説明

バンドクリップ

【課題】 車体パネルからの取り外しが容易なバンドクリップを提供する。
【解決手段】 係合孔101が形成された車体パネル100にワイヤハーネス110を固定するバンドクリップ10であって、バンド挿通孔21が形成されたクリップ本体部11と、基端部12Cがクリップ本体部に連結されるともに、先端部12Dがバンド挿通孔21に挿通されるバンド部12と、クリップ本体部11に突設され、係合孔101に突入するパネル係合部13と、基材係合部13に設けられた弾性片51と、弾性片51に突設され、係合孔101と係合する抜止爪部52と、バンド部12に設けられ、バンド部12が挿通孔21に挿通された状態から挿通孔21に対して抜去方向に移動した場合に、抜止爪部52と係合孔101との係合を解除する方向に弾性片51を押圧する押圧突片33とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係合孔が形成された基材に線状部材を固定するバンドクリップに係り、詳しくは基材からの取り外しが容易なバンドクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、ワイヤハーネス(線状部材)を車体パネル(基材)の所定の位置に固定するために、バンドクリップが一般的に使用されている。バンドクリップは、本体部と、バンド部と、車体係止部とを備え、バンド部がワイヤハーネスを抱持するとともに、車体係止部が車体パネルに形成された係合孔に係合することによって、ワイヤハーネスを車体パネルに固定する(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に係るバンドクリップでは、本体部に第1貫通孔と第2貫通孔とを備え、車体パネルの係合孔と係合する車体係止部の係合爪の一端が第2貫通孔内に突入している。この構成によれば、第2貫通孔にバンド部が挿通された状態では、バンド部が可撓性を有する係合爪の傾倒を規制し、係合爪と車体パネルの係合孔との係合を強固にする。一方、第2貫通孔にバンド部が挿通されていない状態では、係合爪が傾倒自在となるため、車体係止部の車体パネルの係合孔への挿入および抜去が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−324059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にかかるバンドクリップを車体パネルから抜去する場合には、最初にバンド部を第2貫通孔から抜き出して係合爪の傾倒を可能にし、次に車体係止部を車体パネルの係合孔から抜き出すという2ステップの操作が必要になり、作業負荷が大きいという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、基材からの取り外しが容易なバンドクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明は、係合孔(101)が形成された基材(100)に線状部材(110)を固定するバンドクリップ(10)であって、バンド挿通孔(21)が形成されたクリップ本体部(11)と、一端(12C)が前記クリップ本体部に連結されるとともに、他端(12D)が前記バンド挿通孔に挿通され、前記線状部材に巻き掛けられる可撓性を有するバンド部(12)と、前記クリップ本体部に突設され、前記係合孔に突入する基材係合部(13)と、前記基材係合部に設けられた弾性片(51)と、前記弾性片に突設され、前記係合孔と係合する抜止爪部(52)と、前記バンド部に設けられ、前記バンド部が前記挿通孔に挿通された状態から前記挿通孔に対して抜去方向に移動した場合に、前記抜止爪部と前記係合孔との係合を解除する方向に前記弾性片を押圧する押圧部(33、32A)とを有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、バンドクリップに保持された線状部材に、基材から引き離す方向に所定の力を加えるだけで、バンドクリップを基材から抜去することができる。線状部材に基材から引き離す方向の所定の力が加わると、バンド部がバンド挿通孔から抜去される方向に引っ張られて移動し、この移動によって押圧部が弾性片を押圧し、抜止爪部と係合孔との係合が解除され、基材係合部が係合孔から抜去される。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記押圧部は、前記バンド部に突設された弾性を有する突片(33)であることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、簡素な構成で押圧部を構成することができる。また、突片は弾性変形が可能であるため、バンド挿通孔を容易に通過することができる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記クリップ本体部は、前記突片の先端部(33A)を前記弾性片に導くガイド部(50)を有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、突片が弾性片を確実に押圧することができる。
【0013】
第4の発明は、第1の発明において、前記押圧部は、前記バンド部に形成された押圧孔(32)の側壁(32A)であり、前記弾性片は、一端が前記基材係合部に連結される一方、他端(51A)が前記バンド挿通孔内に延出していることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、簡素な構成で押圧部を構成することができる。また、押圧部は、バンド挿通孔を容易に通過することができる。
【0015】
第5の発明は、第1〜第4の発明において、前記バンド挿通孔は、前記基材係合部の前記係合孔に対する挿入方向と概ね直交する方向に延在し、前記弾性片は、前記基材係合部における前記バンド部の抜去方向と相反する側の側部(42)に設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、バンド部が抜去方向に引っ張られると、基材係合部が係合孔に押圧されてバンドクリップが回転し、抜止爪部が設けられた部分から係合孔の外部へと離脱するため、基材係合部の係合孔からの抜去が容易になる。
【0017】
第6の発明は、第5の発明において、前記基材係合部は、前記弾性片が設けられた部分から先端にかけて側面(42)が弧状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、バンド部の抜去方向に力が加わることによってバンドクリップが回転する際に、基材係合部と係合孔との接触が避けられ、バンドクリップが円滑に抜去される。
【0019】
第7の発明は、第1〜第6の発明において、前記バンド部は、長手方向に列設された複数の凹部(31)を備え、前記クリップ本体部は、一端が前記クリップ本体部に連結されるともに、他端(23A)が前記バンド挿通孔の外部へと延出し、その中間部に前記バンド部の前記凹部に係合する凸部(24)を備えた弾性を有するバンド保持片(23)を有することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、バンド挿通孔より突出した前記バンド保持片の端部を操作することによって、バンド保持片とバンド部との係合を解除することができる。そのため、小さな力でバンド部をバンド挿通孔から抜去することができる。
【0021】
第8の発明は、第1の発明において、前記押圧部は、前記バンド部にその長手方向に所定間隔をおいて複数個列設された係止爪部(341)であり、前記弾性片(365)は、一端が前記基材係合部に連結される一方、他端が前記バンド挿通孔(370)へと延出し、前記バンド挿通孔内に突出するバンド係止爪部(371)を備え、前記バンド係止爪部は、前記バンド部が前記バンド挿通孔内に挿通された状態で前記押圧部に係合し、前記弾性片は、前記バンド部の前記バンド挿通孔からの抜去方向への変位に対して、前記バンド係止爪部を介して前記バンド部に抗力を与える一方、前記バンド部の変位に応じて変位し、前記抜止爪部と前記係合孔との係合を解除することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、バンド部がバンド挿通孔に挿通された状態で、弾性片に近接した位置に押圧部が常に存在する。これにより、弾性片を押圧するために必要なバンド部の抜去方向への変位距離(引き抜き長さ)を短くすることができる。また、押圧部がバンド部の長手方向に複数個列設されているため、バンド部で線状部材を緊締した後に、バンド挿通孔を通過した余剰なバンド部を切除しても押圧部が失われることがない。
【0023】
第9の発明は、第8の発明において、前記弾性片は、その基端部が前記基材係合部の先端部に連結され、その先端部が前記クリップ本体部側へと延びる第1部分(366)と、その基端部が前記第1部分の先端に連結され、その先端部が前記バンド挿通孔の孔壁の一部を画成するとともに前記バンド挿通孔に沿って延びる第2部分(367,368)とを備え、前記抜止爪部(372)は、前記第1部分に突設され、前記バンド係止爪部は、前記第2部分に突設されていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、簡素な構成で抜止爪部およびバンド係止爪部を備えた弾性片を構成することができる。
【0025】
第10の発明は、第9の発明において、前記第2部分は、弾性変形可能な屈曲部(374)を備えることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、第2部分が屈曲可能になり、バンド挿通孔に対して変位可能になる。これにより、バンド部をバンド挿通孔へ挿入するときに、バンド係止爪部がバンド部および押圧部を避けることができる。
【0027】
第11の発明は、第9または第10の発明において、前記第2部分の前記先端部は、前記バンド挿通孔の軸線方向において、前記バンド挿通孔の外方へと延出していることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、使用者が第2部分の先端部を把持することが可能になり、バンド係止爪部と押圧部との係合を手動で解除することができる。
【0029】
第12の発明は、第8〜第11の発明において、前記クリップ本体部は、前記バンド挿通孔内に突出し、前記バンド部が前記バンド挿通孔内に挿通された状態で前記押圧部に係合する補助爪(351,355)を有することを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、補助爪は、バンド部の抜去方向への変位に対して抗力を与えることができ、バンド部の抜去方向への変位に必要な荷重を調節することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上の構成のバンドクリップは、バンドクリップに保持された線状部材に、基材から引き離す方向に所定の力を加えるだけで、バンドクリップを基材から抜去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態に係るバンドクリップを示す斜視図
【図2】第1実施形態に係るバンドクリップを示す斜視図
【図3】第1実施形態に係るバンドクリップを示す断面図
【図4】第1実施形態に係るバンドクリップがワイヤハーネスを車体パネルに固定した状態を示す断面図
【図5】第1実施形態に係るバンドクリップが車体パネルから抜去される際の動作を示す断面図
【図6】第2実施形態に係るバンドクリップを示す断面図
【図7】第2実施形態に係るバンドクリップがワイヤハーネスを車体パネルに固定した状態を示す断面図
【図8】第2実施形態に係るバンドクリップが車体パネルから抜去される際の動作を示す断面図
【図9】第3実施形態に係るバンドクリップを示す斜視図
【図10】第3実施形態に係るバンドクリップを示す斜視図
【図11】第3実施形態に係るバンドクリップを示す側面図
【図12】第3実施形態に係るバンドクリップを示す側面図
【図13】図11のXIII―XIII断面図
【図14】第3実施形態に係るバンドクリップがワイヤハーネスを車体パネルに固定した状態を示す断面図
【図15】第3実施形態に係るバンドクリップが車体パネルから抜去される際の動作を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態を詳細に説明する。第1実施形態に係るバンドクリップ10は、自動車の車体パネル(基材)100の所定の位置に、ワイヤハーネス(線状部材)110を固定するために用いられる。以下の説明では、図1中に示す座標軸を基準として説明する。なお、この座標軸は実施形態を説明するために使用するものであり、バンドクリップの使用状態に応じて方向は適宜変更される。
【0034】
<バンドクリップの構成>
図1〜図3に示すように、バンドクリップ10は、クリップ本体部11と、バンド部12と、パネル係合部(基材係合部)13とを主要構成要素として備えている。バンドクリップ10は、樹脂材料を射出成形することによって形成され、クリップ本体部11、バンド部12、パネル係合部13は一体に形成されている。
【0035】
クリップ本体部11は、略直方体状をなし、その中央部には左右方向に貫通するバンド挿通孔21が形成されている。バンド挿通孔21の上壁には、左右方向に延在し、両端がクリップ本体部11の左右側壁に到る溝22が凹設されている。溝22の左端における底部には、下方に向けて向けて突出した後、左右方向右側へと屈曲して溝22内を右方へと延出する片持ち梁状のバンド保持片23が設けられている。
【0036】
バンド保持片23の先端部23Aは、弾性変形可能であり、溝22に結合された基端を基準(揺動中心)として撓むことができる。また、バンド保持片23の先端部23Aは、クリップ本体部11の右側壁から突出している。そのため、手動操作によって先端部23Aを上下させることによって、バンド保持片23を揺動させることができる。バンド保持片23は、長手方向における中間部に、下方すなわちバンド挿通孔21内へと突出する爪部24を備えている。爪部24は、左側部に左方かつ下方を向く傾斜面24Aを備え、右側部に右方向く(上下方向に延在する)逆止面24Bを備えている。
【0037】
バンド部12は、表面12Aと裏面12Bと有する扁平な帯状をなし、可撓性を有している。バンド部12は、その基端部12Cがクリップ本体部11の上面に連結されており、その先端部12Dがバンド挿通孔21の左端側から右端側へと挿通可能になっている。バンド部12の表面12Aは、バンド部12がバンド挿通孔21に挿通された状態で上方を向く面であり、この挿通された状態において、バンド保持片23の爪部24と係合する凹部31が長手方向に沿って複数列設されている。各凹部31は、長手方向における先端部12D側に長手方向と直交する規制壁31Aを備え、長手方向における基端部12C側に外側を向くように緩やかに傾斜した傾斜壁31Bを備えている。
【0038】
バンド部12は、先端部12Dがバンド挿通孔21に挿通された状態で環構造120を形成する。この環構造120によって囲まれた空間121に被固定部材としてのワイヤハーネス110を抱持する。すなわち、バンド部12がワイヤハーネス110に巻き掛けられた後、先端部12Dがバンド挿通孔21に挿通されることによって、ワイヤハーネス110がバンド部12に抱持される。ワイヤハーネス110が複数本である場合には、複数本のワイヤハーネス110はバンド部12によって一体に結束される。
【0039】
図2および図3に示すように、バンド部12の凹部31が形成された部分よりも先端部12D側の部分には、表面12Aから裏面12Bにかけて貫通する貫通孔32が形成されている。貫通孔32の先端部12D側の部分には押圧突片33が突設されている。押圧突片33は、片持ち梁状をなし、裏面12B側かつ基端部12C側へとバンド部12に対して所定の角度を有して突出した後、先端部33Aがバンド部12と平行に基端部12C側に延びている。また、押圧突片33は、弾性変形可能となっている。
【0040】
パネル係合部13は、クリップ本体部11の下面11Aに下向きに突設されている。パネル係合部13は、その左側部に上下方向に延在する平板状の左側壁41と、左側壁41の下端から右方かつ上方へと湾曲しつつクリップ本体部11の下面11Aへと到る右側壁42と、左側壁41と右側壁42と一端同士を連結する補強壁43と、クリップ本体部11の下面11Aと右側壁42の内面とを連結すべく上下方向に延在する支持壁44とを備えている。
【0041】
左側壁41の中央部には、左側壁41の外面から内面へと貫通する貫通孔46が形成されている。貫通孔46の下端部には、貫通孔46内を上方へと延びる片持ち梁状の突片47が突設されている。突片47は、弾性を有しており、パネル係合部13の内方への傾倒が可能である。突片47の外面には、上方を向く逆止面48Aを備えた爪部48が突設されている。
【0042】
右側壁42の中央部には、右側壁42の外面から内面へと貫通する貫通孔49が形成されている。貫通孔49の上部は、クリップ本体部11の下部内へと延在している。貫通孔49とバンド挿通孔21との間には左右方向および前後方向に延在するガイド壁50が設けられ、貫通孔49とバンド挿通孔21とは連通していない。貫通孔49の下端部には、貫通孔49内を上方へと延びる片持ち梁状の弾性片51が突設されている。弾性片51の先端部51Aは、クリップ本体部11内に延出している。弾性片51は、弾性を有しており、パネル係合部13の内方への傾倒が可能である。弾性片51の外面であって、クリップ本体部11の下面11Aよりも下方に位置する部分には、断面が概ね二等辺三角形状の爪部(抜止爪部)52が底辺を弾性片51側に向ける形で突設されている。なお、爪部52に上方を向く逆止面を設けてもよい。
【0043】
<バンドクリップの作用>
次に、バンドクリップ10を用いて車体パネル100にワイヤハーネス110を固定する手順およびその固定構造について説明する。最初にバンド部12をワイヤハーネス110の周囲に巻き掛ける。ワイヤハーネス110は、複数本であってもよい。そして、バンド部12の先端部12Dをバンド挿通孔21の左端側より挿入する。このとき、バンド部12の押圧突片33がバンド挿通孔21の孔壁に押圧され、貫通孔32の内方側、すなわちバンド部12側へと撓む。また、バンド部12に爪部24が押圧されることによって、バンド保持片23が溝22内(すなわち上方)へと撓むことによって、バンド部12がバンド挿通孔21を通過する。
【0044】
その後、バンド部12のバンド挿通孔21に対する挿入量(通過量)が増加すると、バンド部12の凹部31と、バンド保持片23の爪部24とが係合する。爪部24の傾斜面24Aは左方かつ下方を向き、凹部31の傾斜壁31Bが上方かつ右方を向いているため、バンド部12が挿入方向(右方向)に移動すると、爪部24の傾斜面24Aが凹部31の傾斜壁31Bに押圧されてバンド保持片23が上方へと撓み、爪部24が任意の凹部31から離脱して任意の凹部31の一つ左方の凹部31に係合する。バンド部12は、ワイヤハーネス110の径に応じた環構造120を形成するまでバンド挿通孔21に挿入される。バンド部12に形成される環構造120がワイヤハーネス110の径に概ね一致した時点で、バンド保持片23の爪部24はバンド部12の任意の凹部31に係合する。このとき、爪部24の逆止面24Bは、凹部31の規制壁31Aと相対し、バンド部12の抜去方向(左側)への移動に対して所定の抵抗力を生じさせる。このようにして、ワイヤハーネス110がバンド部12によって緊締される。なお、バンド部12に、所定値以上の抜去力(バンド部12を左方へと引っ張る力)を加えると、バンド保持片23が上方へと撓み、逆止面24Bと規制壁31Aとの係合が解除され、バンド部12の抜去方向への移動が可能となっている。バンド部12の抜去方向への移動を可能にする抜去力は、バンド挿通孔21の軸線方向(すなわち、バンド部12の抜去方向)に対する逆止面24Bの角度を適宜調整することによって、任意に設定することができる。
【0045】
次に、バンドクリップ10のパネル係合部13を車体パネル100に形成された係合孔101に挿入する。このとき、パネル係合部13の爪部48および爪部52が係合孔101の周縁部に押圧され、爪部48が設けられた突片47および爪部52が設けられた弾性片51が、パネル係合部13の内方へと傾倒して爪部48および爪部52が係合孔101を通過する。図4に示すように、パネル係合部13が係合孔101に挿入された状態では、突片47および弾性片51が初期位置に復帰し、車体パネル100はクリップ本体部11の下面11Aと、爪部48および爪部52との間に挟持される。以上のようにして、バンドクリップ10は、ワイヤハーネス110を車体パネル100の所定の位置に固定する。
【0046】
次に、バンドクリップ10を車体パネル100から取り外す手順およびその際のバンドクリップ10の動作について説明する。図5に示すように、作業者等によって、ワイヤハーネス110に車体パネル100から遠ざかる向き(図5中では上方)の力F1が加えられると、バンド部12の基端部12Cには上方向きの力F2が作用し、先端部12D側の部分(バンド挿通孔21に挿通された部分)には左方向きの力F3が作用する。この力F3は、バンド部12をバンド挿通孔21から抜き去る力(抜去力)として作用し、バンド部12は左方に移動しようとする。バンド部12がバンド挿通孔21から抜去される方向を抜去方向という。ワイヤハーネス110に加えられる力F1が所定の大きさであり、バンド部12に所定の大きさの抜去力F3が作用する場合には、バンド保持片23は上方へと撓み、バンド部12の凹部31とバンド保持片23の爪部24との係合が解除される。これにより、バンド部12はバンド挿通孔21(クリップ本体部11)に対して抜去方向に移動する。
【0047】
バンド部12が抜去方向に移動すると、押圧突片33が左方に移動する。このとき、押圧突片33の先端部33Aは、ガイド壁50と車体パネル100とにガイドされて弾性片51の先端部51Aへと導かれ、弾性片51の先端部51Aを左方、すなわちパネル係合部13の内方に押圧する。弾性片51は、押圧突片33に押圧されて、パネル係合部13の内方側へと傾倒し、爪部52と係合孔101の周縁部との係合が解除される。
【0048】
また、バンド部12に加わる上向きの力F2によって、クリップ本体部11およびパネル係合部13には、上向きの力が加わる。これにより、パネル係合部13が係合孔101から抜き出される方向(上方)に移動する。このとき、爪部48と係合孔101の周縁部とが係合しているため、バンドクリップ10には、爪部48と係合孔101の周縁部との当接部を中心とした図中の矢印D1方向の回転力が作用し、バンドクリップ10は回転する。これにより、爪部52は係合孔101の外方へと離脱し、パネル係合部13を係合孔101から容易に抜き出すことが可能になる。
【0049】
右側壁42は、爪部48と係合孔101の周縁部との当接部を中心とする円弧状に形成されているため、バンドクリップ10が回転する際に、右側壁42と係合孔101の周縁とが接触することはなく、バンドクリップ10は円滑に抜去される。
【0050】
以上のように、作業者は、ワイヤハーネス110を車体パネル100から遠ざかる向きに引っ張るだけで、バンドクリップ10を車体パネル100の係合孔101から抜去することができる。その後、作業者ははさみ等を用いてバンド部12を切断し、バンドクリップ10をワイヤハーネス110から取り外す。以上の取り外し作業は比較的簡単であり、自動車の修理や解体作業において、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0051】
なお、以上の取り外し手順では、所定の大きさの力F1を加えることによって、バンド保持片23を撓ませ、バンド部12の凹部31とバンド保持片23の爪部24との係合を解除したが、作業者の手動操作等によってバンド保持片23の先端部23Aを上方に持ち上げ、凹部31と爪部24との係合を解除してもよい。この場合には、ワイヤハーネス110を引く力F1を小さくすることができる。
【0052】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るバンドクリップ200は、大部分において第1実施形態に係るバンドクリップ10と同様の構成を有するため、同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
<バンドクリップの構成>
図6に示すように、第2実施形態に係るバンドクリップ200は、押圧突片33とガイド壁50とを備えていない点で第1実施形態に係るバンドクリップ10の構成と大きく相違する。
【0054】
バンドクリップ200のバンド部12は、貫通孔32の先端部12D側の端面32Aから裏面12B側に突出するリブ201を備えている。また、バンド部12の裏面12Bの幅方向における中央部には、長手方向に沿って溝202が延設されている。
【0055】
下半部がパネル係合部13に形成された貫通孔49の上部は、クリップ本体部11内に延出し、バンド挿通孔21と連通している。そして、弾性片51の先端部51Aは、バンド挿通孔21内に延出している。
【0056】
<バンドクリップの作用>
次に、バンドクリップ10を用いて車体パネル100にワイヤハーネス110を固定する手順およびその固定構造について説明する。最初に、バンド部12をワイヤハーネス110に巻き掛けた後、バンド部12の先端部12Dをバンド挿通孔21に左端側より挿通する。このとき、バンド部12は、バンド挿通孔21内に延出する弾性片51の先端部51Aを押圧し、パネル係合部13の外方へと撓ませながら挿入される。バンド部12の挿入が進み、バンド部12の貫通孔32が弾性片51に到達すると、弾性片51はバンド部12に押圧されなくなり、初期位置に復帰する。その後、バンド部12の挿入が進むと、弾性片51の先端部51Aは、バンド部12の溝202に位置し、弾性片51は初期位置に維持される(図7参照)。その後、第1実施形態と同様に、バンド部12は、ワイヤハーネス110の径に応じた環構造120を形成するまでバンド挿通孔21に挿入され、その位置でバンド保持片23の爪部24とバンド部12の凹部31とが係合し、ワイヤハーネス110がバンド部12によって緊締される。
【0057】
次に、第1実施形態と同様にパネル係合部13を車体パネル100の係合孔101に挿入し、爪部48および爪部52と係合孔101の周縁部とを係合させる。以上のようにして、図7に示すように、バンドクリップ200は、ワイヤハーネス110を車体パネル100の所定の位置に固定する。
【0058】
次に、バンドクリップ200を車体パネル100から取り外す手順およびその際のバンドクリップ200の動作について説明する。図7に示すように、第1実施形態と同様に、作業者等によって、ワイヤハーネス110に車体パネル100から遠ざかる向きの力F1が加えられると、バンド部12の基端部12Cには上方向きの力F2が作用し、先端部12D側の部分には左方向きの力F3が作用する。バンド部12は、力F3によってバンド挿通孔21から抜去される方向に移動しようとする。バンド部12に所定の大きさの抜去力F3が作用すると、バンド保持片23は上方へと撓み、バンド部12の凹部31とバンド保持片23の爪部24との係合が解除される。なお、手動操作によってバンド保持片23の先端部23Aを上方へと持ち上げ、バンド部12の凹部31とバンド保持片23の爪部24との係合を解除してもよい。
【0059】
バンド部12が抜去方向に移動すると、弾性片51の先端部51Aはバンド部12の貫通孔32の端面32Aによって左方、すなわちパネル係合部13の内方に押圧され、パネル係合部13の内方側へと傾倒し、爪部52と係合孔101の周縁部との係合が解除される。そして、第1実施形態と同様に、バンドクリップ200は、爪部48と係合孔101の周縁部との当接部を中心として回転し、係合孔101から抜去される。
【0060】
<第3実施形態>
図9〜図15を参照して、本実施形態発明の第3実施形態に係るバンドクリップ300について説明する。
【0061】
<バンドクリップの構成>
図9〜図13に示すように、バンドクリップ300は、クリップ本体部311と、バンド部312と、パネル係合部(基材係合部)313とを主要構成要素として備えている。バンドクリップ300は、樹脂材料を射出成形することによって形成され、クリップ本体部311、バンド部312、パネル係合部313は一体に形成されている。
【0062】
クリップ本体部311は、互いに対向する前側壁315および後側壁316と、前側壁315および後側壁316の互いに対向する面の上部どうしを互いに連結する上壁317とを有している。前側壁315の下縁には、後方へと延出する前底壁318が突設されている。前側壁315の下縁には、後方へと延出する前底壁318が設けられており、後側壁316の下縁には、前方へと延出する後底壁319が設けられている。前底壁318と後底壁319との突出端どうしは、所定の距離をおいて対向している。換言すると、前底壁318の後端と後底壁319の前端との間には、左右方向に延び、クリップ本体部311の左端および右端に到るスリット320が形成されている。
【0063】
前側壁315および後側壁316の互いに対向する面のそれぞれには、左端から右端へと連続する前ガイド溝322または後ガイド溝323が互いに対向するように凹設されている。前ガイド溝322および後ガイド溝323は、その幅(上下方向幅)がバンド部312の厚みよりも大きく形成されている。また、前ガイド溝322および後ガイド溝323の左端部および右端部は、端部に向かうほど滑らかに上下方向へと拡幅がなされている。前ガイド溝322および後ガイド溝323は、バンド部312がクリップ本体部311内に挿通される際に、バンド部312の進入位置を定める。
【0064】
前側壁315および後側壁316は、その上端面の左右方向における中間部に下方へと凹んだ凹部325,326を備えるとともに、その上端部の左側部分に左方側斜め上方に突出するハーネス支持片327,328を備えている。各ハーネス支持片327,328の右側面は対応する凹部325,326へと滑らかに連続している。前側壁315および後側壁316の下端部には、弾性を有し斜め下方へと突出する押圧片329,330が設けられている。
【0065】
図13に示すように、上壁317の下面は、その左半部に曲面状に面取りがなされた曲面部331を備えており、ガイド溝322,323の上端に沿って配置されている。上壁317の上側右部には、バンド部312の基端部335が連結されている。
【0066】
バンド部312は、表面336と裏面337と有する扁平な帯状をなし、可撓性を有している。バンド部312の基端部335は、他の部分に比べて薄肉に形成されて柔軟性が増しており、より屈曲可能となっている。初期状態においては、基端部335は、上壁317から右方へと突出し、弧状に湾曲して上方へと延びている。
【0067】
バンド部312の表面336には、複数の係止爪(押圧部)341がバンド部312の長手方向に沿ってそれぞれ所定の間隔をおいて列設されている。各係止爪341は、バンド部312の長手方向に対して直交するとともに基端側を向く逆止面と、逆止面のバンド部312の先端部338側に形成された傾斜面とを備えている。係止爪の傾斜面は、バンド部312の表面外方側かつ先端部338側を向くように形成されている。
【0068】
前底壁318には、前補助爪351が設けられている。前補助爪351は、前底壁318の上面の左端部から上方に向けて突出した後、屈曲して右方へと延びる弾性片352と、弾性片352に設けられた凸部353とを備えている。弾性片352の右方へと延びる部分は、その上面が上下方向において前ガイド溝322および後ガイド溝323の下端と概ね一致するように延在している。凸部353は、弾性片352の右方へと延びる部分の上面に設けられ、上下方向において前ガイド溝322および後ガイド溝323と重なっている。弾性片352の先端部は、弾性変形によって上下方向に屈曲可能となっている。後底壁319の上面には、前補助爪351と同様の、弾性片356と凸部357とを備えた後補助爪355が設けられている。
【0069】
前底壁318および後底壁319の下面には、パネル係合部313が下方に向けて突設されている。パネル係合部313は、前底壁318の下面から下方へと突設された第1側壁361と、後底壁319の下面から下方へと突設された第2側壁362と、第1側壁361および第2側壁362の下端どうしを連結する下端壁363とを備えている。第1側壁361および第2側壁362の外面は、基材となる車体パネル400に形成された係合孔401に嵌合可能な形状に形成されている。
【0070】
下端壁363の右端部分であって第1側壁361および第2側壁362の間の部分には、弾性片365が設けられている。弾性片365は、下部(第1部分)366と、中間部(第2部分)367と、上部(第2部分)368とから構成されている。下部366は、一端が下端壁363に連続するともに上方へと延出し、他端がスリット320内まで延びている。中間部367は、一端が下部366の上端に連続するとともにスリット320内を左方へと延び、他端がスリット320の左端近傍まで延びている。上部368は、一端が中間部の左端に連続するとともに上方へと延び、その後屈曲して右方へと延びている。前後方向から見た側面視では、中間部367と上部368とが組み合わされて、右方に開くとともに左方に屈曲部374を備えた略U字状(ヘアピン状)を呈する。図13に示すように、上部368の上側面は、上下方向において、ガイド溝322,323の下端と概ね一致するように延在している。
【0071】
上壁317の下面、前ガイド溝322、後ガイド溝323、前補助爪351の上面、後補助爪355の上面、弾性片365の上部368の上面によって、バンド部312が挿通可能なバンド挿通孔370を画成している。
【0072】
下部366は、弾性変形することによって左右方向に変形可能(屈曲可能)になっており、上部368および中間部367は、弾性変形することによって上下方向に変形可能(屈曲可能)になっている。また、下部366、中間部367、上部368は、それぞれの連続部で互いに屈曲可能になっている。また、上部368および中間部367が左方または右方に変位することによって、下部366が左右方向に屈曲(傾倒)する。
【0073】
上部368の上側面には、上方へと突出する爪部371(バンド係止爪部)が設けられている。爪部371は、右方を向く逆止面を備え、逆止面の左方に傾斜面を備えている。上部368の右端部369は、前側壁315の右端よりも右方へと突出している。下部366の外面には、外方へと突出する爪部372(抜止爪部)が設けられている。爪部372は、上方を向く逆止面を備え、逆止面の下方に傾斜面を備えている。
【0074】
下端壁363の左側部分であって第1側壁361および第2側壁362の間の部分には、第1係止片375および第2係止片376が上方へと向けて突設されている。各係止片375,376は、パネル係合部313の外方側に突出した爪部378,379を有する。また、各係止片375,376は、可撓性を有し、パネル係合部313の内方へと傾倒可能になっている。弾性片365の下部366および各係止片375,376は、上方から見た平面視において、パネル係合部313の中心回りに互いに120°ずつ間隔をおいて配置されている。
【0075】
<バンドクリップの作用>
次に、図14を参照して、バンドクリップ300を用いて車体パネル400にワイヤハーネス410を固定する手順およびその固定構造について説明する。最初にバンド部312をワイヤハーネス410の周囲に巻き掛ける。ワイヤハーネス410は、複数本であってもよい。そして、バンド部312の先端部226をバンド挿通孔370の左端側より挿入する。このとき、バンド部312の幅方向における端両部は、前ガイド溝322または後ガイド溝323に嵌り込み、前ガイド溝322および後ガイド溝323によって上下方向への変位が規制されつつ、右方へと導かれる。また、弾性片365、前補助爪351、後補助爪355は、それぞれ爪部371、凸部353、凸部357において、バンド部312の係止爪341の斜面に押圧され、下方へと変位(傾倒)し、バンド部312のバンド挿通孔370への挿通を許容する。
【0076】
バンド部312は、ワイヤハーネス410の径に応じた環構造を形成するまでバンド挿通孔370に挿入される。バンド部312によって形成される環構造がワイヤハーネス410の径に概ね一致した時点で、弾性片365の爪部371、前補助爪351の凸部353、後補助爪355の凸部357は、任意の係止爪341に係合する。このとき、係止爪341の逆止面が、爪部371の逆止面および前補助爪351の凸部353、後補助爪355の凸部357に相対し、バンド部312の抜去方向(左側)への移動に対して所定の抵抗力を生じさせる。
【0077】
ワイヤハーネス410は、左側部分がハーネス支持片327,328に当接し、下側部分が凹部325,326に係合し、右側部分および上部部分がバンド部312に抱持されることによって、クリップ本体部311の上部に安定した状態で支持される。以上のようにして、ワイヤハーネス410がバンド部312によって緊締される。
【0078】
次に、バンドクリップ300のパネル係合部313を車体パネル400に形成された係合孔401に挿入する。このとき、パネル係合部313の弾性片365、第1係止片375、第2係止片376は、それぞれ爪部372、378、379において係合孔401の周縁部に押圧され、パネル係合部313の内方へと変位(傾倒)し、パネル係合部313の係合孔401への挿入が許容される。パネル係合部313が係合孔401に挿入された状態では、弾性片365、第1係止片375、第2係止片376が初期位置に復帰し、車体パネル400はクリップ本体部11の各押圧片329,330と、各爪部372、378、379との間に挟持される。以上のようにして、バンドクリップ300は、ワイヤハーネス410を車体パネル400の所定の位置に固定する。なお、パネル係合部313を係合孔401に挿入した後に、バンド部312でワイヤハーネス410を抱持してもよい。
【0079】
次に、図15を参照して、バンドクリップ300を車体パネル400から取り外す手順およびその際のバンドクリップ300の動作について説明する。作業者等によって、ワイヤハーネス410に車体パネル400から遠ざかる向き(図15中では上方)の力F5が加えられると、バンド部312にはバンド挿通孔370から抜き出される方向の力(抜去力)F6が作用し、バンド部312はバンド挿通孔370内を左方(抜去方向)に移動しようとする。
【0080】
バンド部312に加わる力F6が所定値より小さい場合には、弾性片365および前補助爪351および後補助爪355が変形せず、係止爪341に係合する爪部371および凸部353,354によって、バンド部312の抜去方向への移動は規制される。一方、バンド部312に加わる力F6が所定値以上である場合には、係止爪341は、凸部353,354を押圧して前補助爪351および後補助爪355を下方へと撓ませ、凸部353,354との係合を解除する。また、係止爪341が、爪部371を左方へと押圧し、弾性片365の上部368および中間部367を左方へとスライド移動させ、下部366をパネル係合部313の内方(左方)へと傾倒させる。これにより、爪部372と係合孔401の周縁との係合状態が解除される。これにより、係合孔401からパネル係合部313を抜き出すことが可能になり、バンドクリップ300は力F5によって、車体パネル400から抜去される。
【0081】
その後、作業者は、弾性片365の右端部365と、前補助爪351および後補助爪355の各先端部をパネル係合部313側(下方)へと押圧し、爪部371および各凸部353,357が係止爪341と係合しないようにして、バンド部312をバンド挿通孔370から抜き出し、バンドクリップ300とワイヤハーネス410との結合を解除する。
【0082】
第3実施形態に係るバンドクリップ300は、車体パネル400とワイヤハーネス410とを結合した状態で、押圧部となる係止爪341が、弾性片365に設けられた爪部371に常に当接しているため、バンド部312の少しの移動で弾性片365を傾倒され、爪部372と係合孔401との係合が解除される。一方、第1および第2実施形態に係るバンドクリップ10,200は、押圧部となる押圧突片33または端面32Aが弾性片51に当接するまでにバンド部312の所定長さの引き抜きを要する。そのため、バンドクリップ300は、バンドクリップ10,200よりも短い引き抜きストロークで、車体パネル400から抜去させることができる。また、バンドクリップ300は、バンド部312の長手方向に沿って複数の係止爪341を備えているため、ワイヤハーネス410をバンド部312で緊締した際に、バンド挿通孔370を通過した部分を切除しても、押圧部が消失することがない。
【0083】
バンド部312の抜去方向への移動を許容する抜去力の設定は、係止爪341と前補助爪351の凸部353および後補助爪355の凸部357との係合力を適宜調整することによって、任意に設定することができる。
【0084】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第1および第2実施形態では、バンド保持片23の爪部24とバンド部12の凹部31とに係合によって、バンド部12をバンド挿通孔21に保持する構成としたが、爪部24および凹部31を省略し、バンド保持片23をバンド部12に押圧させ、摩擦力によってバンド部12をバンド挿通孔に保持してもよい。また、爪部52に上方を向く逆止面を備えてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10,200,300…バンドクリップ、11,311…クリップ本体部、12,312…バンド部、13,313…パネル係合部(基材係合部)、21,370…バンド挿通孔、23…バンド保持片、24…爪部(凸部)、31…凹部、32…貫通孔(押圧孔)、32A…端面、33…押圧突片(押圧部)、42…右側壁、50…ガイド壁、51,365…弾性片、51A…先端部、52,372…爪部(抜止爪部)、100,400…車体パネル、101,401…係合孔、110,410…ワイヤハーネス、201…リブ、202…溝、341…係止爪(押圧部)、371…爪部(バンド係止爪部)、366…下部(第1部分)、367…中間部(第2部分)、368…上部(第2部分)、374…屈曲部、351…前補助爪、355…後補助爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合孔が形成された基材に線状部材を固定するバンドクリップであって、
バンド挿通孔が形成されたクリップ本体部と、
一端が前記クリップ本体部に連結されるとともに、他端が前記バンド挿通孔に挿通され、前記線状部材に巻き掛けられる可撓性を有するバンド部と、
前記クリップ本体部に突設され、前記係合孔に突入する基材係合部と、
前記基材係合部に設けられた弾性片と、
前記弾性片に突設され、前記係合孔と係合する抜止爪部と、
前記バンド部に設けられ、前記バンド部が前記挿通孔に挿通された状態から前記挿通孔に対して抜去方向に移動した場合に、前記抜止爪部と前記係合孔との係合を解除する方向に前記弾性片を押圧する押圧部と
を有することを特徴とするバンドクリップ。
【請求項2】
前記押圧部は、前記バンド部に突設された弾性を有する突片であることを特徴とする、請求項1に記載のバンドクリップ。
【請求項3】
前記クリップ本体部は、前記突片の先端部を前記弾性片に導くガイド部を有することを特徴とする、請求項2に記載のバンドクリップ。
【請求項4】
前記弾性片は、一端が前記基材係合部に連結される一方、他端が前記バンド挿通孔内に延出し、
前記押圧部は、前記バンド部に形成された押圧孔の側壁であることを特徴とする、請求項1に記載のバンドクリップ。
【請求項5】
前記バンド挿通孔は、前記基材係合部の前記係合孔に対する挿入方向と概ね直交する方向に延在し、
前記弾性片は、前記基材係合部における前記バンド部の抜去方向と相反する側の側部に設けられていることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載のバンドクリップ。
【請求項6】
前記基材係合部は、前記弾性片が設けられた部分から先端にかけて側面が弧状に形成されていることを特徴とする、請求項5に記載のバンドクリップ。
【請求項7】
前記バンド部は、長手方向に列設された複数の凹部を備え、
前記クリップ本体部は、一端が前記クリップ本体部に連結されるともに、他端が前記バンド挿通孔の外部へと延出し、その中間部に前記バンド部の前記凹部に係合する凸部を備えた弾性を有するバンド保持片を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載のバンドクリップ。
【請求項8】
前記押圧部は、前記バンド部にその長手方向に所定間隔をおいて複数個列設された係止爪部であり、
前記弾性片は、一端が前記基材係合部に連結される一方、他端が前記バンド挿通孔へと延出し、前記バンド挿通孔内に突出するバンド係止爪部を備え、
前記バンド係止爪部は、前記バンド部が前記バンド挿通孔内に挿通された状態で前記押圧部に係合し、
前記弾性片は、前記バンド部の前記バンド挿通孔からの抜去方向への変位に対して、前記バンド係止爪部を介して前記バンド部に抗力を与える一方、前記バンド部の変位に応じて変位し、前記抜止爪部と前記係合孔との係合を解除することを特徴とする、請求項1に記載のバンドクリップ。
【請求項9】
前記弾性片は、
その基端部が前記基材係合部の先端部に連結され、その先端部が前記クリップ本体部側へと延びる第1部分と、
その基端部が前記第1部分の先端に連結され、その先端部が前記バンド挿通孔の孔壁の一部を画成するとともに前記バンド挿通孔に沿って延びる第2部分と
を備え、
前記抜止爪部は、前記第1部分に突設され、前記バンド係止爪部は、前記第2部分に突設されていることを特徴とする、請求項8に記載のバンドクリップ。
【請求項10】
前記第2部分は、弾性変形可能な屈曲部を備えることを特徴とする、請求項9に記載のバンドクリップ。
【請求項11】
前記第2部分の前記先端部は、前記バンド挿通孔の軸線方向において、前記バンド挿通孔の外方へと延出していることを特徴とする、請求項9または請求項10に記載のバンドクリップ。
【請求項12】
前記クリップ本体部は、前記バンド挿通孔内に突出し、前記バンド部が前記バンド挿通孔内に挿通された状態で前記押圧部に係合する補助爪を有することを特徴とする、請求項8〜請求項11のいずれかの項に記載のバンドクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−41451(P2011−41451A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11824(P2010−11824)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】