説明

パーキングブレーキとその制御方法

【課題】電気モータを備えるブレーキアクチュエータを有するパーキングブレーキを制御する方法であって、経年変化および磨耗に伴う作動力の変化や電気モータの抵抗および/または温度変化による作動力の変化を補償する。
【解決手段】パーキングブレーキの効率の低下は、作動サイクル(または車両の停止またはロックなどの他のイベント)を考慮に含め求めることが出来る。イベント回数nを、イベント計数部を用いて求め、所定のイベント回数nmax後に、カットオフ電流Jを変化させることによって作動力の変化を補償する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキングブレーキに関する。本発明は、詳細には、電気的に作動可能なパーキングブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
EP 0729 871 A1から、ブレーキピストンによって摩擦ライニングをブレーキディスクに押し付けることができるパーキングブレーキが公知である。それを行うために、走行ブレーキ操作を行った場合、従来通り、加圧された油圧作動油が、そのチャンバを囲む壁の1つがブレーキピストンによって形成されている油圧チャンバに導入される。油圧チャンバ内の圧力が、ブレーキピストンを移動させ、それによって、摩擦ライニングをブレーキディスクの方向に移動させる。この公知の車両用ブレーキは、走行用ブレーキとして用いられる他に、パーキングブレーキとしても用いることができる。この目的のために、その車両用ブレーキは、摩擦ライニングがブレーキディスクと係合する状態にブレーキピストンを機械的に固定できるよう、電気的に作動可能なスピンドル/ナット構成を備える。
【0003】
やはり走行中のブレーキ操作の場合、油圧作動機構ではなく、電気的駆動機構がブレーキピストンを移動させ、それによって、摩擦ライニングをブレーキディスクの方向およびそれから離れる方向へ移動させるブレーキ構成も公知である。たとえば、DE102 12 612 A1における電気機械式ブレーキは、油圧による差動力の伝達を完全になくしている。運転者によって加えられたペダルの力は、電気信号として検出され、制御部に伝達される。さらに様々なセンサ信号(たとえば、ブレーキの操作パラメータ)を評価した後、制御部はブレーキ力を割り出す。
【0004】
電気モータの消費電流が、電気的に作動可能なパーキングブレーキに加えられる力の調節用に、測定量の1つとして使用される。電気モータの消費電流の大きさは、カットオフ電流と呼ばれ、その大きさにおいて、キャリパ中で所望の作動力が達成される。この電流に達すると、電気モータは切断される。セルフロック式歯車装置またはその他の手段は、電気モータが切断されても加えられた作動力が維持されるようにする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、作動信頼性の向上および操作の利便性が保証されるように電気式パーキングブレーキを制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、1つまたは複数のブレーキシュー上に作用し、電気モータを備えるブレーキアクチュエータを有するパーキングブレーキを制御する方法であって、作動力の変化を補償するために電気モータのカットオフ電流を変化させる方法を用いて達成される。そのパーキングブレーキ制御方法が制御アルゴリズムを備えている場合、調節される所望のカットオフ電流それぞれを変化させることができる。
【0007】
電気モータおよび/またはブレーキシステムのシステムパラメータ、および/または外部の影響因子が、機械的および電子的構成要素を監視するために検出されることが好ましい。これを基礎として、作動力の変化の補償が行われる。締め付け力を発生したときの有効性の低下を補償するために、カットオフ電流は、漸次増加させるのが適切である。したがって、たとえば所定のイベント回数後に、カットオフ電流の漸増を行ってもよい。別の実施形態では、カットオフ電流を連続的に増加させることができる。
【0008】
たとえば材料疲労および磨耗の結果としてのブレーキアクチュエータの機械的構成要素の効率の低下を補償するために、本発明の一実施形態では、電気モータのカットオフ電流の大きさを調節して所定の作動力を達成する。効率の低下は、たとえばブレーキの作動サイクル(または車両の停止またはロックなどの他のイベント)を考慮に含め、それに基づいてカットオフ電流を調節することによって、修正することができる。この目的のために、所定のイベント回数の達成は、イベント計数部を用いて監視することができ、この回数が達成されると、カットオフ消費電流の調節のための処置を開始することができる。
【0009】
電気モータの抵抗の変化もまた、所望の作動力を達成するためにカットオフ電流を調節するとき、考慮に入れることができる。
本発明の一実施形態では、カットオフ電流の調節で電気モータの温度を考慮に入れ、それによって電気モータの抵抗の変化について推定することが可能になる。そのとき、カットオフ電流は、温度または抵抗の変化に従って変化させることができる。電気モータの温度について推定することが可能な方法の1つは、電気モータの抵抗の変化についても推定することを可能にするブレーキディスク温度を求めることである。電気モータの温度を求めることができる別の方法は、特定の時間間隔内でのブレーキの作動回数を求めることである。電気モータの電気抵抗に影響を与えるモータ本来の発熱についての推定は、そのブレーキの作動回数から行うことができ、したがって、カットオフ電流を決定するとき考慮に入れることができる。
【0010】
別の実施形態では、空転速度および/または作動電圧を評価することによって電気モータの温度の変化を求めることが行われている。作動電圧は一般にほぼ一定であるので、温度の増加、すなわち電気モータの抵抗の低下は、空転速度の増加に関連させて示すことができ、これによってカットオフ電流の調節を行うことができる。別の有利な実施形態では、本発明はまた、カットオフ電流を変化させるとき、車両の搭載電気システムの電圧変化を考慮に入れる。
【0011】
電気モータの空転電流の変化もまた、カットオフ電流を調節するとき考慮される。温度が関係する空転電流の変化にたとえば起因し得る作動力の変化を補償するために、カットオフ電流を、空転電流部分と作動力を実際に発生するのに用いる消費電流部分とに分けることが考えられる。作動力は、空転電流部分は無視して、消費電流部分に基づいて調節することができる。
【0012】
本発明の電子制御ユニットは、車両の異なる車輪のブレーキアクチュエータを別々に、または統合して作動させることができる。この場合、制御ユニットは、受け取ったセンサ信号を有利に処理し、これらを他のセンサおよび制御システムからのデータと任意選択的に関連させ、それぞれの車輪のアクチュエータに対して別々に、または全ての車輪のアクチュエータに対して纏めて、所定の作動力を達成するのに必要なカットオフ電流を算出する。
【0013】
電気モータの公称空転電流からの偏倚は、外部または風防ガラスの温度、ブレーキ圧などの変数を評価することによって、また左右のアクチュエータを比較することによって知ることができる。このタイプの偏倚は、カットオフ電流を調整するとき、考慮に入れることができる。またこのタイプの偏倚の検出により、システムの機械的構成要素の不具合について推定できるようになる。本発明の好ましい実施形態では、このタイプの不具合は、運転者または診断システムに知らされ、これによって、たとえば、適切な時に不具合部品を交換することができるようになる。運転の快適さ、ならびに運転および交通の安全性もまた、これによって向上する。
【0014】
本発明はまた、パーキングブレーキのブレーキアクチュエータを制御する電子ユニットに関する。そのブレーキアクチュエータは、1つまたは複数のブレーキシュー上に作用し、電気モータを備える。電子制御ユニットは、たとえば経年変化および磨耗に伴う作動力の変化や電気モータの抵抗および/または温度変化による作動力の変化を、たとえば電気モータのカットオフ電流を変化させることによって補償するように構成されている。作動力を調節するとき、好ましくは、作動力センサからの信号を評価することは行わない。言い換えれば、パーキングブレーキに作動力センサを必要としない。
【0015】
制御ユニットに必要な情報は、センサを介して制御ユニットに利用される。すなわち、たとえば温度、時間、電気的変数、および/またはイベント回数をセンサによって求め、次いで、バスシステムを介して電子制御ユニットに供給することができる。
【0016】
センサ値を格納するために電子制御ユニット中に複数の記憶部が設けられると有利である。この場合、最新値用の記憶部と予め定義された値用の記憶部とを区別することができる。予め定義された値用の記憶部には、便宜には、最新値の計算結果との比較のために用いられる基準値を収容する。
【0017】
本発明のさらに別の利点、特徴、および変更形態が、図面を参照してより詳細に以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ディスクブレーキ形式の本発明による電気作動式パーキングブレーキの長手方向概略断面図である。
【図2】本発明による修正方法を実行する基本的なステップを簡略化した流れ図で示す図である。
【図3】パーキングブレーキアクチュエータの作動回数への作用モーメントの依存性を示す効率特性の図である。
【図4】機械的磨耗および材料疲労の結果による影響を考慮に入れた本発明による別の実施形態の例示的方法のステップを示す流れ図である。
【図5】機械的磨耗および材料疲労の結果による影響をやはり考慮に入れた本発明による別の実施形態の例示的方法のステップを示す流れ図である。
【図6】電気モータの抵抗または温度の関数としてのカットオフ電流を求めるための本発明による別の実施形態の例示的方法のステップを示す流れ図である。
【図7】電気モータの温度を求めるための本発明による方法の別の実施形態の例示的方法のステップを示す流れ図である。
【図8】電気モータの温度を求めるための本発明による方法の別の実施形態の例示的方法のステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、長手方向断面内に実質的にU字型のキャリパ10およびキャリパ10上に配置された電気式作動ユニット、すなわちアクチュエータ12を有する電気的に作動可能な車両用ブレーキを示す。2つの摩擦ライニング14、14’(図示されていないガイドに受けられている)が、キャリパ10中その2つの脚部10’、10”上に配置されている。2つの摩擦ライニング14、14’は、キャリパ10と重なったブレーキディスク16の両側に配置され、それぞれがブレーキディスク16の側面16’、16”と作用しあう。ブレーキディスク16は、自動車の車軸首部18(一部のみ示す)に回転しないように連結されている。摩擦ライニング14、14’は、キャリパ10内に、ブレーキディスク16に向かって、またそれから離れる方向に移動できるように配置されている。図示の実施形態は、一方の摩擦ライニング14は、直接アクチュエータ12によってブレーキディスク16と摩擦係合させることができ、他方の摩擦ライニング14’は、キャリパ10によって加えられる反作用力の効果によってブレーキディスク16と摩擦係合させることができる浮動キャリパ構成として知られているものを擁する。
【0020】
アクチュエータ12は、キャリパ10の側部に配置され、ブレーキピストン34と作用しあう電気モータ20を備える。ブレーキピストン34は、電気モータ20を貫通して摩擦ライニング14まで突き出ている。図示の実施形態では、電気モータ20は、ハウジングに固定して配置されたステータ22、および回転するロータ24を備えた内部ロータ式モータである。ロータ24の回転を外歯歯車を有するリング28に伝達することができる内歯歯車26が、ロータ24の内側に配置されている。リングは回転はできないが軸方向に移動可能にブレーキピストン34上に配置されている。この26、28は、ナット/スピンドル機構として働くが、比較的高い歯車減速比を有する。歯車装置26、28は、電気モータ20の回転移動をブレーキピストン34の長手方向移動に変換して、摩擦ライニング14、14’を駆動するのに用いられる。
【0021】
図1に示される車両用ブレーキ1は、走行用ブレーキモードで使用することができ、パーキングブレーキとしても使用することができる。車両用ブレーキ1をパーキングブレーキとして使用することについて、以下により詳細に考察する。
【0022】
車両用ブレーキ1のパーキング機能は、特に車両を駐車するとき、または傾斜した路面上を運転するときに利用される。この場合、電気モータ20が、電気制御ユニットECUによって作動して、摩擦ライニング14、14’をブレーキディスク16に衝接させて作動力を発生させる。電気モータ20の消費電流は、作動力が増加するにつれて大きくなる。従来通り、特に作動力センサを有さない車両用ブレーキの場合、電気モータ20の消費電流が所定の値、すなわちカットオフ電流Jに達した場合、所定の作動力が達成されたと看做される(したがって電気モータ20を切断することができる)。カットオフ電流Jが達成されると、電子制御ユニットECUは、電気モータ20への電流を遮断し、それによって電気モータ20を切断する。生成された作動力は、歯車装置26、28のセルフロック特性によって維持される。したがって、作動力を弱めるためには、電気モータ20を、力を加える回転方向とは反対の回転方向に作動させる必要がある。
【0023】
図1によれば、電気モータ20は、電気モータ20に対する作動信号を生成する電子制御ユニットECUに適切な配線によって接続されている。電子制御ユニット(ECU)は、電気モータ20に対するカットオフ電流Jを調節するので、電子制御ユニットECUは、調節される作動力と電気モータ20の消費電流との関数関係にも影響を与える。
【0024】
また、自動車内にある、または載っているセンサS1,...,Snから、自動車の作動状態を表す信号が電子制御ユニットECUに送られる。検出される作動状態には、たとえば、パーキングブレーキの作動回数、ブレーキディスク16の温度、電気モータ20の温度、電気モータ20の空転速度、および、望むなら外部の影響因子が含まれる。
【0025】
電子制御ユニットECUは、センサS1,...,Snによって求められた最新の測定値が格納される1つまたは複数の第1の記憶位置50、および、所定の比較値/基準値をその中に格納する1つまたは複数の第2の記憶位置60を備える。比較値は、センサの測定値を含む所定の変数の関数関係である場合もある。それらは、特性曲線、表、所定の値、またはセンサS1,...,Snの測定値とカットオフ電流とを結びつける関数の形で格納することができる。上記の値の許容誤差範囲もやはり電子制御ユニットECUの記憶部に格納することが考えられる。
【0026】
本発明の一実施形態では、作動力の変化を補償するために、電子制御ユニットECUは、電子制御ユニットECUの比較値記憶部60に格納されている特性曲線または表を呼び出し、最新の入力値(たとえば作動回数)に対してカットオフ電流Jの修正量を決定して作動力の変化を補償する。
【0027】
図2は、本発明により修正値を求めるために実行する方法のステップの概略を示す。所定の値、関数、または特性曲線は、電子制御ユニットECUの比較値記憶部60に既に格納されているものとする。記憶部60中の比較値は、更新または修正される必要があり得る。たとえば、最初の所望のカットオフ電流Jは、修正値によって変更された大きさのカットオフ電流Jによって、常に置き換えられ得る。
【0028】
全体を100によって表された方法のステップを開始する最初のステップは、センサS1,...,Snによって値(たとえば測定された値またはイベント)を検出するステップ110である。検出された値は電子制御ユニットECUの最新の値用の記憶部50に格納される110。その検出値は、ステップ120で、電子制御ユニットECUの記憶部60からの比較値と比較され、かつ/または、ステップ130で、たとえば格納されている関数または特性曲線を用いて修正値を求めるための入力値として用いられる。引き続くステップ140は、カットオフ電流Jの修正からなる。
【0029】
図3は、パーキングブレーキの作動回数の関数としてアクチュエータ12の効率の低下特性を示すグラフである。アクチュエータ12の効率は、機械的構成要素のそれに伴う材料疲労によって作動サイクル数に対してほぼ直線的に低下することが実際に分かってきた。グラフに示されるように、80,000回の作動後、一定のカットオフ電流(17A)で、作動力は17kNから14kNに低下する。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態による、機械的磨耗および材料疲労による影響を考慮に入れたカットオフ電流の調節法を示す流れ図200である。その目的のために、第1のステップ210で、センサS1,...,Snによってパーキングブレーキの作動を検出する。続いて、第2のステップ220で、電子制御ユニットECUの作動計数部を増加させる。すなわち、電子制御ユニットECUの最新値用記憶部50から作動回数nが取り出され、1だけ増加し、新しい最新値n=n+1として電子制御ユニットECUの記憶部50に再記入される。
【0031】
引き続く照会処理230で、増加された作動回数値nを、電子制御ユニットの記憶部60からの予めセットされた値nmaxと比較する。増加された値nが、予めセットされた値nmaxより小さい場合、カットオフ電流Jは修正しない。
【0032】
しかし、作動回数nが値nmaxに達すると直ちに、次のステップ240で、アクチュエータ12の電気モータ20のカットオフ電流Jを調節する。たとえば、nmax=1,000回作動の後、特定のカットオフ電流値Jを、所定値用記憶部60に格納されている補償変数ΔJだけ増加する。次いで作動回数nを、次のステップ250で零にリセットする。
【0033】
図4に関して記載した本発明の実施形態は、一定の作動回数nmaxの後、カットオフ電流JをΔJだけ漸増させることに基づいている。このタイプの補償修正は、線形関数的修正に特に適している。
【0034】
本発明の別の実施形態では、特に、非線形に延びる特性曲線を考慮に入れることができる。その実施形態では、所定の作動回数nmaxの後、記憶部60に格納された特性曲線または表から新しい大きさのカットオフ電流J=Jtabを導き出す245。このことは、破線によるステップ245によって、図4に示されている。この場合、ステップ240に従うカットオフ電流Jの決定は省かれる。この変更実施形態では、カットオフ電流Jtabの大きさは、記憶部60に予め定義されている特性曲線または表から最新の作動回数nの関数として直接導き出すことができるので、ステップ250も省くことができる。
【0035】
本発明による、カットオフ電流Jのより精密な決定に関するさらに追加的な変更形態として、流れ線図200にやはり破線のみで示されている、細かい調節260、270を可能にする流れ線図が追加されている。この場合、ステップ240または245で求められるカットオフ電流Jの大きさは、さらに多くの影響を考慮に入れた修正値ΔJによって修正することができる。カットオフ電流を調節するとき、たとえば、パーキングブレーキのセンサS1,...,Snによって検出された電気モータ20の温度や抵抗などのパラメータを考慮に入れることができる。
【0036】
図5は、本発明による方法の別の実施形態を流れ図300に示す。この実施形態では、作動回数nは、図4のステップ250のように零にリセットするのではなく、作動信号の検出310に続いて定常的に増加させる320。それに伴って、ステップ330で、カットオフ電流ΔJの修正値を、電子制御ユニットECUの記憶部60に格納されている関数または表の援けを得て計算/決定することができる。カットオフ電流Jは、次のステップ340で調節する。
【0037】
開示された可能性に加えて、ステップ350、360で、カットオフ電流Jをより精密に修正するためにさらに多くの調節を行うことができる。
図6は、電気モータ20の抵抗またはその温度の関数として修正カットオフ電流Jまたは修正差分ΔJを求めるための本発明によるステップが示されている流れ図400を、例として示す。この場合、第1のステップ410で、電気モータ20の温度Tを検出する。これは、電気モータ20の温度を電子制御ユニットECUに引き渡すセンサS1,...,Snによって行われる。
【0038】
電気モータ20の確定しつつある抵抗は、次のステップ420で、電子制御ユニットECUの記憶部60に格納されている基準値の援けを得て、検出温度情報を介して示すことができる。カットオフ電流Jを補償するために、次いでステップ430で、修正値ΔJを、所定の作動力が得られるように電気モータ20の抵抗値に基づいて決定する。次いで、後続のステップ440で、カットオフ電流値Jを、ステップ430で求めた値ΔJによって修正することができる。
【0039】
求められた修正値ΔJは、カットオフ電流Jの他の修正値ΔJとは別個に、またはそれらに加えて考慮することができる。これが、図6に、交差点Bおよび破線によって示されている。より良く理解するために、図6は、図4および図5とも併せて見るべきである。
【0040】
別の実施形態では、電気モータ20の温度はまた、電子制御ユニットECU内で導き出される変数とすることもでき(やはり図7および図8を参照)、その変数は、電気モータ20の温度に対応し、その後の処理のために交差点Cを介してステップ240に供給される。ここでは破線によって示されている。
【0041】
図7の流れ図500は、本発明の別の実施形態において、電子制御ユニットECUの記憶部60に格納されている作動電圧または測定された作動電圧、およびセンサS1,...,Snによって求められる空転速度から、いかに電気モータ20の温度を決定するかを示す。
【0042】
たとえば、モータ温度20℃で11,790rpmが測定され、100℃で13,680rpmが測定されたとする。作動電圧が一定であると看做せる場合、モータの温度上昇は、空転速度の上昇と相関を持たせることができ、そのモータ温度の上昇によって、電気モータ20の抵抗変化を推定することができ、さらにその結果、図5のステップ430で修正値ΔJを求めることができる。空転速度は、ステップ510でセンサS1,...,Snによって検出され、記憶部60から読み取った作動電圧、または測定された作動電圧(ステップ520)と共にステップ530に進む。電気モータ20の温度を求めるためのその2つの値を、ステップ530で処理する。その温度情報を、次いで交差点Cを介して図6のステップ420に供給する。図6の流れ図400に従って、その後のプロセスが実施される。
【0043】
図8は、電気モータ20の温度を流れ図600で求める本発明による方法の別の実施形態を示す。このケースでは、電気モータ20本来の発熱が、所定の時間間隔内のパーキングブレーキの作動回数nに関連させて示されている(ΔTは、通常1作動当たり5℃である)。この目的のために、時間情報は、ステップ610で、やはり電子制御ユニットECU内で検出される。ブレーキ操作回数nはまた、計数部によって数える。この情報は、図3および図4に記載されたのと同じ作動計数部によって供給し、または最新値用記憶部50から読み出すことができる。これらの値は、次いで、交差点Aを介してプロセスステップ620に供給することができる。次いで、プロセスステップ620で温度を計算する。その温度情報を、次いで交差点Cによって図6のステップ410に供給する。温度情報のその後の処理については、図4の流れ図400に従って行われる。
【0044】
当業者は、単に例として提供された上記の実施形態により、電気モータ20の温度および抵抗ならびに作動回数nなどの個々の制御パラメータを互いに組み合わせたくなることは明らかであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のブレーキシュー(14、14’)上に作用し、電気モータ(20)を備えるブレーキアクチュエータ(12)を有するパーキングブレーキ(1)を制御する方法であって、所定の作動力を達成するために、電気モータ(20)のカットオフ電流(J)の大きさを変化させることを特徴とする方法。
【請求項2】
作動力の変化量を決定するために、イベントを数え、カットオフ電流(J)をイベント回数(n)の関数として変化させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
所定のイベント回数(nmax)が達成されたことを判定し、そのイベント回数が達成されると(n=nmax)、電気モータ(20)のカットオフ電流(J)を変化させる処置を実行することを特徴とする、請求項1および2に記載の方法。
【請求項4】
前記計数するイベントは、ブレーキの作動、車両の停止、車両のロック、および/またはこのタイプのその他のイベントであることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
カットオフ電流(J)を変化させるとき、電気モータ(20)の抵抗の変化を考慮に入れることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
電気モータ(20)の抵抗変化についての推定値が、電気モータ(20)の温度、ブレーキディスク(16)の温度、所定の時間間隔内でのブレーキの作動回数、電気モータの空転速度、および/または作動電圧の関数として導き出されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
カットオフ電流(J)を変化させるとき、電気モータ(20)の空転電流の変化を考慮に入れることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
電気モータ(20)のカットオフ電流(J)を、空転電流部分と作動力を発生するための消費電流部分とに分け、電気モータ(20)の切断に関する決定には空転電流部分は考慮に入れないことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
電気モータ(20)のカットオフ電流(J)が、搭載電気システムの作動電圧の変化の関数として変化させられることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
カットオフ電流(J)が漸次または連続的に増加させられることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
許容範囲が予め定義されており、空転電流の変化について推定することを可能にするパラメータ(S1,...,Sn)に特異な値が測定された場合、診断または警告信号を発することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つまたは複数のブレーキシュー(14、14’)上に作用し、電気モータ(20)を備える、パーキングブレーキ(1)のブレーキアクチュエータ(12)を制御する電子ユニットであって、前記電子制御ユニット(ECU)が、電気モータ(20)のカットオフ電流(J)を変化させることによって作動力の変化を補償するように構成されていることを特徴とする、電子ユニット。
【請求項13】
前記電子制御ユニット(ECU)が、温度、時間、電気的変数、および/または特定のイベントの回数(n)を検出するセンサ(S1,...,Sn)に結合され、カットオフ電流(J)が、1つまたは複数のセンサ(S1,...,Sn)の出力信号の関数として変化させられることを特徴とする、請求項12に記載の制御ユニット。
【請求項14】
前記制御ユニット(ECU)が、前記電流値またはカットオフ電流(J)の所望の大きさが格納される第1の記憶部(50)を備えることを特徴とする、請求項12または13のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項15】
最新のセンサ値(S1,...,Sn)は第1の記憶部または第2の記憶部(50)に格納され、ブレーキアクチュエータ(12)のパラメータ(S1,...,Sn)の予め定義された基準値は、別の記憶部(60)に格納されることを特徴とする、請求項13または14に記載の制御ユニット。
【請求項16】
請求項12から15のいずれか一項による制御ユニットを備えるパーキングブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−131500(P2012−131500A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−16619(P2012−16619)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【分割の表示】特願2006−545965(P2006−545965)の分割
【原出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(502367557)ルーカス・オートモーティブ・ゲーエムベーハー (25)
【氏名又は名称原語表記】Lucas Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Carl−Spaeter Strasse 8, D−56070 Koblenz, Germany
【Fターム(参考)】