説明

ブロワー付マスク装置

【課題】故障のないブロワー付マスク装置を提供する。
【解決手段】面体2の前部に、排気時に開く方向に移動する一方、吸気時に閉じる方向に移動する排気弁7と、排気時に閉じる方向に移動する一方、吸気時に開く方向に移動する吸気弁8とが設けられ、モータ11で駆動され、その作動時に前記吸気弁を通して外気を前記面体内に送り込むブロワー10を備えたブロワー付きマスク装置1において、前記排気弁を、磁性体を混入した材料で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防塵・防毒などを目的として利用される全面形マスク、半面形マスク等に好適なブロワー付マスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブロワー付マスク装置は、通気通路上において、ろ過材の前側又は後側にブロワーを取り付け、その送気力(吸引力)を利用して呼吸の補助としている。ブロワー付マスク装置は、装着者の呼吸に関係なく送気を定常流で流すタイプ(一定流量型ブロワーという)と、装着者の呼吸に追随して送気するタイプ(呼吸追随型ブロワーという)とに別けられる。
【0003】
呼吸追随型ブロワーとしては、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4等に面体内圧を検知するものが開示されている。また特許文献5には排気弁又は吸気弁の位置を検知するフォトインタラプタを用いるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−28744号公報
【特許文献2】特開昭60−68869号公報
【特許文献3】実開昭61−118618号公報
【特許文献4】実開昭60−49851号公報
【特許文献5】特許第3726886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1乃至特許文献4に開示の面体内圧を検知する従来の技術は、いずれもダイヤフラム等の圧力で容易に応答する素材を用いることで面体内圧を検知しているものであるが、面体内圧を数パスカル程度の陽圧でも検知できるようにするには、相当圧力応答を鋭敏にする必要があり、このようなダイヤフラムは非常にもろくて変形や破け易いため、故障又は設定ズレが発生し易いなどの問題がある。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題をもたない新しいブロワー付マスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、面体の前部に、排気時に開く方向に移動する一方、吸気時に閉じる方向に移動する排気弁と、排気時に閉じる方向に移動する一方、吸気時に開く方向に移動する吸気弁とが設けられ、モータで駆動され、その作動時に前記吸気弁を通して外気を前記面体内に送り込むブロワーを備えたブロワー付きマスク装置において、前記排気弁を、磁性体を混入した材料で構成したことを特徴とするブロワー付きマスク装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、磁気の強さが非接触状態で検知できるため故障しにくいブロワー付きマスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ブロワー付マスク装置の断面図である。
【図2】ブロワー付マスク装置における排気弁の近傍部分の断面図である(着用者が排気状態の時)。
【図3】ブロワー付マスク装置における排気弁の近傍部分の断面図である(着用者が排気から吸気に変化した時の吸気初期状態の時)。
【図4】ブロワー付マスク装置における排気弁の近傍部分の断面図である(着用者が吸気状態であって、ブロワー送風量が着用者の吸気量を満たさなかった時)。
【図5】ブロワー付マスク装置における制御回路の一部を示す回路図である。
【図6】ブロワー付マスク装置におけるブロワー制御用及び警報用の位置検出センサの別の配置例を示す排気弁の近傍部分の断面図である。
【図7】ブロワー付マスク装置における制御回路の一部を示す回路図である(1つの位置検出センサの信号により個別にブロワーと警報装置を制御させる場合)。
【図8】ブロワー付マスク装置における排気弁の近傍部分の断面図である(着用者が排気状態の時)。
【図9】ブロワー付マスク装置における排気弁の近傍部分の断面図である(着用者が排気状態の時)。
【図10】ブロワー付マスク装置における制御回路の一部を示す回路図である(1つのMRセンサの信号により個別にブロワーと警報装置を制御させる場合)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明のブロワー付きマスク装置は、面体の前部に、排気時に開く方向に移動する一方、吸気時に閉じる方向に移動する排気弁と、排気時に閉じる方向に移動する一方、吸気時に開く方向に移動する吸気弁とが設けられ、モータで駆動され、その作動時に前記吸気弁を通して外気を前記面体内に送り込むブロワーを備えたブロワー付きマスク装置において、前記排気弁を、磁性体を混入した材料で構成したことを特徴とする。
【0011】
排気弁はシリコーンゴム等の弁材料に磁性体を混入して成形することによってつくることができる。
また、本発明のブロワー付きマスク装置では、吸気時に、外気圧よりも面体の内圧が低下したことに対応した排気弁の移動位置を排気弁に対して非接触状態で検出して信号を出力する警報用センサを配設し、警報用センサの信号によって警報装置が作動されるように構成されていることが好ましい。そのようにすることによって、ろ過材の粉塵目詰まりや電池電圧低下によりブロワーの送気量が低下した場合、着用者は、警報装置の作動によって面体内圧の低下を容易に認識することができる。したがって、着用者は、フィルタや電池を交換することで、有害物の侵入を防ぐことが継続できるようになる。また、非常に脆くて破損や変形を起こしやすいダイヤフラムを用いていないため、故障しにくく、警報装置の作動を決定するための弁の移動位置となる設定値がずれる心配もない。その際ブロワー制御用センサと警報用センサの各々を磁気抵抗効果素子で構成することが好ましい。
【0012】
以下、図面を参照して説明する。図1は、本発明のブロワー付マスク装置を示す断面図である。図1に示すように、ブロワー付マスク装置1は、面体2の前部に、外面を排気弁カバー3で被覆された排気口4と、同じく外面をろ過材カバー5で被覆された吸気口6とを備えている。また、排気口4には、着用者の呼吸に伴って排気時に開く方向に移動する一方、吸気時に閉じる方向に移動する排気弁7が設けられ、吸気口6には、排気時に閉じる方向に移動する一方、吸気時に開く方向へ移動する吸気弁8が設けられている。ろ過材カバー5の内部には、吸気弁8の外方であってろ過材カバー5の先端部にろ過材9(所謂、フィルタ)が配設され、ろ過材9と吸気口6との間にブロワー10が配設されている。ブロワー10は、駆動用のモータ11とその出力軸に連結された羽根車12とを備え、モータ11が通常作動している時にはろ過材9及び吸気弁8を通して面体2の内部へ外気を送り込むようになっている。
【0013】
最初に、第9図及び図10に基づいて本発明を説明する。
図9は、本発明のブロワー付マスク装置における排気弁の近傍部分の断面図である(着用者が排気状態の時)。本発明にあっては、非接触で排気弁7の位置(形状)を把握できればよいので、図9に示すように、検知する排気弁30は、磁性体を混入させた材質(シリコンーゴム)で成形する。そして、ブロワー制御用センサ28と警報用センサ29の各々を、フォトインタラプタに代えて、検知される磁気の強さに追随して抵抗値を増大させる磁気抵抗効果素子(以下、MRセンサという)で構成することが好ましい。このように構成し、MRセンサで弁の位置(形状)を把握しても同じ効果を得ることができる。
【0014】
図10は、制御回路の一部を示す回路図である(1つのMRセンサの信号により個別にブロワーと警報装置を制御させる場合)。第4実施形態では、排気弁30の移動位置に対して、MRセンサを1つのみにし(MRセンサ28)、制御回路において個別にブロワー10の制御と警報装置(警報LED20)の制御とを行わせるようにしている。
【0015】
図10に示すようにMRセンサ28の一端は直接電源に接続され、MRセンサ28の他端は抵抗r4の一端に接続され、抵抗r4の他端が接地(グランド)に接続されている。MRセンサ28の他端と抵抗r4との接続点22に対して、信号線を二股に分岐させ、分岐させた一方の信号線27aが第1コンパレータ23の+入力端子に接続され、第1コンパレータ23の−入力端子には、ある一定のレベル信号を出力する第1基準出力(VREF1)24が接続されている。また、分岐させた他方の信号線27bが第2コンパレータ25の+入力端子に接続され、第2コンパレータ25の−入力端子には、ある一定のレベル信号を出力する第2基準出力(VREF2)26が接続されている。
【0016】
なお、第1基準出力24を図8の境界線d1の位置に排気弁7がある場合のMRセンサ28の抵抗値による降下電圧に関連した接続点22の電位と同じか、又は接続点22の電位よりも僅かに小さい値とし、第2基準出力26を図8の境界線d2の位置に排気弁7がある場合のMRセンサ28の抵抗値による降下電圧に関連した接続点22の電位と同じか、又は接続点22の電位よりも僅かに小さい値とする。なお、その他の回路構成は、後で説明する図7と同様であるので、同一部分に同一符号を付して、ここでは詳細な説明を省略する。
【0017】
上記の作用について説明する。排気弁30が図9に示す位置(着用者の排気状態)にある時は、磁性体を混入した排気弁30がMRセンサ28に最も接近して位置しているため、検知される磁気の強さに追随して抵抗値を増大させるMRセンサ28の抵抗値が最も大きい状態となっている。このため、MRセンサ28及び抵抗r4を通じて接地に向けて流れる電流は最小値となり、接地レベル(0V)から見る接続点22の電位(抵抗r4による降下電圧分)は、最も低い電位となり、接続点22と同じ電位である第1コンパレータ23の+入力端子の入力電圧は、比較する第1基準出力24を超えていない。同様に、接続点22と同じ電位である第2コンパレータ25の+入力端子の入力電圧は、比較する第2基準出力26を超えていない。
【0018】
よって第1コンパレータ23及び第2コンパレータ25の出力もオフとなり、第2トランジスタ19はオフし、第2トランジスタ19がオフしていることで第1トランジスタ18もオフし、また、第3トランジスタ21がオフし、モータ11が停止状態(即ち、ブロワー10は送気を停止)及び警報LED20が消灯している。
【0019】
次に、着用者の呼吸が吸気に転じ、応じて排気弁30が排気弁座13に向けて移動すると、排気弁30の移動に伴ってMRセンサ28によって検知される磁気が弱まる(磁束密度が減少する)ことにより、MRセンサ28の抵抗値が小さくなるように変化する。このため、MRセンサ28及び抵抗r4を通じて接地に向けて流れる電流は前記の最小値から増加していき、接地レベル(0V)から見る接続点22の電位(抵抗r4による降下電圧分)は、最も低い電位から上昇していく(電位が高い方向に変化していく)。
【0020】
排気弁30が図9の境界線d1に示す位置を越え、さらに排気弁30が吸気により排気弁座13に向けて少し移動すると、この時のMRセンサ28の抵抗値による接続点22の電位は、まず、接続点22と同じ電位である第1コンパレータ23の+入力端子の入力電圧が比較する第1基準出力24を超える。
【0021】
従って、第1コンパレータ23の出力はオンに転じ、第2トランジスタ19がオンし、第2トランジスタ19がオンすることで第1トランジスタ18がオンし、モータ11に電源が供給され、ブロワー10が作動して送気が行われる。一方、第2コンパレータ25にあっては、接続点22と同じ電位である+入力端子の電圧が比較する第2基準出力26に達しておらず、第2コンパレータ25の出力はオフのままであり、第3トランジスタ21がオフし、警報LED20が消灯している。
【0022】
フィルタの目詰まりや電源電圧の低下がない場合、境界線d2に排気弁7が到達する前に、ブロワー10の送気量が着用者の吸気量を上回り、面体内圧は陽圧を維持し、かつ余分なブロワー送風(図3の符号17)が排気弁座13の排気口4から流出するため、排気弁30が排気弁座13より少し浮いた状態となり、排気弁30は設定された境界線d2の位置には到達しない。
【0023】
従って、MRセンサ28においては、その抵抗値は、第1コンパレータ23の出力をオンさせ、同時に第2コンパレータ25の出力をオフさせる値を維持している。よって、第3トランジスタ21はオフのままであり、警報LED20に電源が供給されず、警報装置は作動しない(警報LED20は消灯している)。
【0024】
一方、フィルタの目詰りや電源電圧の低下が発生していると、ブロワー10の送気量は着用者の吸気量に満たなくなるため、面体内圧は陰圧(外気圧よりも面体2の内圧が低下した状態)になり、かつ排気弁30を押し上げる送風はなくなるため、図4に示すように、排気弁30は排気弁座13と気密をとるように戻る。従って、MRセンサ28に設定された境界線d2を排気弁30が越える。
【0025】
よって、磁性体を混入した排気弁30がMRセンサ28に最も離隔して位置しているため、MRセンサ28によって検知される磁気が最小となり、MRセンサ28の抵抗値が最も小さい状態となる。このため、MRセンサ28及び抵抗r4を通じて接地に向けて流れる電流は最大値となり、接地レベル(0V)から見る接続点22の電位(抵抗r4による降下電圧分)は、最も高い電位となり、接続点22と同じ電位である第2コンパレータ25の+入力端子の電圧が比較する第2基準出力26を超える。従って、第2コンパレータ25の出力はオンに転じ、第3トランジスタ21がオンし、警報LED20が点灯し、着用者に面体内圧が陰圧になっていることを知らせることとなる。以上に説明したように、MRセンサが1つであっても、同様の効果を得ることになる。
【0026】
次に、図2〜8に基づいて説明する。
これらの図の説明では、反射型フォトインタラプタが位置検出センサである態様を例に説明する。
【0027】
図2乃至図4は、ブロワー付マスク装置1における排気弁7の近傍部分の断面図である。なお、図2は着用者が排気状態の時の排気弁7を示しており、図3は着用者が排気から吸気に変化した時の吸気初期状態の時の排気弁7を示している。また、図4はブロワー送風量が着用者の吸気量を満たさなかった時の着用者が吸気状態の排気弁7を示している。図2乃至図4に示すように、面体2の排気口4の周囲には排気弁座13が装着され、排気弁座13に排気弁7が取り付けられる。
【0028】
第1の態様のブロワー付マスク装置1は、センサをブロワー制御用と警報用と2個使用したものである。排気弁7の近傍外側には、排気弁7の移動位置を検知する位置検出センサ14及び位置検出センサ15が配設されている。なお、位置検出センサ14,15は、同様の構成であり、位置検出センサ14を一例として説明すると、発光素子(発光ダイオード)14aと受光素子(トランジスタレシーバ)14bとを1組とした反射型フォトインタラプタで構成され、発光素子14aから出力された赤外線を受光素子14bが検知すると、信号を出力するものである。また、位置検出センサ(反射型フォトインタラプタ)14は、発光素子14aの発光面及び受光素子14bの受光面をそれぞれ排気弁7に向けて配置されている。同じく、位置検出センサ(反射型フォトインタラプタ)15は、発光素子15aの発光面及び受光素子15bの受光面をそれぞれ排気弁7に向けて配置されている。
【0029】
位置検出センサ14は、呼吸追随のためのブロワー制御用であり、位置検出センサ15は、警報装置を作動させるための警報用である。図2乃至図4に示す符号d1は、位置検出センサ14が信号を出力する距離の境界線であり、符号d2は、位置検出センサ15が信号を出力する距離の境界線である。各位置検出センサ14,15は、検知対象物(排気弁7)が各境界線よりも接近する方向に(排気弁座13から離間する方向に)移動した場合に、発光素子から出力された赤外線が排気弁7に反射して受光素子に受光され、受光素子がオンする。
【0030】
また、図2乃至図4に示すように、警報用の位置検出センサ15が信号を出力する位置は、ブロワー制御用の位置検出センサ14が信号を出力する位置よりも、排気弁座13に接近した位置に設定されている。図2において符号16で示す矢印鎖線は、排気時の着用者の排気空気軌道を示している。また、図3において符号17で示す矢印鎖線は、着用者の吸気量より上回った余分なブロワー10による送風の空気軌道を示している。
【0031】
図5は、第1の好ましい態様のブロワー付マスク装置1における制御回路の一部を示す回路図である。図5に示すように、ブロワー10を駆動するモータ11への電力供給を制御する第1トランジスタ(PNP型)18は、エミッタが電源に接続され、コレクタがモータ11に接続されている。また、第1トランジスタ18のベースは、第1トランジスタ18の動作を制御する第2トランジスタ(NPN型)19のコレクタと接続されている。第2トランジスタ19のエミッタは接地(グランド)に接続され、第2トランジスタ19のベースは、抵抗r1を介して電源と接続されると共に、位置検出センサ14の受光素子14bの一端と接続され、位置検出センサ14の受光素子14bの他端は接地(グランド)に接続されている。
【0032】
また、警報装置の一態様としてLED(警報LED20)を用いている。警報LED20の一端は抵抗を介して電源に接続され、警報LED20の他端は、この警報LED20のオンオフ動作を制御する第3トランジスタ(NPN型)21のコレクタと接続されている。第3トランジスタ21のエミッタは接地に接続され、第3トランジスタ21のベースは、抵抗r2を介して電源と接続されると共に、位置検出センサ15の受光素子15bの一端と接続され、位置検出センサ15の受光素子15bの他端は接地に接続されている。
【0033】
次に、第1の好ましい態様のブロワー付マスク装置1の作用について説明する。排気時は、図2に示すように、着用者の排気によって排気弁7は排気弁座13より位置検出センサ14,15に向けて押し上げられる。つまり、面体内圧が陽圧(外気圧よりも大きい圧力)であり、両境界線d1,d2よりも位置検出センサ14,15に接近した位置に排気弁7がある。このため、位置検出センサ14にあっては、発光素子14aから出力されて排気弁7に反射された赤外線は、受光素子14bに受光される結果、受光素子14bがオンする(信号を出力する)。また、位置検出センサ15においても、発光素子15aから出力されて排気弁7に反射された赤外線は、受光素子15bに受光される結果、受光素子15bがオンする(信号を出力する)。
【0034】
図5においては、位置検出センサ14の受光素子14bがオンとなっていることにより、第2トランジスタ19のベースに印加される電圧はほぼ接地レベルになるため、第2トランジスタ19はオフし、第2トランジスタ19がオフしていることで、第1トランジスタ18もオフしている。よってモータ11に電源が供給されず、ブロワー10は送風を停止している。また、位置検出センサ15の受光素子15bがオンとなっていることにより、第3トランジスタ21のベースに印加される電圧はほぼ接地レベルになるため、第3トランジスタ21はオフしている。よって警報LED20に電源が供給されず、警報LED20は消灯している。
【0035】
排気から吸気に変化した時、図3に示すように、排気弁7は着用者の排気がなくなることにより弁を押し上げる圧力がなくなるため、排気弁座13に向けて戻る方向に移動する。この場合、まず、排気弁7は位置検出センサ14に設定された境界線d1を越える。すると、位置検出センサ14の発光素子14aから照射されて排気弁7に反射された赤外線は、受光素子14bの受光面をそれてしまい、信号は出力されない(受光素子14bがオフに転じる)。
【0036】
図5においては、位置検出センサ14の受光素子14bがオフに転じることにより、第2トランジスタ19のベースに抵抗r1を介してベース電流が流れるため、第2トランジスタ19がオンし、第2トランジスタ19がオンすることで、第1トランジスタ18のエミッタからベースに向けてベース電流が流れ、第1トランジスタ18もオンする。よって、第1トランジスタ18を通じてモータ11に電源が供給されてブロワー10が作動する。即ち、位置検出センサ14から出力される信号がオフに転じることにより(d1の位置検出信号により)、ブロワー10が作動する。
【0037】
フィルタ(ろ過材9)の目詰まりや電源電圧の低下がない場合、位置検出センサ15に設定された境界線d2に排気弁7が到達する前に、ブロワー10の送気量が着用者の吸気量を上回り、面体内圧は陽圧を維持し、かつ余分なブロワー送風(図3の符号17)が排気弁座13の排気口4から流出するため、図3に示すように排気弁7が排気弁座13より少し浮いた状態となり、排気弁7は位置検出センサ15に設定された境界線d2の位置には到達しない。従って、位置検出センサ15においては、発光素子15aから出力されて排気弁7に反射された赤外線は、受光素子15bに受光されている結果、受光素子15bがオンを維持している(信号を出力する)。よって、位置検出センサ15の受光素子15bはオンを維持していることにより、第3トランジスタ21はオフのままであり、警報LED20に電源が供給されず、警報装置は作動しない(警報LED20は消灯している)。
【0038】
一方、排気から吸気に変化した時、フィルタの目詰りや電源電圧の低下が発生していると、ブロワー10の送気量は着用者の吸気量に満たなくなるため、面体内圧は陰圧(外気圧よりも面体2の内圧が低下した状態)になり、かつ排気弁7を押し上げる送風はなくなるため、図4に示すように、排気弁7は排気弁座13と気密をとるように戻る。従って、位置検出センサ15に設定された境界線d2を排気弁7が越えるため、位置検出センサ15の発光素子15aから照射されて排気弁7に反射された赤外線は、受光素子15bの受光面をそれてしまい、信号は出力されない(受光素子15bがオフに転じる)。
【0039】
図5においては、位置検出センサ15の受光素子15bがオフに転じることにより、第3トランジスタ21のベースに抵抗r2を介してベース電流が流れるため、第3トランジスタ21がオンし、第3トランジスタ21がオンすることで警報LED20に電源が供給されて警報LED20が点灯する。よって、位置検出センサ15から出力される信号がオフに転じることにより(d2の位置検出信号により)、警報LED20が着用者に面体内圧が陰圧になっていることを点灯により報知することになる。
【0040】
なお、上述の第1の態様において、位置検出センサ14及び位置検出センサ15は排気弁7の移動方向の前方に(排気弁座13から離隔して開く向き)配置しているが、位置検出センサ14及び位置検出センサ15の配置位置は排気弁7の移動方向の前方に限らず、例えば、図6に示すように、排気弁7の側端面を感知するように、排気弁7の移動方向に対して側方に配置してもよい。また、位置検出センサ14及び位置検出センサ15は、フォトインタラプタだけでなく、非接触で排気弁7の位置を検知できる無接点センサであれば同様の効果が期待できる。
【0041】
次に、第2の態様について説明する。先に説明した第1実施形態では、排気弁7の移動位置に対して、呼吸追随のためのブロワー制御用の位置検出センサ14と、警報装置を作動させるための警報用の位置検出センサ14との2つを個別にそれぞれ設けていたが、第2実施形態では、排気弁7の移動位置に対して、位置検出センサを1つのみにし、制御回路において個別にブロワー10の制御と警報装置(警報LED20)の制御とを行わせるようにしている。
【0042】
図7は、第2の態様における個別にブロワー10と警報装置を制御させた場合の制御回路の一部を示す回路図である。第1実施形態と同様、警報装置としてLED(警報LED20)を使用し、排気弁7の近傍外側に、排気弁7の移動位置を検知する位置検出センサ14(フォトインタラプタにより構成)が配設されている。図7に示すように、位置検出センサ14の受光素子14bの一端は抵抗r3を通じて電源に接続され、位置検出センサ14の受光素子14bの他端は接地に接続されている。
【0043】
位置検出センサ14の受光素子14bの一端と抵抗r3との接続点22に対して、抵抗r4の一端が接続され、抵抗r4の他端が接地(グランド)に接続されている。また、前記接続点22よりの位置検出センサ14の受光素子14bの信号線を二股に分岐させ、分岐させた一方の信号線27aが第1コンパレータ23の+入力端子に接続され、第1コンパレータ23の−入力端子には、ある一定のレベル信号を出力する第1基準出力(VREF1)24が接続されている。また、第1コンパレータ23の出力端子は、第1トランジスタ18の動作を制御する第2トランジスタ(NPN型)19のベースと接続されている。
【0044】
また、分岐させた他方の信号線27bが第2コンパレータ25の+入力端子に接続され、第2コンパレータ25の−入力端子には、ある一定のレベル信号を出力する第2基準出力(VREF2)26が接続されている。また、第2コンパレータ25の出力端子は、第3トランジスタ21(NPN型)のベースと接続されている。第1コンパレータ23は、位置検出センサ14の受光素子14bの出力が比較する第1基準出力24を超えると信号を出力する。また、第2コンパレータ25は、位置検出センサ14の受光素子14bの出力が比較する第2基準出力26を超えると信号を出力する。
【0045】
図8は、第2の態様のブロワー付マスク装置1における排気弁7の近傍部分の断面図である。符号d1は、位置検出センサ14に対して設定されたブロワー制御用の位置検出のための出力信号の境界線(第1の移動位置に相当)であり、符号d2は、位置検出センサ14に対して設定された警報用の位置検出のための出力信号の境界線(第2の移動位置に相当)である。位置検出センサ14は、検知対象物(排気弁7)が境界線d2よりも接近する方向に(排気弁座13から離間する方向に)移動した場合に、発光素子から出力された赤外線が排気弁7に反射して受光素子に受光され、受光素子がオンする。
【0046】
さらに、第1基準出力24を図8の境界線d1の位置に排気弁7がある場合の位置検出センサ14の受光素子14bの出力に関連した接続点22の電位と同じか、又は接続点22の電位よりも僅かに小さい値とし、第2基準出力26を図8の境界線d2の位置に排気弁7がある場合の位置検出センサ14の受光素子14bの出力に関連した接続点22の電位と同じか、又は接続点22の電位よりも僅かに小さい値とする。
【0047】
第2の態様の作用について説明すると、排気弁7が図8に示す位置(着用者の排気状態)にある時は、位置検出センサ14の受光素子14bの出力はオンであり、図7においては、位置検出センサ14の受光素子14bがオンとなっていることにより、電源から抵抗r3を通じて流れる電流は受光素子14bを通じて接地に流れるため、接続点22と同じ電位である第1コンパレータ23の+入力端子並びに第2コンパレータ25の+入力端子の入力は接地レベルになっている。よって第1コンパレータ23及び第2コンパレータ5の出力もオフとなり、第2トランジスタ19はオフし、第2トランジスタ19がオフしていることで第1トランジスタ18もオフし、また、第3トランジスタ21がオフし、モータ11が停止状態(即ち、ブロワー10は送気を停止)及び警報LED20が消灯している。
【0048】
次に、着用者の呼吸が吸気に転じ、応じて排気弁7が排気弁座13に向けて移動し、図8の境界線d1に示す位置を越え、さらに排気弁7が吸気により排気弁座13に向けて少し移動すると、受光素子14bの受光量が減少することにより、図7の抵抗r3を通じて受光素子14bに流れる電流信号が減少し、抵抗r3を流れる電流は抵抗r4を通じても接地に流れるようになる。この結果、接続点22の電位は、受光素子14bの受光量が減少するのに伴って接地レベル(グランド)から上昇していき、まず、接続点22と同じ電位である第1コンパレータ23の+入力端子の電圧が比較する第1基準出力24を超える。
【0049】
従って、第1コンパレータ23の出力はオンに転じ、第2トランジスタ19がオンし、第2トランジスタ19がオンすることで第1トランジスタ18がオンし、モータ11に電源が供給され、ブロワー10が作動して送気が行われる。一方、第2コンパレータ25にあっては、接続点22と同じ電位である+入力端子の電圧が比較する第2基準出力26に達しておらず、第2コンパレータ25の出力はオフのままであり、第3トランジスタ21がオフし、警報LED20が消灯している。
【0050】
フィルタの目詰まりや電源電圧の低下がない場合、図3に示すように境界線d2に排気弁7が到達する前に、ブロワー10の送気量が着用者の吸気量を上回り、面体内圧は陽圧を維持し、かつ余分なブロワー送風(図3の符号17)が排気弁座13の排気口4から流出するため、図3に示すように排気弁7が排気弁座13より少し浮いた状態となり、排気弁7は位置検出センサ14に設定された境界線d2の位置には到達しない。
【0051】
従って、位置検出センサ14においては、発光素子14aから出力されて排気弁7に反射された赤外線は、受光素子14bにまだ受光されている結果、受光素子14bがオンを維持している(信号を出力する)。よって、位置検出センサ14の受光素子14bはオンを維持していることにより、接続点22と同じ電位である+入力端子の電圧が比較する第2基準出力26に達しないため、第2コンパレータ25の出力はオフのままであり、従って、第3トランジスタ21はオフのままであり、警報LED20に電源が供給されず、警報装置は作動しない(警報LED20は消灯している)。
【0052】
一方、フィルタの目詰りや電源電圧の低下が発生していると、ブロワー10の送気量は着用者の吸気量に満たなくなるため、面体内圧は陰圧(外気圧よりも面体2の内圧が低下した状態)になり、かつ排気弁7を押し上げる送風はなくなるため、図4に示すように、排気弁7は排気弁座13と気密をとるように戻る。従って、位置検出センサ14に設定された境界線d2を排気弁7が越える。よって、位置検出センサ14の発光素子14aから照射されて排気弁7に反射された赤外線は、受光素子14bの受光面をそれてしまい、信号は出力されない(受光素子14bがオフに転じる)。
【0053】
図7においては、位置検出センサ14の受光素子14bがオフに転じることにより、抵抗r3を通じて流れる電流は、抵抗r4を通じて接地に流れるようになる。この結果、接続点22の電位は、接地から見て抵抗r4を流れる電流の分だけ上昇していることになり、接続点22と同じ電位である第2コンパレータ25の+入力端子の電圧が比較する第2基準出力26を超える。従って、第2コンパレータ25の出力はオンに転じ、第3トランジスタ21がオンし、警報LED20が点灯し、着用者に面体内圧が陰圧になっていることを知らせることとなる。以上に説明したように、位置検出センサ(フォトインタラプタ)が1つであっても、前記第1実施形態と同様の効果を得ることになる。
【0054】
上述の態様では、警報装置として光により警報の報知を行う例としてLEDを用いているが、これに限らず、警報装置は音又は振動を発することにより警報の報知を行うものを用いることもできる。また、光、音及び振動のうちの少なくとも2つ以上を組合せることも可能である。
【0055】
上述の態様では、吸気時に、位置検出センサ14からの信号によりモータ11へ作動するよう電力供給される一方、排気時にはモータ11への電力供給が停止されるように構成されているが、吸気時にモータ11へ通常作動するよう電力供給される一方、排気時にはモータ11への電力供給が減少されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ブロワー付マスク装置
2 面体
3 排気弁カバー
4 排気口
5 ろ過材カバー
6 吸気口
7 排気弁
8 吸気弁
9 ろ過材
10 ブロワー
11 モータ
12 羽根車
13 排気弁座
14 位置検出センサ(ブロワー制御用)
14a 発光素子
14b 受光素子
15 位置検出センサ(警報用)
15a 発光素子
15b 受光素子
16 着用者の排気空気軌道
17 着用者の吸気量より上回った余分なブロワー送風の空気軌道
18 第1トランジスタ
19 第2トランジスタ
20 警報LED(警報装置)
21 第3トランジスタ
22 接続点
23 第1コンパレータ
24 第1基準出力(VREF1)
25 第2コンパレータ
26 第2基準出力(VREF2)
27a 信号線
27b 信号線
28 MRセンサ(ブロワー制御用)
29 MRセンサ(警報用)
30 排気弁(磁性体混入)
r1 抵抗
r2 抵抗
r3 抵抗
r4 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面体の前部に、排気時に開く方向に移動する一方、吸気時に閉じる方向に移動する排気弁と、排気時に閉じる方向に移動する一方、吸気時に開く方向に移動する吸気弁とが設けられ、モータで駆動され、その作動時に前記吸気弁を通して外気を前記面体内に送り込むブロワーを備えたブロワー付きマスク装置において、前記排気弁を、磁性体を混入した材料で構成したことを特徴とするブロワー付きマスク装置。
【請求項2】
前記排気弁の近傍に、吸気時の前記排気弁の移動位置を前記排気弁に対して非接触状態で検知して信号を発生するブロワー制御用センサが配設され、前記ブロワー制御用センサからの信号により、吸気時に前記モータへ電力供給されて前記ブロワーが作動する一方、排気時に前記モータへの電力供給が停止或いは減少されるように構成されていると共に、前記排気弁に関して、吸気時に、外気圧よりも前記面体の内圧が低下したことに対応した前記排気弁の移動位置を前記排気弁に対して非接触状態で検知して信号を出力する警報用センサを配設し、制御回路は、前記警報用センサの信号によって警報装置が作動されるように構成され、さらに前記ブロワー制御用センサと前記警報用センサの各々は、前記排気弁の状態を監視する無接点センサで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のブロワー付マスク装置。
【請求項3】
前記無接点センサを、検知される磁気の強さに追随して抵抗値を変化させる磁気抵抗効果素子で構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のブロワー付マスク装置。
【請求項4】
前記ブロワー制御用センサは前記警報用センサを兼ねたものであり、前記ブロワー制御用センサに対して、吸気時の前記排気弁の移動位置として、第1の移動位置と前記第1の移動位置よりも閉じる方向に位置する第2の移動位置とが設定され、前記制御回路は、前記ブロワー制御用センサの信号出力と前記第1の移動位置に対応した第1の基準出力とを比較し、前記ブロワー制御用センサの信号出力が前記第1の基準出力を上回った場合に信号を出力して前記モータへ電力供給する第1のコンパレータと、前記ブロワー制御用センサの信号出力と前記第2の移動位置に対応した第2の基準出力とを比較し、前記ブロワー制御用センサの信号出力が前記第2の基準出力を上回った場合に信号を出力して前記警報装置を作動する第2のコンパレータとを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブロワー付マスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−12280(P2010−12280A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202503(P2009−202503)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【分割の表示】特願2006−272994(P2006−272994)の分割
【原出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000162940)興研株式会社 (75)
【Fターム(参考)】