説明

ヒートシンク取付構造

【課題】十分な放熱効率を得られるヒートシンクの取付構造を提供する。
【解決手段】電子機器1は、プリント配線板2の上面にヒートシンクを搭載している。ヒートシンクは、平板状を呈した本体の上面に複数の放熱板を備えており、本体の下面に貼着された熱伝導シートを介して本体をプリント配線板2に密着させ、本体をネジでプリント配線板2にネジ止めされている。プリント配線板2の上面のヒートシンクの搭載位置には、空気溝20が形成されている。空気溝20は、プリント配線板2の銅箔部2Bにレジスト層2Cを形成しないレジスト抜き部2B1を設け、レジスト抜き部2B1の左右の両側にレジスト抜き部2B1の両側に沿って前後方向に延びるシルク部2Dを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に対するヒートシンクの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装タイプの半導体素子にヒートシンクを取り付ける場合には、半導体素子が実装されるプリント配線板とヒートシンクとの間に熱伝導シートを介在させて、熱の伝搬をし易くしている。一般的に、熱伝導シートは、ヒートシンクに貼着されてヒートシンクと一体化され、ヒートシンクがプリント配線板に搭載されると、ヒートシンクとプリント配線板との間に挟み込まれる。
【0003】
ヒートシンクとプリント配線板との間に熱伝導シートが挟み込まれる際、プリント配線板と熱伝導シートとの間に空気溜まりが残ってしまうことがあるが、目視では確認できないことから、空気溜まりが残ったままヒートシンクの組み付けが完了してしまう虞がある。このため、下記の引用文献1〜4では、空気溜まりを解消する方法が提案されている。
【0004】
引用文献1では、電子部品とヒートシンクとの間に介在される熱伝導シートに、厚さ方向に気体を通すための通気部を設けている。引用文献2では、組み付け面に窪みが形成された半導体チップ搭載用の基板を中間熱伝導材を介在させて放熱板に組み合わせる際に、中間熱伝導材を未塗布溝を備える形状に塗布することで、窪みが形成する空間内に気泡が残るのを防止している。引用文献3では、BGA型半導体装置と基板との間に介装される基板接続放熱シートに複数の溝部を設けることで、半導体装置のBGA及び基板に基板接続放熱シートが密着する際に、溝部より空気が押し出され、密着面に空気が溜まらないようにしている。引用文献4では、電子部品が搭載された基板を放熱用シートを介して覆う下蓋が、放熱シートに押し付けられる面に凹溝を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−17624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のヒートシンクの取付構造では、プリント配線板に熱伝導シートを密着させる際に空気溜まりが生じるのは防止できるものの、空気を通すための通気部や溝内の空気の影響で、十分な放熱効率を得られない虞があった。
【0007】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決することのできるヒートシンク取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明のヒートシンク取付構造は、配線基板の第1の印刷層上に熱伝導シートを介してヒートシンクを取り付けるヒートシンク取付構造であって、前記第1の印刷層で覆われていない印刷抜き部と、前記印刷層上に形成されて前記印刷抜き部の両側に延びた一対の第2の印刷層とで構成された空気溝を、前記配線基板の前記熱伝導シートの搭載箇所に備えることを特徴とする。
また、本発明は、配線基板の印刷層上に熱伝導シートを介してヒートシンクを取り付けるヒートシンク取付構造であって、前記印刷層で覆われていない印刷抜き部を設けて構成された空気溝を、前記配線基板の前記熱伝導シートの搭載箇所に備えることを特徴とする。
また、本発明は、配線基板上に熱伝導シートを介してヒートシンクを取り付けるヒートシンク取付構造であって、配線パターンを構成する銅箔上に一対の印刷層を設けて構成された空気溝を、前記配線基板の前記熱伝導シートの搭載箇所に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄肉の印刷層で空気溝を構成することから、ヒートシンクとプリント配線板とで挟み込まれて変形した熱伝導シートを空気溝に密着させ、熱伝導シートの全面でプリント配線板からの放熱を行い、放熱効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の電子機器を示す図であり、(a)は平面図,(b)は正面図である。
【図2】電子機器が備えるプリント配線板を示す図であり、(a)は平面図,(b)は(a)のB−B線断面図である
【図3】電子機器を示す断面図であり、(a)は図1(a)のA−A線断面を,(b)は(a)を部分的に拡大した断面を示している。
【図4】空気溝を備えない従来のプリント配線基板にヒートシンクを搭載した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の電子機器1を示す図である。図2は、電子機器1が備えるプリント配線板2を示す図である。なお、以下の説明で用いる上下,前後,左右の各方向は説明に用いる各図に示している。この上下,前後,左右は説明のために記載したもので、実際の配置と異なってよいことはもちろんである。
【0012】
図1に示すように、電子機器1は、プリント配線板2の上面にヒートシンク4を搭載して構成されている。プリント配線板2の上面には、プリント配線板2上の回路を外部に接続するための出力コネクタ3が取り付けられている。出力コネクタ3は、相手側のコネクタが被着される被着部31と、被着部31から延びた接続端子32とを備えており、プリント配線板2上の配線パターンに接続端子32が接続されている。
【0013】
ヒートシンク4は、平板状を呈した本体41の上面に複数の放熱板42を備えており、本体41の下面に貼着された熱伝導シート5(図3(b)参照)を介して本体41をプリント配線板2に密着させ、本体41をネジ43でプリント配線板2にネジ止めされている。
【0014】
図2に示すように、プリント配線板2の上面のヒートシンク4の搭載位置には、空気溝20が複数(図2では5つ)形成されている。各空気溝20は、ヒートシンク4の短手方向(前後方向)に沿って延びており、ヒートシンク4の長手方向(左右方向)に沿って等間隔で配列されている。
【0015】
図2(b)に示すように、プリント配線板2は、基板2Aの上面に銅箔部2Bを形成し、銅箔部2Bを覆うようにして基板2Aの上面にレジスト層2Cを設けて構成されている。空気溝20は、プリント配線板2の銅箔部2Bにレジスト層2Cを形成しないレジスト抜き部2B1を設け、レジスト抜き部2B1の左右の両側に位置するレジスト層2C上にレジスト抜き部2B1の両側に沿って前後方向に延びるシルク部2Dを設けて構成されている。空気溝20は、ヒートシンク4の短手方向の長さよりも前後方向の長さがやや長く形成されており、プリント配線板2の上面に搭載されたヒートシンク4の前後の縁部からその前後の端部が外部に露出するように配置されている。
【0016】
図4に示すように、空気溝を備えない従来のプリント配線板2では、プリント配線板2にヒートシンク4が載置されると、ヒートシンク4の裏面に貼着された熱伝導シート5とプリント配線板2との間に空気溜まりが生じる。これに対し、空気溝20を備えた電子機器1のプリント配線板2では、ヒートシンク4の裏面に貼着された熱伝導シート5とプリント配線板2との間の空気が空気溝20を通してヒートシンク4の前後の縁部から排気され、図3(b)に示すように、熱伝導シート5とプリント配線板2との間に空気溜まりが生じることなく、熱伝導シート5の下面とプリント配線板2のレジスト層2Cの上面とが密着する。その後、ヒートシンク4の本体41がプリント配線板2にネジ止めされて、本体41がプリント配線板2に押し付けられると、熱伝導シート5が変形して空気溝20の内面と熱伝導シート5の下面とが密着する。この際、空気溝20内の空気は、空気溝20の前後の端部から外部に排気される。このようにしてプリント配線板2にヒートシンク4が搭載されると、熱伝導シート5の全面がプリント配線板2の上面に密着する。
【0017】
以上説明したように、本実施形態によれば、銅箔部2B上にレジストを塗布して形成された薄肉のレジスト層2Cにレジスト抜き部2B1を設けることで空気溝20を構成していることから、熱伝導シート5とプリント配線板2との間の空気を排気した空気溝20に、ヒートシンク4とプリント配線板2とで挟み込まれて変形した熱伝導シート5を密着させることができる。従って、熱伝導シート5の全面でプリント配線板2からの放熱を行い、放熱効率を高めることが可能となる。
【0018】
上記実施形態では、レジスト層2Cで覆われていないレジスト抜き部2B1と、レジスト層2C上に形成されてレジスト抜き部2B1の両側に延びた一対のシルク部2Dとをプリント配線板2に設けて空気溝20を構成した場合について説明した。しかしながら、レジスト層(印刷層)2C上にシルク部2Dを設けずに、レジスト抜き部(印刷抜き部)2B1のみで空気溝20を構成してもよい。
【0019】
また、銅箔部2B上にレジスト層を設けずに、熱伝導シート5を銅箔部2B上に直接搭載する場合には、銅箔部2B上にシルクスクリーン印刷で形成された一対のシルク層(印刷層)で空気溝を構成してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 電子機器
2 プリント配線板
20 空気溝
2A 基板
2B 銅箔部
2B1 レジスト抜き部(印刷抜き部)
2C レジスト層(第1の印刷層)
2D シルク部(第2の印刷層)
3 出力コネクタ
31 被着部
32 接続端子
4 ヒートシンク
41 本体
42 放熱板
43 ネジ
5 熱伝導シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板の第1の印刷層上に熱伝導シートを介してヒートシンクを取り付けるヒートシンク取付構造であって、
前記第1の印刷層で覆われていない印刷抜き部と、
前記第1の印刷層上に形成されて前記印刷抜き部の両側に延びた一対の第2の印刷層とで構成された空気溝を、前記配線基板の前記熱伝導シートの搭載箇所に備えることを特徴とするヒートシンク取付構造。
【請求項2】
配線基板の印刷層上に熱伝導シートを介してヒートシンクを取り付けるヒートシンク取付構造であって、
前記印刷層で覆われていない印刷抜き部を設けて構成された空気溝を、前記配線基板の前記熱伝導シートの搭載箇所に備えることを特徴とするヒートシンク取付構造。
【請求項3】
配線基板上に熱伝導シートを介してヒートシンクを取り付けるヒートシンク取付構造であって、
配線パターンを構成する銅箔上に一対の印刷層を設けて構成された空気溝を、前記配線基板の前記熱伝導シートの搭載箇所に備えることを特徴とするヒートシンク取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−134892(P2011−134892A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292935(P2009−292935)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】