説明

パターニングツールとしてナノリソグラフィを使用する、導体パターンを製造する方法

マイクロエレクトロニクス、触媒作用、および診断法における使用のための、コーティングされたチップを使用する金属ナノ構造のナノリソグラフィ付着が開示される。AFMチップは金属前駆体でコーティングすることができ、この前駆体を基板上にパターニングする。パターニングされた前駆体は、熱を適用することよって金属状態に変換できる。高解像度および優れたアライメントを達成できる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
生物工学、診断法、マイクロエレクトロニクス、およびマイクロエレクトロニクスにおける多くの重要な応用は、物質の基本的なタイプの一つである金属のナノ構造を必要とする。例えば、より優れたマイクロエレクトロニクスがより小型かつより高速なコンピュータチップおよび回路基板を提供するために必要であり、金属は、回路を完成させるために必要な導電率を提供できる。金属はまた、触媒としても用いることができる。しかし、金属の処理は難しい可能性があり、ナノスケールでの操作は問題をさらにより難しくする可能性がある。多くの方法は、ミクロンレベル製造に制限される。多くの方法は、電気化学的バイアスまたは非常に高い温度の必要性により制限される。さらに、多くの方法は、インクの粘性のような付着過程の物理的な必要条件により制限される。とりわけ、アライメント、フィルム、および導線を階層化する能力、高分解能、ならびに用途の広さを提供する手段によって金属ナノ構造を製造するために、より優れた方法が必要である。
【発明の開示】
【0002】
概要
本発明は、本発明の範囲を制限せずに本願明細書において要約される、一連の態様を含む。例えば、本発明は、基板上へ所望のパターンの導電被膜を付着させる、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) 前駆体でコーティングされたチップを使用するナノリソグラフィによって、所望のパターンで基板上へ前駆体を付着させる工程、
(b) リガンドに前駆体を接触させる工程、
(c) リガンドから前駆体に電子を移動させるために、任意で拡張線源から、十分なエネルギーを加え、これより前駆体を分解して所望のパターンの伝導性の沈殿物を形成し、このようにして直接的に導体パターンを基板上に形成させる工程。
【0003】
本発明はまた、基板上へ所望のパターンの導電金属を印刷する、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) 前駆体でコーティングされたチップを使用するナノリソグラフィを使用して、所望のパターンに従って基板上へ直接的に金属前駆体およびリガンドを描画する工程、および
(b) 基板から前駆体の実質的な量を除去することなく、且つ基板から金属の実質的な量を除去することなく、任意で拡張線源から、エネルギーを加えることによって前駆体を分解し、所望のパターンの導電金属を形成させる工程。
【0004】
本発明はまた、金属前駆体をチップから基板上へ付着させて、ナノ構造を形成させ、その後、前駆体ナノ構造を金属付着物に変換する工程を含む、ナノリソグラフィ法も提供する。付着は、チップと基板の間の電気バイアスを使用せずに実行されうる。
【0005】
本発明はまた、以下の工程から本質的になるナノリソグラフィ法を提供する:金属前駆体から本質的になるインク組成物をナノスコピック(nanoscopic)なチップから基板上へ付着させて、ナノ構造を形成させ、その後、ナノ構造の金属前駆体を金属形態に変換する工程。本発明の基本的なおよび新規な局面は本明細書の全体にわたって言及されるが、これらの局面には、スタンプ(stamp)およびレジストが必要でないこと、電気化学的バイアスが必要でないこと、典型的な研究室および生産設備が容易に利用できないこと、高価な器材が必要でないこと、ならびに基板とインクとの間の反応が必要でないことが含まれる。したがって、組成物およびインクはこれらの制限なく処方およびパターニングすることができる。
【0006】
本発明はまた、基板上のミクロ構造またはナノ構造の形態で、チップから基板上へ金属前駆体インク組成物を付着させて、約1ミクロン以下、約500nm以下、または約100nm以下で互いに分離した離散性の物体を有するアレイを形成させる工程を含む、インクと基板の間の電気化学的バイアスまたは反応を使用せずに印刷する方法を提供する。
【0007】
本発明はまた、本発明の方法によって調製される、基板ならびにその上のナノスコピックなおよび/または顕微鏡的な離散性の金属付着物を含む、パターニングされたアレイも提供する。金属付着物は、例えば、長方形、正方形、点状、または線状である可能性がある。
【0008】
本発明はまた、例えばセンサ、バイオセンサ、およびリソグラフィテンプレートを調製する工程を含む方法、ならびに本明細書において記載されている他の応用を使用する方法も提供する。
【0009】
詳細な説明
DPN(商標)および、DIP PEN NANOLITHOGRAPHY(商標)はNanoInk社の商標であり、これに従って、これらは本明細書において使用される(例えば、DPN印刷またはDIP PEN NANOLITHOGRAPHY印刷)。DPN法および器材は、通常NanoInk社(シカゴ、IL)から入手可能であり、これには本発明のナノリソグラフィを実行するために用いることができるNScriptor(商標)が含まれる。
【0010】
本明細書が技術文献の参照を含む本発明を実施するための当業者に対する手引きを提供するが、本参照は技術文献が先行技術であるということを承認するものではない。
【0011】
直接描画(Direct-write)技術は、例えば、Direct-Write Technologies for Rapid Prototyping Applications:Sensors, Electronics, and Integrated Power Sources, Ed. by A. Pique and D. B. Chrisey, Academic Press, 2002に記載されている方法によって実行できる。Mirkin, Demers、およびHongによる章は、例えば100ナノメートル長以下のスケールでのナノリソグラフィ印刷を記載しており、これは参照により本明細書に組み入れられる(303〜312ページ)。311〜312ページは、ナノスコピックなチップから基板に供給される化合物のパターニングを用いるプローブリソグラフィの走査および直接描画法のさらなる参照を提供し、これらは本発明の実施において、当業者の手引きとなることができる。本出典もまた、電気的に導体であるパターンを記載する。
【0012】
ナノリソグラフィおよびナノ製造はまた、344〜357ページに金属付着を含む、Marc J. Madou's Fundamentals of Microfabrication, The Science of Miniaturization, 2nd Ed.に記載されている。
【0013】
パターニングツールとしてディップペンナノリソグラフィ(DPN)印刷を使用する導体パターンの製造に関して、多数の態様が本出願において開示される。本開示の全ての態様に対する、DPN印刷法を開示する以下の文献は、参照により本明細書に組み入れられ、本開示の一部を形成する:
(1) Piner et al. Science, 29 January 1999, Vol.283, 661-663。
(2) Mirkin et al.の1999年1月7日に出願された米国特許仮出願第60/115,133号。
(3) Mirkin et al.の1999年10月4日に出願された米国特許仮出願第60/207,713号。
(4) Mirkin et al.の2000年1月5日に出願された米国特許出願第09/477,997号。
(5) Mirkin et al.の2000年5月26日に出願された米国特許仮出願第60/207,713号。
(6) Mirkin et al.の2000年5月26日に出願された米国特許仮出願第60/207,711号。
(7) Mirkin et al.の2001年5月24日に出願された米国特許出願第09/866,533号。
(8) Mirkin et al.の2002年5月30日に公開された米国特許公報第2002/0063212 A1号。
(9) Mirkin et al.の2000年1月7日に出願されたPCT出願番号PCT/US00/00319号に基づく、2000年7月13日に公開されたPCT公開番号WO 00/41213 A1。
(10) Mirkin et al.の2001年5月25日に出願されたPCT出願番号PCT/US01/17067号に基づく、2001年12月6日に公開されたPCT公開番号WO 01/91855 A1。
(11) 2001年10月2日に出願された米国特許仮出願第60/326,767号「Protein Arrays with Nanoscopic Features Generated by Dip-Pen Nanolithography」(Mirkin et al.の特許公開番号第2003/0068446号「Protein and Peptide Nanoarrays」も参照されたい)。
(12) Mirkin et al.の2001年11月30日に出願された米国特許仮出願第60/337,598号「Patterning of Nucleic Acids by Dip-Pen Nanolithography」、および2002年12月2日に出願された特許出願第10/307,515号。
(13) Mirkin et al.の2001年12月17日に出願された米国特許仮出願第60/341,614号「Patterning of Solid State Features by Dip-Pen Nanolithography、および2002年12月17日に出願された出願第10/320,721号。
(14) Eby et al.の2002年3月27日に出願された米国特許仮出願第60/367,514号「Method and Apparatus for Aligning Patterns on a Substrate、および2003年2月14日に出願された米国特許出願第10/366,717号。
(15) Cruchon-Dupeyrat et al.の2002年5月14日に出願された米国特許仮出願第60/379,755号「Nanolithographic Methods Calibration Methods」、および2003年2月28日に出願された米国特許出願第10/375,060号。
(16) 2002年8月9日に出願された米国特許仮出願第60/379,755号「Apparatus, Materials, and Methods for Fabrication and Catalysis」。
(17) Demers et al. Angew Chem. Int. Ed. Engl. 2001, 40(16), 3069-3071。
(18) Demers et al. Angew Chem. Int. Ed. Engl. 2001, 40(16), 3071-3073。
(19) Liu et al. Adv. Mater. 2002, 14, No. 3, Feb. 5, 231-234。
(20) L.M. Demers et al. 「Direct Patterning of Modified Oligonucleotides on Metals and Insulators by Dip-Pen Nanolithography」, Science, 2002, June 7, 296, 1836-1838。
【0014】
本発明は、印刷のためにわずか一つチップを使用することには制限されず、むしろ多数のチップを使用することができる。例えば、Liu et al.の2003年1月30日に公開された米国特許公報第2003/0022470号「Parallel, Individually Addressable Probes for Nanolithography」を参照されたい。
【0015】
特に、2001年5月24日に出願された先願特許出願第09/866,533号(上記参考文献7および8、2002年5月30日に公開された2002/0063212 A1)において、直接描画ナノナノリソグラフィの背景および手順が、多種多様な態様をカバーして詳細に記載されており、例えば以下を含む:背景(1〜3ページ)、概要(3〜4ページ)、図面の簡単な説明(4〜10ページ)、走査形プローブ顕微鏡チップの使用(10〜12ページ)、基板(12〜13ページ)、化合物(13〜17ページ)のパターニング、例えば以下を含む方法の実施、チップのコーティング(18〜20ページ)、ナノプロッタを含む計装(20〜24ページ)、多層、および関連した印刷、およびリソグラフィ法の使用(24〜26ページ)、解像度(26〜27ページ)、アレイおよび組合せアレイ(27〜30ページ)、ソフトウェアおよび較正(30〜35ページ、68〜70ページ)、疎水性化合物でコーティングされたチップを含むキットおよび他の製品(35〜37ページ)、実施例(38〜67ページ)、対応する請求項および要約(71〜82ページ)、ならびに図1〜28。本開示は本明細書においては繰り返されずかつ繰り返す必要性はないが、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0016】
また、Mirkin et al.の2002年9月5日に公開された米特許公報第2002 0122873 A1号は、本明細書においては繰り返されずかつ繰り返す必要性はないが、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。この公開された出願は、例えば外側開口および内部空洞を有するチップの使用、ならびに基板へインク(または付着化合物)を移動させるための電気的、機械的、および化学起動力の使用を含む。ある方法は開口ペンナノリソグラフィを含み、ここで、開口を介する付着化合物の動きの比率および範囲は、起動力により制御される。この公開された出願はまた、コーティングされたチップ、パターン、基板、インク、パターニングしている化合物、付着化合物、多数のチップナノリソグラフィ、多数の付着化合物、およびアレイも記載する。
【0017】
ナノリソグラフィはまた、以下の参考文献に記載されている:
(a) 金属イオンの表面誘発された還元による金のナノ構造の形成を記載する、B.W. Maynor et al.、Langmuir, 17, 2575-2578(「Au 'Ink' for AFM 'Dip-Pen' Nanolithography」)。しかし、この方法は、適当な金前駆体およびこの金と反応する基体面の慎重な選択を含み、これが工程を制限し、本発明においては必要とされない。
(b) 白金金属の付着を記載する、Y. Li et al., J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 2105-2106(「Electrochemical AFM 'Dip-Pen' Nanolithography」)。しかし、この方法は、チップと基板の間の外部の電気化学的バイアスの使用を含み、これが工程を制限し、本発明においては必要とされない。
【0018】
DPN印刷工程において、インクは基板に移される。基板は平坦であっても、粗面であっても、湾曲していても、または表面特徴部を有してもよい。基板はあらかじめパターニングすることができる。基板上のインクの固定は、化学吸着および/または共有結合によるものであってもよい。移されたインクを、必要に応じて、製作デザインの一部として直接的に用いることができ、または更なる製造のテンプレートとして間接的に用いることができる。例えば、タンパク質はDPN印刷によって基板上に直接的にパターニングすることができ、または、タンパク質を結合させるために用いるテンプレート化合物をパターニングすることができる。DPN印刷の利点および応用は非常に多く、上記参考文献において記載される。例えば、高解像度、および優れた位置合せ精度を有する複素構造を達成できる。1ミクロン未満、特に100nm未満、特に50nm未満の線幅、断面積、および円周を有する構造を達成できる。要するに、DPN印刷はナノ製造/ナノリソグラフィ技術を可能にし、これは、例外的な制御および多用性を有するナノメートルレベルでの製造およびリソグラフィの実施を可能にする。この種のナノ製造およびナノリソグラフィは、ミクロンスケールの作業に比較的適している多くの技術では達成するのが困難である可能性がある。DPN印刷はまた、必要に応じてミクロンスケールの構造を調製するために用いることができるが、一般にナノ構造が好まれる。
【0019】
チップはナノスコピックなチップでありえる。これは、AFMチップを含む走査プローブ顕微鏡チップでありえる。これは、くぼみであってもまたはくぼみでなくともよい。インクは中空の先端部の中央を通過することができ、チップの端をコーティングする。チップは前駆体インクの印刷を容易にするために改良できる。一般に、チップがインクと反応せず、長期間を通じて使用できることが好まれる。
【0020】
ナノリソグラフィによって付着させられるパターンは、パターンの形状によって特に制限されない。一般のパターンは、点および線、ならびにこれらのアレイを含む。パターンの高さは、例えば約10nm以下、およびより詳細には約5nm以下でありえる。線がパターニングされる場合、線の幅は例えば、約1ミクロン以下、およびより詳細には約500nm以下、およびより詳細には約100nm以下でありえる。点がパターニングされる場合、点の幅は例えば直径約1ミクロン以下、およびより詳細には約500nm以下、およびより詳細には約100nm以下でありえる。
【0021】
ナノリソグラフィがナノ構造を形成するために好ましくは実行されるにもかかわらず、1ミクロンスケールの構造もまた、関心対象でありうる。例えば、長方形、正方形、点、または線などの領域が1〜10平方ミクロンの構造のパターニングに使用される実験は、より小さいナノ構造のための実験を設計する際にも有用である可能性がある。
【0022】
他の態様において、ナノスコピックなパターンを含む伝導のパターンは
以下の工程を用いるDPN印刷の使用により形成される:
(1) コーティングされたチップを使用して、所望のパターンで基板上へ、例えば金属塩などの前駆体を付着させる工程、
(2) 基板上へ適当なリガンドを適用する工程であって、ここで例えばリガンドが窒素、リン、または硫黄などの供与体原子を含む工程、
(3) 例えば放射熱によって、リガンドから前駆体に電子を移動させるのに十分なエネルギーを加え、これにより前駆体を分解して、例えば金属などの沈殿物を形成させる工程。
【0023】
金属のパターニング方法および化学作用は、以下に開示される:(1)参照により本明細書に組み入れられる、Sharma et al.の米国特許第5,980,998号(1999年11月9日に発行)、および(2)参照により本明細書に組み入れられる、Narang et al.の米国特許第6,146,716号(2000年11月14日に発行)。しかし、これらの参考文献はディップペンナノリソグラフィ印刷または付着のための他のナノリソグラフィの使用を開示または示唆するものではなく、DPN印刷から生じる利点を開示または示唆するものでもない。むしろ、それらはリザーバおよびアプリケータを含むディスペンサを使用する従来の印刷方式の使用を開示するものである。本明細書では、DPN印刷をパターニング方法として含むために、Sharma、5,980,998号特許に開示されるような化学作用およびパターニングを予期しない結果を伴う通常予期しない方法で変更する態様、ならびに化学作用をSharma 5,980,998号特許にて開示されるように含むために、DPN印刷方法を予期しない結果を伴う予期しない方法で変更する態様が開示される。
【0024】
インク溶液は、通常溶媒および溶質を含むことが、本明細書において意図される。溶媒は溶質を溶媒和できる任意の物質でありえるが、通常、水、様々なアルコールなどの、安価で容易に入手可能である比較的無毒性の物質を含むことが意図される。溶質は通常、エネルギー源の影響下で互いに化学的に反応し、金属または他の物質が溶液から沈殿するような少なくとも2つの成分を含むことが意図される。好ましい態様において、溶質の一つの成分は塩を含み、一方溶質の他の成分は適当なリガンドを含む。本願明細書において用いられる場合、「塩」という用語は、酸(A)および塩基(B)の任意の組合せを意味する。例は、蟻酸銅、酢酸銅、アクリル酸銅、チオシアン酸銅、およびヨウ化銅などの金属塩である。他の例は、蟻酸アンモニウム、およびアクリル酸アンモニウムなどの非金属塩である。
【0025】
溶液の様々な成分を並列に、または連続して、またはこの2つをいくつか組合せて基板に付着させてもよい。したがって、塩をリガンドと共に並列に付着させても、またはリガンドと別々に付着させてもよいことが意図される。これはまた、溶媒がそれ自身、塩またはリガンドの一つまたは複数の局面を含んでもよく、または寄与してもよいことが意図される。
【0026】
本願明細書において用いられる場合、「リガンド」(L)という用語は、AB+LAL+BまたはAB+LA+BLのように、レドックス反応における塩の一つまたは複数の局面を置換するために熱によって活性化できる任意の物質を指す。本明細書で意図される方法において、好ましいリガンドは非金属残基を残さず、通常の周囲条件下で安定である非結晶である。より好ましいリガンドはまた、妥当な温度で使用される特定の塩を用いてレドックス反応に関与することができ、この温度は通常、約300℃未満であると考えられる。
【0027】
リガンドの好ましいクラスは、例えばシクロヘキシルアミンを含む窒素供与体である。しかし、多くの他の窒素供与体およびそれらの混合物もまた用いることができる。例としては、3-ピコリン、ルチジン、キノリン、およびイソキノリン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミンなどが挙げられる。しかし、これらはほんの少数例であり、他の多くの脂肪族第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミン、ならびに/または芳香族の窒素供与体を使用しても良い。
【0028】
意図された溶液は、塩およびリガンドの他に他の化合物を含んでもよい。例えば、水およびアルコールを含むまたは含まない、蟻酸銅(II)と窒素供与体溶媒の混合液は、チップから基板への輸送を容易にするために用いてもよい。少量の溶媒ベースのポリマーまたは界面活性剤はまた、前駆体溶液の流動学を調整し、チップから基板への輸送を容易にするため、およびより優れたフィルム形成能を与えるための有用な添加物でありうる。一方で、より多量の、トリエチルホスフェート、トリトンX100、グリセリン等の高沸騰溶媒および/または添加物は、これらが、Kapton.TM.または紙などの感温性の基板における不完全な熱分解のために作製されるフィルムを汚染する傾向があるため、好ましくは回避される。またさらに、基板をカップリング剤で処置することは、カップリング剤の基板の表層の疎水性または親水性を改変する機能として付着物質の基板への粘着力を高めるために価値がある可能性がある。
【0029】
塩が金属を含む場合、全ての金属が意図される。好ましい金属は、銅、銀、および金のような導体素子だけでなく、シリコンおよびゲルマニウムなどの半導体も含む。いくつかの目的、特に触媒の生産のために、カドミウム、クロミウム、コバルト、鉄、鉛、マンガン、ニッケル、プラチナ、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、チタン、亜鉛などの金属を用いることができることが意図される。本願明細書において用いられる場合、「金属」という用語は、合金、金属/金属複合材、金属セラミック複合材、金属ポリマー複合材、および他の金属複合材も含む。
【0030】
基板は、その上に化合物を付着させることができる、任意の物質を実質的に含むことができる。例えば、意図された基板は、金属および非金属、導体および不導体、可撓性および不撓性の材料、吸収性および非吸収性の素材、平坦なおよび湾曲した材料、きめのあるおよびきめのない材料、固体および中空の材料、ならびに大きなおよび小さい物体の両方を含む。特に好ましい基板は、回路基板、紙、ガラス、および金属物体である。他の視野から見ると、意図された基板の幅広さは、現在の開示が好都合に適用されうる、意図された物体の範囲のいくつかの目安を与える。したがって、本明細書において、開示される方法および装置は、マルチチップモジュール、PCMCIAカード、印刷回路基板、シリコンウエハ、セキュリティ印刷、装飾的な印刷、触媒、静電遮へい、水素輸送膜、傾斜機能材料、ナノ材料の製造、電池電極、燃料電池電極、アクチュエータ、電気接点、コンデンサなどを含む、種々の用途に使用されうる。本方法および装置は、センサおよびバイオセンサとして用いることができる。本方法および装置は、インプリントナノリソグラフィのようなさらなるリソグラフィのためのテンプレートを調製するために用いることができる。本方法を用いてナノワイヤおよびナノチューブを接続することは、特に関心対象である。
【0031】
したがって、基板は特に回路基板を含む任意の適切な基板代表することが意図され、この基板は、コンピュータ、ディスクドライブ、または他データ処理もしくは記憶装置、電話もしくは他の通信装置、および電池、コンデンサ、チャージャ、コントローラ、または他のエネルギー蓄積関連装置などの電子デバイスの中にまたは電子デバイスの一部を形成して取り付けても取り付けなくてもよい。
【0032】
本明細書において、意図される適切なエネルギー源は、基板またはコーティングに過剰な損害を与えることなく所望の化学反応を生じさせることができる任意のエネルギー源を含む。したがって、特に好ましいエネルギー源は、特に赤外電球および熱風送風機を含む、照射源および対流熱源である。他の適切なエネルギー源は電子ビーム、ならびにX線、ガンマ線、および、紫外部を含む非赤外波長の照射装置を含む。さらに他の適切なエネルギー源は極超短波送信装置のような振動源を含む。様々なエネルギー源が多数の方法で適用されることができることもまた認識されなければならない。好ましい態様においてエネルギー源は、基板に付着させた前駆体/リガンドを目的とする。しかし、別の態様において、例えば加熱されたリガンドを常温の前駆体に適用することができ、または加熱された前駆体を常温のリガンドに適用できる。
【0033】
例えば、なめらかな表面、優れたコーティング粘着力、およびコーティング厚の制御という多くの利点を、この発明から認めることができる。本開示の様々な態様のさらに別の利点は、コーティングが少なくとも80重量%の純度で付着できることである。より好ましい態様において、コーティングに含まれることが意図される金属または他の物質の純度は少なくとも90%、さらにより好ましい態様においては純度は少なくとも95%、最も好ましい態様においては純度は少なくとも97%である。
【0034】
本開示の様々な態様のさらに別の利点は、コーティングの付着に伴う廃棄物がごくわずかであるということである。好ましい態様において、基板に付着させる物質の少なくとも80重量%が所望のパターンを形成したまま残存する。例えば蟻酸銅(II)を使用して銅回路を作製する場合、基板上に付着した銅の少なくとも80%が残存して所望のパターンを形成することができ、銅の20%以下が「廃棄物」として除去された。より好ましい態様において、廃棄物は10%以下であり、さらにより好ましい態様においては廃棄物は95%以下であり、最も好ましい態様においては廃棄物は3%以下である。
【0035】
本開示の様々な態様のさらに別の利点は、低温での操作方式である。金属は例えば、約150℃未満の温度で、好ましくは約100℃未満の温度で、より好ましくは約75℃未満の温度で、および最も好ましくは通常の室温(25〜30℃)で所望のパターンに付着させることができる。レドックスまたは「硬化」工程もまた、約100℃未満、より好ましくは約75℃未満、およびさらに約50℃程度の比較的低い温度で実施できる。約50℃未満でのレドックス反応は、大部分の用途のためにはあまりに遅い傾向があるが、さらにより低い温度でも可能である。これらの範囲は前駆体溶液を室温で調製すること、付着を室温で実施すること、および分解を室温環境におけるヒートガンによるような比較的低い熱を使用して達成することを可能にする。
【0036】
従来の技術は、本発明を実施するために用いることができるさらなる方法および組成物を記載する。例えば、Sharma et al.の米国特許第5,894,038号(1999年4月13日)はその全体が参照により本明細書に組み入れられ、パラジウムの層を基板上に形成させるための以下の工程を含む方法を含む、パラジウムの直接的な付着を開示する:(1) パラジウム前駆体の溶液を調製する工程、(2) 基板表面にパラジウム前駆体を適用する工程、および(3) 熱に前駆体を供することによってパラジウム前駆体を分解する工程。本方法はまた、本発明のナノリソグラフィの実行に適している可能性がある。
【0037】
さらに、Sharma et al.の米国特許第5,846,615号(1998年12月8日)はその全体が参照として本明細書に組み入れられ、金の層を基板上に形成するための金前駆体の分解を開示する。この方法はまた、本発明のナノリソグラフィの実行に適応させることができる。
【0038】
さらに、米国特許第4,933,204号はその全体が参照として本明細書に組み入れられ、金の特徴を形づくるための、金前駆体の分解を開示する。この方法はまた、本発明のナノリソグラフィの実行に適応させることができる。
【0039】
またさらに、Sharma et al.の米国特許第6,548,122号(2003年4月15日)はその全体が参照として本明細書に組み入れられ、蟻酸銅(II)前駆体ならびに金および銀の前駆体の使用を開示する。
【0040】
本発明の有効範囲は広いと考えられるが、以下のインクまたはパターニング化合物が本発明にとって特に関心対象である:蟻酸銅または酢酸銅;硫酸銀;硝酸銀;テトラフルオロホウ酸銀;パラジウムクロライド、アセテート、およびアセチルアセトネート;ヘキサクロロ白金(IV)酸;クエン酸鉄アンモニウム;亜鉛、ニッケル、カドミウム、チタン、コバルト、鉛、鉄、およびスズのカルボキシレート、(偽)ハロゲン化物、スルフェート、およびナイトレート;クロムヘキサカルボニルを含むメタルカルボニル複合体;シクロヘキシルアミン、3-ピコリン、(イソ)キノリン、シクロペンチルアミン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、エチレンジアミンを含むアミン塩基;ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルカルボゾル)(poly(vinylcarbozol))、およびポリ(アクリルアミド)を含むポリマー。
【0041】
好ましい態様において、例えば、付着はインクとして水溶液を使用して実行することができ、ここで、溶液は水、金属塩、および約50,000の以下の分子量を有するポリアルキレン酸化物ポリマーのような水溶性ポリマーを含む。水溶液はまた、還元剤のための担体としても有用でありえる。例えば、DPN印刷によって、10%のポリエチレンオキシド(MW 10,000)を含む水中でアミノシラン処理(amino-silanized)を行ったガラス上にジナトリウム塩化パラジウムの付着を実行することができ(Schott Glass company)、その後のパラジウム金属に対して、例えばジメチルアミンの0.03M水溶液:ボラン錯体(DMAB)などの還元剤を使用した化学還元を実行できる。還元剤の濃度は、還元のために最高の条件を決定するために多様であってよい。パターンの原子力顕微鏡写真は還元の前後で得ることができる。AFM画像法は、異なるチップの構造を付着させるために使用するチップを用いて行うことができる。異なるチップが使われる場合、特に付着よりむしろ画像法のためにチップを選択または適応させている場合、画像はさらに優れている可能性がある。一般に、印刷インキの商業的に使用されているインクであるポリマーを本発明に使用できる。
【0042】
他の好ましい態様において、ナノリソグラフィ付着は、DPN印刷による酸化型シリコン基板上のパラジウムアセチルアセトネート(Pdacac)の付着を実行できる。その後の還元は、(1) 例えばホルムアミドのような液体還元剤還元剤、および(2) パターニングされた表面へ熱を適用することにより実行できる。他のシステムは、DMF溶媒のパラジウムアセテートである。パターニングおよび還元の前に、Pd(acac)をクロロホルムなどのハロゲン化溶媒を含む有機溶媒に溶解し、固体チップのコーティングに使用するための、または中空チップを通過させるためのインクを形成することができる。熱処理は還元を行うために十分であることができ、例えば約100℃〜約300℃または約150℃の温度を含む。熱、時間、温度、および大気の条件は、所望のパターンを達成するように調整できる。通常、150℃で1〜5分の加熱時間で所望の結果を達成することができる。付着パターンの安定性は、溶媒洗浄によって、検査することができ、実験条件は安定性を改善するために変更できる。ナノリソグラフィによる付着の実験的変数は基板およびインク組成物を含み、より優れた解像度を得るために変更することもできる。AFM顕微鏡写真は還元の前および加熱の後に得ることができ、パターンの高さの走査分析の使用を含む。画像法パラメータは分解像を改良するために変更できる。
【0043】
場合によっては、金コーティングチップなどのチップは金属塩の還元を直接カンチレバー上で触媒できる。チップ組成物は、これを防止するために変更できる。例えば、アルミニウムコーティングプローブは、チップ上のこの還元を回避するために有用でありうる。通常、本チップは好ましくは、長期使用およびインクとの反応を回避するために選択および適応させる。
【0044】
ナノリソグラフィによってパターニングした金属塩の還元は、液相還元よりむしろ蒸気還元によって実行できる。ここで、還元剤は蒸気の形態に変換され、パターニングされた基板上を通過する。必要に応じて蒸気状態に還元剤を加熱するために、当技術分野において、公知のヒーターを使用できる。場合によっては、この種の処理は、還元の間、最初のパターンの保存を向上させることができる。
【0045】
好ましい態様において、付着は、DPN印刷によって、第二鉄の塩化アンモニウム、酒石酸、硝酸銀、および水からなる銀塩エマルジョンについて、アミノシラン処理されたガラス基板上へ実行することができ、その後、紫外線ランプの下での光還元により現像される。AFM画像法は、パターンを示すために実行できる。
【0046】
他の好ましい態様では、還元工程を、金属塩を還元するために十分な熱および十分な時間を用い、化学的還元剤を使用せずに実行できる。例えば、約400℃未満の温度を使用することができ、または約200℃未満の温度を使用できる。当業者は、所定のインクシステムおよびパターンに応じて温度および実験を選択できる。
【0047】
本発明の付着法はまた、一つまたは複数の付着前工程、インクコーティングの向上を意図した一つまたは複数のプローブ洗浄または化学修飾工程、および一つまたは複数の付着工程を含むことができ、これらはディップペンナノリソグラフィ印刷技術、清浄化工程、および点検工程を含む一つまたは複数の付着後工程を使用してもよい。
【0048】
付着前の基板表面処理工程は以下を含むが(特に決まった順序はない)、これらに限定されるものではない:
(1) プラズマ、紫外線、またはオゾンによる清浄化、洗浄、乾燥、送風乾燥。
(2) 例えばピラニア洗浄、塩基性エッチング(例えば、過酸化水素および水酸化アンモニウム)などの化学洗浄。
(3) インクの輸送、または粘着、または共有結合による修飾を促進するための、基板の化学または物理的な修飾(例えば、酸化シリコンに荷電した表面を与えるための塩基性処理、アミノシラン化剤またはメルカプトシラン化剤によるシラン化、化学的に反応性の官能基を担持しているポリマー)。
(4) 以降の処理工程の副作用からの保護(例えば、レジストまたは薄膜によるコーティング)。
(5) 光学顕微鏡法(例えばAIMS)、電子顕微鏡法(例えばCD SEM)、または画像法(例えばEDS、AES、UPS)、イオン画像法(例えばTOF SSIMS)、もしくは走査プローブ画像法(例えばAFM、AC AFM、NSOM、EFM...)、以下の付着後工程の章において詳述される任意の工程、およびこれらの組合せに由来する技術による基板の点検。
【0049】
プローブ洗浄または修飾段階は以下を含むが(特に決まった順序はない)、これらに限定されるものではない:
(a) プラズマによる清浄化、洗浄、乾燥、送風乾燥。
(b)ピラニア洗浄、塩基性エッチングなどの化学洗浄(例えば、過酸化水素および水酸化アンモニウム)。
(c) インクのコーティング、粘着、または輸送促進するまたは強化するためのプローブの化学的または物理的な修飾(例えば、窒化シリコンチップの荷電表面を与えるための塩基性処理、アミノシラン化剤またはメルカプトシラン化剤を用いるシラン化、ポリ(エチレングリコール)などの小分子またはポリマー剤を用いる非共有結合による修飾)。このような修飾は、多孔性を増加させ、またはインク送達に利用可能な表面積を改良することによって、チップ上のインクの充填を増加させるものを含む。
【0050】
付着工程:
付着工程は、例えばDPN(商標)印刷による一つまたは複数のインクの付着または一つまたは複数のプローブを用いた付着を含むが、これらに限定されるものではない。可能なインクは、前駆体、最終的なパターンの大半を形成する化合物、触媒、溶媒、小分子もしくはポリマー担体剤、ホストマトリックス材料、または犠牲的還元剤、および上記の材料の混合物含むが、これらに限定されるものではない。これらは、層ごとの化学組成の変化を伴うかまたは伴わない、薄膜または厚い多層(多数の付着工程によって形成)として付着させてもよい。
【0051】
付着後工程は以下を含むが(特に決まった順序はない)、これに限定されるものではない:
(1) 例えば加熱ランプ、熱風送風機、またはホットプレートによる基板の加熱。
(2) 電磁放射(例えば、IR、可視光線、および紫外線)または荷電粒子(例えば、銃またはプラズマ源から引き起こされる電子イオン)による基板の照射。本処理は、光感作性剤を用いてまたは用いずに、空気中、真空中、または溶液中において、生じさせてもよい。
(3) 一つまたは複数の溶液へのパターニングされた基板の浸漬。
(4) 電気化学的還元。
(5) 化学還元。
(6) 蒸気またはガスへのパターニングされた基板の曝露。
(7) パターニングされた基板、および上記で概説される工程の全てのナノスケールの局所的等価物の音波処理。適用可能な場合、エネルギーおよび/または組成物の供給源は一つまたは複数のプローブにより提供され、このプローブは、DPNプローブと同一であっても同一でなくてもよく、これらは以下を含むがこれらに限定されるものではない:
(a) 付着した物質または周囲の基板の局所的加熱、
(b) 付着した物質または周囲の基板の局所的照射、およびこれらの全ての組合せ。
【0052】
全てまたはいくつかの工程の遷移は、数回繰り返してもよい。
【0053】
金属ナノ構造はナノワイヤを含んでもよい伝導性のナノスコピックなグリッドの形態であってもよい。例えば、クロスバー構造を形成させることができる。金属層は、各々の上に形成させることができる。構造は、顕微鏡的および巨視的試験方法によって、ナノスコピックな導体パターンを一体化するために含めることができる。レジスタ、コンデンサ、電極、およびインダクターを、回路形成に所望されるように使用できる。半導体、およびトランジスタを所望されるように使用できる。多層の形成を、構造の高さを増加させるために実行できる。異なる金属は多層の異なる層に存在できる。本発明の方法を、電気的に接続された電極に用いることができる。センサ適用において、例えば、金属付着は関心対象の被検体が構造に結合した場合に変更される抵抗率を有することができる。バイオセンサ適用において、例えば、抗体-抗原、DNAハイブリダイゼーション、タンパク質吸着、および他の分子識別のイベントは、抵抗率の変化を誘発するために用いることができる。この発明の方法はまた、バーコード適用のために使用できる。
【0054】
Chenの米国特許第6,579,742号は、例えば、ナノコンピューティングおよびマイクロエレクトロニクス適用のためのインプリンティングにより形成されるナノリソグラフィ構造を記載する。しかし、インプリンティングは、鋳型の粘着性効果から損害をこうむる可能性がある。米国特許第6,579,742号のナノコンピューティング適用および構造は、本明細書記載のナノリソグラフィ法によって実行することができ、この特許はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0055】
基板は、例えば2003年5月23日に出願されたCruchon-Dupeyrat et al.の米国特許出願第10/444,061号「Protosubstrates」に記載のプロト基板でありえる。これは、この印刷された構造の導電率が巨視的方法によって検査されることを可能にする。
【0056】
以下、非制限的な実施例について説明する。
【0057】
実施例
一般的方法:
本方法は、金属ナノパターンの直接的な付着を提供する。酸化化合物および還元化合物を混合することができ、チップに適用し、DPN(商標)印刷または付着によって、基板上の選択された場所に付着させることができる。インク混合物をその後加熱することができる(基板全体の加熱または局所的なプローブ誘発加熱のいずれかによる)。具体的には、金属塩および有機リガンドカクテルを使用することができる。典型的なインク処方は、適当な有機ルイス塩基またはリガンド(アミン、ホスフィン)とともに、金属塩(例えばカルボキシレート、ナイトレート、またはハロゲン化物)を含むことができる。インクの溶解性、反応性、または流動特性を改変する添加物(エチレングリコールなどの小分子、ポリエチレンオキシド、PMMA、ポリビニルカルバゾールなどポリマー)もまた使用してもよい。インク混合物の付着の後、周囲環境または不活性の環境における穏やかな加熱(例えば40〜200℃)は、塩の不均化を促進して金属沈殿物および有機揮発性物質を形成させることができる。本方法は、例えば銅含む種々の金属または金属酸化物を、穏やかな条件下で、有機不純物がほとんどない状態で付着させることを可能にする[例えば、その完全な開示が、特に付着物質に関して参照により本明細書に組み入れられる、Sharma et al.の米国特許第5,980,998号を参照されたい]。反応が起こる前にパターニングされた基板からリガンドが蒸発する場合、潜在的陥穽が生じうる。その場合、加熱前の第二工程において、塩をパターニングした基板を、リガンドに曝露してもよい。
【0058】
付着実験およびAFM画像法を、CPリサーチAFM(Veeco)またはNscriptor(NanoInk)によって実行することができる。付着および画像法両方に対して接触モードを使用することができ、これにはトポグラフィモードまたは横圧モードが含まれる。
【0059】
実施例1:
この方法の使用の一つの具体的な実施例は、クロロホルムに溶解させたパラジウムアセチルアセトネート(1mg/マイクロリットル、通常インクがほぼ飽和した溶液が望ましい)を、酸化したシリコン、ガラス、またはアミノシラン処理されたガラス上にパターニングするために、DPN(商標)印刷または付着を使用する。点のパターニング後、ホルムアミドの液滴(1マイクロリットル)を水平基板に配置し、2分間150℃に加熱した。得られた金属パターンは、溶媒洗浄(水、アルコール、および他の無極性有機物を含む)に対して安定であったが、還元前の塩のパターニングは溶媒洗浄により除去された。図1は、ホルムアミドおよび熱による処理の前(図1a)、および処理の後(図1bおよび1c)の、AFM画像およびパターンの高さの走査を示す。
【0060】
実施例2:
パラジウムナノパターンはDPN印刷により付着させ、蒸気還元によって金属化させた。ジメチルホルムアミドに溶解したパラジウムアセテートからなるDPNインクを、DPN法を使用して酸化シリコン上へパターニングする。使用したDPNペンは、金コーティングされた窒化シリコンプローブであった。この処理もまた、アルミニウムコーティングされたDPNプローブを用いて良好に機能した。その理由は、金コーティングされたプローブがするように、アルミニウムコーティングはカンチレバー上へ直接配置される金属塩の還元を触媒しないからである。パターニング前に、5分間のミリポア水の音波処理によって、シリコン/酸化シリコンウェーハを清浄化した。パターニングされた基板を円錐ポリエチレンチューブ中に垂直に配置し、10マイクロリットルのホルムアミド液をチューブの底に配置した。本チューブを加熱ブロックに配置し、30分間80℃で加熱して、蒸気により金属前駆体の還元を生じさせた。これにより基板上の金属パターンが保存されるので、本方法は有用である。得られる金属構造は、溶媒洗浄および他の一般的な清浄化法に対して抵抗性である。
【0061】
実施例3:
DPNによって付着させたパラジウムナノパターンを、化学還元によって金属化させた。10%のポリエチレンオキシド(MW 10,000)を含むジナトリウムパラジウム水溶液からなるDPNインクを、DPN法を使用して、アミノシラン処理したガラス(Schott Glass company)上へパターニングした。パターニングされた基板をジメチルアミン:ボラン複合体(DMAB)0.03M溶液の溶液に曝露し、金属前駆体の伝導性金属への還元を生じさせた。得られる金属構造は、溶媒洗浄に対して抵抗性である。図2は、DMABによる処理の前(2a)および処理の後(2b、2c)の、AFM画像およびパターンの高さ走査を示す。
【0062】
実施例4:
DPNによって付着させたプラチナナノパターンを、化学還元によって金属化させた。プラチナ四塩化物水溶液からなるDPNインクを、DPN法を使用して、アミノシアン処理されたガラス(Schott Glass company)上へパターニングした。パターニングされた基板をジメチルアミン:ボラン複合体(DMAB)0.03M溶液の溶液に曝露し、金属前駆体の伝導性金属への還元を生じさせた。還元反応は、浸漬の数秒以内に生じる。得られる金属構造は、溶媒洗浄に対して抵抗性である。図3は、DPNによって付着させ、DMABによって還元させたプラチナナノ構造の、AFMによる高さの走査を示す。
【0063】
実施例5:
パラジウムパターンはDPNによって付着させた。パラジウムアセテートのジメチルホルムアミド溶液からなるDPNインクを、DPN法を使用して、酸化シリコン上へパターニングした。パターニング前に、基板を、80℃で15分間ピラニア溶液中で清浄化した。パターニング後、基板を、ホットプレートを使用して空気中で少なくとも1分間加熱した。加熱後、パターンをAFMによって画像化した。得られた金属構造は高いトポグラフィを示し、溶媒洗浄および他の一般的な清浄化法に対して抵抗性である。図4および図5は、所望の構造デザイン(左の図)ならびに還元前(中心の図)および熱還還元後(右の図)の実際のパターンを示す。これらのパターン、特にすでに還元されているパターンの画像法は、例えば付着に使用しない清潔なチップを使用することにより改良できる。
【0064】
好ましい態様:
態様1
以下を含む、所望のパターンの導電被膜を基板上に付着させる方法:
前駆体でコーティングされたチップを使用するナノリソグラフィによって、基板上へ前駆体を所望のパターンで付着させる工程、
リガンドに前駆体を接触させる工程、
リガンドから前駆体に電子を移動させるために十分なエネルギーを加え、これにより前駆体を分解して伝導性沈殿物を所望のパターンで形成し、このようにして導体パターンを直接基板上に形成する工程。
【0065】
態様2
チップがナノスコピックなチップである、態様1の態様。
【0066】
態様3
チップが走査プローブ顕微鏡的チップである、態様1の態様。
【0067】
態様4
チップが原子間力顕微鏡チップである、態様1の態様。
【0068】
態様5
コーティングが少なくとも約80%の純度の金属を含む、態様1の態様。
【0069】
態様6
コーティングが約10オングストローム未満の厚さを有する金属を含む、態様1の態様。
【0070】
態様7
コーティングが少なくとも約100オングストロームの厚さを有する金属含む、態様1の態様。
【0071】
態様8
前駆体がカルボキシレート、ハロゲン化物、偽ハロゲン化物(pseudohalide)、およびナイトレートからなる群より選択される塩を含む、態様1の態様。
【0072】
態様9
前駆体がカルボキシレートを含む、態様1の態様。
【0073】
態様10
パターンが回路を含む、態様1の態様。
【0074】
態様11
リガンドがアミン、アミド、ホスフィン、スルフィド、およびエステルからなる群より選択される物質を含む、態様1の態様。
【0075】
態様12
リガンドが窒素供与体、硫黄供与体、および亜リン酸供与体からなる群より選択される、態様1の態様。
【0076】
態様13
沈殿物が金属を含む、態様1の態様。
【0077】
態様14
沈殿物が銅、亜鉛、パラジウム、プラチナ、銀、金、カドミウム、チタン、コバルト、鉛、スズ、シリコン、およびゲルマニウムからなる群より選択される、態様1の態様。
【0078】
態様15
沈殿物が電気伝導体を含む、態様1の態様。
【0079】
態様16
沈殿物が電気的半導体を含む、態様1の態様。
【0080】
態様17
基板が不導体を含む、態様1の態様。
【0081】
態様18
基板が導体および半導体の少なくとも一つを含む、態様1の態様。
【0082】
態様19
エネルギーを加える工程が熱の適用を含む、態様1の態様。
【0083】
態様20
エネルギーを加える工程が赤外放射または紫外線の適用を含む、態様1の態様。
【0084】
態様21
エネルギーを加える工程が振動エネルギーの適用を含む、態様1の態様。
【0085】
態様22
前駆体が、カルボキシレート、ハロゲン化物、偽ハロゲン化物、ナイトレート、ならびにアミン、アミド、フォスフィン、スルフィドおよびエステルからなる群より選択される物質を含むリガンドからなる群より選択される塩を含む、態様1の態様。
【0086】
態様23
沈殿物が、銅、亜鉛、パラジウム、プラチナ、銀、金、カドミウム、チタン、コバルト、鉛、スズ、シリコン、およびゲルマニウムからなる群より選択される、態様19の態様。
【0087】
態様24
エネルギーを加える工程が放射熱の適用を含む、態様19の態様。
【0088】
態様25
以下の工程を含む、基板上へ所望のパターンの導電金属を印刷する方法:
前駆体でコーティングされたチップを使用するナノリソグラフィを使用して、所望のパターンに従って基板上へ直接的に金属前駆体およびリガンドを描画する工程、ならびに
基板から前駆体の実質的な量を除去することなく、且つ基板から金属の実質的な量を除去することなく、エネルギーを加えることによって前駆体を分解し、所望のパターンの導電金属を形成する工程。
【0089】
態様26
金属のパターンが不純物が約20重量%未満である実質的に純粋な金属を含む、態様25の態様。
【0090】
態様27
分解工程が熱分解工程を含む、態様25の態様。
【0091】
態様28
分解工程が約300℃未満の温度の熱分解を含む、態様25の態様。
【0092】
態様29
金属が元素金属、合金、金属/金属複合材、金属セラミック複合材、および金属ポリマー複合材からなる群より選択される、態様25の態様。
【0093】
態様30
以下の工程を含む、ナノリソグラフィ法:
金属前駆体をチップから基板上へ付着させてナノ構造を形成させ、その後、前駆体ナノ構造を金属付着物に変換する工程。
【0094】
態様31
付着および変換が、チップと基板の間の電気バイアスを使用せずに実行される、態様30の態様。
【0095】
態様32
付着および変換が、基質以外の化学薬剤を使用して実行される、態様30の態様。
【0096】
態様33
チップがナノスコピックなチップである、態様30の態様。
【0097】
態様34
チップが走査プローブ顕微鏡的チップである、態様30の態様。
【0098】
態様35
チップがAFMチップである、態様30の態様。
【0099】
態様36
付着および変換が、チップと基板の間の電気バイアスを使用せずに実行される、態様35の態様。
【0100】
態様37
方法が多層を形成するために繰り返される、態様30の態様。
【0101】
態様38
チップを前駆体を反応しないように適応させる、態様30の態様。
【0102】
態様39
方法が、少なくとも一つのナノワイヤを他の構造に接続するために用いられる、態様30の態様。
【0103】
態様40
方法が、少なくとも2本の電極を接続するために用いられる、態様30の態様。
【0104】
態様41
方法が、センサを作製するために用いられる、態様30の態様。
【0105】
態様42
方法が、リソグラフィテンプレートを作製するために用いられる、態様30の態様。
【0106】
態様43
方法が、バイオセンサを作製するために用いられる、態様30の態様。
【0107】
態様44
以下から本質的になるナノリソグラフィ法:
金属前駆体から本質的になるインク組成物をナノスコピックなチップから基質上へ付着させて、ナノ構造を形成させる工程、および
その後、ナノ構造の金属前駆体を金属形態に変換する工程。
【0108】
態様45
変換が、化学薬剤を使用しない熱変換である、態様44の態様。
【0109】
態様46
変換が、還元剤の使用により実行される化成的変換である、態様44の態様。
【0110】
態様47
還元剤が、変換を実行するために蒸気状態で使用される、態様44の態様。
【0111】
態様48
チップがAFMチップである、態様44の態様。
【0112】
態様49
チップが前駆体と反応しない表面を含む、態様44の態様。
【0113】
態様50
方法が、多層構造を生成させるために複数回繰り返される、態様44の態様。
【0114】
態様51
基板上のミクロ構造またはナノ構造の形態のチップから基板上に金属前駆体インク組成物を付着させ、約1ミクロン以下で互いに分離した離散性の物体を有するアレイを形成する工程を含む、インクと基板の間の電気化学的なバイアスまたは反応を使用せずに印刷する方法。
【0115】
態様52
前駆体から金属を形成する工程をさらに含む、態様51の態様。
【0116】
態様53
離散性の物体が約500nm以下で互いに分離する、態様51の態様。
【0117】
態様54
離散性の物体が約100nm以下で互いに分離する、態様51の態様。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】実施例1における、本発明のパラジウム構造のAFMデータを示す。
【図2】実施例3における、本発明のパラジウム構造のAFMデータを示す。
【図3】実施例4における、本発明のプラチナ構造のAFMデータを示す。
【図4】実施例5における、本発明のパラジウム構造のAFMデータを示す。
【図5】実施例5における、本発明のパラジウム構造のAFMデータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、基板上へ所望のパターンの導電被膜を付着させる方法:
前駆体でコーティングされたチップを使用するナノリソグラフィによって、所望のパターンで基板上へ前駆体を付着させる工程、
リガンドに前駆体を接触させる工程、
リガンドから前駆体に電子を移動させるために十分なエネルギーを加え、これにより前駆体を分解して所望のパターンの伝導性の沈殿物を形成させ、このようにして直接的に導体パターンを基板上に形成させる工程。
【請求項2】
以下の工程を含む、基板上へ所望のパターンの導電金属を印刷する方法:
前駆体でコーティングされたチップを使用するナノリソグラフィを使用して、所望のパターンに従って基板上へ直接的に金属前駆体およびリガンドを描画する工程、ならびに
基板から前駆体の実質的な量を除去することなく、且つ基板から金属の実質的な量を除去することなく、エネルギーを加えることによって前駆体を分解し、所望のパターンの導電金属を形成させる工程。
【請求項3】
以下の工程を含む、ナノリソグラフィ法:
金属前駆体をチップから基板上へ付着させて、ナノ構造を形成させ、その後、前駆体ナノ構造を金属付着物に変換する工程。
【請求項4】
以下の工程から本質的になる、ナノリソグラフィ法:
金属前駆体から本質的になるインク組成物をナノスコピック(nanoscopic)なチップから基板上へ付着させて、ナノ構造を形成させる工程、および
その後、ナノ構造の金属前駆体を金属形態に変換する工程。
【請求項5】
基板上のミクロ構造またはナノ構造の形態で、チップから基板上へ金属前駆体インク組成物を付着させて、約1ミクロン以下で互いに分離する離散性の物体を有するアレイを形成する工程を含む、インクと基板の間の電気化学的バイアスまたは反応を使用せずに印刷する方法。
【請求項6】
前駆体から金属を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
離散性の物体が、約500nm以下で互いに分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
離散性の物体が、約100nm以下で互いに分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
チップが、スキャンプローブチップである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
チップが原子間力顕微鏡チップである、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−503725(P2007−503725A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524826(P2006−524826)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/027631
【国際公開番号】WO2005/037418
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(505148966)ナノインク インコーポレーティッド (3)
【Fターム(参考)】