説明

パターン修正装置

【課題】塗布ノズルの詰まりを抑制することが可能なパターン修正装置を提供する。
【解決手段】このパターン修正装置では、噴霧部15の容器19の側面の出口19aに接するように減圧部16を配置し、減圧部16の集気部23をホース37を介して加熱部17のパイプ27に接続する。したがって、減圧部16によって霧粒子の濃度と圧力が低減されるので、ホース37の内壁に付着する霧粒子の量が少なくなり、霧粒子が液滴になって塗布ノズル30に入る可能性が低くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパターン修正装置に関し、特に、基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置に関する。より特定的には、この発明は、フラットパネルディスプレイの製造工程において発生する電極のオープン欠陥、プラズマディスプレイのリブ(隔壁)欠損などを修正するパターン修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの大型化、高精細化に伴い、ガラス基板上の電極やリブなどに欠陥が存在する確率が高くなっており、歩留まりの向上を図るため欠陥を修正する方法が提案されている。
【0003】
たとえば、プラズマディスプレイの背面ガラス基板上には、高さが150μm程度で幅が60〜100μm程度のリブが数百μmピッチで形成されている。このリブの一部が欠けている場合、塗布針に修正用ペーストを付着させて欠損部に塗布し、修正用ペーストが垂れないように修正用ペーストを焼成しながら積層し、リブ幅方向にはみ出た部分はレーザカットとスクラッチ針によって削り取り、リブの正常な高さよりも高く盛り上がった部分はスキージ機能により平らにならしてリブを修正する(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
また、液晶ディスプレイのガラス基板の表面には電極が形成されている。この電極が断線している場合、塗布針先端に付着させた導電性ペーストを断線部に塗布し、電極の長さ方向に塗布位置をずらしながら複数回塗布して電極を修正する(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−299059号公報
【特許文献2】特開平8−292442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、リブを修正する方法では、塗布針がリブの欠損部とペーストタンクとの間を何度も往復してリブ欠損部を修正用ペーストで埋めるので、欠損部が大きいほど塗布時間が長くなるという問題がある。また、リブ幅からはみ出した修正用ペーストを除去するカット用レーザ部とスクラッチ機構、これにより生じる異物を吸引する機構、正常部より盛り上がった修正部をスキージ機構により再整形する機構などが必要となり装置構成が複雑になる。
【0006】
また、電極を修正する方法では、電極の断線部とペーストタンクとの間を何度も往復させて塗布針に導電性ペーストを補充しながら塗布するので、断線部が長いほど修正にかかる時間が長くなる。また、円形の塗布部を1列に配置した形状にペーストが塗布されるので、電極の幅からはみ出た部分は塗布後にレーザカット処理する必要があった。
【0007】
そこで、本願発明者は、少なくとも欠陥部を含む範囲で基板を加熱した状態で、噴霧部で修正液を霧状にし、霧状にされた修正液を減圧部で減圧し、減圧部で減圧した霧状をヘッド部で収束し、塗布ノズルを介して欠陥部に噴射し、修正液を欠陥部に堆積させて修正するパターン修正方法を提案した(たとえば特願2005−50766号参照)。この方法では、修正液を補充しながら噴出することができるので、塗布針が欠陥部とペーストタンクとの間を何度も往復していた従来に比べ、欠陥部を迅速に修正することができる。
【0008】
しかし、このパターン修正装置では、噴霧部で発生する霧の濃度が濃いため、噴霧部と減圧部を接続するホース内に霧が付着し、ホース内に蓄積した霧が液滴となって減圧部に流れ、その結果、早期に塗布ノズルが詰まることも想定される。塗布ノズルが詰まると、パターン修正装置の使用を中止して塗布ノズルの洗浄などを行なう必要が生じ、パターン修正装置の稼働時間が短くなってしまう。
【0009】
また、減圧部では、噴霧部で霧化のために導入したアトマイズガスの多くを回収して霧の圧力を減圧するが、その際、軽くて流れの遅い霧は減圧部で回収される。回収された霧粒子は液滴となって減圧部に留まり、減圧部内部を汚染する。特に減圧部のノズル部と集気部の表面には霧粒子が付着し易く、この付着物が集気部の内部に落下すれば、塗布ノズルの詰まりが発生する。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、塗布ノズルの詰まりを抑制することが可能なパターン修正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るパターン修正装置は、基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、少なくとも欠陥部を含む範囲で基板を加熱する加熱手段と、修正液を霧状にして欠陥部に噴射し、修正液を欠陥部に堆積させて欠陥部を修正する堆積手段とを備え、堆積手段は、修正液を霧状にする噴霧部と、霧状にされた修正液の圧力を減ずる減圧部と、減圧された霧状の修正液を収束して塗布ノズルから噴出するヘッド部とを含み、噴霧部と減圧部は近接して配置され、減圧部とヘッド部はホースで接続されていることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、噴霧部は、修正液が注入された容器と、容器内に設けられた噴霧ノズルと、容器の側壁に形成され、噴霧ノズルから噴出された霧状の修正液を容器外に導出するための貫通孔とを有し、減圧部は、貫通孔に接続されるノズル部と、ホースを介してヘッド部に接続される集気部と、排気ポンプに接続される排気口とを有する。
【0013】
また好ましくは、容器は、修正液が注入された瓶と、貫通孔が形成され、瓶の上端開口部を閉じる蓋部材とを有し、減圧部は蓋部材に固定されている。
【0014】
また好ましくは、さらに、排気口と排気ポンプの間に設けられ、修正液の滴を捕集する捕集器を備える。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係るパターン修正装置では、噴霧部と減圧部は近接して配置され、減圧部とヘッド部はホースで接続されている。したがって、減圧部を通過した霧粒子の濃度は既に低下しているので、霧粒子がホース内に付着し難くなり、塗布ノズルが詰まり難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態について説明する前に、まず、この発明が適用されるパターン修正装置の基本構成およびその動作について説明する。
【0017】
図1は、この発明が適用されるパターン修正装置の全体構成を示す図である。図1において、パターン修正装置1は、基板の表面を観察する観察光学系2と、観察された画像を映し出すモニタ3と、観察光学系2を介してレーザ光を照射し不要部をカットするカット用レーザ部4と、欠陥修正用の修正材料を数μm以下の微粒子にして溶媒中に分散させた修正液を霧状にして欠陥部に噴出し、微粒子を欠陥部に堆積させる微粒子堆積装置5と、欠陥部を加熱して霧状の修正液中の溶媒を気化させる基板加熱部6と、欠陥部を認識する画像処理部7と、装置全体を制御するホストコンピュータ8と、装置機構部の動作を制御する制御用コンピュータ9とを備える。さらに、その他に欠陥部を持つ基板をXY方向(水平方向)に移動させるXYステージ10と、XYステージ10上で基板を保持するチャック部11と、観察光学系2や微粒子堆積装置5をZ方向(垂直方向)に移動させるZステージ12などが設けられている。
【0018】
図2は、図1に示したパターン修正装置の要部を示す断面図である。欠陥部13aがある電極が形成された基板14は、チャック部11に固定され、そのチャック部11はXYステージ10によりXY方向に移動される。なお、基板14全体を加熱するヒータをチャック部11に内蔵して、基板14の上側から欠陥部13aを含む範囲を部分加熱可能な基板加熱部6と併用することも可能である。基板14が大型になる場合には、チャック部11内にヒータを内蔵して基板14全体を加熱することは大掛かりになるため、このような場合には基板加熱部6のみの構成にする方が好ましい。基板加熱部6としては、LD光源やCOレーザなどを用いることが可能である。
【0019】
微粒子堆積装置5は、修正に用いる修正材料を数μm以下の微粒子にし、それを溶媒中に均一に分散して液状化した修正液を霧状にする噴霧部15と、霧状にされた修正液の流れの圧力を減じる減圧部16と、減圧された霧状の修正液を加熱する加熱部17と、加熱された霧状の修正液を収束して欠陥部13aに噴出し、欠陥部13aに微粒子を堆積するヘッド部18とを含む。
【0020】
噴霧部15の容器19内には修正液20が注入されている。電極の欠陥部13aを修正する場合には、修正液20として、金属ナノ粒子を用いた、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト、あるいは透明電極材料の微粒子を溶媒中に分散したものが使用される。または、修正液20として、中心金属の周りにイオンや分子が結合した化合物を含む金属錯体溶液や金属コロイドを用いてもよい。また、プラズマディスプレイの欠陥部(リブ欠け欠陥)を修正する場合には、修正液20として、リブの材料である低融点ガラス粉末を溶媒中に均一に分散させたものが使用される。
【0021】
容器19の中央には噴霧ノズル21が設けられている。噴霧ノズル21の下部は修正液20に浸けられている。容器19の外部から噴霧ノズル21にアトマイズガス(たとえば窒素ガス)を供給すると、アトマイズガスは噴霧ノズル21の上部の小径(0.3mm程度)の貫通孔21aおよび噴出口21bを介して容器19内に噴出される。このとき、噴出口21bにおけるアトマイズガスの流速が速くなって周囲よりも気圧が下がるため、噴霧ノズル21下端の吸入口21cから修正液20が吸い上げられ、アトマイズガスが噴出口21bから噴出するときに修正液20も噴出口21bの周囲に飛び散り霧化される。この原理は普通の霧吹きの原理と同じでありベルヌーイの原理を応用したものである。大きな霧粒子は容器19内に落下、あるいは、容器19の内壁面に衝突して容器19内に留まり、微細な霧粒子だけが減圧部16に送られる。
【0022】
なお、アトマイズガスとしては、修正液20が酸化しないように窒素ガスのような不活性ガスを用いることが好ましいが、酸化しない修正液20であれば空気でも構わない。また、修正液20を霧状にするためにアトマイズガスを用いたが、修正液20中の修正材料がサブミクロンのような超微粒子であれば、超音波振動子による霧化装置を用いても構わない。
【0023】
また、修正液20中の修正材料の微粒子が時間の経過により沈殿し易い場合には、撹拌子を容器19内に入れ、容器19の底に撹拌装置(マグネチックスターラ)を設置して修正液20を常時撹拌しても良い。
【0024】
減圧部16は、一般的に知られているバーチャルインパクタと同じものであり、修正液20の霧粒子を分級するものである。小さな霧粒子はここで除去され、霧粒子の流れの圧力が減じられる。減圧部16は、ノズル部22と集気部23と排気管24と外管25から構成される。ノズル部22と集気部23とは一定の隙間26を保って対峙している。ノズル部22から噴出された霧粒子のうちの流速が速い霧粒子や重い霧粒子は集気部23を介して次段に供給されるが、流速が遅い霧粒子や軽い霧粒子などは排気管24を介して排気ポンプ(図示せず)により排出される。
【0025】
加熱部17は、集気部23と次段を結ぶパイプ27を含む。パイプ27の外周部にはヒータ28と温度センサ29が取り付けられ、パイプ27が設定温度になるように制御され、霧粒子を加熱する機能を持つ。霧粒子を加熱することで、欠陥部13aに霧粒子が付着した時の流れや飛散を抑制する。なお、ヒータ28の周りは断熱部材(図示せず)で覆われている。また、修正液20によっては、図3に示すように加熱部17を省略することも可能である。
【0026】
図2に戻って、ヘッド部18は、霧粒子の周りをシースガス(たとえば窒素ガス)で覆いこみ、霧粒子の流れを収束させてヘッド部18下端の塗布ノズル30から欠陥部13aに向けて霧粒子を噴出する。塗布ノズル30の噴出口の内径は100〜200μm程度であり、シースガスによって噴出口の内径の1/10程度まで霧粒子の流れを収束させることが可能である。
【0027】
シャッタ31は、欠陥修正を行う前に基板14上に霧粒子が噴出されないように塗布ノズル30から噴出される霧粒子を受けるものである。修正開始時にシャッタ31を開放して欠陥修正を行ない、修正完了と同時にシャッタ31を塗布ノズル30の先端と基板14の間に移動させ、シャッタ31で霧粒子を受ける。なお、シャッタ31に、塗布ノズル30から噴出された霧粒子を吸引する機能を持たせてもよい。
【0028】
次に、このパターン修正装置の使用方法について説明する。図4(a)は、基板14の表面に形成された電極13のオープン欠陥部13aを示す図であり、図4(b)はオープン欠陥部13aを修正する途中経過を示す図である。XYステージ10を駆動させて塗布ノズル30と基板14を相対的に移動させ、欠陥部13aの一方端から他方端に向けて修正材料の微粒子を堆積させていく。このとき、塗布ノズル30の先端と基板14の表面の間隔を一定の距離(5mm前後)に保って非接触で修正することができる。
【0029】
微粒子の堆積層の線幅を一定に保つためには、欠陥部13aを含む範囲で基板14の一部分または基板14全体を最適な温度に保つとともに、噴霧部15に供給するアトマイズガスの流量、減圧部16の排気流量、ヘッド部18のシースガスの流量などを最適値に管理する必要がある。なお、塗布ノズル30の先端と基板14の表面の間隔が微粒子の堆積層の線幅に及ぼす影響は小さい。
【0030】
図4(c)は、欠陥部13aの修理が完了した状態を示す図である。微粒子の堆積層からなる修正部32は基板加熱部6によりさらに本焼成しても良いし、基板14全体を別工程の炉で再焼成しても構わない。なお、修正膜厚が不足する場合は、複数の微粒子層を積層すれば良い。また、修正部32の線幅が電極13の線幅よりも太くなったり、修正部32以外の部分に微粒子が付着した場合は、レーザ部4を用いて不要部をレーザカットしてもよい。
【0031】
また、図5(a)〜(c)に示すように、プラズマディスプレイの背面ガラス基板34の表面に形成されているリブ35の一部が欠落したリブ欠け欠陥部35aを修正することも可能である。
【0032】
図5(a)において、プラズマディスプレイの背面ガラス基板34の表面に形成されたリブ35の一部が欠落したリブ欠け欠陥部35aの位置を検出する。次に、そのリブ欠け欠陥部35aの上方の所定位置に塗布ノズル30の先端を配置し、図5(b)に示すように、基板加熱部6を用いて欠陥部35aを加熱しながらシャッタ31を開けて塗布ノズル30から欠陥部35aに霧状の修正液20を噴出し、かつ、XYステージ10を移動させて欠陥部35aに微粒子の堆積層36_1を形成する。基板加熱部6の温度は修正液20の溶媒が蒸発して乾燥する程度の温度でよく、基板表面の温度が150℃から200℃程度になるように調整される。
【0033】
引き続き、XYステージ10を往復移動させて複数の堆積層36_2〜36_nを積層し、最終的には図5(c)に示すように、欠陥部35aがリブ35のトップ面、あるいはそれ以上になるまで積層する。積層の終了後、修正部を基板加熱部6を用いて本焼成しても良いし、背面ガラス基板34を炉で焼成しても構わない。
【0034】
図5の例では、欠陥部35aの長さ以上に修正液20の堆積層を形成しており、リブトップ面よりも突出した堆積層は、焼成後に研磨テープ等により除去される。
【0035】
以上のように、このパターン修正装置では、加熱した欠陥部13a、35aに霧状の修正液20を噴出し、欠陥部13a、35aに修正材料の微粒子を堆積させ、堆積層を欠陥部13a、35aに描画するので、塗布針を用いていた従来に比べ、修正時間の短縮化を図ることができる。
【0036】
なお、このパターン修正装置では、XYステージ10により基板14,34を移動させて堆積層を描画したが、基板14,35を動かさずに微粒子堆積装置5を移動するようにして堆積層を描画してもよい。
【0037】
また、XYステージ10としては、一軸ステージをXY方向に重ねたものや、基板を固定してX軸とY軸とを分離して駆動するガントリー方式など多種ステージ形式が考えられ、ここに示したステージには限定されない。
【0038】
さて、上記パターン修正装置1で欠陥部13a,35aを修正する際には、まず、微粒子堆積装置5の噴霧部15で修正液20の霧化が行われ、ここで発生した霧はホースなどを経由して減圧部16に送られ、その圧力を減じた霧粒子の流れはその直下にある加熱部17のパイプ27を経由してヘッド部18に入り、最終的に塗布ノズル30からシースガスに包まれて噴射される。
【0039】
このような構成の場合、噴霧部15で発生する霧の濃度は濃く、噴霧部15と減圧部16とを接続するホースの内壁に霧粒子が付着し易く、最悪の場合、ホース内に蓄積した霧粒子が液滴となって減圧部16に流れ、その結果、早期に塗布ノズル30の詰まりを発生する要因になる。
【0040】
また、減圧部16で霧の圧力を減圧、つまり、噴霧部15で霧化のために入力したアトマイズガスの多くを減圧部16で回収して霧の圧力を減圧するが、その際、軽い霧粒子や流れの遅い霧粒子は減圧部16で回収されるため、回収された霧粒子の多くは液滴となって減圧部16に留まり、減圧部16の内部を汚染する。特に減圧部16のノズル部22と集気部23の表面には霧粒子が付着し易く、この付着物が集気部23の内部に落下すれば、塗布ノズル30の詰まりを発生する。特に、ヘッド部18の真上に減圧部16が位置するため、上述の説明から理解できるように微粒子堆積装置5の塗布ノズル30を詰らせ易い構造となっている。
【0041】
また、中心粒径が数μm単位の微粒子を含む修正液20をアトマイズガスで霧化する場合、微粒子堆積装置5内は修正液20の液滴で汚れ易い。たとえば、プラズマディスプレイのリブを修正するリブペーストは、中心粒径が2〜3μmの低融点ガラスを主成分しており、粘度も100mPa・s前後と比較的高く、微粒子堆積装置5でリブ修正を行う際には、銀ナノペストや銀コロイドを用いた電極修正に比べて塗布ノズル30が詰まり易く、連続して使用可能な時間が短くなる傾向がある。
【0042】
そこで、この実施の形態では図6に示すように、噴霧部15の容器19の上部側面に設けた霧粒子の出口19aに接するように減圧部16を配置する。減圧部16は噴霧部15の側面に横向きに配置され、減圧部16の集気部23と後段の
加熱部17のパイプ27はホース37を介して接続される。たとえば、ホース37の両端は、継手38によって集気部23およびパイプ27に固定される。また、ホース37としては、耐薬品性に優れたフッ素系ホースなどを用いる。
【0043】
減圧部16を通過することで霧粒子の濃度と圧力は減少するため、ホース37の内壁に付着する霧粒子の量は、図2に示した噴霧部15と減圧部16とを接続するホース内に比べれば少なくなる。したがって、加熱部17内のパイプ27やヘッド部18の塗布ノズル30には霧粒子のみが流入することとなり、霧粒子が塊となった液滴が塗布ノズル30に入って塗布ノズル30が詰まる可能性は低減する。なお、減圧部16と加熱部17の間のホース37は短い方が好ましい。ホース37が長過ぎると、ホース37内に付着する霧粒子の量が増加し、ヘッド部18に到達する霧の量が減少して描画線が薄くなる。
【0044】
また、減圧部16の排気管24は下を向けて配置されており、排気管24は下方の捕集器39に接続され、捕集器39の側面に設けられた排気管39eは排気ポンプ(図示せず)に接続される。これにより、減圧部16の外管25内に溜まった修正液20の液滴を効率良く捕集器39に回収することができ、減圧部16内の汚れを低減することができる。
【0045】
また、ノズル部22と集気部23は横向きに配置されるため、これらの表面に付着した霧粒子が集まって液滴になっても、それらの内周部に入り難くなる。また、減圧部16で排気される気体中には霧粒子が含まれており、排気管24の近傍では霧粒子が集まって液滴になるが、その液滴は捕集器39に落下するため、排気ポンプ(図示せず)側には霧粒子は流れない。たとえ流れたとしても、わずかであり、排気管39eと排気ポンプとの間に配置したフィルタ(図示せず)で捕集される。
【0046】
図7は、加熱部17を省略した構成を表しており、霧粒子を加熱する必要がなければ、描画する機構はヘッド部18のみとなり、装置は小型軽量され、ヘッド部18をXY方向に移動して描画修正する場合には、そのステージもそれに合わせて小型化が可能となる。
【0047】
図8は、噴霧部15と減圧部16を一体化した構成の具体例を示す図である。容器19は、ねじ口ガラス瓶40と蓋部材41で構成される。修正液20の霧化を見やすくするため、ねじ口ガラス瓶40としては透明なものを用いる方が好ましい。また、ねじ口ガラス瓶40として内径が小さなものを採用すれば、その中に入れる修正液20の量を少なくできるため、短期間で劣化する修正液20を用いる場合は経済的になる。また、ねじ口ガラス瓶40の内径が小さい場合、噴霧ノズル21の噴出口21bとガラス瓶40の内壁面との距離が狭くなるため、噴霧された霧が内壁面に衝突しやすくなり、霧粒子の小径化を図ることができる。たとえば、ねじ口ガラス瓶40として外径が30mm程度のものを用いれば、噴霧部15全体が小型になる。
【0048】
ガラス瓶40は、透明な円筒状の樹脂(たとえばポリカーボネイト)からなる筒42に内挿され、ガラス瓶40の底は撹拌装置(マクネチックスターラ)43の上面に接触して位置固定される。撹拌装置43は、修正液20とともにガラス瓶40内に入れられた撹拌子を回転させて修正液20を撹拌する。筒42は、撹拌装置43を内蔵するためのケース44にねじ止めされ、ケース44の底には蓋45がねじ止めされて、撹拌装置43をケース44内に支持している。
【0049】
ガラス瓶40のねじ口部40aには蓋部材41の下端部に形成された雌ねじ部41aが螺合され、ガラス瓶40の上端部が蓋部材41で閉蓋されている。気密性を高めるため、ガラス瓶40の上端と蓋部材41の間にはOリング46が設けられている。
【0050】
蓋部材41の側面には凹部41bが設けられ、この凹部41bに減圧部16が嵌合固定される。平坦な凹部41bを得るため、蓋部材41は、たとえば、断面四角形状とされている。ノズル部22と集気部23はリング部材47の両端面に配置され、ノズル部22の一端面は凹部41bに接触し、集気部23の後方にはリング状の溝48aが形成された側面部材48が当接しており、減圧部16の内部は、Oリング49〜52によって密閉される。なお、ノズル部22の中央に開けられた孔22aは、蓋部材41の側面に開けられた貫通孔41cに連通するように固定され、リング部材47と側面部材48はねじ53によって蓋部材41の凹部41bに固定される。
【0051】
集気部23の中央に開けられた孔23aは、側面部材48の中央に開けられた貫通孔48bに連通し、その後部にある継手38に繋がる。また、集気部23の周りには小径孔23bが複数開けられ、この背後に溝48aが位置している。
【0052】
側面部材48の下部には溝48aに貫通する排気孔48cが開けられ、排気孔48cの口元には雌ねじ部が形成され、この雌ねじ部に捕集器39の筒部39a上端の雄ねじ部39bが螺合されている。排気孔48cの周囲と捕集器39との間にはシール54が設けられている。捕集器39の筒部39aの底には蓋39cが螺合されており、筒部39aと蓋39cの間にOリング55を介在させて密封している。捕集器39の筒部39aの側面には貫通ねじ孔39dが開けられ、そのねじ孔39dには継手56が固定される。継手56に接合するホース下流にある排気ポンプ(図示せず)によって減圧部16内を排気する。捕集器39に溜まった修正液20を定期的に排出する場合には、捕集器39を側面部材48から外して修正液20を排出する。
【0053】
蓋部材41の上部には貫通孔41dが開けられ、その貫通孔41dにはアトマイズガスを注入するためのチューブ57が内挿され、チューブ57の下部には噴霧ノズル21が固定される。また、チューブ57の上部には継手58が固定され、継手58に接続されるホースからアトマイズガスが供給される。チューブ57は貫通孔41dに対して進退自由に移動できるように保持されている。すなわち、ナット59が蓋部材41上端の突起部41eの外周部に形成した雄ねじに螺合されると、ナット59の内端面によってテーパ部材60(たとえば、フッ素樹脂製)が下方に押し付けられ、Oリング61が突起部41eの内周部に押し込まれる。これにより、チューブ57とのシールが行われると同時に、チューブ57が貫通孔41d内で任意の位置に固定される。
【0054】
継手62は蓋部材41の側面に開けられた貫通ねじ孔41fに螺合され、継手62はホースを介して電磁バルブ(図示せず)の入力側に接続され、通常、電磁バルブは閉じた状態にある。また、この電磁バルブの入力側には圧力センサ(図示せず)が取り付けられる。この圧力センサの検出結果を元に、容器19に相当するねじ口ガラス瓶40の内圧が異常に高くなった場合には、電磁バルブを開いてねじ口ガラス瓶40の内圧を下げる。ただし、これらは省略することも可能である。この場合、ガラス瓶40の表面を保護フィルムで覆ってあれば、割れた際のガラス飛散を防止できる。また、ガラス瓶40の代わりに耐薬品性に優れた樹脂部材やステンレス部材を用いても構わない。
【0055】
このように、容器19を構成する蓋部材41の側面に減圧部16を固定し、減圧部16の下方に捕集器39を設置したため、修正液20中に含まれる微粒子の径が比較的大きな場合でも、減圧部16を通過した霧粒子の圧力および濃度は低くなっているため、減圧部16とヘッド部18、または減圧部16と加熱部17とを接続するホース37内部への霧粒子の付着を抑制することができる。したがって、塗布ノズル30の詰まりを改善することができ、装置の使用時間を延長することができる。この場合であっても、ホース37が接続されるヘッド部18側または、加熱部17側に近い位置に捕集器を挿入してもよい。
【0056】
また、加熱部17を省略して減圧部16とヘッド部18をホース37で接続すれば、微粒子堆積装置5の描画部はヘッド部18だけになって軽量小型になる。したがって、小型の駆動装置でヘッド部18を自在に動かして描画することができる。
【0057】
また、ねじ口ガラス瓶40は、ただ単に透明な筒42の上側から内挿するだけで工具を使わずに固定ができるので、作業が簡単である。また、ねじ口ガラス瓶40として透明なものを用いた場合は、噴霧ノズル21から噴霧される霧粒子の状態を観察しながらアトマイズガス流量を設定することができる。さらに、ガラス瓶40の外周部を樹脂でできた筒42で覆うので、万一、ガラス瓶40が割れた場合であっても、ガラス片の飛散は最低限に留まる。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明が適用されるパターン修正装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した微粒子堆積装置の構成を示す断面図である。
【図3】図2に示した微粒子堆積装置の他の構成を示す断面図である。
【図4】図1に示したパターン修正装置の使用方法を示す図である。
【図5】図1に示したパターン修正装置の使用方法を示す他の図である。
【図6】この発明の一実施の形態によるパターン修正装置の要部を示す図である。
【図7】実施の形態の変更例を示す図である。
【図8】図6および図7に示した噴霧部および減圧部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 パターン修正装置、2 観察光学系、3 モニタ、4 カット用レーザ部、5 微粒子堆積装置、6 基板加熱部、7 画像処理部、8 ホストコンピュータ、9 制御用コンピュータ、10 XYステージ、11 チャック部、12 Zステージ、13 電極、13a オープン欠陥部、14 基板、15 噴霧部、16 減圧部、17 加熱部、18 ヘッド部、19 容器、19a 出口、20 修正液、21 噴霧ノズル、21a 貫通孔、21b 噴出口、21c 吸入口、22 ノズル部、23 集気部、24 排気管、25 外管、26 隙間、27 パイプ、28 ヒータ、29 温度センサ、30 塗布ノズル、31 シャッタ、32 修正部、34 背面ガラス基板、35 リブ、35a リブ欠け欠陥部、36_1〜36_n 堆積層、37 ホース、38,56,58,62 継手、39 捕集器、39a 筒部、39b 雄ねじ部、39c 蓋、39d 貫通ねじ孔、39e 排気管、40 ねじ口ガラス瓶、40a ねじ口部、41 蓋部材、41a 雌ねじ部、41b 凹部、41c,41d 貫通孔、41e 突起部、41f 貫通ねじ孔、42 筒、43 撹拌装置、44 ケース、45 蓋、46,49〜52,55,61 Oリング、47 リング部材、48 側面部材、48a 溝、48b 貫通孔、48c 排気孔、53 ねじ、54 シール、57 チューブ、59 ナット、60 テーパ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、
少なくとも前記欠陥部を含む範囲で前記基板を加熱する加熱手段と、
修正液を霧状にして前記欠陥部に噴射し、前記修正液を前記欠陥部に堆積させて前記欠陥部を修正する堆積手段とを備え、
前記堆積手段は、前記修正液を霧状にする噴霧部と、霧状にされた修正液の圧力を減ずる減圧部と、減圧された霧状の修正液を収束して塗布ノズルから噴出するヘッド部とを含み、
前記噴霧部と前記減圧部は近接して配置され、前記減圧部と前記ヘッド部はホースで接続されていることを特徴とする、パターン修正装置。
【請求項2】
前記噴霧部は、前記修正液が注入された容器と、前記容器内に設けられた噴霧ノズルと、前記容器の側壁に形成され、前記噴霧ノズルから噴出された霧状の修正液を前記容器外に導出するための貫通孔とを有し、
前記減圧部は、前記貫通孔に接続されるノズル部と、前記ホースを介して前記ヘッド部に接続される集気部と、排気ポンプに接続される排気口とを有することを特徴とする、請求項1に記載のパターン修正装置。
【請求項3】
前記容器は、前記修正液が注入された瓶と、前記貫通孔が形成され、前記瓶の上端開口部を閉じる蓋部材とを有し、
前記減圧部は前記蓋部材に固定されていることを特徴とする、請求項2に記載のパターン修正装置。
【請求項4】
さらに、前記排気口と前記排気ポンプの間に設けられ、前記修正液の滴を捕集する捕集器を備えることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のパターン修正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−152219(P2007−152219A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350525(P2005−350525)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】