説明

プライバシーフィルムの製造方法

プライバシーフィルムの製造方法は、一般に、高分子材料を提供する工程と、高分子材料を、特定の幾何学形状をもつほぼ平行な細長い複数のチャネルを含む微細構造の金型上に堆積させる工程と、高分子材料を微細構造の金型のチャネルに流れ込むように誘導する工程と、チャネルの内側で高分子材料を固化させて、高分子ベースシートによって互いに連結された複数の光誘導要素を得る工程と、微細構造の金型からプライバシーフィルムを引き離す工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライバシーフィルムに関する。詳細には、本発明は、複数の光誘導要素を有する高分子系プライバシーフィルムであって、各要素が隣接した光誘導要素にほぼ平行に配置されており、該フィルムが文書とともに使用するのに非常に適しているプライバシーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
消費者にプライバシーを提供できる製品が増加している。例えば、今日では、ほとんどのパーソナルコンピュータ及び現金自動預払機が、ユーザにはモニタ上のイメージが見えるようにしながら、同時に第三者又は少なくともスクリーンの視角内にいない人の視界は制限する、プライバシースクリーンを含むことが、ごく一般的である。一部のものは、機密内容を含む文書をもつユーザにプライバシーを提供するために光制御フィルムを使用してきた。その発想は、ユーザは文書上のイメージを見ることができるが、第三者は文書の中身を見るのを制限されているという点で似ている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
当該技術では、やはりユーザにプライバシーを提供する目的を果たす、様々な光制御フィルムが開示されている。しかし、文書プライバシーがますますユーザの望むものとなっているので、当該技術分野の技術者は、この所望の特徴を提供するための異なる解決策を求めている。ゆえに、新しいプライバシーフィルム構造が引き続き必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、見る人が文書上の情報を読み取ることのできる角度を制限するために文書とともに使用できるプライバシーフィルムを提供する。詳細には、視角がユーザの視線と一致するようにプライバシーフィルムが使用時の向きに置かれるときには、ユーザは、文書の中身を見ることができるが、他者は、文書の中身を限られた視界でしか見られない。
【0005】
一態様では、本発明は、光透過性の高分子ベースシートを含むプライバシーフィルムであって、該ベースシートは、(i)第1高分子材料を含んでおり、該ベースシートは、対向する第1及び第2表面を有しており、該ベースシートは、さらに、(ii)第2高分子材料を含む複数の光誘導要素を含んでおり、各要素は、基部と、高さhと、高さに沿って配置された副軸とを有しており、該要素は、ベースシートの第1表面から突き出ており、各要素は、1つの要素の副軸が隣接した要素の副軸にほぼ平行となり、且つ1つの要素の基部が隣接要素の基部と接合しないように配置される、プライバシーフィルムに関する。他の態様では、プライバシーフィルムは細長い光誘導要素を含む。
【0006】
他の態様では、本発明は、プライバシーフィルムの製造方法であって、(i)高分子材料を提供する工程と;(ii)高分子材料を、ほぼ平行な細長い複数のチャネルを含む微細構造の金型上に堆積させる工程とを含んでおり、各チャネルは、傾斜し、ランド領域によって隣のチャネルから隔てられており、各チャネルは、ランド領域に隣接して配置された基部と、ランド領域から遠位にある先端部とを有しており、各チャネルは、基部から先端部まで走る副軸を有しており、前記方法は、さらに、(iii)高分子材料を微細構造の金型のチャネルに流れ込むように誘導する工程と、(iv)チャネルの内側で高分子材料を固化させて、光誘導要素がそこから突き出る第1の表面と、対向するほぼ平坦な第2の表面とを有する高分子ベースシートによって互いに連結された、複数の光誘導要素を得る工程と、(iv)微細構造の金型からプライバシーフィルムを引き離す工程とを含む方法に関する。
【0007】
本明細書で使用するとき、用語「光透過性」は、可視光線を透過させる能力を意味する。一実施形態では、光透過性ベースシートは、バージニア州レストン(Reston)のハンター・アソシエイツ・ラボラトリー(Hunter Associates Laboratory, Inc.)から市販されている、ハンターラボ・マスター・カラー・データ・プログラム(HuterLab Master Color Data Program)を備えたラボ・スキャン6000テスター(Lab Scan 6000 Tester)を使用して測定される、90以下の不透明度を有する。光誘導要素に関して、用語「細長い」は、一般に、要素がレール状の外観を有することを意味する。レールは、プライバシーフィルムの長さ全体に沿って連続的であることもでき、又は不連続であることもできる。一実施形態では、不連続な光誘導要素は、例えば、キノコの茎部など、茎部の外観を有する個々の物体である。
【0008】
本発明の1つの利点は、本発明が、プライバシー機構に比較的製造が容易な可撓性構造を与えることである。プライバシーフィルムは、非永久的な方式で文書に迅速に取り付けることができる。さらに、プライバシーフィルムは、繰り返し使用できるように耐久性がある。
【0009】
本文書では、用語「約」は、すべての数値を修飾するものと見なされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、機密情報を含む可能性のある基材50上に配置された細長い光誘導要素18を有するプライバシーフィルム10を示す、本発明の代表的な一実施形態の斜視図である。一実施形態では、プライバシーフィルムは、光透過性接着剤(図示せず)を使用して取り付けることができる。要素は、主軸Lと、副軸lとを有する。代表的な1つの基材は、文書の所有者が制限されたビューイングアクセスを望む秘密情報を含む文書である。
【0011】
使用に際しては、本発明のプライバシーフィルムは、主軸Lが文書上のイメージ又はテキスト行にほぼ平行になるように、文書上に配置される。例えば、縦向きの21.6cm(8と1/2インチ)×28cm(11インチ)の紙で、テキストが紙の21.6cm(8と1/2インチ)側にほぼ平行に位置する場合、プライバシーフィルムは、主軸がやはり同じ方向に沿った位置にくるような向きに置かれる。プライバシーフィルムは、文書上に一時的に配置することもでき、すなわち、基材に損傷を与えることなくフィルムを基材から除去することができ、又は文書上に永久的に配置することもできる、すなわち、プライバシーフィルムの除去がたいていの場合文書に損傷を与えることになる。プライバシーフィルムを文書に取り付ける又は配置する、様々な手段が存在する。例えば、接着剤を使用することができる。接着剤は、感圧性又はホットメルトであることができる。接着剤は、再配置可能(repositionable)な接着剤であることができ、すなわち、基材に損傷を与えることなく、且つ再配置可能な接着剤の接着力の大幅な低下なしに、該接着剤を何度も基材に適用し、除去することができる。他の応用例では、プライバシーフィルムは、ポケットとして形成され、その場合、該プライバシーフィルムが前面を形成し、高分子裏材又はプライバシーフィルムが後面を形成し、プライバシーフィルム及び裏材が、文書の挿入及び除去のために、第4側部、通常は上側を開けたままにして、3つの側部に取り付けられる。他の構成を使用することができる。
【0012】
光誘導要素は、光の透過に干渉し、それによって本発明のフィルムのプライバシー特徴をもたらす。光反射及び/又は光吸収材料など、光学的に活性な材料を含めてよい。光誘導要素の幾何学形状、間隔、及び光学的に活性な材料については、以下で詳細に論じる。
【0013】
代表的な一実施形態では、光誘導要素の高さは、プライバシーフィルム上でほぼ同一である。製造条件により、要素の高さにはいくらかばらつきがある場合がある。他の代表的な実施形態では、要素の高さは、プライバシーフィルムの領域によって異なり、場合によっては隣り合う要素で異なる。高さのばらつきとは、一般に、ある要素の高さが別の要素の75%〜95%であることを意味する。図3は、様々な高さをもつ光反射要素を有する実施形態を大まかに示す。
【0014】
図2は、線2−2に沿った図1のプライバシーフィルムの断面を示す。プライバシーフィルムは、対向する第1表面14及び第2表面16と、境界線13とを有する、ベースシート12を含む。光誘導要素18は、ベースシートの第1表面から突き出る。図2は、境界線13が第1表面14と同一直線上にある様子を示しているが、該境界線は、異なる場所にあることもできる。各光誘導要素は、高さhと、幅Wと、ある要素から隣接要素までの中心間間隔Pとを有する。高さhは、副軸lに沿ってベースシートの第1表面14から先端部20まで測定される。幅Wは、副軸に垂直に測定される。
【0015】
代表的な一実施形態では、hとPとの比(h:P)は、0.5よりも大きい。他の実施形態では、h:P比は、5未満である。一実施形態では、ベースシートの第1表面の近位で測定される光誘導要素の幅は、25ミクロンよりも大きい。他の実施形態では、幅は、750ミクロン未満である。図2の実施形態では、光誘導要素は、ベースシート上にカント角θで配置される。カント角は、第1表面14と各光誘導要素の副軸との間の角度である。一実施形態では、カント角は、15°よりも大きい。他の実施形態では、カント角は、90°未満である。さらに他の実施形態では、カント角は、40°〜85°にわたる。さらに他の実施形態では、カント角は、55°〜75°にわたる。望むなら、基材に取り付けるために、接着剤22がベースシートの第2表面上に与えられる。この特定の実施形態の光誘導要素は、その断面寸法がほぼ一様であるが、先端部20に向かって要素にわずかなドラフト(draft)(すなわち、わずかな狭まり)を与えることができる。また、図2に示されるように、隣接した2つの光誘導要素の設置は、ベースシートの第1表面に垂直な想像線(破線Nとして示される)に沿って得られる、ある要素の先端部が、隣の要素の基部(参照文字bとして示される)の隣に位置するようなものである。光誘導要素がプライバシー機構を提供する限り、またh:P比が確定された範囲内に入るのであれば、他の設置構成を使用することができる。この特定の実施形態では、光誘導要素には、光吸収材料又は光反射材料が含まれる。
【0016】
好適な光反射材料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ、酸化アンチモン、硫酸バリウム、リトペン(lithopene)(硫酸バリウムと酸化亜鉛との共沈物)、焼成カオリン、炭酸鉛、酸化マグネシウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適な光吸収材料としては、例えば、カーボンブラック、スピネルブラック、ルチルブラック、鉄黒、及びそれらの組み合わせが挙げられる。光反射材料が使用されるときには、光誘導要素を形成するために、合計100重量部を基準に1〜50重量部がポリマー樹脂に添加される。一部の実施形態では、1〜15重量部が使用される。他の実施形態では、2〜10重量部が使用される。光吸収材料が使用されるときには、光誘導要素を形成するために、合計100重量部を基準に0.1〜50重量部がポリマー樹脂に添加される。一部の実施形態では、1〜15重量部の光吸収材料が使用される。他の実施形態では、1〜5重量部が使用される。光反射材料と光吸収材料との組み合わせを使用して、個々の光誘導要素を形成することができ、それについてはさらに後述する。他の実施形態では、着色顔料、蛍光カラー(fluorescent colors)、及びグリッタを光誘導要素に添加することができる。
【0017】
図3は、プライバシーフィルム100が、対向する第1表面114と第2表面116とを有するベースシート112を含む、本発明の他の実施形態の断面図を示す。光誘導要素118は、ベースシートの第1表面から突き出る。境界線113は、わずかに光誘導要素内にある。この特定の実施形態では、光誘導要素は、ベースシートの第1表面から遠位に配置された第1の部分119と、第1表面の近位に配置された第2部分117と、第1表面から線113までの第3の部分とを含む。一部の実施形態では、ベースシート及び第3部分の組成物は、類似であり、場合によっては同一のこともある。線115は、第1部分と第2部分との境界を定める。第1部分は、光吸収材料を含み、第2部分は、光反射材料を含む。第1部分の高さは、l119として示され、要素の副軸に沿った線115と先端部との間の距離である。第2部分の高さは、l117として示され、要素の副軸に沿った線113と115との間の距離である。一実施形態では、l117に対するl119の比率は、3〜0.1である。隣接した2つの光誘導要素の設置は、想像線Nに沿って得られる、ある要素の先端部が、隣接要素の基部に重なるようなものである。図2の光誘導要素は、ほぼまっすぐな縁部を有する先端部を含むが、先端部は、図3に示されるように丸みを帯びたものにすることもできる。光誘導要素が光の透過に干渉してプライバシー機構を提供するのであれば、他の幾何学形状を使用することができる。
【0018】
図4は、プライバシーフィルム200が、対向する第1表面214と、第2表面216と、境界線213とを有するベースシート212を含む、本発明の他の実施形態の断面図を示す。光誘導要素218は、第1表面から突き出る。光誘導要素の先端部には、光吸収コーティング219が適用されている。コーティングは、光誘導要素の側部を下方に移動することがある。この特定の実施形態では、光誘導要素に光反射材料を含めることができる。コーティングは、公知のコーティング技術を使用して要素に適用することができる。一実施形態では、コーティングは、乾燥厚さが0.01〜1.0mmである。一実施形態では、光吸収コーティングは、インクジェット印刷、カラーインクジェット印刷、レーザ印刷、及び染料若しくは物質移動印刷などのデジタル印刷方法を使用して、又は、オフセットリソグラフィ、フレキソグラフィ、及びグラビアなどの従来の印刷技術によって、先端部に適用される。要素の先端部は、印刷プロセスで使用されるインク又は染料を受容する。
【0019】
図5は、プライバシーフィルム300が、対向する第1表面314と第2表面316とを有するベースシート312を含む、本発明の他の実施形態の断面図を示す。光誘導要素318は、ベースシートの第1表面から突き出る。理解を容易にするために、5つの光誘導要素の断面だけが示されている。この特定の実施形態では、各光誘導要素のカント角は、隣接要素とは異なる。例えば、カント角θは、カント角θと同様である。例えば、θは、90°であってよく、他方、θは、88°であってよい。ゆえに、これら2つの光誘導要素は、互いにほぼ平行である。ただし、第5光誘導要素のカント角θは、第1光誘導要素のカント角とは全く異なるものであってよい。この図では、θが90°の場合、θは、60°であってよく、その結果、第1光誘導要素は、第5光誘導要素に平行とは見なされない。カント角の様々な変化の大きさは、この図では様々なカント角を示すために誇張されている。
【0020】
図6は、プライバシーフィルム400が、対向する第1表面414と、第2表面416と、境界線413とを有するベースシート412を含む、本発明のさらに他の実施形態の断面図を示す。光誘導要素418は、第1表面から突き出る。各光誘導要素は、ベースシートの第1表面から遠位にある第1部分419と、第1表面の近位にある第2部分417とを有する。線415は、第1部分と第2部分との境界を定める。線413は、第2部分と第3部分との境界を定める。第1部分は、上下逆さまの「L」に似た、片側の拡張部を有する。拡張部は、すべて同じ側にあることもでき、例えば、すべて左向き若しくはすべて右向き(図に示されるように)であることもでき、又は、左向きと右向きとを交互に繰り返すこともできる。拡張部は、また、ランダムに左若しくは右に向くこともでき、又は左側と右側の間の任意の角度を向くこともできる。換言すれば、見られるものが第1部分419だけとなるように図6の実施形態の上面を見た場合、該第1部分を360°軌道に沿った様々な角度のいずれかで回転させることができる。一実施形態では、第1及び第2部分の少なくとも1つは、光反射材料を含む。他の実施形態では、第1部分は、光吸収材料を含み、第2部分は、光反射材料を含む。さらに他の実施形態では、プライバシーフィルムを形成するために、例えば、図2、図3、及び図6に示される要素など、異なる光誘導要素の組み合わせが併せて使用される。
【0021】
図1は、光誘導要素を、文書の長さに沿って連続的に走る細長いレールとして示す。他の実施形態では、要素は、一様なインタラプションを作り出すために指定された長さのインタラプションを含むこともでき、又は非一様なインタラプションを作り出すためにランダムな長さのインタラプションを含むこともできる。様々なすべての要素の中には、基材全体の長さにわたって連続的な光誘導要素が存在し得る。例えば、図7は、基材550上に配置された例示的なプライバシーフィルム500を示す。プライバシーフィルムは、左側に一様なインタラプションを有し、右側に非一様なインタラプションを有する、光誘導要素518を含む。間には、フィルムの長さ全体にわたって連続的な光誘導要素が点在している。
【0022】
ベースシートは、すべての実施形態で光透過性であるが、光反射材料を含んでもよい。ベースシートで使用される光反射材料の量は、光誘導要素で使用される量に類似したものであることができるが、必ずしもその必要はない。類似した量を使用する利点は、さらに後述するように、プライバシーフィルムの製造プロセスを、多数の押出成形機ではなく単一の押出成形機の使用に簡略化できることである。ほぼ同量が使用される場合、下に存在する文書の可読性に悪影響を与えることなくフィルムにプライバシー特徴を付与するのに十分な量を選択するように注意を払うべきである。
【0023】
プライバシーフィルムを形成する際に使用するのに好適な材料としては、熱可塑性ポリマー及びエラストマーが挙げられる。好適な熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン若しくはポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアセテートコポリマー、アクリレート修飾されたエチレンビニルアセテートポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、ナイロン、ポリ塩化ビニル、及びポリケトン若しくはポリメチルペンタン(polymethylpentanes)などのエンジニアリングポリマーが挙げられる。好適なエラストマーとしては、例えば、天然若しくは合成ゴム、イソプレンを含有するスチレンブロックコポリマー、ブタジエン、又はエチレン(ブチレン)ブロック、メタロセン触媒作用を受けたポリオレフィン、ポリウレタン、及びポリジオルガノシロキサンが挙げられる。また、熱可塑性ポリマーとエラストマーとの混合物を使用してもよい。
【0024】
本発明の光誘導要素は、様々な方法で作製することができる。代表的な第1方法では、本発明のプライバシーフィルムを、例えば放電機械加工によって、開口切削部を有するダイを通じて高分子ウェブを押し出すことによって形成することができる。ウェブは、ベースシートと、その上に配置された光誘導要素とを含むことになる。
【0025】
ダイ開口部の形状は、所望の断面形状又は輪郭をもつウェブを生み出すように設計される。ウェブは、ダイ開口部を離れた後、それを水などのクエンチング材料に通して引くことによって急冷することができる。光誘導要素間のスペースを含め、押し出されたウェブの表面全体を濡らすために、湿潤剤をクエンチング媒体に添加してもよい。押し出されたウェブは、例えば、光吸収コーティングを要素の先端部に適用することによって(図4に示されるように)、又は押し出された要素を切断し、ウェブを引き伸ばして不連続な光誘導要素を形成することによって、さらに処理されてよい。
【0026】
ベースシートと光誘導要素とが異なる材料製であるときのように、又は光誘導要素が多数の部分を含むとき(例えば、図3及び図6参照)のように、本発明のプライバシーフィルムが多数の異なる層を含むときには、該フィルムを、例えば、PCT出願第WO99/17630号に記載の共押出技術によって形成することができる。共押出技術は、異なる押出成形機からの異なる溶融物の流れを多マニホールドダイ又は多層フィードブロック及びフィルムダイへと通すことを伴うものであってよい。個々の流れはフィードブロック中で融合し、そして積層としてダイの中に入り、これは、材料がダイを離れるときには流出して多層シートになる。
【0027】
プライバシーフィルムを製造する代表的な第2方法が、図8a、8b、及び8cに概略的に示されている。図8aに描かれた方法では、高分子材料801及び微細構造の金型800が提供される。微細構造の金型は、複数の細長い傾斜したチャネル808を含んでおり、各チャネルは、ランド領域806によって隣から隔てられている。各チャネルは、ランド領域に隣接して配置された基部808a(理解を容易にするために、1つのチャネル上に点線で示されている)と、ランド領域から遠位に配置された先端部808bとを有する。この実施形態では、チャネルは、先端部に明確な鋭い縁部をもつほぼ直線状の壁を有することができる。各チャネルは、基部から先端部まで走る副軸lを含む。各チャネルは、15°よりも大きく90°よりも小さい角度で傾斜している。他の実施形態では、各チャネルは、40°よりも大きく85°よりも小さい角度で傾斜している。さらに他の実施形態では、各チャネルは、55°よりも大きく75°よりも小さい角度で傾斜している。その角度は、チャネルの副軸とランド領域の平面内の線とが交差する間に形成される。図2で論じた光誘導要素と同様に、金型内の各チャネルは、副軸に沿ってその基部からその先端部まで測定される高さhを有する。隣接した2つのチャネルは、中心間間隔Pを有する。一実施形態では、金型は、Pに対するhの比率が0.5〜5である。
【0028】
隣接した2つのチャネルは、ランド領域に垂直な想像線から見たときに一方のチャネルの先端部が隣のチャネルの基部と一致するように置かれる。この特徴は、図2に示されるものに類似である。代替的な実施形態では、2つのチャネルは、想像線から見たときに一方のチャネルの先端部が隣のチャネルの基部に重なるように置かれる。高分子材料は、微細構造の金型上に堆積される。図8aは、また、プランジャ804を用いて、高分子材料が微細構造の金型のチャネル内へと熱及び/又は圧力を用いて誘導される様子を概略的に示す。
【0029】
図8bは、高分子材料がチャネルに流れ込んで該チャネルを満たし、それによってチャネルの形状を複製している、プロセスの後続の工程を示す。複製された高分子材料は、金型内で固化する。用語「固化する」は、一般に、高分子材料が冷えて、金型から引き離せるほど十分に固まることを意味する。1つのプロセスでは、高分子材料には、以上で列挙したような光反射材料が含まれる。使用されるときには、光反射材料は、高分子材料の総重量の20%未満、実施形態によっては5%未満を構成する。
【0030】
図8cは、複製された高分子材料が金型から引き離されて、別個の複数の光誘導要素818を有するプライバシーフィルム810をもたらしている、プロセスのさらに他の工程を示しており、各光誘導要素は、光誘導要素がそこから突き出る第1表面812aと、対向するほぼ平坦な第2表面812bとを有する、高分子ベースシート812によって他のものに連結される。引き離す工程は、プライバシーフィルムの光誘導要素に実質的に歪みをもたらさない。すなわち、複製された高分子材料が金型から引き離されるときには、得られるプライバシーフィルムの各光誘導要素は、その対応するチャネルのほぼ正確な複製であり、したがって、対応するチャネルの寸法と比べて、光誘導要素の寸法のばらつきは、20%未満、好ましくは10%未満である。図8cは、さらに、光透過性接着剤819が高分子ベースシートのほぼ平坦な第2の表面上に配置される様子を示す。
【0031】
高分子材料は、熱可塑性フィルム、溶融樹脂、又は液状樹脂など、熱可塑性材料の形態であることができる。熱可塑性フィルム形態のときには、熱と圧力との組み合わせを使用して、高分子材料をチャネルに流れ込むように誘導することができる。そのような方法は、一般に圧縮成形と記述することができ、米国特許第4,244,683号(ローランド(Rowland))及び同第4,601,861号(プリコン(Pricone)ら)などの公報で論じられている。溶融樹脂の状態では、溶融樹脂の熱は、金型の加熱とともに、その樹脂をチャネルに流れ込むように誘導する際に有用な工程である。米国特許第4,097,634号(ベルク(Bergh))は、代表的な押出キャスト及びエンボス加工方法を開示している。液状樹脂の状態では、熱及び/又は圧力を使用して高分子材料をチャネルに流れ込むように誘導することができる。有用な液状樹脂は、紫外光硬化性樹脂などの光硬化性樹脂である。そのような場合、固化工程は、光硬化性樹脂を光源にさらすことを伴う。米国特許第3,869,346号(ローランド(Rowland))、同第4,576,850号(マーテンズ(Martens))、及び同第5,183,597号(ルー(Lu)ら)は、代表的な液体キャスト及び光硬化プロセスを開示している。これらの特許の全体を参考として組み込む。
【0032】
高分子材料は、少なくとも2つの層を含んでよい、すなわち、多層構造であってよい。一実施形態では、高分子材料は、光吸収及び光反射材料を実質的に含まない第1層と、光吸収材料、光反射材料、又はそれらの組み合わせを含む第2層とを含む。そのような場合、微細構造の金型のチャネルは、光吸収及び/又は光反射材料を含む層と接触する。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
概ね図8a〜8cにしたがって次のように作製されるプライバシーフィルム。銅プレートを機械加工してそれにチャネルを付与することによって、微細構造ツールを作製した。各チャネルは、その副軸に沿って測定される0.5mm(19.3mil)の高さ寸法を有し、63.1度の角度で傾斜していた。各チャネルの先端部は、0.097mm(3.8mil)の寸法を有していた。各チャネルの基部は、ランド領域と同一平面内にある線に沿って測定される0.18mm(6.9mil)の寸法を有していた。先端部に平行な線に沿って基部の近くで測定したときに、基部は、0.14mm(5.5mil)の寸法を有していた。チャネルの1つの縁部から隣接した角度の最も近くの縁部までのランド領域距離は、0.12mm(4.9mil)であった。
【0034】
2重量%のTiO顔料を含有するポリプロピレンフィルムを、熱可塑性ポリマーフィルムとして使用した。ポリプロピレンフィルムは、厚さ0.13mm(5mil)であった。170℃に設定されたヒートプレスを使用して、フィルムを、1103.2kPa(160ポンド・パー・スクエア・インチ(psi))の圧力下で30秒間にわたってチャネルに流れ込むように誘導した。圧縮成形されたフィルムを同じ圧力下で100℃まで冷却し、その時間の後、該フィルムを金型から引き離して、ベース基材によって互いに連結された複数の光誘導要素を有するプライバシーフィルムを得た。少量の黒インクを光誘導要素の最上部に適用した。
【0035】
本発明は、以下の諸図面を参照すれば、よりよく理解することができる。
【0036】
これらの図面は、一定の縮尺では描かれておらず、単に例示を目的としたものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】プライバシーフィルムの代表的な一実施形態の斜視図。
【図2】線2−2に沿った図1のプライバシーフィルムの断面図。
【図3】多数の部分をもつ光誘導要素を示す、プライバシーフィルムの他の代表的な実施形態の断面図。
【図4】光誘導要素の先端部分が光吸収コーティングで覆われている様子を示す、プライバシーフィルムの他の代表的な実施形態の断面図。
【図5】光誘導要素を様々なカント角で示す、プライバシーフィルムの他の代表的な実施形態の断面図。
【図6】光誘導要素の先端部分が基部層に平行な方向に伸長されている様子を示す、プライバシーフィルムの他の代表的な実施形態の断面図。
【図7】細長い光誘導要素の組み合わせを示す、プライバシーフィルムの他の代表的な実施形態の斜視図。
【図8a】プライバシーフィルムを製造するために使用できる代表的なプロセスの略図。
【図8b】プライバシーフィルムを製造するために使用できる代表的なプロセスの略図。
【図8c】プライバシーフィルムを製造するために使用できる代表的なプロセスの略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライバシーフィルムの製造方法であって、
高分子材料を提供する工程と、
前記高分子材料を、ほぼ平行な細長い複数のチャネルを含む微細構造の金型上に堆積させる工程であって、各チャネルは、傾斜し、ランド領域によって隣のチャネルから隔てられており、各チャネルは、前記ランド領域に隣接して配置された基部と、前記ランド領域から遠位に配置された先端部とを有しており、各チャネルは、前記基部から前記先端部まで走る副軸を有する工程と、
前記高分子材料を前記微細構造の金型の前記チャネルに流れ込むように誘導する工程と、
前記チャネルの内側で前記高分子材料を固化させて、光誘導要素がそこから突き出る第1表面と、対向するほぼ平坦な第2表面とを有する高分子ベースシートによって互いに連結された、複数の光誘導要素を得る工程と、
前記微細構造の金型から前記プライバシーフィルムを引き離す工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記微細構造の金型の前記チャネルがその先端部でテーパしている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高分子材料が熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアセテートコポリマー、アクリレート修飾されたエチレンビニルアセテートポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、ナイロン、ポリ塩化ビニル、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記高分子材料が光反射材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光反射材料が、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ、酸化アンチモン、硫酸バリウム、リトペン(lithopene)、焼成カオリン、炭酸鉛、酸化マグネシウム、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
プライバシーフィルムが、前記フィルムの総重量に基づいて、20重量%未満の前記光反射材料を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各チャネルが、その副軸に沿ったその基部からその先端部までの距離である高さhを有しており、隣接した2つのチャネルが中心間間隔Pを有しており、Pに対するhの比率が約0.5〜5である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
隣接した2つのチャネルが、前記ランド領域に垂直な想像線から見たときに一方のチャネルの先端部が前記隣接チャネルの基部に重なるように置かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記高分子材料が溶融樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記誘導する工程が、前記微細構造の金型を加熱する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記高分子材料が液状樹脂又は熱可塑性フィルムである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記誘導する工程が、前記液状樹脂に熱及び圧力を加える工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記引き離す工程が、前記プライバシーフィルムの前記光誘導要素に実質的に歪みをもたらさない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
光透過性接着剤を前記高分子ベースシートの前記第2表面に積層する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記光透過性接着剤が再配置可能(repositionable)な感圧性接着剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記微細構造の金型の前記チャネルが、約15°よりも大きく約90°よりも小さい角度で傾斜しており、前記角度は、前記チャネルの副軸と前記ランド領域の平面内の線とが交差する間に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
隣接した2つのチャネルが、前記ランド領域に垂直な想像線から見たときに一方のチャネルの先端部が前記隣接チャネルの基部と一致するように置かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
光吸収コーティングを前記光誘導要素の最上部に施す工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記高分子材料が光吸収材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記高分子材料が光吸収及び光反射材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記高分子材料が少なくとも2つの層を含んでおり、第1層が光吸収及び光反射材料を実質的に含まず、そして第2層が光吸収材料、光反射材料、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【公表番号】特表2009−511307(P2009−511307A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535761(P2008−535761)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/040290
【国際公開番号】WO2007/047544
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】