説明

フィルムインサート成形法による装飾プラスチックグレージングアセンブリ

本発明は、フィルムインサート成形(FIM)法によって製造される自動車用グレージングアセンブリを提供する。グレージングアセンブリは、インクが熱成形及び射出成形の全ての作業の間、均一な不透明度及び安定性を示し、また複雑な3−D形状に成形できるように、ポリエステル及びポリカーボネート樹脂のブレンドを含むインク組成物を有する透明プラスチック基材を備える。インク組成物を含むグレージングアセンブリは、さらに、ピンホール及びマイクロクラックのような表面欠陥を免れている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プラスチック材料は、乗り物のスタイリングを向上させるために、多くの自動車エンジニアリング用途に使用されている。例えば、プラスチック材料は、B−ピラー、ヘッドランプ、及びサンルーフのようなパーツ及びコンポーネントの製造に現在使用されている。透明プラスチック材料の新たな用途は、自動車の窓のシステムである。透明プラスチック材料が自動車の窓を製造するのに使用される場合、このような窓が識別印(identification mark)を有することが製造上必要とされる。窓の周囲にはまた、取り付けられた窓の外観をよくするために、しばしば、次第にぼやける不透明の縁が印されなければならない。さらに、窓は、それらをスクラッチに耐えるようにするために、コーティングされることが製造上必要とされる。
【0002】
そのような情報及び次第にぼやける縁をポリカーボネート表面に印すために使用されるインクは、プラスチック表面に付着しなければならないだけでなく、摩耗及びUVからの保護のためにプラスチック表面に付けられる、プライマー/コーティング系に適合していなければならない。プラスチックパネル又は窓の表面に印すために使用されるインクは、保護コーティング系を付ける間に、軟化、損傷、又は除去されてはならない。インクはまた、自動車産業によって製品を適格とするために要求される厳しい試験を乗りきることができなければならない。
【0003】
インクがそれらの平らな表面に印刷されたプラスチックフィルムが、金属及びガラスの3次元(3−D)物品の代替品として、3−D装飾プラスチック物品に転用されている。自動車用アセンブリのような、装飾された3−Dプラスチック物品を製造する最も効率的な方法の1つは、フィルムインサート成形(film insert molding、FIM)によるものである。FIMの使用は、他の装飾法を凌ぐ多くの利点をもたらす。プラスチック基材を装飾することに関して、FIMの使用は製造業者に多数の利点、例えば、デザインの柔軟性;1回の作業での、多種多様な色、効果、及び構造(textures)の使用;長持ちする図柄;製造生産性の向上;並びにシステム全体のコスト低減をもたらすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いくつかの利点を有する一方で、フィルムインサート成形の使用はまた、自動車産業が、このような作業から誘導されるプラスチックコンポーネントの実質的な使用を受け入れる前に克服されなければならないいくつかの不都合又は問題ももたらす。より詳細には、インクの流出及びピンホール生成によって引き起こされる光学的欠陥の生成を、減らすか、又は無くす必要がある。加えて、プラスチックフィルムの表面に付着し、印刷表面へのバック成形(back molding)で別のプラスチック樹脂と溶融結合できるインクの性能が、インクの形成を通じて検討される必要がある。
【0005】
上から、プラスチック基材表面に印刷したり、装飾するために使用でき、また優れた接着性、均一な不透明性、並びに、複雑な3−D物品又はアセンブリを成形するのに必要とされる熱成形及び射出成形作業の全ての作業の間の安定性を有するインクを形成することが業界において求められていることが分かる。本発明は、前記性質の全てを有し、実質的に表面欠陥のないインクを有するプラスチックアセンブリ(plastic glazing assembly)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フィルムインサート成形(FIM)法によるプラスチックグレージングアセンブリを提供する。一態様において、プラスチックグレージングアセンブリは、透明プラスチックパネル、当該プラスチックパネルに印刷された装飾インク、耐候層、及び当該耐候層に堆積された耐摩耗層を含む。この実施形態において、プラスチックパネルに印刷されたインク組成物は、パネル表面に接着するようになっており、耐候層(これは、プライマー/ハードコートの系であり得る)に適合している。インクの適合性は、耐候層を付けている間に染み出すか、又は擦り取られるインクの量を求めることによって試験された。
【0007】
別の態様において、インクは、ポリエステル及びポリカーボネート樹脂のブレンドを含む。インクは、さらに、ポリエステル及びポリカーボネート樹脂の架橋を助けるために、添加剤、例えば、イソシアネート及び溶媒混合物を含む。この実施形態において、プラスチックパネルに付けられ硬化され、次に耐摩耗層によりコーティングされるインクは、水に浸漬後の接着性試験及びカタプラズマ(cataplasma)試験の両方に合格することが見出された。
【0008】
さらに別の態様において、インクにより印刷された基材は、熱成形及び射出成形によって、3−Dグレージングパネルに転換される。フィルムに付けられるインク組成物は、ポリカーボネートフィルムの両面でのその印刷性、ドローダウン特性(draw−down ability)、接着性、不透明度、並びに、成形、トリミング、射出成形、及び成形後/コーティングプロセスの間のインクの流出特性(ink washout characteristics)について試験した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】トリミング後のミラーハウジングアップリケ(applique)を示す典型的な図である。
【図2A】耐候層及び耐摩耗層が付けられたトリミング後のミラーハウジングの図である。
【図2B】耐候層及び耐摩耗層が付けられたトリミング後のミラーハウジングの図である。
【図2C】耐候層及び耐摩耗層が付けられたトリミング後のミラーハウジングの図である。
【図2D】耐候層及び耐摩耗層が付けられたトリミング後のミラーハウジングの図である。
【図3】良好な形状適応性を示す、成形されたトップ層のマルチ形状表面(a multi−featured surface)を示す典型的な図である。
【図4】表面でのインクの摩耗を示す、トリミング後のミラーハウジングを示す典型的な図である。
【図5】80PE:20PCの重量比でPE及びPCを含んでいたインク配合物の、ドローダウン試験(draw down test)の間に成形されたパーツを示す図であり、優れた不透明性を示す。
【図6】図5のパーツに類似の試験パーツの一部を示す図であり、パーツのトップ層を通して光で照らすと認められるようなインクのピンホールを示す。
【図7】バック成形された後、トップ層からのインクの流出を示す、形作られ成形されたアセンブリを示す典型的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましい実施形態の以下の説明は、本来的に、単なる例示であり、本発明又はその応用若しくは使用を限定しようとするものでは決してない。
【0011】
一態様において、本発明は、第1及び第2表面を有する透明プラスチックベース層又は基材;第1及び第2表面を有する透明プラスチックトップ層;トップ層の第1表面に印刷され硬化されたインクを含み;ベース層の第1表面とトップ層の第1表面とが、一体化するように互いに溶融接合されてプラスチックパネルを形成し;プラスチックパネルは、耐候層及び耐摩耗層をさらに含む、自動車用装飾グレージングアセンブリを提供する。
【0012】
本発明の透明プラスチックベース層及びトップ層は、これらに限定されないが、ポリカーボネート、アクリル、ポリアリレート、ポリエステル及びポリスルホン樹脂、並びに、これらのコポリマー及び混合物を含み得る。好ましくは、透明プラスチックベース層は、ビスフェノール−Aポリカーボネート及び全ての他の樹脂グレード(例えば、分枝した、又は置換された、並びにPBT、ABS、又はポリエチレンのような他のポリマーと共重合或いはブレンドされたグレード)を含む。透明プラスチックベース層及びトップ層は、様々な添加剤、中でも特に、例えば、着色剤、離型剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤(UVA)をさらに含み得る。
【0013】
プラスチックトップ層(これは、定義によって、プラスチックフィルムであると見なされる)の厚さは、約0.05から2mmであり、約0.5mmが好ましい。射出成形されるベース層の厚さは、約2mmから約5mmであり、約3mmから約4mmが好ましい。グレージングアセンブリの全体の厚さは、互いに溶融接合したトップ層及びベース層の両方を含めて、約3mmから6mmであり、約4mmと5mmの間が好ましい。
【0014】
透明プラスチックトップ層の第1表面に印刷されるインクは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又はこれらの混合物を含む。インクは、スクリーン印刷によりトップ層の表面に付けられ得るが、当業者に知られている他の印刷方法(例えば、これらに限らないが、マスク/スプレーインクジェット、及びパッド又はタンポン印刷)も許容される。
【0015】
トップ層及びベース層の両方の第1表面が互いに溶融接合された後、得られるプラスチックパネルは、通常、耐候層及び耐摩耗層を形成するために、コーティング系によりコーティングされる。耐候層は、トップ層の第2表面に付けられる。別の実施形態において、耐候層は、ベース層の第2表面にもまた付けられ得る。
【0016】
耐候層は、好ましくは、ポリウレタンコーティング、又はアクリルプライマー及びシリコーンハードコートの組合せのいずれかを含む。代わりに、他のコーティング系が用いられてもよい。このようなアクリルプライマーの例には、Exatec(登録商標)SHP 9X(これは、Exatec、LLC(Wixom、ミシガン州)から市販されており、General Electric Silicones(Waterford、ニューヨーク州)によって流通されている)が含まれる。好ましい一実施形態において、プライマーは、透明プラスチックパネルにコーティングされ、空気乾燥され、次いで、約20から80分間、約80℃と130℃の間で、より好ましくは、約60分間、約120℃で熱硬化される。次に、シリコーンハードコートが、プライマー層の上に付けられ、空気乾燥され、その後、好ましくは、約20から80分間、約80℃と130℃の間で、より好ましくは、約30分間、約100℃で硬化される。本発明において使用される好ましいシリコーンハードコートは、Exatec、LLCから入手でき、General Electric SiliconesによってExatec(登録商標)SHXとして流通されている。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、耐候層におけるプライマーは、第1共溶媒としての水、及び第2共溶媒としての有機液体を含む水性アクリルプライマーである。プライマー/ハードコート系に存在する第2共溶媒に関係する一般的化学類には、グリコールエーテル、ケトン、アルコール及びアセテートが含まれる。アクリル樹脂は、水溶性、分散性、又は還元できる樹脂として存在し得る。プライマーは、他の添加剤、例えば、これらに限らないが、中でも特に、界面活性剤、酸化防止剤、殺生物剤、紫外線吸収剤(UVA)、及び乾燥剤を含み得る。
【0018】
シリコーンハードコートの樹脂は、好ましくは、アルコール溶媒の混合物に分散されたメチルシルセキオキサン樹脂である。シリコーンハードコートはまた、他の添加剤、例えば、これらに限らないが、中でも特に、界面活性剤、酸化防止剤、殺生物剤、紫外線吸収剤、及び乾燥剤も含み得る。
【0019】
耐候層は、当業者にディップコーティングとして知られる方法により、室温、大気圧で、パネルをコーティング液に浸漬することによって、透明プラスチックパネルに付けられ得る。代わりに、耐候層は、フローコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、又は当業者に知られている他の方法によって、付けられてもよい。
【0020】
付加的な、又は向上した機能(例えば、耐摩耗性の向上)を自動車用装飾グレージングアセンブリに付け加える実質的に無機のコーティングが、一体化するように接合されたプラスチックパネルのベース層及びトップ層の両方の第2表面で、耐候層の上に付けられる。耐候層がベース層の第2表面に無い場合の本発明の実施形態において、耐摩耗コーティングは、ベース層の第2表面に直接堆積され得る。耐摩耗層を含む可能な無機コーティングの具体例には、これらに限らないが、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、炭化ケイ素、水素化酸炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、又はガラス、及びこれらの混合物又はブレンドが含まれる。
【0021】
耐摩耗層は、当業者に知られているどのような技法によって付けられてもよい。これらの技法には、反応性化学種による堆積(例えば、真空支援堆積法において用いられるもの)、及び大気中のコーティング法(例えば、基材にゾル−ゲルコーティングを付けるのに用いられるもの)が含まれる。真空支援堆積法の例には、これらに限らないが、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)、アーク−PECVD、イオン支援プラズマ堆積、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、及びイオンビームスパッタリングが含まれる。大気中でのコーティング法の例には、これらに限らないが、カーテンコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、及びフローコーティングが含まれる。
【0022】
透明プラスチックパネルは、当業者に知られている任意の技法、例えば、成形(これには、射出成形、ブロー成形、及び圧縮成形が含まれる)及び/又は熱成形(thermoforming)(これには、熱成形(thermal forming)、真空成形、及び冷間成形が含まれる)の使用により、グレージングアセンブリに成形され得る。必ずしも必要ではないが、前述の技法は互いに組み合わせて用いられてもよい(例えば、透明プラスチックトップ層を成形型の1つの内側表面の形状に熱成形し、その後、ベース層をトップ層上に射出成形し、ベース層をトップ層と一体化するように接合させることによって、所望の形状を有する透明プラスチックグレージングアセンブリを成形すること)。
【0023】
本発明において、グレージングアセンブリは、フィルムインサート成形(FIM、インモールド装飾(IMD)としても知られている)によって調製される。その最も柔軟な形態において、FIMは、フィルムの上側、すなわち第1表面に印刷された装飾を有する平坦なプラスチックフィルムを用いる。別の実施形態において、装飾は、フィルムの下側、すなわち第2表面に印刷され得る。次いで、装飾されたフィルムは、必要とされる形状に成形されるか、又は、望まれる場合、平坦なままとされ、最後に、所望の寸法にトリミングされる。次に、装飾されトリミングされたフィルムは、フィルムの第2表面が成形型の表面に面するように、射出成形型キャビティに入れられ、成形型の表面に置かれる。フィルムは、真空、又はフィルムインサート成形の技術者に知られている任意の他の手段によって、成形型の表面に保持され得る。次いで、ベース層を形作る溶融樹脂が、成形型に、そしてフィルム(トップ層)の第1表面上に射出される。高温の樹脂と低温のフィルムとの間の接触で、トップ層とベース層との間の溶融接合が起こる。その結果として、装飾されたフィルムは、完成したプラスチックパネルの構成部分となる。この様に設計され製造されるプラスチックパネルは、印刷がトップ層の第1表面にある場合には、印刷がプラスチックのベース及びトップ層によって包まれているので、インクに関して、耐スクラッチ性、耐溶剤性、耐摩耗性、及び耐薬品性の向上を示す。
【0024】
フィルムに図柄を生成することに含まれる技法には、スクリーン印刷、パッド又はタンポン印刷、膜画像転写印刷(membrane image transfer printing)などが含まれる。スクリーン印刷は、印刷画像がスクリーン印刷により「平坦な」フィルムに付けられる、知られている工業的プロセスである。スクリーン印刷により、十分なインクが堆積されて、インクの不透明度が最大化され、選択的に光が遮断されて、ほとんどの自動車の窓の周囲の縁で認められる、必要とされるブラックアウト(black−out)効果がもたらされる。次いで、このフィルムは、通常、成形型の表面に、真空により保持される。フィルムは、成形型へのプラスチック樹脂の射出で、パネルの表面部分となる。インクは、後の段階において成形され得るように十分に柔軟でなければならない。これらのインクはまた、工程の射出成形又は熱成形段階の間のインクの流動を防ぐために、熱及び剪断力に対するある程度の耐性も必要とする。熱成形作業の間に引き延ばされ薄くなる場合には、良好な不透明性を付与するために、インクの十分な堆積が必要とされる。しかし、余りに厚く堆積すると、熱成形作業を受けるインクに望まれる柔軟性が低下し得る。本発明者等は、インクの堆積量は、完成したグレージングアセンブリによって要求される、形状の深さの大きさ(the amout of form depth)に依存する傾向があることを見出した。多量に顔料を含むか、又は充填されたインクは、それらの凝集力が弱いため、うまく成形されない。特定のインク系、例えば、反応性インク(例えば、ポリエステル/イソシアネートの2成分インク)又は、特別に配合された耐熱性インクは、何ら付加的な接着促進を用いることなく、使用され得る。他のインクは、インク層とプラスチックトップ層との間の接着性を向上させるために、接着促進層を必要とし得る。
【0025】
一旦インクが印刷されると、どのインク系が選択されても、保持されている溶媒が印刷物から除去されることを保証するために、乾燥が十分に行われなければならない。残留する、又は保持された溶媒は、溶媒による損傷のせいで、ポリカーボネート自体のクラッキング/クレージング(crazing)により、後の段階で問題を引き起こし得る。インクは、ある時間、高温に曝されることによって熱的に硬化され得る。例えば、印刷されたインクは、約20〜60分間、約90〜125℃に曝露すると、十分に硬化され得る。硬化したインク印刷物の厚さは、通常、約4μmから20μmであり、約8μmから18μmが好ましい。
【0026】
すでに注意したように、印刷されたフィルム(トップ層)の成形は、真空成形(熱成形)、加圧成形、又はハイドロフォーミングのような様々な技法により実施できる。通常、熱成形の場合のように、加熱は、フィルムを覆って位置するセラミック加熱要素の列を用いて実施される。フィルムは、所望の完成パネル又は窓の形状に似る金型(tool)の上にクランプで固定される。金型は、下から上昇し、気密シールが達成されたとき、適用された真空が、金型を覆うように軟化したフィルムを引きつける。成形が、印刷されたインクを硬化させた後、すぐに実施されるとするならば、フィルムを予備乾燥する必要はないかもしれない。しかし、トップ層を予備乾燥することは、インクを硬化させた直後でさえ、厚い(約375μm又は0.015インチを超える)フィルムでは必要であり得る。トップ層を形作るのに使用されるフィルムの厚さは、通常、約0.05から約2.0mm程度であり、約0.5が好ましい。
【0027】
完成したプラスチックグレージングアセンブリを成形するために、トップ層とベース層とを一体化するように接合することは、射出成形を用いて行われ、この際、ベース層を形作るための打ってつけのプラスチック樹脂はポリカーボネートである。この場合、(インクがトップ層の第1表面に印刷されるとき)フィルム及びインク表面への樹脂の良好な接着性が保たれることを保証することが重要である。射出ゲートの設計は、印刷され硬化されたインクを軟化させ流れ始めさせ得る(例えば、射出された樹脂による流出)、高温の流動する樹脂内に生成する応力を最低限にするために、大いに重要である。インクの流出は、最終結果が、完成したプラスチックパネルの装飾印刷において、インクのない空隙又は空所として、目で見て確認できる光学的欠陥として特徴付けられる(図7参照)。
【0028】
ダイレクトスプルーゲートは通常、このゲート設計から生じる大きな剪断応力のせいで、劣った結果(大きな度合いのインク流出)を生じる。ファンゲート及びリブゲートは、印刷された装飾に有害であり得る応力の発生を最低限にするのに、最も有効である。タブゲートは、成形型に充填するのに大きな容積の樹脂が必要である場合に、溶融配向のために使用される。タブのデザインは、高剪断、ダイレクトゲート、又はジェッティングに帰因する表面の斑点(splotch)を避ける助けとなる。遅い射出速度もまた、この点で助けとなる。
【0029】
インクがトップ層の第2表面に印刷される場合、インクはまた、自動車の相手先商標製品製造業者(OEM)によって指定されている、さらなる試験にも合格することが必要である。このような試験には、高温で水に浸漬後の接着性試験及びカタプラズマ様又は完全なカタプラズマ試験(cataplasma−like or a full cataplama test)が含まれる。指定された全ての試験にインクが合格しなければ、透明プラスチックパネルは、組み立てられる動力車にグレージングアセンブリとして使用できない。
【0030】
水への浸漬試験は、ASTM D3359−95による初期クロス−ハッチ接着性試験(テープ引張り)、その後の、印刷されコーティングされたプラスチック基材を、約10日間、高温(例えば、65℃)で脱イオン水に浸すことを含む。インクは、試験プロトコルの完了に際して、最終のクロスハッチ接着性試験において、インク及びコーティング系の95%超が保持される場合にのみ、試験に合格する。
【0031】
接着性試験の別の方式は、カタプラズマ様及び完全なカタプラズマ試験によって代表される。これらの2つの試験は、1つの重要でない例外を除いて、試料調製及び曝露条件において同じである。カタプラズマ様試験は、印刷されたインク及び付けられたコーティングの外観及び接着性を評価する。完全なカタプラズマ試験は、装飾されコーティングされたグレージングパネルに付けられた場合の、グレージング業界によって使用される標準接着剤系の性能を評価する。別の言い方をすれば、完全なカタプラズマ試験は、窓の接合系に対するはく離試験(adhesive peel test)、及びクロスハッチ接着性試験を実施する方法を提供し、他方、カタプラズマ様試験は、クロスハッチ接着性の結果だけを提供する。カタプラズマ試験において用いられる環境条件は、コーティング系にとって極端に厳しいと、当業者によって見なされている。このため、非常に少数のインク及びコーティンング剤がこの試験に耐え、合格できることが知られている。カタプラズマ試験に関連する一般的プロトコルは、当業者によく知られており、米国特許第6958189号、米国特許出願公開第2006−0025496A1号に適切に記載されており、これらの特許の両方が、全体として、参照を通じて本明細に組み込まれる。
【0032】
本発明者等は、特定のポリエステル及びポリカーボネート樹脂のある範囲内のブレンドを含むインクが、トップ層の第2面に印刷された場合、水への浸漬、カタプラズマ様、及び完全なカタプラズマを含めて、全てのOEM試験に耐えられること、さらには、トップ層の第1面に印刷され、ベース層に溶融接合されるに際して溶融樹脂に曝される場合、流出及びクラッキングに対して耐えられることを、予想外に見出した。
【0033】
OEM試験に合格したインク中のポリエステル樹脂は、飽和ポリエステル(これらは、直鎖若しくは分岐鎖脂肪族又は芳香族のポリマーである)の混合物である。これらのポリマーは、補足的な反応性基を含む他の樹脂(例えば、アミノホルムアルデヒド、メラミン、ポリイソシアネートなど)と縮合重合を通じてフィルムを形成するヒドロキシル又はカルボキシル基のいずれかを含み得る。飽和ポリエステルは、様々なアルコール(2価−、3価−、及び4価−アルコール)と酸(又は酸無水物)、例えば、オルトフタル酸無水物、テレフタル酸、及びトリメリット酸無水物との重合により製造される。一般的に、過剰のポリオールが使用され、そのために、最終の樹脂は過剰のヒドロキシル官能基を有する。いくつかのポリオール、例えば、2,2,4−トリメチル、1,3−ペンタンジオール(TMPD)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、ネオペンチルグリコール(NPF)、及びトリメチロールプロパン(TMP)は、エチレングリコール又はグリセロールより加水分解に対して安定な系を生じることが知られている。過剰の酸が原材料として用いられる場合、得られる樹脂は、カルボキシル化官能基を含むであろう。
【0034】
OEM試験に合格したポリカーボネートインクは、耐熱性ポリカーボネート樹脂を含む。インクに使用されるこのポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートで基材が成形される、フィルムインサート成形(FIM)に適している。このポリカーボネート樹脂は、ジェミナル2置換(geminaly disubstituted)ジヒドロキシジフェニルシクロアルカンに基づいている。この樹脂は、2官能性カーボネート構造単位又はヒドロキシル基を含み得る。ポリカーボネート骨格は、脂肪族又は芳香族、並びに線状又は分岐状であり得る。バインダー中に存在するヒドロキシル基は、ポリオール(例えば、アルキレンジオール又はアルキレンエーテルジオール)によるジフェニルカーボネートのアルコール分解から得ることができる。他の適切なジオール又はジフェノールには、ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、例えば、2,2−ビス−(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)−プロパン及び1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが含まれる。3つ以上のヒドロキシル基を含む様々な他のポリオール、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、又はペンタエリトリトールが組み込まれ得る。
【0035】
ポリカーボネートとポリエステル樹脂との間の付加的な架橋を促進するために、配合されるインクは、好ましくは、少量のイソシアネート添加剤を含む。インクに好ましく用いられる溶媒は、芳香族炭化水素と二塩基酸のエステルとの混合物である。この実施形態では、インクは、約1.9%から13.2%のポリカーボネート樹脂、約5.4%から34.2%のポリエステル樹脂及び約0.1%から5.0%のイソシアネート添加剤並びに約20.7%から84.3%の溶媒によって特徴付けられる。インクは、貯蔵安定性及び貯蔵寿命のために、上記より大きな固体パーセンテージで配合し、次いで、使用直前に溶媒を加えることによって、固体含量を上記のパラメータに「薄める」又は低下させてもよい。さらに、配合されたインクは、約3.6%から38.2%の着色顔料、約0.0%から45.2%の不透明度向上フィラー、及び0.0%から1.5%の分散剤を含み得る。
【0036】
インクは、当業者に知られている分散技法(例えば、これらに限らないが、ボールミル、ロールミル、アトライタミル、プラネタリミキサー、及び高速ブレードミキサー)を用いて原材料から調製され得る。インクは、2つのインク配合物を特定の比率で一緒にブレンドすることによって調製されてもよい。2つのインク配合物のいずれにも存在しないさらなる成分、例えば、イソシアネート添加剤、分散剤、フィラー、及び顔料は、上記の分散技法によって配合物に添加され得る。本発明者等は、ポリエステルインクとポリカーボネートインクの比は、好ましくは、約100:0未満で、約50:50を超える重量比を有することを見出した。
【0037】
付けられ、そして乾燥/硬化された印刷物に残される固体に関する組成は、約49%から72%のポリエステル樹脂及び約12%から18%のポリカーボネート樹脂である。このブレンドに組み入れられるイソシアネート添加剤の固体重量パーセントは、約6%から10%である。このインク組成物はまた、約1.5%までの追加の界面活性剤、及び約30%までの追加のフィラー又は顔料を任意選択で含んでいてもよい。
【0038】
前記ブレンドに用いられるポリカーボネートインク(Noriphan HTR、Proell KG、ドイツ)は、エチルベンゼン、ナフサ溶媒(軽質芳香族)、1,2,4−トリメチルベンゼン、キシレン異性体、ジアセトンアルコール、メシチレン、n−ブチルアルコール、及び様々なエステルに分散された、ポリカーボネート樹脂及び高温安定性顔料を含む。
【0039】
ポリエステルインク(8400シリーズCVIM、Nazdar Inc.、カンザス州)は、石油留出物(14〜28%)、シクロヘキサノン混合物(4〜8%)、及びナフタレン(<4%)に分散された、ポリエステル樹脂混合物(19〜33%)、TiO(0〜38%)、カーボンブラック(0〜11%)、(11〜21%)、ガンマ−ブチロラクトン(4〜10%)、脂肪族二塩基酸エステル及び着色顔料(0〜11%)を含む。
【0040】
インクの着色顔料は、好ましくは、カーボンブラックであるが、他の無機及び有機着色顔料が用いられてもよい。このような着色顔料には、これらに限らないが、カーボンブラック、銅フタロシアニンブルー、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、アゾジアリリド(diarylide)イエロー、ルチル二酸化チタン(白色)、ペリレンレッド、オレンジモリブデート、イエロー酸化鉄、クロムグリーンオキシド、及びカドミウムオレンジが含まれる。特殊効果顔料、例えば、真珠光沢顔料及び金属フレークがインク配合に組み入れられてもよい。
【0041】
使用されるイソシアネート添加剤は、好ましくは、芳香族ポリイソシアネート、例えば、NB−70 catalyst(Nazdar Inc.、カンザス州)である。この特定のイソシアネートは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(40%、PMアセテートとも呼ばれる)に分散されているが、別の溶媒も使用され得ると思われる。イソシアネートはまた、他の芳香族又は脂肪族ジイソシアネート(例えば、中でも特に、重合性ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、又はキシレンジイソシアネート(XDI))でもあり得る。
【0042】
任意選択の不透明度を向上するフィラーは、中でも特に、本質的に無機質のもの(例えば、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、ケイ酸マグネシウム(タルク)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム(クレー)、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト)、ケイ酸アルミニウムカリウム(マイカ)、金属フレークなど)、又は、本質的に有機質のもの(例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、及びランプブラック)であり得る。高屈折性フィラー、例えば二酸化チタンは、その1.0マイクロメートル未満の小さい平均粒径のため、不透明度を増すために好ましい。例えば、0.36マイクロメートルの平均粒径を有する二酸化チタンは、Ti−Pure R−706(Dupont Titanium Technologies、デラウェア州)として入手可能である。
【実施例】
【0043】
以下の具体的実施例は、本発明を例示するために記載され、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0044】
試験基材の調製
表Iは、様々な比率のポリエステルインク(8452、Nazdar Inc.、カンザス州)とポリカーボネートインク(Noriphan(登録商標)HTR−952、Proll KG、ドイツ)とを一緒に、中速度ブレードミキサーを用いてブレンドすることによって製造したインク組成物を表す。2つのインクをブレンドした後、さらなる溶媒(097/003遅延剤、Proll KG & RE196遅延剤、Nazdar Inc.)をインクと混合し、その後、イソシアネート添加剤を加えた。芳香族イソシアネート添加剤(NB−70、Nazdar Inc.、カンザス州)が、ブレンドしたインクに加えた最後の成分であった。混合プロセスの間にインクに取り込まれた空気を減らし、除去するために、ブレンドしたインクは、プラスチックパネル上への装飾の印刷を開始する前に、約15〜20分間、静置した。
【表1】

【0045】
上の表Iに記載のインクを、スクリーン印刷により、730mmのLEXAN T2FOQポリカーボネートフィルム(General Electric)に装飾として付けた。次いで、印刷したインクは、100℃の温度で2時間硬化させ、乾燥し、15μmの最終フィルム厚さとした。この実施例は、以下のさらなる実施例において記載する特性評価試験に用いようとする、インク配合及び装飾プラスチックフィルムの両方の調製を記載する。
【0046】
次いで、印刷した全てのフィルムを、耐候層及び耐摩耗層の両方でコーティングした。耐候層はアクリルプライマー(SHP 9X、Exatec LLC)及びシリコーンハードコート(SHX、Exatec LLC)の両方を含んでいた。両方のコーティングを、プラスチックコンポーネントのコーティング業者に知られているフローコーティング技法により塗布した。次いで、各コーティングは、製造業者の推奨に従って硬化させた。
【0047】
耐摩耗層は、アーク−PECVD法を用いて堆積させた水素化酸炭化ケイ素フィルムを含んでいた。このようなプロセスは、J.Vac.Sci.Technol.A,21(4),Jul/Aug,1266−1271(2003)(この全体は参照を通じて本明細書に組み込まれる)として刊行された論文に詳細に、適切に記載されている。アーク−PECVD法では、プラズマは、150Torrより高い圧力(例えば、大気圧に近い圧力)で不活性ガス雰囲気において対応するアノードプレートにアークを発するカソードに、直流(DC)電圧を加えることにより発生する。次いで、大気圧に近い熱プラズマは超音速でプラズマ処理チャンバの中へと拡張し、チャンバ内のプロセス圧力は、プラズマ発生装置内より低く、例えば、約20から約100mTorrである。
【0048】
水への浸漬及びカタプラズマ試験
次に、印刷されコーティングされた上記フィルムに、水への浸漬及びカタプラズマ様試験を行った。上記フィルムについてのこれらの試験に関する結果は、表2に記載する。
【表2】

【0049】
表2に見られるように、ポリエステル(PE)インクとポリカーボネート(PC)インクとの、80:20の比のブレンドは、予想外に、水への浸漬及びカタプラズマ試験の両方の全ての試験要求項目に合格した。上の表に見られるように、20PE:80PCの比を有する印刷インクを含むフィルムは、ほとんどの試験に不合格であった。異なるPE:PCを有する複数のブレンドインク試料は、全ての試験要件に合格するか不合格であるかの間の境目にあることが認められた。上記のもの以外の全てのインクブレンドは、水浸漬又はカタプラズマ様試験のいずれかに不合格であることが見出された。
【0050】
3−D装飾グレージングアセンブリの成形
ブレンドインク#A又は#Cの装飾印刷を含むフィルムに、熱成形及び射出成形を行い、3−D自動車用グレージングアセンブリを成形した。熱成形は、表3に示す特定の実験条件で新しいミラーハウジングの金型を用いて、SEISS T8シャトル熱成形機で実施した。
【表3】

【0051】
熱成形作業の間、インクとプラスチックパネルとの間の熱拡散及び熱吸収における違いのために、加熱プロフィールに特別な注意を向けた。表3に挙げた条件下で、インクは安定であるように思われた。パーツ及び金型の目視検査により、インクが金型に印を残すことも、それが高い加工温度で焦げることもないことが明らかになった。
【0052】
熱成形の後、アップリケをレーザートリミングの固定具にはめ込み、トリミングを行い、図1に概略が見られるパーツ22を得た。トリミングの支持具は、第2表面が金型に接触しないように設計した。これにより、トリミング工程から生成する埃は、見せる表面でなく、パーツの内側に集まった。アップリケのバック成形を、3インチ×6インチマルチゲートIMDプラック金型を装備したTOYO TM200G射出成形機で実施した。フィルムを金型のB面に入れ、次に、射出成形した。同様に、成形されるミラーハウジングもまたバック成形した。しかし、この場合は、Britaxミラーハウジング金型に連結したKM550射出成形機を用いた。フィルムは、成形型のキャビティ側に正しく配置し、次いで、LS2−111ポリカーボネート樹脂(General Electric)を射出成形した。次に、図2A〜2Dに示すように、パーツを耐候層及び耐摩耗層でコーティングした。図2A〜2Dで数字で指摘した各コーティングの厚さを、表4に列挙する。
【表4】

【0053】
(実施例4)
熱成形性の試験
フィルムに印刷され硬化されたインクの熱成形性は、ドローダウン金型(draw down tool)を使用することによって試験した。ドローダウン金型は、200%の薄層化特性(thinning chracteristic)をもたらす(2.6:1の面積比(area ratio)とも言える)、4.5インチの最大高さで設定されている。この金型は、構造の一体性、材料の薄層化、及びインクの耐摩耗性の達成度を評価する。インク及びフィルムは、図3に示す広範な様々な形状の全てにわたって、申し分なく熱成形される。良好な明確性が認められ、インクは、成形した形状において、フィルムの裂け、クレージング、及びひどい変色を起こさなかった。
【0054】
表5に示すように、ポリエステル(PE)インクとポリカーボネート(PC)インクの80:20の比のブレンドは、インクの摩耗又はマイクロクラッキングの兆候を全く示さなかったが、20:80のPE:PCの比を有するインクの熱成形の間には、図4の成形後のフィルムに示すように、インクの摩耗/マイクロクラッキング20が実際に起こった。これは、90°の曲がりを含む部分、及び金型からの取出しの間にフィルムが金型の表面で過度に擦られる部分において特に認められた。
【表5】

【0055】
この実験は、インク配合#Aが、図5に見られるように、ドロー試験24を行ったフィルムの200%のフィルム厚さ勾配の全体を通して比較的均一な不透明度をもたらし、肯定的な結果を生じることを例示する。他方、配合#Cは、成形した形状の全ての底部で不透明度を保持しなかった。図5によるマルチ形状金型において示される外形によるパーツの典型的なドローは、50〜100%であった。パーツドローは、マルチ寸法窓に関する曲がり度合いを示す手段を表す。表5に列挙した結果はまた、ポリエステル含量の大きいインク配合#Aが、印刷され硬化されたフィルムに全くピンホール生成を示さないが、他方、インク配合#C(より多量のポリカーボネートインクを含む)が、図6に示すように、ドローを増すにつれて「ピンホール」26の濃度が増加して、ピンホールを生成する一層大きな傾向を示すことを示唆する。
【0056】
インクの流出
この実験では、「試験基材の調製」実施例の#A及び#Cで印刷したフィルムを用い、その後、「3−D装飾グレージングの成形」実施例に記載の熱成形を行い、3つの異なるゲート方式:フィルムファンゲート、リブゲート、及びタブゲートを用いて、研究を実施した。それぞれのゲートシナリオの下で、表6に示すように、充填時間を0.45秒と3.7秒の間で変えて、射出速度を変えた。
【表6】

【0057】
インクの流出に対する安定性は、フィルムインサート成形の成功にとって非常に重要であり、パーツのデザイン及び金型の構造に起因するゲート特性によって影響を受ける。どちらのインク配合についても、全てのゲート及び射出成形のシナリオ下に同じ様に実施した。全ての場合において、遅い射出速度で、最大のインク流出が生じた。遅い射出速度は、インク/樹脂の長い接触時間を表し、このため、インクは加熱され、次いで、樹脂と共に流れる。図7に示す射出成形後のパーツ22(ミラーハウジング)の目視検査により、ゲート近くでどちらのインク配合でもインクの流出28の存在が見られた。しかし、インクの流出は、インク配合#Aにより印刷したフィルムでは最低限であることが見出され、インク配合#Cではひどかった(後者を図7に示す)。
【0058】
当業者は、これまでの説明から、添付の特許請求の範囲に定められる本発明の範囲から逸脱することなく、修正及び変更が、本発明の好ましい実施形態になされ得ることを認めるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2表面を有する透明プラスチックベース層と;
第1及び第2表面を有する透明プラスチックトップ層と;
該トップ層の該第1表面に印刷され硬化されたインクであって、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及びこれらの組合せの1つである合成樹脂を含むインクと
を含み;
該ベース層の該第1表面と該トップ層の該第1表面は一体化するように互いに溶融接合されて、プラスチックパネルを形成しており;
該トップ層の該第2表面に堆積された耐候層及び耐摩耗層
を含む、グレージングアセンブリ。
【請求項2】
前記透明プラスチックベース層及び前記透明プラスチックトップ層が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、又はこれらの混合物の群から選択される材料からなる、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項3】
前記透明プラスチックトップ層が約0.05から2mmの厚さを有するプラスチックフィルムである、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項4】
前記透明プラスチックベース層が約2mmから6mmの厚さを有する、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項5】
印刷及び硬化の前のインクが、約1.9%から13.2%のポリカーボネート樹脂、約5.4%から34.2%のポリエステル樹脂、約0.1%から5.0%のイソシアネート添加剤、及び約20.7%から84.3%の溶媒を含む、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項6】
前記インクが、ポリエステルインク及びポリカーボネートインクの混合物を含む、ブレンドされたインクである、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項7】
前記ブレンドされたインクが、約50:50を超える重量比でポリエステル(PE)とポリカーボネート(PC)インクを含む、請求項6に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項8】
ポリエステル(PE)とポリカーボネート(PC)インクの重量比が約80:20である、請求項7に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項9】
前記インクが、
約3から38重量パーセントの着色顔料;
約45重量パーセントまでの不透明度向上フィラー;
約1重量パーセントまでの分散剤;及び
約0.1から5重量パーセントのイソシアネート
をさらに含む、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項10】
前記不透明度向上フィラーが、約1.0マイクロメートル以下の平均粒径を有する無機酸化物である、請求項9に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項11】
前記無機酸化物が酸化チタンである、請求項10に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項12】
前記分散剤が有機変性ポリシロキサンである、請求項9に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項13】
前記有機変性ポリシロキサンがポリエーテルシロキサンコポリマーである、請求項12に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項14】
前記イソシアネートが、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートからなる群からの1つとして選択される、請求項9に記載のグレージングパネル。
【請求項15】
前記インクが、二塩基酸エステル、芳香族炭化水素、及びケトン溶媒の混合物をさらに含む、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項16】
前記印刷され硬化されたインクが、約4から20マイクロメートルの間の厚さを有する、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項17】
前記インクの厚さが、約8から18マイクロメートルの間である、請求項16に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項18】
前記印刷され硬化されたインクが、約49から72重量%のポリエステル樹脂、及び約12から18重量%のポリカーボネート樹脂を含む、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項19】
前記印刷され硬化されたインクが、約6から10重量%のイソシアネート添加剤をさらに含む、請求項18に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項20】
前記印刷され硬化されたインクが、約1.5重量%の界面活性剤、及び約30重量%までの追加のフィラー又は顔料をさらに含む、請求項19に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項21】
前記耐候層が、ポリウレタン、及びプライマー/ハードコート系を含む群から選択される1つである、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項22】
前記プライマー/ハードコート系が、アクリルプライマー及びシリコーンハードコートをさらに含む、請求項21に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項23】
前記耐摩耗層が、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、水素化酸炭化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、及びガラスの群からの1つとして選択される、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項24】
前記耐摩耗層が、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)、アーク−PECVD、イオン支援プラズマ堆積、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、及びイオンビームスパッタリングの群から選択される1つの方法によって堆積される、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項25】
前記耐候層が、前記ベース層の前記第2表面にさらに付けられる、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項26】
前記耐摩耗層が、前記ベース層の前記第2表面の前記耐候層の表面にさらに堆積される、請求項25に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項27】
前記ベース層の前記第2表面に耐摩耗層をさらに含む、請求項1に記載のグレージングアセンブリ。
【請求項28】
グレージングアセンブリの製造方法であって、
第1及び第2表面を有する透明プラスチックトップ層を準備し;
該トップ層の該第1表面にインクを印刷し硬化させ、該インクは、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、又はこれらの混合物である合成樹脂を含み;
該装飾されたトップ層を成形型の1つの表面の形状に成形し;
該トップ層を該成形型に合うようにトリミングし;
該装飾され、成形され、トリミングされたトップ層を、該トップ層の該第2表面が成形型の1つの表面に接して存在するように、成形型に入れ;
該成形型キャビティに、溶融プラスチック樹脂を、それが該トップ層の該第1表面と接触するように、射出することによって透明ベース層をバック成形し;
該溶融プラスチック樹脂を、それが固化して第1及び第2表面を有する透明ベース層を形成するように冷却して、該ベース層の該第1表面と該トップ層の該第1表面とが互いに溶融接合され;
該成形型から該成形されたプラスチックパネルを取り出し;
該トップ層の該第2表面に耐候層を付け;
該耐候層の表面に耐摩耗層を付けること
を含む方法。
【請求項29】
前記印刷することが、スクリーン印刷、パッド又はタンポン印刷、インクジェット印刷、及び膜画像転移印刷の群から選択される1つの方法を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記成形することが、真空熱成形、加圧成形、冷間成形、及びドレープ成形の群から選択される1つの方法を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記バック成形することが、射出成形、ブロー成形及び射出圧縮成形の群から選択される1つの方法を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記透明プラスチックベース層及び前記透明トップ層が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、又はこれらの混合物の群から選択される材料からなる、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記印刷され硬化されたインクが、約49から72重量%のポリエステル樹脂、及び約12から18重量%のポリカーボネート樹脂を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記印刷され硬化されたインクが、約6から10重量%のイソシアネート添加剤をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記耐候層が、ポリウレタン、及びプライマー/ハードコート系を含む群から選択される1つである、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記プライマー/ハードコート系が、アクリルプライマー及びシリコーンハードコートをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記耐候層が、カーテンコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、及びフローコーティングの群から選択される1つの方法によって付けられる、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記耐摩耗層が、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、水素化酸炭化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、及びガラスの群からの1つとして選択される材料の層である、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
前記耐摩耗層が、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)、アーク−PECVD、イオン支援プラズマ堆積、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、及びイオンビームスパッタリングの群から選択される1つの方法によって堆積される、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記耐候層が前記ベース層の前記第2表面にさらに付けられる、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
前記耐摩耗層が、前記ベース層の前記第2表面に存在する前記耐候層の表面にさらに堆積される、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−505662(P2010−505662A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531536(P2009−531536)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/079794
【国際公開番号】WO2008/042731
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】