説明

フィルム状接着剤、極細同軸ケーブルおよび極細同軸ケーブルの製造方法

【課題】接続抵抗を低下させるとともに、屈曲性の低下を抑制するフィルム状接着剤、極細同軸ケーブルおよび極細同軸ケーブルの製造方法を提供する。
【解決手段】極細同軸ケーブルは、フィルム状接着剤10と、極細同軸線と、グランドバー120とを備えている。フィルム状接着剤10は、樹脂11と樹脂11中に分散された半田粒子とを備えている。極細同軸線は、中心導体111と、中心導体111の外周側に配置される絶縁体112と、絶縁体112の外周側に配置される複数の導体からなる外部導体113と、外部導体113の外周側に配置される被覆材とを含み、一方端部において中心導体111および外部導体113が露出している。グランドバー120は、フィルム状接着剤10を介して、露出している外部導体113と電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フィルム状接着剤、極細同軸ケーブルおよび極細同軸ケーブルの製造方法に関し、特に接続抵抗を低下させるととともに屈曲性の低下を抑制できるフィルム状接着剤、極細同軸ケーブルおよび極細同軸ケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器分野においては、たとえばノートパソコンや携帯電話機等の普及によって、これらの情報通信機器の小型化や軽量化が求められている。そのため、機器本体と液晶表示部の接続や機器内の配線等に、極細同軸ケーブルが用いられている。極細同軸ケーブルは、中心導体と、中心導体の外周側に配置される絶縁体と、絶縁体の外周側に配置される複数の導体からなる外部導体と、外部導体の外周側に配置される被覆材とを含む極細同軸線を備えている。
【0003】
極細同軸ケーブルにおける極細同軸線の外部導体を接地するためには、外部導体とグランドバーとを電気的に接続する必要がある。このような外部導体とグランドバーとの接続方法として、たとえば、特許第3719693号公報(特許文献1)に外部導体と2枚のグランドバーを半田で接続する方法が開示されている。上記特許文献1には、半田で接続するために、外部導体とグランドバーとの間に半田を設置し、グランドバー側から加熱して半田を溶融させ、外部導体とグランドバーを固着させることが記載されている。しかし、半田を用いて接続する際、溶融した半田が外部導体同士の隙間を伝わりグランドバー設置部からはみだすため、グランドバーの根元部分が半田で固められることにより硬くなることがある。グランドバーの根元部分が硬くなると折りたたみ携帯電話等のヒンジ部分に通す際に断線等の不具合が生じる。
【0004】
グランドバーの根元部分が硬くなることを解決するために、ACF(異方性導電性膜:Anisotropic Conductive Film)や導電接着剤で接続する方法がある。しかし、ACFや導電接着剤に含まれる導電成分を介して外部導体とグランドバーを接続するため、グランドバーに接する外部導体は通常2〜3本となってしまう。そのためグランドバー間の抵抗値(接続抵抗)は高くなってしまうという問題がある。
【特許文献1】特許第3719693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、接続抵抗を低下させるとともに、屈曲性の低下を抑制するフィルム状接着剤、極細同軸ケーブルおよび極細同軸ケーブルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフィルム状接着剤は、樹脂と、樹脂中に分散される半田粒子とを含んでいる。
本発明のフィルム状接着剤によれば、接続時に熱が加えられると半田粒子が溶融して、その形状が変形する。そのため、半田粒子が溶融および固化したことにより形成された半田が、接続する対象の少なくとも一部を覆うこと、または隙間に入り込むことにより、電気的に安定して接続できるので、接続抵抗を低下させることができる。また、半田などと比べて粘度が高い樹脂を含んでいるので、フィルム状接着剤が配置された部分の屈曲性の低下を抑制できる。
【0007】
上記フィルム状接着剤において好ましくは、半田粒子の含有量は、50%vol以上90vol%以下である。
【0008】
半田粒子の含有量が50vol%以上である場合には、接続する対象において、半田粒子が溶融および固化したことにより形成される半田が覆う部分を多くできるため、導電性を向上できる。半田粒子の含有量が90vol%以下である場合には、半田粒子が溶融したときの粘性が低くなることを防止できるので、半田粒子が接続する対象以外へ漏れ出すことによる屈曲性の低下を防止できる。
【0009】
上記フィルム状接着剤において好ましくは、半田粒子の粒径は、6μm以上30μm以下である。
【0010】
半田粒子の粒径が6μm以上の場合には、溶融および固化した半田粒子が接続する対象を十分に覆うことができる。また、半田粒子の充填量の増加を抑制できるので、樹脂の増加を抑制することによって半田粒子が溶融および固化したことにより形成される半田が存在する部分の屈曲性の低下を抑制できる。半田粒子の粒径が30μm以下の場合には、樹脂に対する半田粒子の個数が少なくなることを防止できるので、半田粒子の充填量が低くなることを防止することによって、導電性を向上できる。
【0011】
上記フィルム状接着剤において好ましくは、樹脂は、熱硬化性樹脂である。これにより、接続信頼性を向上できる。
【0012】
本発明の極細同軸ケーブルは、上記フィルム状接着剤と、極細同軸線と、グランドバーとを備えている。極細同軸線は、中心導体と、中心導体の外周側に配置される絶縁体と、絶縁体の外周側に配置される複数の導体からなる外部導体と、外部導体の外周側に配置される被覆材とを含み、一方端部において中心導体および外部導体が露出している。グランドバーは、フィルム状接着剤を介して、露出している外部導体と電気的に接続される。
【0013】
本発明の極細同軸ケーブルの製造方法は、上記フィルム状接着剤を準備する工程と、極細同軸線を準備する工程と、電気的に接続する工程とを備えている。極細同軸線を準備する工程では、中心導体と、中心導体の外周側に配置される絶縁体と、絶縁体の外周側に配置される複数の導体からなる外部導体と、外部導体の外周側に配置される被覆材とを含み、一方端部において中心導体および外部導体が露出している極細同軸線を準備する。電気的に接続する工程では、露出している外部導体とグランドバーとをフィルム状接着剤により電気的に接続する。
【0014】
本発明の極細同軸ケーブルおよび極細同軸ケーブルの製造方法によれば、熱が加えられると形状を変化させる半田粒子を含む上記フィルム状接着剤により、露出している外部導体とグランドバーとを電気的に接続している。そのため、フィルム状接着剤を加熱することによって、フィルム状接着剤中の半田粒子が溶融して、外部導体を構成する複数の導体において隣り合う導体の間や、隣り合う導体の外周を覆うように流れる。直接または半田粒子を介してグランドバーと接触している導体と、隣り合う導体との間に半田粒子が入り込んだ状態で半田粒子を固化させると、固化した半田によりグランドバーと外部導体との電流経路を増加できる。よって、接続抵抗を低下させることができる。
【0015】
また、被覆材の内側に配置される外部導体を構成する導体間にフィルム状接着剤が漏れ出した(被覆材の内側に配置される外部導体に吸われた)場合であっても、フィルム状接着剤は半田と比較して粘度の高い樹脂を含んでいる。そのため、半田のみの場合と比べて溶出する距離は抑制されるため、グランドバー根元部分(極細同軸線と接続されたグランドバーにおいて被覆材側の部分)の屈曲性の低下を抑制することができる。
【0016】
上記極細同軸ケーブルにおいて好ましくは、複数の導体のうちの少なくとも2本の導体を半田粒子が溶融および固化したことにより形成された半田により覆われている。
【0017】
これにより、外部導体を構成する導体間を半田により電気的に接続できる。そのため、電流経路を増加できるので、接続抵抗を低下することができる。
【0018】
上記極細同軸ケーブルの製造方法において好ましくは、電気的に接続する工程は、フィルム状接着剤の半田粒子の融点以上の温度に加熱する工程を含んでいる。これにより、外部導体とグランドバーとを容易に電気的に接続できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィルム状接着剤、極細同軸ケーブルおよび極細同軸ケーブルの製造方法によれば、接続抵抗を低下させるとともに、屈曲性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるフィルム状接着剤を示す概略断面図である。図1を参照して、本発明の実施の形態1におけるフィルム状接着剤を説明する。図1に示すように、本実施の形態におけるフィルム状接着剤10は、樹脂11と、樹脂11中に分散されている半田粒子13とを含んでいる。
【0022】
具体的には、フィルム状接着剤10における半田粒子13の含有量は、50vol%以上90vol%以下であることが好ましい。半田粒子13の含有量が50vol%以上である場合には、接続する対象において、半田粒子13が溶融および固化したことにより形成される半田が覆う部分や付着する部分を多くできる。一方、半田粒子13の含有量が90vol%以下である場合には、接続する対象に容易にフィルム状接着剤10を塗布あるいは貼り付けることができる。
【0023】
また、半田粒子13の粒径Dは、6μm以上30μm以下であることが好ましい。半田粒子の粒径が6μm以上の場合には、溶融および固化した半田粒子が接続する対象を十分に覆うことができる。また、半田粒子の充填量の増加を抑制できるので、樹脂の増加を抑制することによって半田粒子が溶融および固化したことにより形成される半田が存在する部分の屈曲性の低下を抑制できる。半田粒子の粒径が30μm以下の場合には、樹脂に対する半田粒子の個数が少なくなることを防止できるので、半田粒子の充填量が低くなることを防止することによって、導電性を向上できる。
【0024】
なお、上記「粒径D」は、レーザ回折法による半田粉末の粒度分布を測定したときの平均粒径であり、JIS Z 3284(1994)に準拠して測定される値である。
【0025】
半田粒子13の材料は特に限定されないが、環境問題の観点から、鉛フリー半田が好ましく、熱による電線の損傷等を防止する観点から融点が139℃以下の低融点半田を用いることが好ましい。鉛フリー半田としては、Sn96.5Ag3.0Cu0.5を用いることが好ましく、低融点半田としてはSn42Bi58を用いることが好ましい。
【0026】
樹脂11の材料は、特に限定されず、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などを用いることができるが、熱硬化性樹脂であることが好ましく、エポキシ樹脂であることがより好ましい。エポキシ樹脂としては、たとえばビスフェノールA型、F型、S型およびAD型のエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、およびジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、および高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂などを用いることができる。
【0027】
また、エポキシ樹脂の分子量は、適宜選択することができる。相対的に高い分子量のエポキシ樹脂(高分子量エポキシ樹脂)を用いると、フィルム形状性を向上できるとともに、接続するために加熱される温度における樹脂の溶融粘度を高くできる。一方、相対的に低い分子量のエポキシ樹脂(低分子量エポキシ樹脂)を用いると、架橋密度が高まって耐熱性を向上できるとともに、樹脂の凝集力を高めることができるので、接着力を向上できる。そのため、性能のバランスをとるために、樹脂11として、分子量が15000以上の高分子量エポキシ樹脂と、分子量が2000以下の低分子量エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることが好ましい。なお、高分子量エポキシ樹脂および低分子量エポキシ樹脂との配合量は、適宜選択することができる。
【0028】
以上説明したように、本発明の実施の形態1におけるフィルム状接着剤10によれば、樹脂11中に分散された半田粒子13を備えている。フィルム状接着剤10に熱が加えられると半田粒子13が溶融して、その形状が変形する。そのため、半田粒子13が溶融および固化したことにより形成された半田が、接続する対象の少なくとも一部を覆うことにより、電気的に安定して接続できるので、接続抵抗を低下させることができる。また、半田などと比べて粘度が高い樹脂11を含んでいるので、フィルム状接着剤10が配置された部分の屈曲性を向上できる。
【0029】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における極細同軸ケーブルを示す概略上面図である。図3は、図2における線分III−IIIでの概略断面図である。図4は、図3における線分IV−IVでの概略断面図である。図2〜図4を参照して、本発明の極細同軸ケーブルを説明する。本実施の形態における極細同軸ケーブル100は、図2〜図4に示すように、実施の形態1におけるフィルム状接着剤10と、極細同軸線110と、グランドバー120と、基台130とを備えている。
【0030】
具体的には、図2および図3に示すように、極細同軸線110は、外径寸法が1mm以下の同軸線であり、中心導体111と、絶縁体112と、外部導体113と、被覆材114とを含んでいる。極細同軸線110は複数配置されている。
【0031】
図4に示すように、中心導体111は、コネクタなどの極細同軸ケーブル100を接続する部材と電気的に接続される導電性の部材である。中心導体111は、たとえば銀めっき銅合金線等により形成された外径が0.021mmの7本の導体を撚ってなり、外径が0.63mmである。
【0032】
絶縁体112は、中心導体111の外周側に配置される絶縁性の部材である。絶縁体112は、たとえば厚みが0.05mmの四フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル樹脂(PFA)等により形成されている。
【0033】
外部導体113は、絶縁体112の外周側に配置される複数の導体からなる導電性の部材である。外部導体113は、外径が0.025mmの錫めっき銅合金線等により形成された17本の導体が横巻きシールドされて形成されている。
【0034】
被覆材114は、外部導体113の外周側に配置される絶縁性の部材である。被覆材114は、厚みが0.03mmの四フッ化エチレンパーフロロアルキルビニルエーテル樹脂等により形成されている。
【0035】
また、極細同軸線110の形状は、極細同軸線110の一方端部において中心導体111および外部導体113が露出していれば特に限定されないが、図3に示すように、中心導体111と、絶縁体112と、外部導体113とが一方端に向けて順に露出していることが好ましい。なお、一方端部とは、極細同軸線110において一方の端から他方の端に向けて(一方の端から極細同軸線110の延びる方向に向けて)所定の長さの領域であり、露出した中心導体111と、露出した絶縁体112と、露出した外部導体113とを含む領域(図3における領域R)を意味する。
【0036】
グランドバー120は、フィルム状接着剤10を介して、露出している外部導体113と電気的に接続されている。グランドバー120は、複数本の極細同軸線110が配列されている方向(図2において上下方向)に沿って、複数の露出している外部導体113とフィルム状接着剤10を介して機械的および電気的に接続することにより、グランドバー120と複数の極細同軸線110とを一体化している。グランドバー120に複数の極細同軸線110を接続することにより、極細同軸線110の外部導体113をまとめてアースしている。グランドバー120は、極細同軸ケーブル100の機械的な固定を行なうとともに、外部導体113との導通を得ている。
【0037】
グランドバー120は、図3および図4に示すように、基台130と直接接触する部分およびその部分と反対側(基台130から見て上方)とに配置され、露出している外部導体113を2枚のグランドバー120で挟み込んでいる。なお、少なくとも露出している外部導体113の一方側にフィルム状接着剤10を介して配置されていれば、特にこの構成に限定されない。
【0038】
グランドバー120は、たとえば導電性のプレートを加工してなる金属箔を用いることができる。
【0039】
半田粒子の含有量が90vol%のフィルム状接着剤10を用いた場合には、図4に示すように、半田粒子(図1の半田粒子13)が溶融および固化したことにより形成された半田15が外部導体113を構成する複数の導体の間および外周を被覆している。なお、フィルム状接着剤10に含有されている半田粒子の含有量を90%よりも低くすると、たとえば図5に示すように、外部導体113を構成する複数の導体のうちの少なくとも2本の導体を半田粒子が溶融および固化したことにより形成された半田15により覆われる。なお、図5は、別のフィルム状接着剤を用いて外部導体113とグランドバー120とを電気的に接続した状態を示す概略断面図である。
【0040】
図4および図5に示すように、少なくとも2本の導体を覆う半田15は、グランドバー120と接触していることが好ましい。これにより、外部導体113とグランドバー120とをより安定して電気的に接続できる。
【0041】
次に、図1〜図7に示すように、本発明の実施の形態2における極細同軸ケーブル100の製造方法について説明する。なお、図6は、本発明の実施の形態2における極細同軸ケーブルの製造方法を示すフローチャートである。図7は、本発明の実施の形態2における配置する工程を示す概略断面図である。
【0042】
まず、図1および図6に示すように、実施の形態1におけるフィルム状接着剤10を準備する工程(S10)を実施する。この工程(S10)では、外部導体113とグランドバー120との電気的な接続を容易に行なうために、後述するグランドバー120と略同じ形状のフィルム状接着剤10を準備することが好ましい。
【0043】
次に、図2〜図6に示すように、中心導体111と、中心導体111の外周側に配置される絶縁体112と、絶縁体112の外周側に配置される複数の導体からなる外部導体113と、外部導体113の外周側に配置される被覆材114とを含み、一方端部において中心導体111および外部導体113が露出している極細同軸線110を準備する工程(S20)を実施する。この工程(S20)では、一方端部において中心導体111、絶縁体112および外部導体113が順に露出している極細同軸線110を準備することが好ましい。また、本実施の形態では、複数本の極細同軸線110を準備する。
【0044】
極細同軸線110を準備する工程(S20)では、市販の極細同軸線110を入手することにより極細同軸線110を準備してもよいし、後述する露出する工程を実施することにより極細同軸線110を準備してもよい。
【0045】
露出する工程は、中心導体111と、中心導体111の外周側に配置される絶縁体112と、絶縁体112の外周側に配置される外部導体113と、外部導体113の外周側に配置される被覆材114とを含む極細同軸線を準備した後に、一方端部において中心導体111および外部導体113を露出する。露出する工程は、一方端部において中心導体111と、絶縁体112と、外部導体113とを一方端に向けて順に露出させることが好ましい。
【0046】
露出させる工程において中心導体111および外部導体113を露出させる方法は、レーザを用いて行なう方法やメカニカルに剥ぐ方法など任意の方法を採用できる。本実施の形態では、たとえばレーザにより極細同軸線110の一方端部の被覆材114を除去する。そして、被覆材114近傍の外部導体113を一部残して、残部の外部導体113をレーザにより除去する。この際、露出する外部導体113の幅(図3におけるW113)は、グランドバー120の幅(図3におけるW120)と略同一にすることが好ましい。そして、外部導体113近傍の絶縁体112を一部残して、残部の絶縁体112をレーザにより除去する。これにより、図2〜4に示すような中心導体111と、絶縁体112と、外部導体113とが一方端に向けて順に露出した極細同軸線110を形成できる。
【0047】
また、外部導体113を除去する場合には、レーザの代わりに、たとえば回転ブラシ等を接触させて、外部導体113を構成する複数の導体の巻きを緩めてほぐし、ほぐされた外部導体113を引っ張って、その一部を除去することにより、絶縁体112を露出させてもよい。
【0048】
また、複数の極細同軸線110を準備する場合には、複数の極細同軸線110の長さが略同じにすることが好ましい。たとえば、複数の極細同軸線110を所定の長さに揃えるために、一括して切断する工程を実施してもよい。
【0049】
次に、図2〜図7に示すように、露出している外部導体113とグランドバー120とをフィルム状接着剤10により電気的に接続する工程(S30)を実施する。この工程(S30)では、たとえば以下の工程を実施する。
【0050】
まず、導電性のグランドバー120を少なくとも1枚準備する。そして、図7に示すように、複数の露出している外部導体113をグランドバー120上に配置する。グランドバー120を2枚準備した場合には、複数の露出している外部導体113をグランドバー120で挟み込む。
【0051】
そして、フィルム状接着剤10の半田粒子13の融点以上の温度に加熱する工程を実施する。この際、複数の半田粒子13が凝集した状態で複数の導体を覆うことが好ましい。そして、フィルム状接着剤10の半田粒子13を固化させる工程を実施すると、半田粒子13から形状を変化させた半田15が形成される。加熱する工程および固化させる工程を実施すると、図4および図5に示すように、半田15は、外部導体113を構成する複数の導体の間に入り込むとともに、複数の導体のうちの少なくとも2本の導体を覆う。なお、加熱する工程時には、必要に応じて所定の圧力を加えてもよい。
【0052】
次に、露出している中心導体111と基台130とを接続する工程(S40)を実施する。この工程では、たとえば上述したような基台130を準備して、露出している中心導体111を基台130上に配置し、中心導体111と基台130とを接着剤等で固定する。
【0053】
以上の工程(S10〜S40)を実施することによって、図2〜図5に示す本実施の形態における極細同軸ケーブル100を製造できる。
【0054】
(変形例)
次に、図1〜図8を参照して、本発明の実施の形態2における極細同軸ケーブルの製造方法の変形例を説明する。変形例における極細同軸ケーブルの製造方法は、実施の形態2と基本的には同様であるが、極細同軸線を準備する工程(S20)および電気的に接続する工程(S30)の順序において異なる。変形例では、極細同軸線110を準備する工程(S20)は、被覆材114を除去する工程(S21)と、外部導体113を除去する工程(S22)と、絶縁体112を除去する工程(S23)とを含んでいる。なお、図8は、本発明の実施の形態2における極細同軸ケーブルの別の製造方法を示すフローチャートである。
【0055】
具体的には、図8に示すように、まず、実施の形態2と同様に、フィルム状接着剤10を準備する工程(S10)を実施する。
【0056】
次に、中心導体111と、中心導体111の外周側に配置される絶縁体112と、絶縁体112の外周側に配置される外部導体113と、外部導体113の外周側に配置される被覆材114とを含む極細同軸線を準備する。そして、一方端部の被覆材114を除去する工程(S21)を実施する。
【0057】
次に、実施の形態2と同様に、露出した外部導体113とグランドバー120とを電気的に接続する工程(S30)を実施する。
【0058】
次に、一方端部においてグランドバー120と接続されていない外部導体113を除去する工程(S22)を実施する。次に、一方端部において絶縁体112を除去する工程(S23)を除去する。
【0059】
次に、実施の形態2と同様に、中心導体111と基台130とを接続する工程(S40)を実施する。
【0060】
以上の工程(S10〜S40)を実施することによっても、図2〜図5に示す極細同軸ケーブル100を製造できる。変形例によれば、絶縁体112の外周側の外部導体に漏れ出したフィルム状接着剤10を、外部導体113を除去する工程(S22)で除去できるため、外部導体113が露出している側の絶縁体112近傍での屈曲性の低下が生じない。
【0061】
なお、上記工程(S10〜S40)の順序は、上述した実施の形態2および変形例に特に限定されない。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施の形態2における極細同軸ケーブル100および極細同軸ケーブル100の製造方法によれば、露出している外部導体113とグランドバー120とがフィルム状接着剤10を介して電気的に接続されている。
【0063】
図9に示すように、上記特許文献1などに開示の樹脂21と樹脂21中に分散された導電粒子23とを備える異方性導電膜20を用いて外部導体113とグランドバー120とを電気的に接続する場合には、熱により導電粒子23は変形しない。一般的に、極細同軸線110の径、外部導体を構成する導体の径、およびグランドバー120の厚みにはばらつきがあるので、隣り合う導体同士が接触していない場合やグランドバー120と外部導体113とが接触していない場合がある。グランドバー120と直接接触している導体と、その導体と隣り合う導体との間に導電粒子23が付着した場合であっても、点接触となり、接続抵抗はほとんど低下しない。また、外部導体113とグランドバー120との間に導電粒子23が入り込んだ場合であっても、導電粒子23と、外部導体113およびグランドバー120とは点接触となる。そのため、接続抵抗をほとんど低下することができない。なお、図9は、従来技術における異方性導電膜により外部導体とグランドバーとを電気的に接続した極細同軸ケーブルを示す概略断面図である。
【0064】
一方、本実施の形態では、フィルム状接着剤10を加熱することによって、フィルム状接着剤10中の半田粒子13が溶融して、外部導体113を構成する複数の導体において隣り合う導体の間や、隣り合う導体の外周を覆うように流れる。直接または半田粒子13を介してグランドバー120と接触している導体と隣り合う導体に半田粒子13が入り込んだ状態で半田粒子13を固化させると、固化した半田15によりグランドバー120と外部導体113との電流経路を増加できる。また、外部導体113とグランドバー120との間に半田粒子13が入り込んだ場合には溶融および固化によってその形状を半田15に変形して、外部導体113とグランドバー120との見かけの接触面積を増加できる。よって、複数の導体の電気的な接続を安定させることができ、接続抵抗を低下することができる。
【0065】
また、フィルム状接着剤10は樹脂11を含んでいるので、被覆材114の内側に配置される外部導体113を構成する導体間にフィルム状接着剤10が漏れ出した場合であっても、半田のみで接続した場合と比べてフィルム状接着剤10が溶出する距離は抑制される。また、グランドバー120が設置された領域を超えた領域へ半田粒子13の溶出を抑制できる。そのため、グランドバー120の根元部分(図2のグランドバーの右側部分)の屈曲性の低下を抑制することができる。よって、極細同軸ケーブルの使用時に断線してしまうことを防止できる。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のフィルム状接着剤、極細同軸ケーブル、および極細同軸ケーブルの製造方法によれば、樹脂中に分散される半田粒子を備えているフィルム状接着剤により外部導体とグランドバーとを接続しているので、接続抵抗を低下させるとともに、屈曲性の低下を抑制することができる。そのため、電子機器等に好適に用いることができ。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1におけるフィルム状接着剤を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2における極細同軸ケーブルを示す概略上面図である。
【図3】図2における線分III−IIIでの概略断面図である。
【図4】図2における線分IV−IVでの概略断面図である。
【図5】別のフィルム状接着剤を用いて外部導体とグランドバーとを電気的に接続した状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における極細同軸ケーブルの製造方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2における配置する工程を示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における極細同軸ケーブルの別の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】従来技術における異方性導電膜により外部導体とグランドバーとを電気的に接続した極細同軸ケーブルを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 フィルム状接着剤、11 樹脂、13 半田粒子、15 半田、100 極細同軸ケーブル、110 極細同軸線、111 中心導体、112 絶縁体、113 外部導体、114 被覆材、120 グランドバー、130 基台、D 粒径、R 領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、
前記樹脂中に分散される半田粒子とを含む、フィルム状接着剤。
【請求項2】
前記半田粒子の含有量は、50vol%以上90vol%以下である、請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
前記半田粒子の粒径は、6μm以上30μm以下である、請求項1または2に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
前記樹脂は、熱硬化性樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム状接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム状接着剤と、
中心導体と、前記中心導体の外周側に配置される絶縁体と、前記絶縁体の外周側に配置される複数の導体からなる外部導体と、前記外部導体の外周側に配置される被覆材とを含み、一方端部において前記中心導体および前記外部導体が露出している極細同軸線と、
前記フィルム状接着剤を介して、露出している前記外部導体と電気的に接続されるグランドバーとを備える、極細同軸ケーブル。
【請求項6】
前記複数の導体のうちの少なくとも2本の前記導体が、前記半田粒子が溶融および固化したことにより形成された半田により覆われている、請求項5に記載の極細同軸ケーブル。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム状接着剤を準備する工程と、
中心導体と、前記中心導体の外周側に配置される絶縁体と、前記絶縁体の外周側に配置される複数の導体からなる外部導体と、前記外部導体の外周側に配置される被覆材とを含み、一方端部において前記中心導体および前記外部導体が露出している極細同軸線を準備する工程と、
露出している前記外部導体と前記グランドバーとを前記フィルム状接着剤により電気的に接続する工程とを備える、極細同軸ケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−29841(P2009−29841A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191979(P2007−191979)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】