説明

パッシブマトリクス有機発光ダイオード用出力ドライバ

【課題】漏れ電流の発生を防止した、PMOLEDを駆動する出力ドライバを提供すること。
【解決手段】低電源電圧端に接続され、入力される電流の値に比例する電流を出力する低電圧アナログ部(310)と、高電源電圧端に接続され、前記比例する電流が出力されると通電する高電圧出力ドライバ部(340)と、低電圧アナログ部(310)及び高電圧出力ドライバ部(340)を断続するスイッチ部(320)と、高電圧出力ドライバ部(340)及びスイッチ部(320)の間に挿入される、少なくとも1つの補償ダイオード(330)とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブマトリクス有機発光ダイオード(PMOLED:Passive Matrix Organic Light Emitting Diode)に関し、より詳細には、PMOLEDを駆動する出力ドライバの漏れ電流の発生を防止することができる回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、従来のPMOLEDを駆動する出力ドライバは、低電圧アナログ部110と、高電圧出力ドライバ部130と、その間に、PWM(Pulse−Width Modulation)スイッチ120とを備えている。低電圧アナログ部110はミラー回路を構成する第1〜第4NMOSトランジスタ112、114、116、及び118を備え、一端が低電源電圧端Vinに接続されている。第1NMOSトランジスタ112に電流Iが流れると、電流ミラー効果により、第3NMOSトランジスタ116にも同じ大きさの電流Iが流れる。これにより、PWMスイッチ120のドレイン(D)−ソース(S)間に電流が流れ、高電圧出力ドライバ部130内の高電圧PMOSトランジスタ132、134、136、及び138に電流が流れる。この時、PWMスイッチ120のドレイン端にかかる電圧V1は、低電圧アナログ部110内の第1NMOSトランジスタ112に流れる電流Iにより決定される。すなわち、低電圧アナログ部110内に小さい電流Iが流れて、PWMスイッチ120のゲート(G)−ソース間電圧(Vgs)が所定のしきい電圧以上に上昇すると、PWMスイッチ120がターンオンする。このとき、高電圧出力ドライバ部130の高電源電圧端Voutに、例えば、約18Vが印加されると、PWMスイッチ120のドレイン端の電圧V1は、約14〜15Vである。結局、PWMスイッチ120のドレイン−ソース間電圧(Vds)がゲート−ソース間電圧(Vgs)と比べて高くなり、PWMスイッチ120において、ドレインから基板(図示せず)に漏れ電流Isubが流れる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図2は、図1に示す出力ドライバにおいて測定された、漏れ電流とドレイン電圧との関係を示すグラフである。
【0004】
基板への漏れ電流Isubは、以下の数式で表される。
【0005】
【数1】

【0006】
【数2】

【0007】
ここで、αは、衝突イオン化電流の第1パラメータ、
αは、衝突イオン化定数、
βは、衝突イオン化電流の第2パラメータ、
effは、PWMスイッチの実効チャネル長、
dseffは、実効ドレイン電圧、
deaは、ドレイン飽和電流、及び
は、アーリー電圧である。
【0008】
上記数式によると、ドレイン電圧Vdが増大すると、基板への漏れ電流Isubも増大することが分かる。図2において、条件aのグラフは、高電圧出力ドライバ部130のMOSトランジスタにゲート電圧Vg=3V、ソース電圧Vs=1.2Vを印加した場合の、ドレイン電流Idに対する基板への漏れ電流Isubの割合を示すグラフであり、条件bのグラフは、ゲート電圧Vg=2.6V、ソース電圧Vs=0.8Vを印加した場合のグラフである。上記両条件a、b共に、PWMスイッチ120のドレイン電圧Vdが増大するほど、基板への漏れ電流も増大するということが確認できる。
【0009】
このように、PWMスイッチ120を入れる電流Iが低電流である時、PWMスイッチ120のドレイン電圧Vdが増大して、ドレインから基板に流れる漏れ電流Isubが増大する。このような基板への漏れ電流は、印加される電圧の大きさにより異なるが、漏れ電流が発生するチャネルが多くなるほど、不必要に消費される電力が増大する。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、漏れ電流の発生を防止した、PMOLEDを駆動する出力ドライバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の実施の形態に係るパッシブマトリクス有機発光ダイオード用出力ドライバは、低電源電圧端に接続され、入力される電流の値に比例する電流を出力する低電圧アナログ部と、高電源電圧端に接続され、前記比例する電流が出力されると通電する高電圧出力ドライバ部と、前記低電圧アナログ部及び高電圧出力ドライバ部を断続するスイッチ部と、前記高電圧出力ドライバ部及びスイッチ部の間に挿入される、少なくとも1つの補償ダイオードとを備えることを特徴とする。
【0012】
前記補償ダイオードが、MOSトランジスタを用いて形成されることができる。
【0013】
前記低電圧アナログ部が、一端が前記低電源電圧端に接続され、前記比例する電流を生成する電流ミラー回路からなることができる。
【0014】
また、本発明の第2の実施の形態に係るパッシブマトリクス有機発光ダイオード用出力ドライバは、高電源電圧端に接続され、入力される電流により制御される第1高電圧ドライバと、低電源電圧端に接続され、前記第1高電圧ドライバから伝達される電流に比例する電流を出力する第2高電圧ドライバと、前記第1高電圧ドライバ及び第2高電圧ドライバの間に挿入され、少なくとも1つの補償ダイオードとを備えることを特徴とする。
【0015】
前記補償ダイオードが、MOSトランジスタを用いて形成されることができる。
【0016】
前記第2高電圧ドライバが、一端が前記低電源電圧端に接続され、前記比例する電流を生成する電流ミラー回路からなることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、PMOLEDを駆動する出力ドライバの漏れ電流の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るPMOLEDの電流出力ドライバの回路図である。
【0020】
第1の実施の形態に係る電流出力ドライバは、低電圧アナログ部310と、高電圧出力ドライバ部340と、PWMスイッチ320と、補償ダイオード330とを備える。低電圧アナログ部310は、ミラー回路を構成する第1〜第4NMOSトランジスタ312、314、316、318を備え、一端が低電源電圧端Vinに接続されている。高電圧出力ドライバ部340は、第1及び第2PMOSトランジスタ342、344と、第1及び第2PMOSトランジスタ342、344と同じ大きさの第3及び第4PMOSトランジスタ(図示せず)とを備え、高電源電圧端Voutに接続されている。PWMスイッチ320は、低電圧アナログ部310と高電圧出力ドライバ部340との間に備えられ、これらの接続をスイッチングする。MOSトランジスタを用いた補償ダイオード330は、PWMスイッチ320のドレイン電圧を下げるために、PWMスイッチ320と高電圧出力ドライバ部340との間に、少なくとも1つ挿入される。
【0021】
図3は、一例として、1つの補償ダイオード330が挿入された場合を示している。補償ダイオード330がPWMスイッチ320に直列に接続されることにより、補償ダイオード330の順方向の電圧降下分だけ、PWMスイッチ320のドレイン端にかかるドレイン電圧Vdが減少する。このように、PWMスイッチ320のドレイン電圧Vdが減少することで、基板への漏れ電流の発生を防止することができる。
【0022】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るPMOLEDの電流出力ドライバの回路図である。
【0023】
第2の実施の形態に係る電流出力ドライバは、第1高電圧ドライバ430と、第2高電圧ドライバ410と、補償ダイオード420とを備える。第2高電圧ドライバ410は、ミラー回路を構成する第1〜第4NMOSトランジスタ412、414、416、418を備え、一端が低電源電圧端Vinに接続されている。第1高電圧ドライバ430は、第1及び第2PMOSトランジスタ432、434と、第1及び第2PMOSトランジスタ432、434と同じ大きさの第3及び第4PMOSトランジスタ(図示せず)とを備え、高電源電圧端Voutに接続されている。図3に示した第1の実施の形態と同様に、MOSトランジスタを用いた補償ダイオード420が、第1高電圧ドライバ430と第2高電圧ドライバ410との間に、少なくとも1つ挿入される。
【0024】
図4もまた、図3と同様に、一例として、1つの補償ダイオード420が挿入された場合を示している。ここで、直列接続された複数の補償ダイオードを挿入できるということは当然であり、補償ダイオード420が第2高電圧ドライバ410内の第1NMOSトランジスタ412に直列に接続されることにより、補償ダイオード420の順方向の電圧降下分だけ、第1NMOSトランジスタ412のドレイン端にかかるドレイン電圧Vdが減少する。このように、第1NMOSトランジスタ412のドレイン電圧Vdが減少することで、基板への漏れ電流の発生を防止することができる。
【0025】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明に係る技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の技術に係るPMOLEDの出力ドライバの回路図である。
【図2】図1に示す出力ドライバにおいて測定された、漏れ電流とドレイン電圧との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るPMOLEDの電流出力ドライバの回路図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るPMOLEDの電流出力ドライバの回路図である。
【符号の説明】
【0027】
310 低電圧アナログ部
320 PWMスイッチ
330 補償ダイオード
340 高電圧出力ドライバ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電源電圧端に接続され、入力される電流の値に比例する電流を出力する低電圧アナログ部と、
高電源電圧端に接続され、前記比例する電流が出力されると通電する高電圧出力ドライバ部と、
前記低電圧アナログ部及び高電圧出力ドライバ部を断続するスイッチ部と、
前記高電圧出力ドライバ部及びスイッチ部の間に挿入される、少なくとも1つの補償ダイオードとを備えることを特徴とするパッシブマトリクス有機発光ダイオード用出力ドライバ。
【請求項2】
前記補償ダイオードが、MOSトランジスタを用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオード用出力ドライバ。
【請求項3】
前記低電圧アナログ部が、一端が前記低電源電圧端に接続され、前記比例する電流を生成する電流ミラー回路からなることを特徴とする請求項2に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオード用出力ドライバ。
【請求項4】
高電源電圧端に接続され、入力される電流により制御される第1高電圧ドライバと、
低電源電圧端に接続され、前記第1高電圧ドライバから伝達される電流に比例する電流を出力する第2高電圧ドライバと、
前記第1高電圧ドライバ及び第2高電圧ドライバの間に挿入され、少なくとも1つの補償ダイオードとを備えることを特徴とするパッシブマトリクス有機発光ダイオード用出力ドライバ。
【請求項5】
前記補償ダイオードが、MOSトランジスタを用いて形成されることを特徴とする請求項4に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオード用出力ドライバ。
【請求項6】
前記第2高電圧ドライバが、一端が前記低電源電圧端に接続され、前記比例する電流を生成する電流ミラー回路からなることを特徴とする請求項5に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオード用出力ドライバ。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−39577(P2006−39577A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220573(P2005−220573)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(505087780)マグナチップセミコンダクター有限会社 (125)
【Fターム(参考)】