説明

ヒドロカルビルシリルカルボン酸エステル化合物の製造方法

【化1】


式(II)のカルボン酸と式(III)のヒドロカルビルシリル化合物との反応による式(I)のヒドロカルビルシリルカルボン酸エステルの製造方法が記載されており、ここでnは0〜1000のジヒドロカルビルシロキサン単位の数を表す。反応は親珪素性触媒の存在下で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ヒドロカルビルシリル(ポリ)カルボン酸エステルは有機合成における価値ある中間体である。実際に、それらは高反応性の結合およびシリル化剤と考えられる。従って、シリルカルボン酸エステル単量体の経済的製造は商業用システムに大きく寄与するであろう。
【背景技術】
【0002】
アシルオキシシランの合成に関する数種の方法が知られている。
【0003】
非特許文献1は、塩基の存在下におけるカルボン酸およびハロゲン化珪素からのアシルオキシシランの合成を記載している。
【0004】
アシルオキシシランを与えるための種々の金属触媒の存在下における水素化シリルとカルボン酸の反応が非特許文献2、非特許文献3および非特許文献4に開示されている。これらの方法は副生物として水素を放出する欠点を有する。
【0005】
特許文献1は、アシルオキシシランを製造するための相間移動触媒の存在下におけるカルボン酸塩とハロゲン化珪素の反応を開示している。この反応は、濾過により除去しなければならないハロゲン化塩を副生物として生成する欠点を有する。
【0006】
非特許文献5は、塩化亜鉛の存在下におけるジシロキサンと無水酢酸または無水安息香酸の還流時反応によりシリルエステルが得られたことを記載している。
【0007】
珪素における親核性作用の反応機構は文献に開示されていた。非特許文献6は珪素に関するたくさんの反応機構を開示している。しかしながら、親核性反応機構はハロ置換された珪素タイプ化合物に関しておりそしてこれらはハロゲン脱離基により促進される。
【0008】
特許文献2(ダウ・コーニング・コーポレーション(Dow Corning Corporation))は、アルキルカルボン酸エステルおよびジシロキサンを製造するためのアルコキシシランとカルボン酸との酸触媒反応を受ける反応を開示している。
【0009】
非特許文献7は、トリメチルクロロシランの存在下におけるアルコールを用いるカルボン酸のエステル化を開示している。この反応は中間体であるアルコキシトリメチルシランを介して進行しそしてアルキルエステルを高収率でジシロキサンと一緒に製造すると言われている。酢酸メチルの収率は96−98%である。
【0010】
非特許文献8は、水素気体の遊離度を研究するための酒石酸とトリエトキシシランの反応の研究を開示している。分光計比較目的のために、アセトキシトリエトキシシランを製造した。アセトキシトリエトキシシランの製造は、高温における10時間にわたる無水酢酸とテトラ−エトキシシランの反応により行われる。製造された生成物は9%だけの収率を生じた。ジエチルジエトキシシランがモノカルボン酸と重合してポリジエチルシロキサンおよび酸のエチルエステルを製造することも示された(非特許文献9)。著者は、ポリジエチルシロキサンの製造においてジエチルジアセトキシ−シランが中間体として製造されたことを示唆している。中間体は低収率で製造された。さらに、この文献はアルコールの存在下における中間体ジアセトキシ−シランの製造が対応するアルキルエステルをもたらすことも示している。
【0011】
特許文献3は、ホルムアミドの存在下におけるクロロおよびアシルオキシシランとヒドロキシル含有有機化合物のシリル化反応を開示している。
【0012】
非特許文献10は、珪素における種々の水素化シリル、エーテルおよびアミンの反応におけるフルオリドアニオンの触媒効果を開示している。
【特許文献1】米国特許第4,379,766号明細書
【特許文献2】欧州特許第056108A1号明細書
【特許文献3】JP50020053
【非特許文献1】T.W.Greene and P.G.M.Wuts,“Protective groups in organic synthesis”,J.Wiley & Sons,Inc.,New York,3rd,1999
【非特許文献2】Zh.Obshch.Khim.,24,861,1954
【非特許文献3】Bull.Chem.Soc.Jap.62(2),211,1989
【非特許文献4】Org.Letters,2(8),1027,2000
【非特許文献5】J.Valada,“C.R.Acad.Sci”,no246,pp.952−953(1958)
【非特許文献6】Bassindale et al.,The Chemistry of Organic Silicon Compounds,chapter 13,J.Wiley & Sons,1989
【非特許文献7】Nakao et al.,Bulletin of the Chemical Society Japan,54,1267−1268(1981)
【非特許文献8】Roth et al.,Journal of Organometallic Chemistry,521(1966)65−74
【非特許文献9】Lesnov et al.,Zh.Obshch.Khim,29,1959,1518
【非特許文献10】R Corriu,R.Perez and C Reye,Tetrahedron,39,6 999(1982)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的の一つは、シリルカルボン酸エステル化合物のより簡便で且つ効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一の局面によれば、式(II)
【0015】
【化1】

【0016】
[Rは水素原子であるか、或いはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル基を独立して表し、それらは場合によりアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノまたはアミノアルキルを含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、或いは−(RCOORであることができ、ここでpは0または1であることができそしてp=1である場合にはRはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル基から選択され、それらは場合によりアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、ここでRは水素原子であるか、或いはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、−SiRまたは−(SiRO)−SiR基から独立して選択されることができ、それらは場合によりアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールオキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノまたはアミノアルキル基を含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、そしてここでR、RおよびRは水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiR、アリール、アリールオキシル、アラルキルまたはアラルキルオキシル基を各々独立して表し、それらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、アリール、アリールオキシル、シリル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiR、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ(好ましくは、第三級アミノ)もしくはアミノアルキル基を含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、或いはR、RおよびRは独立して−O−C(O)R基であることができ、ここでRは上記で定義された通りであり、RおよびRは各々ヒドロキシルであることができ或いはアルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiR、アルケニル、アルキニル、アラルキルまたはアラルキルオキシル基から独立して選択され、それらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシル、シリル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiR、ハロゲン、アミノ(好ましくは、第三級アミノ)もしくはアミノアルキル基を含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、或いはRまたはRは−O−C(O)R基であることができ、そしてここで上記の各nは0〜1000のジヒドロカルビルシロキサン単位の数を独立して表す]
のカルボン酸を式(III)
【0017】
【化2】

【0018】
[式中、R、R、R、R、Rおよびnは上記で定義された通りでありそしてRは水素原子、アラルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキル基であり、それらは場合により上記のR〜Rに関して定義されたものに相当する置換基から選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよい]
のヒドロカルビルシリル化合物と反応させることによる式(I)
【0019】
【化3】

【0020】
[式中、
、R、R、R、R、Rおよびnは上記で定義されている通りである]
のヒドロカルビルシリルカルボン酸エステルの製造方法であって、該反応を親珪素性(silaphilic)触媒の存在下で行う方法が提供される。
【0021】
疑惑回避のために、例えばRのような基が上記で定義される場合には、式(III)中のその基は必ずしも式(I)中と同一でなくてもよい。例えば、式III中でRがアルコキシルである場合には、それは式I中でO−C(O)Rでありうる。一般に、式(I)および(III)に関して以上で定義された基のいずれかが有効な脱離基である場合には、それらは式(I)中で置換されていてもよくそして基の可能な選択において異なる基を表すことができる。
【0022】
好ましくは、R、R、R、RまたはRが式III中でアルコキシル、アリールオキシル、アルカリルオキシルまたはヒドロキシルである場合には、それらは式I中で−O−C(O)Rを表すことができる。
【0023】
好ましくは、Rが式(II)中でアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル基または水素原子を表す場合には、それは式(II)中で−(SiRO−)−SiRを表すことができる。
【0024】
好ましくは、親珪素性触媒は、限定されるものではないが、弗化ナトリウム、弗化カリウム、弗化セシウムまたは弗化テトラブチルアンモニウム(BuNF)を含んでなる弗素含有無機もしくは有機塩から選択されるか、或いはN−メチルイミダゾール(NMI)、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(HMPA)、4,4ジメチルイミダゾール、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、ピリジンN−オキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、2,4ジメチルピリジン、N−メチル−4−ピリドン、ジメチルホルミアミド(DMF)、3,5ジメチルピリジン、N,N−ジメチルエチレンウレア(DMEU)、N,N−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、ピリジン、イミダゾール、トリメチルアミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、N,N−ジアルキルホルムアミド、アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、N,N−ジアルキルアセトアミド、アルキルシアニド、N−メチルピロリドン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、1,2−ジメチルイミダゾール、LiOH、ステアリン酸Li、NaI、MeONaまたはMeOLiから選択され、上記のN−アルキルおよびN,N−ジアルキル....アミドおよびシアニド中の用語アルキルはいずれかの線状、環式、二環式、多環式、アルキル脂肪族または芳香族基を包含しそしてN,N−化合物の場合にはアルキルは同一もしくは相異なることができ、一例はN−ホルミルロジンアミンである。
【0025】
親珪素性触媒は珪素に対する特別な親和力を有する分子として定義されていた−ブルック(Brook)著、有機、有機金属および重合体化学における珪素(Silicon in Organic, Organometallic and Polymer Chemistry)、5.5章、J・ウィリー・アンド・サンズ、2000。好ましくは、親珪素性触媒は例えば酸素または窒素の如き電子に富んだヘテロ原子を有する。典型的には、ヘテロ原子は電子供与基で置換されている。
【0026】
本発明の方法に触媒作用を与えるためにルイス酸触媒を使用することもできる。従って、本発明の目的のためには、用語「親珪素性触媒」は、例えば、チタンブトキシドTi(OBu)の如きルイス酸触媒を包括するとみなすべきである。
【0027】
該触媒は、例えば、金属アルコキシド、有機錫化合物、例えばジラウリン酸ジブチル錫、ジオクチン酸ジブチル錫もしくは二酢酸ジブチル錫、またはホウ素化合物、例えばホウ素ブトキシドもしくはホウ酸でありうる。金属アルコキシドの代表例は、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシ−sec−ブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシアセチルアセトネート、アルミニウムジ−sec−ブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムジイソプロポキシエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−sec−ブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタン(IV)ブトキシド、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタンジソプロポキシビスエチルアセトアセテート、チタンテトラ−2−エチルヘキシルオキシド、チタンジイソプロポキシビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオレート)、チタンジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムトリブトキシドモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシドトリスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシドモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムジブトキシドビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシドトリスエチルアセトアセテートおよびジルコニウムテトラエチルアセトアセテートを包含する。これらの化合物の他に、環式1,3,5−トリイソプロポキシシクロトリアルミノキサンなども使用することができそしてそれにより「親珪素性触媒」の定義内に包含される。
【0028】
有利なことに、先行技術はアルコキシシランとカルボン酸との反応を対応するアルキルカルボン酸エステルおよびシラノールをもたらすものである(経路A)と記載しているが、後者は脱水する傾向がありジシロキサンを生成する。親珪素性触媒(すなわち、可逆的方法で珪素原子と配位しうる触媒)の使用がカルボキシ基によるアルコキシまたはヒドロキシル基の優先的な置換を可能にすることが驚くべきことに発見された(経路B)。
【0029】
【化4】

【0030】
好ましくは、式Iの化合物において、アシルオキシ基の数は1より多くてよく、好ましくは1−100、より好ましくは1−50、最も好ましくは1−10でありうる。疑惑回避のために、RまたはRがジ−またはポリ−カルボン酸誘導体である場合には式Iは重合体を表すことができる。
【0031】
より好ましくは、親珪素性触媒はペンタまたはヘキサ配位された珪素種を促進させうる触媒である。
【0032】
より好ましくは、親珪素性触媒はDMF、DMSO、ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、N,N−ジアルキルホルムアミド、アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、N,N−ジアルキルアセトアミド、N−メチルピロリドン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、DMAP、N−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、HMPA、DMPU、NaI、MeONa、MeOLi、Bu4NF、Ph3PO、LiOH、ステアリン酸LiおよびピリジンN−オキシドから独立して選択される。
【0033】
触媒は均一系または不均一系でありうるが、好ましくは均一系でありそして反応媒体中に遊離形態で存在する。或いは、触媒は重合体状担体に結合されていてもよい。
【0034】
特に好ましい触媒はDMF、ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、N,N−ジアルキルホルムアミド、BuNFから独立して選択される。
【0035】
好ましくは、触媒は反応媒体中に反応の開始時に0.001〜100モル%(モル/モル シラン)、より好ましくは0.01〜40モル%、最も好ましくは0.1〜30モル%の水準で存在する。ホルムアミドに関しては20〜30モル%のまたはBuNFに関しては0.1〜1モル%の範囲が特に好ましい。
【0036】
好ましくは、反応は適当な溶媒中で行われる。
【0037】
本発明の方法で使用できる適当な溶媒は非極性不活性溶媒、脂肪族炭化水素類、環式および非環式エーテル類を包含する。
【0038】
適当な溶媒はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン、エチルベンゼン、オクタン、デカン、デカヒドロナフタレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテルまたはそれらの混合物から独立して選択できる。
【0039】
特に好ましい溶媒は、反応性蒸留を可能にする、すなわち反応物のいずれかの蒸留を引き起こさないが生成物の一種の優先的な蒸留が右側への平衡をもたらすものである。
【0040】
より特に好ましい溶媒は、蒸留されたROHとの低沸点共沸物を生成するものである。さらにより特に好ましい溶媒は、蒸留されたROHとの不均一な低沸点共沸物を生成するものである。
【0041】
最も好ましくは、溶媒はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエンおよびキシレンから独立して選択される。
【0042】
好ましくは、反応の温度は蒸留しなければならない共沸物の沸点、反応器の形状および蒸留カラムの高さに依存する。
【0043】
典型的には、反応は0℃〜200℃の、より好ましくは60〜170℃の、最も好ましくは110〜140℃の範囲内で行われる。
【0044】
好ましくは、重合抑制剤は全反応混合物の0.001〜10重量/重量%の、より好ましくは0.001〜5重量/重量%の、そして最も好ましくは0.01〜2重量/重量%の範囲内で存在する。
【0045】
好ましくは、シラン:酸のモル比は1:100〜100:1の間、より好ましくは10:1〜1:10の間、最も好ましくは2:1〜1:2の間である。好ましくは、シラン:酸のモル比は約1:1である。
【0046】
好ましくは、溶媒は反応の開始時に全反応混合物の少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%である。反応は大気圧で行うことができるが、それより高いおよび低い圧力も可能である。
【0047】
反応は溶媒なしに行うこともでき、従って溶媒の適する範囲は全反応混合物の0〜99重量%、より好ましくは20〜50重量%、最も好ましくは30〜40重量%である。
【0048】
好ましくは、R、Rはアルキル、アルコキシル、アリール、ヒドロキシル基または−O−(SiRO)−SiR基を各々独立して表し、ここでR、R、R、RおよびRは以上で定義された通りでありそしてここで好ましくはn=0〜100そしてより好ましくはn=0〜10、最も好ましくはn=Oであるが、1、2、3、4または5も可能である。
【0049】
より好ましくは、式III中のRおよびRはアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基または−O−(SiRO)SiR基を含んでなる群から各々独立して選択され、ここでR、R、R、RおよびRはここで定義された通りである。最も好ましくは、R、R、R、RおよびRは各々独立してアルキル基を表す。
【0050】
より好ましくは、式I中のRおよびRは以上で定義された通りのアルキル基、O−(SiRO)−SiR基またはOC(O)R基を含んでなる群から各々独立して選択される。
【0051】
本発明の態様によると、R、R、R、R、R、RおよびRはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルを含んでなる群から各々独立して選択される。好ましくは、それらがアルキル基である場合には、R、R、RおよびRはメチルである。
【0052】
好ましくは、Rは水素原子またはアルキル基を表す。
【0053】
、RおよびRがアルキル基である場合には、それらは好ましくはC1〜C8アルキル基、好ましくはC3およびC4、より好ましくはイソプロピルおよびn−ブチル、よりなる群から独立して選択される。該アルキル基は分枝鎖状もしくは線状であってよくそして、場合により、上記の通りにして置換されていてもよい。
【0054】
またはRがアルコキシルである場合には、それらは好ましくは分枝鎖状もしくは線状でありうるC−Cオキシル基、より好ましくはC−Cオキシル基、最も好ましくはメトキシル基である。
【0055】
好ましくは、R〜Rのいずれか1つが−O−SiRまたは−O−(SiRO)−SiRとして選択される場合には、選択された基の中の珪素基に結合されたR−R基はそれら自体、すなわちO−SiRまたは−O−(SiRO)−SiR、でない。好ましくは、R−Rのいずれか1つが−O−SiRまたは−O−(SiRO)−SiRとして選択され且つそのような基が置換されている場合には、この置換はR〜R基のところでありそして好ましくはアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシ、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシル、シリル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキルにより、より好ましくはアルキルまたはアリールにより、最も好ましくはアルキルによる。
【0056】
好ましくは、ここで使用されるnは独立して0〜500、より好ましくは0〜100、最も好ましくは4〜50である。nに関する特に好ましい値は0、1、2、3、4または5から選択される。
【0057】
ここで使用される用語「重合体」は重合反応の生成物であり、そしてホモ重合体、共重合体、三元共重合体などを包括する。
【0058】
ここで使用される用語「共重合体」は少なくとも二種の単量体の重合反応により製造される重合体をさす。
【0059】
ここで使用される用語「独立して選択される」または「独立して表す」は、そのように記載された各々の基Rが同一もしくは相異なりうることを示す。例えば、式(I)の化合物中の各Rはnの各値に関して相異なりうる。
【0060】
ここで使用される用語「アルキル」は、別の方法で定義されない限り、直鎖状、分枝鎖状、環式もしくは多環式部分またはそれらの組み合わせを有し且つ1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子、なおさらより好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する飽和炭化水素基を示す。そのような基の例はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチルブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、オクチルなどから独立して選択されうる。
【0061】
ここで使用される用語「アルケニル」は、直鎖状、分枝鎖状、環式もしくは多環式部分またはそれらの組み合わせを有し且つ2〜18個の炭素原子、好ましくは2〜10個の炭素原子、より好ましくは2〜8個の炭素原子、さらにより好ましくは2〜6個の炭素原子、なおさらより好ましくは2〜4個の炭素原子を含有する1個もしくは数個の二重結合を有する炭化水素基を示す。アルケニル基の例はビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、イソプレニル、ファルネシル、ゲラニル、ゲラニルゲラニルなどを包含する。
【0062】
ここで使用される用語「アルキニル」は、直鎖状、分枝鎖状、環式もしくは多環式部分またはそれらの組み合わせを有し且つ2〜18個の炭素原子、好ましくは2〜10個の炭素原子、より好ましくは2〜8個の炭素原子、さらにより好ましくは2〜6個の炭素原子、なおさらより好ましくは2〜4個の炭素原子を含有する1個もしくは数個の三重結合を有する炭化水素基を示す。アルキニル基の例はエチニル、プロピニル、(プロパルギル)、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどを包含する。
【0063】
ここで使用される用語「アリール」は芳香族炭化水素から1個の水素の除去により誘導される有機基を示し、そして各々の環内に7個までの員を有する単環式、二環式もしくは多環式の炭素環を包含し、そこでは少なくとも1個の環が芳香族性である。該基は場合によりアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシまたはアミノ基から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよい。アリールの例はフェニル、p−トリル、4−メトキシフェニル、4−(tert−ブトキシ)フェニル、3−メチル−4−メトキシフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3−ニトロフェニル、3−アミノフェニル、3−アセトアミドフェニル、4−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アミノフェニル、3−メチル−4−アミノフェニル、2−アミノ−3−メチルフェニル、2,4−ジメチル−3−アミノフェニル、4−ヒドロキシフェニル、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、3−アミノ−1−ナフチル、2−メチル−3−アミノ−1−ナフチル、6−アミノ−2−ナフチル、4,6−ジメトキシ−2−ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナンスリル、アンスリルまたはアセナフチルなどを包含する。
【0064】
ここで使用される用語「アラルキル」は式アルキル−アリールの基を示し、ここでアルキルおよびアリールは以上で定義されたものと同じ意味を有する。アラルキル基の例はベンジル、フェネチル、ジベンジルメチル、メチルフェニルメチル、3−(2−ナフチル)−ブチルなどを包含する。
【0065】
ここで使用される用語「シリル」は−SiRおよび−(SiRO)−SiR基を包含し、ここでR〜Rはここで定義された通りである。好ましくは、式(I)中のR、R、R、RまたはR基がそのようなシリル基により置換されている場合には、シリル基−SiRまたは−(SiRO)−SiR中のR、R、R、RおよびRの少なくとも1個もしくはそれ以上はアルキルまたはアリールであり且つアルキルまたはアリールでない該シリル基中のR、R、R、RおよびRの少なくとも1個もしくはそれ以上は−O−SiRまたは−O−(SiRO)−SiRである。
【0066】
シリル−SiRまたは−(SiRO)−SiR中で、Rがアルキルまたはアリールであり且つRおよびRの少なくとも1個が−O−SiRまたは−O−(SiRO)−SiRである場合には、好ましくは、そのような−O−SiRまたは−O−(SiRO)−SiR基中のR、R、R、RおよびRはそれら自体アルキルまたはアリールでありそして同一もしくは相異なることができ、より好ましくは、各々が独立してC−Cアルキル基でありうる。
【0067】
式(I)のカルボキシル基部分の例はホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、オキサロイル、マロニル、スクシニル、グルタリル、アジポイル、ベンゾイル、フタロイル、イソブチロイル、sec−ブチロイル、オクタノイル、イソオクタノイル、ノナノイル、イソノナノイル、アビエチル、デヒドロアビエチル、ジヒドロアビエチル、ナフテニル、アンスラセニル、アビエチル二量体(ダイマーレックス(Dimerex)(R))、ジヒドロアビエチル(フォラル(Foral)(R))などおよびそれらの重合体または共重合体を包含するがそれらに限定されない。
【0068】
好ましい態様では、式(I)の該カルボキシル基部分はアセチル、アビエチル、ジヒドロアビエチルおよびアビエチル二量体である。
【0069】
一般式(I)の有機シリル化カルボン酸エステル化合物の例は、トリ−n−ブチル1−アセトキシ−シラン、トリ−n−プロピル−1−アセトキシ−シラン、トリ−t−ブチル−1−アセトキシ−シラン、トリ−イソプロピル−1−アセトキシ−シラン、トリ−イソブチル−1−アセトキシ−シラン、トリ−メチル−1−アセトキシ−シラン、トリエチル−1−アセトキシ−シラン、トリベンジル−1−アセトキシ−シラン、トリアミル−1−アセトキシ−シラン、トリフェニル−1−アセトキシ−シラン、ノナメチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナエチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−t−ブチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナベンジル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−イソプロピル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−n−プロピル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−イソブチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−アミル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−n−ブチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−ドデシル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−ヘキシル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−フェニル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−オクチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ウンデカメチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカエチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−t−ブチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカベンジル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−イソプロピル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−n−プロピル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−イソブチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−アミル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−n−ブチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−ドデシル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−ヘキシル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−フェニル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−オクチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、トリデカメチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカエチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−t−ブチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカベンジル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−イソプロピル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−n−プロピル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−イソブチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−アミル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−n−ブチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−ドデシル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−ヘキシル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−フェニル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−オクチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、1,3,3,3−テトラメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−アセトキシ−ジシロキサン、1−エチル,3,3,3−トリメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−アセトキシ−ジシロキサン、トリス−(トリメチルシリルオキシ)−1−アセトキシ−シランおよびそれらの重合体を包含するがそれらに限定されない。
【0070】
式Iのカルボキシル部分の代表例は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、マロニル、オキサリルおよびベンゾイルである。
【0071】
本発明を次に単なる例示によりそして添付実施例を参照しながら記載する。
【0072】
実施例(本発明に従う)
【実施例1】
【0073】
10gのメトキシトリブチルシラン、3.77gの酢酸、0.94gのN,N−ジメチルホルムアミド、および10mlのヘプタンの混合物を加熱する。共沸物であるメタノール−ヘプタンを次に大気圧において蒸留して(59.1℃)、酢酸トリブチルシリルを与える。
酢酸トリ−n−ブチルシリル:13C NMR:172.2、26.7、25.4、22.9、14.1、13.5;29Si NMR:22.6;IR(フィルム):2959、2927、1726、1371、1257、1083、1019、934、887cm−1
【実施例2】
【0074】
91.8gのフォラル(R)(水素化ロジン)、17.8gのメチルトリエトキシシランおよび7.3gのN,N−ジメチルホルムアミドの250mlのトルエン中混合物を加熱する。共沸物であるエタノール−トルエンを大気圧において蒸留して(74.4℃)、メチルシリルトリレジネートを与える。
【実施例3】
【0075】
50gのシルレス(Silres)(R)SY231、15gの酢酸、5.4gのN,N−ジメチルホルムアミド、および100mlのヘプタンの混合物を加熱する。共沸物であるメタノール−ヘプタンを次に大気圧において蒸留して(59.1℃)、シリルアセトキシ改質樹脂を与える。
【0076】
アセトキシ官能基に関する特性信号が生成物のNMRスペクトル上に存在する:13C NMR:170.1、23.03;29Si:−7.05。
【実施例4】
【0077】
264gのシルレス(R)SY231、178.7gの水素化ロジン(フォラル(R))、56.9gのN−ホルミルロジンアミンおよび264mlのヘプタンの混合物を共沸物(メタノール−ヘプタン、59.1℃)が完全に蒸留されるまで約110−137℃に加熱して、ロジン改質シリコーンシリルエステルを与える。蒸留されたメタノールの量を基準とした収率:65%。
【実施例5】
【0078】
280gのシルレス(R)SY231、215gのロジン二量体(ダイマーレックス(R))、3.95gの弗化テトラブチルアンモニウムおよび280mlのヘプタンの混合物を共沸物(メタノール−ヘプタン、59.1℃)が完全に蒸留されるまで約100−114℃に加熱して、ロジン改質シリコーンシリルエステルを与える。蒸留されたメタノールの量を基準とした収率:100%。
【実施例6】
【0079】
282gのシルレス(R)SY231、216gのロジン二量体(ダイマーレックス(R))、0.53gの水酸化リチウム一水和物および282mlのヘプタンの混合物を共沸物(メタノール−ヘプタン、59.1℃)が完全に蒸留されるまで約100−120℃に加熱して、ロジン改質シリコーンシリルエステルを与える。蒸留されたメタノールの量を基準とした収率:100%。
【実施例7】
【0080】
280gのシルレス(R)SY231、215gのロジン二量体(ダイマーレックス(R))、3.64gのステアリン酸リチウムおよび281mlのヘプタンの混合物を共沸物(メタノール−ヘプタン、59.1℃)が完全に蒸留されるまで約100−120℃に加熱して、ロジン改質シリコーンシリルエステルを与える。蒸留されたメタノールの量を基準とした収率:100%。
【実施例8】
【0081】
287gのシルレス(R)SY300、163gの水素化ロジン(フォラル(R))、48gのN−ホルミルロジンアミンおよび287mlのキシレンの混合物を約140℃に加熱する。混合物を全ての共沸物(水−キシレン、92℃)が大気圧で完全に蒸留されるまで加熱して、ロジン改質シリコーンシリルエステルを与える。蒸留された水の量を基準とした収率:89%。ジン改質されたシリコーンシリルエステルに関する特性信号が生成物のNMRスペクトル上に存在する:13C NMR:1709.2、178.0;29Si:−6.15。
【実施例9】
【0082】
263gのシルレス(R)SY300、191gのロジン二量体(ダイマーレックス(R))、44.7gのN−ホルミルロジンアミンおよび264mlのキシレンの混合物を約1154℃に加熱する。混合物を共沸物(水−キシレン、92℃)が大気圧で完全に蒸留されるまで加熱して、ロジン改質シリコーンシリルエステルを与える。蒸留された水の量を基準とした収率:92%。
【実施例10】
【0083】
301gのシルレス(R)SY300、194gのロジン二量体(ダイマーレックス(R))、3.58gの弗化N−テトラブチルアンモニウムおよび301mlのキシレンの混合物を約152℃に加熱する。混合物を全ての共沸物(水−キシレン、92℃)が大気圧で完全に蒸留されるまで加熱して、ロジン改質シリコーンシリルエステルを与える。蒸留された水の量を基準とした収率:100%。
【実施例11】
【0084】
282gのシルレス(R)SY231、216gのロジン二量体(ダイマーレックス(R))、0.86gのチタン(IV)ブトキシドおよび282mlのヘプタンの混合物を共沸物(メタノール−ヘプタン、59.1℃)が完全に蒸留されるまで約100−120℃に加熱して、ロジン改質シリコーンシリルエステルを与える。蒸留されたメタノールの量を基準とした収率:100%。
【実施例12】
【0085】
10.9gの1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−メトキシトリシロキサン(CAS RN:7671−19−4)、3.77gの酢酸、0.94gのN,N−ジメチルホルムアミド、および10mlのヘプタンの混合物を加熱する。共沸物であるメタノール−ヘプタンを次に大気圧で蒸留して(59.1℃)、1,3,3,3−テトラメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−アセトキシ−ジシロキサンを与える。
1,3,3,3−テトラメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−アセトキシ−ジシロキサン:13C NMR:170.4、22.9、1.6、−2.6;29Si NMR:10.2、−58.4;IR(フィルム):2963、1735、1372、1256、1091、1020、943、846、801、777cm−1
【0086】
読者の注意はこの明細書と同時にまたはそれ以前にこの出願に関連して出願されそしてこの明細書と共に公開されている全ての論文および文書に向けられており、そしてそのような全ての論文および文書の内容は引用することにより本発明の内容となる。
【0087】
この明細書(添付された請求項、要旨および図面を包含する)に開示された特徴の全ておよび/またはそのように開示されたいずれかの方法もしくは工程の段階の全ては、そのような特徴および/または段階の少なくとも一部が互いに相容れない組み合わせを除いて、いずれかの組み合わせで組み合わせることができる。
【0088】
この明細書(添付された請求項、要旨および図面を包含する)に開示された各々の特徴が別の特徴により交換されて、特別に強調されない限り、同一の、対等のまたは同様な目的を与えることもできる。それ故、特別に強調されない限り、開示された各々の特徴は対等のまたは同様な特徴の包括的系列の中の一例である。
【0089】
本発明は前記の1つもしくは複数の態様の詳細事項に制限されない。本発明はこの明細書(添付された請求項、要旨および図面を包含する)に開示された特徴のいずれかの新規な1つもしくはいずれかの新規な組み合わせまたはこのように開示されたいずれかの方法もしくは工程の段階のいずれかの新規な1つもしくはいずれかの新規な組み合わせにも及ぶ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)
【化1】

[Rは水素原子であるか、或いはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル基を独立して表し、それらは場合によりアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノまたはアミノアルキルを含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、或いは−(RCOORであることができ、ここでpは0または1であることができそしてp=1である場合にはRはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル基から選択され、それらは場合によりアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、ここでRは水素原子であるか、或いはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、−SiRまたは−(SiRO)−SiR基から独立して選択されることができ、それらは場合によりアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールオキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノまたはアミノアルキル基を含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、そしてここでR、RおよびRは水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiR、アリール、アリールオキシル、アラルキルまたはアラルキルオキシル基を各々独立して表し、それらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、アリール、アリールオキシル、シリル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiR、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ(好ましくは、第三級アミノ)もしくはアミノアルキル基を含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、或いはR、RおよびRは独立して−O−C(O)R基であることができ、ここでRは上記で定義された通りであり、RおよびRは各々ヒドロキシルであることができ或いはアルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiR、アルケニル、アルキニル、アラルキルまたはアラルキルオキシル基から独立して選択され、それらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシル、シリル、−O−SiR、−O−(SiRO)−SiR、ハロゲン、アミノ(好ましくは、第三級アミノ)もしくはアミノアルキル基を含んでなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、或いはRまたはRは−O−C(O)R基であることができ、そしてここで上記各nは0〜1000のジヒドロカルビルシロキサン単位の数を独立して表す]
のカルボン酸を式(III)
【化2】

[式中、R、R、R、R、Rおよびnは上記で定義された通りでありそしてRは水素原子、アラルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルキル基であり、それらは場合により上記のR〜Rに関して定義されたものに相当する置換基から選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよい]
のヒドロカルビルシリル化合物と反応させることによる式(I)
【化3】

[式中、
、R、R、R、R、Rおよびnは上記で定義されている通りである]
のヒドロカルビルシリルカルボン酸エステルの製造方法であって、該反応を親珪素性(silaphilic)触媒の存在下で行う方法。
【請求項2】
、Rがアルキル基、アルコキシル基、アリール基、ヒドロキシル基または−O−(SiRO)−SiR基を各々独立して表し、ここでR、R、R、RおよびRが上記で定義されている通りである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式I中のRおよびRが上記で定義されたアルキル基、−O−(SiRO)−SiR基またはOC(O)R基を含んでなる群から各々独立して選択される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
、R、R、R、R、RおよびRがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルを含んでなる群から各々独立して選択される請求項1または2または3に記載の方法。
【請求項5】
、R、RおよびRがメチルである請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項6】
、RおよびRがn−ブチルである請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
【請求項7】
親珪素性触媒が、限定されるものではないが、弗化ナトリウム、弗化カリウム、弗化セシウムまたは弗化テトラブチルアンモニウム(BuNF)を含んでなる弗素含有無機もしくは有機塩から選択されるか、或いはN−メチルイミダゾール(NMI)、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(HMPA)、4,4−ジメチルイミダゾール、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、ピリジンN−オキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、2,4−ジメチルピリジン、N−メチル−4−ピリドン、ジメチルホルミアミド(DMF)、3,5−ジメチルピリジン、N,N−ジメチルエチレンウレア(DMEU)、N,N−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、ピリジン、イミダゾール、トリメチルアミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、N,N−ジアルキルホルムアミド、アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、N,N−ジアルキルアセトアミド、アルキルシアニド、N−メチルピロリドン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、1,2−ジメチルイミダゾール、LiOH、ステアリン酸Li、NaI、MeONaまたはMeOLiから選択され、上記のN−アルキルおよびN,N−ジアルキル....アミドおよびシアニド中の用語アルキルは任意の線状、環式、二環式、多環式、アルキル脂肪族または芳香族基を包含しそしてN,N−化合物の場合にはアルキルは同一もしくは相異なることができ、一例はN−ホルミルロジンアミンである前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
触媒が均一系もしくは不均一系である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
触媒が珪素原子と可逆的に配位しうる前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
触媒がペンタまたはヘキサ配位された珪素種を生成しうる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
、R、R、R、R、RおよびRがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチルブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、オクチルなどから独立して選択されるアルキル基である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
式Iのヒドロカルビルシリルエステルが、トリ−n−ブチル−1−アセトキシ−シラン、トリ−n−プロピル−1−アセトキシ−シラン、トリ−t−ブチル−1−アセトキシ−シラン、トリ−イソプロピル−1−アセトキシ−シラン、トリ−イソブチル−1−アセトキシ−シラン、トリ−メチル−1−アセトキシ−シラン、トリエチル−1−アセトキシ−シラン、トリベンジル−1−アセトキシ−シラン、トリアミル−1−アセトキシ−シラン、トリフェニル−1−アセトキシ−シラン、ノナメチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナエチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−t−ブチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナベンジル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−イソプロピル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−n−プロピル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−イソブチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−アミル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−n−ブチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−ドデシル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−ヘキシル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−フェニル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ノナ−オクチル−1−アセトキシ−テトラシロキサン、ウンデカメチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカエチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−t−ブチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカベンジル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−イソプロピル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−n−プロピル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−イソブチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−アミル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−n−ブチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−ドデシル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−ヘキシル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−フェニル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−オクチル−1−アセトキシ−ペンタシロキサン、トリデカメチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカエチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−t−ブチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカベンジル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−イソプロピル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−n−プロピル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−イソブチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−アミル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−n−ブチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−ドデシル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−ヘキシル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−フェニル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−オクチル−1−アセトキシ−ヘキサシロキサン、−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、1,3,3,3−テトラメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−アセトキシ−ジシロキサン、1−エチル−3,3,3−トリメチル−1−トリメチルシリルオキシ−1−アセトキシ−ジシロキサン、トリス−(トリメチルシリルオキシ)−1−アセトキシ−シランおよびそれらの重合体から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
触媒がジアルキルホルムアミド、アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、N,N−ジアルキルアセトアミド、N−メチルピロリドン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、DMAP、N−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、HMPA、DMPU、NaI、MeONa、MeOLi、BuNF、PhPO、LiOH、ステアリン酸LiおよびピリジンN−オキシドから独立して選択される前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
触媒が0.001〜100モル%(モル/モル シラン)の水準で存在する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
反応が重合抑制剤を包含する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
反応が適当な溶媒中で行われる前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
適当な溶媒が非極性不活性溶媒、脂肪族炭化水素、環式および非環式エーテルを包含する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
溶媒がペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン、エチルベンゼン、オクタン、デカン、デカヒドロナフタレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテルまたはそれらの混合物から独立して選択される請求項16または17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
溶媒が反応性蒸留を可能にするものである請求項16〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
溶媒が蒸留されたROHとの低沸点共沸物を生成する請求項16〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
溶媒がペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエンおよびキシレンから独立して選択される請求項16〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
反応が0℃〜200℃の範囲内で行われる前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
重合抑制剤が全反応混合物の0.001〜10重量/重量%の範囲内で存在する前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
シラン:酸のモル比が1:100〜100:1の間である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
溶媒が反応の開始時に全反応混合物の少なくとも10重量%である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれかに従う方法により製造される式(I)で定義されたヒドロカルビルシリルエステル。
【請求項27】
上記の通りのそして実施例に記載のヒドロカルビルシリルエステルの製造方法。
【請求項28】
、R、R、RおよびRが式IIIにおいてアルコキシル、アリールオキシル、アルカリールオキシルまたはヒドロキシルを表す場合には、それらは式Iにおいて独立して−O−C(O)Rを表すことができる請求項1〜25または27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
が式(II)においてアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル基または水素原子を表す場合には、それは式(I)において−(SiR−O)SiRを表すことができる請求項1〜25、27または28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
該触媒が金属アルコキシド、有機錫化合物、ホウ素化合物または環式1,3,5−トリイソプロポキシシクロトリアルミノキサンなどでありうる請求項1〜6または8〜29のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2006−510690(P2006−510690A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561241(P2004−561241)
【出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013889
【国際公開番号】WO2004/056837
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(501352505)シグマ・コーテイングス・ベー・ブイ (4)
【Fターム(参考)】