説明

パーキングロック機能付回転電機

【課題】パーキングロック機能を具えた回転電機において、別途のロック機構を設けることにより回転電機の重力および軸方向寸法が増大してしまうという問題を解決する。
【解決手段】ロータ5のうち軸方向一方の部位には磁極11と同じ数の永久磁石9Aを周方向に複数配設したA極を設け、ロータ5のうち軸方向他方の部位には磁極11と異なる数の永久磁石9Bを周方向に複数配設したB極を設ける。ロータ5の停止時には、A極の永久磁石がステータ6の磁極11を磁気的に吸引してロータ5を回転不能に拘束するパーキングロック位置に、ロータ5を軸方向移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機を回転不能に固定するパーキングロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーキングロック機構を具えたパーキングロック機能付回転電機の発明としては従来、例えば特許文献1に記載のごときものが知られている。
特許文献1に記載の回転電機は、ロータの回転軸に、回転を止めるロック機構を係脱可能に設けたものである。
【特許文献1】特開2002−186115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来のような回転電機にあっては、以下に説明するような問題を生ずる。つまり回転電機の内部にロック機構を別途配置しているため、重量および軸方向寸法が増大する。したがって、車輪の内部空間に回転電機を配置する、いわゆるインホイールモータ方式の駆動装置においては、取り付けスペースの確保がレイアウト上困難となる。また、この車輪を懸架するサスペンション装置にあっては、ばね下重量が増大して、乗り心地性能が損なわれる。
【0004】
本発明は、上述の実情に鑑み、別途のロック機構を設けないで重量および軸方向寸法の増大を回避しつつ、回転電機の回転軸を固定することができる、パーキングロック機能付回転電機を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のため本発明によるパーキングロック機能付回転電機は、請求項1に記載のごとく、
磁性体にコイルを巻回した磁極を複数具え、これら磁極をステータの周方向に配設し、
永久磁石を複数具え前記ステータとの間で相対回転するロータを、軸方向に移動可能に軸支した回転電機において、
前記ロータのうち軸方向一方の部位には前記永久磁石を周方向に複数配設したA極を設け、前記ロータのうち軸方向他方の部位には前記A極と異なる数の前記永久磁石を周方向に複数配設したB極を設け、
前記ロータの駆動時には、これらA極およびB極の双方がステータとの間で駆動力を発生するための磁気回路を形成する駆動位置に、ロータを軸方向移動して、
前記ロータの停止時には、A極の永久磁石がステータの前記磁極を磁気的に吸引してロータを回転不能に拘束するパーキングロック位置に、ロータを軸方向移動するよう構成したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
かかる本発明の構成によれば、回転電機に既に具わっている磁力を利用して回転軸を拘束するため、回転電機にロック機構を別途配置する必要がない。したがって、従来のパーキングロック機能付回転電機よりも、軽量化および軸方向寸法の短縮化を達成することができ、インホイールモータ方式の回転電機においてレイアウト上有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸を含む平面で破断して示す縦断面図であり、ロータが回転して回転電機を駆動運転する状態を示す。また図2は同実施例の縦断面図であって、ロータが回転不能に固定された状態を示す。なお、図1以下においては、原則として回転軸Oの片側のみを示す。
車輪のロードホイール1は、外縁を形成するリム部2および中心を形成するハブ部3を具えた周知のものである。リム部2およびハブ部3に区画されたロードホイール1の内空領域には回転電機4を配置する。
【0008】
回転電機4は、ステータ6の内径側に、ロータ5を配置して回転自在に軸支したいわゆるインナロータ型ラジアルギャップ構造の回転電機である。
ロータ5の中心にはボールスプライン8を介してロータシャフト7を連結する。ボールスプライン8を用いることにより、ロータ5はロータシャフト7上を軸O方向に摺動可能であって、周方向には相対回転不能に連結する。ロータシャフト7の先端は、ハブ部3の中心と結合する。このため、ロータシャフト7は回転電機4(のロータ5)の回転軸でもあり、またロードホイール1の回転軸でもある。
【0009】
ロータ5の外縁には、複数の永久磁石9A,9Bを周方向に配置して、表面磁石構造とする。永久磁石9A、9Bは、詳しくは後述するがエアギャップ10を介してステータ6の磁極11との間で駆動のための磁気回路を形成する。永久磁石9Aの個数は磁極11の個数に等しく、永久磁石9Aはロータ5の全周にわたり配設されて円環状のA極を構成する。永久磁石9Bの個数は磁極11の個数よりも多く、永久磁石9Bはロータ5の全周にわたり配設されてB極を構成する。そしてA極は、B極よりも軸O方向でロードホイール1よりも遠い位置にある。A極とB極との間には、磁束が短絡しないよう隙間または磁束が通過し難い材料で中間層16を設ける。
永久磁石9A一個当たりの周方向寸法は、永久磁石9B一個当たりの周方向寸法よりも大きい。永久磁石9Aの磁束密度は、永久磁石9Bの磁束密度よりも大きく、永久磁石9Aは永久磁石9Bよりも磁力が大きい。
【0010】
ステータ6は、円環状のバックヨーク15と、周方向に複数配置される磁極11を具える。各磁極11の根元部は共通するバックヨーク15の内周に固定される。バックヨーク15の外周は回転電機4の外殻を形成するケース12に支持される。磁極11およびバックヨーク15は、鉄心などの磁性体よりなる。磁極11の先端はロータ5の外周、つまりA極およびB極に向かう。磁極11の中程には、コイル14を巻回する。
【0011】
図3は、上述したロータ5およびステータ6の一部を取り出して示す斜視図である。なお図3では、ロータ5およびステータ6の構成が判り易いよう、両者5,6を離して描画する。
図3に示すように、永久磁石9Aおよび9Bは径方向に着磁されて、周方向にはN極とS極が交互になるよう配置される磁極11は、永久磁石9Aおよび9Bの外径側に配置されて、これら9Aおよび9Bに向かう。
【0012】
回転電機4がロードホイール1を駆動する時は、図1に示すように永久磁石9Aおよび永久磁石9Bの双方が磁極11とエアギャップ10を形成する位置にロータ5を軸O方向に摺動する。この位置を駆動位置と呼ぶ。駆動位置の位置合わせは、ロータシャフト7の一端側に設けた位置決め部材18にロータ5を当接させて行う。ロータ5は駆動位置で回転し、ロータシャフト7から駆動トルクをロードホイール1に出力する。駆動位置では、図示しないインバータ回路が各コイル14に公知の駆動用交流電圧を印加して、磁極11からの磁束がA極と磁気回路を形成するとともに、磁極11からの磁束がB極とも磁気回路を形成する。したがって回転電機4は力強い駆動が可能になる。
【0013】
そして、コイル14にA極を駆動するための交流と前記B極を駆動するための交流とを重畳した複合電流を流すと、ロータ5をA極のトルクおよびB極のトルクで駆動することができ、回転電機4は力強い駆動が可能になる。
なお、複合電流については本出願人による特開平11−275826に記載の技術を用いる。
【0014】
図4は、ロータ5が上述した駆動位置にあるときの、ロータ5およびステータ6の位置関係を示す斜視図である。駆動位置では、中間層16が磁極11の軸方向中央に位置する。
【0015】
これに対しロードホイール1の停止中は、図2中、矢の方向にロータ5を軸O方向移動させ、主として永久磁石9Aが磁極11とエアギャップ10を形成し、永久磁石9Bが殆ど磁極11とエアギャップ10を形成しない位置にロータ5を軸O方向に摺動する。この位置をパーキングロック位置と呼ぶ。パーキングロック位置の位置合わせは、ロータシャフト7の他端側に設けた位置決め部材19にロータ5を当接させて行う。ロータ5がパーキングロック位置にある間、磁力の大きな永久磁石9Aが磁極11を磁気的に吸引する。このため、ロータ5は回転不能に拘束され、磁気的なパーキングロックが完成する。なお、永久磁石9Aは永久磁石9Bよりも磁力が大きいため、コイル14に通電しない間は上述したように、ロータ5が矢の向きに引き寄せられる。
【0016】
図5は、ロータ5が上述したパーキングロック位置にあるときの、ロータ5およびステータ6の位置関係を示す斜視図である。パーキングロック位置では、中間層16が磁極11の軸方向端部に位置する。そして永久磁石9Aが磁極11を吸引する。なお吸引するのは永久磁石9Aであり、磁極11は吸引されているにすぎないことから、コイル14に通電することを要しない。
したがって、第1実施例になるパーキングロック機能付回転電機によれば、従来のようにロック機構を別途配置することなく、またロック機構を作動させるための電力を消費することもなく、ロードホイール1を磁気的にパーキングロックすることができる。また、永久磁石9Aの数と磁極11の数とを同じにしたことから、磁気的なパーキングロックの力を最大にすることができる。
【0017】
なお、永久磁石9Aの磁力を、永久磁石9Bの磁力よりも大きくする本実施例では、ロータ5が回転を停止すると磁極11が永久磁石9Aに引き寄せられて、ロータ5は自動的に図2および図5に示す軸方向位置に摺動する。
本実施例の他、永久磁石9Aの磁力を永久磁石9Bの磁力以下にする別の実施例であれば、コイル14にA極を駆動するための交流と前記B極を駆動するための交流とを重畳した複合電流を流すと、磁極11とA極との吸引力よりも磁極11とB極との吸引力を大きくすることができ、図2および図5に示すように、A極が磁極11の近傍となる軸方向位置にロータ5を摺動することができる。
【0018】
本実施例では、上述した磁気的パーキングロックに従来の機械的パーキングロックを付加してもよい。
【0019】
つまり、図1および図2に示すように、ロータ5の外径側には係合突起13をさらに設け、ケース12には、係合突起13と係合可能な凹部17をさらに設けてもよい。
ロータ5の回転中は図1に示すように、係合突起13は凹部17に係合していないこと勿論である。これに対し、ロータ5を回転不能に固定する場合は、図2に軸O方向矢で示す向きにロータ5を摺動して、係合突起13を凹部17に係合し、機械的なパーキングロックが完成する。このような機械的パーキングロックを付加すれば、上述した磁気的パーキングロックは凹部17に係合突起13を係合させるための手段として利用することができる。この場合、係合突起13を係脱するために従来のような大型のアクチュエータを設ける必要もないことから、パーキングロック機能付回転電機の小型化に寄与することができる。
【0020】
また図には示さなかったが、ロータ5の軸方向位置に応じて、上述した磁気的パーキングロックと、機械的パーキングロックとを選択して実現するようにすることが可能になる。この結果、車両の性能が向上する。
【0021】
また、図1および図2に示す第1実施例の他、位置決め部材18を設けることなく、主として永久磁石9Bが磁極11とエアギャップ10を形成するべくロータ5を軸方向移動可能にしてもよい。この位置を始動位置と呼ぶ。図6は、ロータ5が始動位置にあるときのロータ5およびステータ6の位置関係を示す斜視図である。始動位置では、中間層16が磁極11の軸方向端部に位置する。
【0022】
ロータ5が、図6に示す始動位置にあれば、磁極11が、永久磁石9Aよりも数が多い永久磁石9Bとの間で始動のためのトルクを発生する。これにより、停止中のロータ5を始動することができる。なお、ロータ5の回転速度が充分に高くなれば、ロータ5を前述した図5に示す駆動位置にして、通常に駆動運転を行う。
【0023】
ここで付言すると、コイル14にA極を駆動するための交流と前記B極を駆動するための交流とを重畳した複合電流を流し、B極に同期する電流をA極に同期する電流より大きくすると、図6に示すように、ロータ5をB極が磁極11の近傍となる始動位置に摺動させることができる。これに対し、A極に同期する電流をB極に同期する電流より大きくすると、図4に示すように、ロータ5をA極が磁極11の近傍となる位置に摺動させることができる。
【0024】
次に本発明の第2実施例について説明する。
この実施例の基本構成は、上述した図1および図2に示す第1実施例と共通するため、同一部材については、共通する符号を付して説明を省略し、異なる構成について図1および図2を援用しつつ説明する。
【0025】
第2実施例にあっては、永久磁石9Bの個数が永久磁石9Aの個数よりも多く、永久磁石9Aの個数と永久磁石9Bの個数とが異なるものの、永久磁石9Bの個数を磁極11の個数と等しくする。
【0026】
回転電機4がロードホイール1を駆動する時は、前述した第1実施例と同様に、コイル14にA極を駆動するための交流と前記B極を駆動するための交流とを重畳した複合電流を流し、ロータ5をA極のトルクおよびB極のトルクで駆動する。
【0027】
これに対しロードホイール1の停止中は、コイル14に通電して永久磁石9Aを磁極11に引き寄せ、図2に矢で示すようにロータ5をパーキングロック位置に摺動させる。なお、ロータ5がパーキングロック位置に摺動した後は、電流をコイル14に流し続ける必要はなく、ロータ5はパーキングロック位置を維持する。これは、第1実施例の永久磁石9Aおよび磁極11間の磁気的な吸引力(パーキングロック力)ほど強くないものの、第2実施例の永久磁石9Aが磁極11と一旦対向すれば、第2実施例の永久磁石9Aおよび磁極11間で永久磁石9A自身の磁束に因る磁気的な吸引力が作用するためである。
【0028】
図2に示すパーキングロックを解除して図1に示す駆動位置にロータ5を摺動するには、コイル14に通電して永久磁石9Bを磁極11に引き寄せる。これにより、永久磁石9Aは磁極11から引き離される。このように永久磁石9Aが磁極11と一旦対向しなくなると、両者9A、11間で永久磁石9A自身の磁束に因る磁気的な吸引力は作用しない。
【0029】
第2実施例によれば、永久磁石9Bの個数を磁極11の個数と等しくしたことから、前述した第2実施例と同等の駆動トルクを出力することができる。
【0030】
次に本発明の第3実施例について説明する。
この実施例の基本構成は、上述した図1および図2に示す第1実施例と共通するため、同一部材については、共通する符号を付して説明を省略し、異なる構成について図1および図2を援用しつつ説明する。
【0031】
第3実施例にあっては、永久磁石9Aの個数と永久磁石9Bの個数とを異ならせ、永久磁石9Aの個数を永久磁石9Bの個数よりも多くする。そして好ましくは、永久磁石9Aの個数を磁極11の個数よりも少なくし、より好ましくは、永久磁石9Aの個数を磁極11の個数に近づける。
【0032】
回転電機4がロードホイール1を駆動する時、ロードホイール1の停止中にパーキングロックを作動する時および解除する時は、上述した第2実施例と同様である。なお、第3実施例でロータ5がパーキングロック位置に摺動した後は、電流をコイル14に流し続ける必要はなく、ロータ5はパーキングロック位置を維持する。
【0033】
この第3実施例によれば、永久磁石9A自身の磁束が磁極11を引き寄せる磁気的なパーキングロックの力を、第2実施例の磁気的パーキングロック力よりも大きくすることができる。
つまり、第3実施例の磁気的パーキングロック力は、永久磁石9Aの個数と磁極11の個数が等しい第1実施例の磁気的パーキングロック力が弱い。しかし、永久磁石9Aの個数が永久磁石9Bの個数よりも小さい第2実施例と比較して、永久磁石9Aの個数が永久磁石9Bの個数よりも大きい第3実施例のほうが、パーキングロック位置(図2)にロータ5が移動した際にロータ5の永久磁石9Aとステータ6の磁極11の位置が近くなるため、磁気的パーキングロック力が大きくなる。
さらに、永久磁石9Aの個数を磁極11の個数よりも少なくし永久磁石9Aの個数を磁極11の個数に近づけることによって巻線係数を1に近づけることが可能になり、モータ駆動時にロータシャフト7から出力するトルクの増大を図ることができる。
【0034】
次に本発明の第4実施例について説明する。
図7は、第4実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸Oを含む平面で断面として模式的に示す縦断面図であり、ロータが駆動する駆動位置を表す。また図8は同実施例におけるロータが回転不能に固定されるパーキングロック位置を示す縦断面図である。また図9は、図7に示す軸Oに直角な平面X−Xで同実施例の回転電機を破断し矢の向きにみた状態を示す横断面図である。
【0035】
この第4実施例の基本構成は、上述した第1実施例あるいは第2、第3実施例と共通するため、同一部材については、共通する符号を付して説明を省略し、異なる構成については新たに符号を付して説明する。第4実施例のパーキングロック機能付回転電機21は、ステータ6の外径側に、ロータ5を配置して回転自在に軸支したいわゆるアウタロータ型ラジアルギャップ構造の回転電機である。ロータ5は、ベアリング機構のボール28を介して、ケース12に回転自在、かつ軸方向に相対移動可能に軸支される。
【0036】
ロータ5のうちケース12と対向する部位には、凹部区画22を設け、この凹部区画22には、突起23および質量体24をL字型に突き合わせて結合したガバナ25を配置する。ヒンジ26は凹部区画22の内径側に設けられて、その回転軸は周方向に延在する。ヒンジ26は突起23および質量体24の突き合わせ部分と連結する。ばね27は質量体24を凹部区画22内に引きこむよう付勢する。ロータ5が回転する間、質量体24にはロータ回転速度に応じた遠心力が作用する。このため、質量体24はばね27の付勢力に抗して、ヒンジ26よりも外径側に位置する。質量体24と直角方向に突出する突起23は、図7に示すように軸O方向に突出して、ケース12に向かう。この結果、ロータ5の軸方向移動は、突起23の突出長さ分の規制を受け、ロータ5はケース12に近づくことができない。つまり、突起23が軸O方向に突出する間、ロータ5が図8に示すパーキングロック位置に摺動することが不可能になる。
【0037】
図14〜図16は、ガバナ25の動作説明図である。図14は上述した図7に対応する。図16は上述した図8に対応する。ロータ5の回転速度が高い高回転時には遠心力が大きくなるため、図14に示すように 突起23が軸Oと平行にケース12に向かって完全突出する。
ロータ5の回転速度が低い低回転時には遠心力が小さくなるため、図15に示すように質量体24はばね27の付勢力に対して完全に抗することはなく軸Oに対して斜交する姿勢をとる。したがって突起23がケース12側に向かって傾斜し、ロータ5から若干突出する。この結果、ロータ5はケース12に当接することが不可能となり、係合突起13が凹部17に係合することはない。
【0038】
ロータ5の回転速度が0である無回転時には遠心力が0であるため、図16に示すように質量体24はばね27の付勢力により引き込まれる。したがって突起23がロータ5の中に収容される。図8に沿って説明すると、質量体24はばね27の付勢力によって凹部区画22内部に引き込まれる。突起23は凹部区画22に収容される。この結果、ロータ5の軸方向移動はガバナ25から何らの規制を受けず、ロータ5が図8に示すパーキングロック位置に摺動することができる。
【0039】
このようなガバナ25によれば、回転中のロータ5がパーキングロック位置に軸方向移動することが不可能なため、ロータ5の回転中に突然パーキングロックが作動するという懸念を解消することができる。
【0040】
なお、質量体24はロータ5全体を摺動させるためのものではなく、ロータ5よりも遥かに小さな突起23の姿勢を変化させるためのものであるから、ガバナ25を取り付けたことによりロータ5の重量が徒に増大することはない。
【0041】
この第4実施例ではガバナ25に代えて、図17〜図20の動作説明図に示す別な実施例になるガバナを具えていてもよい。図17および図19は別な実施例になるガバナを具えたロータを回転軸方向からみた状態を示す正面図であり、図17はロータ回転時を、図19はロータ無回転時を示す。図18および図20は別な実施例になるガバナを具えたパーキングロック機能付回転電機を、回転軸を含む平面で一部破断して示す縦断面図であり、図18はロータ回転時を、図20はロータ無回転時を示す。
【0042】
別な実施例になるガバナは図17および図19の正面図に示すように、ロータ5内部のうち外縁部に三日月型の部材28を周方向複数配置したものである。部材28は弧状に張り出した円弧28tと円弧28tの両端を短絡するような弧を描く窪み28uとを具えた板状体である。そして円弧28tをロータ5の外径側に、窪み28uをロータ5の内径側にして配置する。部材28の一端をピボット29でロータ5に軸支する。他端をばね27でロータ5の内径側に付勢する。
ケース12のうちロータ5の外径側に位置する中空円筒部分には、突起30を設ける。突起30はケース12の内壁から内径方向にむかって突出する。
【0043】
ロータ5の回転時は、図17および図18に示すように、遠心力が部材28に作用し、ばね27の付勢力に抗して部材28の円弧28tがロータ5の外縁から突出する。この結果、円弧28tが突起30に係止して、ロータ5の軸方向移動を規制する。これにより係合突起13が凹部17に係合することはない。
【0044】
ロータ5の回転速度が0である無回転時には遠心力が0であるため、図19および図20に示すように部材28はばね27の付勢力によりロータ5内に引き込まれる。したがって円弧28tがロータ5の中に収容される。この結果、ロータ5は何ら規制を受けることなく軸方向移動することが可能になる。そして図20に示すように、係合突起13が凹部17に係合する軸方向位置までロータ5は摺動することができる。
【0045】
また第4実施例では、パーキングロック位置の位置合わせを行う位置決め部材19を、図7および図8に2点鎖線で示す位置に軸方向移動させて、ロータ5がパーキングロック位置に摺動することを不可能にしてもよい。
【0046】
位置決め部材19は図7および図8に例示するようなセンターナットであって、ロータシャフト7の外周と螺合するものとする。ケース12を挟んで、ロータ5と反対側にある位置決め部材19は、ロータ5とケース12との軸方向距離を規定する。位置決め部材(センターナット)19を回転させてケース12に近づけるほど、ロータ5はケース12に近づくことができなくなり、ロータ5がパーキングロック位置に摺動することを不可能にする。このような位置決め部材19によれば、回転電機21を搭載したインホイールモータ方式の車両を牽引する際には、パーキングロックが作動することを防止することができ、車輪と直結するロータ5の回転を自由にすることができる。
【0047】
次に、本発明の第4実施例について説明する。
図10は、第4実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸Oを含む平面で断面として模式的に示す縦断面図であり、ロータが駆動する駆動位置を表す。また図11は同実施例におけるロータが回転不能に固定されるパーキングロック位置を示す縦断面図である。また前述した図9は、図10に示す軸Oに直角な平面X−Xで第4実施例の回転電機を破断し、矢の向きにみた状態を示す横断面図でもある。
【0048】
この第4実施例のうち上述した第1実施例と同一部材については、共通する符号を付して説明を省略し、異なる部分については新たに符号を付して説明する。第4実施例のパーキングロック機能付回転電機31は、ロータ5およびステータ6を軸O方向に対向配置したアキシャルギャップ構造の回転電機である。
【0049】
ステータ6と向かい合うロータ5の対向面には永久磁石9Cを、周方向に複数配設する。
エアギャップ10を介して磁極11と軸O方向に対向する永久磁石9Cは、磁極11と同じ数であっても、あるいは磁極11と異なる数であってもよい。図示しないインバータ回路が各コイル14に公知の駆動用交流電圧を印加すると磁極11に磁束が発生する。そして、磁極11は永久磁石9Cとの間で駆動のための磁気回路を形成する。
【0050】
ロータ5の外径側には永久磁石9Dを、周方向に複数配設する。永久磁石9Dは、ケース12の内壁と向かい合っている。ケース12の内壁には永久磁石9Eを、周方向に複数配設する。これら永久磁石9D,9Eは、径方向に着磁されていて、隣り合う永久磁石が反対向きになるよう配置される。
【0051】
回転電機31の駆動中は図10に示すように、ロータ5を、エアギャップ10の間隔を狭く、かつ永久磁石9Dの軸方向位置と永久磁石9Eの軸方向位置とがずれるような駆動位置にする。永久磁石9D,9E間で相対回転しているため、永久磁石9Dと永久磁石9Eとは相互に吸引しない。
【0052】
これに対し回転電機31の停止中は図11に示すように、ロータ5を軸O方向移動させ、エアギャップ10の間隔を広く、かつ永久磁石9Dの軸方向位置と永久磁石9Eの軸方向位置とが一致するようなパーキングロック位置にする。ロータ5は回転していないため、
永久磁石9Dと永久磁石9Eとは相互に吸引して磁気的パーキングロックが完成する。
【0053】
次に、本発明の第6実施例について説明する。
図12は、第6実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸Oを含む平面で断面として模式的に示す縦断面図であり、ロータが駆動する駆動位置を表す。また図13は同実施例におけるロータが回転不能に固定されるパーキングロック位置を示す縦断面図である。また前述した図9は、図12に示す軸Oに直角な平面X−Xで第6実施例の回転電機を破断し、矢の向きにみた状態を示す横断面図でもある。
【0054】
この第6実施例の基本構成は、上述した第1実施例と同一の基本構成を有するため、同一部材については、共通する符号を付して説明を省略し、異なる構成については新たに説明する。第6実施例のパーキングロック機能付回転電機41は、ステータ6の内径側に、ロータ5を配置して回転自在に軸支したいわゆるインナロータ型ラジアルギャップ構造の回転電機である。ロータ5は、ボールスプライン8を介して、ケース12に回転自在、かつ軸方向に相対移動可能に軸支される。
【0055】
この回転電機41によれば、ロータ5が回転する間、図12に示すようにガバナ25の突起23がケース12の端面12tに向かって突出するため、ロータ5の軸方向移動は、突起23の突出長さ分の規制を受ける。したがって、ロータ5が図13に示すパーキングロック位置に摺動することが不可能になり、ロータ5の回転中に突然パーキングロックが作動することを回避できる。
【0056】
これに対しロータ5の回転速度が0である無回転時には、ガバナ25の突起23がロータ5の凹部区画22に収容され、ロータ5の軸方向移動は何らの規制を受けない。したがって、ロータ5が図13に示すパーキングロック位置に摺動することができる。したがって係合突起13は凹部17に係合してパーキングロックが作動する。
【0057】
次に本発明の第7実施例について説明する。
図21および図22は第7実施例のパーキングロック機能付回転電機51を模式的に示す縦断面図であり、図21はロータ5の駆動位置を、図22はロータ5のパーキングロック位置をそれぞれ示す。この実施例の基本構成は、前述した第1実施例と共通するため、同一部材については、共通する符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0058】
回転電機51の一方側端面および他方側端面と、これら両端面の間に位置する回転電機51の外周壁とを形成するケース12は、ロータ5を収容する。また、ケース12の内周はステータ6を支持する。ケース12内部の端面には、ロータ5外縁の近傍に磁性体からなる突起52を固設する。この実施例では、永久磁石9Bの磁束が永久磁石9Aの磁束より強いものであるとして、軸O方向両側にあるケース12内部の端面のうち、永久磁石9Bに近い方の端面に突起52を設ける。
【0059】
ロータ5が回転する駆動時は、前述した第1実施例と同様に、コイル14にA極を駆動するための交流と前記B極を駆動するための交流とを重畳した複合電流を流し、ロータ5をA極のトルクおよびB極のトルクで駆動する。
【0060】
これに対しロータ5が回転しない停止中は、永久磁石9Bの磁束が突起52を引き寄せる力が、永久磁石9Aおよび9Bの磁束が磁極11を引き寄せる力に勝って、図22に矢で示すようにロータ5をパーキングロック位置に摺動させる。そして永久磁石9Bが突起52と接触してパーキングロックが完成する。このパーキングロックを作動させるためにコイル14に通電する必要はない。
【0061】
図22に示すパーキングロックを解除して図21に示す駆動位置にロータ5を摺動するには、コイル14に通電して永久磁石9Bを磁極11に引き寄せる。これにより、永久磁石9Bは突起52から引き離される。
【0062】
この第7実施例によれば、突起52を設けることで足り、簡易な構成でロータ5を確実にパーキングロックすることができる。
【0063】
次に本発明の第8実施例について説明する。
図23および図24は第8実施例のパーキングロック機能付回転電機61を模式的に示す縦断面図であり、図23はロータ5の駆動位置を、図24はロータ5のパーキングロック位置をそれぞれ示す。この実施例の基本構成は、前述した第1実施例と共通するため、同一部材については、共通する符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0064】
ケース12内部の端面には、ロータシャフト7の近傍に凹凸を具えた係合部62を形成する。また、ロータ5の中心部にも、係合部62と係合可能な係合部63を形成する。これら凹凸を具えた係合部62および63は、軸O方向に相対移動可能かつ周方向には相対移動不能に係合するものであればよく、例えばスプライン嵌合するような形状である。この第8実施例では、図23に示すように、ケース12内部の端面から係合部62を突出させる。係合部62は軸Oを中心とする円環形状であり、その外径側側面には複数本のスプライン溝62sを刻設する。スプライン溝62sは軸O方向に延在するとともに、周方向等間隔に配設される。係合部62は従来一般のパークロックギヤと同じギヤ歯を具えていても良い。またこれらスプライン溝62sと対応する径方向位置で、ロータ5の係合部63も、軸O方向に延在するスプライン溝を周方向等間隔に具える。
【0065】
ロータ5が回転する駆動時、ロータ5が回転しない停止中にパーキングロックを作動する時および解除する時は、前述した第1〜第3実施例と同様である。ロータ5がパーキングロック位置にあると、図24に示すように、係合部63が係合部62と係合してパーキングロックが完成する。
【0066】
この第8実施例によれば、ロータシャフト7に近いロータ5の内径側に凹凸を具えた係合部63を設けることから、凹凸によるロータ5のホイールアンバランスを小さくすることができ、回転が安定する。
【0067】
次に本発明の第9実施例について説明する。
図25および図26は第9実施例のパーキングロック機能付回転電機71を模式的に示す縦断面図であり、図25はロータ5の駆動位置を、図26はロータ5のパーキングロック位置をそれぞれ示す。この実施例の基本構成は、前述した第1実施例と共通するため、同一部材については、共通する符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0068】
ケース12内部の端面には、ロータシャフト7の近傍に凹凸を具えた係合部72を形成する。また、ロータ5の中心部にも、係合部72と係合可能な係合部73を形成する。これら凹凸を具えた係合部72および73も、軸O方向に相対移動可能かつ周方向には相対移動不能に係合するスプライン嵌合溝である。ただし、この第9実施例では図25に示すように、ロータ5からケース12の端面に向かって係合部73を突出させる。係合部73は軸Oを中心とする円環形状であり、その外径側側面には複数本のスプライン溝73sを刻設する。スプライン溝73sは軸O方向に延在するとともに、周方向等間隔に配設される。係合部73は従来一般のパークロックギヤと同じギヤ歯を具えていても良い。またこれらスプライン溝73sと対応する径方向位置で、ケース12の係合部72も、軸O方向に延在するスプライン溝を周方向等間隔に具える。
【0069】
ロータ5が回転する駆動時、ロータ5が回転しない停止中にパーキングロックを作動する時および解除する時は、前述した第1〜第3実施例と同様である。ロータ5がパーキングロック位置にあると、図26に示すように、係合部73が係合部72と係合してパーキングロックが完成する。
【0070】
この第9実施例によれば、ロータ5の中心部に軸O方向に突出した係合部73sを設けることから、ロータ5の剛性を向上することができる。
【0071】
次に本発明の第10実施例について説明する。
図27および図28は第10実施例のパーキングロック機能付回転電機81を模式的に示す縦断面図であり、図27はロータ5の駆動位置を、図28はロータ5のパーキングロック位置をそれぞれ示す。この実施例の基本構成は、前述した第1実施例と共通するため、同一部材については、共通する符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0072】
ケース12内部の端面にはピン82を植設し、ピン82先端をロータ5に向けて突出させる。ピン82と対応するロータ5の径方向位置には、ピン82先端を受容する凹部83を設ける。
【0073】
ロータ5が回転する駆動時、ロータ5が回転しない停止中にパーキングロックを作動する時および解除する時は、前述した第1〜第3実施例と同様である。ロータ5がパーキングロック位置にあると、図28に示すように、ピン82が凹部83の中に嵌挿されてパーキングロックが完成する。
【0074】
この第10実施例によれば、ロータ5に凹部83を設けることから、ロータ5の剛性を向上することができる。
【0075】
ところで、上記した各実施例によれば、鉄心にコイル14を巻回した磁極11を複数具え、これら磁極11をステータ6の周方向に配設し、永久磁石9を複数具えステータ6との間で相対回転するロータ5を、軸O方向に移動可能に軸支した回転電機において、ロータ5のうち軸O方向一方の部位には永久磁石9Aを周方向に複数配設したA極を設け、ロータ5のうち軸O方向他方の部位にはA極と異なる数の永久磁石9Bを周方向に複数配設したB極を設け、ロータ5の駆動時には、これらA極およびB極の双方がステータ6との間で駆動力を発生するための磁気回路を形成する駆動位置に、ロータ5を軸方向移動して、ロータ5の停止時には、A極の永久磁石9Aがステータ6の磁極11を磁気的に吸引してロータを回転不能に拘束するパーキングロック位置に、ロータ5を軸方向移動するよう構成したことから、
回転電機4,21,41に既に具わっている永久磁石9Aの磁力や、回転電機31に既に具わっている永久磁石9D、9Eの磁力を利用してロータシャフト7を磁気的に拘束するため、回転電機4,21,31,41に従来のようなロック機構を別途配置する必要がない。したがって、従来のパーキングロック機能付回転電機よりも、軽量化および軸方向寸法の短縮化を達成することができ、インホイールモータ方式として回転電機4,21,31,41を採用すればレイアウト上有利となる。
【0076】
ここで第1実施例のように、A極の永久磁石9Aの数とステータ6の磁極11の数とを同じにすれば、永久磁石9A自身の磁束が磁極11を好適に吸引することが可能になり、磁気的なパーキングロックの力を最大にすることができる。
【0077】
あるいは第2実施例のように、B極の永久磁石9Bの数とステータ6の磁極11の数とを同じにしても、第1実施例の磁気的なパーキングロックよりも弱いもの、やはり磁気的なパーキングロックが可能になる。
【0078】
あるいは第3実施例のように、永久磁石9Aの数を永久磁石9Bの数よりも多くしても、第2実施例の磁気的なパーキングロックよりも弱いもの、やはり磁気的なパーキングロックが可能になる。
【0079】
また上記した各実施例によれば、A極の永久磁石9Aの磁力をB極の永久磁石9Bの磁力よりも強くし、ロータ5の停止時には、A極の永久磁石9Aがステータ6の磁極11を磁気的に吸引することによりロータ5をパーキングロック位置(図2,図4,図8,図13)に摺動することから、ロータ5の回転が停止すると自動的にパーキングロックを作動させることができる。
【0080】
また上記した各実施例によれば、コイル14に、A極を駆動するための交流とB極を駆動するための交流とを重畳した複合電流を流すことにより、ロータ5を軸O方向に摺動させてもよい。つまり複合電流によれば、A極および磁極11間の吸引力を、B極および磁極11間の吸引力よりも大きくするような複合電流を流すことにより、A極が磁極11の近傍となるパーキングロック位置(図2,図4,図8,図13)にロータ5を摺動することができる。
また、複合電流によれば、ロータ5の軸方向位置を、図4に示すパーキングロック位置と、図5に示す駆動位置と、図6に示す始動位置のいずれにも制御することができる。
【0081】
上記した各実施例にあっては、図7等に示すようにロータ5と回転電機の固定部材であるケース12との間に、係合突起13および凹部17から構成されて機械的に係合する係合手段を介挿し、パーキングロック位置で係合手段が係合してロータ5を回転不能に固定することとしてもよい。
この場合、磁気的に吸引してロータ5を回転不能に拘束する磁気的パーキングロックを、上記係合手段の作動手段として利用することになる。したがって、係合突起13を係脱するために従来のような大型のアクチュエータを設ける必要もないことから、パーキングロック機能付回転電機の小型化に寄与することができる。
【0082】
また図7等に示すように、ロータ5と固定部材であるケース12との間に、ロータ5の回転中に係合突起13の係合を防止するガバナ25を設けたことから、ロータ5の回転中に突然パーキングロックが作動するという懸念を解消することができる。なおガバナは、ガバナ25のように軸O方向に突出するものや、図17に示す部材28のように外径方向に突出するものがある。
【0083】
上記した第4実施例にあっては、図7等に示すようにボールスプライン8で回転電機のロータシャフト7にロータ5を軸方向相対移動可能、かつ周方向相対移動不能に取り付け、ロータシャフト7にはロータ5のパーキングロック位置を規定する位置決め部材19を設け、この位置決め部材19を、必要に応じてロータシャフト7上で図7および図8に二点鎖線で示すように軸O方向に移動させることにより、ロータ5がパーキングロック位置に移動することを規制することとしてもよい。
このような位置決め部材19によれば、回転電機21を搭載したインホイールモータ方式の車両を牽引する際には、パーキングロックが作動することを防止することができ、車輪と直結するロータ5およびロータシャフト7の回転を自由にすることができる。
【0084】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨に逸脱しない範囲において種々変更が加えられうるものである。例えば、位置決め部材19を必要に応じてロータシャフト7上で軸O方向に移動させる第4実施例の構成は、他の実施例にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸を含む平面で破断して示す縦断面図である。
【図2】同実施例のロータが回転不能に固定された状態を示す縦断面図である。
【図3】ロータおよびステータの一部を取り出して示す斜視図である。
【図4】ロータが駆動位置にあるときの、ロータおよびステータの位置関係を示す斜視図である。
【図5】ロータがパーキングロック位置にあるときの、ロータおよびステータの位置関係を示す斜視図である。
【図6】ロータが始動位置にあるときの、ロータおよびステータの位置関係を示す斜視図である。
【図7】本発明の第4実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸を含む平面で破断して模式的に示す縦断面図である。
【図8】同実施例のロータが回転不能に固定された状態を示す縦断面図である。
【図9】図7に示すX−Xで同実施例の回転電機を破断し矢の向きにみた状態を示す横断面図である。
【図10】本発明の第5実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸Oを含む平面で破断して模式的に示す縦断面図である。
【図11】同実施例のロータが回転不能に固定された状態を示す縦断面図である。
【図12】本発明の第6実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸Oを含む平面で破断して模式的に示す縦断面図である。
【図13】同実施例のロータが回転不能に固定された状態を示す縦断面図である。
【図14】ロータの回転速度が高いときのガバナの姿勢を示す動作説明図である。
【図15】ロータの回転速度が低いときのガバナの姿勢を示す動作説明図である。
【図16】ロータの回転速度が0のときのガバナの姿勢を示す動作説明図である。
【図17】別な実施例になるガバナの回転時の動作説明図である。
【図18】別な実施例になるガバナの回転時の動作説明図である。
【図19】別な実施例になるガバナの無回転時の動作説明図である。
【図20】別な実施例になるガバナの無回転時の動作説明図である。
【図21】本発明の第7実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸Oを含む平面で破断して模式的に示す縦断面図である。
【図22】同実施例のロータが回転不能に固定された状態を示す縦断面図である。
【図23】本発明の第8実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸Oを含む平面で破断して模式的に示す縦断面図である。
【図24】同実施例のロータが回転不能に固定された状態を示す縦断面図である。
【図25】本発明の第9実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸Oを含む平面で破断して模式的に示す縦断面図である。
【図26】同実施例のロータが回転不能に固定された状態を示す縦断面図である。
【図27】本発明の第10実施例になるパーキングロック機能付回転電機を、回転軸Oを含む平面で破断して模式的に示す縦断面図である。
【図28】同実施例のロータが回転不能に固定された状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 車輪のロードホイール
2 ロードホイールのリム部
3 ロードホイールのハブ部
4 パーキングロック機能付回転電機
5 ロータ
6 ステータ
7 ロータシャフト
8 ボールスプライン
9A,9B,9C,9D,9E 永久磁石
10 エアギャップ
11 ステータの磁極
12 回転電機ケース
13 係合突起
14 コイル
15 ステータのバックヨーク
16 中間層
17 凹部
18 駆動位置のロータ位置決め部材
19 パーキングロック位置のロータ位置決め部材
21 パーキングロック機能付回転電機
23 突起
24 質量体
25 ガバナ
28 ガバナの部材
30 ケース側の突起
31,41,51,61,71,81 パーキングロック機能付回転電機
52 磁性体突起
62,63,72,73 係合部
82 ピン
83 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体にコイルを巻回した磁極を複数具え、これら磁極をステータの周方向に配設し、
永久磁石を複数具え前記ステータとの間で相対回転するロータを、軸方向に移動可能に軸支した回転電機において、
前記ロータのうち軸方向一方の部位には前記永久磁石を周方向に複数配設したA極を設け、前記ロータのうち軸方向他方の部位には前記A極と異なる数の前記永久磁石を周方向に複数配設したB極を設け、
前記ロータの駆動時には、これらA極およびB極の双方がステータとの間で駆動力を発生するための磁気回路を形成する駆動位置に、ロータを軸方向移動して、
前記ロータの停止時には、A極の永久磁石がステータの前記磁極を磁気的に吸引してロータを回転不能に拘束するパーキングロック位置にロータを軸方向移動するよう構成したことを特徴とするパーキングロック機能付回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載のパーキングロック機能付回転電機において、
前記A極の永久磁石の数と前記ステータの磁極の数とを同じにしたことを特徴とするパーキングロック機能付回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載のパーキングロック機能付回転電機において、
前記B極の永久磁石の数と前記ステータの磁極の数とを同じにしたことを特徴とするパーキングロック機能付回転電機。
【請求項4】
請求項1または3に記載のパーキングロック機能付回転電機において、
前記A極の永久磁石の数を前記B極の永久磁石の数よりも多くしたことを特徴とするパーキングロック機能付回転電機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパーキングロック機能付回転電機において、
前記A極の永久磁石の磁力を前記B極の永久磁石の磁力よりも強くし、
前記ロータの停止時には、前記A極の永久磁石がステータの前記磁極を磁気的に吸引することにより前記ロータを前記パーキングロック位置に移動することを特徴とするパーキングロック機能付回転電機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のパーキングロック機能付回転電機において、
前記コイルに、前記A極を駆動するための交流と前記B極を駆動するための交流とを重畳した複合電流を流すことにより、前記ロータを軸方向に移動させることを特徴とするパーキングロック機能付回転電機。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のパーキングロック機能付回転電機において、
前記ロータと回転電機の固定部材との間に機械的に係合する係合手段を介挿し、前記パーキングロック位置で該係合手段が係合してロータを回転不能に固定することを特徴とするパーキングロック機能付回転電機。
【請求項8】
請求項7に記載のパーキングロック機能付回転電機において、
前記ロータと前記固定部材との間に、前記ロータの回転中に前記係合を防止する係合防止手段を設けたことを特徴とするパーキングロック機能付回転電機。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のパーキングロック機能付回転電機において、
回転電機のロータシャフトに前記ロータを軸方向相対移動可能、かつ周方向相対移動不能に取り付け、該ロータシャフトにはロータの前記パーキングロック位置を規定するパーキングロック位置規定手段を設け、
該パーキングロック位置規定手段を、必要に応じてロータシャフト上で軸方向に移動させることにより、前記ロータがパーキングロック位置に移動することを規制することを特徴とするパーキングロック機能付回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2008−109842(P2008−109842A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231811(P2007−231811)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】