説明

ブラックレジスト用感光性樹脂組成物及びカラーフィルター遮光膜

【課題】密着性の高い、品質の良好なブラックマトリクス(または遮光膜)を形成することができるブラックレジスト用感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)ウレイド基を含有するシランカップリング剤、(b)黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材からなる群から選ばれる1以上の遮光成分を含有する遮光性分散液、(c)エポキシ基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物を更に多塩基酸カルボン酸又はその無水物と反応させて得られた不飽和基含有樹脂、(d)少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、及び(e)光重合開始剤を含有することを特徴とするブラックレジスト用感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物及びカラーフィルター遮光膜に関し、詳しくは透明基板上に微細な遮光膜を形成するのに適した感光性アルカリ水溶液現像型のブラックレジスト用感光性樹脂組成物及びこれを用いて形成されたカラーフィルター遮光膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ、液晶モニター、カラー液晶携帯電話などあらゆる分野でカラー液晶パネルが用いられている。カラー液晶パネルは、カラーフィルターが形成された基板と対向基板(TFT基板)とをシール材を介し貼り合わせ、両基板の間に液晶が充填された構造となっている。このうち、カラーフィルターの製造方法としては、通常、ガラス、プラスチックシート等の透明基板の表面に、赤、緑、青各色間の混色抑制によるコントラスト向上の役割を果たすブラックマトリックスを形成し、続いて、あらゆる自然色を表現する役割を果たす赤、緑、青の異なる色相を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等の色パターンで形成する方法が用いられている。
【0003】
ところで、液晶パネルにおける耐久性試験(信頼性試験)として一般的にPCT(Pressure Cooker Test)が行われるが、この試験法は、温度120℃、湿度100%、気圧2atmという過酷な条件下に数時間液晶パネルを放置し、液晶パネルのカラーフィルター基板とTFT基板との間に封入された液晶もれの有無の確認を行うものである。上述したように、ブラックマトリックスは赤、緑、青各色間に存在し、コントラスト向上のためにカラーフィルターの外枠遮光膜としての機能が求められるが、ブラックマトリックスにはPCTのような過酷な条件下においてガラス基板との剥がれが生じないような高い密着強度も同時に要求される。特に、近年では、液晶パネルの視認性向上のため高遮光化のニーズが高い。
【0004】
高遮光化を実現するためには、ブラックマトリックスの膜厚を厚くすることが考えられるが、その後の製造工程で赤、緑、青の画素を形成する際、ブラックマトリックスに重ね合わさった部分の赤、緑、青の膜厚が厚くなり、いわゆる「つの」段差が生じてしまう。この「つの」段差は液晶の配向乱れの原因となりパネルの視認性の低下へ繋がることから、ブラックマトリックスの膜厚を厚くせずに高遮光化を達成すること(すなわち薄膜高遮光化)が求められている。
【0005】
薄膜高遮光を確保するためには、通常、樹脂組成物中の黒色顔料の含有量を多くしなければならないが、その結果、硬化性に寄与するバインダー樹脂やアクリレート成分等の配合割合が相対的に小さくなるため、塗膜が十分に硬化しにくくなり、塗膜とガラス基板との密着性が低下して、剥がれ等が生じやすくなるという問題が生じる。
【0006】
このように、近年におけるブラックマトリクスの基板との密着性への要求は、さらに高度なものとなっていることから、従来とは異なる厳しい条件下においても、密着性の高いブラックマトリクス求められるようになっている。
【0007】
そこで、例えば特許文献1では、遮光性樹脂組成物にアミン系シラン化合物、ケチミン系シラン化合物、およびイソシアネート系シラン化合物から選択される少なくとも1種を添加することで、PCTテスト後のブラックマトリックスの剥がれが生じず密着性が良好な感光性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、その実施例をみるとカーボンブラックの濃度は、感光性樹脂組成物中の固形分に対して高々40質量%であり、更に高い顔料濃度での密着性については検討の余地がある。また、ガラス基板との密着性以外の評価項目、例えばフォトリソ特性、保存安定性等については十分にうかがい知ることができない。
【特許文献1】特開2006−330209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、PCTにおいても密着性の高い、品質の良好なブラックマトリクス(または遮光膜)を形成することができるブラックレジスト用感光性樹脂組成物を提供することにあり、また、該感光性樹脂組成物から形成されるカラーフィルター遮光膜を提供することにある。
【0009】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、顔料、バインダー樹脂、光重合性モノマー及び光重合開始剤とともに、特定構造を有するシランカップリング剤を少量含有させることにより、優れた結果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、(a)ウレイド基を含有するシランカップリング剤、(b)黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材からなる群から選ばれる1以上の遮光成分を含有する遮光性分散液、(c)エポキシ基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物を更に多塩基酸カルボン酸又はその無水物と反応させて得られた不飽和基含有樹脂、(d)少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、及び(e)光重合開始剤を含有することを特徴とするブラックレジスト用感光性樹脂組成物である。
【0011】
また、本発明は、上記ブラックレジスト用感光性樹脂組成物を透明基板上に塗布し、乾燥した後、(1)紫外線露光装置による露光、(2)アルカリ水溶液による現像及び(3)熱焼成の各工程を必須として得られることを特徴とするカラーフィルター遮光膜である。
【0012】
一般にPCT後の基板との密着性を向上させるため、樹脂組成物にシランカップリング剤が用いられているが、多岐に渡るシランカップリング剤のなかでも、ウレイド基(H2NCONH-)を有したシランカップリング剤が、特定の不飽和基含有樹脂との組み合わせにおいて得られる塗膜のガラス基板への密着性向上に特に優れた効果を示すことを見出した。
【0013】
本発明において、(a)成分のウレイド基を有するシランカップリング剤は樹脂との相溶性や溶剤溶解性の観点から、好ましくはアルコキシル基を有するのがよく、より詳しくは下記一般式(I)
【化1】

〔式中、R1、R2、及びR3は互いに独立にC1〜C4のアルコキシ基を表す(nは1〜6の整数を表す)。〕で表されるものであるのがよい。具体的には、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルジメトキシエチルシラン、3-ウレイドプロピルジエトキシメチルシランなどが挙げられ、特に3-ウレイドプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0014】
(a)ウレイド基を有するシランカップリング剤の配合量については、その種類や特性等によっても異なるが、得られるブラックレジスト用感光性樹脂組成物遮光性塗料組成物の保存安定性や、その組成物によって形成される遮光性薄膜の諸特性に鑑みて、通常は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し0.3〜4.0重量%の範囲から適宜選択するのが望ましい。0.3質量%未満では、光照射や高湿度雰囲気での劣化テストを実施した場合のガラス基板との接着性が十分でなく、反対に4.0質量%を超える場合は逆に現像密着へ悪影響をもたらす。
【0015】
(b)成分において、黒色有機顔料、混色有機顔料又は遮光材から選ばれる遮光成分については、耐熱性、耐光性及び耐溶剤性に優れたものであるのがよい。ここで、黒色有機顔料としては、例えばペリレンブラック、シアニンブラック等が挙げられる。混色有機顔料としては、赤、青、緑、紫、黄色、シアニン、マゼンタ等から選ばれる2種以上の顔料を混合して擬似黒色化されたものが挙げられる。遮光材としては、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックを挙げることができ、2種以上を適宜選択して用いることもできるが、特にカーボンブラックが遮光性、表面平滑性、分散安定性、樹脂との相溶性が良好な点で好ましい。そして、これらの遮光成分は、分散媒に分散させて(b)成分である遮光性分散液を得る。ここで、分散媒としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等が挙げられる。
【0016】
(b)成分の遮光性分散液における遮光成分の配合割合については、本発明の組成物の全固形分に対して20〜60質量%、好ましくは40〜60質量%の範囲で用いられるのがよい。20質量%より少ないと、遮光性が十分でなくなる。60質量%を越えると、本来のバインダーとなる感光性樹脂の含有量が減少するため、現像特性を損なうと共に膜形成能が損なわれるという好ましくない問題が生じる。特に本発明の組成物は、顔料濃度の高い範囲、具体的には、感光性樹脂組成物中の全固形分量を基準に40重量%を超える量の顔料、さらには45重量%以上の顔料を含有する組成物に対して、高い効果が発揮される。
【0017】
(c)成分である不飽和基含有樹脂は、「エポキシ基を2個以上有する化合物」に、「(メタ)アクリル酸」(これは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」の意味である)を反応させ、得られた「ヒドロキシ基を有する化合物」に「多塩基酸カルボン酸又はその無水物」を反応させて得られる『エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物』である。ヒドロキシ基と多塩基酸カルボン酸との反応でポリエステルが生成するが、その平均の重合度が2〜500程度の低分子量の樹脂であるのがよい。
【0018】
(c)成分における「エポキシ基を2個以上有する化合物」としては、(o,m,p−)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等を例示することができ、詳しくは、下記一般式(II)又は(III)で示される化合物であるのがよく、より詳しくは下記一般式(IV)で示される化合物であるのがよい。
【化2】

〔但し、式(II)中、R4及びR5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Xは‐CO‐、−SO2−、‐C(CF3)2−、-Si(CH3)2‐、-CH2‐、-C(CH3)2‐、-O-、9,9-フルオレニル基又は単結合を示し、nは0〜10の整数である〕
【化3】

〔式(III)中、nは、1以上5以下の整数を表し、R6〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜9のシクロアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表し、R10〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルキニル基、炭素数5〜9のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基を表す。〕
【化4】

【0019】
(c)成分については、好ましくは下記一般式(II)又は(III)で表されるエポキシ化合物から誘導される。このうち一般式(II)のエポキシ化合物はビスフェノール類から誘導される。したがって、ビスフェノール類を説明することによって、一般式(II)のエポキシ化合物、ひいては(メタ)アクリル酸との反応物、更には(c)成分が理解されるので、好ましい具体例をビスフェノール類により説明する。
【0020】
好ましい(c)成分を与えるビスフェノール類としては、次のようなものが挙げられる。ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル等である。更には、一般式(II)におけるXが9,9−フルオレニル基である9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等である。また更には、4,4'−ビフェノール、3,3'−ビフェノール等の化合物が挙げられる。
【0021】
一般式(III)のエポキシ化合物としては、既に述べたように(o,m,p−)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0022】
また、(c)成分を得る際に用いる「多塩基酸カルボン酸又はその無水物」としては、例えばマレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等やその酸無水物、更には、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸やその酸二無水物等が挙げられる。そして、酸無水物と酸二無水物の使用割合については、露光やアルカリ現像操作によって微細なパターンを形成するのに適した割合を選択することができる。
【0023】
また、「エポキシ基を2個以上有する化合物」と「(メタ)アクリル酸」との反応、及びこの反応で得られた「エポキシ(メタ)アクリレート」(ヒドロキシ基を有する化合物)と「多塩基酸又はその無水物」との反応は、例えばエチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒中で加熱下に反応して行うなど、特開平8−278,629号公報等に記載の公知の方法を採用することができるが、特に限定されるものではない。そして、得られた(c)成分の不飽和基含有樹脂については、その1種のみを使用してもよく、2種以上の混合物を使用することもできる。得られた(c)成分は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを併せ持つため、バインダーとしての作用を有し、また、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物に優れた光硬化性を与えるほか、良現像性及びパターニング特性(アルカリ可溶性、アルカリ現像性)を与えて、遮光膜の物性向上をもたらす。
【0024】
(d)成分の少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができ、これらの化合物は、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上を併用して使用することもできる。
【0025】
上記(c)成分と(d)成分の配合割合については、重量比(c)/(d)で20/80〜90/10であるのがよく、好ましくは40/60〜80/20であるのがよい。(c)成分の配合割合が20/80より少ないと、光硬化後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジがぎざつきシャープにならないといった問題が生じるおそれがある。反対に90/10よりも多いと、樹脂に占める光反応性官能基の割合が少なく架橋構造の形成が十分でなく、更に、樹脂成分における酸価度が高過ぎて、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなることから、形成されたパターンが目標とする線幅より細ったり、パターンの欠落が生じや易くなるといった問題が生じる恐れがある。
【0026】
(e)成分の光重合開始剤としては、少なくとも1種類の光重合開始剤を使用するが、エチレン性不飽和結合を有し付加重合可能な化合物の重合を開始させうる化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、アセトフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、イミダゾール系化合物、アシルオキシム系化合物などが挙げられる。
【0027】
ここで、アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0028】
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル−4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロRメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(ピプロニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0029】
ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。また、ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0030】
チオキサントン系化合物としては、例えば、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。また、イミダゾール系化合物としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2、4,5-トリアリールイミダゾール2量体などが挙げられる。
【0031】
アシルオキシム系化合物としては、例えば、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−ビシクロヘプチル−1−オンオキシム−O−アセタート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−アダマンチルメタン−1−オンオキシム−O−ベンゾアート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−アダマンチルメタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−テトラヒドロフラニルメタン−1−オンオキシム−O−ベンゾアート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−テトラヒドロフラニルメタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−チオフェニルメタン−1−オンオキシム−O−ベンゾアート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−チオフェニルメタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−モロフォニルメタン−1−オンオキシム−O−ベンゾアート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−モロフォニルメタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−ビシクロヘプタンカルボキシレート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−トリシクロデカンカルボシキレート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−アダマンタンカルボシキレート、1,2−オクタンジエン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 製品名イルガキュアOXE01)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム) (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 製品名イルガキュアOXE02)、などが挙げられる。
【0032】
(e)成分の光重合開始剤としては、更に活性ラジカル発生剤や酸発生剤も使用することができる。活性ラジカル発生剤として、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物などを用いることもできる。酸発生剤としては、例えば、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムp−トルエンスルホナート、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムp−トルエンスルホナート、4−アセトキシフェニル・メチル・ベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのオニウム塩類や、ニトロベンジルトシレート類、ベンゾイントシレート類などを挙げることができる。また、活性ラジカル発生剤として上記した化合物の中には、活性ラジカルと同時に酸を発生する化合物もあり、例えば、トリアジン系化合物は、酸発生剤としても使用される。
【0033】
(e)成分の光重合開始剤の中でも、トリクロロメチル基が導入されているトリアジン系光重合開始剤、又はアシルオキシム系光重合開始剤が特に好ましく用いられる。(e)成分の光重合開始剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。また、それ自体では光重合開始剤や増感剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤や増感剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。そのような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるアミン系化合物を挙げることができる。ここで、アミン系化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0034】
(e)成分の光重合開始剤の使用量は、樹脂成分である(c)及び(d)の各成分の合計100重量部を基準として10〜50重量部が適している。(e)成分の配合割合が10重量部未満の場合には、光重合の速度が遅くなって、感度が低下し、一方、50重量部を超える場合には、感度が強すぎて、パターン線幅がパターンマスクに対して太った状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現できない、又はパターンエッジがぎざつきシャープにならないといった問題が生じるおそれがある。
【0035】
本発明におけるブラックレジスト用感光性樹脂組成物には、上記(a)〜(e)成分の他に溶剤を使用することが好ましい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類などが挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0036】
また、本発明のブラックレジスト用樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、充填材、溶剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を配合してもよい。このうち熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等を挙げることができ、充填材としては、グラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができ、消泡剤やレベリング剤としては、例えば、シリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。
【0037】
本発明のブラックレジスト用感光性樹脂組成物は、上記(a)〜(e)成分又はこれらと溶剤を主成分として含有する。溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、(a)〜(e)成分が合計で80質量%、好ましくは90質量%以上含むことが望ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物中に70〜90質量%の範囲で含まれるようにするのがよい。
【0038】
本発明におけるブラックレジスト用感光性樹脂組成物は、カラーフィルター遮光膜形成用の樹脂組成物として優れるものであり、例えば以下のようなフォトリソグラフィー法によりカラーフィルター遮光膜を得ることができる。先ず、感光性樹脂組成物を溶液にして透明基板上に塗布し、次いで溶媒を乾燥させた(プリベーク)後、このようにして得られた被膜の上にフォトマスクをあて、紫外線を照射して露光部を硬化させ、更にアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成し、更に後乾燥としてポストベーク(熱焼成)を行う方法が挙げられる。
【0039】
感光性樹脂組成物の溶液を塗布する透明基板としては、ガラス基板のほか、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)上にITOや金などの透明電極が蒸着あるいはパターニングされたものなどが例示できる。透明基板上に感光性樹脂組成物の溶液を塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば60〜110℃の温度で1〜5分間行われる。
【0040】
プリベーク後に行われる露光は、紫外線露光装置によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分のレジストのみを感光させる。露光装置及びその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行い、塗膜中のブラックレジスト用感光性樹脂組成物を光硬化させる。
【0041】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分のレジストを除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05〜3質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23〜28℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0042】
現像後、好ましくは180〜250℃の温度及び20〜60分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた遮光膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた遮光膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述したように、露光、アルカリ現像等の操作によって微細なパターンを形成するのに適しているが、従来のスクリーン印刷によりパターンを形成しても、同様な遮光性、密着性、電気絶縁性、耐熱性、耐薬品性に優れた遮光膜を得ることができる。また、本発明のブラックレジスト用感光性樹脂組成物は、コ−ティング材として好適に用いることができ、特に液晶の表示装置あるいは撮影素子に使われるカラーフィルター用インキとして好適であり、これにより形成された遮光膜はカラーフィルター、液晶プロジェクション用のブラックマトリックス等として有用である。
【発明の効果】
【0044】
本発明のブラックレジスト用感光性樹脂組成物は、例えばPCTのような過酷な条件下においてもガラス基板等から剥がれが生じないような密着性の高い膜を形成することができる。特に遮光成分が高濃度で含まれる場合でも高い密着性を維持することができ、いわゆる薄膜高遮光化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、実施例及び比較例のブラックマトリックスの製造で用いた原料及び略号は以下の通りである。
【0046】
(シランカップリング剤)
(a)-1:3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(メタノール溶液希釈品 固形分50%)(商品名:KBE-585:信越化学(株)製)
(a)-2:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、(商品名:KBE-9007:信越化学(株)製)
(a)-3:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:S-510:チッソ(株)製)
(a)-4:p−スリチルトリメトキシシラン (商品名:KBM-1403:信越化学(株)製)
(a)-5:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン (商品名:KBM-503:信越化学(株)製)
(a)-6:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-5103:信越化学(株)製)
(a)-7:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-803:信越化学(株)製)
【0047】
(遮光性分散顔料)
(b):カーボンブラック濃度25.0質量%、高分子分散剤濃度4.75質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散液(固形分29.75%)
【0048】
(不飽和基含有樹脂)
(c)-1:フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=56.5重量%、新日鐵化学(株)製、商品名V259ME)
(c)-2:アクリル共重合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=32重量%、ダイトーケミックス社製、商品名SNK-1001(S-1))
【0049】
(光重合性モノマー)
(d):トリメチロールプロパントリアクリレート、(サートマー・ジャパン(株)製、商品名SR351S)
【0050】
(光重合開始剤)
(e):エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム) 、(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名イルガキュアOXE02)
【0051】
(溶剤)
(f)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(f)-2:シクロヘキサノン
【0052】
(界面活性剤)
(g):メガファックF475(大日本インキ化学工業(株)製)
【実施例】
【0053】
[実施例1〜5、比較例1〜10]
上記の配合成分を表1に記載の割合で配合して、実施例1〜5及び比較例1〜10に係るブラックレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。表1において(b)成分の( )内の数字は遮光成分が占める固形分量を示し、(c)成分の( )内の数字は固形分量を示す。
【0054】
表1に記した各成分の組み合わせにて均一に混合し、得られた実施例1〜5及び比較例1〜10に係る各ブラックレジスト用感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板(コーニング1737)上にポストベーク後の膜厚が1.1μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、露光ギャップを80μmに調整し、乾燥塗膜の上に、ライン/スペース=20μm/20μmのネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで80mj/cm2の紫外線を照射して感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済みの塗板(ガラス基板に感光性樹脂組成物を塗布して感光部分を光硬化させたもの)を23℃、0.04%水酸化カリウム水溶液中、1kgf/cm2のシャワー現像圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から+30秒の現像後、5kgf/cm2のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去しガラス基板上に画素パターンを形成した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間熱ポストベークした後の20μm線のマスク幅に対する線幅を測定した。さらに、レジスト5℃1ヶ月経時後の線幅も同様の方法にて測定した。
【0055】
上記と同様にして、別途実施例1〜5及び比較例1〜10に係る各ブラックレジスト用感光性樹脂組成物をガラス基板上に塗布して乾燥塗膜を作成し、露光し、0.04%水酸化カリウム水溶液で23℃にて60秒の1kgf/cm2圧シャワー現像、及び2.5kgf/cm2圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部分を除去した後、自然乾燥したガラス板で残渣を評価した。
【0056】
上記と同様にして、別途実施例1〜5及び比較例1〜10に係る各ブラックレジスト用感光性樹脂組成物をガラス基板上に塗布して乾燥塗膜を作成し、全露光で露光した基板を23℃、0.04%水酸化カリウム水溶液中、1kgf/cm2のシャワー現像圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から+20秒の現像後、5kgf/cm2のスプレー水洗を行い後、230℃、30分間熱ポストベークした。その後、ガラス基板上の塗膜に、太佑機材株式会社製 Super Cutter Guideを使用し、1mm×1mmの正方形のマス目が100個形成されるように切込みを入れ、温度120℃、湿度100%、気圧2atmの条件下に24時間放置したガラス基板にてPCT密着性を評価した。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例及び比較例で得られたブラックマトリックスの評価項目と方法は以下の通りである。また、各評価項目の結果を表2に示す。
【0059】
<線幅>測長顕微鏡((株)ニコン製 商品名XD-20)を用いて線幅を測定した。
<残渣>乾燥後のガラス板上を、アセトンをしみ込ませたトレシー(東レ製)で拭き取り、トレシー上に付着した残渣の着色の程度を持って残渣を評価した。着色なしを○、薄く着色を△、濃く着色を×と判定した。
<PCT密着性>マス目の上にセロハンテープ(ニチバン製)を貼ってから剥がすテープ剥離試験を行なった。100個のマス目のうち、テープ剥離試験後に何個のマス目が剥離せずに残っているかを目視にて数えた。
<経時線幅安定性>初期(製造1日後)と経時(5℃/1ヶ月後)の線幅の差が2μm以内である場合は経時安定性が○と判定し、2μmを超える場合は経時安定性が×と判定した。
【0060】
【表2】

【0061】
実施例1の感光性樹脂組成物から得られた塗膜はPCT密着性、線幅経時安定性、残渣ともに良好であった。実施例2の場合は、シランカップリング剤(a)-1のレジスト固形分中に占める割合を1.47%から0.45%に減じ、かつ、遮光性分散顔料(b)の遮光成分をレジスト固形分に占める割合で50%から57%に増加し、さらには、光重合開始剤(d)を、(c)+(d)=100重量部としたときに30部から40部に増加した以外は実施例1と同様に配合、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、表2に示した通り良好な結果が得られた。実施例3の場合は、シランカップリング剤(a)-1のレジスト固形分中に占める割合を0.45%から1.71%に増加した以外は実施例2と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、表2に示した通り良好な結果が得られた。実施例4の場合は、シランカップリング剤(a)-1のレジスト固形分中に占める割合を1.47%から0.57%に減じ、かつ、遮光性分散顔料(b)の遮光成分をレジスト固形分に占める割合で50%から28%に減じ、さらには、光重合開始剤(d)を(c)+(d)=100重量部としたときに30部から15部に減じた以外は実施例1と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、表2に示した通り良好な結果が得られた。実施例5は、シランカップリング剤(a)-1のレジスト固形分中に占める割合を0.57%から3.78%に増加した以外は実施例4と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、表2に示した通り良好な結果が得られた。
【0062】
一方、比較例1の感光性樹脂組成物から得られた塗膜は、不飽和基含有樹脂を(c)-1から(c)-2に変えた以外は実施例1と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、結果を表2に示したが、PCT密着性は実施例と比べて劣る結果になった。比較例2の場合は、シランカップリング剤(a)-1のレジスト固形分中に占める割合を1.47%から2.83%に増加した以外は比較例1と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、結果を表2に示したが、PCT密着性は実施例と比べて劣る結果になった。比較例3の場合は、シランカップリング剤を(a)-1から(a)-2に変え、かつ、レジスト固形分中に占める割合を1.47%から1.260%に減じ、かつ、遮光性分散顔料(b)の遮光剤をレジスト固形分に占める割合を50%から40%に減じ、さらには、光重合開始剤(d)を(c)+(d)=100重量部としたときに30部から20部に減じた以外は実施例1と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、結果を表2に示したが、残渣が実施例と比べて劣る結果になった。
【0063】
比較例4の場合は、シランカップリング剤を(a)-1から(a)-2に変えた以外は実施例1と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、結果を表2に示したが、PCT密着性、残渣が実施例と比べて劣る結果になった。比較例5の場合は、シランカップリング剤を(a)-1から(a)-2に変えた以外は実施例3と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、結果を表2に示したが、PCT密着性、残渣が実施例と比べて劣る結果になった。比較例6の場合は、シランカップリング剤を(a)-1から(a)-3に変えた以外は実施例3と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、結果を表2に示したが、PCT密着性が実施例と比べて劣る結果になった。比較例7の場合は、シランカップリング剤を(a)-1から(a)-4に変えた以外は実施例3と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、結果を表2に示したが、PCT密着性が実施例と比べて劣る結果になった。比較例8の場合は、シランカップリング剤を(a)-1から(a)-5に変えた以外は実施例3と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、結果を表2に示したが、PCT密着性が実施例と比べて劣る結果になった。
【0064】
比較例9の場合は、シランカップリング剤を(a)-1から(a)-6に変えた以外は実施例3と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、結果を表2に示したが、PCT密着性が実施例と比べて劣る結果になった。比較例10の場合は、シランカップリング剤を(a)-1から(a)-7に変えた以外は実施例3と同様に配合し、同様の条件で遮光膜を製造して評価を行い、結果を表2に示したが、PCT密着性と経時線幅安定性が実施例と比べて劣る結果になった。
【0065】
上記実施例1〜5のようなブラックマトリクスを形成したカラーフィルターを用いて液晶パネルを作成した場合、厳しい条件下でもブラックマトリクスの剥がれがほぼ無く、液晶のもれを防止することができる。また、現像密着、経時安定性、残渣等の現像特性を犠牲にすることもない。そのため、黒の顔料を含む塗膜中の顔料濃度を高くして樹脂成分が相対的に少なくなるような高遮光率のブラックマトリックスを作製する場合でも、ガラス基板からの塗膜の剥離が少なくなり、高い生産性(歩留り)及び信頼性を確保できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ウレイド基を含有するシランカップリング剤、(b)黒色有機顔料、混色有機顔料及び遮光材からなる群から選ばれる1以上の遮光成分を含有する遮光性分散液、(c)エポキシ基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物を更に多塩基酸カルボン酸又はその無水物と反応させて得られた不飽和基含有樹脂、(d)少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、及び(e)光重合開始剤を含有することを特徴とするブラックレジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)成分のウレイド基を含有するシランカップリング剤は、下記一般式(I)
【化1】

〔式中、R1、R2、及びR3は互いに独立にC1〜C4のアルコキシ基を表す(nは1〜6の整数を表す)。〕で表されることを特徴とする請求項1に記載のブラックレジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(a)ウレイド基を含有するシランカップリング剤の含有量がブラックレジスト用感光性樹脂組成物の固形分に対し0.3〜4.0質量%である請求項1又は2記載のブラックレジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(b)成分における遮光成分がカーボンブラックである請求項1〜3のいずれかに記載のブラックレジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
遮光成分の含有量が、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物中の全固形分に対して20〜60質量%である請求項1〜4のいずれかに記載のブラックレジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
遮光成分の含有量が、ブラックレジスト用感光性樹脂組成物中の全固形分に対して40〜60質量%である請求項5に記載のブラックレジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(C)成分におけるエポキシ基を2個以上有する化合物が、下記一般式(II)および一般式(III)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜6のいずれかに記載のブラックレジスト用感光性樹脂組成物。
【化2】

〔但し、式(II)中、R4及びR5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Xは‐CO‐、−SO2−、‐C(CF3)2−、-Si(CH3)2‐、-CH2‐、-C(CH3)2‐、-O-、9,9-フルオレニル基又は単結合を示し、nは0〜10の整数である〕
【化3】

〔式(III)中、nは、1以上5以下の整数を表し、R6〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜9のシクロアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表し、R10〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルキニル基、炭素数5〜9のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基を表す。〕
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のブラックレジスト用感光性樹脂組成物を、透明基板上に塗布し、乾燥した後、(1)紫外線露光装置による露光、(2)アルカリ水溶液による現像及び(3)熱焼成の各工程を必須として得られることを特徴とするカラーフィルター遮光膜。

【公開番号】特開2010−102086(P2010−102086A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272962(P2008−272962)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】