説明

フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物、フラットパネルディスプレイ部材形成用転写フィルムおよびフラットパネルディスプレイ部材の製造方法

【課題】焼成後の透過率、反射率、表面平滑性および膜厚均一性が高いFPDパネル部材を形成することができるFPD部材形成用組成物を提供する。また、可撓性、転写性およびハンドリング性に優れ、かつ、前記組成物からなるFPD部材形成用組成物層を有する転写フィルムを提供する。また、透過率および反射率が高く、表面平滑性および膜厚均一性に優れたFPDのパネル部材を形成することができるFPDのパネル部材の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)無機粉体、(B)結着樹脂、(C)シリル基含有化合物および(D)金属アルコキシドを含有し、かつ、該結着樹脂(B)中に(B−1)ポリオキシアルキレン部位を有する重量平均分子量10,000〜50,000の(メタ)アクリル系重合体を含有するFPD部材形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイのパネル部材を形成するために好適な無機粉体含有樹脂組成物、該組成物からなる無機粉体含有樹脂層を有する転写フィルムおよび該転写フィルムを用いたフラットパネルディスプレイ部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平板状の蛍光表示体としてプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう。)およびフィールドエミッションディスプレイ(以下、「FED」ともいう。)などのフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」ともいう。)が注目されている。PDPは、透明電極を形成し、近接した2枚のガラス板の間にアルゴンまたはネオンなどの不活性ガスを封入し、プラズマ放電を起こしてガスを光らせることにより、蛍光体を発光させて情報を表示するディスプレイである。一方、FEDは、電界印可によって陰極から真空中に電子を放出させ、その電子を陽極上の蛍光体に照射することにより、蛍光体を発光させて情報を表示するディスプレイである。図1は交流型のPDPの断面形状を示す模式図である。
【0003】
このようなFPDの誘電体、隔壁、電極、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックストライプ(マトリクス)の製造方法としては、たとえば、無機粉体含有樹脂層を基板上に形成し、これを焼成する方法(特許文献1参照)が知られている。
【0004】
このような方法で無機粉体含有樹脂層を基板上に形成する工程において、可撓性を有する支持フィルム上に無機粉体と結着樹脂とを含有する無機粉体含有樹脂層を形成した転写フィルムを用いて、該無機粉体含有樹脂層を基板上に転写する方法が、膜厚均一性および表面均一性に優れたパネル部材を作業効率よく形成することができることから、好適に利用されている。
【特許文献1】特開平9−102273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の転写フィルムにおける無機粉体含有樹脂層は、可撓性および転写性(基板に対する加熱密着性、以下同じ)を十分に有していなかった。可撓性が不足すると、フィルムをロールに巻き取る際にひび割れが生じたり、基板に転写した無機粉体含有樹脂層表面にクラックが生じるなどの問題が起こる。転写性が不足すると、前記無機粉体含有樹脂層を焼成する時、基板から剥がれるなどの問題が起こる。
【0006】
これらの問題を解決するためには、無機粉体含有樹脂層を構成する結着樹脂のガラス転移点を下げたり、可塑剤を多量に添加することで可撓性および転写性を向上させることが考えられるが、得られる転写フィルムのハンドリング性が低下したり、無機粉体含有樹脂層を高い位置精度で効率よく転写形成することが困難になるなどの問題があった。
【0007】
また、上記のような従来の材料設計では、無機粉体含有樹脂ペースト調製時に、分散不良が起こりやすかった。分散不良が生じると、ペースト中に凝集した無機粉体が存在するために、転写フィルム中にピンホールが生じたり、表面平滑性および膜厚均一性が低くなるという問題が生じていた。
【0008】
さらに、従来の転写フィルムでは無機粉体含有樹脂層を焼成して形成される無機層中に
残留する気泡が多いために、無機層の透明性および強度が不足する問題が生じていた。
従って、本発明は、焼成後の残留気泡を抑制し、かつ表面平滑性と膜厚均一性の高いFPDパネル部材(無機層)を形成することができるFPD部材形成用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、可撓性、転写性およびハンドリング性に優れ、かつ、上記組成物からなる無機粉体樹脂層を有する転写フィルムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物は、
(A)無機粉体と、
(B)結着樹脂と、
(C)シリル基含有化合物と、
(D)金属アルコキシドと
を含有し、かつ、該結着樹脂(B)中に(B−1)ポリオキシアルキレン部位を有する重量平均分子量10,000〜50,000の(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする。
【0011】
前記重合体(B−1)は、
ポリオキシアルキレン部位を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位5〜30重量%と、
ポリオキシアルキレン部位を有しない(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位30〜50重量%と、
芳香族ビニル化合物に由来する構成単位30〜50重量%と
を含有することが好ましい。
【0012】
前記ポリオキシアルキレン部位を有する(メタ)アクリレート化合物は、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートおよびノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートの中から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0013】
前記シリル基含有化合物(C)は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
(式(1)中、pは3〜20の整数、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、aは1〜3の整数を示す。)
前記金属アルコキシド(D)は、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド
およびマグネシウムアルコキシドの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0016】
本発明のFPD部材形成用組成物は、さらに可塑性付与物質(E)を含有することが好ましい。
本発明のFPD部材形成用転写フィルムは、支持フィルム上に、無機粉体含有樹脂組成物層(以下、「FPD部材形成用組成物層」ともいう。)を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のFPD部材の製造方法(以下、「FPDの製造方法(I)」ともいう)は、支持フィルム上に形成された、FPD部材形成用組成物層を基板上に転写する工程と、
該FPD部材形成用組成物層を焼成処理する工程と
を含むことを特徴とする。
【0018】
前記フラットパネルディスプレイ部材は、誘電体または隔壁であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のFPD部材形成用組成物を用いて無機粉体含有樹脂層を形成した本発明の転写フィルムは、可撓性および転写性に優れるとともに、ハンドリング性にも優れた効果を有する。また、焼成後に形成される無機粉体含有樹脂層中の残留気泡を低減することができる。したがって、本発明の転写フィルムを用いることにより、焼成後、表面平滑性および膜厚均一性に優れ、高い透過率および高強度を有したFPDのパネル部材(誘電体層、隔壁など)を高い位置精度で効率よく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のFPD部材形成用組成物、転写フィルムおよびFPDのパネル部材の製造方法について詳細に説明する。
〔FPD部材形成用組成物〕
[無機粉体(A)]
本発明のFPD部材形成用組成物に用いられる無機粉体(A)は、形成するパネル部材の種類によって異なる。以下、パネル部材の種類ごとに説明する。
【0021】
誘電体形成材料および隔壁形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、ガラス粉末、好ましくは軟化点が400〜600℃のガラス粉末が挙げられる。
ガラス粉末の軟化点が400℃未満である場合には、無機粉体含有樹脂層の焼成工程において、結着樹脂などの有機物質が完全に分解除去されない段階でガラス粉末が溶融してしまうため、形成される部材中に有機物質の一部が残留することがあり、得られるFPD内にアウトガスが拡散する結果、蛍光体の寿命を低下させるおそれがある。一方、ガラス粉末の軟化点が600℃を超える場合には、無機粉体含有樹脂層を600℃より高温で焼成する必要があるため、該樹脂層の被転写体であるガラス基板に歪みなどが発生する場合がある。
【0022】
上記ガラス粉末の好適な具体例としては、酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸化カルシウム(PbO−B23−SiO2−CaO)系;
酸化亜鉛、酸化ホウ素および酸化ケイ素(ZnO−B22−SiO2)系;
酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸化アルミニウム(PbO−B23−SiO2
Al23)系;
酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素および酸化ケイ素(PbO−ZnO−B23−SiO2
系;
酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸化チタン(PbO−ZnO−B23−SiO2−TiO2)系;
酸化ビスマス、酸化ホウ素および酸化ケイ素(Bi23−B23−SiO2)系などを挙
げることができる。
【0023】
上記ガラス粉末の平均粒子径は、0.5〜2.5μmであることが好ましい。また、上記ガラス粉末には、たとえば、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化セリウムおよび酸化コバルトなどの無機酸化物を混合して使用してもよい。混合する無機酸化物の含有量は、無機粉体全量(ガラス粉末+無機酸化物)の40重量%以下であることが好ましい。
【0024】
電極形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、Ag、Au、Al、Ni、Ag-Pd合金、Cu、CrおよびCoなどを挙げることができる。
抵抗体形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、RuO2などを挙げること
ができる。
【0025】
蛍光体形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、
23:Eu3+ 、Y2SiO5:Eu3+、Y3Al512:Eu3+、YVO4:Eu3+、(Y,Gd)BO3:Eu3+、Zn3(PO4)2:Mnなどの赤色用蛍光体;
Zn2SiO4:Mn、BaAl1219:Mn、BaMgAl1423:Mn、LaPO4
(Ce,Tb)、Y3(Al,Ga)512:Tbなどの緑色用蛍光体;
2SiO5:Ce、BaMgAl1017:Eu2+、BaMgAl1423:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)10(PO4612:Eu2+、(Zn,Cd)S:Agなどの青色用蛍光体などを挙げることができる。
【0026】
カラーフィルター形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、
Fe23、Pb34、CdS、CdSe、PbCrO4、PbSO4、Fe(NO33などの赤色用顔料;
Cr23、TiO2-CoO-NiO-ZnO、CoO-CrO-TiO2-Al23、Co3(PO4)2、CoO-ZnOなどの緑色用顔料;
2(Al2Na2Si310)・Na24)、CoO-Al23などの青色用顔料のほか、色補
正用の無機顔料として、
PbCrO4-PbSO4、PbCrO4、PbCrO4-PbO、CdS、TiO2-NiO-
Sb23などの黄色顔料;
Pb(Cr-Mo-S)O4などの橙色顔料;
Co3(PO4)2などの紫色顔料を挙げることができる。
【0027】
[結着樹脂(B)]
本発明のFPD部材形成用組成物を構成する結着樹脂(B)は、ポリオキシアルキレン部位を有する(メタ)アクリル系重合体(B−1)を含有する。
【0028】
<重合体(B−1)>
本発明で用いられる重合体(B−1)は、ポリオキシアルキレン部位を有する重量平均分子量(Mw)10,000〜50,000の(メタ)アクリル系重合体である。重合体(B−1)を含有させると、本発明のFPD部材形成用組成物から得られる無機粉体含有樹脂層を有する本発明の転写フィルムは、可撓性および転写性に優れたものとなる。すなわち、重合体(B−1)が可塑剤として機能するため、無機粉体含有樹脂フィルムを折り曲げても樹脂層の表面に微小な亀裂(ひび割れ)が発生するようなことがなく、また、ロール状に巻き取って保存しても保存安定性は良好である。
【0029】
また、FPD部材形成用組成物が重合体(B−1)を含有することにより、無機粉体含有樹脂ペーストの熱分解性が向上し、無機粉体含有樹脂層の焼成後、無機層中に残留する
気泡数を減少させることができる。しかも、重合体(B−1)は、熱により容易に分解除去されるため、前記無機粉体含有樹脂層を焼成して得られる無機層の機能が低下することがない。
【0030】
さらに、重合体(B−1)を含有すると、無機粉体含有樹脂ペーストの分散性および保存安定性が高まり、無機粉体含有樹脂層および前記無機粉体含有樹脂層を焼成して得られる無機層の表面平滑性が向上する。
【0031】
本発明の結着樹脂を構成する重合体(B−1)は、ポリオキシアルキレン部位を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位とポリオキシアルキレン部位を有しない(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と芳香族ビニル化合物に由来する構成単位とを含有することが好ましい。また、重合体(B−1)は、前記構成単位以外に後述するその他の共重合性単量体に由来する構成単位を含有していてもよい。
【0032】
前記重合体(B−1)としては、ポリオキシアルキレン部位を有する(メタ)アクリレート化合物(以下、「特定(メタ)アクリレート化合物」ともいう。)の単独重合体、ならびに前記特定(メタ)アクリレート化合物と、下記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン部位を有しない(メタ)アクリレート化合物(以下、「(メタ)アクリレート化合物(1)」ともいう。)、芳香族ビニル化合物およびその他の共重合体単量体の中から選ばれる少なくとも1種との共重合体が挙げられる。
【0033】
【化2】

【0034】
(式(2)中、R1 は水素原子またはメチル基を示し、R2 は1価の有機基を示す。)
以下に、重合体(B−1)を構成する単位を形成する化合物についてそれぞれ説明する。
【0035】
本発明のFPD部材形成用組成物において、重合体(B−1)の好ましい分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」または「Mw」ともいう。)で10,000〜50,000であり、さらに好ましくは20,000〜40,000である。
【0036】
特定(メタ)アクリレート化合物
重合体(B−1)の構成成分である特定(メタ)アクリレート化合物としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートおよびノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリレート化合物(1)
重合体(B−1)の構成成分である(メタ)アクリレート化合物(1)としては、アル
キル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートおよびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0038】
前記アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびイソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0039】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0040】
前記フェノキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0041】
前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
前記シクロアルキル(メタ)アクリレートの例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびトリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリレート化合物(1)の好ましい例としては、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートおよび2−エトキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
芳香族ビニル化合物
重合体(B−1)の構成成分である芳香族ビニル化合物としては、上記特定(メタ)アクリレート化合物または(メタ)アクリレート化合物(1)と共重合可能な化合物ならば特に制限はないが、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニルフタル酸、ビニルベンジルメチルエーテルおよびビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物類;末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリスチレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
上記芳香族ビニル化合物の好ましい例としては、ビニル安息香酸、ビニルベンジルメチルエーテル、スチレンおよびα−メチルスチレンが挙げられる。
その他の共重合性単量体
上記重合体(B−1)は、上記特定(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート化合物(1)および芳香族ビニル化合物以外の共重合性単量体(以下、「その他の共重合性単量体」ともいう。)と反応させてもよい。その他の共重合性単量体としては、アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル類;酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリルおよびα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物類;1,3−ブタジエンおよびイソプレンなどの脂肪族共役ジエン類;(メタ)アクリル酸およびクロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和ジカルボン酸;その他の不飽和カルボン酸;ビニルベンジルメチルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルなどのビニルエーテル類;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレートおよびポリシリコーンなどのマクロモノマー類などが挙げられる。
【0046】
その他の共重合性単量体の好ましい例としては、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸およびビニルフタル酸;ビニルグリシジルエーテル、スチレン、ブタジエンおよびイソプレンが挙げられる。
【0047】
重合体(B−1)
上述したように、重合体(B−1)としては、上記特定(メタ)アクリレートの単独重合体、ならびに該特定(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリレート化合物(1)、芳香族ビニル化合物およびその他の共重合性単量体の中から選ばれる少なくとも1種との共重合体が挙げられる。前記共重合体の好ましい具体例としては、上記特定(メタ)アクリレートと、上記(メタ)アクリレート化合物(1)と芳香族ビニル化合物類との共重合体が挙げられる。
【0048】
前記共重合体の組成比としては、重合体(B−1)100重量%に対して、通常、特定(メタ)アクリレート5〜30重量%、(メタ)アクリレート化合物(1)30〜50重量%、芳香族ビニル化合物類30〜50重量%であり、特定(メタ)アクリレート10〜25重量%、(メタ)アクリレート化合物(1)35〜45重量%、芳香族ビニル化合物類35〜45重量%がより好ましい。また、その他の共重合体単量体を含有する場合には、重合体(B−1)100重量%に対して、1〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%の組成比で含有することが、無機粉体含有樹脂転写フィルムの可撓性および転写性をさらに向上させるために好ましい。
【0049】
本発明で用いられる重合体(B−1)としては、ポリメチレングリコール(メタ)アクリレート-ポリブチルメタクリレート共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリ
レート-ポリブチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリ
レート-ポリブチルメタクリレート共重合体、ポリエチレングリコールポリ(メタ)アク
リレート-メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体、ポリエチレングリコ
ールポリ(メタ)アクリレート-メチルメタクリレート−ブチル(メタ)アクリレート-スチレン共重合体、ポリエチレングリコールポリ(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル
酸-スチレン共重合体、ポリプロピレングリコールポリ(メタ)アクリレート−2−エト
キシエチル(メタ)アクリレート-スチレン共重合体、ポリメチレングリコール(メタ)
アクリレート-2-エチルヘキシルアクリレート-スチレン共重合体、ポリエチレングリコ
ール(メタ)アクリレート-2-エチルヘキシルアクリレート-スチレン共重合体およびポ
リプロレングリコール(メタ)アクリレート-2-エチルヘキシルアクリレート-スチレン
共重合体などが挙げられる。
【0050】
重合体(B−1)は、上記特定(メタ)アクリレート化合物および必要に応じて上記(メタ)アクリレート化合物(1)、他の共重合性単量体を公知の方法により重合させることによって得られる。なお、重合体(B−1)の分子量は、重合開始剤の量、重合温度および重合時間を適宜調整することによって、調節することができる。
【0051】
<重合体(B−2)>
本発明で用いられる重合体(B−2)は、上記重合体(B−1)以外であれば、上記以外の樹脂を特に制限されずに使用することができる。なかでもポリオキシアルキレン部位を有さない(メタ)アクリレート重合体(以下、単に「アクリル樹脂」ともいう。)が好ましい。本発明のFPD部材形成用組成物が、重合体(B−2)としてアクリル樹脂を含有することにより、該FPD部材形成用組成物から形成される無機粉体含有樹脂層は、基板に対する優れた(加熱)接着性を発揮する。したがって、本発明のFPD部材形成用組成物を支持フィルム上に塗布して製造した転写フィルムは、無機粉体含有樹脂層の転写性(基板への加熱接着性)に優れたものとなる。
【0052】
上記アクリル樹脂としては、適度な粘着性を有して無機粉体(A)を結着させることができ、無機粉体含有樹脂層の焼成処理(400〜600℃)によって完全に酸化除去される(共)重合体であることが好ましい。
【0053】
このようなアクリル樹脂としては、上記(メタ)アクリレート化合物(1)の単独重合体、上記(メタ)アクリレート化合物(1)を2種以上含む共重合体ならびに上記(メタ)アクリレート化合物(1)と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。
【0054】
上記重合体(B−2)に用いられる(メタ)アクリレート化合物(1)としては、上述した重合体(B−1)の構成単位として用いられる(メタ)アクリレート化合物(1)と同様の化合物が用いられる。たとえば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートおよびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。以下、具体例を示す。
【0055】
上記アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびイソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0057】
上記フェノキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートな
どが挙げられる。
【0058】
上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0059】
上記シクロアルキル(メタ)アクリレートの例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびトリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0060】
これらの中では、上記一般式(2)中のR2 で示される基が、アルキル基またはオキシアルキレン基を含有する基であることが好ましく、特に好ましくは、(メタ)アクリレート化合物として、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートおよび2−エトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
また、上記他の共重合性単量体の例としては、上記(メタ)アクリレート化合物(1)と共重合可能な化合物ならば特に制限はないが、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸およびビニルフタル酸などの不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエンおよびイソプレンなどのビニル基含有ラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0062】
本発明のFPD部材形成用組成物を構成する重合体(B−2)における、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物由来の共重合成分は、通常70重量%以上、好ましくは90重量%以上である。
【0063】
好ましいアクリル樹脂の具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートおよびメチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体、ブチルメタクリレート−2−エチルヘキシルメタクリレート−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
【0064】
本発明のFPD部材形成用組成物を構成する重合体(B−2)の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で4,000〜300,000、好ましくは10,000〜200,000である。
【0065】
<結着樹脂(B)の配合量>
上記結着樹脂(B−2)は、無機粉体(A)100重量部に対して、5〜80重量部、好ましくは10〜50重量部用いられる。結着樹脂(B-2)の量が過小である場合には
、無機粉体を確実に結着保持することができない場合がある。一方、結着樹脂(B-2)
の量が過大である場合には、焼成工程に長い時間を要したり、形成される焼結体(たとえば、誘電体層)が十分な強度や膜厚を有しない場合がある。
【0066】
重合体(B−1)は、無機粉体(A)100重量部に対して、通常、0.01〜50重量部、好ましくは0.05〜30重量部、より好ましくは0.1〜10重量部用いられる。重合体(B−1)の量が上記範囲よりも少ないと、無機粉体含有樹脂層の室温でのハンドリング性および該無機粉体含有樹脂層の転写性(基板に対する加熱接着性)に劣る場合がある。また、重合体(B−1)の量が上記範囲よりも多いと、形成される無機粉体含有
樹脂層の転写時における密着性および転写性が過剰になり、支持フィルムが剥離しにくくなったり、該無機粉体含有樹脂層を有する転写フィルムの取扱性に劣る場合がある。
【0067】
[シリル基含有化合物(C)]
本発明で用いられるシリル基含有化合物(C)は、下記式(1)で表される化合物である。
【0068】
【化3】

【0069】
(式(1)中、pは3〜20の整数、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、aは1〜3の整数を示す。)
pの値が3未満である飽和アルキル基含有(アルキル)アルコキシシランを含有させても、得られる該無機粉体含有樹脂層において十分な可撓性が発現されない場合がある。一方、pの値が20を超える飽和アルキル基含有(アルキル)アルコキシシランは分解温度が高いため、該無機粉体含有樹脂層の焼成工程において、シリル基含有化合物(C)が完全に分解除去されない段階でガラスフリットが溶融してしまい、形成される誘電体層中に有機物質の一部が残留することにより、誘電体層の光透過率が低下する場合がある。
【0070】
上記シリル基含有化合物(C)として用いられる具体例を以下に示す。
飽和アルキルジメチルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=1)としては、たとえば、n−プロピルジメチルメトキシシラン、n−ブチルジメチルメトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルメトキシシランおよびn−イコサンジメチルメトキシシランなどが挙げられる。
【0071】
飽和アルキルジエチルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=2)として、たとえば、n−プロピルジエチルメトキシシラン、n−ブチルジエチルメトキシシラン、n−デシルジエチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルメトキシシラン、n−イコサンジエチルメトキシシランなどが挙げられる。
【0072】
飽和アルキルジプロピルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=3)として、たとえば、n−ブチルジプロピルメトキシシラン、n−デシルジプロピルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルメトキシシラン、n−イコサンジプロピルメトキシシランなどが挙げられる。
【0073】
飽和アルキルジメチルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=1)として、たとえば、n−プロピルジメチルエトキシシラン、n−ブチルジメチルエトキシシラン、n−デシルジメチルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルエトキシシラン、n−イコサンジメチルエトキシシランなどが挙げられる。
【0074】
飽和アルキルジエチルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=2)として、たとえば、n−プロピルジエチルエトキシシラン、n−ブチルジエチルエトキシシラン、n−デシルジエチルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルエトキシシラン、n−イコサンジエチルエトキシシランなどが挙げられる。
【0075】
飽和アルキルジプロピルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=3)として、たとえば、n−ブチルジプロピルエトキシシラン、n−デシルジプロピルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルエトキシシラン、n−イコサンジプロピルエトキシシランなどが挙げられる。
【0076】
飽和アルキルジメチルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=1)として、たとえば、n−プロピルジメチルプロポキシシラン、n−ブチルジメチルプロポキシシラン、n−デシルジメチルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルプロポキシシラン、n−イコサンジメチルプロポキシシランなどが挙げられる。
【0077】
飽和アルキルジエチルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=2)として、たとえば、n−プロピルジエチルプロポキシシラン、n−ブチルジエチルプロポキシシラン、n−デシルジエチルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルプロポキシシラン、n−イコサンジエチルプロポキシシランなどが挙げられる。
【0078】
飽和アルキルジプロピルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=3)として、たとえば、n−ブチルジプロピルプロポキシシラン、n−デシルジプロピルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルプロポキシシラン、n−イコサンジプロピルプロポキシシランなどが挙げられる。
【0079】
飽和アルキルメチルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=1)として、たとえば、n−プロピルメチルジメトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、n−デシルメチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジメトキシシラン、n−イコサンメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0080】
飽和アルキルエチルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=2)として、たとえば、n−プロピルエチルジメトキシシラン、n−ブチルエチルジメトキシシラン、n−デシルエチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジメトキシシラン、n−イコサンエチルジメトキシシランなどが挙げられている。
【0081】
飽和アルキルプロピルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=3)として、たとえば、n−ブチルプロピルジメトキシシラン、n−デシルプロピルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジメトキシシラン、n−イコサンプロピルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0082】
飽和アルキルメチルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=1)として、たとえば、n−プロピルメチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジエトキシシラン、n−デシルメチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジエトキシシラン、n−イコサンメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0083】
飽和アルキルエチルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=2)として、たとえば、n−プロピルエチルジエトキシシラン、n−ブチルエチルジエトキシシラン、n−デシルエチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジエトキシシラン、n−イコサンエチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0084】
飽和アルキルプロピルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=3)として、たとえば、n−ブチルプロピルジエトキシシラン、n−デシルプロピルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジエトキシシラン、n−イコサンプロピルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0085】
飽和アルキルメチルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=1)として、たとえば、n−プロピルメチルジプロポキシシラン、n−ブチルメチルジプロポキシシラン、n−デシルメチルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジプロポキシシラン、n−イコサンメチルジプロポキシシランなどが挙げられる。
【0086】
飽和アルキルエチルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=2)として、たとえば、n−プロピルエチルジプロポキシシラン、n−ブチルエチルジプロポキシシラン、n−デシルエチルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジプロポキシシラン、n−イコサンエチルジプロポキシシランなどが挙げられる。
【0087】
飽和アルキルプロピルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=3)として、たとえば、n−ブチルプロピルジプロポキシシラン、n−デシルプロピルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジプロポキシシラン、n−イコサンプロピルジプロポキシシランなどが挙げられる。
【0088】
飽和アルキルトリメトキシシラン類(a=3,m=1)として、たとえば、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−イコサントリメトキシシランなどが挙げられる。
【0089】
飽和アルキルトリエトキシシラン類(a=3,m=2)として、たとえば、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−イコサントリエトキシシランなどが挙げられる。
【0090】
飽和アルキルトリプロポキシシラン類(a=3,m=3)として、たとえば、n−プロピルトリプロポキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−デシルトリプロポキシシラン、n−ヘキサデシルトリプロポキシシラン、n−イコサントリプロポキシシランなどが挙げられる。
【0091】
本発明のシリル基含有化合物(C)の含有割合としては、無機粉体(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。シリル基含有化合物(C)の割合が過小である場合には、無機粉体含有樹脂層の表面平滑性が低下したり、無機粉体含有樹脂層を焼成して得られる焼成膜の透明性が低くなる場合がある。一方、この割合が過大である場合には、無機粉体含有樹脂組成物の保存安定性が低下したり、得られる転写フィルムのハンドリング性が低下する場合がある。
【0092】
[金属アルコキシド(D)]
本発明の無機粉体含有樹脂層には、金属アルコキシド(D)が含有される。金属アルコキシド(D)は、無機粉体(A)であるガラス粉末に含まれる水酸基と速やかに反応し、続いて上記シリル基含有化合物(C)と効率よく置換反応する。そのため、ガラス粉末のさらなる分散性の向上と、形成される膜形成材料層における表面平滑性の向上という効果を発現する。シリル基含有化合物単独ではガラス粉末との反応が不十分なため、分散性の向上がさほど期待できない。
【0093】
本発明に用いられる金属アルコキシド(D)としては、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、マグネシウムアルコキシドなどが挙げられる。なかでも反応性の面からチタニウムアルコキシドが特に好ましく用いられる。
【0094】
本発明で用いられる金属アルコキシドの具体例としては、下記式(3)で表される化合物が、好ましいものとして挙げられる。
sM(OR’)t-s ・・・(3)
(式(3)中、Mはアルミニウム、チタンまたはマグネシウムなどの金属原子であり、Rは炭素数1〜8の1価の有機基であり、R’は炭素数1〜6のアルキル基であり、tはMの原子価であり、sは0〜t−1の整数である。RまたはR’が複数個存在するときは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
前記式(3)において、炭素数1〜8の1価の有機基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基などのアシル基;アセトキシル基、プロピオニロキシル基、ブチリロキシル基、バレリロキシル基、ベンゾイルオキシル基、トリオイルオキシル基などのアシルオキシル基;ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基など、ならびにこれらの基に含まれる水素原子の一部または全部がハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などにより置換された基が挙げられる。
【0095】
また、R’の炭素数1〜6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。
【0096】
このような金属アルコキシドとしては、たとえば、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド等のチタニウムアルコキシド類;アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシドなどのアルミニウムアルコキシド類;マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド等のマグネシウムアルコキシド類が挙げられる。これらの金属アルコキシドは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0097】
本発明のFPD部材形成用組成物における金属アルコキシド(D)の含有割合としては、無機粉体(A)100重量部に対して、0.001〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1重量部である。金属アルコキシド(D)の割合が過小であると、ガラス粉末の分散性の向上効果、形成される膜形成材料層における表面平滑性の向上効果を十分に発揮させることができない場合がある。一方、この割合が過大であると、本発明のFPD部材形成用組成物を保存する際に粘度が経時的に上昇したり、金属アルコキシド(D)どうしで反応が起こり、得られる誘電体層の光透過率を下げる原因になる場合がある。
【0098】
[可塑性付与物質(E)]
本発明のFPD部材形成用組成物は、転写フィルムに良好な柔軟性を与えるために、上記結着樹脂(B)の補助剤として可塑性付与物質(E)を含有させてもよい。可塑性付与物質(E)を含有するFPD部材形成用組成物から形成される無機粉体含有樹脂層は、十分な柔軟性を有するものとなる。
【0099】
前記可塑性付与物質(E)としては、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物からなる群より選ばれた可塑剤、ポリプロピレングリコール、前述した(メタ)アクリレート化合物などの共重合性単量体および後述する溶剤などが挙げ
られ、これらの中では沸点が150℃以上のものが好ましい。このような可塑性付与物質(E)は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
【化4】

【0101】
(式(4)中、R3 およびR6 は、それぞれ独立して炭素数が1〜30の1価の鎖式炭化水素基を示し、R4 およびR5 は、それぞれ独立してメチレン基または炭素数が2〜30の2価の鎖式炭化水素基を示す。sは0〜5の整数であり、tは1〜10の整数である。)
上記一般式(4)において、R3またはR6で示される1価の鎖式炭化水素基は、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(飽和基)またはアルケニル基(不飽和基)であり、鎖式炭化水素基の炭素数は1〜30、好ましくは2〜20、より好ましくは4〜10である。鎖式炭化水素基の炭素数が上記範囲を超える場合には、後述する溶剤に対する溶解性が低くなり、無機粉体含有樹脂層に良好な柔軟性を与えることが困難になる場合がある。
【0102】
4 またはR5 で示される2価の鎖式炭化水素基は、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基(飽和基)またはアルケニレン基(不飽和基)である。
上記一般式(4)で表される化合物の例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケートおよびジブチルジグリコールアジペートなどが挙げられる。
【0103】
【化5】

【0104】
(式(5)中、R7 は炭素数が1〜30の1価の鎖式炭化水素基を示す。)
上記一般式(5)において、R7 で示される1価の鎖式炭化水素基は、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(飽和基)またはアルケニル基(不飽和基)であり、鎖式炭化水素基の炭素数は1〜30、好ましくは2〜20、より好ましくは10〜18である。
【0105】
上記一般式(5)で表される化合物の例としては、プロピレングリコールモノラウレートおよびプロピレングリコールモノオレートなどが挙げられる。
可塑性付与物質(E)としてポリプロピレングリコールを用いる場合には、該ポリプロピレングリコールのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、200〜3,000の範囲にあることが好ましく、300〜2,000の範囲にあることが特に好ましい。Mwが200未満であると、膜強度の大きい無機粉体含有樹脂層を支持フィルム上に形成することが困難になる場合があり、該無機粉体含有樹脂層を支持フィルムからガラス基板に転写する工程において、ガラス基板に加熱接着された該無機粉体含有樹脂層から支持フィルムを剥離する際に、該樹脂層の凝集破壊を起こす場合がある。一方、Mwが3,000
を超えると、被転写体であるガラス基板との加熱接着性が良好な無機粉体含有樹脂層が得られない場合がある。
【0106】
上記可塑性付与物質(E)は、本発明のFPD部材形成用組成物から溶剤を除いた全成分の3重量%以上、好ましくは4〜15重量%となる量で用いられる。可塑性付与物質(E)の含有量が過小である場合には、形成する転写フィルムに良好な柔軟性を与えることが困難となる場合がある。
【0107】
<溶剤>
本発明のFPD部材形成用組成物は、通常、溶剤を含有する。このような溶剤としては、無機粉体(A)との親和性および結着樹脂(B)の溶解性が良好で、かつ、FPD部材形成用組成物に適度な粘性を付与することができるとともに、乾燥処理をすれば容易に蒸発除去できるものであることが好ましい。
【0108】
また、特に好ましい溶剤としては、標準沸点(1気圧における沸点)が60〜200℃であるケトン類、アルコール類およびエステル類(以下、これらを「特定溶剤」という。)が挙げられる。
【0109】
上記特定溶剤の例としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類;
n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノールおよびジアセトンアルコールなどのアルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系アルコール類;
酢酸n−ブチルおよび酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸エチルおよび乳酸n−ブチルなどの乳酸エステル類;
メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびエチル3−エトキシプロピオネートなどのエーテル系エステル類などが挙げられる。これらの中では、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルおよびエチル3−エトキシプロピオネートなどが好ましい。これらの特定溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
また、上記特定溶剤以外の使用可能な溶剤としては、たとえば、テレビン油、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコールおよびベンジルアルコールなどを挙げることができる。
【0111】
上記溶剤は、FPD部材形成用組成物の粘度を好適な範囲に維持する観点から、無機粉体(A)100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の量で用いられる。また、全溶剤に対する特定溶剤の割合は、50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。また、FPD部材形成用組成物の粘度は、通常2,000〜200,000cpsの範囲であることが好ましい。
【0112】
[各種添加剤]
本発明のFPD部材形成用組成物は、任意成分として、分散剤、現像促進剤、接着助剤、ハレーション防止剤、レベリング剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤および/または連鎖移動剤などの各種添加剤を含有してもよい。
【0113】
〔転写フィルム〕
本発明のFPD部材形成用転写フィルム(以下、単に「転写フィルム」ともいう。)は、支持フィルム上に、無機粉体(A)、結着樹脂(B)、シリル基含有化合物(C)および金属アルコキシド(D)とを含有するFPD部材形成用組成物から形成される無機粉体含有樹脂層を有することを特徴とする。また前記FPD部材形成用組成物は、可塑性付与物質(E)を含有していてもよい。
【0114】
本発明の転写フィルムは、支持フィルム上に、レジスト膜と前記無機粉体含有樹脂層との積層膜を有するもの(積層型転写フィルム)であってもよい。
また、必要に応じて無機粉体含有樹脂層の表面上にカバーフィルムを有していてもよい。
【0115】
以下、転写フィルムの各構成要素について具体的に説明する。
(1)支持フィルム
本発明の転写フィルムは、無機粉体含有樹脂層を支持する支持フィルムを有する。この支持フィルムは、耐熱性および耐溶剤性を有するとともに可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコーターまたはブレードコーターなどによって支持フィルムの表面にFPD部材形成用組成物を塗布することができ、得られる転写フィルムを、ロール状に巻回した状態で保存または供給することができる。
【0116】
支持フィルムを形成する樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロンおよびセルロースなどを挙げることができる。
【0117】
支持フィルムの厚みは、20〜100μmである。また、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましく、これにより、ガラス基板への転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
【0118】
(2)カバーフィルム
本発明の転写フィルムにおいては、無機粉体含有樹脂層の表面を保護するために該無機粉体含有樹脂層の表面上にカバーフィルムが設けられていてもよい。このカバーフィルムは、可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましく、これにより、得られる転写フィルムをロール状に巻回した状態で保存または供給することができる。
【0119】
カバーフィルムを構成する樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルムおよびポリビニルアルコール系フィルムなどを挙げることができる。
【0120】
カバーフィルムの厚みは、20〜100μmである。また、カバーフィルムの表面には離型処理が施されていてもよく、無機粉体含有樹脂層との密着性が、支持フィルムよりも小さいことが好ましい。
【0121】
(3)無機粉体含有樹脂層
無機粉体含有樹脂層(FPD部材形成用組成物層)は、通常、FPD部材形成用組成物を支持フィルム上に塗布し、得られる塗布膜を乾燥させて、溶剤の全部または一部を除去することにより形成される。
【0122】
前記FPD部材形成用組成物を支持フィルム上に塗布する方法としては、膜厚の均一性
が高く、かつ膜厚が大きい(たとえば10μm以上)塗膜を高い効率で形成することができる方法であることが好ましく、具体的には、ロールコーターによる塗布方法、ブレードコーターによる塗布方法、カーテンコーターによる塗布方法およびワイヤーコーターによる塗布方法などが挙げられる。無機粉体含有樹脂層の膜厚は、形成すべきパネル部材の高さにもよるが、通常、10〜300μmである。
【0123】
塗膜の乾燥条件としては、たとえば、50〜150℃で0.5〜30分間程度であり、乾燥後における溶剤の残存割合(無機粉体含有樹脂層中の含有率)は、通常、2重量%以内である。
【0124】
〔FPDの製造方法〕
本発明のFPDの製造方法としては、下記の態様が挙げられる。
[1]基板上に、本発明の転写フィルムの無機粉体含有樹脂層を転写する工程と、転写された無機粉体含有樹脂層を焼成する工程とを含む方法により、パネル部材である誘電体層を形成する方法(FPDの製造方法(I))。
[2]基板上に、本発明の転写フィルムの無機粉体含有樹脂層を転写する工程と、転写された無機粉体含有樹脂層上にレジストパターンを形成する工程と、無機粉体含有樹脂層をエッチング処理してレジストパターンに対応するパターンを形成する工程と、該パターンを焼成処理する工程とを含む方法により、パネル部材である誘電体層、電極、隔壁、蛍光体、抵抗体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスから選ばれる少なくとも一種を形成する方法(FPDの製造方法(II))。
[3]基板上に、積層型転写フィルムの積層膜を無機粉体含有樹脂層が基板に当接するように転写する工程と、転写された積層膜におけるレジスト膜を露光処理してレジストパターンの潜像を形成する工程と、レジスト膜を現像処理してレジストパターンを顕在化させる工程と、無機粉体含有樹脂層をエッチング処理してレジストパターンに対応するパターンを形成する工程と、該パターンを焼成処理する工程とを含む方法により、パネル部材である誘電体層、電極、隔壁、蛍光体、抵抗体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスから選ばれる少なくとも一種を形成する方法(FPDの製造方法(III))。
[4]基板上に、感光性転写フィルムの無機粉体含有樹脂層を転写する工程と、転写された無機粉体含有樹脂層を露光処理してパターンの潜像を形成する工程と、該無機粉体含有樹脂層を現像処理してパターンを形成する工程と、該パターンを焼成処理する工程とを含む方法により、パネル部材である誘電体層、電極、隔壁、蛍光体、抵抗体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスから選ばれる少なくとも一種を形成する方法(FPDの製造方法(IV))。
[5]基板上に、本発明の転写フィルムの無機粉体含有樹脂層を転写する工程と、転写された無機粉体含有樹脂層を焼成して無機膜を形成する工程と、該無機膜上にレジストパターンを形成する工程と、無機膜をエッチング処理してレジストパターンに対応するパターンを形成する工程とを含む方法により、パネル部材である誘電体層、電極、隔壁、蛍光体、抵抗体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスから選ばれる少なくとも一種を形成する方法(V)。
【0125】
以下、本発明のFPDの製造方法(I)について説明する。
<FPD部材の製造方法(I)>
上記FPD部材の製造方法(I)における転写工程の一例を示せば以下の通りである。
【0126】
(1)ロール状に巻回された状態の転写フィルムを、基板の面積に応じた大きさに裁断する。
(2)裁断した転写フィルムにおける無機粉体含有樹脂層表面から必要に応じてカバーフィルムを剥離した後、基板の表面に無機粉体含有樹脂層の表面が当接するように転写フィルムを重ね合わせる。
【0127】
(3)基板に重ね合わされた転写フィルム上に加熱ローラを移動させて熱圧着させる。
(4)熱圧着により基板に固定された無機粉体含有樹脂層から支持フィルムを剥離除去する。
【0128】
上記のような操作により、支持フィルム上の無機粉体含有樹脂層が基板上に転写される。このときの転写条件としては、たとえば、加熱ローラの表面温度が60〜120℃、加熱ローラによるロール圧が1〜5kg/cm2および加熱ローラの移動速度が0.2〜1
0.0m/分である。このような操作(転写工程)は、ラミネータ装置により行うことができる。なお、基板は予熱されていてもよく、予熱温度としては、たとえば40〜100℃とすることができる。
【0129】
基板の表面に転写および形成された無機粉体含有樹脂層は、焼成されて無機焼結体(誘電体層)となる。焼成方法としては、無機粉体含有樹脂層が転写および形成された基板を高温雰囲気下に配置する方法が挙げられる。焼成処理により、無機粉体含有樹脂層に含有されている有機物質が分解されて除去され、無機粉体が溶融して焼結する。焼成温度としては、基板の溶融温度および無機粉体含有樹脂層中の構成物質などによっても異なるが、たとえば300〜800℃、好ましくは400〜620℃である。
【0130】
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」は「重量部」を示す。
【0131】
<合成例1>
ポリエチレングリコールメタクリレート(以下、「PEGMA」ともいう。)40部、2−エチルヘキシルアクリレート(以下、「EHA」ともいう。)40部、スチレン(以下、「ST」ともいう。)20部およびN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.75部を、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気下において室温で均一になるまで攪拌した。攪拌後、80℃で3時間重合させ、さらにN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.25部を加えて1時間重合し、100℃で1時間重合反応を継続させた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は、重合率が98%であり、このポリマー溶液から析出した重合体(B−1)(以下、「樹脂(1)」という。)のMwは30,000であった。結果を表1に示す。
【0132】
また、合成例1において、モノマーを表1に示す量で用いた以外は、合成例1と同様にして、樹脂(2)〜(5)を合成した。
<合成例6>
PEGMA20部、EHA40部、ST40部およびN,N’−アゾビスイソブチロニトリル1.5部を、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気下において室温で均一になるまで攪拌した。攪拌後、90℃で3時間重合させ、さらにN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を加えて1時間重合し、100℃で1時間重合反応を継続させた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は、重合率が96%であり、このポリマー溶液から析出した樹脂(6)のMwは10,000であった。結果
を表1に示す。
【0133】
<合成例7>
PEGMA20部、EHA40部、ST40部およびN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気下において室温で均一になるまで攪拌した。攪拌後、75℃で4時間重合させ、さらにN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.25部を加えて2時間重合し、100℃で1時間重合反応を継続さ
せた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は、重合率が98%であり、このポリマー溶液から析出した樹脂(7)のMwは50,000であった。結
果を表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
[実施例1]
(1)ガラスペースト組成物(FPD部材形成用組成物)の調製
ガラス粉末(無機粉体(A))として酸化鉛70重量%、酸化ホウ素10重量%および酸化ケイ素20重量%の組成を有するPbO−B23−SiO2系の混合物(軟化点50
0℃)を100部、結着樹脂(B)として重合体(B−1)を10部、重合体(B−2)を20部、シリル基含有化合物(C)としてn−デシルトリメトキシシラン(以下、「nDTMS」ともいう。)を5部、金属アルコキシド(D)としてチタンテトライソプロポキシド(以下、「TTiPO」ともいう。)を1部、可塑性付与物質(E)としてビス(2-エチルヘキシル)アゼレート(以下、「EHAz」ともいう。)を3部および溶剤と
してプロピレングリコールモノメチルエーテル35部を、分散機を用いて混練することにより、粘度が3Pa・sのFPD部材形成用組成物を調製した。
【0136】
(2)転写フィルムの製造および評価(可撓性およびハンドリング性)
前記(1)で調製したFPD部材形成用組成物を、あらかじめ離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる支持フィルム(幅400mm;長さ30m;厚さ38μm)上にブレードコーターを用いて塗布し、形成された塗膜を100℃で5分間乾燥して溶剤を除去することにより、厚さ50μmの無機粉体含有樹脂層を支持フィルム上に形成した。次いで、前記無機粉体含有樹脂層上に、あらかじめ離型処理したPETよりなるカバーフィルム(幅400mm;長さ30m;厚さ25μm)を貼り付けることにより、図2に示したような構成を有する本発明の転写フィルムを製造した。
【0137】
得られた転写フィルムは柔軟性を有しており、ロール状に巻き取る操作を容易に行うことができた。また、この転写フィルムを折り曲げても、無機粉体含有樹脂層の表面にひび割れ(屈曲亀裂)が生じることはなく、該樹脂層は優れた可撓性を有するものであった。
【0138】
また、この転写フィルムからカバーフィルムを剥離し、無機粉体含有樹脂層の表面がガラス基板の表面に当接されるように、該転写フィルムを加圧することなく重ね合わせた後、該転写フィルムをガラス基板の表面から剥がしてみた。その結果、前記樹脂層は、ガラス基板に対して適度な粘着性を示しており、しかも、該樹脂層が凝集破壊を起こすことなく転写フィルムを剥がすことができ、転写フィルムとしてのハンドリング性は良好なものであった。
【0139】
(3)無機粉体含有樹脂層の転写
上記(2)により得られた転写フィルムからカバーフィルムを剥離した後、20インチ
パネル用のガラス基板の表面(バス電極の固定面)に、無機粉体含有樹脂層の表面が当接されるように該転写フィルムを重ね合わせ、この転写フィルムを加熱ロールにより熱圧着した。圧着条件としては、加熱ロールの表面温度を110℃、ロール圧を3kg/cm2
および加熱ロールの移動速度を1m/分とした。
【0140】
熱圧着処理の終了後、ガラス基板の表面に固定(加熱接着)された無機粉体含有樹脂層から支持フィルムを剥離除去し、該樹脂層の転写を完了した。
この転写工程において、支持フィルムを剥離するときに、無機粉体含有樹脂層が凝集破壊を起こすようなことはなく、該樹脂層は十分大きな膜強度を有するものであった。さらに、転写された無機粉体含有樹脂層は、ガラス基板の表面に対して良好な接着性を有するものであった。結果を表2に示す。
【0141】
(4)無機粉体含有樹脂層の焼成工程
上記のように、ガラス基板の表面に固定(加熱接着)された無機粉体含有樹脂を焼成炉内で590℃の温度雰囲気下で20分間にわたり焼成処理を行った。これにより、ガラス基板の表面に厚み40μmの誘電体が形成されてなるパネル部材を得ることができた。結果を表2に示す。
【0142】
<転写フィルムの評価方法>
本発明の転写フィルムの評価方法を以下に示す。
(1)可撓性
転写フィルムを折り曲げた際に、無機粉体含有樹脂層の表面に、ひび割れ(屈曲亀裂)が生じなかったものを○とし、ひび割れが生じたものを×とした。
(2)残留気泡
焼成後得られた無機層を透過型光学顕微鏡で観察し、無機層中に残留した気泡の平均直径を測定した。残留気泡は、以下の評価基準に基づいて行った。
A:5μm未満
B:5μm以上10μm未満
C:10μm以上
(3)表面平滑性
非接触三次元形状測定装置(型番:NH−3 三鷹光器(株))を用いて測定範囲500μm×500μm、測定ピッチ10μmの条件で測定し、10点平均粗さ(Rz)を表面粗度とした。表面粗度は、以下の評価基準に基づいて行った。
○:0.01μm未満
×:0.01μm以上
[実施例2〜9]
実施例1において、FPD部材形成用組成物として表2に記載のものを用いた以外は実施例1と同様にして、FPD部材形成用組成物および転写フィルムを調製した。結果を表2に示す。
【0143】
[比較例1]
実施例3において、重合体(B−1)を用いなかった以外は実施例3と同様にして、FPD部材形成用組成物および転写フィルムを調製した。結果を表2に示す。
【0144】
[比較例2]
実施例3において、n−デシルトリメトキシシラン(シリル基含有化合物(C))を用いなかった以外は実施例3と同様にして、FPD部材形成用組成物および転写フィルムを調製した。結果を表2に示す。
【0145】
[比較例3]
実施例3において、チタンテトライソプロポキシド(金属アルコキシド(D))を用いなかった以外は実施例3と同様にして、FPD部材形成用組成物および転写フィルムを調製した。結果を表2に示す。
【0146】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】交流型のPDPの断面形状を示す模式図である。
【図2】本発明の転写フィルムの構成例の概略図である。
【符号の説明】
【0148】
1 ガラス基板
2 ガラス基板
3 隔壁
4 透明電極
5 バス電極
6 アドレス電極
7 蛍光物質
8 誘電体層
9 誘電体層
10 保護層
11 隔壁
F1 支持フィルム
F2 部材形成材料層
F3 カバーフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無機粉体と、
(B)結着樹脂と、
(C)シリル基含有化合物と、
(D)金属アルコキシドと
を含有し、かつ、該結着樹脂(B)中に(B−1)ポリオキシアルキレン部位を有する重量平均分子量10,000〜50,000の(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【請求項2】
前記重合体(B−1)が、
ポリオキシアルキレン部位を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位5〜30重量%と、
ポリオキシアルキレン部位を有しない(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位30〜50重量%と、
芳香族ビニル化合物に由来する構成単位30〜50重量%と
を含有することを特徴とする請求項1に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン部位を有する(メタ)アクリレート化合物が、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートおよびノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートの中から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする請求項2に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【請求項4】
前記シリル基含有化合物(C)が、下記式(1)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【化1】

(式(1)中、pは3〜20の整数、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、aは1〜3の整数を示す。)
【請求項5】
前記金属アルコキシド(D)が、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドおよびマグネシウムアルコキシドの中から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【請求項6】
可塑性付与物質(E)をさらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【請求項7】
支持フィルム上に、請求項1〜6のいずれかに記載のフラットパネルディスプレイ部材
形成用組成物から得られるフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物層を有することを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材形成用転写フィルム。
【請求項8】
支持フィルム上に形成された、請求項1〜6のいずれかに記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物から得られるフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物層を基板上に転写する工程と、
該フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物層を焼成処理する工程と
を含むことを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材の製造方法。
【請求項9】
前記フラットパネルディスプレイ部材が誘電体または隔壁であることを特徴とする請求項8に記載のフラットパネルディスプレイ部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−140805(P2009−140805A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317046(P2007−317046)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】