説明

ブラシレスモータ

【課題】ステータの振動を抑制する。
【解決手段】ブラシレスモータ10において、複数のティース24は、放射状に延びる方向の基端部24A側から先端部24B側に向かうに従って徐々にモータシャフト12の周方向に幅広となっている。また、この複数のティース24の各々をステータ14の軸方向一方側から支持する複数のベース台40は、ステータ14の径方向に沿う方向の中央部40Aが複数のティース24の各々における基端部24Aと先端部24Bとの間の中央部24Cよりも先端部24B側に位置する構成とされている。この構成によれば、各ベース台40の中央部40Aが各ティース24の重心により近い位置に設定されるので、各ティース24を安定して支持することができる。これにより、ステータ14の振動を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータと、このステータの径方向外側及び内側に配置された外側ロータ及び内側ロータとを備えたブラシレスモータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−359953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種のブラシレスモータでは、ステータに対して径方向外側及び内側から磁力が作用する。従って、ステータの振動を抑制することが望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ステータの振動を抑制することができるブラシレスモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のブラシレスモータは、モータシャフトと、前記モータシャフトを中心にして放射状に延びると共に放射状に延びる方向の基端部側から先端部側に向かうに従って徐々に前記モータシャフトの周方向に幅広となる複数のティースが形成された電機子コアと、前記複数のティースの各々の間に巻装された複数の巻線とを有するステータと、前記ステータの径方向外側に対向して配置された外側マグネットと、前記ステータの径方向内側に対向して配置された内側マグネットとを有するロータと、前記モータシャフトを中心にして放射状に延びて前記ステータの軸方向一方側から前記複数のティースの各々を支持すると共に、前記ステータの径方向に沿う方向の中央部が前記複数のティースの各々における基端部と先端部との間の中央部よりも前記先端部側に位置する複数のベース台を有する台座と、を備えている。
【0007】
このブラシレスモータにおいて、複数のティースは、放射状に延びる方向の基端部側から先端部側に向かうに従って徐々にモータシャフトの周方向に幅広となっている。このため、複数のティースの各々における重心は、各ティースの先端部側に位置される。
【0008】
しかしながら、この複数のティースの各々をステータの軸方向一方側から支持する複数のベース台は、ステータの径方向に沿う方向の中央部が複数のティースの各々における基端部と先端部との間の中央部よりも先端部側に位置する構成とされている。従って、各ベース台の中央部が各ティースの重心により近い位置に設定されるので、各ティースを安定して支持することができる。これにより、ステータの振動を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載のブラシレスモータは、請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、前記台座が、前記複数のティースのうち少なくともいずれか二つにおける基端部と先端部との間の中央部において、前記ティースを前記ステータの軸方向に沿って貫通し、前記ティースと前記ベース台とを固定するピン又はネジを有する構成とされている。
【0010】
このブラシレスモータによれば、複数のティースのうち少なくともいずれか二つのティースは、このティースをステータの軸方向に沿って貫通するピン又はネジによってベース台と固定されている。ここで、このピン又はネジの設定位置は、ティースの基端部と先端部との間の中央部とされている。従って、ステータの振動を径方向内側と外側とでバランス良く抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載のブラシレスモータは、請求項2に記載のブラシレスモータにおいて、前記ピン又は前記ネジが、等ピッチで配置されると共に、前記ピン又は前記ネジの個数をN、前記複数のティースの間のスロットの数をS、任意の自然数をnとした場合に、n=2とされ、N=S/nとされた構成とされている。
【0012】
このブラシレスモータによれば、ピン又はネジの個数をN、複数のティースの間のスロットの数をS、任意の自然数をnとした場合に、n=2とされ、N=S/nとされている。これにより、複数のティースにおける磁気バランスを均一にできるので、コギングトルクも小さくすることができる。
【0013】
しかも、ピン又はネジの設定位置に関する寸法精度が高度に要求されることを回避できるので、コスト低減を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るブラシレスモータの側面断面図である。
【図2】図1に示されるセンターピースの斜視図である。
【図3】図1に示されるステータ及びセンターピースを示す平面図である。
【図4】図3に示されるステータ及びセンターピースの要部拡大側面断面図である。
【図5】図1に示されるステータ及びセンターピースの変形例を示す平面図である。
【図6】図5に示されるステータ及びセンターピースの要部拡大側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るブラシレスモータ10は、モータシャフト12と、ステータ14と、ロータ16と、センターピース18とを備えている。
【0017】
ステータ14は、図1,図3に示されるように、円環状の電機子コア20と、複数の巻線22(トロイダル巻線)とを有している。電機子コア20には、図3に示されるように、モータシャフト12を中心にして放射状に延びる複数のティース24が形成されている。
【0018】
この複数のティース24は、放射状に延びる方向の基端部24A側から先端部24B側に向かうに従って(つまり、ステータ14の径方向内側から外側に向かうに従って)徐々にモータシャフト12の周方向に幅広となるように平面視にて台形状に形成されている。
【0019】
この複数のティース24の各々の間には、モータシャフト12の周方向に延びる連結部26が形成されており、複数の巻線22は、この連結部26にそれぞれ巻装されている。また、図1,図4に示されるように、この複数のティース24の各々には、基端部24Aと先端部24Bとの間の中央部24Cに、ステータ14の軸方向に沿って貫通する貫通孔28が形成されている。
【0020】
ロータ16は、図1に示されるように、ロータハウジング30と、外側マグネット32と、内側マグネット34を有している。ロータハウジング30は、円板状の底壁部30Aと、この底壁部30Aの周縁部に沿って形成された外側周壁部30Bと、この外側周壁部30Bの内側に同心円状に設けられた内側周壁部30Cとを有している。
【0021】
外側マグネット32は、外側周壁部30Bの内周面に固定されており、ステータ14の径方向外側に対向して配置されている。一方、内側マグネット34は、内側周壁部30Cの内周面に固定されており、ステータ14の径方向内側に対向して配置されている。
【0022】
センターピース18は、樹脂製とされており、図2に示されるように、台座36と、軸部38と、複数のベース台40とを有している。台座36は、円板状に形成されており、図1に示されるように、ロータハウジング30の開口部30Dと対向して配置されている。軸部38は、台座36の中心部から底壁部30A側に延出されており、その内側には、モータシャフト12が挿通されている。
【0023】
また、この軸部38の内側には、モータシャフト12の軸方向に並ぶ一対の軸受42,44が収容されており、モータシャフト12は、この一対の軸受42,44によって回転自在に支持されている。このモータシャフト12は、底壁部30Aの中心部に形成された嵌合部30Eと嵌合されており、これにより、ロータ16は、モータシャフト12と一体回転可能とされている。
【0024】
複数のベース台40は、図2に示されるように、モータシャフト12を中心にして放射状に延びると共に、台座36から延出されている。そして、この複数のベース台40は、図1に示されるように、ステータ14の軸方向一方側から複数のティース24の各々を支持している。この複数のベース台40の各々は、図4に示されるように、ステータ14の径方向に沿う方向の中央部40Aが複数のティース24の各々における基端部24Aと先端部24Bとの間の中央部24Cよりも先端部24B側に位置するように配置されている。
【0025】
また、複数のベース台40の各々の延出方向の端部40Bには、ステータ14の軸方向に沿って延びるピン46が形成されている。そして、このピン46が貫通孔28に挿通された状態で、このピン46の先端部46Aがかしめられて潰されることにより、複数のティース24の各々は、複数のベース台40の各々と固定されている。このピン46の先端部46Aをかしめる方法には、例えば、熱かしめや超音波かしめ等が用いられる。
【0026】
なお、図1に示されるように、ピン46は、等ピッチで配置され、また、ピン46の個数をN、複数のティース24の間のスロット48の数をS、任意の自然数をnとした場合に、個数Nは、N=S/nとされる(ただし、Nは2以上)。本実施形態では、一例として、スロット48の数Sが18とされると共に、自然数nが1とされることで、ピン46の個数Nが18とされている。つまり、全てのティース24がピン46によってベース台40に固定されている。
【0027】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
このブラシレスモータ10において、複数のティース24は、放射状に延びる方向の基端部24A側から先端部24B側に向かうに従って徐々にモータシャフト12の周方向に幅広となっている。このため、複数のティース24の各々における重心は、各ティース24の先端部24B側(ステータ14の径方向外側)に位置される。
【0029】
しかしながら、この複数のティース24の各々をステータ14の軸方向一方側から支持する複数のベース台40は、ステータ14の径方向に沿う方向の中央部40Aが複数のティース24の各々における基端部24Aと先端部24Bとの間の中央部24Cよりも先端部24B側に位置する構成とされている。従って、各ベース台40の中央部40Aが各ティース24の重心により近い位置に設定されるので、各ティース24を安定して支持することができる。これにより、ステータ14の振動を抑制することができる。
【0030】
しかも、ティース24とベース台40との接触面積が増加し、両者の摩擦力も加わるため、ティース24とベース台40とをしっかり固定することができる。
【0031】
また、ティース24の基端部24A側は、ステータ14の径方向内側であるため空間も少くなり、また、ベース台40の幅も狭くなるので、ティース24の支持には適切でないが、このブラシレスモータ10では、ステータ14の径方向外側の空間が確保されている場所においてティース24をベース台40の幅広の部分で適切に支持することができる。
【0032】
さらに、ベース台40よりもステータ14の径方向内側に空間が残ることになり、この空間にその他の部材を配置することができるので、この空間を有効に利用することができる。
【0033】
また、複数のティース24の各々は、このティース24をステータ14の軸方向に沿って貫通するピン46によってベース台40と固定されている。ここで、このピン46の設定位置は、ティース24の基端部24Aと先端部24Bとの間の中央部24Cとされている。従って、ステータ14の振動を径方向内側と外側とでバランス良く抑制することができる。
【0034】
また、センターピース18は、樹脂製とされているので、ピン46をセンターピース18に樹脂成形により容易に形成することができる。従って、コスト低減を図ることができる。
【0035】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0036】
上述の本発明の一実施形態では、ティース24とベース台40の固定にピン46が用いられていたが、次のように構成されていても良い。
【0037】
すなわち、図5,図6に示される変形例では、センターピース18がアルミニウムや鉄製とされており、ベース台40には、ステータ14の軸方向に沿って延びるネジ孔54が貫通孔28と同軸上に形成されている。一方、貫通孔28には、ネジ56が挿通されており、このネジ56の先端部は、ネジ孔54に螺入されている。そして、ティース24とベース台40は、このネジ56によって固定されている。
【0038】
また、ネジ56は、等ピッチで配置され、また、ネジ56の個数をN、複数のティース24の間のスロット48の数をS、任意の自然数をnとした場合に、個数Nは、N=S/nとされる(ただし、Nは2以上)。本変形例では、一例として、スロット48の数Sが18とされると共に、自然数nが2とされることで、ピン46の個数Nが9とされている。つまり、複数のティース24のうち半数のティース24がネジ56によってベース台40に固定されている。
【0039】
このように構成されていると、上述の本発明の一実施形態の作用及び効果に加え、次の作用及び効果を奏する。
【0040】
つまり、n=2とされ、ネジ56の個数Nは、N=S/nとされている。これにより、複数のティース24における磁気バランスを均一にできるので、コギングトルクも小さくすることができる。
【0041】
しかも、ネジ56の設定位置に関する寸法精度が高度に要求されることを回避できるので、コスト低減を図ることもできる。
【0042】
なお、上述の本発明の一実施形態のように、ピン46を用いる場合に、n=2とされ、ピン46の個数Nが、N=S/nとされていても良い。
【0043】
また、上述の本発明の一実施形態及びその変形例では、スロット48の数Sが18とされていたが、スロット48の数は、その他でも良い。ただし、ピン46及びネジ56は、2本以上設けられている必要がある。
【0044】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
10・・・ブラシレスモータ、12・・・モータシャフト、14・・・ステータ、16・・・ロータ、18・・・センターピース、20・・・電機子コア、22・・・巻線、24・・・ティース、24A・・・基端部、24B・・・先端部、24C・・・中央部、26・・・連結部、28・・・貫通孔、30・・・ロータハウジング、30A・・・底壁部、30B・・・外側周壁部、30C・・・内側周壁部、30D・・・開口部、30E・・・嵌合部、32・・・外側マグネット、34・・・内側マグネット、36・・・台座、38・・・軸部、40・・・ベース台、40A・・・中央部、40B・・・端部、42,44・・・軸受、46・・・ピン、46A・・・先端部、48・・・スロット、54・・・ネジ孔、56・・・ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータシャフトと、
前記モータシャフトを中心にして放射状に延びると共に放射状に延びる方向の基端部側から先端部側に向かうに従って徐々に前記モータシャフトの周方向に幅広となる複数のティースが形成された電機子コアと、前記複数のティースの各々の間に巻装された複数の巻線とを有するステータと、
前記ステータの径方向外側に対向して配置された外側マグネットと、前記ステータの径方向内側に対向して配置された内側マグネットとを有するロータと、
前記モータシャフトを中心にして放射状に延びて前記ステータの軸方向一方側から前記複数のティースの各々を支持すると共に、前記ステータの径方向に沿う方向の中央部が前記複数のティースの各々における基端部と先端部との間の中央部よりも前記先端部側に位置する複数のベース台を有する台座と、
を備えたブラシレスモータ。
【請求項2】
前記台座は、前記複数のティースのうち少なくともいずれか二つにおける基端部と先端部との間の中央部において、前記ティースを前記ステータの軸方向に沿って貫通し、前記ティースと前記ベース台とを固定するピン又はネジを有する、
請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
前記ピン又は前記ネジは、等ピッチで配置されると共に、前記ピン又は前記ネジの個数をN、前記複数のティースの間のスロットの数をS、任意の自然数をnとした場合に、n=2とされ、N=S/nとされている、
請求項2に記載のブラシレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27165(P2013−27165A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160115(P2011−160115)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】