の製造方法及びその製造装置に関する。あるいはガスバリア性以外にも、呈色・光沢面から透光/遮光性・美粧性・識別性において機能性のある金属種含有DLC薄膜を比較的容易かつ低コストで被覆するための、上記長所を有するプラスチック容器の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PETボトルにコートされた単層薄膜としてDLC(Diamond Like
Carbon)膜が実用化されてきている。このDLC膜は、炭素原子及び水素原子による非晶性の三次元構造からなる膜で、硬く、絶縁性に優れ、高屈折率で、非常に滑らかなモルフォロジを有する硬質炭素膜である。
【0003】
従来、このようなDLC膜の形成技術をプラスチック容器に適用した例がある(例えば特許文献1を参照。)。特許文献1に記載された一般的なDLC膜の形成装置は、次の通りである。すなわち、図1に示すように、炭素源ガスの導入口1Aと排気口1Bを有する反応室1内に配置された外部電極2の中に、プラスチック容器5が収容される。そして導入口1Aから炭素源ガスが導入された後、内部電極3と外部電極2との間に高周波電源4から高周波が印加され、炭素源ガスが励起されて発生するプラズマにより、プラスチック容器5の内面にDLC膜が形成される。
【0004】
【特許文献1】特許2788412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、プラズマCVD成膜装置は、比較的高価な機材を使用するため、必ずしも安価で、ガスバリア性を有するプラスチック容器を製造できるとは限らない。
【0006】
触媒化学蒸着法は、高周波電源等の高価な機材を使用する必要がないため、装置自体のコストはプラズマCVD成膜装置のコストよりも少ない。
【0007】
しかし、触媒化学蒸着法は、プラスチックシートのような平面形状の対象に成膜できても、プラスチック容器のような立体形状を対象に成膜できるという報告はない。
【0008】
また、ホットワイヤー法は、高真空での真空蒸着のため、高真空度を実現するために大きな排気設備と長い排気時間がかかる。さらに、蒸着物質が高真空中を拡散するため、拡散物質の直進性が高くて回り込みにくいため、立体形状の対象には均一に成膜させづらいという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、触媒化学蒸着法及びホットワイヤー法の両方を適用することによって、安全かつ高速で、プラズマによる損傷が無いガスバリア薄膜を立体形状のプラスチック容器に低温で成膜することを可能とし、しかもプラズマCVD成膜装置と比較して高価な機材を必要としない製造装置で稼動しうる安価な被膜プラスチック容器の製法を提供することである。ここで、本発明の目的は、より具体的には、ガスバリア薄膜として、プラスチックに対して密着性が良好で、高い成膜速度が得られ、かつ、高いバリア性が得られる金属種含有DLC薄膜を成膜したプラスチック容器の製造方法を提供することである。
【0010】
加えて、飲料・食品分野の容器には、内容物の保護、品質の目視確認や、外観上の美観向上のために透光/遮光性や呈色が求められる。このような課題に対し、直接樹脂を着色することなく、実用性のある透光/遮光性や呈色を、比較的自由度高く容易に制御でき、安価で、かつリサイクル性高く、薄膜によってプラスチック容器に付与する製法を提供することも、本発明の目的とするところである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が、上記課題を解決すべく鋭意開発したところ、触媒用ワイヤーと加熱用ワイヤーの両方を用いて、触媒用ワイヤーには熱触媒体として炭素源原料ガスを分解させてDLCとなる成分を供給させ、かつ、加熱用ワイヤーにはホットワイヤーとしてその構成成分である金属の蒸気を揮発させ、DLCに含有させる金属種を供給させることで、バリア膜として金属種含有DLC薄膜が密着性よく成膜できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
ここで、本発明においては、加熱用ワイヤーとは、一般的な工業用電源を用いて電気抵抗体を数百度以上に通電により加熱することができる物体を意味する。典型的には、金属製の針金であるが、導電性の金属化合物も本概念に含まれる。さらには、これらの物体に揮発して蒸気となる担持体・塗布物がある物体も、本概念に含まれる。いずれも、プラスチック容器表面への成膜においては、複雑な立体形状に対して、容器表面各箇所への熱負荷の大きさ・成膜物質の流れが成膜に適するように抵抗加熱体を配置できる点で共通しているためである。関連して、本発明においては、ホットワイヤーとは、これら通電によって抵抗加熱された加熱用ワイヤーを意味する。
【0013】
触媒用ワイヤーとは、それ自身は実質的に揮発せず、原料ガスを触媒化学反応によって化学種に分解させうる主として金属の触媒体で形成されたワイヤーである。
【0014】
本発明に係るバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法は、プラスチック容器を収容した真空チャンバの内部を大気圧以下の所定圧力とする圧力調整工程と、前記真空チャンバの内部に配置されている触媒用ワイヤーに通電して発熱させて熱触媒体とする工程と、前記真空チャンバの内部に配置されている加熱用ワイヤーに通電して発熱させてホットワイヤーとする工程と、前記真空チャンバの内部に炭素源原料ガスを供給し、前記炭素源原料ガスを前記熱触媒体に吹き付けて前記炭素源原料ガスを分解して化学種を生成させ、かつ、前記ホットワイヤーから金属種を揮発させ、前記プラスチック容器の内表面又は外表面の少なくともいずれか一方に前記化学種及び前記金属種を到達させることによって金属種含有DLC薄膜を形成する成膜工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法では、前記触媒用ワイヤーがタングステン又はニッケル‐クロム合金を主成分とするワイヤーであり、かつ、前記加熱用ワイヤーがモリブデン、パラジウム、銀、炭素鋼、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを含有するワイヤーであることが好ましい。タングステン又はニッケル‐クロム合金を主成分とするワイヤーは、メタンガス等の炭素源原料ガスを触媒化学反応によって効率よく分解でき、また、モリブデン、パラジウム、銀、炭素鋼、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを含有するワイヤーは、通電し、発熱させることによってそれらの金属種を揮発させやすく、蒸着成分として基板に供給できる。
【0016】
本発明に係るバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法では、前記成膜工程において、前記プラスチック容器の表面に前記化学種及び前記金属種を同時に到達させることによって、DLCと金属種との複合薄膜を形成する形態が含まれる。金属種による透光/遮光性や呈色を付与することができる。
【0017】
本発明に係るバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法では、前記成膜工程において、前記プラスチック容器の表面に、前記化学種、前記金属種の順に到達させることによって、DLCの上に金属種が堆積した2層型積層薄膜を形成する形態が含まれる。DLC層が密着層としての役割をするので2層型積層薄膜は密着性が高い。また、金属種による透光/遮光性や呈色を付与することができる。
【0018】
本発明に係るバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法では、前記成膜工程において、前記プラスチック容器の表面に、前記金属種、前記化学種の順に到達させることによって、金属種の上にDLCが堆積した2層型積層薄膜を形成する形態が含まれる。化学的に安定なDLC層が最表層にあるため、2層型積層薄膜は化学的安定性が高い。また、金属種による透光/遮光性や呈色を付与することができる。
【0019】
本発明に係るバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法では、前記成膜工程において、前記プラスチック容器の表面に、前記化学種、前記金属種、前記化学種の順に到達させることによって、DLCの上に金属種が堆積し、該金属種の上にさらにDLCが堆積した3層型積層薄膜を形成する形態が含まれる。下層のDLC層が密着層としての役割を果たし、かつ、最表層のDLC層が保護層の役割を果たすため、3層型積層薄膜は密着性が高く、かつ、化学的安定性が高い。また、金属種による透光/遮光性や呈色を付与することができる。
【0020】
本発明に係るバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法では、前記プラスチック容器が、前記真空チャンバ内に差圧機構を介して搬入される工程と、前記プラスチック容器が、前記真空チャンバ内の搬送経路に設置された前記触媒用ワイヤー及び前記加熱用ワイヤーに接触せずに前記搬送経路上を搬送される工程と、前記プラスチック容器が、前記真空チャンバ外へ差圧機構を介して搬出される工程と、をさらに有することが好ましい。金属種含有DLC薄膜を被覆したプラスチック容器を量産することも可能である。
【0021】
本発明に係るバリア膜被覆プラスチック容器の製造装置は、プラスチック容器を収容する真空チャンバと、該真空チャンバを真空引きする排気ポンプと、前記真空チャンバの内部に配置されている触媒用ワイヤーと、該触媒用ワイヤーに電力を供給する熱触媒体用ヒータ電源と、前記真空チャンバの内部に配置されている加熱用ワイヤーと、該加熱用ワイヤーに電力を供給するホットワイヤー用ヒータ電源と、前記真空チャンバ内に配置されたプラスチック容器の内部空間又は外部空間或いはその両方の空間に原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、安全かつ高速で、プラズマによる損傷が無いガスバリア薄膜をプラスチック容器の表面に低温で成膜することが可能である。しかもプラズマCVD成膜装置と比較して高価な機材を必要としない製造装置で稼動しうる安価なバリア膜被覆プラスチック容器の製法とすることができる。ここで、触媒化学蒸着法及びホットワイヤー法の両方を適用する際に、高真空中ではなく、1〜100Pa程度の低真空で成膜を行なうこととなるため、ガスの粘性流によって立体形状の対象物にも原料が回り込んで、均一に成膜することが可能となる。そして、バリア膜である金属種含有DLC薄膜は、プラスチックに対して密着性が良好で、かつ、高いバリア性を有している。さらに、透光/遮光性や呈色を、比較的自由度高く容易に制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。まず、本実施形態に係るバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法を説明する前に、使用する成膜装置について図2〜図10を参照しながら説明する。なお、共通の部位・部品には同一符号を付した。
【0024】
(第1形態:容器の内表面への成膜)
まず、容器の内表面に酸化物薄膜を成膜できる第1形態に係る成膜装置について説明する。図2は、第1形態に係る成膜装置を示す概略図であり、(a)はワイヤーが直線形状の場合、(b)はワイヤーがコイルばね形状の場合、(c)はワイヤーがジグザク線形状の場合、である。ただし、図2(b)(c)は、原料ガス供給管23の部分拡大図である。なお、以下特に断らない限り「図2」は「図2(a)」として説明する。図2に示した成膜装置100は、プラスチック容器11を収容する真空チャンバ6と、真空チャンバ6を真空引きする排気ポンプ(不図示)と、真空チャンバ6の内部に配置されている触媒用ワイヤー18Xと、触媒用ワイヤー18Xに電力を供給する熱触媒体用ヒータ電源20Xと、真空チャンバ6の内部に配置されている加熱用ワイヤー18Yと、加熱用ワイヤー18Yに電力を供給するホットワイヤー用ヒータ電源20Yと、真空チャンバ6内に配置されたプラスチック容器11の内部空間に炭素源原料ガス等の原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、を有する。ここで、原料ガス供給手段は、具体的には絶縁且つ耐熱の材料で形成された原料ガス供給管23である。触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yとは、いずれも原料ガス供給管23に支持されているが、図示の容易化のため、加熱用ワイヤー18Yは原料ガス供給管23の近傍に図示した。また、図2(b)(c)では、いずれも加熱用ワイヤー18Yは原料ガス供給管23に支持されているが、図示の容易化のため、加熱用ワイヤー18Yの記載を省略している。すなわち、図2(b)ではコイルばね形状の加熱用ワイヤー18Yの記載を省略しており、図2(c)ではジグザク線形状の加熱用ワイヤー18Yの記載を省略している。
【0025】
真空チャンバには、その内部にプラスチック容器11を収容する空間が形成されており、この空間は薄膜形成のための反応室12となる。真空チャンバ6は、下部チャンバ13と、この下部チャンバ13の上部に着脱自在に取り付けられて下部チャンバ13の内部をOリング14で密閉するようになっている上部チャンバ15とから構成されている。上部チャンバ15には図示していない上下の駆動機構があり、プラスチック容器11の搬入・搬出に伴い上下する。下部チャンバ13の内部空間は、そこに収容されるプラスチック容器11の外形よりも僅かに大きくなるように形成されている。このプラスチック容器11は、飲料用ボトルであるが、他の用途に使用される容器であってもよい。
【0026】
真空チャンバ6の内側、特に下部チャンバ13の内側は、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yの発熱に伴って放射される光の反射を防ぐために、内面28が黒色内壁となっているか或いは内面が表面粗さ(Rmax)0.5μm以上の凹凸を有していることが好ましい。表面粗さ(Rmax)は、例えば表面粗さ測定器(アルバックテクノ(株)製、DEKTAX3)を用いて測定する。内面28を黒色内壁とするためには、黒ニッケルメッキ・黒クロームメッキなどのメッキ処理、レイデント・黒染などの化成皮膜処理、又は、黒色塗料を塗布して着色する方法がある。さらに、冷却水が流される冷却管等の冷却手段29を真空チャンバ6の内部(不図示)又は外部(図2)に設けて、下部チャンバ13の温度上昇を防止することが好ましい。真空チャンバ6のうち特に下部チャンバ13を対象とするのは触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yがプラスチック容器11に挿入されているときに、ちょうど下部チャンバ13の内部空間に収容された状態となるからである。光の反射の防止及び真空チャンバ6の冷却を行なうことで、プラスチック容器11の温度上昇と、それに伴う熱変形を抑制できる。さらに、通電された触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yから発生した放射光が通過できる透明体からなるチャンバ30、例えばガラス製チャンバを下部チャンバ13の内側に配置すると、プラスチック容器11に接するガラス製チャンバの温度が上昇しにくいため、プラスチック容器11に与える熱的影響をさらに軽減させることができる。
【0027】
原料ガス供給管23は、上部チャンバ15の内側天井面の中央において下方に垂下するように支持されている。原料ガス供給管23には、流量調整器24aとバルブ25a〜25bを介してメタンガス等の炭素源原料ガスが流入される。原料ガス供給管23は、冷却管を有し、一体に形成されていることが好ましい。このような原料ガス供給管23の構造としては、例えば二重管構造がある。原料ガス供給管23において、二重管の内側管路は原料ガス流路17となっており、その一端は上部チャンバ15に設けられたガス供給口16に接続されていて、その他端はガス吹き出し孔17xとなっている。これにより炭素源原料ガスはガス供給口16に接続された原料ガス流路17の先端のガス吹き出し孔17xから吹き出されるようになっている。一方、二重管の外側管路は、原料ガス供給管23を冷却するための冷却水流路27であり、冷却管として役割をなしている。そして、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yが通電され発熱して熱触媒体(18X)とホットワイヤー(18Y)となっているとき、原料ガス流路17の温度が上昇する。これを防止するため、冷却水流路27に冷却水が循環している。すなわち、冷却水流路27の一端では、上部チャンバ15に接続された不図示の冷却水供給手段から冷却水の供給がなされ、同時に冷却水供給手段に冷却を終えた冷却水が戻される。一方、冷却水流路27の他端は、ガス吹き出し孔17x付近において封止されていて、ここで冷却水が折り返して戻される。冷却水流路27によって、原料ガス供給管23全体が冷却される。冷却することでプラスチック容器11に与える熱的影響を低減させることができる。したがって、原料ガス供給管23の材質は絶縁体で熱伝導率が大きいものが良い。例えば、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素又は酸化アルミニウムを主成分とする材料で形成されたセラミック管であるか、或いは、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素又は酸化アルミニウムを主成分とする材料で表面が被覆された金属管であることが好ましい。触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yに安定して通電することができ、耐久性があり、且つ、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yで発生した熱を熱伝導によって効率よく排熱させることができる。
【0028】
原料ガス供給管23について、不図示の他形態として、次のようにしても良い。すなわち、原料ガス供給管を二重管とし、その外側管を原料ガス流路として外側管の側壁に孔、好ましくは複数の孔を開ける。一方、原料ガス供給管の二重管の内側管は、緻密な管で形成し、冷却水流路として冷却水を流す。触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yは原料ガス供給管の側壁に沿って配線されるが、側壁に沿った部分の触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yに、外側管の側壁に設けた孔を通った炭素源原料ガスが接触する。炭素源原料ガスは、熱触媒体となった触媒用ワイヤー18Xによって、効率よく化学種に分解される。
【0029】
ガス吹き出し孔17xは、プラスチック容器11の底と離れすぎていると、プラスチック容器11の内部に薄膜を形成することが難しい。本実施形態では、原料ガス供給管23の長さは、ガス吹き出し孔17xからプラスチック容器11の底までの距離L1が5〜50mmとなるように形成することが好ましい。15〜30mmとなるように形成することがより好ましい。膜厚の均一性が向上する。5〜50mmの距離とすることで均一な薄膜をプラスチック容器11の内表面に成膜することができる。距離が50mmより大きいとプラスチック容器11の底に薄膜が形成しにくくなり、距離が5mmより小さいと原料ガスの吹き出しが困難になったり、プラスチック容器11の内表面のうち、ガス吹き出し孔17xの近傍の成膜が過剰となりやすくなる。
【0030】
触媒用ワイヤー18Xは、触媒化学蒸着法において、メタン等の炭素源原料ガスの分解を促進する。本実施形態においては、触媒用ワイヤー18Xは、メタン等の炭素源原料ガスの分解効率の観点から、例えば、W線又はニッケル‐クロム合金線(商標名ニクロム線)が好ましい。導電性を有するので、通電によりそれ自体を発熱させることが可能となる。触媒用ワイヤー18Xは配線形状に形成され、原料ガス供給管23の上部チャンバ15における固定箇所の下方に設けた、配線19とワイヤー18との接続箇所となる接続部26aに、触媒用ワイヤー18Xの一端が接続される。そして先端部分であるガス吹き出し孔17xに設けた絶縁セラミックス部材35で支持される。さらに、折り返して、接続部26bに触媒用ワイヤー18Xの他端が接続される。このように、触媒用ワイヤー18Xは原料ガス供給管23の側面に沿って支持されているため、下部チャンバ13の内部空間のほぼ主軸上に位置するように配置されることとなる。図2(a)では、触媒用ワイヤー18Xは、原料ガス供給管23の軸と平行となるように原料ガス供給管23の周囲に沿って配置された場合を示したが、接続部26aを起点として原料ガス供給管23の側面に螺旋状に巻きつけ、ガス吹き出し孔17x付近に固定された絶縁セラミックス35で支持したあと、接続部26bに向けて折り返して戻しても良い。ここで触媒用ワイヤー18Xは、絶縁セラミックス35に引っ掛けることで原料ガス供給管23に固定されている。図2(a)では、触媒用ワイヤー18Xは、原料ガス供給管23のガス吹き出し孔17x付近において、ガス吹き出し孔17xの外側に配置されている場合を示した。これによって、ガス吹き出し孔17xから吹き出たメタン等の炭素源原料ガスは触媒用ワイヤー18Xと接触しやすくなるため、炭素源原料ガスを効率よく分解させることができる。ここで、触媒用ワイヤー18Xは、原料ガス供給管23の側面から僅かに離して配置することが好ましい。原料ガス供給管23の急激な温度上昇を防止するためである。また、ガス吹き出し孔17xから吹き出た炭素源原料ガス並びに反応室12にある炭素源原料ガスとの接触機会を増やすことができる。この触媒用ワイヤー18Xを含む原料ガス供給管23の外径は、プラスチック容器の口部21の内径よりも小さいことが必要である。触媒用ワイヤー18Xを含む原料ガス供給管23をプラスチック容器の口部21から挿入するためである。したがって、必要以上に触媒用ワイヤー18Xを原料ガス供給管23の表面から離すと、原料ガス供給管23をプラスチック容器の口部21から挿入するときに接触しやすくなってしまう。触媒用ワイヤー18Xの横幅は、プラスチック容器の口部21から挿入する時の位置ズレを考慮すると、10mm以上、(口部21の内径−6)mm以下が適当である。ここで口部21の内径はおおよそ21.7〜39.8mmである。
【0031】
触媒用ワイヤー18Xを発熱させたときの上限温度は、そのワイヤーが軟化する温度以下とすることが好ましい。熱触媒体として作動させる温度は、ワイヤーの材料によって異なり、W線であれば、例えば1600〜2000℃であることが好ましく、1800〜2000℃であることがより好ましい。ニッケル‐クロム合金線であれば、例えば800〜1200℃であることが好ましく、1000〜1100℃であることがより好ましい。
【0032】
また、触媒用ワイヤー18Xは、メタン等の炭素源原料ガスとの接触機会を増やすために、図2(b)に示したように線材をコイルばね形状に加工した部分を有していることが好ましい。コイルばね形状には、円筒状のみならず、円錐形、たる形又はつづみ形を含み、さらにこれらの巻線間のピッチを変えた不等ピッチ形を含む。また、図2(c)に示したように線材をジグザク線形状に加工した部分を有していても良い。或いは、線材を波線形状に加工した部分を有していても良い(不図示)。これらのいずれの形態においても、触媒用ワイヤー18Xは、メタン等の炭素源原料ガスの吹き出し方向に沿って配置されていることが好ましい。これによって、メタン等の炭素源原料ガス33は触媒用ワイヤー18Xと接触する機会が増加する。
【0033】
加熱用ワイヤー18Yは、通電発熱させてホットワイヤーとすることで、ワイヤーを構成する金属成分を揮発させ、金属種の蒸気を供給する。加熱用ワイヤー18Yは、金属若しくは金属を含有することが好ましく、例えば、Mo線、Pd線、Ag線、炭素鋼線、Ti線、Zr線若しくはHf線である。導電性を有するので、通電によりそれ自体を発熱させることが可能となる。加熱用ワイヤー18Yは配線形状に形成され、触媒用ワイヤー18Xと同様の手法によって原料ガス供給管23に固定される。これによって、ガス吹き出し孔17xから吹き出たメタン等の炭素源原料ガスは加熱用ワイヤー18Yと接触しやすくなるため、揮発した金属種が炭素源原料ガスの粘性流によってプラスチック容器11の表面に運ばれる。このとき、高真空中であれば、揮発した金属種は平均自由工程が長いために直進してプラスチック容器11の表面に到達するが、炭素源原料ガスの存在によって1〜100Pa程度の圧力となっているために炭素源原料ガスが粘性流となり、揮発した金属種を運ぶこととなる。したがって、揮発した金属種は立体形状のプラスチック容器11の表面に回り込みよく供給されるため、バリア膜の均一性が向上する。
【0034】
加熱用ワイヤー18Yを発熱させたときの上限温度は、そのワイヤーが軟化する温度以下とすることが好ましい。ただし、金属種の蒸気源を、ワイヤーに担持させた物質あるいは塗布した物質から供給する場合は、これらの物質の融点以下とすることが好ましい。したがって、ホットワイヤーとして作動させる温度は、蒸発源がワイヤーの材料によって異なり、Moであれば、例えば1000〜2600℃であることが好ましく、1200〜2400℃であることがより好ましい。Pdであれば、例えば1000〜1500℃であることが好ましく、1100〜1200℃であることがより好ましい。Agであれば、例えば700〜900℃であることが好ましく、800〜840℃であることがより好ましい。炭素鋼であれば、例えば1100〜1400℃であることが好ましく、1200〜1300℃であることがより好ましい。Tiであれば、例えば1300〜1600℃であることが好ましく、1400〜1550℃であることがより好ましい。Zrであれば、例えば1500〜1800℃であることが好ましく、1500〜1650℃であることがより好ましい。Hfであれば、例えば1500〜2200℃であることが好ましく、1800〜2000℃であることがより好ましい。
【0035】
また、加熱用ワイヤー18Yの線形状は、触媒用ワイヤー18Xと同様の形状(例えば、図2(b)(c))としても良い。これによって、加熱用ワイヤー18Yの表面積を増やし、揮発する金属種の飛び出し方向を特定方向でなく全方向に均一化できる。
【0036】
触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yの原料ガス供給管23の固定方法について、不図示の他形態として、次のようにしても良い。すなわち、原料ガス供給管を二重管とし、その外側管を原料ガス流路として気孔率10〜40%の多孔質からなる管で形成する。この多孔質の外側管に直接触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yを巻きつけても良い。触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yの固定の安定性が向上するとともに、メタン等の炭素源原料ガスがガス吹き出し孔と共に外側管の側壁からも放出されるために、触媒用ワイヤー18Xへの接触効率が向上し、また、加熱用ワイヤー18Yから揮発した金属種が吹き出した炭素源原料ガスによって効率よく運搬される。この場合、原料ガス供給管の二重管の内側管は、緻密な管で形成し、冷却水流路として冷却水を流す。
【0037】
図3に触媒用ワイヤー18Xと原料ガス供給管23との位置関係の他形態を示した。図3では、原料ガス供給管23の管内に触媒用ワイヤー18Xが配置されている。触媒用ワイヤー18Xは、メタン等の炭素源原料ガス33の吹き出し方向に沿って2列に配置されている。これによって、メタン等の炭素源原料ガス33は触媒用ワイヤー18Xと接触する機会が増加する。また、触媒用ワイヤー18Xが原料ガス供給管の内部に配置されているため、触媒用ワイヤー18Xとプラスチック容器の表面との距離を大きくとることができるので、プラスチック容器の熱変形の発生を抑制できる。図3で示したように、ワイヤー18a,18bはそれぞれ線材部分が異なる方向を向くように配置されることが好ましい。図3では、線材は縦横の互い違いの関係にある。なお、原料ガス供給管23の管の横断面の形状は、図3では正方形であるが、円形、楕円形又は長方形であっても良い。また、管径は、プラスチック容器の内表面に成膜するためにプラスチック容器の口部から挿入するのであれば、口部径よりも小さくする必要がある。一方、プラスチック容器の外表面に成膜する場合には、管径を大きくとって、ガス流速を太くすることが好ましい。なお、加熱用ワイヤー18Yは、原料ガス供給管23の管の外側に支持されている。
【0038】
触媒用ワイヤー18Xには、接続部26a,26b及び配線19を介して、熱触媒体用ヒータ電源20Xが接続されている。熱触媒体用ヒータ電源20Xによって触媒用ワイヤー18Xに電気を流すことで、触媒用ワイヤー18Xが発熱し、熱触媒体となる。
【0039】
加熱用ワイヤー18Yには、不図示の接続部及び配線を介して、ホットワイヤー用ヒータ電源20Yが接続されている。ホットワイヤー用ヒータ電源20Yによって加熱用ワイヤー18Yに電気を流すことで、加熱用ワイヤー18Yが発熱し、ホットワイヤーとなる。
【0040】
また、プラスチック容器の口部21から容器の肩にかけてはプラスチック容器11の成形時の延伸倍率が小さいため、高温に発熱する触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yが近くに配置されると、熱による変形を起こしやすい。実験によれば、配線19と触媒用ワイヤー18Xとの接続箇所である接続部26a,26b(加熱用ワイヤー18Yの接続部は不図示)の位置が、プラスチック容器の口部21の下端から5mm以上離さないとプラスチック容器11の肩の部分が熱変形を起こし、50mmを超えて離すとプラスチック容器11の肩の部分に薄膜が形成しにくくなった。そこで触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yは、その上端がプラスチック容器の口部21の下端から5〜50mm下方に位置するように配置されることが良い。すなわち、接続部26a,26bと口部21の下端との距離L2が5〜50mmとなるようにすることが好ましい。容器の肩部の熱変形を抑制できる。加熱用ワイヤー18Yの接続部についての同様である。
【0041】
また上部チャンバ15の内部空間には、排気管22が真空バルブ8を介して連通されており、図示しない排気ポンプによって真空チャンバ6の内部の反応室12の空気が排気されるようになっている。
【0042】
(第2形態:容器の外表面への成膜)
次に、容器の外表面にガスバリア薄膜を成膜できる第2形態に係る成膜装置について説明する。図4は第2形態に係る成膜装置の一形態を示す概略図であり、(a)はワイヤーが線状の場合、(b)はワイヤーがコイルばね形状の場合、である。ただし、図4(b)は、ワイヤーの概略図である。なお、以下特に断らない限り「図4」は「図4(a)」として説明する。図4に示した成膜装置200は、プラスチック容器11を収容する真空チャンバ60と、真空チャンバ60を真空引きする排気ポンプ(不図示)と、真空チャンバ60の内部に配置されている触媒用ワイヤー18Xと、触媒用ワイヤー18Xに電力を供給する熱触媒体用ヒータ電源20Xと、真空チャンバ60の内部に配置されている加熱用ワイヤー18Yと、加熱用ワイヤー18Yに電力を供給するホットワイヤー用ヒータ電源20Yと、真空チャンバ60内に配置されたプラスチック容器11の外部空間に炭素源原料ガス等の原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、を有する。ここで、原料ガス供給手段は、具体的には絶縁且つ耐熱の材料で形成された原料ガス供給管73である。触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yとは、いずれもプラスチック容器11の周囲に配置されており、図4では真空チャンバ60の内壁面に沿って配線されている場合を示したが、図示の容易化のため、主として触媒用ワイヤー18Xを図示し、加熱用ワイヤー18Yは一部のみ図示した。また、図4(b)では、触媒用ワイヤー18Xのみ図示し、加熱用ワイヤー18Yの記載を省略したが、加熱用ワイヤー18Yも同様である。
【0043】
また、成膜装置200では、プラスチック容器11の口部はボトル回転機構32によって固定されていて、プラスチック容器11は、真空チャンバ60の内部で底が接触しないように配置されている。
【0044】
真空チャンバ60は、その内部にプラスチック容器11を収容する空間が形成されており、この空間は薄膜形成のための反応室12となる。真空チャンバ60は、下部チャンバ63と、この下部チャンバ63の上部に着脱自在に取り付けられて下部チャンバ63の内部をOリング14で密閉するようになっている上部チャンバ65から構成されている。上部チャンバ65には図示していない上下の駆動機構があり、プラスチック容器11の搬入・搬出に伴い上下する。下部チャンバ63の内部空間は、そこに収容されるプラスチック容器11の周囲に触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yが配置できるように、プラスチック容器11の外形よりも大きく形成されている。
【0045】
ここで触媒用ワイヤー18Xは、配線19と触媒用ワイヤー18Xとの接続箇所である接続部79aとその一端が接続される。そして図4の成膜装置では、触媒用ワイヤー18Xは、接続部79aを起点して、下部チャンバ63の内側の側面から底面へ渡り対向する側面へと直線状に配置され、そこから折り返されて、対向する側面、底面、内側の側面へと再び直線状に配置されて、接続部79bにその他端が接続される。加熱用ワイヤー18Yについても同様に固定する(ただし、接続部は不図示)。このときの触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yとプラスチック容器11との位置関係を示すため、図5にA-A’断面図を示した。触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yは、プラスチック容器11を囲むようにして、図中、左右又は上下とも等間隔に配置されている。触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yは、プラスチック容器11の外表面との距離が一定となるように配置されている。容器の底を含む外表面における膜厚の均一性が向上する。さらに、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yをそれぞれ2組以上配置しても良い。この場合、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yは、プラスチック容器の主軸に対して回転対称の位置に複数配置されていることが好ましい。図5に示した場合でも、ボトル回転機構32によってプラスチック容器11を、主軸を中心に回転させながら成膜させることで、成膜の均一性を向上させることができる。特に、図5の場合では、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yが一組であるため、成膜の均一性向上の効果が高い。不図示ではあるが、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yの配置の他形態として、プラスチック容器11の主軸を中心に、プラスチック容器11の周囲において、螺旋状に巻く形態、或いは、プラスチック容器11の主軸の複数の横断面上で、それぞれ並列に巻き、複数のリング状のワイヤーを並列に配置するという形態がある。いずれの形態においても、膜厚の均一性を向上させることができる。もちろん、この形態においても、ボトル回転機構32によってプラスチック容器11を、主軸を中心に回転させながら成膜させても良い。ここで、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yを複数組配置する場合は、互いに5cm以上離して配置されていることが好ましい。プラスチック容器に熱的損傷を与えることなく、炭素源原料ガスの分解を促進し、膜厚の均一性が得られやすい。触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yの材質は、第1形態のものとそれぞれ同じとして良い。
【0046】
触媒用ワイヤー18Xは、メタン等の炭素源原料ガスとの接触機会を増やすために、図4(b)に示したように線材をコイルばね形状に加工した部分を有していることが好ましい。コイルばね形状には、円筒状のみならず、円錐形、たる形又はつづみ形を含み、さらにこれらの巻線間のピッチを変えた不等ピッチ形を含む。また、線材をジグザク線形状に加工した部分を有していても良い(不図示)。或いは、線材を波線形状に加工した部分を有していても良い(不図示)。これらのいずれの形態においても、触媒用ワイヤー18Xは、メタン等の炭素源原料ガスの吹き出し方向に沿って配置されていることが好ましい。例えば、触媒用ワイヤー18Xを複数配列することで、或いは、触媒用ワイヤー18Xをメタン等の炭素源原料ガスの吹き出し方向にベクトル成分を持たせる。これによって、メタン等の炭素源原料ガスはワイヤーと接触する機会が増加する。加熱用ワイヤー18Yについても図4(b)に示した形状としても良い。
【0047】
原料ガス配管31の一端は、下部チャンバ63の底面に設けられたガス供給口66と接続されている。原料ガス配管31の他端及びその途中の分岐では、原料ガス供給管73が接続されている。図4では、原料ガス供給管73は複数設けられていて、いずれもその先端にはガス吹き出し孔77xが設けられている。原料ガス供給管73には、原料ガス配管31、ガス供給口66、流量調整器24a及びバルブ25a〜25bを介してメタン等の炭素源原料ガス33が流入される。これによりメタン等の炭素源原料ガス33は、ガス吹き出し孔77xから吹き出されるようになっている。ガス吹き出し孔77xは、いずれも、プラスチック容器11の外表面に向けられていて、その外表面のいずれの箇所にもメタン等の炭素源原料ガスを吹き付けることが可能である。そして、ガス吹き出し孔77xの出口側に、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yが配置されている。これによって、触媒用ワイヤー18Xとメタン等の炭素源原料ガスとの接触が多く生じるため、炭素源原料ガスは化学種への分解が促進させられる。また、これによって、ガス吹き出し孔77xから吹き出たメタン等の炭素源原料ガスは加熱用ワイヤー18Yと接触しやすくなるため、揮発した金属種が炭素源原料ガスの粘性流によってプラスチック容器11の表面に運ばれる。このとき、高真空中であれば、揮発した金属種は平均自由工程が長いために直進してプラスチック容器11の表面に到達するが、炭素源原料ガスの存在によって1〜100Pa程度の圧力となっているために炭素源原料ガスが粘性流となり、揮発した金属種を運ぶこととなる。したがって、揮発した金属種は立体形状のプラスチック容器11の表面に回り込みよく供給されるため、バリア膜の均一性が向上する。
【0048】
原料ガス供給管73は金属製の単管としている。第1形態の場合と同様に、冷却水を流すために二重管としても良い。また、第1形態の場合と同様のセラミック管或いはセラミック材料で表面が被覆された金属管としても良い。
【0049】
原料ガス供給管73の長さは、ガス吹き出し孔77xからプラスチック容器11の外表面までの距離L3が5〜50mmとなるように形成することが好ましい。5〜50mmの距離で均一な薄膜をプラスチック容器11の外表面に成膜することができる。距離が50mmより大きいとプラスチック容器11の外表面に薄膜が形成しにくくなり、距離が5mmより小さいと原料ガスの吹き出しができにくくなる。
【0050】
触媒用ワイヤー18Xと原料ガス供給管73との位置関係の他形態として、例えば、図3の場合と同様に、原料ガス供給管の管内にワイヤーを配置しても良い。このとき、原料ガス供給管の内径を例えば10mm以上に大きくすれば、膜の分布の均一性が向上する。原料ガス供給管の管内において触媒用ワイヤー18Xにメタン等の炭素源原料ガスを接触させることで、原料ガス供給管から分解した炭素源原料ガス由来の化学種を吹き出させることができる。触媒用ワイヤー18Xが原料ガス供給管の内部に配置されているため、ワイヤーとプラスチック容器の表面との距離を大きくとることができるので、プラスチック容器の熱変形の発生を抑制できる。
【0051】
プラスチック容器11の熱変形を防止するため、真空チャンバ60の内部又は外部に、冷却水が流される冷却管等の冷却手段29を設けて、下部チャンバ63の温度上昇を防止することが好ましい。
【0052】
触媒用ワイヤー18Xには、接続部79a,79bと配線19を介して熱触媒体用ヒータ電源20Xが接続されている。熱触媒体用ヒータ電源20Xによって触媒用ワイヤー18Xに電気を流すことで、触媒用ワイヤー18Xが発熱する。本形態においても触媒用ワイヤー18Xの作動温度は、容器の内表面にバリア膜として金属種含有DLC膜を成膜する場合と同様である。
【0053】
加熱用ワイヤー18Yには、不図示の接続部と配線を介してホットワイヤー用ヒータ電源20Yが接続されている。ホットワイヤー用ヒータ電源20Yによって加熱用ワイヤー18Yに電気を流すことで、加熱用ワイヤー18Yが発熱する。本形態においても加熱用ワイヤー18Yの作動温度は、容器の内表面にバリア膜を成膜する場合と同様である。
【0054】
また上部チャンバ65の内部空間には、真空バルブ8を介して排気管22が連通されており、図示しない排気ポンプによって真空チャンバ60の内部の反応室12の空気が排気されるようになっている。
【0055】
第1形態及び第2形態のいずれの成膜装置においても、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yは電流を流すだけで熱触媒体又はホットワイヤーとなり、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yを複数組用意すれば一度に大量のプラスチック容器に金属種含有DLC薄膜を成膜させることができる。図6は、複数のプラスチック容器の内表面に同時に金属種含有DLC薄膜を成膜するための成膜装置の概念図である。図6では一つの下部チャンバ13内で大量のプラスチック容器11を位置決めして並べ、図2と同様の触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Y及び原料ガス供給管23をプラスチック容器11のそれぞれの口部に挿入して、金属種含有DLC薄膜を形成するものである。また、図7は、複数のプラスチック容器11の外表面に同時に金属種含有DLC薄膜を成膜するための成膜装置の概念図である。図7では一つの下部チャンバ63内で大量のプラスチック容器11を位置決めして並べ、プラスチック容器11ごとにその周囲を囲むようにそれぞれ触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yを配置し、原料ガス供給管73からメタン等の炭素源原料ガスを触媒用ワイヤー18Xに接触させた後、好ましくは触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yの両方に接触させた後、プラスチック容器11に吹き付ける。ここで口部をボトル回転機構32に固定して、プラスチック容器11を回転しながらその外表面に薄膜を形成するものである。
【0056】
さらに、図8は、インラインで複数のプラスチック容器の外表面に同時に金属種含有DLC薄膜を成膜するための成膜装置の概念図であり、(a)は触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yを搬送経路に沿ってともに平行に配置した場合、(b)触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yを、間隔を開けて搬送経路に順に配置した場合、である。図8では、コンベアでプラスチック容器を、真空チャンバ内である、ボトル整列室40、排気室41、薄膜形成室42、大気リーク室43及び取出し室44の順に移動させる。真空チャンバの外は大気圧下であるが、差圧機構によって、薄膜形成室42が減圧された一定圧力に保たれている。排気室41及び大気リーク室43は、差圧機構に含まれる。
【0057】
図8(a)の薄膜形成室42には、部屋の側壁に沿って触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yがそれぞれ平行に配置されている。プラスチック容器は、真空チャンバ内の搬送経路を通過する際に、触媒用ワイヤー18X・加熱用ワイヤー18Yとプラスチック容器の表面とか所望の距離、例えば5〜50mmまで近づく。薄膜形成室42において、触媒用ワイヤー18Xに向かって、好ましくは触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yの両方に向かって、炭素源原料ガスを吹き出させ、かつ、部屋内を炭素源原料及び加熱用ワイヤー18Yに由来する金属種の蒸気で充満させ、プラスチック容器11が薄膜形成室42を通過する際に成膜を行なう。このとき、成膜された金属種含有DLC薄膜は、炭素源原料ガスに由来する化学種と加熱用ワイヤー18Yに由来する金属種が同時に蒸着されるため、DLCと金属種との複合薄膜が形成される。
【0058】
また、図8(b)の薄膜形成室42には、部屋の側壁に沿って触媒用ワイヤー18X、加熱用ワイヤー18Y、触媒用ワイヤー18Xが順に配置されている。プラスチック容器は、真空チャンバ内の搬送経路を通過する際に、触媒用ワイヤー18X・加熱用ワイヤー18Yとプラスチック容器の表面とか所望の距離、例えば5〜50mmまで近づく。薄膜形成室42において、触媒用ワイヤー18Xに向かって炭素源原料ガスを吹き出させ、また間隔を開けて、加熱用ワイヤー18Yに由来する金属種の蒸気を発生させて、プラスチック容器11が薄膜形成室42を通過する際に成膜を行なう。このとき、成膜された金属種含有DLC薄膜は、炭素源原料ガスに由来する化学種、加熱用ワイヤー18Yに由来する金属種、炭素源原料ガスに由来する化学種という順で蒸着されるため、DLCの上に金属種が堆積し、該金属種の上にさらにDLCが堆積した3層型積層薄膜が形成される。
【0059】
さらに不図示であるが、薄膜形成室の側壁に沿って触媒用ワイヤー18X、加熱用ワイヤー18Yを順に配置すれば、成膜された金属種含有DLC薄膜は、炭素源原料ガスに由来する化学種、加熱用ワイヤー18Yに由来する金属種という順で蒸着されるため、DLCの上に金属種が堆積した2層型積層薄膜となる。また、薄膜形成室の側壁に沿って加熱用ワイヤー18Y、触媒用ワイヤー18Xの順に配置すれば、成膜された金属種含有DLC薄膜は、加熱用ワイヤー18Yに由来する金属種、炭素源原料ガスに由来する化学種という順で蒸着されるため、金属種の上にDLCが堆積した2層型積層薄膜となる。
【0060】
第1形態及び第2形態のいずれの成膜装置においても、容器の形状が異なっても同一の真空チャンバを使用することができ、高周波電源が不要であり、一つの真空チャンバ内で複数の容器に成膜しうる。これにより、高周波電源を用いた成膜装置よりも装置が安価となる。
【0061】
第1形態及び第2形態のいずれの成膜装置においても、メタン等の炭素源原料ガス33が熱風となるためにプラスチック容器11が熱変形しやすいことから、容器冷却手段を設けることが好ましい。図9は容器冷却手段を説明するための概念図であり、(a)はプラスチック容器の内表面に成膜する場合、(b)はプラスチック容器の外表面に成膜する場合、である。図9(a)に示すように、熱風であるメタン等の炭素源原料ガス33がプラスチック容器11の内部に吹き付けられる第1形態の成膜装置は、プラスチック容器11の外表面に、冷却された液体若しくは気体50を当てる容器冷却手段51を有していることが好ましい。容器冷却手段51は、水等の液体にプラスチック容器11を浸漬する場合は水槽であり、水等の液体をプラスチック容器11にシャワリングをする場合はシャワーである。また冷却窒素ガス、あるいは冷却炭酸ガス等の気体をプラスチック容器11にブローをする場合はブロワーである。冷却窒素ガスは液体窒素、冷却炭酸ガスはドライアイスをそれぞれ用いることによって容易に得られる。図9(b)に示すように、熱風となるメタン等の炭素源原料ガス33がプラスチック容器11の外表面に向かって吹き付けられる第2形態の成膜装置は、プラスチック容器11の内表面に、冷却された液体若しくは気体50を当てる容器冷却手段51を有していることが好ましい。容器冷却手段51は、水等の液体にプラスチック容器11を充填する場合は液体充填器であり、冷却窒素ガス、あるいは冷却炭酸ガス等の気体をプラスチック容器11の内表面にブローをする場合はブロワーである。
【0062】
図10に図8の薄膜形成室42の他形態を示した。薄膜成膜室42の側壁には、プラスチック容器11の移動方向に沿って、原料ガス供給管23と容器冷却手段51が交互に配置されている。プラスチック容器11はコンベア(搬送経路、不図示)によって移動させられ、かつ、自転させられる。ここで、原料ガス供給管23は図3に示したタイプを用いる。容器冷却手段51は、冷却された窒素ガスを吹き付けるタイプを用いる。プラスチック容器11は、コンベアによって自転しながら移動させられる際に、原料ガス供給管23からワイヤーで活性化された炭素源原料ガスと原料ガス供給管23に支持された加熱用ワイヤーに由来する金属種を吹き付けられ、次いで、容器冷却手段51によって、冷却された窒素ガスを吹き付けられ、これらが交互に行なわれる。このとき薄膜形成が進行する。
【0063】
次に、本実施形態に係る金属種含有DLC薄膜を被覆したプラスチック容器の製造方法について説明する。図2の成膜装置100を用いれば、金属種含有DLC薄膜をプラスチック容器の内表面に被覆することが可能であり、一方、図4の成膜装置200を用いれば、金属種含有DLC薄膜をプラスチック容器の外表面に被覆することが可能である。これら2つの成膜方法は、工程が共通しているため、特に断りがない限り代表例として図2の成膜装置100を用いて、金属種含有DLC薄膜をプラスチック容器の内表面に被覆する成膜方法を説明する。なお、成膜装置100と成膜装置200を用いてプラスチック容器の内表面及び外表面の両方に金属種含有DLC薄膜を成膜してもよい。
【0064】
本実施形態に係る金属種含有DLC薄膜を被覆したプラスチック容器の製造方法は、プラスチック容器11を収容した真空チャンバ6の内部を大気圧以下の所定圧力とする圧力調整工程と、真空チャンバ6の内部に配置されている触媒用ワイヤー18Xに通電して発熱させて熱触媒体とする工程(以下、熱触媒体工程という)と、真空チャンバ6の内部に配置されている加熱用ワイヤー18Yに通電して発熱させてホットワイヤーとする工程(以下、ホットワイヤー工程という)と、真空チャンバ6の内部に炭素源原料ガスを供給し、炭素源原料ガスを熱触媒体に吹き付けて炭素源原料ガスを分解して化学種を生成させ、かつ、ホットワイヤー18Yから金属種を揮発させ、プラスチック容器11の内表面に化学種及び金属種を到達させることによって金属種含有DLC薄膜を形成する成膜工程と、を有する。
【0065】
(成膜装置への容器の装着)
まず、ベント(不図示)を開いて真空チャンバ6内を大気開放する。反応室12には、上部チャンバ15を外した状態で、下部チャンバ13の上部開口部からプラスチック容器11が差し込まれて、収容される。この後、位置決めされた上部チャンバ15が降下し、上部チャンバ15につけられた原料ガス供給管23とそれに固定された触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yがプラスチック容器の口部21からプラスチック容器11内に挿入される。そして、上部チャンバ15が下部チャンバ13にOリング14を介して当接することで、反応室12が密閉空間とされる。このとき、下部チャンバ13の内壁面とプラスチック容器11の外壁面との間隔は、ほぼ均一に保たれており、且つプラスチック容器11の内壁面と触媒用ワイヤー18X・加熱用ワイヤー18Yとの間の間隔も、ほぼ均一に保たれている。
【0066】
本発明に係る容器とは、蓋若しくは栓若しくはシールして使用する容器、またはそれらを使用せず開口状態で使用する容器を含む。開口部の大きさは内容物に応じて決める。プラスチック容器は、剛性を適度に有する所定の肉厚を有するプラスチック容器と剛性を有さないシート材により形成されたプラスチック容器を含む。本発明に係るプラスチック容器の充填物は、ビール若しくは発泡酒若しくは炭酸飲料若しくは果汁飲料若しくは清涼飲料等の飲料を挙げることができる。また、リターナブル容器或いはワンウェイ容器のどちらであっても良い。
【0067】
本発明のプラスチック容器11の樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂を例示することができる。この中で、PETが特に好ましい。
【0068】
(圧力調整工程)
次いでベント(不図示)を閉じたのち、排気ポンプ(不図示)を作動させ、真空バルブ8を開とすることにより、反応室12内の空気が排気される。このとき、プラスチック容器11の内部空間のみならずプラスチック容器11の外壁面と下部チャンバ13の内壁面との間の空間も排気されて、真空にされる。すなわち、反応室12全体が排気される。そして反応室12内が必要な圧力、例えば1〜100Pa、好ましくは10〜100Paに到達するまで減圧される。これは1Pa未満の圧力では排気時間がかかり、また、成膜速度が低下する場合があり、成膜コス卜が増加する。また、100Paより高い圧力で良いとするとプラスチック容器11内に不純物が多くなり、バリア性の高い容器を得ることができない。
【0069】
(熱触媒体工程)
次に触媒用ワイヤー18Xに通電して所定温度以上に発熱させて熱触媒体とする。所定温度とは、前述のとおり、炭素源原料ガスをメタンガスとすれば、W線を使用する場合、例えば1600〜2000℃であることが好ましく、1800〜2000℃であることがより好ましい。ニッケル‐クロム合金線であれば、例えば800〜1200℃であることが好ましく、1000〜1100℃であることがより好ましい。なお、触媒用ワイヤー18Xは、プラスチック容器11の内表面との距離が5〜50mmとなるように配置されている。
【0070】
(ホットワイヤー工程)
次に加熱用ワイヤー18Yに通電して所定温度以上に発熱させてホットワイヤーとする。ワイヤーの成分を揮発させ、反応室12内に蒸気を供給することができる。ホットワイヤーとして作動させる所定温度は、前述のとおり、蒸発源がワイヤーの材料によって異なり、Moであれば、例えば1000〜2600℃であることが好ましく、1200〜2400℃であることがより好ましい。Pdであれば、例えば1000〜1500℃であることが好ましく、1100〜1200℃であることがより好ましい。Agであれば、例えば700〜900℃であることが好ましく、800〜840℃であることがより好ましい。炭素鋼であれば、例えば1100〜1400℃であることが好ましく、1200〜1300℃であることがより好ましい。Tiであれば、例えば1300〜1600℃であることが好ましく、1400〜1550℃であることがより好ましい。Zrであれば、例えば1500〜1800℃であることが好ましく、1500〜1650℃であることがより好ましい。Hfであれば、例えば1500〜2200℃であることが好ましく、1800〜2000℃であることがより好ましい。なお、加熱用ワイヤー18Yは、プラスチック容器11の内表面との距離が5〜50mmとなるように配置されている。
【0071】
(成膜工程)
この後、ガス流量調整器24aでメタン等の炭素源原料ガスを所定流量供給する。メタン等の炭素源原料ガスは、原料ガス供給管23を経て、所定の圧力に減圧されたプラスチック容器11内において、ガス吹き出し孔17xから触媒用ワイヤー18Xに向けて、好ましくは触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yの両方に向けて吹き出される。そして、触媒用ワイヤー18Xによってメタン等の炭素源原料ガスは、活性の高い化学種に分解され、プラスチック容器11の内表面に接触させられる。同時に、ホットワイヤー18Yから揮発した金属種が化学種と共にプラスチック容器11の内表面に接触させられる。そして、プラスチック容器11の内表面には金属種含有DLC薄膜が形成させる。
【0072】
本発明において、炭素源原料ガスとは、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどのアルカン系ガス類、エチレン、プロピレン、ブチンなどのアルケン系ガス類、ブタジエン、ペンタジエンなどのアルカジエン系ガス類、アセチレン、メチルアセチレンなどのアルキン系ガス類、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレンなどの芳香族炭化水素ガス類、シクロプロパン、シクロヘキサンなどのシクロアルカン系ガス類、シクロベンテン、シクロヘキセンなどのシクロアルケン系ガス類、メタノール、エタノールなどのアルコール系ガス類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系ガス類、フォルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド系ガス類がある。この中で、メタンガスが好ましい。
【0073】
また、原料ガスには、水素、酸素、窒素、水蒸気、アンモニア又はCFのように重合はしないが化学反応にあずかるガスが、発熱した熱触媒体18Yが存在する反応室12に導入されることでガスバリア薄膜の膜質を上げることができる。
【0074】
原料ガスと共に希釈ガスを混合しても良い。例えば、アルゴンやヘリウム等の不活性ガスは成膜時の化学反応に不活性であり、原料ガスの濃度調整や真空チャンバ内の圧力調整に用いることができる。
【0075】
本実施形態では、成膜時に、プラスチック容器11に成膜面に紫外線を照射しても良い(紫外線照射手段は不図示)。プラスチック容器11の加熱、活性化などに活用できる。
【0076】
本品実施形態では、炭素源原料ガス由来の化学種と加熱用ワイヤー由来の金属種の供給方法によって、大きく分類すると例えば4つの形態がある。まず、第1形態として、成膜工程において、プラスチック容器11の表面に化学種及び金属種を同時に到達させることによって、DLCと金属種との複合薄膜を形成する形態がある。第1形態によれば、DLCと金属種とがナノ〜ミクロンオーダーで均一に混ざり合っている複合薄膜が得られる。DLCと金属種との複合薄膜は、金属種による透光/遮光性や呈色を付与することができる。
【0077】
ここで、金属種含有DLC薄膜におけるDLCとは、炭素源原料ガスが熱触媒体によって活性の高い化学種に分解され、この化学種がプラスチック容器の表面に到達した際にDLCとして蒸着した析出物である。また、金属種とは、加熱用ワイヤーが発熱することによってその成分が蒸発し、数個〜数百個の金属クラスター又はそれが反応室12内の酸素と結合した金属酸化物微粒子体からなる蒸気のことであり、また、金属種含有DLC薄膜における金属種とは、その蒸気がプラスチック容器の表面に到達した際に金属又は金属酸化物として蒸着した析出物である。本発明では、加熱用ワイヤーに由来する金属又は金属酸化物を総称して金属種と表現した。
【0078】
次に第2形態として、成膜工程において、プラスチック容器11の表面に、化学種、金属種の順に到達させることによって、DLCの上に金属種が堆積した2層型積層薄膜を形成する形態がある。形成方法としては、化学種と金属種の供給タイミングをずらすことによって可能であり、例えば、前述したとおり、図8(b)と類似する触媒用ワイヤー、加熱用ワイヤーが搬送経路に沿って順に配置された連続製造装置の搬送経路に、プラスチック容器を順次運搬・成膜することで可能である。DLCの上に金属種が堆積した2層型積層薄膜は、DLC層が密着層としての役割をするので密着性が高い。また、金属種による透光/遮光性や呈色を付与することができる。また、本形態はプラスチック容器の外表面に成膜する場合において適している。
【0079】
次に第3形態として、成膜工程において、プラスチック容器11の表面に、金属種、化学種の順に到達させることによって、金属種の上にDLCが堆積した2層型積層薄膜を形成する形態がある。形成方法としては、金属種と化学種との供給タイミングをずらすことによって可能であり、例えば、前述したとおり、図8(b)と類似する加熱用ワイヤー、触媒用ワイヤーが搬送経路に沿って順に配置された連続製造装置の搬送経路に、プラスチック容器を順次運搬・成膜することで可能である。金属種の上にDLCが堆積した2層型積層薄膜は、化学的に安定なDLC層が最表層にあるため、化学的安定性が高い。したがって、金属種の溶出防止効果がある。また、金属種による透光/遮光性や呈色を付与することができる。
【0080】
次に第4形態として、成膜工程において、プラスチック容器11の表面に、化学種、金属種、化学種の順に到達させることによって、DLCの上に金属種が堆積し、金属種の上にさらにDLCが堆積した3層型積層薄膜を形成する形態がある。形成方法としては、化学種と金属種と化学種との供給タイミングをずらすことによって可能であり、例えば、前述したとおり、図8(b)の装置のとおり、触媒用ワイヤー、加熱用ワイヤー、触媒用ワイヤーが搬送経路に沿って順に配置された連続製造装置の搬送経路に、プラスチック容器を順次運搬・成膜することで可能である。3層型積層薄膜は、下層のDLC層が密着層としての役割を果たし、かつ、最表層のDLC層が保護層の役割を果たすため、密着性が高く、かつ、化学的安定性が高い。したがって、金属種の溶出防止効果がある。また、金属種による透光/遮光性や呈色を付与することができる。なお、本発明では、第1〜第4形態に限定されず、4層以上の積層薄膜を形成してもよい。
【0081】
ここで金属種がモリブデン、炭素鋼の場合は、青色に呈色させることができる。金属種がパラジウム、銀の場合は、灰色に呈色させることができる。
【0082】
(成膜の終了)
薄膜が所定の厚さに達すると、メタン等の炭素源原料ガス33の供給を止め、反応室12内を再度排気した後、図示していないリークガスを導入して、反応室12を大気圧にする。この後、上部チャンバ15を開けてプラスチック容器11を取り出す。薄膜の膜厚は、5〜100nmとなるようにするのが好ましい。上記実施形態によれば、成膜速度は、例えば、上限が2.5〜4.0nm/秒と高速である。金属種含有DLC薄膜を被覆したプラスチック容器の酸素透過度を測定したところ、未コートのプラスチック容器と比較して、3分の1〜18分の1に低下し、バリア性の向上が確認できた。
【0083】
なお、プラスチック容器11の外表面に金属種含有DLC薄膜を成膜する場合には、膜の均一性を高めるために、ボトル回転機構32によってプラスチック容器11を回転させた状態で成膜を行なうことが好ましい。
【0084】
次に、本実施形態に係る金属種含有DLC薄膜を被覆したプラスチック容器の製造方法において、量産を行なう形態を説明する。本実施形態に係る金属種含有DLC薄膜を被覆したプラスチック容器の製造方法では、圧力調整工程において、大気圧以下の所定圧力(例えば1〜100Pa)とされた真空チャンバ6の内部にプラスチック容器11が収容された状態となるが、この状態とするために、プラスチック容器11が、真空チャンバ6内に差圧機構を介して搬入される工程を追加する。搬送経路にはプラスチック容器11が次々と所定間隔で連続的に搬送されるため、真空チャンバとしてはバッチタイプよりも、例えば図8に示される差圧機構を有するタイプを使用することが好ましい。そして、触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yとにプラスチック容器11の表面が接触せず、かつ、プラスチック容器11が、真空チャンバ内の搬送経路に設置された触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yに対してプラスチック容器11の表面が所望の距離(例えば5〜50mm)まで近づくように、搬送経路上を搬送される工程を追加する。さらに、成膜を終えたプラスチック容器を取り出す工程、つまり、プラスチック容器11が、真空チャンバ外へ差圧機構を介して搬出される工程をさらに追加する。上記工程を追加することによって、効率的に金属種含有DLC薄膜を被覆したプラスチック容器を量産することが可能となる。
【実施例】
【0085】
(実施例1)
図2に示した成膜装置100を用いて、プラスチック容器11として、丸型500mlのPETボトルの内表面に成膜を行なった。容器壁の肉厚は約0.3mmであった。触媒用ワイヤー18Xとしてタングステンワイヤーを用い、加熱用ワイヤー18Yとしてモリブデンワイヤーを用いた。炭素源原料ガスとしてメタンを用い、80sccmを供給した。触媒用ワイヤー18X・加熱用ワイヤー18Yとボトルの内側の底面との距離を30mmとした。触媒用ワイヤー18X・加熱用ワイヤー18Yとボトルの内側の側面との距離は約30mmとした。触媒用ワイヤー18Xに直流電流を印加し、2000℃の熱触媒体とした。加熱用ワイヤー18Yに直流電流を印加し、2100℃のホットワイヤーとした。成膜時の真空チャンバ6内の圧力を6Paとした。成膜時間は10秒とした。化学種と金属種とを同時にプラスチック表面に到達させた。得られた金属種含有DLC薄膜(DLCと金属種との複合薄膜)を被覆したPETボトルを実施例1とした。実施例1について、次のとおり評価を行なった。
【0086】
(評価方法)
(1)酸素透過度
この容器の酸素透過度は、Modern Control社製 Oxtran 2/20を用いて、23℃、90%RHの条件にて測定し、窒素ガス置換開始から72時間後の測定値を記載した。
(2)膜厚
DLCの膜厚は、Veeco社DEKTAK3を用いて測定した。
【0087】
実施例1について、酸素透過度は、0.0035cc/容器/日であった。膜厚は25nmであった。薄膜は青色を呈していた。製造条件と評価結果を表1にまとめた。
【表1】

【0088】
(実施例2)
加熱用ワイヤーとして、パラジウムワイヤーを用い、1200℃とした以外は実施例1と同様に成膜を行ない、実施例2とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0089】
(実施例3)
触媒用ワイヤーとして、ニッケル‐クロム合金ワイヤーを用い、1000℃とし、成膜時間を40秒とした以外は実施例1と同様に成膜を行ない、実施例3とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0090】
(実施例4)
加熱用ワイヤーとして、パラジウムワイヤーを用い、1200℃とし、成膜時間を109秒とした以外は実施例3と同様に成膜を行ない、実施例4とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0091】
(実施例5)
図2に示した成膜装置100を用いて、実施例1と同様のプラスチック容器の内表面に成膜を行なった。加熱用ワイヤー18Yとしてモリブデンワイヤーを用いた。加熱用ワイヤー18Yとボトルの内側の底面との距離を30mmとした。加熱用ワイヤー18Yとボトルの内側の側面との距離は約30mmとした。加熱用ワイヤー18Yに直流電流を印加し、2100℃のホットワイヤーとした。成膜時の真空チャンバ6内の圧力を6Paとし、まず、金属種のみを蒸着させた。成膜時間は20秒とした。次に、触媒用ワイヤー18Xとしてタングステンワイヤーを用い、炭素源原料ガスとしてメタンを用い、80sccmを供給した。触媒用ワイヤー18Xとボトルの内側の底面との距離を30mmとした。触媒用ワイヤー18Xとボトルの内側の側面との距離は約30mmとした。触媒用ワイヤー18Xに直流電流を印加し、2000℃の熱触媒体とした。成膜時の真空チャンバ6内の圧力を6Paとし、化学種のみを蒸着させた。成膜時間は5秒とした。以上の操作によって、金属種、化学種の順にプラスチック表面に到達させて成膜を行なった。得られた金属種含有DLC薄膜(金属種の上にDLCが堆積した2層型積層薄膜)を被覆したPETボトルを実施例5とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0092】
(実施例6)
加熱用ワイヤー18Yとしてパラジウムワイヤーを用い、1200℃のホットワイヤーとし、成膜時間を100秒として金属種を蒸着させた以外は実施例5と同様に成膜を行ない、実施例6とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0093】
(実施例7)
触媒用ワイヤー18Xしてニッケル‐クロム合金ワイヤーを用い、1000℃の熱触媒体とし、成膜時間を120秒として化学種を蒸着させた以外は実施例5と同様に成膜を行ない、実施例7とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0094】
(実施例8)
加熱用ワイヤー18Yとしてパラジウムワイヤーを用い、1200℃のホットワイヤーとし、成膜時間を100秒として金属種を蒸着させた以外は実施例7と同様に成膜を行ない、実施例8とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0095】
(実施例9)
図2に示した成膜装置100を用いて、実施例1と同様のプラスチック容器の内表面に成膜を行なった。触媒用ワイヤー18Xとしてタングステンワイヤーを用い、炭素源原料ガスとしてメタンを用い、80sccmを供給した。触媒用ワイヤー18Xとボトルの内側の底面との距離を30mmとした。触媒用ワイヤー18Xとボトルの内側の側面との距離は約30mmとした。触媒用ワイヤー18Xに直流電流を印加し、2000℃の熱触媒体とした。成膜時の真空チャンバ6内の圧力を6Paとし、化学種のみを蒸着させた。成膜時間は5秒とした。次に加熱用ワイヤー18Yとしてモリブデンワイヤーを用いた。加熱用ワイヤー18Yとボトルの内側の底面との距離を30mmとした。加熱用ワイヤー18Yとボトルの内側の側面との距離は約30mmとした。加熱用ワイヤー18Yに直流電流を印加し、2100℃のホットワイヤーとした。成膜時の真空チャンバ6内の圧力を6Paとし、金属種のみを蒸着させた。成膜時間は20秒とした。以上の操作によって、化学種、金属種の順にプラスチック表面に到達させて成膜を行なった。得られた金属種含有DLC薄膜(DLCの上に金属種が堆積した2層型積層薄膜)を被覆したPETボトルを実施例9とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0096】
(実施例10)
加熱用ワイヤー18Yとしてパラジウムワイヤーを用い、1200℃のホットワイヤーとし、成膜時間を100秒として金属種を蒸着させた以外は実施例9と同様に成膜を行ない、実施例10とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0097】
(実施例11)
触媒用ワイヤー18Xしてニッケル‐クロム合金ワイヤーを用い、1000℃の熱触媒体とし、成膜時間を120秒として化学種を蒸着させた以外は実施例9と同様に成膜を行ない、実施例11とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0098】
(実施例12)
加熱用ワイヤー18Yとしてパラジウムワイヤーを用い、1200℃のホットワイヤーとし、成膜時間を100秒として金属種を蒸着させた以外は実施例11と同様に成膜を行ない、実施例12とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0099】
(実施例13)
図2に示した成膜装置100を用いて、実施例1と同様のプラスチック容器の内表面に成膜を行なった。触媒用ワイヤー18Xとしてタングステンワイヤーを用い、炭素源原料ガスとしてメタンを用い、80sccmを供給した。触媒用ワイヤー18Xとボトルの内側の底面との距離を30mmとした。触媒用ワイヤー18Xとボトルの内側の側面との距離は約30mmとした。触媒用ワイヤー18Xに直流電流を印加し、2000℃の熱触媒体とした。成膜時の真空チャンバ6内の圧力を6Paとし、化学種のみを蒸着させた。成膜時間は5秒とした。次に加熱用ワイヤー18Yとしてモリブデンワイヤーを用いた。加熱用ワイヤー18Yとボトルの内側の底面との距離を30mmとした。加熱用ワイヤー18Yとボトルの内側の側面との距離は約30mmとした。加熱用ワイヤー18Yに直流電流を印加し、2100℃のホットワイヤーとした。成膜時の真空チャンバ6内の圧力を6Paとし、金属種のみを蒸着させた。成膜時間は20秒とした。次に、第1層となる最初の化学種の蒸着と同条件にて、再度化学種のみを蒸着させた。以上の操作によって、化学種、金属種、化学種の順にプラスチック表面に到達させて成膜を行なった。得られた金属種含有DLC薄膜(DLCの上に金属種が堆積し、該金属種の上にさらにDLCが堆積した3層型積層薄膜)を被覆したPETボトルを実施例13とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0100】
(実施例14)
加熱用ワイヤー18Yとしてパラジウムワイヤーを用い、1200℃のホットワイヤーとし、成膜時間を100秒として金属種を蒸着させた以外は実施例13と同様に成膜を行ない、実施例14とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0101】
(実施例15)
触媒用ワイヤー18Xしてニッケル‐クロム合金ワイヤーを用い、1000℃の熱触媒体とし、成膜時間を120秒として、第1層、第3層ともに化学種を蒸着させた以外は実施例13と同様に成膜を行ない、実施例15とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0102】
(実施例16)
加熱用ワイヤー18Yとしてパラジウムワイヤーを用い、1200℃のホットワイヤーとし、成膜時間を100秒として金属種を蒸着させた以外は実施例15と同様に成膜を行ない、実施例16とした。成膜条件と結果を表1に示した。
【0103】
(実施例17〜32)
図2に示した成膜装置100の代わりに、図4に示した成膜装置200を用いて、実施例1〜16と同様の金属種含有DLC薄膜をプラスチック容器の外表面に成膜し、それぞれ実施例17〜32とした。
【0104】
(比較例1)
未コートのプラスチック容器の酸素透過性は0.035cc/容器/日であった。
【0105】
金属種としてMoを蒸着した場合には、薄膜の色は青色を呈した。また、金属種としてPdを蒸着した場合には、薄膜の色は灰色を呈した。ガスバリア性はいずれの実施例も向上していた。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によって得られたガスバリア性プラスチック容器は、ビール等のアルコール飲料又は清涼飲料などに適した、ガスバリア性を有する飲料用プラスチック容器である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】従来のDLC膜の形成装置の構成図である。
【図2】第1形態に係る成膜装置の一形態を示す概略図であり、(a)はワイヤーが直線形状の場合、(b)はワイヤーがコイルばね形状の場合、(c)はワイヤーがジグザク線形状の場合、である。
【図3】ワイヤーと原料ガス供給管との位置関係の他形態を示した。
【図4】第2形態に係る成膜装置の一形態を示す概略図であり、(a)はワイヤーが線状の場合、(b)はワイヤーがコイルばね形状の場合、である。
【図5】A-A’断面図を示した。
【図6】複数のプラスチック容器の内表面に同時にガスバリア薄膜を成膜するための装置の概念図である。
【図7】複数のプラスチック容器の外表面に同時にガスバリア薄膜を成膜するための装置の概念図である。
【図8】インラインで複数のプラスチック容器の外表面に同時に金属種含有DLC薄膜を成膜するための成膜装置の概念図であり、(a)は触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yを搬送経路に沿ってともに平行に配置した場合、(b)触媒用ワイヤー18Xと加熱用ワイヤー18Yを、間隔を開けて搬送経路に順に配置した場合、である。
【図9】容器冷却手段を説明するための概念図であり、(a)はプラスチック容器の内表面に成膜する場合、(b)はプラスチック容器の外表面に成膜する場合、である。
【図10】図8の薄膜形成室の他形態を示した。
【符号の説明】
【0108】
1,12,反応室
1A,炭素源ガスの導入口
1B,排気口
2,外部電極
3,内部電極
4,高周波電源
5,11,プラスチック容器
6,60,真空チャンバ
8,真空バルブ
13,63,下部チャンバ
14,Oリング
15,65,上部チャンバ
16,66,ガス供給口
17,原料ガス流路
17x,77x,ガス吹き出し孔
18X,触媒用ワイヤー
18Y,加熱用ワイヤー
19,配線
20X,熱触媒体用ヒータ電源
20Y,ホットワイヤー用ヒータ電源
21,プラスチック容器の口部
22,排気管
23,73,原料ガス供給管
24a,流量調整器
25a,25b,バルブ
26a,26b,79a,79b,接続部
27,冷却水流路
28,真空チャンバの内面
29,冷却手段
30,透明体からなるチャンバ
31,原料ガス配管
32,ボトル回転機構
33,34,メタン等の炭素源原料ガス
35,絶縁セラミックス部材
36,伸縮機構付の絶縁セラミックス製の内管
40,ボトル整列室
41,排気室
42,薄膜形成室
43,大気リーク室
44,取出し室
50,冷却された液体若しくは気体
51,容器冷却手段
100,200,成膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック容器を収容した真空チャンバの内部を大気圧以下の所定圧力とする圧力調整工程と、
前記真空チャンバの内部に配置されている触媒用ワイヤーに通電して発熱させて熱触媒体とする工程と、
前記真空チャンバの内部に配置されている加熱用ワイヤーに通電して発熱させてホットワイヤーとする工程と、
前記真空チャンバの内部に炭素源原料ガスを供給し、前記炭素源原料ガスを前記熱触媒体に吹き付けて前記炭素源原料ガスを分解して化学種を生成させ、かつ、前記ホットワイヤーから金属種を揮発させ、前記プラスチック容器の内表面又は外表面の少なくともいずれか一方に前記化学種及び前記金属種を到達させることによって金属種含有DLC薄膜を形成する成膜工程と、
を有することを特徴とするバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【請求項2】
前記触媒用ワイヤーがタングステン又はニッケル‐クロム合金を主成分とするワイヤーであり、かつ、前記加熱用ワイヤーがモリブデン、パラジウム、銀、炭素鋼、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを含有するワイヤーであることを特徴とする請求項1に記載のバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【請求項3】
前記成膜工程において、前記プラスチック容器の表面に前記化学種及び前記金属種を同時に到達させることによって、DLCと金属種との複合薄膜を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【請求項4】
前記成膜工程において、前記プラスチック容器の表面に、前記化学種、前記金属種の順に到達させることによって、DLCの上に金属種が堆積した2層型積層薄膜を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【請求項5】
前記成膜工程において、前記プラスチック容器の表面に、前記金属種、前記化学種の順に到達させることによって、金属種の上にDLCが堆積した2層型積層薄膜を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【請求項6】
前記成膜工程において、前記プラスチック容器の表面に、前記化学種、前記金属種、前記化学種の順に到達させることによって、DLCの上に金属種が堆積し、該金属種の上にさらにDLCが堆積した3層型積層薄膜を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【請求項7】
前記プラスチック容器が、前記真空チャンバ内に差圧機構を介して搬入される工程と、
前記プラスチック容器が、前記真空チャンバ内の搬送経路に設置された前記触媒用ワイヤー及び前記加熱用ワイヤーに接触せずに前記搬送経路上を搬送される工程と、
前記プラスチック容器が、前記真空チャンバ外へ差圧機構を介して搬出される工程と、をさらに有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載のバリア膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【請求項8】
プラスチック容器を収容する真空チャンバと、
該真空チャンバを真空引きする排気ポンプと、
前記真空チャンバの内部に配置されている触媒用ワイヤーと、
該触媒用ワイヤーに電力を供給する熱触媒体用ヒータ電源と、
前記真空チャンバの内部に配置されている加熱用ワイヤーと、

該加熱用ワイヤーに電力を供給するホットワイヤー用ヒータ電源と、
前記真空チャンバ内に配置されたプラスチック容器の内部空間又は外部空間或いはその両方の空間に原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
を有することを特徴とするバリア膜被覆プラスチック容器の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−127054(P2008−127054A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313511(P2006−313511)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】