説明

プリンタ装置とその方法並びに記憶媒体

【課題】接続されたネットワーク環境でIPアドレスの重複を検出したときは、そのIPアドレスの設定自体を中止しユーザにそれを通知するに留まらず、ユーザがIPアドレスの再設定をスムーズに行えるように自動的にモード移行するプリンタ装置。
【解決手段】プリンタ装置は、ネットワーク環境に接続されたとき、自身に設定されたIPアドレスが他のデバイスと重複が無いかを検査し、IPアドレスの重複を検知した場合、そのIPアドレスの利用を止め、ビープ/操作パネル表示/プリント出力等で、ユーザにそれを通知する。その後、操作パネル上でIPアドレス設定モードに移行し、ユーザに再設定を促す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークシステムに接続されたプリンタ装置に関するものであり、特にIPアドレスの重複検出後のIPアドレス再設定処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワークシステムに接続されている各種デバイスのIPアドレスの重複検出、及びその対処処理については、いくつかの方法があった。
【0003】
例えば、IPアドレスが重複しているMACアドレスを有するデバイスを検出するために、特定形式の自局MACアドレス宛てフレームを利用して検知し、重複を検知した場合はそのデバイスに警報を鳴らす通知手段を持ったネットワーク端末装置があった。(特許文献1参照)。
【0004】
また、IPアドレスの重複を防ぐ方法として、ネットワーク上で稼動する全てのデバイスのIPアドレスを取得し、新規にネットワーク上のデバイスにIPアドレスを設定する場合にはネットワーク上から取得したIPアドレスと比較して、重複を検知した場合にはIPアドレスの設定を中止していた(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−191315号公報
【特許文献2】特開平11−282644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では次のような欠点があった。
【0006】
デバイスがIPアドレスの重複を検知した後の処理としては、ユーザに警告を知らせる「警報」や、ユーザが行おうとしている「IPアドレス設定自体を中止させる」ことで留まり、その後のユーザによるIPアドレスの再設定をスムーズに行える対処が成されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプリンタ装置は、前記課題のIPアドレスの重複検出後にユーザがスムーズにIPアドレスの再設定を行えるように、以下の手段を備えた。
【0008】
(1)接続されたネットワーク環境において、IPアドレスの重複検出が行える。IPアドレスの重複検出はネットワーク上の通信フレームを観測してIPアドレスが同一で且つMACアドレスが異なるものを検出することで行える(特開平9−191315参照)。
【0009】
(2)パネルモジュールを持ち、そのパネル上にIPアドレスの表示が行え、またそのパネル上からIPアドレスの設定も行える。
【0010】
(3)ネットワーク上で稼動する全てのデバイスのIPアドレスを、SNMP(Simple Network Management Protocol)を利用して取得する(特開平11−282644参照)。
【0011】
(4)IPアドレスの重複を検知した場合、現在実行中の処理を止めて警報(ビープ音、パネル点滅)し、パネル上からのIPアドレス設定モードに移行する。この時、パネル上にネットワーク上で他のデバイスと重複しないIPアドレスをユーザが再設定するIPアドレスの候補として表示し、ユーザにIPアドレスの再設定を促す。
【0012】
以上により、本プリンタ装置は、IPアドレスの重複を検知した場合、ユーザによるIPアドレスの再設定処理がスムーズに行えるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプリンタ装置は、接続されたネットワーク環境においてIPアドレスの重複を検知した場合、現在実行中の処理を止めて警報(ビープ音、パネル点滅)し、パネル上からのIPアドレス設定モードに移行する。この時、パネル上にネットワーク上で他のデバイスと重複しないIPアドレスをユーザが再設定するIPアドレスの候補として表示し、ユーザにIPアドレスの再設定を促すことにより、ユーザによるIPアドレスの再設定がスムーズに行える。加えて、ネットワーク上においては、IPアドレスの重複が無くなり、通信不具合といったトラブルも無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例を示す、本実施例のプリンタ装置が接続して動作可能なネットワークシステム構成を示す図である。図1において、101は本実施例のプリンタ装置であり、その機能については後述する。また、102は従来のプリンタ装置であり、前述の従来技術のプリンタ装置である。103はクライアントPCでオペレーティングシステムがOS1(Microsoft社のWindows(登録商標))のパーソナルコンピュータである。104もクライアントPCでオペレーティングシステムはOS2(Apple社のMac OS(登録商標))である。105はサーバPCでオペレーティングシステムはOS3(Novell社のNetWare(登録商標))である。これらの装置はネットワーク(LAN)100を介して接続され、各々の装置上で動作する各種アプリケーションは、データの送受信が可能であり、各種サービスを提供/利用している。
【0016】
図2は、本実施例のプリンタ装置の各機能を示すブロック図である。図2において、101はプリンタ装置であり、図1における本発明のプリンタ装置101に相当し、図1におけるネットワーク100に相当するネットワークに接続されている。プリンタ装置101は、ネットワークインタフェース部10101、パネルインタフェース部10102、スピーカー10103、及びプリンタエンジン部10104を持っている。ネットワークインタフェース部10101は、物理層、プロトコル層、アプリケーション層の階層別に処理が別れており、物理層にはLANコントローラドライバ、プロトコル層にはTCP/IPプロトコルスタック、AppleTalk(登録商標)であるATプロトコルスタック、NetWare(登録商標)であるNWプロトコルスタックがある。アプリケーション層にはTCP/IPアプリケーションがあり、LPD、HTTP、SNMPを始め、本発明に関わるIPアドレス設定(重複検知/設定)に関わるタスク等がある。その他、AppleTalk(登録商標)であるATアプリケーション(PAP印刷、Status応答、SNMP、etc.)、NetWare(登録商標)であるNWアプリケーション(NDS,RPrinter、SNMP、etc.)がある。パネルインタフェース部10102は、プリンタ装置のステータスを表示したり、プリンタ装置のIPアドレス等のプリンタ装置のコンフィグレーションに関する各種設定が行える。スピーカー10103は、ネットワークインタフェース部10101、パネルインタフェース部10102、及びプリンタエンジン部10104からのコントロールにより、ビープ音等が鳴らせる。また、プリンタエンジン部10104は、ネットワークインタフェース部10101から受信した印刷データを処理して印刷する。
【0017】
図3は、一般的なパーソナル・コンピュータの内部構成を示すブロック図である。図3において、103はパーソナルコンピュータ(PC)であり、図1におけるクライアントPC103、104及びサーバPC105と同等である。クライアントPC103は、CPU10301を備え、ROM10302またはハード・ディスク(HD)10311に記憶された、あるいはフレキシブル・ディスク(FD)10312より供給されるネットワーク・デバイス制御ソフトウェアを実行し、システム・バス10304に接続される各デバイスを総括的に制御する。10303はRAMで、CPU10301の主メモリ、ワークエリア等として機能する。10305はキーボード・コントローラ(KBC)で、キーボード(KB)10309や不図示のポインティング・デバイス等からの指示入力を制御する。10306はCRTコントローラ(CRTC)で、CRTディスプレイ(CRT)10310の表示を制御する。10307はディスク・コントローラ(DKC)で、ブートプログラム、種々のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイルそしてネットワーク管理プログラム等を記憶するハード・ディスク(HD)10311およびフレキシブル・ディスク(FD)10312とのアクセスを制御する。10308はネットワーク・インタフェース・カード(NIC)で、LAN100を介して、他のネットワーク機器あるいは他のPCと双方向のデータのやり取りを行う。このPC上に、 OS1、OS2、OS3等の種々のオペレーティングシステムが動作し、そのOS上でさらにの種々のアプリケーションが動作する。
【0018】
図4は、本実施例のプリンタ装置のIPアドレスの重複を検知した場合の処理とIPアドレス再設定モードの処理を示すフローチャートである。本プリンタ装置は、電源ON時に、ネットワーク上で稼動する全てのデバイスのIPアドレスを、SNMP(Simple Network Management Protocol)を利用して取得する処理を行う。(S401、特開平11−282644参照)。以後、印刷、ステータス応答等の通常動作を継続しながら、接続されたネットワーク環境において、IPアドレスの重複検出処理を行っている(S402)。このIPアドレスの重複検出はネットワーク上の通信フレームを観測してIPアドレスが同一で且つMACアドレスが異なるものを検出するものである(特開平9−191315参照)。もしIPアドレスの重複を検出した場合は、即座にそのIPアドレスの利用を止め、スピーカー10103を通してビープ音を鳴らし、ユーザに警報する(S405)。もし、この時、印刷中であった場合には、コネクションを切断して印刷処理を止める(S404)。本プリンタ装置はIPアドレスの利用を止めると同時に、パネル上でのIPアドレス再設定モードに移行する(S406)。そのパネル上に、現在設定値のIPアドレスが重複している旨と(S407)、再設定できるIPアドレス候補値が表示され(S408)、再設定されるIPアドレス入力フィールドが点滅して(S409)、ユーザにIPアドレスの再設定を促す。以上により、本プリンタ装置は、IPアドレスの重複を検知した場合、ユーザによるIPアドレスの再設定処理がスムーズに行えるようになっている。
【0019】
図5は、本実施例のプリンタ装置のIPアドレス再設定モード中のパネル表示例を示す図である。パネルインタフェース部10102は、パネル表示部/入力部1010201、パネル選択部1010202、及びパネルテンキー部1010203から成っている。パネル表示部/入力部1010201には、通常モードのプリンタ装置のステータスが表示される他、プリンタ装置のコンフィグレーションが行える設定モードに移行した場合には、パネル表示に従って、パネル選択部1010202、及びパネルテンキー部1010203から設定が行える。図5の例では、プリンタ装置がIPアドレスの重複を検知し、IPアドレスの再設定モードに移行した直後の状態である。パネル表示には、現在設定値のIPアドレス「192.168.0.10」が重複している旨と、再設定できるIPアドレス値「192.168.0.215」や「192.168.0.216」等が表示され、再設定されるIPアドレス入力フィールド「黒塗り四角部」が点滅してユーザにIPアドレスの再設定を促している。
【0020】
以上説明した本発明に係るプリンタ装置の制御プログラムは、CD−ROMやフラッシュメモリ、フレキシブルディスクなどの記憶媒体により、あるいは電子メールやパソコン通信などのネットワークを介して、外部の記憶媒体からPC等のデバイス上にロードされ、実行されてもよい。これらの場合でも本発明は適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例のプリンタ装置が接続して動作可能なネットワークシステム構成を示す図。
【図2】本実施例のプリンタ装置の各機能を示すブロック図。
【図3】一般的なパーソナル・コンピュータ(PC)の内部構成を示すブロック図。
【図4】本実施例のプリンタ装置のIPアドレスの重複を検知した場合の処理とIPアドレス再設定モードの処理を示すフローチャート。
【図5】本実施例のプリンタ装置のIPアドレス再設定モード中のパネル表示例を示す図。
【符号の説明】
【0022】
100 ネットワーク(LAN)
101 本発明のプリンタ装置
102 従来のプリンタ装置
103 クライアントPC(OS1)
104 クライアントPC(OS2)
105 サーバPC(OS3)
10101 本発明のプリンタ装置のネットワークインタフェース部
10102 本発明のプリンタ装置のパネルインタフェース部
10103 本発明のプリンタ装置のスピーカー
10104 本発明のプリンタ装置のプリンタエンジン部
10301 CPU
10302 ROM
10303 RAM
10304 システムバス
10305 KBC
10306 CRTC
10307 DKC
10308 NIC
10309 KB
10310 CRT
10311 HD
10312 FD
1010201 パネル表示部/入力部
1010202 パネル選択部
1010203 パネルテンキー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークシステムに接続されたプリンタ装置が、IPアドレスの重複を検知した場合、現在実行中の処理を止めて警報(ビープ音、パネル点滅)し、パネル上からのIPアドレス設定モードに移行し、この時、パネル上にネットワーク上で他のデバイスと重複しないIPアドレスをユーザが再設定するIPアドレスの候補として表示し、ユーザにIPアドレスの再設定を促す手段を設けたことを特徴とするプリンタ装置。
【請求項2】
前記請求項1のプリンタ装置が、IPアドレスの重複を検知した場合、現在実行中の処理を止めて警報(ビープ音、パネル点滅)し、パネル上からのIPアドレス設定モードに移行する方法を設けたことを特徴とするプリンタ装置。
【請求項3】
前記請求項1のプリンタ装置が、IPアドレス再設定モード時にパネル上にネットワーク上で他のデバイスと重複しないIPアドレスをユーザが再設定するIPアドレスの候補として表示し、ユーザにIPアドレスの再設定を促す方法を設けたことを特徴とするプリンタ装置。
【請求項4】
前記請求項2のプリンタ装置が、IPアドレスの重複を検知した場合、現在実行中の処理を止めて警報(ビープ音、パネル点滅)し、パネル上からのIPアドレス設定モードに移行するステップを持つことを特徴とするコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【請求項5】
前記請求項3のプリンタ装置が、IPアドレス再設定モード時にパネル上にネットワーク上で他のデバイスと重複しないIPアドレスをユーザが再設定するIPアドレスの候補として表示し、ユーザにIPアドレスの再設定を促すステップを持つことを特徴とするコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−23219(P2009−23219A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188599(P2007−188599)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】