説明

フォトレジスト材料およびフォトレジスト膜、これを用いるエッチング方法、ならびに新規アゾ色素化合物

【課題】塗布適性に優れる溶媒に対する高い溶解性を有するとともに、精密な微細加工を実現可能なフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト材料を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるフォトレジスト用化合物を含むことを特徴とするフォトレジスト材料。


[一般式(1)中、Ap-は、p価のアゾ色素アニオンを表し、pは1〜5の範囲の整数を表し、Xq+は、q価のカチオンを表し、qは1〜5の範囲の整数を表し、k’は分子全体の電荷を中和するために必要なXq+の数を表し、但し、一般式(1)で表されるアゾ色素は分子内に金属イオンを含有しない。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なパターンを形成可能なフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト材料およびフォトレジスト膜に関する。更に本発明は、上記フォトレジスト膜を用いる被加工表面のエッチング方法に関する。
更に本発明は、微細なパターンを形成可能なフォトレジスト用化合物として好適な、新規アゾ色素化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、磁気バブルメモリ、集積回路等の電子部品を製造工程において、微細パターンを形成し、これをエッチングマスクとして、その下層にある表面をエッチングする技術が広く用いられている。
更に近年、LEDのような発光素子が種々の用途に活用されている。このLEDは、基板上に発光層を含む半導体多層膜を積層した半導体素子(以下、これを「チップ」とも言う。)を樹脂等でパッケージしたものであるが、当該チップの光取出し口の最上層(または最外層)とパッケージの樹脂との屈折率が相違するので、これら両者の界面で反射が起こり発光効率が低下してしまう。そのため、このような界面での反射を防止して、その発光効率を改善する目的で、上記チップの光取出し口の表面に微細な凹凸構造を設けることが提案されている(例えば特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1では、その第5の実施態様において、上記発光ダイオードの光取出し口を構成する最上層として反射防止膜を設け、その反射防止膜の表面に微細な凹凸形状を形成するために、予め微細な凹凸形状を形成した金型を製造しておき、この金型で上記反射防止膜の表面をプレス成形して、光取出し口の表面に凹凸形状を形成する方法、またはその変形例として、金型を使用したプレス成形に代えて反射防止膜の表面をグラインダーでランダム方向に荒らす方法が開示されている。しかし、前者の方法は金型を作成するという面倒なプロセスを必要とする上に、金型作成のコストがかかる欠点があり、後者の方法では、常に均一な粗面とすることが困難で、製品に性能上のバラつきが生じるという問題があった。
他方、特許文献2では、ブレード加工で半導体素子の光取出し口の最上層を構成する電流拡散層に断面三角形状のラインアンドスペースパターンを形成し、さらに高温の塩酸処理をして電流拡散層の表面にサブミクロンの凹凸を形成する方法と、電流拡散層上にフォトレジストを使ってラインアンドスペースパターンを形成し、さらにリアクティブ・イオン・エッチング(RIE)により上記と同様の微小な凹凸を電流拡散層の表面に形成する方法が開示されている。しかしながら、これらの方法でも煩雑なプロセスを必要とするという問題があった。
【0004】
微細な凹凸構造の作製、半導体装置の作製等に使用される技術として、従来からフォトリソグラフィが知られている。フォトリソグラフィでは、感光性化合物を含有するレジスト組成物を基板等の表面に塗布した後、フォトマスクを介してパターン露光し、次いで現像することにより露光部または非露光部のいずれか一方を選択的に除去してレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをエッチングマスクとして使用することにより、基板等の表面に微細な凹凸パターンまたは半導体素子を形成することができる。
【0005】
しかし、従来の感光性化合物を含有するフォトレジスト液を使用したフォトリソグラフィーでは、パターン露光後に現像する工程が必須であり、その分だけ工程が増えてしまう。
【0006】
これに対し本願出願人は、フォトリソグラフィを利用した微細加工を行うために使用される、新規なフォトレジスト用化合物(色素化合物)を見出した(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−174191号公報
【特許文献2】特開2003−209283号公報
【特許文献3】国際公開第2008/108406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献3に記載のフォトレジスト用化合物は、微細な表面加工が可能である、パターン露光後の現像工程を省略することができる、等の優れた特徴を有するものである。しかし本願発明者らの検討の結果、上記フォトレジスト用化合物には、以下の課題があることが新たに判明した。
(1)特許文献3に記載のフォトレジスト用化合物を溶媒に溶解することによりフォトレジスト液を調製することができる。そして、このフォトレジスト液をスピンコート等により被加工面に塗布することにより、フォトレジスト膜を形成することができる。上記溶媒としては、各種溶媒を使用することができるが、塗布性の点からはアルコール類およびグリコールエーテル類が好ましい。しかし、特許文献3に記載のフォトレジスト用化合物の中には、アルコール類およびグリコールエーテル類に対する溶解性に乏しく、これら塗布性に優れる溶媒を使用しフォトレジスト液を調製すると、結晶化を起こし膜形成が困難となるものがある。
(2)特許文献3に記載のフォトレジスト用化合物(色素化合物)は、該化合物を含む色素膜へパターン露光すると化合物が熱分解などの物性変化を起こす結果、ピット(開口)や局所的に耐久性が低下した部分(低耐久性部)が形成されるものと考えられる。このようなピットや低耐久性部(以下、これらをまとめて「加工穴」ともいう)が形成された膜は、エッチング用マスクとして使用することができる。加工穴が形成された色素膜をエッチング用マスクとして使用するためには、パターン露光後に加工穴の形状がくずれることなく維持されることが望ましい。しかし特許文献3に記載のフォトレジスト用化合物の中には、パターン露光後に加工穴の形状を良好に維持できないものがあることが新たに判明した。このような色素膜であってもエッチング用マスクとして使用することは可能であるが、精密な微細加工を行うためには、パターン露光後も加工穴の形状が良好に維持されていることが好ましい。
【0009】
そこで本発明の目的は、塗布適性に優れる溶媒に対する高い溶解性を有するとともに、精密な微細加工を実現可能なフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、イオン性基を有し、かつ対塩を持つ特定のアゾ色素が、塗布性に優れる溶媒に対して高い溶解性を示すこと、上記アゾ色素を含む色素膜はパターン露光後もピット形状や低耐久性部形状が良好に維持され得ることを見出した。本発明者らは、パターン露光後の加工穴の形状を良好に維持できる理由は、上記アゾ色素が熱分解温度より低温領域に融点を持たないため、色素融解による加工穴の形状の劣化が抑制されることにあると推察している。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
【0011】
即ち、上記目的は、下記手段によって達成された。
[1]下記一般式(1)で表されるフォトレジスト用化合物を含むことを特徴とするフォトレジスト材料。
【化1】

[一般式(1)中、Ap-は、p価のアゾ色素アニオンを表し、pは1〜5の範囲の整数を表し、Xq+は、q価のカチオンを表し、qは1〜5の範囲の整数を表し、k’は分子全体の電荷を中和するために必要なXq+の数を表し、但し、一般式(1)で表されるアゾ色素は分子内に金属イオンを含有しない。]
[2]Xq+が、アンモニウムカチオン、一般式(2)で表されるカチオン、一般式(2)に含まれない含窒素芳香族ヘテロ環の環内窒素上に正電荷を有するカチオン、およびホスホニウムカチオンからなる群から選ばれるカチオンである[1]に記載のフォトレジスト材料。
【化2】

[一般式(2)中、R21〜R25は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R21〜R25のいずれか2つ以上が互いに結合して環を形成してもよい。]
[3]Ap-は、一般式(A)で表されるアゾ色素の水素原子がp個解離したアニオンである[1]または[2]に記載のフォトレジスト材料。
【化3】

[一般式(A)中、Bは、下記一般式(B)で表され、Cは、含窒素へテロ環基を表す。]
【化4】

[一般式(B)中、Qは隣り合う2つの炭素原子とともに含窒素へテロ環を形成する基を表し、Yは−NR12または−OR3で表される基を表し、R1、R2およびR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、*は−N=N−基との結合位置を表す。]
[4]一般式(1)中のXq+はピリジニウムカチオンであり、一般式(A)中のCで表される含窒素ヘテロ環基はピラゾール環を含み、一般式(B)中のQが隣り合う2つの炭素原子とともに形成する含窒素へテロ環はピラゾール環であり、かつYは−NH2である、[3]に記載のフォトレジスト材料。
[5]一般式(1)中のXq+は下記式(X−15)により表されるピリジニウムカチオンである、[4]に記載のフォトレジスト材料。
【化5】

[6]一般式(A)中のCで表される含窒素ヘテロ環基に含まれるピラゾール環は、環上の炭素に結合する置換基としてシアノ基を含み、かつ環上の窒素に結合する置換基として置換または無置換のフェニル基を含む、[4]または[5]に記載のフォトレジスト材料。
[7]一般式(B)中のQが隣り合う2つの炭素原子とともに形成する含窒素へテロ環は、環上の炭素に結合する置換基としてtert−ブチル基を含むピラゾール環である、[4]〜[6]のいずれかに記載のフォトレジスト材料。
[8]前記フォトレジスト用化合物は、下記一般式(C)で表されるアゾ色素アニオンと、対塩として前記式(X−15)で表されるピリジニウムカチオンと、を含む、[5]〜[7]のいずれかに記載のフォトレジスト材料。
【化6】

[一般式(C)中、R101は置換または無置換のフェニル基を表し、R100およびR102は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、かつR100〜R102の1つ以上にアニオン性基が含まれる。]
[9]前記フォトレジスト用化合物は、一般式(1)中のXq+が前記式(X−15)により表されるピリジニウムカチオンであり、Ap-が下記アゾ色素アニオンのいずれかである化合物である、[5]〜[8]のいずれかに記載のフォトレジスト材料。
【化7】


[10]前記フォトレジスト用化合物は、熱分解温度が150℃以上500℃以下である[1]〜[9]のいずれかに記載のフォトレジスト材料。
[11]前記フォトレジスト用化合物を主成分として含む[1]〜[10]のいずれかに記載のフォトレジスト材料。
[12]ポジ型フォトレジスト材料である[1]〜[11]のいずれかに記載のフォトレジスト材料。
[13]ポジ型耐エッチングレジスト材料である[12]に記載のフォトレジスト材料。
[14]フォトレジスト液である[1]〜[13]のいずれかに記載のフォトレジスト材料。
[15]前記フォトレジスト液は、前記フォトレジスト用化合物を全固形分を基準として50質量%以上含有する[14]に記載のフォトレジスト材料。
[16][1]〜[15]のいずれかに記載のフォトレジスト材料から形成されたフォトレジスト膜。
[17]前記フォトレジスト用化合物を主成分として含む[16]に記載のフォトレジスト膜。
[18]ポジ型フォトレジスト膜である[16]または[17]に記載のフォトレジスト膜。
[19][16]〜[18]のいずれかに記載のフォトレジスト膜を被加工表面に配置すること、
上記フォトレジスト膜にパターン露光すること、および、
上記パターン露光後のフォトレジスト膜を有する被加工表面の少なくとも一部にエッチング処理を施し、上記パターン露光において露光された部分に対応する領域における被加工表面の少なくとも一部をエッチングすること
を含む被加工表面のエッチング方法。
[20]前記フォトレジスト膜を、[14]または[15]に記載のフォトレジスト液を被加工表面に塗布することにより形成する[19]に記載の被加工表面のエッチング方法。
[21]前記パターン露光に使用される光は、λnmの波長を有するレーザー光であり、前記フォトレジスト膜に含まれる前記フォトレジスト用化合物の最大吸収波長λmaxはλ±150nmの範囲にある[19]または[20]に記載の被加工表面のエッチング方法。
[22]下記式(1−35)で表されるアゾ色素化合物。
【化8】

[23]下記式(1−36)で表されるアゾ色素化合物。
【化9】

[24]下記式(1−37)で表されるアゾ色素化合物。
【化10】

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターン露光するだけで、換言すれば現像液による現像工程を経ることなく、エッチング用マスクを形成することができるので、各種の半導体装置を作製するプロセスで複数回行われるフォトリソグラフィ工程の各現像工程を除くことができ、これにより大幅な簡便化を達成できる。
更に本発明において使用されるフォトレジスト用化合物は、塗布適性に優れた溶媒に対し高い溶解性を示し得るため、膜形成が容易である。更に形成された膜では、パターン露光後もピットや低耐久性部の形状を良好に維持され得るため、パターン露光後の膜をエッチング用マスクとして使用することにより、精密な微細加工が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[フォトレジスト材料]
本発明のフォトレジスト材料は、フォトレジスト用化合物として、下記一般式(1)で表される、イオン性基と対塩を有するアゾ色素を含むものである。
【0014】
【化11】

[一般式(1)中、Ap-は、p価のアゾ色素アニオンを表し、pは1〜5の範囲の整数を表し、Xq+は、q価のカチオンを表し、qは1〜5の範囲の整数を表し、k’は分子全体の電荷を中和するために必要なXq+の数を表し、但し、一般式(1)で表されるアゾ色素は分子内に金属イオンを含有しない。]
【0015】
本発明者らは、上記一般式(1)で表されるアゾ色素を含有する塗布膜は、部分的に光照射されると光照射部分が局所的に物性変化し、光照射前の塗布膜に比べて耐エッチング性が低下することを見出し、更に、この塗布膜がエッチング用マスクとして機能し得ることを新たに見出した。この現象について、本発明者らは以下のように推定している。
上記一般式(1)で表されるアゾ色素を含有する塗布膜へ、例えばレーザービームでスポット状に光を照射すると、光照射部分において前記アゾ色素が発熱する。この発熱によって前記アゾ色素が熱分解などの物性変化を起こす結果、塗布膜では光照射部分が局所的に物理的および/または化学的に変化し、ピット(開口)や局所的に耐久性が低下した部分(低耐久性部)が形成されるものと考えられる。ピットが形成された塗布膜は、エッチング用マスクとして機能することはもちろんのこと、低耐久性部はエッチング工程でより容易に食刻されるため、パターン露光で低耐久性部を形成した塗布膜もエッチング用マスクとして機能し得る。また、前記アゾ色素を含む塗布膜それ自体は耐エッチング性に優れ、エッチングに対する耐久性膜として良好に機能し得ることも判明した。即ち、前記アゾ色素は、ポジ型耐エッチングレジスト材料として使用することができる。前述のように、上記耐エッチングレジスト材料は、光照射によりピットや低耐久性部の形成が可能なヒートモード型のレジスト材料として使用することができる。ここで、エッチングの方法は、ドライエッチングでもウェットエッチングでもかまわない。特にドライエッチングに適用すると、ウェットエッチング液の洗浄工程が不要なため好ましい。
特に、本発明者らが上記一般式(1)で表されるアゾ色素を含有する塗布膜のレーザー光による照射中の挙動を観察したところ、レーザービームの光照射部分の中心部での温度上昇とともに周辺部分で温度低下する現象が確認された。この周辺部分の温度低下の理由は定かではないが、この周辺部の温度低下によって、レーザー光照射部の中心部では熱分解によるピット形成や低耐久性部形成が起こるものの周辺部への物性変化の広がりが抑えられるため、レーザー光でパターン露光するとレーザービームのビーム径よりも小径のパターンが塗布膜に形成できるものと考えられる。従って、塗布膜へのレーザー光によるパターン露光により、そのレーザービーム径が照射した領域よりも一段と狭い小径の露光領域のみが低耐久性部となり、結果的にレーザー光のビーム径よりも細いビームでパターン露光した場合と同様の微細なパターン露光が達成できる。
更に、上記一般式(1)で表されるアゾ色素を含む塗布膜は、パターン露光によりその照射部にピットまたは低耐久性部が形成されるので、パターン露光後の現像処理が不要であり、パターン露光の次にエッチング工程を行うことができる。
本発明における「フォトレジスト」とは、このようなパターン露光によって生ずる熱によってレジストパターンを形成する態様も含むものである。
【0016】
一般式(1)で表されるアゾ色素は、イオン性基を有し、対塩を持つこと、および分子内に金属イオンを含有しないことを特徴とする。色素にイオン性基と対塩を持たせることで、分子間の静電的相互作用によりアモルファス膜安定性が向上し、色素膜が安定に存在できる。更には、塗布溶剤への溶解性、特にアルコール類等の塗布性に優れる溶剤への溶解性も向上する。また、一般式(1)で表されるアゾ色素の融点は、熱分解温度より高温領域に存在し得る。このように熱分解温度より低温領域に融点が存在しないことにより、膜が熱分解温度付近まで軟化しなくなることが、加工穴をきれいに形成することが出来る理由と推定される。更に、一般式(1)で表されるアゾ色素は分子内に金属イオンを含有しないことにより、被加工面の金属汚染を防ぐことが出来る。更には、均一なエッチングが可能となると推定している。
【0017】
以上説明したように、前記アゾ色素をフォトレジスト用化合物として含む本発明のフォトレジスト材料は、パターン露光後の現像処理が不要であり、パターン露光の次にエッチング工程を行うことができるうえに、各種塗布溶媒に対する溶解性に優れ、膜形成が容易であり、フォトレジスト材料として優れた特性を兼ね備えている。
【0018】
以下、一般式(1)で表されるアゾ色素について、更に詳細に説明する。なお、通常の塩は陽イオンと陰イオンとは独立しており、溶媒に溶解するとそれぞれのイオンは分離されるが、分子内塩(アニオンとカチオンが共有結合を形成)では溶媒に溶解しても分子同士が解離するだけで共有結合で結ばれた陽イオンと陰イオンとは対になったままである。前記一般式(1)で表されるアゾ色素からは、分子内塩を形成する態様は除くものとする。
【0019】
一般式(1)中、pは1〜5の範囲の整数を表し、1〜4であることが好ましく、1〜2であることが特に好ましい。
【0020】
一般式(1)中、qは1〜5の範囲の整数を表し、1〜4であることが好ましく、1〜2であることが特に好ましい。
【0021】
一般式(1)中、k’は分子全体の電荷を中和するために必要なXq+の数を表す。好ましくは、k’はAで表されるアニオン性部位中の負電荷pをqで割った値を表し、より好ましくは0<k’≦5の範囲である。
【0022】
一般式(1)中、Xq+は、q価のカチオンを表し、金属イオンを含有しないアゾ色素とするために金属錯体カチオン以外のカチオンとする。
【0023】
前記カチオンとしては、金属イオンを含有しない点以外、特に限定されるものではないが、例えば、アンモニウムカチオン、下記一般式(2)で表されるカチオン、下記一般式(2)に含まれない含窒素芳香族ヘテロ環の環内窒素上に正電荷を有するカチオン、およびホスホニウムカチオンが挙げられ、アンモニウムカチオン、下記一般式(2)に含まれない含窒素芳香族ヘテロ環の環内窒素上に正電荷を有するカチオン、およびホスホニウムカチオンであることが好ましく、アンモニウムカチオン、および下記一般式(2)に含まれない含窒素芳香族ヘテロ環の環内窒素上に正電荷を有するカチオンであることが更に好ましい。以下に、その詳細を説明する。
【0024】
まず、一般式(2)について説明する。
【0025】
【化12】

【0026】
一般式(2)中、R21〜R25は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R21〜R25のいずれか2つ以上が互いに結合して環を形成してもよい。
【0027】
21で表される置換基としては特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
【0028】
更に詳しくは、R21は、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2―ピリジルカルボニル基、2―フリルカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表す。
【0029】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0030】
21は、水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、溶解性の観点から炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基がより好ましい。アルキル基としては、炭素数3〜6の分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜6の3級アルキル基がより好ましい。
【0031】
22〜R25で表される置換基としては、特に限定されないが、前記R21について例示した置換基が挙げられる。置換基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。
【0032】
21〜R25は、互いに結合して環を形成してもよい。R21〜R25のいずれか2つ以上が結合して環を形成することが好ましい。
【0033】
一般式(2)で表されるカチオンの具体例としては、イミダゾリウムカチオン、アミジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0034】
イミダゾリウムカチオンとしては、以下の化合物群が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化13】

【0036】
アミジニウムカチオンとしては、以下の化合物群が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化14】

【0038】
ピリミジニウムカチオンとしては、以下の化合物群が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
【化15】

【0040】
次に、一般式(2)に含まれない含窒素芳香族ヘテロ環の環内窒素上に正電荷を有するカチオンについて説明する。
【0041】
一般式(2)に含まれない含窒素芳香族ヘテロ環の環内窒素上に正電荷を有するカチオンとしては、含窒素芳香族ヘテロ環(例えば、ピリジン環、ピリダジン環、トリアジン環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環等)の環上に含まれる−N=の窒素原子上に正電荷を有するカチオンであればよく、特に限定されない。前記カチオンとしては、膜安定性の観点で、ピリジニウムカチオン、オキサゾリウムカチオン、チアゾリウムカチオンが好ましく、ピリジニウムカチオンがより好ましい。
【0042】
ピリジニウムカチオンとしては、以下の例に挙げる化合物群のように、分子間水素結合性基を有するもの、キノリニウム等の縮環構造を有するもの、ビスピリジニウム骨格を有するもの、剛直な構造を有するもの等が挙げられる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化16】

【0044】
【化17】

【0045】
チアゾリウムカチオンおよびオキサゾリウムカチオンとしては、以下の化合物群が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
【化18】

【0047】
次に、ホスホニウムカチオンについて説明する。
ホスホニウムカチオンとしては、以下の化合物群が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化19】

【0049】
次に、アンモニウムカチオンについて説明する。
アンモニウムカチオンとしては、下記一般式(3)で表されるアンモニウムカチオンであることが好ましい。
【0050】
【化20】

【0051】
以下に、一般式(3)について説明する。
41〜R44は、各々独立に水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。R41〜R44は、連結基を介して互いに結合してもよい。
【0052】
更に詳しくは、R41〜R44は、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基)を表す。これらはさらに置換基を有していてもよい。
【0053】
41〜R44のうち少なくとも一つが、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。
【0054】
以下に、一般式(3)で表されるアンモニウムカチオンの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
【化21】

【0056】
一般式(1)中のXq+で表されるカチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、アミジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、およびホスホニウムカチオンが好ましく、ピリジニウムカチオン、およびアンモニウムカチオンがより好ましい。その中でも、2価のピリジニウムカチオンが特に好ましい。
【0057】
次に、一般式(1)中のAp-で表されるアニオン部位について説明する。
【0058】
一般式(1)中のAp-は、p価のアゾ色素アニオン、即ち、一般式(A)で表されるアゾ色素の水素原子がp個解離したアニオンである。
【0059】
【化22】

[一般式(1)中、BおよびCは、それぞれ独立に置換基を表す。]
【0060】
一般式(A)は、分子内に金属イオンを含まないことを特徴とし、対塩交換、または酸塩基反応により色素のイオン化を行うため、BおよびCの少なくとも一方に、pKaが18以下となる置換基を有することが好ましい。より好ましくはpKaが15以下であり、更に好ましくはpKaが12以下であり、よりいっそう好ましくはpKaが8以下であり、特に好ましくはpKaが5以下である。置換基として好ましいものは、−COOH基、―SO3H基である。即ち、一般式(1)中、Ap-で表されるアゾ色素アニオンは、COO-基および/または−SO3-基を含有することが好ましい。
【0061】
一般式(A)中のBは、下記一般式(B)で表されることが好ましい。
【0062】
【化23】

【0063】
一般式(B)中、Qは隣り合う2つの炭素原子とともに含窒素へテロ環を形成する基を表す。Yは−NR12または−OR3で表される基を表し、R1、R2およびR3は各々独立に水素原子または置換基を表す。R1および/またはR2がQ上の置換基と結合して環を形成していてもよい。*は−N=N−基との結合位置を表す。
【0064】
Qによって形成される含窒素へテロ環は、置換基を有していても無置換であってもよく特に限定されないが、例えば、ピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環等が挙げられる。これらの環はさらに縮環していてもよい。
【0065】
Qによって形成される含窒素へテロ環は、好ましくは、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、およびピリジン環であり、より好ましくは、ピラゾール環、オキサゾール環であり、さらに好ましくはピラゾール環である。
【0066】
Qによって形成される含窒素へテロ環は、置換基を有していることが好ましく、その置換基としては特に限定されないが、例えば、後述のR1〜R3で表される置換基が挙げられる。上記置換基としては、−COOH基、−SO3H基、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる)、またはアリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピリジル基、チアゾール基、オキサゾール、トリアゾール基等が挙げられる。)が好ましい。これらの置換基はさらに置換されてもよい。更に置換する置換基としては、−COOH基、−SO3H基が特に好ましい。
【0067】
1〜R3は各々独立に水素原子または置換基を表す。R1〜R3で表される置換基としては特に限定されないが、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基等が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピリジル基、チアゾール基、オキサゾール、トリアゾール基等が挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基、トリフルオロメチルカルボニル基等が挙げられる。)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等が挙げられる。)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばフェニルスルホニル基等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。)、アミノカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばN,N−ジメチルアミノカルボニル基、N,N−ジエチルカルボニル基等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニル基等が挙げられる。)、アルコキシスルホニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等が挙げられる。)、アミノスルホニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばN,N−ジメチルアミノスルホニル基、N,N−ジエチルアミノスルホニル基等が挙げられる。)、芳香族ではないヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。具体的には、例えば、ピペリジル基、モルホリノ基等が挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる)等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換されてもよい。
【0068】
一般式(A)中のCは、含窒素へテロ環基であることが好ましい。
【0069】
Cで表される含窒素へテロ環基としては、特に限定されないが、例えば、ピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環等が挙げられる。これらの環はさらに縮環していてもよい。
【0070】
Cで表される含窒素へテロ環基は、好ましくは、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環であり、より好ましくはピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環であり、さらに好ましくは、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環である。チアジアゾール環としては、1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールがあり、いずれも好ましい。ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環の置換基としては、特に限定されないが、前記R1〜R3で挙げられた置換基、−COOH基、−SO3H基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、フェノキシ基、チオフェノキシ基等が挙げられ、中でも、−COOH基、−SO3H基、アルキル基、チオアルコキシ基、アリール基が好ましい。アルキル基としては、溶解性、膜安定性の観点から、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましく、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基がより好ましく、tert−ブチル基がさらに好ましい。さらに、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環の置換基としては、耐光性向上の観点から、環上の炭素に結合する置換基としてシアノ基を少なくとも一つ有することが好ましい。これらの置換基はさらに置換されてもよい。更に置換する置換基としては、−COOH基、−SO3H基が特に好ましい。
【0071】
一般式(A)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物(A−1)〜(A−33)が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
【化24】

【0073】
【化25】

【0074】
【化26】

【0075】
【化27】

【0076】
【化28】

【0077】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、以下の表1の化合物(1−1)〜(1−42)が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
【表1】







【0079】
前記フォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト膜は、パターン露光することにより加工穴(ピット乃至低耐久性部)の形成が可能であるため、現像工程を経ることなくエッチング用マスクとして使用することができる。該エッチング用マスクの耐エッチング性、エッチング用マスク作製時の作業性(例えばパターン露光中にフォトレジスト膜からの飛散物が少ないこと)、および/または、エッチング用マスクに形成される加工穴形状(例えば後述するアスペクト比が高いこと)の観点から好ましいフォトレジスト用化合物としては、
(i)一般式(1)中のXq+で表されるカチオンがピリジニウムカチオンであること;
(ii)一般式(A)中のCで表される含窒素ヘテロ環基がピラゾール環を含むこと;
(iii)一般式(B)中のQが隣り合う2つの炭素原子とともに形成する含窒素へテロ環がピラゾール環であること;
(iv)一般式(B)中のYが−NH2であること;
のいずれか1つ以上(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、特に好ましくはすべて)を満たす、一般式(1)で表されるアゾ色素を挙げることができる。
【0080】
上記観点から、前記ピリジニウムカチオンは前記式(X−15)により表されるピリジニウムカチオンであることが好ましい。また、同様の理由から、一般式(A)中のCで表される含窒素ヘテロ環基に含まれるピラゾール環は、環上の炭素に結合する置換基としてシアノ基を含み、かつ環上の窒素に結合する置換基として置換または無置換のフェニル基を含むことが好ましい。ここでフェニル基に置換し得る置換基としては、前述の通り−COOH基または−SO3H基を挙げることができ、好ましくは−COOH基である。
【0081】
また、同様に上記観点から一般式(B)中のQが隣り合う2つの炭素原子とともに形成する含窒素へテロ環は、環上の炭素に結合する置換基としてtert−ブチル基を含むピラゾール環であることが好ましい。
【0082】
上記観点から、特に好ましいフォトレジスト用化合物としては、下記一般式(C)で表されるアゾ色素アニオンと、対塩として前記式(X−15)で表されるピリジニウムカチオンと、を有するアゾ色素化合物を挙げることができる。
【0083】
【化29】

【0084】
一般式(C)中、R101は置換または無置換のフェニル基を表す。置換基としては、アニオン性基を挙げることができ、−COO-基または−SO3-基が好ましく、特に好ましくは−COO-基である。
【0085】
一般式(C)中、R100およびR102は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。置換基としては、更に置換基を有していてもよいアルキル基またはフェニル基を挙げることができる。上記置換基に含まれる置換基としては、アニオン性基を挙げることができ、−COO-基または−SO3-基が好ましく、特に好ましくは−COO-基である。
【0086】
一般式(C)で表されるアゾ色素アニオンは、R100〜R102の1つ以上にアニオン性基が含まれ、これにより対塩である式(X−15)で表されるピリジニウムカチオンの正電荷を中和し得る。
【0087】
更に、上記観点から最も好ましいフォトレジスト用化合物としては、一般式(1)中のXq+が前記式(X−15)により表されるピリジニウムカチオンであり、Ap-が下記アゾ色素アニオンのいずれかであるもの、即ち、表1に示した例示化合物(1−2)、(1−35)、(1−36)、(1−37)を挙げることができる。
【0088】
【化30】

【0089】
一般式(A)で表されるアゾ色素の一般的合成法としては、特開昭61−36362号公報および特開2006−57076号公報に記載の方法が挙げられる。ただし、これに限定するものではなく、他の酸、反応溶媒を用いてもよく、また、カップリング反応を塩基(例えば、酢酸ナトリウム、ピリジン、水酸化ナトリウム等)存在下で行ってもよい。本発明において使用可能なアゾ化合物の合成方法の具体例を、以下に示す。本発明において使用可能な種々のアゾ化合物は同様の方法により合成できる。
【0090】
【化31】

【0091】
【化32】

【0092】
一般式(1)で表されるアゾ色素は、一般的に行われているジアゾカップリング、次いで対塩交換、または酸塩基反応による色素のイオン化で合成できる。合成方法については、後述の実施例を参照できる。
【0093】
前記フォトレジスト用化合物としては、パターン露光に使用される光の波長に応じて最適なものを選択することができる。
【0094】
例えば、最大吸収波長(λmax)については、一般的な指標としては、使用されるレーザー光の波長がλnmの場合、パターン露光によるフォトレジスト膜が効率よく分解または変性するという理由から、λ±150nmの範囲に、より好ましくはλ±100nmの範囲にλmaxを有するものから選ぶことができる。例えば、波長が650nmの半導体レーザー光を使用する場合には、最大吸収波長が500nm〜800nmの範囲、より好ましくは550nm〜750nmの範囲にあるフォトレジスト用化合物から選択することができる。また、波長が405nmの半導体レーザー光を使用する場合には、最大吸収波長が255nm〜555nmの範囲、より好ましくは305nm〜505nmの範囲にあるフォトレジスト用化合物から選択することができる。
ここで、上記最大吸収波長(λmax)とは、フォトレジスト用化合物をテトラフルオロプロパノールに溶解した溶液を基板上にスピンコートし、乾燥して得られた膜の最大吸収波長(λmax)を言う。
【0095】
更に、レーザーによるパターン露光時の感度の点から、前記フォトレジスト用化合物の熱分解温度は、100℃以上600℃以下であることが好ましく、120℃以上550℃以下であることがより好ましく、150℃以上500℃以下であることが最も好ましい。
【0096】
本発明における熱分解温度は、TG/DTA測定によって求められる値をいうものとする。具体的には、例えばSeiko Instruments Inc.製EXSTAR6000を用い、N2気流下(流量200ml/min)、30℃〜550℃の範囲において10℃/minで昇温を行い、質量減少率が10%に達した時点の温度として熱分解温度を求めることができる。
【0097】
前記フォトレジスト用化合物は、先に説明したように、例えばレーザービームでスポット状に光を照射すると、光照射部分において発熱する。この発熱によって熱分解などの物性変化を起こす結果、前記フォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト膜では、光照射部分が局所的に物理的および/または化学的に変化し、ピット(開口)や局所的に耐久性が低下した部分(低耐久性部)が形成されるものと考えられる。フォトレジストには、パターン露光後に露光部が除去されるタイプ(ポジ型)と未露光部が除去されるタイプ(ネガ型)がある。前記フォトレジスト用化合物は、ポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができ、より詳しくは、パターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができる。
【0098】
本発明は、以上説明したフォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト材料に関するものである。本発明のフォトレジスト材料は、その機能を前記フォトレジスト用化合物が担うために前記フォトレジスト用化合物を主成分として含むことが好ましい。本発明において、フォトレジスト材料について、「主成分」とは、フォトレジスト材料に含まれる全固形分の質量を基準として含有量が最も多い成分であることをいい、例えば、全固形分を基準として50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上を占める成分をいう。その上限値は、例えば100質量%である。本発明のフォトレジスト材料は、前記フォトレジスト用化合物を1種または2種以上含むことができる。前記フォトレジスト用化合物を2種以含む場合には、上記含有量はそれらの合計量を言うものとする。
【0099】
本発明のフォトレジスト材料の一態様としては、フォトレジスト樹脂組成物を挙げることができ、他の態様としては、フォトレジスト液を挙げることができる。前記フォトレジスト樹脂組成物は、前記フォトレジスト用化合物と樹脂成分を含むことができる。好適な樹脂成分としては、フォトレジスト液の結合剤として後述する各種樹脂を挙げることができる。また、前記樹脂組成物には、フォトレジスト液の添加剤として後述する各種成分を使用することもできる。
【0100】
一方、前記フォトレジスト液は、好ましくは溶剤を含む。溶剤としては、使用するフォトレジスト用化合物の良溶媒を用いることが好ましい。更に、上記成分に加えて任意に他成分を含むことができる。加工性に優れたレジスト膜を形成するためには、前記フォトレジスト液中の上記フォトレジスト用化合物の含有量は、フォトレジスト液に含まれる全固形分を基準として50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。その上限値は、例えば100質量%である。
【0101】
本発明のフォトレジスト材料の好ましい態様は、フォトレジスト液である。即ち、本発明は、前記フォトレジスト用化合物を含むフォトレジスト液に関する。
【0102】
本発明のフォトレジスト液中の全固形分の濃度は、塗布性(例えば、塗布および溶媒除去後の膜厚が所望の範囲内に収まること、当該膜厚が被加工表面全体に均一性であること、被加工表面に多少の凹凸があっても当該凹凸に追随して均一な厚みの塗膜が形成されること、等)等を考慮すると、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.4質量%以上5質量%以下であり、更に好ましくは0.7質量%以上2質量%以下である。
【0103】
本発明のフォトレジスト液に使用可能な溶媒は、スピンコート法による塗布性を考慮すると、塗布時に適度な揮発性を有するものであることが好ましく、製造適性上、以下のような物性を有することが更に好ましい。
1.沸点が60℃以上300℃以下であることが好ましく、70℃以上250℃以下であることがより好ましく、80℃以上200℃以下であることが最も好ましい。
2.粘度が0.1cP以上100cP以下であることが好ましく、0.5cP以上50cP以下であることがより好ましく、1cP以上10cP以下であることが最も好ましい。
3.引火点が25℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、35℃以上であることが最も好ましい。
【0104】
上記溶媒の具体的な例としては、炭化水素類(シクロヘキサン、1,1−ジメチルシクロヘキサンなど)、アルコール類(ブタノール、ジアセトンアルコール、テトラフルオロプロパノールなど)、グリコールエーテル類(メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、エステル類(酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなど)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、ニトリル類(プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、スルホン類(ジメチルスルホキシドなど)カルボン酸類(酢酸など)、アミン類(トリエチルアミンなど)、ハロゲン類(トリクロロメタン、ハイドロフルオロカーボンなど)、芳香属類(トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。これらの内、特に好ましいものは、その塗布性から、アルコール類またはグリコールエーテル類である。本発明のフォトレジスト材料に含まれるフォトレジスト用化合物は、上記塗布性に優れる溶媒に対して高い溶解性を示し得るため、上記溶媒を使用し結晶化を起こすことなく膜形成が可能である。上記溶媒は、単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
【0105】
本発明のフォトレジスト液は、少なくとも固形分として前記化合物を含むものであればよいが、必要に応じてその他の成分を含有させてもよい。但し、その他の成分の総量は、前記化合物に対して質量比で1倍量以下とすることが好ましい。
その他の成分の例としては、結合剤、退色防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等を挙げることができる。結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子、を挙げることができる。本発明のフォトレジスト液に結合剤を添加する場合、結合剤の添加量は、前記フォトレジスト用化合物に対して、質量比で、0.01倍〜1倍量とすることが好ましく、0.1倍量〜0.5倍量とすることが更に好ましい。
【0106】
本発明のフォトレジスト材料に含まれるフォトレジスト用化合物は、一般的に、通常の室内照明環境下では分解または変性しないので、従来のフォトレジストのような安全灯(例えば、紫外線またはそれよりも短波長の光をカットした照明)の下で使用する必要はない。しかし、このような通常の室内環境の照明下で使用する場合には、フォトレジスト液には、耐光性に優れたレジスト膜を形成するために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、および同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、前記フォトレジスト用化合物の量に対して、例えば0.1〜50質量%の範囲とすることができ、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲とすることができる。
【0107】
また、後述するように、本発明のフォトレジスト液によれば、現像工程を経ることなくエッチング用マスクを形成することができる。従って、現像工程を要する通常のフォトポリマータイプのレジスト液に必須成分として含まれるo−ナフトキノンジアジトスルホン酸エステルとノボラック樹脂の組合せ成分、光酸発生剤と酸分解性化合物との組合せ成分、光塩基発生剤と塩基分解性化合物との組合せ成分、光ラジカル発生剤と付加重合成不飽和化合物との組合せ成分は、本発明のフォトレジスト液における必須成分ではなく、本発明のフォトレジスト液は、これら成分を含有しないことが好ましい。
【0108】
本発明のフォトレジスト材料およびフォトレジスト液は、前記フォトレジスト用化合物を、必要に応じて上記成分と混合することにより得ることができる。
【0109】
前述のように、前記フォトレジスト用化合物は、ポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができ、好ましくはパターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができる。したがって、上記化合物を含む本発明のフォトレジスト材料は、ポジ型フォトレジスト材料であることができ、好ましくはパターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト材料であることができる。同様に、本発明のフォトレジスト液は、ポジ型フォトレジスト液であることができ、好ましくはパターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト液であることができる。
【0110】
本発明のフォトレジスト液は、その固形分の全量が前記フォトレジスト用化合物から構成される態様が、スピンコーティング工程で被加工表面の設けられた後の余分なフォトレジスト液(例えば、スピンコート時に被加工表面から振り落とされたフォトレジスト液)を回収して再利用することが容易となるという点で、特に好ましい。本発明のフォトレジスト液を塗布することによりフォトレジスト膜を形成する方法の詳細は後述する。
【0111】
本発明のフォトレジスト液は、微細加工が必要とされる用途であれば、どのような用途にも適用することができる。例えば、LSI、LED、CCD、太陽電池などの半導体装置の製造工程、液晶、PDP、ELなどのFPDの製造工程、レンズ、フィルムなどの光学部材の製造工程などの種々の工程において、従来のフォトレジスト液に代えて使用することができる。即ち、従来のフォトレジスト液の塗布および溶媒除去工程、パターン露光工程および現像工程に代えて、本発明のフォトレジスト液の塗布および溶媒除去工程ならびにパターン露光工程を使用することができる。
【0112】
本発明のフォトレジスト液は、ナノインプリント用のマスターの作製する工程においても、使用することができる。
【0113】
更に、本発明のフォトレジスト液は、LED用のチップの表面、裏面(例えば、サファイア基板など)、側面などの面に微細な凹凸を形成して、LEDの光取り出し効率を向上させるために使用することができる。一般に、LED用チップの光取出し口となる最外層(例えば電流拡散層または透明電極など)を構成する材料とパッケージ用の樹脂とは屈折率が相違し、例えば電流拡散層の場合にはその屈折率が3以上あるのに対して、後者のパッケージ用樹脂の屈折率は1.5前後である。このような屈折率の大きな部分から屈折率の小さな部分に光を取り出す場合には、その界面で光が反射してしまい、光の取り出し効率が低下してしまうが、その界面を微細な凹凸とすることにより、光の取り出し効率を向上させることができる。そこで、LED用チップの光取出し口となる層(例えば、電流拡散層)を形成した後に、この層の表面に本発明のフォトレジスト液を塗布し、溶媒を除去してフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜に所望の微細凹凸パターンの凹部に相当する部分のみレーザー光を照射するパターン露光を行い、引き続いてエッチングを行って、上記のレーザー光を照射した部分に対応する取り出し口の表面をエッチングして凹部を形成することにより、取り出し口に微細凹凸を形成することができる。その後、必要なプロセス(例えば電流拡散層の表面に電極を形成するプロセス)を経てLED用チップを完成させることができる。このようして得られたLEDチップの光取出し口は、表面に微細な凹凸を有する。このLED素子をパッケージしてLEDとしたものは、パッケージ用樹脂と光取出し口の界面に微細な凹凸が形成されているので、その界面での反射の少ない、光取り出し効率の良いLEDを作製することができる。このように、屈折率の大きい部分から小さい部分へ取り出す場合、その界面に微細な凹凸を設けることにより光取出し効率を高めることができる。この発光部界面に形成すべき凹部の深さhおよび直径dについては、発光部で発生する光の散乱・回折が生じるサイズであればよく、好ましくは発光波長の4分の1以上であり、散乱理論に基づいて設計することができる。
【0114】
上記のように、被加工表面に微細な凹凸を形成する場合、その表面上に本発明のフォトレジスト液を用いてフォトレジスト膜を形成し、レーザーにより微細パターンの露光を行い、これをマスクにしてRIEなどにより被加工表面に上記微パターンに相当する細凹凸を形成することができる。また、被加工表面の上にマスク層を設け、その上に本発明のフォトレジスト液を用いてフォトレジスト膜を形成し、これをレーザーで微細加工し、その後RIEによりマスク層に微細穴を形成し、更にこの微細穴が形成されたマスク層を介して被加工表面をICP(誘導結合プラズマ)でより深くエッチングすることも可能である。このようなマスク層を利用するエッチング方法は、被加工表面がサファイアーのような硬くエッチングされにくい場合に有利な方法である。マスク層としては、SiO2、TiO2、SiN、SiON、など無機の酸化膜や窒化膜などが好ましい。
【0115】
更に本発明のフォトレジスト液を用いて形成されるフォトレジスト膜の厚さtと、凹部の直径dとは、使用するフォトレジスト用化合物の種類、被加工表面の材質、選択比等のエッチング工程の条件に応じて設定することができる。レーザー記録時の光学特性もまた考慮して設定されるべきである。好ましい範囲として、レジスト層の厚みtの上限値は、t<100dを満たす値であり、更に好ましくはt<10dを満たす値であり、また下限値はt>d/100を満たす値が好ましく、t>d/10を満たす値が更に好ましい。
【0116】
また、本発明のフォトレジスト材料は、ポジ型耐エッチングレジスト材料として使用することもできる。ポジ型耐エッチングレジスト材料としての本発明のフォトレジスト材料は、光照射によりピットや低耐久性部の形成が可能なヒートモード型のレジスト材料として使用することができ、現像工程の不要な耐エッチングレジスト材料として使用することが好適である。耐エッチングレジスト材料としての本発明のフォトレジスト材料の詳細は、前述の通りである。
【0117】
[フォトレジスト膜]
本発明のフォトレジスト膜は、前記フォトレジスト用化合物を含む本発明のフォトレジスト材料から形成されたものである。本発明のフォトレジスト膜は、その機能を前記フォトレジスト用化合物が担うために、前記フォトレジスト用化合物を主成分として含むことが好ましい。本発明において、フォトレジスト膜について「主成分」とは、フォトレジスト膜の総質量中、最も多く含まれる成分をいい、例えば総質量を基準として50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上を占める成分をいう。その上限値は、例えば100質量%である。
【0118】
本発明のフォトレジスト膜は、樹脂組成物としての本発明のフォトレジスト材料を、押出成形等の公知の成形方法でフィルム状に成膜したものであってもよく、本発明のフォトレジスト液を塗布することにより形成された塗布膜であってもよい。本発明のフォトレジスト膜は、好ましくは、本発明のフォトレジスト液を、処理対象となる表面上に塗布し、溶媒を蒸発させて除くことにより形成することができる。塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。生産性に優れ膜厚のコントロールが容易であるという点でスピンコート法を用いることが好ましい。塗布されたフォトレジスト液から溶媒を除く方法は、従来より知られている方法を使用することができる。例えば、スピンコート法で塗布した場合には、そのままスピンの回転数を上昇させることにより溶媒を蒸発させることができる。その際、塗布面にノズルから気体を吹き付けて溶媒の蒸発を促進させてもよい。更に従来のフォトレジストの塗布プロセスと同様に、スピンコートされたフォトレジスト液膜を加熱(ベーキング)する、所謂プリベークをしてもよい。溶媒を除去する方法としては、フォトレジスト液をスピンコート法で塗布し、そのままスピンの回転数を上昇させて溶媒を除く方法が特に好ましい。この場合、さらに加熱するアニール処理をすることが好ましい。アニール処理は、フォトレジスト膜としての強度や安定性を増す効果がある。その加熱温度下限は、例えば55℃以上、好ましくは65℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、その加熱温度上限は、例えば200℃以下、好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下である。時間の下限は、例えば5分以上、好ましくは15分以上、更に好ましくは30分以上であり、上限は、例えば4時間以下、好ましくは2時間以下、更に好ましくは1時間以下である。このような範囲の条件下でアニールすることにより、生産性を低下させることなく、フォトレジスト膜としての強度と安定性を上昇させることができる。
【0119】
本発明のフォトレジスト膜に含まれ得る各種成分については、先に本発明のフォトレジスト材料について述べた通りである。また、本発明のフォトレジスト膜の用途等の詳細は、前述および後述の通りである。本発明のフォトレジスト膜の厚さは、例えば後述する範囲に設定することができるが、用途に応じて最適な厚さに設定すればよく特に限定されるものではない。
【0120】
前述のように、前記フォトレジスト用化合物は、ポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができ、好ましくはパターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト用化合物として使用することができる。したがって、上記化合物を含む本発明のフォトレジスト膜は、ポジ型フォトレジスト膜であることができ、好ましくはパターン露光後の現像工程が不要なポジ型フォトレジスト膜であることができる。
【0121】
[被加工表面のエッチング方法]
更に本発明は、被加工表面のエッチング方法に関する。本発明のエッチング方法は、本発明のフォトレジスト膜を被加工表面上に配置すること、上記フォトレジスト膜にパターン露光すること、および、上記パターン露光後のフォトレジスト膜を有する被加工表面の少なくとも一部にエッチング処理を施し、上記パターン露光において露光された部分に対応する領域における被加工表面の少なくとも一部をエッチングすること、を含む。前記フォトレジスト膜は、本発明のフォトレジスト液を被加工表面に塗布することにより形成することが好ましいが、本発明のフォトレジスト材料を用いて成膜したフォトレジスト膜を、被加工表面上に積層することも可能である。
【0122】
パターン露光されたフォトレジスト膜には、パターン露光時の露光部分のフォトレジスト膜にピットが形成されるか、または低耐久性部のような局部的な物性変化を起こした部分が形成される。エッチング処理では、フォトレジスト膜のピットおよび/または低耐久性部に相当する被加工表面が優先的にエッチングされ、更にその下にある被加工表面もエッチングされて凹部となる。こうして、パターン露光において露光された部分に対応する領域における被加工表面の少なくとも一部をエッチングし、被加工表面に微細な凹凸を形成することができる。また、被加工表面が複数の薄層を有する場合には、その薄層の少なくとも一層をパターン状に除去することもできる。これを利用して、種々の半導体装置を製造することができる。
【0123】
パターン露光は、公知のステッパーを使用してフォトマスクを介して露光する方法を採用することもできるが、レーザー光のビームをパルス変調し、その変調されたレーザービームをレンズを介して絞り込み、その焦点がフォトレジスト膜となるようにしてパターン露光することが好ましい。そのような光照射を行うためのパターン露光装置としては、光ディスクへの情報記録に使用される記録装置が好適である。但し、必要な大きさに集光できれば、レーザー光のような単色光でなくても構わない。
【0124】
レーザー光の種類としては、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザーなど、どのようなレーザーであってもよい。ただし、光学系を簡単にするために、固体レーザーや半導体レーザーを採用することが好ましく、装置の小型化の点で半導体レーザーを採用することが特に好ましい。レーザー光は、連続光でもパルス光でもよいが、自在に発光間隔が変更可能なレーザー光を採用することが好ましい。そのようなレーザーとしては、半導体レーザーを挙げることができる。また、レーザーを直接オンオフ変調できない場合は外部変調素子によって変調することが好ましい。
【0125】
レーザーパワーは、加工速度を高めるためには高い方が好ましい。ただし、レーザーパワーを高めるにつれ、スキャン速度(レーザー光で塗布膜を走査する速度;例えば、後述する光ディスクドライブの回転速度)を上げなければならない。そのため、レーザーパワーの上限値は、スキャン速度の上限値を考慮して、100Wが好ましく、10Wがより好ましく、5Wが更に好ましく、1Wが最も好ましい。また、レーザーパワーの下限値は、0.1mWが好ましく、0.5mWがより好ましく、1mWが更に好ましい。
【0126】
さらに、レーザー光は、発信波長幅およびコヒーレンシが優れていて、波長並みのスポットサイズに絞ることができるような光であることが好ましい。また、光パルス照射条件は、一般に光ディスクで使われているようなストラテジを採用することが好ましい。すなわち、光ディスクで使われているような、記録速度や照射するレーザー光の波高値、パルス幅などの条件を採用することが好ましい。
【0127】
前記レーザー光は、例えば赤外線、可視光線、紫外線、X線などであり、被加工物が吸収を有する波長のレーザー光が選択される。例えば、容易に得られるレーザーの波長である、1064±30nm、800±50nm、670±30nm、532±30nm、405nm±50nm、266±30nm、200±30nmが好ましい。中でも半導体レーザーで大出力が可能な、780±30nm、660±20nm、または405±20nmが好ましい。最も好ましくは、405±10nmである。なお、低温で物性変化を起こすことができる有機物材料は、一般に、紫外域、可視域、および赤外域のいずれかの波長域に吸収を有する。光の絞れる直径は波長に依存するため、微細な加工をする際には波長が短いことが好ましい。この点から、可視域または紫外域のレーザー光を採用することが特に好ましい。
【0128】
前記レーザー光は、連続発振でもパルス発振でもよい。連続発振の場合、半導体レーザが発光オンオフを変調できるので好ましい。パルス発振の場合は、出力が高められる固体レーザが好ましい。パルス発振は、その発光時間が1nsec以下になると、熱伝導で穴が広がる影響を低減できるので好ましい。
【0129】
レーザーは、通常単独で用いられるが、複数のレーザーを合波させ、パワーを増しても構わない。また、異なる波長のレーザーを組み合わせてもよい。複数レーザーを使用する場合、片方はフォーカスなどのサーボに用い、もう片方は加工に用いることも可能である。
【0130】
本発明の被加工表面のエッチング方法では、走査しながら、レーザーを照射することが好ましい。移動と停止とを繰り返してレーザー照射を行うと、移動や停止安定までの待ち時間が長くなり、全体の加工時間が長くなるからである。
走査をスパイラル状に行い、戻って同じ場所をレーザー照射することが待ち時間がない点で好ましい。
【0131】
レーザーを走査する方法としては、一般に、rθ、ドラム、xy、およびxyzが知られているが、本発明ではいずれの方法を採用してもよい。
前記rθとは、円盤走査系と直線走査系を組み合わせて、円盤をスパイラル状や同心円状に走査する方法である。
前記ドラムとは、円筒走査系と直線走査系を組み合わせて、円筒の外または内の表面をスパイラル状や同心円状に走査する方法である。
前記xyとは、直線走査系を2つ組み合わせ、平面を走査する方法である。
前記xyzとは、直線走査系を3つ組み合わせ、立体状に走査する方法である。
【0132】
円盤状の被加工物にはrθが好ましい。ドラム状あるいはドラムに巻きつけられる平面状(フィルム状)の被加工物にはドラムが好ましい。これら以外には、xyまたはxyzが、高速走査の点で好ましい。
レーザー走査がrθである場合には、円盤状の被加工物の外周から内周に向かって走査させることが、加工時に発生する噴出物が、遠心力や風で外側に多く舞うため、その後加工や走査する場所に影響する可能性が低い点で好ましい。
レーザー走査がドラムである場合には、ドラム状の被加工物の上から下に向かって走査(未加工部が上からくる)させることが、加工時に発生する噴出物が、遠心力や風で下側に多く舞うため、その後加工や走査する場所に影響する可能性が低い点で好ましい
【0133】
光学系を塗布膜表面に対し相対的に移動させる線速は、下限が例えば0.1m/s以上であり、好ましくは1m/s以上、より好ましくは5m/s以上である。線速の上限は、例えば100m/s以下であり、好ましくは50m/s以下、より好ましくは30m/s以下、さらに好ましくは20m/s以下である。線速が高すぎると、加工精度を高くすることが困難であり、遅すぎると加工に時間が掛かる上、良好な形状に加工することが困難になるからである。光学系を含む具体的な光学加工機の一例としては、例えば、パルステック工業株式会社製NEOシリーズを挙げることができる。
【0134】
レーザー加工により形成することができるパターン(形状)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば線状、点状、面状など様々なパターンが形成できる。
【0135】
線状に加工する場合には、レーザー光を連続発光するか、またはパルス間隔の短いパルス状に照射することが好ましい。均一な線にする場合には、連続発光が好ましい。なお、点状加工時、パルス幅が長いと長円状になってしまうため、短いことが好ましい。
【0136】
前記レーザー光の周波数は、1kHz〜1,000MHzが好ましく、10kHz〜500MHzがより好ましく、100kHz〜100MHzが更に好ましい。前記周波数が、低すぎると加工能率が低下することがあり、高すぎると、微細穴乃至溝がつながってしまうことがあるからである。
【0137】
前記パターン露光時の露光信号のduty比は、1%〜50%が好ましく、3%〜40%がより好ましく、5%〜30%が更に好ましい。
【0138】
前記パターン露光により、フォトレジスト膜に、周期的に複数の加工穴(ピット乃至低耐久性部)を形成することができる。
隣接する加工穴の中心間の最短距離(ピッチ)は、0.01μm〜1,000μmが好ましく、0.05μm〜100μmがより好ましく、0.1μm〜10μmが更に好ましい。前記ピッチが狭すぎると、加工穴がつながってしまうことがあり、広すぎると、加工能率が下がることがあるからである。
【0139】
前記レジスト膜の厚さは、例えば、1〜10000nmの範囲で適宜設定することができる。厚さの下限は、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは30nm以上である。その理由は、厚さが薄すぎるとエッチング効果が得難くなるからである。また、厚さの上限は、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは500nm以下である。その理由は、厚さが厚すぎると、大きなレーザーパワーが必要になるとともに、深い穴を形成することが困難になるからであり、さらには、加工速度が低下するからである。
【0140】
光照射方法としては、例えば、ライトワンス光ディスクや追記型光ディスクなどで公知となっているピットの形成方法を適用することができる。具体的には、例えば、ピットサイズによって変化するレーザーの反射光の強度を検出し、この反射光の強度が一定となるようにレーザーの出力を補正することで、均一なピットを形成するといった、公知のランニングOPC技術(例えば、特許第3096239号公報参照)を適用することができる。
なお、本発明のレジスト膜は、光照射によってエッチングにより除去される程度に物性が変化した部分が局所的に存在すれば、その部分がエッチング時に除去されることによりエッチングマスクとして機能し得るため、目視等により認識可能なピット(開口)が形成されていることは必須ではない。また、ピットや物性変化部分のサイズや加工ピッチは、光学系を調整することによって制御することができる。
【0141】
前記パターン露光によりフォトレジスト膜に形成される加工穴は、前記したようにチップ光取り出し口の表面に微細な凹凸構造を形成し所望の光学的効果を得るためには、高いアスペクト比を有することが好ましい。ここでアスペクト比とは、フォトレジスト膜の最表面からの加工穴の最大深さをX(nm)とし、該最表面における加工穴の半値幅をY(nm)とした場合に「X/Y」で表される値である。用途によって好ましいYの値は異なってくるが、必要とされるYの値が決まれば、該Yの値と用途に適したアスペクト比から最大深さXを決定することができるため、これにより形成すべき加工穴形状を決定することができる。所望の光学的効果を得る観点からは、加工穴のアスペクト比は0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることが更に好ましい。上限は20以下が好ましく、10以下がより好ましく、5.0以下が更に好ましい。
【0142】
パターン露光のための光照射装置としては、一般的な光ディスクドライブと同様の構成のものを用いることができる。光ディスクドライブとしては、例えば特開2003−203348号公報に記載されている構成のものを使用することができる。このような光ディスクドライブを用い、塗布膜を形成した加工対象物がディスク形状のものであればそのまま、形状が異なる場合はダミーの光ディスクに貼り付けるなどしてディスクドライブに装填する。そして、適当な出力でレーザー光を塗布膜上に照射する。さらに、この照射のパターンが加工パターンに合うように、レーザー光源にパルス信号または連続信号を入力すればよい。また、光ディスクドライブと同様のフォーカシング技術、例えば、非点収差法などを用いることにより、塗布膜表面にうねりや反りがあったとしても、塗布膜表面に容易に集光することができる。また、光記録ディスクに情報を記録する場合と同様に、加工対象物を回転させながら、光学系を半径方向に移動させることで、塗布膜の全体に周期的な光照射を行うことができる。
【0143】
光照射条件は、例えば、光学系の開口数NAは、下限が0.4以上が好ましく、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。また、開口数NAの上限は、2以下であることが好ましく、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.9以下である。開口数を大きくする場合、対物レンズとフォトレジスト膜の間に液体を介在させる、所謂液浸法を使用することで、焦点調整がしやすくなるといった利点が得られる。開口数NAが小さすぎると、細かい加工ができず、大きすぎると、光照射時の角度に対するマージンが減るからである。光学系の波長は、例えば405±30nm、532±30nm、650±30nm、780±30nmである。これらは、大きな出力が得やすい波長だからである。なお、波長は短い程、細かい加工ができるので好ましい。
【0144】
以上説明したフォトレジスト膜は、パターン露光後に現像工程を経ることなくエッチング用マスクとして使用することができる。なお、パターン露光後かつ下記に説明するエッチングの前の工程として、加熱処理を行うポストベークを挿入してもよい。ポストベークを行うことにより、パターン露光後のフォトレジスト膜を被加工表面に強固に固着させ、かつ後続のエッチングに対するマスクとしての機能を向上させることができる。ポストベークの加熱温度の下限は、例えば55℃以上、好ましくは65℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、その温度上限は、例えば200℃以下、好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下である。このような範囲で加熱処理することにより、生産性の低下を招くことなく上記の効果を得ることができる。
【0145】
また、本発明では、前記および下記工程以外の更なる工程を含むこともできる。そのような工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一般に必要に応じて微細穴乃至溝の形成加工に用いられる公知の微細加工技術のすべてを適用することができる。一例としては、複数回のレーザー照射工程の間に実施される飛散物除去工程を挙げることができる。
前記飛散物除去工程は、レジストを溶解しない液体で洗浄し、ブロアで吹きとばす、粘着シートで除去するといった方法により行うことができる。前述の通り、パターン露光時にフォトレジスト膜からの飛散物が少ないことが、作業性の点から望ましいが、仮に飛散物が多量に発生した場合には、上記飛散物除去工程を実施して除去することが好ましい。
【0146】
エッチング方法としては、ウェットエッチングやドライエッチング等、種々のエッチング方法を挙げることができ、エッチングする表面の物性に応じた方法を採用すればよい。微細加工を行うためには、エッチングガスの直進性が高く細かなパターニングが可能なRIE(反応性イオンエッチング)を採用することが好ましい。RIEは、被処理体を気密な処理室内に載置し、所定の処理ガスの導入および真空引きにより処理室内を所定の減圧雰囲気にした後、例えば処理室内に形成された電極に対して所定の高周波電力を印加することによりプラズマを励起し、このプラズマ中のエッチャントイオンによって、被処理体に対してエッチング処理を行うものである。このRIEのエッチングガスは、エッチングされる物質に応じて選択することができる。
本発明のフォトレジスト液から形成されるフォトレジスト膜は、通常、エッチング後に除去されるが、用途によっては除去せず残してもよい。フォトレジスト膜の除去は、例えば剥離液(例えばエタノール)を用いた湿式の除去方法によって行うことができる。
【0147】
以上、本発明のフォトレジスト材料およびフォトレジスト膜をエッチングに用いる態様について説明したが、本発明のフォトレジスト材料およびフォトレジスト膜は、被加工表面の所望の領域に所望の物質を堆積するためにも使用することができる。
例えば、LED用チップには、光取出し口(例えば、電流拡散層)の表面の一部に、AuZnまたはAuGeのような電極が設けられる。この場合、光取出し口の表面(例えば、電流拡散層の表面)に本発明のフォトレジスト材料(フォトレジスト液)を塗布し、溶媒を除去してフォトレジスト膜を形成した後、電極を形成する領域にレーザー光を照射してフォトレジスト膜を除去する。この場合、フォトレジスト膜に照射するレーザー光はフォトレジスト膜に低耐久性部が形成されるに十分な量であってもよく、その場合には引き続いてエッチングして低耐久性部のフォトレジスト膜を除去することにより、電極を形成する領域のフォトレジスト膜を除去することができる。その後、電極となる物質(例えば、AuZnまたはAuGe)を真空下で堆積し、次いでフォトレジスト膜を除去することにより、光取出し口の表面の所望の領域に電極が形成される。
【0148】
以上説明したように、本発明のフォトレジスト材料およびフォトレジスト膜は、微細な凹凸の形成および半導体装置の作製に使用することができる。具体例としては、半導体素子、磁気バブルメモリ、集積回路等の各種電子部品、LEDや蛍光灯、有機EL素子、プラズマディスプレイ等の発光等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0149】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。以下に記載の「%」は、質量%を示す。
【0150】
[例示化合物(A−17)の合成]
【0151】
【化33】

【0152】
出発原料の化合物(1)は、特開2006−57076号公報記載の化合物(f1)の合成法を用いて合成した。100mlの三角フラスコに硫酸2mlを注ぎ、氷冷下で酢酸9mlをゆっくり滴下した。そこへ40%ニトロシル硫酸1.4mlをゆっくり滴下した後、0〜5℃に保ちながら化合物(1)2gを徐々に加え15分間攪拌した。この酸性溶液を、氷冷下で化合物(2)を含むメタノール溶液30mlに徐々に加え、1時間攪拌した。室温に戻し、2時間攪拌した後、蒸留水100mlを加え沈殿させ、ろ過、乾燥を施し、例示化合物(A−17)2gを得た。
【0153】
[例示化合物(1−12)の合成]
【0154】
【化34】

【0155】
合成した例示化合物(A−17)0.48gと化合物(X−38)0.24gをメタノール10mlに溶かし、1時間攪拌した。濃縮し、例示化合物(1−12)0.72gを得た。同定結果を以下に示す。
【0156】
1H−NMR(MeOH−d4)δ:8.33(s,1H),8.15(s,1H),8.02(s,2H),7.73(s,4H),3.61(m,8H),3.22(s,3H),2.36(s,3H),2.12(m,4H),1.57(s,9H).
【0157】
[例示化合物(A−2)の合成]
上述した例示化合物(A−17)の合成と同様の方法により、例示化合物(A−2)を合成した。
【0158】
[例示化合物(1−3)および(1−27)の合成]
合成した例示化合物(A−2)を使用し、上述した例示化合物(1−12)の合成と同様の方法により、例示化合物(1−3)および(1−27)を合成した。
【0159】
[例示化合物(1−25)および(1−26)の合成]
【0160】
【化35】

【0161】
合成した例示化合物(A−2)0.47gをメタノール5mlに溶かし、10%テトラアンモニウムヒドロキシドのメタノール溶液5.19g加え10分攪拌した。その後、化合物(X−25)0.34gを加え、50℃で2時間攪拌した。析出してきた固体を濾過して、例示化合物(1−25)0.60gを得た。
例示化合物(1−26)も同様の合成法により、合成した。
【0162】
[例示化合物(A−30)の合成]
【0163】
【化36】

【0164】
100mlのナスフラスコにメタンスルホン酸5mlを注ぎ、氷冷下で酢酸4mlとプロピオン酸6mlをゆっくり滴下した。そこへ化合物(3)3.3gを加えた後、0〜5℃に保ちながら亜硝酸ナトリウム0.8gを1.6mlの蒸留水で溶かした水溶液をゆっくり滴下し、0〜5℃にて1時間攪拌した。この酸性溶液を、氷冷下で化合物(4)を含むメタノール溶液30mlに徐々に加え、1時間攪拌した。室温に戻し、1時間攪拌した後、蒸留水100mlを加え沈殿させ、ろ過、乾燥を施し、例示化合物(A−30)2gを得た。
【0165】
[例示化合物(1−9)の合成]
合成した例示化合物(A−30)を用いて、上述した例示化合物(1−12)の合成と同様の方法により、例示化合物(1−9)を合成した。
【0166】
[例示化合物(1−29)および(1−2)の合成]
【0167】
【化37】

【0168】
例示化合物(A−17)と同様の方法により合成した(A−1)4gをはかりとり、酢酸エチル30mlを加えた。そこへトリエチルアミン10mlを加え、外温75℃にて1時間反応させた。反応後、室温に戻し、濾過し、酢酸エチルで十分洗浄を行い、例示化合物(1−29)5.8gを得た。
200mlナスフラスコに例示化合物(1−29)2.56gをはかりとり、メタノール100mlを加えた。反応液に化合物(X−15)2.26gを加え、外温75℃にて2時間反応させた。反応後、室温に戻し、濾過、乾燥させて例示化合物(1−2)を3.5g、収率94%で得た。
【0169】
[例示化合物(1−33)の合成]
合成した例示化合物(A−1)を用いて、前述した例示化合物(1−12)の合成と同様の方法により、例示化合物(1−33)を合成した。
【0170】
[例示化合物(A−3)の合成]
【0171】
【化38】

【0172】
100mlの三角フラスコに硫酸5mlを注ぎ、氷冷下で酢酸20mlをゆっくり滴下した。そこへ40%ニトロシル硫酸1.97mlをゆっくり滴下した後、0〜5℃に保ちながら化合物(5)1.84gを徐々に加え15分間攪拌した。この酸性溶液を、氷冷下で化合物(6)を含むメタノール溶液40mlに徐々に加え、1時間攪拌した。室温に戻し、1時間攪拌した後、蒸留水100mlを加え沈殿させ、ろ過、乾燥を施し、例示化合物(A−3)2gを得た。
【0173】
[例示化合物(1−32)の合成]
合成した例示化合物(A−3)を使用し、上述した例示化合物(1−12)の合成と同様の方法により、例示化合物(1−32)を合成した。
【0174】
[例示化合物(A−6)の合成]
上述した例示化合物(A−3)の合成と同様の方法により、例示化合物(A−6)を合成した。
【0175】
[例示化合物(1−34)の合成]
合成した例示化合物(A−6)を使用し、上述した例示化合物(1−12)の合成と同様の方法により、例示化合物(1−34)を合成した。
【0176】
[例示化合物(A−7)の合成]
【0177】
【化39】

【0178】
50mlナスフラスコにエトキシメチレンマロノニトリル6.11gをはかりとり、エタノール10mlを加えた。そこへフェニルヒドラジン4.92mlを加え、外温85℃にて3時間反応させた。反応終了後、室温に戻し、水30mlを加え沈殿させ、濾過、乾燥させて、化合物(5)8.11gを得た。
【0179】
【化40】

【0180】
200mlナスフラスコにピバロイルアセトニトリル5.55gをはかりとり、エタノール30mlを加えた。そこへ4−ヒドラジノ安息香酸6.75gをジメチルアセトアミド(DMAc)30mlに溶解させた溶液を加え、外温100℃にて3時間反応させた。反応終了後、室温に戻し、水80mlを加え沈殿させ、濾過、乾燥させて、化合物(7)10.9gを得た。
【0181】
【化41】

【0182】
100mlの三口ナスフラスコに硫酸5.5mlを注ぎ、氷冷下で酢酸25mlをゆっくり滴下した。そこへ43%ニトロシル硫酸5.32gをゆっくり滴下した後、0〜5℃に保ちながら化合物(5)3.32gを徐々に加え1時間攪拌した。この酸性溶液を、氷冷下で化合物(7)4.67gを含むメタノール溶液50mlに15℃以下に保ちながら徐々に加え、1時間攪拌した。室温に戻し、1時間攪拌した後、水150mlを加え沈殿させ、濾過を行った。濾別した固体をメタノール50mlでリスラリーし、濾過、乾燥させて例示化合物(A−7)7.01gを得た。
【0183】
[例示化合物(1−35)の合成]
【0184】
【化42】

【0185】
200mlナスフラスコに例示化合物(A−7)4.54g、化合物(15)2.24gをはかりとり、酢酸エチル100mlを加えた。外温75℃にて1時間反応させた。反応後、室温に戻し、濾過し、酢酸エチルで十分洗浄を行い、化合物(8)5.23gを得た。
化合物(8)1.25gをはかりとり、メタノール30mlを加えた。反応液に化合物(X−15)0.57gを加え、外温75℃にて1時間反応させた。反応後、40℃まで温度を下げ、水50mlを加えて、氷冷下で30分間攪拌した。その後、濾過、乾燥させて例示化合物(1−35)1.30gを得た。同定結果を以下に示す。
【0186】
1H−NMR(MeOH−d4)δ:9.49(d,4H),8.80(d,4H),8.05(m,6H),7.79(s,2H),7.67(m,10H),7.56(m,4H),7.47(m,10H),7.38(m,2H),7.20(m,2H),1.52(s,18H).
【0187】
[例示化合物(1−41)の合成]
【0188】
合成した例示化合物(A−7)を用いて、前述した例示化合物(1−12)の合成と同様の方法により、例示化合物(1−41)を合成した。
【0189】
[例示化合物(A−8)の合成]
【0190】
【化43】

【0191】
200mlナスフラスコにメトキシメチレンマロノニトリル5.41gをはかりとり、エタノール50mlを加えた。そこへ4−ヒドラジノ安息香酸7.61gをDMAc30mlに溶解させた溶液を加え、外温100℃にて5時間反応させた。反応終了後、室温に戻し、水80mlを加え、濾過、乾燥させて、化合物(9)10.3gを得た。
【0192】
【化44】

【0193】
100mlナスフラスコにピバロイルアセトニトリル6.26gをはかりとり、エタノール30mlを加えた。そこへフェニルヒドラジン4.92ml、酢酸1.43mlを加え、外温85℃にて3時間反応させた。反応終了後、室温に戻し、水50mlを加え、酢酸エチルにて抽出、濃縮して、化合物(10)8.82gを得た。
【0194】
【化45】

【0195】
100mlの三口ナスフラスコに硫酸3.4mlを注ぎ、氷冷下で酢酸15mlをゆっくり滴下した。そこへ43%ニトロシル硫酸3.25gをゆっくり滴下した後、0〜5℃に保ちながら化合物(9)2.74gを徐々に加え1時間攪拌した。この酸性溶液を、氷冷下で化合物(10)2.58gを含むメタノール溶液30mlに15℃以下に保ちながら徐々に加え、1時間攪拌した。室温に戻し、1時間攪拌した後、水100mlを加え沈殿させ、濾過を行った。濾別した固体をメタノール40mlでリスラリーし、濾過、乾燥させて例示化合物(A−8)4.80gを得た。
【0196】
[例示化合物(1−36)の合成]
【0197】
【化46】

【0198】
200mlナスフラスコに例示化合物(A−8)4.54g、化合物(15)2.24gをはかりとり、酢酸エチル100mlを加えた。外温75℃にて1時間反応させた。反応後、室温に戻し、濾過し、酢酸エチルで十分洗浄を行い、化合物(11)5.21gを得た。
化合物(11)1.13gをはかりとり、メタノール30mlを加えた。反応液に化合物(X−15)0.57gを加え、外温75℃にて1時間反応させた。反応後、40℃まで温度を下げ、水50mlを加えて、氷冷下で30分間攪拌した。その後、濾過、乾燥させて例示化合物(1−36)1.33gを得た。同定結果を以下に示す。
【0199】
1H−NMR(MeOH−d4)δ:9.49(d,4H),8.79(d,4H),8.03(m,6H),7.81(s,2H),7.68(m,10H),7.51(m,14H),7.39(m,2H),7.23(m,2H),1.53(s,18H).
【0200】
[例示化合物(A−9)の合成]
【0201】
【化47】

【0202】
100mlの三口ナスフラスコに硫酸4.5mlを注ぎ、氷冷下で酢酸20mlをゆっくり滴下した。そこへ43%ニトロシル硫酸4.43gをゆっくり滴下した後、0〜5℃に保ちながら化合物(9)3.42gを徐々に加え1時間攪拌した。この酸性溶液を、氷冷下で化合物(10)3.89gを含むメタノール溶液30mlに15℃以下に保ちながら徐々に加え、1時間攪拌した。室温に戻し、1時間攪拌した後、水100mlを加え、濾過を行った。濾別した固体をメタノール40mlでリスラリーし、濾過、乾燥させて例示化合物(A−9)5.20gを得た。
【0203】
[例示化合物(1−37)の合成]
【0204】
【化48】

【0205】
50mlナスフラスコに例示化合物(A−9)1.0gをはかりとり、酢酸エチル20mlを加えた。そこへ、ジイソプロピルアミン0.61gを加え、外温70℃にて1時間反応させた。反応後、室温に戻し、濾過し、酢酸エチルで十分洗浄を行い、化合物(12)0.98gを得た。
化合物(12)0.70gをはかりとり、メタノール10mlを加えた。反応液に化合物(X−15)0.57gを加え、外温75℃にて1時間反応させた。反応後、室温まで温度を下げ、濾過、乾燥させて例示化合物(1−37)0.87gを得た。同定結果を以下に示す。
【0206】
1H−NMR(DMSO−d6)δ:9.62(bs,4H),8.99(bs,4H),8.27(s,1H),8.07(d,2H),8.00(d,2H),7.80(bs,2H),7.75(m,6H),7.63(d,2H),7.48(m,8H),7.37(m,4H),1.46(s,9H).
【0207】
[例示化合物(1−42)の合成]
【0208】
合成した例示化合物(A−9)を用いて、前述した例示化合物(1−12)の合成と同様の方法により、例示化合物(1−42)を合成した。
【0209】
[例示化合物(A−33)の合成]
【0210】
【化49】

【0211】
100mlの三口ナスフラスコに硫酸5mlを注ぎ、氷冷下で酢酸20mlをゆっくり滴下した。そこへ40%ニトロシル硫酸1.97mlをゆっくり滴下した後、0〜5℃に保ちながら化合物(13)1.85gを徐々に加え1時間攪拌した。この酸性溶液を、氷冷下で化合物(7)2.59gを含むメタノール溶液40mlに10℃以下に保ちながら徐々に加え、1時間攪拌した。室温に戻し、1時間攪拌した後、水150mlを加え、濾過を行った。濾別した固体をアセトニトリルにて再結晶し、濾過、乾燥させて例示化合物(A−33)2.83gを得た。
【0212】
[例示化合物(1−40)の合成]
【0213】
合成した例示化合物(A−33)を用いて、前述した例示化合物(1−12)の合成と同様の方法により、例示化合物(1−40)を合成した。
【0214】
[例示化合物(A−31)の合成]
【0215】
【化50】

【0216】
100mlのナスフラスコにメタンスルホン酸5mlを注ぎ、氷冷下で酢酸4mlとプロピオン酸6mlをゆっくり滴下した。そこへ化合物(14)1.57gを加えた後、0〜5℃に保ちながら亜硝酸ナトリウム0.76gを1.5mlの蒸留水で溶かした水溶液をゆっくり滴下し、0〜5℃にて1時間攪拌した。この酸性溶液を、氷冷下で化合物(7)2.59gを含むメタノール溶液30mlに徐々に加え、1時間攪拌した。室温に戻し、1時間攪拌した後、蒸留水100mlを加え沈殿させ、ろ過、乾燥を施し、化合物(A−31)2.77gを得た。
【0217】
[例示化合物(1−38)の合成]
【0218】
合成した例示化合物(A−31)を用いて、前述した例示化合物(1−12)の合成と同様の方法により、例示化合物(1−38)を合成した。
【0219】
[例示化合物(A−32)の合成]
【0220】
【化51】

【0221】
100mlのナスフラスコにメタンスルホン酸5mlを注ぎ、氷冷下で酢酸4mlとプロピオン酸6mlをゆっくり滴下した。そこへ化合物(14)1.57gを加えた後、0〜5℃に保ちながら亜硝酸ナトリウム0.76gを1.5mlの蒸留水で溶かした水溶液をゆっくり滴下し、0〜5℃にて1時間攪拌した。この酸性溶液を、氷冷下で化合物(6)2.60gを含むメタノール溶液40mlに徐々に加え、1時間攪拌した。室温に戻し、1時間攪拌した後、蒸留水100mlを加え沈殿させ、ろ過、乾燥を施し、化合物(A−32)2.45gを得た。
【0222】
[例示化合物(1−39)の合成]
【0223】
合成した例示化合物(A−32)を用いて、前述した例示化合物(1−12)の合成と同様の方法により、例示化合物(1−39)を合成した。
【0224】
上記合成例と同様の方法によって、一般式(1)で表される種々のアゾ色素を合成することができる。
【0225】
[実施例1]
フォトレジスト膜の形成
一般式(1)で表される化合物(例示化合物(1−2)、熱分解温度:296℃)3gを、テトラフルオロプロパノール(TFP)100mlに溶解し、ディスク状のシリコン基板(厚さ0.6mm、外径120mm、内径15mm)上にスピンコートし塗布膜を形成した。スピンコートは、塗布開始回転数500rpm、塗布終了回転数100rpmとして塗布液を基板の内周部にディスペンスし、徐々に2200rpmまで回転数を上げて塗布膜を乾燥させた。形成された塗布膜の厚さは150nm、最大吸収波長λmaxは444nmであった。
塗布膜を形成したシリコン基板をパルステック工業株式会社製NEO500(波長:405nm、NA:0.65)に設置し、塗布膜表面に向かってレーザー光を照射した。レーザー光照射条件は、以下の通りとした。塗布膜(レジスト膜)には、0.5μmピッチでピット形状良好な微細パターンが形成された。
レーザー出力:4mW
線速:5m/s
記録信号:5MHzの矩形波
露光信号のduty比:20%
【0226】
[実施例2]
凹凸形成
実施例1で処理したシリコン基板を塗布膜形成面側から以下の条件でRIEエッチングした後、エタノールを剥離液として塗布膜を除去した。シリコン基板表面の塗布膜除去面に微細な凹凸が形成されていることを目視により確認した。この結果から、実施例1で処理した塗布膜がエッチングマスクとして機能したことがわかる。
エッチングガス:SF6
エッチング深さ:400nm
【0227】
[実施例3〜19]
実施例1の一般式(1)で表される化合物(例示化合物(1−2))を表2に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にしてレジスト膜を作製し、その表面にレーザー光を照射したところ、実施例1と同様に0.5μmピッチでレジスト膜にピット形状良好な微細パターンが形成された。
【0228】
例示化合物(1−2)、(1−3)、(1−9)、(1−12)、(1−25)、(1−26)、(1−27)、(1−32)、(1−33)、(1−34)、(1−35)、(1−36)、(1−37)、(1−38)、(1−39)、(1−40)、(1−41)、および(1−42)の融点を測定したところ、いずれの化合物も熱分解温度より低温に融点は存在しなかった。また、上記例示化合物はテトラプロパノールに対して良好な溶解性を示し、実施例1、3〜19では、いずれも結晶化を起こすことなく塗布膜を形成することができた。
【0229】
[比較例1]
実施例1で用いた例示化合物(例示化合物(1−2))を、下記比較化合物(A)に変更した点以外は、上述した実施例1と同様の方法でレジスト膜を作製した。作製したレジスト膜表面に、実施例1と同様の条件でレーザー光を照射したところ、ピットの形成は可能であったが、実施例と比べてピット形状に劣っていた。比較化合物(A)の融点を測定したところ、198℃付近に融点を有していた。比較例1におけるピット形状が実施例と比べて劣っていた理由は、比較化合物(A)が熱分解温度より低温に融点を持つため、色素融解によりピット形状がくずれたことにあると考えられる。
【0230】
[比較例2]
実施例1で用いた例示化合物(例示化合物(1−2))を、下記比較化合物(B)に変更した点以外、上述した実施例1と同様の方法でレジスト膜の作製を試みたが、比較化合物(B)はテトラフルオロプロパノールに対する溶解性が低く、ほとんど溶けなかった。
【0231】
比較化合物(A)
国際公開第2008/108406号記載の例示化合物(42)
【0232】
【化52】

【0233】
比較化合物(B)
国際公開第2008/108406号記載の例示化合物(43)
【0234】
【化53】

【0235】
【表2】

【0236】
[実施例20〜36]
実施例3〜19で得られたピットを形成したレジスト膜を有するシリコン基板を用いて、実施例2と同様にしてRIEエッチングした後、エタノールを剥離液として塗布膜を除去したところ、何れのシリコン基板にも、その表面に実施例2と同様に微細な凹凸が形成されていることが目視により確認された。この結果から、実施例3〜19で使用した例示化合物においても、そのレジスト膜がエッチングマスクとして機能したことがわかる。
【0237】
[実施例37]
実施例1と同様に例示化合物(1−2)3gを、テトラフルオロプロパノール(TFP)100mlに溶解し、ディスク状のシリコン基板上にスピンコートし塗布膜を形成した。スピンコートは、300rpmにて塗布を開始し、1000rpmで40秒回転させ、その後2000rpmまで回転数を上げて塗布膜を乾燥させた。
塗布膜を形成したシリコン基板をパルステック工業株式会社製NEO1000(波長:405nm、NA:0.85)に設置し、塗布膜表面に向かってレーザー光を照射した。レーザー光照射条件は、以下の通りとした。AFMにて、塗布膜(レジスト膜)に0.3μmピッチでピット形状良好な微細パターンが形成されたことを確認した。
レーザー出力:3〜6mW
線速:5m/s
記録信号:16.67MHzの矩形波
露光信号のduty比:20%
形成されたピットの中から無作為に1つのピットを選択し、選択したピットの形状を原子間力顕微鏡(AFM)にて観察したところ、最大幅200nm、最大深さ183nmであった。
【0238】
[実施例38〜48]
実施例37の一般式(1)で表される化合物(例示化合物(1−2))を表3に示す化合物に変更した以外は実施例37と同様にしてレジスト膜を作製し、その表面に実施例37と同様の方法でレーザー光を照射した。これにより、実施例37と同様に0.3μmピッチでレジスト膜にピット(開口)が形成されたことをAFMにて確認した。形成されたピットの中から無作為に1つのピットを選択し、選択したピットの形状をAFMにて観察し最大幅と最大深さを求めた。
【0239】
実施例37〜48について、測定した最大幅、最大深さとこれら値から求めたアスペクト比を、下記表3に示す。
【0240】
【表3】

【0241】
[実施例49]
実施例37と同様に例示化合物(1−2)3gを、テトラフルオロプロパノール(TFP)100mlに溶解し、ディスク状のシリコン基板上にスピンコートし塗布膜を形成した。スピンコートは、300rpmにて塗布を開始し、1000rpmで40秒回転させ、その後2000rpmまで回転数を上げて塗布膜を乾燥させた。
塗布膜を形成したシリコン基板をパルステック工業株式会社製NEO1000(波長:405nm、NA:0.85)に設置し、塗布膜表面に向かってレーザー光を照射した。レーザー光照射条件は、以下の通りとした。塗布膜(レジスト膜)には、0.2μmピッチでピット形状良好な微細パターンが形成された。
レーザー出力:3〜5mW
線速:5m/s
記録信号:25MHzの矩形波
形成されたピットの中から無作為に1つのピットを選択し、選択したピットの形状をAFMにて観察したところ、最大幅101nm、最大深さ160nmであった。
【0242】
[実施例50〜58]
実施例49の一般式(1)で表される化合物(例示化合物(1−2))を表3に示す化合物に変更した以外は実施例49と同様にしてレジスト膜を作製し、その表面に実施例49と同様の方法でレーザー光を照射した。これにより、実施例49と同様に0.2μmピッチでレジスト膜にピットが形成されたことをAFMにて確認した。形成されたピットの中から無作為に1つのピットを選択し、選択したピットの形状をAFMにて観察し最大幅と最大深さを求めた。
【0243】
実施例49〜58について、測定した最大幅、最大深さとこれら値から求めたアスペクト比を、下記表4に示す。
【0244】
【表4】

【0245】
表3、4に示すように、実施例で使用した各例示化合物によって高いアスペクト比で加工穴を形成可能なフォトレジスト膜を得ることができた。
【0246】
飛散物量の評価
実施例49〜58において、レーザー光照射後のレジスト膜を走査型電子顕微鏡(SEM;測定条件:倍率3万倍、加速電圧5kV)により観察し、レーザー光照射によるピット形成時にレジスト膜から飛散しレジスト膜上に付着した飛散物量を、以下の3段階で評価した。
○:飛散物量が少ない。
△:飛散物量は中程度。
×:飛散物量が明らかに多い。
【0247】
耐エッチング性の評価
以下の式(I)により算出される大西パラメータは、フォトレジスト用化合物中の炭素の密度を表すものであり、該化合物から得られるレジストの耐エッチング性の尺度として用いることができる。
大西パラメータ=(C+O+H)/(C−O) …(I)
[式(I)中、Cは炭素原子数、Oは酸素原子数、Hは水素原子数を表す。]
上記式(I)により算出される大西パラメータが小さいほど、フォトレジスト用化合物中の炭素密度が高いことを意味し、これは即ち得られるレジストの耐エッチング性が高いことを意味する。実施例49〜58で使用したフォトレジスト用化合物の分子式から、化合物1分子中に含有される炭素原子数、酸素原子数および水素原子数を求めた。求められた各原子数を上記式(I)に代入し、大西パラメータを算出した。
【0248】
以上の評価結果を、下記表5に示す。表5中、大西パラメータが2.30以下のものを耐エッチング性良好と判断し、○と表記した。
【0249】
【表5】

【0250】
表5に示す結果から、飛散物量、耐エッチング性の両評価項目とも○であったものは、実施例49、実施例53〜55であった。これら実施例は、表3、4に示すように高いアスペクト比のピットを形成することも可能であった。
以上の結果から、実施例49、実施例53〜55で使用した例示化合物は、フォトレジスト用化合物として最も望ましい特性を有すると判断することができる。これら化合物の中で、実施例53〜55で使用した化合物は、本発明において見出された新規化合物である。
【産業上の利用可能性】
【0251】
本発明によれば、微細な表面加工を容易に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフォトレジスト用化合物を含むことを特徴とするフォトレジスト材料。
【化1】

[一般式(1)中、Ap-は、p価のアゾ色素アニオンを表し、pは1〜5の範囲の整数を表し、Xq+は、q価のカチオンを表し、qは1〜5の範囲の整数を表し、k’は分子全体の電荷を中和するために必要なXq+の数を表し、但し、一般式(1)で表されるアゾ色素は分子内に金属イオンを含有しない。]
【請求項2】
q+が、アンモニウムカチオン、一般式(2)で表されるカチオン、一般式(2)に含まれない含窒素芳香族ヘテロ環の環内窒素上に正電荷を有するカチオン、およびホスホニウムカチオンからなる群から選ばれるカチオンである請求項1に記載のフォトレジスト材料。
【化2】

[一般式(2)中、R21〜R25は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R21〜R25のいずれか2つ以上が互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項3】
p-は、一般式(A)で表されるアゾ色素の水素原子がp個解離したアニオンである請求項1または2に記載のフォトレジスト材料。
【化3】

[一般式(A)中、Bは、下記一般式(B)で表され、Cは、含窒素へテロ環基を表す。]
【化4】

[一般式(B)中、Qは隣り合う2つの炭素原子とともに含窒素へテロ環を形成する基を表し、Yは−NR12または−OR3で表される基を表し、R1、R2およびR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、*は−N=N−基との結合位置を表す。]
【請求項4】
一般式(1)中のXq+はピリジニウムカチオンであり、一般式(A)中のCで表される含窒素ヘテロ環基はピラゾール環を含み、一般式(B)中のQが隣り合う2つの炭素原子とともに形成する含窒素へテロ環はピラゾール環であり、かつYは−NH2である、請求項3に記載のフォトレジスト材料。
【請求項5】
一般式(1)中のXq+は下記式(X−15)により表されるピリジニウムカチオンである、請求項4に記載のフォトレジスト材料。
【化5】

【請求項6】
一般式(A)中のCで表される含窒素ヘテロ環基に含まれるピラゾール環は、環上の炭素に結合する置換基としてシアノ基を含み、かつ環上の窒素に結合する置換基として置換または無置換のフェニル基を含む、請求項4または5に記載のフォトレジスト材料。
【請求項7】
一般式(B)中のQが隣り合う2つの炭素原子とともに形成する含窒素へテロ環は、環上の炭素に結合する置換基としてtert−ブチル基を含むピラゾール環である、請求項4〜6のいずれか1項に記載のフォトレジスト材料。
【請求項8】
前記フォトレジスト用化合物は、下記一般式(C)で表されるアゾ色素アニオンと、対塩として前記式(X−15)で表されるピリジニウムカチオンと、を含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載のフォトレジスト材料。
【化6】

[一般式(C)中、R101は置換または無置換のフェニル基を表し、R100およびR102は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、かつR100〜R102の1つ以上にアニオン性基が含まれる。]
【請求項9】
前記フォトレジスト用化合物は、一般式(1)中のXq+が前記式(X−15)により表されるピリジニウムカチオンであり、Ap-が下記アゾ色素アニオンのいずれかである化合物である、請求項5〜8のいずれか1項に記載のフォトレジスト材料。
【化7】

【請求項10】
前記フォトレジスト用化合物は、熱分解温度が150℃以上500℃以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載のフォトレジスト材料。
【請求項11】
前記フォトレジスト用化合物を主成分として含む請求項1〜10のいずれか1項に記載のフォトレジスト材料。
【請求項12】
ポジ型フォトレジスト材料である請求項1〜11のいずれか1項に記載のフォトレジスト材料。
【請求項13】
ポジ型耐エッチングレジスト材料である請求項12に記載のフォトレジスト材料。
【請求項14】
フォトレジスト液である請求項1〜13のいずれか1項に記載のフォトレジスト材料。
【請求項15】
前記フォトレジスト液は、前記フォトレジスト用化合物を全固形分を基準として50質量%以上含有する請求項14に記載のフォトレジスト材料。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のフォトレジスト材料から形成されたフォトレジスト膜。
【請求項17】
前記フォトレジスト用化合物を主成分として含む請求項16に記載のフォトレジスト膜。
【請求項18】
ポジ型フォトレジスト膜である請求項16または17に記載のフォトレジスト膜。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項に記載のフォトレジスト膜を被加工表面に配置すること、
上記フォトレジスト膜にパターン露光すること、および、
上記パターン露光後のフォトレジスト膜を有する被加工表面の少なくとも一部にエッチング処理を施し、上記パターン露光において露光された部分に対応する領域における被加工表面の少なくとも一部をエッチングすること
を含む被加工表面のエッチング方法。
【請求項20】
前記フォトレジスト膜を、請求項14または15に記載のフォトレジスト液を被加工表面に塗布することにより形成する請求項19に記載の被加工表面のエッチング方法。
【請求項21】
前記パターン露光に使用される光は、λnmの波長を有するレーザー光であり、前記フォトレジスト膜に含まれる前記フォトレジスト用化合物の最大吸収波長λmaxはλ±150nmの範囲にある請求項19または20に記載の被加工表面のエッチング方法。
【請求項22】
下記式(1−35)で表されるアゾ色素化合物。
【化8】

【請求項23】
下記式(1−36)で表されるアゾ色素化合物。
【化9】

【請求項24】
下記式(1−37)で表されるアゾ色素化合物。
【化10】


【公開番号】特開2010−256863(P2010−256863A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36758(P2010−36758)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】