説明

フィルムもしくはシート

【課題】長期にわたり表面に種々の汚れが付着するのを防ぎ、かつ付着した汚れの除去が容易であり、外観の高級化を図れるコーティング用樹脂組成物を用いたフィルムもしくはシートを提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム上の片面に積層構成を有するフィルムもしくはシートであって、1)その最外層が、ポリオルガノシロキサン鎖を有する単量体、架橋官能基を有する単量体からなる重合体(A)と架橋官能基を有する重合体(B)および架橋剤からなるコーティング樹脂組成物(1)から形成され、2)中間層が、重合体(B)と架橋剤およびフィラー(C)からなるコーティング用樹脂組成物(2)にて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い防汚性を有するコーティング用樹脂組成物を基材表面に塗工してなる、例えばステンレスの風合いを持たせたラミネート鋼板用のフィルムもしくはシート(以下、総称してフイルムと記す。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家電機器やユニットバスなどで、外観の高級化を図る為に使用されているラミネート鋼板には、ステンレスに近い触感や風合いと共に、表面に種々の汚れが付着するのを防ぐ防汚機能の付与が求められている。ラミネート鋼板はプラスチックフィルムもしくはプラスチックシート(以下、総称してプラスチックフィルムと記す。)で金属板の表面を覆ったものであり、それに付与する防汚機能は、フッ素系のプラスチックフィルム基材(特許文献1)や、基材上にコーティングしたフッ素系樹脂組成物(特許文献2)等、種々のものが提案されている。これらは触感や風合いは別として、初期の汚れ付着防止に関しては優れていた。
【0003】
しかし、フッ素系化合物を含むコーティング剤をコーティングしたラミネート鋼板は、撥水性、撥油性などの機能は高く、初期の汚れ付着防止の効果はあるものの触感や風合いに欠け、また使用が長期間にわたる場合や、屋外で使用する場合などには、一度付着した汚れが落ちにくいという欠点があった。さらに、フッ素系化合物は、概して高価であり、充分な防汚機能を発現させるために多量のフッ素系化合物を含有するコーティング剤が高価となるという問題があった。
【0004】
一方、防汚機能を有する化合物として、フッ素系化合物と並んでシリコーン系化合物がよく知られているが、シリコーン系化合物は、フッ素系化合物と同様に高価であるだけでなく、プラスチック基材との密着性が非常に悪く、さらに他の一般的な樹脂との相溶性が悪く混合することが困難であるため、プラスチックフィルム上に密着し難いという欠点があった。また、非架橋性のシリコーン系化合物を含むコーティング剤をコーティングしたものは、汚れ付着性、耐溶剤性、耐光性などの機能が時間と共に劣化してしまう問題があった。
【0005】
ラミネート鋼板は、例えばステンレス調の風合いを再現させるために、プラスチックフィルムのコーティング層とは反対面にヘアライン調の印刷やアルミ蒸着を施している。コーティング剤には、これらヘアライン調の柄を遮る事無く光沢感や色味等の風合いや触感が求められるが、これまでの技術では、表面光沢が高すぎる、逆にマット調になりすぎて下地の柄を遮る、ザラザラとした触感になる等、ステンレスの風合いや触感を再現させることが困難であった。
【0006】
時間と共に劣化する汚れ付着性や価格等の問題に関しては、架橋性官能基を有する重合体フルオロアルキル基やポリシロキサン鎖を有する共重合体を配合したコーティング剤(特許文献3)により、フッ素またはシリコーンがコーティング層表面に局在化することを利用し、少ないフッ素またはシリコーン含有量で撥水性や撥油性等が優れたコーティング用樹脂組成物を得ることが出来ている。しかしながら風合いや触感といった要求についてはこれを満足させるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−8349号公報
【特許文献2】特開平06−262726号公報
【特許文献3】特開平10−265737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、長期にわたり表面に種々の汚れが付着するのを防ぎ、かつ付着した汚れの除去が容易であると共に、ステンレスに近い触感や風合いが得られ、外観の高級化を図れるコーティング用樹脂組成物を用いたフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プラスチックフィルム上の片面に積層構成を有するフィルムもしくはシートであって、
1)その最外層が、一分子中に炭素炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有する単量体(a)を0.5〜84.9重量%、および一分子中に炭素炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)15〜50重量%、および一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有する(a)と(b)以外の単量体(c)を0.1〜84.5重量%からなる重合体(A)(全重量%の総計は100重量%とする)と、
単量体(b)15〜50重量%、および単量体(c)50〜85重量%との重合体(B)(全重量%の総計は100重量%とする)、および重合体(A)および重合体(B)の架橋性官能基と反応可能な反応性官能基を有する架橋剤からなるコーティング樹脂組成物(I)から形成され、
2)プラスチックフィルムと最外層との中間に存在する中間層が、重合体(B)と重合体(B)の架橋性官能基と反応可能な反応性官能基を有する架橋剤およびフィラー(C)からなるコーティング用樹脂組成物(II)にて形成されることを特徴とするフィルムである。
【0010】
また、コーティング用樹脂組成物(II)に着色剤(D)が含まれることを特徴とするフィルムである。
【0011】
また、プラスチックフィルム上の積層構成とは反対側の面に、一層以上の金属箔層または蒸着金属層を有することを特徴とするフィルムである。
【0012】
また、フィラー(C)が体質顔料もしくは架橋性ビーズであることを特徴とするフィルムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高い防汚性を有するコーティング用樹脂組成物を基材表面に塗工してなる、例えばステンレスの風合いを持たせたラミネート鋼板用のフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、プラスチックフィルム上の少なくとも片面にコーティング用樹脂組成物を2層以上積層させたフィルムを提供する。
【0015】
本発明のフィルムは、プラスチックフィルム上の片面にコーティング用樹脂組成物を少なくとも2層以上積層されていることを特徴とするものであり、最外層は、一分子中に炭素炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有する単量体(a)を0.5〜84.9重量%、および一分子中に炭素炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)15〜50重量%、および(a)と(b)以外の一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有する単量体(c)を0.1〜84.5重量%からなる重合体(A)(全重量%の総計は100重量%とする)と、一分子中に炭素炭素不飽和二重結合と架橋性官能基を有する単量体(b)15〜50重量%、および(a)と(b)以外の一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有する単量体(c)50〜85重量%との重合体(B)(全重量%の総計は100重量%とする)からなるコーティング樹脂組成物(I)から構成される。
【0016】
ステンレスの風合いを持たせたラミネート鋼板用のフィルムでは、防汚性や耐薬品性、耐熱性、傷つき性、基材密着性等、高い要求特性が求められる。これらの要求特性を満たすために、ポリオルガノシロキサン鎖および架橋性の官能基を有する重合体(A)と架橋性の官能基を有する重合体(B)を含むコーティング用樹脂組成物を最外層に設けることが有効的である。重合体(A)と重合体(B)を含むコーティング用樹脂組成物と架橋剤とを適当な配合比率により混合し、中間層を設けたプラスチック基材へ塗布することにより、重合体が持つ架橋性官能基と架橋剤とが化学反応し、強靱な塗膜を形成し、耐薬品性、耐熱性、傷つき性、基材密着性等に対し効果を示す。一方、ポリオルガノシロキサン鎖は防汚性に効果を示す。
【0017】
重合体(A)と重合体(B)の混合比率は、単量体(a)が、重合体(A)と重合体(B)の合計重量の0.05〜10重量%となるようにすることが好ましい。0.05重量%より小さい場合は、充分な塗膜の表面特性が得られず、10重量%より大きい場合は、充分な塗膜硬度が得られず、また、コストも高くなる。
【0018】
本発明のフィルムは、プラスチックフィルム上の片面にコーティング用樹脂組成物を少なくとも2層以上積層されていることを特徴とするものであり、プラスチックフィルムと最外層との中間の中間層は、重合体(B)と粒径1〜50μmの有機組成物もしくは無機組成物のフィラー(C)、場合により着色剤(D)からなるコーティング用樹脂組成物(II)にて構成される。
【0019】
ステンレスの風合いを持たせたラミネート鋼板用のフィルムでは、物性だけでなく高い意匠性や手で触れた際の触感が求められる。意匠性や触感を満たすために、プラスチックフィルムと最外層との間の中間層は、架橋性の官能基を有する重合体(B)と粒径1〜50μmの有機組成物もしくは無機組成物のフィラー(C)、場合により着色剤(D)からなるコーティング用樹脂組成物(II)と架橋剤とを適当な配合比率により混合し、プラスチック基材へ塗布することにより、色味や光沢感、手で触れた際の触感に対し効果を示す。
【0020】
本発明のフィルムは、プラスチックフィルム上の片面にコーティング用樹脂組成物を少なくとも2層以上積層されていることを特徴とするものであるが、例えば2層ではなく1層にて実施した場合、フィラー(C)や着色剤(D)により防汚性を妨げることになり高い要求を満たすことが出来ない。又、適性な架橋剤により強靱な膜を形成し、耐薬品性、耐熱性、傷つき性等の物性を向上させるが、その反面、基材密着性を低下させることになり、1層にて物性をコントロールするのは架橋剤の配合比率だけであり非常に難しい。更に1層ではフィラー起因の光沢ムラやザラザラした手触りとなり易く、ステンレス調の意匠性や触感を満たすことが困難であり、上記の要求特性全てを満足させることは1層では困難である。
【0021】
最外層としての架橋剤の配合比率は、コーティング用樹脂組成物(I)の架橋性官能基の当量と同数以上が好ましく、架橋剤を若干過剰量にした方が物性面でより好ましい。当量未満の配合比率の場合、架橋密度が低くなり要求物性を満たすことが出来ない。また、塗工時やエージング工程時に自然に消失するため、さらに架橋密度が低くなる可能性がある。
【0022】
一方、中間層としての架橋剤配合比率は、コーティング用樹脂組成物(II)の架橋性官能基の当量と同数以下が好ましく、コーティング用樹脂組成物の架橋性官能基の当量に対し5〜80%がより好ましい。架橋剤の配合比率が、当量と同数以上であると中間層が固く脆いものとなり、金属板とのラミネート加工やラミネート鋼板の成型加工時に割れが生じやすくなり、基材密着性も低下する。
【0023】
本発明に用いるコーティング用樹脂組成物の塗工膜厚は特に限定されることはないが、用途等必要に応じて自由に調整でき、好ましくは各層毎に0.1〜10μm、2層以上の合計厚みが0.5〜20μm程度が良く、より好ましくは各層毎に0.5〜5μm、2層以上の合計厚みが1.0〜10μm程度が良い。厚い場合には、金属板とのラミネート加工や成型時に割れが生じやすくなり、厚みが薄い場合には防汚性や風合いが出ないといった問題が生じる傾向にある。
【0024】
本発明に於いて密着性を高める為に、プラスチィックフィルムと中間層との間に、更にアンカー層を設けることが出来る。アンカー層用のコーティング組成物にはこれまで公知の材料を用いることが出来るが、風合いや感触を阻害することの無いように、中間層との屈折率差が少なく且つ相溶性が良い樹脂をそのまま使用でき、更にフィラー(C)や着色剤(D)を用いることが出来る。
【0025】
本発明に用いることが出来るプラスチックフィルムは透明性と平滑性が優れたプラスチックフィルムであり、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、等のプラスチックフィルムを用いることができ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等が用いられる。これらフィルムの厚さは12〜100μm程度のフィルムが一般的に用いられている。
【0026】
本発明のフィルムは、積層構成の反対側に少なくとも一層以上の金属箔層または蒸着金属層を有することが好ましい。金属箔層または蒸着金属層を有することにより、印刷だけでは表現できない金属特有の光沢を得ることが可能となり、ステンレスに近い外観を得ることが出来る。
【0027】
本発明のコーティング用樹脂組成物を構成する(A)成分で用いられる単量体(a)は一分子中に炭素炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有し、具体的には、例えば東芝シリコーン(株)製のTSL9705などの片末端ビニル基含有ポリオルガノシロキサン化合物、チッソ(株)製のサイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725などの片末端(メタ)アクリロキシ基含有ポリオルガノシロキサン化合物等が挙げられる。一分子中に炭素炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有する単量体(a)は撥水性、撥インキ性、防汚性、滑り性等の表面特性を塗膜に付与する為に不可欠のものであり、要求性能に応じてこれらの内から1種類、あるいは2種類以上を混合して使用でき、0.5〜84.9重量%の共重合比率で用いられるが、十分な表面特性を得るためには5重量%以上共重合する事が望ましく、さらに基材との密着性、強靭性等の塗膜性能、ハロゲン原子を含まない溶剤への溶解性を十分得るためには60重量%以下の共重合比率にすることが望ましい。
【0028】
一分子中に炭素炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)は、塗工後に架橋させて、基材と密着した硬質な塗膜を形成するために用いられる。架橋性の官能基としては、加水分解性シリル基、カルボキシル基、イソシアノ基、エポキシ基、N−メチロール基または、N−アルコキシメチル基、ヒドロキシ基が挙げられ、特に加水分解性シリル基を有する単量体を用いた場合には、硬質な塗膜が得られる。加水分解性シリル基を有する単量体(b)の例としては、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリルオキシアルキルアルコキシシラン、(メタ)アクリルオキシアルキルアルコキシアルキルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジメトキシエチルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシアリルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどが挙げられる。
【0029】
また、カルボキシル基を有する単量体(b)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸などが挙げられる。また、イソシアノ基を有する単量体(b)の例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートなどの他、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレートを、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、コロネートLなどのポリイシアネートと反応させて得られるものが挙げられる。また、エポキシ基を有する単量体(b)の例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイド、1、3−ブタジエンモノエポキサイドなどが挙げられる。
【0030】
また、N−メチロール基またはN−アルコキシメチル基を有する単量体(b)の例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−モノアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミドが挙げられる。またヒドロキシル基を有する単量体(b)の例としては、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4ーヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0031】
要求性能に応じてこれらの内から1種、または2種以上を混合して用いることができる。また、重合体(A)中で用いる単量体(b)と、重合体(B)中で用いる単量体(b)とは、必ずしも、同一である必要はない。単量体(b)は、重合体(A)中では、15〜50重量%の共重合比率で用いられる。15重量%より小さい場合は、充分な硬度が得られず、50重量%より大きい場合は、塗膜の表面性能が不充分となる場合がある。また、重合体(B)中では、15〜50重量%、好ましくは20〜40%の共重合比率で用いられる。15重量%より小さい場合は、充分な硬度が得られない。
【0032】
本発明で用いられる(a)、(b)以外の一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有する単量体(c)は、硬度、強靭性、耐擦傷性、光沢向上等の様々な塗膜物性付与のために用いられる。この単量体として(i) (メタ)アクリル酸誘導体、(ii)芳香族ビニル単量体、(iii) オレフィン系炭化水素単量体、(iv)ビニルエステル単量体、(v) ビニルハライド単量体、(vi)ビニルエーテル単量体等があげられる。
(i)(メタ)アクリル酸誘導体の例として、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸塩、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が上げられる。
【0033】
(ii) 芳香族ビニル単量体の例として、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン等が上げられる。
(iii) オレフィン系炭化水素単量体の例として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、1、4−ペンタジエン等が上げられる。
(iv)ビニルエステル単量体の例として、酢酸ビニル等が上げられる。
(v) ビニルハライド単量体の例として、塩化ビニル、塩化ビニリデン、モノフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン等が上げられる。
(vi)ビニルエーテル単量体の例として、ビニルメチルエーテル等が上げられる。
【0034】
これらは、2種以上用いても良い。単量体(c)は、重合体(A)中では、0.1〜84.5量%で用いられる。また、重合体(B)中では、50〜85重量%で用いる。85重量%より大きい場合は、基材との十分な密着性が得られない。また、重合体(A)との相溶性が低下し、均一かつ良好な塗膜が得られない。
重合体(A)に用いる単量体(c)と重合体(B)に用いる単量体(c)は必ずしも同一である必要はない。また、コーテイング組成物(I)に用いる重合体(B)とコーテイング組成物(II)に用いる重合体(B)は必ずしも同一である必要はない。
【0035】
重合体(A)および重合体(B)は、公知の方法、例えば、溶液重合で得られる。用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの使用が可能である。溶媒は2種以上の混合物でもよい。合成時の単量体の仕込み濃度は、5〜80重量%が好ましい。
【0036】
重合開始剤としては、通常の過酸化物またはアゾ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチルバレノニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシドなどが用いられ、重合温度は、50〜140℃、好ましくは70〜140℃である。得られる重合体の好ましい平均重量分子量は、重合体(A)、重合体(B)共に、2,000〜100,000である。
【0037】
また、本発明においては、組成物中の架橋性の官能基を架橋させるために、種々の架橋剤を必要に応じて用いることができる。代表的な架橋剤としては、ヘキサメチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミンなどのアルキロール基またはアルコキシ基を有するメラミン系化合物、シアヌール酸、アンメリド、メラミン、ベンゾグアナミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアミノピリジン、ベンゾグアナミン樹脂、メタノール変性メラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂、ヒドラジン、ADHなどのヒドラジン系化合物、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの直鎖状ジアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、m−キシレンジアミン、ポリシクロヘキシルポリアミン、ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、メチレンビス(フランメタンアミン)などの環状ジアミン1,6−ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミンなどのポリアミン、トルイレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート、あるいは、これらとグリコール類またはジアミン類との両末端イソシアネートアダクト体、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、コロネートLなどの多価イソシアネート、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサン二酸、クエン酸、マレイン酸、メチルナディク酸、ドデセニルコハク酸、セバシン酸、ピロメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などのジカルボン酸、及びこれらの酸無水物グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのジアルデヒド、グリシン、アラニンなどのアミノ酸および、そのラクタム、クエン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、6 −ヒドロキシペンタン酸などのヒドロキシカルボン酸およびそのラクトン、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、などのジオール、1,1,1−トリメチロールプロパンエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、グアヤコール、ヘキシルレゾルシン、ピロガロール、トリヒドロキシベンゼン、フロログルシン、ジメチロールフェノールなどの多価アルコール、または多価フェノール系化合物、またはこれらのアルコキシ変性物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1、6ーヘキサンジオールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステルなどのビスエポキシ化合物、油化シェルエポキシ社製、商品名エピコート801、802,807,815,827,828,834,815X,815XA1、828EL,828XA、1001、1002、1003、1055、1004、1004AF、1007、1009、1010、1003F、1004F,1005F,1100L,834X90,1001B80,1001X70,1001X75,1001T75,5045B80,5046B80,5048B70,5049B70、5050T60、5050、5051、152、154、180S65,180H65,1031S,1032H60、604、157S70などのエポキシ樹脂、ピロリン酸、亜リン酸エチル、ビスフェノールA変性ポリリン酸、亜リン酸トリフェニルなどのリン化合物、リン酸ジクロリド化合物などが挙げられる。
【0038】
これらの架橋剤の中で、カルボキシル基を有する単量体(b)を用いた場合は、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジアミン、ポリアミン、ジイソシアネート、カルボジイミド、ビスエポキシ化合物、エポキシ樹脂などの使用が好ましい。また、イソシアノ基を有する単量体(b)を用いた場合は、ヒドラジン系化合物、ジアミン類、ジカルボン酸およびその無水物、ジオール、多価アルコールまたは多価フェノール系化合物、ビスエポキシ化合物、エポキシ樹脂などの使用が好ましい。また、エポキシ基を有する単量体(b)を用いた場合は、ジカルボン酸およびその無水物、多価アルコールまたは多価フェノール系化合物、またはこれらのアルコキシ変性物、アミノ樹脂、ジイソシアネート、多価イソシアネート、アミノ酸および、そのラクタム、ヒドロキシカルボン酸およびそのラクトン、ジアミン、ポリアミンなどの使用が好ましい。
【0039】
また、N−メチロール基または、N−アルコキシメチル基を有する単量体(b)を用いた場合は、ジカルボン酸、アルキロール基またはアルコキシ基を有するメラミン系化合物、アミノ樹脂系化合物などの使用が好ましい。また、ヒドロキシル基を有する単量体(b)を用いた場合は、アミノ樹脂、ジアミン、ポリアミン、ジイソシアネート、ジアルデヒド、ビスエポキシ化合物、エポキシ樹脂、リン化合物、リン酸ジクロリド化合物などの使用が好ましい。これらの架橋剤は2種類以上使用してもよく、その総使用量は樹脂組成物100重量%に対して1〜500重量%、好ましくは10〜200重量%の範囲である。
【0040】
また、本発明においては、組成物中の架橋性の官能基の架橋反応、もしくは架橋性の官能基と架橋剤との架橋反応を促進させるために、それぞれの官能基に応じて、種々の架橋触媒を用いることができる。代表的な架橋触媒としては、アルミニウムトリアセチルアセトネート、鉄トリアセチルアセトネート、マンガンテトラアセチルアセトネート、ニッケルテトラアセチルアセトネート、クロムヘキサアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、コバルトテトラアセチルアセトネートなどの金属錯化合物、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンブトキシドなどの金属アルコキシド、酢酸ナトリウム、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレートジブチル錫ジ(2−エチルヘキソエート)などの金属塩化合物、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、リン酸、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのリン酸エステル、モノアルキル亜リン酸、ジアルキル亜リン酸などの酸性化合物、p−トルエンスルホン酸、無水フタル酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ギ酸、酢酸、イタコン酸、シュウ酸、マレイン酸などの酸及びそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩、水酸化ナトリウム、リチウムクロライド、ジエチル亜鉛、テトラ(n−ブトキシ)チタン、などの有機金属化合物、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルエチルアミンなどのアミン類などが挙げられる。
【0041】
これらの架橋触媒の中で、加水分解性シリル基を有する単量体(b)を用いた場合は、金属錯化合物、金属アルコキシド、金属塩化合物、酸性化合物などの使用が好ましい。特に、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレートなどの錫化合物およびp−トルエンスルホン酸などの使用が好ましい。また、カルボキシル基を有する単量体(b)を用いた場合は、酸及びそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩などの使用が好ましい。また、イソシアノ基を有する単量体(b)を用いた場合は、アミン類、金属塩化合物などの使用が好ましい。
【0042】
また、エポキシ基を有する単量体(b)を用いた場合は、有機金属化合物、アミン類などの使用が好ましい。また、N−メチロール基または、N−アルコキシメチル基を有する単量体(b)を用いた場合は、酸、およびそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩などの使用が好ましい。また、ヒドロキシル基を有する単量体(b)を用いた場合は、酸性化合物、酸及びそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩、などの使用が好ましい。これらの架橋触媒は2種類以上使用してもよく、その総使用量は樹脂組成物100重量%に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。
本発明においては、特にヒドロキシル基を有する単量体(b)を用いた重合体と架橋剤としてイソシアネート化合物を組み合わせると耐薬品性、耐熱性、傷つき性、基材密着性等において優れた特性が得られる。
【0043】
本発明で用いるフィラー(C)は有機組成物もしくは無機組成物からなる粒径1〜50μmのフィラーを用いることが出来る。フィラー(C)は、例えばステンレス調の風合いと触感を再現させるために、プラスチックフィルムのコーティング層とは反対面にヘアライン調の印刷やアルミ蒸着を施している柄を遮る事無く、且つステンレス調の光沢感や色味等の風合い、及び触感を再現させるために用いる。フィラー(C)は積層させたコーティング層毎に同一なもの、あるいは異なるものを使用しても良いが、隣り合うコーティング層毎に異なるフィラーを用いた方がステンレス調の風合いと触感を再現させるのにより好ましい。また、一つのコーティング層に2種以上のフィラーを混合させて使用しても良い。フィラー粒径は1〜50μmのものが使用できるが塗工膜厚によって変更され、一般的には塗工膜厚の0.1〜5倍程度、粒径としては1〜10μmがより好ましい。フィラー(C)の配合量は風合いや触感により決定されるが、コーティング用樹脂組成物の0〜50重量%が好ましい。
【0044】
本発明で用いる無機組成フィラーは酸化チタンや硫化亜鉛、亜鉛華、硫酸鉛、酸化アンチモン等、一般的に白色顔料と呼ばれる屈折率の高い無機顔料を用いることができるが、より好ましくはバインダーとして用いられる重合体(A)や重合体(B)との屈折率差が少なく無色である体質顔料を用いることが好ましい。
【0045】
体質顔料としてより具体的には、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降性硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化珪素、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、タルク(含水珪酸マグネシウム)、カオリナイトやハイロサイト等のカオリン群(アルミニウムと珪素の塩)、マイカ(アルミニウムと珪素の塩)、ろう石クレーや焼成クレー(アルミニウムと珪素の塩)、合成および天然ゼオライト(アルミニウムと珪素の塩)、スメクタイトやモンモリロナイト(アルミニウムとマグネシウム、珪素の塩)、ガラスビーズ等が挙げられる。重合体(A)や重合体(B)との分散性や吸着性を上げ、沈降性や物理特性等を向上する目的でこれら無機顔料の表面に有機物や無機物を処理したものを使用することが出来る。
【0046】
本発明で用いる有機組成物フィラーはスチレン、アクリル、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ナイロン、フッ素、シリコーン等のビーズを用いることが出来るが、より好ましくはバインダーとして用いられる重合体(A)や重合体(B)との屈折率差が少なく無色であり、且つコーティング用組成物を構成する溶剤に対し溶解や膨潤等の変化が無い架橋性のビーズが好ましい。架橋性ビーズを用いない場合には、ビーズが膨潤して風合いや触感が損なわれる等、所望の外観を得ることが出来なくなることや、残留溶剤による溶剤臭気の問題が発生する可能性があり好ましくない。
【0047】
本発明で用いる着色剤(D)は着色顔料もしくは染料と溶媒、分散樹脂からなり、コーテイング組成物(2)への悪影響、特にピグメントショックによる褪色や粗大粒子が発生しないものが使用できる。耐薬品性や耐光性の面から染料よりも着色顔料を使用した着色剤が良く、色味を調整するために、黄色、紅色、藍色、墨色の4色を各々適当比率にて配合し、目標とするステンレスの色味に合わせるようにすればよい。
【0048】
本発明においては、必要に応じ本発明による効果を妨げない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、硬化剤等の各種の添加剤を添加してもよい。老化防止剤は太陽光や屋内蛍光灯等の光に対して、着色剤の褪色を防ぐ為に使用する。
【0049】
本発明においては、シランカップリング剤を必要に応じて用いることができる。シランカップリング剤の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−モルホリノプロピルトリメトキシシランなどの3官能シラン、さらに上記3官能シランの一部がアルキル基、フェニル基、ビニル基などで置換された2官能シラン、例えば、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。また、これらの化合物の加水分解物、部分縮合物などを用いることができる。シランカップリング剤は、重合体(A)と重合体(B)の合計に対して1〜40重量%、好ましくは、3〜20重量%の量で使用する。
【0050】
本発明に用いるコーティング用樹脂組成物は、重合体(A)や重合体(B)、フィラー(C)、着色剤(D)、架橋剤、架橋触媒、及び添加剤を用い、これらを必要に応じて溶剤に混合溶解して得られる。溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの内から樹脂の組成に応じ適当なものを使用する。溶剤は2種以上用いてもよい。混合方法に特に限定はないが、通常は、重合時に使用した重合体溶液をそのまま混合し、攪拌羽根、振とう攪拌機、回転攪拌機などで攪拌すればよい。塗工性などの向上のために、さらに溶媒を追加したり、濃縮してもよい。
【0051】
こうして得られたコーティング用樹脂組成物はグラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ディップコート、シルクスクリーンコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、スプレーコート等によりプラスチックフィルムに直接コーティングする方法にて2層以上積層させるが、より好ましくはグラビアコートを用いる。その後、風乾または30〜300℃で数秒〜数週間加熱することにより、強靱な塗膜を得ることができる。
【0052】
本発明のフイルムについてその積層構成の例を示すと、
フイルム1:最外層/中間層/基材1/接着剤層/金属蒸着層/基材2
フイルム2:最外層/中間層/基材1/印刷インキ層/接着剤層/金属蒸着層/基材2
フイルム3:最外層/中間層1/中間層2/基材1/接着剤層/金属蒸着層/基材2
※基材1および基材2とも、プラスチックフイルム
【0053】
本発明のフイルムは、金属表面に貼り合わせラミネート鋼板として使用できる。その構成は、例えば
ラミネート鋼板1:フイルム/接着剤層/鋼鈑
※接着剤を介して鋼板を貼り合わせる方法
ラミネート鋼板2:フイルム/鋼鈑
※加熱した鋼板にフィルムを貼り合わせ溶融接着させる方法
等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、部および%は、重量部および重量%をそれぞれ表す。
【0055】
(重合体 A1)
片末端メタクリロキ基含有ポリシロキサン化合物(チッソ(株)社製「サイラプレーンFM−0721」45g、4−ヒドロキシブチルアクリレート30g、アクリル酸3g、ノルマルブチルメタクリレート22g、メチルエチルケトン(MEK)200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル2.0gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.5gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量35,000の重合体(A1)溶液を得た。
【0056】
(重合体 A2)
片末端メタクリロキ基含有ポリシロキサン化合物(チッソ(株)社製「サイラプレーンFM−0721」5g、4−ヒドロキシブチルアクリレート30g、アクリル酸3g、ノルマルブチルメタクリレート62g、メチルエチルケトン(MEK)200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル2.0gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.5gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量36,000の重合体(A2)溶液を得た。
【0057】
(重合体 A3)
片末端メタクリロキ基含有ポリシロキサン化合物(チッソ(株)社製「サイラプレーンFM−0721」60g、4−ヒドロキシブチルアクリレート25g、アクリル酸1g、ノルマルブチルメタクリレート14g、メチルエチルケトン(MEK)200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル2.0gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.5gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量31,000の重合体(A3)溶液を得た。
【0058】
(重合体 A4)
片末端メタクリロキ基含有ポリシロキサン化合物(チッソ(株)社製「サイラプレーンFM−0721」45g、アクリル酸12g、ノルマルブチルメタクリレート43g、メチルエチルケトン(MEK)200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル2.0gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.5gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量30,000の重合体(A4)溶液を得た
【0059】
(重合体 B1)
4−ヒドロキシブチルアクリレート10g、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート16g、メチル(メタ)アクリレート36g、ノルマルブチルメタアクリレート36g、アクリル酸2g、メチルエチルケトン(MEK)100gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.1gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量80,000の重合体(B1)溶液を得た。
【0060】
(重合体 B2)
メチル(メタ)アクリレート44g、ノルマルブチルメタアクリレート44g、アクリル酸12g、メチルエチルケトン(MEK)100gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.1gを加えて2時間重合を行い重量平均分子量72,000の重合体(B2)溶液を得た。
【0061】
(フィラー C)
無機組成物フィラーとして酸化ケイ素「サイロホービック200(富士シリシア社製、粒径4μmシリカビーズ)」(C1)と、炭酸マグネシウム「タンマグTT(トクヤマ社製、粒径7μm炭酸マグネシウム)」(C2)を、有機組成物フィラーとして「ガンツパールGM−0630H(ガンツ化成社製、粒径6μmアクリル架橋ビーズ)」(C3)を使用した。
【0062】
(着色剤 D)
分散剤「ソスルパーズ32000SC(ゼネカ(株)製)」5部をメチルエチルケトン(MEK)75部に完全に溶解させ、これにカーボン「リーガル99R(キャボット(株)社製)」20部を入れ攪拌混合後、直径1mmφのガラズビーズを体積で80%充填したアイガーモーターミル分散装置で循環分散を行い着色剤(D)を得た。
【0063】
(架橋剤)
架橋剤E1:HDI系硬化剤「スミジュールN3300N」(NCO%=21.8%)を使用した。
架橋剤E2:カルボジライトV5(日清紡績社製カルボジイミド)
【0064】
(実施例1〜8、比較例1〜3)
重合体(A)と重合体(B)、フィラー(C)、着色剤(D)および架橋剤それぞれの溶液を表1に示す重量となるよう混合し、更にメチルエチルケトン(MEK)を加えて固形分濃度20重量%とし、最外層用と中間層用のコーティング用樹脂組成物を得た。
上記の方法で作成された中間層用のコーティング用樹脂組成物(2)を金属調フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルムに、金属蒸着したポリプロピレンフィルムを接着剤を介してラミネートしたフィルム)のコロナ処理済みポリエチレンテレフタレート側にアプリケーターを用いて塗布し、80℃の電気オーブン中で30秒間加熱乾燥させ、中間層部を設けたフィルムを得た。
続けて、同様の方法で作成した最外層用のコーティング用組成物(1)を上記の中間層を設けたフィルム上に積層させ80℃の電気オーブン中で30秒間加熱乾燥させた。その後、40℃1週間エージングさせることで実施例のフィルムを得た。
乾燥後の塗工膜厚は最外層と中間層が共に約3μmづつ、合わせて約6μmの厚みであった。
【0065】
【表1】

【0066】
以上のように作成されたフィルムに対し、防汚性、風合い、密着性、耐アルカリ性の各種試験を行った。試験方法は以下の通りである。調査結果を表2に示す。
【0067】
(防汚性)
塗膜上に油性マジックインキ(No.500)で線引きし、乾いたウエスにて拭き取る。これを10回繰り返した後の汚れ残りの度合いを目視にて評価した。
(風合い・触感)
外観および触った感じがステンレスに近いかどうかを評価した。
(密着性)
スチールウール(#0000)にて塗工面表面を20往復擦り、ニチバン社製セロハンテープが貼れるようにした後、塗工面に刃物でポリエチレンテレフタレートフィルムに達するまでの深さまで傷を付け、その上にセロハンテープを貼り合わせ、勢いよく剥がした。塗工面の剥がれ具合を評価した。
(耐アルカリ性)
10%水酸化ナトリウム溶液を滴下し、その上に時計皿を乗せて24時間被覆後に水拭きを行い、滴下した部分の外観変化を評価した。
(評価点)
5:極めて良好(変化無し)、4:良好(ほとんど変化無し)、3:若干劣る(若干変化有り)、
2:劣る(変化有り)、1:極めて劣る(顕著な変化有り)

【0068】
【表2】

【0069】
評価結果から明らかなように、本発明のコーティング用樹脂組成物を用いたフィルムは、優れた防汚性と風合いを併せ持つ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムもしくはプラスチックシート上の片面に積層構成を有するフィルムもしくはシートであって、
1)その最外層が、一分子中に炭素炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン鎖を有する単量体(a)を0.5〜84.9重量%、および一分子中に炭素炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)15〜50重量%、および一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有する(a)と(b)以外の単量体(c)を0.1〜84.5重量%からなる重合体(A)(全重量%の総計は100重量%とする)と、
単量体(b)15〜50重量%、および単量体(c)50〜85重量%との重合体(B)(全重量%の総計は100重量%とする)、および重合体(A)および重合体(B)の架橋性官能基と反応可能な反応性官能基を有する架橋剤からなるコーティング樹脂組成物(I)から形成され、
2)プラスチックフィルムもしくはプラスチックシートと最外層との中間に存在する中間層が、重合体(B)と重合体(B)の架橋性官能基と反応可能な反応性官能基を有する架橋剤およびフィラー(C)からなるコーティング用樹脂組成物(II)にて形成されることを特徴とするフィルムもしくはシート。
【請求項2】
コーティング用樹脂組成物(II)に着色剤(D)が含まれることを特徴とする請求項1記載のフィルムもしくはシート。
【請求項3】
プラスチックフィルムもしくはプラスチックシート上の積層構成とは反対側の面に、一層以上の金属箔層または蒸着金属層を有することを特徴とする請求項1記載または2記載のフィルムもしくはシート。
【請求項4】
フィラー(C)が体質顔料もしくは架橋性ビーズであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のフィルムもしくはシート。


【公開番号】特開2011−132398(P2011−132398A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294274(P2009−294274)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】