説明

プラスチックレンズの離型方法

【課題】成形されたプラスチックレンズをモールドから離型させる際にプラスチックレンズにひび割れが生じにくいプラスチックレンズの離型方法を提供すること。
【解決手段】凸型モールド2と、凹型モールド3とをレンズ成形面が対面するように所定間隔離間させて配置し、粘着テープ4で巻回したレンズ成形ユニット1内にモノマーを充填して固化させプラスチックレンズを成形する。これを温度差のある水溶液が収容された複数の水槽中に所定時間順に浸漬させていく。水溶液は界面活性剤等を加えて界面張力を低くすることが離型を促進させるために好ましく、超音波によって振動を与えることも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液状の硬化型プラスチック材料をレンズ成形ユニットのキャビティ内に充填し、硬化させてプラスチックレンズを成形した後にそれを取り出すためのプラスチックレンズの離型方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からプラスチックレンズを製造する手段の1つとして、レンズ成形ユニットを用意しそのキャビティ(空間)内に主として熱硬化型のプラスチック材料を充填し、所定の加熱履歴で加熱処理を施して硬化させ、その後成形されたプラスチックレンズを取り出すようにする製造方法がある。
レンズ成形ユニットは一般的に凸型モールド及び凹型モールドをリング状のガスケットあるいは粘着テープを用いて内部にキャビティが形成されるように所定間隔離間させて配置させている。そして、ガスケットを使用している場合にはその注入口から、粘着テープを使用している場合には一部に充填用のチューブを突き刺して調整したプラスチック材料(一般にモノマーと呼称する)を充填するようにしている。プラスチック材料が充填されたレンズ成形ユニットは加熱炉のような加熱雰囲気中に数時間〜数十時間静置されてプラスチック材料の硬化処理が行われる。このような従来の製造方法の一例として特許文献1を示す。
【0003】
このようなレンズ成形ユニットを使用して得られるプラスチックレンズはレンズ成形ユニットを構成する凸型モールド及び凹型モールドとしっかりと密着している。そのためモールドからプラスチックレンズを引き離す(離型させる)ためにレンズ成形ユニットをプレス装置にセットし、プレスしてプラスチックレンズを撓ませるようにしている。離型の手順は次のように行われている。
A.ガスケット式レンズ成形ユニット
イ)ガスケットを取り外す
ロ)プレス装置の押圧面間にユニットを配置する
ハ)レンズ部分を押圧して撓ませてモールドと離型させる
ニ)モールドを取り外す
B.粘着テープ式レンズ成形ユニット
イ)粘着テープを取り外す
ロ)プレス装置の押圧面間にユニットを配置する
ハ)レンズ部分を押圧して撓ませてモールドと離型させる
ニ)モールドを取り外す
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−244048号公報
【特許文献2】特開2008−265070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記離型作業においては従来から成形されたプラスチックレンズのひび割れ(貫:カン)が問題となっていた。基本的に成形されたプラスチックレンズは離型時に縁の周囲に若干の欠けが発生するものとして数mmの余剰部分を予定しており、離型した後のモールドからの取り出し後に欠けた部分を含む周縁を研削してワンサイズ小さくしたものを製品として扱う。しかし、単なる欠けではなくしばしばひび割れがレンズの比較的内部方向にまで侵入する場合があった。このようなひび割れは深く侵入している場合にはレンズ周縁を研削しても残ってしまうためそのようなレンズの商品価値はなくなってしまう。そのため、例えば特許文献2のように離型の際になるべくひび割れが生じにくくする離型方法も提案されているが、より高いレベルでひび割れを防止する方法が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、成形されたプラスチックレンズをモールドから離型させる際にプラスチックレンズにひび割れが生じにくいプラスチックレンズの離型方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、レンズの凹面側を形成するための第1のレンズ成形面を備えた凸型モールドと、レンズの凸面側を形成するための第2のレンズ成形面を備えた凹型モールドとを前記両レンズ成形面が対面するように所定間隔離間させて配置し、前記両モールドの外周縁に沿って前記両モールドの間隔を保持させながら包囲する保持部材を配設することで前記両モールド及び前記保持部材に包囲されたキャビティを形成したレンズ成形ユニットを用意し、前記キャビティ内に液状の硬化型プラスチック材料を充填し、所定の硬化工程において前記プラスチック材料を硬化させて前記キャビティ内にプラスチックレンズを成形させた後、前記レンズ成形ユニットを温度差のある液体中に順に所定時間浸漬させて前記プラスチックレンズの前記両モールドからの離型を促進するようにしたことをその要旨とする。
また請求項2の発明では請求項1の発明の構成に加え、少なくとも最初に浸漬される前記液体は界面張力が低い液体であること、又は界面張力を低下させる物質が混入されている液体であることをその要旨とする。
また請求項3の発明では請求項1又は2の発明の構成に加え、前記保持部材とは粘着テープ又はガスケットであって、液体中に浸漬させる際には取り外すようにしたことをその要旨とする。
【0007】
また請求項4の発明では請求項1又は2の発明の構成に加え、前記保持部材とは粘着テープであって、液体中に浸漬させる際には取り外さないようにしたことをその要旨とする。
また請求項5の発明では請求項4の発明の構成に加え、前記レンズ成形ユニットを液体中に浸漬させる前に前記液体の前記キャビティ内への浸透性を高めるために前記粘着テープに対してキャビティ内外に連通する通路部を形成させるようにしたことをその要旨とする。
また請求項6の発明では請求項1〜5のいずれかの発明の構成に加え、前記液体の温度差は20℃以上であることをその要旨とする。
また請求項7の発明では請求項1〜6のいずれかの発明の構成に加え、前記液体中において前記レンズ成形ユニットに超音波による振動を与えることをその要旨とする。
【0008】
このような構成においては、まず用意されたレンズ成形ユニットの両モールド及び保持部材に包囲されたキャビティ内に液状の硬化型プラスチック材料を充填する。充填したプラスチック材料を所定の硬化工程で硬化させてプラスチックレンズを成形させる。プラスチック材料が熱硬化型プラスチックであれば、外部から熱を加えたりマイクロ波や紫外線を照射して所定の加熱履歴で時間をかけて硬化させ、熱可塑性プラスチックであれば時間をかけて冷却して硬化させる。
プラスチックレンズが成形されると、レンズ成形ユニットを温度差のある液体中に順に所定時間浸漬させる。浸漬させる所定時間は各液体ごとに同じでも異なってもよい。液体の温度は浸漬前のレンズ成形ユニットの温度とも十分温度差があることが好ましい。プラスチックレンズとモールドとは異なる収縮率であるため、温度差のある液体によって膨張・収縮を繰り返すことで自然に両者が離型するようになり、更にプラスチックレンズとモールドとの境目に液体を浸透させることで離型を助長させることとなる。そのため、離型用のプレス装置を使わなくとも、あるいは使ったとしても大きな力でプレスしなくともきれいに離型させることが可能となる。
ここで「レンズ成形ユニット」とは硬化型プラスチック材料が充填されている、いないに関わらず両モールド及び保持部材に包囲されてキャビティが形成されている組み合わせ状態をいう。
【0009】
ここに、液体は一般に容器としての水槽内に収容され、レンズ成形ユニットは水槽内の液体に浸漬されることとなる。これによって液体をレンズ成形ユニットに直接噴射して浸透させる場合に比べて液体の無駄がなく、かつ安定的にレンズ成形ユニットの全域を浸漬させることができる。また、異なる温度の液体ごとに水槽を用意すれば、レンズ成形ユニットを順に水槽に出し入れすればよいため、スムーズに作業が実行できる。液体の温度差は少なくとも20℃以上あることが好ましく、より好ましくは30℃以上である。温度差が小さいと膨張・収縮の繰り返しの変位量が少なく離型させる作用が大きくないからである。
ここに「温度差のある液体」とは連続して浸漬させる前後の液体間で温度差があればよく、例えば第1槽目の液体と第2槽目の液体との差があれば、第3槽目の液体の温度は第1槽目の液体の温度と同じであっても構わない。
また、少なくとも最初に浸漬される前記液体は界面張力が低い液体であること、又は界面張力を低下させる物質が混入されている水溶液であることが好ましい。ここに、界面張力を低下させるための物質とは、液体の浸透性を向上させるために投入されるものであって、具体的にはアルカリ溶液や水溶性とすることでアルカリ性を示す溶剤、機能水、有機溶剤、界面活性剤等である。界面張力が低い液体とはこれら、界面張力を低下させるための物質自体からなる溶液、あるいはこれらが水に溶けた水溶液である。
アルカリ性を示す溶剤の一例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、エタノールアミン等が挙げられる。機能水の一例としては、アルカリ電解水、水素水などが上げられる。有機溶剤の一例としてはアルコール類、グリコールエーテル類、アルキルグリコールエーテル類、アミド類、イミド類、臭素類、塩素類、フッ素類、炭化水素類等が挙げられる。界面活性剤の一例としては、アニオン性界面活性剤として例えば、せっけん、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル等が挙げられる。双性界面活性剤としては例えば、アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、アルカリ溶液、有機溶剤、界面活性剤等を複合的(少なくとも2種以上)に含むように使用してもよい。異なる温度の液体のすべてこのような溶剤等が混入されていてもよく、後半の浸漬工程ではレンズの洗浄も兼ねて市水のような単なる水だけに浸漬させるようにしてもよい。
【0010】
レンズ成形ユニットを構成する保持部材としては一般に粘着テープ又はガスケットが使用される。より液体の浸透性を向上させるためには、保持部材を液体中に浸漬させる前に除去することが好ましい。しかし、浸漬工程を繰り返すことによって自然にプラスチックレンズからモールドが離型されてしまうことがあり、外部に露出したプラスチックレンズが周囲に衝突して欠損する可能性もあるため、むしろ保持部材をあえて除去せずに浸漬工程を行うことも可能である。
また、保持部材をあえて除去せずに浸漬工程を行う場合には、特に繰り返し使用することのない粘着テープであれば液体の浸透性を高めるためキャビティ内外に連通する通路部を形成させることが好ましい。これは、例えば、ナイフで部分的に切り込みを入れたり、錐状部材で複数の小孔を開けたりすることで実現される。
また、レンズ成形ユニットを液体に浸漬する場合には離型を助長するために超音波による振動を与えることが好ましい。超音波自体や超音波によって液中に発生するキャビテーション効果によるものである。
【発明の効果】
【0011】
上記各請求項の発明では、レンズ成形ユニットが温度差のある液体によって膨張・収縮を繰り返すことで収縮率の異なるプラスチックレンズとモールドとが離型しやすくなるため、離型用のプレス装置を使わなくとも、あるいは使ったとしても大きな力でプレスしなくともきれいに離型させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)及び(b)は本発明の実施例に使用するレンズ成形ユニットの構築過程を説明する斜視図。
【図2】同じレンズ成形ユニットの(a)はモノマー注入状態を説明する正面図縦断面図、(b)はプラスチックレンズが成形された状態を説明する縦断面図。
【図3】同じレンズ成形ユニットを温度差のある水溶液に順に浸漬させる工程を説明する説明図。
【図4】バイスによって同じレンズ成形ユニットからプラスチックレンズを離型させている状態を説明する説明図。
【図5】レンズ成形ユニットからプラスチックレンズを離型させるための手順の一例を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的なプラスチックレンズの具体的な離型方法について図面に基づいて説明する。
まず、プラスチックレンズの製造に使用されるレンズ成形ユニット1について説明する。図1及び図2に示すように、レンズ成形ユニット1は凸型モールド2、凹型モールド3及び粘着テープ4から構成されている。両モールド2,3は耐熱ガラス製とされている。凸型モールド2の表面は成形されるプラスチックレンズの裏面(眼球側)を成形するための所定の曲面で構成された第1のレンズ成形面5とされており、凹型モールド3の裏面は成形されるプラスチックレンズの前面(物体側)を成形するための所定の曲面で構成された第2のレンズ成形面6とされている。粘着テープ4は片面全面にシリコーン性粘着剤からなる粘着層4aが形成された二伸延伸させたポリエチレンテレフタレート(PET)製の幅広の可撓性のあるテープとされている。
凸型モールド2と凹型モールド3は第1のレンズ成形面5と第2のレンズ成形面6を正対させた状態で若干離間して配置され、両モールド2,3の外周端面7に跨がるように粘着テープ4が巻回されている。粘着テープ4が巻回された状態でレンズ成形ユニット1内部にはキャビティ8が形成される。
【0014】
このように構成されたレンズ成形ユニット1のキャビティ8内に図2(a)に示すように注入ノズル11を粘着テープ4の側面に突き立てて内部に調整した硬化型プラスチック材料としてのモノマーを充填し、加熱炉のような加熱雰囲気中で定法に従った加熱履歴でモノマーの加熱硬化処理を行う。図3に示すようにモノマーが硬化することによってレンズ成形ユニット1の内部にはプラスチックレンズ10が成形されることとなる。図2(b)に示すように、成形完了段階でプラスチックレンズ10のレンズの表裏面はそれぞれ両モールド2,3の第1及び第2のレンズ成形面5,6と密着し、外周端面12で粘着テープ4に密着する。
【0015】
次に、成形されたプラスチックレンズ10を離型させるまでの工程を説明する。図5に示すようにレンズ成形ユニット1は成形されたプラスチックレンズ10を離型させるために順に浸漬工程、離型工程、乾燥処理工程を経る。
まず、レンズ成形ユニット1内のプラスチックレンズ10の離型を促進するための浸漬工程の一例について説明する。本実施の形態ではレンズ成形ユニット1から粘着テープ4を剥がして浸漬工程を実行させるものとする。
本実施の形態では図3に示すように同時に加熱炉内で成形された複数のレンズ成形ユニット1をコンテナ15に収納し、搬送装置16によって最上流位置の第1浸漬槽17から最下流の第4浸漬槽20まで各浸漬槽17〜20に順に所定時間浸漬させながら搬送させていく。各浸漬槽17〜20内には隣接する槽ごとに温度の異なる水溶液が収容されている。各浸漬槽17〜20内の底面位置には超音波振動板27がそれぞれ配設されており、所定時間浸漬させると同時にレンズ成形ユニット1に対して超音波の振動を付与し、同時にキャビテーション効果を付与する。搬送装置16の詳しい制御については省略する。
浸漬工程が終了した後、離型工程に移行する。但し、本実施の形態では粘着テープ4を剥がしているため、浸漬工程において自然に離型してしまうこともあるため、そのようなレンズ成形ユニット1については離型工程が不要となる。粘着テープ4を剥がしていない場合でも離型工程前に粘着テープ4を剥がすことで自然に離型してしまえば離型工程は不要である。
離型工程ではレンズ成形ユニット1をコンテナ15から取り出して図4に示すようなプレス装置としてのバイス21にセットする。バイス21は固定壁部22と可動壁部23を備えており、軸受け24に支持されたネジ棒24を回動させることでネジ棒24の先端に連結された可動壁部23が進退するような構成とされている。
このようなバイス21によれば、レンズ成形ユニット1を固定壁部22と可動壁部23の間に配置し、ネジ棒24をハンドル25で回動させることで可動壁部23を固定壁部22方向に移動させ、もってプラスチックレンズ10を直径方向に押圧することで、プラスチックレンズ10を凹部方向に撓ませて両モールド2,3との界面をずらして離型させることができる。離型工程後に乾燥処理工程においてモールド2,3及びプラスチックレンズ10を乾燥させる。
【0016】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施の形態では一例として4つの浸漬槽17〜20を図示して説明したが、浸漬槽は5槽以上であっても、あるいは2槽又は3槽であってもよい。
・上記実施例ではバイスを使用して離型作業を行ったが、他の方式のプレス装置を使用することも自由である。
・上記実施の形態では粘着テープ4を剥がして浸漬工程を実行していたが、粘着テープ4を傷つけることで浸透性を向上させ、粘着テープ4を剥がさずに浸漬工程を実行するようにすることも可能である。粘着テープ4を剥がさない場合には水溶液の浸透性を向上させるために粘着テープ4に内外に連通するような孔(傷)をつけることが好ましい。
・搬送装置16を使用せずに作業者がコンテナ21を運搬して各浸漬槽17〜20内に浸漬させるようにしてもよい。
・浸漬工程の最後に付随して浄水によって上流側の界面活性剤等をしっかりと除去するためのリンス槽28が設けるようにしてもよい。
・熱硬化性プラスチックだけでなく熱可塑性プラスチックを使用してプラスチックレンズを成形した場合に適用することも可能である。
・保持部材として粘着テープ4ではなく、ガスケットを使用してもよい。
・各浸漬槽17〜20内の超音波振動板27は必須ではない。また、すべての浸漬槽17〜20に設ける必要もない。
・ テープの材質は上記以外でも構わない。
・ 乾燥処理工程は必須ではない。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【0017】
次に、上記の工程にしたがって実施した実施例について説明する。
(実施例1)
1)調整したモノマーについて
実施例1におけるプラスチックレンズの原料は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド93重量部に、硫黄粉末7重量部を添加して50℃で撹拌し硫黄粉末が完全に溶解した後、室温まで冷却し硬化触媒テトラ(n−ブチル)ホスホニウムブロミド0.4重量部を添加し、十分に撹拌して溶解させモノマー成分を調整したものを使用した。
このモノマーを10hPaで30分間脱泡した後、上記のように注入ノズルを粘着テープ側面に突き立ててレンズ成形ユニットの内部に充填した。
2)加熱温度履歴
1)のモノマーを充填したレンズ成形ユニット加熱炉内に配置して、30℃で10時間保持した後、連続して30℃から100℃まで10時間かけて昇温させ、続いて100℃で1時間保持させた後、加熱を終了し常温まで自然冷却させた。
3)水溶液について
第1及び第2浸漬槽にはアルカリ溶液、界面活性剤及び有機溶剤の混合剤であるダイヤカイトCLEANER F−30(東栄化成株式会社製、以下F−30と省略する)の原液をいれたものとした。
同様に第3浸漬槽には浄水(市水)にアルカリ溶液、界面活性剤及び有機溶剤の混合剤であるダイヤカイトCLEANER B−5(東栄化成株式会社製、以下B−5と省略する)を3重量部いれたものとした。
第4浸漬槽はリンス槽とした。
以上のような条件で、常温まで冷却されたレンズ成形ユニットの粘着テープを剥がしたものを実施例1−aとして、剥がさずに粘着テープの表裏を連通する多数の孔を錐で形成したものを実施例1−bとして表1に示すように温度の異なる4つの浸漬槽に順にレンズ成形ユニットを浸漬させた。浸漬時間は各浸漬槽とも120秒ずつとした。第1〜第3浸漬槽は浸漬中常時超音波振動板によって所定の超音波(28kHz)の振動を付与した。その結果を表5に示す。
【0018】
(実施例2)
実施例2では実施例1と同様のモノマーを同様の条件で加熱し、その後常温まで自然冷却させたレンズ成形ユニットについて、粘着テープを剥がしたものを表2に示すように温度の異なる4つの浸漬槽に順にレンズ成形ユニットを浸漬させた。実施例2では各浸漬槽はいずれも浄水(市水)を使用した。浸漬時間は各浸漬槽とも120秒ずつとした。第1〜第3浸漬槽は浸漬中常時超音波振動板によって所定の超音波(28kHz)の振動を付与した。その結果を表5に示す。
【0019】
(実施例3)
実施例3では実施例1と同様のモノマーを同様の条件で加熱し、その後常温まで自然冷却させたレンズ成形ユニットについて、粘着テープを剥がしたものを表3に示すように温度の異なる4つの浸漬槽に順にレンズ成形ユニットを浸漬させた。実施例3では各浸漬槽の水溶液は実施例1と同じ条件とした。浸漬時間は各浸漬槽とも120秒ずつとした。実施例3では超音波振動は付与しなかった。その結果を表5に示す。
【0020】
(実施例4)
実施例3では実施例1と同様のモノマーを同様の条件で加熱し、その後常温まで自然冷却させたレンズ成形ユニットについて、粘着テープを剥がしたものを表4に示すように温度の異なる2つの浸漬槽に順にレンズ成形ユニットを浸漬させた。実施例4では第1浸漬槽の水溶液は実施例1と同じ条件で、第2浸漬槽は市水とした。浸漬時間は各浸漬槽とも120秒ずつとした。第1及び第2浸漬槽は浸漬中常時超音波振動板によって所定の超音波(28kHz)の振動を付与した。その結果を表5に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
(比較例1)
比較例1では実施例1と同様のモノマーを同様の条件で加熱し、その後常温まで自然冷却させたレンズ成形ユニットについて、粘着テープを剥がしたものをそのまま、バイスにセットして離型させた。その結果を表5に示す。
【0026】
【表5】

【0027】
(結果)
実施例1では浸漬中において自然に離型され、バイスでの押圧は不要であった。実施例2〜4はいずれも浸漬中において自然に離型されることはなかったが、バイスにセットした後の押圧力はそれほど大きくなくともきれいに離型できた。実施例1に続いて離型性がよかったのは、実施例4であり、続いて実施例3、実施例2の順であった。一方、比較例1では上記実施例2〜4に比べてかなり大きな押圧力でなければ離型することはできず、また、大きく欠けてひび割れとなってしまい製品不良となるケースもあった。
【符号の説明】
【0028】
1…レンズ成形ユニット、2…凸型モールド、3…凹型モールド、4…粘着テープ、5…第1のレンズ成形面、6…第2のレンズ成形面、8…キャビティ、10…プラスチックレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの凹面側を形成するための第1のレンズ成形面を備えた凸型モールドと、レンズの凸面側を形成するための第2のレンズ成形面を備えた凹型モールドとを前記両レンズ成形面が対面するように所定間隔離間させて配置し、前記両モールドの外周縁に沿って前記両モールドの間隔を保持させながら包囲する保持部材を配設することで前記両モールド及び前記保持部材に包囲されたキャビティを形成したレンズ成形ユニットを用意し、前記キャビティ内に液状の硬化型プラスチック材料を充填し、所定の硬化工程において前記プラスチック材料を硬化させて前記キャビティ内にプラスチックレンズを成形させた後、前記レンズ成形ユニットを温度差のある液体中に順に所定時間浸漬させて前記プラスチックレンズの前記両モールドからの離型を促進するようにしたプラスチックレンズの離型方法。
【請求項2】
少なくとも最初に浸漬される前記液体は界面張力が低い液体であること、又は界面張力を低下させる物質が混入されている液体であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックレンズの離型方法。
【請求項3】
前記保持部材とは粘着テープ又はガスケットであって、液体中に浸漬させる際には取り外すことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチックレンズの離型方法。
【請求項4】
前記保持部材とは粘着テープであって、液体中に浸漬させる際には取り外さないことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチックレンズの離型方法。
【請求項5】
前記レンズ成形ユニットを液体中に浸漬させる前に前記液体の前記キャビティ内への浸透性を高めるために前記粘着テープに対してキャビティ内外に連通する通路部を形成させるようにしたことを特徴とする請求項4に記載のプラスチックレンズの離型方法。
【請求項6】
前記液体の温度差は20℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラスチックレンズの離型方法。
【請求項7】
前記液体中において前記レンズ成形ユニットに超音波による振動を与えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラスチックレンズの離型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−75411(P2013−75411A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216220(P2011−216220)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】