説明

パネルの取付構造

【課題】 取付面側における突出物をなくして衣服の引っ掛かり等を防止することができ、取付面の体裁を良好に保つことができるようにすること。
【解決手段】 壁パネル11の正面11A側に取付手段15を介してパネル部材14がとりつけられている。取付手段15は、パネル部材14の背面側に設けられた突出部27と、壁パネル11の正面11Aに形成されて突出部27を受容する受容部28とを備えている。受容部28は、隣り合う壁パネル11,11の端面11B,11B間の隙間Sと、この隙間Sに跨って取り付けられ、この隙間Sに跨って取り付けられて壁パネル11を連結する固定部材17とにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの取付構造に係り、更に詳しくは、取付面に対するパネル部材の着脱を容易に行うことができるパネルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数枚のパネルを相互に連結することによって形成された防音室が知られている。この防音室を形成する壁の室内側には、吸音機能を有するパネル部材が取り付けられ、当該パネル部材を楽器や音響装置の特性に応じて着脱することにより良好な音響特性が得られるようになっている。ここで、前記パネル部材の取り付けは、取付手段を介して行われており、この取付手段は、壁面より突出するように設けられたねじ等からなる突出部と、パネル部材の背面側に形成されて突出部を受容する穴により構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記取付手段にあっては、パネル部材を取り外したときに、突出部が壁面から突出した状態で露出するので、突出部の先端側が衣服等に引っ掛かったり、突出部に不用意に衝突して当該突出部や壁面を破損させたりするという不都合がある。しかも、壁面の種々の位置にパネル部材を取り付け可能とすべく突出部を多数設けると、前記不都合がより顕出することとなる他、防音室内の見栄えを損なうという不都合を招来する。また、パネル部材の取り付け状態では、意図することなくパネル部材に外力が付与されると、パネル部材が持ち上がって突出部が穴から抜け出し、パネル部材が落下して損傷する場合もある。
【0004】
[発明の目的]
本発明は、このような点に着目して案出されたものであり、その目的は、取付面側における衣服の引っ掛かり等を防止することができ、取付面の体裁を良好に保つことができるパネルの取付構造を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、パネル部材の装着状態を安定して維持することができるパネルの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、所定の取付面に取付手段を介してパネル部材を着脱自在に取り付けるためのパネルの取付構造において、
前記取付手段は、パネル部材の背面側に設けられた突出部と、取付面に設けられて前記突出部を受容する前記突出部を受容する受容部とを備える、という構成が採用されている。
【0006】
本発明において、前記取付面は、複数枚の壁パネルにより形成されている一方、前記受容部は、隣り合う壁パネル端部間の隙間と、当該隙間に跨って取り付けられて前記隣り合う壁パネルを連結する固定部材とにより形成される、という構成を採ることが好ましい。
【0007】
また、前記突出部は、前記固定部材の上方から引っ掛け可能なフック部を含んで構成されている一方、前記取付面には、パネル部材の上方移動を規制するストッパが着脱自在に設けられる、という構成も採用される。
【0008】
更に、前記突出部の隣接位置には、圧縮変形可能な保護部材が設けられ、この保護部材のパネル部材背面からの突出量は、突出部のパネル部材背面からの突出量より大きく設定されるとよい。
【0009】
また、前記突出部は、パネル部材の水平方向略中央部に設けられる、という構成も好ましくは採用される。
【0010】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、特に明示しない限り、「背面」とは、図5中左側について用いられる一方、「正面」とは、その反対側について用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パネル部材に突出部を設け、取付面に受容部を設けたので、当該取付面から突出する部材を排除することが可能となる。これにより、従来例のような取付面から突き出た部材による衣服類の引っ掛かりや衝突による損傷を防止することができ、使い勝手を向上させることが可能となる。
【0012】
また、隣り合う壁パネル間の隙間及び固定部材により受容部が形成されるので、固定部材により連結される既設の壁パネルに対し、パネル部材の取り付けを難なく行うことが可能となる。つまり、パネル部材を取り付けるために壁パネルの体裁を変える必要性がないばかりでなく、受容部を形成するために特別な加工を施したり、他の部材を別途準備したりすることを省略でき、作業労力やコスト的な負担を軽減することが可能となる。
【0013】
更に、突出部をフック部とし、取付面にストッパを設けたから、パネル部材の取付容易性を良好に保つことができるばかりでなく、パネル部材の不用意な脱落を防止することが可能となる。
【0014】
また、突出部の隣接位置に保護部材を設けた場合には、パネル部材の取り外し時に突出部に衣類等が引っ掛かることを回避することができる。しかも、パネル部材の取り付け時には保護部材が圧縮変形して突出部が受容部内にスムースに受容されることとなる。
【0015】
更に、パネル部材の水平方向略中央部に突出部を設けた場合、パネル部材の取り付け状態を安定させつつ、突出部の設置数をできるだけ少なくして受容部に受容させる作業の簡略化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1には、実施形態に係る取付構造が適用された壁体の部分概略斜視図が示され、図2には、その拡大分解図が示されている。これらの図において、壁体10は、特に限定されるものでないが、既設の住宅や建物の室内に設置される防音室を形成可能に設けられている。壁体10は、鉛直方向に向けられた複数枚の壁パネル11と、隣り合う壁パネル11,11の上下三箇所位置で相互に連結する連結具12とを備えて構成されている。壁パネル11の正面11A側には、複数枚のパネル部材14が取付手段15を介して着脱自在に取り付けられている。
【0018】
前記各壁パネル11は、図3にも示されるように、取付面を構成する正面11Aが同一面内に位置するように相互に隣り合った状態で立設されるとともに、隣り合う壁パネル11,11同士の端面11B,11Bの間に数ミリ幅の隙間Sを介して配置されている。この隙間Sには、発泡体や弾性体からなる二本の充填材16が介在されている。各パネル部材11には、前記連結具12を受容するための凹部11Cが複数設けられている。各凹部11Cは、パネル部材11の端面11Bに沿う正面11A側を部分的に面落ちさせることによりそれぞれ形成されるとともに、後述する固定部材に対応する正面形状を備えている。
【0019】
前記連結具12は、隙間Sの左右両側に位置する各凹部11C,11C内に受容されて当該隙間Sに跨って位置する固定部材17と、この固定部材17を壁パネル11に取り付けるための二本のねじ18,18と、各凹部11C,11C内に受容されて固定部材17及びねじ18,18を正面側から隠蔽するカバー19とを備えて構成されている。
【0020】
前記固定部材17は、磁気を帯びることが可能なスチール等の金属製の板状体により形成されるとともに、正面視横長の略小判型となる外形形状に設けられている。固定部材17の面内には、前記ねじ18,18を挿通する一対の穴17A,17Aが形成され、各穴17A,17Aに挿通されたねじ18,18が凹部11C,11Cの下穴11D,11Dにねじ込まれるようになっている。また、カバー19は、固定部材17と略同一となる外形を備えた薄板状に設けられるとともに、磁力によって固定部材17に接合可能な所定の磁性体によって形成されている。なお、カバー19及び固定部材17の厚みは、これらを凹部11C,11C内に受容させた状態で、カバー19の表面がパネル部材11の正面11Aと略面一となるように設定されている。
【0021】
前記パネル部材14は、図2、図4及び図5に示されるように、正面視縦長の長方形状をなす本体板21と、この本体板21の背面側に設けられた枠体22と、本体板21の正面及び端面と枠体22の外側を被覆するクロス部材23とを備えて構成されている。本体板21は、入射される音に対して吸音作用を発揮する公知の素材により構成されている。枠体22は、上枠22A及び下枠22Bと、これらの左右両端側を連結する一対の側枠22C,22Cと、上枠22A及び下枠22Bの水平方向中央部を連結して上下に延びる中間枠22Dとからなる。各側枠22C,22Cの背面には、上下方向に延びるスペーサ25,25が接着等によりそれぞれ固定され、各スペーサ25,25は、前記充填材16と同様の素材により構成されている。
【0022】
前記取付手段15は、パネル部材14に背面側における上下二箇所位置に設けられた突出部27と、壁パネル11の正面11Aにおいて前記隙間Sと固定部材17とにより形成されるとともに、突出部27を受容する受容部28とを備えている。
【0023】
前記各突出部27は、図6にも示されるように、一枚の金属板を板金加工することにより平面視略L字状にそれぞれ形成されている。具体的には、前記枠体22の背面側にねじ30を介して添設されている支持面部31と、この支持面部31の水平方向一端側(図6中上端側)に連なって壁パネル11側に突出する片状のフック部32とを含んで構成されている。フック部32は、図5に示されるように、下方を開放する凹状の切欠部32Aを下端部に備え、この切欠部32A内に前記固定部材17及びカバー19を受容して引っ掛かり可能となっている。各突出部27の上下位置は、壁パネル11の上方の連結具12と、その下方の連結具12とに対応する位置にそれぞれ設定されている(図2参照)。また、各突出部27の水平位置は、パネル部材14の水平方向略中央部に前記フック部32が位置するように設定されている。
【0024】
フック部32の隣接位置であって支持面部31の背面側には、圧縮変形可能な直方体状の保護部材34が設けられている。この保護部材34は、無負荷状態すなわち図6に示される状態において、パネル部材14の背面からの突出量h1がフック部32の突出量h2より大きく設定され、フック部32の先端側に衣服等が不用意に触れ難くなっている。
【0025】
ここで、図5及び図6に示されるように、パネル部材14の上側にはストッパ35が設けられている。このストッパ35は、壁パネル11の正面11Aであって、上側の連結具12より若干上方に形成されたねじ穴37に螺合するねじ軸部38と、このねじ軸部38に連なってパネル部材14の上端に若干の隙間を隔てて位置する略円筒状の本体部39とにより構成されている。ストッパ35は、本体部39を回転操作することにより、ねじ穴37及びねじ軸部38の螺合及びその解除が行われ、これにより、ストッパ35を壁パネル11に着脱自在となっている。
【0026】
以上の構成において、壁パネル11にパネル部材14を取り付ける場合、先ず、パネル部材14を持ち、壁パネル11の正面11A側から受容部28すなわち連結具12の上方の隙間Sにフック部32を差し込んで受容させる。その後、パネル部材14を下方に移動させ、図5に示されるように、固定部材17の上方からフック部32を引っ掛ける。このとき、保護部材34は、壁パネル11の正面11Aとパネル部材14の背面とにより挟み込まれて圧縮変形するとともに、初期形状に戻ろうとする弾力を発揮し、固定部材17の背面に切欠部32Aの形成縁を押し付けてパネル部材14の厚み方向のがたつきを規制する。その後、壁パネル11のねじ穴37にストッパ35を装着する。このストッパ35により、パネル部材14の上方への移動が規制され、フック部32と固定部材17との係合が意図することなく解除されることが回避される。なお、この状態において、前記各スペーサ25,25は壁パネル11の正面11Aに略接触するようになり、パネル部材14の左右両側におけるばたつきが防止される。
【0027】
この一方、パネル部材14の取り外しは、前述した取り付け作業と逆の手順を行えばよい。すなわち、ストッパ35を回転して壁パネル11から取り外した後、パネル部材14を持ち上げてフック部32と固定部材17との引っ掛かりを解除することにより、パネル部材14が取り外されることとなる。
【0028】
従って、このような実施形態によれば、パネル部材14の着脱を難なく行えるばかりでなく、図2に示されるように、パネル部材14を取り外したときに、壁パネル11の正面11Aから突き出る部材をなくすことができる。しかも、隣り合う壁パネル11を連結する固定部材17が、フック部32と係り合うため、固定部材17を用いた既存の壁パネル11に加工等を行うことなくパネル部材14を取り付けることが可能となる。
【0029】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施例に対し、形状、位置若しくは方向、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0030】
例えば、前記受容部28は、壁パネル11に穴や溝を形成して突出部27を受容可能としてもよい。但し、前述のように隙間S及び固定部材17により受容部28を形成すれば、別途特別な加工を省略でき、壁パネル11の正面11Aの外観が良好に保たれる点で有利となる。
前記固定部材17の形状は、種々の設計変更が可能であり、例えば、正面視で略方形状や略円形状の外形を呈するものであってもよい。
また、ストッパ35は、ねじ構造を介して壁パネル11に着脱自在としたが、嵌合構造若しくは係合構造等により着脱を行えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態に係る取付構造が適用された壁体の部分概略斜視図。
【図2】図1の拡大分解図。
【図3】前記壁体を構成する壁パネル及び連結具の拡大分解斜視図。
【図4】(A)は、パネル部材の背面図、(B)は、パネル部材の底面図。
【図5】図1のA−A線に沿う拡大断面図。
【図6】図5の拡大分解平面図。
【符号の説明】
【0032】
11・・・壁パネル、11A・・・正面(取付面)、11B・・・端面、14・・・パネル部材、15・・・取付手段、17・・・固定部材、27・・・突出部、28・・・受容部、32・・・フック部、34・・・保護部材、35・・・ストッパ、S・・・隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の取付面に取付手段を介してパネル部材を着脱自在に取り付けるためのパネルの取付構造において、
前記取付手段は、パネル部材の背面側に設けられた突出部と、取付面に設けられて前記突出部を受容する受容部とを備えていることを特徴とするパネルの取付構造。
【請求項2】
前記取付面は、複数枚の壁パネルにより形成されている一方、前記受容部は、隣り合う壁パネル端部間の隙間と、当該隙間に跨って取り付けられて前記隣り合う壁パネルを連結する固定部材とにより形成されていることを特徴とする請求項1記載のパネルの取付構造。
【請求項3】
前記突出部は、前記固定部材の上方から引っ掛け可能なフック部を含んで構成されている一方、前記取付面には、パネル部材の上方移動を規制するストッパが着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項2記載のパネルの取付構造。
【請求項4】
前記突出部の隣接位置には、圧縮変形可能な保護部材が設けられ、この保護部材のパネル部材背面からの突出量は、突出部のパネル部材背面からの突出量より大きく設定されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載のパネルの取付構造。
【請求項5】
前記突出部は、パネル部材の水平方向略中央部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のパネルの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−233546(P2006−233546A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48671(P2005−48671)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】