フロントサスペンションアーム
【課題】 走行路に露出した物に衝突し難くなるとともに、前方からの衝撃力に対する強度が大きくなるフロントサスペンションアームを提供すること。
【解決手段】 スノーモービルSMの車体10における前部側部分の両側部と、車体10の前部側部分の両側部下方にそれぞれ設置される操舵用スキー23との間にフロントサスペンションアーム20aを設けた。そして、このフロントサスペンションアーム20aにおけるスノーモービルSMの前後方向から見た状態での形状を、上部側部分が突出し下部側が凹むように湾曲した形状にした。また、フロントサスペンションアーム20aにおける車体10側部分を略直線状にし、操舵用スキー23側部分を湾曲させた。さらに、フロントサスペンションアーム20aの車体10の幅方向に直交する断面の形状を、上下方向の長さよりも前後方向の長さの方が長い楕円形に設定した。
【解決手段】 スノーモービルSMの車体10における前部側部分の両側部と、車体10の前部側部分の両側部下方にそれぞれ設置される操舵用スキー23との間にフロントサスペンションアーム20aを設けた。そして、このフロントサスペンションアーム20aにおけるスノーモービルSMの前後方向から見た状態での形状を、上部側部分が突出し下部側が凹むように湾曲した形状にした。また、フロントサスペンションアーム20aにおける車体10側部分を略直線状にし、操舵用スキー23側部分を湾曲させた。さらに、フロントサスペンションアーム20aの車体10の幅方向に直交する断面の形状を、上下方向の長さよりも前後方向の長さの方が長い楕円形に設定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における本体の前部側部分と、本体の前部側部分の側部側下方に設置される操舵用部材との間に設けられるフロントサスペンションアームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フロントサスペンションアームを含むサスペンション装置を備えた車両が移動手段として用いられており、例えば、降雪地帯における雪原などを移動する際には、スノーモービルが用いられている。このスノーモービルでは、車両本体の下部に設けられた駆動輪と後輪とにトラックベルトが掛け渡されており、このトラックベルトをエンジンの駆動によって回転させることによりスノーモービルを前方に向かって走行させる。また、このスノーモービルの車両本体の上部における略中央には、操舵用のハンドルが設けられており、このハンドルを操作することにより、車両本体の下部における前端両側に設けられた一対の操舵用スキーが左右に回動してスノーモービルが旋回するように構成されている。そして、この操舵用スキーは、フロントサスペンションアームを含むサスペンション装置によって車両本体に接続されている。
【0003】
このようなスノーモービルの中に、フロントサスペンションアームを上方に向かって湾曲させることにより、フロントサスペンションアームが雪面に接触しないようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。このスノーモービルのフロントサスペンションアームは、車両本体の下部から前方に向かって延びており、その先端に操舵用スキーが取り付けられている。
【特許文献1】米国特許第6793030B2号公報
【発明の開示】
【0004】
しかしながら、このようなスノーモービル等の車両の中には、フロントサスペンションアームを、車両本体の幅方向に向って延ばしたものもある。このような車両で、岩や切り株等が露出した走行路を走行すると、フロントサスペンションアームに物が当たって、衝撃が加わったり、フロントサスペンションアームが破損したりすることがある。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、走行路に露出した物に衝突し難くなるとともに、前方からの衝撃力に対する強度が大きくなるフロントサスペンションアームを提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係るフロントサスペンションアームの構成上の特徴は、車両の本体における前部側部分の両側部と、その両側部下方にそれぞれ設置される操舵用部材との間に設けられ、本体の幅方向に延びるフロントサスペンションアームであって、車両の前後方向から見た状態での形状が、上部側部分が突出し下部側が凹むように湾曲した形状に形成されていることにある。
【0007】
このように、本発明に係るフロントサスペンションアームは、上部側部分が突出し、下部側が凹むように上方に湾曲して形成されているため、走行路面との間隔に広いスペースを確保できる。このため、走行路面に岩や草等の突出物があっても、フロントサスペンションアームがその突出物に衝突することを防止したり、衝突し難くしたりすることができる。これによって、車両は、悪路であってもフロントサスペンションアームに物を衝突させることなく良好な状態で走行することができる。
【0008】
また、本発明に係るフロントサスペンションアームの他の構成上の特徴は、フロントサスペンションアームにおける本体側の部分が略直線状に形成され、操舵用部材側の部分が湾曲した形状に形成されていることにある。これによると、フロントサスペンションアームの大部分が走行路から高い位置になるようにすることができ、フロントサスペンションアームと走行路面との間のスペースをさらに大きくすることができる。この結果、フロントサスペンションアームが、走行路上の物等と衝突することをさらに確実に防止できる。
【0009】
また、本発明に係るフロントサスペンションアームのさらに他の構成上の特徴は、車両の幅方向に直交する断面の形状が、上下方向の長さよりも前後方向の長さの方が長い楕円形に設定された複数の楕円状のパイプアームで構成されていることにある。
【0010】
これによると、フロントサスペンションアームの上下方向の厚みが小さくなるため、さらに、フロントサスペンションアームと、走行路面との間隔を広くすることができる。また、フロントサスペンションアームと本体との距離が長くなるため、フロントサスペンションアームと本体との衝突も生じ難くなる。さらに、フロントサスペンションアームにおける前後方向の剛性が大きくなるため、フロントサスペンションアームの前方から受ける衝撃力に対する耐久性が高くなる。このため、例え、フロントサスペンションアームが走行路上の突出物に衝突しても、フロントサスペンションアームが破損され難くなる。
【0011】
また、本発明に係るフロントサスペンションアームのさらに他の構成上の特徴は、車両がスノーモービルであり、操舵用部材が操舵用スキーであることにある。この場合、スノーモービルからなる車両は、雪面上を走行するが、フロントサスペンションアームの位置が高くなるため、柔らかな雪面上でもフロントサスペンションアームが雪面に接触することがなくなる。これによって、車両は、フロントサスペンションアームから抵抗を受けることなくスムーズに走行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1および図2は、本発明に係るフロントサスペンションアーム20aを備えたスノーモービルSMを示している。スノーモービルSMの本体を構成する車体10の上部における前部側には、ウィンドシールド11が設けられ、このウィンドシールド11の後方に、スノーモービルSMを操舵するためのハンドル12等が設けられている。そして、車体10の上部における後部側部分が、運転者が座るためのシート13に形成されている。
【0013】
また、車体10の前後方向の中央両側には、スプロケットからなる駆動輪(図示せず)がそれぞれ設けられ、車体10の後部両側にはホイル14がそれぞれ設けられている。そして、この両駆動輪と両ホイル14とに、外周面に突起が形成されたトラックベルト15が掛け渡されている。また、トラックベルト15が回転移動する際に、下部に位置する部分の内周面両側には、スライドレール16や遊動輪17a,17b等が設けられている。そして、エンジン(図示せず)を駆動させることによってトラックベルト15は、スライドレール16等によって、ガイドされた状態で回転移動する。これにより、トラックベルト15は、下面に位置する突起を雪面に係合させながら回転移動しスノーモービルSMを前方に向かって走行させる。
【0014】
また、車体10の内部における前端両側には、ハンドル12に接続されたフロントサスペンション20がそれぞれ設けられている。このフロントサスペンション20は、車体10の左右両側に設けられた緩衝器21,21および後述するロアアーム25を介して緩衝器21,21に連結され車体10の下方にそれぞれ延びる連結ロッド22,22を備えている。そして、この連結ロッド22,22の下端部に、本発明の操舵用部材としての操舵用スキー23,23がそれぞれ連結されている。なお、左右のフロントサスペンション20を構成する各部材は、左右対称に配置された同一部材で構成されるため同一符号を記している。
【0015】
また、各フロントサスペンション20は、図3ないし図5に示したように、一対のパイプ状アーム24a,24bからなるアッパーアーム24と、一対のパイプ状アーム25a,25bからなるロアアーム25とを備えている。このアッパーアーム24とロアアーム25とで本発明に係るフロントサスペンションアーム20aが構成されている。アッパーアーム24は、図6および図7に示したように構成されている。すなわち、アッパーアーム24は、パイプ状アーム24a,24bの基端部(図6,7の左側端部)をそれぞれ支持パイプ26の両端側部分の外周面に固定し、パイプ状アーム24aの先端部を連結パイプ27aの外周面に固定するとともに、パイプ状アーム24bの先端部を連結パイプ27bの外周面に固定して一体的に形成されている。
【0016】
また、支持パイプ26の長さは、略20cm程度に設定され、連結パイプ27a,27bの長さは、3.5cm程度に設定されている。そして、パイプ状アーム24bは、支持パイプ26に直交するようにして支持パイプ26に固定され、パイプ状アーム24aは、先端部を、パイプ状アーム24bの先端部側に傾けた状態で支持パイプ26に固定されている。このパイプ状アーム24bの長さは、略30cmに設定され、パイプ状アーム24aの長さは、パイプ状アーム24bの長さよりもやや長く設定されて、支持パイプ26と連結パイプ27a,27bとが平行するように構成されている。
【0017】
さらに、パイプ状アーム24a,24bは、支持パイプ26側の部分が、略直線状に延び、略中央部付近から連結パイプ27a,27bとの接続部にかけての部分が上部側が突出するように湾曲した形状に形成されている。また、パイプ状アーム24a,24bの左右方向に直交する断面の形状は、ともに、図8に示したように、前後方向の長さが長く上下方向の長さが短くなった楕円状に形成されている。
【0018】
また、ロアアーム25は、図9および図10に示したように構成されており、パイプ状アーム25a,25bの基端部(図9,10の左側端部)をそれぞれ支持パイプ28の両端側の外周面に固定している。そして、パイプ状アーム25a,25bの中央部よりもやや支持パイプ28側の部分を中継パイプ28aで接続し、パイプ状アーム25aの先端部を連結パイプ29aの外周面に固定するとともに、パイプ状アーム25bの先端部を連結パイプ29bの外周面に固定することにより、ロアアーム25は、一体的に形成されている。
【0019】
また、支持パイプ28の長さは支持パイプ26の長さよりも少し長く設定され、連結パイプ29a,29bの長さは、連結パイプ27a,27bの長さと略等しい長さに設定されている。そして、パイプ状アーム25a,25bは、互いの先端部を近づけるように傾けた状態で支持パイプ28に固定されている。このパイプ状アーム25a,25bの長さは、ともに34cm程度に設定され、支持パイプ28と連結パイプ27a,27bとが平行するように構成されている。そして、このパイプ状アーム25a,25bも、支持パイプ28側部分が、略直線状に延び、略中央部付近から連結パイプ29a,29bとの接続部にかけての部分が上部側が突出するように湾曲した形状に形成されている。
【0020】
また、パイプ状アーム25a,25bの先端側の対向する面には、それぞれ補強板31a,31bの上部が固定され、その下方に延びる下部側部分に挿通穴32が形成された筒状突起32a,32bが対向して形成されている。さらに、パイプ状アーム25a,25bの基端部側から中央部側にかけての対向する面には、補強板33a,33bが設けられ、パイプ状アーム25bの中央外側面には、図11に示したように、穴部34aを備えた一対の突起からなる取付部34が固定されている。また、パイプ状アーム25a,25bの断面形状は、ともに前後方向の長さが長く上下方向の長さが短くなった楕円状に形成されており、中継パイプ28aの断面形状は、左右方向の長さが長く上下方向の長さが短くなった楕円状に形成されている。
【0021】
また、図3に示したように、車体10には、フロントサスペンションアーム20aを支持するためのブラケット35が設けられており、このブラケット35の前後方向の両側面部には、アッパーアーム24を取り付けるための支持穴と、ロアアーム25を取り付けるための支持穴とが上下に間隔を保って設けられている。そして、支持パイプ26の穴部をブラケット35のアッパーアーム24を取り付けるための支持穴に合わせて、支持穴と支持パイプ26の穴部とにボルト36aが通され、ボルト36aの先端部にナット(図示せず)が取り付けられている。これによって、アッパーアーム24は上下方向に回転可能な状態でブラケット35に支持されている。
【0022】
また、支持パイプ28の穴部をブラケット35のロアアーム25を取り付けるための支持穴に合わせて、支持穴と支持パイプ28の穴部とにボルト36bが通され、ボルト36bの先端部にナット(図示せず)が取り付けられている。これによって、ロアアーム25は上下方向に回転可能な状態でブラケット35におけるアッパーアーム24の下方に支持されている。また、アッパーアーム24の連結パイプ27a,27bと、ロアアーム25の連結パイプ29a,29bは、それぞれ連結ロッド22の内側部に回転可能な状態で連結されている。
【0023】
連結ロッド22の上部側部分には、連結ロッド22を、アッパーアーム24とロアアーム25とに連結するための連結部材37が取り付けられている。この連結部材37は、連結ロッド22に固定される固定部37aと、固定部37aの内側部に上下に間隔を保って形成された円筒状の取付部37b,37cとで構成されている。そして、連結パイプ27a,27bの穴部を取付部37bに合わせて、連結パイプ27a,27bおよび取付部35bの穴部にボルト38aを通し、ボルト38aの先端部にナット44aを取り付けることによって、連結ロッド22はアッパーアーム24に対して回転可能な状態でアッパーアーム24に支持される。
【0024】
また、連結パイプ29a,29bの穴部を取付部37cに合わせて、連結パイプ29a,29bおよび取付部37cの穴部にボルト38bを通し、ボルト38bの先端部にナット44bを取り付けることによって、連結ロッド22はロアアーム25に対しても回転可能な状態でロアアーム25に支持される。また、ロアアーム25の筒状突起32a,32bに設けられている挿通穴32aには、緩衝器21の下端部が回転可能な状態で連結されている。
【0025】
緩衝器21の下端部には穴部が形成されており、この穴部と挿通穴32aとにボルト38cを通し、ボルト38cの先端部にナット(図示せず)を取り付けることによって、緩衝器21はロアアーム25および連結ロッド22を介して操舵用スキー23に連結されている。また、緩衝器21の上端部にも穴部が形成されているとともに、車体10側に設けられたブラケット35aにも穴部が設けられている。そして、緩衝器21は、上端部に設けられた穴部をブラケット35aの穴部に合わせ、両穴部にボルト36cを通し、その先端部にナット44cを取り付けることによって、車体10に連結されている。
【0026】
また、フロントサスペンション20は、連結ロッド22を軸回り方向に回転させるためのアーム部39等を備えている。このアーム部39等は、ハンドル12の操作にしたがって進退移動し、その進退移動によって、操舵用スキー23は左右に回転する。操舵用スキー23は、連結ロッド22の下端部に連結された支持軸22aを介して連結ロッド22に接続されており、雪面と接触する本体部41と、操舵用スキー23を手で掴むための把持部42とで構成されている。そして、本体部41は、板状の雪面接触部41aと、雪面接触部41aの両側縁部から上方に向かって延びた側面部41bと、雪面接触部41aの下面における中央部分に形成されたキール41cとで構成されている。
【0027】
つぎに、以上にように構成されたスノーモービルSMを用いて雪面を走行する場合について説明する。まず、ハンドル12の近傍に設置されているスイッチ(図示せず)をオンにして、エンジンを駆動させ、ハンドル12に設けられたスロットルレバーやハンドル12を操作して、スノーモービルSMを走行させる。この場合、走行する雪面が、硬い雪面であれば、操舵用スキー23が雪中に沈まないため、スノーモービルSMは、直進走行する場合も旋回走行する場合にも安定した状態で走行する。
【0028】
また、雪面における走行路に、岩や草むら等の突出物が突出していても、フロントサスペンションアーム20aが湾曲して形成されて、ロアアーム25と雪面との間のスペースが広くなるため、ロアアーム25が突出物に衝突することを防止できる。また、走行する雪面が、軟らかな雪層でできたものであれば、操舵用スキー23は、途中まで雪中に埋まった状態になるが、この場合でも、フロントサスペンションアーム20aの湾曲によって、ロアアーム25が高い位置に位置しているため、雪面に接触することが防止される。これによって、スノーモービルSMは、ロアアーム25が雪による抵抗を受けることなく走行することができる。
【0029】
このように、本実施形態に係るフロントサスペンションアーム20aは、上部側部分が突出して下部側が凹むように上方に湾曲して形成されている。このため、ロアアーム25と雪面との間隔が広くなり、雪面に岩や草等の突出物が突出していても、ロアアーム25や車体10の底部がその突出物に接触することを防止することができる。これによって、スノーモービルSMは、凹凸や突出物のある雪面であっても良好な状態で走行することができる。また、本実施形態に係るフロントサスペンションアーム20aは、車体10側部分が略直線状に形成され、連結ロッド22側部分が湾曲しているため、ロアアーム25の下方がさらに広くなっている。このため、ロアアーム25が突出物に接触することをさらに確実に防止することができる。
【0030】
また、フロントサスペンションアーム20aを構成するパイプ状アーム24a,24bおよびパイプ状アーム25a,25bのそれぞれの断面形状が、上下方向の長さよりも前後方向の長さの方が長い楕円形に設定されているため、ロアアーム25と雪面との間がさらに広くなる。また、図12(a)に示したように、断面形状が円形のパイプ状アームで構成されたフロントサスペンションアーム43を用いた場合には、上下方向の幅が大きくなる(前後方向の幅と同じ)ため、フロントサスペンションアーム43と車体10との間の距離が短くなる。このため、フロントサスペンションアーム43が上下移動した際に、車体10に衝突しやすくなる。
【0031】
しかしながら、図12(b)に示したように、フロントサスペンションアーム20aでは、上下方向の幅が小さいため、フロントサスペンションアーム20aと車体10との間の距離が長くなる。このため、フロントサスペンションアーム20aが上下移動しても、車体10に衝突しなくなる。また、フロントサスペンションアーム20aにおける前後方向の剛性が大きくなり、フロントサスペンションアーム20aの前方から受ける衝撃力に対する耐久性が高くなる。このため、例え、フロントサスペンションアーム20aが突出物に衝突しても、フロントサスペンションアーム20aが破損され難くなる。
【0032】
さらに、図13(a)に示したように、断面形状が円形のパイプ状アームで構成されたフロントサスペンションアーム43を用いた場合には、前方から受ける衝撃力に対する耐久性を高くするために、各パイプ状アームの前後方向の傾斜角度を大きくして基端部側の間隔よりも先端部側の間隔を狭くする必要が生じる。このため各パイプ状アームの長さが長くなる。しかしながら、図13(b)に示したように、フロントサスペンションアーム20aは、前方から受ける衝撃力に対する耐久性が高いため、各パイプ状アームの傾斜角度を小さくして長さを短くすることができる。
【0033】
また、本発明は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、フロントサスペンションアーム20aの車体10側部分を直線状にして、連結ロッド22側を湾曲状にしているが、この湾曲はフロントサスペンションアームの全体に形成してもよいし、他の部分に形成してもよい。また、ロアアームにだけ湾曲部を形成して、アッパーアームには湾曲部を設けないようにすることもできる。
【0034】
さらに、前述した実施形態では、車両をスノーモービルSMとしたが、本発明に係るフロントサスペンションアームはスノーモービルに限らず他の車両、例えば、砂地や荒地等を走行する自動四輪車に用いることもできる。また、本発明に係るフロントサスペンションアームのそれ以外の部分の構成についても本発明の技術的範囲で適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態によるフロントサスペンションアームを備えたスノーモービルを示す側面図である。
【図2】図1に示したスノーモービルの平面図である。
【図3】フロントサスペンションアームの取付構造を示す正面図である。
【図4】フロントサスペンションアームの取付構造を示す側面図である。
【図5】フロントサスペンションアームの取付構造を示す平面図である。
【図6】アッパーアームの平面図である。
【図7】アッパーアームの側面図である。
【図8】図7の8−8断面図である。
【図9】ロアアームの平面図である。
【図10】ロアアームの側面図である。
【図11】図10の11−11断面図である。
【図12】フロントサスペンションアームの移動状態を示す説明図であり、(a)は従来のフロントサスペンションアームの移動状態を示し、(b)は本発明に係るフロントサスペンションアームの移動状態を示している。
【図13】フロントサスペンションアームを上方から見た状態を示す説明図であり、(a)は従来のフロントサスペンションアームの平面を示し、(b)は本発明に係るフロントサスペンションアームの平面を示している。
【符号の説明】
【0036】
SM…スノーモービル、10…車体、20…フロントサスペンション、20a…フロントサスペンションアーム、23…操舵用スキー、24…アッパーアーム、24a,24b,25a,25b…パイプ状アーム、25…ロアアーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における本体の前部側部分と、本体の前部側部分の側部側下方に設置される操舵用部材との間に設けられるフロントサスペンションアームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フロントサスペンションアームを含むサスペンション装置を備えた車両が移動手段として用いられており、例えば、降雪地帯における雪原などを移動する際には、スノーモービルが用いられている。このスノーモービルでは、車両本体の下部に設けられた駆動輪と後輪とにトラックベルトが掛け渡されており、このトラックベルトをエンジンの駆動によって回転させることによりスノーモービルを前方に向かって走行させる。また、このスノーモービルの車両本体の上部における略中央には、操舵用のハンドルが設けられており、このハンドルを操作することにより、車両本体の下部における前端両側に設けられた一対の操舵用スキーが左右に回動してスノーモービルが旋回するように構成されている。そして、この操舵用スキーは、フロントサスペンションアームを含むサスペンション装置によって車両本体に接続されている。
【0003】
このようなスノーモービルの中に、フロントサスペンションアームを上方に向かって湾曲させることにより、フロントサスペンションアームが雪面に接触しないようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。このスノーモービルのフロントサスペンションアームは、車両本体の下部から前方に向かって延びており、その先端に操舵用スキーが取り付けられている。
【特許文献1】米国特許第6793030B2号公報
【発明の開示】
【0004】
しかしながら、このようなスノーモービル等の車両の中には、フロントサスペンションアームを、車両本体の幅方向に向って延ばしたものもある。このような車両で、岩や切り株等が露出した走行路を走行すると、フロントサスペンションアームに物が当たって、衝撃が加わったり、フロントサスペンションアームが破損したりすることがある。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、走行路に露出した物に衝突し難くなるとともに、前方からの衝撃力に対する強度が大きくなるフロントサスペンションアームを提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係るフロントサスペンションアームの構成上の特徴は、車両の本体における前部側部分の両側部と、その両側部下方にそれぞれ設置される操舵用部材との間に設けられ、本体の幅方向に延びるフロントサスペンションアームであって、車両の前後方向から見た状態での形状が、上部側部分が突出し下部側が凹むように湾曲した形状に形成されていることにある。
【0007】
このように、本発明に係るフロントサスペンションアームは、上部側部分が突出し、下部側が凹むように上方に湾曲して形成されているため、走行路面との間隔に広いスペースを確保できる。このため、走行路面に岩や草等の突出物があっても、フロントサスペンションアームがその突出物に衝突することを防止したり、衝突し難くしたりすることができる。これによって、車両は、悪路であってもフロントサスペンションアームに物を衝突させることなく良好な状態で走行することができる。
【0008】
また、本発明に係るフロントサスペンションアームの他の構成上の特徴は、フロントサスペンションアームにおける本体側の部分が略直線状に形成され、操舵用部材側の部分が湾曲した形状に形成されていることにある。これによると、フロントサスペンションアームの大部分が走行路から高い位置になるようにすることができ、フロントサスペンションアームと走行路面との間のスペースをさらに大きくすることができる。この結果、フロントサスペンションアームが、走行路上の物等と衝突することをさらに確実に防止できる。
【0009】
また、本発明に係るフロントサスペンションアームのさらに他の構成上の特徴は、車両の幅方向に直交する断面の形状が、上下方向の長さよりも前後方向の長さの方が長い楕円形に設定された複数の楕円状のパイプアームで構成されていることにある。
【0010】
これによると、フロントサスペンションアームの上下方向の厚みが小さくなるため、さらに、フロントサスペンションアームと、走行路面との間隔を広くすることができる。また、フロントサスペンションアームと本体との距離が長くなるため、フロントサスペンションアームと本体との衝突も生じ難くなる。さらに、フロントサスペンションアームにおける前後方向の剛性が大きくなるため、フロントサスペンションアームの前方から受ける衝撃力に対する耐久性が高くなる。このため、例え、フロントサスペンションアームが走行路上の突出物に衝突しても、フロントサスペンションアームが破損され難くなる。
【0011】
また、本発明に係るフロントサスペンションアームのさらに他の構成上の特徴は、車両がスノーモービルであり、操舵用部材が操舵用スキーであることにある。この場合、スノーモービルからなる車両は、雪面上を走行するが、フロントサスペンションアームの位置が高くなるため、柔らかな雪面上でもフロントサスペンションアームが雪面に接触することがなくなる。これによって、車両は、フロントサスペンションアームから抵抗を受けることなくスムーズに走行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1および図2は、本発明に係るフロントサスペンションアーム20aを備えたスノーモービルSMを示している。スノーモービルSMの本体を構成する車体10の上部における前部側には、ウィンドシールド11が設けられ、このウィンドシールド11の後方に、スノーモービルSMを操舵するためのハンドル12等が設けられている。そして、車体10の上部における後部側部分が、運転者が座るためのシート13に形成されている。
【0013】
また、車体10の前後方向の中央両側には、スプロケットからなる駆動輪(図示せず)がそれぞれ設けられ、車体10の後部両側にはホイル14がそれぞれ設けられている。そして、この両駆動輪と両ホイル14とに、外周面に突起が形成されたトラックベルト15が掛け渡されている。また、トラックベルト15が回転移動する際に、下部に位置する部分の内周面両側には、スライドレール16や遊動輪17a,17b等が設けられている。そして、エンジン(図示せず)を駆動させることによってトラックベルト15は、スライドレール16等によって、ガイドされた状態で回転移動する。これにより、トラックベルト15は、下面に位置する突起を雪面に係合させながら回転移動しスノーモービルSMを前方に向かって走行させる。
【0014】
また、車体10の内部における前端両側には、ハンドル12に接続されたフロントサスペンション20がそれぞれ設けられている。このフロントサスペンション20は、車体10の左右両側に設けられた緩衝器21,21および後述するロアアーム25を介して緩衝器21,21に連結され車体10の下方にそれぞれ延びる連結ロッド22,22を備えている。そして、この連結ロッド22,22の下端部に、本発明の操舵用部材としての操舵用スキー23,23がそれぞれ連結されている。なお、左右のフロントサスペンション20を構成する各部材は、左右対称に配置された同一部材で構成されるため同一符号を記している。
【0015】
また、各フロントサスペンション20は、図3ないし図5に示したように、一対のパイプ状アーム24a,24bからなるアッパーアーム24と、一対のパイプ状アーム25a,25bからなるロアアーム25とを備えている。このアッパーアーム24とロアアーム25とで本発明に係るフロントサスペンションアーム20aが構成されている。アッパーアーム24は、図6および図7に示したように構成されている。すなわち、アッパーアーム24は、パイプ状アーム24a,24bの基端部(図6,7の左側端部)をそれぞれ支持パイプ26の両端側部分の外周面に固定し、パイプ状アーム24aの先端部を連結パイプ27aの外周面に固定するとともに、パイプ状アーム24bの先端部を連結パイプ27bの外周面に固定して一体的に形成されている。
【0016】
また、支持パイプ26の長さは、略20cm程度に設定され、連結パイプ27a,27bの長さは、3.5cm程度に設定されている。そして、パイプ状アーム24bは、支持パイプ26に直交するようにして支持パイプ26に固定され、パイプ状アーム24aは、先端部を、パイプ状アーム24bの先端部側に傾けた状態で支持パイプ26に固定されている。このパイプ状アーム24bの長さは、略30cmに設定され、パイプ状アーム24aの長さは、パイプ状アーム24bの長さよりもやや長く設定されて、支持パイプ26と連結パイプ27a,27bとが平行するように構成されている。
【0017】
さらに、パイプ状アーム24a,24bは、支持パイプ26側の部分が、略直線状に延び、略中央部付近から連結パイプ27a,27bとの接続部にかけての部分が上部側が突出するように湾曲した形状に形成されている。また、パイプ状アーム24a,24bの左右方向に直交する断面の形状は、ともに、図8に示したように、前後方向の長さが長く上下方向の長さが短くなった楕円状に形成されている。
【0018】
また、ロアアーム25は、図9および図10に示したように構成されており、パイプ状アーム25a,25bの基端部(図9,10の左側端部)をそれぞれ支持パイプ28の両端側の外周面に固定している。そして、パイプ状アーム25a,25bの中央部よりもやや支持パイプ28側の部分を中継パイプ28aで接続し、パイプ状アーム25aの先端部を連結パイプ29aの外周面に固定するとともに、パイプ状アーム25bの先端部を連結パイプ29bの外周面に固定することにより、ロアアーム25は、一体的に形成されている。
【0019】
また、支持パイプ28の長さは支持パイプ26の長さよりも少し長く設定され、連結パイプ29a,29bの長さは、連結パイプ27a,27bの長さと略等しい長さに設定されている。そして、パイプ状アーム25a,25bは、互いの先端部を近づけるように傾けた状態で支持パイプ28に固定されている。このパイプ状アーム25a,25bの長さは、ともに34cm程度に設定され、支持パイプ28と連結パイプ27a,27bとが平行するように構成されている。そして、このパイプ状アーム25a,25bも、支持パイプ28側部分が、略直線状に延び、略中央部付近から連結パイプ29a,29bとの接続部にかけての部分が上部側が突出するように湾曲した形状に形成されている。
【0020】
また、パイプ状アーム25a,25bの先端側の対向する面には、それぞれ補強板31a,31bの上部が固定され、その下方に延びる下部側部分に挿通穴32が形成された筒状突起32a,32bが対向して形成されている。さらに、パイプ状アーム25a,25bの基端部側から中央部側にかけての対向する面には、補強板33a,33bが設けられ、パイプ状アーム25bの中央外側面には、図11に示したように、穴部34aを備えた一対の突起からなる取付部34が固定されている。また、パイプ状アーム25a,25bの断面形状は、ともに前後方向の長さが長く上下方向の長さが短くなった楕円状に形成されており、中継パイプ28aの断面形状は、左右方向の長さが長く上下方向の長さが短くなった楕円状に形成されている。
【0021】
また、図3に示したように、車体10には、フロントサスペンションアーム20aを支持するためのブラケット35が設けられており、このブラケット35の前後方向の両側面部には、アッパーアーム24を取り付けるための支持穴と、ロアアーム25を取り付けるための支持穴とが上下に間隔を保って設けられている。そして、支持パイプ26の穴部をブラケット35のアッパーアーム24を取り付けるための支持穴に合わせて、支持穴と支持パイプ26の穴部とにボルト36aが通され、ボルト36aの先端部にナット(図示せず)が取り付けられている。これによって、アッパーアーム24は上下方向に回転可能な状態でブラケット35に支持されている。
【0022】
また、支持パイプ28の穴部をブラケット35のロアアーム25を取り付けるための支持穴に合わせて、支持穴と支持パイプ28の穴部とにボルト36bが通され、ボルト36bの先端部にナット(図示せず)が取り付けられている。これによって、ロアアーム25は上下方向に回転可能な状態でブラケット35におけるアッパーアーム24の下方に支持されている。また、アッパーアーム24の連結パイプ27a,27bと、ロアアーム25の連結パイプ29a,29bは、それぞれ連結ロッド22の内側部に回転可能な状態で連結されている。
【0023】
連結ロッド22の上部側部分には、連結ロッド22を、アッパーアーム24とロアアーム25とに連結するための連結部材37が取り付けられている。この連結部材37は、連結ロッド22に固定される固定部37aと、固定部37aの内側部に上下に間隔を保って形成された円筒状の取付部37b,37cとで構成されている。そして、連結パイプ27a,27bの穴部を取付部37bに合わせて、連結パイプ27a,27bおよび取付部35bの穴部にボルト38aを通し、ボルト38aの先端部にナット44aを取り付けることによって、連結ロッド22はアッパーアーム24に対して回転可能な状態でアッパーアーム24に支持される。
【0024】
また、連結パイプ29a,29bの穴部を取付部37cに合わせて、連結パイプ29a,29bおよび取付部37cの穴部にボルト38bを通し、ボルト38bの先端部にナット44bを取り付けることによって、連結ロッド22はロアアーム25に対しても回転可能な状態でロアアーム25に支持される。また、ロアアーム25の筒状突起32a,32bに設けられている挿通穴32aには、緩衝器21の下端部が回転可能な状態で連結されている。
【0025】
緩衝器21の下端部には穴部が形成されており、この穴部と挿通穴32aとにボルト38cを通し、ボルト38cの先端部にナット(図示せず)を取り付けることによって、緩衝器21はロアアーム25および連結ロッド22を介して操舵用スキー23に連結されている。また、緩衝器21の上端部にも穴部が形成されているとともに、車体10側に設けられたブラケット35aにも穴部が設けられている。そして、緩衝器21は、上端部に設けられた穴部をブラケット35aの穴部に合わせ、両穴部にボルト36cを通し、その先端部にナット44cを取り付けることによって、車体10に連結されている。
【0026】
また、フロントサスペンション20は、連結ロッド22を軸回り方向に回転させるためのアーム部39等を備えている。このアーム部39等は、ハンドル12の操作にしたがって進退移動し、その進退移動によって、操舵用スキー23は左右に回転する。操舵用スキー23は、連結ロッド22の下端部に連結された支持軸22aを介して連結ロッド22に接続されており、雪面と接触する本体部41と、操舵用スキー23を手で掴むための把持部42とで構成されている。そして、本体部41は、板状の雪面接触部41aと、雪面接触部41aの両側縁部から上方に向かって延びた側面部41bと、雪面接触部41aの下面における中央部分に形成されたキール41cとで構成されている。
【0027】
つぎに、以上にように構成されたスノーモービルSMを用いて雪面を走行する場合について説明する。まず、ハンドル12の近傍に設置されているスイッチ(図示せず)をオンにして、エンジンを駆動させ、ハンドル12に設けられたスロットルレバーやハンドル12を操作して、スノーモービルSMを走行させる。この場合、走行する雪面が、硬い雪面であれば、操舵用スキー23が雪中に沈まないため、スノーモービルSMは、直進走行する場合も旋回走行する場合にも安定した状態で走行する。
【0028】
また、雪面における走行路に、岩や草むら等の突出物が突出していても、フロントサスペンションアーム20aが湾曲して形成されて、ロアアーム25と雪面との間のスペースが広くなるため、ロアアーム25が突出物に衝突することを防止できる。また、走行する雪面が、軟らかな雪層でできたものであれば、操舵用スキー23は、途中まで雪中に埋まった状態になるが、この場合でも、フロントサスペンションアーム20aの湾曲によって、ロアアーム25が高い位置に位置しているため、雪面に接触することが防止される。これによって、スノーモービルSMは、ロアアーム25が雪による抵抗を受けることなく走行することができる。
【0029】
このように、本実施形態に係るフロントサスペンションアーム20aは、上部側部分が突出して下部側が凹むように上方に湾曲して形成されている。このため、ロアアーム25と雪面との間隔が広くなり、雪面に岩や草等の突出物が突出していても、ロアアーム25や車体10の底部がその突出物に接触することを防止することができる。これによって、スノーモービルSMは、凹凸や突出物のある雪面であっても良好な状態で走行することができる。また、本実施形態に係るフロントサスペンションアーム20aは、車体10側部分が略直線状に形成され、連結ロッド22側部分が湾曲しているため、ロアアーム25の下方がさらに広くなっている。このため、ロアアーム25が突出物に接触することをさらに確実に防止することができる。
【0030】
また、フロントサスペンションアーム20aを構成するパイプ状アーム24a,24bおよびパイプ状アーム25a,25bのそれぞれの断面形状が、上下方向の長さよりも前後方向の長さの方が長い楕円形に設定されているため、ロアアーム25と雪面との間がさらに広くなる。また、図12(a)に示したように、断面形状が円形のパイプ状アームで構成されたフロントサスペンションアーム43を用いた場合には、上下方向の幅が大きくなる(前後方向の幅と同じ)ため、フロントサスペンションアーム43と車体10との間の距離が短くなる。このため、フロントサスペンションアーム43が上下移動した際に、車体10に衝突しやすくなる。
【0031】
しかしながら、図12(b)に示したように、フロントサスペンションアーム20aでは、上下方向の幅が小さいため、フロントサスペンションアーム20aと車体10との間の距離が長くなる。このため、フロントサスペンションアーム20aが上下移動しても、車体10に衝突しなくなる。また、フロントサスペンションアーム20aにおける前後方向の剛性が大きくなり、フロントサスペンションアーム20aの前方から受ける衝撃力に対する耐久性が高くなる。このため、例え、フロントサスペンションアーム20aが突出物に衝突しても、フロントサスペンションアーム20aが破損され難くなる。
【0032】
さらに、図13(a)に示したように、断面形状が円形のパイプ状アームで構成されたフロントサスペンションアーム43を用いた場合には、前方から受ける衝撃力に対する耐久性を高くするために、各パイプ状アームの前後方向の傾斜角度を大きくして基端部側の間隔よりも先端部側の間隔を狭くする必要が生じる。このため各パイプ状アームの長さが長くなる。しかしながら、図13(b)に示したように、フロントサスペンションアーム20aは、前方から受ける衝撃力に対する耐久性が高いため、各パイプ状アームの傾斜角度を小さくして長さを短くすることができる。
【0033】
また、本発明は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、フロントサスペンションアーム20aの車体10側部分を直線状にして、連結ロッド22側を湾曲状にしているが、この湾曲はフロントサスペンションアームの全体に形成してもよいし、他の部分に形成してもよい。また、ロアアームにだけ湾曲部を形成して、アッパーアームには湾曲部を設けないようにすることもできる。
【0034】
さらに、前述した実施形態では、車両をスノーモービルSMとしたが、本発明に係るフロントサスペンションアームはスノーモービルに限らず他の車両、例えば、砂地や荒地等を走行する自動四輪車に用いることもできる。また、本発明に係るフロントサスペンションアームのそれ以外の部分の構成についても本発明の技術的範囲で適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態によるフロントサスペンションアームを備えたスノーモービルを示す側面図である。
【図2】図1に示したスノーモービルの平面図である。
【図3】フロントサスペンションアームの取付構造を示す正面図である。
【図4】フロントサスペンションアームの取付構造を示す側面図である。
【図5】フロントサスペンションアームの取付構造を示す平面図である。
【図6】アッパーアームの平面図である。
【図7】アッパーアームの側面図である。
【図8】図7の8−8断面図である。
【図9】ロアアームの平面図である。
【図10】ロアアームの側面図である。
【図11】図10の11−11断面図である。
【図12】フロントサスペンションアームの移動状態を示す説明図であり、(a)は従来のフロントサスペンションアームの移動状態を示し、(b)は本発明に係るフロントサスペンションアームの移動状態を示している。
【図13】フロントサスペンションアームを上方から見た状態を示す説明図であり、(a)は従来のフロントサスペンションアームの平面を示し、(b)は本発明に係るフロントサスペンションアームの平面を示している。
【符号の説明】
【0036】
SM…スノーモービル、10…車体、20…フロントサスペンション、20a…フロントサスペンションアーム、23…操舵用スキー、24…アッパーアーム、24a,24b,25a,25b…パイプ状アーム、25…ロアアーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の本体における前部側部分の両側部と、該両側部下方にそれぞれ設置される操舵用部材との間に設けられ、前記本体の幅方向に延びるフロントサスペンションアームであって、
前記車両の前後方向から見た状態での形状が、上部側部分が突出し下部側が凹むように湾曲した形状に形成されていることを特徴とするフロントサスペンションアーム。
【請求項2】
前記フロントサスペンションアームにおける前記本体側の部分が略直線状に形成され、前記操舵用部材側の部分が湾曲した形状に形成されている請求項1に記載のフロントサスペンションアーム。
【請求項3】
前記車両の幅方向に直交する断面の形状が、上下方向の長さよりも前後方向の長さの方が長い楕円形に設定された複数の楕円状のパイプアームで構成されている請求項1または2に記載のフロントサスペンションアーム。
【請求項4】
前記車両がスノーモービルであり、前記操舵用部材が操舵用スキーである請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載のフロントサスペンションアーム。
【請求項1】
車両の本体における前部側部分の両側部と、該両側部下方にそれぞれ設置される操舵用部材との間に設けられ、前記本体の幅方向に延びるフロントサスペンションアームであって、
前記車両の前後方向から見た状態での形状が、上部側部分が突出し下部側が凹むように湾曲した形状に形成されていることを特徴とするフロントサスペンションアーム。
【請求項2】
前記フロントサスペンションアームにおける前記本体側の部分が略直線状に形成され、前記操舵用部材側の部分が湾曲した形状に形成されている請求項1に記載のフロントサスペンションアーム。
【請求項3】
前記車両の幅方向に直交する断面の形状が、上下方向の長さよりも前後方向の長さの方が長い楕円形に設定された複数の楕円状のパイプアームで構成されている請求項1または2に記載のフロントサスペンションアーム。
【請求項4】
前記車両がスノーモービルであり、前記操舵用部材が操舵用スキーである請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載のフロントサスペンションアーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−213166(P2006−213166A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27464(P2005−27464)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]