プラズマCVD装置、薄膜の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法
【課題】フィラメントを使用せずに薄膜を成膜するプラズマCVD装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るプラズマCVD装置は、チャンバー1と、前記チャンバー内に配置されたリング状のICP電極17,18と、前記ICP電極に電気的に接続された第1の高周波電源7,8と、前記チャンバー内に原料ガスを供給するガス供給機構と、前記チャンバー内を排気する排気機構と、前記チャンバー内に配置され、前記ICP電極に対向するように配置されたディスク基板2と、前記ディスク基板に接続された第2の高周波電源6と、前記チャンバー内に配置され、前記ICP電極に対向し且つ前記ディスク基板とは逆側に配置されたアース電極と、前記チャンバー内に配置され、前記ICP電極と前記ディスク基板との間の空間を囲むように設けられたプラズマウォール24,25と、を具備し、前記プラズマウォールがフロート電位とされていることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係るプラズマCVD装置は、チャンバー1と、前記チャンバー内に配置されたリング状のICP電極17,18と、前記ICP電極に電気的に接続された第1の高周波電源7,8と、前記チャンバー内に原料ガスを供給するガス供給機構と、前記チャンバー内を排気する排気機構と、前記チャンバー内に配置され、前記ICP電極に対向するように配置されたディスク基板2と、前記ディスク基板に接続された第2の高周波電源6と、前記チャンバー内に配置され、前記ICP電極に対向し且つ前記ディスク基板とは逆側に配置されたアース電極と、前記チャンバー内に配置され、前記ICP電極と前記ディスク基板との間の空間を囲むように設けられたプラズマウォール24,25と、を具備し、前記プラズマウォールがフロート電位とされていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD装置、薄膜の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法に係わり、特に、フィラメントを使用することなく薄膜を成膜できるプラズマCVD装置、このプラズマCVD装置を用いた薄膜の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラズマCVD(chemical vapor deposition)装置の一例には熱フィラメント−プラズマCVD(F−pCVD)装置が挙げられる。このプラズマCVD装置は、成膜室内で真空条件下に加熱されたフィラメント状のカソードとアノードとの間の放電により成膜原料ガスをプラズマ状態とし、そして、マイナス電位により上記のプラズマを基板表面に加速衝突させて成膜する装置である。カソード及びアノードは、共に金属で構成されるが、特にフィラメント状のカソードにはタンタルの金属が使用される。本装置によれば、炭素(C)膜などの成膜が可能である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許3299721(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のプラズマCVD装置では、フィラメント状のカソードを2400℃以上に加熱して熱電子を発生させて使用するため、短期間でフィラメントが切れてしまい、寿命が非常に短い。例えば、1回1回大気に開放して装置を使用するバッチ式の場合は2〜3バッチでフィラメントが切れてしまう。また、チャンバー内を常に真空状態にしてフィラメントを連続点燈するロードロック式の場合でも5日間程度でフィラメントが切れてしまう。
【0005】
上述したようにフィラメントが切れ易いという問題があるため、成膜中にフィラメントが切れてしまうこともあり、この場合は製品がすべて不良になってしまう。そして、次の成膜処理を行うには、チャンバー内の真空を破ってフィラメントを交換する必要があるが、フィラメントから熱電子が十分に発生するようになるには、1時間程度フィラメントを点燈させるエージング処理を行う必要がある。このようにフィラメントが切れ易く、また一度フィラメントが切れると、次の成膜処理を行うまでに時間がかかるという問題があった。
【0006】
また、上記従来のプラズマCVD装置でDLC膜やSiO2膜を成膜する場合、チャンバー内にO2やCF4を導入してプラズマクリーニングを行う必要が生じるが、このプラズマクリーニングを行うとフィラメント状のカソード電極の表面が酸化やフッ化されてしまい、フィラメントが切れてカソード電極が使用できなくなってしまう。従って、O2やCF4を用いたプラズマクリーニングを行うことができなかった。
【0007】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、フィラメントを使用することなく薄膜を成膜できるプラズマCVD装置、薄膜の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るプラズマCVD装置は、チャンバーと、
前記チャンバー内に配置されたリング状電極と、
前記リング状電極に電気的に接続された第1の高周波電源と、
前記チャンバー内に原料ガスを供給するガス供給機構と、
前記チャンバー内を排気する排気機構と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極に対向するように配置された被成膜基板と、
前記被成膜基板に電気的に接続された第2の高周波電源又はDC電源と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極に対向し且つ前記被成膜基板とは逆側に配置されたアース電極と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極と前記被成膜基板との間の空間を囲むように設けられたプラズマウォールと、
を具備し、
前記プラズマウォールがフロート電位とされていることを特徴とする。
なお、前記リング状電極はICP電極であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記リング状電極と前記アース電極との間に配置されたマグネットをさらに具備することも可能である。前記マグネットはリング形状であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記リング状電極は、そのリング内面が該リング状電極の隣の前記チャンバーの内面とほぼ同一面になるように配置されていることが好ましい。
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記リング状電極とそのリング外面と対向する前記チャンバーの内面との間隔は5mm以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内にガスを供給する経路の最大経路幅は5mm以下であり、前記経路はアース電位とされていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記第2の高周波電源から出力される周波数は前記第1の高周波電源から出力される周波数より低いことが好ましい。
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記第1の高周波電源は1MHz〜27MHzの周波数を有し、前記第2の高周波電源は100〜500kHz以下の周波数を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記アース電極を加熱する加熱手段をさらに具備することも可能である。また、前記アース電極は前記加熱手段によって300〜500℃の温度に加熱されることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るプラズマCVD装置おいて、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内に供給されるガスは前記加熱手段によって加熱されることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内に供給される供給口は、前記アース電極を囲むリング形状とされていることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記アース電極は複数のアース電極からなり、前記複数のアース電極が互いに対向する間隔が5mm以下であることも可能である。
【0017】
本発明に係る薄膜の製造方法は、前述したいずれかのプラズマCVD装置を用いた薄膜の製造方法において、
前記チャンバー内に被成膜基板を配置し、
前記リング状電極と前記アース電極との間の放電によって前記原料ガスをプラズマ状態とすることにより、前記被成膜基板の表面に薄膜を形成することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る薄膜の製造方法において、前記薄膜は炭素又は珪素が主成分であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る磁気記録媒体の製造方法は、前述したいずれかのプラズマCVD装置を用いた磁気記録媒体の製造方法において、
非磁性基板上に少なくとも磁性層を形成した被成膜基板を前記チャンバー内に配置し、
前記チャンバー内で前記リング状電極と前記アース電極との間の放電により前記原料ガスをプラズマ状態とし、このプラズマを前記被成膜基板の表面に加速衝突させて炭素が主成分である保護層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、フィラメントを使用することなく薄膜を成膜できるプラズマCVD装置、薄膜の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるプラズマCVD装置の全体構成を示す模式図である。図2は、図1に示すチャンバー1の左側半分を拡大した断面図である。図3は、図1に示すICP電極(1ターンコイル)の斜視図である。図4は、図1に示すガス吐出リング及びヒータの断面図である。図5は、図1に示すマグネットの断面図である。図6は、図1に示すICP電極の断面図である。
【0022】
図1に示すように、プラズマCVD装置は、被成膜基板(ディスク基板)2の両面に同時に成膜可能な装置である。この装置はチャンバー1を有しており、このチャンバー1の中央にはディスク基板2が保持されている。プラズマCVD装置は、ディスク基板2の左右が対称の構成を備えている。
【0023】
ディスク基板2はスイッチ21を介してマッチングボックス3に電気的に接続されており、また、ディスク基板2はスイッチ21を介してDC電源9に電気的に接続されている。マッチングボックス3はRF加速電源6に電気的に接続されている。RF加速電源6には500kHz以下の低い周波数の電源を用いるのが好ましい。これにより、被成膜基板2の周囲に放電が広がらないようにすることができる。本実施の形態では、周波数が250kHzで500WのRF加速電源6を用いる。
【0024】
チャンバー1の中央には、チャンバー1内を真空排気する真空排気機構が接続されている。この真空排気機構は、チャンバー1に繋げられたターボ分子ポンプ10と、ターボ分子ポンプ10に繋げられたドライポンプ11、チャンバー1とターボ分子ポンプ10との間に配置されたバルブ12と、ターボ分子ポンプ10とドライポンプ11との間に配置されたバルブ14と、バルブ12とチャンバー1との間に配置された真空計16とを有している。
【0025】
プラズマCVD装置は図2、図3及び図6に示すようにリング形状のICP電極(カソード電極)17を有しており、このICP電極17はディスク基板2の一方の主面に対向する側(図1の左側)に配置されている。ICP電極17は、そのリング内面がICP電極17の隣のチャンバー1の内面とほぼ同一面になるように配置されている。これにより、ICP電極17にパーティクルゲットシート(例えば銅シート)を容易に貼り付けることができ、その結果、ICP電極にCVD膜が付着するのを抑制でき、メンテナンスが容易になる。このICP電極17の外観形状は図3に示すような1ターンコイルのリング形状である。また、図6に示すように、ICP電極17とチャンバー1の内面との間隔17aは5mm以下(好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下)である。このように5mm以下の間隔とする理由は、5mm以下の隙間には異常放電が起こらずCVD膜が付着しないため、その隙間のチャンバー1の内面にCVD膜が付着することを防止できるからである。
また、同様に、ディスク基板2の他方の主面に対向する側(図1の右側)には前記ICP電極17と同様のICP電極18が配置されている。
【0026】
ICP電極17,18それぞれの出力端Aはマッチングボックス(MB)4,5を介してRFプラズマ電源7,8に電気的に接続されており、ICP電極17,18それぞれの出力端Bは可変コンデンサ(図示せず)を介してアース電源(図示せず)に電気的に接続されている。RFプラズマ電源7,8それぞれには1MHz〜27MHzの周波数の高周波電源を用いるのが好ましい。これにより、イオン化した原料ガスを拡散しやすくすることができる。なお、本実施の形態では、13.56MHzの周波数で500Wの高周波電源を用いている。
【0027】
プラズマCVD装置は図1に示すようにガス吐出リング28を有しており、このガス吐出リング28はICP電極17に対してディスク基板2とは逆側に位置するチャンバー1の端に配置されている。このガス吐出リング28は、図2及び図4に示すように、ガス導入口28aと、このガス導入口28aと繋げられたリング状経路28bと、このリング状経路28bに繋げられた複数のガス吐出口28cと、これらガス吐出口28cに繋げられたリング状吹き出し口28dとを有している。ガス吐出リング28はアース電位とされている。また、ガス吐出リング28にはガス供給機構が接続されている。
【0028】
リング状経路28bは、その経路幅が5mm以下(好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下)である。複数のガス吐出口28cは、リング状経路28bに等間隔に配置され、そのリングの径方向に均一にガスを吐出するものである。つまり、ガス供給機構によってガス導入口28aから導入されたガスは、リング状経路28bを通って複数のガス吐出口28cからリングの径方向に均一性よく吐出され、この吐出されたガスは均一性良くリング状吹き出し口28dからチャンバー1内に導入されるようになっている。また、リング状経路28bの経路幅を5mm以下にする理由は、5mm以下の経路幅のリング状経路には放電が起こらずCVD膜が付着しないため、ガス吐出リング28にCVD膜が付着することを防止できるからである。
【0029】
また、同様にICP電極18に対してディスク基板2とは逆側に位置するチャンバー1の端には同様の構成のガス吐出リング29が配置されており、このガス吐出リング29にはガス供給機構が接続されている。
【0030】
ガス供給機構は図1に示すように原料ガス供給源30,31を有しており、原料ガス供給源30,31には液体のC6H5CH3が入れられている。原料ガス供給源30,31は、それを加熱する加熱手段(図示せず)を有している。原料ガス供給源30,31はバルブ32,33に接続されており、バルブ32,33は配管を介してバルブ34,35に接続されている。バルブ34,35はマスフローコントローラ36,37に接続されており、マスフローコントローラ36,37はバルブ38,39に接続されている。バルブ38,39は配管を介してガス吐出リング28,29のガス導入口に接続されている。前記加熱手段によってC6H5CH3が加熱され気化された原料ガスがチャンバー1内に導入される間に冷やされないように、配管にはヒータ30a,31aが巻かれている。
【0031】
また、ガス供給機構は、Arガス源及びO2ガス源を有している。Arガス源は配管を介してバルブ40,41に接続されており、バルブ40,41はマスフローコントローラ42,43に接続されている。マスフローコントローラ42,43はバルブ44,45に接続されており、バルブ44,45は配管を介してガス吐出リング28,29に接続されている。O2ガス源は配管を介してバルブ46,47に接続されており、バルブ46,47はマスフローコントローラ48,49に接続されている。マスフローコントローラ48,49はバルブ50,51に接続されており、バルブ50,51は配管を介してガス吐出リング28,29のガス導入口に接続されている。
【0032】
プラズマCVD装置はヒータ26,27を有しており、ヒータ26,27はガス吐出リング28,29の内側に配置されている。ヒータ26,27は、それ自身がアース電極(アノード電極)であるため、加熱されたアース電極となる。また、ヒータ26,27はヒータ用電源52,53に電気的に接続されており、ヒータ用電源52,53は温調計54,55に電気的に接続されている。この温調計54,55によってアース電極の温度を測定し、その測定結果に基づきヒータ用電源52,53によってヒータ26,27の加熱力を調整するようになっている。
【0033】
ディスク基板2にDLC膜を成膜する場合は、前記アース電極にもDLC膜が付着する。絶縁体であるDLC膜が導電体であるアース電極を覆うと、アース電極とICP電極17,18との間で放電が起こらなくなるし、仮に放電が起きても、ICP電極とチャンバーとの間に放電が起きてプラズマが膨らんでしまい、プラズマ密度が低下する。しかし、前記ヒータ26,27自身をアース電極とし、そのアース電極を450℃以上に加熱することにより、アース電極に付着したDLC膜を導電体であるグラファイトにすることができ、その結果、アース電極とICP電極17,18との間で放電を起こさせることができる。つまり、アース電極を450℃以上に加熱しながらディスク基板2にDLC膜を成膜する処理を行うと、アース電極に付着したDLC膜を常にグラファイトとすることができるため、アース電極とICP電極17,18との間での放電を長時間連続的に持続させることができる。また、ヒータの近傍にガス吐出リングを配置しているため、ヒータの熱でガスの中の分子が加熱されて化学反応をしやすくされ、その結果、パーティクルを低減することができる。
【0034】
プラズマCVD装置は図2に示すように円筒形状のプラズマウォール24を有しており、プラズマウォール24はディスク基板2とICP電極17との間に配置されている。このプラズマウォール24はICP電極17とディスク基板2との間の空間を囲むように設けられている。このプラズマウォール24はフロート電位に電気的に接続されている。詳細には、図1に示すようにプラズマウォール24はスイッチ22を介して接地電位に電気的に接続されており、このスイッチ22はプラズマウォール24とアース電源を接続していない状態である。
【0035】
このようにプラズマウォール24をフロート電位にすることにより、プラズマウォール24によってICP電極17とディスク基板2との間において放電が生じるのを抑制できる。従って、ICP電極17とアノード電極との間の放電により発生したイオン化された原料ガスをディスク基板2へ導く際に、プラズマウォール24にCVD膜が付着するのを抑制できるし、またプラズマウォール24にCVD膜が付着したとしても、プラズマウォール24から剥がれにくい軟らかいCVD膜となり、パーティクルを抑制できる。
【0036】
詳細には、プラズマウォール24内にはイオンが少ないので、プラズマウォール24に高密度のCVD膜が付着するのを抑制できる。また、フロート電位のプラズマウォール24によってアース電界にイオンがトラップされることなくディスク基板2へイオンが直進できる。また、プラズマウォール24をアース電位にすると、プラズマウォール内にプラズマが発生してしまうが、プラズマウォールをフロート電位にすることによりプラズマが発生しないようにすることができる。
また、同様に、ディスク基板2とICP電極18との間にプラズマウォール25が配置されている。
【0037】
プラズマウォール24,25のディスク基板2側の端部には膜厚補正板56,57が取り付けられており、この膜厚補正板56,57はディスク基板2の両サイドに配置されている。ディスク基板2が円盤状の場合、その外周部は、CVD膜が厚く形成される傾向があり、ディスク基板2の両面に同時に成膜する際に左右のプラズマが互いに影響し合う領域となる。膜厚補正板56,57は、円盤状のディスク基板2の外周部を覆うようなドーナツ形状を有し、ディスク基板2の全体に亘り、形成されるCVD膜の厚さを均一にする機能を有する。
【0038】
プラズマCVD装置はリング状のマグネット58,59を有しており、図1及び図2に示すように、マグネット58,59は前記アース電極(ヒータ26,27)とICP電極17,18との間に配置されている。このマグネット58,59は、図5に示すようにチャンバー1の外側を覆うリング形状を有している。このマグネット58,59により発生する磁場にプラズマを集中させ、それによりプラズマの着火が容易になる。これと共に、マグネット58,59により発生する磁場によって高密度のプラズマを発生させることができ、イオン化効率を向上させることができる。
【0039】
次に、図1のプラズマCVD装置を用いてディスク基板2にCVD膜を成膜する方法は次のとおりである。
【0040】
まず、チャンバー1内にディスク基板2を保持し、真空排気機構によってチャンバー1内を真空排気する。なお、本実施の形態では、被成膜基板としてディスク基板2を用いているが、被成膜基板としてディスク基板に代えて例えばSiウエハ、プラスチック基板、各種電子デバイスなどを用いることが可能である。プラスチック基板を用いることができるのは、本装置が低温(例えば150℃以下の温度)で成膜できるからである。
【0041】
次いで、原料ガスをチャンバー1内に供給する。なお、原料ガスとしては、種々の原料ガスを用いることが可能であり、例えば、炭化水素系ガス、珪素化合物ガス及び酸素などを用いることが可能である。珪素化合物ガスとしては、取り扱いの容易で低温での成膜が可能なヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサン(これらを総称してHMDSともいう)を用いることが好ましい。
【0042】
そして、チャンバー1内が所定の圧力になったら、ICP電極17,18にRFプラズマ電源7,8によって13.56MHzの周波数で300Wの高周波電力を供給し、RF加速電源6によって100〜500kHz(好ましくは250kHz)の周波数で500Wの高周波電力を、マッチングボックス3を介してディスク基板2に供給する。これにより、ICP電極17,18とアノード電極との間で放電が起こり、ICP電極17,18の近傍でプラズマを発生させる。その結果、原料ガスをイオン化することができる。この際、マグネット58,59によってICP電極17,18の近傍に磁場が発生されているので、この磁場によってプラズマを高密度化することができ、イオン化効率を向上させることができる。このようにしてイオン化された原料ガスをディスク基板2へ導き、ディスク基板2の両面にCVD膜を成膜することができる。なお、RF加速電源6に代えてDC加速電源9によってDC電力をディスク基板2に供給しても良い。
【0043】
このようにして成膜される薄膜は、例えば炭素又は珪素が主成分である膜であり、炭素が主成分である膜の一例としてはDLC膜が挙げられ、珪素が主成分である膜の一例としてはSiO2膜が挙げられる。SiO2膜を成膜する場合の原料ガスはHMDS及び酸素を有する。
【0044】
上記実施の形態1によれば、従来技術のようにタンタルからなるフィラメント状のカソード電極を用いずにICP電極(カソード電極)17,18を用いているため、酸素ガスをチャンバー1内に導入してもカソード電極が使用できなくなることを防止できる。従って、酸素ガスを含む原料ガスを使用することが可能となる。また、チャンバー1内に酸素ガスを導入して酸素アッシングによってプラズマクリーニングを行うことも可能となる。これにより、チャンバー1内の汚れを除去することができるため、メンテナンスが容易になる。
【0045】
また、上記実施の形態1では、マグネット58,59をアース電極(ヒータ26,27)とICP電極17,18との間のほぼ中央に配置することにより、本装置のプラズマ発生部にプラズマをトラップでき、プラズマの密度を高くすることができる。これにより、原料ガスのイオン化を高めることができ、例えばSiO2が生成され易くなる。
【0046】
また、上記実施の形態1では、ガス吐出リング28,29それぞれとディスク基板2との間に位置するチャンバー1の内壁に凹凸を無くしている。このため、CVD成膜時のプラズマをより均一化することができる。また、プラズマクリーニングの際に、チャンバー1内に付着したCVD膜を除去し易くすることができる。
【0047】
次に、図1に示すプラズマCVD装置を用いた磁気記録媒体の製造方法について説明する。
【0048】
まず、非磁性基板上に少なくとも磁性層を形成した被成膜基板を用意し、この被成膜基板をチャンバー1内に配置する。次いで、チャンバー1内でICP電極とアース電極との間の放電により原料ガスをプラズマ状態とし、このプラズマを前記被成膜基板の表面に加速衝突させる。これにより、この被成膜基板の表面には炭素が主成分である保護層が形成される。
【0049】
なお、上記実施の形態1では、アース電極(アノード電極)を加熱するヒータ26,27を設けているが、このヒータに加えてアース電極の一部(例えばOリングに近い場所など)を水などによって冷却する冷却機構をさらに設けても良い。この冷却機構によりアース電極の一部が加熱され過ぎるのを防止できる。
【0050】
また、上記実施の形態1では、リング状のマグネット58,59を配置しているが、このマグネットに加えてマグネットを水などによって冷却する冷却機構をさらに設けても良い。この冷却機構によりマグネットを冷却することで、CVD成膜時のマグネットの温度を一定にすることができ、その結果、磁力を安定させることができる。
【0051】
図7は、本発明の実施の形態2によるプラズマCVD装置の全体構成を示す模式図であり、図8は、図7に示す隠れアース電極を拡大した断面図であり、図1と同一部分は同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
実施の形態1による図1のプラズマCVD装置はヒータ26,27自身をアース電極(アノード電極)とし、ヒータ用電源52,53及び温調計54,55を有しているが、実施の形態2による図7のプラズマCVD装置は、ヒータ26,27、ヒータ用電源52,53及び温調計54,55に代えて、隠れアース電極60,61を有している(図8参照)。この隠れアース電極60,61は、アノード電極(アース電極)26a,27aの近傍に配置された1枚以上のアース電極であり、1枚以上のアース電極60,61及びアノード電極26a,27aはスペーサ60aによって互いに5mm以下(好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下)の間隔で対向して配置されている。このように5mm以下の間隔で対向して配置する理由は、互いに5mm以下の間隔で対向する電極面にはCVD膜が付着しないため、アノード電極と隠れアース電極の全面にCVD膜が付着することによって放電が停止することを防止でき、常に安定して放電を維持することができるからである。
【0053】
上記実施の形態2においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
次に、図1に示すプラズマCVD装置を用いてDLC(Diamond Like Carbon)膜を成膜する成膜条件及び成膜結果について説明する。
【0055】
(成膜条件)
ガス : C7H8
ガス流量 : 2.8sccm
外部磁場 : 100G(ガウス)
ICP電源 : 300W
パルスバイアス : 450V
圧力 : 0.15Pa
【0056】
(成膜結果)
成膜速度 : 0.5nm/分
ヌープ硬度(HK) : 2916(5点の平均値)
DLC膜の分布 : 良い
【0057】
(ヌープ硬度計測方法)
装置 : 松沢精機製 微小硬度計 DMH−2型
圧子 : 対稜角 172.5°,130° 菱形ダイアモンド四角錐圧子
加重 : 5g
加重時間 : 15秒
計測ポイント : サンプル上任意5点
【0058】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、RFプラズマ電源7,8を他のプラズマ電源に変更することも可能であり、他のプラズマ電源としては、マイクロ波用電源、DC放電用電源、及びそれぞれパルス変調された高周波電源、マイクロ波用電源、DC放電用電源などが挙げられる。
【0059】
また、上記実施の形態1,2では、ICP電極17,18それぞれの出力端Aをマッチングボックス(MB)4,5を介してRFプラズマ電源7,8に電気的に接続し、ICP電極17,18それぞれの出力端Bを可変コンデンサ(図示せず)を介してアース電源(図示せず)に電気的に接続しているが、この構成を下記の変形例1〜3のように変更して実施しても良い。
【0060】
(変形例1)
図9は、変形例1を説明するための模式図である。
ICP電極17,18それぞれの出力端Aは、マッチングボックス62を介してICP電源63に電気的に接続されている。また、ICP電極17,18それぞれの出力端Bは、共振コンデンサ64を介して接地電位に接続されている。この共振コンデンサ64は、ICP電源63から出力される高周波電流の周波数及びICP電極17,18のインダクタンスに対して共振条件又は共振条件の許容動作範囲を満たす容量を有している。
【0061】
つまり、ICP電源63によって、例えば、周波数が13.56MHzの高周波電流を、マッチングボックス62を介してICP電極に供給すると、共振条件でICP電極に高周波電流が流れるため、その高周波電流が前記周波数の場合の最大電流となる。このような最大高周波電流がICP電極を流すことにより、ICP電極から大きな磁場を発生させ、この磁場によってICP電極の内側に大きな電界を発生させる。その結果、ICP電極の内側及びその近傍に原料ガスの誘導結合プラズマを極めて高密度で発生させることができる。
【0062】
換言すれば、第1の変形例の重要な特徴としては、ICP電極と直列に共振コンデンサを接続し、使用周波数で共振するようにそれらの定数(ICP電極のインダクタンス、高周波電流の周波数、共振コンデンサの容量)を選択した共振回路(ICP回路)を構成するため、下記(1)、(2)のような工学的な利点を有する。
(1)ICP電極の浮遊容量が極めて小さく、放電初期に起こる容量結合放電(CCD:capacitive coupling discharge)が殆ど無視でき、誘導結合放電(ICD:inductive coupling discharge)によってプラズマが作られる。このため、プラズマは安定であり、高密度である。
(2)ICP電極と生成プラズマの磁気的結合が強く、上記共振回路のQ値(後述する)は低く、回路定数の許容誤差は緩く、単純な回路であるにも関わらず、回路の動作は安定で、運転が容易である。
【0063】
なお、共振コンデンサの容量を共振条件の許容動作範囲に設定している場合は、ICP電極に高周波電流を供給した際、共振条件に近い条件でICP電極に高周波電流が流れるため、その高周波電流が最大電流に近い電流となる。従って、この場合もICP電極の内側及びその近傍に原料ガスの誘導結合プラズマを高密度で発生させることができる。以下に共振条件及び共振条件の許容動作範囲について説明する。
【0064】
共振条件を達成するには、ICP電源63の周波数をf(単位:Hz)とし、ICP電極のインダクタンスをL(単位:H(ヘンリー))とし、共振コンデンサの容量をC(単位:F(farad))とした場合、下記式(1)が成立する必要がある。
ω=2πf=(LC)−1/2 ・・・(1)
【0065】
上記式(1)より、下記式(2)が成り立つ。
C=1/(2πf)2L ・・・(2)
従って、共振条件を達成する共振コンデンサの容量Cは、1/(2πf)2Lに設定する必要がある。
【0066】
上記式(1)について、両辺の自然対数を取ると、
ln2π+lnf=−1/2(lnL+lnC)
両辺の微分を取ると、
δf/f=−1/2(δL/L+δC/C)
両辺の絶対値を取ると、右辺の符号は+になる。
従って、δL/L=δC/C=0.1とすれば、
δf/f=0.1となり、これはQ値10に相当する。
それ故、ICP電極とコンデンサの誤差は最大で10%まで許される。
【0067】
上記計算のように、ICP電極とプラズマの結合を十分に良くすれば、ICP電極のインダクタンスの誤差と共振コンデンサの容量の誤差は十分大きくとることができると考えられ、両者を合わせて10%程度の誤差は許容できると考えられる。そこで、10%の誤差をICP電極と共振コンデンサ64の誤差に等配分すれば、共振コンデンサの誤差は10%許容できると考えられる。従って、共振コンデンサ64の容量Cは下記式(3)の範囲に設定することも可能であり、より好ましくは、下記式(4)の範囲に設定することである。
0.9/(2πf)2L≦C≦1.1/(2πf)2L ・・・(3)
0.95/(2πf)2L≦C≦1.05/(2πf)2L ・・・(4)
【0068】
上記式(2)及び(4)に具体例を入れて説明する。例えば、f=13.56MHz、L=1μHとすると、下記に示すように、共振コンデンサの容量は131.1pF以上144.9pF以下の範囲とすることが好ましく、より好ましい共振コンデンサの容量は138pFであり、このような共振コンデンサの入手は容易である。
C=1/(6.28×13.56×E6)2×1×E−6
=1.38×10−10(farad)
=138pF
C(下限値)=138×0.95
=131.1pF
C(上限値)=138×1.05
=144.9pF
【0069】
上記変形例1によれば、ICP電源63の周波数をfとし、ICP電極のインダクタンスをLとした場合、共振コンデンサの容量Cを、1/(2πf)2Lとするか、又は0.9/(2πf)2L≦C≦1.1/(2πf)2Lの範囲とする。これにより、高周波電流をICP電極に供給した際に共振を起こさせることができ、それによって高周波電流値が最大に近くなり、高密度の誘導結合プラズマを安定的に発生させることができる。
【0070】
(変形例2)
図10は、変形例2を説明するための模式図である。
変形例2は、変形例1の共振コンデンサに代えて、可変コンデンサ65を取り付け、ICP電極17,18を流れる高周波電流を測定する電流計66を追加した構成となっている。
【0071】
詳細には、ICP電極の出力端Bには可変コンデンサ65が接続されており、この可変コンデンサ65には電流計66が接続されており、この電流計66は接地電位に接続されている。電流計66で測定されたICP電極17,18に流れる高周波電流の値は可変コンデンサ65にフィードバックされるようになっており、図示せぬ制御部によって可変コンデンサ65は次のように制御される。
【0072】
チャンバー1内に原料ガスを導入し、ICP電極に高周波電流を供給し、共振条件又は共振条件の許容動作範囲内でガスの誘導結合プラズマを発生させてCVD成膜処理を行っていると、チャンバー1内の圧力や原料ガスの種類などの条件によっては、ICP電極とその周囲の雰囲気との結合状態が密になり、ICP電極の周囲のガスなどのインダクタンスを含むICP電極の等価インダクタンスが変動することがある。この場合、共振条件も変動してしまう。そこで、処理中のICP電極に流れる電流値を電流計66によって測定し、この測定した電流値から共振条件のずれを検出し、その検出結果を可変コンデンサ65にフィードバックして共振条件に近づけるように可変コンデンサ65の容量を調整する。これにより、共振条件又は共振条件の許容動作範囲内から外れることを防止し、より安定的に高密度なプラズマ処理を行うことができる。
【0073】
(変形例3)
図11は、変形例3を説明するための模式図である。
ICP電極17,18にはマッチングボックス67が並列に接続されている。また、ICP電極には高周波電圧を印加するICP電源68が並列に接続されている。また、ICP電極には共振コンデンサ69が並列に接続されている。また、ICP電極には電圧計70が並列に接続されている。前記共振コンデンサ69は、ICP電源68から出力される高周波電圧の周波数及びICP電極のインダクタンスに対して共振条件又は共振条件の許容動作範囲を満たす容量を有している。
【0074】
つまり、ICP電源68によって、例えば、周波数が13.56MHzの高周波電圧を、マッチングボックス67を介してICP電極17,18に供給すると、共振条件でICP電極に高周波電圧が流れるため、その高周波電圧が前記周波数の場合の最大電圧となる。このような最大高周波電圧がICP電極に印加されることにより、ICP電極から大きな磁場を発生させ、この磁場によってICP電極の内側に大きな電界を発生させる。その結果、ICP電極の内側及びその近傍に原料ガスの誘導結合プラズマを極めて高密度で発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態1によるプラズマCVD装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すチャンバー1の左側半分を拡大した断面図である。
【図3】図1に示すICP電極(1ターンコイル)の斜視図である。
【図4】図1に示すガス吐出リング及びヒータの断面図である。
【図5】図1に示すマグネットの断面図である。
【図6】図1に示すICP電極の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2によるプラズマCVD装置の全体構成を示す模式図である。
【図8】図7に示す隠れアース電極を拡大した断面図である。
【図9】変形例1を説明するための模式図である。
【図10】変形例2を説明するための模式図である。
【図11】変形例3を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1…チャンバー、2…ディスク基板、3〜5…マッチングボックス、6…RF加速電源、7,8…RFプラズマ電源、9…DC加速電源、10…TMP、11…ドライポンプ、12,14…バルブ、16…真空計、17,18…ICP電極、21〜23…スイッチ、24,25…プラズマウォール、26,27…ヒータ、28,29…ガス吐出リング、30,31…原料ガス供給源、32〜35,38〜41,44〜47,50,51…バルブ、36,37,42,43,48,49…マスフローコントローラ、52,53…ヒータ用電源サイリスタ、54,55…温調計、56,57…膜厚補正板、58,59…マグネット、60,61…隠れアース電極、60a…スペーサ、62,67…マッチングボックス、63,68…ICP電源、64,69…共振コンデンサ、65…可変コンデンサ、66…電流計、70…電圧計
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD装置、薄膜の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法に係わり、特に、フィラメントを使用することなく薄膜を成膜できるプラズマCVD装置、このプラズマCVD装置を用いた薄膜の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラズマCVD(chemical vapor deposition)装置の一例には熱フィラメント−プラズマCVD(F−pCVD)装置が挙げられる。このプラズマCVD装置は、成膜室内で真空条件下に加熱されたフィラメント状のカソードとアノードとの間の放電により成膜原料ガスをプラズマ状態とし、そして、マイナス電位により上記のプラズマを基板表面に加速衝突させて成膜する装置である。カソード及びアノードは、共に金属で構成されるが、特にフィラメント状のカソードにはタンタルの金属が使用される。本装置によれば、炭素(C)膜などの成膜が可能である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許3299721(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のプラズマCVD装置では、フィラメント状のカソードを2400℃以上に加熱して熱電子を発生させて使用するため、短期間でフィラメントが切れてしまい、寿命が非常に短い。例えば、1回1回大気に開放して装置を使用するバッチ式の場合は2〜3バッチでフィラメントが切れてしまう。また、チャンバー内を常に真空状態にしてフィラメントを連続点燈するロードロック式の場合でも5日間程度でフィラメントが切れてしまう。
【0005】
上述したようにフィラメントが切れ易いという問題があるため、成膜中にフィラメントが切れてしまうこともあり、この場合は製品がすべて不良になってしまう。そして、次の成膜処理を行うには、チャンバー内の真空を破ってフィラメントを交換する必要があるが、フィラメントから熱電子が十分に発生するようになるには、1時間程度フィラメントを点燈させるエージング処理を行う必要がある。このようにフィラメントが切れ易く、また一度フィラメントが切れると、次の成膜処理を行うまでに時間がかかるという問題があった。
【0006】
また、上記従来のプラズマCVD装置でDLC膜やSiO2膜を成膜する場合、チャンバー内にO2やCF4を導入してプラズマクリーニングを行う必要が生じるが、このプラズマクリーニングを行うとフィラメント状のカソード電極の表面が酸化やフッ化されてしまい、フィラメントが切れてカソード電極が使用できなくなってしまう。従って、O2やCF4を用いたプラズマクリーニングを行うことができなかった。
【0007】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、フィラメントを使用することなく薄膜を成膜できるプラズマCVD装置、薄膜の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るプラズマCVD装置は、チャンバーと、
前記チャンバー内に配置されたリング状電極と、
前記リング状電極に電気的に接続された第1の高周波電源と、
前記チャンバー内に原料ガスを供給するガス供給機構と、
前記チャンバー内を排気する排気機構と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極に対向するように配置された被成膜基板と、
前記被成膜基板に電気的に接続された第2の高周波電源又はDC電源と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極に対向し且つ前記被成膜基板とは逆側に配置されたアース電極と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極と前記被成膜基板との間の空間を囲むように設けられたプラズマウォールと、
を具備し、
前記プラズマウォールがフロート電位とされていることを特徴とする。
なお、前記リング状電極はICP電極であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記リング状電極と前記アース電極との間に配置されたマグネットをさらに具備することも可能である。前記マグネットはリング形状であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記リング状電極は、そのリング内面が該リング状電極の隣の前記チャンバーの内面とほぼ同一面になるように配置されていることが好ましい。
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記リング状電極とそのリング外面と対向する前記チャンバーの内面との間隔は5mm以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内にガスを供給する経路の最大経路幅は5mm以下であり、前記経路はアース電位とされていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記第2の高周波電源から出力される周波数は前記第1の高周波電源から出力される周波数より低いことが好ましい。
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記第1の高周波電源は1MHz〜27MHzの周波数を有し、前記第2の高周波電源は100〜500kHz以下の周波数を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記アース電極を加熱する加熱手段をさらに具備することも可能である。また、前記アース電極は前記加熱手段によって300〜500℃の温度に加熱されることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るプラズマCVD装置おいて、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内に供給されるガスは前記加熱手段によって加熱されることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内に供給される供給口は、前記アース電極を囲むリング形状とされていることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るプラズマCVD装置において、前記アース電極は複数のアース電極からなり、前記複数のアース電極が互いに対向する間隔が5mm以下であることも可能である。
【0017】
本発明に係る薄膜の製造方法は、前述したいずれかのプラズマCVD装置を用いた薄膜の製造方法において、
前記チャンバー内に被成膜基板を配置し、
前記リング状電極と前記アース電極との間の放電によって前記原料ガスをプラズマ状態とすることにより、前記被成膜基板の表面に薄膜を形成することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る薄膜の製造方法において、前記薄膜は炭素又は珪素が主成分であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る磁気記録媒体の製造方法は、前述したいずれかのプラズマCVD装置を用いた磁気記録媒体の製造方法において、
非磁性基板上に少なくとも磁性層を形成した被成膜基板を前記チャンバー内に配置し、
前記チャンバー内で前記リング状電極と前記アース電極との間の放電により前記原料ガスをプラズマ状態とし、このプラズマを前記被成膜基板の表面に加速衝突させて炭素が主成分である保護層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、フィラメントを使用することなく薄膜を成膜できるプラズマCVD装置、薄膜の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるプラズマCVD装置の全体構成を示す模式図である。図2は、図1に示すチャンバー1の左側半分を拡大した断面図である。図3は、図1に示すICP電極(1ターンコイル)の斜視図である。図4は、図1に示すガス吐出リング及びヒータの断面図である。図5は、図1に示すマグネットの断面図である。図6は、図1に示すICP電極の断面図である。
【0022】
図1に示すように、プラズマCVD装置は、被成膜基板(ディスク基板)2の両面に同時に成膜可能な装置である。この装置はチャンバー1を有しており、このチャンバー1の中央にはディスク基板2が保持されている。プラズマCVD装置は、ディスク基板2の左右が対称の構成を備えている。
【0023】
ディスク基板2はスイッチ21を介してマッチングボックス3に電気的に接続されており、また、ディスク基板2はスイッチ21を介してDC電源9に電気的に接続されている。マッチングボックス3はRF加速電源6に電気的に接続されている。RF加速電源6には500kHz以下の低い周波数の電源を用いるのが好ましい。これにより、被成膜基板2の周囲に放電が広がらないようにすることができる。本実施の形態では、周波数が250kHzで500WのRF加速電源6を用いる。
【0024】
チャンバー1の中央には、チャンバー1内を真空排気する真空排気機構が接続されている。この真空排気機構は、チャンバー1に繋げられたターボ分子ポンプ10と、ターボ分子ポンプ10に繋げられたドライポンプ11、チャンバー1とターボ分子ポンプ10との間に配置されたバルブ12と、ターボ分子ポンプ10とドライポンプ11との間に配置されたバルブ14と、バルブ12とチャンバー1との間に配置された真空計16とを有している。
【0025】
プラズマCVD装置は図2、図3及び図6に示すようにリング形状のICP電極(カソード電極)17を有しており、このICP電極17はディスク基板2の一方の主面に対向する側(図1の左側)に配置されている。ICP電極17は、そのリング内面がICP電極17の隣のチャンバー1の内面とほぼ同一面になるように配置されている。これにより、ICP電極17にパーティクルゲットシート(例えば銅シート)を容易に貼り付けることができ、その結果、ICP電極にCVD膜が付着するのを抑制でき、メンテナンスが容易になる。このICP電極17の外観形状は図3に示すような1ターンコイルのリング形状である。また、図6に示すように、ICP電極17とチャンバー1の内面との間隔17aは5mm以下(好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下)である。このように5mm以下の間隔とする理由は、5mm以下の隙間には異常放電が起こらずCVD膜が付着しないため、その隙間のチャンバー1の内面にCVD膜が付着することを防止できるからである。
また、同様に、ディスク基板2の他方の主面に対向する側(図1の右側)には前記ICP電極17と同様のICP電極18が配置されている。
【0026】
ICP電極17,18それぞれの出力端Aはマッチングボックス(MB)4,5を介してRFプラズマ電源7,8に電気的に接続されており、ICP電極17,18それぞれの出力端Bは可変コンデンサ(図示せず)を介してアース電源(図示せず)に電気的に接続されている。RFプラズマ電源7,8それぞれには1MHz〜27MHzの周波数の高周波電源を用いるのが好ましい。これにより、イオン化した原料ガスを拡散しやすくすることができる。なお、本実施の形態では、13.56MHzの周波数で500Wの高周波電源を用いている。
【0027】
プラズマCVD装置は図1に示すようにガス吐出リング28を有しており、このガス吐出リング28はICP電極17に対してディスク基板2とは逆側に位置するチャンバー1の端に配置されている。このガス吐出リング28は、図2及び図4に示すように、ガス導入口28aと、このガス導入口28aと繋げられたリング状経路28bと、このリング状経路28bに繋げられた複数のガス吐出口28cと、これらガス吐出口28cに繋げられたリング状吹き出し口28dとを有している。ガス吐出リング28はアース電位とされている。また、ガス吐出リング28にはガス供給機構が接続されている。
【0028】
リング状経路28bは、その経路幅が5mm以下(好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下)である。複数のガス吐出口28cは、リング状経路28bに等間隔に配置され、そのリングの径方向に均一にガスを吐出するものである。つまり、ガス供給機構によってガス導入口28aから導入されたガスは、リング状経路28bを通って複数のガス吐出口28cからリングの径方向に均一性よく吐出され、この吐出されたガスは均一性良くリング状吹き出し口28dからチャンバー1内に導入されるようになっている。また、リング状経路28bの経路幅を5mm以下にする理由は、5mm以下の経路幅のリング状経路には放電が起こらずCVD膜が付着しないため、ガス吐出リング28にCVD膜が付着することを防止できるからである。
【0029】
また、同様にICP電極18に対してディスク基板2とは逆側に位置するチャンバー1の端には同様の構成のガス吐出リング29が配置されており、このガス吐出リング29にはガス供給機構が接続されている。
【0030】
ガス供給機構は図1に示すように原料ガス供給源30,31を有しており、原料ガス供給源30,31には液体のC6H5CH3が入れられている。原料ガス供給源30,31は、それを加熱する加熱手段(図示せず)を有している。原料ガス供給源30,31はバルブ32,33に接続されており、バルブ32,33は配管を介してバルブ34,35に接続されている。バルブ34,35はマスフローコントローラ36,37に接続されており、マスフローコントローラ36,37はバルブ38,39に接続されている。バルブ38,39は配管を介してガス吐出リング28,29のガス導入口に接続されている。前記加熱手段によってC6H5CH3が加熱され気化された原料ガスがチャンバー1内に導入される間に冷やされないように、配管にはヒータ30a,31aが巻かれている。
【0031】
また、ガス供給機構は、Arガス源及びO2ガス源を有している。Arガス源は配管を介してバルブ40,41に接続されており、バルブ40,41はマスフローコントローラ42,43に接続されている。マスフローコントローラ42,43はバルブ44,45に接続されており、バルブ44,45は配管を介してガス吐出リング28,29に接続されている。O2ガス源は配管を介してバルブ46,47に接続されており、バルブ46,47はマスフローコントローラ48,49に接続されている。マスフローコントローラ48,49はバルブ50,51に接続されており、バルブ50,51は配管を介してガス吐出リング28,29のガス導入口に接続されている。
【0032】
プラズマCVD装置はヒータ26,27を有しており、ヒータ26,27はガス吐出リング28,29の内側に配置されている。ヒータ26,27は、それ自身がアース電極(アノード電極)であるため、加熱されたアース電極となる。また、ヒータ26,27はヒータ用電源52,53に電気的に接続されており、ヒータ用電源52,53は温調計54,55に電気的に接続されている。この温調計54,55によってアース電極の温度を測定し、その測定結果に基づきヒータ用電源52,53によってヒータ26,27の加熱力を調整するようになっている。
【0033】
ディスク基板2にDLC膜を成膜する場合は、前記アース電極にもDLC膜が付着する。絶縁体であるDLC膜が導電体であるアース電極を覆うと、アース電極とICP電極17,18との間で放電が起こらなくなるし、仮に放電が起きても、ICP電極とチャンバーとの間に放電が起きてプラズマが膨らんでしまい、プラズマ密度が低下する。しかし、前記ヒータ26,27自身をアース電極とし、そのアース電極を450℃以上に加熱することにより、アース電極に付着したDLC膜を導電体であるグラファイトにすることができ、その結果、アース電極とICP電極17,18との間で放電を起こさせることができる。つまり、アース電極を450℃以上に加熱しながらディスク基板2にDLC膜を成膜する処理を行うと、アース電極に付着したDLC膜を常にグラファイトとすることができるため、アース電極とICP電極17,18との間での放電を長時間連続的に持続させることができる。また、ヒータの近傍にガス吐出リングを配置しているため、ヒータの熱でガスの中の分子が加熱されて化学反応をしやすくされ、その結果、パーティクルを低減することができる。
【0034】
プラズマCVD装置は図2に示すように円筒形状のプラズマウォール24を有しており、プラズマウォール24はディスク基板2とICP電極17との間に配置されている。このプラズマウォール24はICP電極17とディスク基板2との間の空間を囲むように設けられている。このプラズマウォール24はフロート電位に電気的に接続されている。詳細には、図1に示すようにプラズマウォール24はスイッチ22を介して接地電位に電気的に接続されており、このスイッチ22はプラズマウォール24とアース電源を接続していない状態である。
【0035】
このようにプラズマウォール24をフロート電位にすることにより、プラズマウォール24によってICP電極17とディスク基板2との間において放電が生じるのを抑制できる。従って、ICP電極17とアノード電極との間の放電により発生したイオン化された原料ガスをディスク基板2へ導く際に、プラズマウォール24にCVD膜が付着するのを抑制できるし、またプラズマウォール24にCVD膜が付着したとしても、プラズマウォール24から剥がれにくい軟らかいCVD膜となり、パーティクルを抑制できる。
【0036】
詳細には、プラズマウォール24内にはイオンが少ないので、プラズマウォール24に高密度のCVD膜が付着するのを抑制できる。また、フロート電位のプラズマウォール24によってアース電界にイオンがトラップされることなくディスク基板2へイオンが直進できる。また、プラズマウォール24をアース電位にすると、プラズマウォール内にプラズマが発生してしまうが、プラズマウォールをフロート電位にすることによりプラズマが発生しないようにすることができる。
また、同様に、ディスク基板2とICP電極18との間にプラズマウォール25が配置されている。
【0037】
プラズマウォール24,25のディスク基板2側の端部には膜厚補正板56,57が取り付けられており、この膜厚補正板56,57はディスク基板2の両サイドに配置されている。ディスク基板2が円盤状の場合、その外周部は、CVD膜が厚く形成される傾向があり、ディスク基板2の両面に同時に成膜する際に左右のプラズマが互いに影響し合う領域となる。膜厚補正板56,57は、円盤状のディスク基板2の外周部を覆うようなドーナツ形状を有し、ディスク基板2の全体に亘り、形成されるCVD膜の厚さを均一にする機能を有する。
【0038】
プラズマCVD装置はリング状のマグネット58,59を有しており、図1及び図2に示すように、マグネット58,59は前記アース電極(ヒータ26,27)とICP電極17,18との間に配置されている。このマグネット58,59は、図5に示すようにチャンバー1の外側を覆うリング形状を有している。このマグネット58,59により発生する磁場にプラズマを集中させ、それによりプラズマの着火が容易になる。これと共に、マグネット58,59により発生する磁場によって高密度のプラズマを発生させることができ、イオン化効率を向上させることができる。
【0039】
次に、図1のプラズマCVD装置を用いてディスク基板2にCVD膜を成膜する方法は次のとおりである。
【0040】
まず、チャンバー1内にディスク基板2を保持し、真空排気機構によってチャンバー1内を真空排気する。なお、本実施の形態では、被成膜基板としてディスク基板2を用いているが、被成膜基板としてディスク基板に代えて例えばSiウエハ、プラスチック基板、各種電子デバイスなどを用いることが可能である。プラスチック基板を用いることができるのは、本装置が低温(例えば150℃以下の温度)で成膜できるからである。
【0041】
次いで、原料ガスをチャンバー1内に供給する。なお、原料ガスとしては、種々の原料ガスを用いることが可能であり、例えば、炭化水素系ガス、珪素化合物ガス及び酸素などを用いることが可能である。珪素化合物ガスとしては、取り扱いの容易で低温での成膜が可能なヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサン(これらを総称してHMDSともいう)を用いることが好ましい。
【0042】
そして、チャンバー1内が所定の圧力になったら、ICP電極17,18にRFプラズマ電源7,8によって13.56MHzの周波数で300Wの高周波電力を供給し、RF加速電源6によって100〜500kHz(好ましくは250kHz)の周波数で500Wの高周波電力を、マッチングボックス3を介してディスク基板2に供給する。これにより、ICP電極17,18とアノード電極との間で放電が起こり、ICP電極17,18の近傍でプラズマを発生させる。その結果、原料ガスをイオン化することができる。この際、マグネット58,59によってICP電極17,18の近傍に磁場が発生されているので、この磁場によってプラズマを高密度化することができ、イオン化効率を向上させることができる。このようにしてイオン化された原料ガスをディスク基板2へ導き、ディスク基板2の両面にCVD膜を成膜することができる。なお、RF加速電源6に代えてDC加速電源9によってDC電力をディスク基板2に供給しても良い。
【0043】
このようにして成膜される薄膜は、例えば炭素又は珪素が主成分である膜であり、炭素が主成分である膜の一例としてはDLC膜が挙げられ、珪素が主成分である膜の一例としてはSiO2膜が挙げられる。SiO2膜を成膜する場合の原料ガスはHMDS及び酸素を有する。
【0044】
上記実施の形態1によれば、従来技術のようにタンタルからなるフィラメント状のカソード電極を用いずにICP電極(カソード電極)17,18を用いているため、酸素ガスをチャンバー1内に導入してもカソード電極が使用できなくなることを防止できる。従って、酸素ガスを含む原料ガスを使用することが可能となる。また、チャンバー1内に酸素ガスを導入して酸素アッシングによってプラズマクリーニングを行うことも可能となる。これにより、チャンバー1内の汚れを除去することができるため、メンテナンスが容易になる。
【0045】
また、上記実施の形態1では、マグネット58,59をアース電極(ヒータ26,27)とICP電極17,18との間のほぼ中央に配置することにより、本装置のプラズマ発生部にプラズマをトラップでき、プラズマの密度を高くすることができる。これにより、原料ガスのイオン化を高めることができ、例えばSiO2が生成され易くなる。
【0046】
また、上記実施の形態1では、ガス吐出リング28,29それぞれとディスク基板2との間に位置するチャンバー1の内壁に凹凸を無くしている。このため、CVD成膜時のプラズマをより均一化することができる。また、プラズマクリーニングの際に、チャンバー1内に付着したCVD膜を除去し易くすることができる。
【0047】
次に、図1に示すプラズマCVD装置を用いた磁気記録媒体の製造方法について説明する。
【0048】
まず、非磁性基板上に少なくとも磁性層を形成した被成膜基板を用意し、この被成膜基板をチャンバー1内に配置する。次いで、チャンバー1内でICP電極とアース電極との間の放電により原料ガスをプラズマ状態とし、このプラズマを前記被成膜基板の表面に加速衝突させる。これにより、この被成膜基板の表面には炭素が主成分である保護層が形成される。
【0049】
なお、上記実施の形態1では、アース電極(アノード電極)を加熱するヒータ26,27を設けているが、このヒータに加えてアース電極の一部(例えばOリングに近い場所など)を水などによって冷却する冷却機構をさらに設けても良い。この冷却機構によりアース電極の一部が加熱され過ぎるのを防止できる。
【0050】
また、上記実施の形態1では、リング状のマグネット58,59を配置しているが、このマグネットに加えてマグネットを水などによって冷却する冷却機構をさらに設けても良い。この冷却機構によりマグネットを冷却することで、CVD成膜時のマグネットの温度を一定にすることができ、その結果、磁力を安定させることができる。
【0051】
図7は、本発明の実施の形態2によるプラズマCVD装置の全体構成を示す模式図であり、図8は、図7に示す隠れアース電極を拡大した断面図であり、図1と同一部分は同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
実施の形態1による図1のプラズマCVD装置はヒータ26,27自身をアース電極(アノード電極)とし、ヒータ用電源52,53及び温調計54,55を有しているが、実施の形態2による図7のプラズマCVD装置は、ヒータ26,27、ヒータ用電源52,53及び温調計54,55に代えて、隠れアース電極60,61を有している(図8参照)。この隠れアース電極60,61は、アノード電極(アース電極)26a,27aの近傍に配置された1枚以上のアース電極であり、1枚以上のアース電極60,61及びアノード電極26a,27aはスペーサ60aによって互いに5mm以下(好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下)の間隔で対向して配置されている。このように5mm以下の間隔で対向して配置する理由は、互いに5mm以下の間隔で対向する電極面にはCVD膜が付着しないため、アノード電極と隠れアース電極の全面にCVD膜が付着することによって放電が停止することを防止でき、常に安定して放電を維持することができるからである。
【0053】
上記実施の形態2においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
次に、図1に示すプラズマCVD装置を用いてDLC(Diamond Like Carbon)膜を成膜する成膜条件及び成膜結果について説明する。
【0055】
(成膜条件)
ガス : C7H8
ガス流量 : 2.8sccm
外部磁場 : 100G(ガウス)
ICP電源 : 300W
パルスバイアス : 450V
圧力 : 0.15Pa
【0056】
(成膜結果)
成膜速度 : 0.5nm/分
ヌープ硬度(HK) : 2916(5点の平均値)
DLC膜の分布 : 良い
【0057】
(ヌープ硬度計測方法)
装置 : 松沢精機製 微小硬度計 DMH−2型
圧子 : 対稜角 172.5°,130° 菱形ダイアモンド四角錐圧子
加重 : 5g
加重時間 : 15秒
計測ポイント : サンプル上任意5点
【0058】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、RFプラズマ電源7,8を他のプラズマ電源に変更することも可能であり、他のプラズマ電源としては、マイクロ波用電源、DC放電用電源、及びそれぞれパルス変調された高周波電源、マイクロ波用電源、DC放電用電源などが挙げられる。
【0059】
また、上記実施の形態1,2では、ICP電極17,18それぞれの出力端Aをマッチングボックス(MB)4,5を介してRFプラズマ電源7,8に電気的に接続し、ICP電極17,18それぞれの出力端Bを可変コンデンサ(図示せず)を介してアース電源(図示せず)に電気的に接続しているが、この構成を下記の変形例1〜3のように変更して実施しても良い。
【0060】
(変形例1)
図9は、変形例1を説明するための模式図である。
ICP電極17,18それぞれの出力端Aは、マッチングボックス62を介してICP電源63に電気的に接続されている。また、ICP電極17,18それぞれの出力端Bは、共振コンデンサ64を介して接地電位に接続されている。この共振コンデンサ64は、ICP電源63から出力される高周波電流の周波数及びICP電極17,18のインダクタンスに対して共振条件又は共振条件の許容動作範囲を満たす容量を有している。
【0061】
つまり、ICP電源63によって、例えば、周波数が13.56MHzの高周波電流を、マッチングボックス62を介してICP電極に供給すると、共振条件でICP電極に高周波電流が流れるため、その高周波電流が前記周波数の場合の最大電流となる。このような最大高周波電流がICP電極を流すことにより、ICP電極から大きな磁場を発生させ、この磁場によってICP電極の内側に大きな電界を発生させる。その結果、ICP電極の内側及びその近傍に原料ガスの誘導結合プラズマを極めて高密度で発生させることができる。
【0062】
換言すれば、第1の変形例の重要な特徴としては、ICP電極と直列に共振コンデンサを接続し、使用周波数で共振するようにそれらの定数(ICP電極のインダクタンス、高周波電流の周波数、共振コンデンサの容量)を選択した共振回路(ICP回路)を構成するため、下記(1)、(2)のような工学的な利点を有する。
(1)ICP電極の浮遊容量が極めて小さく、放電初期に起こる容量結合放電(CCD:capacitive coupling discharge)が殆ど無視でき、誘導結合放電(ICD:inductive coupling discharge)によってプラズマが作られる。このため、プラズマは安定であり、高密度である。
(2)ICP電極と生成プラズマの磁気的結合が強く、上記共振回路のQ値(後述する)は低く、回路定数の許容誤差は緩く、単純な回路であるにも関わらず、回路の動作は安定で、運転が容易である。
【0063】
なお、共振コンデンサの容量を共振条件の許容動作範囲に設定している場合は、ICP電極に高周波電流を供給した際、共振条件に近い条件でICP電極に高周波電流が流れるため、その高周波電流が最大電流に近い電流となる。従って、この場合もICP電極の内側及びその近傍に原料ガスの誘導結合プラズマを高密度で発生させることができる。以下に共振条件及び共振条件の許容動作範囲について説明する。
【0064】
共振条件を達成するには、ICP電源63の周波数をf(単位:Hz)とし、ICP電極のインダクタンスをL(単位:H(ヘンリー))とし、共振コンデンサの容量をC(単位:F(farad))とした場合、下記式(1)が成立する必要がある。
ω=2πf=(LC)−1/2 ・・・(1)
【0065】
上記式(1)より、下記式(2)が成り立つ。
C=1/(2πf)2L ・・・(2)
従って、共振条件を達成する共振コンデンサの容量Cは、1/(2πf)2Lに設定する必要がある。
【0066】
上記式(1)について、両辺の自然対数を取ると、
ln2π+lnf=−1/2(lnL+lnC)
両辺の微分を取ると、
δf/f=−1/2(δL/L+δC/C)
両辺の絶対値を取ると、右辺の符号は+になる。
従って、δL/L=δC/C=0.1とすれば、
δf/f=0.1となり、これはQ値10に相当する。
それ故、ICP電極とコンデンサの誤差は最大で10%まで許される。
【0067】
上記計算のように、ICP電極とプラズマの結合を十分に良くすれば、ICP電極のインダクタンスの誤差と共振コンデンサの容量の誤差は十分大きくとることができると考えられ、両者を合わせて10%程度の誤差は許容できると考えられる。そこで、10%の誤差をICP電極と共振コンデンサ64の誤差に等配分すれば、共振コンデンサの誤差は10%許容できると考えられる。従って、共振コンデンサ64の容量Cは下記式(3)の範囲に設定することも可能であり、より好ましくは、下記式(4)の範囲に設定することである。
0.9/(2πf)2L≦C≦1.1/(2πf)2L ・・・(3)
0.95/(2πf)2L≦C≦1.05/(2πf)2L ・・・(4)
【0068】
上記式(2)及び(4)に具体例を入れて説明する。例えば、f=13.56MHz、L=1μHとすると、下記に示すように、共振コンデンサの容量は131.1pF以上144.9pF以下の範囲とすることが好ましく、より好ましい共振コンデンサの容量は138pFであり、このような共振コンデンサの入手は容易である。
C=1/(6.28×13.56×E6)2×1×E−6
=1.38×10−10(farad)
=138pF
C(下限値)=138×0.95
=131.1pF
C(上限値)=138×1.05
=144.9pF
【0069】
上記変形例1によれば、ICP電源63の周波数をfとし、ICP電極のインダクタンスをLとした場合、共振コンデンサの容量Cを、1/(2πf)2Lとするか、又は0.9/(2πf)2L≦C≦1.1/(2πf)2Lの範囲とする。これにより、高周波電流をICP電極に供給した際に共振を起こさせることができ、それによって高周波電流値が最大に近くなり、高密度の誘導結合プラズマを安定的に発生させることができる。
【0070】
(変形例2)
図10は、変形例2を説明するための模式図である。
変形例2は、変形例1の共振コンデンサに代えて、可変コンデンサ65を取り付け、ICP電極17,18を流れる高周波電流を測定する電流計66を追加した構成となっている。
【0071】
詳細には、ICP電極の出力端Bには可変コンデンサ65が接続されており、この可変コンデンサ65には電流計66が接続されており、この電流計66は接地電位に接続されている。電流計66で測定されたICP電極17,18に流れる高周波電流の値は可変コンデンサ65にフィードバックされるようになっており、図示せぬ制御部によって可変コンデンサ65は次のように制御される。
【0072】
チャンバー1内に原料ガスを導入し、ICP電極に高周波電流を供給し、共振条件又は共振条件の許容動作範囲内でガスの誘導結合プラズマを発生させてCVD成膜処理を行っていると、チャンバー1内の圧力や原料ガスの種類などの条件によっては、ICP電極とその周囲の雰囲気との結合状態が密になり、ICP電極の周囲のガスなどのインダクタンスを含むICP電極の等価インダクタンスが変動することがある。この場合、共振条件も変動してしまう。そこで、処理中のICP電極に流れる電流値を電流計66によって測定し、この測定した電流値から共振条件のずれを検出し、その検出結果を可変コンデンサ65にフィードバックして共振条件に近づけるように可変コンデンサ65の容量を調整する。これにより、共振条件又は共振条件の許容動作範囲内から外れることを防止し、より安定的に高密度なプラズマ処理を行うことができる。
【0073】
(変形例3)
図11は、変形例3を説明するための模式図である。
ICP電極17,18にはマッチングボックス67が並列に接続されている。また、ICP電極には高周波電圧を印加するICP電源68が並列に接続されている。また、ICP電極には共振コンデンサ69が並列に接続されている。また、ICP電極には電圧計70が並列に接続されている。前記共振コンデンサ69は、ICP電源68から出力される高周波電圧の周波数及びICP電極のインダクタンスに対して共振条件又は共振条件の許容動作範囲を満たす容量を有している。
【0074】
つまり、ICP電源68によって、例えば、周波数が13.56MHzの高周波電圧を、マッチングボックス67を介してICP電極17,18に供給すると、共振条件でICP電極に高周波電圧が流れるため、その高周波電圧が前記周波数の場合の最大電圧となる。このような最大高周波電圧がICP電極に印加されることにより、ICP電極から大きな磁場を発生させ、この磁場によってICP電極の内側に大きな電界を発生させる。その結果、ICP電極の内側及びその近傍に原料ガスの誘導結合プラズマを極めて高密度で発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態1によるプラズマCVD装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すチャンバー1の左側半分を拡大した断面図である。
【図3】図1に示すICP電極(1ターンコイル)の斜視図である。
【図4】図1に示すガス吐出リング及びヒータの断面図である。
【図5】図1に示すマグネットの断面図である。
【図6】図1に示すICP電極の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2によるプラズマCVD装置の全体構成を示す模式図である。
【図8】図7に示す隠れアース電極を拡大した断面図である。
【図9】変形例1を説明するための模式図である。
【図10】変形例2を説明するための模式図である。
【図11】変形例3を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1…チャンバー、2…ディスク基板、3〜5…マッチングボックス、6…RF加速電源、7,8…RFプラズマ電源、9…DC加速電源、10…TMP、11…ドライポンプ、12,14…バルブ、16…真空計、17,18…ICP電極、21〜23…スイッチ、24,25…プラズマウォール、26,27…ヒータ、28,29…ガス吐出リング、30,31…原料ガス供給源、32〜35,38〜41,44〜47,50,51…バルブ、36,37,42,43,48,49…マスフローコントローラ、52,53…ヒータ用電源サイリスタ、54,55…温調計、56,57…膜厚補正板、58,59…マグネット、60,61…隠れアース電極、60a…スペーサ、62,67…マッチングボックス、63,68…ICP電源、64,69…共振コンデンサ、65…可変コンデンサ、66…電流計、70…電圧計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、
前記チャンバー内に配置されたリング状電極と、
前記リング状電極に電気的に接続された第1の高周波電源と、
前記チャンバー内に原料ガスを供給するガス供給機構と、
前記チャンバー内を排気する排気機構と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極に対向するように配置された被成膜基板と、
前記被成膜基板に電気的に接続された第2の高周波電源又はDC電源と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極に対向し且つ前記被成膜基板とは逆側に配置されたアース電極と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極と前記被成膜基板との間の空間を囲むように設けられたプラズマウォールと、
を具備し、
前記プラズマウォールがフロート電位とされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項2】
請求項1において、前記リング状電極と前記アース電極との間に配置されたマグネットをさらに具備することを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記リング状電極は、そのリング内面が該リング状電極の隣の前記チャンバーの内面とほぼ同一面になるように配置されていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記リング状電極とそのリング外面と対向する前記チャンバーの内面との間隔は5mm以下であることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内にガスを供給する経路の最大経路幅は5mm以下であり、前記経路はアース電位とされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記第2の高周波電源から出力される周波数は前記第1の高周波電源から出力される周波数より低いことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記第1の高周波電源は1MHz〜27MHzの周波数を有し、前記第2の高周波電源は100〜500kHz以下の周波数を有することを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、前記アース電極を加熱する加熱手段をさらに具備することを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項9】
請求項8において、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内に供給されるガスは前記加熱手段によって加熱されることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項10】
請求項8又は9において、前記アース電極は前記加熱手段によって300〜500℃の温度に加熱されることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項において、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内に供給される供給口は、前記アース電極を囲むリング形状とされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項において、前記アース電極は複数のアース電極からなり、前記複数のアース電極が互いに対向する間隔が5mm以下であることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のプラズマCVD装置を用いた薄膜の製造方法において、
前記チャンバー内に被成膜基板を配置し、
前記リング状電極と前記アース電極との間の放電によって前記原料ガスをプラズマ状態とすることにより、前記被成膜基板の表面に薄膜を形成することを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項14】
請求項13において、前記薄膜は炭素又は珪素が主成分であることを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のプラズマCVD装置を用いた磁気記録媒体の製造方法において、
非磁性基板上に少なくとも磁性層を形成した被成膜基板を前記チャンバー内に配置し、
前記チャンバー内で前記リング状電極と前記アース電極との間の放電により前記原料ガスをプラズマ状態とし、このプラズマを前記被成膜基板の表面に加速衝突させて炭素が主成分である保護層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項1】
チャンバーと、
前記チャンバー内に配置されたリング状電極と、
前記リング状電極に電気的に接続された第1の高周波電源と、
前記チャンバー内に原料ガスを供給するガス供給機構と、
前記チャンバー内を排気する排気機構と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極に対向するように配置された被成膜基板と、
前記被成膜基板に電気的に接続された第2の高周波電源又はDC電源と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極に対向し且つ前記被成膜基板とは逆側に配置されたアース電極と、
前記チャンバー内に配置され、前記リング状電極と前記被成膜基板との間の空間を囲むように設けられたプラズマウォールと、
を具備し、
前記プラズマウォールがフロート電位とされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項2】
請求項1において、前記リング状電極と前記アース電極との間に配置されたマグネットをさらに具備することを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記リング状電極は、そのリング内面が該リング状電極の隣の前記チャンバーの内面とほぼ同一面になるように配置されていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記リング状電極とそのリング外面と対向する前記チャンバーの内面との間隔は5mm以下であることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内にガスを供給する経路の最大経路幅は5mm以下であり、前記経路はアース電位とされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記第2の高周波電源から出力される周波数は前記第1の高周波電源から出力される周波数より低いことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記第1の高周波電源は1MHz〜27MHzの周波数を有し、前記第2の高周波電源は100〜500kHz以下の周波数を有することを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、前記アース電極を加熱する加熱手段をさらに具備することを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項9】
請求項8において、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内に供給されるガスは前記加熱手段によって加熱されることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項10】
請求項8又は9において、前記アース電極は前記加熱手段によって300〜500℃の温度に加熱されることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項において、前記ガス供給機構によって前記チャンバー内に供給される供給口は、前記アース電極を囲むリング形状とされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項において、前記アース電極は複数のアース電極からなり、前記複数のアース電極が互いに対向する間隔が5mm以下であることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のプラズマCVD装置を用いた薄膜の製造方法において、
前記チャンバー内に被成膜基板を配置し、
前記リング状電極と前記アース電極との間の放電によって前記原料ガスをプラズマ状態とすることにより、前記被成膜基板の表面に薄膜を形成することを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項14】
請求項13において、前記薄膜は炭素又は珪素が主成分であることを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のプラズマCVD装置を用いた磁気記録媒体の製造方法において、
非磁性基板上に少なくとも磁性層を形成した被成膜基板を前記チャンバー内に配置し、
前記チャンバー内で前記リング状電極と前記アース電極との間の放電により前記原料ガスをプラズマ状態とし、このプラズマを前記被成膜基板の表面に加速衝突させて炭素が主成分である保護層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−13675(P2010−13675A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172489(P2008−172489)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(595152438)株式会社ユーテック (59)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(595152438)株式会社ユーテック (59)
【Fターム(参考)】
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