説明

ヒドロキサム酸化合物およびその使用方法

本発明は、メチレン鎖を介してヒドロキサム酸基に結合された、少なくとも2つのアリール含有官能基(それらのうちの少なくとも1つはキノリニル、イソキノリニルまたはベンジル部分である)を有する新規クラスのヒドロキサム酸誘導体に関する。ヒドロキサム酸化合物を使用して、癌、例えば脳腫瘍を治療することができる。ヒドロキサム酸化合物はまた、ヒストンデアセチラーゼを阻害することができ、新生細胞の末端分化、細胞増殖抑止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、これによりそのような細胞の増殖を阻害するのに使用するために適している。このように、本発明の化合物は新生細胞の増殖により特徴づけられる腫瘍を有する患者を治療するのに有用である。本発明の化合物はまた、TRX-媒介疾患、例えば、自己免疫疾患、アレルギー性疾患および炎症疾患の予防および治療、ならびに中枢神経系(CNS)の疾患、例えば神経変性疾患の予防および/または治療において有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
ヒドロキサム酸部分を有する化合物は、有用な生物学的活性を有することが示されている。例えば、ヒドロキサム酸部分を有する多くのペプチジル化合物は、亜鉛エンドペプチダーゼのファミリーであるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害することが知られている。MMPは生理学的および病理学的組織分解(の両方において重要な役割を果たす。そのため、MMPの作用を阻害することができるペプチジル化合物は、組織崩壊および炎症を含む状態の治療または予防に対し有用である。ヒドロキサム酸部分を有する化合物は、少なくとも一部はヒドロキサム酸基の亜鉛結合特性に基づき、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を阻害することが示されている。HDACの阻害は、癌抑制に関連する遺伝子の発現を含む、遺伝子の発現を抑制することができる。ヒストンデアセチラーゼの阻害は、癌抑制遺伝子のヒストン-デアセチラーゼ-媒介転写抑制に至ることがある。例えば、ヒストンデアセチラーゼの阻害により、癌、血液疾患、例えば血球新生、および遺伝的関連性代謝異常を治療するための方法を提供することができる。
【0002】
より具体的には、転写調節は、細胞分化、増殖、およびアポトーシスにおける主な事象である。ヒストンアセチル化および脱アセチル化が、細胞内の転写調節が達成されるメカニズムであるといういくつかの証拠が存在する(Grunstein、M.、Nature、389:349-52(1997))。これらの効果は、ヌクレオソーム内のコイル状DNAに対するヒストンタンパク質の親和性が変化することにより、クロマチン構造が変化して生じると考えられる。5つの型のヒストンが識別されている。ヒストンH2A、H2B、H3およびH4はヌクレオソーム中で見出され、H1はヌクレオソーム間に位置するリンカーである。各ヌクレオソームは、H1を除き、そのコア内に2つの各ヒストン型を含む。H1は、ヌクレオソーム構造の外側に単独で存在する。ヒストンタンパク質は低アセチル化されると(hypoacetylated)、ヒストンのDNAリン酸主鎖への親和性が大きくなる。この親和性により、DNAはヒストンに強く結合し、DNAは転写調節要素および機構に到達できなくなる。アセチル化状態の調節は、2つの酵素複合体、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)とヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の間の活性化の均衡により生じる。低アセチル化状態は、関連するDNAの転写を阻害すると考えられる。この低アセチル化状態は、HDAC酵素を含む大きな多タンパク質複合体により触媒される。特に、HDACは、クロマチンコアヒストンからのアセチル基の除去を触媒することが示されている。
【0003】
いくつかの場合では、HATまたはHDAC活性の崩壊は悪性の表現型の発現と関係することが示されている。例えば、急性前骨髄球白血病において、PMLおよびRARαの融合により生成する癌タンパクは、HDACの動員により特定の遺伝子の転写を抑制すると考えられる。このように、新生細胞は完全に分化することができず、白血病細胞系の過剰な増殖につながる。
【0004】
米国特許第5,369,108号、第5,932,616号、第5,700,811号、第6,087,367号および第6,511,990号(これらの内容は参照により本明細書に組み入れられる)では、腫瘍細胞の末端分化、細胞増殖抑止またはアポトーシスを選択的に誘導するのに有用なヒドロキサム酸誘導体が開示されている。抗癌剤としての生物学的活性の他に、これらのヒドロキサム酸誘導体は、チオレドキシン(TRX)-媒介疾患および状態、例えば炎症疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患、酸化的ストレスに関連する疾患または細胞過剰増殖により特徴づけられる疾患を治療または予防するのに有用であることが、最近認識されている(2003年2月15日に出願された米国特許出願第10/369,094号、全内容は参照により本明細書に組み入れられる)。さらに、これらのヒドロキサム酸誘導体は、中枢神経系(CNS)の疾患、例えば神経変性疾患の治療、および脳腫瘍の治療に有用であることが認識されている(2002年10月16日に出願された米国特許出願第10/273,401号、この全内容は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0005】
上記米国特許において開示されているヒドロキサム酸含有化合物、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)によりHDACの阻害は、X線結晶学的研究により証明されているように、酵素の触媒部位との直接相互作用により生じるものであると考えられる(Finnin、M.S. et al.、Nature 401:188-193(1999))。HDAC阻害の結果はゲノムに対し一般的な影響はないと考えられるが、むしろ、ゲノムの小さなサブセットのみに影響する(Van Lint、C. et al.、Gene Expression 5:245-53(1996))。HDAC阻害剤と共に培養した悪性細胞系を用いたDNAマイクロアレイにより提供される証拠から、有限数(1〜2%)の遺伝子で、その産物が変化することが示される。例えば、HDAC阻害剤を有する培養物中で処理した細胞は、サイクリン依存性キナーゼ抑制因子p21の一貫した誘導を示す(Archer、S.Shufen、M.Shei、A.、Hodin、R.PNAS 95:6791-96(1998))。このタンパク質は細胞周期停止において重要な役割を果たす。HDAC阻害剤は、p21遺伝子の領域中のヒストンの低アセチル化状態を伝播させることによりp21転写速度を増大させ、これにより、遺伝子が転写機構に到達できるようにすると考えられる。発現がHDAC阻害剤により影響されない遺伝子は、関連する局所ヒストンのアセチル化の変化を示さない(Dressel、U. et al.、Anticancer Research 20(2A):1017-22(2000))。
【0006】
さらに、SAHAなどのヒドロキサム酸誘導体は、癌細胞増殖抑止、分化および/またはアポトーシスを誘導することができる(Richon et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93:5705-5708(1996))。これらの化合物は、動物における腫瘍増殖の阻害に効果的な用量では、毒性を有しないと考えられるので、新生細胞が悪性となりうる固有の機構を標的とする(Cohen、L.A. et al.、Anticncer Research 19:4999-5006(1999))。
【0007】
ヒドロキサム酸部分を含む化合物に対する広範囲にわたる用途を考慮すると、改善された特性、例えば、増大した効能または増大した生物学的利用能を有する新規ヒドロキサム酸誘導体の開発が強く望まれる。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明は新規クラスのヒドロキサム酸誘導体に関する。1つの態様では、ヒドロキサム酸誘導体はヒストンデアセチラーゼを阻害することができ、新生細胞の末端分化、細胞増殖抑止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、これによりそのような細胞の増殖を阻害する際の使用に適している。このように、本発明の化合物は、被験者において癌を治療する際に有用である。本発明の化合物はまた、TRX-媒介疾患、例えば自己免疫疾患、アレルギー疾患および炎症疾患を予防および治療、ならびに中枢神経系(CNS)の疾患、例えば神経変性疾患の予防および/または治療の際に有用である。
【0009】
メチレン鎖を介してヒドロキサム酸に結合された少なくとも2つのアリール含有基(そのうちの少なくとも1つは、キノリニル、イソキノリニルまたはベンジル部分である)を有する一定のヒドロキサム酸誘導体はHDAC阻害剤として改善された活性を示すことが、予想外で驚くべき事に発見されている。
【0010】
本発明は、構造式Iにより表される化合物ならびに、それらの薬学的に許容される塩、溶媒和物および水和物に関する:

【0011】
構造式Iでは、R1は置換または非置換アリール基、アリールアルキル基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アリールオキシ基またはアリールアルコキシ基であり、nは3〜10の整数である。
【0012】
特別な態様では、構造式Iの化合物に対しnは5である。
【0013】
別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は置換または非置換ヘテロアリール基、フェニル基またはナフチル基である。
【0014】
さらに別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は置換または非置換ピリジル基、キノリニル基またはイソキノリニル基である。
【0015】
さらに別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は置換または非置換フェニル基である。特別な態様では、構造式IのR1は非置換フェニル基である。さらに特別な態様では、構造式IのR1は非置換フェニル基であり、nは5である。
【0016】
別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は非置換ピリジル基である。特別な態様では、非置換ピリジル基はβ-ピリジル基である。さらに特別な態様では、非置換ピリジル基はβ-ピリジル基であり、nは5である。
【0017】
さらに別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は非置換キノリニル基である。特別な態様では、非置換キノリニル基は2-キノリニル基である。さらに特別な態様では、非置換キノリニル基は2-キノリニル基であり、nは5である。
【0018】
別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は置換または非置換アリールアルキルオキシ基である。特別な態様では、構造式IのR1は置換または非置換ベンジルオキシ基である。さらに特別な態様では、ベンジルオキシ基は非置換ベンジルオキシ基である。さらにより特別な態様では、ベンジルオキシ基は非置換ベンジルオキシ基であり、nは5である。
【0019】
特定の態様では、構造式Iの化合物は下記構造により表される。

【0020】
別の特定の態様では、構造式Iの化合物は下記構造により表される。

【0021】
さらに別の特定の態様では、構造式Iの化合物は下記構造により表される。

【0022】
さらに別の特定の態様では、構造式Iの化合物は下記構造により表される。

【0023】
本発明はまた、構造式IIの化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物および水和物に関する:

構造式IIにおいて、Q1は置換または非置換キノリニルもしくはイソキノリニル基であり、nは3〜10の整数である。
【0024】
1つの態様では、Q1は構造式IIの化合物に対し8-キノリニル基である。
【0025】
別の態様では、構造式IIのピリジル基はβ-ピリジル基である。特別な態様では、ピリジル基がβ-ピリジル基であり、Q1は8-キノリニル基である。より特別な態様では、ピリジル基がβ-ピリジル基であり、Q1は8-キノリニル基であり、nが5である。
【0026】
特定の態様では、化学式IIの化合物は下記構造により表される。

【0027】
本発明はさらに構造式IIIの化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物および水和物に関する:

構造式IIIにおいて、Q1およびQ2はそれぞれ、置換または非置換キノリニルもしくはイソキノリニル基であり、nは3〜10の整数である。
【0028】
特別な態様では、Q1は8-キノリニル基である。
【0029】
別の態様では、Q2は2-キノリニル基である。特別な態様では、Q2が2-キノリニル基であり、Q1は8-キノリニル基である。さらに特別な態様では、Q2が2-キノリニル基であり、Q1は8-キノリニル基であり、nが5である。
【0030】
特定の態様では、化学式IIIの化合物は下記構造により表される。

【0031】
本発明はさらに構造式IVの化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物および水和物に関する:

構造式IVにおいて、R1はアリールアルキルであり、R2は置換または非置換アリール基、アリールアルキル基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アリールオキシ基またはアリールアルコキシ基であり、Aはアミドであり、nは3〜10の整数である。
【0032】
特別な態様では、構造式IVの化合物に対しR1はベンジル基である。
【0033】
別の態様では、構造式IVの化合物に対しR1はベンジル基であり、R2は置換または非置換キノリニル基である。特別な態様では、R2は非置換キノリニル基である。さらにより特別な態様では、非置換キノリニル基は2-キノリニル基である。別の態様では、R1はベンジル基であり、R2は2-キノリニル基であり、nは5である。
【0034】
特定の態様では、化学式IVの化合物は下記構造により表される。

【0035】
さらに別の態様では、構造式IVの化合物に対しR1はベンジル基であり、R2は置換または非置換ベンジルオキシ基である。特別な態様では、R2は非置換ベンジルオキシ基である。別の態様では、R1はベンジル基であり、R2は非置換ベンジルオキシ基であり、nは5である。
【0036】
特定の態様では、化学式IVの化合物は下記構造により表される。

【0037】
さらに別の態様では、構造式IVの化合物に対しR1はベンジル基であり、R2は置換または非置換フェニル基である。特別な態様では、R2は非置換フェニル基である。別の態様では、R1はベンジル基であり、R2は非置換フェニル基であり、nは5である。
【0038】
特定の態様では、化学式IVの化合物は下記構造により表される。

【0039】
別の態様では、構造式IVの化合物に対しR1はベンジル基であり、R2は置換または非置換ピリジル基である。特別な態様では、R2は非置換ピリジル基である。さらにより特別な態様では、非置換ピリジル基はβ-ピリジルである。別の態様では、R1はベンジル基であり、R2はβ-ピリジル基であり、nは5である。
【0040】
特定の態様では、化学式IVの化合物は下記構造により表される。

【0041】
本発明はまた、治療的有効量の、ヒドロキサム酸化合物のいずれか1つおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
【0042】
本発明はさらに、本明細書で記述した疾患および障害、例えば、癌、TRX-媒介疾患および障害ならびに神経変性疾患および障害を治療するための薬剤を製造するためのヒドロキサム酸化合物の使用に関する。
【0043】
本発明はまた、本明細書で記述したヒドロキサム酸誘導体の使用法に関する。
【0044】
特別な態様では、本発明は、治療的有効量の、本明細書で記述したヒドロキサム酸誘導体を被験者に投与する段階を含む、治療が必要な被験者において癌を治療する方法に関する。
【0045】
別の態様では、使用方法は、新生細胞の末端分化を選択的に誘導し、これによりそのような細胞の増殖を阻害する方法である。方法は、細胞を適した条件下で、有効量の、本明細書で記述した1つまたは複数のヒドロキサム酸化合物に接触させる段階を含む。
【0046】
別の態様では、新生細胞の細胞増殖抑止を選択的に誘導し、これによりそのような細胞の増殖を阻害する方法において、ヒドロキサム酸誘導体を使用する。この方法は、細胞を適した条件下で有効量の、本明細書で記述した1つまたは複数のヒドロキサム酸化合物と接触させる段階を含む。
【0047】
さらに別の態様では、細胞を有効量の、本明細書で記述した1つまたは複数のヒドロキサム酸化合物と接触させる段階を含む、腫瘍中の腫瘍細胞の末端分化を誘導する方法においてヒドロキサム酸誘導体を使用する。
【0048】
さらに別の態様では、ヒストンデアセチラーゼを有効量の、本明細書で記述した1つまたは複数のヒドロキサム酸化合物と接触させる段階を含む、ヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する方法において、ヒドロキサム酸誘導体を使用する。
【0049】
別の態様では、被験者に、治療的有効量の、本明細書で記述した1つまたは複数のヒドロキサム酸化合物を投与する段階を含む、治療の必要な被験者のチオレドキシ(TRX)-媒介疾患または障害を治療する方法において、ヒドロキサム酸誘導体を使用する。
【0050】
別の態様では、被験者に、治療的有効量の、本明細書で記述した1つまたは複数のヒドロキサム酸化合物を投与する段階を含む、治療の必要な被験者の中枢神経系の疾患を治療する方法において、ヒドロキサム酸誘導体を使用する。
【0051】
特別な態様では、CNS疾患は神経変性疾患である。別の態様では、神経変性疾患は、遺伝性神経変性疾患、例えば、ポリグルタミン伸長疾患である遺伝性神経変性疾患である。
【0052】
本発明はさらに、癌(例えば、脳腫瘍)の治療、およびチオレドキシ(TRX)-媒介疾患の治療のための薬剤を製造するための、本明細書で記述した化合物の使用に関する。
【0053】
本発明の前述のならびに他の目的、特徴および利点は、本発明の好ましい態様の下記のより特別な説明により明らかになるであろう。
【0054】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様の説明は下記の通りである。
【0055】
本発明は新規クラスのヒドロキサム酸誘導体に関する。1つの態様では、ヒドロキサム酸誘導体はヒストンデアセチラーゼを阻害することができ、新生細胞の末端分化、細胞増殖抑止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、これによりそのような細胞の増殖を阻害する際に使用するのに適している。このように、本発明の化合物は被験者において癌を治療する際に有用である。本発明の化合物はまた、TRX-媒介疾患、例えば、自己免疫疾患、アレルギー疾患および炎症疾患を予防、治療する際、ならびに中枢神経系(CNS)の疾患、例えば神経変性疾患を予防および/または治療する際に有用である。
【0056】
メチレン鎖を介してヒドロキサム酸基に結合された、少なくとも2つのアリール含有基(それらの少なくとも1つはキノリニル、イソキノリニルまたはベンジル部分である)を有する一定のヒドロキサム酸誘導体は、HDAC阻害剤として改善された活性を示すことが予想外で驚くべき事に発見されている。
【0057】
化合物
本発明は、構造式Iにより表される化合物ならびに、それらの薬学的に許容される塩、溶媒和物および水和物に関する。

【0058】
構造式Iでは、R1は置換または非置換アリール基、アリールアルキル基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アリールオキシ基またはアリールアルコキシ基であり、nは3〜10の整数である。
【0059】
特別な態様では、構造式Iの化合物に対しnは5である。
【0060】
別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は置換または非置換ヘテロアリール基、フェニル基もしくはナフチル基である。
【0061】
さらに別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は置換または非置換ピリジル基、キノリニル基もしくはイソキノリニル基である。
【0062】
さらに別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は置換または非置換フェニル基である。特別な態様では、構造式IのR1は非置換フェニル基である。さらに特別な態様では、構造式IのR1は非置換フェニル基であり、nは5である。
【0063】
別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は非置換ピリジル基である。特別な態様では、非置換ピリジル基はβ-ピリジル基である。さらに特別な態様では、非置換ピリジル基はβ-ピリジル基であり、nは5である。
【0064】
さらに別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は非置換キノリニル基である。特別な態様では、非置換キノリニル基は2-キノリニル基である。さらに特別な態様では、非置換キノリニル基は2-キノリニル基であり、nは5である。
【0065】
別の態様では、構造式Iの化合物に対しR1は置換または非置換アリールアルキルオキシ基である。特別な態様では、構造式IのR1は置換または非置換ベンジルオキシ基である。さらに特別な態様では、ベンジルオキシ基は非置換ベンジルオキシ基である。さらにより特別な態様では、ベンジルオキシ基は非置換ベンジルオキシ基であり、nは5である。
【0066】
特定の態様では、構造式Iの化合物は下記構造により表される。

【0067】
別の特定の態様では、構造式Iの化合物は下記構造により表される。

【0068】
さらに別の特定の態様では、構造式Iの化合物は下記構造により表される。

【0069】
さらに別の特定の態様では、構造式Iの化合物は下記構造により表される。

【0070】
本発明はまた、構造式IIの化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物および水和物に関する:

構造式IIにおいて、Q1は置換または非置換キノリニルもしくはイソキノリニル基であり、nは3〜10の整数である。
【0071】
1つの態様では、Q1は構造式IIの化合物に対し8-キノリニル基である。
【0072】
別の態様では、構造式IIのピリジル基はβ-ピリジル基である。特別な態様では、ピリジル基がβ-ピリジル基であり、Q1は8-キノリニル基である。より特別な態様では、ピリジル基がβ-ピリジル基であり、Q1は8-キノリニル基であり、nが5である。
【0073】
特定の態様では、化学式IIの化合物は下記構造により表される。

【0074】
本発明はさらに構造式IIIの化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物および水和物に関する:

構造式IIIにおいて、Q1およびQ2はそれぞれ、置換または非置換キノリニルもしくはイソキノリニル基であり、nは3〜10の整数である。
【0075】
特別な態様では、Q1は8-キノリニル基である。
【0076】
別の態様では、Q2は2-キノリニル基である。特別な態様では、Q2が2-キノリニル基であり、Q1は8-キノリニル基である。さらに特別な態様では、Q2が2-キノリニル基であり、Q1は8-キノリニル基であり、nが5である。
【0077】
特定の態様では、化学式IIIの化合物は下記構造により表される。

【0078】
本発明はさらに構造式IVの化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物および水和物に関する:

構造式IVにおいて、R1はアリールアルキルであり、R2は置換または非置換アリール基、アリールアルキル基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アリールオキシ基またはアリールアルコキシ基であり、Aはアミドであり、nは3〜10の整数である。
【0079】
特別な態様では、構造式IVの化合物に対しR1はベンジル基である。
【0080】
別の態様では、構造式IVの化合物に対しR1はベンジル基であり、R2は置換または非置換キノリニル基である。特別な態様では、R2は非置換キノリニル基である。さらにより特別な態様では、非置換キノリニル基は2-キノリニル基である。別の態様では、R1はベンジル基であり、R2は2-キノリニル基であり、nは5である。
【0081】
特定の態様では、化学式IVの化合物は下記構造により表される。

【0082】
さらに別の態様では、構造式IVの化合物に対しR1はベンジル基であり、R2は置換または非置換ベンジルオキシ基である。特別な態様では、R2は非置換ベンジルオキシ基である。別の態様では、R1はベンジル基であり、R2は非置換ベンジルオキシ基であり、nは5である。
【0083】
特定の態様では、化学式IVの化合物は下記構造により表される。

【0084】
さらに別の態様では、構造式IVの化合物に対しR1はベンジル基であり、R2は置換または非置換フェニル基である。特別な態様では、R2は非置換フェニル基である。別の態様では、R1はベンジル基であり、R2は非置換フェニル基であり、nは5である。
【0085】
特定の態様では、化学式IVの化合物は下記構造により表される。

【0086】
別の態様では、構造式IVの化合物に対しR1はベンジル基であり、R2は置換または非置換ピリジル基である。特別な態様では、R2は非置換ピリジル基である。さらにより特別な態様では、非置換ピリジル基はβ-ピリジルである。別の態様では、R1はベンジル基であり、R2はβ-ピリジル基であり、nは5である。
【0087】
特定の態様では、化学式IVの化合物は下記構造により表される。

【0088】
本発明はまた、治療的有効量の、ヒドロキサム酸化合物のいずれか1つおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
【0089】
「脂肪族基」は非芳香族であり、炭素および水素のみから構成され、任意で1つまたは複数の不飽和ユニット、例えば二重結合および/または三重結合を含むことができる。脂肪族基は直鎖、分枝、または環状であり得る。直鎖または分枝である場合、脂肪族基は典型的には約1個〜約12個の間の炭素原子を含み、より典型的には約1個〜約6個の間の炭素原子を含む。環状である場合、脂肪族基は典型的には約3個〜約10個の間の炭素原子を含み、より典型的には約3個〜約7個の間の炭素原子を含む。脂肪族基は好ましくはC1〜C12直鎖または分枝アルキル基(すなわち、完全に飽和した脂肪族基)、より好ましくはC1〜C6直鎖または分枝アルキル基である。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルが挙げられる。
【0090】
本明細書で使用されるように、「芳香族基」(「アリール基」とも呼ばれる)は炭素環芳香族基、複素環芳香族基(「ヘテロアリール」とも呼ばれる)および本明細書で定義されるような縮合多環式芳香族環構造を含む。
【0091】
「炭素環芳香族基」は、5〜14個の炭素原子の芳香族環であり、5-または6-員シクロアルキル基と縮合された炭素環芳香族基、例えばインダンを含む。炭素環芳香族基の例としては、フェニル、ナフチル、例えば1-ナフチルおよび2-ナフチル;アントラセニル、例えば、1-アントラセニル、2-アントラセニル;フェナントレニル;フルオレノニル、例えば9-フルオレノニル、インダニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。炭素環芳香族基は、下記の指定された数の置換基により置換されてもよい。
【0092】
「複素環芳香族基(または「ヘテロアリール」)は5-〜14-環炭素原子およびO、NまたはSより選択される1〜4のヘテロ原子を有する単環、二環または三環芳香族環である。ヘテロアリールの例としては、ピリジル、例えば2-ピリジル(α-ピリジルとも呼ばれる)、3-ピリジル(β-ピリジルとも呼ばれる)および4-ピリジル(γ-ピリジルとも呼ばれる);チエニル、例えば2-チエニルおよび3-チエニル;フラニル、例えば2-フラニルおよび3-フラニル;ピリミジル、例えば、2-ピリミジルおよび4-ピリミジル;イミダゾリル、例えば、2-イミダゾリル;ピラニル、例えば、2-ピラニルおよび3-ピラニル;ピラゾリル、例えば4-ピラゾリルおよび5-ピラゾリル;チアゾリル、例えば2-チアゾリル、4-チアゾリルおよび5-チアゾリル;チアジアゾリル;イソチアゾリル;オキサゾリル、例えば、2-オキサゾリル、4-オキサゾリルおよび5-オキサゾリル;イソキサゾリル;ピロリル;ピリダジニル;ピラジニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。上記で定義されるように複素環芳香族(またはヘテロアリール)は、芳香族基に対し下記で記述するように、指定された数の置換基により、置換されてもよい。
【0093】
「縮合多環式芳香族」環構造は、1つまたは複数の他のヘテロアリールまたは非芳香族複素環と縮合された炭素環芳香族またはヘテロアリールである。例としては、キノリニルおよびイソキノリニル、例えば、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニルおよび8-キノリニル、1-イソキノリニル、3-イソキノリニル、4-イソキノリニル、5-イソキノリニル、6-イソキノリニル、7-イソキノリニルおよび8-イソキノリニル;ベンゾフラニル、例えば、2-ベンゾフラニルおよび3-ベンゾフラニル;ジベンゾフラニル、例えば、2,3-ジヒドロベンゾフラニル;ジベンゾチオフェニル;ベンゾチエニル、例えば、2-ベンゾチエニルおよび3-ベンゾチエニル;インドリル、例えば、2-インドリルおよび3-インドリル;ベンゾチアゾリル、例えば2-ベンゾチアゾリル;ベンゾオキサゾリル、例えば、2-ベンゾオキサゾリル;ベンゾイミダゾリル、例えば、2-ベンゾイミダゾリル;イソインドリル、例えば、1-イソインドリルおよび3-イソインドリル;ベンゾトリアゾリル;プリニル;チアナフテニルなどが挙げられる。縮合多環式芳香族環構造は、本明細書で記載されるように、指定された数の置換基により置換されてもよい。
【0094】
「アラルキル基」(アリールアルキル)は、芳香族基、好ましくはフェニル基により置換されたアルキル基である。好ましいアラルキル基はベンジル基である。適した芳香族基は本明細書に記載されており、適したアルキル基は本明細書に記載されている。アラルキルに対する適した置換基は本明細書に記載されている。
【0095】
「アリールオキシ基」は酸素を介して化合物に結合されているアリール基である(例えば、フェノキシ)。
【0096】
本明細書で使用されるように、「アルコキシ基」は酸素原子を介して化合物に結合されている直鎖もしくは分枝c1〜c12または環状C3〜C12アルキル基である。アルコキシ基の例としてはメトキシ、エトキシおよびプロポキシが挙げられるが、それらに限定されない。
【0097】
「アリールアルコキシ基」は、アリールアルキルのアルキル部分上の酸素を介して化合物に結合されているアリールアルキル基である(例えば、フェニルメトキシ)。
【0098】
本明細書で使用されるように、「アリールアミノ基」は、窒素を介して化合物に結合されているアリール基である。
【0099】
本明細書で使用されるように、「アリールアルキルアミノ基」は、アリールアルキルのアルキル部分上の窒素を介して化合物に結合されているアリールアルキル基である。
【0100】
本明細書で使用されるように、多くの部分または官能基は、「置換されており、または非置換である」ものとして言及される。ある部分が置換されていると言及されている場合、置換に利用することができるものとして当業者に公知のその部分の任意の箇所が、置換することができることを示す。例えば、置換可能な官能基は、水素以外の他の官能基(すなわち、置換基)により置き換えられる水素原子であり得る。複数の置換基が存在可能である。複数の置換基が存在する場合、置換基は同じであっても異なってもよく、置換は環上の適した部位のいずれにおいても可能である。そのような置換手段は当技術分野で周知である。例証するために、置換基となる官能基のいくつかの例は、アルキル基(これらもまた置換可能であり、例えばCF3)、アルコキシ基(これらは置換可能であり、例えばOCF3)、ハロゲンまたはハロ基(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ニトロ、オキソ、-CN、-COH、-COOH、アミノ、N-アルキルアミノまたはN,N-ジアルキルアミノ(この場合、アルキル基も置換可能)、エステル(-C(O)-OR、ここでRはアルキル、アリールなどの官能基とすることができ、これらもまた置換可能)、アリール(最も好ましくはフェニルであり、これらも置換可能)およびアリールアルキル(置換可能)であるが、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【0101】
本明細書で記述したヒドロキサム酸誘導体は、上記で示したように、それらの薬学的に許容される塩の形態で調製することができる。薬学的に許容される塩は、親化合物の所望の生物学的活性を維持し、望ましくない毒性効果を与えない塩である。そのような塩の例は、(a)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などと形成される酸付加塩;および有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギニン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トリエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などと形成される塩;(b)元素アニオン、例えば塩素、臭素、およびヨウ素から形成される塩;ならびに(c)塩基から誘導される塩、例えばアンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばナトリウムおよびカリウムの塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウムの塩、第二鉄塩、ならびに有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、ジシクロヘキシルアミンおよびN-メチル-D-グルカミンとの塩である。
【0102】
開示した活性化合物は、上記のように、それらの水和物、例えは半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物などの形態で、および溶媒和物として調製することができる。
【0103】
立体化学
多くの有機化合物は、平面偏光の平面を回転することができる光学的に活性な形態で存在する。光学的に活性な化合物を記述する場合、接頭辞DおよびLまたはRおよびSを使用して、不斉中心に対する分子の絶対配置を示す。接頭辞dおよびlまたは(+)および(-)を使用して、化合物による平面偏光の回転符号を示す。(-)は化合物が左旋性であることを意味する。接頭辞(+)またはdのついた化合物は、右旋性である。一定の化学構造では、これらの化合物は立体異性体と呼ばれ、互いに重ね合わせることができない鏡像であることを除き同一である。特定の立体異性体はまた、鏡像異性体と呼ぶことができ、そのような異性体の混合物はしばしば、鏡像異性体混合物と呼ばれる。鏡像異性体の50:50混合物はラセミ混合物と呼ばれる。
【0104】
本明細書で記述されている化合物の多くは1つまたは複数の不斉中心を有することができ、そのため異なる鏡像異性体として存在することができる。所望であれば、不斉炭素は星印(*)で示すことができる。本発明の化学式において不斉炭素への結合が直線で示されている場合、不斉炭素の(R)および(S)の両方の配置、すなわち、両方の鏡像異性体、ならびにそれらの混合物が化学式に含まれることが理解される。当技術分野において使用されるように、不斉炭素についての絶対配置を特定したい場合、不斉炭素への結合の1つは楔(平面より上の原子への結合)として示すことができ、もう一方は短い平行線の列または楔により表すことができる(平面より下の原子への結合)。Cahn-Inglod-Prelogシステムを使用して、不斉炭素に(R)または(S)配置を割り当てることができる。
【0105】
本発明の化合物が1つの不斉中心を含む場合、化合物は2つの鏡像異性体形態で存在し、本発明は両方の鏡像異性体および鏡像異性体の混合物、例えば、ラセミ混合物と呼ばれる特異的な50:50混合物を含む。鏡像異性体は当業者に周知の方法、例えば、ジアステレオ異性体塩の形成(ジアステレオ異性体塩は、例えば結晶化により分離してもよい)(CRC Handbook of Optical Resolutions via Diasteromeric Salt Formation by David Kozma(CRC Press、2001)を参照されたい);ジアステレオ異性体誘導体または複合体の形成(それらの誘導体または複合体は例えば、結晶化、気体-液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーにより分離してもよい);1つの鏡像異性体の、鏡像異性体に特異的な試薬との選択反応、例えば酵素的エステル化;またはキラル環境での、例えばキラル担体、例えばキラルリガンドが結合した、またはキラル溶媒存在下でのシリカ上での気体-液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーにより分割することができる。上記分離手順の1つにより所望の鏡像異性体が別の化学的実体に変換される場合、所望の鏡像異性体を遊離させるためのさらに別の段階が必要となることが理解されるであろう。また、光学的に活性な試薬、基質、触媒または溶媒を使用した不斉合成、または不斉変換により1つの鏡像異性体を他の鏡像異性体に変換することにより、特異的鏡像異性体を合成してもよい。
【0106】
本発明の化合物の不斉炭素の特異的な絶対配置の指定は、指定した化合物の形態が鏡像体過剰(ee)であり、言い換えると、実質的にもう一方の鏡像体を含まないことを意味すると理解される。例えば、化合物の「R」体は、実質的に化合物の「S」体を含まず、このため、鏡像異性的に「S」体よりも過剰である。逆に、化合物の「S」体は実質的に化合物の「R」体を含まず、このため、鏡像異性的に「R」体よりも過剰である。本明細書で使用されるように、鏡像体過剰は、特別な鏡像体が50%を超えて存在することである。例えば、鏡像体過剰率は約60%またはそれ以上、例えば70%またはそれ以上、例えば、約80%またはそれ以上、例えば約90%またはそれ以上であり得る。特異的な絶対配置が示されている特別な態様では、示された化合物の鏡像体過剰率は少なくとも約90%である。より特別な態様では、化合物の鏡像体過剰率は少なくとも約95%、例えば少なくとも約97.5%、例えば少なくとも99%過剰である。
【0107】
本発明の化合物が2つまたはそれ以上の不斉炭素を有する場合、2つを超える光学異性体を有することができ、ジアステレオ異性体形態で存在することができる。例えば、2つの不斉炭素が存在する場合、化合物は最大4の光学異性体ならびに2対の鏡像異性体((S,S)/(R,R)および(R,S)/(S,R))を有することができる。鏡像異性体の対(例えば、(S,S)/(R,R))は互いに鏡像立体異性体である。鏡像ではない立体異性体(例えば、(S,S)および(R,S))はジアステレオ異性体である。ジアステレオ異性体対は、当業者に公知の方法、例えばクロマトグラフィーまたは結晶化により分離してもよく、各対内の個々の鏡像異性体は、上記のように分離してもよい。本発明は、そのような化合物の各ジアステレオ異性体およびそれらの混合物を含む。
【0108】
本明細書で使用されるように、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈で明確な記載がなければ、単数形および複数形の指示対象を含む。このように、例えば「1つの活性剤」または「1つの薬学的に活性な薬剤」という記載は、単数の活性剤および2つまたはそれ以上の異なる活性剤の組み合わせを含み、「1つの担体」という記載は、2つまたはそれ以上の担体の混合物および単数の担体を含む、などである。
【0109】
治療方法
本発明また、本明細書で記述したヒドロキサム酸誘導体を使用する方法に関する。
【0110】
1つの態様では、本発明は、被験者に、治療的有効量の、本明細書で記述したヒドロキサム酸化合物を投与する段階を含む、治療の必要な被験者において癌を治療する方法に関する。
【0111】
本明細書で使用されるように、癌は腫瘍、新生物、上皮性悪性腫瘍、肉腫、白血病、リンパ腫などを示す。例えば、癌は、白血病およびリンパ腫、例えば皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞性リンパ腫、ヒトT-細胞白血病ウイルス(HTLV)関連リンパ腫、例えば、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、および多発性骨髄腫、小児充実性腫瘍、例えば脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍、および軟部組織肉腫、成人の一般的な充実性腫瘍、例えば頭部および頸部癌(例えば、口、喉頭および食道)、泌尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、睾丸、直腸および結腸)、肺癌、乳癌、膵癌、メラノーマおよび他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝癌および甲状腺癌を含むが、それらに限定されない。
【0112】
別の態様では、使用方法は新生細胞の末端分化を選択的に誘導し、これによりそのような細胞の増殖を阻害する方法である。この方法は、細胞を適した条件下で、有効量の、本明細書で記述されているヒドロキサム酸化合物と接触させる段階を含む。
【0113】
別の態様では、新生細胞の細胞増殖抑止を選択的に誘導し、これによりそのような細胞の増殖を阻害する方法においてヒドロキサム酸誘導体を使用する。この方法は、細胞を適した条件下で、有効量の、本明細書で記述されているヒドロキサム酸化合物と接触させる段階を含む。
【0114】
さらに別の態様では、細胞を有効量の、本明細書で記述されているヒドロキサム酸化合物と接触させる段階を含む、腫瘍中の腫瘍細胞の末端分化を誘導する方法においてヒドロキサム酸誘導体を使用する。
【0115】
さらに別の態様では、ヒストンデアセチラーゼを有効量の、本明細書で記述されている1つまたは複数のヒドロキサム酸化合物と接触させる段階を含む、ヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する方法においてヒドロキサム酸誘導体を使用する。
【0116】
別の態様では、被験者に、治療的有効量の、本明細書で記述されている1つまたは複数のヒドロキサム酸化合物を投与する段階を含む、治療の必要な被験者にチオレドキシン(TRX)-媒介疾患または障害を治療する方法においてヒドロキサム酸誘導体を使用する。
【0117】
チオレドキシン(TRX)-媒介疾患の例としては、急性および慢性炎症疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、酸化的ストレスに関連する疾患、および細胞の過剰増殖により特徴づけられる疾患が挙げられるが、それらに限定されない。
【0118】
非制限的な例は、関節の炎症状態、例えば、関節リウマチ(RA)および乾癬性関節炎;炎症性大腸炎、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T-細胞媒介乾癬を含む)および炎症性皮膚病、例えば皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、じんましん;血管炎(例えば、壊死性、皮膚、および過感受性血管炎);好酸球筋炎、好酸球筋膜炎;皮膚または器官の白血球浸潤を伴う癌、虚血傷害、例えば脳虚血(例えば、外傷、てんかん、出血または脳卒中による脳傷害、それぞれ、神経変性疾患に至ることがある);HIV、心不全、慢性、急性または悪性肝疾患、自己免疫性甲状腺炎;全身性エリテマトーデス;シェーグレン症候群、肺疾患(例えば、ARDS);急性膵炎;筋移植性側索硬化症(ALS);アルツハイマー病;悪液質/拒食症;喘息;アテローム性動脈硬化症;慢性疲労症候群、発熱;糖尿病(例えば、インスリン糖尿病または若年型糖尿病);糸球体腎炎;移植片対宿主拒絶反応(例えば、移植において);出血性ショック;痛覚過敏;炎症性大腸炎;多発性硬化症;筋障害(例えば、筋肉タンパク質代謝、とりわけ敗血症において);骨粗しょう症;パーキンソン病;疼痛;早期陣痛;乾癬;再かん流傷害;サイトカイン誘導毒性(例えば、敗血性ショック、内毒素性ショック);放射線治療による副作用、一時的な顎関節症、腫瘍転移;または緊張、ねんざ、軟骨損傷、外傷、例えば火傷、整形外科的処置、感染もしくは他の疾患過程による炎症状態である。アレルギー性疾患および状態としては、呼吸性アレルギー性疾患、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、好酸球性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎)、遅延型過敏症、間質性肺炎(ILD)(例えば、特発性肺線維症、または関節リウマチを伴うILD、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎または皮膚筋炎);全身性アナフィラキシーまたは過敏性反応、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対する)、虫刺されアレルギー、などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0119】
別の態様では、被験者に、治療的有効量の、本明細書で記述されている任意の1つまたは複数のヒドロキサム酸化合物を投与する段階を含む、治療の必要な被験者の中枢神経系の疾患を治療する方法においてヒドロキサム酸誘導体を使用する。
【0120】
特別な態様では、CNS疾患は神経変性疾患である。別の態様では、神経変性疾患は遺伝性神経変性疾患、例えば、ポリグルタミン伸長疾患である遺伝性神経変性疾患である。
【0121】
一般に、神経変性疾患は下記のように分類することができる:
I.他の顕著な神経学的徴候のない進行性痴呆により特徴づけられる障害
A.アルツハイマー病
B.アルツハイマー型老人性痴呆症
C.ピック病(脳葉萎縮)
II.進行性痴呆と他の顕著な神経的異常を合わせた症候群
A.主に成人
1.ハンチントン病
2.運動失調および/またはパーキンソン病の徴候を有する多系統萎縮症
3.進行性核上麻痺(Steel-Richardson-Olszewski)
4.散在レビ小体病
5.皮質歯状黒質変性症
B.主に小児および若年成人
1.ハレルフォルデン・スパッツ病
2.進行性の家族性ミオクローヌてんかん
III.姿勢および運動の異常が徐々に発症する症候群
A.振戦麻痺(パーキンソン病)
B.線条体黒質変性症
C.進行性核上麻痺
D.捻転ジストニア(捻転ジストニー;頸部の筋肉のジストニア)
E.痙性斜頸および他の運動異常
F.家族性振戦
G.Gilles de la Tourette症候群
IV.進行性失調症症候群
A.小脳変性症
1.小脳皮質変性症
2.オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)
B.脊髄小脳変性症(フリードライヒ失調症および関連疾患)
V.中枢自律神経系障害症候群(Shy-Drager症候群)
VI.感覚の変化を伴わない筋肉脱力および萎縮症候群(運動ニューロン疾患)
A.筋萎縮性側索硬化症
B.脊髄性筋萎縮症
1.乳児脊髄性筋萎縮症(Werdnig-Hoffman)
2.若年性脊髄性筋萎縮症(Wohlfart-Kugelberg-Welander)
3.他の形態の家族性筋萎縮症
C.原発性側索硬化症
D.遺伝性痙性対麻痺
VII.筋肉脱力および萎縮と感覚の変化を合わせた症候群(進行性神経性筋萎縮症;慢性家族性多発性神経障害)
A.腓骨筋萎縮(Charcot-Marie-Tooth)
B.肥厚性間質性多発性ニューロパシー(Dejerine-Sottas)
C.種々の形態の慢性進行性ニューロパシー
VIII.進行性視力障害症候群
A.網膜色素変性症
B.遺伝性視神経萎縮(レーバー病)
【0122】
本明細書で使用されるように、治療的有効量または有効量は、所望の治療または生物学的効果を引き出す量を示す。治療効果は、治療する疾患もしくは障害または所望の生物学的効果に依存する。そのようなものとして、治療効果は疾患または障害と関連する症状の重篤度の減少および/または疾患の進行の(部分的または完全な)阻止であり得る。治療反応を引き出すのに必要な量は、被験者の年齢、健康、大きさおよび性別に基づき決定することができる。最適量はまた、被験者の治療に対する反応のモニタリングに基づいて決定することもできる。
【0123】
例えば、方法が癌の治療法である場合、治療的有効量は、腫瘍または血液悪性腫瘍の形成を(部分的または完全に)阻止し、腫瘍または他の悪性腫瘍の発達を逆転させ、そのさらなる進行を抑制または軽減させ、その発達を阻止し(化学的予防)または癌転移を治療する量であり得る。
【0124】
さらに、治療的有効量は、新生細胞の末端分化を選択的に誘導する量、新生細胞の細胞増殖抑止を選択的に誘導する量、または腫瘍細胞の末端分化を誘導する量であり得る。
【0125】
方法がチオレドキシン(TRX)-媒介疾患および状態の治療および/または予防法である場合、治療的有効量は、治療の必要な被験者においてTRXの生理的に適したレベルを調節する、例えば、増加、減少または維持し、所望の治療効果を引き出す量である。治療効果は、治療する特異的なTRX-媒介疾患または状態に依存する。そのようなものとして、治療効果は、疾患または障害と関連する症状の重篤度の減少および/または疾患の進行の(部分的または完全な)阻止であり得る。
【0126】
さらに、治療的有効量は、ヒストンデアセチラーゼを阻害する量であり得る。
【0127】
本明細書で使用されるように、被験者は、哺乳類などの動物を示し、例えば、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他のウシ種、ヒツジ種、ウマ種、イヌ種、ネコ種、齧歯類またはネズミ種が挙げられるが、それらに限定されない。
【0128】
薬学的組成物
本発明の化合物、およびそれらの誘導体、フラグメント、類似体、同族体、薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物は、様々な投与様式に対し適した薬学的組成物中に、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に組み込むことができる。そのような組成物は典型的には、治療的有効量の任意の上記化合物、および薬学的に許容される担体を含む。
【0129】
ヒドロキサム酸誘導体は、錠剤、カプセル(それぞれ、持続放出製剤を含む)、ピル、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ剤、懸濁液、シロップ、およびエマルジョンなどの経口形態で投与することができる。同様に、ヒドロキサム酸誘導体は、静脈内(巨丸剤または注入液)、腹腔内、皮下、または筋内形態(全て、医薬品分野における当業者に周知の形態を用いる)で投与することができる。
【0130】
投与経路にはまた、任意の他の従来の生理的に許容される経路が含まれ、例えば、吸入(微粉製剤または細かい霧状物を介する)、経皮、鼻内、膣、直腸、または舌下投与経路が挙げられ、各投与経路に対し適した投与形態に製剤化することができる。
【0131】
本発明のヒドロキサム酸誘導体はまた、リポソーム送達システムの形態で投与することができ、例えば、小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクルおよび多重膜ベシクルである。リポソームは様々なリン脂質、例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンから形成することができる。
【0132】
ヒドロキサム酸誘導体はまた、化合物分子が結合された個々の担体としてモノクローナル抗体を使用することにより送達することができる。ヒドロキサム酸誘導体はまた、目標設定可能な薬物担体としての可溶性ポリマーとともに調製することができる。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシ-プロピル-メタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチル-アスパルトアミド-フェノール、またはポリエチレンオキシド-パルミトイル残基により置換されたポリリシンが挙げられる。さらに、ヒドロキサム酸誘導体は、薬物の放出制御を達成するのに有用な生物分解性ポリマーと共に調製することができ、そのようなポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーが挙げられる。
【0133】
ヒドロキサム酸誘導体は、目的とする投与形態に対し適切に選択した、従来の薬学的慣習と一致する、適した薬学的希釈剤、賦形剤または担体(集合的に本明細書では「担体」材料と呼ぶ)との混合物中の活性成分として投与することができる。
【0134】
例えば、錠剤またはカプセル形態での経口投与では、ヒドロキサム酸誘導体を、経口用の非毒性の薬学的に許容される不活性担体と組み合わせることができる。固体担体/希釈剤としては、ガム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン)、糖(例えば、乳糖、マンニトール、ショ糖、デキストロース)、セルロース材料(例えば、微結晶セルロース)、アクリレート(例えば、ポリメタクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、またはこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0135】
液体製剤では、薬学的に許容される担体は、水溶液または非水溶液、懸濁液、エマルジョンまたは油であり得る。非水溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注入可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば生理食塩水および緩衝媒質が挙げられる。油の例は石油、動物、植物、または合成起源のものであり、例えば、ピーナツ油、大豆油、鉱物油、オリーブ油、ヒマワリ油、および魚肝油である。溶液または懸濁液はまた、下記成分を含むこともできる:滅菌希釈剤、例えば注入用の水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および緊張力の調整のための薬剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムにより調節することができる。
【0136】
加えて、組成物はさらに、結合剤(例えば、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギニン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメローセナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、グリコールデンプンナトリウム、プリモゲル(Primogel))、表面への吸収を阻止するアルブミンまたはゼラチンなどの添加剤、界面活性剤(例えば、Tween 20;Tween 80;Pluronic F68;胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、表面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、透過促進剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、流動促進剤(例えば、コロイド二酸化ケイ素)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味剤(例えば、ショ糖、アスパルテーム、クエン酸)、香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味料)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動補助剤(例えば、コロイド二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)、コーティングおよびフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)および/またはアジュバントを含んでもよい。
【0137】
さらに、様々なpHおよびイオン強度の緩衝液(例えば)を製剤中で使用することができる。Tris-HCl、リン酸グルクロン酸、L-乳酸、酢酸、クエン酸または、ヒドロキサム酸誘導体の静脈内投与のために許容されるpH範囲において妥当な緩衝力を有する任意の薬学的に許容される酸/共役塩基を、緩衝液として使用することができる。酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムにより所望の範囲にpHが調節されている塩化ナトリウム溶液もまた、使用することができる。典型的には、静脈内投与用の製剤のためのpH範囲は、約5〜約12の範囲であり得る。静脈内投与用の製剤のための好ましいpH範囲は約9〜約12であり得る。適した賦形剤を選択する際には、化合物の溶解度および化学的適合性について考慮すべきである。
【0138】
好ましくは、約5〜約12の範囲のpHで、当技術分野において周知の手順により調製される皮下製剤はまた、適した緩衝液および等張化剤を含む。皮下製剤は、1回または複数回の皮下連日投与、例えば毎日1、2または3回で、一日量の活性化合物を送達するように製剤化することができる。製剤の適当な緩衝液およびpHの選択は、投与すべきヒドロキサム酸誘導体の溶解度に依存し、当業者であれば容易に実施することができる。酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムのいずれかにより、pHが所望の範囲に調節されている塩化ナトリウム溶液もまた、皮下製剤において使用することができる。典型的には、皮下製剤のpH範囲は約5〜約12であり得る。皮下製剤の好ましいpH範囲は約9〜約12であり得る。適した賦形剤を選択する際には、ヒドロキサム誘導体の溶解度および化学的適合性について考慮すべきである。
【0139】
ヒドロキサム酸誘導体は適した鼻内ビヒクルを局所的に使用することにより、当業者に周知の経皮皮膚パッチの形態を使用する、経皮経路により、鼻内形態で投与することができる。経皮送達システムの形態で投与するために、投与は当然、投与治療プログラムを通して断続的よりもむしろ連続して実施される。
【0140】
関節リウマチの治療では、ヒドロキサム酸誘導体は直接、リウマチ関節の滑液および/または滑膜組織中に投与することができ、そのため阻害剤の局所効果が実現される。
【0141】
1つの態様では、活性化合物は、体内から迅速に除去されないように化合物を保護する担体と共に調製され、例えば、放出制御製剤であり、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムが含まれる。生物分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。そのような製剤の調製法は当業者には明かであろう。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals、Inc.からも市販されている。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体と共に感染細胞を標的とするリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号において記述されているように、当業者に公知の方法により調製することができる。
【0142】
投与を容易にし、用量を均一にするために、用量単位で経口組成物を製剤化することが特に好都合である。本明細書で使用する投与単位形態は、治療すべき被験者のための単一の用量として適した物理的に別個の単位を示す。各単位は、所望の治療効果を得るように計算された、予め決められた量の活性化合物を必要な薬学的担体と共に含む。本発明の用量単位形態に対する規格は、活性化合物の独特の特性および達成すべき特別な治療効果、ならびに個人の治療のためにそのような化合物を化合する当技術分野に特有の制限により決定され、それらに直接依存する。
【0143】
薬学的組成物は投与のための指示と共に、容器、パック、またはディスペンサに含むことができる。
【0144】
活性成分を含む薬学的組成物の調製は、当技術分野においてよく理解されており、例えば、混合、粒状化、または錠剤形成法による。活性治療成分はしばしば、薬学的に許容されかつ活性成分と適合する賦形剤と混合される。経口投与のためには、活性成分は、この目的のためにお決まりの添加剤、例えば、上記のように、ビヒクル、安定化剤、または不活性希釈剤と混合され、通例の方法により適した投与形態、例えば、錠剤、コート錠剤、ハードまたはソフトゼラチンカプセル、水溶液、アルコール溶液または油溶液などに変換される。
【0145】
投与
本発明の化合物を使用する投与治療プログラムは、様々な因子、例えば、型、種、年齢、体重、性別および治療される疾患;治療される状態の重篤度;投与経路;患者の腎臓および肝臓機能;ならびに使用する特別な化合物またはその塩に従い、選択することができる。通常の技術を有する医師または獣医は、治療、例えば疾患の進行の予防、(完全または部分的な)阻止または抑止するのに必要な薬物の有効量を容易に決定、処方することができる。
【0146】
所望の疾患を治療するために使用する場合、ヒドロキサム酸誘導体の経口用量は約2mg〜約2000mg/日、例えば約20mg〜約2000mg/日、例えば約200mg〜約2000mg/日であり得る。例えば、経口用量は約2、約20、約200、約400、約800、約1200、約1600または約2000mg/日であり得る。1日あたりの総量は単回投与で投与することができ、または、複数回投与、例えば2、3もしくは4回/日で投与することができる。
【0147】
例えば、患者は約2mg/日〜約2000mg/日、例えば約20〜2000mg/日、例えば約200〜約2000mg/日、例えば約400mg/日〜約1200mg/日を受けることができる。このように、1日1回投与のために適当に調製した薬剤は、約2mg〜約2000mg、例えば約20mg〜2000mg/日、例えば約200mg〜約1200mg/日、例えば約400mg/日〜約1200mg/日を含むことができる。ヒドロキサム酸誘導体は、単回投与で、または1日あたり2、3または4回の分割投与で、投与することができる。1日2回投与するためには、適切に調製した薬剤は必要な1日量の半分を含む。
【0148】
静脈内に、または経皮的に、患者は、約3〜1500mg/m2/日、例えば、約3、30、60、90、180、300、600、900、1200または1500mg/m2/日を送達するのに十分な量のヒドロキサム酸誘導体を投与される。そのような量は多くの適した様式で、例えば、1度の長期間中、または1日あたり数回、低濃度のヒドロキサム酸誘導体を多量に投与してもよい。1週間(7日期間)あたり1日または複数の連続した日数、断続的な日数、またはそれらの組み合わせで、一定量を投与することができる。または、短期間の間に、例えば、1週間(7日期間)あたり、連続的に、断続的に、またはそれらの組み合わせで、1日または複数の日数の間、1日に1回、高濃度のヒドロキサム酸誘導体を少量投与することができる。例えば、300mg/m2/日の用量を連続した日数の間投与し、総量1500mg/m2/の治療であってよい。別の投与治療プログラムでは、連続した日数を、治療が2または3連続週の間続き、総量3000mg/m2および4500mg/m2の総治療となるようにすることができる。
【0149】
典型的には、約1.0mg/mL〜約10mg/mL、例えば、2.0mg/mL、3.0mg/mL、4.0mg/mL、5.0mg/mL、6.0mg/mL、7.0mg/mL、8.0mg/mL、9.0mg/mLおよび10mg/mLの濃度のヒドロキサム酸誘導体を含む静脈内製剤を調製してもよく、上記用量が達成される量で投与してもよい。1つの実施例では、十分な体積の静脈内製剤を患者に、1日あたりの総量が約300〜約1500mg/m2となるように、1日で投与することができる。
【0150】
併用療法
本発明のヒドロキサム酸化合物は、それだけで投与することができ、または治療する疾患または障害に適した他の療法と組み合わせて投与することができる。別個の投与製剤を使用する場合、ヒドロキサム酸化合物および他の治療薬は、本質的に同じ時に(同時)に、または別個のずらした時に(逐次)投与することができる。薬学的組み合わせはこれらの投薬治療プログラム全てを含むことが理解される。これらの様々な様式での投与は、ヒドロキサム酸および他の治療薬の有用な治療効果が、実質的に同時に患者により実現される限り、本発明に適している。そのような有用な効果は好ましくは、各活性薬物の目的とする血液レベル濃度が、実質的に同時に維持された時に達成される。
【0151】
1つの態様では、本発明は、本明細書で記述したヒドロキサム酸化合物を、抗腫瘍剤、ホルモン、ステロイド、またはレチノイドと組み合わせて提供する。
【0152】
適した抗腫瘍剤は、多くの化学療法剤の1つ、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、抗生物質、コルヒチン、ビンカ・アルカロイド、L-アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、ニトロソウレアまたはイミダゾールカルボキサミドであり得る。適した薬物は、チューブリンの脱分極を促進する薬物である。好ましくは、抗腫瘍剤はコルヒチンまたはビンカ・アルカロイドであり、特に好ましくは、ビンブラスチンおよびビンクリスチンである。
【0153】
実験
実施例1-合成
本発明の化合物を、化合物1および6について下記で例示しているように、下記合成スキームで概略を示した一般法により調製した。

【0154】
(表1)化合物の説明

【0155】
簡単に説明すると、アミノ-スベレートの生成は、市販の二重保護アミノ-スベレートから開始した(スキーム1)。ジシクロヘキシルアミン塩を塩酸水溶液により除去し、遊離酸を得た。典型的なアミドカップリングにより、Cbz-保護アミンを得た。これを脱保護し、アシル化し、ジエステルを得た。水素化分解は6aに対し回避した。最終生成物がCbz部分を含むからである。TFAを含むCH2Cl2で酸を保護し、混合無水物形成およびヒドロキシルアミンによるクエンチにより、最終ヒドロキサム酸形成を達成した。
【0156】
スキーム1:

【0157】
化合物1:

(7S)-7-ベンジルオキシカルボニルアミノ-オクタン二酸8-TERT-ブチルエステル(1)
EtOAc(500mL)に溶解した市販のN-Cbz-(L)-Asu(OtBu)(9.0g、16.1mmol)のジシクロヘキシルアミン塩のスラリーに、1N HCl(160mL)を添加した。得られたスラリーを分液漏斗中で振り混ぜ、濾過した。水相をEtOAcでさらに抽出し、有機層を合わせ、1N HCl(60mL)、およびH2O(60mL)で洗浄した。有機層を乾燥、濾過し、減圧下で濃縮すると、透明な油6.2gが得られた。これをさらに精製せずに使用した。
【0158】
化合物2:

(7S)-7-ベンジルオキシカルボニルアミノ-7-(キノリン-6-イルカルバモイル)-ヘプタン酸TERT-ブチルエステル(2)
(7S)-7-ベンジルオキシカルボニルアミノ-オクタン二酸8-tert-ブチルエステル(10.0g、26.3mmol)、6-アミノキノリン(4.02g、27.9mmol)およびEDCI(6.07g、29.0mmol)を150mLの無水CH3CNに溶解した。溶液を室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を500mLのEtOAcに溶解し、1M HCl(200×3)および水(100×2)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去すると16gの粗生成物が得られた。カラム分離(溶離液として酢酸エチル)により、濃厚油として68%の純粋化合物9.0gが得られた。

【0159】
化合物3b:

(7S)-7-アミノ-7-(キノリン-6-イルカルバモイル)-ヘプタン酸TERT-ブチルエステル(3b)
EtOAcおよびMeOHに溶解した(7S)-7-ベンジルオキシカルボニルアミノ-7-(キノリン-6-イルカルバモイル)-ヘプタン酸tert-ブチルエステル(11.0g、21.8mmol)の撹拌溶液に、10% Pd/Cを添加した。反応物にH2を加え、脱ガスし、水素を3度補充した。スラリーを室温で2時間、バルーン圧で撹拌し、その後、セライトプラグを通して濾過し、溶媒を減圧下で除去した。エステルの水素化分解により、19時間後、8.0g(99%)の濃厚な油性固体が得られた。

【0160】
化合物4b:

(7S)-7-ベンゾイルアミノ-7-(キノリン-6-イルカルバモイル)-ヘプタン酸tert-ブチルエステル(4b)
乾燥MeCN(100mL)に溶解した(7S)-7-アミノ-7-(キノリン-6-イルカルバモイル)-ヘプタン酸tert-ブチルエステル(8.0g、21.6mmol)の撹拌溶液に、塩化ベンゾイル(2.78mL、23.8mmol)およびトリエチルアミン(6.1mL、43.2mmol)を添加した。溶液を0℃で1時間、その後室温で2時間撹拌した。溶媒を除去し、残渣を400mL EtOAcに溶解し、100mLの0.5M NaHCO3と共に1時間撹拌した。水層を除去し、有機層を100mLの0.5M NaHCO3で、その後50mLの水で洗浄した。溶液を無水Na2SO4上で乾燥させた。カラム精製(溶離液としてEtOAc)後、生成物(8.1g)が濃厚な油として得られた(78.8%)。

【0161】
化合物5b:

(7S)-7-ベンゾイルアミノ-7-(キノリン-6-イルカルバモイル)-ヘプタン酸(5b)
CH2Cl2(40mL)およびTFA(10mL)に溶解したt-ブチルエステル(8.45g、17.8mmol)のTFA脱保護を24時間撹拌して実施した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を300mLのEtOAcに溶解した。溶液を、NaHCO3水溶液を用いてpH4に調節し、有機相を収集した。水相を酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。酢酸エチル画分を合わせ、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去し、得られた残渣を塩化メチレンと共に撹拌すると、オフホワイトの固体6.9gが得られ、収率は93.5%であった。

【0162】
化合物5a:

(7S)-7-ベンゾイルオキシカルボニルアミノ-7-(キノリン-6-イルカルバモイル)-ヘプタン酸(5a)
化合物5a((7S)-7-ベンゾイルアミノ-7-(キノリン-6-イルカルバモイル)-ヘプタン酸)の調製と同じ手順を使用した。t-ブチルエステル(9.0g、17.8mmol)のTFA脱保護により、24時間後、7.4g(92.5%)のオフホワイトの固体が得られた。

【0163】
化合物6b:

(2S)-2-ベンゾイルアミノ-オクタン二酸8-ヒドロキシアミド1-キノリン-6-イルアミド(6b)
酸(2.33g、5.57mmol)をイソ-ブチルクロロホルマート(2.19mL、16.7mmol)、NMM(2.1mL、18.9mmol)、および4.0当量のヒドロキシルアミン(過剰のヒドロキシルアミンHClおよびNaOHを用いて前に記述したように調製)を含むMeCNと混合した。溶媒除去後固体が得られた。固体を30mLのEtOAcおよび重炭酸ナトリウム水溶液(30mL)と20分間撹拌した。固体をEtOAc(60mL)、キシレン/MeOH(100mL、2:1)、クロロホルム(60mL)、MeCN(100mL)、キシレン/MeOH(100mL、2:1)およびアセトン(60mL)で、それぞれ、倍散すると、白色固体(58.7%)が得られた。純度は97%を超えた。

【0164】
化合物6a:

(S)-[6-ヒドロキシカルバモイル-1-(キノリン-6-イルカルバモイル)-ヘキシル]-カルバミン酸ベンジルエステル(6a)
酸(2.5g、5.57mmol)をイソ-ブチルクロロホルマート(2.19mL、16.7mmol)、NMM(2.1mL、18.9mmol)、および4.0当量のヒドロキシルアミン(過剰のヒドロキシルアミンHClおよびNaOHを用いて前に記述したように調製)を含むMeCNと混合した。溶媒除去後固体が得られた。固体を30mLのEtOAcおよび重炭酸ナトリウム水溶液(30mL)と20分間撹拌した。固体をEtOAc(60mL)、キシレン/MeOH(100mL、2:1)、クロロホルム(60mL)、MeCN(100mL)、キシレン/MeOH(100mL、2:1)およびアセトン(60mL)で、それぞれ、倍散すると、白色固体(67.6%)が得られた。純度は97%を超えた。

【0165】
別の合成
合成段階の数を減少させ、反応経路全体のコストを軽減するために別の合成が開発された。合成はBoc-保護メチルエステルアミノ-スベレートIから開始させた(スキーム2)。標準ペプチドカップリング法を用いてアミド形成を実施した。TFA脱保護によりアミン-TFA塩を得、必須の酸塩化物を用いてアシル化すると、IIIが得られた。IVの形成は、1段階でメチル-エステルIIIおよびヒドロキシルアミンを用いて達成した。化合物6を、別の合成により調製し、ラセミ開始材料(1)を使用することによりラセミ混合物として単離した。

【0166】
実施例2-新規化合物によるHDAC阻害
HDAC1-フラグアッセイ法:
新規化合物について、インビトロ脱アセチル化アッセイ法を用いて、ヒストンデアセチラーゼ、サブタイプI(HDAC1)を阻害する能力の試験を実施した。このアッセイ法のための酵素起源は、安定に発現する哺乳類細胞から免疫精製したエピトープ標識ヒトHDAC1複合体とした。基質は、アセチル化リシン側鎖を含む市販品から構成した(Biomol、Plymouth Meeting、PA)。精製したHDAC1複合体とインキュベートすることにより基質を脱アセチル化すると直ちに、脱アセチル化のレベルに正比例するフルオロフォアが生成された。酵素調製のためのKmの基質濃度を使用して、脱アセチル化アッセイ法を、濃度を増加させた新規化合物の存在下で実施し、脱アセチル化反応の50%阻害に必要とされる化合物濃度(IC50)を半定量的に決定した。
【0167】
結果
下記表2は、本発明により設計、合成された新規化合物の選択に対する化学構造およびHDAC酵素的アッセイ法結果を示す。追加の化合物を下記表4に示す。
【0168】
(表2)



【0169】
実施例3-増殖アッセイ法
増殖
本発明の新規化合物について、ヒト膀胱癌細胞系、T24の増殖を阻害する能力の試験を実施した。化合物を用いて細胞を72時間処理し、凍結/融解により溶解しDNAを露出させ、その後、挿入染料、ビスベンズアミド(Sigma)を用いてDNAを定量した。蛍光強度(ex 350λ em 460λ)はウエルあたりの細胞数に正比例した。ビヒクル処理した細胞から得られた蛍光値を決定し、100%として使用した。細胞増殖を50%阻害するのに必要な化合物濃度を決定し、表3で報告した。
【0170】
結果
新規化合物の選択した群から得られたT24細胞に基づく増殖アッセイ法の結果の概要を下記表3に示す。
【0171】
(表3)

【0172】
(表4)

【0173】
本発明について、特に、好ましい態様を参照して記述してきたが、当業者であれば、添付の請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱せずに、形態および細部において様々な変更が可能であることは、理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式により表される化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物:

式中、
R1は置換または非置換アリール基、アリールアルキル基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アリールオキシ基もしくはアリールアルコキシ基であり;および
nは3〜10の整数である。
【請求項2】
nが5である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1が置換または非置換ヘテロアリール基、フェニル基またはナフチル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R1が置換または非置換ピリジル基、キノリニル基またはイソキノリニル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
R1が置換または非置換フェニル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R1が非置換フェニル基である、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
nが5である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
R1が非置換ピリジル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
R1がβ-ピリジルである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
nが5である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
R1が非置換キノリニル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
R1が2-キノリニル基である、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
nが5である、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
R1が置換または非置換アリールアルキルオキシ基である、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
R1が置換または非置換ベンジルオキシ基である、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
R1が非置換ベンジルオキシ基である、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
nが5である、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
下記構造式により表される化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物:

式中、
Q1は置換または非置換キノリニルもしくはイソキノリニル基であり;および
nは3〜10の整数である。
【請求項19】
Q1が8-キノリニル基である、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
ピリジル基がβ-ピリジルである、請求項18記載の化合物。
【請求項21】
Q1が8-キノリニル基である、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
nが5である、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
下記構造式により表される化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物:

式中、
Q1およびQ2はそれぞれ、置換または非置換キノリニルもしくはイソキノリニル基であり;および
nは3〜10の整数である。
【請求項24】
Q1が8-キノリニル基である、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
Q2が2-キノリニル基である、請求項23記載の化合物。
【請求項26】
Q1が8-キノリニル基である、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
nが5である、請求項26記載の化合物。
【請求項28】
下記構造式により表される化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物:

式中、
R1はアリールアルキルであり;
R2は置換または非置換アリール基、アリールアルキル基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アリールオキシ基またはアリールアルコキシ基であり;
Aはアミドであり;および
nは3〜10の整数である。
【請求項29】
R1がベンジル基である、請求項28記載の化合物。
【請求項30】
R2が置換または非置換キノリニル基である、請求項29記載の化合物。
【請求項31】
R2が非置換キノリニル基である、請求項30記載の化合物。
【請求項32】
R2が2-キノリニル基である、請求項31記載の化合物。
【請求項33】
nが5である、請求項32記載の化合物。
【請求項34】
R2が置換または非置換アリールアルキルオキシ基である、請求項29記載の化合物。
【請求項35】
R2が置換または非置換ベンジルオキシ基である、請求項34記載の化合物。
【請求項36】
R2が非置換ベンジルオキシ基である、請求項35記載の化合物。
【請求項37】
nが5である、請求項36記載の化合物。
【請求項38】
R2が置換または非置換フェニル基である、請求項29記載の化合物。
【請求項39】
R2が非置換フェニル基である、請求項38記載の化合物。
【請求項40】
nが5である、請求項39記載の化合物。
【請求項41】
R2が置換または非置換ピリジル基である、請求項29記載の化合物。
【請求項42】
R2が非置換ピリジル基である、請求項41記載の化合物。
【請求項43】
R2がβ-ピリジル基である、請求項42記載の化合物。
【請求項44】
nが5である、請求項43記載の化合物。
【請求項45】
薬学的有効量の、請求項1〜44のいずれか一項記載の化合物、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項46】
治療の必要な被験者の癌を治療する方法であって、治療的有効量の、請求項1〜44のいずれか一項記載の化合物を該被験者に投与する段階を含む、方法。
【請求項47】
新生細胞の末端分化を選択的に誘導し、これによりそのような細胞の増殖を阻害する方法であって、細胞を適した条件下で、有効量の請求項1〜44のいずれか一項記載の化合物と接触させる段階を含む、方法。
【請求項48】
新生細胞の細胞増殖抑止を選択的に誘導し、これによりそのような細胞の増殖を阻害する方法であって、細胞を適した条件下で、有効量の請求項1〜44のいずれか一項記載の化合物と接触させる段階を含む、方法。
【請求項49】
新生細胞のアポトーシスを選択的に誘導し、これによりそのような細胞の増殖を阻害する方法であって、細胞を適した条件下で、有効量の請求項1〜44のいずれか一項記載の化合物と接触させる段階を含む、方法。
【請求項50】
腫瘍中の腫瘍細胞の末端分化を誘導する方法であって、細胞を有効量の請求項1〜44のいずれか一項記載の化合物と接触させる段階を含む、方法。
【請求項51】
ヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する方法であって、ヒストンデアセチラーゼを有効量の請求項1〜44のいずれか一項記載の化合物と接触させ、それによりヒストンアセチラーゼの活性を阻害する段階を含む、方法。
【請求項52】
治療の必要な被験者においてチオレドキシ(TRX)-媒介疾患を治療する方法であって、被験者に治療的有効量の、請求項1〜44のいずれか一項記載の化合物を投与する段階を含む、方法。
【請求項53】
TRX-媒介疾患は炎症疾患が、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、酸化的ストレスと関連する疾患、または細胞過増殖により特徴づけられる疾患である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
治療の必要な個人において中枢神経系の疾患を治療する方法であって、個人に治療的有効量の、請求項1〜44のいずれか一項記載の化合物を投与する段階を含む、方法。
【請求項55】
疾患がポリグルタミン伸長疾患である、請求項54記載の方法。

【公表番号】特表2006−523693(P2006−523693A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509647(P2006−509647)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/010250
【国際公開番号】WO2004/089293
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(500213834)
【出願人】(306018457)ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク (25)
【Fターム(参考)】