説明

プラスチック成形機洗浄用樹脂組成物

【課題】優れた機内洗浄力および自己排出性を兼ね備え、より安全性で、容易に溶融混練できて均質なペレット化も容易なプラスチック成形機の洗浄用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】メルトマスフローレート0.01〜5g/10分(JIS K−6922−2に準拠して190℃での測定値)の熱可塑性樹脂100質量部、滑剤1〜20質量部、および無機充填剤5〜30質量部からなるプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物であって、前記無機充填剤は、煮あまに油吸油量が100〜160ml/100g(JIS K−5101−13−2に準拠しての測定値)の炭酸カルシウムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック用成形機(押出、射出、インフレーション(ブローともいう)など)の作業終了時や品種切り替え時に、成形機内に残留する熱可塑性樹脂組成物を、効率よく、しかも安全に除去するための洗浄用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の成型加工において、作業終了時や品種切り替え時に、先行樹脂の影響を排除するために、成形機内を洗浄する必要がある。そのためには、次に使用する樹脂で洗浄すれば良いが、これには多量の樹脂が必要であり、かつ複雑な構造をする金型内など成形機内の汚れを完全に取り除くことができない。この結果、後続する樹脂中に先行樹脂が混入し、後続する品種の汚染により得られる成形品の外観や物性に悪影響が発生する。
【0003】
これを解消するために、洗浄用樹脂組成物が提案されている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂に、平均粒径1〜30μの無機多孔性物質および滑剤を配合してなるプラスチック成形機用樹脂組成物が提案されている。特許文献1では、洗浄用樹脂組成物として、高級脂肪酸などの滑剤のみの配合では、多量に使用しても洗浄効果が不十分であり、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪砂、ガラス繊維など硬度の大きな無機物質を多量に配合したものだけでも、成形機の完全な洗浄には多量必要であるとしていて、両者を配合する提案がなされている。また、特許文献1では、好適な無機多孔性物質として珪藻土を挙げている。
【0004】
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂に対して、スルホン酸系界面活性剤、無機塩または金属水酸化物、および無機充填剤からなる洗浄用熱可塑性樹脂組成物が提案され、無機充填剤の具体例として炭酸カルシウム、シリカ、タルク、ケイソウ土などが挙げられている。
【0005】
さらに、特許文献3には、高密度ポリエチレン、ポリエチレンワックス、アルキルベンゼンスルホン酸の中性塩および無機充填剤からなる洗浄用樹脂組成物が提案され、無機充填剤の具体例として、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカなどが挙げられている。
【特許文献1】特開平5−269755号
【特許文献2】特開平5−124046号
【特許文献3】特開平3−21653号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無機充填剤としての珪藻土は、結晶性シリカを10%程度含有すると言われているが、この結晶性シリカは、IARC(International Agency for Research on Cancerの略称)によって、1987年に、発ガン性リスクがグループ2Aと認定された。一方OSHA(Occupational Safety and Health Administrationの略称)は、1992年には、結晶性シリカを0.1%以上含有するものは、結晶性シリカと同等とすることを製造業者にもとめた。さらに、1997年にIARCは、結晶性シリカの発ガン性リスクがさらにリスクの高いグループ1の指定とした。これにより、珪藻土、特に融剤焼成珪藻土の発ガン性の懸念が明らかとなった。
【0007】
一方、これらの洗浄用樹脂組成物は、ペレット化されて好都合に使用されるが、滑剤や界面活性剤(本願明細書では、両者を総称して、滑剤と呼ぶ)は、スリップ(滑らせる)作用を持つものであり、洗浄のためには必須の成分であるが、ペレット化のために、均質な樹脂組成物を得るために溶融混練して調製する際、滑剤が、樹脂100質量部に対して8質量部程度も配合されると、溶融混練機中で、溶融下、樹脂と滑剤の両者が、滑りあい、混練羽根に対しても、滑り、結果として空滑りして混合されず、均質化が困難になり、これをペレット化しても、高い品質の洗浄用樹脂組成物のペレットの製造は難しいことであった。
【0008】
従って、優れた洗浄作用と自己排出性をもつ、より安全で、容易に溶融混練でき、ペレット化が容易になされる製造の容易な洗浄用樹脂組成物の開発が求められていた。
【0009】
本発明の目的は、優れた洗浄力(機内洗浄性)および自己排出性を兼ね備え、より安全性で、容易に溶融混練でき、均質なペレット化も容易なプラスチック成形機の洗浄用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、それ自体例えば肺の中に吸入されても、代謝により分解することが知られていて、安全性が高いことが確認されている炭酸カルシウムに注目し、上記の目的を達成するために鋭意研究行った結果、無機充填剤として、煮あまに油吸油量が特定の範囲にある炭酸カルシウムを、滑剤とともに特定の割合で配合することにより、溶融混練性・洗浄性・自己排出性のすべてを満足する洗浄用樹脂組成物が得られることを見出し、かかる知見に基いて、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、メルトマスフローレート0.01〜5g/10分(JIS K−6922−2に準拠して190℃での測定値)の熱可塑性樹脂100質量部、滑剤1〜20質量部、および無機充填剤5〜30質量部からなるプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物であって、前記無機充填剤は、煮あまに油吸油量が100〜160ml/100g(JIS K−5101−13−2に準拠しての測定値)の炭酸カルシウムであることを特徴とするプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、前記無機充填剤を構成する炭酸カルシウムの煮あまに油吸油量が、130〜150ml/100gであることを特徴とする第1の発明に係るプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第3の発明によれば、前記滑剤が、グリセリン脂肪酸エステルからなることを特徴とする第1発明または第2発明に係るプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第4の発明によれば、前記滑剤が、脂肪酸アミド及びグリセリン脂肪酸エステルの3:7〜7:3(質量比)の混合物からなることを特徴とする第1発明または第2発明に係るプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物が提供される。
【0015】
さらに、本発明の第5の発明によれば、前記熱可塑性樹脂が、エチレン系樹脂であり、洗浄除去されるべき被洗浄樹脂組成物もエチレン系樹脂組成物であることを特徴とする、第1〜第4のいずれかの発明に係るプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0016】
上記のように、本発明は、熱可塑性樹脂100質量部、滑剤1〜20質量部、および無機充填剤5〜30質量部からなるプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物であって、前記無機充填剤は、煮あまに油吸油量が100〜160ml/100g(JIS K−5101−13−2に準拠しての測定値)の炭酸カルシウム(以下、「特定の炭酸カルシウム」ともいう)であることを特徴とするプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物であるので、滑剤の樹脂への浸透力による洗浄作用と、硬い無機充填剤によって機内に付着残留する樹脂を擦り落とす作用との相乗的な優れた洗浄効果を奏し、後述する自己排出性も優れていて、しかも、特定の炭酸カルシウムによる滑剤の吸着によるものと考えられる効果により、従来困難であった樹脂と滑剤の溶融混練を容易に行うことができ、均質な溶融混練物が得られるので、これをペレット化して均質な高品質のプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物を容易に調製、製造することができる。
【0017】
本発明の効果である自己排出性とは、成形機内に滞留することなく、スクリュー回転によってたやすく排出される性能をいう。自己排出性は、スクリュー等の金属表面から容易に剥離できることにより達成される性能であり、自己排出性に優れた本発明の成形機洗浄用樹脂組成物は、洗浄操作後に使用する樹脂による成形品に混入されることはない(当該樹脂に容易に置換される)。
【0018】
滑剤は、自己排出性の作用があるが、従来の洗浄用樹脂組成物に使用される無機充填物の中には、滑剤の界面活性力を阻害し、洗浄用樹脂組成物を成形機内に付着、滞留させるものがある。これは、そのような無機充填剤が、おそらく熱可塑性樹脂との摩擦によって帯電しやすい物質である場合に起こりえると考えられ、具体的には、熱可塑性樹脂とは帯電序列が遠いガラス質、例えばシリカ類がこれに相当すると考えられる。本発明で使用した特定の炭酸カルシウムは、熱可塑性樹脂との摩擦では比較的帯電しにくく、滑剤の界面活性力を阻害することが無いと考えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物について、各構成成分毎に詳細に説明する。
【0020】
1.熱可塑性樹脂:
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂などを挙げることができる。これらの中では、ポリオレフィン系樹脂を好適に使用することができる。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂が挙げられ、本発明では、洗浄用樹脂として実績のあるエチレン系樹脂が、特に好適な樹脂として使用できる。
【0022】
エチレン系樹脂としては、高圧法ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体が挙げられ、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体などを挙げることができる。
【0023】
本発明では、熱可塑性樹脂のメルトマスフローレートは、通常0.01〜5g/10分であり、好ましくは0.5〜3g/10分である。これが、0.01g/10分未満であると、得られる洗浄用樹脂組成物による成形機洗浄の際、成形機のモータートルクが上がりすぎ、プラスチック成形機そのものに過度の負荷をかけることがあり好ましくない。一方、これが5g/10分を超えると、得られる洗浄用樹脂組成物にプラスチック成形機内を洗浄する効果がなくなり好ましくない。
【0024】
このメルトマスフローレートが、0.01〜5g/10分であれば、プラスチック用の押出成形機、射出成形機、インフレーション成形機のいずれも、良好に洗浄することができる。
【0025】
樹脂相互間の親和性から、本発明で使用する熱可塑性樹脂と、洗浄除去されるべき樹脂組成物(被洗浄樹脂組成物)に含まれるベース樹脂は同種のものであることが好ましく、両者がエチレン系樹脂である場合の洗浄効果は、特に優れている。
なお、熱可塑性樹脂は、1種あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
2.滑剤:
本発明において使用される滑剤は、いわゆる滑剤と界面活性剤の両者を含むものであり、滑剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸ビスアミド、一価又は多価アルコールの脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、ワックス並びに高級脂肪酸金属塩などが挙げられ、これらは1種或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
高級脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸などを挙げることができる。
【0028】
高級脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、イコ酸アミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどを挙げることができる。この中では、オレイン酸アミドを好ましく用いることができる。
【0029】
高級脂肪酸ビスアミドとしては、エチレンビスステアロアミド、N,N’−メチレンビスステアロアミドなどを挙げることができる。
【0030】
一価又は多価アルコールの脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸n−ブチルエステル、水添ロジンエステル、セバシン酸ジブチルエステル、セバシン酸ジオクチルエステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、グリセリントリ脂肪酸エステル、グリセリルラクトステアリルエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールステアリン酸テトラエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールヤシ脂肪酸エステル、エタンジオールモンタン酸エステル、1,3−ブタンジオールモンタン酸エステル、ジエチレングリコールステアリン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。この中では、グリセリン脂肪酸エステル、特にグリセリンモノステアリン酸エステルを好ましく用いることができる。
【0031】
高級脂肪酸アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどを挙げることができる。
【0032】
ワックス類としては、合成パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、変性ポリエチレンワックス、スパチームアセチワックス、モンタンワックス、カルバナロウワックス、蜜ロウ、木ロウなどを挙げることができる。
【0033】
高級脂肪酸金属塩としては、上記高級脂肪酸のリチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛塩などが挙げられる。
【0034】
本発明においては、滑剤が、グリセリン脂肪酸エステルからなることが好ましい。
グリセリン脂肪酸エステルからなる滑剤によれば、得られる洗浄用樹脂組成物に、特に優れた自己排出性を付与することができる。
【0035】
本発明においては、滑剤が、脂肪酸アミド及びグリセリン脂肪酸エステルの3:7〜7:3(質量比)、特に4:6〜6:4の混合物からなることが好ましい。
かかる混合物からなる滑剤によれば、得られる洗浄用樹脂組成物のメルトマスフローレートへの影響が少なく、好ましく使用できる。
【0036】
滑剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは、5〜12質量部、更に好ましくは6〜10質量部である。
この配合量が、1質量部未満では、成形機内に付着している樹脂(被洗浄樹脂組成物)への浸透が不十分となり、洗浄効果が低下するので好ましくない。一方、この配合量が20質量部を超えると、溶融混練により均質な樹脂組成物を得ることが難しくなり、ペレット化しても均質な樹脂組成物が製造されず好ましくない。
【0037】
3.特定の炭酸カルシウム(無機充填剤):
本発明において使用される特定の炭酸カルシウムとしては、石灰石、大理石、方解石などの鉱石を粉砕した重質炭酸カルシウムや合成石である沈降性炭酸カルシウムあるいは軽質炭酸カルシウムなどを挙げることができる。これらは、いずれも使用することができるが、洗浄性能を決める硬度の点から、粒度分布が均一な合成品の炭酸カルシウムが好ましい。
特定の炭酸カルシウムの平均粒径は、分散性や洗浄効果などの点から、平均粒径は1〜30μm、好ましくは2〜5μm、更に好ましくは2〜4μmである。
【0038】
また、炭酸カルシウムをステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸又はそのナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどとの金属塩、パラフィン、ワックス又はこれらの変性物、有機シラン、有機チタネートなどの化合物で被覆するなどの表面処理を施したものを使用することができる。
【0039】
本発明では、特定の炭酸カルシウムの煮あまに油吸油量は、100〜160ml/100g、好ましくは110〜150ml/100g、更に好ましくは130〜150ml/100gである。
この煮あまに油吸油量が、100ml/100g未満では、溶融混練が難しくなり、均質の樹脂組成物を得ることできず好ましくない(後述する比較例1〜4参照)。
一方、これが160ml/100gを超えるものは、製造が困難であり入手が困難であるとともに、滑剤の作用が低下されることがあり、洗浄効果が落ちる場合があるので好ましくない。
【0040】
なお、本発明で煮あまに油吸油量とは、JIS K 5101−13−2に準拠して測定される顔料及び体質顔料としての炭酸カルシウムに吸収される煮あまに油の量である。
【0041】
特定の炭酸カルシウムの配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5〜30質量部、好ましくは、8〜28質量部、更に好ましくは10〜25質量部である。
この配合量が、5質量部未満では、成形機内に付着している樹脂(被洗浄樹脂組成物)を取り去る効果が不十分となり、洗浄効果が低下するので好ましくない。一方、この配合量が30質量部を超えると、得られる洗浄用樹脂組成物がもろくなり、ペレット化の効率が低下するとともに、得られる洗浄用樹脂組成物のメルトマスフローレートが低下し、洗浄時の成形機に必要以上のトルクが加わることもあるので好ましくない。
【0042】
4.プラスチック成形機洗浄用樹脂組成物:
本発明のプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物は、必須成分である熱可塑性樹脂、滑剤および特定の炭酸カルシウム(無機充填剤)の所定量と、必要に応じて使用される配合物(安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、核剤、加工性改良剤、充填剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、気泡防止剤、着色剤)の適当量とを配合して、一般的な方法、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、コンティニュアスミキサー、ロールミルあるいは押出機を用いて均一に、例えば130〜210℃程度で溶融混練することによって製造することができる。
このようにして製造した本発明のプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物は、次いで粒径2〜7mm程度のペレットに造粒し、これを洗浄用に良好に使用することができる。
【実施例】
【0043】
次に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、被洗浄用着色樹脂組成物(被洗浄樹脂組成物)の調製方法、樹脂組成物の構成成分についての測定方法、並びに、実施例及び比較例で得られた洗浄用樹脂組成物の評価方法は、個別に記載された方法を除き、それぞれ以下によるものである。
【0044】
〔被洗浄用着色樹脂組成物の調製〕
エチレン−ブテン−1共重合体(メルトマスフローレート0.7g/10分、密度0.920g/cm3 、GS−650、日本ユニカー製)にカーボンブラック(VULCAN 9A32、キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク製)及び酸化防止剤として4,4’−チオビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)をそれぞれ2.5質量%及び0.5質量%となるように配合し、二軸混練押出機(TEM- 35B、東芝機械製)を用い140℃で溶融混練し、次いで平均粒径約4mmのペレットに造粒して黒色ポリエチレン樹脂組成物を調製し、被洗浄用着色樹脂組成物とした。
【0045】
〔樹脂組成物の構成成分についての測定〕
1.メルトマスフローレート:
メルトマスフローレートはJIS K 6922−2に準拠し、試験温度190℃、荷重21.18Nで測定した。単位はg/10分である。
【0046】
2.煮あまに油吸油量:
煮あまに油吸油量はJIS K 5101−13−2に準拠して測定した。予め予測される吸油量を基に試料1〜5gを平滑なガラス板上に採取し、煮あまに油(JIS K 5421に規定するもの)をビュレットから徐々に試料の中央に滴下し、その都度全体をパレットナイフで十分に練り合わせた。滴下及び練合せを繰り返し、全体が硬いパテ状からパレットナイフでらせん状に巻くことができる状態に変化した時点、もしくは急激に粘度が低下する直前を終点とし、終点に至るまでの滴下量を測定した。単位は試料100g当たりの煮あまに油の滴下量(ml/100g)で表される。
【0047】
〔洗浄用樹脂組成物の評価〕
1.溶融混練性:
所定量の熱可塑性樹脂、滑剤、炭酸カルシウム及びその他の配合物をバンバリーミキサー(DS3−10MWB−S、森山製作所製)に投入し、150℃で10分間溶融混練し、バンバリーミキサーを開け、溶融混練された樹脂組成物の均質性を目視で観察した。
明らかに均質性がなく、滑剤成分が液状に分離して観測されるものを×、外観が不均質なものを△、一様な均質である場合を○で評価し、○を合格とした。
なお、例え×と評価された樹脂組成物でも、ペレット化の操作は可能であるが、得られるペレットは不均質となることは自明であるので、当然、その洗浄用樹脂組成物としての洗浄作用の効果の品質には悪影響がある。従って、溶融混練性が×及び△と評価された例については、洗浄性・自己排出性の試験は行わなかった。
【0048】
2.洗浄性:
上記で調製した被洗浄用着色樹脂組成物1kgを、単軸押出機(ラボプラストミルD20−25、東洋精機製作所製、直径20mm)のホッパーに投入し、樹脂温度180℃、スクリュー回転数100rpmにて全て押出した後、洗浄用樹脂組成物1kgをホッパーに投入し、樹脂温度180℃、スクリュー回転数100rpmで引続き押出し運転を行い、排出された洗浄用樹脂組成物の色相を観察した。
洗浄用樹脂組成物が全て排出される直前の排出物が黒色に近い色相として観察されたものを×、排出物が灰色、もしくは洗浄用樹脂組成物単体の色相と異なるものとして観察されたものを△、排出物の色相が洗浄用樹脂組成物単体の色相に置き換わったものを○と評価し、○を合格とした。
【0049】
3.自己排出性:
上記の洗浄性の評価後、引き続き10分間単軸押出機のスクリューを回転させて洗浄用樹脂組成物を可能な限り排出し、その後押出機からスクリューを引き抜き、当該スクリューに対する洗浄用樹脂組成物の付着状況を観察した。
スクリューの圧縮部から計量部にかけて付着物が観測されたものを×、スクリューの圧縮部、または計量部の一部に付着物が観測されたものを△、スクリューに付着物が殆ど残らなかったものを○と評価し、○を合格とした。
【0050】
[比較例1〜2、実施例1]
熱可塑性樹脂として、高圧法ポリエチレン(メルトマスフローレート1g/10分、密度0.9185g/cm3 、DYNI−V、日本ユニカー製)100質量部に対して;滑剤としてグリセリンモノステアリン酸エステルを10質量部;炭酸カルシウムとして比較例1では煮あまに油吸油量30ml/100gのもの(ライトン−BY、白石カルシウム製、平均粒径2.3μm)、比較例2では、煮あまに油吸油量31ml/100gのもの(ホワイトンSSB赤、白石カルシウム製、平均粒径2.3μm)、及び実施例1では煮あまに油吸油量140ml/100gのもの(カルライト−KT、白石カルシウム製、平均粒径2.6μm)の各々を12質量部;酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.1質量部となるように配合し、これをバンバリーミキサーに投入し、150℃で10分間溶融混練して樹脂組成物を得、その外観を観察した(溶融混練性の評価)。
溶融混練性を合格した樹脂組成物については、これを造粒して平均粒径約4mmのペレットを得て、洗浄性及び自己排出性の評価を行った。
【0051】
各々の樹脂組成物の組成及びその評価結果は、表1に示したが、煮あまに油吸油量が、本発明の下限値より小さい、比較例1及び2では、溶融混練性が不良であり、均質な樹脂組成物が得られなかったが、実施例1は、優れた溶融混練性もち、かつその洗浄性並びに自己排出性も合格し、優れた洗浄力と、より安全性で、高品質の均質な洗浄用樹脂組成物であった。
【0052】
【表1】

【0053】
[比較例3〜4、実施例2〜4]
比較例1で用いた煮あまに油吸収量が30ml/100gであるライトン−BY(以下、単に炭カル30と称する)と、実施例1で用いた煮あまに油吸収量が140ml/100gであるカルライト−KT(以下、単に炭カル140と称する)とを用いて、表2に示す質量比率でよく混合し、それぞれ煮あまに油吸収量が62ml/100g、111ml/100g、及び130ml/100gである炭酸カルシウムを調製した。それらを、以下、炭カル60、炭カル110、及び炭カル130と称する。
【0054】
【表2】

【0055】
これらの、異なる煮あまに油吸収量の炭酸カルシウムを各々12質量部用い、滑剤として、オレイン酸アミド4質量部及びグリセリンモノステアリン酸エステル5質量部の混合物を使用したことを除き、実施例1と同様に溶融混練して樹脂組成物を得、溶融混練性を評価し、これが良好な場合は、これから平均粒径約4mmのペレットを得て、洗浄性及び自己排出性の評価を行った。
【0056】
各々の樹脂組成物の組成及びその評価結果は、表3に示したが、煮あまに油吸油量が、本発明の下限値より小さい、炭カル30を用いた比較例3では、溶融混練性が不良であり、炭カル60を用いた比較例4でも均質性が不十分で、均質な樹脂組成物が得られなかったが、炭カル110を用いた実施例2、炭カル130を用いた実施例3、及び実施例1と同じ炭カル140を用いた実施例4は、優れた溶融混練性もち、かつその洗浄性並びに自己排出性も合格し、優れた洗浄力と、より安全性で、高品質の均質な洗浄用樹脂組成物であった。
【0057】
【表3】

【0058】
[実施例5〜7]
炭酸カルシウム(炭カル140)の配合量を15質量部、18質量部、及び25質量部とした以外は、実施例4と同様にして、実施例5、6および7として、樹脂組成物を得、溶融混練性を評価し、これから平均粒径約4mmのペレットを得て、洗浄性及び自己排出性の評価を行った。
【0059】
各々の樹脂組成物の組成及びその評価結果は、表4に示したが、煮あまに油吸油量が本発明に入るこれらの洗浄用樹脂組成物は、優れた溶融混練性もち、かつその洗浄性並びに自己排出性も合格し、優れた洗浄力と、より安全性で、高品質の均質な洗浄用樹脂組成物であった。
【0060】
【表4】

【0061】
[実施例8、9]
滑剤の配合量を合計で5質量部(オレイン酸アミド2質量部・グリセリンモノステアリン酸エステル3質量部)、及び15質量部(オレイン酸アミド7質量部・グリセリンモノステアリン酸エステル8質量部)とした以外は、実施例4と同様にして、実施例8、及び9として、樹脂組成物を得、溶融混練性を評価し、これから平均粒径約4mmのペレットを得て、洗浄性及び自己排出性の評価を行った。
【0062】
各々の樹脂組成物の組成及びその評価結果は、表5に示したが、これらの洗浄用樹脂組成物は、優れた溶融混練性もち、かつその洗浄性並びに自己排出性も合格し、優れた洗浄力と、より安全性で、高品質の均質な洗浄用樹脂組成物であった。
【0063】

【表5】

【0064】
[実施例10]
熱可塑性樹脂をエチレン−ブテン−1共重合体(メルトマスフローレート0.7g/10分、密度0.920g/cm3 、GS−650、日本ユニカー製)に替えた以外は実施例4と同様にして、実施例10として、樹脂組成物を得、溶融混練性を評価し、これから平均粒径約4mmのペレットを得て、洗浄性及び自己排出性の評価を行った。
【0065】
樹脂組成物の組成及びその評価結果は、表6に示したが、この洗浄用樹脂組成物は、優れた溶融混練性もち、かつその洗浄性並びに自己排出性も合格し、優れた洗浄力と、より安全性で、高品質の均質な洗浄用樹脂組成物であった。
【0066】
【表6】

【0067】
[比較例5〜7]
炭酸カルシウムに替えて、比較例5では非晶性シリカ(煮あまに油吸油量140のミズカシルP754C、水澤化学工業製)12質量部、比較例6では非晶性シリカ(煮あまに油吸油量148のミズパールK−300、水澤化学工業製)12質量部、及び比較例7では、ゼオライト(煮あまに油吸油量78のシルトンPS3LM、水澤化学工業製)80質量部を使用した以外は、実施例4と同様にして、比較例5〜7として、樹脂組成物を得、溶融混練性を評価した。これらの樹脂組成物は全て良好に溶融混練できた。次いで、これらから平均粒径約4mmのペレットを得て、洗浄性及び自己排出性の評価を行った。
【0068】
各々の樹脂組成物の組成及びその評価結果は、表7に示したが、煮あまに油吸油量が本発明の範囲内であるシリカを用いた比較例5、6では、自己排出性が悪く、洗浄用樹脂組成物としては好ましくないものであった。
また、煮あまに油吸油量が比較的大きいゼオライトを用いた比較例7では、良好にペレット化はできたが、自己排出性は本発明の樹脂組成物に比べて劣り、同様に好ましくないものであった。
【0069】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物は、それ自体安全性が高いとされている炭酸カルシウムを無機充填剤として使用していて、かつ特定の煮あまに油吸油量をもつものを使用しているので、これから得られる洗浄用樹脂組成物は、安全であり、溶融混練で均質な樹脂組成物が得られ、高品質の均質なペレットも容易に製造することができ、かつ優れた洗浄性、自己排出性をもつので、プラスチック成型機の作業終了時や樹脂の品種切り換え時の優れた洗浄用樹脂組成物として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトマスフローレート0.01〜5g/10分(JIS K−6922−2に準拠して190℃での測定値)の熱可塑性樹脂100質量部、滑剤1〜20質量部、および無機充填剤5〜30質量部からなるプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物であって、前記無機充填剤は、煮あまに油吸油量が100〜160ml/100g(JIS K−5101−13−2に準拠しての測定値)の炭酸カルシウムであることを特徴とするプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機充填剤を構成する炭酸カルシウムの煮あまに油吸油量が、130〜150ml/100gであることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項3】
前記滑剤が、グリセリン脂肪酸エステルからなることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項4】
前記滑剤が、脂肪酸アミド及びグリセリン脂肪酸エステルの3:7〜7:3(質量比)の混合物からなることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、エチレン系樹脂であり、洗浄除去されるべき被洗浄樹脂組成物もエチレン系樹脂組成物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチック成形機洗浄用樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−313693(P2007−313693A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143595(P2006−143595)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000230331)日本ユニカー株式会社 (20)
【Fターム(参考)】