説明

パイロット型流量制御弁

【課題】用途等に応じて容易に流量調整を行うことができ、製造コストが低く、在庫管理も不要なパイロット型流量制御弁を提供する。
【解決手段】アクチュエータ47によりパイロット弁体56を開閉駆動し、パイロット弁体に応動して主弁体2を主弁座45に接離させるパイロット型流量制御弁1であって、主弁体の開弁時の、主弁体と主弁座との離間間隔を調整するストッパ3を備える。ストッパは、主弁体とパイロット弁体との間に介装され、主弁体に螺合するねじ部3a、3bと、パイロット弁体と当接する当接部3cとを備える円筒状部材であって、円筒状部材のねじ部の主弁体との螺合長さを変化させ、主弁体と主弁座との離間間隔を調整することができる。ストッパを、主弁体12に穿設された穴部12aに圧入される棒状部材4とし、棒状部材の穴部への挿入深さを変化させて、主弁体と主弁座との離間間隔を調整してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット型流量制御弁に関し、特に、アクチュエータによってパイロット弁体を開閉駆動し、パイロット弁体に応動して主弁体を開閉するパイロット型流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷房機器等の冷凍サイクルに用いられるパイロット型流量制御弁として、特許文献1等には、図4に示すようなパイロット型電磁弁40が開示されている。このパイロット型電磁弁40は、主弁座(弁口)45を有する主弁室44を備える弁本体41と、主弁室44に接続された入口継手(流入口)42と、主弁座45の下方に接続された出口継手(流出口)43と、弁本体41に摺動自在に嵌挿され、主弁座45に接離する主弁体46と、電磁式アクチュエータ47等を備える。
【0003】
電磁式アクチュエータ47は、通電励磁用のコイル49と、コイル49の外周を覆うように配在されたハウジング48と、コイル49の上部内周側に配在され、ボルト52によりハウジング48に固定された円柱状の吸引子50と、吸引子50に対向配置されたプランジャ53とを備える。プランジャ53の下端部には、保持穴54が設けられ、保持穴54に球状のパイロット弁体56が、その下面の一部を露出させた状態で収納され、かしめ固定(かしめ部54a)される。プランジャ53の上部には、縦穴(ばね室)53aと、横穴(均圧穴)53bとが形成され、縦穴53aに、コイルばねからなる閉弁ばね51が挿入係止される。
【0004】
プランジャ53は、ガイドパイプ59に摺動自在に嵌挿され、ガイドパイプ59の上部は、コイル49と吸引子50との間に配在される。ガイドパイプ59は、プランジャ53が摺動自在に嵌挿される小径部59aと、主弁体46が摺動自在に嵌挿される大径部59bと、大径部59bより大径の弁本体形成部59cを備え、小径部59aと大径部59bとの間の段丘部が、平坦なストッパ面部59dと、上方に凹状の断面三角形状の凹部59e(120°間隔で3カ所)とを有するストッパを形成する。
【0005】
主弁体46は、フッ素樹脂又は真鍮からなる短円柱状体に形成され、その中央部を貫通するように、パイロット弁体56により開閉されるパイロット通路57が形成される。また、主弁体46の上部には、背圧室58を形成する突出部46bと、ガイドパイプ59のストッパ面部59dに衝接する上端面部46aとが備えられる。また、主弁室44には、主弁体46を開弁方向に付勢するコイルばねからなる開弁ばね55が縮装される。
【0006】
プランジャ53と主弁体46との間には、背圧室58が形成され、主弁体46が閉弁しているときに、入口継手42から主弁室44に導入された流体は、主弁体46の外周面と、弁本体41の内周面との間(摺動面間)を通って背圧室58に導入され、この背圧室58から、プランジャ53の外周面と、ガイドパイプ59の内周面との間(摺動面間)、横穴53b、及び縦穴53aを通って、吸引子50の下端面と、プランジャ53の上面との間に形成される間隙空間60にも導かれる。
【0007】
上記構成を有するパイロット型電磁弁40においては、コイル49に通電されると、吸引子50にプランジャ53が引き寄せられて吸着し、パイロット弁体56が開弁方向(上方)に移動する。これにより、パイロット通路57が開かれ、背圧室58の流体が一挙にパイロット通路57を通じて出口継手43に排出される。このため、背圧室58が減圧され、主弁体46が開弁ばね55の付勢力により上昇して開弁する。主弁体46は、その上端面部46aがストッパ面部59dに衝接するまで上昇し、ストッパ面部59dに面接触して停止する。
【0008】
【特許文献1】特開2007−92825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図4に示す上記従来のパイロット型電磁弁40においては、用途等に応じて、主弁体46の開弁時にパイロット型電磁弁40を流れる流体の流量を変化させる必要があり、そのため、異なる開口径Dを有する主弁座45を複数種類用意し、必要に応じて所望の主弁座45を備えたパイロット型電磁弁40を製造していた。すなわち、必要な流量に応じて、図5(a)に示すように、主弁座45の開口径をD1としたり、それより少量の流体流量に調整するには、図5(b)に示すように、開口径D1より小径の開口径D2を有する主弁座45を用い、入口継手42から導入され、主弁室44を介して出口継手43に排出される流体流量を調整する。
【0010】
上述のように、従来は、必要流量毎に開口径Dの異なる主弁座45を用意する必要があるため、パイロット型電磁弁40の製造コストの上昇を招くとともに、部品の在庫管理に手間がかかるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、用途等に応じて容易に流量調整を行うことができ、製造コストが低く、部品の在庫管理の手間が少ないパイロット型流量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、アクチュエータによりパイロット弁体を開閉駆動し、該パイロット弁体に応動して主弁体を主弁座に接離させるパイロット型流量制御弁であって、前記主弁体の開弁時の、該主弁体と主弁座との離間間隔を調整するストッパを備えることを特徴とする。
【0013】
そして、本発明によれば、ストッパによって主弁体と主弁座との離間間隔を調整することができるため、用途等に応じて容易に流量調整を行うことができるとともに、従来のように必要流量毎に開口径の異なる主弁座を用意する必要がないため、製造コストを低減することができ、部品の在庫管理の手間を少なくすることができる。
【0014】
前記パイロット型流量制御弁において、前記ストッパを、前記主弁体と前記パイロット弁体との間に介装され、前記主弁体に螺合するねじ部を備える円筒状部材であって、該円筒状部材のねじ部の前記主弁体との螺合長さを変化させることにより、前記主弁体と主弁座との離間間隔を調整するように構成することができる。
【0015】
また、前記パイロット型流量制御弁において、前記ストッパを、前記主弁体と前記パイロット弁体との間に介装され、前記主弁体に穿設された穴部に圧入される部材であって、該部材の前記主弁体に穿設された穴部への挿入深さを変化させることにより、前記主弁体と主弁座との離間間隔を調整するように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、流量調整を容易に行うことができ、製造コストが低く、部品の在庫管理の手間が少ないパイロット型流量制御弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明をパイロット型電磁弁に適用した実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
本発明にかかるパイロット型電磁弁は、図1に示すような構成を備える。同図に示す2つのパイロット型電磁弁1、1’は、基本的に同一の構成を有するものであり、(a)は、主弁体2の開弁時の流量を小流量に調整し、(b)は、主弁体2の開弁時の流量を大流量に調整した状態を示す。尚、パイロット型電磁弁1、1’の基本構成は、図4に示した従来のパイロット型電磁弁40と同様であるため、図4のパイロット型電磁弁40と同一の構成要素については、共通の符号を付して詳細説明を省略する。また、図1のパイロット型電磁弁1、1’も、図4に示した電磁式アクチュエータ47を構成するコイル49、ボルト52等を備えるが、これらの図示も省略する。
【0019】
まず、本発明にかかるパイロット型電磁弁の構成について、図1(a)のパイロット型電磁弁1を参照しながら説明する。このパイロット型電磁弁1も、冷房機器等の冷凍サイクルなどに使用されるものであって、電磁式アクチュエータ(不図示)によってパイロット弁体56を開閉駆動し、パイロット弁体56に応動して主弁体2を主弁座45に接離させる。
【0020】
このパイロット型電磁弁1の特徴部分は、図2(a)に示すように、主弁体2と、この主弁体2に螺合するストッパ3である。主弁体2は、上面の平面視円形の凹部2aに、雄ねじ部2bと、雌ねじ部2cとを備える。一方、ストッパ3は、円筒状に形成され、外周面に主弁体2の雌ねじ部2cと螺合する雄ねじ部3aを備え、内周面に主弁体2の雄ねじ部2bと螺合する雌ねじ部3bを備える。ストッパ3の頂部3cは、図1(a)に示すように、ガイドパイプ59のストッパ面部59dに当接し、背圧室58を形成する。
【0021】
次に、図1(a)を参照しながら、パイロット型電磁弁1の動作について説明する。
【0022】
図4に示したパイロット型電磁弁40の場合と同様に、主弁体2が閉弁しているときに、入口継手42から主弁室44に導入された流体は、主弁体2の外周面と、弁本体41の内周面との間(摺動面間)を通って背圧室58に導入され、背圧室58から、プランジャ53の外周面と、ガイドパイプ59の内周面との間(摺動面間)、横穴53b、及び縦穴53aを通って、吸引子50の下端面と、プランジャ53の上面との間に形成される間隙空間60(図4参照)にも導かれる。
【0023】
次に、電磁式アクチュエータのコイル(不図示)に通電されると、吸引子50にプランジャ53が引き寄せられて吸着し、パイロット弁体56が開弁方向(上方)に移動する。これにより、パイロット通路57が開かれ、背圧室58の流体が一挙にパイロット通路57を通じて出口継手43に排出される。このため、背圧室58が減圧され、主弁体2が開弁ばね55の付勢力により上昇して開弁する。主弁体2は、主弁体2と螺合するストッパ3の頂部3cがガイドパイプ59のストッパ面部59dに衝接するまで上昇し、ストッパ面部59dに面接触して停止する。そして、この状態で、入口継手42から導入された流体は、主弁室44を介して、主弁体2の下端面2dと、主弁座45との間の開口部5(図1(a)では格子状にハッチング)を通過し、出口継手43に排出される。
【0024】
次に、図1(a)と図1(b)を比較して参照しながら、パイロット型電磁弁1(1’)の流量調整の要領について説明する。
【0025】
図1(a)においては、ストッパ3の突出長さL(ストッパ3の頂部3cと、主弁体2の上面2eとの間隔)をL1に設定した。この突出長さL1は、図2に示した主弁体2の雄ねじ部2b、雌ねじ部2cと、ストッパ3の雌ねじ部3b、雄ねじ部3aの螺合長さを調整することで設定することができる。これによって、比較的狭小な開口部5を形成することができる。
【0026】
ここで、流量を大きくするには、図2における主弁体2の雄ねじ部2b、雌ねじ部2cと、ストッパ3の雌ねじ部3b、雄ねじ部3aの螺合長さを長くする。すなわち、図1(b)に示すように、主弁体2に対してストッパ3をさらに深くねじ込むように締め付けてストッパ3の突出長さLをL2と短くする。これにより、主弁体2の開弁時において、主弁体2の下端面2dと、主弁座45との間の開口部6(図1(b)では格子状にハッチング)の開口面積が開口部5よりも大きくなり、図1(a)のパイロット型電磁弁1に比較してより多量の流体を流すことができる。
【0027】
図3は、ストッパ3の突出長さLと主弁体2の開弁時の流体流量の関係を示す。これにより、ストッパ3の突出長さLが長くなるに従って、流量が減少することが判る。
【0028】
以上のように、このパイロット型電磁弁1(1’)によれば、ストッパ3の突出長さLを変化させることで、主弁体2の開弁時の流量を調整することができるため、用途に合わせて簡単に流量調整を行うことができる。また、主弁座45については、一定の開口径Dを有するものを共通して用いることができ、従来のように、必要流量毎に開口径Dの異なる主弁座45を用意する必要がなく、部品の在庫管理も容易となる。
【0029】
尚、上記実施の形態においては、図2(a)に示すように、ストッパ3を主弁体2と螺合する円筒状部材としたが、図2(b)に示すように、棒状(ピン状)のストッパ4を用い、主弁体12の上面に穿設した複数の穴部12aに圧入し、ストッパ4の圧入具合、すなわち、穴部12aへのストッパ4の挿入深さを変化させ、ストッパ4の突出長さL(ストッパ4の上端面部4aと、主弁体12の上面12bとの間隔)を設定した。これにより、主弁体12の開弁時に、ストッパ4の上端面部4aがストッパ面部59d(図1参照)と衝接し、突出長さLに対応する主弁体12の開弁時流量を得ることができる。
【0030】
また、上記実施の形態では、アクチュエータとしてプランジャと吸引子を有するものを用いた電磁弁に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、アクチュエータとして電動モータを用いた電動弁にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態であるパイロット型電磁弁を示す一部省略断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるパイロット型電磁弁の主弁体及びストッパを示す一部破断斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態であるパイロット型電磁弁のストッパの突出長さと流量の関係を示すグラフである。
【図4】従来のパイロット型電磁弁の一例を示す全体断面図である。
【図5】従来のパイロット型電磁弁の流量調整要領を説明するための一部省略断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 パイロット型電磁弁
1’ パイロット型電磁弁
2 主弁体
2a 凹部
2b 雄ねじ部
2c 雌ねじ部
2d 下端面
2e 上面
3 ストッパ(円筒状)
3a 雄ねじ部
3b 雌ねじ部
3c 頂部
4 ストッパ(棒状)
4a 上端面部
5 開口部
6 開口部
12 主弁体
12a 穴部
12b 上面
40 パイロット型電磁弁
41 弁本体
42 入口継手
43 出口継手
44 主弁室
45 主弁座
46 主弁体
50 吸引子
51 閉弁ばね
53 プランジャ
53a 縦穴
53b 横穴
54 保持穴
54a かしめ部
55 開弁ばね
56 パイロット弁体
57 パイロット通路
58 背圧室
59 ガイドパイプ
59a 小径部
59b 大径部
59c 弁本体形成部
59d ストッパ面部
59e 凹部
60 間隙空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータによりパイロット弁体を開閉駆動し、該パイロット弁体に応動して主弁体を主弁座に接離させるパイロット型流量制御弁であって、
前記主弁体の開弁時の、該主弁体と主弁座との離間間隔を調整するストッパを備えることを特徴とするパイロット型流量制御弁。
【請求項2】
前記ストッパは、前記主弁体と前記パイロット弁体との間に介装され、前記主弁体に螺合するねじ部を備える円筒状部材であって、該円筒状部材のねじ部の前記主弁体との螺合長さを変化させることにより、前記主弁体と主弁座との離間間隔を調整することを特徴とする請求項1に記載のパイロット型流量制御弁。
【請求項3】
前記ストッパは、前記主弁体と前記パイロット弁体との間に介装され、前記主弁体に穿設された穴部に圧入される部材であって、該部材の前記主弁体に穿設された穴部への挿入深さを変化させることにより、前記主弁体と主弁座との離間間隔を調整することを特徴とする請求項1に記載のパイロット型流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−36280(P2009−36280A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200333(P2007−200333)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】