ヒドロゲルポリマー組成物及び方法
この開示のいくつかの態様は、患者の眼を侵す眼疾患の治療方法に関し、眼周囲、眼内、又は硝子体内部位の原位置で、治療薬の制御された放出を行うための、共有結合性架橋ヒドロゲルを形成することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、一般に、特定の病状に適用されるヒドロゲル組成物である、合成ポリマー樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎、脈絡膜新生血管(CNV)、及び嚢胞様黄斑浮腫(CME)は、視覚を脅かす眼の奥の疾患である。加齢黄斑変性及び糖尿病網膜症は、米国などにおいて、視力障害の重大な原因となっており;一般に、これらの病気は、網膜を傷つける血管新生(眼中の望ましくない血管成長)に起因し、最終的に失明を引起こす恐れがある。後部ぶどう膜炎は、慢性炎症性の疾患であり、米国において、失明の約10パーセントの原因となっている。
【発明の概要】
【0003】
(概要)
本明細書中に開示される一発明は、原位置で形成される架橋ヒドロゲルであり、該ヒドロゲルは、治療薬を放出し、これを使用して眼の奥の疾患を治療することができる。この実施態様において、水性のポリマー前駆体と薬剤とを生体外にて、流動性の濃度/粘度で組合せて、かつ小口径の針を通過し、硝子体内又は結膜下の経路を経由して眼中に注入し、ここで、該前駆体が、時間をかけて該薬剤を放出する架橋ヒドロゲルを形成する。該ヒドロゲルを処方して、眼の中又は眼の周囲の組織に接着し、薬剤放出の効果及び安定性を増強する、炎症を引起こすことなく生体適合性の成分に分解する、かつ所定の位置で架橋することができる。このように、形成される形状安定性のヒドロゲルは、薬剤を効果的に送達でき、かつ優位には、適切に制御されたサイズ、形状、及び表面積を有する。すでに形成された材料の代わりに、可溶性又は流動性の前駆体を使用することができるので、テノン嚢下注射用の小口径針又は鈍端(blunt tip)カニューレを使用して該材料を注入することができる。
【0004】
眼治療のために、ほとんど炎症を起こさない、生体適合性材料を作り出すことができる。該ヒドロゲルは、生体適合性の前駆体を使用して作られ、高い比率で水を含有し、かつ生体適合性の分解生成物を生成する。従って、該材料は、柔らかく、親水性で、かつ堅い端、角、又は鋭い表面を伴わずに、それらが作製される部位に適合することができる。
生体適合性材料はまた、効果的に自己除去(self-removing)する、又は除去される場合に、自己除去する部分だけを残すようにさせることができる。いくつかの実施態様は、柔らかく、可動性の、架橋された生体材料で作られるインプラントであり、該インプラントの回収が必要である場合に、小開口部を通して引き抜くか、又は別の方法で排除することができる程の強度である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
(図面の簡単な説明)
【図1】図1は、正面から見た、眼の解剖学的特徴を示す。
【図2】図2は、眼の部分的に切取った透視図である。
【図3】図3は、眼の断面図である。
【図4】図4は、図3の断面図の拡大図である。
【図5】図5は、インプラントための種々の送達代替法を示す。
【図6A】図6Aは、小さな開口部を作って用いる、眼へのインプラントの導入を表す。
【図6B】図6Bは、開口部を通過して導入されたカニューレを用いる、図6Aの方法を示す。
【図6C】図6Cは、焼灼によって開口部を閉じる、図6Bの方法を示す。
【図7A】図7Aは、眼表面に作製した開口部を用いる、硝子体内部のインプラントの送達を示す。
【図7B】図7Bは、カニューレを用いて、眼内部の1つ以上の部位にインプラントを送達する、図7Aの方法を示す。
【図8】図8は、眼への1回での材料の送達を示す。
【図9】図9は、実施例2より、収集されたデータを示す。
【図10】図10は、実施例3より、収集されたデータを示す。
【図11】図11は、実施例4より、収集されたデータを示す。
【図12】図12は、実施例5より、収集されたデータを示す。
【図13】図13は、実施例6より、収集されたデータを示す。
【図14】図14は、実施例7より、収集されたデータを示す。
【図15】図15は、実施例8より、収集されたデータを示す。
【図16】図16は、実施例9より、収集されたデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(詳細な説明)
水性溶液中の前駆体から原位置で作られる、局所的形成ヒドロゲルは、目薬送達のための薬剤又は他の治療薬の貯蔵所として機能することができる。こうした貯蔵所は、例えば、眼の表面に局所的に、結膜と強膜の中、及び/又はその間に経強膜的に、眼内に注入して、又は眼周囲に形成してなど、必要に応じて形成することができる。
様々な深刻な眼疾患が存在し、投与計画による治療を必要とする。本明細書中に、組織上の原位置で形成し、薬剤を送達することができるヒドロゲルについて記載する。原位置とは、その使用を意図する部位で材料を形成することを意味する。従って、患者において、例えば、制御された放出のための薬剤貯蔵所として、ヒドロゲルの使用を意図するその部位で、該ヒドロゲルを形成することができる。
【0007】
一実施態様において、該ヒドロゲルは、官能基を有する前駆体から形成され、該前駆体は、共有結合性の架橋を形成してヒドロゲルを架橋し、これによって、ヒドロゲルを形成する。該ヒドロゲルは、薬剤を眼に送達する。いくつかの実施態様は、高流動性の前駆体を使用し、該前駆体は、非常に小さな穴のカニューレ、又は針を通過して押出され、実質的に、注入後にだけ架橋するほどに、ゆっくりとゲル化するが、該前駆体が、切り口の跡を逆行しないほどに、速くゲル化する。次いで、このゲルは、架橋後、ごくわずかしか膨潤しない。該ゲルは、生体適合性で、かつ酸性ではない部位に分解することによって、炎症を引起こすことなく、眼の中又は眼の周囲の生理液中で分解する。また、該ヒドロゲルに、十分な機械的強度をもたせて、必要であれば、手動の又は機械的な、いずれかの洗浄/吸引技術によって回収することができるようにする。更に、いくつかの実施態様において、該ゲルは組織に接着する。
【0008】
概して、前駆体は、本明細書中に記載されるように、眼の中又は近くの部位で組合され、共有結合性架橋ヒドロゲルを作製することができ、該ヒドロゲルは、適当な期間をかけて、眼中に放出されて眼病を治療する治療薬を含む。該ヒドロゲルは、24時間の生理溶液への曝露で、形成時のヒドロゲルの重量と比べて、該ヒドロゲルの重量が、約10%又は約50%以下の増加であるほど、低膨潤性とし得る(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。また、該ヒドロゲルは、ヒドロゲル中の水分解性基の分解によって、インビトロにて過剰の水に溶けるほどの、水分解性とし得る。その中で混合された前駆体を含む、組成物は、小口径の針を通過して導入することができるが、但し、該組成物は、適当な粘性を有しており、該粘性は、前駆体の特性、濃度、及び化学的性質の順に依存する。更に、該ヒドロゲルの機械的強度及び反応時間は、前駆体及び官能基の制御によって調整される。該前駆体及びヒドロゲルは様々な特徴を有し、効果的なデバイスにするための検討に従って、うまく組合せることができる。下記の節に、こうした特徴のいくつかを記載する。
【0009】
(前駆体材料)
該前駆体は、反応を誘発されて、架橋ヒドロゲルを形成することができるものである。一般に、該前駆体は、重合可能であり、かつ多くの場合、常にではないが、重合可能な前駆体である架橋剤を含む。従って、重合可能な前駆体は、官能基を有する前駆体であり、互いに反応して繰返し単位から作られるポリマーを形成する。
このように、いくつかの前駆体は、連鎖成長重合によって反応し、付加重合とも呼ばれ、かつ二重又は三重結合を組込んでいるモノマーが、互いに結合することを含む。こうした不飽和のモノマーは、余剰の内部結合を有し、該結合は、切断し、かつ他のモノマーと結合して、繰返し鎖を形成することが可能である。モノマーは、少なくとも1つの基が他の基と反応してポリマーを形成する、重合可能な分子である。マクロモノマーは、ポリマー又はオリゴマーであり、多くの場合、その末端に、少なくとも1つの反応基を有し、該反応基が該マクロモノマーを、モノマーとして機能できるようにする。各マクロモノマー分子は、該反応基の反応によってポリマーに付加される。このように、2つ以上のモノマー又は他の官能基を有するマクロモノマーは、共有結合性の架橋を形成する傾向がある。付加重合は、例えば、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニルの製造に関与する。付加重合の1種に、リビング重合がある。
【0010】
従って、いくつかの前駆体は、モノマーが縮合反応を介して互いに結合する場合に、縮合重合が起こることによって反応する。典型的には、アルコール、アミン、又はカルボン酸(若しくは他のカルボキシル誘導体)の官能基を組込んでいる分子を反応させることによって、こうした反応を得ることができる。アミンがカルボン酸と反応する場合、水の放出を伴い、アミド又はペプチド結合が形成される。いくつかの縮合重合は、例えば、米国特許第6,958,212号のように、求核アシル置換に続く。該文献は、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。
【0011】
いくつかの前駆体は、連鎖成長段階系(chain growth-step system)によって反応する。連鎖成長ポリマーは、モノマー又はマクロモノマーと反応中心との反応によって形成されるポリマーとして定義される。反応中心は化学化合物内の特定の部位であり、化学種が関わる反応の中心である。連鎖成長ポリマーの化学において、これは鎖成長のための伸長点でもある。一般に、該反応中心は、天然のラジカル、アニオン又はカチオンであるが、他の形態もとり得る。連鎖成長段階系には、開始、伸長及び停止の工程を含む、ラジカル重合が含まれる。開始は、ラジカル開始剤、例えば、有機過酸化物分子から発生されるような、伸長に必要なフリーラジカルの発生である。ラジカルが、更なる伸長を阻止するように反応する場合に、停止が起こる。最も一般的な停止方法は、2つのラジカル種が互いに反応して単一分子を形成する、カップリングによる。
【0012】
いくつかの前駆体は、逐次成長機構によって反応し、かつモノマーの官能基間の段階反応によって形成されるポリマーである。また、多くの逐次成長ポリマーは縮合ポリマーとして分類されるが、全ての逐次成長ポリマーが縮合物を放出するわけではない。
モノマーは、ポリマー又は小分子とし得る。ポリマーは、多数の小分子(モノマー)を規則正しく組合せて形成される有機分子であり、少なくとも2つのモノマーから形成されるポリマー及びオリゴマーを含み、本明細書中の本用語は、約20未満のモノマーの繰返し単位を有するポリマーを意味する。一般に、小分子は、約2000ダルトン未満の分子を意味する。
【0013】
従って、該前駆体は、アクリル酸又はビニルカプロラクタムのような小分子、アクリレートキャップされたポリエチレングリコール(PEG-ジアクリレート)のような、重合可能な基を含む大分子、又はDunnらの文献、米国特許第4,938,763号、Cohnらの文献、米国特許第5,100,992号及び第4,826,945号、又はDeLucaらの文献、米国特許第4,741,872号及び第5,160,745号(これら文献は、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)のようなエチレン性不飽和基を含む他のポリマーとすべきである。
【0014】
共有結合性の架橋ヒドロゲルを形成するために、該前駆体を互いに架橋しなければならない。一般に、ポリマー前駆体は、2つ以上の部位で、他のポリマー前駆体に結合されているポリマーを形成し、各部位は、同じであるか又は異なるポリマーとの結合になっている。少なくとも2つのモノマーを有する前駆体は、それぞれのモノマーが、異なる成長ポリマー鎖の形成に関与できるので、架橋剤として機能することができる。反応中心を有するモノマーの場合、各モノマーが、他の前駆体と反応するために、効果的に1つの官能基を有する。反応中心がない官能基の場合は、特に、架橋には、前駆体上に3つ以上のこのような官能基が要求される。例えば、多くの求電子-求核反応が、求電子性及び求核性官能基を消費するので、架橋を形成するために、前駆体に第3の官能基を必要とする。このように、こうした前駆体は3つ以上の官能基を有することができ、かつ2つ以上の官能基を有する前駆体によって架橋され得る。従って、いくつかの前駆体は、ポリマー及び/又は架橋の形成に関与する官能基を有するが、重合可能な反応中心を含まない、若しくはラジカル、及び/又はアニオン、及び/又はカチオンの反応中心を含まないか、又はいくつかの同様の組合せだけを有する。架橋分子は、イオン若しくは共有結合、物理的な力、又は他の引力を介して架橋され得る。しかし、一般的に、共有結合による架橋が、反応物が生成する構造体に、安定性及び予測性を提供するだろう。
【0015】
いくつかの実施態様において、各前駆体を、2つ以上の求電子性又は求核性官能基を含む多官能性とし、前駆体上の求核性官能基と他の前駆体上の求電子性官能基とが反応して、共有結合を形成するようにする。少なくとも1つの前駆体が、3つ以上の官能基を含むようにして、求電子-求核反応の結果、該前駆体は結合して、架橋されたポリマー生成物を形成する。
【0016】
該前駆体は、生物学的に不活性で、かつ水溶性部分、例えば、母核を有することができる。母核は、分子の連続的な部分を意味し、一般に、分子の少なくとも約80重量%であり、該母核から延びる腕(arm)を有することがあり、該腕に官能基を有することがあり、該官能基は多くの場合、その分枝の末端にある。水溶性部分は、水溶性の分子又はポリマーであり、疎水性ポリマーに結合されている。好ましくは、水溶性の前駆体又は前駆体の部分は、少なくとも1g/100mLの水への溶解度を有する。水溶性部分は、例えば、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシド-コ-ポリエチレンオキシド(PPO)、コ-ポリエチレンオキシドのブロック若しくはランダム共重合体などのポリアルキレンオキシド、及びポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、又はタンパク質とし得る。該前駆体は、ポリアルキレングリコール部分を有し、かつ少なくとも約80重量%又は90重量%のポリマーが、ポリエチレンオキシドの繰返しを含む、ポリエチレングリコールベースとし得る。該ポリエーテル、及びより具体的には、ポリ(オキシアルキレン) 、又はポリ(エチレングリコール)、又はポリエチレングリコールは、一般に、親水性である。
【0017】
また、前駆体は、数千〜何百万もの範囲の分子量を有する巨大分子とし得る。しかし、いくつかの実施態様において、少なくとも1つの前駆体は、約1000Da以下の小分子である。該巨大分子を、約1000Da以下の小分子と組合せて反応させる場合、好ましくは、該巨大分子は、該小分子より、少なくとも5〜50倍、分子量が大きく、かつ好ましくは、約60,000Da未満である(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。より好ましい範囲は、巨大分子は、架橋剤より約7〜約30倍、分子量が大きく、かつ最も好ましい範囲は、約10〜20倍の重量差である。更に、5,000〜50,000の巨大分子の分子量が有用であり、7,000〜40,000の分子量、又は10,000〜20,000の分子量が有用である。
【0018】
Hubbellらの文献、米国特許第5,410,016号(該文献は、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)に記載される、特定のマクロマー前駆体は、架橋可能、生分解性、水溶性のマクロマーである。これらモノマーは、少なくとも2つの重合可能な基を有することを特徴とし、少なくとも1つの分解可能な領域によって分解される。
合成前駆体を使用できる。合成とは、天然には見られない、又は通常、人体には見られない分子を意味する。いくつかの合成ポリマーは、天然に存在するアミノ酸を含まない、又はアミノ酸配列を含まない。いくつかの合成分子は、天然には見られない、又は通常、人体には見られない、例えば、ジ-、トリ-、又はテトラ-リジンなどのポリペプチドである。いくつかの合成分子はアミノ酸残基を有するが、隣接する1、2、又は3つだけであり、アミノ酸又はそれらの集団は、非天然のポリマー又は群によって分離されている。
【0019】
別法として、天然のタンパク質又は多糖類、例えば、コラーゲン、フィブリン(フィブリノーゲン)、アルブミン、アルギン酸、ヒアルロン酸及びヘパリンなどを、こうした方法を用いた使用に適応させることができる。これら天然の分子には、例えば、合成的なポリマーの修飾などの、化学的な誘導体化を、更に含むことができる。該天然の分子は、例えば、文献、米国特許第5,304,595号、第5,324,775号、第6,371,975号、及び第7,129,210号(これら文献は、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)のように、その天然の求核剤を介して、又は官能基を誘導体化された後に、架橋することができる。天然とは、自然に見られる分子を意味する。天然のポリマーとは、例えば、コラーゲン、フィブリノーゲン、アルブミン及びフィブリンなどのタンパク質又はグリコサミノグリカンであり、求電子性官能基を有する反応性の前駆体を用いて架橋することができる。天然のポリマーは、通常、体内に見られ、体内に存在するプロテアーゼにより、タンパク分解的に分解される。そのようなポリマーは、これらアミノ酸上のアミン、チオール若しくはカルボキシルなどの官能基を介して反応するか、又は活性化可能な官能基を有するように誘導体化することができる。天然のポリマーをヒドロゲルに使用することができるが、これらのゲル化までの時間及び最終的な機械的特性は、付加的官能基の適切な導入、及び例えば、pHなどの適当な反応条件の選択によって、制御されなければならない。対照的に、フィブリノーゲンが重合してフィブリンを形成することを利用するフィブリン糊は、限定的な機械的特性の範囲、限定的な分解性能の範囲、かつ概して、本明細書中に記載されるヒドロゲルが形成される場合に、利用可能な眼部治療の適用の多くに不適切である。
【0020】
疎水性部分を用いて、前駆体を製造することができる。いくつかの場合において、該前駆体は、親水性部分も有しているので、疎水性部分を有するにも関わらず水に可溶性である。別の場合において、該前駆体は、水に分散する(懸濁液)が、それにも関わらず、架橋材料を形成するために反応可能である。いくつかの疎水性部分は、複数のアルキル、ポリプロピレン、アルキル鎖、又は他の基を含むことができる。疎水性部分を有するいくつかの前駆体が、PLURONIC F68、JEFFAMINE又はTECTRONICの商標を伴って売られている。疎水性部分とは、マクロマー又は共重合体を凝集して、水性の連続相にミセルを形成させるのに十分な疎水性であるもの、又は自己試験の場合、pH約7〜約7.5、温度約30〜約50℃の水溶液から沈殿する、又はそうでなければ、該溶液内の相を変えるのに十分な疎水性であるものである。
【0021】
いくつかの前駆体をデンドリマー又は他の高度に分枝した材料とし得ることを考慮して、前駆体は、それぞれの腕が末端を有する、例えば、2〜100本の腕を有することができる。従って、ヒドロゲルは、例えば、第1組の官能基を有する多腕(multi-armed)の前駆体、及び第2組の官能基を有する低分子量の前駆体から製造することができる。例えば、6本腕又は8本腕の前駆体は、例えば、末端に一級アミンを有する、ポリエチレングリコールなどの親水性の腕を有することができ、該腕の分子量は、約1,000〜約40,000である(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。そのような前駆体は、比較的小さい前駆体、例えば、分子量が約100〜約5000の間、又は約800、1000、2000、若しくは5000以下で、少なくとも約3つの官能基、又は約3〜約16の官能基を有する分子と混合することができる(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、理解されよう)。このような小分子はポリマー又は非ポリマー、及び天然物又は合成物とし得る。
【0022】
いくつかの実施態様は、実質的に、5残基以下のオリゴペプチド配列、例えば、少なくとも1つのアミン、チオール、カルボキシル、及びヒドロキシルの側鎖を含むアミノ酸からなる前駆体を含む。残基は、天然に存在するか、又はそれらの誘導体化されたものの、どちらかのアミノ酸である。そのようなオリゴペプチドの主鎖は、天然物又は合成物とし得る。いくつかの実施態様において、2つ以上のアミノ酸のペプチドを合成主鎖と組合せて、前駆体を製造し;そのような前駆体の特定の実施態様は、約100〜約10,000、又は約300〜約500の範囲内の分子量を有する(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。
【0023】
前駆体を、導入部位に存在する酵素によって切断可能なアミノ酸配列を含まないように製造することができ、メタロプロテイナーゼ、及び/又はコラゲナーゼを含まない。更に、前駆体は、アミノ酸を全く含まないように、又は約50、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1つより多いアミノ酸のアミノ酸配列を含まないように製造することができる。前駆体は、非タンパク質とすることができ、これらは、天然には存在しないタンパク質であり、天然のタンパク質の切断によって生成されず、かつ合成材料をタンパク質に付加することによって生成されないことを意味している。前駆体は、非コラーゲン、非フィブリン(フィブリノーゲン)、非ヒアルロン酸、及び非アルブミンとすることができ、つまり、これらはこうしたタンパク質の1つではなく、かつこうしたタンパク質の1つの化学的誘導体でもない。非タンパク質の前駆体の使用、及びアミノ酸配列の限定的使用は、免疫反応を回避する、望ましくない細胞認識を回避する、かつ天然の供給源由来のタンパク質の使用に関連する危険を回避するのに役立たせることができる。
【0024】
ペプチドを前駆体として使用することができる。概して、大きな配列のもの(例えば、タンパク質)を使用できるが、約10残基未満のペプチドが好ましい。例えば、1〜10、2〜9、3〜10、1、2、3、4、5、6、又は7などを含む、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることが、当業者には、直ちに理解されよう。いくつかのアミノ酸は、求核性基(例えば、一級アミン若しくはチオール)、又は求核性基若しくは求電子性基(例えば、カルボキシル若しくはヒドロキシル)を組込むのに必要な誘導体化し得る基を有する。合成により生成されるポリアミノ酸ポリマーは、それらが天然には見られず、かつ天然に存在する生体分子とは非同一に設計される場合、通常、合成物であると見なされる。
【0025】
ポリエチレングリコール(PEG、ポリエチレンオキシドとも呼ばれる。)は、繰返し基(CH2CH2O)n(nは少なくとも3である。)を有するポリマーを意味する。従って、ポリエチレングリコールを有するポリマー前駆体は、少なくとも3つの、互いに直線上に結合した繰返し基を有する。ポリマー又は腕のポリエチレングリコール含有量は、たとえ、それらが他の基によって妨害されても、ポリマー又は腕上の全てのポリエチレングリコール基の和によって計算される。従って、少なくとも1000MWのポリエチレングリコールを有する腕は、総計が少なくとも1000MWになるのに十分なCH2CH2O基を有する。当該分野には通例の用語である、ポリエチレングリコールポリマーは、ヒドロキシル基の末端を必要としない。
【0026】
(開始系)
いくつかの前駆体は、開始剤を用いて反応する。開始剤基は、ラジカル重合反応を開始することが可能な化学基である。例えば、それは、分離成分、又は前駆体上の垂れ下がった基(pendent group)として存在することができる。開始剤基には、熱開始剤、光学活性可能な開始剤、及び酸化-還元(レドックス)系が含まれる。長波長のUV及び可視光に光学活性化可能な開始剤に含まれるのは、例えば、エチルエオシン基、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン基、他のアセトフェノン誘導体、チオキサントン基、ベンゾフェノン基、及びカンファーキノン基である。熱反応性開始剤の例に含まれるのは、4,4'アゾビス(4-シアノペンタン酸)基、及び過酸化ベンゾイル基の類似体である。Wako Chemicals USA社(リッチモンド、Va.)から入手可能なV-044など、いくつかの市販されている低温ラジカル開始剤を使用して、体温でラジカル架橋反応を開始して、前述のモノマーとともにヒドロゲル被覆を形成することができる。
【0027】
金属イオンを、レドックス開始系の酸化剤又は還元剤のいずれかに使用することができる。例えば、第一鉄イオンと、過酸化物又はヒドロペルオキシドとを組合せて使用し、重合を開始する、又は重合系の一部として開始することができる。この場合、第一鉄イオンは還元剤として機能するだろう。あるいは、金属イオンは、酸化剤として機能できる。例えば、セリウムイオン(セリウムの4+価の状態)は、カルボン酸及びウレタンを含む様々な有機基と相互作用し、電子を金属イオンに移動させ、有機基の背後に開始ラジカルを残す。そのような系において、該金属イオンは酸化剤として作用する。どちらの役割にも潜在的に適した金属イオンは、遷移金属イオン、ランタニド、及びアクチニドのいずれかであり、これらは、少なくとも2つの移行しやすい酸化状態を有する。特に有用な金属イオンは、たった1つの電荷の差で分離された、少なくとも2つの状態を有する。これらの中で、最も一般に、使用されるのは、第二鉄/第一鉄;第二銅/第一銅;第二セリウム/第一セリウム;第二コバルト/第一コバルト;バナジン酸V対FV;過マンガン酸;及びマンガン(III)/マンガン(II)である。過酸化物及びヒドロペルオキシドのような過酸素含有化合物に含まれるのは、過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クミルペルオキシドであり、これらを使用することができる。
【0028】
開始系の例は、一溶液中の過酸素化合物と、別の溶液中の遷移金属などの反応性イオンとの組合せである。この場合において、2つの相補的な反応性官能基が含有する部位が、該適用部位で相互作用する場合に、外部の重合開始剤は不要であり、かつ重合は、自発的に、かつ外部エネルギーの適用、又は外部エネルギー供給源の使用を伴うことなく進行する。
【0029】
(官能基)
該前駆体は、官能基を有し、互いに反応して、原位置で材料を形成する。一般に、該官能基は、重合若しくは求電子剤-求核剤反応で互いに反応するための反応中心を有するか、又は他の重合反応に関与するように形成されている。本明細書中の前駆体の節で、重合反応の様々な態様を論じている。
従って、いくつかの実施態様において、前駆体は、重合可能な基を有し、重合分野で使用される、光開始又はレドックス系によって活性化され、又は例えば、求電子性官能基が、カルボジイミダゾール、塩化スルホニル、クロロカルボナート、n-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、若しくはスルファスクシンイミジル(sulfasuccinimidyl)エステルであるか、又は米国特許第5,410,016号若しくは第6,149,931号に記載されたものである(これらは、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)。該求核性官能基は、例えば、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル及びチオールとし得る。
求電子剤の別の部類は、例えば、米国特許第6,958,212号に記載されるようなアシルであり、該文献は、特に、反応しているポリマーに対するマイケル付加のスキームについて記載している。
【0030】
アルコール又はカルボン酸などの特定の官能基は、通常、生理的条件下(例えば、pH7.2〜11.0、37℃)では、アミンなどの他の官能基と反応しない。しかし、そのような官能基は、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの活性化基を使用することによって、より反応性を高めることができる。特定の活性化基に含まれるのは、カルボニルジイミダゾール、塩化スルホニル、アリールハロゲン化合物、スルホスクシンイミジルエステル、ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステルなどである。該N-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)基は、タンパク質、又はアミノ末端ポリエチレングリコールなどのアミン含有ポリマーの架橋に有用な基である。NHS-アミン反応の利点は、反応速度論的に優位な点であるが、そのゲル化の速度は、pH又は濃度によって調節され得る。該NHS-アミンの架橋反応は、副生成物としてN-ヒドロキシスクシンイミドが形成される。N-ヒドロキシスクシンイミドのスルホン化又はエトキシ化の形態は、水への溶解度が比較的増大され、従って、これらは体内からの迅速に排除される。スクシンイミド環上のスルホン酸塩は、一級アミンを有するNHS基の反応性に影響しない。NHS-アミンの架橋反応は水性溶液中、かつ緩衝液、例えば、リン酸緩衝液(pH5.0〜7.5)、トリエタノールアミン緩衝液(pH7.5〜9.0)、若しくはホウ酸緩衝液(pH9.0〜12)、又は炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.0〜10.0)などの存在下で行うことができる。好ましくは、NHSベースの架橋剤及び官能性ポリマーの水性溶液は、NHS基が水と反応するために、架橋反応の直前に製造する。低いpH(pH4〜7)でこれらの溶液を保持することによって、こうした基の反応速度を遅らせることができる。
【0031】
いくつかの実施態様において、求核性及び求電子性の両方の前駆体が、架橋反応に使用されない限りは、各前駆体は、求核性官能基だけを、又は求電子性官能基だけを含む。従って、例えば、架橋剤が、アミンなどの求核性官能基を有する場合は、官能性ポリマーは、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの求電子性官能基を有することができる。一方、架橋剤が、スクシンイミドなどの求電子性官能基を有する場合は、官能性ポリマーは、アミン又はチオールなどの求核性官能基を有することができる。このように、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、又はアミン末端が二、又は多官能性のポリ(エチレングリコール)などの官能性ポリマーを使用することができる。
【0032】
ヒドロゲル前駆体上の腕は、架橋可能な官能基をポリマーの母核に繋ぐ、直鎖の化学基である。いくつかの実施態様は、3〜300本の腕を有する前駆体であり;例えば、4〜16、8〜100、又は少なくとも6本の腕のように、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。前駆体は、例えば、特許出願公表US20040086479、US20040131582、WO07005249、WO07001926、WO06031358、又はこれらの米国の等価物に記載のデンドリマーとし得る。また、デンドリマーは、例えば、米国特許公表US20040131582、US20040086479、並びにPCT出願WO06031388及びWO06031388に記載のように、多官能性前駆体として有用である。全てのこれらUS及びPCT出願は、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。デンドリマーは、高度に規則正しく整い、高い表面積対容積比を有し、かつ機能化が可能な多数の末端基を示す。いくつかのデンドリマーは、規則正しく整っており、つまり各腕が同一の構造を有している。いくつかのデンドリマーは、複数の連続して分枝した腕を有しており、つまりポリマーが少なくとも2本の腕に枝分かれしており、該各腕が少なくとも更に2本の腕に枝分かれしている。従って、デンドリマーは、低い多分散指数、低い粘性、並びに高い溶解性及び混和性を示す傾向にある。いくつかの実施態様は、比較的高い分子量のデンドリマーを、適当な官能基を前駆体上に有する、比較的低い分子量の多官能性前駆体とともに使用することに向けられる。他の実施態様は、求電子剤及び/又は求核剤で機能化された、デンドリマーの使用に向けられる。いくつかの実施態様において、該デンドリマーは、別の架橋用前駆体より比較的低い分子量(例えば、約半分未満、約1/3未満)の前駆体として機能し、例えば、デンドリマーは、約600〜約3000Daであり、多官能性前駆体は、約2000〜約5000Daである。いくつかの実施態様において、該前駆体は、例えば、PEGを含む、親水性のデンドリマーである。いくつかの実施態様において、各デンドリマーの腕、又は少なくとも半分の腕は、他の前駆体の官能基と反応するために、末端が官能基となっている。いくつかの実施態様において、少なくとも約10,000の分子量のデンドリマー前駆体が、該デンドリマーと架橋する小さな前駆体と反応し、該小さな前駆体は、約1000未満の分子量を有する。いくつかの実施態様において、該デンドリマーの少なくとも約90%の腕が反応して、ヒドロゲルへの結合を形成する。他の実施態様において、該デンドリマーの少なくとも25%の腕が反応して、自由な腕の可動性を増加させる。
【0033】
一実施態様は、3〜16個の求核性官能基の各々をもつ反応性前駆体種、及び2〜12個の求電子性官能基の各々をもつ反応性前駆体種を有する(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。
【0034】
(ヒドロゲルの形成)
概して、前駆体と、遅延架橋用の化学種を有する流動性の組成物とを組合せて、共有結合性の架橋材料を原位置で調製することができ、該材料は、適当な期間をかけて放出される治療薬を含む。概して、該架橋反応は、生理的条件下、水性溶液中で生じる。好ましくは、該架橋反応は、重合の熱を発しないか、又は重合の開始若しくは誘発に外部のエネルギー供給源を必要としない。一般に、光化学的開始は、例えば、眼への損害を回避するために避けられる。注入される材料の場合、その粘性を制御して、該材料が小口径のカテーテル又は針を通って導入されるようにする。眼の周囲に適用する材料の場合、カテーテル/針などを通って任意に送達され、更に、粘性を制御して、ゲルを形成するまで、前駆体を所定の位置に保持して、該前駆体が意図する使用部位から流出しないようにする。
【0035】
一般に、該ヒドロゲルは、24時間の生理溶液への曝露時に、形成時のヒドロゲルの重量と比べて、わずかに約0%〜約10%、又は〜約50%増加しているヒドロゲルの重量によって測定されるように、低膨潤である。膨潤を低減させるための一実施態様は、架橋の数を増加させることであるが、架橋は、剛性又は脆性を増大し得ることに配慮する。別の実施態様は、架橋間の平均鎖長を減少させることである。別の実施態様は、下記に説明されるように、多数の腕を有する前駆体を使用することである。
膨潤を低減させるための別の実施態様は、より膨潤しない傾向がある、より低親水性材料を用いて、親水度を制御することであり;例えば、PEOなどの高親水性の材料と、PPOなどのあまり親水性ではない材料とを、又はアルキルなどの疎水性基さえも、組合わすことができる。
【0036】
膨潤を低減させるための別の実施態様は、架橋時に高度な溶媒和を有するが、その後、溶媒和されなくなり、かつ効果的に収縮する溶媒和の半径を有する前駆体を選択することであり、すなわち、架橋時に該前駆体は、広がっているが、後に収縮する。pH、温度、固体濃度、及び溶媒環境の変化が、そのような変化を引起こし得る;更に、分枝の数の増加(他の因子は、有効に一定を保たれる。)も、この効果を有する傾向にある。腕の数は、架橋前にそれらが広がるのに、立体的に互いを妨げると考えられるが、これらの立体効果は、重合後、他の因子によって相殺される。いくつかの実施態様において、前駆体は、こうした効果を達成するために、架橋又は他の反応の前に、複数の同様の電荷を有し、例えば、負の電荷を有する複数の官能基、若しくはそれぞれ正の電荷を有する複数の腕、又は同様の電荷の官能基を有するそれぞれの腕などである。
【0037】
本明細書中に記載されるヒドロゲルには、成膜後、ごくわずかしか膨潤しないヒドロゲルを含むことができる。そのような、医療用の低膨潤性ヒドロゲルは、重合時の重量が、生理溶液への曝露時で、例えば、約50重量%、約10重量%、約5重量%、約0重量%以下増加する、又は例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%以上収縮(重量及び容積が減少)し得るものである。これらの明言された範囲が本明細書に開示されていることに関して、全ての範囲及び値が範囲内であるかどうかは、当業者には容易に理解されるだろう。特に明記しない限り、ヒドロゲルの膨潤は、架橋が有効に完了する場合のヒドロゲルの形成時間と、インビトロにて、制約を受けない状態で24時間、生理溶液に置かれた後の時間(この時点で、当然に平衡膨潤状態に達したと仮定し得る。)との間の容積(又は重量)の変化に関連する。ほとんどの実施態様について、架橋は、わずか約50分以内で有効に完了させて、概して、初期重量は、形成後約15分で、初期形成の重量として表すことができるようにする。従って、次の式を使用する:膨潤%=[(24時間時の重量-初期形成時の重量)/ 初期形成時の重量]*100。24時間かけて実質的に分解するヒドロゲルの場合は、24時間時の重量の代わりに、例えば、連続測定を用いて測定される、最大重量を使用することができる。該ヒドロゲルの重量は、ヒドロゲルの溶液の重量を含む。制約を受ける場所で形成されるヒドロゲルが、必ずしも低膨潤性ヒドロゲルであるというわけではない。例えば、体内で作り出される膨潤可能なヒドロゲルは、その環境によって膨潤に制約がかかり得るが、それでも、制約を受けない、及び/又は制約に反して力が働く場合、その膨潤の測定からも明らかなように、高度に膨潤可能なヒドロゲルである。
【0038】
一般に、反応速度は、外部開始剤又は連鎖移動剤が必要である場合を除き、特定の官能基への光の照射によって制御され、この場合、開始剤を誘発すること、又は移動剤を操作することが、制御方法となり得る。いくつかの実施態様において、前駆体の分子量を利用して、反応時間に作用する。低分子量の前駆体は、反応が加速する傾向があるため、いくつかの実施態様では、少なくとも1つの前駆体が、少なくとも5,000〜50,000又は150,000ダルトンの分子量を有する。好ましくは、架橋反応は、約2〜約10、又は〜約30分以内で、ゲル化が生じる(例えば、少なくとも120秒、又は180〜600秒のように、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。ゲル化の時間は、前駆体を平面に適用し、該平面を約60度の角度(すなわち、垂直に近い急角度)にしたとき、該表面を実質的に流れなくなった時間を計って測定される。
【0039】
得られる生体適合性架橋ポリマーの架橋密度は、架橋剤及び官能性ポリマーの総分子量、並びに1分子あたり有効な官能基の数によって制御される。500などの架橋間の低分子量は、10,000などの高分子量と比べ、非常に高い架橋密度を与えるであろう。また、該架橋密度は、架橋剤及び官能性ポリマー溶液の全体の固体パーセントで制御される。該固体パーセントが増加するほど、加水分解によって不活性化する前に、求電子性官能基と求核性官能基とが組合わさる確立が増加する。架橋密度を制御する更に別の方法は、求核性官能基対求電子性官能基の化学量論的調節による。1対1の比率は、最も高い架橋密度をもたらす。一般に、架橋間の距離が長い前駆体は、より柔らかく、より柔軟で、かつより弾性がある。従って、ポリエチレングリコールなどの水溶性部分の長さを増加すると、弾性が強化される傾向があり、所望の物理特性を作り出す。従って、特定の実施態様は、3,000〜100,000、又は例えば、10,000〜35,000の範囲の分子量の水溶性部分を有する前駆体に向けられる。
該ヒドロゲルの固体パーセントは、機械的特性及び生体適合性に影響を与え、かつ競合する要件間のバランスを反映し得る。一般に、例えば、約2.5%〜約25%の比較的低い固形物含有量は、最も有用である傾向があり、例えば、約2.5%〜約10%、約5%〜約15%、又は約15%未満を含む。
【0040】
(眼の解剖学)
哺乳類の眼の構造は、3つの主要な層又は膜:線維膜、血管膜、及び神経膜に分けることができる。眼球線維膜としても公知の該線維膜は、角膜及び強膜からなる眼球の外層である。該強膜は、眼の支持壁であり、かつ眼にその白色の大部分を与える。該強膜は、角膜(眼の透明な前部)から眼の後側の視神経まで伸びている。該強膜は、繊維性、弾性、かつ保護性の組織であり、しっかりと詰まったコラーゲン原線維からなり、約70%の水を含有している。
該線維膜を覆っているのが、結膜である。該結膜は、強膜(眼の白色部分)を覆い、かつ眼瞼内部の内側を覆う膜である。該結膜は、涙腺よりも少量の涙ではあるが、粘液及び涙を産生して眼を潤すのを助ける。典型的に、該結膜は、下記の3つの部分に分けられる:(a) 眼瞼(palpebral)又は眼瞼(tarsal)結膜は、眼瞼の内側を覆っている結膜であり;該眼瞼結膜は、上円蓋及び下円蓋で折り返して、眼球結膜となる、(b) 結膜円蓋:眼瞼の内部及び眼球が接する結膜である、(c)眼球(bulbar)及び眼球(ocular)結膜:眼球を覆っている結膜であり、強膜を覆う。結膜のこの領域は、しっかりと結合し、かつ眼球運動とともに動く。
【0041】
該結膜は、強膜を、有効に囲み、覆い、かつ接着している。それは、細胞性で、かつ結合組織を有し、幾分弾性があり、かつ取り除き、細片化され、又は、下に降ろして強膜の表面領域を曝すことができる。下記に説明されるように、該結膜を取除くことができる、又は経強膜の薬剤送達スキームとともに使用することができる。
眼球血管膜としても公知の血管膜は、中層であり、虹彩、毛様体、及び脈絡膜を含む。該脈絡膜は血管を含み、網膜細胞に酸素を供給し、呼吸による老廃物を取除く。
【0042】
眼神経膜(tunica nervosa oculi)としても公知の神経膜は、網膜を含む内部知覚器である。該網膜は、感光性の杆体及び錐体、並びに関連する神経を含む。該網膜は、比較的滑らかな(しかし湾曲した)層である。該網膜は、異なる二つの部位;中心窩及び視神経乳頭を有する。該中心窩は、水晶体の正反対側の網膜のくぼみであり、錐体細胞が高密度に詰まっている。該中心窩は、黄斑部に位置する。該中心窩は、ヒトの色覚に広く関与し、読込みに必要な、高度な鋭敏さを与える。該視神経乳頭は、網膜上の一部であり、ここで、視神経は、網膜を貫通して、内側の神経細胞と繋がっている。
また、哺乳類の眼は、2つの主要部分:前部及び後部に分けることができる。該前部は、前及び後眼房からなる。該前眼房は、虹彩の前面、及び角膜内皮の後部に位置し、かつ瞳孔、虹彩、毛様体、及び水性の体液を含む。該後眼房は、虹彩の後部及び硝子体の表面の前部に位置し、ここで、水性環境中の前部及び後部の嚢間に、水晶体及び毛様体小帯が位置する。
【0043】
該角膜及び水晶体は、光線を収束して、網膜に焦点を合わせるのを助ける。該水晶体は、虹彩の後方にあり、凸面をしており、弾性のある円形であり、第2の体液を通過して、網膜上に光を集束させる。該水晶体は、毛様小帯として公知の懸垂靭帯の環を介して毛様体に接着している。毛様体筋は弛緩して、それと水晶体とを繋げている線維を伸ばし、これにより、水晶体が平板化し、遠くの対象の焦点を合わせる。該毛様体筋が収縮する場合、線維の張力が減少し、水晶体の裏は、より凸面かつ円形となる。水晶体と第1の体液との間の虹彩は、血管結合組織及び筋線維の色素の環である。光は、まず、該虹彩の中央、瞳孔を通過しなければならない。瞳孔の大きさは、輪状筋及び放射状筋によって活発に調節され、眼に入射する光のレベルを、比較的一定であるように維持する。
眼に入った光は、角膜を通過し、2つの房水の1つ目に入る。眼の全屈折力のおよそ2/3が、固定の曲率を有する角膜によるものである。該房水は、角膜と眼の水晶体とを繋ぐ透明な物質であり、角膜の凸形状の維持を助け(水晶体での光の収束に必要である。)、かつ角膜内皮に栄養分を与える。
【0044】
該後部は、水晶体後方、及び網膜の前に位置している。該後部は、眼のおよそ2/3を表し、前部硝子体膜、及びその後方の全ての構造物:硝子体液、網膜、c、及び視神経を含む。水晶体の反対側は、第2の体液、硝子体液であり、全ての面で、水晶体、毛様体、懸垂靭帯、及び網膜に接している。それは、屈折なしで光を通過させ、眼の形状を維持するのを助け、かつ繊細な水晶体を浮遊させている。
【0045】
図1は、強膜12、虹彩14、瞳孔16、及び眼瞼18を有する眼10を示す。図2は、部分的な断面図を伴う眼10の透視図を示し、水晶体20、下斜筋21、下直筋23、及び視神経25を示す。図3は、眼10の断面図であり、角膜22を示し、該角膜は、光学的に透明で、虹彩14及び水晶体20に光を通過させる。前眼房24が、角膜の下にあり、後眼房26が、虹彩14及び水晶体20の間に位置する。毛様体28は、水晶体20と繋がっている。図3は、結膜の一部分30を示し、これは強膜12上を覆っている。硝子体32は、同位置にある硝子体管34とともに、ゼリー状の硝子体液を含む。中心窩36は、黄斑に位置し、網膜38は、脈絡膜37の上を覆っている。小帯隙42を示す。図4は、眼10の部分図を示し、強膜12上の結膜の一部30を示し、同位置から新たに独立した上直筋44の腱を含む。
図5は、眼10の又はその付近の特定の送達位置を示す。一領域は、眼10の表面上の点で示している領域60の局所である。別の領域は、番号62で示されるような硝子体内領域、又は番号64で示されるような経強膜的な領域である。使用において、例えば、注射器66、カテーテル(示さず)、又は他の機器を使用して、針68を任意に通過させて、70のように硝子体内的に、又は72のように眼周囲的に、のいずれかで、ヒドロゲル又はヒドロゲル前駆体を、眼の中に送達する。薬剤又は他の治療薬が、眼内の部位に放出される。眼の奥の疾患の場合、薬剤は、眼周囲又は硝子体内の経路を経由して、標的付近の領域74に向かい、ここで、それらは生物特性で作用し治療を実現する。
【0046】
(眼の病状)
本明細書中に記載の材料を使用して、薬剤又は他の治療薬(例えば、造影剤若しくはマーカーなど)を、眼又は近くの組織に送達することができる。病状のいくつかは、眼の奥の疾患である。用語、眼の奥の疾患は、当業者には理解されるが、一般に、脈管構造、及び網膜、黄斑、又は脈絡膜の統合性に影響を与える、後部の眼疾患を意味し、視力障害、視界の消失(loss of sight)、又は失明を引起こす。該後部の病状は、年齢、外傷、外科的処置、及び遺伝性の因子に起因する。いくつかの眼の奥の疾患は;加齢黄斑変性(AMD)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎、及び糖尿病網膜症である。いくつかの眼の奥の疾患は、黄斑変性症又は糖尿病網膜症などの、望ましくない、血管新生又は血管増殖に起因する。これら及び他の症状のための薬剤治療の選択肢を、本明細書の別の場所に更に記載する。
【0047】
(原位置でのヒドロゲル形成のための前駆体の適用)
適用の一方法は、前駆体と他の材料(例えば、治療薬、増粘化剤(viscosifying agent)、促進剤、開始剤など)との混合物を、針、カニューレ、カテーテル、又は中空ワイヤーを通して、眼の中又は近隣部位に適用することである。該混合物を、例えば、手動制御の注射器又は機械制御の注射器(例えば、シリンジポンプ)を使用して送達できる。或いは、二重式注射器(dual syringe)、若しくは多筒式注射器(multiple-barreled syringe)、又はマルチルーメン系(multi-lumen system)を使用して、該部位で又は付近で、前駆体を混合することができる。
試験を行った1つの系は、薬剤を希釈剤に混合すること、かつ200マイクロリッターの薬剤/希釈剤を1mlの注射器に吸引することを含む。トリリジンからなる、約66mgの前駆体粉末を、別の1mlの注射器に注入した。2つのシリンジを、メス-メスのルアー継手を介して取り付け、該溶液を、乾燥前駆体が完全に溶解するまで、注射器間で前後に動かした。多腕の求電子性前駆体の水200μl中の溶液を、第3の1mlの注射器に吸入した。別のメス-メスルアー継手を使用して、再構成したPEG/薬剤の溶液と求電子性前駆体とを混合した。該溶液を、少なくとも約10回、前後に迅速に注入して(inject)、良好な混合を行うようにした。該溶液を1の注射器に吸入し、次いで、更なる使用に利用した。
【0048】
薬剤送達用の貯蔵所を形成することができる部位に含まれるのは、前眼房、硝子体、強膜上、後部テノン下の空間(下円蓋)、結膜下、角膜表面、又は特に結膜である。
眼の奥の疾患は、例えば、局所、全身、眼内、及び結膜下の送達経路を利用して、薬剤で治療することができる。全身及び局所的な薬剤送達様式は、後部の疾患を治療するレベルの治療薬を送達するのに、不十分である。これらの薬剤送達方法は、眼内及び全身系の本来の解剖学的障壁によって、拡散及び薬剤の希釈という問題に直面し、重大な患者の副作用(1日複数回の投与のため)、乏しい生体利用効率、及びコンプライアンス問題を引起こす。結膜下、眼球後方、又はテノン下の空間を使用する、眼部のヒドロゲルインプラントの特定の薬剤送達は、局所及び全身的な経路と比較して、より安全で、かつ強化された網膜への薬剤送達系を提供する可能性を有する。
【0049】
一般に、眼内の薬剤送達インプラントの設置のための送達部位は、治療を要する疾患、及び薬物治療の種類に依存する。例えば;デキサメタゾン及びトリアムシノロンアセトニドのようなステロイドと、ヒドロゲル前駆体とを混合して、徐放性の薬剤インプラントを形成することができる。次いで、液体ヒドロゲルを、テノン嚢下に原位置で注入して、ここで、3〜4ヶ月の期間をかけて、一定の又は調節可能な放出特性の薬剤を送達できる。診療所で、又は局所麻酔下での白内障手術後に、低侵襲的治療を行い、慢性的な眼の奥の疾患を治療することができる。
【0050】
いくつかの実施態様において、開創器80を使用して、眼瞼82を後方に固定し、使用者は、下/鼻の縁から約5〜6mmの結膜に小さなボタン穴84を作り出し(図6A)、かつ該結膜を切開し、テノン嚢を通過して強膜を剥き出す。次に、23ゲージのブラントカニューレ(blunt cannula)86(例えば、長さ15mm)を、開口部を通して挿入し、かつ該液状の薬剤インプラントを、強膜の表面上に注入する(図6B)。次いで、該カニューレを取除き、かつ焼灼装置88を用いて、接合(conjunctive)を閉じる(図6C)。
三次元の統合性を有するインプラントの1つの利点は、細胞浸潤に抵抗する傾向があり、局所的に投与された薬剤が、貪食され、かつ早々に該部位から除去されるのを防ぐことができることである。その代わりに、送達されるまで、それは所定の位置にとどまる。対照として、微小粒子、リポソーム、又はペグ化タンパク質は、生物学的効果を発揮するより前に、網内系によって、体内から迅速に除去される傾向がある。
【0051】
(硝子体内の薬剤送達インプラント)
後部の眼疾患において、治療量の薬剤の網膜への送達は、課題が残っている。抗VEGF剤の硝子体腔への硝子体内注射は、黄斑変性症のような、慢性的な加齢に関わる疾患を抑え、場合によっては、逆転させるという見込みを示したが、これらの技術及び方法は、危険及び副作用を伴わないわけではない。硝子体腔への治療薬の硝子体内投与は、白内障、眼内炎、及び網膜剥離を引起こす恐れがある。この形態の治療は、12ヶ月の期間、毎月抗VEGF剤の眼内注入を受けることを、患者に要求し、このため、感染症、硝子体の芯(wick)及び網膜の剥離の危険が増大する。原位置でのヒドロゲルの生分解性インプラントに向けられた実施態様は、眼の奥の疾患の効果的な代替治療を提供し、かつ硝子体内注射の反復に関連する共通の副作用を低減させることが期待される。硝子体内の生分解性薬剤送達インプラント系の実施態様を、下記に要約する。
【0052】
図7Aにおいて、眼10上の切り口90を可視化するために、固定した拡大鏡94の描写で示されるように、ヒドロゲルのインプラントは、網膜下用カニューレ(sub-retinal cannula)92を使用して、毛様体扁平部の切り口90を通過して、縁の後方約2.5mmに硝子体内に注入され、該切り口は、必要に応じて、結膜の切断、又は除去に続いて作られる。次いで、25、27又は30ゲージの網膜下用カニューレ94(又は他の適切なカニューレ)を、切り口90を通して挿入し、かつ所望の標的部位、例えば、96、98、100の少なくとも1部位に、眼内で位置を合わせ、ここに流動性の前駆体を導入して、ヒドロゲルを原位置で形成する。次いで、該前駆体は、所望の標的部位に接着して、吸収性のゲル102、104、及び/又は106を形成する。
他の節でより詳細に記載するように、原位置のヒドロゲル薬剤送達インプラントの薬剤貯蔵所は、例えば、約1〜約3ヶ月の範囲で、制御された長期の薬剤放出のために設計することができ;かつ例えば、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、及び嚢胞様黄斑を含む、後部の疾患の治療に、任意に向けることができる。該デバイスは、様々な症状に対して、薬剤最大積載量の様々な種類の治療薬を運ぶことができ、該治療薬のいくつかに含まれるのは、例えば、ステロイド、抗生物質、NSAIDS及び/又は抗血管新生薬、並びにそれらの組み合わせである。
【0053】
原位置でのインプラントの実施態様は、慢性的な眼の奥の疾患の治療に有効な治療薬の効率、及び薬物動態を改良することができ、かついくつかの方法で、患者の副作用を最小化することができる。第1に、該インプラントは、局所又は全身的な経路を回避して、特定の疾患部位で、硝子体腔に配置することができ、かつそれによって、薬剤の生物学的利用率を増大させる。第2に、該インプラントは、延長された期間を通して、特定の標的組織部位で局所的な治療濃度を維持する。第3に、硝子体内注射の数は、12ヶ月の治療計画を通して、実質的に減少され、それによって、患者の感染症、網膜剥離、及び硝子体中の薬剤が、中央硝子体又は黄斑の部分から眼の下方の壁に向かって移動するまで起こり得る、一過性の視力障害(硝子体内を白い小片が浮遊する。)の危険が低減される。図8に示すように、従来法で注入される薬剤は、硝子体内に塊120を形成し、かつ分散するまで、硝子体液と置き換わる。典型的には、硝子体液は粘性が高いので、分散にはかなりの時間を要する。従って、該塊は、特に、例えば、患者が立ち上がる、又は速く頭を回すなど、突然の加速に応じて、眼の周りを動く場合に、視覚を妨げる。
【0054】
(経強膜的薬剤送達)
該ヒドロゲルを、結膜が存在する、又は存在なしに、強膜組織上で形成することができる。該ヒドロゲルは、強膜又は強膜付近の他の組織と接着して、対象とする組織を通して、薬剤の拡散を促進する、又は必要に応じて、治療薬を向かわせるための安定した貯蔵所を提供することができる。いくつかの実施態様において、眼の結膜を、除去、浸軟、切断、又は細片化せずに、該ヒドロゲルの埋め込み、又は注射のために、組織を強膜から持ち上げて、強膜の特定領域に接近することができる。ヒドロゲルは、原位置で形成され、表面領域に層を形成し、かつ接着する。該結膜がまだ存在するか、又は接触するのに十分な機械的完全性を維持する場合、該結膜を、該組織と接触させてもよい。いくつかの実施態様において、該ヒドロゲルは、少なくとも50%、75%、80%、90%、又は99% w/wの水溶性の前駆体(水若しくは溶媒、又はヒドロゲル成分の重量を無視するために、親水性前駆体の重量を測定し、全前駆体の重量で割って算出する。)を含み、該ヒドロゲルの非接着特性を強化する。いくつかの実施態様において、そのような親水性前駆体は、実質的に、PEOsを含む。いくつかの実施態様において、組織接着を低減する薬剤は、細胞有糸分裂、細胞遊走、又はマクロファージ遊走若しくは活性化によって媒介され、該薬剤に含まれるのは、例えば、抗炎症剤、細胞分裂抑制剤、抗生物質、PACLITAXEL、MITOMYCIN、又はタキソールである。
【0055】
他の実施態様において、実質的に、強膜から結膜を取り除かない。該結膜は、強膜の大部分又は全てを覆う、重要な組織の塊である。該結膜は、針又はカテーテル又は外套針を、刺す又は貫通させて、強膜と結膜との間の空間に、前駆体を導入することができる。いくつかの場合において、該結膜を刺して、天然の、潜在的な組織間の空間まで、接近し、前駆体で満たす。別の場合において、外套針、開大器、又は同様のもので、強膜と結膜との間の接着を破壊して、潜在的な又は実際の空間を機械的に作り出して、前駆体を導入できるようにする。該結膜は、そのような天然の又は作り出した空間に、有用な量の前駆体を導入する、又は押し込むことができるのに、十分な弾性を有している。同様に、硝子体内のヒドロゲル形成の場合には、比較的大きなカラムも使用できる。従って、いくつかの場合において、該量は、約0.25〜約10mlである(例えば、約1ml又は0.5ml〜約1.5mlなど、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。
【0056】
更に、眼内又は眼周囲に存在するヒドロゲルの除去は、該インプラントが、硝子体腔に導入されている場合は、硝子体切除用カッターを用いて、又は該インプラントが、強膜表面、若しくは洗浄/吸引のハンドピース上にある場合は、手動のI/A注射器、及びカニューレを用いて容易に達成される。これは、いくつかの従来の非吸収性インプラントの除去に必要とされる、主要な外科的手技とは対照的である。
いくつかの態様において、該ヒドロゲルの原位置での形成は、該ヒドロゲルを所定の位置で、ゲル化又は架橋させて、針又はカニューレを取り去るときに、針の管を通って逆流しないようにし、かつ切り口部を通過して外眼に広がらないようにする。このように、形成され、形状が安定したヒドロゲルは、有効に薬剤を送達でき、かつ優位には、適切に制御された、サイズ、形状、及び表面積を有することができる。すでに形成された材料の代わりに、可溶性又は流動性の前駆体を使用することができるので、小口径の針を使用して、材料を注入することができる。対照的に、導入時に、迅速かつ堅固に架橋されない別の材料では、切り口から逆流する傾向がある。更に、共有結合性の架橋を行わない材料は、材料が継続的に再編成し、かつ材料の一部又は全部が流れ出るため、塑性変性又は浸出を起こしやすい。
【0057】
該強膜を横断する送達は、当該分野において、重要な進歩であり、本明細書中に開示される該ヒドロゲル及び他の材料によって可能となる。経強膜の薬剤送達は、強膜組織を横断する薬剤の拡散が未知であるので、従来、検討されなかった。薬剤の実際の拡散が問題となるだけではなく、潜在的な拡散の速度は、他の比較的より浸透性の高いの組織、特に涙又は他の流体産物に応じて拡散するという、競合する薬剤の傾向に対して、釣合いを持たせなければならない。更に、例えば、涙、リンパ液、浮腫、又は異物反応の流れなど、刺激に応答する流体産物もまた、潜在的な因子である。しかし、生体適合性材料及び、様々な利用可能な特徴、例えば、柔軟、生体適合性の分解生成物、周囲組織との適合性、強膜への接着、結膜上、結膜中又は結膜下の適用性、架橋、非刺激性の形状及び成膜技術を使用して、適当な材料にすることができる。
【0058】
(接着)
原位置でのヒドロゲルによる治療において、接着性は、重要な役割を果たすことができる。例えば、強膜組織に接着したヒドロゲルは、該強膜と接触する、良好な表面積を有し、薬剤及び他の試薬の強膜への拡散を促進することができる。対照的に、接着できないと、拡散障壁が生じるか、又は該薬剤貯蔵所と眼との間に液体の侵入を許すため、薬剤が洗い流されてしまう。一方、眼周囲のヒドロゲルが周囲の組織に接着する、又は組織を成長させてヒドロゲルに接着する場合、薬剤の送達は損なわれ得る。従って、強膜(ヒドロゲルの前方表面)にしっかりと接着するが、反対側の表面(被膜の表面の後方)の組織、又は表面(より複雑な形状について)には接着しない、ヒドロゲル貯蔵所が有用であろう。原位置で調製される材料は、ゲル化及び/又は架橋の時間中、該材料の他の表面に組織がない、又は実質的に、接触する組織がないような、強膜上の原位置で物質を形成させることによって、これらの対立する要求を調和することができる。すでに説明したように、いくつかの実施態様は、例えば、強膜及び/又は結膜などの特定部位に接着するヒドロゲルを提供することに関する。
【0059】
ヒドロゲルの組織への接着試験は、特に明記しない限り、ウサギの角膜に適用し、ウサギの自由な瞬きにも関わらず、無傷のウサギの角膜に処置した場合、ヒドロゲルは、固定化され、かつずれないことを示した。対照的に、非接着性の材料は、眼の外に追い出されるか、又は眼の端に追いやられるだろう。
ヒドロゲルを形成することのいくつかの実施態様は、前駆体を混合することを含み、該前駆体は、例えば、患者の組織上の表面に適用後、実質的に、架橋して、生分解性のヒドロゲル貯蔵所を形成する。本発明を特定の操作理論に制限することなく、組織表面と接触後、架橋する反応性の前駆体種は、三次元構造を形成し、被覆された組織と機械的に連結するとされる。この連結は、接着、密接な接触、及び組織の被覆領域の、実質的に連続した被覆に寄与する。更に、強い求電子性官能基を用いる形成は、組織上で求核性基と反応させ、共有結合性の架橋を形成する傾向があるが、但し、求電子剤が適当な濃度で存在し、かつ求核剤が適当なpHで存在する。
【0060】
対照的に、従来の材料は、眼の表面には接着しない傾向がある。例えば、ヒドロゲル製の皮目(lenticel)は、接着しない。例えば、フィブリン糊は、それが眼の組織を幾分貼り付けるという事実は、認められるが、概して、本明細書中の用語としては、接着しない。更に、多くの材料について、それらが、眼の組織、又は特定の眼の組織を接着するかどうかは、一般には知られていない。
接着の別の態様は、該インプラントが対象とする使用部位から、移動するのを防ぐことである。これは、患者の快適性を増大させ、刺激を低減させ、かつ該インプラント内の治療薬に影響を与える、涙を流す又は体液の流れという生体反応を低減させる。また、該インプラントが対象とする部位に作用し続けるという確信とともに、例えば、特定の組織間又は組織上に、該インプラントを正確に配置することができる。
接着は、薬剤送達に有用である。いくつかの実施態様において、例えば、図5のような、特定の領域を接着の標的をする。例えば、薬剤を伴う材料を、強膜及び/又は結膜に接着させることができる。又は、該材料を、眼の内部の表面、眼の前方部分の表面に接着させることができる。いくつかの場合において、該材料は、眼の内部の表面、かつ黄斑の1〜10mm以内に接着することが目標とされる(例えば、10、9、8、7、6、5、4mm未満、又は少なくとも1〜10mm、又は2mm、約25mm以下の距離など、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。別法として、又は例として、該材料の配置に使用することができる、そのような標的は、眼の内側へ向かう位置であり、ここで、該材料が、網膜まで眼を通過する光路に入り込まない。
【0061】
(送達のための薬剤又は他の治療薬)
該ヒドロゲルを使用して、ステロイド、非ステロイド性の抗炎症剤(NSAIDS)、眼圧下降剤、抗生物質、又はその他を含む、各種の薬剤の種類を送達することができる。該ヒドロゲルを使用して、薬剤及び治療薬、例えば、抗炎症剤(例えば、ジクロフェナック)、鎮痛剤(例えば、ブピバカイン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、抗生物質(例えば、シプロフロキサシン)、細胞周期阻害剤(例えば、シプロフロキサシン)、タンパク質(例えば、インスリン)を送達することができる。該ヒドロゲルからの放出速度は、薬剤及びヒドロゲルの特性によって決まり、該特性は、薬剤の大きさ、相対的疎水性、ヒドロゲルの密度、ヒドロゲルの固体含有量、及び例えば、微小粒子などの他の薬剤送達モチーフを含む因子を有する。
【0062】
該ヒドロゲルの前駆体を使用して、ステロイド、NSAIDS(表1参照)、眼圧下降剤、抗生物質、鎮痛剤、阻害剤又は血管内皮増殖因子(VEGF)、化学療法薬、抗ウイルス薬などを含む薬剤の種類を送達することができる。該薬剤、それ自身は、小分子、タンパク質、RNA断片、タンパク質、グリコサミノグリカン、炭水化物、核酸、無機及び有機生物活性化合物とし得る。ここで、特定の生物活性化合物に含まれるのは、限定はされないが:酵素、抗生物質、抗悪性腫瘍薬、局所麻酔薬、ホルモン、抗血管新生薬、増殖因子、抗体、神経伝達物質、精神活性剤、抗癌薬、化学療法薬、生殖器に作用する薬剤、遺伝子、及びオリゴヌクレオチド又は他の立体構造体である。低水溶性の薬剤は、例えば、粒子として、又は懸濁液として組み込むことができる。高溶解度の薬剤は、微小粒子又はリポソーム内に保持することができる。微小粒子は、例えば、PLGA又は脂肪酸から形成することができる。
【表1】
【0063】
いくつかの実施態様において、水性溶液を調製する前、又は官能性ポリマーの無菌製造の間に、該治療薬と該前駆体とを混合する。次いで、この混合物と該前駆体とを混合して、架橋材料を作製し、該架橋材料には、生物活性物質が捕捉される。小分子の疎水性薬剤の放出において、PLURONIC、TETRONICS又はTWEEN界面活性剤のような不活性ポリマーから作製される官能性ポリマーが好ましい。
いくつかの実施態様において、架橋剤及び架橋可能なポリマーが反応して、架橋ポリマー網又はゲルを作製する場合、該治療薬又は試薬は、分離相に存在している。この相分離は、NHSエステルとアミノ基との間の反応など、化学的架橋反応における生物活性物質の関与を防ぐ。「分離相」が、油(水中油乳濁液)、生分解性の媒体などである場合に、この分離相はまた、架橋物質又はゲルからの活性試薬の放出速度を調節するのに役立つ。 活性試薬が存在し得る生分解性の媒体に含まれるのは、微小粒子、微小球、微小ビーズ、マイクロペレット(micropellet)などの封入媒体であり、ここで、該活性試薬は、生侵食性(bioerodable)又は生分解性のポリマーに封入され、該ポリマーは、例えば、下記のポリマー及び共重合体:ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)-コ-ポリ(グリコール酸)、ポリ(オルト炭酸)、ポリ(カプロラクトン)、架橋した生分解性のヒドロゲル、フィブリン糊又はフィブリン組織接着剤などの架橋生分解性のヒドロゲル網、分子の収容及び捕捉、シクロデキストリン類似体、モレキュラーシーブなどである。ポリマー及び(ポリ(ラクトン)とポリ(ヒドロキシ酸)との共重合体から製造される微小球は、生分解性の封入媒体として、特に好ましい。
【0064】
本明細書中に記載される架橋材料の薬剤送達媒体としての使用において、活性試薬又は封入された活性試薬は、架橋剤成分又は官能性ポリマー溶液成分中に、溶液又は懸濁した形態で存在し得る。該架橋剤又は該官能性ポリマーのどちらかに存在する求核性成分が、反応基を持たないため、好ましい媒体となる。該官能性ポリマーを生物活性試薬とともに、封入媒体を用いて、又は用いないで、同量の架橋剤及び水性緩衝液とともに、ホスト(host)に投与する。架橋剤と該官能性ポリマー溶液との間の化学反応は、容易に起こり、架橋ゲルを形成し、活性試薬をホストに放出する貯蔵所として作用する。そのような薬剤送達方法は、活性試薬の全身及び局所投与の両方に使用を見出す。
【0065】
これらの系を使用して、様々な薬剤又は治療薬を、送達することができる。試薬又は薬剤の系統の一覧、及び該薬剤の適応症の例を提供する。また、該薬剤は、示された症状を治療する、又は示された症状を治療するための組成物を製造する方法の一部として使用される。例えば、AZOPT(ブリンゾラミド眼科用懸濁剤(opthalmic suspension))を使用して、高眼圧症又は開放隅角緑内障の患者の眼圧の上昇を治療することができる。ポビドンヨード眼科用液剤中のBETADINEを使用して、眼周囲部の消毒(prepping)及び眼表面を洗浄することができる。BETOPTIC(ベタキソロールHCl)を、眼内の圧力の低下、又は慢性開放隅角緑内障、及び/又は高眼圧症に使用することができる。CILOXAN(シプロフロキサシンHCl眼科用液剤)を使用して、微生物の感受性系統に起因する感染症を治療することができる。NATACYN(ナタマイシン眼科用懸濁剤)を使用して、真菌性の眼瞼炎、結膜炎、及び角膜炎を治療することができる。NEVANAC(ネパフェナク眼科用懸濁剤)を使用して、白内障手術に関連する疼痛及び炎症を治療することができる。TRAVATAN(トラボプロスト眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障、又は高眼圧症による眼圧の上昇を低減させることができる。FML FORTE(フルオロメトロン眼科用懸濁剤)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部の、副腎皮質ステロイド応答性の炎症を治療することができる。LUMIGAN(ビマトプロスト眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障、又は高眼圧症による眼圧の上昇を低減させることができる。PRED FORTE(酢酸プレドニゾロン)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部のステロイド応答性の炎症を治療することができる。PROPINE(塩酸ジピベフリン)を使用して、慢性開放隅角緑内障の眼圧を制御することができる。RESTASIS(シクロスポリン眼科用乳剤)を使用して、例えば、乾性角結膜炎と関連する眼の炎症を有する患者の、涙の産生を増加させることができる。ALREX(エタボン酸ロテプレドノール)を使用して、季節性アレルギー性結膜炎を一時的に軽減することができる。LOTEMAX(エタボン酸ロテプレドノール眼科用懸濁剤)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部の、ステロイド応答性の炎症を治療することができる。MACUGEN(ペガプタニブナトリウム注射剤)を使用して、血管新生(滲出型)加齢黄斑変性を治療することができる。OPTIVAR(塩酸アゼラスチン)を使用して、アレルギー性結膜炎と関連する眼のそう痒を治療することができる。XALATAN(ラタノプロスト眼科用液剤)を使用して、例えば、開放隅角緑内障又は高眼圧症の患者の眼圧の上昇を低減することができる。BETIMOL(チモロール眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障又は高眼圧症の患者の眼圧の上昇を低減することができる。
【0066】
前述の薬剤送達のための架橋組成物の使用において、架橋可能なポリマー、架橋剤、及びホストに導入される投与試薬の量は、特定の薬剤、及び治療される症状に必然的に応じるであろう。任意の従来の方法、例えば、注射器、カニューレ、外套針、カテーテルなどによって、投与することができる。
本発明の特定の実施態様は、ヒドロゲルを用いて比較的低分子量の治療種の放出を制御するための、組成物及び方法を提供することによって達成される。まず、治療薬を、1つ以上の比較的疎水性の速度調節剤とともに、分散又は溶解させて、混合物を形成する。該混合物を、粒子又は微小粒子状に形成することができ、次いで、これを、生体吸収性のヒドロゲルマトリックス内に捕捉して、制御された方法で水溶性の治療薬を放出する。別法として、該微小粒子は、ヒドロゲルの架橋の間、原位置で形成することができる。
【0067】
一方法において、重合可能なマクロマー又はモノマーから、第2の不混和相に重合可能な相を分散させることによって、ヒドロゲルの微小球を製造し、ここで、該重合可能な相は、少なくとも1つの、架橋を起こす重合を開始するのに必要な成分を含有し、かつ該不混和性のバルク相は、架橋を開始するのに必要な別の成分を、相間移動剤とともに含有する。水溶性の治療薬を含有する、予め形成した微小粒子を、該重合可能な相に分散させて、又は原位置で形成して、乳濁液を形成することができる。該乳濁液と不混和相との重合、及び架橋は、重合可能な相が適切な大きさの微小球に分散した後、制御された方法で開始され、このように、ヒドロゲルの微小球中に、微小粒子を捕捉する。可視化剤(visualization agent)を、例えば、微小球、微小粒子、及び/又は微小滴中に含むことができる。
本発明の実施態様は、複合性のヒドロゲルベースのマトリックス、及び捕捉された治療用化合物を有する微小球を形成するための、組成物及び方法を含む。一実施態様において、生物活性試薬が、疎水性(疎水性微小領域とも呼ばれる)を有する微小粒子に捕捉され、捕捉された試薬の漏れ出しを抑制する。いくつかの場合において、該複合性材料は、2相の分散を有し、どちらの相も吸収性であるが、混和しない。例えば、該連続相を、親水性のネットワーク(架橋された、又はされていないヒドロゲルなど)とし、一方、分散相を、疎水性(油、脂肪酸、ワックス、フッ化炭素、若しくは他の合成物、又は概して、本明細書中で、「油」又は「疎水性」相と呼ばれる、天然の水不混和性の相)とし得る。
【0068】
該油相は、薬剤を捕捉し、かつ障壁を与え、ヒドロゲル内への薬剤の分配を遅延させて放出する。該ヒドロゲル相は、リパーゼなどの酵素による消化、並びに天然の環状脂質及び界面活性剤による溶解から、順に該油を保護する。後者は、例えば、疎水性、分子量、立体構造、拡散抵抗などのために、ヒドロゲルへの限定的な浸透のみを有することが期待される。疎水性薬剤の場合、該ヒドロゲルマトリックスへの限定的な溶解性を有し、該薬剤の粒子形態はまた、放出速度調節剤としての機能を果たす。
インビボで投与される場合、疎水性微小領域は、それら自身で、分解され又は早急に除去され、これが、捕捉された試薬を含有する微小滴又は微小粒子を直接用いて、持続型の放出を達成するのを困難にさせる。該ゲルマトリックスは、疎水性微小領域を急速な排除から保護するが、該微小滴又は微小粒子の能力を損なうことなく、それらの内容物を徐々に放出する。例えば、ゲルマトリックス又は微小領域中に、可視化剤を含むことができる。
【0069】
一実施態様において、疎水性相と、タンパク質、ペプチド、又は他の水溶性の化学種などの水溶性分子化合物の水性溶液とのマイクロエマルションを製造する。該乳濁液は、「水中油」系(水が連続相である。)とは対照的に、「油中水」型(連続相として油を用いる。)の系である。薬剤送達の他の態様は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,632,457号;第6,379,373号;及び第6,514,534,号に見出され、これらのそれぞれは、参照により本明細書中に組込まれている。更に、自己の「生分解性ヒドロゲルからの薬剤送達制御のための組成物及び方法(Compositions And Methods For Controlled Drug delivery From Biodegradable Hydrogels)」(現在60/899,898分野02-06-07)に記載の薬剤送達のスキームを参照により本明細書中に組込み、また、本明細書中に、該ヒドロゲルとともに使用することができる
また、分解可能な、生物活性分子の共有結合で架橋されるヒドロゲル網による、本明細書中に開示される系を用いて、制御された薬剤送達速度を得ることができる。該共有結合の性質は、数時間〜数週間又はそれ以上で、放出速度を調整できるように制御し得る。一連の加水分解時間の結合から製造される複合体を使用することによって、制御型放出特性を、より長時間に延長することができる。
【0070】
(生分解)
一般に、該ヒドロゲルは、水分解性基の分解によって、インビトロにおいて過剰の水に溶けるほどの、水分解性である。この試験は、インビボでの加水分解による溶解の予測となり、その進行は、細胞又はプロテアーゼによる分解とは対照的である。該ヒドロゲルは、選択した薬剤、治療する疾患、所要の放出期間、及び選択した特定の薬剤の放出特性に応じて、数日、数週間又は数ヶ月かけて吸収可能とするように選択され得る。しかし、いくつかの実施態様では、具体的に、30〜120日とされ、その理由は、より長い期間は、投与計画の使用者制御をより少なくさせるからであり、該薬剤が目的の効果を発揮しない場合、重要な因子となり得る。
該生分解性の結合は、水分解性又は酵素分解性とし得る。例示的な水分解性、生分解性の結合に含まれるのは、ポリマー、グリコリドの共重合体及びオリゴマー、dl-ラクチド、1-ラクチド、ジオキサノン、エステル、カルボナート及び炭酸トリメチレンである。例示的な酵素的生分解性の結合に含まれるのは、メタロプロテイナーゼ及びコラゲナーゼによって切断可能な、ペプチド性の結合である。生分解性の結合の例に含まれるのは、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルト炭酸)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(炭酸)、及びポリ(ホスホン酸)である。
【0071】
しかし、重要なのは、ポリ酸無水物、又は他の通常使用される分解可能な物質は、酸性成分に分解され、眼中で炎症を引起こす傾向があることである。しかし、該ヒドロゲルは、そのような物質を除くことができ、ポリ酸無水物、無水物結合(anhydride bond)、又は酸又は二酸に分解する前駆体を含まないことができる。代わりに、例えば、SG(グルタル酸スクシンイミジル)、SS(コハク酸スクシンイミジル)、SC(炭酸スクシンイミジル)、カルボキシメチルヒドロキシ酪酸(CM-HBA)を使用することができ、かつ加水分解的に不安定なエステル性の結合を有する。
該生体適合性の架橋ポリマーが、生分解性又は吸収性であることが望ましい場合、官能基間に生分解性の結合が存在する、1つ以上の前駆体を使用することができる。該生分解性の結合は、1つ以上の該前駆体の水溶性の母核としても、任意に機能することができる。それぞれの方法について、生分解性の結合を選択して、得られる生分解性の、生体適合性の架橋ポリマーは、所望の期間内に分解、又は所望の期間内に吸収されるようにすることができる。
【0072】
一般に、該架橋ヒドロゲルの分解は、水分解性の材料を使用する場合、生分解性部位の、水による加水分解によって進行する。ポリグリコラートを生分解性部位として使用する場合、例えば、該網の目の架橋密度に応じて、約1〜約30日で分解するように、架橋ポリマーを作製することができる。同様に、ポリカプロラクトンベースの架橋網を、約1〜約8ヶ月で分解されるように、作製することができる。一般に、分解時間は、使用する分解可能な部位の型によって、次の順:ポリグリコラート<ポリラクタート<ポリトリメチレンカルボナート<ポリカプロラクトンで変化する。このように、分解可能部位を用いて、数日〜数ヶ月もの所望の分解特性を有するヒドロゲルを、構築することが可能である。
【0073】
(可視化剤)
該ヒドロゲルとともに可視化剤を使用する。それは、ヒトの眼で検出可能な波長の光を、反射する又は発光して、ヒドロゲルを適用する使用者が、該ゲルを観察できるようにする。
好ましい生体適合性の可視化剤は、FD&C BLUE #1、FD&C BLUE #2、及びメチレンブルーである。より大きな濃度を、可視化剤の溶解度の限界まで、潜在的に使用することができるが、好ましくは、これらの試薬は、最終的な求電子性-求核性反応前駆体種の融合体が、0.05mg/mlより大きい濃度、かつ好ましくは、少なくとも0.1〜12mg/mlの濃度、かつより好ましくは、0.1〜4.0mg/mlの範囲で存在する。これらの濃度範囲は、架橋時間(反応性前駆体種がゲル化する時間で測定される。)に干渉するすることなく、ヒドロゲルに色を与えることができる。
【0074】
可視化剤は、医療用の埋め込み可能な医療装置に使用するのに適した、様々な無毒性の着色物質のいずれかから選択することができ、該着色物質は、例えば、FD&C BLUE染料3及び6、エオシン、メチレンブルー、インドシアニングリーン、又は合成手術縫合糸に通常見られる着色染料などである。該可視化剤は、例えば、架橋剤などの反応性の前駆体種、又は官能性ポリマー溶液のいずれかとともに、存在することができる。好ましい着色物質は、該ヒドロゲルへの化学的な結合を形成できる、又はできない。一般に、該可視化剤は、少量、好ましくは、1%重量/容積未満、より好ましくは、0.01%重量/容積以下、かつ最も好ましくは、0.001%重量/容積未満の濃度で、使用することができる。
加えて、機械支援の造影剤、例えば、蛍光化合物、X線画像装置で画像処理するためのX線造影剤(例えば、ヨウ素化合物)、超音波造影剤、又はMRI造影剤(例えば、ガドリニウム含有化合物)を使用することができる。
【0075】
(粘性)
本明細書において、混合された前駆体を有する組成物は、手動で小口径の針を通して導入するのに適した粘度で調製される。小口径の針は、針の直径が27ゲージ以下、例えば、28、29、30、31、32、又は33ゲージの直径を有する。更に、血管内の分野で使用される、中空管ワイヤーを使用して、該物質を送達することができ、内径及び/又は外径が、小口径の針と等しいか、又は小さいものが含まれる。従って、約1〜約100,000センチポアズの粘度を使用することができる(例えば、約10〜約10,000センチポアズ、約5未満〜約10,000センチポアズ、約100未満若しくは約500センチポアズ、又は約1〜約100センチポアズなど、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。該粘性は、例えば、適切な前駆体の選択、固形物濃度の調整、及び反応速によって制御することができる。一般に、前駆体の濃度が低いほど、親水性が増加し、分子量が低いほど、低い粘性となる。
増粘剤(viscosity enhancer)を前駆体とともに、使用することができる。一般に、該増粘剤は、該前駆体と反応して、共有結合を形成することはない。一般に、前駆体は、望ましくない副反応に関与する場合があり得る、そのような結合を含まないことが理解されると同時に、これらは、該ヒドロゲルに対して影響を与えないようにして、前駆体が、このような反応を「含まない」ようにする。例えば、該前駆体が、求電子-求核反応によって反応する場合に、低レベルの望ましくない副反応がいくつか存在する場合であっても、該増粘剤は、該前駆体の官能基と共有結合を形成することができる、求電子剤又は求核剤を含まないことができる。一般に、増粘剤は、少なくとも20,000、又は約10,000〜約500,000ダルトンの分子量を有する親水性ポリマーである(例えば、少なくとも約100,000又は200,000など、全ての値及び範囲が、明記されている値の間で記載されていることが、当業者には、直ちに理解されよう。)。例えば、約5%〜約25% w/wの濃度を、使用することができる。例えば、PEG(例えば、M.W. 100,000〜250,000)が有用である。増粘剤は、求電子剤及び/又は求核剤を含まないことができる。増粘剤は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、又はチオールなどの、1つ以上の官能基の対価(fee)とし得る。増粘剤は、前駆体に対して、1つ以上の本明細書記載の生分解性結合を含むことができる。増粘剤は、前駆体が架橋してゲルを形成する前に、前駆体が組織部位から流出するのを防ぐのに役立つことができる。
【0076】
(概観)
合成前駆体を使用して作製した、特定の重合可能なヒドロゲルが、医療分野で公知であり、例えば、FOCALSEAL(Genzyme社)、COSEAL(Angiotech Pharmaceuticals社)、及びDURASEAL(Confluent Surgical社)などの製品に使用され、例えば、米国特許第6,656,200号;第5,874,500号;第5,543,441号;第5,514,379号;第5,410,016号;第5,162,430号;第5,324,775号;第5,752,974号;及び第5,550,187号;に記載されている(これら文献のそれぞれは、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)。これらの物質のどれも、眼の中又は眼の周囲での使用に適さないようである。これらは、制御された方法で注射するには、重合が速すぎるというのが、1つの理由である。また、COSEAL及びDURASEALは、非常に高いpHを有しており、眼の組織に有害となる恐れがある(pH9より高い。)。別の理由は、明らかに、それらは、大きく膨潤するということである。COSEAL及びDURASEALの膨潤は、フィブリン組織接着剤と比較して、インビトロモデルを使用して、測定されている(Campbellらの文献, 「吸収性外科用充填剤の評価:インビトロ試験(Evaluation of Absorbable Surgical Sealants: In vitro Testing)」, 2005)3日にわたる試験で、COSEALは、平均約558重量%膨潤し、DURASEALは、平均約98重量%増加し、かつフィブリン組織接着剤は、約3%膨潤した。全ての軸に沿って均一に膨張したとすると、単一の軸におけるパーセントの増加は、COSEAL、DURASEAL、及びフィブリン組織接着剤に対して、それぞれ87%、26%、及び1%と計算される。FOCALSEALは、300%を上回る膨潤が公知である。かつ活性化するために、外部の光が必要であり、そのため、特に、そのような照射に敏感な眼の中又は周囲の、注入可能な薬剤送達貯蔵所としては、あまり適したものではない。フィブリン組織接着剤は、タンパク質性の接着剤であり、接着性、密封性、及びCOSEAL、DURASEAL、及び本明細書中に記載される他のヒドロゲルより劣る機械的特性を有する。更に、典型的には、それは、潜在的に異物が混入した、生物供給源由来であり、水による分解とは異なる機構で、身体から除去され、かつ通常、保管する間は、冷凍を要する。
【0077】
傷を癒す又は角膜上にレンズを与える、いくつかのゲル系が存在し、例えば、米国特許第5,874,500号、第6,458,889号、第6,624,245号、又はPCT WO2006/031358又はWO2006/096586など;他のゲル又は薬剤送達用の系が、米国特許第6,777,000号、第7,060,297号、US2006/0 182771、US2006/0258698、US2006/0100288、又はUS2006/0002963に記載されている(これら文献のそれぞれは、本明細書中にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)。
眼に薬剤を送達するためのいくつかの系は、外用の点眼薬に頼っている。例えば、白内障及び硝子体網膜の手術後、数日の間、数時間毎に抗生物質を投与する必要がある。加えて、非ステロイド性の抗炎症剤(NSAIDS)などの他の薬剤もまた、頻繁に施す必要がある。多くの場合、これら点眼薬のいくつかは、例えば、RESTASIS(Allergan社)もまた、投与と関連する、刺すようなかつ焼けるような感覚を有する。RESTASISは、ドライアイに適応され、一日に数回、患者によって使用されなければならない。同様に、他の眼の疾患、例えば、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病黄斑浮腫(DME)、及び糖尿病網膜症などの治療も、ステロイド又はNSAID剤の投与が必要である。黄斑変性症などの、いくつかの血管増殖性疾患は、VEGF阻害剤の硝子体内注射を用いて治療される。VEGF阻害剤は、LUCENTIS及びAVASTIN(Genentech社)及びMACUGEN(OSI社)などの薬剤を含む。そのような薬剤を、本明細書中の該ヒドロゲルの系を用いて、反復投与の措置を避けて;例えば、毎日、毎週、又は毎月の薬剤を新たに適用させずに、又は薬剤を投与するのに外用の点眼薬を用いることなく、送達することができる。
【0078】
いくつかの別の薬剤送達系が公知である。一般に、これら他の系に含まれるのは、硝子体内の埋め込み式リザーバー型の系(implant reservoir type system)、生分解性の貯蔵系(biodegradable depot system)、又は除去を要するインプラント(非侵食性)である。この関連での最新の技術は、「眼内薬剤送達(Intraocular Drug Delivery)」(Jaffeらの文献, Taylor & Francis出版, 2006)などの書籍に詳細に記述されている。しかし、これらインプラントの多くは、期間終了時に取除くことを必要とするか、それらの標的部位から取り外すことができ、眼の奥の視力障害を引起こす、又は相当量の酸性分解生成物の遊離により、それら自身が炎症性のものとなる恐れがある。このように、これらのインプラントは、非常に高い薬剤濃度を有する、非常に小型のものとされる。それらは、小型ではあるが、25G(25ゲージ)のサイズを上回る針を使用して配置される、又は必要に応じて、埋め込み又は除去のための外科的方法の送達系を、いまだ必要とする。一般に、これらは、液剤を硝子体液又は硝子体内の埋め込みに局所注射され、生分解性による方法、又は取り外し可能なリザーバーによる方法を使用する。
例えば、硝子体液に送達する局所注射は、抗VEGF剤、LUCENTIS、又はAVASTINを含有する。POSURDEX(Allergan)は、生分解性のインプラントであり、使用の症状は、糖尿病黄斑浮腫(DME)又は網膜静脈閉塞症であり、22gの送達系を用いて硝子体腔に送達され;これらは、短い薬剤送達期間が設定されている、劇薬である。ポリ乳酸/ポリグリコール酸ポリマーマトリックスを有するデキサメタゾンである。糖尿病網膜症に対するPOSURDEXの第III相試験が、進行中である。
【0079】
例えば、Medidureインプラント(PSIVIDA)が、DMEの症状に使用される。このインプラントは、直径約3mm、円柱状、及び非侵食性である。これは、25ゲージの注射器送達系で設置され、治療薬はフルオシノロンアセトニドであり、18ヶ月又は36ヶ月(2つの型)の名目上の送達期限を有する。第III相試験が、進行中である
Surmodics社は、硝子体内用、除去可能なインプラント製品を有する。それは、外科的に配置され、治療薬は、トリアムシノロンアセトニドである。名目上の送達期限は、約2年である。症状は、DMEである。現在、第I相試験について進行している。
【0080】
こうした従来の系と対照的に、ヒドロゲルは、他の環境とは極めて異なる環境の眼に、生体適合させることができる。炎症性材料の使用を最小限にして、多くの場合、眼に有害な血管新生を回避する。このように、生体適合性の眼用材料は、意図しない血管新生を避け;いくつかの態様において、酸性分解生成物を回避することで、この目的を到達する。更に、ヒドロゲル及び親水性材料(少なくとも1グラム/リッターの水への溶解度を有する成分、例えば、ポリエチレングリコール/酸化物)を使用することによって、炎症細胞の流入も、最小化され;この方法は、非ヒドロゲル、又は強固なリザーバー型の眼用インプラントの従来の使用とは対照的である。更に、特定のタンパク質を避けて、生体適合能を強化することができ;例えば、コラーゲン又はフィブリン糊は、分解時に生物活性を促進する信号を発するので、これらは、炎症又は望ましくない細胞反応を促進する傾向がある。代わりに、合成材料が使用されるか、又はペプチド配列は通常、天然に見られないものである。更に、該ヒドロゲルは、眼が繊細な組織であることを踏まえて、外部エネルギーなしに、及び/又は光活性化なしに作製され、組織の過熱又は分解を避けることができる。加えて、生分解性の材料を使用して、例えば、熱的に形成されたゲルが、分解しないような、慢性的な異物反応を回避することができる。更に、軟質材料、又は周囲の組織の形状に適応するように、原位置で作製される材料は、眼性の歪みを最小化することができ、かつ低膨潤性材料を使用して、膨潤に起因する視界の歪みを排除できる。形成、導入の両方、又は分解の段階において、高いpHの材料を避けることができる。
【0081】
(キット又は系)
ヒドロゲル作製のためのキット又は系を製造することができる。該キットは、医療として許容し得る条件を使用して製造され、かつ無菌性、純度、及び医薬として許容し得る製造方法を有する前駆体を含む。該キットは、必要に応じて塗布器、及び取扱説明書を含むことができる。治療薬は、予め混合したもの、又は混合に利用できるものを含むことができる。溶媒/溶液を、一式で若しくは別々に提供することができ、又は該成分を、溶媒を用いて予め混合することができる。該キットは、混合及び/又は送達のための、注射器及び/又は針を含むことができる。
いくつかの実施態様において、該キットは、少なくとも1つの前駆体及び塗布器を有する。いくつかの実施態様において、生分解可能な、ポリマーの、合成ヒドロゲルは、それぞれの腕の各末端にNHS-エステルを有する、8本腕の分子量15,000のポリエチレングリコール(PEG)と、トリリジン(一級アミンの求核剤を有する。)との、リン酸及び他の緩衝溶液中での反応によって形成される。可視化剤(例えば、FD&C Blue #1)を、該密封剤に組込むことができる。
【0082】
いくつかの実施態様において、該キットの塗布器は、注射器と注射器間の混合のための注射器を含む(又は実質的に該注射器からなる。)。該送達装置は、注射器の1つであり、かつ少なくとも一端にルアーロックを備える小口径の管を有する。該製品の再構成後、塗布器の管を送達用注射器に取り付け、かつ該ヒドロゲルを標的の組織に塗布する。
いくつかの実施態様において、前駆体、及び原位置でのヒドロゲル形成に必要な他の材料を、治療薬とともに有するキットを提供することができ、該構成成分には、本明細書中に記載のものが含まれる。従って、いくつかの態様において、該ヒドロゲルの特徴を選択して、該ヒドロゲルを、わずかにしか膨潤しない、細い針を通って送達される、配置の後にゲル化するように水性、低粘性の調製品になるようにさせることができる。該ヒドロゲルは、炎症性又は血管新生性がなく、生体適合性の前駆体に依っており、かつ柔軟、親水性、かつ配置された空間に適合する。該ヒドロゲルは、容易に除去する、又は自ら取除くことができ、かつ生分解性とし得る、又は分散せずに容易に到達可能な領域への送達に適合することができる。単一の容器で全ての前駆体を組合せる選択によって、混合及び使用が容易であるようにさせることができる。該ヒドロゲルは、安全な、全て合成の材料で作製することができる。該ヒドロゲルの形成は、組織に接着するように作製することができる。分解及び/又は送達速度を制御して、記載される時間に適合させることができる。該ヒドロゲルは、架橋されているため、沈殿したように形状が安定しているので、針の管又は送達のために作り出された他の穴から流れ出ることはない。該ヒドロゲルの貯蔵所は、点眼薬と比べて優位である。97%を超える、外用で投与された点眼薬が、涙管によって排除され、結局眼を浸透することにはならない。反復投与が回避されることで、患者コンプライアンスを向上することができる。
【0083】
生分解性の薬剤貯蔵所を形成するための流動性の水性前駆体の使用は、細い(例えば、30ゲージ)針を介する投与を可能にする。また、該ヒドロゲルは、分解して、酸性の副生成物にならないようにすることができ、該薬剤貯蔵所は、眼のような繊細な組織に、十分に寛容なものである。これにより、該インプラントは、従来の生分解性ポリマーで作製されたインプラント(従来のインプラントは、より小さいものである)と比べて、ある程度大きなサイズ(例えば、1mlの容量)で作製することができる。従って、いくつかの実施態様は、約0.5〜約5mlの容積を有するヒドロゲルである(例えば、0.5ml〜約1mlなど、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。これは、そうしたヒドロゲルを、眼周囲(強膜上又は後部テノン嚢下注入(PST))の薬剤貯蔵所に著しく適したものにさせる。
該ヒドロゲル又は他の架橋材料の1つの中のいくつかの試薬は、眼周囲の経路を通って、体循環で失われ得るが、一方、非常に大きなインプラントのサイズは、治療薬濃度を保持し、かつヒトの強膜の表面積が約17cm2であることを踏まえ、該強膜を横断して、かつ眼の奥への向かう、薬剤の適切な経強膜的な拡散を可能にするように、大きなインプラントを適応させる、能力を有する。また、該ヒドロゲルは、薬剤の局在化に有用である。対照として、薬剤の懸濁液又は微小粒子を、硝子体内に注入する場合、それらは視野を移動し、かつ視覚を妨げる恐れがある。
【実施例】
【0084】
(実施例1、ヒドロゲルへの薬剤の組込み)
2つの前駆体及び希釈剤を調製した。第1の前駆体は、各腕の末端にグルタル酸スクシンイミジルを有する、8本腕のポリエチレングリコールであり、約15,000の分子量を有する。該前駆体は、粉末で提供され、0.11% w/wの濃度の染料(FD&A Blue)と配合した。第2の前駆体は、0.2Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH8)中のトリリジンであった。該第1の前駆体のための希釈剤を、0.01Mのリン酸ナトリウム(pH4.8)に調製した。
薬剤(下記実施例に示される)を、希釈剤中の薬剤に混合し、かつ約200μlの薬剤/希釈剤を、1mlの注射器に吸入した。66mgの第1の前駆体の粉末を、別の1mlの注射器に入れた。2つの注射器を、メス-メスのルアー継手を介して取り付け、かつ該溶液を、該粉末が完全に溶解するまで、前後に動かした。溶液中の第2の前駆体を、第3の注射器に吸い込んだ(200μl)。別のメス-メスのルアー継手を用いて、該第1及び第2の前駆体を十分に混合した。該混合溶液を注射器の1つに吸い込んで、内容物を受け取る、長さ4インチのシリコンチューブを取り付けた。適当な反応時間を与えた後、該チューブを所望の長さに切り取り、かつ内部のゲルをマンドレルで押出した。得られたヒドロゲルのプラグは、概して、直径0.125インチ、及び厚さ約6.4 mmであった。
特に明記しない限り、薬剤放出特性の分析は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて確認した。ディスクを溶液で保持し、かつ該溶液を定期的に採取し、HPLCで試験して、溶液中の薬剤濃度を測定した。全薬剤導入を、該ディスクを水溶液、又はオクタノールのようなアルコールの存在下、高pHで溶解させ、ディスク中の薬剤含有量を測定することによって測定した。特に明記しない限り、薬剤導入は、5%(薬剤の重量/内容物を含むヒドロゲルの全重量)であった。
【0085】
(実施例2:ジクロフェナクナトリウムの放出)
ジクロフェナクナトリウムは、約1113mg/Lの水溶解度を有する。該ジクロフェナクナトリウムは、抗炎症剤である。該ジクロフェナクナトリウムは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図9に示すように放出された。約8時間で、実質的に、完全な薬剤の放出が、観察された。
【0086】
(実施例3:ブピバカインの放出)
ブピバカインは、約86mg/Lの水溶解度を有する。該ブピバカインは、鎮痛剤であり、HCl塩から遊離塩基に変換され、水溶解度が低減した。該ジクロフェナクナトリウムは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図10に示すように放出された。徐放型のゼロ次放出が、6日間にわたって観察された。
【0087】
(実施例4:ニフェジピンの放出)
ニフェジピンは、約1mg/L未満の水溶解度を有する。該ニフェジピンは、カルシウムチャネル遮断薬及び降圧薬であり、心臓への血流を増加させて、狭心症を軽減する。該ニフェジピンは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図11に示すように放出された。徐放型のゼロ次放出が、45日間にわたって観察された。
【0088】
(実施例5:シプロフロキサシンの放出)
シプロフロキサシンは、約160mg/Lの水溶解度を有する。該シプロフロキサシンは、抗生物質である。該ニフェジピンは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図12に示すように放出された。図12は、pH9.0(四角)又はpH7.4(丸)での試験を示す。3日までに、50%の薬剤が放出された。
【0089】
(実施例6:メフェナム酸の放出)
メフェナム酸は、疼痛を治療するための、NSAIDである。該メフェナム酸は、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図13に示すように放出された。図13は、pH9.0(四角)又はpH7.4(丸)での試験を示す。後の時間のその成分への更なる分解が、更なる量の薬剤を放出するが、それは、約15日を通して放出された。
【0090】
(実施例7:インドメタシンの放出)
インドメタシンは、疼痛の治療をするための別のNSAIDである。該インドメタシンは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図14に示すように放出された。図14は、pH9.0(四角)又はpH7.4(丸)での試験を示す。該図は、約6日間の放出特性を示す。更なる放出を、観察したが、定量化されなかった。
【0091】
(実施例8:トリアムシノロン)
トリアムシノロンは、極めて小さな水への溶解度を有し、通常、注射、吸入、又は局所的なクリームによって、経口で投与される合成副腎皮質ステロイドである。該トリアムシノロンは、導入量が5%の代わりに約4%であった以外は、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図15に示すように放出された。図15は、約1週間までの試験を示す。
【0092】
(実施例9:デキサメタゾンの放出)
デキサメタゾンは、グルココルチコイド系のステロイドホルモンである。該デキサメタゾンは、抗炎症剤及び免疫抑制剤として作用する。該デキサメタゾンは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図16に示すように放出された。該図は、約6日間の放出特性を示す。更なる放出を、観察したが、定量化されなかった。
【0093】
多くの実施態様を本明細書に記載した。総じて、実施態様の成分は、機能的な実施態様にするための要求に導かれるように、互いにうまく組合せることができる。
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、一般に、特定の病状に適用されるヒドロゲル組成物である、合成ポリマー樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎、脈絡膜新生血管(CNV)、及び嚢胞様黄斑浮腫(CME)は、視覚を脅かす眼の奥の疾患である。加齢黄斑変性及び糖尿病網膜症は、米国などにおいて、視力障害の重大な原因となっており;一般に、これらの病気は、網膜を傷つける血管新生(眼中の望ましくない血管成長)に起因し、最終的に失明を引起こす恐れがある。後部ぶどう膜炎は、慢性炎症性の疾患であり、米国において、失明の約10パーセントの原因となっている。
【発明の概要】
【0003】
(概要)
本明細書中に開示される一発明は、原位置で形成される架橋ヒドロゲルであり、該ヒドロゲルは、治療薬を放出し、これを使用して眼の奥の疾患を治療することができる。この実施態様において、水性のポリマー前駆体と薬剤とを生体外にて、流動性の濃度/粘度で組合せて、かつ小口径の針を通過し、硝子体内又は結膜下の経路を経由して眼中に注入し、ここで、該前駆体が、時間をかけて該薬剤を放出する架橋ヒドロゲルを形成する。該ヒドロゲルを処方して、眼の中又は眼の周囲の組織に接着し、薬剤放出の効果及び安定性を増強する、炎症を引起こすことなく生体適合性の成分に分解する、かつ所定の位置で架橋することができる。このように、形成される形状安定性のヒドロゲルは、薬剤を効果的に送達でき、かつ優位には、適切に制御されたサイズ、形状、及び表面積を有する。すでに形成された材料の代わりに、可溶性又は流動性の前駆体を使用することができるので、テノン嚢下注射用の小口径針又は鈍端(blunt tip)カニューレを使用して該材料を注入することができる。
【0004】
眼治療のために、ほとんど炎症を起こさない、生体適合性材料を作り出すことができる。該ヒドロゲルは、生体適合性の前駆体を使用して作られ、高い比率で水を含有し、かつ生体適合性の分解生成物を生成する。従って、該材料は、柔らかく、親水性で、かつ堅い端、角、又は鋭い表面を伴わずに、それらが作製される部位に適合することができる。
生体適合性材料はまた、効果的に自己除去(self-removing)する、又は除去される場合に、自己除去する部分だけを残すようにさせることができる。いくつかの実施態様は、柔らかく、可動性の、架橋された生体材料で作られるインプラントであり、該インプラントの回収が必要である場合に、小開口部を通して引き抜くか、又は別の方法で排除することができる程の強度である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
(図面の簡単な説明)
【図1】図1は、正面から見た、眼の解剖学的特徴を示す。
【図2】図2は、眼の部分的に切取った透視図である。
【図3】図3は、眼の断面図である。
【図4】図4は、図3の断面図の拡大図である。
【図5】図5は、インプラントための種々の送達代替法を示す。
【図6A】図6Aは、小さな開口部を作って用いる、眼へのインプラントの導入を表す。
【図6B】図6Bは、開口部を通過して導入されたカニューレを用いる、図6Aの方法を示す。
【図6C】図6Cは、焼灼によって開口部を閉じる、図6Bの方法を示す。
【図7A】図7Aは、眼表面に作製した開口部を用いる、硝子体内部のインプラントの送達を示す。
【図7B】図7Bは、カニューレを用いて、眼内部の1つ以上の部位にインプラントを送達する、図7Aの方法を示す。
【図8】図8は、眼への1回での材料の送達を示す。
【図9】図9は、実施例2より、収集されたデータを示す。
【図10】図10は、実施例3より、収集されたデータを示す。
【図11】図11は、実施例4より、収集されたデータを示す。
【図12】図12は、実施例5より、収集されたデータを示す。
【図13】図13は、実施例6より、収集されたデータを示す。
【図14】図14は、実施例7より、収集されたデータを示す。
【図15】図15は、実施例8より、収集されたデータを示す。
【図16】図16は、実施例9より、収集されたデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(詳細な説明)
水性溶液中の前駆体から原位置で作られる、局所的形成ヒドロゲルは、目薬送達のための薬剤又は他の治療薬の貯蔵所として機能することができる。こうした貯蔵所は、例えば、眼の表面に局所的に、結膜と強膜の中、及び/又はその間に経強膜的に、眼内に注入して、又は眼周囲に形成してなど、必要に応じて形成することができる。
様々な深刻な眼疾患が存在し、投与計画による治療を必要とする。本明細書中に、組織上の原位置で形成し、薬剤を送達することができるヒドロゲルについて記載する。原位置とは、その使用を意図する部位で材料を形成することを意味する。従って、患者において、例えば、制御された放出のための薬剤貯蔵所として、ヒドロゲルの使用を意図するその部位で、該ヒドロゲルを形成することができる。
【0007】
一実施態様において、該ヒドロゲルは、官能基を有する前駆体から形成され、該前駆体は、共有結合性の架橋を形成してヒドロゲルを架橋し、これによって、ヒドロゲルを形成する。該ヒドロゲルは、薬剤を眼に送達する。いくつかの実施態様は、高流動性の前駆体を使用し、該前駆体は、非常に小さな穴のカニューレ、又は針を通過して押出され、実質的に、注入後にだけ架橋するほどに、ゆっくりとゲル化するが、該前駆体が、切り口の跡を逆行しないほどに、速くゲル化する。次いで、このゲルは、架橋後、ごくわずかしか膨潤しない。該ゲルは、生体適合性で、かつ酸性ではない部位に分解することによって、炎症を引起こすことなく、眼の中又は眼の周囲の生理液中で分解する。また、該ヒドロゲルに、十分な機械的強度をもたせて、必要であれば、手動の又は機械的な、いずれかの洗浄/吸引技術によって回収することができるようにする。更に、いくつかの実施態様において、該ゲルは組織に接着する。
【0008】
概して、前駆体は、本明細書中に記載されるように、眼の中又は近くの部位で組合され、共有結合性架橋ヒドロゲルを作製することができ、該ヒドロゲルは、適当な期間をかけて、眼中に放出されて眼病を治療する治療薬を含む。該ヒドロゲルは、24時間の生理溶液への曝露で、形成時のヒドロゲルの重量と比べて、該ヒドロゲルの重量が、約10%又は約50%以下の増加であるほど、低膨潤性とし得る(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。また、該ヒドロゲルは、ヒドロゲル中の水分解性基の分解によって、インビトロにて過剰の水に溶けるほどの、水分解性とし得る。その中で混合された前駆体を含む、組成物は、小口径の針を通過して導入することができるが、但し、該組成物は、適当な粘性を有しており、該粘性は、前駆体の特性、濃度、及び化学的性質の順に依存する。更に、該ヒドロゲルの機械的強度及び反応時間は、前駆体及び官能基の制御によって調整される。該前駆体及びヒドロゲルは様々な特徴を有し、効果的なデバイスにするための検討に従って、うまく組合せることができる。下記の節に、こうした特徴のいくつかを記載する。
【0009】
(前駆体材料)
該前駆体は、反応を誘発されて、架橋ヒドロゲルを形成することができるものである。一般に、該前駆体は、重合可能であり、かつ多くの場合、常にではないが、重合可能な前駆体である架橋剤を含む。従って、重合可能な前駆体は、官能基を有する前駆体であり、互いに反応して繰返し単位から作られるポリマーを形成する。
このように、いくつかの前駆体は、連鎖成長重合によって反応し、付加重合とも呼ばれ、かつ二重又は三重結合を組込んでいるモノマーが、互いに結合することを含む。こうした不飽和のモノマーは、余剰の内部結合を有し、該結合は、切断し、かつ他のモノマーと結合して、繰返し鎖を形成することが可能である。モノマーは、少なくとも1つの基が他の基と反応してポリマーを形成する、重合可能な分子である。マクロモノマーは、ポリマー又はオリゴマーであり、多くの場合、その末端に、少なくとも1つの反応基を有し、該反応基が該マクロモノマーを、モノマーとして機能できるようにする。各マクロモノマー分子は、該反応基の反応によってポリマーに付加される。このように、2つ以上のモノマー又は他の官能基を有するマクロモノマーは、共有結合性の架橋を形成する傾向がある。付加重合は、例えば、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニルの製造に関与する。付加重合の1種に、リビング重合がある。
【0010】
従って、いくつかの前駆体は、モノマーが縮合反応を介して互いに結合する場合に、縮合重合が起こることによって反応する。典型的には、アルコール、アミン、又はカルボン酸(若しくは他のカルボキシル誘導体)の官能基を組込んでいる分子を反応させることによって、こうした反応を得ることができる。アミンがカルボン酸と反応する場合、水の放出を伴い、アミド又はペプチド結合が形成される。いくつかの縮合重合は、例えば、米国特許第6,958,212号のように、求核アシル置換に続く。該文献は、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。
【0011】
いくつかの前駆体は、連鎖成長段階系(chain growth-step system)によって反応する。連鎖成長ポリマーは、モノマー又はマクロモノマーと反応中心との反応によって形成されるポリマーとして定義される。反応中心は化学化合物内の特定の部位であり、化学種が関わる反応の中心である。連鎖成長ポリマーの化学において、これは鎖成長のための伸長点でもある。一般に、該反応中心は、天然のラジカル、アニオン又はカチオンであるが、他の形態もとり得る。連鎖成長段階系には、開始、伸長及び停止の工程を含む、ラジカル重合が含まれる。開始は、ラジカル開始剤、例えば、有機過酸化物分子から発生されるような、伸長に必要なフリーラジカルの発生である。ラジカルが、更なる伸長を阻止するように反応する場合に、停止が起こる。最も一般的な停止方法は、2つのラジカル種が互いに反応して単一分子を形成する、カップリングによる。
【0012】
いくつかの前駆体は、逐次成長機構によって反応し、かつモノマーの官能基間の段階反応によって形成されるポリマーである。また、多くの逐次成長ポリマーは縮合ポリマーとして分類されるが、全ての逐次成長ポリマーが縮合物を放出するわけではない。
モノマーは、ポリマー又は小分子とし得る。ポリマーは、多数の小分子(モノマー)を規則正しく組合せて形成される有機分子であり、少なくとも2つのモノマーから形成されるポリマー及びオリゴマーを含み、本明細書中の本用語は、約20未満のモノマーの繰返し単位を有するポリマーを意味する。一般に、小分子は、約2000ダルトン未満の分子を意味する。
【0013】
従って、該前駆体は、アクリル酸又はビニルカプロラクタムのような小分子、アクリレートキャップされたポリエチレングリコール(PEG-ジアクリレート)のような、重合可能な基を含む大分子、又はDunnらの文献、米国特許第4,938,763号、Cohnらの文献、米国特許第5,100,992号及び第4,826,945号、又はDeLucaらの文献、米国特許第4,741,872号及び第5,160,745号(これら文献は、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)のようなエチレン性不飽和基を含む他のポリマーとすべきである。
【0014】
共有結合性の架橋ヒドロゲルを形成するために、該前駆体を互いに架橋しなければならない。一般に、ポリマー前駆体は、2つ以上の部位で、他のポリマー前駆体に結合されているポリマーを形成し、各部位は、同じであるか又は異なるポリマーとの結合になっている。少なくとも2つのモノマーを有する前駆体は、それぞれのモノマーが、異なる成長ポリマー鎖の形成に関与できるので、架橋剤として機能することができる。反応中心を有するモノマーの場合、各モノマーが、他の前駆体と反応するために、効果的に1つの官能基を有する。反応中心がない官能基の場合は、特に、架橋には、前駆体上に3つ以上のこのような官能基が要求される。例えば、多くの求電子-求核反応が、求電子性及び求核性官能基を消費するので、架橋を形成するために、前駆体に第3の官能基を必要とする。このように、こうした前駆体は3つ以上の官能基を有することができ、かつ2つ以上の官能基を有する前駆体によって架橋され得る。従って、いくつかの前駆体は、ポリマー及び/又は架橋の形成に関与する官能基を有するが、重合可能な反応中心を含まない、若しくはラジカル、及び/又はアニオン、及び/又はカチオンの反応中心を含まないか、又はいくつかの同様の組合せだけを有する。架橋分子は、イオン若しくは共有結合、物理的な力、又は他の引力を介して架橋され得る。しかし、一般的に、共有結合による架橋が、反応物が生成する構造体に、安定性及び予測性を提供するだろう。
【0015】
いくつかの実施態様において、各前駆体を、2つ以上の求電子性又は求核性官能基を含む多官能性とし、前駆体上の求核性官能基と他の前駆体上の求電子性官能基とが反応して、共有結合を形成するようにする。少なくとも1つの前駆体が、3つ以上の官能基を含むようにして、求電子-求核反応の結果、該前駆体は結合して、架橋されたポリマー生成物を形成する。
【0016】
該前駆体は、生物学的に不活性で、かつ水溶性部分、例えば、母核を有することができる。母核は、分子の連続的な部分を意味し、一般に、分子の少なくとも約80重量%であり、該母核から延びる腕(arm)を有することがあり、該腕に官能基を有することがあり、該官能基は多くの場合、その分枝の末端にある。水溶性部分は、水溶性の分子又はポリマーであり、疎水性ポリマーに結合されている。好ましくは、水溶性の前駆体又は前駆体の部分は、少なくとも1g/100mLの水への溶解度を有する。水溶性部分は、例えば、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシド-コ-ポリエチレンオキシド(PPO)、コ-ポリエチレンオキシドのブロック若しくはランダム共重合体などのポリアルキレンオキシド、及びポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、又はタンパク質とし得る。該前駆体は、ポリアルキレングリコール部分を有し、かつ少なくとも約80重量%又は90重量%のポリマーが、ポリエチレンオキシドの繰返しを含む、ポリエチレングリコールベースとし得る。該ポリエーテル、及びより具体的には、ポリ(オキシアルキレン) 、又はポリ(エチレングリコール)、又はポリエチレングリコールは、一般に、親水性である。
【0017】
また、前駆体は、数千〜何百万もの範囲の分子量を有する巨大分子とし得る。しかし、いくつかの実施態様において、少なくとも1つの前駆体は、約1000Da以下の小分子である。該巨大分子を、約1000Da以下の小分子と組合せて反応させる場合、好ましくは、該巨大分子は、該小分子より、少なくとも5〜50倍、分子量が大きく、かつ好ましくは、約60,000Da未満である(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。より好ましい範囲は、巨大分子は、架橋剤より約7〜約30倍、分子量が大きく、かつ最も好ましい範囲は、約10〜20倍の重量差である。更に、5,000〜50,000の巨大分子の分子量が有用であり、7,000〜40,000の分子量、又は10,000〜20,000の分子量が有用である。
【0018】
Hubbellらの文献、米国特許第5,410,016号(該文献は、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)に記載される、特定のマクロマー前駆体は、架橋可能、生分解性、水溶性のマクロマーである。これらモノマーは、少なくとも2つの重合可能な基を有することを特徴とし、少なくとも1つの分解可能な領域によって分解される。
合成前駆体を使用できる。合成とは、天然には見られない、又は通常、人体には見られない分子を意味する。いくつかの合成ポリマーは、天然に存在するアミノ酸を含まない、又はアミノ酸配列を含まない。いくつかの合成分子は、天然には見られない、又は通常、人体には見られない、例えば、ジ-、トリ-、又はテトラ-リジンなどのポリペプチドである。いくつかの合成分子はアミノ酸残基を有するが、隣接する1、2、又は3つだけであり、アミノ酸又はそれらの集団は、非天然のポリマー又は群によって分離されている。
【0019】
別法として、天然のタンパク質又は多糖類、例えば、コラーゲン、フィブリン(フィブリノーゲン)、アルブミン、アルギン酸、ヒアルロン酸及びヘパリンなどを、こうした方法を用いた使用に適応させることができる。これら天然の分子には、例えば、合成的なポリマーの修飾などの、化学的な誘導体化を、更に含むことができる。該天然の分子は、例えば、文献、米国特許第5,304,595号、第5,324,775号、第6,371,975号、及び第7,129,210号(これら文献は、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)のように、その天然の求核剤を介して、又は官能基を誘導体化された後に、架橋することができる。天然とは、自然に見られる分子を意味する。天然のポリマーとは、例えば、コラーゲン、フィブリノーゲン、アルブミン及びフィブリンなどのタンパク質又はグリコサミノグリカンであり、求電子性官能基を有する反応性の前駆体を用いて架橋することができる。天然のポリマーは、通常、体内に見られ、体内に存在するプロテアーゼにより、タンパク分解的に分解される。そのようなポリマーは、これらアミノ酸上のアミン、チオール若しくはカルボキシルなどの官能基を介して反応するか、又は活性化可能な官能基を有するように誘導体化することができる。天然のポリマーをヒドロゲルに使用することができるが、これらのゲル化までの時間及び最終的な機械的特性は、付加的官能基の適切な導入、及び例えば、pHなどの適当な反応条件の選択によって、制御されなければならない。対照的に、フィブリノーゲンが重合してフィブリンを形成することを利用するフィブリン糊は、限定的な機械的特性の範囲、限定的な分解性能の範囲、かつ概して、本明細書中に記載されるヒドロゲルが形成される場合に、利用可能な眼部治療の適用の多くに不適切である。
【0020】
疎水性部分を用いて、前駆体を製造することができる。いくつかの場合において、該前駆体は、親水性部分も有しているので、疎水性部分を有するにも関わらず水に可溶性である。別の場合において、該前駆体は、水に分散する(懸濁液)が、それにも関わらず、架橋材料を形成するために反応可能である。いくつかの疎水性部分は、複数のアルキル、ポリプロピレン、アルキル鎖、又は他の基を含むことができる。疎水性部分を有するいくつかの前駆体が、PLURONIC F68、JEFFAMINE又はTECTRONICの商標を伴って売られている。疎水性部分とは、マクロマー又は共重合体を凝集して、水性の連続相にミセルを形成させるのに十分な疎水性であるもの、又は自己試験の場合、pH約7〜約7.5、温度約30〜約50℃の水溶液から沈殿する、又はそうでなければ、該溶液内の相を変えるのに十分な疎水性であるものである。
【0021】
いくつかの前駆体をデンドリマー又は他の高度に分枝した材料とし得ることを考慮して、前駆体は、それぞれの腕が末端を有する、例えば、2〜100本の腕を有することができる。従って、ヒドロゲルは、例えば、第1組の官能基を有する多腕(multi-armed)の前駆体、及び第2組の官能基を有する低分子量の前駆体から製造することができる。例えば、6本腕又は8本腕の前駆体は、例えば、末端に一級アミンを有する、ポリエチレングリコールなどの親水性の腕を有することができ、該腕の分子量は、約1,000〜約40,000である(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。そのような前駆体は、比較的小さい前駆体、例えば、分子量が約100〜約5000の間、又は約800、1000、2000、若しくは5000以下で、少なくとも約3つの官能基、又は約3〜約16の官能基を有する分子と混合することができる(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、理解されよう)。このような小分子はポリマー又は非ポリマー、及び天然物又は合成物とし得る。
【0022】
いくつかの実施態様は、実質的に、5残基以下のオリゴペプチド配列、例えば、少なくとも1つのアミン、チオール、カルボキシル、及びヒドロキシルの側鎖を含むアミノ酸からなる前駆体を含む。残基は、天然に存在するか、又はそれらの誘導体化されたものの、どちらかのアミノ酸である。そのようなオリゴペプチドの主鎖は、天然物又は合成物とし得る。いくつかの実施態様において、2つ以上のアミノ酸のペプチドを合成主鎖と組合せて、前駆体を製造し;そのような前駆体の特定の実施態様は、約100〜約10,000、又は約300〜約500の範囲内の分子量を有する(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。
【0023】
前駆体を、導入部位に存在する酵素によって切断可能なアミノ酸配列を含まないように製造することができ、メタロプロテイナーゼ、及び/又はコラゲナーゼを含まない。更に、前駆体は、アミノ酸を全く含まないように、又は約50、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1つより多いアミノ酸のアミノ酸配列を含まないように製造することができる。前駆体は、非タンパク質とすることができ、これらは、天然には存在しないタンパク質であり、天然のタンパク質の切断によって生成されず、かつ合成材料をタンパク質に付加することによって生成されないことを意味している。前駆体は、非コラーゲン、非フィブリン(フィブリノーゲン)、非ヒアルロン酸、及び非アルブミンとすることができ、つまり、これらはこうしたタンパク質の1つではなく、かつこうしたタンパク質の1つの化学的誘導体でもない。非タンパク質の前駆体の使用、及びアミノ酸配列の限定的使用は、免疫反応を回避する、望ましくない細胞認識を回避する、かつ天然の供給源由来のタンパク質の使用に関連する危険を回避するのに役立たせることができる。
【0024】
ペプチドを前駆体として使用することができる。概して、大きな配列のもの(例えば、タンパク質)を使用できるが、約10残基未満のペプチドが好ましい。例えば、1〜10、2〜9、3〜10、1、2、3、4、5、6、又は7などを含む、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることが、当業者には、直ちに理解されよう。いくつかのアミノ酸は、求核性基(例えば、一級アミン若しくはチオール)、又は求核性基若しくは求電子性基(例えば、カルボキシル若しくはヒドロキシル)を組込むのに必要な誘導体化し得る基を有する。合成により生成されるポリアミノ酸ポリマーは、それらが天然には見られず、かつ天然に存在する生体分子とは非同一に設計される場合、通常、合成物であると見なされる。
【0025】
ポリエチレングリコール(PEG、ポリエチレンオキシドとも呼ばれる。)は、繰返し基(CH2CH2O)n(nは少なくとも3である。)を有するポリマーを意味する。従って、ポリエチレングリコールを有するポリマー前駆体は、少なくとも3つの、互いに直線上に結合した繰返し基を有する。ポリマー又は腕のポリエチレングリコール含有量は、たとえ、それらが他の基によって妨害されても、ポリマー又は腕上の全てのポリエチレングリコール基の和によって計算される。従って、少なくとも1000MWのポリエチレングリコールを有する腕は、総計が少なくとも1000MWになるのに十分なCH2CH2O基を有する。当該分野には通例の用語である、ポリエチレングリコールポリマーは、ヒドロキシル基の末端を必要としない。
【0026】
(開始系)
いくつかの前駆体は、開始剤を用いて反応する。開始剤基は、ラジカル重合反応を開始することが可能な化学基である。例えば、それは、分離成分、又は前駆体上の垂れ下がった基(pendent group)として存在することができる。開始剤基には、熱開始剤、光学活性可能な開始剤、及び酸化-還元(レドックス)系が含まれる。長波長のUV及び可視光に光学活性化可能な開始剤に含まれるのは、例えば、エチルエオシン基、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン基、他のアセトフェノン誘導体、チオキサントン基、ベンゾフェノン基、及びカンファーキノン基である。熱反応性開始剤の例に含まれるのは、4,4'アゾビス(4-シアノペンタン酸)基、及び過酸化ベンゾイル基の類似体である。Wako Chemicals USA社(リッチモンド、Va.)から入手可能なV-044など、いくつかの市販されている低温ラジカル開始剤を使用して、体温でラジカル架橋反応を開始して、前述のモノマーとともにヒドロゲル被覆を形成することができる。
【0027】
金属イオンを、レドックス開始系の酸化剤又は還元剤のいずれかに使用することができる。例えば、第一鉄イオンと、過酸化物又はヒドロペルオキシドとを組合せて使用し、重合を開始する、又は重合系の一部として開始することができる。この場合、第一鉄イオンは還元剤として機能するだろう。あるいは、金属イオンは、酸化剤として機能できる。例えば、セリウムイオン(セリウムの4+価の状態)は、カルボン酸及びウレタンを含む様々な有機基と相互作用し、電子を金属イオンに移動させ、有機基の背後に開始ラジカルを残す。そのような系において、該金属イオンは酸化剤として作用する。どちらの役割にも潜在的に適した金属イオンは、遷移金属イオン、ランタニド、及びアクチニドのいずれかであり、これらは、少なくとも2つの移行しやすい酸化状態を有する。特に有用な金属イオンは、たった1つの電荷の差で分離された、少なくとも2つの状態を有する。これらの中で、最も一般に、使用されるのは、第二鉄/第一鉄;第二銅/第一銅;第二セリウム/第一セリウム;第二コバルト/第一コバルト;バナジン酸V対FV;過マンガン酸;及びマンガン(III)/マンガン(II)である。過酸化物及びヒドロペルオキシドのような過酸素含有化合物に含まれるのは、過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クミルペルオキシドであり、これらを使用することができる。
【0028】
開始系の例は、一溶液中の過酸素化合物と、別の溶液中の遷移金属などの反応性イオンとの組合せである。この場合において、2つの相補的な反応性官能基が含有する部位が、該適用部位で相互作用する場合に、外部の重合開始剤は不要であり、かつ重合は、自発的に、かつ外部エネルギーの適用、又は外部エネルギー供給源の使用を伴うことなく進行する。
【0029】
(官能基)
該前駆体は、官能基を有し、互いに反応して、原位置で材料を形成する。一般に、該官能基は、重合若しくは求電子剤-求核剤反応で互いに反応するための反応中心を有するか、又は他の重合反応に関与するように形成されている。本明細書中の前駆体の節で、重合反応の様々な態様を論じている。
従って、いくつかの実施態様において、前駆体は、重合可能な基を有し、重合分野で使用される、光開始又はレドックス系によって活性化され、又は例えば、求電子性官能基が、カルボジイミダゾール、塩化スルホニル、クロロカルボナート、n-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、若しくはスルファスクシンイミジル(sulfasuccinimidyl)エステルであるか、又は米国特許第5,410,016号若しくは第6,149,931号に記載されたものである(これらは、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)。該求核性官能基は、例えば、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル及びチオールとし得る。
求電子剤の別の部類は、例えば、米国特許第6,958,212号に記載されるようなアシルであり、該文献は、特に、反応しているポリマーに対するマイケル付加のスキームについて記載している。
【0030】
アルコール又はカルボン酸などの特定の官能基は、通常、生理的条件下(例えば、pH7.2〜11.0、37℃)では、アミンなどの他の官能基と反応しない。しかし、そのような官能基は、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの活性化基を使用することによって、より反応性を高めることができる。特定の活性化基に含まれるのは、カルボニルジイミダゾール、塩化スルホニル、アリールハロゲン化合物、スルホスクシンイミジルエステル、ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステルなどである。該N-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)基は、タンパク質、又はアミノ末端ポリエチレングリコールなどのアミン含有ポリマーの架橋に有用な基である。NHS-アミン反応の利点は、反応速度論的に優位な点であるが、そのゲル化の速度は、pH又は濃度によって調節され得る。該NHS-アミンの架橋反応は、副生成物としてN-ヒドロキシスクシンイミドが形成される。N-ヒドロキシスクシンイミドのスルホン化又はエトキシ化の形態は、水への溶解度が比較的増大され、従って、これらは体内からの迅速に排除される。スクシンイミド環上のスルホン酸塩は、一級アミンを有するNHS基の反応性に影響しない。NHS-アミンの架橋反応は水性溶液中、かつ緩衝液、例えば、リン酸緩衝液(pH5.0〜7.5)、トリエタノールアミン緩衝液(pH7.5〜9.0)、若しくはホウ酸緩衝液(pH9.0〜12)、又は炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.0〜10.0)などの存在下で行うことができる。好ましくは、NHSベースの架橋剤及び官能性ポリマーの水性溶液は、NHS基が水と反応するために、架橋反応の直前に製造する。低いpH(pH4〜7)でこれらの溶液を保持することによって、こうした基の反応速度を遅らせることができる。
【0031】
いくつかの実施態様において、求核性及び求電子性の両方の前駆体が、架橋反応に使用されない限りは、各前駆体は、求核性官能基だけを、又は求電子性官能基だけを含む。従って、例えば、架橋剤が、アミンなどの求核性官能基を有する場合は、官能性ポリマーは、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの求電子性官能基を有することができる。一方、架橋剤が、スクシンイミドなどの求電子性官能基を有する場合は、官能性ポリマーは、アミン又はチオールなどの求核性官能基を有することができる。このように、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、又はアミン末端が二、又は多官能性のポリ(エチレングリコール)などの官能性ポリマーを使用することができる。
【0032】
ヒドロゲル前駆体上の腕は、架橋可能な官能基をポリマーの母核に繋ぐ、直鎖の化学基である。いくつかの実施態様は、3〜300本の腕を有する前駆体であり;例えば、4〜16、8〜100、又は少なくとも6本の腕のように、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。前駆体は、例えば、特許出願公表US20040086479、US20040131582、WO07005249、WO07001926、WO06031358、又はこれらの米国の等価物に記載のデンドリマーとし得る。また、デンドリマーは、例えば、米国特許公表US20040131582、US20040086479、並びにPCT出願WO06031388及びWO06031388に記載のように、多官能性前駆体として有用である。全てのこれらUS及びPCT出願は、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。デンドリマーは、高度に規則正しく整い、高い表面積対容積比を有し、かつ機能化が可能な多数の末端基を示す。いくつかのデンドリマーは、規則正しく整っており、つまり各腕が同一の構造を有している。いくつかのデンドリマーは、複数の連続して分枝した腕を有しており、つまりポリマーが少なくとも2本の腕に枝分かれしており、該各腕が少なくとも更に2本の腕に枝分かれしている。従って、デンドリマーは、低い多分散指数、低い粘性、並びに高い溶解性及び混和性を示す傾向にある。いくつかの実施態様は、比較的高い分子量のデンドリマーを、適当な官能基を前駆体上に有する、比較的低い分子量の多官能性前駆体とともに使用することに向けられる。他の実施態様は、求電子剤及び/又は求核剤で機能化された、デンドリマーの使用に向けられる。いくつかの実施態様において、該デンドリマーは、別の架橋用前駆体より比較的低い分子量(例えば、約半分未満、約1/3未満)の前駆体として機能し、例えば、デンドリマーは、約600〜約3000Daであり、多官能性前駆体は、約2000〜約5000Daである。いくつかの実施態様において、該前駆体は、例えば、PEGを含む、親水性のデンドリマーである。いくつかの実施態様において、各デンドリマーの腕、又は少なくとも半分の腕は、他の前駆体の官能基と反応するために、末端が官能基となっている。いくつかの実施態様において、少なくとも約10,000の分子量のデンドリマー前駆体が、該デンドリマーと架橋する小さな前駆体と反応し、該小さな前駆体は、約1000未満の分子量を有する。いくつかの実施態様において、該デンドリマーの少なくとも約90%の腕が反応して、ヒドロゲルへの結合を形成する。他の実施態様において、該デンドリマーの少なくとも25%の腕が反応して、自由な腕の可動性を増加させる。
【0033】
一実施態様は、3〜16個の求核性官能基の各々をもつ反応性前駆体種、及び2〜12個の求電子性官能基の各々をもつ反応性前駆体種を有する(全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。
【0034】
(ヒドロゲルの形成)
概して、前駆体と、遅延架橋用の化学種を有する流動性の組成物とを組合せて、共有結合性の架橋材料を原位置で調製することができ、該材料は、適当な期間をかけて放出される治療薬を含む。概して、該架橋反応は、生理的条件下、水性溶液中で生じる。好ましくは、該架橋反応は、重合の熱を発しないか、又は重合の開始若しくは誘発に外部のエネルギー供給源を必要としない。一般に、光化学的開始は、例えば、眼への損害を回避するために避けられる。注入される材料の場合、その粘性を制御して、該材料が小口径のカテーテル又は針を通って導入されるようにする。眼の周囲に適用する材料の場合、カテーテル/針などを通って任意に送達され、更に、粘性を制御して、ゲルを形成するまで、前駆体を所定の位置に保持して、該前駆体が意図する使用部位から流出しないようにする。
【0035】
一般に、該ヒドロゲルは、24時間の生理溶液への曝露時に、形成時のヒドロゲルの重量と比べて、わずかに約0%〜約10%、又は〜約50%増加しているヒドロゲルの重量によって測定されるように、低膨潤である。膨潤を低減させるための一実施態様は、架橋の数を増加させることであるが、架橋は、剛性又は脆性を増大し得ることに配慮する。別の実施態様は、架橋間の平均鎖長を減少させることである。別の実施態様は、下記に説明されるように、多数の腕を有する前駆体を使用することである。
膨潤を低減させるための別の実施態様は、より膨潤しない傾向がある、より低親水性材料を用いて、親水度を制御することであり;例えば、PEOなどの高親水性の材料と、PPOなどのあまり親水性ではない材料とを、又はアルキルなどの疎水性基さえも、組合わすことができる。
【0036】
膨潤を低減させるための別の実施態様は、架橋時に高度な溶媒和を有するが、その後、溶媒和されなくなり、かつ効果的に収縮する溶媒和の半径を有する前駆体を選択することであり、すなわち、架橋時に該前駆体は、広がっているが、後に収縮する。pH、温度、固体濃度、及び溶媒環境の変化が、そのような変化を引起こし得る;更に、分枝の数の増加(他の因子は、有効に一定を保たれる。)も、この効果を有する傾向にある。腕の数は、架橋前にそれらが広がるのに、立体的に互いを妨げると考えられるが、これらの立体効果は、重合後、他の因子によって相殺される。いくつかの実施態様において、前駆体は、こうした効果を達成するために、架橋又は他の反応の前に、複数の同様の電荷を有し、例えば、負の電荷を有する複数の官能基、若しくはそれぞれ正の電荷を有する複数の腕、又は同様の電荷の官能基を有するそれぞれの腕などである。
【0037】
本明細書中に記載されるヒドロゲルには、成膜後、ごくわずかしか膨潤しないヒドロゲルを含むことができる。そのような、医療用の低膨潤性ヒドロゲルは、重合時の重量が、生理溶液への曝露時で、例えば、約50重量%、約10重量%、約5重量%、約0重量%以下増加する、又は例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%以上収縮(重量及び容積が減少)し得るものである。これらの明言された範囲が本明細書に開示されていることに関して、全ての範囲及び値が範囲内であるかどうかは、当業者には容易に理解されるだろう。特に明記しない限り、ヒドロゲルの膨潤は、架橋が有効に完了する場合のヒドロゲルの形成時間と、インビトロにて、制約を受けない状態で24時間、生理溶液に置かれた後の時間(この時点で、当然に平衡膨潤状態に達したと仮定し得る。)との間の容積(又は重量)の変化に関連する。ほとんどの実施態様について、架橋は、わずか約50分以内で有効に完了させて、概して、初期重量は、形成後約15分で、初期形成の重量として表すことができるようにする。従って、次の式を使用する:膨潤%=[(24時間時の重量-初期形成時の重量)/ 初期形成時の重量]*100。24時間かけて実質的に分解するヒドロゲルの場合は、24時間時の重量の代わりに、例えば、連続測定を用いて測定される、最大重量を使用することができる。該ヒドロゲルの重量は、ヒドロゲルの溶液の重量を含む。制約を受ける場所で形成されるヒドロゲルが、必ずしも低膨潤性ヒドロゲルであるというわけではない。例えば、体内で作り出される膨潤可能なヒドロゲルは、その環境によって膨潤に制約がかかり得るが、それでも、制約を受けない、及び/又は制約に反して力が働く場合、その膨潤の測定からも明らかなように、高度に膨潤可能なヒドロゲルである。
【0038】
一般に、反応速度は、外部開始剤又は連鎖移動剤が必要である場合を除き、特定の官能基への光の照射によって制御され、この場合、開始剤を誘発すること、又は移動剤を操作することが、制御方法となり得る。いくつかの実施態様において、前駆体の分子量を利用して、反応時間に作用する。低分子量の前駆体は、反応が加速する傾向があるため、いくつかの実施態様では、少なくとも1つの前駆体が、少なくとも5,000〜50,000又は150,000ダルトンの分子量を有する。好ましくは、架橋反応は、約2〜約10、又は〜約30分以内で、ゲル化が生じる(例えば、少なくとも120秒、又は180〜600秒のように、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。ゲル化の時間は、前駆体を平面に適用し、該平面を約60度の角度(すなわち、垂直に近い急角度)にしたとき、該表面を実質的に流れなくなった時間を計って測定される。
【0039】
得られる生体適合性架橋ポリマーの架橋密度は、架橋剤及び官能性ポリマーの総分子量、並びに1分子あたり有効な官能基の数によって制御される。500などの架橋間の低分子量は、10,000などの高分子量と比べ、非常に高い架橋密度を与えるであろう。また、該架橋密度は、架橋剤及び官能性ポリマー溶液の全体の固体パーセントで制御される。該固体パーセントが増加するほど、加水分解によって不活性化する前に、求電子性官能基と求核性官能基とが組合わさる確立が増加する。架橋密度を制御する更に別の方法は、求核性官能基対求電子性官能基の化学量論的調節による。1対1の比率は、最も高い架橋密度をもたらす。一般に、架橋間の距離が長い前駆体は、より柔らかく、より柔軟で、かつより弾性がある。従って、ポリエチレングリコールなどの水溶性部分の長さを増加すると、弾性が強化される傾向があり、所望の物理特性を作り出す。従って、特定の実施態様は、3,000〜100,000、又は例えば、10,000〜35,000の範囲の分子量の水溶性部分を有する前駆体に向けられる。
該ヒドロゲルの固体パーセントは、機械的特性及び生体適合性に影響を与え、かつ競合する要件間のバランスを反映し得る。一般に、例えば、約2.5%〜約25%の比較的低い固形物含有量は、最も有用である傾向があり、例えば、約2.5%〜約10%、約5%〜約15%、又は約15%未満を含む。
【0040】
(眼の解剖学)
哺乳類の眼の構造は、3つの主要な層又は膜:線維膜、血管膜、及び神経膜に分けることができる。眼球線維膜としても公知の該線維膜は、角膜及び強膜からなる眼球の外層である。該強膜は、眼の支持壁であり、かつ眼にその白色の大部分を与える。該強膜は、角膜(眼の透明な前部)から眼の後側の視神経まで伸びている。該強膜は、繊維性、弾性、かつ保護性の組織であり、しっかりと詰まったコラーゲン原線維からなり、約70%の水を含有している。
該線維膜を覆っているのが、結膜である。該結膜は、強膜(眼の白色部分)を覆い、かつ眼瞼内部の内側を覆う膜である。該結膜は、涙腺よりも少量の涙ではあるが、粘液及び涙を産生して眼を潤すのを助ける。典型的に、該結膜は、下記の3つの部分に分けられる:(a) 眼瞼(palpebral)又は眼瞼(tarsal)結膜は、眼瞼の内側を覆っている結膜であり;該眼瞼結膜は、上円蓋及び下円蓋で折り返して、眼球結膜となる、(b) 結膜円蓋:眼瞼の内部及び眼球が接する結膜である、(c)眼球(bulbar)及び眼球(ocular)結膜:眼球を覆っている結膜であり、強膜を覆う。結膜のこの領域は、しっかりと結合し、かつ眼球運動とともに動く。
【0041】
該結膜は、強膜を、有効に囲み、覆い、かつ接着している。それは、細胞性で、かつ結合組織を有し、幾分弾性があり、かつ取り除き、細片化され、又は、下に降ろして強膜の表面領域を曝すことができる。下記に説明されるように、該結膜を取除くことができる、又は経強膜の薬剤送達スキームとともに使用することができる。
眼球血管膜としても公知の血管膜は、中層であり、虹彩、毛様体、及び脈絡膜を含む。該脈絡膜は血管を含み、網膜細胞に酸素を供給し、呼吸による老廃物を取除く。
【0042】
眼神経膜(tunica nervosa oculi)としても公知の神経膜は、網膜を含む内部知覚器である。該網膜は、感光性の杆体及び錐体、並びに関連する神経を含む。該網膜は、比較的滑らかな(しかし湾曲した)層である。該網膜は、異なる二つの部位;中心窩及び視神経乳頭を有する。該中心窩は、水晶体の正反対側の網膜のくぼみであり、錐体細胞が高密度に詰まっている。該中心窩は、黄斑部に位置する。該中心窩は、ヒトの色覚に広く関与し、読込みに必要な、高度な鋭敏さを与える。該視神経乳頭は、網膜上の一部であり、ここで、視神経は、網膜を貫通して、内側の神経細胞と繋がっている。
また、哺乳類の眼は、2つの主要部分:前部及び後部に分けることができる。該前部は、前及び後眼房からなる。該前眼房は、虹彩の前面、及び角膜内皮の後部に位置し、かつ瞳孔、虹彩、毛様体、及び水性の体液を含む。該後眼房は、虹彩の後部及び硝子体の表面の前部に位置し、ここで、水性環境中の前部及び後部の嚢間に、水晶体及び毛様体小帯が位置する。
【0043】
該角膜及び水晶体は、光線を収束して、網膜に焦点を合わせるのを助ける。該水晶体は、虹彩の後方にあり、凸面をしており、弾性のある円形であり、第2の体液を通過して、網膜上に光を集束させる。該水晶体は、毛様小帯として公知の懸垂靭帯の環を介して毛様体に接着している。毛様体筋は弛緩して、それと水晶体とを繋げている線維を伸ばし、これにより、水晶体が平板化し、遠くの対象の焦点を合わせる。該毛様体筋が収縮する場合、線維の張力が減少し、水晶体の裏は、より凸面かつ円形となる。水晶体と第1の体液との間の虹彩は、血管結合組織及び筋線維の色素の環である。光は、まず、該虹彩の中央、瞳孔を通過しなければならない。瞳孔の大きさは、輪状筋及び放射状筋によって活発に調節され、眼に入射する光のレベルを、比較的一定であるように維持する。
眼に入った光は、角膜を通過し、2つの房水の1つ目に入る。眼の全屈折力のおよそ2/3が、固定の曲率を有する角膜によるものである。該房水は、角膜と眼の水晶体とを繋ぐ透明な物質であり、角膜の凸形状の維持を助け(水晶体での光の収束に必要である。)、かつ角膜内皮に栄養分を与える。
【0044】
該後部は、水晶体後方、及び網膜の前に位置している。該後部は、眼のおよそ2/3を表し、前部硝子体膜、及びその後方の全ての構造物:硝子体液、網膜、c、及び視神経を含む。水晶体の反対側は、第2の体液、硝子体液であり、全ての面で、水晶体、毛様体、懸垂靭帯、及び網膜に接している。それは、屈折なしで光を通過させ、眼の形状を維持するのを助け、かつ繊細な水晶体を浮遊させている。
【0045】
図1は、強膜12、虹彩14、瞳孔16、及び眼瞼18を有する眼10を示す。図2は、部分的な断面図を伴う眼10の透視図を示し、水晶体20、下斜筋21、下直筋23、及び視神経25を示す。図3は、眼10の断面図であり、角膜22を示し、該角膜は、光学的に透明で、虹彩14及び水晶体20に光を通過させる。前眼房24が、角膜の下にあり、後眼房26が、虹彩14及び水晶体20の間に位置する。毛様体28は、水晶体20と繋がっている。図3は、結膜の一部分30を示し、これは強膜12上を覆っている。硝子体32は、同位置にある硝子体管34とともに、ゼリー状の硝子体液を含む。中心窩36は、黄斑に位置し、網膜38は、脈絡膜37の上を覆っている。小帯隙42を示す。図4は、眼10の部分図を示し、強膜12上の結膜の一部30を示し、同位置から新たに独立した上直筋44の腱を含む。
図5は、眼10の又はその付近の特定の送達位置を示す。一領域は、眼10の表面上の点で示している領域60の局所である。別の領域は、番号62で示されるような硝子体内領域、又は番号64で示されるような経強膜的な領域である。使用において、例えば、注射器66、カテーテル(示さず)、又は他の機器を使用して、針68を任意に通過させて、70のように硝子体内的に、又は72のように眼周囲的に、のいずれかで、ヒドロゲル又はヒドロゲル前駆体を、眼の中に送達する。薬剤又は他の治療薬が、眼内の部位に放出される。眼の奥の疾患の場合、薬剤は、眼周囲又は硝子体内の経路を経由して、標的付近の領域74に向かい、ここで、それらは生物特性で作用し治療を実現する。
【0046】
(眼の病状)
本明細書中に記載の材料を使用して、薬剤又は他の治療薬(例えば、造影剤若しくはマーカーなど)を、眼又は近くの組織に送達することができる。病状のいくつかは、眼の奥の疾患である。用語、眼の奥の疾患は、当業者には理解されるが、一般に、脈管構造、及び網膜、黄斑、又は脈絡膜の統合性に影響を与える、後部の眼疾患を意味し、視力障害、視界の消失(loss of sight)、又は失明を引起こす。該後部の病状は、年齢、外傷、外科的処置、及び遺伝性の因子に起因する。いくつかの眼の奥の疾患は;加齢黄斑変性(AMD)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎、及び糖尿病網膜症である。いくつかの眼の奥の疾患は、黄斑変性症又は糖尿病網膜症などの、望ましくない、血管新生又は血管増殖に起因する。これら及び他の症状のための薬剤治療の選択肢を、本明細書の別の場所に更に記載する。
【0047】
(原位置でのヒドロゲル形成のための前駆体の適用)
適用の一方法は、前駆体と他の材料(例えば、治療薬、増粘化剤(viscosifying agent)、促進剤、開始剤など)との混合物を、針、カニューレ、カテーテル、又は中空ワイヤーを通して、眼の中又は近隣部位に適用することである。該混合物を、例えば、手動制御の注射器又は機械制御の注射器(例えば、シリンジポンプ)を使用して送達できる。或いは、二重式注射器(dual syringe)、若しくは多筒式注射器(multiple-barreled syringe)、又はマルチルーメン系(multi-lumen system)を使用して、該部位で又は付近で、前駆体を混合することができる。
試験を行った1つの系は、薬剤を希釈剤に混合すること、かつ200マイクロリッターの薬剤/希釈剤を1mlの注射器に吸引することを含む。トリリジンからなる、約66mgの前駆体粉末を、別の1mlの注射器に注入した。2つのシリンジを、メス-メスのルアー継手を介して取り付け、該溶液を、乾燥前駆体が完全に溶解するまで、注射器間で前後に動かした。多腕の求電子性前駆体の水200μl中の溶液を、第3の1mlの注射器に吸入した。別のメス-メスルアー継手を使用して、再構成したPEG/薬剤の溶液と求電子性前駆体とを混合した。該溶液を、少なくとも約10回、前後に迅速に注入して(inject)、良好な混合を行うようにした。該溶液を1の注射器に吸入し、次いで、更なる使用に利用した。
【0048】
薬剤送達用の貯蔵所を形成することができる部位に含まれるのは、前眼房、硝子体、強膜上、後部テノン下の空間(下円蓋)、結膜下、角膜表面、又は特に結膜である。
眼の奥の疾患は、例えば、局所、全身、眼内、及び結膜下の送達経路を利用して、薬剤で治療することができる。全身及び局所的な薬剤送達様式は、後部の疾患を治療するレベルの治療薬を送達するのに、不十分である。これらの薬剤送達方法は、眼内及び全身系の本来の解剖学的障壁によって、拡散及び薬剤の希釈という問題に直面し、重大な患者の副作用(1日複数回の投与のため)、乏しい生体利用効率、及びコンプライアンス問題を引起こす。結膜下、眼球後方、又はテノン下の空間を使用する、眼部のヒドロゲルインプラントの特定の薬剤送達は、局所及び全身的な経路と比較して、より安全で、かつ強化された網膜への薬剤送達系を提供する可能性を有する。
【0049】
一般に、眼内の薬剤送達インプラントの設置のための送達部位は、治療を要する疾患、及び薬物治療の種類に依存する。例えば;デキサメタゾン及びトリアムシノロンアセトニドのようなステロイドと、ヒドロゲル前駆体とを混合して、徐放性の薬剤インプラントを形成することができる。次いで、液体ヒドロゲルを、テノン嚢下に原位置で注入して、ここで、3〜4ヶ月の期間をかけて、一定の又は調節可能な放出特性の薬剤を送達できる。診療所で、又は局所麻酔下での白内障手術後に、低侵襲的治療を行い、慢性的な眼の奥の疾患を治療することができる。
【0050】
いくつかの実施態様において、開創器80を使用して、眼瞼82を後方に固定し、使用者は、下/鼻の縁から約5〜6mmの結膜に小さなボタン穴84を作り出し(図6A)、かつ該結膜を切開し、テノン嚢を通過して強膜を剥き出す。次に、23ゲージのブラントカニューレ(blunt cannula)86(例えば、長さ15mm)を、開口部を通して挿入し、かつ該液状の薬剤インプラントを、強膜の表面上に注入する(図6B)。次いで、該カニューレを取除き、かつ焼灼装置88を用いて、接合(conjunctive)を閉じる(図6C)。
三次元の統合性を有するインプラントの1つの利点は、細胞浸潤に抵抗する傾向があり、局所的に投与された薬剤が、貪食され、かつ早々に該部位から除去されるのを防ぐことができることである。その代わりに、送達されるまで、それは所定の位置にとどまる。対照として、微小粒子、リポソーム、又はペグ化タンパク質は、生物学的効果を発揮するより前に、網内系によって、体内から迅速に除去される傾向がある。
【0051】
(硝子体内の薬剤送達インプラント)
後部の眼疾患において、治療量の薬剤の網膜への送達は、課題が残っている。抗VEGF剤の硝子体腔への硝子体内注射は、黄斑変性症のような、慢性的な加齢に関わる疾患を抑え、場合によっては、逆転させるという見込みを示したが、これらの技術及び方法は、危険及び副作用を伴わないわけではない。硝子体腔への治療薬の硝子体内投与は、白内障、眼内炎、及び網膜剥離を引起こす恐れがある。この形態の治療は、12ヶ月の期間、毎月抗VEGF剤の眼内注入を受けることを、患者に要求し、このため、感染症、硝子体の芯(wick)及び網膜の剥離の危険が増大する。原位置でのヒドロゲルの生分解性インプラントに向けられた実施態様は、眼の奥の疾患の効果的な代替治療を提供し、かつ硝子体内注射の反復に関連する共通の副作用を低減させることが期待される。硝子体内の生分解性薬剤送達インプラント系の実施態様を、下記に要約する。
【0052】
図7Aにおいて、眼10上の切り口90を可視化するために、固定した拡大鏡94の描写で示されるように、ヒドロゲルのインプラントは、網膜下用カニューレ(sub-retinal cannula)92を使用して、毛様体扁平部の切り口90を通過して、縁の後方約2.5mmに硝子体内に注入され、該切り口は、必要に応じて、結膜の切断、又は除去に続いて作られる。次いで、25、27又は30ゲージの網膜下用カニューレ94(又は他の適切なカニューレ)を、切り口90を通して挿入し、かつ所望の標的部位、例えば、96、98、100の少なくとも1部位に、眼内で位置を合わせ、ここに流動性の前駆体を導入して、ヒドロゲルを原位置で形成する。次いで、該前駆体は、所望の標的部位に接着して、吸収性のゲル102、104、及び/又は106を形成する。
他の節でより詳細に記載するように、原位置のヒドロゲル薬剤送達インプラントの薬剤貯蔵所は、例えば、約1〜約3ヶ月の範囲で、制御された長期の薬剤放出のために設計することができ;かつ例えば、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、及び嚢胞様黄斑を含む、後部の疾患の治療に、任意に向けることができる。該デバイスは、様々な症状に対して、薬剤最大積載量の様々な種類の治療薬を運ぶことができ、該治療薬のいくつかに含まれるのは、例えば、ステロイド、抗生物質、NSAIDS及び/又は抗血管新生薬、並びにそれらの組み合わせである。
【0053】
原位置でのインプラントの実施態様は、慢性的な眼の奥の疾患の治療に有効な治療薬の効率、及び薬物動態を改良することができ、かついくつかの方法で、患者の副作用を最小化することができる。第1に、該インプラントは、局所又は全身的な経路を回避して、特定の疾患部位で、硝子体腔に配置することができ、かつそれによって、薬剤の生物学的利用率を増大させる。第2に、該インプラントは、延長された期間を通して、特定の標的組織部位で局所的な治療濃度を維持する。第3に、硝子体内注射の数は、12ヶ月の治療計画を通して、実質的に減少され、それによって、患者の感染症、網膜剥離、及び硝子体中の薬剤が、中央硝子体又は黄斑の部分から眼の下方の壁に向かって移動するまで起こり得る、一過性の視力障害(硝子体内を白い小片が浮遊する。)の危険が低減される。図8に示すように、従来法で注入される薬剤は、硝子体内に塊120を形成し、かつ分散するまで、硝子体液と置き換わる。典型的には、硝子体液は粘性が高いので、分散にはかなりの時間を要する。従って、該塊は、特に、例えば、患者が立ち上がる、又は速く頭を回すなど、突然の加速に応じて、眼の周りを動く場合に、視覚を妨げる。
【0054】
(経強膜的薬剤送達)
該ヒドロゲルを、結膜が存在する、又は存在なしに、強膜組織上で形成することができる。該ヒドロゲルは、強膜又は強膜付近の他の組織と接着して、対象とする組織を通して、薬剤の拡散を促進する、又は必要に応じて、治療薬を向かわせるための安定した貯蔵所を提供することができる。いくつかの実施態様において、眼の結膜を、除去、浸軟、切断、又は細片化せずに、該ヒドロゲルの埋め込み、又は注射のために、組織を強膜から持ち上げて、強膜の特定領域に接近することができる。ヒドロゲルは、原位置で形成され、表面領域に層を形成し、かつ接着する。該結膜がまだ存在するか、又は接触するのに十分な機械的完全性を維持する場合、該結膜を、該組織と接触させてもよい。いくつかの実施態様において、該ヒドロゲルは、少なくとも50%、75%、80%、90%、又は99% w/wの水溶性の前駆体(水若しくは溶媒、又はヒドロゲル成分の重量を無視するために、親水性前駆体の重量を測定し、全前駆体の重量で割って算出する。)を含み、該ヒドロゲルの非接着特性を強化する。いくつかの実施態様において、そのような親水性前駆体は、実質的に、PEOsを含む。いくつかの実施態様において、組織接着を低減する薬剤は、細胞有糸分裂、細胞遊走、又はマクロファージ遊走若しくは活性化によって媒介され、該薬剤に含まれるのは、例えば、抗炎症剤、細胞分裂抑制剤、抗生物質、PACLITAXEL、MITOMYCIN、又はタキソールである。
【0055】
他の実施態様において、実質的に、強膜から結膜を取り除かない。該結膜は、強膜の大部分又は全てを覆う、重要な組織の塊である。該結膜は、針又はカテーテル又は外套針を、刺す又は貫通させて、強膜と結膜との間の空間に、前駆体を導入することができる。いくつかの場合において、該結膜を刺して、天然の、潜在的な組織間の空間まで、接近し、前駆体で満たす。別の場合において、外套針、開大器、又は同様のもので、強膜と結膜との間の接着を破壊して、潜在的な又は実際の空間を機械的に作り出して、前駆体を導入できるようにする。該結膜は、そのような天然の又は作り出した空間に、有用な量の前駆体を導入する、又は押し込むことができるのに、十分な弾性を有している。同様に、硝子体内のヒドロゲル形成の場合には、比較的大きなカラムも使用できる。従って、いくつかの場合において、該量は、約0.25〜約10mlである(例えば、約1ml又は0.5ml〜約1.5mlなど、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。
【0056】
更に、眼内又は眼周囲に存在するヒドロゲルの除去は、該インプラントが、硝子体腔に導入されている場合は、硝子体切除用カッターを用いて、又は該インプラントが、強膜表面、若しくは洗浄/吸引のハンドピース上にある場合は、手動のI/A注射器、及びカニューレを用いて容易に達成される。これは、いくつかの従来の非吸収性インプラントの除去に必要とされる、主要な外科的手技とは対照的である。
いくつかの態様において、該ヒドロゲルの原位置での形成は、該ヒドロゲルを所定の位置で、ゲル化又は架橋させて、針又はカニューレを取り去るときに、針の管を通って逆流しないようにし、かつ切り口部を通過して外眼に広がらないようにする。このように、形成され、形状が安定したヒドロゲルは、有効に薬剤を送達でき、かつ優位には、適切に制御された、サイズ、形状、及び表面積を有することができる。すでに形成された材料の代わりに、可溶性又は流動性の前駆体を使用することができるので、小口径の針を使用して、材料を注入することができる。対照的に、導入時に、迅速かつ堅固に架橋されない別の材料では、切り口から逆流する傾向がある。更に、共有結合性の架橋を行わない材料は、材料が継続的に再編成し、かつ材料の一部又は全部が流れ出るため、塑性変性又は浸出を起こしやすい。
【0057】
該強膜を横断する送達は、当該分野において、重要な進歩であり、本明細書中に開示される該ヒドロゲル及び他の材料によって可能となる。経強膜の薬剤送達は、強膜組織を横断する薬剤の拡散が未知であるので、従来、検討されなかった。薬剤の実際の拡散が問題となるだけではなく、潜在的な拡散の速度は、他の比較的より浸透性の高いの組織、特に涙又は他の流体産物に応じて拡散するという、競合する薬剤の傾向に対して、釣合いを持たせなければならない。更に、例えば、涙、リンパ液、浮腫、又は異物反応の流れなど、刺激に応答する流体産物もまた、潜在的な因子である。しかし、生体適合性材料及び、様々な利用可能な特徴、例えば、柔軟、生体適合性の分解生成物、周囲組織との適合性、強膜への接着、結膜上、結膜中又は結膜下の適用性、架橋、非刺激性の形状及び成膜技術を使用して、適当な材料にすることができる。
【0058】
(接着)
原位置でのヒドロゲルによる治療において、接着性は、重要な役割を果たすことができる。例えば、強膜組織に接着したヒドロゲルは、該強膜と接触する、良好な表面積を有し、薬剤及び他の試薬の強膜への拡散を促進することができる。対照的に、接着できないと、拡散障壁が生じるか、又は該薬剤貯蔵所と眼との間に液体の侵入を許すため、薬剤が洗い流されてしまう。一方、眼周囲のヒドロゲルが周囲の組織に接着する、又は組織を成長させてヒドロゲルに接着する場合、薬剤の送達は損なわれ得る。従って、強膜(ヒドロゲルの前方表面)にしっかりと接着するが、反対側の表面(被膜の表面の後方)の組織、又は表面(より複雑な形状について)には接着しない、ヒドロゲル貯蔵所が有用であろう。原位置で調製される材料は、ゲル化及び/又は架橋の時間中、該材料の他の表面に組織がない、又は実質的に、接触する組織がないような、強膜上の原位置で物質を形成させることによって、これらの対立する要求を調和することができる。すでに説明したように、いくつかの実施態様は、例えば、強膜及び/又は結膜などの特定部位に接着するヒドロゲルを提供することに関する。
【0059】
ヒドロゲルの組織への接着試験は、特に明記しない限り、ウサギの角膜に適用し、ウサギの自由な瞬きにも関わらず、無傷のウサギの角膜に処置した場合、ヒドロゲルは、固定化され、かつずれないことを示した。対照的に、非接着性の材料は、眼の外に追い出されるか、又は眼の端に追いやられるだろう。
ヒドロゲルを形成することのいくつかの実施態様は、前駆体を混合することを含み、該前駆体は、例えば、患者の組織上の表面に適用後、実質的に、架橋して、生分解性のヒドロゲル貯蔵所を形成する。本発明を特定の操作理論に制限することなく、組織表面と接触後、架橋する反応性の前駆体種は、三次元構造を形成し、被覆された組織と機械的に連結するとされる。この連結は、接着、密接な接触、及び組織の被覆領域の、実質的に連続した被覆に寄与する。更に、強い求電子性官能基を用いる形成は、組織上で求核性基と反応させ、共有結合性の架橋を形成する傾向があるが、但し、求電子剤が適当な濃度で存在し、かつ求核剤が適当なpHで存在する。
【0060】
対照的に、従来の材料は、眼の表面には接着しない傾向がある。例えば、ヒドロゲル製の皮目(lenticel)は、接着しない。例えば、フィブリン糊は、それが眼の組織を幾分貼り付けるという事実は、認められるが、概して、本明細書中の用語としては、接着しない。更に、多くの材料について、それらが、眼の組織、又は特定の眼の組織を接着するかどうかは、一般には知られていない。
接着の別の態様は、該インプラントが対象とする使用部位から、移動するのを防ぐことである。これは、患者の快適性を増大させ、刺激を低減させ、かつ該インプラント内の治療薬に影響を与える、涙を流す又は体液の流れという生体反応を低減させる。また、該インプラントが対象とする部位に作用し続けるという確信とともに、例えば、特定の組織間又は組織上に、該インプラントを正確に配置することができる。
接着は、薬剤送達に有用である。いくつかの実施態様において、例えば、図5のような、特定の領域を接着の標的をする。例えば、薬剤を伴う材料を、強膜及び/又は結膜に接着させることができる。又は、該材料を、眼の内部の表面、眼の前方部分の表面に接着させることができる。いくつかの場合において、該材料は、眼の内部の表面、かつ黄斑の1〜10mm以内に接着することが目標とされる(例えば、10、9、8、7、6、5、4mm未満、又は少なくとも1〜10mm、又は2mm、約25mm以下の距離など、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。別法として、又は例として、該材料の配置に使用することができる、そのような標的は、眼の内側へ向かう位置であり、ここで、該材料が、網膜まで眼を通過する光路に入り込まない。
【0061】
(送達のための薬剤又は他の治療薬)
該ヒドロゲルを使用して、ステロイド、非ステロイド性の抗炎症剤(NSAIDS)、眼圧下降剤、抗生物質、又はその他を含む、各種の薬剤の種類を送達することができる。該ヒドロゲルを使用して、薬剤及び治療薬、例えば、抗炎症剤(例えば、ジクロフェナック)、鎮痛剤(例えば、ブピバカイン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、抗生物質(例えば、シプロフロキサシン)、細胞周期阻害剤(例えば、シプロフロキサシン)、タンパク質(例えば、インスリン)を送達することができる。該ヒドロゲルからの放出速度は、薬剤及びヒドロゲルの特性によって決まり、該特性は、薬剤の大きさ、相対的疎水性、ヒドロゲルの密度、ヒドロゲルの固体含有量、及び例えば、微小粒子などの他の薬剤送達モチーフを含む因子を有する。
【0062】
該ヒドロゲルの前駆体を使用して、ステロイド、NSAIDS(表1参照)、眼圧下降剤、抗生物質、鎮痛剤、阻害剤又は血管内皮増殖因子(VEGF)、化学療法薬、抗ウイルス薬などを含む薬剤の種類を送達することができる。該薬剤、それ自身は、小分子、タンパク質、RNA断片、タンパク質、グリコサミノグリカン、炭水化物、核酸、無機及び有機生物活性化合物とし得る。ここで、特定の生物活性化合物に含まれるのは、限定はされないが:酵素、抗生物質、抗悪性腫瘍薬、局所麻酔薬、ホルモン、抗血管新生薬、増殖因子、抗体、神経伝達物質、精神活性剤、抗癌薬、化学療法薬、生殖器に作用する薬剤、遺伝子、及びオリゴヌクレオチド又は他の立体構造体である。低水溶性の薬剤は、例えば、粒子として、又は懸濁液として組み込むことができる。高溶解度の薬剤は、微小粒子又はリポソーム内に保持することができる。微小粒子は、例えば、PLGA又は脂肪酸から形成することができる。
【表1】
【0063】
いくつかの実施態様において、水性溶液を調製する前、又は官能性ポリマーの無菌製造の間に、該治療薬と該前駆体とを混合する。次いで、この混合物と該前駆体とを混合して、架橋材料を作製し、該架橋材料には、生物活性物質が捕捉される。小分子の疎水性薬剤の放出において、PLURONIC、TETRONICS又はTWEEN界面活性剤のような不活性ポリマーから作製される官能性ポリマーが好ましい。
いくつかの実施態様において、架橋剤及び架橋可能なポリマーが反応して、架橋ポリマー網又はゲルを作製する場合、該治療薬又は試薬は、分離相に存在している。この相分離は、NHSエステルとアミノ基との間の反応など、化学的架橋反応における生物活性物質の関与を防ぐ。「分離相」が、油(水中油乳濁液)、生分解性の媒体などである場合に、この分離相はまた、架橋物質又はゲルからの活性試薬の放出速度を調節するのに役立つ。 活性試薬が存在し得る生分解性の媒体に含まれるのは、微小粒子、微小球、微小ビーズ、マイクロペレット(micropellet)などの封入媒体であり、ここで、該活性試薬は、生侵食性(bioerodable)又は生分解性のポリマーに封入され、該ポリマーは、例えば、下記のポリマー及び共重合体:ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)-コ-ポリ(グリコール酸)、ポリ(オルト炭酸)、ポリ(カプロラクトン)、架橋した生分解性のヒドロゲル、フィブリン糊又はフィブリン組織接着剤などの架橋生分解性のヒドロゲル網、分子の収容及び捕捉、シクロデキストリン類似体、モレキュラーシーブなどである。ポリマー及び(ポリ(ラクトン)とポリ(ヒドロキシ酸)との共重合体から製造される微小球は、生分解性の封入媒体として、特に好ましい。
【0064】
本明細書中に記載される架橋材料の薬剤送達媒体としての使用において、活性試薬又は封入された活性試薬は、架橋剤成分又は官能性ポリマー溶液成分中に、溶液又は懸濁した形態で存在し得る。該架橋剤又は該官能性ポリマーのどちらかに存在する求核性成分が、反応基を持たないため、好ましい媒体となる。該官能性ポリマーを生物活性試薬とともに、封入媒体を用いて、又は用いないで、同量の架橋剤及び水性緩衝液とともに、ホスト(host)に投与する。架橋剤と該官能性ポリマー溶液との間の化学反応は、容易に起こり、架橋ゲルを形成し、活性試薬をホストに放出する貯蔵所として作用する。そのような薬剤送達方法は、活性試薬の全身及び局所投与の両方に使用を見出す。
【0065】
これらの系を使用して、様々な薬剤又は治療薬を、送達することができる。試薬又は薬剤の系統の一覧、及び該薬剤の適応症の例を提供する。また、該薬剤は、示された症状を治療する、又は示された症状を治療するための組成物を製造する方法の一部として使用される。例えば、AZOPT(ブリンゾラミド眼科用懸濁剤(opthalmic suspension))を使用して、高眼圧症又は開放隅角緑内障の患者の眼圧の上昇を治療することができる。ポビドンヨード眼科用液剤中のBETADINEを使用して、眼周囲部の消毒(prepping)及び眼表面を洗浄することができる。BETOPTIC(ベタキソロールHCl)を、眼内の圧力の低下、又は慢性開放隅角緑内障、及び/又は高眼圧症に使用することができる。CILOXAN(シプロフロキサシンHCl眼科用液剤)を使用して、微生物の感受性系統に起因する感染症を治療することができる。NATACYN(ナタマイシン眼科用懸濁剤)を使用して、真菌性の眼瞼炎、結膜炎、及び角膜炎を治療することができる。NEVANAC(ネパフェナク眼科用懸濁剤)を使用して、白内障手術に関連する疼痛及び炎症を治療することができる。TRAVATAN(トラボプロスト眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障、又は高眼圧症による眼圧の上昇を低減させることができる。FML FORTE(フルオロメトロン眼科用懸濁剤)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部の、副腎皮質ステロイド応答性の炎症を治療することができる。LUMIGAN(ビマトプロスト眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障、又は高眼圧症による眼圧の上昇を低減させることができる。PRED FORTE(酢酸プレドニゾロン)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部のステロイド応答性の炎症を治療することができる。PROPINE(塩酸ジピベフリン)を使用して、慢性開放隅角緑内障の眼圧を制御することができる。RESTASIS(シクロスポリン眼科用乳剤)を使用して、例えば、乾性角結膜炎と関連する眼の炎症を有する患者の、涙の産生を増加させることができる。ALREX(エタボン酸ロテプレドノール)を使用して、季節性アレルギー性結膜炎を一時的に軽減することができる。LOTEMAX(エタボン酸ロテプレドノール眼科用懸濁剤)を使用して、眼瞼及び眼球結膜、角膜、並びに眼球前部の、ステロイド応答性の炎症を治療することができる。MACUGEN(ペガプタニブナトリウム注射剤)を使用して、血管新生(滲出型)加齢黄斑変性を治療することができる。OPTIVAR(塩酸アゼラスチン)を使用して、アレルギー性結膜炎と関連する眼のそう痒を治療することができる。XALATAN(ラタノプロスト眼科用液剤)を使用して、例えば、開放隅角緑内障又は高眼圧症の患者の眼圧の上昇を低減することができる。BETIMOL(チモロール眼科用液剤)を使用して、開放隅角緑内障又は高眼圧症の患者の眼圧の上昇を低減することができる。
【0066】
前述の薬剤送達のための架橋組成物の使用において、架橋可能なポリマー、架橋剤、及びホストに導入される投与試薬の量は、特定の薬剤、及び治療される症状に必然的に応じるであろう。任意の従来の方法、例えば、注射器、カニューレ、外套針、カテーテルなどによって、投与することができる。
本発明の特定の実施態様は、ヒドロゲルを用いて比較的低分子量の治療種の放出を制御するための、組成物及び方法を提供することによって達成される。まず、治療薬を、1つ以上の比較的疎水性の速度調節剤とともに、分散又は溶解させて、混合物を形成する。該混合物を、粒子又は微小粒子状に形成することができ、次いで、これを、生体吸収性のヒドロゲルマトリックス内に捕捉して、制御された方法で水溶性の治療薬を放出する。別法として、該微小粒子は、ヒドロゲルの架橋の間、原位置で形成することができる。
【0067】
一方法において、重合可能なマクロマー又はモノマーから、第2の不混和相に重合可能な相を分散させることによって、ヒドロゲルの微小球を製造し、ここで、該重合可能な相は、少なくとも1つの、架橋を起こす重合を開始するのに必要な成分を含有し、かつ該不混和性のバルク相は、架橋を開始するのに必要な別の成分を、相間移動剤とともに含有する。水溶性の治療薬を含有する、予め形成した微小粒子を、該重合可能な相に分散させて、又は原位置で形成して、乳濁液を形成することができる。該乳濁液と不混和相との重合、及び架橋は、重合可能な相が適切な大きさの微小球に分散した後、制御された方法で開始され、このように、ヒドロゲルの微小球中に、微小粒子を捕捉する。可視化剤(visualization agent)を、例えば、微小球、微小粒子、及び/又は微小滴中に含むことができる。
本発明の実施態様は、複合性のヒドロゲルベースのマトリックス、及び捕捉された治療用化合物を有する微小球を形成するための、組成物及び方法を含む。一実施態様において、生物活性試薬が、疎水性(疎水性微小領域とも呼ばれる)を有する微小粒子に捕捉され、捕捉された試薬の漏れ出しを抑制する。いくつかの場合において、該複合性材料は、2相の分散を有し、どちらの相も吸収性であるが、混和しない。例えば、該連続相を、親水性のネットワーク(架橋された、又はされていないヒドロゲルなど)とし、一方、分散相を、疎水性(油、脂肪酸、ワックス、フッ化炭素、若しくは他の合成物、又は概して、本明細書中で、「油」又は「疎水性」相と呼ばれる、天然の水不混和性の相)とし得る。
【0068】
該油相は、薬剤を捕捉し、かつ障壁を与え、ヒドロゲル内への薬剤の分配を遅延させて放出する。該ヒドロゲル相は、リパーゼなどの酵素による消化、並びに天然の環状脂質及び界面活性剤による溶解から、順に該油を保護する。後者は、例えば、疎水性、分子量、立体構造、拡散抵抗などのために、ヒドロゲルへの限定的な浸透のみを有することが期待される。疎水性薬剤の場合、該ヒドロゲルマトリックスへの限定的な溶解性を有し、該薬剤の粒子形態はまた、放出速度調節剤としての機能を果たす。
インビボで投与される場合、疎水性微小領域は、それら自身で、分解され又は早急に除去され、これが、捕捉された試薬を含有する微小滴又は微小粒子を直接用いて、持続型の放出を達成するのを困難にさせる。該ゲルマトリックスは、疎水性微小領域を急速な排除から保護するが、該微小滴又は微小粒子の能力を損なうことなく、それらの内容物を徐々に放出する。例えば、ゲルマトリックス又は微小領域中に、可視化剤を含むことができる。
【0069】
一実施態様において、疎水性相と、タンパク質、ペプチド、又は他の水溶性の化学種などの水溶性分子化合物の水性溶液とのマイクロエマルションを製造する。該乳濁液は、「水中油」系(水が連続相である。)とは対照的に、「油中水」型(連続相として油を用いる。)の系である。薬剤送達の他の態様は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,632,457号;第6,379,373号;及び第6,514,534,号に見出され、これらのそれぞれは、参照により本明細書中に組込まれている。更に、自己の「生分解性ヒドロゲルからの薬剤送達制御のための組成物及び方法(Compositions And Methods For Controlled Drug delivery From Biodegradable Hydrogels)」(現在60/899,898分野02-06-07)に記載の薬剤送達のスキームを参照により本明細書中に組込み、また、本明細書中に、該ヒドロゲルとともに使用することができる
また、分解可能な、生物活性分子の共有結合で架橋されるヒドロゲル網による、本明細書中に開示される系を用いて、制御された薬剤送達速度を得ることができる。該共有結合の性質は、数時間〜数週間又はそれ以上で、放出速度を調整できるように制御し得る。一連の加水分解時間の結合から製造される複合体を使用することによって、制御型放出特性を、より長時間に延長することができる。
【0070】
(生分解)
一般に、該ヒドロゲルは、水分解性基の分解によって、インビトロにおいて過剰の水に溶けるほどの、水分解性である。この試験は、インビボでの加水分解による溶解の予測となり、その進行は、細胞又はプロテアーゼによる分解とは対照的である。該ヒドロゲルは、選択した薬剤、治療する疾患、所要の放出期間、及び選択した特定の薬剤の放出特性に応じて、数日、数週間又は数ヶ月かけて吸収可能とするように選択され得る。しかし、いくつかの実施態様では、具体的に、30〜120日とされ、その理由は、より長い期間は、投与計画の使用者制御をより少なくさせるからであり、該薬剤が目的の効果を発揮しない場合、重要な因子となり得る。
該生分解性の結合は、水分解性又は酵素分解性とし得る。例示的な水分解性、生分解性の結合に含まれるのは、ポリマー、グリコリドの共重合体及びオリゴマー、dl-ラクチド、1-ラクチド、ジオキサノン、エステル、カルボナート及び炭酸トリメチレンである。例示的な酵素的生分解性の結合に含まれるのは、メタロプロテイナーゼ及びコラゲナーゼによって切断可能な、ペプチド性の結合である。生分解性の結合の例に含まれるのは、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルト炭酸)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(炭酸)、及びポリ(ホスホン酸)である。
【0071】
しかし、重要なのは、ポリ酸無水物、又は他の通常使用される分解可能な物質は、酸性成分に分解され、眼中で炎症を引起こす傾向があることである。しかし、該ヒドロゲルは、そのような物質を除くことができ、ポリ酸無水物、無水物結合(anhydride bond)、又は酸又は二酸に分解する前駆体を含まないことができる。代わりに、例えば、SG(グルタル酸スクシンイミジル)、SS(コハク酸スクシンイミジル)、SC(炭酸スクシンイミジル)、カルボキシメチルヒドロキシ酪酸(CM-HBA)を使用することができ、かつ加水分解的に不安定なエステル性の結合を有する。
該生体適合性の架橋ポリマーが、生分解性又は吸収性であることが望ましい場合、官能基間に生分解性の結合が存在する、1つ以上の前駆体を使用することができる。該生分解性の結合は、1つ以上の該前駆体の水溶性の母核としても、任意に機能することができる。それぞれの方法について、生分解性の結合を選択して、得られる生分解性の、生体適合性の架橋ポリマーは、所望の期間内に分解、又は所望の期間内に吸収されるようにすることができる。
【0072】
一般に、該架橋ヒドロゲルの分解は、水分解性の材料を使用する場合、生分解性部位の、水による加水分解によって進行する。ポリグリコラートを生分解性部位として使用する場合、例えば、該網の目の架橋密度に応じて、約1〜約30日で分解するように、架橋ポリマーを作製することができる。同様に、ポリカプロラクトンベースの架橋網を、約1〜約8ヶ月で分解されるように、作製することができる。一般に、分解時間は、使用する分解可能な部位の型によって、次の順:ポリグリコラート<ポリラクタート<ポリトリメチレンカルボナート<ポリカプロラクトンで変化する。このように、分解可能部位を用いて、数日〜数ヶ月もの所望の分解特性を有するヒドロゲルを、構築することが可能である。
【0073】
(可視化剤)
該ヒドロゲルとともに可視化剤を使用する。それは、ヒトの眼で検出可能な波長の光を、反射する又は発光して、ヒドロゲルを適用する使用者が、該ゲルを観察できるようにする。
好ましい生体適合性の可視化剤は、FD&C BLUE #1、FD&C BLUE #2、及びメチレンブルーである。より大きな濃度を、可視化剤の溶解度の限界まで、潜在的に使用することができるが、好ましくは、これらの試薬は、最終的な求電子性-求核性反応前駆体種の融合体が、0.05mg/mlより大きい濃度、かつ好ましくは、少なくとも0.1〜12mg/mlの濃度、かつより好ましくは、0.1〜4.0mg/mlの範囲で存在する。これらの濃度範囲は、架橋時間(反応性前駆体種がゲル化する時間で測定される。)に干渉するすることなく、ヒドロゲルに色を与えることができる。
【0074】
可視化剤は、医療用の埋め込み可能な医療装置に使用するのに適した、様々な無毒性の着色物質のいずれかから選択することができ、該着色物質は、例えば、FD&C BLUE染料3及び6、エオシン、メチレンブルー、インドシアニングリーン、又は合成手術縫合糸に通常見られる着色染料などである。該可視化剤は、例えば、架橋剤などの反応性の前駆体種、又は官能性ポリマー溶液のいずれかとともに、存在することができる。好ましい着色物質は、該ヒドロゲルへの化学的な結合を形成できる、又はできない。一般に、該可視化剤は、少量、好ましくは、1%重量/容積未満、より好ましくは、0.01%重量/容積以下、かつ最も好ましくは、0.001%重量/容積未満の濃度で、使用することができる。
加えて、機械支援の造影剤、例えば、蛍光化合物、X線画像装置で画像処理するためのX線造影剤(例えば、ヨウ素化合物)、超音波造影剤、又はMRI造影剤(例えば、ガドリニウム含有化合物)を使用することができる。
【0075】
(粘性)
本明細書において、混合された前駆体を有する組成物は、手動で小口径の針を通して導入するのに適した粘度で調製される。小口径の針は、針の直径が27ゲージ以下、例えば、28、29、30、31、32、又は33ゲージの直径を有する。更に、血管内の分野で使用される、中空管ワイヤーを使用して、該物質を送達することができ、内径及び/又は外径が、小口径の針と等しいか、又は小さいものが含まれる。従って、約1〜約100,000センチポアズの粘度を使用することができる(例えば、約10〜約10,000センチポアズ、約5未満〜約10,000センチポアズ、約100未満若しくは約500センチポアズ、又は約1〜約100センチポアズなど、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。該粘性は、例えば、適切な前駆体の選択、固形物濃度の調整、及び反応速によって制御することができる。一般に、前駆体の濃度が低いほど、親水性が増加し、分子量が低いほど、低い粘性となる。
増粘剤(viscosity enhancer)を前駆体とともに、使用することができる。一般に、該増粘剤は、該前駆体と反応して、共有結合を形成することはない。一般に、前駆体は、望ましくない副反応に関与する場合があり得る、そのような結合を含まないことが理解されると同時に、これらは、該ヒドロゲルに対して影響を与えないようにして、前駆体が、このような反応を「含まない」ようにする。例えば、該前駆体が、求電子-求核反応によって反応する場合に、低レベルの望ましくない副反応がいくつか存在する場合であっても、該増粘剤は、該前駆体の官能基と共有結合を形成することができる、求電子剤又は求核剤を含まないことができる。一般に、増粘剤は、少なくとも20,000、又は約10,000〜約500,000ダルトンの分子量を有する親水性ポリマーである(例えば、少なくとも約100,000又は200,000など、全ての値及び範囲が、明記されている値の間で記載されていることが、当業者には、直ちに理解されよう。)。例えば、約5%〜約25% w/wの濃度を、使用することができる。例えば、PEG(例えば、M.W. 100,000〜250,000)が有用である。増粘剤は、求電子剤及び/又は求核剤を含まないことができる。増粘剤は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、又はチオールなどの、1つ以上の官能基の対価(fee)とし得る。増粘剤は、前駆体に対して、1つ以上の本明細書記載の生分解性結合を含むことができる。増粘剤は、前駆体が架橋してゲルを形成する前に、前駆体が組織部位から流出するのを防ぐのに役立つことができる。
【0076】
(概観)
合成前駆体を使用して作製した、特定の重合可能なヒドロゲルが、医療分野で公知であり、例えば、FOCALSEAL(Genzyme社)、COSEAL(Angiotech Pharmaceuticals社)、及びDURASEAL(Confluent Surgical社)などの製品に使用され、例えば、米国特許第6,656,200号;第5,874,500号;第5,543,441号;第5,514,379号;第5,410,016号;第5,162,430号;第5,324,775号;第5,752,974号;及び第5,550,187号;に記載されている(これら文献のそれぞれは、本明細書にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)。これらの物質のどれも、眼の中又は眼の周囲での使用に適さないようである。これらは、制御された方法で注射するには、重合が速すぎるというのが、1つの理由である。また、COSEAL及びDURASEALは、非常に高いpHを有しており、眼の組織に有害となる恐れがある(pH9より高い。)。別の理由は、明らかに、それらは、大きく膨潤するということである。COSEAL及びDURASEALの膨潤は、フィブリン組織接着剤と比較して、インビトロモデルを使用して、測定されている(Campbellらの文献, 「吸収性外科用充填剤の評価:インビトロ試験(Evaluation of Absorbable Surgical Sealants: In vitro Testing)」, 2005)3日にわたる試験で、COSEALは、平均約558重量%膨潤し、DURASEALは、平均約98重量%増加し、かつフィブリン組織接着剤は、約3%膨潤した。全ての軸に沿って均一に膨張したとすると、単一の軸におけるパーセントの増加は、COSEAL、DURASEAL、及びフィブリン組織接着剤に対して、それぞれ87%、26%、及び1%と計算される。FOCALSEALは、300%を上回る膨潤が公知である。かつ活性化するために、外部の光が必要であり、そのため、特に、そのような照射に敏感な眼の中又は周囲の、注入可能な薬剤送達貯蔵所としては、あまり適したものではない。フィブリン組織接着剤は、タンパク質性の接着剤であり、接着性、密封性、及びCOSEAL、DURASEAL、及び本明細書中に記載される他のヒドロゲルより劣る機械的特性を有する。更に、典型的には、それは、潜在的に異物が混入した、生物供給源由来であり、水による分解とは異なる機構で、身体から除去され、かつ通常、保管する間は、冷凍を要する。
【0077】
傷を癒す又は角膜上にレンズを与える、いくつかのゲル系が存在し、例えば、米国特許第5,874,500号、第6,458,889号、第6,624,245号、又はPCT WO2006/031358又はWO2006/096586など;他のゲル又は薬剤送達用の系が、米国特許第6,777,000号、第7,060,297号、US2006/0 182771、US2006/0258698、US2006/0100288、又はUS2006/0002963に記載されている(これら文献のそれぞれは、本明細書中にて明確に開示されたものと矛盾しない限りにおいて、その範囲が本明細書に参照により組込まれている。)。
眼に薬剤を送達するためのいくつかの系は、外用の点眼薬に頼っている。例えば、白内障及び硝子体網膜の手術後、数日の間、数時間毎に抗生物質を投与する必要がある。加えて、非ステロイド性の抗炎症剤(NSAIDS)などの他の薬剤もまた、頻繁に施す必要がある。多くの場合、これら点眼薬のいくつかは、例えば、RESTASIS(Allergan社)もまた、投与と関連する、刺すようなかつ焼けるような感覚を有する。RESTASISは、ドライアイに適応され、一日に数回、患者によって使用されなければならない。同様に、他の眼の疾患、例えば、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病黄斑浮腫(DME)、及び糖尿病網膜症などの治療も、ステロイド又はNSAID剤の投与が必要である。黄斑変性症などの、いくつかの血管増殖性疾患は、VEGF阻害剤の硝子体内注射を用いて治療される。VEGF阻害剤は、LUCENTIS及びAVASTIN(Genentech社)及びMACUGEN(OSI社)などの薬剤を含む。そのような薬剤を、本明細書中の該ヒドロゲルの系を用いて、反復投与の措置を避けて;例えば、毎日、毎週、又は毎月の薬剤を新たに適用させずに、又は薬剤を投与するのに外用の点眼薬を用いることなく、送達することができる。
【0078】
いくつかの別の薬剤送達系が公知である。一般に、これら他の系に含まれるのは、硝子体内の埋め込み式リザーバー型の系(implant reservoir type system)、生分解性の貯蔵系(biodegradable depot system)、又は除去を要するインプラント(非侵食性)である。この関連での最新の技術は、「眼内薬剤送達(Intraocular Drug Delivery)」(Jaffeらの文献, Taylor & Francis出版, 2006)などの書籍に詳細に記述されている。しかし、これらインプラントの多くは、期間終了時に取除くことを必要とするか、それらの標的部位から取り外すことができ、眼の奥の視力障害を引起こす、又は相当量の酸性分解生成物の遊離により、それら自身が炎症性のものとなる恐れがある。このように、これらのインプラントは、非常に高い薬剤濃度を有する、非常に小型のものとされる。それらは、小型ではあるが、25G(25ゲージ)のサイズを上回る針を使用して配置される、又は必要に応じて、埋め込み又は除去のための外科的方法の送達系を、いまだ必要とする。一般に、これらは、液剤を硝子体液又は硝子体内の埋め込みに局所注射され、生分解性による方法、又は取り外し可能なリザーバーによる方法を使用する。
例えば、硝子体液に送達する局所注射は、抗VEGF剤、LUCENTIS、又はAVASTINを含有する。POSURDEX(Allergan)は、生分解性のインプラントであり、使用の症状は、糖尿病黄斑浮腫(DME)又は網膜静脈閉塞症であり、22gの送達系を用いて硝子体腔に送達され;これらは、短い薬剤送達期間が設定されている、劇薬である。ポリ乳酸/ポリグリコール酸ポリマーマトリックスを有するデキサメタゾンである。糖尿病網膜症に対するPOSURDEXの第III相試験が、進行中である。
【0079】
例えば、Medidureインプラント(PSIVIDA)が、DMEの症状に使用される。このインプラントは、直径約3mm、円柱状、及び非侵食性である。これは、25ゲージの注射器送達系で設置され、治療薬はフルオシノロンアセトニドであり、18ヶ月又は36ヶ月(2つの型)の名目上の送達期限を有する。第III相試験が、進行中である
Surmodics社は、硝子体内用、除去可能なインプラント製品を有する。それは、外科的に配置され、治療薬は、トリアムシノロンアセトニドである。名目上の送達期限は、約2年である。症状は、DMEである。現在、第I相試験について進行している。
【0080】
こうした従来の系と対照的に、ヒドロゲルは、他の環境とは極めて異なる環境の眼に、生体適合させることができる。炎症性材料の使用を最小限にして、多くの場合、眼に有害な血管新生を回避する。このように、生体適合性の眼用材料は、意図しない血管新生を避け;いくつかの態様において、酸性分解生成物を回避することで、この目的を到達する。更に、ヒドロゲル及び親水性材料(少なくとも1グラム/リッターの水への溶解度を有する成分、例えば、ポリエチレングリコール/酸化物)を使用することによって、炎症細胞の流入も、最小化され;この方法は、非ヒドロゲル、又は強固なリザーバー型の眼用インプラントの従来の使用とは対照的である。更に、特定のタンパク質を避けて、生体適合能を強化することができ;例えば、コラーゲン又はフィブリン糊は、分解時に生物活性を促進する信号を発するので、これらは、炎症又は望ましくない細胞反応を促進する傾向がある。代わりに、合成材料が使用されるか、又はペプチド配列は通常、天然に見られないものである。更に、該ヒドロゲルは、眼が繊細な組織であることを踏まえて、外部エネルギーなしに、及び/又は光活性化なしに作製され、組織の過熱又は分解を避けることができる。加えて、生分解性の材料を使用して、例えば、熱的に形成されたゲルが、分解しないような、慢性的な異物反応を回避することができる。更に、軟質材料、又は周囲の組織の形状に適応するように、原位置で作製される材料は、眼性の歪みを最小化することができ、かつ低膨潤性材料を使用して、膨潤に起因する視界の歪みを排除できる。形成、導入の両方、又は分解の段階において、高いpHの材料を避けることができる。
【0081】
(キット又は系)
ヒドロゲル作製のためのキット又は系を製造することができる。該キットは、医療として許容し得る条件を使用して製造され、かつ無菌性、純度、及び医薬として許容し得る製造方法を有する前駆体を含む。該キットは、必要に応じて塗布器、及び取扱説明書を含むことができる。治療薬は、予め混合したもの、又は混合に利用できるものを含むことができる。溶媒/溶液を、一式で若しくは別々に提供することができ、又は該成分を、溶媒を用いて予め混合することができる。該キットは、混合及び/又は送達のための、注射器及び/又は針を含むことができる。
いくつかの実施態様において、該キットは、少なくとも1つの前駆体及び塗布器を有する。いくつかの実施態様において、生分解可能な、ポリマーの、合成ヒドロゲルは、それぞれの腕の各末端にNHS-エステルを有する、8本腕の分子量15,000のポリエチレングリコール(PEG)と、トリリジン(一級アミンの求核剤を有する。)との、リン酸及び他の緩衝溶液中での反応によって形成される。可視化剤(例えば、FD&C Blue #1)を、該密封剤に組込むことができる。
【0082】
いくつかの実施態様において、該キットの塗布器は、注射器と注射器間の混合のための注射器を含む(又は実質的に該注射器からなる。)。該送達装置は、注射器の1つであり、かつ少なくとも一端にルアーロックを備える小口径の管を有する。該製品の再構成後、塗布器の管を送達用注射器に取り付け、かつ該ヒドロゲルを標的の組織に塗布する。
いくつかの実施態様において、前駆体、及び原位置でのヒドロゲル形成に必要な他の材料を、治療薬とともに有するキットを提供することができ、該構成成分には、本明細書中に記載のものが含まれる。従って、いくつかの態様において、該ヒドロゲルの特徴を選択して、該ヒドロゲルを、わずかにしか膨潤しない、細い針を通って送達される、配置の後にゲル化するように水性、低粘性の調製品になるようにさせることができる。該ヒドロゲルは、炎症性又は血管新生性がなく、生体適合性の前駆体に依っており、かつ柔軟、親水性、かつ配置された空間に適合する。該ヒドロゲルは、容易に除去する、又は自ら取除くことができ、かつ生分解性とし得る、又は分散せずに容易に到達可能な領域への送達に適合することができる。単一の容器で全ての前駆体を組合せる選択によって、混合及び使用が容易であるようにさせることができる。該ヒドロゲルは、安全な、全て合成の材料で作製することができる。該ヒドロゲルの形成は、組織に接着するように作製することができる。分解及び/又は送達速度を制御して、記載される時間に適合させることができる。該ヒドロゲルは、架橋されているため、沈殿したように形状が安定しているので、針の管又は送達のために作り出された他の穴から流れ出ることはない。該ヒドロゲルの貯蔵所は、点眼薬と比べて優位である。97%を超える、外用で投与された点眼薬が、涙管によって排除され、結局眼を浸透することにはならない。反復投与が回避されることで、患者コンプライアンスを向上することができる。
【0083】
生分解性の薬剤貯蔵所を形成するための流動性の水性前駆体の使用は、細い(例えば、30ゲージ)針を介する投与を可能にする。また、該ヒドロゲルは、分解して、酸性の副生成物にならないようにすることができ、該薬剤貯蔵所は、眼のような繊細な組織に、十分に寛容なものである。これにより、該インプラントは、従来の生分解性ポリマーで作製されたインプラント(従来のインプラントは、より小さいものである)と比べて、ある程度大きなサイズ(例えば、1mlの容量)で作製することができる。従って、いくつかの実施態様は、約0.5〜約5mlの容積を有するヒドロゲルである(例えば、0.5ml〜約1mlなど、全ての範囲及び値が、明記されている範囲内であることを企図することが、当業者には、直ちに理解されよう。)。これは、そうしたヒドロゲルを、眼周囲(強膜上又は後部テノン嚢下注入(PST))の薬剤貯蔵所に著しく適したものにさせる。
該ヒドロゲル又は他の架橋材料の1つの中のいくつかの試薬は、眼周囲の経路を通って、体循環で失われ得るが、一方、非常に大きなインプラントのサイズは、治療薬濃度を保持し、かつヒトの強膜の表面積が約17cm2であることを踏まえ、該強膜を横断して、かつ眼の奥への向かう、薬剤の適切な経強膜的な拡散を可能にするように、大きなインプラントを適応させる、能力を有する。また、該ヒドロゲルは、薬剤の局在化に有用である。対照として、薬剤の懸濁液又は微小粒子を、硝子体内に注入する場合、それらは視野を移動し、かつ視覚を妨げる恐れがある。
【実施例】
【0084】
(実施例1、ヒドロゲルへの薬剤の組込み)
2つの前駆体及び希釈剤を調製した。第1の前駆体は、各腕の末端にグルタル酸スクシンイミジルを有する、8本腕のポリエチレングリコールであり、約15,000の分子量を有する。該前駆体は、粉末で提供され、0.11% w/wの濃度の染料(FD&A Blue)と配合した。第2の前駆体は、0.2Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH8)中のトリリジンであった。該第1の前駆体のための希釈剤を、0.01Mのリン酸ナトリウム(pH4.8)に調製した。
薬剤(下記実施例に示される)を、希釈剤中の薬剤に混合し、かつ約200μlの薬剤/希釈剤を、1mlの注射器に吸入した。66mgの第1の前駆体の粉末を、別の1mlの注射器に入れた。2つの注射器を、メス-メスのルアー継手を介して取り付け、かつ該溶液を、該粉末が完全に溶解するまで、前後に動かした。溶液中の第2の前駆体を、第3の注射器に吸い込んだ(200μl)。別のメス-メスのルアー継手を用いて、該第1及び第2の前駆体を十分に混合した。該混合溶液を注射器の1つに吸い込んで、内容物を受け取る、長さ4インチのシリコンチューブを取り付けた。適当な反応時間を与えた後、該チューブを所望の長さに切り取り、かつ内部のゲルをマンドレルで押出した。得られたヒドロゲルのプラグは、概して、直径0.125インチ、及び厚さ約6.4 mmであった。
特に明記しない限り、薬剤放出特性の分析は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて確認した。ディスクを溶液で保持し、かつ該溶液を定期的に採取し、HPLCで試験して、溶液中の薬剤濃度を測定した。全薬剤導入を、該ディスクを水溶液、又はオクタノールのようなアルコールの存在下、高pHで溶解させ、ディスク中の薬剤含有量を測定することによって測定した。特に明記しない限り、薬剤導入は、5%(薬剤の重量/内容物を含むヒドロゲルの全重量)であった。
【0085】
(実施例2:ジクロフェナクナトリウムの放出)
ジクロフェナクナトリウムは、約1113mg/Lの水溶解度を有する。該ジクロフェナクナトリウムは、抗炎症剤である。該ジクロフェナクナトリウムは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図9に示すように放出された。約8時間で、実質的に、完全な薬剤の放出が、観察された。
【0086】
(実施例3:ブピバカインの放出)
ブピバカインは、約86mg/Lの水溶解度を有する。該ブピバカインは、鎮痛剤であり、HCl塩から遊離塩基に変換され、水溶解度が低減した。該ジクロフェナクナトリウムは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図10に示すように放出された。徐放型のゼロ次放出が、6日間にわたって観察された。
【0087】
(実施例4:ニフェジピンの放出)
ニフェジピンは、約1mg/L未満の水溶解度を有する。該ニフェジピンは、カルシウムチャネル遮断薬及び降圧薬であり、心臓への血流を増加させて、狭心症を軽減する。該ニフェジピンは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図11に示すように放出された。徐放型のゼロ次放出が、45日間にわたって観察された。
【0088】
(実施例5:シプロフロキサシンの放出)
シプロフロキサシンは、約160mg/Lの水溶解度を有する。該シプロフロキサシンは、抗生物質である。該ニフェジピンは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図12に示すように放出された。図12は、pH9.0(四角)又はpH7.4(丸)での試験を示す。3日までに、50%の薬剤が放出された。
【0089】
(実施例6:メフェナム酸の放出)
メフェナム酸は、疼痛を治療するための、NSAIDである。該メフェナム酸は、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図13に示すように放出された。図13は、pH9.0(四角)又はpH7.4(丸)での試験を示す。後の時間のその成分への更なる分解が、更なる量の薬剤を放出するが、それは、約15日を通して放出された。
【0090】
(実施例7:インドメタシンの放出)
インドメタシンは、疼痛の治療をするための別のNSAIDである。該インドメタシンは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図14に示すように放出された。図14は、pH9.0(四角)又はpH7.4(丸)での試験を示す。該図は、約6日間の放出特性を示す。更なる放出を、観察したが、定量化されなかった。
【0091】
(実施例8:トリアムシノロン)
トリアムシノロンは、極めて小さな水への溶解度を有し、通常、注射、吸入、又は局所的なクリームによって、経口で投与される合成副腎皮質ステロイドである。該トリアムシノロンは、導入量が5%の代わりに約4%であった以外は、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図15に示すように放出された。図15は、約1週間までの試験を示す。
【0092】
(実施例9:デキサメタゾンの放出)
デキサメタゾンは、グルココルチコイド系のステロイドホルモンである。該デキサメタゾンは、抗炎症剤及び免疫抑制剤として作用する。該デキサメタゾンは、実施例1のようにヒドロゲルに導入され、かつ図16に示すように放出された。該図は、約6日間の放出特性を示す。更なる放出を、観察したが、定量化されなかった。
【0093】
多くの実施態様を本明細書に記載した。総じて、実施態様の成分は、機能的な実施態様にするための要求に導かれるように、互いにうまく組合せることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬を眼に送達するための合成生体適合性ポリマーヒドロゲルであって、
第1の合成前駆体が、第2の合成前駆体と共有結合により架橋して、該生体適合性のヒドロゲルを形成し、
該ヒドロゲル中の治療薬は、少なくとも約2日の期間中、該ヒドロゲルから放出され、
ここで、該第1の前駆体及び第2の前駆体のそれぞれが、水分解性基を含み、
該ヒドロゲルが、24時間の生理溶液への曝露時に、形成時のヒドロゲルの重量と比べて、該ヒドロゲルの重量が約50%以下の増加であるほど、低膨潤性であり、かつ
該ヒドロゲルが、水分解性基の分解によって、インビトロにおいて過剰の水に溶けるほどの、水分解性である、前記ヒドロゲル。
【請求項2】
前記ポリマーの親水性部分が、ポリ(エチレン)グリコールの繰返しを含む、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項3】
前記第1の前駆体が架橋前に求核性官能基を含み、かつ前記第2の前駆体が架橋前に求電子性官能基を含み、かつ該求核性官能基が該求電子性官能基と反応して、該前駆体を共有結合的に架橋する、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項4】
前記ヒドロゲルが、前記前駆体上の官能基のラジカル重合によって形成される、共有結合を含む、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項5】
前記治療薬が、眼の奥の疾患を治療するのに有効である、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項6】
前記治療薬が、小分子の薬剤、タンパク質、核酸、又は成長因子を含む、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項7】
前記ヒドロゲル内に捕捉された粒子が、該相に治療薬を含み、該治療薬が放出される期間中の放出速度を遅くさせることを更に含む、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項8】
前記治療薬が、前記ヒドロゲルの水相中の懸濁液である、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項9】
前記粒子が、リポソーム、ミセル、及び疎水性の液滴からなる群の一員である、請求項7記載のヒドロゲル。
【請求項10】
前記水分解性基がエステルである、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項11】
前記期間が約2日〜約2年の範囲内である、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項12】
少なくとも約100,000の分子量の水溶性の粘性化ポリマーを更に含み、該ポリマーが、前記前駆体と共有結合を形成する官能基を含まない、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項13】
眼周囲又は眼球内の原位置で共有結合性架橋ヒドロゲルを形成することを含む、患者の眼を侵す眼病の治療方法であって、該ヒドロゲルが、少なくとも約2日の期間をかけて、眼中に放出されて該眼病を治療する治療薬を含む、前記方法。
【請求項14】
前記眼周囲部位が、結膜、結膜下、強膜上、及び後部テノン嚢の部位からなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記部位が眼の強膜である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記部位が強膜の表面であり、前記ヒドロゲルが該部位に接着し、かつ別の組織には接着しない、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記部位が強膜の表面であり、前記ヒドロゲルが該部位に接着し、かつ実質的に、強膜と結膜との間に配置される、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドロゲルが結膜に接着しない、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記眼球内の部位が、眼の硝子体又は後眼房である、請求項11記載の方法。
【請求項20】
前記部位が眼球内であり、該ヒドロゲルが約0.5ml〜約1.5mlの容量を有する、請求項11記載の方法。
【請求項21】
前記ヒドロゲルが、24時間の生理溶液への曝露時に、形成時のヒドロゲルの重量と比べて、該ヒドロゲルの重量が約50%以下の増加であるほど、低膨潤性である、請求項11記載の方法。
【請求項22】
前記ヒドロゲルが、水分解性基の分解によって、インビトロにおいて過剰の水に溶けるほどの水分解性である、請求項11記載の方法。
【請求項23】
前記ヒドロゲルが、求核性基を含む第1の合成前駆体と求電子性基を含む第2の合成前駆体とを組合せて、求核性基と求電子性基との反応によって共有結合性の架橋を形成し、生体適合性のヒドロゲルを形成することによって、形成される、請求項11記載の方法。
【請求項24】
前記前駆体の水溶性混合物が、該部位に注入されることを更に含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記混合物が、少なくとも約100,000の分子量の水溶性のポリマーを更に含み、該ポリマーが、該混合物の粘度を増加させ、かつ前記前駆体と共有結合を形成する官能基を含まない、請求項24記載の方法。
【請求項26】
直径約27ゲージ以下のサイズの針が、注入に用いられる、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記ヒドロゲルが、前駆体上の官能基のラジカル重合によって形成される、請求項11記載の方法。
【請求項28】
前記前駆体の水溶性混合物が、前記部位に、約1000センチポアズ未満の粘性の混合物で、注入されることを更に含む、請求項11記載の方法。
【請求項29】
該ヒドロゲルが、第1の合成前駆体と第2の合成前駆体との組合せによって形成され、該第1の合成前駆体が、親水性部分及び疎水性部分を含む、請求項11記載の方法。
【請求項30】
前記ヒドロゲルが、前記薬剤を放出する複数の粒子を含む、請求項11記載の方法。
【請求項31】
前記治療薬が、ヒドロゲルの水相中の懸濁液である、請求項11記載の方法。
【請求項32】
前記疾患が眼の奥の疾患である、請求項11記載の方法。
【請求項33】
前記眼の奥の疾患が、滲出型黄斑変性、萎縮型黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫、及び糖尿病網膜症からなる群の一員である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
ヒドロゲルを眼の強膜又は結膜と接触するように形成することによって、患者の眼を侵す眼病を治療する方法であって:
外眼部位で眼の強膜又は結膜と接触させる、原位置で共有結合性架橋ヒドロゲルを形成し、ここで、該ヒドロゲルが治療薬を含み;
該治療薬が、少なくとも約2日の期間をかけて、眼の強膜を横切って眼中に放出されて、該眼病を治療することを含む、前記方法。
【請求項35】
前記外眼部位が、結膜、結膜下、強膜上、及び後部テノン嚢の部位からなる群から選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記ヒドロゲルが、強膜及び/又は結膜に接着する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記ヒドロゲルが、強膜及び/又は結膜以外の別の組織には接着しない、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記ヒドロゲルが、実質的に、強膜と結膜との間に配置される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記ヒドロゲルが、形成時のヒドロゲルの重量と比べて、24時間の生理溶液への曝露時に、該ヒドロゲルの重量が約50%以下の増加であるほど、低膨潤である、請求項36記載の方法。
【請求項40】
該ヒドロゲルが、水分解性基の分解によって、インビトロにおいて過剰の水に溶けるほどの、水分解性である、請求項36記載の方法。
【請求項41】
前記ヒドロゲルが、求核性基を含む第1の合成前駆体と求電子性基を含む第2の合成前駆体とを組合せて、求核性基と求電子性基との反応によって共有結合性の架橋を形成し、生体適合性のヒドロゲルを形成することによって、形成される、請求項36記載の方法。
【請求項42】
前記前駆体の水性混合物が、前記部位に注入されることを更に含む、請求項36記載の方法。
【請求項43】
前記ヒドロゲルが、前駆体上の官能基のラジカル重合によって形成される、請求項36記載の方法。
【請求項44】
前記ヒドロゲルが、前記薬剤を放出する複数の粒子を含む、請求項36記載の方法。
【請求項45】
前記治療薬が、前記ヒドロゲルの水相中の懸濁液である、請求項36記載の方法。
【請求項46】
前記疾患が眼の奥の疾患である、請求項36記載の方法。
【請求項47】
前記眼の奥の疾患が、滲出型黄斑変性、萎縮型黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫、及び糖尿病網膜症からなる群の一員である、請求項46記載の方法。
【請求項1】
治療薬を眼に送達するための合成生体適合性ポリマーヒドロゲルであって、
第1の合成前駆体が、第2の合成前駆体と共有結合により架橋して、該生体適合性のヒドロゲルを形成し、
該ヒドロゲル中の治療薬は、少なくとも約2日の期間中、該ヒドロゲルから放出され、
ここで、該第1の前駆体及び第2の前駆体のそれぞれが、水分解性基を含み、
該ヒドロゲルが、24時間の生理溶液への曝露時に、形成時のヒドロゲルの重量と比べて、該ヒドロゲルの重量が約50%以下の増加であるほど、低膨潤性であり、かつ
該ヒドロゲルが、水分解性基の分解によって、インビトロにおいて過剰の水に溶けるほどの、水分解性である、前記ヒドロゲル。
【請求項2】
前記ポリマーの親水性部分が、ポリ(エチレン)グリコールの繰返しを含む、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項3】
前記第1の前駆体が架橋前に求核性官能基を含み、かつ前記第2の前駆体が架橋前に求電子性官能基を含み、かつ該求核性官能基が該求電子性官能基と反応して、該前駆体を共有結合的に架橋する、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項4】
前記ヒドロゲルが、前記前駆体上の官能基のラジカル重合によって形成される、共有結合を含む、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項5】
前記治療薬が、眼の奥の疾患を治療するのに有効である、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項6】
前記治療薬が、小分子の薬剤、タンパク質、核酸、又は成長因子を含む、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項7】
前記ヒドロゲル内に捕捉された粒子が、該相に治療薬を含み、該治療薬が放出される期間中の放出速度を遅くさせることを更に含む、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項8】
前記治療薬が、前記ヒドロゲルの水相中の懸濁液である、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項9】
前記粒子が、リポソーム、ミセル、及び疎水性の液滴からなる群の一員である、請求項7記載のヒドロゲル。
【請求項10】
前記水分解性基がエステルである、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項11】
前記期間が約2日〜約2年の範囲内である、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項12】
少なくとも約100,000の分子量の水溶性の粘性化ポリマーを更に含み、該ポリマーが、前記前駆体と共有結合を形成する官能基を含まない、請求項1記載のヒドロゲル。
【請求項13】
眼周囲又は眼球内の原位置で共有結合性架橋ヒドロゲルを形成することを含む、患者の眼を侵す眼病の治療方法であって、該ヒドロゲルが、少なくとも約2日の期間をかけて、眼中に放出されて該眼病を治療する治療薬を含む、前記方法。
【請求項14】
前記眼周囲部位が、結膜、結膜下、強膜上、及び後部テノン嚢の部位からなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記部位が眼の強膜である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記部位が強膜の表面であり、前記ヒドロゲルが該部位に接着し、かつ別の組織には接着しない、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記部位が強膜の表面であり、前記ヒドロゲルが該部位に接着し、かつ実質的に、強膜と結膜との間に配置される、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドロゲルが結膜に接着しない、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記眼球内の部位が、眼の硝子体又は後眼房である、請求項11記載の方法。
【請求項20】
前記部位が眼球内であり、該ヒドロゲルが約0.5ml〜約1.5mlの容量を有する、請求項11記載の方法。
【請求項21】
前記ヒドロゲルが、24時間の生理溶液への曝露時に、形成時のヒドロゲルの重量と比べて、該ヒドロゲルの重量が約50%以下の増加であるほど、低膨潤性である、請求項11記載の方法。
【請求項22】
前記ヒドロゲルが、水分解性基の分解によって、インビトロにおいて過剰の水に溶けるほどの水分解性である、請求項11記載の方法。
【請求項23】
前記ヒドロゲルが、求核性基を含む第1の合成前駆体と求電子性基を含む第2の合成前駆体とを組合せて、求核性基と求電子性基との反応によって共有結合性の架橋を形成し、生体適合性のヒドロゲルを形成することによって、形成される、請求項11記載の方法。
【請求項24】
前記前駆体の水溶性混合物が、該部位に注入されることを更に含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記混合物が、少なくとも約100,000の分子量の水溶性のポリマーを更に含み、該ポリマーが、該混合物の粘度を増加させ、かつ前記前駆体と共有結合を形成する官能基を含まない、請求項24記載の方法。
【請求項26】
直径約27ゲージ以下のサイズの針が、注入に用いられる、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記ヒドロゲルが、前駆体上の官能基のラジカル重合によって形成される、請求項11記載の方法。
【請求項28】
前記前駆体の水溶性混合物が、前記部位に、約1000センチポアズ未満の粘性の混合物で、注入されることを更に含む、請求項11記載の方法。
【請求項29】
該ヒドロゲルが、第1の合成前駆体と第2の合成前駆体との組合せによって形成され、該第1の合成前駆体が、親水性部分及び疎水性部分を含む、請求項11記載の方法。
【請求項30】
前記ヒドロゲルが、前記薬剤を放出する複数の粒子を含む、請求項11記載の方法。
【請求項31】
前記治療薬が、ヒドロゲルの水相中の懸濁液である、請求項11記載の方法。
【請求項32】
前記疾患が眼の奥の疾患である、請求項11記載の方法。
【請求項33】
前記眼の奥の疾患が、滲出型黄斑変性、萎縮型黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫、及び糖尿病網膜症からなる群の一員である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
ヒドロゲルを眼の強膜又は結膜と接触するように形成することによって、患者の眼を侵す眼病を治療する方法であって:
外眼部位で眼の強膜又は結膜と接触させる、原位置で共有結合性架橋ヒドロゲルを形成し、ここで、該ヒドロゲルが治療薬を含み;
該治療薬が、少なくとも約2日の期間をかけて、眼の強膜を横切って眼中に放出されて、該眼病を治療することを含む、前記方法。
【請求項35】
前記外眼部位が、結膜、結膜下、強膜上、及び後部テノン嚢の部位からなる群から選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記ヒドロゲルが、強膜及び/又は結膜に接着する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記ヒドロゲルが、強膜及び/又は結膜以外の別の組織には接着しない、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記ヒドロゲルが、実質的に、強膜と結膜との間に配置される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記ヒドロゲルが、形成時のヒドロゲルの重量と比べて、24時間の生理溶液への曝露時に、該ヒドロゲルの重量が約50%以下の増加であるほど、低膨潤である、請求項36記載の方法。
【請求項40】
該ヒドロゲルが、水分解性基の分解によって、インビトロにおいて過剰の水に溶けるほどの、水分解性である、請求項36記載の方法。
【請求項41】
前記ヒドロゲルが、求核性基を含む第1の合成前駆体と求電子性基を含む第2の合成前駆体とを組合せて、求核性基と求電子性基との反応によって共有結合性の架橋を形成し、生体適合性のヒドロゲルを形成することによって、形成される、請求項36記載の方法。
【請求項42】
前記前駆体の水性混合物が、前記部位に注入されることを更に含む、請求項36記載の方法。
【請求項43】
前記ヒドロゲルが、前駆体上の官能基のラジカル重合によって形成される、請求項36記載の方法。
【請求項44】
前記ヒドロゲルが、前記薬剤を放出する複数の粒子を含む、請求項36記載の方法。
【請求項45】
前記治療薬が、前記ヒドロゲルの水相中の懸濁液である、請求項36記載の方法。
【請求項46】
前記疾患が眼の奥の疾患である、請求項36記載の方法。
【請求項47】
前記眼の奥の疾患が、滲出型黄斑変性、萎縮型黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫、及び糖尿病網膜症からなる群の一員である、請求項46記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−533225(P2010−533225A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516020(P2010−516020)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/006114
【国際公開番号】WO2009/008946
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(501061098)インセプト エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/006114
【国際公開番号】WO2009/008946
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(501061098)インセプト エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】
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