フィルタ、送受信装置及び増幅回路
【課題】高調波信号を抑制し、且つ、通過信号である基本波信号の減衰量を低減させる。
【解決手段】フィルタ200は、基本波信号f0及び基本波信号f0の高調波信号群2f0、3f0、4f0、5f0、6f0が入力される入力端子210と、入力端子210に入力された基本波信号f0を出力する出力端子220と、入力端子210と出力端子220とを接続する伝送線路230と、高調波信号群2f0〜6f0のうちの奇数高調波信号3f0、5f0に対応して設けられ、伝送線路230に接続し、対応する奇数高調波信号3f0、5f0の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブ243、245と、伝送線路230に接続し、基本波信号f0の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブ251と、伝送線路230に接続した第2のショートスタブ252と、を有する。
【解決手段】フィルタ200は、基本波信号f0及び基本波信号f0の高調波信号群2f0、3f0、4f0、5f0、6f0が入力される入力端子210と、入力端子210に入力された基本波信号f0を出力する出力端子220と、入力端子210と出力端子220とを接続する伝送線路230と、高調波信号群2f0〜6f0のうちの奇数高調波信号3f0、5f0に対応して設けられ、伝送線路230に接続し、対応する奇数高調波信号3f0、5f0の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブ243、245と、伝送線路230に接続し、基本波信号f0の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブ251と、伝送線路230に接続した第2のショートスタブ252と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ、送受信装置及び増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号を処理するフィルタとして、基本波信号及び基本波信号の整数倍の周波数を持つ高調波信号が入力され、この各信号のうち高調波信号を抑制し、基本波信号を出力するフィルタが存在する。
【0003】
このようなフィルタは、例えば、アンプやミキサー等の非線形素子の出力先に設けられる。非線形素子では、基本波信号の入力に伴い、高調波信号が生成されて出力される場合がある。この場合、高調波信号が他のコンポーネントやシステムに電磁界干渉を起こす可能性がある。このような非線形素子の出力先に上記のフィルタを設けることで、高調波信号を抑制することが可能となる。
【0004】
このフィルタの一つとして、入力端子と、出力端子と、入力端子と出力端子とを接続する伝送線路と、入力される高調波信号に対応して設けられ、伝送線路に接続し、対応する高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブとを有するフィルタが存在する。
【0005】
この各オープンスタブは、対応する高調波信号に対して伝送線路との接続部をショート状態とし、対応する高調波信号を抑制する。一方、各オープンスタブは、基本波信号に対して伝送線路との接続部をオープン状態とし、基本波信号を通過させる。これにより、フィルタは、入力される基本波信号とその高調波信号のうち、高周波信号を抑制し、基本波信号を出力端子から出力することが可能となる。
【0006】
図1は、この従来のフィルタの一例を示す図である。従来のフィルタ100は、入力端子110と、出力端子120と、入力端子110と出力端子120とを接続する伝送線路130と、伝送線路130と接続部131で接続したオープンスタブ142、143、144、145、146とを有する。ここで、伝送線路130の特性インピーダンスZ0は、50Ωである。
【0007】
フィルタ100の入力端子110には、基本波信号f0と、基本波信号f0の整数倍の周波数を持つ高調波信号が入力される。ここでは、2倍の周波数を持つ2倍波信号2f0と、3倍の周波数を持つ3倍波信号3f0と、4倍の周波数を持つ4倍波信号4f0と、5倍の周波数を持つ5倍波信号5f0と、6倍の周波数を持つ6倍波信号6f0とが入力されることを想定している。ここで、基本波信号f0の周波数は、1.300GHzである。
【0008】
各オープンスタブ142〜146は、入力される各高調波信号2f0〜6f0に対応してそれぞれ設けられ、対応する高調波信号の波長の1/4の長さを備えている。
ここでは、オープンスタブ142は、2倍波信号2f0に対応して設けられ、2倍波信号2f0の波長λ2f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/8の長さ)を備える。オープンスタブ142は、2倍波信号2f0に対して伝送線路130との接続部131をショート状態とし、2倍波信号2f0を抑制する。
【0009】
オープンスタブ143は、3倍波信号3f0に対応して設けられ、3倍波信号3f0の波長λ3f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/12の長さ)を備える。オープンスタブ143は、3倍波信号3f0に対して伝送線路130との接続部131をショート状態とし、3倍波信号3f0を抑制する。
【0010】
オープンスタブ144は、4倍波信号4f0に対応して設けられ、4倍波信号4f0の波長λ4f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/16の長さ)を備える。オープンスタブ144は、4倍波信号4f0に対して伝送線路130との接続部131をショート状態とし、4倍波信号4f0を抑制する。
【0011】
オープンスタブ145は、5倍波信号5f0に対応して設けられ、5倍波信号5f0の波長λ5f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/20の長さ)を備える。オープンスタブ145は、5倍波信号5f0に対して伝送線路130との接続部131をショート状態とし、5倍波信号5f0を抑制する。
【0012】
オープンスタブ146は、6倍波信号6f0に対応して設けられ、6倍波信号6f0の波長λ6f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/24の長さ)を備える。オープンスタブ146は、6倍波信号6f0に対して伝送線路130との接続部131をショート状態とし、6倍波信号6f0を抑制する。
【0013】
一方、各オープンスタブ142〜146は、基本波信号f0に対して伝送線路130との接続部131をオープン状態とし、基本波信号f0を通過させる。これにより、フィルタ100は、入力される基本波信号f0とその高調波信号2f0〜6f0のうち、高周波信号2f0〜6f0を抑制し、基本波信号f0を出力端子120から出力することが可能となる。
【0014】
なお、オープンスタブを用いた他のフィルタとしては、オープンスタブを用いて基本波信号を抑圧し、2倍波信号を通過させるフィルタが存在する(例えば、特許文献1参照)。また、オープンスタブが用いられた方向性結合器(例えば、特許文献2参照)や、オープンスタブが用いられた周波数3逓倍回路(例えば、特許文献3参照)等が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−229840号公報
【特許文献2】特開2002−84113号公報
【特許文献3】特開平9−275319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、オープンスタブを用いた従来のフィルタでは、通過信号である基本波信号f0を減衰させてしまう可能性があった。
このような点に鑑み、高調波信号を抑制し、且つ、通過信号である基本波信号の減衰量を低減させたフィルタ、送受信装置及び増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために以下のようなフィルタが提供される。
このフィルタは、基本波信号及び基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、入力端子に入力された基本波信号を出力する出力端子と、入力端子と出力端子とを接続する伝送線路と、高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、伝送線路に接続し、対応する奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、伝送線路に接続し、基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、伝送線路に接続した第2のショートスタブと、を有する。
【0018】
また、上記目的を達成するために以下のようなフィルタが提供される。
このフィルタは、基本波信号及び前記基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、前記入力端子に入力された前記基本波信号を出力する出力端子と、前記入力端子と前記出力端子とを接続する伝送線路と、前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記伝送線路に接続し、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、前記伝送線路に接続し、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えたショートスタブと、を有する。
【0019】
また、上記目的を達成するために以下のような送受信装置が提供される。
この送受信装置は、送信信号である基本波信号が入力される送信端子と、受信信号を出力する受信端子と、アンテナ端子と、前記送信端子と前記アンテナ端子との間に接続され、前記送信端子に入力された前記基本波信号を増幅し、且つ、前記基本波信号の高調波信号群を発生するアンプと、前記アンテナ端子と前記アンプ及び前記受信端子との間に設けられ、送受信の切り替えを行うスイッチ回路と、前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続され、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、前記スイッチ回路内に設けられ、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続された第2のショートスタブと、を有する。
【0020】
また、上記目的を達成するために以下のような増幅回路が提供される。
この増幅回路は、基本波信号が入力される入力端子と、前記基本波信号を増幅するトランジスタと、前記トランジスタの出力端子に接続され、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた伝送線路と、前記伝送線路と、増幅回路の出力端子間に接続され、前記基本波信号の奇数高調波信号に対応して設けられ、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、前記伝送線路と、前記増幅回路の前記出力端子間に接続されたショートスタブと、を有する。
【発明の効果】
【0021】
開示のフィルタ、送受信装置及び増幅回路によれば、高調波信号を抑制し、且つ、基本波信号の減衰量を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のフィルタの一例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るフィルタの一例を示す図である。
【図3】図1のフィルタに対応するスミスチャートである。
【図4】第1の実施形態に係るフィルタに対応するスミスチャートである。
【図5】第1の実施形態に係るフィルタの通過特性を示したシミュレーション結果である。
【図6】図1のフィルタの通過特性を示したシミュレーション結果である。
【図7】第2の実施形態に係るフィルタの一例を示す斜視図である。
【図8】図7の上面図である。
【図9】第2の実施形態に係るフィルタの通過特性を示した電磁界シミュレーション結果である。
【図10】第3の実施形態に係るフィルタの一例を示す上面図である。
【図11】第3の実施形態に係るフィルタの通過特性を示した電磁界シミュレーション結果である。
【図12】第3の実施の形態のフィルタの試作品の構成を示す上面図である。
【図13】図12のA−A線での断面図である。
【図14】図13で示した試作品のフィルタの通過特性の実測結果である。
【図15】第4の実施形態に係る送受信装置の一例を示す図である。
【図16】第4の実施形態に係る送受信装置の第1の変形例を示す図である。
【図17】第4の実施形態に係る送受信装置の第2の変形例を示す図である。
【図18】第5の実施形態に係るF級増幅回路の一例を示す図である。
【図19】理想的なF級動作時におけるトランジスタの電流波形と電圧波形の様子を示す図である。
【図20】第5の実施形態に係るF級増幅回路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図2は、第1の実施形態に係るフィルタの一例を示す図である。第1の実施形態に係るフィルタ200は、入力端子210、出力端子220、入力端子210と出力端子220とを接続する伝送線路230、伝送線路230と接続部231で接続したオープンスタブ243、245、及び、ショートスタブ251、252を有する。ここで、伝送線路230の特性インピーダンスZ0は、50Ωである。
【0024】
なお、図2に示すように、伝送線路230に一端を接続するスタブのうち、他端を開放しているものをオープンスタブ243、245、他端を短絡しているものをショートスタブ251、252と呼ぶ。
【0025】
入力端子210には、基本波信号f0と、基本波信号f0の整数倍の周波数を持つ高調波信号が入力される。ここでは、2倍の周波数を持つ2倍波信号2f0と、3倍の周波数を持つ3倍波信号3f0と、4倍の周波数を持つ4倍波信号4f0と、5倍の周波数を持つ5倍波信号5f0と、6倍の周波数を持つ6倍波信号6f0とが入力されることを想定している。
【0026】
フィルタ200は、入力端子210に入力された基本波信号f0とその高調波信号2f0、3f0、4f0、5f0、6f0のうち、高周波信号2f0、3f0、4f0、5f0、6f0を抑制し、基本波信号f0を出力端子220から出力する。
【0027】
フィルタ200は、ショートスタブ251を有することにより、基本波信号f0の減衰量を低減することが可能となる。その理由について次に説明する。
図3は、図1のフィルタに対応するスミスチャートである。ここで、基本波信号f0の周波数は、1.300GHzである。図3に示すように、基本波信号f0に対するインピーダンスは、例えば、6.511−j16.827Ωであり、スミスチャート中のm1で示される箇所に位置している。
【0028】
m1は、整合点であるm0から、等コンダクタンス円S1上を、時計回りに進んだ箇所に位置している。この状態は、フィルタ100において、伝送線路130に対して並列にキャパシタを接続した場合に相当する。これは、各オープンスタブ142〜146と、接地線(図示せず)との間に発生する接地容量が原因であると考えられる。このため、基本波信号f0が減衰していると考えられる。
【0029】
これに対して、伝送線路130にショートスタブを接続すると、伝送線路130に対して並列にインダクタを接続させた状態に相当し、図3において、m1を等コンダクタンス円S1上に沿って反時計回りに進ませることが可能となる。進ませる量は、ショートスタブの長さにより調整することが可能である。これにより、m1を整合点であるm0に近づけることが可能となる。すなわち、基本波信号f0に対するインピーダンスを整合させることが可能となる。
【0030】
上記の理由により、フィルタ200では、オープンスタブ243、245により発生する接地容量は、ショートスタブ251により消すことが可能となる。これにより、基本波信号f0に対するインピーダンスを整合させることが可能となり、基本波信号f0の減衰量を低減させることが可能となる。ここでは、ショートスタブ251は、基本波信号f0の波長λf0の1/8の長さを備えている。
【0031】
図4は、第1の実施形態に係るフィルタに対応するスミスチャートである。フィルタ200では、図4に示すように、基本波信号f0に対するインピーダンスは、例えば、49.527+j4.840Ωであり、スミスチャート中のm2で示される箇所に位置している。m2は、等コンダクタンス円S2上において、整合点であるm0の近傍に位置している。これは、基本波信号f0に対するインピーダンスが整合されていることを示している。
【0032】
次に、図2に戻り、オープンスタブ243、245について説明する。オープンスタブ243、245は、入力される高調波信号2f0〜6f0のうち、奇数高調波信号3f0、5f0に対応して、それぞれ設けられている。
【0033】
ここでは、オープンスタブ243は、3倍波信号3f0に対応して設けられ、3倍波信号3f0の波長λ3f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/12の長さ)を備える。オープンスタブ243は、3倍波信号3f0に対して伝送線路230との接続部231をショート状態とし、3倍波信号3f0を抑制する。
【0034】
オープンスタブ245は、5倍波信号5f0に対応して設けられ、5倍波信号5f0の波長λ5f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/20の長さ)を備える。オープンスタブ245は、5倍波信号5f0に対して伝送線路230との接続部231をショート状態とし、5倍波信号5f0を抑制する。
【0035】
一方、各オープンスタブ243、245は、基本波信号f0に対して伝送線路230との接続部231をオープン状態とし、基本波信号f0を通過させる。また、オープンスタブの数は、オープンスタブ243、245の2つに限定されるものではなく、抑制すべき奇数高調波信号の数に応じて適宜、設けられる。
【0036】
次に、ショートスタブ252について説明する。ショートスタブ252は、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さを備える。すなわち、ショートスタブ252の長さは、2倍波信号2f0の波長λ2f0の2/4の長さに相当し、4倍波信号4f0の波長λ4f0の4/4の長さに相当し、6倍波波長6f0の波長λ6f0の6/4の長さに相当する。つまり、ショートスタブ252の長さは、各波長λ2f0、λ4f0、λ6f0の1/4の長さを偶数倍した長さに相当する。
【0037】
これにより、ショートスタブ252は、偶数高調波信号2f0、4f0、6f0に対して伝送線路230との接続部231をショート状態とし、偶数高調波信号2f0、4f0、6f0を抑制する。一方、ショートスタブ252は、基本波信号f0に対して伝送線路230との接続部231をオープン状態とし、基本波信号f0を通過させる。
【0038】
このように、ショートスタブ252を設けることで、偶数高調波信号2f0、4f0、6f0を抑制することが可能となるので、各偶数高調波信号2f0、4f0、6f0に対して、従来のフィルタ100のようにオープンスタブをそれぞれ設ける必要が無くなる。このため、オープンスタブもしくはショートスタブが占有する面積を小さくすることが可能となり、フィルタの小型化を実現することが可能となる。
【0039】
図5は、第1の実施形態に係るフィルタの通過特性を示したシミュレーション結果である。図5のグラフの横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は減衰レベル(dB)である。図中には、通過特性と、反射特性とが示されている。
【0040】
フィルタ200では、図5に示されるように、通過特性から、各高調波信号2f0〜6f0が、大きく減衰していることが伺える。さらに、基本波信号f0の周波数である1.300GHzにおける通過特性は、−0.010dBであり、基本波信号f0がほとんど減衰していないことが伺える。
【0041】
一方、図6は、図1のフィルタの通過特性を示したシミュレーション結果である。基本波信号f0の周波数である1.300GHzにおける減衰レベルは、−4.265dBであり、基本波信号f0が減衰していることが伺える。
【0042】
このように、フィルタ200によれば、高調波信号2f0〜6f0を抑制し、且つ、通過信号である基本波信号f0の減衰量を低減させることが可能となる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態のフィルタ200に、マイクロストリップラインを適用したものに相当する。
【0043】
図7は、第2の実施形態に係るフィルタの一例を示す斜視図である。図8は、図7の上面図である。
第2の実施形態に係るフィルタ300は、表面11と、表面11とは反対側の表面12と、表面11と表面12とを結ぶ接続ビア20を備える基板10を有する。基板10には、例えば、アルミナ等を材料とする低損失誘電体基板が用いられている。
【0044】
基板10の表面11上には、入力端子310と、出力端子320と、入力端子310と出力端子320とを接続する伝送線路330とが形成されている。さらに、基板10の表面11上には、伝送線路330と接続部331でそれぞれ接続した、オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352とが形成されている。
【0045】
入力端子310には、基本波信号f0と、基本波信号f0の整数倍の周波数を持つ高調波信号が入力される。ここでは、2倍の周波数を持つ2倍波信号2f0と、3倍の周波数を持つ3倍波信号3f0と、4倍の周波数を持つ4倍波信号4f0と、5倍の周波数を持つ5倍波信号5f0と、6倍の周波数を持つ6倍波信号6f0とが入力されることを想定している。ここで、基本波信号f0の周波数は、例えば、1.300GHzである。
【0046】
フィルタ300は、入力端子310に入力された基本波信号f0とその高調波信号2f0〜6f0のうち、高周波信号2f0〜6f0を抑制し、基本波信号f0を出力端子320から出力する。
【0047】
入力端子310と、出力端子320と、伝送線路330と、オープンスタブ343、345と、ショートスタブ351、352とは、導電パターンで形成されている。導電パターンの材料は、例えば、金(Au)、銀(Ag)、もしくは、銅(Cu)である。ここで、各導電パターンの膜厚は、低損失を図るために、例えば、10μm程度が望ましい。また、伝送線路330の特性インピーダンスZ0は、50Ωである。
【0048】
オープンスタブ343、345は、入力される高調波信号2f0〜6f0のうち、奇数高調波信号3f0、5f0に対応して、それぞれ設けられている。ここでは、オープンスタブ343は、3倍波信号3f0の波長λ3f0の1/4の長さを備えている。オープンスタブ345は、5倍波信号5f0の波長λ5f0の1/4の長さを備えている。なお、オープンスタブの数は、オープンスタブ343、345の2つに限定されるものではなく、抑制すべき奇数高調波信号の数に応じて適宜、設けられる。
【0049】
ショートスタブ351は、基本波信号f0の波長λf0の1/8の長さを備えている。ショートスタブ352は、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さを備えている。基板10の表面12上には、接地パターン30が形成されている。ショートスタブ351、352は、それぞれ、接続ビア20を介して接地パターン30に電気的に接続されている。
【0050】
図9は、第2の実施形態に係るフィルタの通過特性を示した電磁界シミュレーション結果である。図9のグラフの横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は減衰レベル(dB)である。図中には、通過特性と、反射特性とが示されている。
【0051】
フィルタ300では、図9に示すように、通過特性から、各高調波信号2f0〜6f0が、大きく減衰していることが伺える。一方、基本波信号f0は、ほとんど減衰していないことが伺える。これは、第1の実施形態と同様の理由により、オープンスタブ343、345が奇数高調波3f0、5f0を抑制し、ショートスタブ352が偶数高調波2f0、4f0、6f0を抑制し、ショートスタブ351が基本波信号f0の減衰量を低減させることによる。
【0052】
このように、フィルタ300によれば、高調波信号2f0〜6f0を抑制し、且つ、通過信号である基本波信号f0の減衰量を低減させることが可能となる。
さらに、フィルタ300では、オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352は、伝送線路330と接続部331で共通接続されている。すなわち、オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352は、基板10の表面11上において、一箇所に集中して配置されている。
【0053】
このため、各オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352が伝送線路330と異なる接続部でそれぞれ接続されている場合と比べて、基板10の表面11における空き領域を小さくすることができ、基板10を小さくすることが可能となる。これにより、フィルタ300は、小型化を図ることが可能となる。
【0054】
さらに、この構成によれば、各オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352間を接続する接続ラインのライン長を0とすることができる。これにより、接続ラインが各オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352に与える影響を抑制することが可能となる。
【0055】
さらに、フィルタ300では、オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352は、基板10の表面11上において、伝送線路330を挟んだ両側に渡って配置されている。すなわち、図8に示すように、オープンスタブ343、ショートスタブ351、352は、伝送線路330に対して一方の側の領域10aに配置され、オープンスタブ345は、伝送線路330を挟んだ反対側の領域10bに配置されている。
【0056】
このように、各オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352を、伝送線路330を挟んだ両側の領域に渡って配置させることで、各スタブ間の距離をできるだけ大きく保つことが可能となる。これにより、各スタブ同士が互いに影響し、各スタブの特性がずれてしまうことを抑制することが可能となる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第2の実施の形態のフィルタ300からショートスタブ352を除いたものに相当する。
【0057】
図10は、第3の実施形態に係るフィルタの一例を示す上面図である。フィルタ300aは、図10に示すように、入力端子310と、出力端子320と、入力端子310と、伝送線路330と、オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351とを有している。伝送線路330の特性インピーダンスZ0は、50Ωである。
【0058】
図11は、第3の実施形態に係るフィルタの通過特性を示した電磁界シミュレーション結果である。図11のグラフの横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は減衰レベル(dB)である。図中には、通過特性と、反射特性とが示されている。
【0059】
フィルタ300aでは、図11に示すように、通過特性から、奇数高調波信号3f0、5f0が、大きく減衰していることが伺える。一方、基本波信号f0は、ほとんど減衰していないことが伺える。これは、オープンスタブ343、345が奇数高調波3f0、5f0を抑制し、ショートスタブ351が基本波信号f0の減衰量を低減させることによる。
【0060】
なお、図11から、フィルタ300aは偶数高調波信号2f0、4f0、6f0を抑制するショートスタブ352を有していないにも係わらず、4倍波信号4f0が減衰していることが伺える。これは、ショートスタブ351の長さ(λf0の1/8)が、4倍波信号4f0の波長λ4f0の2/4の長さ(λ4f0の1/4の長さの偶数倍)に相当するためである。つまり、ショートスタブ351が、4倍波信号4f0に対して伝送線路330との接続部331をショート状態とし、4倍波信号4f0を抑制するためである。
【0061】
次に、上記のような第3の実施の形態のフィルタ300aをもとに試作品を製作し、通過特性を実際に測定した結果を示す。
図12は、第3の実施の形態のフィルタの試作品の構成を示す上面図である。また、図13は、図12のA−A線での断面図である。
【0062】
このフィルタ300bは、Cu板にAuをメッキした金属キャリア361を有し、金属キャリア361上には、金すず(Au−Sn)はんだで接合されたアルミナ基板362が設けられている。アルミナ基板362の厚さは、耐電力や実装性を考慮して決定する。例えば、1.3GHz帯で使用される場合の電力を考慮した場合、アルミナ基板362の厚さを150μm〜1mm程度とすることが望ましい。本試作品では、アルミナ基板362の厚さは635mm程度とした。なお、図示を省略しているが、金属キャリア361の反対面にも、全面にグランド用としてAuをメッキしている。
【0063】
アルミナ基板362上には、伝送線路363、オープンスタブ364、365、及びショートスタブ366が、Auの導体パターンで形成されている。オープンスタブ364、365、及びショートスタブ366は、伝送線路363における接続部372で共通接続されている。各導体パターンの厚さは、低損失を図るために、10μm程度とした。伝送線路363、オープンスタブ364、365は、図10で示したフィルタ300aの伝送線路330、オープンスタブ343、345に対応しており、同様の機能を有する。また、ショートスタブ366は、図10で示したショートスタブ351に対応しており、同様の機能を有する。
【0064】
ただし、オープンスタブ364、365及びショートスタブ366の少なくとも一部は、互いにアルミナ基板362上の異なる辺に沿うように曲折され、アルミナ基板362の外周部に形成されている。これにより、フィルタ300aの小型化を図れるとともに、導体パターン(各スタブ)間の距離を広げることができ、導体パターン間での干渉や容量結合の発生を抑制できる。
【0065】
なお、本試作品においてショートスタブ366は、Auワイヤボンディングにより伝送線路363と接続しており、Auワイヤ366aの長さを調節することで、ショートスタブ366の長さを簡単に微調整することが可能である。
【0066】
また、アルミナ基板362上には、オープンスタブ364、365及びショートスタブ366の端部や、各スタブに並列に複数の調整用ランド367がAuの導体パターンで形成されている。各スタブに対して、1つまたは複数の調整用ランド367をAuワイヤボンディングにより接続することで、対応する高調波信号を抑圧するために必要な各スタブの長さを微調整することができる。
【0067】
各スタブの長さを微調整する理由としては、以下の通りである。
特に、フィルタ300bの小型化を図ろうとすると、各スタブがアルミナ基板362の外周部に形成され、実効誘電率が低くなる。そのため、スタブの電気長が短くなり、目当ての高調波信号を抑圧するために必要な電気長に足りなくなる。したがって、Auワイヤボンディングや、調整用ランド367を用いて各スタブの長さを変えることで、簡単に精度よく高調波を抑圧するために必要な電気長に調整することができる。
【0068】
金属キャリア361上には、さらに、金すずはんだで接合された台座368a、368b、368cが設けられている。台座368a、368b、368cは、コバールの表層に金すずがコーティングされたものを用いている。
【0069】
台座368a、368b上には、フィルタ300bの特性を測定するためのコプレーナウェーブガイド−マイクロストリップライン変換器(以下CPW−MSL変換器という。)369a、369bを搭載したアルミナ基板370a、370bを配置している。
【0070】
アルミナ基板370a、370bは150μm程度の厚さであり、金すずはんだで台座368a、368bに接合されている。
CPW−MSL変換器369a、369bは、Auワイヤボンディングにより伝送線路363の両端に接続される。図13では、Auワイヤ371により、伝送線路363とCPW−MSL変換器369bを接続している様子を示している。
【0071】
なお、このようなフィルタ300bを、実際に送受信装置等に用いる場合、伝送線路363の両端には、スイッチ回路やアンプが接続される。その場合には、CPW−MSL変換器369a、369bは取り除いてもよい。
【0072】
また、台座368cには、ショートスタブ366がAuワイヤボンディングにより接続されており、ショートスタブ366を接地している。
図7や図10で示したフィルタ300、300aは、ショートスタブを、接続ビアを介してグランドとショートさせている。上記のフィルタ300bでは、Auワイヤボンディングにより、ショートスタブ366を電気的にグランドとなる金属キャリア361に接続している。このため、ショートスタブ366を、簡単な構成でグランドとショートさせることができる。
【0073】
図14は、図13で示した試作品のフィルタの通過特性の実測結果である。図14のグラフの横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は減衰レベル(dB)である。なお、図中には、アンプを接続することを想定した伝送線路363の一端(CPW−MSL変換器369b側)からの入力についての透過特性と反射特性とが示されているが、伝送線路363の他端からの入力についても同様の特性となる。
【0074】
図14に示すように、試作品のフィルタ300bは、図11で示したシミュレーション結果と同様の特性を示すことが確認できた。すなわち、図14に示される通過特性から、奇数高調波信号3f0、5f0が、大きく減衰していることが伺える。さらに、基本波信号f0の周波数である1.300GHzにおける通過特性は、−0.053dBであり、基本波信号f0がほとんど減衰していないことが伺える。また、4倍波信号4f0についても減衰していることが伺える。
【0075】
以上のような測定結果から、第3の実施の形態における試作品のフィルタ300bの効果を検証できた。
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、第1実施形態のフィルタ200を、送受信装置に適用したものに相当する。図15は、第4の実施形態に係る送受信装置の一例を示す図である。
【0076】
送受信装置400は、送信端子Txと、受信端子Rxと、アンテナ端子411と、送信端子Txとアンテナ端子411との間に接続されたアンプ420と、アンテナ端子411と受信端子Rx及びアンプ420との間に接続されたスイッチ回路430とを有する。アンテナ端子411はアンテナ410に接続される。
【0077】
ここで、送受信装置400の動作について簡単に説明する。送信時、スイッチ回路430が送信端子Txとアンテナ端子411との間を導通し、これにより、送信端子Txに送信回路(図示せず)から入力される送信信号は、アンプ420により増幅され、アンテナ端子411からアンテナ410に出力される。また、受信時は、スイッチ回路430が受信端子Rxとアンテナ端子411との間を導通し、アンテナ端子411に入力された受信信号は、受信端子Rxから受信回路(図示せず)に出力される。
【0078】
ここからは、また、送受信装置400の構成について説明を続ける。送信端子Txには、送信信号として基本波信号f0が入力される。基本波信号f0の周波数は、例えば、1.300GHzである。また、アンプ420は、基本波信号f0を増幅して出力する際、基本波信号f0の整数倍の周波数を持つ高調波信号を発生して出力する。ここでは、2倍の周波数を持つ2倍波信号2f0と、3倍の周波数を持つ3倍波信号3f0と、4倍の周波数を持つ4倍波信号4f0と、5倍の周波数を持つ5倍波信号5f0と、6倍の周波数を持つ6倍波信号6f0が発生することを想定している。なお、アンプ420の出力信号は数百Wの高出力である。
【0079】
さらに、送受信装置400は、アンテナ端子411とアンプ420の出力側との間に接続された、オープンスタブ443、445と、ショートスタブ451、452とを有する。ここで、ショートスタブ452は、スイッチ回路430内に設けられている。
【0080】
オープンスタブ443、445と、ショートスタブ451とは、アンプ420の出力側のノードN1に接続されている。オープンスタブ443、445は、高調波信号2f0〜6f0のうち、奇数高調波信号3f0、5f0に対応して、それぞれ設けられている。
【0081】
ここでは、オープンスタブ443は、3倍波信号3f0の波長λ3f0の1/4の長さを備えている。オープンスタブ445は、5倍波信号5f0の波長λ5f0の1/4の長さを備えている。なお、オープンスタブの数は、オープンスタブ443、445の2つに限定されるものではなく、抑制すべき奇数高調波信号の数に応じて適宜、設けられる。ショートスタブ451は、基本波信号f0の波長λf0の1/8の長さを備えている。
【0082】
スイッチ回路430は、制御用端子431と、トランジスタ432、433と、アンテナ端子411に接続されたノードN2と、受信端子Rxに伝送線路454を介して接続されたノードN3とを有する。
【0083】
トランジスタ432は、ノードN1とノードN2との間に接続され、制御電極が制御用端子431に接続されている。トランジスタ432は、制御用端子431に供給される信号に応じて、ノードN1とノードN2との間の導通状態を制御する。
【0084】
トランジスタ433は、ノードN3と接地線との間に接続され、制御電極が制御用端子431に接続されている。トランジスタ433は、制御用端子431に供給される信号に応じて、ノードN3と接地線との間の導通状態を制御する。なお、トランジスタ432、433には、例えば、電界効果型トランジスタが用いられる。
【0085】
ショートスタブ452は、一端452aがノードN2と接続され、他端452bがトランジスタ433のオン時に短絡状態となるノードN3と接続されている。ショートスタブ452は、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さを備えている。
【0086】
伝送線路454は、ノードN3と受信端子Rx間に接続されており、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さを備えていることが望ましい。
次に、送受信装置400の動作について詳細に説明する。
【0087】
送信時、送信端子Txに送信信号である基本周波信号f0が供給される。送信端子Txに供給された基本周波信号f0は、アンプ420で増幅される。この時、高調波信号2f0〜6f0が発生し、基本波信号f0及び高調波信号2f0〜6f0がノードN1に出力される。このうち、奇数高調波信号3f0、5f0は、オープンスタブ443、445により抑制される。また、ショートスタブ451により、基本波信号f0の減衰量は低減される。
【0088】
さらに、送信時、制御用端子431に入力される信号が切り替わり、トランジスタ432、433がONされる。これにより、ノードN1とアンテナ端子411とが導通し、基本波信号f0がアンテナ410から外部に無線送信される。また、ノードN3は接地されるため、基本波信号f0が受信端子Rxへ回り込む可能性は抑制される。さらに、ショートスタブ452の端452bは接地されるため、偶数高調波信号2f0、4f0、6f0は抑制される。
【0089】
一方、受信時は、制御用端子431に入力される信号が切り替わり、トランジスタ432、433がOFFされる。これにより、アンテナ410で受信した受信信号は、アンテナ端子411、ノードN2、ノードN3を介して受信端子Rxから出力される。この時、送信端子Txへの経路は遮断されている。また、この時、ショートスタブ452は、接地されておらず、単に、伝送線路として機能する。
【0090】
このように、送受信装置400によれば、高調波信号2f0〜6f0を抑制し、且つ、送信信号である基本波信号f0の減衰量を低減させることが可能となる。さらに、送受信装置400では、偶数高調波2f0、4f0、6f0を抑制するショートスタブ452が、スイッチ回路430内に設けられているため、小型化を実現することが可能となる。
[変形例1]
図16は、第4の実施形態に係る送受信装置の第1の変形例を示す図である。図15で示した送受信装置400と同一の構成要素については同一符号を付している。
【0091】
この送受信装置400aは、ショートスタブ451を、アンプ420の出力に接続する電源バイアス回路460の伝送線路として利用するものである。
電源バイアス回路460において、ショートスタブ451と接地線との間のノードN4に、電源電圧Vddを印加している。
【0092】
なお、ノードN1とトランジスタ432との間には、直流(DC)成分をカットするコンデンサC1が接続されており、ノードN4と接地線との間には、バイパス用のコンデンサC2が接続されている。
【0093】
前述したように、オープンスタブ443、445と、λf0/8の長さのショートスタブ451を接続しているノードN1では、基本波信号f0に対してはオープンとなっている。すなわち、基本波信号f0の減衰量は低減されている。
【0094】
アンプの電源バイアス回路は、アンプの出力信号が電源バイアス回路側に流れて損失が生じるのを抑制するために、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さの伝送線路を用いることが多い。本実施の形態の送受信装置400aにおける電源バイアス回路460では、そのλf0/4の長さの伝送線路を、λf0/8の長さのショートスタブ451で代用できるので、低損失で小型の電源バイアス回路を実現できる。
[変形例2]
図17は、第4の実施形態に係る送受信装置の第2の変形例を示す図である。図15で示した送受信装置400と同一の構成要素については同一符号を付している。第2の変形例の送受信装置400bは、送受信装置400において、オープンスタブ443、445、及び、ショートスタブ451の接続位置を変更したものである。
【0095】
送受信装置400bでは、オープンスタブ443、445、及び、ショートスタブ451は、スイッチ回路430内に設けられ、ノードN2に接続されている。
この構成によれば、アンプ420で発生する高調波信号のみならず、スイッチ回路430で発生する高調波信号についても、抑制することが可能となる。さらに、送受信装置400の更なる小型化を実現することが可能となる。
【0096】
なお、送受信装置400bにおいても、送受信装置400と同様に、高調波信号2f0〜6f0を抑制し、且つ、送信信号である基本波信号f0の減衰量を低減させることが可能となる。
[第5の実施形態]
以下では、第1の実施形態のフィルタ200を適用したF級増幅回路の例を示す。
【0097】
図18は、第5の実施形態に係るF級増幅回路の一例を示す図である。
F級増幅回路500は、基本波信号f0の増幅用のトランジスタ501と、トランジスタ501の制御用端子と基本波信号f0が入力される入力端子INとの間に接続し入力整合を行う入力整合回路502を有する。トランジスタ501は、例えば、電界効果トランジスタまたはバイポーラトランジスタである。
【0098】
トランジスタ501は、ノードN4と接地線との間に接続され、トランジスタの出力端子と接続されたノードN4にはチョークコイルL1を介して電源電圧Vddが印加されている。また、ノードN4には、DCカット用のコンデンサC3が接続されており、その先に、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さである伝送線路503と、出力整合を行う出力整合回路504が直列に接続されている。また、出力整合回路504は出力端子OUTと接続されている。
【0099】
さらに、本実施の形態のF級増幅回路500では、伝送線路503と出力整合回路504間のノードN5に、ショートスタブ510、511及びオープンスタブ512、513を接続している。ショートスタブ510、511は、図2で示したフィルタ200のショートスタブ251、252に対応し、オープンスタブ512、513は、図2で示したフィルタ200のオープンスタブ243、245に対応しており、それぞれ同様の機能を有する。
【0100】
なお、入力端子INと、出力端子OUTには、それぞれ終端抵抗R1、R2が接続されている。終端抵抗R1、R2は、例えば、50Ωである。
図19は、理想的なF級動作時におけるトランジスタの電流波形と電圧波形の様子を示す図である。横軸は位相(ωt)、縦軸は電圧Vと電流Iである。図19では、トランジスタ501を電界効果トランジスタとして、出力端子であるドレインにおけるドレイン電流波形Idと、ドレイン電圧波形Vdの様子を示している。
【0101】
図19のように、電流波形を基本波信号と偶数高調波信号による半波整流波形とし、電圧波形を電流波形と逆相の基本波信号と奇数高調波信号による方形波とすることで、電流波形と電圧波形の重なりがなくなり、消費電力を0とすることができる。すなわち、100%の動作効率が得られる。
【0102】
このような波形は、トランジスタ501の出力側のノードN4から見た負荷インピーダンスを、偶数高調波信号に対して0、すなわちショート、奇数高調波信号に対しては、オープン、すなわち無限大とすることで実現できる。
【0103】
本実施の形態のF級増幅回路500では、ショートスタブ510、511及びオープンスタブ512、513を接続したノードN5は、偶数高調波信号及び3次高調波信号(3倍波信号3f0)及び5次高調波信号(5倍波信号5f0)に対してショートになる。つまり、ショートスタブ511は偶数高調波信号を抑制し、オープンスタブ512、513は奇数高調波信号を抑制している。そのため、ノードN5から見て、λ0/4の長さの伝送線路503の先にあるノードN4では、偶数高調波信号に対してショート、3次高調波信号及び5次高調波信号に対してオープンとなる。このため、動作効率のよいF級増幅回路500が得られる。
【0104】
また、前述の実施の形態と同様に、ショートスタブ510により、基本波信号が減衰することを抑止することができる。
[変形例]
図20は、第5の実施形態に係るF級増幅回路の変形例を示す図である。図18で示したF級増幅回路500と同一の構成要素については同一符号を付している。
【0105】
このF級増幅回路500aは、図18で示したF級増幅回路500のチョークコイルL1の代わりに基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さを備えた伝送線路514をノードN4に接続している。また、電源電圧Vddが印加される電源線と伝送線路514間のノードN6と、接地線との間にバイパス用のコンデンサC4を設けている。
【0106】
そして、ノードN5には、図18で示したショートスタブ511を接続せず、このショートスタブ511の機能を、電源バイアス回路側の伝送線路514で代用している。
これにより、図18で示したF級増幅回路500と同様の効果が得られるとともに、小型化が実現できる。
【0107】
以上説明した第1〜5の実施形態を含む実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 基本波信号及び前記基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された前記基本波信号を出力する出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子とを接続する伝送線路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記伝送線路に接続し、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路に接続し、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、
前記伝送線路に接続した第2のショートスタブと、を有することを特徴とするフィルタ。
【0108】
(付記2) 前記第2のショートスタブは、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えていることを特徴とする付記1に記載のフィルタ。
(付記3) 前記オープンスタブ及び前記第1、第2のショートスタブは、前記伝送線路における接続部で共通接続されていることを特徴とする付記1または2に記載のフィルタ。
【0109】
(付記4) 第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面とを備える基板と、
前記基板に設けられ、前記第1の表面と前記第2の表面とを結ぶ接続ビアと、
前記基板の前記第2の表面の上方に形成された接地パターンと、を有し、
前記第1及び第2のショートスタブは、前記基板の前記第1の表面の上方に形成され、前記接続ビアを介して前記接地パターンと電気的に接続されていることを特徴とする付記1〜3のいずれか1つに記載のフィルタ。
【0110】
(付記5) 前記オープンスタブ、前記第1のショートスタブ及び前記第2のショートスタブには、マイクロストリップライン構造が用いられていることを特徴とする付記1〜4のいずれか1つに記載のフィルタ。
【0111】
(付記6) 基本波信号及び前記基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された前記基本波信号を出力する出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子とを接続する伝送線路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記伝送線路に接続し、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路に接続し、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えたショートスタブと、を有することを特徴とするフィルタ。
【0112】
(付記7) 前記オープンスタブ及び前記ショートスタブは、前記伝送線路における接続部で共通接続されていることを特徴とする付記6に記載のフィルタ。
(付記8) 前記オープンスタブ及び前記ショートスタブは、基板の上方に設けられており、前記オープンスタブと、前記ショートスタブの少なくとも一部が、互いに前記基板上の異なる辺に沿うように曲折され、前記基板の外周部に形成されていることを特徴とする付記6または7に記載のフィルタ。
【0113】
(付記9) 前記ショートスタブは、ワイヤにより前記伝送線路に接続されていることを特徴とする付記6〜8のいずれか1つに記載のフィルタ。
(付記10) 前記オープンスタブ及び前記ショートスタブの少なくともいずれかに並列するように導体部が設けられており、
前記導体部は、ワイヤにより前記オープンスタブ及び前記ショートスタブの少なくともいずれかに接続されていることを特徴とする付記6〜9のいずれか1つに記載のフィルタ。
【0114】
(付記11) 送信信号である基本波信号が入力される送信端子と、
受信信号を出力する受信端子と、
アンテナ端子と、
前記送信端子と前記アンテナ端子との間に接続され、前記送信端子に入力された前記基本波信号を増幅し、且つ、前記基本波信号の高調波信号群を発生するアンプと、
前記アンテナ端子と前記アンプ及び前記受信端子との間に設けられ、送受信の切り替えを行うスイッチ回路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続され、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記スイッチ回路内に設けられ、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、
前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続された第2のショートスタブと、を有することを特徴とする送受信装置。
【0115】
(付記12) 前記第2のショートスタブは、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えていることを特徴とする付記11に記載の送受信装置。
(付記13) 前記オープンスタブ及び前記第2のショートスタブは、前記伝送線路における接続部で共通接続されていることを特徴とする付記11または12に記載の送受信装置。
【0116】
(付記14) 前記アンプに接続される電源バイアス回路の伝送線路は、前記第2のショートスタブと、前記第2のショートスタブに接続される接地線と、を含み、
前記第2のショートスタブと前記接地線との間に電源電圧が印加されていることを特徴とする付記11〜13のいずれか1つに記載の送受信装置。
【0117】
(付記15) 前記第2のショートスタブ、及び、前記オープンスタブは、前記スイッチ回路内に設けられていることを特徴とする付記11〜13のいずれか1つに記載の送受信装置。
【0118】
(付記16) 基本波信号が入力される入力端子と、
前記基本波信号を増幅するトランジスタと、
前記トランジスタの出力端子に接続され、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた伝送線路と、
前記伝送線路と、増幅回路の出力端子間に接続され、前記基本波信号の奇数高調波信号に対応して設けられ、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路と、前記増幅回路の前記出力端子間に接続されたショートスタブと、
を有することを特徴とする増幅回路。
【0119】
(付記17) 前記ショートスタブは、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えていることを特徴とする付記16記載の増幅回路。
(付記18) 前記オープンスタブ及び前記ショートスタブは、前記伝送線路における接続部で共通接続されていることを特徴とする付記16または17に記載の増幅回路。
【0120】
(付記19) 前記伝送線路と前記増幅回路の前記出力端子間に、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた他のショートスタブを更に接続したことを特徴とする付記16〜18のいずれか1つに記載の増幅回路。
【0121】
(付記20) 前記トランジスタの前記出力端子と接地線との間に、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた他のショートスタブを更に接続し、前記他のショートスタブと前記接地線との間には電源電圧が印加されていることを特徴とする付記16〜18のいずれか1つに記載の増幅回路。
【符号の説明】
【0122】
200 フィルタ
210 入力端子
220 出力端子
230 伝送線路
231 接続部
243、245 オープンスタブ
251、252 ショートスタブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ、送受信装置及び増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号を処理するフィルタとして、基本波信号及び基本波信号の整数倍の周波数を持つ高調波信号が入力され、この各信号のうち高調波信号を抑制し、基本波信号を出力するフィルタが存在する。
【0003】
このようなフィルタは、例えば、アンプやミキサー等の非線形素子の出力先に設けられる。非線形素子では、基本波信号の入力に伴い、高調波信号が生成されて出力される場合がある。この場合、高調波信号が他のコンポーネントやシステムに電磁界干渉を起こす可能性がある。このような非線形素子の出力先に上記のフィルタを設けることで、高調波信号を抑制することが可能となる。
【0004】
このフィルタの一つとして、入力端子と、出力端子と、入力端子と出力端子とを接続する伝送線路と、入力される高調波信号に対応して設けられ、伝送線路に接続し、対応する高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブとを有するフィルタが存在する。
【0005】
この各オープンスタブは、対応する高調波信号に対して伝送線路との接続部をショート状態とし、対応する高調波信号を抑制する。一方、各オープンスタブは、基本波信号に対して伝送線路との接続部をオープン状態とし、基本波信号を通過させる。これにより、フィルタは、入力される基本波信号とその高調波信号のうち、高周波信号を抑制し、基本波信号を出力端子から出力することが可能となる。
【0006】
図1は、この従来のフィルタの一例を示す図である。従来のフィルタ100は、入力端子110と、出力端子120と、入力端子110と出力端子120とを接続する伝送線路130と、伝送線路130と接続部131で接続したオープンスタブ142、143、144、145、146とを有する。ここで、伝送線路130の特性インピーダンスZ0は、50Ωである。
【0007】
フィルタ100の入力端子110には、基本波信号f0と、基本波信号f0の整数倍の周波数を持つ高調波信号が入力される。ここでは、2倍の周波数を持つ2倍波信号2f0と、3倍の周波数を持つ3倍波信号3f0と、4倍の周波数を持つ4倍波信号4f0と、5倍の周波数を持つ5倍波信号5f0と、6倍の周波数を持つ6倍波信号6f0とが入力されることを想定している。ここで、基本波信号f0の周波数は、1.300GHzである。
【0008】
各オープンスタブ142〜146は、入力される各高調波信号2f0〜6f0に対応してそれぞれ設けられ、対応する高調波信号の波長の1/4の長さを備えている。
ここでは、オープンスタブ142は、2倍波信号2f0に対応して設けられ、2倍波信号2f0の波長λ2f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/8の長さ)を備える。オープンスタブ142は、2倍波信号2f0に対して伝送線路130との接続部131をショート状態とし、2倍波信号2f0を抑制する。
【0009】
オープンスタブ143は、3倍波信号3f0に対応して設けられ、3倍波信号3f0の波長λ3f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/12の長さ)を備える。オープンスタブ143は、3倍波信号3f0に対して伝送線路130との接続部131をショート状態とし、3倍波信号3f0を抑制する。
【0010】
オープンスタブ144は、4倍波信号4f0に対応して設けられ、4倍波信号4f0の波長λ4f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/16の長さ)を備える。オープンスタブ144は、4倍波信号4f0に対して伝送線路130との接続部131をショート状態とし、4倍波信号4f0を抑制する。
【0011】
オープンスタブ145は、5倍波信号5f0に対応して設けられ、5倍波信号5f0の波長λ5f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/20の長さ)を備える。オープンスタブ145は、5倍波信号5f0に対して伝送線路130との接続部131をショート状態とし、5倍波信号5f0を抑制する。
【0012】
オープンスタブ146は、6倍波信号6f0に対応して設けられ、6倍波信号6f0の波長λ6f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/24の長さ)を備える。オープンスタブ146は、6倍波信号6f0に対して伝送線路130との接続部131をショート状態とし、6倍波信号6f0を抑制する。
【0013】
一方、各オープンスタブ142〜146は、基本波信号f0に対して伝送線路130との接続部131をオープン状態とし、基本波信号f0を通過させる。これにより、フィルタ100は、入力される基本波信号f0とその高調波信号2f0〜6f0のうち、高周波信号2f0〜6f0を抑制し、基本波信号f0を出力端子120から出力することが可能となる。
【0014】
なお、オープンスタブを用いた他のフィルタとしては、オープンスタブを用いて基本波信号を抑圧し、2倍波信号を通過させるフィルタが存在する(例えば、特許文献1参照)。また、オープンスタブが用いられた方向性結合器(例えば、特許文献2参照)や、オープンスタブが用いられた周波数3逓倍回路(例えば、特許文献3参照)等が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−229840号公報
【特許文献2】特開2002−84113号公報
【特許文献3】特開平9−275319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、オープンスタブを用いた従来のフィルタでは、通過信号である基本波信号f0を減衰させてしまう可能性があった。
このような点に鑑み、高調波信号を抑制し、且つ、通過信号である基本波信号の減衰量を低減させたフィルタ、送受信装置及び増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために以下のようなフィルタが提供される。
このフィルタは、基本波信号及び基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、入力端子に入力された基本波信号を出力する出力端子と、入力端子と出力端子とを接続する伝送線路と、高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、伝送線路に接続し、対応する奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、伝送線路に接続し、基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、伝送線路に接続した第2のショートスタブと、を有する。
【0018】
また、上記目的を達成するために以下のようなフィルタが提供される。
このフィルタは、基本波信号及び前記基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、前記入力端子に入力された前記基本波信号を出力する出力端子と、前記入力端子と前記出力端子とを接続する伝送線路と、前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記伝送線路に接続し、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、前記伝送線路に接続し、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えたショートスタブと、を有する。
【0019】
また、上記目的を達成するために以下のような送受信装置が提供される。
この送受信装置は、送信信号である基本波信号が入力される送信端子と、受信信号を出力する受信端子と、アンテナ端子と、前記送信端子と前記アンテナ端子との間に接続され、前記送信端子に入力された前記基本波信号を増幅し、且つ、前記基本波信号の高調波信号群を発生するアンプと、前記アンテナ端子と前記アンプ及び前記受信端子との間に設けられ、送受信の切り替えを行うスイッチ回路と、前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続され、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、前記スイッチ回路内に設けられ、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続された第2のショートスタブと、を有する。
【0020】
また、上記目的を達成するために以下のような増幅回路が提供される。
この増幅回路は、基本波信号が入力される入力端子と、前記基本波信号を増幅するトランジスタと、前記トランジスタの出力端子に接続され、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた伝送線路と、前記伝送線路と、増幅回路の出力端子間に接続され、前記基本波信号の奇数高調波信号に対応して設けられ、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、前記伝送線路と、前記増幅回路の前記出力端子間に接続されたショートスタブと、を有する。
【発明の効果】
【0021】
開示のフィルタ、送受信装置及び増幅回路によれば、高調波信号を抑制し、且つ、基本波信号の減衰量を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のフィルタの一例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るフィルタの一例を示す図である。
【図3】図1のフィルタに対応するスミスチャートである。
【図4】第1の実施形態に係るフィルタに対応するスミスチャートである。
【図5】第1の実施形態に係るフィルタの通過特性を示したシミュレーション結果である。
【図6】図1のフィルタの通過特性を示したシミュレーション結果である。
【図7】第2の実施形態に係るフィルタの一例を示す斜視図である。
【図8】図7の上面図である。
【図9】第2の実施形態に係るフィルタの通過特性を示した電磁界シミュレーション結果である。
【図10】第3の実施形態に係るフィルタの一例を示す上面図である。
【図11】第3の実施形態に係るフィルタの通過特性を示した電磁界シミュレーション結果である。
【図12】第3の実施の形態のフィルタの試作品の構成を示す上面図である。
【図13】図12のA−A線での断面図である。
【図14】図13で示した試作品のフィルタの通過特性の実測結果である。
【図15】第4の実施形態に係る送受信装置の一例を示す図である。
【図16】第4の実施形態に係る送受信装置の第1の変形例を示す図である。
【図17】第4の実施形態に係る送受信装置の第2の変形例を示す図である。
【図18】第5の実施形態に係るF級増幅回路の一例を示す図である。
【図19】理想的なF級動作時におけるトランジスタの電流波形と電圧波形の様子を示す図である。
【図20】第5の実施形態に係るF級増幅回路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図2は、第1の実施形態に係るフィルタの一例を示す図である。第1の実施形態に係るフィルタ200は、入力端子210、出力端子220、入力端子210と出力端子220とを接続する伝送線路230、伝送線路230と接続部231で接続したオープンスタブ243、245、及び、ショートスタブ251、252を有する。ここで、伝送線路230の特性インピーダンスZ0は、50Ωである。
【0024】
なお、図2に示すように、伝送線路230に一端を接続するスタブのうち、他端を開放しているものをオープンスタブ243、245、他端を短絡しているものをショートスタブ251、252と呼ぶ。
【0025】
入力端子210には、基本波信号f0と、基本波信号f0の整数倍の周波数を持つ高調波信号が入力される。ここでは、2倍の周波数を持つ2倍波信号2f0と、3倍の周波数を持つ3倍波信号3f0と、4倍の周波数を持つ4倍波信号4f0と、5倍の周波数を持つ5倍波信号5f0と、6倍の周波数を持つ6倍波信号6f0とが入力されることを想定している。
【0026】
フィルタ200は、入力端子210に入力された基本波信号f0とその高調波信号2f0、3f0、4f0、5f0、6f0のうち、高周波信号2f0、3f0、4f0、5f0、6f0を抑制し、基本波信号f0を出力端子220から出力する。
【0027】
フィルタ200は、ショートスタブ251を有することにより、基本波信号f0の減衰量を低減することが可能となる。その理由について次に説明する。
図3は、図1のフィルタに対応するスミスチャートである。ここで、基本波信号f0の周波数は、1.300GHzである。図3に示すように、基本波信号f0に対するインピーダンスは、例えば、6.511−j16.827Ωであり、スミスチャート中のm1で示される箇所に位置している。
【0028】
m1は、整合点であるm0から、等コンダクタンス円S1上を、時計回りに進んだ箇所に位置している。この状態は、フィルタ100において、伝送線路130に対して並列にキャパシタを接続した場合に相当する。これは、各オープンスタブ142〜146と、接地線(図示せず)との間に発生する接地容量が原因であると考えられる。このため、基本波信号f0が減衰していると考えられる。
【0029】
これに対して、伝送線路130にショートスタブを接続すると、伝送線路130に対して並列にインダクタを接続させた状態に相当し、図3において、m1を等コンダクタンス円S1上に沿って反時計回りに進ませることが可能となる。進ませる量は、ショートスタブの長さにより調整することが可能である。これにより、m1を整合点であるm0に近づけることが可能となる。すなわち、基本波信号f0に対するインピーダンスを整合させることが可能となる。
【0030】
上記の理由により、フィルタ200では、オープンスタブ243、245により発生する接地容量は、ショートスタブ251により消すことが可能となる。これにより、基本波信号f0に対するインピーダンスを整合させることが可能となり、基本波信号f0の減衰量を低減させることが可能となる。ここでは、ショートスタブ251は、基本波信号f0の波長λf0の1/8の長さを備えている。
【0031】
図4は、第1の実施形態に係るフィルタに対応するスミスチャートである。フィルタ200では、図4に示すように、基本波信号f0に対するインピーダンスは、例えば、49.527+j4.840Ωであり、スミスチャート中のm2で示される箇所に位置している。m2は、等コンダクタンス円S2上において、整合点であるm0の近傍に位置している。これは、基本波信号f0に対するインピーダンスが整合されていることを示している。
【0032】
次に、図2に戻り、オープンスタブ243、245について説明する。オープンスタブ243、245は、入力される高調波信号2f0〜6f0のうち、奇数高調波信号3f0、5f0に対応して、それぞれ設けられている。
【0033】
ここでは、オープンスタブ243は、3倍波信号3f0に対応して設けられ、3倍波信号3f0の波長λ3f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/12の長さ)を備える。オープンスタブ243は、3倍波信号3f0に対して伝送線路230との接続部231をショート状態とし、3倍波信号3f0を抑制する。
【0034】
オープンスタブ245は、5倍波信号5f0に対応して設けられ、5倍波信号5f0の波長λ5f0の1/4の長さ(すなわち、基本波信号f0の波長λf0の1/20の長さ)を備える。オープンスタブ245は、5倍波信号5f0に対して伝送線路230との接続部231をショート状態とし、5倍波信号5f0を抑制する。
【0035】
一方、各オープンスタブ243、245は、基本波信号f0に対して伝送線路230との接続部231をオープン状態とし、基本波信号f0を通過させる。また、オープンスタブの数は、オープンスタブ243、245の2つに限定されるものではなく、抑制すべき奇数高調波信号の数に応じて適宜、設けられる。
【0036】
次に、ショートスタブ252について説明する。ショートスタブ252は、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さを備える。すなわち、ショートスタブ252の長さは、2倍波信号2f0の波長λ2f0の2/4の長さに相当し、4倍波信号4f0の波長λ4f0の4/4の長さに相当し、6倍波波長6f0の波長λ6f0の6/4の長さに相当する。つまり、ショートスタブ252の長さは、各波長λ2f0、λ4f0、λ6f0の1/4の長さを偶数倍した長さに相当する。
【0037】
これにより、ショートスタブ252は、偶数高調波信号2f0、4f0、6f0に対して伝送線路230との接続部231をショート状態とし、偶数高調波信号2f0、4f0、6f0を抑制する。一方、ショートスタブ252は、基本波信号f0に対して伝送線路230との接続部231をオープン状態とし、基本波信号f0を通過させる。
【0038】
このように、ショートスタブ252を設けることで、偶数高調波信号2f0、4f0、6f0を抑制することが可能となるので、各偶数高調波信号2f0、4f0、6f0に対して、従来のフィルタ100のようにオープンスタブをそれぞれ設ける必要が無くなる。このため、オープンスタブもしくはショートスタブが占有する面積を小さくすることが可能となり、フィルタの小型化を実現することが可能となる。
【0039】
図5は、第1の実施形態に係るフィルタの通過特性を示したシミュレーション結果である。図5のグラフの横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は減衰レベル(dB)である。図中には、通過特性と、反射特性とが示されている。
【0040】
フィルタ200では、図5に示されるように、通過特性から、各高調波信号2f0〜6f0が、大きく減衰していることが伺える。さらに、基本波信号f0の周波数である1.300GHzにおける通過特性は、−0.010dBであり、基本波信号f0がほとんど減衰していないことが伺える。
【0041】
一方、図6は、図1のフィルタの通過特性を示したシミュレーション結果である。基本波信号f0の周波数である1.300GHzにおける減衰レベルは、−4.265dBであり、基本波信号f0が減衰していることが伺える。
【0042】
このように、フィルタ200によれば、高調波信号2f0〜6f0を抑制し、且つ、通過信号である基本波信号f0の減衰量を低減させることが可能となる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態のフィルタ200に、マイクロストリップラインを適用したものに相当する。
【0043】
図7は、第2の実施形態に係るフィルタの一例を示す斜視図である。図8は、図7の上面図である。
第2の実施形態に係るフィルタ300は、表面11と、表面11とは反対側の表面12と、表面11と表面12とを結ぶ接続ビア20を備える基板10を有する。基板10には、例えば、アルミナ等を材料とする低損失誘電体基板が用いられている。
【0044】
基板10の表面11上には、入力端子310と、出力端子320と、入力端子310と出力端子320とを接続する伝送線路330とが形成されている。さらに、基板10の表面11上には、伝送線路330と接続部331でそれぞれ接続した、オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352とが形成されている。
【0045】
入力端子310には、基本波信号f0と、基本波信号f0の整数倍の周波数を持つ高調波信号が入力される。ここでは、2倍の周波数を持つ2倍波信号2f0と、3倍の周波数を持つ3倍波信号3f0と、4倍の周波数を持つ4倍波信号4f0と、5倍の周波数を持つ5倍波信号5f0と、6倍の周波数を持つ6倍波信号6f0とが入力されることを想定している。ここで、基本波信号f0の周波数は、例えば、1.300GHzである。
【0046】
フィルタ300は、入力端子310に入力された基本波信号f0とその高調波信号2f0〜6f0のうち、高周波信号2f0〜6f0を抑制し、基本波信号f0を出力端子320から出力する。
【0047】
入力端子310と、出力端子320と、伝送線路330と、オープンスタブ343、345と、ショートスタブ351、352とは、導電パターンで形成されている。導電パターンの材料は、例えば、金(Au)、銀(Ag)、もしくは、銅(Cu)である。ここで、各導電パターンの膜厚は、低損失を図るために、例えば、10μm程度が望ましい。また、伝送線路330の特性インピーダンスZ0は、50Ωである。
【0048】
オープンスタブ343、345は、入力される高調波信号2f0〜6f0のうち、奇数高調波信号3f0、5f0に対応して、それぞれ設けられている。ここでは、オープンスタブ343は、3倍波信号3f0の波長λ3f0の1/4の長さを備えている。オープンスタブ345は、5倍波信号5f0の波長λ5f0の1/4の長さを備えている。なお、オープンスタブの数は、オープンスタブ343、345の2つに限定されるものではなく、抑制すべき奇数高調波信号の数に応じて適宜、設けられる。
【0049】
ショートスタブ351は、基本波信号f0の波長λf0の1/8の長さを備えている。ショートスタブ352は、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さを備えている。基板10の表面12上には、接地パターン30が形成されている。ショートスタブ351、352は、それぞれ、接続ビア20を介して接地パターン30に電気的に接続されている。
【0050】
図9は、第2の実施形態に係るフィルタの通過特性を示した電磁界シミュレーション結果である。図9のグラフの横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は減衰レベル(dB)である。図中には、通過特性と、反射特性とが示されている。
【0051】
フィルタ300では、図9に示すように、通過特性から、各高調波信号2f0〜6f0が、大きく減衰していることが伺える。一方、基本波信号f0は、ほとんど減衰していないことが伺える。これは、第1の実施形態と同様の理由により、オープンスタブ343、345が奇数高調波3f0、5f0を抑制し、ショートスタブ352が偶数高調波2f0、4f0、6f0を抑制し、ショートスタブ351が基本波信号f0の減衰量を低減させることによる。
【0052】
このように、フィルタ300によれば、高調波信号2f0〜6f0を抑制し、且つ、通過信号である基本波信号f0の減衰量を低減させることが可能となる。
さらに、フィルタ300では、オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352は、伝送線路330と接続部331で共通接続されている。すなわち、オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352は、基板10の表面11上において、一箇所に集中して配置されている。
【0053】
このため、各オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352が伝送線路330と異なる接続部でそれぞれ接続されている場合と比べて、基板10の表面11における空き領域を小さくすることができ、基板10を小さくすることが可能となる。これにより、フィルタ300は、小型化を図ることが可能となる。
【0054】
さらに、この構成によれば、各オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352間を接続する接続ラインのライン長を0とすることができる。これにより、接続ラインが各オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352に与える影響を抑制することが可能となる。
【0055】
さらに、フィルタ300では、オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352は、基板10の表面11上において、伝送線路330を挟んだ両側に渡って配置されている。すなわち、図8に示すように、オープンスタブ343、ショートスタブ351、352は、伝送線路330に対して一方の側の領域10aに配置され、オープンスタブ345は、伝送線路330を挟んだ反対側の領域10bに配置されている。
【0056】
このように、各オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351、352を、伝送線路330を挟んだ両側の領域に渡って配置させることで、各スタブ間の距離をできるだけ大きく保つことが可能となる。これにより、各スタブ同士が互いに影響し、各スタブの特性がずれてしまうことを抑制することが可能となる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第2の実施の形態のフィルタ300からショートスタブ352を除いたものに相当する。
【0057】
図10は、第3の実施形態に係るフィルタの一例を示す上面図である。フィルタ300aは、図10に示すように、入力端子310と、出力端子320と、入力端子310と、伝送線路330と、オープンスタブ343、345、及び、ショートスタブ351とを有している。伝送線路330の特性インピーダンスZ0は、50Ωである。
【0058】
図11は、第3の実施形態に係るフィルタの通過特性を示した電磁界シミュレーション結果である。図11のグラフの横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は減衰レベル(dB)である。図中には、通過特性と、反射特性とが示されている。
【0059】
フィルタ300aでは、図11に示すように、通過特性から、奇数高調波信号3f0、5f0が、大きく減衰していることが伺える。一方、基本波信号f0は、ほとんど減衰していないことが伺える。これは、オープンスタブ343、345が奇数高調波3f0、5f0を抑制し、ショートスタブ351が基本波信号f0の減衰量を低減させることによる。
【0060】
なお、図11から、フィルタ300aは偶数高調波信号2f0、4f0、6f0を抑制するショートスタブ352を有していないにも係わらず、4倍波信号4f0が減衰していることが伺える。これは、ショートスタブ351の長さ(λf0の1/8)が、4倍波信号4f0の波長λ4f0の2/4の長さ(λ4f0の1/4の長さの偶数倍)に相当するためである。つまり、ショートスタブ351が、4倍波信号4f0に対して伝送線路330との接続部331をショート状態とし、4倍波信号4f0を抑制するためである。
【0061】
次に、上記のような第3の実施の形態のフィルタ300aをもとに試作品を製作し、通過特性を実際に測定した結果を示す。
図12は、第3の実施の形態のフィルタの試作品の構成を示す上面図である。また、図13は、図12のA−A線での断面図である。
【0062】
このフィルタ300bは、Cu板にAuをメッキした金属キャリア361を有し、金属キャリア361上には、金すず(Au−Sn)はんだで接合されたアルミナ基板362が設けられている。アルミナ基板362の厚さは、耐電力や実装性を考慮して決定する。例えば、1.3GHz帯で使用される場合の電力を考慮した場合、アルミナ基板362の厚さを150μm〜1mm程度とすることが望ましい。本試作品では、アルミナ基板362の厚さは635mm程度とした。なお、図示を省略しているが、金属キャリア361の反対面にも、全面にグランド用としてAuをメッキしている。
【0063】
アルミナ基板362上には、伝送線路363、オープンスタブ364、365、及びショートスタブ366が、Auの導体パターンで形成されている。オープンスタブ364、365、及びショートスタブ366は、伝送線路363における接続部372で共通接続されている。各導体パターンの厚さは、低損失を図るために、10μm程度とした。伝送線路363、オープンスタブ364、365は、図10で示したフィルタ300aの伝送線路330、オープンスタブ343、345に対応しており、同様の機能を有する。また、ショートスタブ366は、図10で示したショートスタブ351に対応しており、同様の機能を有する。
【0064】
ただし、オープンスタブ364、365及びショートスタブ366の少なくとも一部は、互いにアルミナ基板362上の異なる辺に沿うように曲折され、アルミナ基板362の外周部に形成されている。これにより、フィルタ300aの小型化を図れるとともに、導体パターン(各スタブ)間の距離を広げることができ、導体パターン間での干渉や容量結合の発生を抑制できる。
【0065】
なお、本試作品においてショートスタブ366は、Auワイヤボンディングにより伝送線路363と接続しており、Auワイヤ366aの長さを調節することで、ショートスタブ366の長さを簡単に微調整することが可能である。
【0066】
また、アルミナ基板362上には、オープンスタブ364、365及びショートスタブ366の端部や、各スタブに並列に複数の調整用ランド367がAuの導体パターンで形成されている。各スタブに対して、1つまたは複数の調整用ランド367をAuワイヤボンディングにより接続することで、対応する高調波信号を抑圧するために必要な各スタブの長さを微調整することができる。
【0067】
各スタブの長さを微調整する理由としては、以下の通りである。
特に、フィルタ300bの小型化を図ろうとすると、各スタブがアルミナ基板362の外周部に形成され、実効誘電率が低くなる。そのため、スタブの電気長が短くなり、目当ての高調波信号を抑圧するために必要な電気長に足りなくなる。したがって、Auワイヤボンディングや、調整用ランド367を用いて各スタブの長さを変えることで、簡単に精度よく高調波を抑圧するために必要な電気長に調整することができる。
【0068】
金属キャリア361上には、さらに、金すずはんだで接合された台座368a、368b、368cが設けられている。台座368a、368b、368cは、コバールの表層に金すずがコーティングされたものを用いている。
【0069】
台座368a、368b上には、フィルタ300bの特性を測定するためのコプレーナウェーブガイド−マイクロストリップライン変換器(以下CPW−MSL変換器という。)369a、369bを搭載したアルミナ基板370a、370bを配置している。
【0070】
アルミナ基板370a、370bは150μm程度の厚さであり、金すずはんだで台座368a、368bに接合されている。
CPW−MSL変換器369a、369bは、Auワイヤボンディングにより伝送線路363の両端に接続される。図13では、Auワイヤ371により、伝送線路363とCPW−MSL変換器369bを接続している様子を示している。
【0071】
なお、このようなフィルタ300bを、実際に送受信装置等に用いる場合、伝送線路363の両端には、スイッチ回路やアンプが接続される。その場合には、CPW−MSL変換器369a、369bは取り除いてもよい。
【0072】
また、台座368cには、ショートスタブ366がAuワイヤボンディングにより接続されており、ショートスタブ366を接地している。
図7や図10で示したフィルタ300、300aは、ショートスタブを、接続ビアを介してグランドとショートさせている。上記のフィルタ300bでは、Auワイヤボンディングにより、ショートスタブ366を電気的にグランドとなる金属キャリア361に接続している。このため、ショートスタブ366を、簡単な構成でグランドとショートさせることができる。
【0073】
図14は、図13で示した試作品のフィルタの通過特性の実測結果である。図14のグラフの横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は減衰レベル(dB)である。なお、図中には、アンプを接続することを想定した伝送線路363の一端(CPW−MSL変換器369b側)からの入力についての透過特性と反射特性とが示されているが、伝送線路363の他端からの入力についても同様の特性となる。
【0074】
図14に示すように、試作品のフィルタ300bは、図11で示したシミュレーション結果と同様の特性を示すことが確認できた。すなわち、図14に示される通過特性から、奇数高調波信号3f0、5f0が、大きく減衰していることが伺える。さらに、基本波信号f0の周波数である1.300GHzにおける通過特性は、−0.053dBであり、基本波信号f0がほとんど減衰していないことが伺える。また、4倍波信号4f0についても減衰していることが伺える。
【0075】
以上のような測定結果から、第3の実施の形態における試作品のフィルタ300bの効果を検証できた。
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、第1実施形態のフィルタ200を、送受信装置に適用したものに相当する。図15は、第4の実施形態に係る送受信装置の一例を示す図である。
【0076】
送受信装置400は、送信端子Txと、受信端子Rxと、アンテナ端子411と、送信端子Txとアンテナ端子411との間に接続されたアンプ420と、アンテナ端子411と受信端子Rx及びアンプ420との間に接続されたスイッチ回路430とを有する。アンテナ端子411はアンテナ410に接続される。
【0077】
ここで、送受信装置400の動作について簡単に説明する。送信時、スイッチ回路430が送信端子Txとアンテナ端子411との間を導通し、これにより、送信端子Txに送信回路(図示せず)から入力される送信信号は、アンプ420により増幅され、アンテナ端子411からアンテナ410に出力される。また、受信時は、スイッチ回路430が受信端子Rxとアンテナ端子411との間を導通し、アンテナ端子411に入力された受信信号は、受信端子Rxから受信回路(図示せず)に出力される。
【0078】
ここからは、また、送受信装置400の構成について説明を続ける。送信端子Txには、送信信号として基本波信号f0が入力される。基本波信号f0の周波数は、例えば、1.300GHzである。また、アンプ420は、基本波信号f0を増幅して出力する際、基本波信号f0の整数倍の周波数を持つ高調波信号を発生して出力する。ここでは、2倍の周波数を持つ2倍波信号2f0と、3倍の周波数を持つ3倍波信号3f0と、4倍の周波数を持つ4倍波信号4f0と、5倍の周波数を持つ5倍波信号5f0と、6倍の周波数を持つ6倍波信号6f0が発生することを想定している。なお、アンプ420の出力信号は数百Wの高出力である。
【0079】
さらに、送受信装置400は、アンテナ端子411とアンプ420の出力側との間に接続された、オープンスタブ443、445と、ショートスタブ451、452とを有する。ここで、ショートスタブ452は、スイッチ回路430内に設けられている。
【0080】
オープンスタブ443、445と、ショートスタブ451とは、アンプ420の出力側のノードN1に接続されている。オープンスタブ443、445は、高調波信号2f0〜6f0のうち、奇数高調波信号3f0、5f0に対応して、それぞれ設けられている。
【0081】
ここでは、オープンスタブ443は、3倍波信号3f0の波長λ3f0の1/4の長さを備えている。オープンスタブ445は、5倍波信号5f0の波長λ5f0の1/4の長さを備えている。なお、オープンスタブの数は、オープンスタブ443、445の2つに限定されるものではなく、抑制すべき奇数高調波信号の数に応じて適宜、設けられる。ショートスタブ451は、基本波信号f0の波長λf0の1/8の長さを備えている。
【0082】
スイッチ回路430は、制御用端子431と、トランジスタ432、433と、アンテナ端子411に接続されたノードN2と、受信端子Rxに伝送線路454を介して接続されたノードN3とを有する。
【0083】
トランジスタ432は、ノードN1とノードN2との間に接続され、制御電極が制御用端子431に接続されている。トランジスタ432は、制御用端子431に供給される信号に応じて、ノードN1とノードN2との間の導通状態を制御する。
【0084】
トランジスタ433は、ノードN3と接地線との間に接続され、制御電極が制御用端子431に接続されている。トランジスタ433は、制御用端子431に供給される信号に応じて、ノードN3と接地線との間の導通状態を制御する。なお、トランジスタ432、433には、例えば、電界効果型トランジスタが用いられる。
【0085】
ショートスタブ452は、一端452aがノードN2と接続され、他端452bがトランジスタ433のオン時に短絡状態となるノードN3と接続されている。ショートスタブ452は、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さを備えている。
【0086】
伝送線路454は、ノードN3と受信端子Rx間に接続されており、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さを備えていることが望ましい。
次に、送受信装置400の動作について詳細に説明する。
【0087】
送信時、送信端子Txに送信信号である基本周波信号f0が供給される。送信端子Txに供給された基本周波信号f0は、アンプ420で増幅される。この時、高調波信号2f0〜6f0が発生し、基本波信号f0及び高調波信号2f0〜6f0がノードN1に出力される。このうち、奇数高調波信号3f0、5f0は、オープンスタブ443、445により抑制される。また、ショートスタブ451により、基本波信号f0の減衰量は低減される。
【0088】
さらに、送信時、制御用端子431に入力される信号が切り替わり、トランジスタ432、433がONされる。これにより、ノードN1とアンテナ端子411とが導通し、基本波信号f0がアンテナ410から外部に無線送信される。また、ノードN3は接地されるため、基本波信号f0が受信端子Rxへ回り込む可能性は抑制される。さらに、ショートスタブ452の端452bは接地されるため、偶数高調波信号2f0、4f0、6f0は抑制される。
【0089】
一方、受信時は、制御用端子431に入力される信号が切り替わり、トランジスタ432、433がOFFされる。これにより、アンテナ410で受信した受信信号は、アンテナ端子411、ノードN2、ノードN3を介して受信端子Rxから出力される。この時、送信端子Txへの経路は遮断されている。また、この時、ショートスタブ452は、接地されておらず、単に、伝送線路として機能する。
【0090】
このように、送受信装置400によれば、高調波信号2f0〜6f0を抑制し、且つ、送信信号である基本波信号f0の減衰量を低減させることが可能となる。さらに、送受信装置400では、偶数高調波2f0、4f0、6f0を抑制するショートスタブ452が、スイッチ回路430内に設けられているため、小型化を実現することが可能となる。
[変形例1]
図16は、第4の実施形態に係る送受信装置の第1の変形例を示す図である。図15で示した送受信装置400と同一の構成要素については同一符号を付している。
【0091】
この送受信装置400aは、ショートスタブ451を、アンプ420の出力に接続する電源バイアス回路460の伝送線路として利用するものである。
電源バイアス回路460において、ショートスタブ451と接地線との間のノードN4に、電源電圧Vddを印加している。
【0092】
なお、ノードN1とトランジスタ432との間には、直流(DC)成分をカットするコンデンサC1が接続されており、ノードN4と接地線との間には、バイパス用のコンデンサC2が接続されている。
【0093】
前述したように、オープンスタブ443、445と、λf0/8の長さのショートスタブ451を接続しているノードN1では、基本波信号f0に対してはオープンとなっている。すなわち、基本波信号f0の減衰量は低減されている。
【0094】
アンプの電源バイアス回路は、アンプの出力信号が電源バイアス回路側に流れて損失が生じるのを抑制するために、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さの伝送線路を用いることが多い。本実施の形態の送受信装置400aにおける電源バイアス回路460では、そのλf0/4の長さの伝送線路を、λf0/8の長さのショートスタブ451で代用できるので、低損失で小型の電源バイアス回路を実現できる。
[変形例2]
図17は、第4の実施形態に係る送受信装置の第2の変形例を示す図である。図15で示した送受信装置400と同一の構成要素については同一符号を付している。第2の変形例の送受信装置400bは、送受信装置400において、オープンスタブ443、445、及び、ショートスタブ451の接続位置を変更したものである。
【0095】
送受信装置400bでは、オープンスタブ443、445、及び、ショートスタブ451は、スイッチ回路430内に設けられ、ノードN2に接続されている。
この構成によれば、アンプ420で発生する高調波信号のみならず、スイッチ回路430で発生する高調波信号についても、抑制することが可能となる。さらに、送受信装置400の更なる小型化を実現することが可能となる。
【0096】
なお、送受信装置400bにおいても、送受信装置400と同様に、高調波信号2f0〜6f0を抑制し、且つ、送信信号である基本波信号f0の減衰量を低減させることが可能となる。
[第5の実施形態]
以下では、第1の実施形態のフィルタ200を適用したF級増幅回路の例を示す。
【0097】
図18は、第5の実施形態に係るF級増幅回路の一例を示す図である。
F級増幅回路500は、基本波信号f0の増幅用のトランジスタ501と、トランジスタ501の制御用端子と基本波信号f0が入力される入力端子INとの間に接続し入力整合を行う入力整合回路502を有する。トランジスタ501は、例えば、電界効果トランジスタまたはバイポーラトランジスタである。
【0098】
トランジスタ501は、ノードN4と接地線との間に接続され、トランジスタの出力端子と接続されたノードN4にはチョークコイルL1を介して電源電圧Vddが印加されている。また、ノードN4には、DCカット用のコンデンサC3が接続されており、その先に、基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さである伝送線路503と、出力整合を行う出力整合回路504が直列に接続されている。また、出力整合回路504は出力端子OUTと接続されている。
【0099】
さらに、本実施の形態のF級増幅回路500では、伝送線路503と出力整合回路504間のノードN5に、ショートスタブ510、511及びオープンスタブ512、513を接続している。ショートスタブ510、511は、図2で示したフィルタ200のショートスタブ251、252に対応し、オープンスタブ512、513は、図2で示したフィルタ200のオープンスタブ243、245に対応しており、それぞれ同様の機能を有する。
【0100】
なお、入力端子INと、出力端子OUTには、それぞれ終端抵抗R1、R2が接続されている。終端抵抗R1、R2は、例えば、50Ωである。
図19は、理想的なF級動作時におけるトランジスタの電流波形と電圧波形の様子を示す図である。横軸は位相(ωt)、縦軸は電圧Vと電流Iである。図19では、トランジスタ501を電界効果トランジスタとして、出力端子であるドレインにおけるドレイン電流波形Idと、ドレイン電圧波形Vdの様子を示している。
【0101】
図19のように、電流波形を基本波信号と偶数高調波信号による半波整流波形とし、電圧波形を電流波形と逆相の基本波信号と奇数高調波信号による方形波とすることで、電流波形と電圧波形の重なりがなくなり、消費電力を0とすることができる。すなわち、100%の動作効率が得られる。
【0102】
このような波形は、トランジスタ501の出力側のノードN4から見た負荷インピーダンスを、偶数高調波信号に対して0、すなわちショート、奇数高調波信号に対しては、オープン、すなわち無限大とすることで実現できる。
【0103】
本実施の形態のF級増幅回路500では、ショートスタブ510、511及びオープンスタブ512、513を接続したノードN5は、偶数高調波信号及び3次高調波信号(3倍波信号3f0)及び5次高調波信号(5倍波信号5f0)に対してショートになる。つまり、ショートスタブ511は偶数高調波信号を抑制し、オープンスタブ512、513は奇数高調波信号を抑制している。そのため、ノードN5から見て、λ0/4の長さの伝送線路503の先にあるノードN4では、偶数高調波信号に対してショート、3次高調波信号及び5次高調波信号に対してオープンとなる。このため、動作効率のよいF級増幅回路500が得られる。
【0104】
また、前述の実施の形態と同様に、ショートスタブ510により、基本波信号が減衰することを抑止することができる。
[変形例]
図20は、第5の実施形態に係るF級増幅回路の変形例を示す図である。図18で示したF級増幅回路500と同一の構成要素については同一符号を付している。
【0105】
このF級増幅回路500aは、図18で示したF級増幅回路500のチョークコイルL1の代わりに基本波信号f0の波長λf0の1/4の長さを備えた伝送線路514をノードN4に接続している。また、電源電圧Vddが印加される電源線と伝送線路514間のノードN6と、接地線との間にバイパス用のコンデンサC4を設けている。
【0106】
そして、ノードN5には、図18で示したショートスタブ511を接続せず、このショートスタブ511の機能を、電源バイアス回路側の伝送線路514で代用している。
これにより、図18で示したF級増幅回路500と同様の効果が得られるとともに、小型化が実現できる。
【0107】
以上説明した第1〜5の実施形態を含む実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 基本波信号及び前記基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された前記基本波信号を出力する出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子とを接続する伝送線路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記伝送線路に接続し、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路に接続し、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、
前記伝送線路に接続した第2のショートスタブと、を有することを特徴とするフィルタ。
【0108】
(付記2) 前記第2のショートスタブは、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えていることを特徴とする付記1に記載のフィルタ。
(付記3) 前記オープンスタブ及び前記第1、第2のショートスタブは、前記伝送線路における接続部で共通接続されていることを特徴とする付記1または2に記載のフィルタ。
【0109】
(付記4) 第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面とを備える基板と、
前記基板に設けられ、前記第1の表面と前記第2の表面とを結ぶ接続ビアと、
前記基板の前記第2の表面の上方に形成された接地パターンと、を有し、
前記第1及び第2のショートスタブは、前記基板の前記第1の表面の上方に形成され、前記接続ビアを介して前記接地パターンと電気的に接続されていることを特徴とする付記1〜3のいずれか1つに記載のフィルタ。
【0110】
(付記5) 前記オープンスタブ、前記第1のショートスタブ及び前記第2のショートスタブには、マイクロストリップライン構造が用いられていることを特徴とする付記1〜4のいずれか1つに記載のフィルタ。
【0111】
(付記6) 基本波信号及び前記基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された前記基本波信号を出力する出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子とを接続する伝送線路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記伝送線路に接続し、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路に接続し、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えたショートスタブと、を有することを特徴とするフィルタ。
【0112】
(付記7) 前記オープンスタブ及び前記ショートスタブは、前記伝送線路における接続部で共通接続されていることを特徴とする付記6に記載のフィルタ。
(付記8) 前記オープンスタブ及び前記ショートスタブは、基板の上方に設けられており、前記オープンスタブと、前記ショートスタブの少なくとも一部が、互いに前記基板上の異なる辺に沿うように曲折され、前記基板の外周部に形成されていることを特徴とする付記6または7に記載のフィルタ。
【0113】
(付記9) 前記ショートスタブは、ワイヤにより前記伝送線路に接続されていることを特徴とする付記6〜8のいずれか1つに記載のフィルタ。
(付記10) 前記オープンスタブ及び前記ショートスタブの少なくともいずれかに並列するように導体部が設けられており、
前記導体部は、ワイヤにより前記オープンスタブ及び前記ショートスタブの少なくともいずれかに接続されていることを特徴とする付記6〜9のいずれか1つに記載のフィルタ。
【0114】
(付記11) 送信信号である基本波信号が入力される送信端子と、
受信信号を出力する受信端子と、
アンテナ端子と、
前記送信端子と前記アンテナ端子との間に接続され、前記送信端子に入力された前記基本波信号を増幅し、且つ、前記基本波信号の高調波信号群を発生するアンプと、
前記アンテナ端子と前記アンプ及び前記受信端子との間に設けられ、送受信の切り替えを行うスイッチ回路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続され、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記スイッチ回路内に設けられ、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、
前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続された第2のショートスタブと、を有することを特徴とする送受信装置。
【0115】
(付記12) 前記第2のショートスタブは、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えていることを特徴とする付記11に記載の送受信装置。
(付記13) 前記オープンスタブ及び前記第2のショートスタブは、前記伝送線路における接続部で共通接続されていることを特徴とする付記11または12に記載の送受信装置。
【0116】
(付記14) 前記アンプに接続される電源バイアス回路の伝送線路は、前記第2のショートスタブと、前記第2のショートスタブに接続される接地線と、を含み、
前記第2のショートスタブと前記接地線との間に電源電圧が印加されていることを特徴とする付記11〜13のいずれか1つに記載の送受信装置。
【0117】
(付記15) 前記第2のショートスタブ、及び、前記オープンスタブは、前記スイッチ回路内に設けられていることを特徴とする付記11〜13のいずれか1つに記載の送受信装置。
【0118】
(付記16) 基本波信号が入力される入力端子と、
前記基本波信号を増幅するトランジスタと、
前記トランジスタの出力端子に接続され、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた伝送線路と、
前記伝送線路と、増幅回路の出力端子間に接続され、前記基本波信号の奇数高調波信号に対応して設けられ、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路と、前記増幅回路の前記出力端子間に接続されたショートスタブと、
を有することを特徴とする増幅回路。
【0119】
(付記17) 前記ショートスタブは、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えていることを特徴とする付記16記載の増幅回路。
(付記18) 前記オープンスタブ及び前記ショートスタブは、前記伝送線路における接続部で共通接続されていることを特徴とする付記16または17に記載の増幅回路。
【0120】
(付記19) 前記伝送線路と前記増幅回路の前記出力端子間に、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた他のショートスタブを更に接続したことを特徴とする付記16〜18のいずれか1つに記載の増幅回路。
【0121】
(付記20) 前記トランジスタの前記出力端子と接地線との間に、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた他のショートスタブを更に接続し、前記他のショートスタブと前記接地線との間には電源電圧が印加されていることを特徴とする付記16〜18のいずれか1つに記載の増幅回路。
【符号の説明】
【0122】
200 フィルタ
210 入力端子
220 出力端子
230 伝送線路
231 接続部
243、245 オープンスタブ
251、252 ショートスタブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波信号及び前記基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された前記基本波信号を出力する出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子とを接続する伝送線路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記伝送線路に接続し、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路に接続し、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、
前記伝送線路に接続した第2のショートスタブと、を有することを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記第2のショートスタブは、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記オープンスタブ及び前記第1、第2のショートスタブは、前記伝送線路における接続部で共通接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載に記載のフィルタ。
【請求項4】
第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面とを備える基板と、
前記基板に設けられ、前記第1の表面と前記第2の表面とを結ぶ接続ビアと、
前記基板の前記第2の表面の上方に形成された接地パターンと、を有し、
前記第1及び第2のショートスタブは、前記基板の前記第1の表面の上方に形成され、前記接続ビアを介して前記接地パターンと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項5】
基本波信号及び前記基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された前記基本波信号を出力する出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子とを接続する伝送線路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記伝送線路に接続し、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路に接続し、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えたショートスタブと、を有することを特徴とするフィルタ。
【請求項6】
前記オープンスタブ及び前記ショートスタブは、基板の上方に設けられており、前記オープンスタブと、前記ショートスタブの少なくとも一部が、互いに前記基板上の異なる辺に沿うように曲折され、前記基板の外周部に形成されていることを特徴とする請求項5記載のフィルタ。
【請求項7】
送信信号である基本波信号が入力される送信端子と、
受信信号を出力する受信端子と、
アンテナ端子と、
前記送信端子と前記アンテナ端子との間に接続され、前記送信端子に入力された前記基本波信号を増幅し、且つ、前記基本波信号の高調波信号群を発生するアンプと、
前記アンテナ端子と前記アンプ及び前記受信端子との間に設けられ、送受信の切り替えを行うスイッチ回路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続され、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記スイッチ回路内に設けられ、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、
前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続された第2のショートスタブと、を有することを特徴とする送受信装置。
【請求項8】
前記第2のショートスタブは、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えていることを特徴とする請求項7に記載の送受信装置。
【請求項9】
前記アンプに接続される電源バイアス回路の伝送線路は、前記第2のショートスタブと、前記第2のショートスタブに接続される接地線と、を含み、
前記第2のショートスタブと前記接地線との間に電源電圧が印加されていることを特徴とする請求項7または8に記載の送受信装置。
【請求項10】
基本波信号が入力される入力端子と、
前記基本波信号を増幅するトランジスタと、
前記トランジスタの出力端子に接続され、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた伝送線路と、
前記伝送線路と、増幅回路の出力端子間に接続され、前記基本波信号の奇数高調波信号に対応して設けられ、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路と、前記増幅回路の前記出力端子間に接続されたショートスタブと、
を有することを特徴とする増幅回路。
【請求項1】
基本波信号及び前記基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された前記基本波信号を出力する出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子とを接続する伝送線路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記伝送線路に接続し、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路に接続し、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、
前記伝送線路に接続した第2のショートスタブと、を有することを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記第2のショートスタブは、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記オープンスタブ及び前記第1、第2のショートスタブは、前記伝送線路における接続部で共通接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載に記載のフィルタ。
【請求項4】
第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面とを備える基板と、
前記基板に設けられ、前記第1の表面と前記第2の表面とを結ぶ接続ビアと、
前記基板の前記第2の表面の上方に形成された接地パターンと、を有し、
前記第1及び第2のショートスタブは、前記基板の前記第1の表面の上方に形成され、前記接続ビアを介して前記接地パターンと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項5】
基本波信号及び前記基本波信号の高調波信号群が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力された前記基本波信号を出力する出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子とを接続する伝送線路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記伝送線路に接続し、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路に接続し、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えたショートスタブと、を有することを特徴とするフィルタ。
【請求項6】
前記オープンスタブ及び前記ショートスタブは、基板の上方に設けられており、前記オープンスタブと、前記ショートスタブの少なくとも一部が、互いに前記基板上の異なる辺に沿うように曲折され、前記基板の外周部に形成されていることを特徴とする請求項5記載のフィルタ。
【請求項7】
送信信号である基本波信号が入力される送信端子と、
受信信号を出力する受信端子と、
アンテナ端子と、
前記送信端子と前記アンテナ端子との間に接続され、前記送信端子に入力された前記基本波信号を増幅し、且つ、前記基本波信号の高調波信号群を発生するアンプと、
前記アンテナ端子と前記アンプ及び前記受信端子との間に設けられ、送受信の切り替えを行うスイッチ回路と、
前記高調波信号群のうちの奇数高調波信号に対応して設けられ、前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続され、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記スイッチ回路内に設けられ、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた第1のショートスタブと、
前記アンテナ端子と前記アンプとの間に接続された第2のショートスタブと、を有することを特徴とする送受信装置。
【請求項8】
前記第2のショートスタブは、前記基本波信号の波長の1/8の長さを備えていることを特徴とする請求項7に記載の送受信装置。
【請求項9】
前記アンプに接続される電源バイアス回路の伝送線路は、前記第2のショートスタブと、前記第2のショートスタブに接続される接地線と、を含み、
前記第2のショートスタブと前記接地線との間に電源電圧が印加されていることを特徴とする請求項7または8に記載の送受信装置。
【請求項10】
基本波信号が入力される入力端子と、
前記基本波信号を増幅するトランジスタと、
前記トランジスタの出力端子に接続され、前記基本波信号の波長の1/4の長さを備えた伝送線路と、
前記伝送線路と、増幅回路の出力端子間に接続され、前記基本波信号の奇数高調波信号に対応して設けられ、対応する前記奇数高調波信号の波長の1/4の長さを備えたオープンスタブと、
前記伝送線路と、前記増幅回路の前記出力端子間に接続されたショートスタブと、
を有することを特徴とする増幅回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−97552(P2011−97552A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44155(P2010−44155)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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