説明

フレキシブル金属積層体の製造方法

【課題】 屈曲性、耐折特性、耐熱信頼性、耐湿信頼性、吸湿特性、寸法精度に優れるフレキシブル金属積層体、フレキシブルプリント基板、を安価に製造する。
【解決手段】
耐熱性樹脂フィルムの少なくとも片面に金属箔が積層されたフレキシブル金属積層体であって、該フィルム層は2層からなり、IPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製したサンプルを用いて、85℃、85%RHの加熱、加湿下にて500時間処理した後の接着強度が、4N/cm以上であり、かつ、金属箔側に接する耐熱性樹脂フィルム層のTgが350℃以上の熱可塑性樹脂であることを特徴とするフレキシブル金属積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性樹脂フィルムの少なくとも片面に金属箔が積層されたフレキシブル金属積層体、及び、フレキシブルプリント基板に関し、更に詳しくは、屈曲性、耐折特性、絶縁性に優れ、かつ、半田処理後の接着強度などの耐熱信頼性、加湿処理後の接着強度等の耐湿信頼性、及び、湿度寸法変化率等の寸法精度にも優れるフレキシシブル金属張積層体の製造方法に関するものである。
【0002】
本明細書、及び、特許請求の範囲において「フレキシブル金属張積層体」とは、金属箔と樹脂層とから形成された積層体であって、例えば、フレキシブルプリント基板等の製造に有用な積層体である。又、「フレキシブルプリント基板」とは、例えば、フレキシブル金属張積層体を用いて、サブトラクティブ法等の従来公知の方法により製造でき、必要に応じて、導体回路を部分的、或いは全面的にカバーレイフィルムやスクリーン印刷インキ等を用いて被覆した、いわゆるフレキシブル回路板(FPC)、フラットケーブル、テープオートメーティツドボンディング(TAB)用の回路板、又は、TCP(テープキャリアパッケージ)実装用の回路板(チップオンフレキシブル基板など)などを総称している。
【背景技術】
【0003】
従来のフレキシブルプリント基板用のフレキシブル金属張積層体は、ポリイミドフィルムと金属箔とをゴム変性したエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの接着剤によって貼りあわせたものであった。この接着剤で貼りあわせたフレキシブル金属張積層体から形成されるフレキシブルプリント基板は、接着剤の耐熱性がポリイミドフィルムに比べ著しく劣る為に、耐熱性、寸法安定性、絶縁信頼性等に劣るという問題点があった。
【0004】
これらの問題を解決する為に、ポリイミド系樹脂溶液を金属箔に直接塗布することで、接着剤層のない二層構造の金属張積層体(二層CCL)を形成する技術が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。しかし、これらの二層CCLは、
・ 塗布するポリイミド系樹脂が有機溶剤に不溶な為、その前駆体であるポリアミド酸溶液を塗布した後、金属箔上で高温熱処理することでイミド化する必要がある。従って、加工性に劣る。
・ 金属箔上に形成される樹脂フィルム層の弾性率が高い為、フレキシブルプリント基板の耐屈曲特性、耐折特性に劣る。
等の欠点がある。
【0005】
上述の様な加工性、耐屈曲特性、耐折特性を改良する目的で、特許文献3においては、有機溶剤に可溶で、かつ、フィルム弾性率の低い樹脂組成物を金属箔に直接塗布・乾燥することで、二層CCLを形成する技術が提案されている。しかし、ここで用いられている樹脂組成物は、加工性、耐屈曲性には優れるものの、銅箔を回路加工した後の湿度寸法変化率等の寸法精度に劣る為に、例えば、半導体素子が実装される様な(TCP実装)、いわゆるCOF基板(チップオンフレキシブル基板)用途等には適していないという欠点がある。又、ピール強度(接着強度)の信頼性、例えば、加湿処理後のピール安定性等に劣る為に、ファインピッチが要求される回路板用途には適していないという欠点がある。
【0006】
【特許文献1】特開昭57−50670号公報
【特許文献2】特開昭57−66690号公報
【特許文献3】特開2001−105530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は上記の課題を解決する為になされたものであり、COFなどファインピッチが要求される様な回路板用途等のフレキシブルプリント基板用のフレキシブル金属積層体、及び、フレキシブルプリント基板を安価に製造しようとするものである。即ち、本発明の目的は、屈曲性、耐折特性に優れ、かつ、湿度寸法変化率が低く、耐熱信頼性、耐湿信頼性などに優れる基板材料からなるフレキシシブル金属張積層体の製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意研究した結果、従来にはない、溶剤可溶で耐熱性に優れる樹脂組成物、および、これらの材料を含めたフレキシブルプリント基板としての層構成、加工法等について鋭意検討した結果、達成できたものである。
【0009】
即ち、本発明は、以下のフレキシブル金属張積層体の製造方法である。
(項1)
耐熱性樹脂フィルムの少なくとも片面に金属箔が積層されたフレキシブル金属積層体の製造方法であって、以下の第1工程〜第3工程を含むことを特徴とするフレキシブル金属積層体の製造方法;
酸成分として、無水トリメリット酸(TMA)、3,3,4’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、及び3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、イソシアネート成分として1、5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、を含む原料で重合されたポリアミドイミド樹脂であり、かつ、Tgが350℃以上の該ポリアミドイミド樹脂を、金属箔上に、直接、或いは接着層を介して、塗布し、乾燥し、第1層目の樹脂層を形成する第1工程;
酸成分としてTMA、BTDA、及びBPDA、イソシアネート成分としてo−トリジンジイソシアネート(TODI)、を含む原料で重合されたポリアミドイミド樹脂を、第1層目の樹脂層の上に、直接、或いは接着層を介して、塗布し、乾燥し、第2層目の樹脂層を形成する第2工程;
120℃以上400℃以下で熱処理し、第1層目の樹脂層の厚みが3μm以上50μm以下であり、かつ第2層目の樹脂層の厚みが10μm以上60μm以下であるフレキシブル金属積層体を得る第3工程。
(項2)
さらに、以下の(A)及び/または(B)の特徴を有する項1に記載のフレキシブル金属積層体の製造方法;
(A)第1層目の樹脂層のポリアミドイミド樹脂が、酸成分の全量を100モル%、イソシアネート成分の全量を100モル%、酸成分とイソシアネート成分の合計を200モル%としたときに、
ナフタレン基を有するモノマー成分を80モル%以上含む原料を重合して得られたポリアミドイミド樹脂であること;
(B)第2層目の樹脂層のポリアミドイミド樹脂が、酸成分の全量を100モル%、イソシアネート成分の全量を100モル%、酸成分とイソシアネート成分の合計を200モル%としたときに、
ビフェニレン基を有するモノマー成分を100モル%以上含む原料を重合して得られたポリアミドイミド樹脂であること。
(項3)
さらに、第1層目の樹脂層のポリアミドイミド樹脂が、無水ピロメロット酸(PMA)及び/またはテレフタル酸(TPA)を含む原料を重合して得られたポリアミドイミド樹脂である項1または項2に記載のフレキシブル金属積層体の製造方法。
(項4)
金属箔に接する側の樹脂層(第1層目の樹脂層)の厚み(T1)と金属箔とは接しない側の樹脂層(第2層目の樹脂層)の厚み(T2)の比(T1)/(T2)が、0.05〜5であることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載のフレキシブル金属積層体の製造方法。
(項5)
第1層目の樹脂層のポリアミドイミド樹脂及び第2層目の樹脂層のポリアミドイミド樹脂が有機溶剤に可溶であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載のフレキシブル金属積層体の製造方法。
(項6)
項1〜5のいずれかに記載のフレキシブル金属積層体であって、金属箔に接する側の耐熱性樹脂層(第1層目の樹脂層)のイミド化率が50%以上のポリアミドイミド樹脂であることを特徴とするフレキシブル金属積層体の製造方法。
(項7)
項1〜6のいずれかに記載のフレキシブル金属積層体であって、金属箔とは接しない側の樹脂層(第2層目の樹脂層)のイミド化率が50%以上のポリアミドイミド樹脂であることを特徴とするフレキシブル金属積層体の製造方法。
(項8)
金属箔の厚みが3μm以上50μm以下であることを特徴とする項1〜7のいずれかに記載のフレキシブル金属積層体の製造方法。
(項9)
項1〜8のいずれかに記載の方法により製造されるフレキシブル金属積層体は、以下の(C)の性質を有することを特徴とするフレキシブル金属積層体の製造方法;
(C)IPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製したサンプルを用いて、85℃、85%RHの加熱、加湿下にて500時間処理した後の、回路パターンと耐熱性樹脂フィルムとの接着強度が4N/cm以上。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフレキシブル金属積層体は、屈曲性、耐折特性、湿度寸法変化率が低く、Tgの高い複数の樹脂組成物からなり、その層構成、加工条件より、耐折特性、屈曲性、寸法精度、耐湿信頼性、耐熱信頼性などの観点から優れる。更に、用いる樹脂組成物は有機溶剤に可溶である為、高温での熱処理の必要性もなく安価に製造できる。従って、高密度実装基板用途でも使用できるフレキシブル基板が安価に製造できることから、工業的に多大のメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のフレキシブル金属積層体の耐熱性樹脂フィルムは少なくとも2層から形成される。すなわち、金属箔側に接する第1層目の樹脂層、及び、該第1層の樹脂層上に積層される第2層目の樹脂層、の2層から構成されており、耐熱性樹脂フィルムの片面に金属箔が積層されている。第1層目の樹脂層とは、本発明のフレキシブル金属積層体において、銅箔等の金属箔側に接する樹脂層をさす。第2層目の樹脂層とは、第1層目にさらに積層した樹脂層をいう。2層のうち金属箔に接する側の耐熱性樹脂フィルム層は、Tgが350℃以上のポリアミドイミド樹脂であることが必要である。また、本発明のフレキシブル金属積層体は、IPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製したサンプルを用いて、85℃、85%RHの加熱、加湿下にて500時間処理した後の、回路パターンと耐熱性樹脂フィルムとの接着強度が4N/cm以上である。
【0012】
本発明において、耐熱性樹脂フィルムは2層構成であるが、もし耐熱性樹脂フィルムが1層構成の場合では常態(25℃、65%RH)でのピール強度(接着強度)が良好だとしても、それと同時に加湿雰囲気下や、加湿処理後の接着強度、或いは、加熱雰囲気下や、半田処理後等加熱処理後の接着強度などの特性の信頼性を同時に満足することは困難である。本発明においては2層以上の構成である必要がある。
本発明において、第1層目に銅箔等、金属箔との接着性が良好な、比較的極性の高く、Tgが350℃以上のポリアミドイミド樹脂を積層し、更に、第2層目に透湿率や吸湿率などの吸湿特性に優れる樹脂を積層することで、あらゆる雰囲気で、特にピール強度(接着強度)の信頼性を中心として、安定な特性が発現できる金属積層体を得られることを特徴とする。
特に、COFなどファインピッチが要求される様な回路板用途では、常態はもとより、85℃、85%RHの加熱、加湿下にて500時間処理した後の接着強度が4N/cm以上であり、より好ましくは6N/cm以上、さらにより好ましくは8N/cm以上の接着強度が好ましい。接着強度が4N/cm未満では、回路巾が狭くなると、回路の剥がれや浮きなどが生じ信頼性が低下してくるため望ましくない。85℃、85%RHの加熱、加湿下で500時間処理した後の接着強度は高ければ高いほうが良いため上限値は特にない。しかしながら、25N/cm程度もあれば性能として十分であり、要求性能にもより一概には言えないが20N/cm以下、さらに15N/cm以下であっても良い。
そして、2層の樹脂フィルム層の各々の溶解度パラメータの差は、(2.0)以下が好ましく、より好ましくは(1.5)以下、さらにより好ましくは、(1.0)以下である。溶解度パラメータの差が(2.0)を越えると、ピール強度(接着強度)の信頼性、特に、加湿処理後の高密度回路において、金属箔との界面や、2層の樹脂層間での接着性が低下する場合がある為好ましくない傾向にある。
【0013】
又、本発明のフレキシブル金属積層体において、金属箔側に接する第1層目のポリアミドイミド樹脂のTgは350℃以上であり、好ましくは380℃以上、より好ましくは400℃以上である。Tgが、350℃未満では、耐熱性、特に、半田処理後の接着強度等が低下するため望ましくない。金属箔側に接するポリアミドイミド樹脂のTgは、高ければ高いほうが良く、上限値は特にない。しかしながら、500℃程度もあれば十分であり、要求性能にもより一概には言えないが金属箔側に接するポリアミドイミド樹脂のTgは450℃以下であっても大きな問題はない。
【0014】
ここで、接着強度とは、IPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製したサンプルを用いて測定できる。又、溶解度パラメータは従来公知の方法、例えば、Fedorの方法により計算することができる。
【0015】
本発明で使用される耐熱性樹脂フィルムは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリパラバン酸、ポリアリレート、アラミド等、耐熱性に優れる、所謂、エンジニアリングプラスチックの範疇に分類される樹脂であれば、使用することができる。耐熱性、寸法精度等から、好ましくはポリイミド、ポリアミドイミドであり、後述の加工性という観点から、より好ましくは有機溶剤に可溶な、ポリイミド、ポリアミドイミドであり、更に好ましくは有機溶剤に可溶なポリアミドイミドである。
【0016】
[第1層目の樹脂層]
本発明のフレキシブル金属積層体の耐熱性樹脂フィルムは2層から構成されている。2層のうち、第1層目の樹脂層とは、本発明のフレキシブル金属積層体において、銅箔等の金属箔側に接する樹脂層をさす。第1層目の樹脂は、Tgが350℃以上のポリアミドイミド樹脂であることが必要である。
本発明の目的を達成するために用いるTgが350℃以上のポリアミドイミド樹脂の一つの好ましい実施態様は下記に示すとおりである。
第1層目の樹脂層において、酸成分の全量を100モル%、アミン成分の全量を100モル%、酸成分とアミン成分の全量を200モル%としたときに、ナフタレン基を有するモノマーが80モル%以上のポリアミドイミドが好ましい。ナフタレン基を有するモノマーについては、酸成分の全量を100モル%、アミン成分の全量を100モル%、酸成分とアミン成分の全量を200モル%としたときに、より好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは100モル%以上である。ナフタレン基が80モル%未満では、吸湿特性が悪くなる傾向があり、加湿処理後のピール強度(接着強度)等の耐湿信頼性が本発明の要件を満たさない場合があり、又、耐熱性も低下してくる為、半田処理後のピール強度(接着強度)など、耐熱信頼性も低下してくる傾向にある。
また、ナフタレン基を有するモノマーについては、酸成分の全量を100モル%、アミン成分の全量を100モル%、酸成分とアミン成分の全量を200モル%としたときに、170モル%以下が好ましく、より好ましくは160モル%以下、さらにより好ましくは150モル%以下である。170モル%を越えると弾性率が上昇し、溶解性が下がる傾向にある。
又、ポリアミドイミドのイミド結合とアミド結合のモル比は、99/1〜60/40モル比が好
ましく、より好ましくは99/1〜75/25であり、さらにより好ましくは90/10〜80/20である。イミド結合とアミド結合のモル比が、60/40未満では、耐熱性、耐湿信頼性、耐熱信頼性が乏しくなる傾向にあり、特に半田処理後の接着強度が低下してくる傾向にある。又、99/1を越えると、弾性率が高くなり、耐折特性、屈曲特性が低下してくる傾向にある。更に、溶解性にも乏しくなる為、フレキシブル金属積層体の加工性が悪くなる傾向にある。
一つの好ましい実施態様は、一般式(1)で表される単位を必須成分とし、更に、一般式(2)、一般式(3)、及び、一般式(4)で表される群より選ばれる少なくとも1種の単位を、繰り返し単位として分子鎖中に含有するポリアミドイミド樹脂である。ここで、一般式(2)中、Xは、特に低弾性率性、高耐熱性(Tg、半田処理後のピール安定性など)、銅箔との接着性、からSO2、又は、直結(ビフェニル)或いは、n=0が好ましく、更に好ましくは、直結(ビフェニル)、或いはn=0の場合である。一般式(3)中、Yは、同様に、低弾性率性、高耐熱性(Tg、半田処理後のピール安定性など)、銅箔との接着性から、ベンゾフェノン型(CO)、又は、直結型(ビフェニル)が好ましい。又、下記一般式(2)、一般式(3)で表される単位は、各々1種でも2種以上でもよい。第1層目のポリアミドイミド樹脂において、ナフタレン骨格やベンゼン骨格には置換基が結合されていても構わない。
IPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製したサンプルを用いて、85℃、85%RHの加熱、加湿下にて500時間処理した後の接着強度、及び金属箔に接する側のポリアミドイミド樹脂のTgはいずれもより高いほうが好ましいが、より高くするためには一般式(1)の成分割合を少なくする、アミド結合に対するイミド結合の割合を多くする、ナフタレン基の量を多くするなどの手段が好ましい。
【0017】
一般式(1)並びに、一般式(2)、一般式(3)及び一般式(4)の含有比は、モル比で{一般式(1)}/{一般式(2)+一般式(3)+一般式(4)}=1/99〜40/60(モル比)であることが好ましく、このときの、イミド結合とアミド結合のモル比は、99/1〜60/40モル比であることが好ましい。更に、より好ましくは、{一般式(1)}/{一般式(2)+一般式(3)+一般式(4)}=10/90〜30/70であり、イミド結合とアミド結合のモル比が99/1〜75/25である。さらにより好ましくは、{一般式(1)}/{一般式(2)+一般式(3)+一般式(4)}=10/90〜20/80であり、イミド結合とアミド結合のモル比が90/10〜80/20である。
この含有比{一般式(1)}/{一般式(2)+一般式(3)+一般式(4)}が、40/60を越える場合、もしくは、1/99より低い場合は、耐熱性(Tg)、低弾性率性、及び、銅箔との密着性の、各々の両立化が困難になる傾向にある。特に、40/60を越える場合は、耐熱性が悪くなり、1/99より低い場合は、溶剤に対する溶解性が乏しくなり、又、樹脂フィルムの弾性率が高くなる為、耐屈曲特性、耐折性が低下してくる傾向にある。又、イミド結合とアミド結合のモル比が、60/40未満では、耐熱性、耐湿信頼性、耐熱信頼性が乏しくなり、特に半田処理後の接着強度が低下してくる傾向にある。又、99/1を越えると、弾性率が高くなり、耐折特性、屈曲特性が低下してくる傾向にある。更に、溶解性にも乏しくなる為、フレキシブル金属積層体の加工性が悪くなる傾向にある。
【0018】
又、耐熱性、吸湿特性という観点から、特に好ましい態様は、一般式(2)のアミド形成成分と一般式(3)、及び/又は、一般式(4)のイミド形成成分の含有比をモル比で{一般式(2)}/{一般式(3)+一般式(4)}=5/95〜95/5に調整することが好ましい。一般式(2)と一般式(3)、及び/又は、一般式(4)中での{一般式(2)}の含有量が、5モル%未満では吸湿特性が悪くなる傾向にある。又、95モル%を越える場合は、耐熱性が悪くなる傾向にある。一つの好ましい実施態様は一般式(1)が無水トリメリット酸と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位、一般式(2)がテレフタル酸と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位、一般式(3)がビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及び/又は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位で、その含有比が一般式(1)/{一般式(2)+一般式(3)+一般式(4)}=1/99〜40/60モル比で、かつ、一般式(2)/一般式(3)=10/90〜90/10モル比が好ましい。
【0019】
上記において、一般式(1)と一般式(2)、及び一般式(3)、一般式(4)中での一般式(1)の含有量が40モル%を越える場合は、耐熱性、吸湿特性が低下し、又、1モル%未満では樹脂の溶剤溶解性が悪くなったり、フィルム弾性率も高くなる傾向にある。又、一般式(2)と一般式(3)、一般式(4)中での一般式(2)の含有量が10モル%未満の場合は、吸湿特性が低下する傾向にあり、90モル%を越える場合は樹脂の溶剤溶解性が悪くなる場合がある。
【0020】
上記実施態様において、共通する好ましい態様について説明する。一般式(2)において、特に好ましくは、アミド結合が互いにパラ位にある割合とメタ位にある割合の結合比率がパラ位/メタ位=5/95〜100/0モル%を満たす場合であり、更に好ましくは、アミド結合が互いにパラ位にある割合とメタ位にある割合の結合比率がパラ位/メタ位=20/80〜100/0モル%を満たす場合であり、最も好ましくはパラ位/メタ位=50/50〜100/0モル%を満たす場合である。パラ位が5モル%以下では、耐熱性の向上効果が少なくなる傾向にある。
【0021】
また、これらポリアミドイミド樹脂は、環境に配慮するという観点から、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンを含まないノンハロゲン系であるものが好ましい。
【0022】
ポリアミドイミド樹脂のイミド結合は、そのイミド化率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上である。イミド化率は高いほど好ましく上限は100%である。イミド結合のイミド化率が50%未満では、該第1層目の樹脂フィルム上に積層される、第2層目の樹脂との接着性が低くなる傾向にあり、樹脂層間での剥離が生じ易くなる傾向があり、半田処理後や加湿処理後など、ピール強度が低下してくる恐れがある。その結果、耐折特性、屈曲性、耐熱信頼性、耐湿信頼性等の信頼性が乏しくなる傾向にある。
この理由は、第1層目のイミド化反応が完了する前に、第二層目を積層すると、後の加熱工程にて、加熱に伴なうイミド化反応が進行し、それに伴ない発生する縮合水が樹脂層間や樹脂と金属箔との界面で接着性に悪影響を及ぼす為と推定される。従って、本発明で使用する樹脂組成物の製造は、重合後、得られた樹脂ワニスのイミド化率が完了するような、後述に記載のイソシアネート法等の方法で製造することが好ましい。このときポリアミドイミド樹脂は有機溶剤に可溶であることが好ましい。又、イソシアネート法による製造でもモノマーの純度や溶媒種の影響などにより、必ずしも重合後イミド化反応が完結しないこともある為、製造条件には留意することが好ましい。イミド化率を50%以上とするためには、アミン法の場合、通常の方法で前駆体を合成し、製膜後、Tg以上まで、徐々に昇温し、Tg付近(プラスマイナス10℃)で1時間程度加熱し十分なイミド化処理をすることが好ましい。またイソシアネート法では、重合に際し、水分率をモノマーモル数の50モル%以下にしたり、モノマーの純度を高めることが好ましく、例えば、無水トリメリット酸の閉環率が高いものを使用すること、ジイソシアネート成分中の不純物であるジアミン成分量が少ないことなどモノマー純度が高いことが望ましい。
尚、イミド化率の測定は、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0023】
又、これらポリアミドイミド樹脂は、後述するフレキシブル金属張積層体や接着剤層付き積層フィルムとする際の加工性からも、有機溶剤に溶解可能であることが好ましい。なお、ここで言う有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチルウレア、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンからなる群より選ばれる少なくとも1種であるか、あるいは、これらの一部をトルエン、キシレン、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置き換えたものとする。尚、本発明において、有機溶剤に可溶であるとは、上記のいずれかの単独溶媒、もしくはこれらの少なくとも1種を20%以上含有する混合有機溶媒の、いずれか一つに10重量%以上溶解することが好ましい。より好ましくは15重量%以上、さらにより好ましくは20重量%以上である。尚、溶解したか否かの判定は、樹脂が固形状である場合には、200mlのビーカーに80メッシュを通過する樹脂粉末を規定重量添加し、25℃で24時間静かに攪拌した後の溶液を25℃で24時間静地し、ゲル化、不均一化、白濁、析出のいずれかもなかったものを溶解していると判定する。
【0024】
溶剤に溶解可能とするためには
(1)上述の好ましい樹脂組成にする、(2)イミド基/アミド基の比率を低くする
(3)後述する脂環族基を有するポリカルボン酸成分、ポリアミン成分として共重合する、(4)後述する脂肪族基を有するポリカルボン酸成分、ポリアミン成分として共重合する、(5)芳香環中に屈曲性基を導入する、(6)ポリマー鎖中にバルキーな化合物を導入する、(7)後述するエポキシ化合物等でポリマー変性する。
等により達成することが出来る。
【0025】
以上の様に、ナフタレン骨格を主骨格とし、その結合比率を特定の割合とすることで、ポリマー鎖自身の剛直性/屈曲性、ポリマー鎖間の分子間力、面配向性等がほどよくバランスし、溶剤溶解性、低弾性率、耐熱性など本発明の目的を達成できる。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
(Xは、酸素原子、CO、SO2、又は、直結を示し、nは0又は1を示す。)
【0029】
【化3】

【0030】
(Yは、酸素原子、CO、又はOOC−R−COOを示し、nは0又は1を、Rは二価の
有機基を示す。)
【0031】
【化4】

【0032】
金属箔に接する側の第1層目のポリアミドイミド樹脂において、所望のTgを達成するための好ましい手段の一例を上記に示したが、これに限られるものではない。すなわち、融解もしくは転移前後のエエントロピー変化を小さくするよう、分子の屈曲性を低下させる、分子間力を向上させる、パッキング性を向上させる、バルキー性を低下させるよう、適切な分子設計を行えばよい。
【0033】
[第2層目の樹脂層]
ここで、第2層目の樹脂層とは、前記第1層目の樹脂層上に積層される樹脂層を指す。
金属積層体についてIPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製したサンプルを用いて、85℃、85%RHの加熱、加湿下にて500時間処理した後の、回路パターンと耐熱性樹脂フィルムの接着強度を4N/cm以上とするためには、第2層目の樹脂は、透湿率や吸湿率などの吸湿特性に優れる樹脂であることが好ましい。本樹脂を第1層目の樹脂層の上に積層することで、あらゆる雰囲気で、特にピール強度(接着強度)の信頼性を中心として、安定な特性が発現できる金属積層体が得ることができる。すなわち、第2層目の樹脂としては湿度膨張係数の低い樹脂を使用することが好ましい。具体的には、湿度膨張係数が20ppm
以下の樹脂が好ましく、より好ましくは15ppm以下、さらにより好ましくは13ppm以下の樹脂が好ましい。第2層目の耐熱性樹脂層を湿度膨張係数の低い樹層とすることにより、第1層目の樹脂層が金属箔層と湿度膨張係数の低い樹脂層に挟まれた構造となり、金属積層体の構造上、第1層目の樹脂層は湿度の影響を受けにくくなるから耐熱信頼性、耐湿信頼性に優れるものとも思われるが、メカニズムは明らかではない。
第2層目の樹脂層において、酸成分の全量を100モル%、アミン成分の全量を100モル%、酸成分とアミン成分の全量を200モル%としたときに、ビフェニレン基を有するモノマーが100モル%以上のポリアミドイミドが好ましい。より好ましくは120モル%以上、さらにより好ましくは140モル%以上のポリアミドイミドを使用することが好ましい。ビフェニレン基が100モル%未満では、吸湿特性が悪くなり、加湿処理後の接着強度等の耐湿信頼性が十分満足することができない場合があり、又、吸湿寸法変化率も悪くなる為、寸法精度も低下してくる傾向にある。また、ビフェニレン基を有するモノマーは、180モル%以下が好ましく、より好ましくは170モル%以下、最も好ましくは160モル%以下である。180モル%を超えると溶解性が低下する傾向にある。
また、イミド結合とアミド結合モル比は、99/1〜65/35モル比が好ましく、より好ましくは90/10〜70/30モル比である。イミド結合とアミド結合モル比が、65/35未満では、吸湿寸法変化率などの寸法精度が悪くなり傾向にあり、加湿処理後のピール強度(接着強度)等、耐湿性も悪くなる傾向にある。イミド結合とアミド結合モル比が、99/1を超えると、溶解性が乏しくなり、更には、弾性率が高くなり、耐折特性、屈曲特性が悪くなる傾向にある。
第2層目の樹脂層の一つの好ましい実施態様は、一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)からなる繰り返し単位を構成成分とし、それらの共重合比が{一般式(5)}/{一般式(6)}/{一般式(7)}=30〜75/10〜50/10〜50(モル比)であるポリアミドイミド樹脂が好ましい。より好ましくは、{一般式(5)}/{一般式(6)}/{一般式(7)}=35〜65/10〜30/20〜50(モル比)であり、最も好ましいのは、{一般式(5)}/{一般式(6)}/{一般式(7)}=40〜50/10〜25/25〜40(モル比)である。ここで、イミド結合とアミド結合モル比は、99/1〜65/35モル比が好ましく、より好ましくは、90/10〜70/30モル比である。一般式(5)が75モル%より多く、一般式(6)、一般式(7)がそれぞれ下限より低い場合は、吸湿寸法変化率などの寸法精度が大きくなり、又、加湿処理後のピール強度(接着強度)等、耐湿性が悪くなる傾向にある。又、一般式(5)が30モル
%より少なく、一般式(6)、一般式(7)がそれぞれ上限より多い場合は、溶解性に乏しくなり、又、樹脂フィルムの弾性率が高くなり、本発明の目的の一つである屈曲性、耐折性の確保が困難になる傾向にある。又、イミド結合とアミド結合モル比が、65/35未満では、吸湿寸法変化率などの寸法精度が悪くなり、加湿処理後のピール強度(接着強度)等、耐湿性も悪くなる傾向にある。イミド結合とアミド結合モル比が、99/1を超えると、溶解性が乏しくなり、更には、弾性率が高くなり、耐折特性、屈曲特性が悪くなる傾向にある。
特に、酸成分、アミン成分の中でも、最も好ましい組み合わせは、ジメチルジアミノビフェニルなどの、2置換体のビフェニレン基を有するモノマーを使用した場合であり、酸成分が無水トリメリット酸、3、3‘、4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及び、3、3‘、4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の組合せであり、かつ、アミン成分が、3,3’−ジメチル−4、4’−ジアミノビフェニル(又は、対応するジイソシアネート)の場合である。
IPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製したサンプルを用いて、85℃、85%RHの加熱、加湿下にて500時間処理した後の接着強度をより高めるには、第2層目の樹脂において、アミド結合に対するイミド結合の割合を多くすること、かつ上記事項を勘案して、適切な分子設計を行うことが好ましい。
【0034】
ここで、一般式(7)中、Yは、直結(ビフェニル結合)或いは、エーテル結合が好ましく、特に、寸法精度(低吸湿寸法性)、耐湿性(加湿処理後のピール安定性など)から、更に好ましくは、直結(ビフェニル結合)である。又、下記一般式(7)で表される単位は、各々1種でも2種以上でもよい。
【0035】
また、これらポリアミドイミド樹脂は環境に配慮するという観点から、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンを含まないノンハロゲン系であるものが好ましい。
【0036】
これらポリアミドイミド樹脂のイミド結合は、そのイミド化率が50%以上が好ましく、より好ましくは90%以上であり、さらにより好ましくは95%以上である。イミド化率は高いほど好ましく上限は100%である。イミド結合のイミド化率が50%未満では、前記第1層目の樹脂フィルムとの接着性が低くなり、その結果、樹脂層間での剥離が生じ易くなる傾向にあり、半田処理後や加湿処理後など、ピール強度(接着強度)が低下してくる傾向にある。その結果、耐折特性、屈曲性、耐熱信頼性、耐湿信頼性(ピール強度)等の信頼性が乏しくなる場合がある。
この理由は、第2層目のイミド化反応が完了する前に、積層された構成で熱処理などの成型加工を行うと、加熱処理に伴ないイミド化反応が進行し、それに伴ない発生する縮合水が樹脂層間や樹脂と金属箔との界面で接着性に悪影響を及ぼす為と推定される。従って、本願で使用する樹脂組成物の製造は、第2層の樹脂組成物においても、重合後、得られた樹脂ワニスのイミド化率が完了するような、後述に記載のイソシアネート法等の方法で製造することが好ましい。重合溶媒に溶解することが必須である為、組成物は有機溶剤に可溶であることが好ましい。又、イソシアネート法による製造でもモノマーの純度や溶媒種の影響などにより、必ずしも重合後イミド化反応が完結しないこともある為、製造条件には留意することが望ましい。
イミド化率を50%以上とするためには、一例を示すがアミン法の場合、通常の方法で前駆体を合成し、製膜後、Tg以上まで、徐々に昇温し、Tg付近(プラスマイナス10℃)で1時間程度加熱し十分なイミド化処理をすることが望ましい。またイソシアネート法では、重合に際し、水分率をモノマーモル数の50モル%以下にしたりモノマーの純度と高めることが好ましく、例えば、無水トリメリット酸の閉環率が高いものを使用すること、イソシアネート成分中の不純物であるジアミン量が少ないなどモノマー純度が高いことが望ましい。
尚、イミド化率の測定は、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0037】
ポリアミドイミド樹脂は、後述するフレキシブル金属張積層体や接着剤層付き積層フィルムとする際の加工性からも、有機溶剤に溶解可能であることが好ましい。なお、ここで言う有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチルウレア、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンからなる群より選ばれる少なくとも1種であるか、あるいは、これらの一部をトルエン、キシレン、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置き換えたものとする。尚、本発明において、有機溶剤に可溶であるとは、上記のいずれかの単独溶媒、もしくはこれらの少なくとも1種を20%以上含有する混合有機溶媒の、いずれか一つに10重量%以上溶解することが好ましい。より好ましくは15重量%以上、さらにより好ましくは20重量%以上である。尚、溶解したか否かの判定は、樹脂が固形状である場合には、200mlのビーカーに80メッシュを通過する樹脂粉末を規定重量添加し、25℃で24時間静かに攪拌した後の溶液を25℃で24時間静地し、ゲル化、不均一化、白濁、析出のいずれかもなかったものを溶解していると判定する。
【0038】
溶剤に溶解可能とするためには、
(1)上述の好ましい樹脂組成にする、(2)イミド基/アミド基の比率を低くする、(3)後述する脂環族基を有するポリカルボン酸成分、ポリアミン成分として共重合する、(4)後述する脂肪族基を有するポリカルボン酸成分、ポリアミン成分として共重合する、(5)芳香環中に屈曲性基を導入する。、(6)ポリマー鎖中にバルキーな化合物を導入する。、(7)後述するエポキシ化合物等でポリマー変性する。
等により達成することが出来る。
【0039】
【化5】

【0040】
(式中、R5およびR6は同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素もしくは炭素数1〜4のアルキル基、又は、アルコキシ基を示す。)
【0041】
【化6】

【0042】
(式中、R3およびR4は同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素もしくは炭素数1〜4のアルキル基、又は、アルコキシ基を示す。)
【0043】
【化7】

【0044】
(式中、R1およびR2は同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素もしくは炭素数1〜4のアルキル基、又は、アルコキシ基を示す。又、Yは直結(ビフェニル結合)、或いは、エーテル結合(−O−)を示す。)
【0045】
IPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製したサンプルを用いて、85℃、85%RHの加熱、加湿下にて500時間処理した後の接着強度を所望の数値以上にするための、第2層目の樹脂層の好ましい態様の一例を上記に示したが、上記に限られるものではなく、メチル基、エチル基、フッ素系基などの疎水性置換基を導入したり、結合の極性を下げることで、樹脂自体の吸水率を低下させてやればよく、そうすることで耐湿環境下でも接着強度の向上を図ることもできる。結合の極性を低下させるためには、例えば、アミド結合に対するイミド結合の割合を多くするなどの手段があり、上記のような適切な分子設計を行うことにより、所望の加温加湿後の接着強度を有する樹脂が得られる。
【0046】
[ポリアミドイミド樹脂の製造]
上記ポリアミドイミド樹脂は、通常の方法で合成することができる。例えば、イソシアネート法、アミン法(酸クロリド法、低温溶液重合法、室温溶液重合法等)などであるが、本発明で用いるポリアミドイミド樹脂は有機溶剤に可溶なものが好ましく、前記通り、ピール強度(接着強度)の信頼性確保などの理由から、イソシアネート法による製造が好ましい。又、工業的にも、重合時の溶液がそのまま塗工できるため好ましい。
【0047】
イソシアネート法の場合、原料として、芳香族トリカルボン酸無水物、芳香族ジカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物等と芳香族ジイソシアネートを有機溶媒中で略化学両論量反応させることで本発明に用いる樹脂組成物を得ることができる。ここで、芳香族トリカルボン酸無水物としては、トリメリット酸無水物が、芳香族テトラカルボン酸無水物としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸等を、芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等を、芳香族ジイソシアネートとしては、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、2,7−ナフタレンジイソシアネート、オルソトリジンジイソシアネート等を使用できる。
【0048】
反応は有機溶媒中、通常10℃〜200℃で1時間〜24時間が好ましく、又、反応はイソシアネートと活性水素化合物の反応に対する触媒、例えば、3級アミン類、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などの存在下に行っても良い。
【0049】
本発明のポリアミドイミド樹脂を製造するための重合溶媒としては、上記ポリアミドイミド樹脂を溶解し得る有機溶媒が使用できる。かかる有機溶媒の典型例としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチルウレア、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどで、好ましくはN−メチル−2−ピロリドンである。また、これらの一部をトルエン、キシレンなどの炭化水素系有機溶剤、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤で置き換えることも可能である。
【0050】
本発明のポリアミドイミド樹脂の分子量は、N−メチル−2−ピロリドン中(ポリマー濃度0.5g/dl)、30℃での対数粘度にして0.3から2.5dl/gに相当する分子量を有するものが好ましく、より好ましくは0.5から2.0dl/gに相当する分子量を有するものである。対数粘度が0.3dl/g未満ではフィルム等の成型物にしたとき、機械的特性が不十分となるおそれがあり、また、2.0dl/gを超えると溶液粘度が高くなる為、成形加工が困難となることがある。
【0051】
本発明のポリアミドイミド樹脂は、耐熱性、接着性、寸法安定性、屈曲性、絶縁性(耐マイグレーション性)、耐湿性などの各種性能のバランスをとる目的で、本発明の目的とする特性を損なわない範囲で、上記に示した酸成分、イソシアネート成分、或いは、アミン成分以外にも以下に示す、酸成分、アミン成分を共重合することが可能である。又、これら酸成分、アミン成分の組み合わせで別途重合した樹脂を混合して使用することもできる。又、当然、前述の酸成分、アミン成分の組み合わせで別途重合した樹脂同士を混合しても構わないし、前述の酸成分に加え、以下に記載する酸成分と、上述のアミン成分に加え、以下に記載するアミン成分との組み合わせで別途重合した樹脂を混合しても構わない。
【0052】
例えば酸成分としては、以下のようなものが挙げられる。
a)トリカルボン酸;ジフェニルエーテル−3,3’,4’−トリカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3’,4’−トリカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3’,4’−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸などのトリカルボン酸等の一無水物、エステル化物などの単独、或いは、2種以上の混合物。
b)テトラカルボン酸;ジフェニルスルホン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸一無水物、二無水物、エステル化物などの単独、或いは、2種以上の混合物。
c)ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサン−4,4’−ジカルボン酸のジカルボン酸、及びこれらの一無水物やエステル化物。
【0053】
例えば、アミン成分としては、以下のようなものが挙げられる。
d)アミン成分
3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンゾフエノン、3,3’−ジアミノベンゾフエノン、3,4’−ジアミノベンゾフエノン、2,6−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサン−1,4−ジアミン、ジアミノシロキサン、或いは、これらに対応するジイソシアネート単独、或いは、2種以上の混合物が挙げられる。当然、第1層で使用したモノマー成分を第2層の一部に用いることもできるし、その逆も可能である。
【0054】
[ポリアミドイミド樹脂溶液]
必要ならば、フレキシブル金属張積層体、或いは、フレキシブルプリント基板の諸特性、たとえば、機械的特性、電気的特性、滑り性、難燃性などを改良する目的で、本発明の上記ポリアミドイミド樹脂溶液に、他の樹脂や有機化合物、及び無機化合物を混合させたり、あるいは、反応させたりして併用してもよい。たとえば、滑剤(シリカ、タルク、シリコーン等)、接着促進剤、難燃剤(リン系やトリアジン系、水酸化アルミ等)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤等)、メッキ活性化剤、有機や無機の充填剤(タルク、酸化チタン、シリカ、フッ素系ポリマー微粒子、顔料、染料、炭化カルシウム等)、その他、シリコーン化合物、フッ素化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のような樹脂や有機化合物、或いはこれらの硬化剤、酸化珪素、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化鉄などの無機化合物をこの発明の目的を阻害しない範囲で併用することができる。又、必要に応じて、脂肪族第3級アミン、芳香族第3級アミン、複素環式第3級アミン、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、ヒドロキシ化合物などのポリイミド化の触媒を添加してもよい。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、イソキノリン、イミダゾール、ウンデセン、ヒドロキシアセトフェノンなどが好ましく、特に好ましくは、ピリジン化合物、イミダゾール化合物、ウンデセン化合物であり、その中でも、ベンズイミダゾール、トリアゾール、4−ピリジンメタノール、2−ヒドロキシピリジン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7が好ましく、より好ましくは、2−ヒドロキシピリジン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7である。
【0055】
こうして得られるポリアミドイミド樹脂溶液中のポリアミドイミド樹脂の濃度は、広い範囲から選択できるが、一般には5〜40重量%程度が好ましく、より好ましくは8〜20重量%程度とするのが好ましい。該濃度が上記範囲を外れると、塗工性が低下する傾向にある。ポリアミドイミド樹脂溶液の好ましい溶媒としては、塗工性等から、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチルウレア、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどで、特に好ましくは、N−メチル−2−ピロリドンである。また、これらの一部をトルエン、キシレンなどの炭化水素系有機溶剤、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤で置き換えることも可能である。又、これらの溶媒は、重合時の溶媒としても適用できる為、重合溶液をそのまま塗工できることから、加工性に優れる樹脂溶液を簡便に得ることができる。
【0056】
適正な溶液粘度としては、25℃でのB型粘度が、1〜1000ポイズの範囲が好ましい。該粘度が上記範囲を外れると塗工性が低下することがある。
【0057】
[金属箔]
上記ポリアミドイミド樹脂や樹脂組成物を用いて金属箔と積層することによりフレキシブル金属張積層体とすることが出来る。本発明に用いる金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔、スチール箔、及びニッケル箔などを使用することができ、これらを複合した複合金属箔や亜鉛やクロム化合物など他の金属で処理した金属箔についても用いることができる。なかでも銅箔が一般によく使用される。
金属箔の厚みについては特に限定はないが、たとえば、3〜50μmの金属箔を好適に用いることができる。特に、回路のファインピッチ化の為には、3〜12μmの厚みで、更に、塗工面の表面粗度Rzが、0.5〜2.0μmの範囲が好ましい。各々の銅箔特性が下限値以下では、ピール強度(接着強度)が低くなり、又、上限以上では、ファインピッチ化が困難になる傾向にある。
金属箔は、通常、リボン状であり、その長さは特に限定されない。また、リボン状の金属箔の幅も特に限定されないが、一般には25〜300cm程度、特に50〜150cm程度であるのが好ましい。
銅箔は市販の電解箔、或いは、圧延箔をそのまま使用することができる。例えば、日本電解株式会社製の「HLS」、古河サーキットホイル株式会社製の「F0−WS」、「U−WZ」、或いは、三井金属鉱業株式会社の「NA−VLP」、「DFF」などが挙げられる
【0058】
[フレキシブル金属積層体の製造方法]
本発明における、一つの好ましい製造法は、前記金属箔に直接、或いは接着剤層を介して前記2種類のポリアミドイミド樹脂(第1層目の樹脂、第2層目の樹脂)の溶液を順次塗布し、塗膜を乾燥(以下、初期乾燥)、場合により熱処理・脱溶剤(以下二次乾燥)することにより形成される。
【0059】
金属箔に2種類の樹脂を積層する方法としては、第1層目を塗工し、初期乾燥後、第2層目を塗工、初期乾燥し、二次乾燥する。又、第1層目を塗工し、初期乾燥、及び、二次乾燥した後に、第2層目を塗工し、初期乾燥、二次乾燥して製造することもできる。更に、第1層目を塗工した後に、第2層目を塗工し、初期乾燥、及び、二次乾燥して製造することもできる。この場合、1層目と2層目を同時に塗工することもできる。
【0060】
(塗工)
本発明では、金属箔に直接、或いは接着剤層を介して、上記ポリアミドイミド樹脂溶液を塗布し、乾燥する。塗布方法としては、特に限定されるものではなく、従来からよく知られている方法を適用することができる。例えば、ロールコーター、ナイフコーター、ドクタ、ブレードコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーターなどにより、塗工液であるポリアミドイミド樹脂溶液の粘度を調整後、金属箔に直接、或いは、接着剤層を介して塗布することができる。接着剤層を介して塗布する場合の接着剤組成としては、特に限定はされず、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリイミド樹脂系、ポリアミドイミド樹脂系、ポリエステルイミド樹脂系などの接着剤が使用できるが、耐熱性、接着性、耐屈曲特性等からポリイミド樹脂系、ポリアミドイミド樹脂系、或いは、これらの樹脂にエポキシ樹脂を配合した樹脂組成物が好ましく、接着剤層の厚みは、5〜30μm程度が好ましい。
又、本発明の塗工液であるポリアミドイミド樹脂溶液を金属箔に直接、或いは接着剤層を介して塗布、或いは、塗布・乾燥した後、フレキシブルプリント基板の諸特性を改良する目的で、上記の接着剤を更に塗布することもできる。接着剤組成、厚みとしては、耐熱性、接着性、耐屈曲特性、フレキシブルプリント配線板のカール性等の観点から上記と同様であり、塗工、乾燥の条件も本発明のポリアミドイミド樹脂溶液と同じ条件を適用することができる。
【0061】
(乾燥)
本発明において、塗布後の乾燥条件に特に限定はないが、一般的には、ポリアミドイミド樹脂溶液に使用する溶媒の沸点(Tb(℃))より70℃〜130℃低い温度で初期乾燥後、溶媒の沸点近傍、或いは沸点以上の温度で更に乾燥(二次乾燥)するのが好ましい。
【0062】
初期乾燥温度が(Tb−70)℃より高いと、塗工面に発泡が生じたり、樹脂層の厚み方向での残溶剤のムラが大きくなる為、フレキシブル金属積層体に反り(カール)が発生する場合があり、これを回路加工したフレキシブルプリント基板の反りも大きくなる場合がある。
【0063】
また、乾燥温度が(Tb−130)℃より低いと、乾燥時間が長くなり、生産性が低下する。初期乾燥温度は、溶媒の種類によっても異なるが、一般には60〜150℃程度、好ましくは80〜120℃程度である。初期乾燥に要する時間は、一般には上記温度条件下で、塗膜中の溶媒残存率が5〜40%程度になる有効な時間とすればよいが、一般には1〜30分間程度、特に、2〜15分間程度が好ましい。
【0064】
又、二次乾燥条件も特に限定はなく、溶媒の沸点近傍、或いは、沸点以上の温度で乾燥すればよいが、一般には120℃〜400℃が好ましく、より好ましくは200℃〜300℃である。120℃未満では乾燥時間が長くなり、生産性が低下し、300℃を超えると樹脂組成によっては劣化反応が進行し、樹脂フィルムがもろくなる場合がある。二次乾燥に要する時間は、一般には上記温度条件下で、塗膜中の溶媒残存率が無くなる程度になる有効な時間とすればよいが、一般には数分間〜数十時間程度である。
【0065】
本発明において、乾燥は、不活性ガス雰囲気下、或いは、減圧下で行ってもよい。不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、へリウム、アルゴン等が例示できるが、入手容易な窒素を用いるのが好ましい。又、減圧下で行う場合は、10−5〜10Pa程度、好ましくは10−1〜200Pa程度の圧力下で行うのが好ましい。
【0066】
本発明において、初期乾燥、二次乾燥ともに乾燥方式に特に限定はないが、ロールサポート方式やフローティング方式など、従来公知の方法で行うことができる。又、テンター式などの加熱炉での連続熱処理や、巻き物状態で巻き取り、バッチ式のオーブンで熱処理しても良い。バッチ式の場合、塗布面と非塗布面が接触しない様に巻き取ることが好ましい。又、加熱の方式は、従来公知の電気炉、IRヒーター、遠赤外ヒーターなどを適用できる。
【0067】
また、予め作製したポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等の耐熱性フィルムの片面、或いは、両面に、本発明における第1層目のポリアミドイミド樹脂溶液を塗布し、上記と同様の加工方法にて複層の耐熱性フィルムを得て、該ポリアミドイミド樹脂層の表面に金属箔を熱圧着することにより、本発明のフレキシブル金属積層体を製造することもできる。熱圧着の方法としては、従来公知の方法が適用でき、加熱ロールラミネート、加熱プレスラミネート等により製造することができる。
【0068】
本発明において、第1層目の樹脂層の厚み(T1)と第2層目の樹脂層の厚み(T2)の比(T1)/(T2)は、0.05〜5は好ましく、より好ましくは0.1〜5であり、さらにより好ましくは、0.15〜5である。(T1)/(T2)が0.05未満では、屈曲性、耐折性、耐熱信頼性に劣る傾向にあり、5を超えると、寸法安定性、加湿処理後のピール強度(接着強度)等の耐湿信頼性に劣る傾向にある。
【0069】
こうして得られる本発明のフレキシブル金属張積層体は、ポリアミドイミド樹脂フィルム層の少なくとも一方の面に金属箔を直接備えている為、耐熱性、寸法安定性、接着性に優れることを特徴としている。又、イミド化工程が不要であり、溶剤の乾燥のみで成型できる為、或いは、高温での熱処理が不必要なことから、安価に製造でき、耐湿性、屈曲性、折り曲げ性、吸湿特性に優れることを特徴としている。
【0070】
第1層目の樹脂層の厚みは、3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜30μmであり、最も好ましくは7〜20μmである。3μm未満では加熱湿度後の接着強度、半田処理後の接着強度、屈曲性、耐折性が低下する傾向にある。50μmを超えると吸湿寸法変化率が大きくなる傾向にある。
第2層目の樹脂層の厚みは、10〜60μmが好ましく、より好ましくは20 〜50μmであり、最も好ましくは25〜40μmである。10μm未満では吸湿寸法変化率が大きくなる傾向にある。60μmを超えると屈曲性、耐折特性が低下する傾向にある。
尚、耐熱性樹脂フィルムと金属箔とからなる本発明のフレキシブル金属張積層体において、耐熱性樹脂フィルムがポリアミドイミド樹脂からなる場合、ポリアミドイミド樹脂フィルム層の厚さは、広い範囲から選択できるが、一般には絶乾後の厚さで5〜100μm程度、好ましくは10〜50μm程度である。厚さが5μmよりも小さいと、フィルム強度等の機械的性質やハンドリング性に劣り、一方、厚さが100μmを超えるとフレキシブル性などの特性や加工性(乾燥性、塗工性)等が低下する傾向がある。又、本発明のフレキシブル金属張積層体には、必要に応じて、表面処理を施してもよい。例えば、加水分解、低温プラズマ、物理的粗面化、易接着コーティング処理等の表面処理を施すことができる。
【0071】
本発明の両面フレキシブル金属積層体は、両面に金属箔を有する金属積層体であり、例えば、上記のようにして製造された片面にのみ金属箔が積層された金属積層体の樹脂面同士を加熱ラミネートなど従来公知に方法で張り合わせたり、接着剤層を介して従来公知の方法で張り合わせたりするなどの方法で製造することができる。
また、予め作製した、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等の耐熱性フィルム(第2層目の樹脂層)の片面、或いは、両面に、本発明における第1層目のポリアミドイミド樹脂溶液を塗布し、上記と同様の加工方法にて複層の耐熱性フィルムを得て、該ポリアミドイミド樹脂層の表面に金属箔を熱圧着することにより両面フレキシブル金積層体とすることもできる。熱圧着の方法としては、従来公知の方法が適用でき、加熱ロールラミネート、加熱プレスラミネート等により製造することができる。
ラミネートの方式は特に限定されるものではなく、ロールラミネート、プレスラミネート、ベルトプレスラミネートなど、従来公知の方式が採用でき、ラミネート温度は、通常は、樹脂のTg以上、例えば貼り合わせる面の樹脂層のTg以上、であり、300℃〜500℃が好ましく、より好ましくは350℃〜450℃、さらに好ましくは380℃ 〜430 ℃である。300℃未満では、接着性が不十分であり、500 ℃を超えると樹脂の劣化が生じ、機械的特性が低下する傾向にある。又、ラミネートの時間は、特に限定はないが、通常は10秒〜10時間、好ましくは1分 〜1時間、更に好ましくは3分 〜30分である。10秒未満では接着性が不十分であり、10時間を越えると、樹脂層の劣化が生じ、機械的特性が低下する傾向にある。
接着剤層を介して貼り合わせる場合の接着剤組成としては、特に限定はされず、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリイミド樹脂系、ポリアミドイミド樹脂系、ポリエステルイミド樹脂系などの接着剤が使用できるが、耐熱性、接着性、耐屈曲特性等からポリイミド樹脂系、ポリアミドイミド樹脂系、或いは、これらの樹脂にエポキシ樹脂を配合した樹脂組成物が好ましく、接着剤層の厚みは、5〜30μm程度が好ましい。又、絶縁性能等からは、ポリエステルやポリエステルウレタン樹脂系、或いは、これらの樹脂にエポキシ樹脂を配合した樹脂組成物が好ましく、接着剤層の厚みは、5〜30μm程度が好ましい。接着剤の厚さは、フレキシブルプリント配線基板の性能を発揮するのに支障がない限り、特に限定されないが、厚さが薄すぎる場合には、充分な接着性が得られにくい場合があり、一方、厚さが厚すぎる場合には、加工性(乾燥性、塗工性)等が低下する場合がある。尚、接着剤層を介した積層構成を形成する手段としては、後述の本発明の耐熱性樹脂を用いて成型した耐熱性フィルムと金属箔を上記の接着剤で加熱ラミネート等の方法により貼り合わせることもできる。
【0072】
[フレキシブルプリント基板]
上記本発明のフレキシブル金属張積層体を用いて、例えばサブトラクティブ法等の方法により、フレキシブルプリント基板を製造できる。導体回路のソルダーレジスト、或いは、汚れやキズなどから保護する目的で回路表面を被覆する場合は、従来公知の方法で、ポリイミド等の耐熱性フィルムを接着剤を介して、配線板(導体回路が形成されたベース基板)に貼り合わせる方法や、或いは、液状の被覆剤をスクリーン印刷法で配線板に塗布する方法などが適用できる。液状の被覆剤としては、従来公知のエポキシ系やポリイミド系のインキが使用できるが、好ましくはポリイミド系である。又、エポキシ系やポリイミド系等の接着シートを配線板に直接貼りあわせることも可能である。こうして得られるフレキシブルプリント基板は、耐熱信頼性、寸法安定性、接着性に優れ、かつ、耐湿信頼性、耐折特性、屈曲性、吸湿特性、絶縁性にも優れるため、例えば、ファインピッチが要求される回路板、COF基板等でも使用できることから工業的に多大のメリットがある。
【0073】
(フレキシブルプリント基板の製造方法)
本発明のフレキシブルプリント基板は、上述した各層の材料を用いる以外は、従来公知のプロセス用いて製造することができる。
一つの好ましい実施態様では、ポリイミドフィルムに接着剤層を積層した接着剤付カバーフィルムを製造する。他方、基材フィルム層に所望の回路パターンを形成した半製品(以下「基材フィルム側半製品」という)を製造する。このようにして得られた接着剤付カバーフィルムと基材フィルム側半製品とを貼り合わせることにより、フレキシブルプリント配線基板を得ることができる。
【0074】
(基材フィルム側半製品の製造方法)
基材フィルム側半製品は、上述のフレキシブル金属張積層体を用いて、金属箔層に回路を形成することにより製造される。回路の形成は、従来公知の方法を用いることができる。アディティブ法を用いてもよく、サブトラクティブ法を用いてもよい。好ましくは、サブトラクティブ法である。
回路の配線パターンは、任意のパターンが形成可能である。特に細かい配線パターンを施した回路においても本発明のフレキシブルプリント基板は高いレベルの性能を示すので、細かい配線パターンを施す回路において特に本発明のフレキシブルプリント基板は有利である。
【0075】
具体的には、回路の配線の太さは、100μm以下とすることが可能であり、配線の太さを50μm以下とすることも可能であり、配線の太さを30μm以下とすることも可能であり、配線の太さを10μm以下とすることも可能である。
配線の間隔は、100μm以下とすることが可能であり、50μm以下とすることも可能であり、30μm以下とすることも可能であり、10μm以下とすることも可能である。配線の太さと配線間隔の和(回路ピッチ)は、100μm以下とすることが可能であり、60μm以下とすることが可能であり、20μm以下とすることも可能である。
【0076】
(接着剤付カバーフィルムの製造方法)
接着剤付カバーフィルムは、例えば、ポリイミドフィルムに接着剤を塗布、乾燥して製造される。接着剤は、特に限定はされず、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリイミド樹脂系、ポリアミドイミド樹脂系、ポリエステルイミド樹脂系などの接着剤が使用できるが、耐熱性、接着性、耐屈曲特性等からポリイミド樹脂系、ポリアミドイミド樹脂系、或いは、これらの樹脂にエポキシ樹脂を配合した樹脂組成物が好ましい。接着剤を積層する方法は、一般的な方法が適用でき、特に制限はないが、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、ドクタ、ブレードコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーターなどの塗布方法を用いて絶縁フィルムに塗布、乾燥して積層することができる。場合によっては、離型性フィルムの上に上記塗布方法で接着剤層を形成させ、該接着剤層を絶縁フィルムに転写法によりラミネートすることも可能である。乾燥条件は使用する接着剤に応じて、適時設定する。通常は30℃〜150℃程度である。又、必要に応じて、塗布された接着剤において架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0077】
得られた接着剤付カバーフィルムは、そのまま基材側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型性フィルムを貼りあわせて保管した後に、基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0078】
(基材フィルム側半製品と接着剤付カバーフィルムの貼り合わせ)
基材フィルム側半製品と接着剤付カバーフィルムとを貼り合わせる方法としては、任意の方法が使用可能である。例えば、プレスまたはロールなどを用いて貼り合わせることができる。また、加熱プレス、または加熱ロールプレス装置を使用するなどの方法により加熱を行いながら両者を貼りあわせることもできる。
【0079】
例えば、半製品における接着剤層が未硬化状態もしくは半硬化状態のものであれば、貼り合わせの際に加熱を行うことにより接着剤層の架橋反応を進めて硬化させることが可能であり、接着剤層が完全硬化した最終製品を容易に得ることもできる。架橋反応が不足の場合、或いは、架橋反応を精密にコントロールする必要がある場合には、上記の任意の方法で貼りあわせ後、必要に応じて、ポストキュアーを行うこともできる。
【0080】
[フレキシブルプリント基板の使用方法]
本発明のフレキシブルプリント基板は、フレキシブルプリント基板として採用され得る任意の積層構成とすることができる。例えば、上述の通り、基材フィルム層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の4層から構成されるフレキシブルプリント基板とすることができる。
【0081】
さらに必要に応じて、上記のフレキシブルプリント基板を2つもしくは3つ以上積層した構成とすることもできる。例えば、上記4層タイプのフレキシブルプリント基板を複数積層し、必要に応じて、フレキシブルプリント基板とフレキシブルプリント基板の間を接着剤で接着することが可能である。より具体的には、例えば、第1のフレキシブルプリント基板の基材フィルム層、第1のフレキシブルプリント基板の金属箔層、第1のフレキシブルプリント基板の接着剤層、第1のフレキシブルプリント基板のカバーフィルム層、第1のフレキシブルプリント基板と第2のフレキシブルプリント基板とを接着する接着剤層、第2のフレキシブルプリント基板の基材フィルム層、第2のフレキシブルプリント基板の金属箔層、第2のフレキシブルプリント基板の接着剤層、および第2のフレキシブルプリント基板のカバーフィルム層の合計9層が順に積層された構成とすることができる。
【0082】
また例えば、上記4層タイプのフレキシブルプリント基板を2つの基材フィルムの底部どうしを接着剤層により接着して背中合わせに貼り合わせた形態にすることもできる。この場合、例えば、上記4層タイプのフレキシブルプリント基板を用いれば、
第1のフレキシブルプリント基板のカバーフィルム層、
第1のフレキシブルプリント基板の接着剤層、
第1のフレキシブルプリント基板の金属箔層、
第1のフレキシブルプリント基板の基材フィルム層、
第1のフレキシブルプリント基板と第2のフレキシブルプリント基板との基材フィルムどうしを接着する接着剤、
第2のフレキシブルプリント基板の基材フィルム層、
第2のフレキシブルプリント基板の金属箔層
第2のフレキシブルプリント基板の接着剤層、および
第2のフレキシブルプリント基板のカバーフィルム層
の合計9層が順に積層された構成とすることができる。
【0083】
[フレキシブルプリント基板の用途]
本発明のフレキシブルプリント基板は、従来フレキシブルプリント基板が使用されてきた各種製品に使用可能である。また、特に、本発明のフレキシブルプリント基板は、耐熱性、寸法安定性、耐湿性、屈曲性、、耐折性、絶縁性等に優れているので、細い配線が必要とされる用途、および配線の間隔を狭くする必要がある用途に好適に使用可能である。例えば、配線の太さが30μm以下の製品に好適である。また、例えば、配線の間隔が60μm以下の製品に好適であり、配線の間隔が30μm以下の製品により好適であり、配線の間隔が10μm以下の製品にさらに好適である。従って、配線の太さと配線間隔との和(回路ピッチ)が狭い用途に好適に使用することができる。回路ピッチが100μm以下の製品に好適であり、回路ピッチが60μm以下の製品により好適であり、回路ピッチが30μm以下の製品にさらに好適であり、回路ピッチが20μm以下の製品に特に好適である。
【0084】
また、本発明のフレキシブルプリント基板が使用される具体的な最終製品の例としては、フラットパネルディスプレイ、携帯電話等の液晶モニター用の駆動モジュール等などが挙げられる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により、この発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は実施例により、特に制限されるものではない。
[フレキシブル金属積層体の製造例]
各実施例における特性値の評価方法は以下の通りである。尚、評価に用いた、粉末状のポリアミドイミド樹脂サンプルは、各合成例で得られた、重合ドープを大量のアセトンで、再沈殿、精製して作製した。又、各種測定、評価に用いる、樹脂フィルム(基材フィルム)は、特に断りのない限り各実施例、比較例で得られたフレキシブル金属張積層体の金属箔を、35%の塩化第二鉄(40℃)でエッチング除去し、得た。
【0086】
<対数粘度>
粉末状のポリマーサンプルを用い、ポリマー濃度が0.5g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、その溶液の溶液粘度、及び、溶媒粘度を30℃で、ウベローデ型の粘度管により測定して、下記の式で計算した。
対数粘度(dl/g)=[ln(V1/V2)]/V3
【0087】
上記式中、V1はウベローデ型粘度管により測定した溶液粘度を示し、V2はウベローデ型粘度管により測定した溶媒粘度を示すが、V1及びV2はポリマー溶液及び溶媒(N−メチル−2−ピロリドン)が粘度管のキャピラリーを通過する時間から求めた。また、V3は、ポリマー濃度(g/dl)である。
【0088】
<Tg>
表1に記載のポリアミドイミド樹脂サンプルを金属箔に塗工、乾燥した後、金属箔を35%の塩化第二鉄(40℃)でエッチング除去し、単層の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルム(サンプルサイズ4mm巾×15mm長さ)を動的粘弾性測定装置(オリエンテック社製レオバイブロン)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/分、の条件でTanδのピークトップからTgを求めた。
【0089】
<寸法変化率>
実施例のサンプルにおいて金属箔をエッチング除去して得た樹脂フィルムについて、IPC−FC241(IPC−TM−650,2.2.4(c))で150℃×30分の条件で、MD方向とTD方向について測定し、平均値を求めた。
【0090】
<半田処理後の接着強度>
実施例のサンプルをIPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製し、350℃で30秒間、半田浴にフロートさせた後のサンプルを用いて、接着強度を測定した。尚、半田浴へのサンプルのフロートは、樹脂基材面が接触するような形態で行った。
【0091】
<加熱加湿下500時間処理後の接着強度>
実施例のサンプルをIPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製し、85℃、85%RHで500時間処理後のサンプルを用いて、回路パターンと耐熱性樹脂フィルムとの接着強度を測定した。
【0092】
<湿度膨張係数>
表1に記載のポリアミドイミド樹脂サンプルを金属箔に塗工、乾燥した後、金属張積層板を作製した。
以下により測定した。
(1) IPC−FC 241(IPC−TM−650、2.2.4(c))に準じて金属張積層板の一定の位置に穴をあけ、25℃65%で4時間調湿し、穴間距離を測長する。
(2) 金属張積層板の金属層を塩化第二鉄で前面除去(エッチング)し、得られた樹脂フィルムを相対湿度が20%、40%、65%、90%の各雰囲気下で、25℃で24時間調湿する。
(3) IPC−FC 241(IPC−TM−650、2.2.4(c))に準じて、樹脂フィルムの穴間距離を測長し、(1)の金属箔積層体の穴間距離を基準に寸法変化率を求める。
(4)(3)の寸法変化率を各相対湿度に対しプロットし、その湿度に対する傾きを湿度膨張係数(CHE)とした。
【0093】
<耐折特性>
実施例のサンプルにおいて、金属箔をエッチング除去して得た樹脂フィルム(サンプルサイズ;25.4mm×88.9mm)を(株)東洋精機製作所製のガーレ式柔軟度試験機を用いて、JIS L 1096に準じて、柔軟度(反発力の目安)を測定した。測定結果の判定は、柔軟度の値が、120mg以上を×、120mgより低い場合を○とした。
【0094】
<樹脂フィルムの強度、伸度、弾性率>
表1に記載のポリアミドイミド樹脂サンプルを金属箔に塗工、乾燥した後、金属箔を35%の塩化第二鉄(40℃)でエッチング除去し、単層の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムから、幅10mm、長さ100mmのサンプルを作製し、引張試験機(商品名「テンシロン引張試験機」、東洋ボールドウィン社製)にて、引張速度20mm/分、チャック間距離40mmで測定した。
【0095】
<イミド化率>
粉末状のポリマーサンプルを用いて、赤外分光光度計(島津製作所株式会社製)KBr法で、イミドの吸収(1380cm−1)とベンゼン隔の吸収(1510cm−1)より、その吸光度比を求めた。
イミド化率の計算は、同一樹脂組成のワニスから以下の条件で作製した金属積層フィルムについて、その樹脂表面を削り取ることにより作製した粉末状サンプルを用いて、同様の方法で、イミド(1380cm−1)とベンゼン核(1510cm−1)の吸光度比を求め、この吸光度比を100%として算出した。
―金属積層フィルム作製方法―
厚み12μmの電解銅箔(商品名「HLS」、日本電解株式会社製)にナイフコーターを用いて、脱溶剤後の厚みが20μmになるようにコーティングし、100℃の温度で5分乾燥した。次いで、
減圧乾燥条件;200℃×24hr(減圧度は溶剤の揮発により、10〜100Paの間で変動した)
窒素下での加熱(流量;20L/分);260℃×10hr
で熱処理した。
【0096】
合成例1(樹脂1)
反応容器に無水トリメリット酸172g(90モル%、三菱瓦斯化学(株)製)、3,
3’、4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29g(10モル%、三菱化学(株)製)、1,5−ナフタレンジイソシアネート210g(100モル%、住友バイエルウレタン(株)製)、ジアザビシクロウンデセン1g(サンアプロ(株)製)、及び、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略することがある)1836g(三菱化学(株)製)(ポリマー濃度15%)(このモノマー組成は表1に記載。以下、樹脂2〜9におけるモノマー組成も表1に同様に記載。)を加え、100℃まで2時間で昇温し、そのまま5時間反応させた。次いで、NMP534g(ポリマー濃度12重量%)を加え、室温まで冷却した。得られた重合ドープは黄褐色透明でポリマーはNMPに溶解していた。対数粘度、イミド化率は表1に示す通りであった。又、本樹脂溶液を用いて、実施例1記載の方法により成型加工した金属積層体の金属箔を35%の塩化第二鉄(40℃)でエッチング除去して得た樹脂フィルム(単層でのフィルム特性)のTg、強度、伸度、弾性率、は表1に示す通りであった。
尚、各々のモノマーの純度は99%以上のものを使用した。
【0097】
合成例2〜9
モノマー組成を表1に示す内容に変えた以外は、合成例1と同じ重合条件で、樹脂ワニスを作製した。対数粘度、イミド化率、Tg、強度、伸度、弾性率は、表1に示す通りであった。
【0098】
実施例1、実施例2、実施例5、比較例1〜5
以上の様にして得られたポリマー溶液を用いて、以下の様な成型加工条件でフレキシブル金属張積層体を作製し、表2に示す内容の各種特性を評価した。
(A)初期乾燥
上記で得られた樹脂溶液2種類を用いて、表2に示す様な積層構成にて、基材樹脂層が2層構成の初期乾燥されたフレキシブル金属張積層体を得た。
即ち、厚み12μmの電解銅箔(商品名「NA−VLP」、三井金属鉱山株式会社製)にナイフコーターを用いて、脱溶剤後の厚みが表―2記載の通りになるように第1層目のコーティングし、100℃の温度で5分乾燥した。次いで、同様の方法で、脱溶剤後の厚みが表―2記載の通りになるように、さらに、コーティングし、100℃の温度で10分乾燥し、初期乾燥されたフレキシブル金属張積層体を得た。
(B)二次乾燥
上記の初期乾燥された積層体を外径16インチのアルミ缶に、塗工面が外側になるよう巻き付け、真空乾燥機、或いはイナートオーブンで、以下に示す条件で加熱処理した。得られた積層体の塗膜中の溶剤は完全に除去されていた。
減圧乾燥条件;200℃×24hr(減圧度は溶剤の揮発により、10〜100Paの間で変動した)
窒素下での加熱(流量;20L/分);260℃×10hr
【0099】
実施例3,4
それぞれ銅箔を厚み12μmの古河サーキットホイル(株)製の電解銅箔「U−WZ」、厚み12μmの日本電解(株)製の電解銅箔「HLS」に変え、かつ表2に記載した樹脂に変更した以外は、実施例2と同様の方法でフレキシブル金属積層体を作製し、表2に示す内容の各種特性を評価した。
【0100】
【表1】

【0101】
略号の意味
HR-16N;東洋紡(株)製ポリアミドイミド樹脂ワニス
TMA;無水トリメリット酸
BTDA;3、3、‘4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA;3、3、‘4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMA:無水ピロメロット酸
TPA;テレフタル酸
NDI;1、5−ナフタレンジイソシアネート
TODI;O−トリジンジイソシアネート
CHE;吸湿寸法変化率
【0102】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0103】
上述したように、本発明のフレキシブル金属積層体は、屈曲性、耐折特性、湿度寸法変化率が低く、Tgの高い複数の樹脂組成物からなり、その層構成、加工条件より、耐折特性、屈曲性、寸法精度、耐湿信頼性などの観点で優れている。更に、用いる樹脂組成物は有機溶剤に可溶である為、高温での熱処理の必要性もなく安価に製造できる。従って
、高密度実装基板用途でも使用できるフレキシブル基板が安価に製造できることから、工業的に多大のメリットがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性樹脂フィルムの少なくとも片面に金属箔が積層されたフレキシブル金属積層体の製造方法であって、以下の第1工程〜第3工程を含むことを特徴とするフレキシブル金属積層体の製造方法;
酸成分として、無水トリメリット酸(TMA)、3,3,4’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、及び3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、イソシアネート成分として1、5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、を含む原料で重合されたポリアミドイミド樹脂であり、かつ、Tgが350℃以上の該ポリアミドイミド樹脂を、金属箔上に、直接、或いは接着層を介して、塗布し、乾燥し、第1層目の樹脂層を形成する第1工程;
酸成分としてTMA、BTDA、及びBPDA、イソシアネート成分としてo−トリジンジイソシアネート(TODI)、を含む原料で重合されたポリアミドイミド樹脂を、第1層目の樹脂層の上に、直接、或いは接着層を介して、塗布し、乾燥し、第2層目の樹脂層を形成する第2工程;
120℃以上400℃以下で熱処理し、第1層目の樹脂層の厚みが3μm以上50μm以下であり、かつ第2層目の樹脂層の厚みが10μm以上60μm以下であるフレキシブル金属積層体を得る第3工程。
【請求項2】
さらに、以下の(A)及び/または(B)の特徴を有する請求項1に記載のフレキシブル金属積層体の製造方法;
(A)第1層目の樹脂層のポリアミドイミド樹脂が、酸成分の全量を100モル%、イソシアネート成分の全量を100モル%、酸成分とイソシアネート成分の合計を200モル%としたときに、
ナフタレン基を有するモノマー成分を80モル%以上含む原料を重合して得られたポリアミドイミド樹脂であること;
(B)第2層目の樹脂層のポリアミドイミド樹脂が、酸成分の全量を100モル%、イソシアネート成分の全量を100モル%、酸成分とイソシアネート成分の合計を200モル%としたときに、
ビフェニレン基を有するモノマー成分を100モル%以上含む原料を重合して得られたポリアミドイミド樹脂であること。
【請求項3】
さらに、第1層目の樹脂層のポリアミドイミド樹脂が、無水ピロメロット酸(PMA)及び/またはテレフタル酸(TPA)を含む原料を重合して得られたポリアミドイミド樹脂である請求項1または請求項2に記載のフレキシブル金属積層体の製造方法。
【請求項4】
金属箔に接する側の樹脂層(第1層目の樹脂層)の厚み(T1)と金属箔とは接しない側の樹脂層(第2層目の樹脂層)の厚み(T2)の比(T1)/(T2)が、0.05〜5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブル金属積層体の製造方法。
【請求項5】
第1層目の樹脂層のポリアミドイミド樹脂及び第2層目の樹脂層のポリアミドイミド樹脂が有機溶剤に可溶であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフレキシブル金属積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のフレキシブル金属積層体であって、金属箔に接する側の耐熱性樹脂層(第1層目の樹脂層)のイミド化率が50%以上のポリアミドイミド樹脂であることを特徴とするフレキシブル金属積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のフレキシブル金属積層体であって、金属箔とは接しない側の樹脂層(第2層目の樹脂層)のイミド化率が50%以上のポリアミドイミド樹脂であることを特徴とするフレキシブル金属積層体の製造方法。
【請求項8】
金属箔の厚みが3μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフレキシブル金属積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造されるフレキシブル金属積層体は、以下の(C)の性質を有することを特徴とするフレキシブル金属積層体の製造方法;
(C)IPC−FC241(IPC−TM−650,2.4.9(A))に従い、サブトラクティブ法により回路パターンを作製したサンプルを用いて、85℃、85%RHの加熱、加湿下にて500時間処理した後の、回路パターンと耐熱性樹脂フィルムとの接着強度が4N/cm以上。


【公開番号】特開2012−148569(P2012−148569A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76609(P2012−76609)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【分割の表示】特願2008−288541(P2008−288541)の分割
【原出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】