説明

ブローバイガス還元装置

【課題】全運転領域においてクランクケース内の換気を良好に行うことができるブローバイガス還元装置を提供すること。
【解決手段】第1ブローバイガス還元通路41と第2ブローバイガス還元通路42とからなるブローバイガス還元通路4を備えた過給機付エンジン3のブローバイガス還元装置1。第1ブローバイガス還元通路41は、入口がシリンダーブロック31又はヘッドカバー32に接続され、出口が吸気通路2における過給機21の上流側と下流側を接続する吸気バイパス通路23に接続される。第1ブローバイガス還元通路31又は吸気バイパス通路23は、第1ブローバイガス還元通路31からの流入を禁止する第1逆流防止手段24を備える。第2ブローバイガス還元通路42は、出口がスロットルバルブ22の下流にて吸気通路2に接続され、第2ブローバイガス還元通路42からの流入を禁止する第2逆流防止手段421を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気通路に過給機を備えたエンジンに設けられ、エンジンで発生するブローバイガスを、吸気通路を通じてエンジンへ還元するブローバイガス還元装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載されるエンジンにおいて、燃焼室から、シリンダとピストンの隙間を通ってクランクケースに漏れ出るブローバイガスは、エンジン内のエンジンオイルを劣化させることが知られている。
そして、クランクケース内に漏れ出したブローバイガスを換気するブローバイガス還元装置に関する技術が報告されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、ブローバイガス還元装置として、クランクケース内からのブローバイガスをエンジンの吸気系に導くブローバイガス通路と、エンジンに対して並列に設けられた主ターボチャージャ及び副ターボチャージャと、副ターボチャージャの作動と非作動を切替える吸気切替弁及び排気切替弁と、副ターボチャージャの下流側と、主ターボチャージャの上流側を接続する吸気バイパス通路とを備え、ブローバイガス通路の負圧側放出口をスロットル弁下流の吸気通路に連通させ、ブローバイガス通路の大気側放出口を吸気バイパス通路に連通させることにより、クランクケース内から吸気系にブローバイガスを導く技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−8711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、スロットルバルブの下流側の圧力がクランクケース内圧よりも高くなった時に、ブローバイガス通路の負圧側放出口からブローバイガス通路内へ空気が流入することにより、クランクケース内の換気を十分に行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、ブローバイガス還元通路の吸気通路側出口の圧力がクランクケース内圧あるいはヘッドカバー内圧より高い場合でも、吸気通路側からエンジン側への流入を防止し、全運転領域においてクランクケース内及びヘッドカバー内の少なくとも一方の換気を良好に行うことができるブローバイガス還元装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、吸気通路に、過給機と、該過給機の下流側に配設されたスロットルバルブとを備えるエンジンに設けられ、前記エンジンで発生するブローバイガスを前記吸気通路に流して前記エンジンへ還元するブローバイガス還元通路を備えた過給機付エンジンのブローバイガス還元装置であって、
前記ブローバイガス還元装置は、前記吸気通路における前記過給機の上流側と下流側を接続する吸気バイパス通路を備え、
前記ブローバイガス還元通路は、第1ブローバイガス還元通路と第2ブローバイガス還元通路とからなり、
前記第1ブローバイガス還元通路は、入口がシリンダーブロックあるいはヘッドカバーに接続され、出口が前記吸気バイパス通路に接続され、
前記第1ブローバイガス還元通路あるいは吸気バイパス通路は、前記第1ブローバイガス還元通路から前記シリンダーブロックあるいはヘッドカバーへの流入を禁止する第1逆流防止手段を備え、
前記第2ブローバイガス還元通路は、出口が前記スロットルバルブの下流にて前記吸気通路に接続されると共に、前記第2ブローバイガス還元通路から前記シリンダーブロックあるいはヘッドカバーへの流入を禁止する第2逆流防止手段を備えることを特徴とするブローバイガス還元装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明のブローバイガス還元装置は、前記構成を有することにより、全運転領域においてクランクケース内及びヘッドカバー内の少なくとも一方の換気を良好に行うことができる。
【0009】
前記ブローバイガス還元装置において、過給機より上流側の吸気通路内の圧力(以下、P1)は全運転領域で大気圧である。
そして、アイドル時には、コンプレッサの回転数が低いため、過給機の下流側からスロットルバルブまでの吸気通路内の圧力(以下、P2)は大気圧であり、スロットルバルブより下流側の吸気通路内の圧力(以下、P3)は負圧となる。つまり、アイドル時には、P1=P2>P3となる。
【0010】
また、スロットル開度が小さい場合には、コンプレッサの回転数が上昇し、P2は上昇して正圧となるが、P3は負圧の状態である。つまり、スロットル開度が小さい時には、P2>P1>P3となる。
【0011】
また、スロットル開度が大きい場合には、コンプレッサの回転数が上昇し、P2は上昇し、P3は正圧になり、P1よりも大きくなりP2と同等となる。つまり、スロットル開度が大きい時には、P2≧P3>P1となる。
【0012】
そして、本発明の構成によれば、前記アイドル時(P1=P2>P3)には、スロットルバルブの下流にて吸気通路内に発生する負圧(P3)が第2ブローバイガス還元通路に作用し、エンジンの燃焼室からクランクケース内あるいはヘッドカバー内へ漏れ出したブローバイガスが、第2ブローバイガス還元通路を通じて吸気通路へ流される。つまり、アイドル時には、第2ブローバイガス還元通路を通じてブローバイガスをエンジンに還元することができる。
また、このとき、P1とP2にはほとんど圧力差がないため、吸気バイパス通路に流量は発生せず、第1ブローバイガス還元通路を通じた還元は行われない。
【0013】
また、前記スロットル開度が小さい場合(P2>P1>P3)には、アイドル時と同様に、スロットルバルブの下流にて、吸気通路に発生する負圧(P3)が第2ブローバイガス還元通路に作用し、エンジンの燃焼室から漏れ出したブローバイガスが、第2ブローバイガス還元通路を通じて吸気通路へ流される。
【0014】
また、このとき、吸気通路における過給機の上流側と下流側との間で吸気に圧力差(P2>P1)が生じ、吸気バイパス通路の両端の間にも圧力差が生じる。この圧力差によって吸気バイパス通路に空気が流れ、その空気流によって、エンジンで発生するブローバイガスが第1ブローバイガス還元通路、及び吸気バイパス通路を通じて吸気通路へ流される。そして、吸気通路へ導出されたブローバイガスは、過給機及び吸気通路を経由してエンジンの燃焼室へと還元される。つまり、スロットル開度が小さい時には、第1ブローバイガス還元通路、及び第2ブローバイガス還元通路を通じてブローバイガスをエンジンへ還元することができる。
【0015】
また、過給機による過給圧が増大すると、それに応じて過給機の上流側と下流側の圧力差が大きくなることから、エンジンから第1ブローバイガス還元通路へ流れるブローバイガス流量が増大し、吸気通路へ流れるブローバイガス流量が増大する。
また、前記吸気バイパス通路は、吸気通路の一部を迂回して設けられるので、吸気バイパス通路が吸気通路の吸気抵抗に影響を与えることがない。そのため、過給機の作動時に吸気通路の吸気抵抗を増やすことなくブローバイガスを燃焼室へ還元することができると共に、過給圧の増大に応じてブローバイガス還元流量を増大させることができる。
【0016】
このとき、吸気バイパス通路内の圧力は、クランクケース内圧及びヘッドカバー内圧よりも大きくなるが、第1ブローバイガス還元通路あるいは吸気バイパス通路に設けられた第1逆流防止手段により、エンジン側への逆流を防止することができ、逆流による換気能力の低下を防止することができる。
【0017】
また、スロットル開度が大きい時(P2≧P3>P1)には、前記スロットル開度が小さい時と同様に、吸気通路における過給機の上流側と下流側との間で吸気に圧力差(P2>P1)が生じ、吸気バイパス通路の両端の間にも圧力差が生じる。この圧力差によって吸気バイパス通路に空気が流れ、その空気流によってエンジンで発生するブローバイガスが第1ブローバイガス還元通路、及び吸気バイパス通路を通じて吸気通路へ流される。
つまり、スロットル開度が大きい時には、第1ブローバイガス還元通路を通じてブローバイガスをエンジンへ還元することができる。
【0018】
このとき、P3は正圧になるが、第2ブローバイガス還元通路に設けられた第2逆流防止手段により、エンジン側への逆流を防止することができ、逆流による換気能力の低下を防止することができる。
【0019】
このように、本発明によれば、アイドル時、スロットル開度が小さい時、スロットル開度が大きい時のいずれの場合においても、ブローバイガスをエンジンへ還元することができる。つまり、ブローバイガス還元通路の吸気通路側出口の圧力がクランクケース内圧あるいはヘッドカバー内圧より高い場合でも、吸気通路側からエンジン側への流入を防止し、全運転領域においてシリンダーブロック及びオイルパンにより形成されるクランクケース内及びヘッドカバー内の換気を良好に行うことができるブローバイガス還元装置を提供することができる。
そして、良好に換気できることにより、エンジンにてオイルメンテナンスピッチを延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1における、ブローバイガス還元装置を含むエンジンシステムを示す説明図。
【図2】実施例1における、ジェットポンプを示す断面図。
【図3】実施例1における、逆止弁を示す断面図。(a)閉弁時を示す断面図。(b)開弁時を示す断面図。
【図4】実施例1における、P1、P2、及びP3の関係を示すグラフ図。
【図5】実施例2における、ブローバイガス還元装置を含むエンジンシステムを示す説明図。
【図6】実施例2における、ブローバイガス還元流量特性を示すグラフ図。
【図7】実施例3における、ブローバイガス還元装置を含むエンジンシステム示す説明図。
【図8】実施例3における、ECUが実行する制御プログラムを示すフローチャート。
【図9】実施例4における、ブローバイガス還元装置を含むエンジンシステムを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のブローバイガス還元装置は、上述したように、吸気通路に、過給機と、該過給機の下流側に配設されたスロットルバルブとを備えるエンジンに設けられる。
本発明のブローバイガス還元装置を設けるエンジンとしては、例えば、レシプロタイプのエンジンを用いることができる。また、エンジンは、一般的に、シリンダーブロック、シリンダーヘッド、ヘッドカバー、及びオイルパンにより構成される。
また、前記シリンダーブロックとオイルパンとにより形成されるクランクケース及びヘッドカバーは、シリンダーブロックに設けられた連通路を介して連通していることが好ましい。
【0022】
また、前記吸気通路は、前記シリンダーヘッドの吸気ポートに接続される。そして、シリンダーヘッドの排気ポートには排気通路が接続される。
そして、前記吸気通路の入口には、空気の浄化を行うエアクリーナが設けられていることが好ましい。
【0023】
前記過給機は、一般的に、前記吸気通路に配置され吸気を昇圧させるコンプレッサと、前記排気通路に配置されるタービンと、前記コンプレッサとタービンとを一体回転可能に連結する回転軸とを備える。
また、前記過給機は、排気通路を流れる排気ガスにより、タービンを回転させて回転軸を介してコンプレッサを一体回転させることにより、吸気通路における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
そして、前記コンプレッサは、前記エアクリーナより下流の吸気通路に設けられることが好ましい。
【0024】
そして、前記排気通路には、前記タービンを迂回する排気バイパス通路が設けられることが好ましい。この排気バイパス通路には、ダイアフラム方式のアクチュエータにより開度が調節されるウエストゲートバルブが設けられることが好ましい。この場合には、ウエストゲートバルブにより排気バイパス通路を流れる排気ガスを調節することにより、タービンに供給される排気ガス流量を調節し、タービン及びコンプレッサの回転速度を調節し、過給機による過給を調節することができる。
【0025】
また、前記吸気通路において、過給機のコンプレッサとスロットルバルブとの間には、インタークーラを設けることが好ましい。このインタークーラは、コンプレッサにより昇圧された吸気を適温に冷却することができる。
【0026】
また、前記ブローバイガス還元装置は、前記吸気通路における前記過給機の上流側と下流側を接続する吸気バイパス通路を備える。
すなわち、過給圧の高いコンプレッサの直近下流側の吸気通路と、コンプレッサの上流側の吸気通路との間には、コンプレッサを迂回した吸気バイパス通路が設けられる。
【0027】
また、前記第1ブローバイガス還元通路は、入口がエンジンのシリンダーブロックあるいはヘッドカバーに接続され、出口が前記吸気バイパス通路に接続される。
第1ブローバイガス還元通路を設けない場合には、スロットル開度の小さい場合、及びスロットル開度の大きい場合にブローバイガスの還元を十分に行うことができない。
【0028】
また、前記第1ブローバイガス還元通路あるいは吸気バイパス通路は、前記第1ブローバイガス還元通路から前記シリンダーブロックあるいはヘッドカバーへの流入を禁止する第1逆流防止手段を備える。
前記第1逆流防止手段は、前記吸気バイパス通路がクランクケース内圧あるいはヘッドカバー内圧よりも大きい場合に、第1ブローバイガス還元通路からエンジン側への逆流を防止するものである。
【0029】
前記第1逆流防止手段としては、第1ブローバイガス還元通路からエンジン側への流入を防ぐことが可能な手段であれば、どのような構成のものを用いてもよいが、例えば、後述するジェットポンプや、逆止弁を適用することができる。
また、前記第1逆流防止手段は、第1ブローバイガス還元通路上あるいは吸気バイパス通路上に設けられていればその位置は限定されないが、第1ブローバイガス還元通路と吸気バイパス通路の接続部に設けられていることが好ましい。
【0030】
前記第1逆流防止手段がない場合には、吸気バイパス通路内圧力がクランクケース内圧あるいはヘッドカバー内圧よりも大きい場合に、シリンダーブロックやヘッドカバー内に逆流してブローバイガスの換気を十分に行うことができないおそれがある。
【0031】
また、前記第2ブローバイガス還元通路は、出口が前記スロットルバルブの下流にて前記吸気通路に接続される。
第2ブローバイガス還元通路を設けない場合には、アイドル時、及びスロットル開度が小さい場合にブローバイガスの還元を十分に行うことができない。
前記第2ブローバイガス還元通路の入口は、シリンダブロックに接続されていてもよいし、後述するように、第1ブローバイガス還元通路に接続されていてもよい。
【0032】
また、前記第2ブローバイガス還元通路は、前記第2ブローバイガス還元通路から前記シリンダーブロックあるいはヘッドカバーの内部への流入を禁止する第2逆流防止手段を備える。
前記第2逆流防止手段としては、第2ブローバイガス還元通路からのエンジン側への流入を防ぐことが可能な手段であれば、どのような構成のものを用いてもよいが、例えば、逆止弁を適用することができる。
なお、前記第2逆流防止手段は、P3が正圧の場合に限らず、P3がクランクケース内圧あるいはヘッドカバー内圧よりも大きい場合に、第2ブローバイガス還元通路からエンジン側への逆流を防止するものである。
【0033】
また、前記第2逆流防止手段は、第2ブローバイガス還元通路上に設けられていればその位置は限定されないが、第2ブローバイガス還元通路の入口付近に設けられていることが好ましい。
前記第2逆流防止手段がない場合には、スロットルバルブの下流側が正圧の場合に、シリンダーブロックやヘッドカバー内に逆流してブローバイガスの換気を十分に行うことができないおそれがある。また、シリンダーブロックとオイルパンにより形成されたクランクケース内の圧力が上昇することでオイル上がりが発生し、エンジンの耐久性を低下させる心配がある。
【0034】
また、前記ブローバイガス還元装置の前記第2ブローバイガス還元通路は、入口が前記第1ブローバイガス還元通路に接続されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、エンジンに設ける配管を少なくすることができ、製造工程や製造コストを低減することができる。
また、この場合には、前記P3がエンジン内の圧力よりも低い場合に、第1ブローバイガス還元通路、及び第2ブローバイガス還元通路を通じてブローバイガスをエンジンに還元することとなる。
【0035】
また、前記第2ブローバイガス還元通路は、前記第2逆流防止手段の上流にブローバイガス流量制限手段を備えることが好ましい(請求項3)。
この場合には、過剰なブローバイガスがエンジンへ還元されるのを防止することができる。
【0036】
前記ブローバイガス流量制限手段としては、ブローバイガス流量を制限できる手段であればいずれの手段を用いることもできるが、例えば、第2ブローバイガス通路を縮径することにより形成されるオリフィス等を適用することができる。
前記流量制限手段は、前記第2逆流防止手段に連続して設けてもよいし、間隔を空けて設けてもよい。
【0037】
また、前記第1逆流防止手段として、前記吸気バイパス通路に負圧を発生させるためのジェットポンプを備え、前記第1ブローバイガス還元通路の出口は、前記ジェットポンプを介して前記吸気バイパス通路に接続されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、第1ブローバイガス還元通路からエンジン側への逆流を防止するだけでなく、過給機の上流側と下流側との間で吸気に圧力差が生じる際のブローバイガス流量を増大させてエンジンへ還元することができる。
【0038】
前記ジェットポンプとしては、例えば、空気入口側に設けられたノズルと、空気出口側に設けられたディフューザと、前記ノズルとディフューザとの間に設けられた減圧室とを含む構成を有するものを用いることができる。そして、前記第1ブローバイガス還元通路の出口は、前記減圧室に接続される。
【0039】
そして、前記ジェットポンプは、ノズルから噴出される空気により減圧室に負圧を発生させる。すなわち、過給機の作動時に、コンプレッサにより吸気が昇圧されることにより、過給機の上流側と下流側との間で吸気に圧力差が生じる。このため、ジェットポンプのノズルとディフューザとの間には、吸気バイパス通路を通じて異なる吸気圧力が作用し、ノズルからディフューザへ向けて空気が噴出され、これによって減圧室に負圧が発生する。そして、減圧室の負圧が作用し、エンジンで発生するブローバイガスが第1ブローバイガス還元通路、ジェットポンプ、及び吸気バイパス通路を通じて吸気通路へ流れる。また、減圧室に負圧が発生することにより、吸気バイパス通路から第1ブローバイガス還元通路への流入を防止することができる。
【0040】
また、減圧室に発生する負圧の大きさは、過給機による過給圧の大きさによって変わるようになっている。つまり、過給機による過給圧が増大すると、それに応じて減圧室に発生する負圧が大きくなることから、エンジンから第1ブローバイガス還元通路へ流れるブローバイガス流量が増大し、吸気通路へ流れるブローバイガス流量が増大する。
【0041】
また、前記吸気バイパス通路は、開閉弁を備えることが好ましい(請求項5)。
この場合には、過給機の作動時に、開閉弁により吸気バイパス通路を開くことで、吸気バイパス通路に空気が流れる。開閉弁により弁を閉じることで、吸気バイパス通路の空気の流れが遮断される。そのため、必要に応じて、ブローバイガスを吸気バイパス通路へ選択的に流してエンジンへ還元することができる。
【0042】
また、前記第1ブローバイガス還元通路は、ブローバイガス流量調整弁を備えることが好ましい(請求項6)。
この場合には、第1ブローバイガス還元通路を流れるブローバイガスの流量を調整することができる。そのため、過剰なブローバイガスがエンジンへ還元されることを防止することができる。
【0043】
また、前記ブローバイガス還元装置は、新気を導入する新気導入路が前記シリンダーブロックあるいはヘッドカバーに接続されることが好ましい(請求項7)。
この場合には、クランクケース内あるいはヘッドカバー内の換気をより良好に行うことができ、ブローバイガスによるエンジンオイルの劣化の抑制効果を向上させることができる。
前記新気導入通路は、入口が過給機の上流で吸気通路に接続され、出口がシリンダーブロックあるいはヘッドカバーに接続されていることが好ましい。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
本例は、本発明のブローバイガス還元装置にかかる実施例について、図1を用いて説明する。図1は、本例のブローバイガス還元装置1を含むエンジンシステムを示す概略構成図である。
【0045】
図1に示すように、本例のブローバイガス還元装置1は、吸気通路2に、過給機21と、該過給機21の下流側に配設されたスロットルバルブ22とを備えるエンジン3に設けられ、前記エンジン3で発生するブローバイガスを前記吸気通路2に流して前記エンジン3へ還元するブローバイガス還元通路4を備える。
前記ブローバイガス還元装置1は、前記吸気通路2における前記過給機21の上流側と下流側を接続する吸気バイパス通路23を備える。
【0046】
前記ブローバイガス還元通路4は、第1ブローバイガス還元通路41と第2ブローバイガス還元通路42とからなり、前記第1ブローバイガス還元通路41は、入口がシリンダーブロック31あるいはヘッドカバー32に接続され、出口が前記吸気バイパス通路23に接続される。
前記第1ブローバイガス還元通路41あるいは吸気バイパス通路23は、前記第1ブローバイガス還元通路41から前記シリンダーブロック31あるいはヘッドカバー32への流入を禁止する第1逆流防止手段24を備える。
前記第2ブローバイガス還元通路42は、出口が前記スロットルバルブ22の下流にて前記吸気通路2に接続されると共に、前記第2ブローバイガス還元通路42から前記シリンダーブロック31あるいはヘッドカバー32への流入を禁止する第2逆流防止手段421を備える。
以下、これを詳説する。
【0047】
本例のブローバイガス還元装置1を含むエンジンシステムは、レシプロタイプのエンジン3を備える。図1に示すように、エンジン3は、シリンダーブロック31、シリンダーヘッド35、ヘッドカバー32、及びオイルパン36により構成される。また、エンジン3のシリンダーヘッド35の吸気ポート33には、吸気通路2が接続され、シリンダーヘッド35の排気ポート34には、排気通路71が接続される。また、吸気通路2の入口には、エアクリーナ25が設けられる。
【0048】
過給機21は、吸気通路2に配置され、吸気を昇圧させるためのコンプレッサ211と、排気通路71に配置されたタービン212と、コンプレッサ211とタービン212を一体回転可能に連結する回転軸213とを含む。
過給機21は、排気通路71を流れる排気ガスにより、タービン212を回転させて回転軸213を介してコンプレッサ211を一体回転させることにより、吸気通路2における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
そして、前記コンプレッサ211は、エアクリーナ25より下流に設けられる。
【0049】
排気通路71には、過給機21に隣接してタービン212を迂回する排気バイパス通路72が設けられる。この排気バイパス通路72には、ウエストゲートバルブ73が設けられる。ウエストゲートバルブ73は、ダイアフラム方式のアクチュエータ74により開度が調節されるようになっている。ウエストゲートバルブ73により排気バイパス通路71を流れる排気ガスが調節されることにより、タービン212に供給される排気ガス流量が調節され、タービン212及びコンプレッサ211の回転速度が調節され、過給機21による過給が調節されるようになっている。
【0050】
吸気通路2において、過給機21のコンプレッサ211とエンジン3との間には、インタークーラ26が設けられる。このインタークーラ26は、コンプレッサ211により昇圧された吸気を適温に冷却するためのものである。インタークーラ26とエンジン3との間の吸気通路2には、サージタンク27が設けられる。サージタンク27の上流側には、スロットルバルブ22が設けられる。
【0051】
吸気通路2における過給機21の上流側と下流側は、吸気バイパス通路23により接続される。すなわち、過給圧の高いコンプレッサ211の直近下流側の吸気通路2と、コンプレッサ211の上流側の吸気通路2との間には、コンプレッサ211を迂回した吸気バイパス通路23が設けられる。この吸気バイパス通路23には、第1逆流防止手段として、同通路を流れる空気により負圧を発生させるジェットポンプ24が設けられる。
【0052】
図2に、ジェットポンプ24の概略構成を断面図により示す。ジェットポンプ24は、空気入口側に設けられたノズル241と、空気出口側に設けられたディフューザ242と、ノズル241とディフューザ242との間に設けられた減圧室243とを含む。
そして、図1に示すように、ジェットポンプ24の減圧室243には、第1ブローバイガス還元通路41の出口が接続される。つまり、第1ブローバイガス還元通路41の出口が、ジェットポンプ24を介して吸気バイパス通路23に接続されている。また、第1ブローバイガス還元通路41の入口は、エンジン3のシリンダーブロック31に接続される。
【0053】
ジェットポンプ24は、吸気バイパス通路23から第1ブローバイガス還元通路41への流入を防ぎ、第1ブローバイガス還元通路41から前記シリンダーブロック31あるいはヘッドカバー32への流入を禁止する。
ジェットポンプ24は、ノズル241から噴出される空気により減圧室243に負圧を発生させる。すなわち、過給機21の作動時に、コンプレッサ211により吸気が昇圧されることにより、コンプレッサ211の上流側の吸気通路2と、コンプレッサ211の下流側の吸気通路2との間に吸気の圧力差が生じる。このため、ジェットポンプ24のノズル241とディフューザ242との間には、吸気バイパス通路23を通じて異なる吸気圧力が作用し、ノズル241からディフューザ242へ向けて空気が噴出され、これによって減圧室243に負圧が発生する。この負圧の大きさは、過給機21による過給圧の大きさによって変わるようになっている。
【0054】
そして、減圧室243に負圧が発生することにより、吸気バイパス通路23内の圧力がクランクケース39内の圧力よりも大きい場合であっても、第1ブローバイガス還元通路41から吸気バイパス通路23へのブローバイガスの導出のみが発生し、吸気バイパス通路23から第1ブローバイガス還元通路41への流入を防止することができる。また、減圧室243の負圧が作用して、エンジン3で発生するブローバイガスが第1ブローバイガス還元通路41、ジェットポンプ24、及び吸気バイパス通路23を通じて吸気通路2へ流れる。
【0055】
また、前記吸気通路2の前記スロットルバルブ22の下流には、第2ブローバイガス還元通路42の出口が接続される。この第2ブローバイガス還元通路42の入口は、エンジン3のシリンダーブロック31に接続される。また、前記第2ブローバイガス還元通路42から前記シリンダーブロック31あるいはヘッドカバー32への流入を禁止する第2逆流防止手段として逆止弁421を備える。
【0056】
図3に、逆止弁421の断面図を示す。図3(a)は、逆止弁421が閉じている状態を示し、図3(b)は、逆止弁421が開いている状態を示す。
逆止弁421は、弁体81がスプリング82によってシート面83方向に付勢されている。そして、サージタンク27の内圧がクランクケース39の内圧あるいはヘッドカバー32の内圧よりも大きい場合には、図3(a)に示すように、弁体81がシート面83に当接して閉弁し、サージタンク側口84からシリンダーブロック側口85への流れを遮断することにより、第2ブローバイガス還元通路からエンジン側への逆流を防止する。一方、サージタンク27の内圧がクランクケース39の内圧あるいはヘッドカバー32の内圧以下である場合には、弁体81がサージタンク側口85の方向に移動して開弁し、ブローバイガスを流入させる。
【0057】
また、逆止弁421の上流には、ブローバイガス流量制限手段としてオリフィス422が設けられており、第2ブローバイガス還元通路42へのブローバイガス流量を制限するようになっている。
【0058】
また、本実施例では、ヘッドカバー32の内部と、シリンダーブロック31とオイルパン36により形成されるクランクケース39の内部に新気を導入するための新気導入通路75が、エンジン3と吸気通路2との間に設けられる。
この新気導入通路75は、エアクリーナ25の下流で吸気通路2に接続され、その出口は、ヘッドカバー32に接続される。
なお、ヘッドカバー32の内部とクランクケース39の内部は、エンジン3に設けられた連絡路38を介して連通している。
【0059】
ここで、図4に、全運転領域(本実施例においては、エンジン回転数800〜3200rpm、3200rpm以上は同じ傾向につき省略)における、過給機21より上流側の吸気通路2内の圧力(P1)、過給機21の下流側からスロットルバルブ22までの吸気通路2内の圧力(P2)、及びスロットルバルブ22より下流側の吸気通路2内の圧力(P3)の関係を示す。図4は、横軸にスロットルバルブ22より下流側の吸気通路2内の圧力(P3)(kPa、ゲージ圧)をとり、縦軸に圧力(kPa、ゲージ圧)をとった。図4における直線はP3を示し、記号●はP1を示し、記号×はP2を示す。また、図4における位置Aはアイドル時を示し、領域Bはスロットル開度が小さい領域を示し、領域Cはスロットル開度が大きい領域を示す。
【0060】
図4から知られるように、前記ブローバイガス還元装置1において、過給機21より上流側の吸気通路2内の圧力(P1)は全運転領域で大気圧である。
そして、アイドル時には、コンプレッサ211の回転数が低いため、過給機21の下流側からスロットルバルブ22までの吸気通路2内の圧力(P2)は大気圧であり、スロットルバルブ22より下流側の吸気通路2内の圧力(P3)は負圧となる。つまり、アイドル時には、P1=P2>P3となる。
【0061】
また、スロットル開度が小さい時には、コンプレッサ211の回転数が上昇し、P2は上昇して正圧となるが、P3は負圧の状態である。つまり、スロットル開度が小さい時には、P2>P1>P3となる。
【0062】
また、スロットル開度が大きい時には、コンプレッサ211の回転数が上昇し、P2は更に上昇し、P3は正圧となってP1よりも大きくなりP2とほとんど同等となる。つまり、スロットル開度が大きい時には、P2≧P3>P1となる。
【0063】
そして、本例のブローバイガス還元装置1によれば、前記アイドル時(P1=P2>P3)には、サージタンク27に発生する負圧(P3)が第2ブローバイガス還元通路42に作用し、エンジン3の燃焼室37からクランクケース31内部へ漏れ出したブローバイガスが、第2ブローバイガス還元通路42を通じて吸気通路2に設けられたサージタンク27へ流される。つまり、アイドル時には、第2ブローバイガス還元通路42を通じてブローバイガスをエンジン3に還元することができる。
【0064】
また、このとき、エンジン3から第2ブローバイガス還元通路42へ流れるブローバイガス流量は、オリフィス422により制限される。
また、アイドル時にはP1とP2との間に圧力差がないため、吸気バイパス通路23に流量は発生せず、第1ブローバイガス還元通路41を通じた還元は行われない。
【0065】
また、前記スロットル開度が小さい場合(P2>P1>P3)には、アイドル時と同様に、P3が第2ブローバイガス還元通路42に作用し、エンジン3のブローバイガスが、第2ブローバイガス還元通路42を通じて吸気通路2に設けられたサージタンク27へ流される。
【0066】
また、吸気通路2における過給機21の上流側と下流側との間で吸気に圧力差(P2>P1)が生じ、吸気バイパス通路23の両端の間にも圧力差が生じる。この圧力差によって吸気バイパス通路23に空気が流れ、その空気流によって、エンジン3で発生するブローバイガスが第1ブローバイガス還元通路41、及び吸気バイパス通路23を通じて吸気通路2へ導出される。
【0067】
なお、本実施例においては、前記吸気バイパス通路23にジェットポンプ24が設けられている。そのため、吸気バイパス通路23に流れる空気の空気量によってジェットポンプ24の減圧室243に負圧が発生する。従って、第1ブローバイガス還元通路41の出口にはジェットポンプ24による負圧が作用し、クランクケース31の内部に溜まったブローバイガスが、効率的に、第1ブローバイガス還元通路41、ジェットポンプ24、及び吸気バイパス通路23を通じて吸気通路2へ導出される。
【0068】
そして、吸気通路2へ流れたブローバイガスは、コンプレッサ211及び吸気通路2等を経由してエンジン3の燃焼室37へと還元される。
つまり、スロット開度が小さい時には、第1ブローバイガス還元通路41、及び第2ブローバイガス還元通路42を通じてブローバイガスをエンジン3へ還元することができる。
【0069】
また、過給機21による過給圧が増大すると、それに応じて過給機21の上流側と下流側の圧力差が大きくなることから、エンジン3から第1ブローバイガス還元通路41へ流れるブローバイガス流量が増大し、吸気通路2へ流れるブローバイガス流量が増大する。
また、過給機21の上流側と下流側の圧力差が大きくなると、それに応じてジェットポンプ24により発生する負圧が大きくなり、吸気通路2へ流れるブローバイガス流量が増大する。
【0070】
また、前記吸気バイパス通路23は、吸気通路2の一部を迂回して設けられるので、吸気バイパス通路23が吸気通路2の吸気抵抗に影響を与えることがない。このため、過給機21の作動時に吸気通路2の吸気抵抗を増やすことなくブローバイガスを燃焼室37へ還元することができると共に、過給圧の増大に応じてブローバイガス還元流量を増大させることができる。
また、このとき、吸気バイパス通路23の内圧は、クランクケース31の内圧及びヘッドカバー32の内圧よりも大きくなるが、吸気バイパス通路23に設けられた第1逆流防止手段(ジェットポンプ)24により、エンジン3側への逆流を防止することができる。つまり、減圧室243に発生する負圧により、第1ブローバイガス還元通路41から吸気バイパス通路23へのブローバイガスの導出のみが発生し、吸気バイパス通路23から第1ブローバイガス還元通路41への流入を防止することができる。
【0071】
また、スロットル開度が大きい場合(P2≧P3>P1)には、前記スロットル開度が小さい場合と同様に、吸気通路2における過給機21の上流側と下流側との間で吸気に圧力差(P2>P1)が生じ、吸気バイパス通路23の両端の間にも圧力差が生じる。この圧力差によって吸気バイパス通路23に空気が流れ、その空気流によってエンジン3で発生するブローバイガスが第1ブローバイガス還元通路41、及び吸気バイパス通路23を通じて吸気通路2へ流される。
【0072】
このとき、P3は正圧になるが、第2ブローバイガス還元通路42に設けられた第2逆流防止手段(逆止弁)421により、エンジン3側への逆流を防止することができる。
つまり、スロットル開度が大きい時には、第1ブローバイガス還元通路41を通じてブローバイガスをエンジン3へ還元することができる。
【0073】
このように、本実施例によれば、アイドル時、スロットル開度が小さい時、スロットル開度が大きい時のいずれの場合においても、ブローバイガスをエンジン3へ還元することができる。つまり、ブローバイガス還元通路4の吸気通路2側出口の圧力がクランクケース39内圧あるいはヘッドカバー32内圧より高い場合でも、吸気通路2側からエンジン3側への流入を防止し、全運転領域においてクランクケース31内及びヘッドカバー内32の換気を良好に行うことができるブローバイガス還元装置1を提供できることが分かる。
なお、本例においては、第1逆流防止手段として吸気バイパス通路23にジェットポンプ24を設けたが、必ずしもジェットポンプである必要はなく、逆止弁等を設ける構成としてももちろんよい。
【0074】
(実施例2)
本実施例は、図5に示すように、実施例1におけるブローバイガス還元通路4を、第1ブローバイガス還元通路51と、出口が第1ブローバイガス還元通路51に接続された構成を有する第2ブローバイガス還元通路52とからなるブローバイガス還元通路5に変更したブローバイガス還元装置102である。第2ブローバイガス還元通路52は、第2ブローバイガス還元通路52から前記第1ブローバイガス還元通路51への流入を禁止する第2逆流防止手段として逆止弁521を備える。また、逆止弁521の上流には、ブローバイガス流量制限手段としてオリフィス522が設けられており、第2ブローバイガス還元通路52へのブローバイガス流量を制限するようになっている。その他の構成は、前記実施例1と同様である。
【0075】
本例のブローバイガス還元装置102は、エンジン3に設ける配管を少なくすることができ、製造工程や製造コストを低減することができる。その他は、実施例1と同様の作用効果を得られる。
【0076】
また、この場合には、サージタンク27に発生する負圧(P3)がエンジン3内の圧力よりも低い場合(アイドル時、及びスロットル開度が小さい場合)に、第1ブローバイガス還元通路41の一部、及び第2ブローバイガス還元通路42を経由してブローバイガスをエンジン3に還元することとなる。
【0077】
また、図6に、本実施例のブローバイガス還元装置102によるブローバイガス流量特性を示す。図6は、横軸にスロットルバルブ22の下流側の吸気通路内圧力(P3)(kPa、ゲージ圧)をとり、縦軸に流量(L/min)をとった。図4において、曲線Xはブローバイガス発生量を示し、曲線Yは第1ブローバイガス還元通路51と第2ブローバイガス還元通路52によるブローバイガス還元流量を示し、曲線Zは第1ブローバイガス還元通路51によるブローバイガス還元流量を示す。そして、領域S(斜線部)は新気導入通路75による新気の換気流量を示す。
【0078】
図6より知られるように、アイドル時及びスロットル開度が小の時、すなわち吸気圧力が「−60〜0(kPa)」となる間は、第1ブローバイガス還元通路51及び第2ブローバイガス還元通路52によって換気が行われ、スロットル開度が大の時、すなわち吸気圧力が「0〜60(kPa)」となる間は、第1ブローバイガス還元通路51を通じて換気が行われる。
【0079】
図6からも明らかなように、本例のブローバイガス還元装置102によれば、アイドル時、スロットル開度が小の時、及びスロットル開度が大の時、つまり、全運転領域において、クランクケース内31及びヘッドカバー内32のブローバイガスの排出と換気を行うことができることが分かる。
また、過給圧が大きくなると共に、ブローバイガス還元流量が増大していることが分かる。
なお、前記実施例1のブローバイガス還元装置1でも同様のブローバイガス流量特性が得られる。
【0080】
(実施例3)
本実施例は、図7に示すように、前記実施例2における吸気バイパス通路23に、バキューム・スイッチング・バルブ(VSV)61を設け、このVSV61を電子制御装置(ECU)62によりエンジン3の状態に応じて制御するように構成したブローバイガス還元装置103である。その他の構成は、前記実施例2と同様の構成を有する。
【0081】
ここで、ECU62は、エンジン3に設けられた各種センサ(図示略)からエンジン回転速度及び吸気圧力等の検出値を入力し、それら検出値に基づいてVSV61を制御するようになっている。本実施例において、VSV61は、本発明の開閉弁に相当する。
【0082】
図8に、ECU62が実行する制御プログラムをフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、ECU62は、まずステップ100(S100)で、エンジン始動後に所定時間経過したか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、エンジン3の暖機完了前であるとして、ECU62は、ステップ130(S130)でVSV61を閉じる。この結果、VSV61により吸気バイパス通路23が閉じられ、同通路23の空気流が遮断され、ジェットポンプ24による負圧が発生しなくなる。
【0083】
一方、ステップ100(S100)の判断結果が肯定となる場合には、ECU62は、ステップ110(S110)で、吸気圧力が所定値以上か否かを判断する。この結果が否定となる場合には、エンジン3の暖機完了後に過給機21が非作動であるとして、ECU62は前記と同様にステップ130(S130)で、前記と同様にVSV61を閉じる。
【0084】
一方、ステップ110(S110)の判断結果が肯定となる場合は、エンジン3の暖機終了後に過給機21が作動しているとして、ECU62が、ステップ120(S120)でVSV61を開く。この結果、VSV61により吸気バイパス通路23が開かれ、吸気バイパス通路23に過給圧に応じて空気が流れ、ジェットポンプ24には過給圧の大きさに応じて負圧が発生する。これにより、クランクケース31からは、過給圧の大きさに応じて第1ブローバイガス還元通路41へブローバイガスが排出され、そのブローバイガスがジェットポンプ24、吸気バイパス通路23、及び吸気通路2を通じて燃焼室37へと還元される。
【0085】
従って、本実施例では、エンジン3の運転状態に応じてVSV61により吸気バイパス通路23を開くことで、吸気バイパス通路23に空気が流れてジェットポンプ24により負圧が発生する。一方、エンジン3の運転状態に応じてVSV61により吸気バイパス通路23を閉じることで、吸気バイパス通路23における吸気の流れが遮断され、ジェットポンプ24に負圧が発生しなくなる。このため、エンジン3の運転状態に応じて、すなわち、必要に応じて、ブローバイガスをクランクケース31から第1ブローバイガス還元通路41を通じて吸気バイパス通路23へ選択的に流して燃焼室37へ還元することができる。その他は、実施例2と同様の作用効果を得られる。
【0086】
(実施例4)
本実施例は、図9に示すごとく、前記実施例1の第1ブローバイガス還元通路にPCVバルブ411を設ける構成としたブローバイガス還元装置104である。その他の構成は実施例1と同様である。
本実施例のブローバイガス還元装置104は、クランクケース31において、第1ブローバイガス還元通路41の入口に、ブローバイガス流量調整弁としてPCVバルブ411が設けられている。
【0087】
そのため、PCVバルブ411により第1ブローバイガス還元通路41へ流れるブローバイガス流量を適量に調整することができ、第1ブローバイガス還元通路41を通じて過剰なブローバイガスが燃焼室37へ還元するのを防止することができる。その他は、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0088】
1 ブローバイガス還元装置
2 吸気通路
21 過給機
22 スロットルバルブ
23 吸気バイパス通路
24 第1逆流防止手段(ジェットポンプ)
3 エンジン
31 シリンダーブロック
32 ヘッドカバー
4 ブローバイガス還元通路
41 第1ブローバイガス還元通路
42 第2ブローバイガス還元通路
421 第2逆流防止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路に、過給機と、該過給機の下流側に配設されたスロットルバルブとを備えるエンジンに設けられ、前記エンジンで発生するブローバイガスを前記吸気通路に流して前記エンジンへ還元するブローバイガス還元通路を備えた過給機付エンジンのブローバイガス還元装置であって、
前記ブローバイガス還元装置は、前記吸気通路における前記過給機の上流側と下流側を接続する吸気バイパス通路を備え、
前記ブローバイガス還元通路は、第1ブローバイガス還元通路と第2ブローバイガス還元通路とからなり、
前記第1ブローバイガス還元通路は、入口がシリンダーブロックあるいはヘッドカバーに接続され、出口が前記吸気バイパス通路に接続され、
前記第1ブローバイガス還元通路あるいは吸気バイパス通路は、前記第1ブローバイガス還元通路から前記シリンダーブロックあるいはヘッドカバーへの流入を禁止する第1逆流防止手段を備え、
前記第2ブローバイガス還元通路は、出口が前記スロットルバルブの下流にて前記吸気通路に接続されると共に、前記第2ブローバイガス還元通路から前記シリンダーブロックあるいはヘッドカバーへの流入を禁止する第2逆流防止手段を備えることを特徴とするブローバイガス還元装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第2ブローバイガス還元通路は、入口が前記第1ブローバイガス還元通路に接続されていることを特徴とするブローバイガス還元装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記第2ブローバイガス還元通路は、前記第2逆流防止手段の上流にブローバイガス流量制限手段を備えることを特徴とするブローバイガス還元装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記第1逆流防止手段として、前記吸気バイパス通路に負圧を発生させるためのジェットポンプを備え、前記第1ブローバイガス還元通路の出口は、前記ジェットポンプを介して前記吸気バイパス通路に接続されていることを特徴とするブローバイガス還元装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記吸気バイパス通路は、開閉弁を備えることを特徴とするブローバイガス還元装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、前記第1ブローバイガス還元通路は、ブローバイガス流量調整弁を備えることを特徴とするブローバイガス還元装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、前記ブローバイガス還元装置は、新気を導入する新気導入路が前記シリンダーブロックあるいはヘッドカバーに接続されることを特徴とするブローバイガス還元装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−94557(P2011−94557A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250541(P2009−250541)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】