説明

ブラシ、基板処理装置および基板処理方法。

【課題】基板の周縁部をムラなく洗浄することができるブラシを提供する。
【解決手段】基板Wが水平に保持され回転させられる。所定の回転軸線を中心として回転する球形のブラシ21を回転する基板の周縁部に当てた状態で、基板に対してブラシを上昇または下降させながら洗浄を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板、特にその周縁を洗浄するための基板処理装置および基板処理方法、並びにブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において、ウエハ周縁部、特にベベル部に、パーティクルまたは不要付着物が付着していると、これらの剥離、転写等により歩留まり低下の原因となることは良く知られており、このような問題の発生防止のため、ウエハ周縁部の洗浄が行われている。
【0003】
特許文献1には、比較的小径の円柱形状を有する周端面洗浄部と比較的大径の円板形状を有する周縁部洗浄部とを有する略T字形のブラシを用いてウエハの周縁部分を洗浄する技術が開示されている。ブラシは、その回転軸が鉛直方向を向くように、ブラシ保持駆動機構に保持される。ウエハの洗浄時において、水平姿勢で回転するウエハの周縁部分にブラシが当てられる。このとき、比較的大径の円板形状を有する周縁部洗浄部の水平な上面がウエハの下面周縁部に押し付けられ、比較的小径の円柱形状を有する周端面洗浄部の鉛直な周面がウエハの周端面に押し付けられる。
【0004】
ウエハの周縁部には、ベベルと呼ばれる面取りがされている。ベベルの輪郭は、ウエハ供給メーカーにより微妙に異なり、直線的であったり、曲線的であったりする。また、処理の結果としてウエハ周縁部に膜が形成される結果、ベベル部の輪郭が若干変化する。特許文献1の技術では、ブラシの水平な上面および鉛直な面がウエハに押し当てられるため、ベベル部全体にブラシを当てることができずに洗浄ムラが生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−165794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板の周縁部をムラなく洗浄することができるブラシ、基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点によれば、基板を保持して回転させる基板保持部と、球形のブラシと、前記ブラシの中心を通る回転軸線周りにブラシを回転させるブラシ回転駆動部と、前記ブラシの回転軸線が前記基板保持部により保持された基板の表面を含む平面と交差するようブラシを保持するとともに、前記ブラシが前記基板保持部により保持された基板の周縁部に当たるようにブラシを位置決めするブラシ移動機構と、を備えた基板洗浄装置が提供される。
【0008】
前記基板洗浄装置は、少なくとも前記ブラシ移動機構の動作を制御する制御部を更に備えて構成することができ、前記ブラシ移動機構は、前記ブラシの水平方向位置を調節する水平方向位置調節手段と、前記ブラシの上下方向位置を調節する上下方向位置調節手段とを有しており、前記制御部は、前記ブラシの中心の高さが前記基板保持部により保持された基板の高さと一致したときに前記基板保持部により保持された基板の中心と前記ブラシの中心との間の水平方向距離が最大値をとるように、かつ、前記ブラシの中心の高さが前記基板保持部により保持された基板の高さより高い場合および低い場合には前記水平方向距離が前記最大値より小さくなるように、前記水平方向位置調節手段によりブラシの水平方向位置を調節しながら、前記上下方向位置調節手段により前記ブラシの上下方向位置を変化させて洗浄処理を行うように制御することができる。
【0009】
前記ブラシ移動機構は、鉛直線に対して前記ブラシの回転軸線を傾けることができるチルト角調節手段を更に備えて構成することができる。
【0010】
本発明の第2の観点によれば、基板を水平に保持して回転させることと、所定の回転軸線を中心として回転する球形のブラシを回転する前記基板の周縁部に当てた状態で、前記基板に対して前記ブラシを上昇または下降させることと、を備えた基板洗浄方法が提供される。
【0011】
好適な一実施形態において、前記基板に対して前記ブラシを上昇または下降させる際に、前記ブラシを水平方向に移動させることを更に備えることができ、この場合、前記ブラシの水平方向の移動は、前記ブラシの中心の高さが前記基板の高さと一致したときに前記基板の中心と前記ブラシの中心との間の水平方向距離が最大値をとるように、かつ、前記ブラシの中心の高さが前記基板の高さより高い場合および低い場合には前記水平方向距離が前記最大値より小さくなるように、行うことができる。
【0012】
前記基板に対して前記ブラシを上昇または下降させる際に、鉛直線に対する前記ブラシの回転軸線の成す角度を変更してもよい。
【0013】
本発明の第3の観点によれば、半導体装置の基板を洗浄するためのブラシであって、多孔質の樹脂材料からなる球形のブラシが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ブラシが球形であるので、ブラシの上下位置の変化に応じてブラシに対する基板周縁部の接触部位が変化するため、基板周縁部をムラ無く洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による基板洗浄装置の一実施形態を示す概略構成図。
【図2】図1の基板洗浄装置の内部を示す概略平面図。
【図3】図2の周縁洗浄機構を詳細に示す断面図。
【図4】ブラシの取り付け構造および洗浄時の作用を説明するための断面図。
【図5】図1の基板洗浄装置の制御部の構成を示すブロック図。
【図6】チルト機構を更に備えた周縁洗浄機構の変形例を示す断面図。
【図7】ブラシの変形例を示す概略断面図。
【図8】表面洗浄機構を更に備えた基板洗浄装置の内部を示す概略平面図。
【図9】図1に示す基板洗浄装置を備えた洗浄処理システムの一例を示す平面図。
【図10】図9の洗浄処理システムの側面図。
【図11】図8の洗浄処理システムに用いることができる基板表面洗浄装置の一例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明による基板洗浄装置の一実施形態としてのウエハ洗浄装置ついて具体的に説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、ウエハ洗浄装置1はチャンバ2を有し、このチャンバ2の中には、被洗浄基板である半導体ウエハW(以下単に「ウエハ」と記す)を水平姿勢で保持するスピンチャック3が設けられている。スピンチャック3は、ウエハWの裏面(デバイスが形成されない面)の中央部を真空吸着することによりウエハWを保持する。スピンチャック3は、軸3aを介してチャンバ2の下方に設けられたモーター4により回転可能である。チャンバ2内には、スピンチャック3に保持されたウエハWを覆うようにカップ5が設けられている。カップ5の底部から、排気および排液のための排気排液管6が、チャンバ2の底壁を貫通して下方へ延びている。チャンバ2の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬入出口7が設けられている。軸3aとカップ5の底部およびチャンバ2の底部との間には流体シール8が設けられている。
【0018】
ウエハ洗浄装置1は、さらに、洗浄液を供給する洗浄液供給機構10と、ウエハWの端面および表裏面の周縁部分(以下に単に「周縁部」とも記す)をブラシ洗浄する周縁洗浄機構20とを有している。
【0019】
洗浄液供給機構10は、カップ5の上方に設けられた第1洗浄液ノズル11aとスピンチャック3に保持されたウエハWの裏面側に位置するように設けられた第2洗浄液ノズル11bと、洗浄機構20の後述する回動アーム25に保持される第3洗浄液ノズル11cとを有している。これらの洗浄液ノズル11a、11b、11cにはそれぞれ、第1洗浄液供給配管13a、第2洗浄液供給配管13bおよび第3洗浄液供給配管13cの各々の一端が接続されている。これらの洗浄液供給配管13a、13b、13cにはそれぞれバルブ14a、14b、14cが介設されており、これらの洗浄液供給配管13a、13b、13cの各々の他端は共通の洗浄液供給源12に接続されている。洗浄液供給源12から、第1洗浄液供給配管13aを介して第1洗浄液ノズル11aからウエハWの表面の中心付近に洗浄液が供給され、第2洗浄液供給配管13bを介して第2洗浄液ノズル11bからウエハWの裏面に洗浄液が供給され、第3洗浄液供給配管13cを介して第3洗浄液ノズル11cから洗浄機構20の後述するブラシ21に直接的に洗浄液が供給される。洗浄液としては、純水や薬液等を用いることができる。
【0020】
周縁洗浄機構20は、球形のブラシ21が先端に取り付けられた回動アーム25と、回動アームを支持する支持柱部26と、回動アーム25を回動させる回動機構および回動アーム25を回動(旋回)および昇降させる回動昇降部27とを有している。
【0021】
図3は、周縁洗浄機構20をさらに詳細に示す断面図である。回動アーム25は水平に延びる角筒形状を有している。ブラシ21が取り付けられる回転軸22が、回動アーム25の先端部分に取り付けられた一対のベアリング31a,31bにより回転可能に支持されている。回転軸22にはプーリー32が取り付けられており、プーリー32にはベルト33が巻き掛けられている。ベルト33は、回動アーム25の内部空間を水平に延びている。回動アーム25の内部の基端側部分には、ブラシ回転用のモーター34が設けられている。モーター34の回転軸34aにはプーリー35が取り付けられていて、ベルト33がプーリー35に巻き掛けられている。従って、モーター34を回転駆動することにより、回転軸22およびこれに取り付けられたブラシ21が回転する。モーター34、プーリー32、35、ベルト33等がブラシを回転駆動するブラシ回転駆動部をなす。
【0022】
回動アーム25の基端部には、鉛直方向に延びる回動シャフト38が、回動アーム25内の上下に設けられた一対の固定部材39により固定されている。回動シャフト38は支持柱部26を通って回動昇降部27まで延びている。
【0023】
回動昇降部27は、支持柱部26の下方に連続する筐体41と、その内部に設けられた回動機構42および昇降機構45とを有している。回動機構42は、回動用のモーター43を有しており、その回転軸が回動シャフト38の下端に接続されており、モーター43を回転駆動することにより、回動シャフト38に固定された回動アーム25が回動するようになっている。昇降機構45は、回動シャフト38をベアリング47を介して回転可能に支持する支持部材46と、筐体41の底部から鉛直上方に延び、支持部材46に形成された図示しないナット部に螺合してボールネジ機構を構成するネジ軸48と、筐体41の底板に固定されてネジ軸48を回転させるモーター49と、筐体41内に設けられて支持部材46を上下方向にガイドするガイド部材50とを有している。すなわち、昇降機構45はボールネジ機構によって回動シャフト38を昇降させることにより、回動アーム25を昇降させる。
【0024】
図4は、回転軸22への球形のブラシ21の取り付け構造を示す図である。ブラシ21は、多孔質樹脂からなるスポンジ、具体的にはPVA(ポリビニルアルコール)製のスポンジから形成することができる。より高い耐薬品性が求められるならば、ブラシ21をPVDF(ポリフッ化ビニリデン)製のスポンジから形成することが好ましい。球形のブラシ21の直径は、例えば20mmとすることができるが、これには限定されない。
【0025】
球形のブラシ21の取り付けには、ボルトの形態の取り付け具23が用いられる。取り付け具23は、頭部23aと軸部23bとを有している。貫通孔21aが、球形のブラシ21の中心を通過して直線的にブラシ21を貫通して延びている。取り付け具23の軸部23bが貫通孔21aに通されており、軸部23bの先端部がブラシ21から突出している。軸部23bの外径を貫通孔21aの内径より大きくして、ある程度の締め代を設けることが好ましい。軸部23bの先端部には雄ねじ23cが形成されている。回転軸22はその先端に拡径部22aを有しており、拡径部22aの中心に雌ねじが形成された孔22bが形成されている。雄ねじ23cを雌ねじにねじ込むことにより、回転軸22に取り付け具23が固定される。これにより、取り付け具23の頭部23aの上面23dと回転軸22の拡径部22aの下面22cとの間に、ブラシ21が挟み込まれてそこで保持される。
【0026】
ブラシ21の球形が損なわれないように、上面23dと下面22cとの間でブラシ21を強く挟まないことが好ましい。このために、雄ねじ23cの先端には孔22bの底面に当接するストッパ23eが形成され、前述の上面23dと下面22cとの間の間隔が予め定められた値となるようになっている。
【0027】
制御部30は、図5のブロック図に示すように、コントローラ61と、ユーザーインターフェース62と、記憶部63とを有している。コントローラ61は、基板洗浄装置1の制御可能な構成要素、例えばスピンチャック回転用のモーター4、ブラシ回転用のモーター34、回動アーム回動用のモーター43、昇降用モーター49、バルブ14a,14b,14c等(図6に示された後述のチルト用のモータ71も含む)の動作を制御する。また、ユーザーインターフェース62はコントローラ61に接続され、オペレータがウエハ洗浄装置1を管理するためにコマンド等の入力操作を行うキーボードや、ウエハ洗浄装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる。また、記憶部63もコントローラ61に接続され、その中にウエハ洗浄装置1の各構成部の制御対象を制御するための制御プログラムや、ウエハ洗浄装置1に所定の処理を行わせるためのプログラムすなわち処理レシピが格納されている。処理レシピは記憶部63の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクのような固定的なものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、コントローラ61は、必要に応じて、ユーザーインターフェース62からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部63から呼び出して実行させることで、コントローラ61の制御下で、所定の処理が行われる。
【0028】
次に、上記のウエハ洗浄装置1により行われるウエハWの洗浄処理について説明する。
【0029】
まず、チャンバ2内にウエハWを搬入し、スピンチャック3でウエハWを保持する。この状態で、モーター4を駆動してスピンチャック3とともにウエハWを所定の回転数(例えば100rpm程度)で回転させ、第1洗浄液ノズル11a、第2洗浄液ノズル11bおよび第3洗浄液ノズル11cから洗浄液を吐出しつつ、ブラシ回転用モーター34によりブラシ21を所定の回転数(例えば50rpm程度)で、好ましくはウエハWの回転方向と逆向きに回転させる。そして、モーター43により回動アーム25をスピンチャック3上のウエハWに向けて回動させてブラシ21をウエハWの周縁部に押し付ける。その後、ブラシ21をウエハWの周縁部に押し付けたまま上下方向に移動させる。例えば、最初にブラシ21を比較的低い位置(例えば図4においてブラシ21とウエハW1との相対位置関係が成立する位置)に位置させ、徐々にブラシ21を上昇させてゆき、最終的に比較的高い位置(例えば図4においてブラシ21とウエハW3との相対位置関係が成立する位置)までブラシ21を上昇させる。ブラシ21は柔軟性があるため、ウエハWの周縁部がブラシ21に食い込んだ状態で洗浄が行われる。ブラシ21は球形であるため、ブラシ21を徐々に上昇させてゆく過程において、ウエハWの周縁部においてブラシ21から最大の接触面圧を受けるポイントが徐々にずれてゆく。このため、ウエハWの周縁部をムラなく洗浄することができる。なお、最初にブラシ21を比較的高い位置に位置させ、徐々にブラシを下降させながら洗浄を行ってもよい。
【0030】
ブラシ21を上下動させてゆく過程において、ブラシ21の水平方向位置を調整することが好ましい。回動機構42の微調整により回動アーム25を微少量旋回させることにより、ブラシ21の水平方向位置(すなわちブラシ21の回転中心軸線とウエハWの回転中心軸線との間の距離)をブラシ21の上下方向位置に関連づけて調整して、ブラシ21へのウエハWの食い込み量が概ね一定になるようにすることができる。具体的には、例えば、図4において矢印Aで示す円弧状の軌跡に従ってブラシ21を移動させればよい。矢印Aで示す円弧の半径は、ブラシ21の半径と同じにすることができる。先に説明したように単にブラシ21を上下動させるだけでも周縁部をムラなく洗浄することはできるが、ブラシ21の水平方向位置を調整してブラシ21へのウエハWの食い込み量が一定になるようにすることで、基板に加わる力が均一となり、均一な処理ができるというさらなる効果が得られる。
【0031】
なお、図1〜図3に示す構成においては、回動機構42がブラシ21の水平方向位置を調整する水平方向位置調節手段をなし、昇降機構45がブラシ21の上下方向位置を調整する上下方向位置調節手段をなす。
【0032】
また、図6に示すように、回転軸22のチルト角度(鉛直軸に対するブラシの回転軸線の角度)を変更するチルト機構(チルト角調整手段)70を更に設けることもできる。チルト機構70は、モーター34よりも基端側において回動アーム25を先端側部分25aと基端側部分25bとに分離して、先端側部分25aおよび基端側部分25bを、これらの部分のいずれか一方、好ましくは基端側部分25bに設けたモーター71により、水平軸線周りに相対回転可能とすることにより構成することができる。
【0033】
前記水平軸線とブラシ21の球の中心が図6に示す構成例のように上下方向にずれていれば、チルト機構70を動作させることにより、ブラシ21の水平方向位置を変更することができる。なお、前記水平軸線上にブラシ21の球の中心が位置するように回動アーム25を構成すれば、チルト機構70を動作させることにより、ブラシ21の水平方向位置を実質的に変更することなく、ウエハWに対するブラシの接触部位を変更することができる。
【0034】
なお、前記水平軸線とブラシ21の球の中心との位置関係に関わらず、チルト機構70を動作させることにより、ブラシ21に対するウエハWの接触位置を変更することができる。ブラシ21は球形であるため、ブラシ21とウエハWの上下方向の位置関係が同じであるなら、ブラシ21に対するウエハWの接触位置が変化しても洗浄効果に影響はないため、所定数のウエハWを洗浄した後に、回転軸22のチルト角度を変更して、ブラシ21の別の部位を用いて別の所定数のウエハWの洗浄を行うことができる。こうすれば、ブラシ21の表面を満遍なく使用することができ、ブラシ21を長く使用することができ、ひいては洗浄処置装置の運転コストを低減することができる。
【0035】
なお、図6に示す構成においては、チルト機構70は、単にチルト角調整手段を成す場合(前記水平軸線上にブラシ21の球の中心が位置する場合)と、前記チルト角調整手段としての機能に加えてブラシ21の水平方向位置を調整する水平方向位置調節手段の機能の一部、或いは、ブラシ21の上下方向位置を調整する上下方向位置調節手段の機能の一部を受け持つ場合(前記水平軸線とブラシ21の球の中心が図6に示す構成例のように上下方向にずれている場合)がある。
【0036】
図7に示すように、ブラシ21に2つまたはそれ以上の数の孔21aを形成してもよい。なお、複数の孔21aはいずれもブラシ21の球の中心Oを通過している。或る一つの孔21aを用いてブラシ21を回転軸22に取り付けた状態で所定数のウエハWを洗浄し、その後、他の一つの孔21aを用いてブラシ21を回転軸22に取り付けた状態で所定数のウエハWを洗浄することができる。こうすれば、ブラシ21の表面を満遍なく使用することができ、ブラシ21を長く使用することができ、ひいては洗浄処置装置の運転コストを低減することができる。勿論、ブラシ21は球形であるため、複数の孔21aのいずれを用いた場合でも、洗浄効果に差異はない。
【0037】
上記実施形態では、基板洗浄装置が、ウエハWの周縁部のみを洗浄するように構成されているが、これには限定されない。例えば、図8に概略的に示すように、基板洗浄装置がさらにウエハWの表面全域を洗浄するための少なくとも1つの表面洗浄機構を備えていてもよい。図8に示した例では、ウエハWの表面を洗浄するためのスクラブブラシ81と、スクラブブラシ81を支持するとともにスクラブブラシ81を回転駆動するための回転駆動機構(図示せず)が内蔵されたアーム82と、アーム82をガイドレール84に沿って水平移動させるとともにアーム82を上下動させるアーム駆動機構83とを各々が有する2つの表面洗浄機構80が設けられている。このような表面洗浄機構は、当該技術分野において周知であるため詳細な説明は省略するが、例えば本件と同一出願人の特許出願に係る特許公開公報、特開2006−24963号に記載されたものを採用することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、周縁洗浄機構20が鉛直軸線周りに回転可能な回動アーム25を有していたが、これには限定されない。周縁洗浄機構20のアームは、図8に示したようなリニアモーション型のアーム(図8のアーム82のような直線的な水平移動を行うアーム)であってもよい。直線的な水平移動をするアームを用いれば、回動アーム25と比較して、ウエハWに対するブラシの水平方向位置の微調整が若干行い易くなることが考えられる。この場合は、アームを水平移動させるとともに上下動させるアーム駆動機構がブラシ21の水平方向位置を調整する水平方向位置調節手段およびブラシ21の上下方向位置を調整する上下方向位置調節手段として作用する。なお、このようなリニアモーション型のアームにも、図6に示したようなチルト機構を設けることができる。
【0039】
さらにまた、上記実施形態では、洗浄対象基板が半導体ウエハであったが、これに限定されるものではない。球形ブラシを用いた洗浄技術は、例えば液晶表示装置用ガラス基板に代表されるフラットパネル表示装置用基板等、他の基板にも適用可能である。
【0040】
次に上述した基板洗浄装置が組み込まれた基板洗浄システムについて、図9および図10を参照して説明する。洗浄処理システム101は、ウエハWに洗浄処理を施す洗浄処理部103と、洗浄処理部103に対してウエハWを搬入出する搬入出部102とから構成されている。
【0041】
搬入出部102は、複数枚、例えば25枚のウエハWが所定の間隔で水平に収容されているキャリアCを載置するための載置台111が設けられたイン・アウトポート104と、キャリアCと洗浄処理部103との間でウエハの搬送を行うウエハ搬送機構113が備えられたウエハ搬送部105とから構成されている。
【0042】
載置台111上には、複数個例えば、3個のキャリアCを水平面のY方向に並べて所定位置に載置することができる。イン・アウトポート104とウエハ搬送部105との境界壁191において、キャリアCの載置場所に対応する位置には窓部192が形成されており、窓部192のウエハ搬送部105側には窓部192をシャッター等により開閉する窓部開閉機構112が設けられている。窓部192を開口してキャリアCのウエハ搬入出口とウエハ搬送部105とを連通させると、ウエハ搬送部105に配設されたウエハ搬送機構113のキャリアCへのアクセスが可能となり、ウエハWの搬送を行うことができる状態となる。
【0043】
ウエハ搬送部105には、キャリアCと洗浄処理部103との間におけるウエハWの受け渡しを行うウエハ搬送機構113が配設されている。ウエハ搬送機構113は、X方向、Y方向、Z方向にそれぞれ移動可能であり、かつ、X−Y平面内(θ方向)で回転自在に構成されている。こうして、ウエハ搬送機構113は、載置台111に載置された全てのキャリアCの任意の高さ位置にあるウエハWにアクセス可能であり、さらに、洗浄処理部103に配設されたウエハ受渡ユニット(TRS)114にアクセス可能となっている。こうして、ウエハ搬送機構113は、イン・アウトポート104側から洗浄処理部103側へ、逆に洗浄処理部103側からイン・アウトポート104側へウエハWを搬送する。
【0044】
洗浄処理部103には、ウエハ搬送部105との間で基板の受け渡しを行うためにウエハWを一時的に載置する複数台例えば2台のウエハ受渡ユニット(TRS)114が上下に積層されて設けられている。また、洗浄処理部103には、ウエハWにスクラブ洗浄を施すスクラブ洗浄ユニット(SCR)121a〜121dが上下2段で各段に2台ずつの計4台配設されている。さらに、洗浄処理部103には、ウエハ受渡ユニット(TRS)114、スクラブ洗浄ユニット(SCR)121a〜121dの全てにアクセス可能に配設され、これらのユニット間でウエハWの受け渡しを行う主ウエハ搬送機構(PRA)115が配設されている。
【0045】
なお、図示例では、スクラブ洗浄ユニット121a、121bが、ウエハWの表面洗浄を行うように構成され、スクラブ洗浄ユニット121c、121dが、ウエハWの周縁部の洗浄を行うように構成されている。スクラブ洗浄ユニット121a、121bの構成としては、例えば図8に示した構成から周縁洗浄機構20を取り除いたものを採用することができる。なお、ウエハWの表面洗浄を行うスクラブ洗浄ユニットの構成としては様々なものが知られており、任意のものをスクラブ洗浄ユニット121a、121bの構成として採用することができる。ウエハWの周縁部の洗浄を行うためのスクラブ洗浄ユニット121c、121dとしては、先に図1〜図7を参照して説明したウエハ洗浄装置1を採用することができる。
【0046】
なお、表面洗浄用のスクラブ洗浄ユニット121a、121bの構成としては、図11に示したようなものを採用することも可能である。図11に示すスクラブ洗浄ユニットは、スピンチャックとして、バキュームチャックに代えて、メカニカルチャックが設けられている。メカニカルチャックは、回転軸3aに結合されたプレート3bと、チャックプレート3bに揺動自在に設けられた複数のチャック体3cから構成される。なお、このようなメカニカルチャックは、周縁部洗浄用のブラシ(具体的には前述したブラシ21)と干渉するため、周縁部洗浄用のウエハ洗浄装置には適していない。図11に示すスクラブ洗浄ユニットは、Z方向に移動可能で、θ方向に旋回可能な長いアーム25’の先端に設けられたスクラブブラシ90を有し、ノズル11aからウエハ表面に洗浄液を供給しながら、スクラブブラシ90をウエハ中央部から周縁部まで移動させて、ウエハの表面を洗浄することができる。このようなスクラブ洗浄ユニットは公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
洗浄処理部103には、洗浄処理システム101全体の動作・制御を行うための電装ユニット(EB)118と機械制御ユニット(MB)119、スクラブ洗浄ユニット(SCR)121a〜121dに送液する所定の洗浄液を貯蔵する薬液貯蔵ユニット(CTB)117が配設されている。なお、前述した制御部30は、電装ユニット(EB)118と機械制御ユニット(MB)119に支配された下位コントローラであり、また薬液洗浄が行われる場合には前述した洗浄液供給源12は薬液貯蔵ユニット(CTB)117から薬液の供給を受ける。洗浄処理部103の天井部には、ウエハWを取り扱う各ユニットおよび主ウエハ搬送機構(PRA)115に、清浄な空気をダウンフローするためのファンフィルターユニット(FFU)122が配設されている。なお、薬液貯蔵ユニット(CTB)117、電装ユニット(EB)118、機械制御ユニット(MB)119を洗浄処理部103の外側に設置することにより、また外部に引き出すことにより、この面よりのメンテナンスも可能にできる。
【0048】
なお、ファンフィルターユニット(FFU)122からのダウンフローの一部は、ウエハ受渡ユニット(TRS)114内に導かれた後にウエハ搬送部105に向けて流出する構造となっており、これにより、ウエハ搬送部105から洗浄処理部103へのパーティクル等の侵入が防止され、洗浄処理部103の清浄度が保持されるようになっている。
【0049】
主ウエハ搬送機構(PRA)115は、Z方向に昇降可能かつZ軸(鉛直軸)周りに回動可能な搬送基台154と、水平方向に進退可能に搬送基台154に取り付けられた独立駆動可能な3本の主ウエハ搬送アーム155(図9にはそのうちの1本だけを示している)を備えている。
【0050】
上述した洗浄処理システム101においては、載置台111に載置されたキャリアC内のウエハWは、ウエハ搬送機構113によって一方のウエハ受渡ユニット(TRS)114に搬送される。主ウエハ搬送機構(PRA)115の主ウエハ搬送アーム155のいずれかがウエハ受渡ユニット(TRS)114からウエハWを受け取り、そのウエハWをスクラブ洗浄ユニット(SCR)121c、121dのいずれかに搬送し、そこでウエハの周縁部のスクラブ洗浄処理が行われる。その後、スピンチャックによりウエハWを高速回転させることにより、ウエハWの振り切り乾燥が行われる。
【0051】
周縁部のスクラブ洗浄処理が終了したウエハWは、主ウエハ搬送アーム155のいずれかによりスクラブ洗浄ユニット(SCR)121a、121bのいずれかへ搬送され、そこで表面のスクラブ洗浄処理が行われる。その後、スピンチャックによりウエハWを高速回転させることにより、ウエハWの振り切り乾燥が行われる。
【0052】
表面のスクラブ洗浄処理が終了したウエハWは、主ウエハ搬送アーム155のいずれかを用いてウエハ受渡ユニット(TRS)114の一方へ搬送された後、ウエハ搬送機構113によってキャリアC内の所定位置に搬送され、キャリアC内に収容される。
【符号の説明】
【0053】
W 基板
3 基板保持部(スピンチャック)
21 ブラシ
33、34、35 ブラシ回転駆動部
30 制御部
27 ブラシ移動機構
42 水平方向位置調節手段(回動機構)
45 上下方向位置調節手段(昇降機構)
70 チルト角調節手段(チルト機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して回転させる基板保持部と、
球形のブラシと、
前記ブラシの中心を通る回転軸線周りにブラシを回転させるブラシ回転駆動部と、
前記ブラシの回転軸線が前記基板保持部により保持された基板の表面を含む平面と交差するようブラシを保持するとともに、前記ブラシが前記基板保持部により保持された基板の周縁部に当たるようにブラシを位置決めするブラシ移動機構と、
を備えた基板洗浄装置。
【請求項2】
少なくとも前記ブラシ移動機構の動作を制御する制御部を更に備え、
前記ブラシ移動機構は、前記ブラシの水平方向位置を調節する水平方向位置調節手段と、前記ブラシの上下方向位置を調節する上下方向位置調節手段とを有しており、
前記制御部は、前記ブラシの中心の高さが前記基板保持部により保持された基板の高さと一致したときに前記基板保持部により保持された基板の中心と前記ブラシの中心との間の水平方向距離が最大値をとるように、かつ、前記ブラシの中心の高さが前記基板保持部により保持された基板の高さより高い場合および低い場合には前記水平方向距離が前記最大値より小さくなるように、前記水平方向位置調節手段によりブラシの水平方向位置を調節しながら、前記上下方向位置調節手段により前記ブラシの上下方向位置を変化させて洗浄処理を行うように制御することを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記ブラシ移動機構は、鉛直線に対して前記ブラシの回転軸線を傾けることができるチルト角調節手段を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
基板を水平に保持して回転させることと、
所定の回転軸線を中心として回転する球形のブラシを回転する前記基板の周縁部に当てた状態で、前記基板に対して前記ブラシを上昇または下降させることと、
を備えたこと基板洗浄方法。
【請求項5】
前記基板に対して前記ブラシを上昇または下降させる際に、前記ブラシを水平方向に移動させることを更に備え、
前記ブラシの水平方向の移動は、前記ブラシの中心の高さが前記基板の高さと一致したときに前記基板の中心と前記ブラシの中心との間の水平方向距離が最大値をとるように、かつ、前記ブラシの中心の高さが前記基板の高さより高い場合および低い場合には前記水平方向距離が前記最大値より小さくなるように、行われることを特徴とする請求項4に記載の基板洗浄方法。
【請求項6】
前記基板に対して前記ブラシを上昇または下降させる際に、鉛直線に対する前記ブラシの回転軸線の成す角度を変更することを更に備えた請求項4または5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
半導体装置の基板を洗浄するためのブラシであって、多孔質の樹脂材料からなる球形のブラシ。
【請求項8】
前記ブラシは、前記ブラシを回転軸に取り付けるための取り付け具を通すために、前記ブラシの中心を通る1つ以上の貫通孔を有していることを特徴とする請求項7に記載のブラシ。
【請求項9】
前記貫通孔の数が2以上であることを特徴とする請求項8に記載のブラシ。
【請求項10】
前記樹脂材料はPVDF(ポリフッ化ビニリデン)であることを特徴とする請求項7から9のうちのいずれか一項に記載のブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−94602(P2012−94602A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238846(P2010−238846)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】