説明

プラズマ処理装置

【課題】静電吸着力の解除に必要な時間を短縮して処理の効率を向上できるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】真空容器の内側に配置された処理室と、この処理室内の下方に配置されその上に略円形の試料が載置される試料台とを有し、この試料台上方の前記処理室内の空間にプラズマを形成して前記試料を処理するプラズマ処理装置であって、前記試料台の前記試料が載置される面上を覆う誘電体膜と、この膜の内側に配置され前記試料をこの試料を処理する際に前記誘電体膜上に吸着して保持するための電力が供給される正負の電極401の対とを備え、これらの電極が前記試料台の上方から見てその中心に対し左右について略対象に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の試料をプラズマを用いて処理するプラズマ処理装置に係り、特に、試料の処理中に試料を試料台上に静電気により保持する手段を有する試料台を備えたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような試料台を備えたプラズマ処理装置では、まず、プラズマを静電容量を備えた誘電体と考え、試料台上に設けられた誘電体膜内に、半導体ウエハ等の試料の大きさを考慮して形成された電極を配置して、これに所定の電位を与えて、プラズマに面した側と試料台に面した側とに異なる電荷を形成して、この試料台に面した側の電荷と誘電体膜内に形成した電荷との間で静電吸着力を形成するものが知られていた。
【0003】
しかし、このような技術では、プラズマに対して試料内部の一方の側に電荷を形成するもので、静電吸着力を形成するにはプラズマを形成することが必要であった。このため、吸着力の解除のために試料の処理を終了してもプラズマを形成する必要が有り、処理の効率を損なってしまっていた。
【0004】
そこで、試料台の誘電体膜内に、正負の電極を配置して各々に電位を印加して、半導体ウエハ等の試料の面内において、誘電体膜内の各電極に対応した位置に正負の電荷を形成し、これらの電荷と誘電体膜内に形成される電荷との間で静電吸着力を形成することが行われてきた。このような構成において、処理が終了した後、各々の電極で極が逆となるような電位を印加することで、試料内の電荷の極性を中和して静電吸着力を解除することが可能となり、プラズマを形成する必要が無くなり、処理の効率を向上させることが出来る。このような技術を開示する従来の技術文献としては、特開平6−120329号公報が知られていた。
【0005】
【特許文献1】特開平6−120329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、次のような問題点が有った。
【0007】
すなわち、上記従来技術では、一方の極の電極は試料台の中央側に配置された円形状であり、他方の電極は、これの周囲を囲んで配置されたリング状の形状を備えている。処理する試料が平板で、ほぼ誘電体膜状に均一に接する場合には、このような形状においては、静電吸着力が安定して供給できる。
【0008】
しかし、処理をしようとする試料がその前段階の処理において熱を受けて変形している場合、例えば、大きな熱を受けた側とその逆側の面では材料の違い等による膨張率の相違といった要因から反りが生じている場合では、試料が試料台に載置された際に、その全面にわたり均一に誘電体膜あるいは試料台の表面に接触することが困難となる。
【0009】
この場合に、静電吸着により試料を保持したとしても、静電吸着用の各電極の上側を覆って誘電体膜に接する面積が、各電極により異なってしまい、試料内に生じる正負の電荷の量が、大きく異なってしまう虞が有る。この場合、静電吸着力を解除しようとして、異なる極性を静電吸着電極に印加しても、必ずしも試料側の電荷に対応したものにすることが出来ず、電荷が十分な拡散が得られて吸着力が解除できるまで、多くの時間を必要となって、処理の効率を損なってしまうという問題が生じていた。
【0010】
また、このような試料の反りは外周側で大きくなるが、この大きな反りが生じる領域は、その前段階の処理や試料の製法等に依って異なり、試料台に載置された際にその表面との十分な接触面積を得られて静電吸着力を発揮できる領域は分布を有している。このような反りの生じる領域の変動に対して、安定して静電吸着力を形成し、短時間に吸着力の解除を行えて、処理の効率を向上させる点については、上記従来技術では、考慮されていなかった。
【0011】
本発明の目的は、静電吸着力の解除に必要な時間を短縮して処理の効率を向上できるプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、真空容器の内側に配置された処理室と、この処理室内の下方に配置されその上に略円形の試料が載置される試料台とを有し、この試料台上方の前記処理室内の空間にプラズマを形成して前記試料を処理するプラズマ処理装置であって、前記試料台の前記試料が載置される面上を覆う誘電体膜と、この膜の内側に配置され前記試料をこの試料を処理する際に前記誘電体膜上に吸着して保持するための電力が供給される正負の電極の対とを備え、この正負の電極が前記試料台の上方から見てその中心に対し左右について略対象に配置されることにより達成される。
【0013】
さらには、前記正負の電極の各々が前記試料台の中央部を中心とした円弧状の形状を備えたプラズマ処理装置により達成される。さらには、前記試料台の左右の側の各々に異なる径を有する前記円弧状の電極の複数が配置されたことにより達成される。
【0014】
さらにまた、前記試料台の左右の側の各々に異なる径を有する正負の電極が隣り合って配置されたことにより達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の一実施例に係るプラズマ処理装置の断面図である。
【0017】
図1に示すプラズマ処理装置は、真空容器10の内部に処理室100を有し、その上部に処理室100内に電磁波を放射して電界を供給するアンテナ101及びアンテナプレート101a、下部にウエハ120などの被処理対象である試料を載置する試料台150を備えている。真空容器110は、アンテナ101を保持して真空容器10を開閉可能なハウジング105と、このハウジング105が閉じられている際にその下方から指示して真空容器10を構成する側壁111、及びこの側壁111の下方に配置された下部容器112を有している。この下部容器112と試料台150の間の空間は、処理室100内のガスやプラズマ、反応生成物が移動して排気手段である排気ポンプ104により排気される空間となっている。アンテナ101は、真空容器の一部としてのハウジング105に保持され、アンテナプレート101aと保持ステージ150は平行して対向する形で設置される。処理室100の周囲には、たとえば電磁コイルとヨークよりなる磁場形成手段102が設置されている。
【0018】
保持ステージ150は、その上に載置されるウエハ120を誘電体膜を介して静電気により吸着して保持する機能を有した、一般に静電吸着電極と呼ばれているものである。図1に示すように、静電吸着電極である保持ステージ150は、アルミニウム製の電極ブロック151,誘電体膜152、それにアルミナ製の電極カバー153で構成される。電極ブロック150内には、真空容器110外に配置された温調ユニット109において所定の温度に調節されて供給された熱交換媒体が循環する流路154が形成されている。アルミナ製の電極カバー153は、導体で構成された電極ブロック151を保護するためのカバーである。静電吸着電極である保持ステージ150の大きさは、12インチ(直径300
mm)のウエハ120を対象とした場合には、直径が340mmで、全体の厚さが40mmである。電極ブロック151は、真空容器110外に配置された高電圧電源106とバイアス電源107とに、図示していない接続器により、それぞれ接続されている。
【0019】
本実施例の誘電体膜152は、厚さは0.1mm の溶射法で形成したアルミナセラミックスからなる略円板形状を有しており、この円板の上面にウエハ120が載置される。この誘電体膜2の材質や厚さは、この例に限られたものではなく、例えば合成樹脂の場合は、それに応じて0.1mm から数mmの厚さが選択できる。
【0020】
誘電体膜152は、図2(a)に示すように、そのウエハ120に対向してこれに接する表面には、放射状に伸びる直線状のスリットの複数と、これらに連通した複数条の同心円状のスリットとからなる伝達溝201が設けられている。
【0021】
さらに、これらに連通して誘電体膜152表面に開口されたガス導入孔202から伝熱用のHeガスが誘電体膜152または伝達溝201に導入され、上記スリット(及びこの誘電体膜152)とこの上に載置される被処理体であるウエハ120との間に形成される空間へ両者の熱伝達を行うためのHeガスが導入される。この空間では、ウエハ120の裏面に均一な圧力のHeガス(通常1000Pa程度)が充填される。
【0022】
本実施例では、前記ガス導入孔202は、試料台150あるいは誘電体膜152の中央部及び最外周の同心円状のスリット内の複数の位置に設けられている。外周側に多数のガス導入孔202を配置することで、熱伝達ガスが外周から逃げやすくガスの圧力が低下してしまうことを補償し、また、温度が高くなりやすいウエハ120の外周側をより低い温度に調節可能にしている。
【0023】
また、この誘電体膜152の内部には、前記した被処理対象であるウエハWを誘電体膜152(保持ステージ150)上に吸着して保持するための電圧が印加される薄膜状の電極が設けられている。
【0024】
処理室100は真空排気弁103により、10000分の1Paの圧力の真空を達成できる真空容器110の内側に配置され密封された容器である。被処理対象であるウエハ
120のエッチング,成膜等の処理を行う処理ガスは、図示しないガス供給手段から所定の流量と混合比をもって処理室100内に供給され、複数の回転可能で連通を開閉可能なフラップを有する真空排気弁103と排気ポンプ104とにより処理室100内の圧力が制御される。本発明のようなプラズマ処理装置では、一般に、エッチング中の処理圧力を0.1Paから10Pa以下の範囲に調整して使用することが典型的である。
【0025】
アンテナ101には、マッチング回路122を介してアンテナ電源121が接続される。アンテナ電源121は、300MHzから1GHzのUHF帯周波数の電力を供給するもので、本実施例ではアンテナ電源121の周波数を450MHzとしている。静電吸着電極Sには、静電吸着用の高電圧電源106と、たとえば200kHzから13.56
MHzの範囲のバイアス電力を供給するバイアス電源107がマッチング回路108を介して、それぞれ接続される。また、静電吸着電極Sには、温度制御用の温調ユニット109が接続される。なお、本実施例では、バイアス電源107の周波数を2MHzとしている。
【0026】
また、試料台150上の誘電体膜152表面に供給される熱伝達用のガスは真空容器
110外部の試料台150下方に配置されたガス源113からガス供給量速度を調節するガス導入調節弁114を介して、誘電体膜152表面に導入される。
【0027】
このようなエッチング処理装置では、真空排気弁103及び真空ポンプ104との作動により処理室100内部が減圧され所定の圧力に達すると、真空容器110の下部容器
112内部を処理対象のウエハ120が、図示していない搬送用ロボットアームにより搬送される。
【0028】
搬送されたウエハ120は、試料台150上に載置された後、試料台150が処理室
100内を上方に移動して所定の位置に配置され、誘電体膜152内の静電吸着用の電極に電圧が印加されてウエハ120が試料台150上に吸着,保持される。
【0029】
その後、処理ガスが処理室100内に供給され、アンテナ101及びアンテナプレート101aから供給される高周波の電界と磁場形成手段102から供給される磁界との相互作用によって、処理室100内に導入された供給された処理ガスが効率良くプラズマ化される。
【0030】
また、ウエハ120の処理においては、ウエハに入射するプラズマ中のイオンの入射エネルギーを高周波バイアスによって制御し、所望の表面の形状が得られる。
【0031】
前記処理が終了すると、ウエハ120の静電吸着が解除され、ウエハ120が試料台
150から取外されて下部容器112内から搬出される。
【0032】
図2は、図1に示すプラズマ処理装置の試料台150の構成の概略を拡大して示す図面である。図2(a)は、上記の通り、試料台150を上方から見た上面図であり、誘電体膜152と試料台リング153とが示されている。図2(b)は、図2(a)のA−A断面を示す縦断面図である。
【0033】
試料台150の上部は、図2(b)に示すように、内部に熱交換媒体が通流する流路
154が設けられ高周波電力とバイアス電力が印加される電極ブロック151と、この上部に配置され静電吸着用の電極を内部に含む誘電体膜152,電極ブロック151及び誘電体膜152,ウエハ120の外周に配置され、これらをプラズマから保護する試料台リング153とを有している。
【0034】
電極ブロック151内には、前記流路154及び誘電体膜152表面に伝熱ガスを供給する熱伝達ガス供給路203,静電吸着用の電極へ電圧を印加するためのコネクタプラグ204とが配置されている。
【0035】
伝熱ガス供給路203は、誘電体膜152表面のガス導入孔202の各々と連通されており、電極ブロック151及び誘電体膜152の試料台150中央部と外周側とにそれぞれ設けれられている。また、ガス源113からの熱伝達ガスは、試料台中央部下方の熱伝達ガス供給プラグ205を介して熱伝達ガス供給路203に導入される。
【0036】
コネクタプラグ204及び熱伝達ガス供給プラグ205は、電極ブロック151下方に配置されて繋げられたベース206に取り付けられている。熱伝達ガスプラグ205ガスの一部は、試料台150の中央部の熱伝達ガス供給路203に、一部は、電極ブロック
151とベース206との間に設けられた導入路を介して試料台150外周側の熱伝達ガス供給路203に供給される。コネクタプラグ204は、図1に示すように、試料台150下方の電位調節手段と接続されて、所定の電位が静電吸着用電極に印加される。
【0037】
上記の通り、誘電体膜152の表面には、熱伝達ガスが導入され充填される、ウエハ
120または円筒形上の試料台150の半径方向及び周方向に複数設けられたスリットが設けられている。誘電体膜152上にウエハ120が載置され、これらスリット以外の誘電体膜152の表面とウエハ120とが吸着されて保持されて出来る、スリットによる空間に、供給された熱伝達ガスが充填される。
【0038】
また、試料台リング153の上部には、試料台リング153の外周に沿った端部に、突起部153aが設けられている。本実施例では、突起部153aは断面が台形状を有している。この突起部153aの設けられる位置は、試料台の中央部からみて、真空排気弁
103または真空ポンプ104が配置された方向に設けられている。
【0039】
このような位置に設けることにより、ウエハ120の上方に生成される反応生成物の移動や流れを調節し、反応生成物が真空排気弁の側に偏って移動してしまい、ウエハ120の面上の位置による処理の結果が異なってしまい、処理の分布が大きくなってしまうことを抑制している。
【0040】
試料台150の直下方に真空排気弁103が配置されている場合には、試料台リング
153の外周のほぼ全周に沿って突起部153aを配置してもよい。
【0041】
また、本実施例では、試料台リング153の内周側、及び誘電体膜152の外周側に沿って、4本のプッシャピン207を配置している。このプッシャピン207は、ウエハ
120を処理の開始前、或いは処理後に試料台150上で隙間を介して支持し、ロボットアームとの間でウエハを授受するものである。このために、プッシャピン207は、ウエハ120の処理後に誘電体膜152の上からウエハ120を持ち上げる、あるいは、受け取ったウエハ120を支持しつつ相対的に下降させて、下方の試料台150上に載せる動きをする。
【0042】
この動きのために、プッシャピン207は、誘電体膜152の外周端部の直ぐ外側に位置し、ウエハ120の外周端部の裏面と接してこれを支持するように配置され、その支持部は、プッシャピン207の本体の先端に位置し、その本体よりも径が大きく構成されている。プッシャピン207の上下方向の移動は、図示していない、試料台150下方のアクチュエータにより行われる。
【0043】
図3は、図2(b)B−B断面の構成を示す横断面図である。この図において、電極ブロック151部分を中心とした試料台150の断面を示している。この図においては、図1,図2において説明した部分については、同一符号を引用したが、説明を省いた。
【0044】
本実施例では、熱媒体が通流する流路154は、電極ブロック151あるいは試料台
150の外周側に配置された二重の通路となっている。特に本実施例では、温調ユニット109により温度調節された熱交換媒体は、熱交換媒体導入孔301から流路154に流入し、外周側の流路154を略一周した後、流路154の内周側の流路を略一周して熱交換媒体導出路302から流出する。
【0045】
また、電極ブロック151内には、静電吸着用電極のためのコネクタプラグ204は、この静電吸着用電極の正負のそれぞれの電極用に、2本のプラグが設けられている。また、上記の通り、試料台の中央側と外周側の複数箇所に、熱伝達ガス供給路203が配置されている。
【0046】
上記のように、本実施例では、熱交換媒体が通流する流路154は、試料台150の内側で内外複数の略円形となる経路を構成している。このような構成において、熱交換媒体は、外側の流路154から内側の流路154へ流れるように構成される。外側を流れる熱交換媒体は、内側を流れる熱交換媒体よりも相対的に潜熱が大きく、熱交換の効率が試料台150外周側で大きくなる。このため、外周側の熱交換効率がより大きくなり、試料台150を冷却する場合には、温度を内周側より低くすることが容易となる。これは、処理中においてウエハの外周側をより低く調節することで処理の不均一を抑制しようとする場合に有利となる。
【0047】
また、本実施例では、2本の静電吸着用電極のためのコネクタプラグ204を配置しているが、静電吸着用電極が正負2以上有る場合には、必要に応じてプラグを配置する必要が有る。
【0048】
図4は、図2C−C断面の試料台の構成を示す横断面図である。特に、この図面では、誘電体膜152内部に配置された静電吸着電極の構成の概略を示している。
【0049】
この図において、静電吸着用電極401は、所定の厚さの膜として誘電体膜152内に配置されている。この静電吸着用電極401は、誘電体膜152を途中の所定の膜厚さまで溶射等の方法で形成した後、適切なマスクを用いて、この誘電体膜の上面に塗付、或いは溶射やCVD等の方法で形成される。この後、この静電吸着用電極401の上から、再度、誘電体膜152を形成して、上記伝達溝201を形成して、誘電体膜152を仕上げる。
【0050】
本実施例では、静電吸着用電極401は、互いに絶縁されて異なる極性にされる電極
401aと電極401bとが、所定の大きさの幅を有する略円弧状の部分を備えている。例えば、本実施例では、ウエハ120の処理中には、電極401aが正電極として、401bが負電極として電位を調節されるものとする。
【0051】
本実施例では、これらの略円弧状の部分は、周方向におよそ180度の角度を有して、この周方向の角度の範囲で内周端と外周端とが異なる半径でほぼ同心の円弧となっている。さらに、静電吸着用電極401は、試料台150の上方から見て、試料台150の中心を通る仮想の線について、その左右の側で円弧が対象な位置と形状となるように配置されている。つまり、一方の側のいずれかの電極の任意の径の円弧状部分について、他方の側において対象に位置する同じ径の円弧状部分が存在して、これら対象に位置する電極の極性は異なっているものである。
【0052】
さらに、左右側に対象に配置された円弧状の電極401は、試料台150の径方向に異なる径の円弧であり、各々が多重の同心円状に配置されている。一方の側で多重の円弧状部分は、3重以上となっていることが望ましい。さらに、正負それぞれの電極401a,401bの各々の円弧状部分の複数が試料台の径方向について交互に位置するように配置されている。これらの隣り合った正負の異なる極の電極401a,401bの間には、絶縁部材が配置されている。この絶縁部材は、誘電体膜152と同部材でもよい。また、本実施例では、電極401a,401bは、それらの円弧状の部分の端部において、その外周側に位置して異なる径の円弧状部分に繋がる部分を有し、厳密にはこの接続部分においては円弧形状となっていない。このように、本実施例は、電極401a,401bのそれぞれが試料台150の中央部側から外周側に繋がる1つの部材となるように構成されており、静電吸着用電極401は、2つの膜部材で構成されている。このため、図3に示すように、静電吸着用電極401に電位を与えるためのコネクタプラグ204は2本となっている。
【0053】
これらの電極401の円弧の角度は、本実施例では、それぞれ略180度となっているが、これに限ったものではなく、略90度,60度でも良い。
【0054】
このようにすることで、試料台150の中央部を中心とした任意の半径の円において、この円内での正負の2つの電極401a,401bの各々の面積が略同一になるように構成される。さらに、この任意の半径の円の円周に沿った領域や円周上の長さにおいても、正負の電極の面積や、円周が位置する長さも略等しくなるように構成されている。特に、本実施例では、試料台150の上方から見て、試料台の中心部分を通る仮想の線の両側において、静電吸着用電極401の正負の電極401a,401bの略円弧状となる部分が対象となる位置に配置されている。
【0055】
このような構成においては、反りを有するウエハが載置された際でも、試料台150中央部で誘電体膜152と接するか或いは、距離が接近して静電吸着用電極401との相互作用で、正負の電荷が集中するそれぞれの極の面積を等しくすることで、吸着力が安定する。さらに、反りが大きくなり、静電吸着力が小さくなり吸着力を発揮できなくなる境界の部分において、正負の電極の面積、あるいは長さがそれぞれ略等しくなり、ウエハ120内に生じる各々の極の電荷の量を等しくして、吸着を解除して除電する際の時間を短縮することが出来る。
【0056】
また、静電吸着用電極401は、401a,401b2つの部材で構成されているが、上記境界となる部分の近傍で正負の極性となる電極の面積がおよそ等しくなれば良く、使用に応じて電極の部材の個数は決定される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例に係るプラズマ処理装置の断面図である。
【図2】図1に示すプラズマ処理装置の試料台150の構成の概略を拡大して示す図面である。
【図3】図2(b)B−B断面の構成を示す横断面図である。
【図4】図2C−C断面の試料台の構成を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0058】
100…処理室、101…アンテナ、102…磁場形成手段、103…真空排気弁、
104…真空ポンプ、105…ハウジング、106…高電圧電源、107…バイアス電源、108,122…マッチング回路、109…温調ユニット、120…ウエハ、121…アンテナ電源、S…静電吸着電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器の内側に配置された処理室と、この処理室内の下方に配置されその上に略円形の試料が載置される試料台とを有し、この試料台上方の前記処理室内の空間にプラズマを形成して前記試料を処理するプラズマ処理装置であって、
前記試料台の前記試料が載置される面上を覆う誘電体膜と、この膜の内側に配置され前記試料をこの試料を処理する際に前記誘電体膜上に吸着して保持するための電力が供給される正負の電極の対とを備え、
これらの電極が前記試料台の上方から見てその中心に対し左右について略対象に配置されたプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、前記正負の電極の各々が前記試料台の中央部を中心とした円弧状の形状を備えたプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマ処理装置であって、前記試料台の左右の側の各々に異なる径を有する前記円弧状の電極の複数が配置されたプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプラズマ処理装置であって、前記試料台の左右の側の各々に異なる径を有する正負の電極が隣り合って配置されたプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−19534(P2006−19534A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196199(P2004−196199)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】