説明

プラズマドーピング装置及びプラズマドーピング方法

【課題】基板表面に堆積させた不純物のラジカルの厚さ(量)を比較的高精度に測定し、その結果に基づいて所望量の不純物のラジカルに含まれる元素を基板に導入することができるプラズマドーピング装置及びプラズマドーピング方法を提供する。
【解決手段】プラズマ生成室12と、プラズマ生成室12に連通して設けられて処理対象である基板Sを保持するステージ31が設けられた処理室13と、を備え、プラズマ生成室12で生成されたプラズマ中の不純物のラジカルに含まれる元素を基板に導入するプラズマドーピング装置10であって、ラジカルの生成量を測定する測定手段50を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ中の不純物を基板に導入するプラズマドーピング装置及びプラズマドーピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体中のキャリア濃度をコントロールするための不純物導入方法として、ビームライン型のイオン注入技術が用いられてきた。しかしながら、近年の半導体の微細化等に伴い、例えば、5keV以下の低エネルギー領域における生産性の向上、また3次元構造物に対する不純物の均一注入等の要望が高まり、イオン注入技術ではこのような要望に対応することが難しかった。
【0003】
このような問題を解決する手段として、プラズマ中に基板を直接さらすことによって基板に不純物を導入するプラズマドーピング技術が開発されている。
【0004】
例えば、半導体装置の一つであるMISFET(Metal Insulator Silicon Field Effect Transistor)では、そのゲート長が短くなるとトランジスタのオフ動作時に漏れ電流が流れる短チャネル効果が起こることが知られており、この短チャネル効果を抑制するために、ソース/ドレイン領域よりも浅いエクステンション領域を形成することが知られている。このようなエクステンション領域を形成する際に、例えば、導入したい不純物を含むプラズマに基板を晒し、この基板にバイアス電圧を印加することで、基板内に不純物を導入するプラズマドーピング方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−128210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のプラズマドーピング方法では、プラズマ中のラジカルが基板表面に堆積すると同時に、バイアス電位によって加速されたイオンが基板に照射されている。ここで、プラズマドーピング方法を用いて基板内に不純物を均一に導入するためには、ラジカルを基板表面に均一に堆積させると共に、イオンを基板に対して均一に照射する必要がある。すなわち、基板表面で均一なラジカルの面内分布と均一なイオンの面内分布とを得る必要がある。
【0007】
基板表面で均一なイオンの面内分布が得られるように、例えば磁場によってプラズマを制御することが可能である。しかしながら、ラジカルとイオンとで電荷の有無等が相違し、プラズマ中にラジカルがイオンより多く存在することから、基板表面で均一なイオンの面内分布が得られるように制御されたプラズマでは、基板表面で均一なラジカルの面内分布が得られず、基板表面にラジカルを均一に堆積させることができない。結果として、上記特許文献1記載のプラズマドーピング方法では基板表面で均一なラジカルの面内分布と均一なイオンの面内分布を同時に確保することができないため、基板内に不純物を均一に導入することができないという問題があった。
【0008】
またキャリア濃度は半導体の電気特性に対して影響の大きいパラメータである。このため、基板に導入される不純物の濃度はできるだけ高精度にコントロールされていることが望ましい。例えば、ビームライン型のイオン注入技術を用いる場合、不純物が荷電粒子で基板に照射されるため、その電荷量を測定することにより基板に導入した不純物量を高精度にコントロールすることができる。これに対し、プラズマドーピング技術を用いる場合、不純物が電荷粒子と電荷を持たないラジカルという形態で基板に導入されるため、電荷量による不純物量の制御は極めて難しい。
【0009】
このような問題を解決するために、プラズマ中の不純物のラジカルを基板表面に堆積させた後、この堆積されたラジカルにイオンを照射することで、基板の内部に不純物を導入するようにしたプラズマドーピング方法がある。このようなプラズマドーピング方法を用いることで、基板内に不純物を均一に導入することができ、また基板表面に堆積させた不純物のラジカルの厚さが正確に分かれば、基板内に導入する不純物量を高精度にコントロールすることもできる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、基板表面に堆積させた不純物のラジカルの厚さ(量)を比較的高精度に測定し、その結果に基づいて所望量の不純物のラジカルに含まれる元素を基板に導入することができるプラズマドーピング装置及びプラズマドーピング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、プラズマ生成室と、該プラズマ生成室に連通して設けられて処理対象である基板を保持するステージが設けられた処理室と、を備え、前記プラズマ生成室で生成されたプラズマ中の不純物のラジカルに含まれる元素を前記基板に導入するプラズマドーピング装置であって、前記ラジカルの生成量を測定する測定手段を備えることを特徴とするプラズマドーピング装置にある。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記測定手段は、水晶振動子を備え、該水晶振動子上に堆積したラジカルの量から前記ラジカルの生成量を求めることを特徴とする第1の態様のプラズマドーピング装置にある。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記水晶振動子が、前記プラズマ生成室と前記ステージに載置された前記基板との間の空間を遮らない第1の領域に設けられていることを特徴とする第2の態様のプラズマドーピング装置にある。
【0014】
本発明の第4の態様は、前記水晶振動子が、前記第1の領域と、前記プラズマ生成室と前記ステージに載置された前記基板との間の空間を遮る第2の領域との間を移動可能に設けられていることを特徴とする第3の態様のプラズマドーピング装置にある。
【0015】
本発明の第5の態様は、プラズマ生成室と、該プラズマ生成室に連通して設けられて処理対象である基板を保持するステージが設けられた処理室と、前記プラズマ生成室で生成されたプラズマ中の不純物のラジカルの生成量を測定する測定手段と、を備えるプラズマドーピング装置を用いたプラズマドーピング方法であって、前記プラズマ中の不純物のラジカルを前記基板上に堆積させる堆積工程と、堆積されたラジカルにイオンを照射して不純物を前記基板表面に導入する導入工程と、を備え、前記堆積工程では、前記測定手段の測定結果に基づいて前記ラジカルの堆積量を制御することを特徴とするプラズマドーピング方法にある。
【0016】
本発明の第6の態様は、前記測定手段が、前記プラズマ生成室と前記ステージに載置された前記基板との間の空間を遮らない第1の領域と、前記空間を遮る第2の領域との間を移動可能に設けられた水晶振動子を備えるものであり、前記第1の領域と前記第2の領域とで前記水晶振動子上への前記ラジカルの堆積速度を測定し、これらの測定結果から、前記第1の領域と前記第2の領域との前記ラジカルの堆積速度の比率を求める測定工程を備え、前記堆積工程では、前記水晶振動子を前記第1の領域に配置した状態で、前記基板上に前記ラジカルを堆積させることを特徴とする第5の態様のプラズマドーピング方法にある。
【0017】
本発明の第7の態様は、前記測定工程では、前記第2の領域の複数箇所で前記水晶振動子上への前記ラジカルの堆積速度を測定することを特徴とする第6の態様のプラズマドーピング方法にある。
【発明の効果】
【0018】
かかる本発明によれば、プラズマ中の不純物のラジカルを基板表面に堆積させる際に、測定手段によってラジカルの堆積量(膜厚)を測定することができる。したがって、基板上に所望の膜厚でラジカルを堆積させて、基板内に導入する不純物量を高精度にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態に係るプラズマドーピング装置を模式的に示す断面図である。
【図2】一実施形態に係る測定工程を説明するフローチャートである。
【図3】一実施形態に係るプラズマドーピング装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係るプラズマドーピング装置は、磁気中性線放電(NLD)型のプラズマドーピング装置であり、プラズマ中の不純物に含まれる元素を基板に導入するものである。図1に示すように、プラズマドーピング装置10は、真空チャンバ11を有する。真空チャンバ11は、その上部に円筒状のプラズマ生成室12と、プラズマ生成室12の下部に設けられる基板処理室13とを備えている。
【0021】
プラズマ生成室12は、円筒状の壁部材14と、壁部材14の上部の開口を塞ぐ天板15とで画成されている。壁部材14は、例えば、石英等の誘電体からなる。天板15は、図示しない絶縁体を介して壁部材14の上部に固着されている。天板15の内側の面には、シャワープレート16が設けられている。シャワープレート16には、図示しないが、プラズマ生成室12内ヘドーピングガスを導入するためのガス導入手段が接続されている。
【0022】
プラズマ生成室12の外側、つまり壁部材14の外側には、リング状の三つの磁場コイル21(21A,21B,21C)が配置されている。これら3つの磁場コイル21に所定の向きで電流を供給することで、後述するようにプラズマ生成室12内には環状の磁気中性線(NL)22が形成される。
【0023】
磁場コイル21と壁部材14との間には、ループ状のアンテナコイル23が設けられている。このアンテナコイル23は、プラズマ生成室12内に形成された磁気中性線22に近接して設けられており、コンデンサ24を介して高周波電源25に接続されている。高周波電源25からコンデンサ24を介してアンテナコイル23に高周波電力を供給することで、プラズマ生成室12内にプラズマが生成される。
【0024】
基板処理室13には、処理対象である基板Sが載置されるステージ31がプラズマ生成室12に対向して設けられている。ステージ31には、ブロッキングコンデンサ32を介して高周波電源33に接続されており、高周波電源33からバイアス電位が印加されるようになっている。一方、プラズマ生成室12を画成する天板15は、上述のようにステージ31の対向電極として機能するように構成されている。なお基板処理室13には、排気口34を介してターボ分子ポンプなどの真空排気手段(図示せず)が接続されている。
【0025】
このような構成のNLD型のプラズマドーピング装置10では、磁場コイル21A,21Cに同一方向に電流を流し、かつ、磁場コイル21Bに逆方向の電流を流すことで、プラズマ生成室12に環状の磁気中性線22が形成される。またシャワープレート16からプラズマ生成室12内にガスを導入すると共に、アンテナコイル23に高周波電源25から高周波電力を供給することで、環状の磁気中性線22に沿ってプラズマが高密度に生成される。その際、磁場コイル21に供給する電流の大きさを調整して磁気中性線22の広がりを調整することで、プラズマの広がりを調整することができる。
【0026】
またプラズマドーピング装置10は、このようにプラズマ生成室12で生成されたプラズマ中の不純物のラジカルの量を測定する測定手段としての膜厚センサ50を備えている。プラズマドーピング装置10では、基板Sの表面にラジカルを堆積させて薄膜を形成した後、ラジカルの薄膜にイオンを照射することによって不純物に含まれる元素を基板Sに導入させている。そして膜厚センサ50は、基板S上に堆積されたラジカルの量(膜厚)を検出する。本実施形態では、膜厚センサ50は水晶振動子51を備え、後述するように、この水晶振動子51上へのラジカルの堆積に伴う共振周波数の変化に基づいて基板S上に堆積されたラジカルの膜厚を検出している。また、この水晶振動子51は、基板Sよりも外側の領域(第1の領域)をホームポジションとしてステージ31の表面(基板Sの表面)に沿って直線移動可能に設けられている。
【0027】
以下、このようなプラズマドーピング装置10を用いた本発明のプラズマドーピング方法を、シリコン基板内へのボロンラジカルの導入を一例として説明する。
【0028】
まずは図1に示すプラズマドーピング装置10のステージ31上にシリコン基板である基板Sを載置し、図示しない真空排気手段を駆動させて排気口34から真空チャンバ11内、すなわちプラズマ生成室12及び基板処理室13内を所望の真空度まで真空引きする。
【0029】
次いで、シャワープレート16を介して図示しないガス導入手段からプラズマ生成室12内にp型不純物であるボロン(B)を含むジボラン(B)ガスと、希ガスであるアルゴン(Ar)ガスとを供給する。これと同時に、上下の磁場コイル21A,21Cに同一方向の電流を流すと共に、中間の磁場コイル21Bに逆方向の電流を流す。これにより、プラズマ生成室12内に磁気中性線22が形成される。さらに、高周波電源25からアンテナコイル23に高周波電力を印加することにより、磁気中性線22に沿って比較的高密度にプラズマが生成される。なお磁気中性線22の形成位置及び大きさは、磁場コイル21に供給する電流の大きさによって調整することができる。
【0030】
またプラズマが生成される際、ステージ31には負のバイパス電位が印加されていないため、プラズマ中のイオン(Ar+,BxHy+)は基板S側に引き込まれない。したがって、基板Sの表面にはボロンラジカルが堆積されて薄膜が形成される。基板Sの表面に形成されたボロンラジカルの薄膜が所定厚さとなると、アルゴンガスの供給を継続したままジボランガスの供給及びアンテナコイル23への高周波電力供給を一旦停止し、真空チャンバ11内のジボランガスをアルゴンガスに置換する。置換に必要な時間は、例えば、排気速度、真空チャンバ11の容積等によって決まるが、真空チャンバ11内のジボランガスの濃度が0.1%以下になるまで真空チャンバ11へのアルゴンガスの供給を継続することが好ましい。置換終了後、アンテナコイル23への高周波電力供給を再開すると共に、高周波電源33からステージ31に負のバイアス電位を印加する。これにより、プラズマ中のアルゴンイオン(Ar)が基板S側に引き寄せられる。基板S側に引き寄せられたアルゴンイオンが、基板Sの表面に堆積したボロンラジカルの薄膜に衝突することで、ラジカルに含まれる元素(ボロン)が基板S内に押し込まれる。
【0031】
その後、図示しない公知のアニール装置において熱処理を行うことで、基板S内に導入された元素が活性化する。その結果、基板S内にp型不純物拡散層が形成される。
【0032】
このように本実施形態では、基板Sの表面にボロンラジカルを堆積させる堆積工程と、基板Sの表面にアルゴンイオンを照射する照射工程とが分離されている。このため、各工程で磁場コイル21に流す電流値を調整することにより、基板Sの表面でのボロンラジカルの内面分布と、アルゴンイオンの面内分布とを独立して制御することができる。これにより、基板Sの内部に不純物(ラジカルに含まれる元素)を略均一に導入することができる。
【0033】
ところで、基板S内に押し込まれる不純物の量は、基板Sの表面に堆積されたボロンラジカルの膜厚に依存する。したがって、基板Sの表面に堆積されたボロンラジカルの膜厚を高精度に制御することで、所望量の不純物を基板Sに対して導入することができる。本発明では、堆積工程において、膜厚センサ50によって基板Sの表面に堆積したボロンラジカルの膜厚を比較的正確に検出することができる。したがって、照射工程において基板Sの内部に所望量の不純物(ボロン)を導入することができる。
【0034】
また本実施形態では、堆積工程後に真空チャンバ11内のジボランガスをアルゴンガスに置換している。これにより照射工程においてボロンラジカルの膜厚に衝突するイオンのエネルギーが均一化される。したがって、基板Sに対する不純物の導入量をさらに高精度に制御することができる。
【0035】
ここで堆積工程において、膜厚センサ50を構成する水晶振動子51は、プラズマ生成室12と基板Sとの間の空間を遮らない第1の領域に配置された状態で、基板Sに堆積されるボロンラジカルの膜厚を検出する。このため、本実施形態では、堆積工程を実施する前に、第1の領域と、プラズマ生成室12とステージ31に載置された基板Sとの間の空間を遮る第2の領域とで、水晶振動子51上へのラジカルの堆積速度(デポジションレート)を測定し、これらの測定結果から、第1の領域と第2の領域とのラジカルの堆積速度の比率を求める測定工程を実施している。また本実施形態では、この測定工程において、第2の領域、つまり基板Sに対向する領域の複数箇所でデポジションレートを測定し、その結果に基づいてプラズマ生成条件を調整することで、基板S上に堆積するボロンラジカルの膜厚の面内分布の均一化を図っている。
【0036】
測定工程では、図2に示すように、まずステップS1でプラズマ生成条件を設定し、設定したプラズマ生成条件で、基板Sに対向する領域(第2の領域)におけるデポジションレートを測定する(ステップS2)。具体的には、図3に示すように、基板Sに対向する領域の複数箇所、例えば、測定位置P1〜P3に移動させ、それぞれの測定位置で所定時間(例えば、5秒間)だけボロンラジカルを水晶振動子51上に堆積させて堆積量を測定する。次に、これら各測定位置P1〜P3で測定した堆積量のバラツキが所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS3)。ここで、堆積量のバラツキが所定範囲を超えている場合には(ステップS3:NO)、ステップS1に戻りプラズマ生成条件を調整する。一方、堆積量のバラツキが所定範囲内(例えば、1%以内)である場合には(ステップS3:YES)、ステップS4に進む。ステップS4では、各測定位置P1〜P3における堆積量の平均値から基板S上でのデポジションレートを算出する。
【0037】
次いでステップS5では、水晶振動子51を第1の領域、つまり基板Sよりも外側の領域(ホームポジションP0)に移動させて保持し、再び所定時間だけボロンラジカルを水晶振動子51上に堆積させて堆積量を測定する。そして、その結果からホームポジションP0におけるデポジションレートを算出する(ステップS6)。
【0038】
その後、ステップS4で算出された結果と、ステップS6で算出された結果とから、ホームポジションP0と、基板Sに対向する位置P1とにおけるデポジションレートの比率(補正係数)を算出する(ステップS7)。
【0039】
このようにデポジションレートの比率(補正係数)を求めておくことで、堆積工程において、ホームポジションP0に配置された水晶振動子51上に堆積したボロンラジカルの量(膜厚)に基づいて、基板S上に堆積したボロンラジカルの膜厚を求めることができる。つまり膜厚センサ50の検出結果に基づいて、堆積工程において基板S上に堆積するボロンラジカルの膜厚を高精度に制御することができる。したがって、照射工程においてボロンラジカルに含まれる元素を基板Sの内部に所望量だけ導入させることができる。
【0040】
このような測定工程は、所定のタイミングで実施すればよく、堆積工程前に毎回行うようにしてもよいが、例えば、デポジションレートの低下等によりプラズマ生成条件の変更が必要となった場合に実施するようにしてもよい。
【0041】
また基板S内に導入されるボロンラジカルの面内分布はできるだけ均一であることが好ましい。そのためには、基板Sの表面に堆積させたボロンラジカルの膜厚のバラツキを所定範囲内とする必要がある。すなわち基板Sの表面に堆積させたボロンラジカルの膜厚の面内分布を均一化する必要がある。基板S上に堆積したボロンラジカルの膜厚の面内分布は、磁気中性線22の広がり、つまりプラズマ中のラジカルの分布を変化させることで調整することができる。なお磁気中性線22の広がりは、例えば、上述のように磁場コイル21に流れる電流値等のデポジション条件を変化させることによって調整することができる。
【0042】
このようなプラズマ生成条件の調整を行う際、従来は、プラズマドーピング装置10によって基板S上に実際にボロンラジカルを堆積させ、基板Sを装置から取り出して断面SEMを観察することにより、基板S上に堆積したボロンラジカルの膜厚の面内分布を確認していた。このため、プラズマ生成条件の調整は煩雑な作業であった。
【0043】
これに対し本実施形態では、上述のように測定工程において水晶振動子51を移動させて基板S上の複数箇所におけるボロンラジカルの膜厚を測定することで、基板S上に堆積したボロンラジカルの膜厚の面内分布を容易に確認することができる。したがって、プラズマ生成条件を極めて容易に調整することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0045】
10 プラズマドーピング装置
11 真空チャンバ
12 プラズマ生成室
13 基板処理室
14 壁部材
15 天板
16 シャワープレート
21 磁場コイル
22 磁気中性線
23 アンテナコイル
24 コンデンサ
25 高周波電源
31 ステージ
32 ブロッキングコンデンサ
33 高周波電源
34 排気口
50 膜厚センサ(測定手段)
51 水晶振動子
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ生成室と、
該プラズマ生成室に連通して設けられて処理対象である基板を保持するステージが設けられた処理室と、を備え、
前記プラズマ生成室で生成されたプラズマ中の不純物のラジカルに含まれる元素を前記基板に導入するプラズマドーピング装置であって、
前記ラジカルの生成量を測定する測定手段を備えることを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項2】
前記測定手段は、水晶振動子を備え、該水晶振動子上に堆積したラジカルの量から前記ラジカルの生成量を求めることを特徴とする請求項1に記載のプラズマドーピング装置。
【請求項3】
前記水晶振動子が、前記プラズマ生成室と前記ステージに載置された前記基板との間の空間を遮らない第1の領域に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のプラズマドーピング装置。
【請求項4】
前記水晶振動子が、前記第1の領域と、前記プラズマ生成室と前記ステージに載置された前記基板との間の空間を遮る第2の領域との間を移動可能に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のプラズマドーピング装置。
【請求項5】
プラズマ生成室と、該プラズマ生成室に連通して設けられて処理対象である基板を保持するステージが設けられた処理室と、前記プラズマ生成室で生成されたプラズマ中の不純物のラジカルの生成量を測定する測定手段と、を備えるプラズマドーピング装置を用いたプラズマドーピング方法であって、
前記プラズマ中の不純物のラジカルを前記基板上に堆積させる堆積工程と、堆積されたラジカルにイオンを照射して不純物を前記基板表面に導入する導入工程と、を備え、
前記堆積工程では、前記測定手段の測定結果に基づいて前記ラジカルの堆積量を制御することを特徴とするプラズマドーピング方法。
【請求項6】
前記測定手段が、前記プラズマ生成室と前記ステージに載置された前記基板との間の空間を遮らない第1の領域と、前記空間を遮る第2の領域との間を移動可能に設けられた水晶振動子を備えるものであり、
前記第1の領域と前記第2の領域とで前記水晶振動子上への前記ラジカルの堆積速度を測定し、これらの測定結果から、前記第1の領域と前記第2の領域との前記ラジカルの堆積速度の比率を求める測定工程を備え、
前記堆積工程では、前記水晶振動子を前記第1の領域に配置した状態で、前記基板上に前記ラジカルを堆積させることを特徴とする請求項5に記載のプラズマドーピング方法。
【請求項7】
前記測定工程では、前記第2の領域の複数箇所で前記水晶振動子上への前記ラジカルの堆積速度を測定することを特徴とする請求項6に記載のプラズマドーピング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−178475(P2012−178475A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40929(P2011−40929)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】