説明

フレキシブルハーネスおよびそれを用いた電気的接続部品と電気的接続方法

【課題】着脱可能なフレキシブルハーネスでありながら、従来のレセプタクルを用いずにフレキシブルハーネスの導体パターンの端部を電気・電子部品の電極パッドに安定して接触させることができるフレキシブルハーネスおよびそれを用いた電気的接続部品を提供する。
【解決手段】本発明に係るフレキシブルハーネスは、電気・電子部品の電極パッドに対して着脱可能なフレキシブルハーネスであって、可撓性を有する絶縁フィルムと前記絶縁フィルム上に形成された導体パターンと前記導体パターンの端部の接点領域に形成された接点部材とを具備し、前記接点部材は弾性変形可能な樹脂をコアとし前記コアが導電層で被覆されたボール形状を有し、前記電極パッドに対して押圧により固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁フィルム上に導体パターンが形成されたフレキシブルプリント基板からなるフレキシブルハーネスに関し、特にプリント基板やICチップ等の電気・電子部品の間を電気的に接続するための着脱可能なフレキシブルハーネスおよびそれを用いた電気的接続部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板やICチップ等の電気・電子部品の間の電気的接続には、しばしばフレキシブルハーネスが用いられている。フレキシブルハーネスは、可撓性のある絶縁フィルム上に導体パターンが形成されたフレキシブルプリント基板からなり、導体パターンを構成する各線の端部と前記電気・電子部品の電極パッドとを接触・導通させることでプリント基板やチップ等の部品間を電気的に接続するものである。また、フレキシブルハーネスは、着脱可能であることによって接続される電気・電子部品や装置(例えば、装置の内蔵部品や周辺装置など)の交換が簡便になったり、電気・電子機器の組立工程における作業性を向上させたりすることができる利点がある。
【0003】
フレキシブルハーネスを電気・電子部品と接続するにあたっては、導体パターンの各線の端部と電気・電子部品の電極パッドとが安定して接触・導通していることが重要である。そのため、電気・電子部品には、フレキシブルハーネスの各線の端部に荷重を掛けながら嵌合するためのレセプタクル(受けコネクタ)が設けられることが一般的である。
【0004】
レセプタクルの1例としては、プリント基板やICチップ等の部品と電気的に接続されたバネ性のある複数本の導体(金型などで作製する金属導体電極)がプラスチック部品に嵌め合わされた構造をしており、フレキシブルハーネスをレセプタクルに嵌合したときに、レセプタクル中のバネ性のある各導体がフレキシブルハーネスの各線端部を押し付ける構成が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
コネクタ構造の他の例としては、表面に導電体を有する凸型絶縁性部材をレセプタクル側に設け、表面に導電体を有し該凸型部材と嵌合可能な凹部をフレキシブルハーネス側に設け、前記凹部と前記凸型部材とを嵌合することで電気的接合を行うコネクタ構造が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、レセプタクルの導体接点部分がフレキシブルハーネスの各線の端部に押し付けられる応力を受け止めるため、フレキシブルハーネスの接触面裏側に補強用のリジット基板が張り合わせられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−68940号公報
【特許文献2】特開平11−31543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、ICチップなどの電子部品において小型化や多ピン化(端子の狭ピッチ化)の進展が著しい。一方、従来のレセプタクルは、上述したようにバネ性のある導体をプラスチック部品に嵌め合わせるなどした構造であり、ICチップなどに比して小型化や多ピン化が難しいという問題がある。特にグリッド状(複数列・複数行の格子点状、例えば、ピングリッドアレイやランドグリッドアレイ等)に配列された接点構造を実現しようとした場合、バネ性のある導体を用いてグリッド状の接点構造に成形すること自体が難しく、成形できたとしても製造コストが非常に高くなるなどの問題がある。
【0009】
そのような問題に対し、レセプタクル自体を無くしてフレキシブルハーネスの各線端部を電気・電子部品の電極パッドに直接接触させることが考えられる。しかしながら、フレキシブルハーネスの各線の端部はバネ性を有する構造となっていないため接点に掛かる荷重(面圧)が不安定になりやすく、電気・電子部品の電極パッドにおける僅かな高さバラツキなどの影響によって、電気的接続を安定に保つことが困難になると予想される。例えば、プリント基板に反りがある場合、接点部分にバネ構造が無いことから接触しない端子が多発することが懸念される。
【0010】
従って、本発明の目的は、着脱可能なフレキシブルハーネスでありながら、従来のレセプタクルを用いずにフレキシブルハーネスの導体パターンの端部を電気・電子部品の電極パッドに安定して接触させることができるフレキシブルハーネスおよびそれを用いた電気的接続部品と電気的接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するため、電気・電子部品の電極パッドに対して着脱可能なフレキシブルハーネスであって、
可撓性を有する絶縁フィルムと前記絶縁フィルム上に形成された導体パターンと前記導体パターンの端部の接点領域に形成された接点部材とを具備し、前記接点部材は弾性変形可能な樹脂をコアとし前記コアが導電層で被覆されたボール形状を有し、前記電極パッドに対して押圧により固定されていることを特徴とするフレキシブルハーネスを提供する。
【0012】
また、本発明は上記目的を達成するため、上記の本発明に係るフレキシブルハーネスにおいて、以下のような改良や変更を加えることができる。
(1)前記接点部材がはんだによって前記導体パターンの前記接点領域に固定されている。
(2)前記導体パターンは、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記電極パッドに接続される複数の信号線と、前記絶縁フィルムの他方の面に形成されたグランド線とからなる。
(3)前記導電層が複数層構造である。
(4)前記コアの樹脂が熱硬化性フェノールである。
(5)本発明に係るフレキシブルハーネスを用いて電気的接続がなされている電気・電子部品のモジュールである。
【0013】
また、本発明は上記目的を達成するため、電気・電子部品の電極パッドと接触しかつ着脱可能な電気的接続部品であって、
可撓性を有する絶縁フィルムと前記絶縁フィルム上に形成された導体パターンと前記導体パターンの端部の接点領域に形成された接点部材とを具備しかつ前記接点部材が弾性変形可能な樹脂コアを導電層で被覆したボール形状であるフレキシブルハーネスと、
前記絶縁フィルムにおける前記接点領域の面と反対側の面に配設され、前記接点領域全体を押圧するための剛性を有する第1の板状部材と、
前記第1の板状部材と前記接点部材と前記電極パッドとを固定するための固定治具とを具備し、
前記接点部材は、前記電極パッドに対して押圧により固定されることを特徴とする電気的接続部品を提供する。
【0014】
また、本発明は上記目的を達成するため、上記の本発明に係る電気的接続部品において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(6)前記絶縁フィルムと前記第1の板状部材との間に配設される弾性を有する第1のシート部材を具備し、前記第1の板状部材は、前記第1のシート部材を介して前記接点領域全体を押圧する。
(7)前記電極パッドが形成されている前記電気・電子部品の面と反対側の面に配設され、前記接点領域全体を押圧するための剛性を有する第2の板状部材を更に具備する。
(8)前記電極パッドが形成されている前記電気・電子部品の面と反対側の面と前記第2の板状部材との間に配設される弾性を有する第2のシート部材を具備し、前記第2の板状部材は、前記第2のシート部材を介して前記接点領域全体を押圧する。
(9)前記第1の板状部材と前記第2の板状部材の少なくとも一方が板バネである。
(10)前記接点部材と前記電極パッドとの面内方向の位置合わせを行うための位置合わせ部材を更に具備する。
(11)本発明に係る電気的接続部品を用いて電気的接続がなされている電気・電子部品のモジュールである。
【0015】
また、本発明は上記目的を達成するため、電気・電子部品の電極パッドとワイヤーハーネスとを電気的に接続させかつ着脱可能な接続方法であって、
可撓性を有する絶縁フィルムと前記絶縁フィルム上に形成された導体パターンと前記導体パターンの端部の接点領域に形成された接点部材とを具備しかつ前記接点部材が弾性変形可能な樹脂コアを導電層で被覆したボール形状であるフレキシブルハーネスを前記ワイヤーハーネスとして用い、
前記絶縁フィルムにおける前記接点領域の面と反対側の面に剛性を有する第1の板状部材を配設し、
前記接点部材と前記電極パッドとを対向して当接し、
前記第1の板状部材を用いて前記接点領域全体を押圧して前記接点部材と前記電極パッドとを固定することを特徴とする電気的接続方法を提供する。
【0016】
また、本発明は上記目的を達成するため、上記の本発明に係る電気的接続方法において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(12)前記絶縁フィルムと前記第1の板状部材との間に弾性を有する第1のシート部材を配設し、前記第1の板状部材により前記第1のシート部材を介して前記接点領域全体を押圧する。
(13)前記電極パッドが形成されている前記電気・電子部品の面と反対側の面に剛性を有する第2の板状部材を配設し、前記第2の板状部材を更に用いて前記接点領域全体を押圧して前記接点部材と前記電極パッドとを固定する。
(14)前記電極パッドが形成されている前記電気・電子部品の面と反対側の面と前記第2の板状部材との間に弾性を有する第2のシート部材を配設し、前記第2の板状部材により前記第2のシート部材を介して前記接点領域全体を押圧する。
(15)前記第1の板状部材は板バネであり、挟圧固定する前の形状が前記接点領域に向けて凸状であり、挟圧固定した後の状態が平坦な板状となる。
(16)前記第1の板状部材と前記第2の板状部材の少なくとも一方は板バネであり、挟圧固定する前の形状が前記接点領域に向けて凸状であり、挟圧固定した後の状態が平坦な板状となる。
(17)位置合わせ部材を用いて前記接点部材と前記電極パッドとの面内方向の位置合わせを行った状態で挟圧固定する。
【発明の効果】
【0017】
従って、本発明の目的は、着脱可能なフレキシブルハーネスでありながら、従来のレセプタクルを用いずにフレキシブルハーネスの導体パターンの端部を電気・電子部品の電極パッドに安定して接触させられるフレキシブルハーネスを提供することができる。また、該フレキシブルハーネスを用いた電気的接続部品や電気的接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルハーネスの1例を示す斜視図である。
【図2A】図1に示したフレキシブルハーネスの接点領域の横断面模式図である。
【図2B】接点部材の1例を示す断面模式図である。
【図3】第1の実施形態に係るフレキシブルハーネスとプリント基板の電極パッドとを接続する様子の1例を示す横断面模式図であり、(a)は分離状態、(b)は接続状態を示す。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る電気的接続部品およびプリント基板への接続方法の1例を示す斜視図である。
【図5A】図1に示したフレキシブルハーネスとプリント基板の電極パッドとの接続において、接触不良を起こしている場合の接点領域の横断面模式図である。
【図5B】図4に示した電気的接続部品とプリント基板の電極パッドとの接続における接点領域の横断面模式図である。
【図6】第2の実施形態に係る電気的接続部品とプリント基板の電極パッドとを接続する様子の他の1例を示す横断面模式図であり、(a)は分離状態、(b)は接続状態を示す。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る電気的接続部品およびプリント基板への接続方法の1例を示す斜視図である。
【図8】第3の実施形態に係る他の電気的接続部品とプリント基板の電極パッドとを接続する様子の1例を示す横断面模式図であり、(a)は挟圧前の状態、(b)は挟圧後の状態を示す。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る電気的接続部品およびプリント基板への接続方法の1例を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る電気的接続部品をICチップとプリント基板との接続に適用した例を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る電気的接続部品をコネクタとプリント基板との接続に適用した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。なお、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で組み合わせや改良が適宜可能である。また、同義の部材・部位には同じ符号を付すことにより重複する説明を省略する。
【0020】
[本発明の第1の実施形態]
(フレキシブルハーネスの構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルハーネス100の1例を示す斜視図である。図2Aは、図1に示したフレキシブルハーネス100の接点領域5の横断面模式図であり、図2Bは、接点部材6の1例を示す断面模式図である。
【0021】
図1〜図2Bに示したように、第1の実施形態に係るフレキシブルハーネス100は、可撓性を有する絶縁フィルム1上に導体パターン4が形成され、導体パターン4の端部の接点領域5にボール状の接点部材6を具備している。絶縁フィルム1としては、通常のフレキシブルプリント基板(FPC)に用いられている厚さ25〜50μm程度のポリイミド系樹脂や液晶ポリマー(LCP)を用いることができる。
【0022】
接点部材6は、弾性変形が可能な樹脂をコア7とし、コア7の外周が導電層8で被覆された構造を有している(図2B参照)。コア7としては、例えば、熱硬化性のフェノール樹脂を用い直径200〜300μm程度であることが好ましい。また、導電層8としては、下地層9(例えば、ニッケル(Ni)層)を厚さ5μm程度形成した上に耐食性・高導電性を有する接点層10(例えば、金(Au)層)を厚さ20μm程度形成することが好ましい。すなわち、接点部材6としては直径250〜350μm程度のボール形状となり、接点部材6を複数列・複数行の格子点状に配置することで狭ピッチ(例えば、0.5 mmピッチ)のグリッド状コネクタが実現される。なお、接点部材6のボール形状とは、厳密な球体である必要は無く、外寸法が250〜350μm程度の範囲に入る長球状や多面体状またはそれらの複合形状であることを包含する。
【0023】
接点領域5における接点部材6の固定方法は、導体パターン4(具体的には信号線2)と良好な導通が確保できる限り特段の制限は無いが、はんだ11で固定されることは好ましい(図2A参照)。これは、既往の製造装置(例えば、ボールマウンタなど)を利用することによりフレキシブルハーネス100製造の自動化・低コスト化に好適だからである。
【0024】
また、導体パターン4は、絶縁フィルム1の一方の面に形成されその端部に接点部材6が配設される複数の信号線2と、絶縁フィルム1の他方の面に形成されたグランド線3とからなる(図2A参照)。グランド線3は必ずしも形成されなくてもよいが、信号の高速伝送(高周波での伝送)用途の場合にはグランド線3(例えば、絶縁フィルム1の略一面をカバーするべたグランド)が形成されることが好ましい。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係るフレキシブルハーネス100とプリント基板12の電極パッド13とを接続する様子の1例を示す横断面模式図であり、(a)は分離状態、(b)は接続状態を示す。フレキシブルハーネス100の接点領域5に多数個の接点部材6を配列させると、図3(a)に示すように、ボール形状の大きさが他よりも大きい接点部材14や盛り過ぎたはんだ16のために他よりも浮いた状態になっている接点材料15などが存在する場合がある。そのようなフレキシブルハーネス100をプリント基板12の電極パッド13と接触させた場合であっても、接点部材6,14,15が弾性変形可能な樹脂からなるコア7を有することから、図3(b)に示すように、高さ(信号線2からの突出量)のばらつきを吸収し、本発明に係るフレキシブルハーネス100は安定的な接触(電気的接合)を可能とする。
【0026】
なお、コア7として熱硬化性のフェノール樹脂を用いた場合、接合部材の直径の10%程度で弾性変形が可能である。例えば、接合部材の直径が300μmの場合、変位量30μm程度の弾性変形(潰れ)が可能である。言い換えると、接点部材の大きさやはんだの盛り付け量において、弾性変形の範囲内で許容度があると言える。これは、フレキシブルハーネスの製造歩留まり向上および電気的接合の安定性・信頼性向上に寄与し、全体としての低コスト化につながる。
【0027】
[本発明の第2の実施形態]
(電気的接続部品の構成)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る電気的接続部品200およびプリント基板12への接続方法の1例を示す斜視図である。図4に示したように、第2の実施形態に係る電気的接続部品200は、第1の実施形態に係るフレキシブルハーネス100と、フレキシブルハーネス100の絶縁フィルム1における接点領域5の面と反対側の面に配設され弾性を有する第1のシート部材21と、第1のシート部材21を介して接点領域5全体を押圧するための剛性を有する第1の板状部材22と、第1の板状部材22と第1のシート部材21と接点部材6と電極パッド13との少なくとも4つの部材を固定するための固定治具23とを具備している。電気的接続部品200と電気・電子部品の電極パッド(図4においては、プリント基板12の電極パッド13)との接続は、フレキシブルハーネス100の接点部材6と電極パッド13とを対向して当接させ、接点領域5の背面から第1のシート部材21を介して第1の板状部材22で接点領域5全体を押圧し、固定治具23で固定することによってなされる。
【0028】
第1のシート部材21の素材としては、押圧・固定する応力との兼ね合いで適宜選定すればよいが、例えば、シリコンゴムを好適に利用することができる。また、第1の板状部材22の素材も押圧・固定する応力との兼ね合いで適宜選定すればよいが、例えば、ステンレス鋼やセラミックスなどを好適に利用することができる。また、固定治具23および押圧・固定方法に特段の限定はなく、従前の技術(例えば、ネジ固定やボルト・ナット固定)を利用できる。
【0029】
次に、第2の実施形態に係る電気的接続部品200の作用効果について説明する。図5Aは、図1に示したフレキシブルハーネス100とプリント基板12の電極パッド13との接続において、接触不良を起こしている場合の接点領域5の横断面模式図である。図5Bは、図4に示した電気的接続部品200とプリント基板12の電極パッド13との接続における接点領域5の横断面模式図である。
【0030】
接点部材6の数(電極パッド13の数)が非常に多い場合、全ての接点を安定して導通させるためには第1の板状部材22を固定治具23で強力に締め付ける必要がある。例えば、安定した導通のために接点1個あたり20 gfの応力が必要であるとすると、400個の接点の場合、全体として8 kgfの応力で第1の板状部材22を押圧しなければならない。このとき、第1のシート部材21を具備しない接続部品で接続しようとすると、図5Aに示すように、曲げモーメントによって第1の板状部材22が湾曲し、その結果、電極パッドとの接触不良を起こした接点部材6が中央部付近で発生する可能性がある。
【0031】
これに対し、第2の実施形態に係る電気的接続部品200は、図5Bに示すように、弾性を有する第1のシート部材21を具備することから第1の板状部材22の湾曲変形を吸収することができ、全ての接点を安定して導通させることができる。すなわち、本発明に係る電気的接続部品200は、接点部材6の数(電極パッド13の数)が多い場合に特に好適な実施形態と言える。なお、接点部材6の数(電極パッド13の数)が十分少ない場合(言い換えると、曲げモーメントによる第1の板状部材22の湾曲が十分小さい場合)、第1のシート部材21を具備していなくてもよい。
【0032】
図6は、第2の実施形態に係る電気的接続部品200とプリント基板12の電極パッド13とを接続する様子の他の1例を示す横断面模式図であり、(a)は分離状態、(b)は接続状態を示す。実際の電気・電子部品においては、図6(a)に示すように、プリント基板12自体が反りや湾曲を有している場合がある。そのように場合においても、図6(b)に示すように、弾性を有する第1のシート部材21がプリント基板12の反りや湾曲を吸収できることから、全ての接点を安定して導通させることができる。なお、図6(b)においては、固定治具24としてボルト・ナットを用いた場合を示した。
【0033】
[本発明の第3の実施形態]
(電気的接続部品の構成)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る電気的接続部品300およびプリント基板12への接続方法の1例を示す斜視図である。図7に示したように、第3の実施形態に係る電気的接続部品300は、第2の実施形態に係る電気的接続部品200に加えて、プリント基板12における電極パッド13の面と反対側の面に配設され弾性を有する第2のシート部材31と、第2のシート部材31を介して接点領域5全体を押圧するための剛性を有する第2の板状部材32とを具備している。電気的接続部品300と電気・電子部品の電極パッド(図7においては、プリント基板12の電極パッド13)との接続は、フレキシブルハーネス100の接点部材6と電極パッド13とを対向して当接させ、接点領域5の背面から第1のシート部材21を介した第1の板状部材22と電極パッド13の背面から第2のシート部材31を介した第2の板状部材32とで接点領域5全体を挟圧し、固定治具23で固定することによってなされる。
【0034】
第2のシート部材31および第2の板状部材32の素材としては、それぞれ第2の実施形態に係る電気的接続部品200における第1のシート部材21および第1の板状部材22と同じ観点で適宜選定できる。なお、第1のシート部材21と第2のシート部材31は同じ素材を用いてもよいし異なる素材を用いてもよい。第1の板状部材22と第2の板状部材32に関しても同様である。
【0035】
次に、第3の実施形態に係る電気的接続部品300の作用効果について説明する。前述したように、第3の実施形態に係る電気的接続部品300は、第2の実施形態に係る電気的接続部品200に加えて、第2のシート部材31と第2の板状部材32とを具備し、第1のシート部材21を介した第1の板状部材22と第2のシート部材31を介した第2の板状部材32とで接点領域5全体を挟圧・固定することから、接点部材6と電極パッド13との間の接触不良の発生が第2の実施形態の場合よりも更に抑制され、より安定した電気的接続を実現することができる。なお、第3の実施形態に係る電気的接続部品は、第1のシート部材21および第2のシート部材31を具備することが好ましいが、接点部材6の数(電極パッド13の数)が十分少ない場合(言い換えると、曲げモーメントによる第1の板状部材22および第2の板状部材32の湾曲が十分小さい場合)、第1のシート部材21および第2のシート部材31を具備していなくてもよい。
【0036】
また、接点部材6の数(電極パッド13の数)が多い場合、接点領域5の中央部付近をより安定して挟圧するためには、第1の板状部材および/または第2の板状部材が板バネになっていることが更に好ましい。図8は、第3の実施形態に係る他の電気的接続部品301とプリント基板12の電極パッド13とを接続する様子の1例を示す横断面模式図であり、(a)は挟圧前の状態、(b)は挟圧後の状態を示す。
【0037】
図8に示すように、第3の実施形態に係る他の電気的接続部品301は、第1の板状部材33と第2の板状部材34とが板バネになっている点において前述の電気的接続部品300と異なる。また、挟圧固定する前の第1の板状部材33および/または第2の板状部材34の形状(配設状態)は接点領域5に向けて凸状であり(図8(a)参照)、挟圧固定した後の形状(配設状態)が平坦な板状となる(図8(b)参照)。このようにすることによって、接点領域5全体への挟圧応力がより均等になり、更に安定した電気的接続を実現することができる。
【0038】
[本発明の第4の実施形態]
(電気的接続部品の構成)
図9は、本発明の第4の実施形態に係る電気的接続部品400およびプリント基板12への接続方法の1例を示す斜視図である。図9に示したように、第4の実施形態に係る電気的接続部品400は、第3の実施形態に係る電気的接続部品300に加えて、接点部材6と電極パッド13との面内方向の位置合わせを行うための位置合わせ部材41を具備している。位置合わせ部材41は位置合わせ用凸部42を有し、位置合わせ用凸部42と嵌合する位置合わせ用貫通孔43,44,45,46がそれぞれ第1のシート部材21とフレキシブルハーネス100とプリント基板12と第2のシート部材31とに形成されている。
【0039】
電気的接続部品400と電気・電子部品の電極パッド(図9においては、プリント基板12の電極パッド13)との接続は、フレキシブルハーネス100の接点部材6と電極パッド13とを対向して当接させるにあたり、位置合わせ部材41を用いて位置合わせ用凸部42を第2のシート部材31の位置合わせ用貫通孔46とプリント基板12の位置合わせ用貫通孔45とフレキシブルハーネス100の位置合わせ用貫通孔44と第1のシート部材21の位置合わせ用貫通孔43とに嵌合させて接点部材6と電極パッド13との面内方向の位置合わせを行った後、第3の実施形態と同様に挟圧固定することによってなされる。なお、第4の実施形態に係る電気的接続部品は、第1のシート部材21および第2のシート部材31を具備することが好ましいが、第3の実施形態と同様に、場合によってはそれらを具備していなくてもよい。
【0040】
位置合わせ部材41の素材としては特に限定されないが、狭ピッチで配設された接点部材6と電極パッド13とを正しく位置合わせするため、例えば、加工寸法精度に優れたABS樹脂などを好適に利用することができる。また、位置合わせ用貫通孔43,44,45,46は、金型などによって形成加工することができる。
【0041】
次に、第4の実施形態に係る電気的接続部品400の作用効果について説明する。前述したように、第4の実施形態に係る電気的接続部品400は、第3の実施形態に係る電気的接続部品300,301に加えて、位置合わせ部材41を具備している。位置合わせ部材41を用いることによって、接点部材6と電極パッド13との位置合わせを精度良くかつ簡便に行うことができることから、フレキシブルハーネス100の着脱作業が容易となり、電気・電子部品の交換作業性や電気・電子機器の組立作業性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明に係るフレキシブルハーネスおよびそれを用いた電気的接続部品は、着脱可能なフレキシブルハーネスでありながら従来のレセプタクルを用いずに導体パターンの端部を電気・電子部品の電極パッドに安定して接触させることができる。例えば、プリント基板同士の接続や1枚のプリント基板内での電子部品同士の接続を行うフレキシブルハーネスとして適用することができる。特に、高速データ伝送を必要としながら高低差のある位置や可動部分を跨いで配線する場合などに好適である。具体例としては、ICチップとプリント基板との間を接続する電気的接続部品(図10参照)や、コネクタとプリント基板との間を接続する電気的接続部品(図11参照)などが挙げられる。
【符号の説明】
【0043】
100…フレキシブルハーネス、200,300,301,400…電気的接続部品、
1…絶縁フィルム、2…信号線、3…グランド線、4…導体パターン、
5…接点領域、6,14,15…接点部材、
7…コア、8…導電層、9…下地層、10…接点層、11,16…はんだ、
12…プリント基板、13…電極パッド、
21…第1のシート部材、22,33…第1の板状部材、23,24…固定治具、
31…第2のシート部材、32,34…第2の板状部材、
41…位置合わせ部材、42…位置合わせ用凸部、
43,44,45,46…位置合わせ用貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気・電子部品の電極パッドに対して着脱可能なフレキシブルハーネスであって、
可撓性を有する絶縁フィルムと、前記絶縁フィルム上に形成された導体パターンと、前記導体パターンの端部の接点領域に形成された接点部材とを具備し、
前記接点部材は弾性変形可能な樹脂をコアとし前記コアが導電層で被覆されたボール形状を有し、前記電極パッドに対して押圧により固定されることを特徴とするフレキシブルハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のフレキシブルハーネスにおいて、
前記接点部材がはんだによって前記導体パターンの前記接点領域に固定されていることを特徴とするフレキシブルハーネス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフレキシブルハーネスにおいて、
前記導体パターンは、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記電極パッドに接続される複数の信号線と、前記絶縁フィルムの他方の面に形成されたグランド線とからなることを特徴とするフレキシブルハーネス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフレキシブルハーネスにおいて、
前記導電層が複数層構造であることを特徴とするフレキシブルハーネス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフレキシブルハーネスにおいて、
前記コアの樹脂が熱硬化性フェノールであることを特徴とするフレキシブルハーネス。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフレキシブルハーネスを用いて電気的接続がなされていることを特徴とする電気・電子部品のモジュール。
【請求項7】
電気・電子部品の電極パッドと接触しかつ着脱可能な電気的接続部品であって、
可撓性を有する絶縁フィルムと前記絶縁フィルム上に形成された導体パターンと前記導体パターンの端部の接点領域に形成された接点部材とを具備し、かつ前記接点部材が弾性変形可能な樹脂コアを導電層で被覆したボール形状であるフレキシブルハーネスと、
前記絶縁フィルムにおける前記接点領域の面と反対側の面に配設され、前記接点領域全体を押圧するための剛性を有する第1の板状部材と、
前記第1の板状部材と前記接点部材と前記電極パッドとを固定するための固定治具とを具備し、
前記接点部材は、前記電極パッドに対して押圧により固定されることを特徴とする電気的接続部品。
【請求項8】
前記絶縁フィルムと前記第1の板状部材との間に配設される弾性を有する第1のシート部材を具備し、
前記第1の板状部材は、前記第1のシート部材を介して前記接点領域全体を押圧することを特徴とする電気的接続部品。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電気的接続部品において、
前記電極パッドが形成されている前記電気・電子部品の面と反対側の面に配設され、前記接点領域全体を押圧するための剛性を有する第2の板状部材を更に具備することを特徴とする電気的接続部品。
【請求項10】
請求項9に記載の電気的接続部品において、
前記電極パッドが形成されている前記電気・電子部品の面と反対側の面と前記第2の板状部材との間に配設される弾性を有する第2のシート部材を具備し、
前記第2の板状部材は、前記第2のシート部材を介して前記接点領域全体を押圧することを特徴とする電気的接続部品。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の電気的接続部品において、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材の少なくとも一方が板バネであることを特徴とする電気的接続部品。
【請求項12】
請求項7乃至請求項11のいずれかに記載の電気的接続部品において、
前記接点部材と前記電極パッドとの面内方向の位置合わせを行うための位置合わせ部材を更に具備することを特徴とする電気的接続部品。
【請求項13】
請求項7乃至請求項12のいずれかに記載の電気的接続部品を用いて電気的接続がなされていることを特徴とする電気・電子部品のモジュール。
【請求項14】
電気・電子部品の電極パッドとワイヤーハーネスとを電気的に接続させかつ着脱可能な接続方法であって、
可撓性を有する絶縁フィルムと前記絶縁フィルム上に形成された導体パターンと前記導体パターンの端部の接点領域に形成された接点部材とを具備し、かつ前記接点部材が弾性変形可能な樹脂コアを導電層で被覆したボール形状であるフレキシブルハーネスを前記ワイヤーハーネスとして用い、
前記絶縁フィルムにおける前記接点領域の面と反対側の面に剛性を有する第1の板状部材を配設し、
前記接点部材と前記電極パッドとを対向して当接し、
前記第1の板状部材を用いて前記接点領域全体を押圧して前記接点部材と前記電極パッドとを固定することを特徴とする電気的接続方法。
【請求項15】
請求項14に記載の電気的接続方法において、
前記絶縁フィルムと前記第1の板状部材との間に弾性を有する第1のシート部材を配設し、
前記第1の板状部材により前記第1のシート部材を介して前記接点領域全体を押圧することを特徴とする電気的接続方法。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の電気的接続方法において、
前記電極パッドが形成されている前記電気・電子部品の面と反対側の面に剛性を有する第2の板状部材を配設し、
前記第2の板状部材を更に用いて前記接点領域全体を押圧して前記接点部材と前記電極パッドとを固定することを特徴とする電気的接続方法。
【請求項17】
請求項16に記載の電気的接続方法において、
前記電極パッドが形成されている前記電気・電子部品の面と反対側の面と前記第2の板状部材との間に弾性を有する第2のシート部材を配設し、
前記第2の板状部材により前記第2のシート部材を介して前記接点領域全体を押圧することを特徴とする電気的接続方法。
【請求項18】
請求項14または請求項15に記載の電気的接続方法において、
前記第1の板状部材は板バネであり、挟圧固定する前の形状が前記接点領域に向けて凸状であり、挟圧固定した後の状態が平坦な板状となることを特徴とする電気的接続方法。
【請求項19】
請求項16または請求項17に記載の電気的接続方法において、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材の少なくとも一方は板バネであり、挟圧固定する前の形状が前記接点領域に向けて凸状であり、挟圧固定した後の状態が平坦な板状となることを特徴とする電気的接続方法。
【請求項20】
請求項14乃至請求項19のいずれかに記載の電気的接続方法において、
位置合わせ部材を用いて前記接点部材と前記電極パッドとの面内方向の位置合わせを行った状態で押圧固定することを特徴とする電気的接続方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−101943(P2013−101943A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−278833(P2012−278833)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2009−196538(P2009−196538)の分割
【原出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】