説明

プリント配線板ユニット、電子機器およびプリント配線板ユニットの作製方法

【課題】リペア性を確保しつつ電子部品をプリント配線板に実装するとき、プリント配線板への接合の補強を十分に行なう作製方法を提供する。
【解決手段】プリント配線板ユニットは、プリント配線板と、前記プリント配線板の所定位置にはんだ接合により電気的に接続され、かつ、接着層により前記プリント配線板と接合された電子部品と、を有する。前記プリント配線板と前記電子部品との間の接着層の一部の領域が、第1補強用樹脂層30を前記プリント配線の側に、前記第1補強用樹脂層30に比べて接着強度が高い第2補強用樹脂層32を前記電子部品の側に備える多層積層領域34である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニット、このプリント配線板ユニットを搭載した電子機器、および電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニットの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機器やノート型パーソナルコンピュータ等の携帯電子機器は、電子部品とプリント配線板との隙間にアンダーフィルと呼ばれる補強用樹脂を用いて電子部品の接合を補強するものが多い。この補強は、携帯電子機器の落下等により受ける大きな衝撃から電子部品の接合部の破壊を防止するためである。上記補強用樹脂には、例えば接着強度の高いエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。
一方、電子部品あるいは電子部品の接合に不具合がある場合、電子部品のリペア(取替え)を可能とするために、アンダーフィルに用いる補強用樹脂として、熱硬化性接着剤と熱可塑性接着剤をブレンドした樹脂が用いられる場合もある。しかし、補強用樹脂として電子部品をプリント配線基板に確実に接合し、しかも、電子部品を容易にリペアすることのできる補強用樹脂は開発されていない。
【0003】
このような状況において、基板と、基板上に実装されるフリップチップと、フリップチップが基板に電気的に連結される部分である基板上のチップ連結部分に形成された第1アンダーフィルと、チップ連結部分以外の基板上に形成された第2アンダーフィルと、を備え、第1アンダーフィルは、第2アンダーフィルより高い強度の材質で形成されるフリップチップパッケージが知られている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−277823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記接合方法を用いたフリップチップの基板への実装は、この接合方法に用いるフリップチップの接合部分が、チップ連結部分と、チップ連結部分以外の部分とに領域が分けられるために可能となっている。しかし、BGA(Ball Grid Array)方式等の半導体パッケージは、はんだバンプが接合面に一様に設けられるため、上記樹脂を用いた接合方法を用いることはできない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するため、リペア性を確保しつつ電子部品をプリント配線板に実装するとき、プリント配線板への接合の補強を十分に行なうことができるプリント配線板ユニット、電子機器およびプリント配線板ユニットの作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニットであって、
プリント配線板と、
前記プリント配線板の所定位置にはんだ接合により電気的に接続され、かつ、接着層により前記プリント配線板と接合された電子部品と、を有する。
前記プリント配線板と前記電子部品との間の前記接着層の一部の領域が、第1補強用樹脂層を前記プリント配線板の側に、前記第1補強用樹脂層に比べて接着強度が高い第2補強用樹脂層を前記電子部品の側に、備える多層積層領域である。
【0008】
本発明の別の一態様は、電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニットであって、
プリント配線板と、
前記プリント配線板の所定位置にはんだにより電気的に接続され、かつ、接着剤により前記プリント配線板と接合された電子部品と、を有し、
前記プリント配線板と前記電子部品との間の接着剤で形成される接着層の一部の複数の領域が、第1補強用樹脂層を前記プリント配線板の側に、前記第1補強用樹脂層に比べて接着強度が高い第2補強用樹脂層を前記電子部品の側に、備える多層積層領域であり、
前記電子部品は、半導体チップを搭載した半導体パッケージであり、
前記半導体チップの実装領域に対応する前記接着層上の領域を対応領域というとき、前記対応領域の縁部を避けるように、前記対応領域の内側に前記多層積層領域の1つが設けられ、
さらに、前記対応領域の縁部を避けるように、前記対応領域の外側に、前記多層積層領域の少なくとも1つが設けられる。
【0009】
本発明の更に別の一態様は、電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニットの作製方法であって、
プリント配線板に熱可塑性樹脂を含む、硬化したあるいは半硬化した第1補強用樹脂層を形成するステップと、
前記第1補強用樹脂層が形成された前記プリント配線板の搭載パッドにソルダーペーストを設けるステップと、
ソルダーペーストが形成された前記プリント配線板の搭載パッドと実装する電子部品のはんだバンプとを接合するステップと、
前記電子部品と前記プリント配線板との隙間および前記第1補強用樹脂層と前記電子部品との間の隙間に、前記熱可塑性樹脂に比べて接着強度が高い第2接着剤を充填して硬化した第2補強用樹脂層を形成することにより、電子部品のプリント配線板への接合を補強するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様のプリント配線板ユニット、電子機器およびプリント配線板ユニットの作製方法では、リペア性を確保しつつ電子部品をプリント配線板に実装するとき、電子部品のプリント配線板への接合の補強を十分に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態のプリント配線板ユニットが搭載される携帯電子機器の一例を示す図である。
【図2】(a),(b)は、第1実施形態である半導体パッケージのプリント配線板への実装を説明する図である。
【図3】第1実施形態の半導体パッケージをプリント配線板から取り外す様子を示す図である。
【図4】第2実施形態の半導体パッケージのプリント配線板への実装を説明する図である。
【図5】第3実施形態の半導体パッケージのプリント配線板への実装を説明する図である。
【図6】第4実施形態の半導体パッケージのプリント配線板への実装を説明する図である。
【図7】本発明のプリント配線板ユニットの作製方法の一例のフローを示すフローチャートである。
【図8】(a),(b)は、従来の半導体パッケージのプリント配線板への実装を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のプリント配線板ユニット、電子機器およびプリント配線板ユニットの作製方法について説明する。
【0013】
(プリント配線板ユニット)
図1は、第1実施形態のプリント配線板ユニット10を搭載した携帯電子機器20の内部構成を簡略化して示す図である。図1に示す携帯電子機器20では、キーボードやマウスパッド等の入力操作系が取り外されている。携帯電子機器20は、CPU等を含むプリント配線板ユニット10の他に、バッテリユニットや無線送受信ユニット等のユニット22,24,ディスプレイ26を有する。プリント配線板ユニット10は、半導体パッケージ等の電子部品が搭載されたボードである。
【0014】
プリント配線板ユニット10は、プリント配線板12の表面に複数の電子部品、すなわち半導体パッケージ14a,14b,14c,14d,14eが実装される。半導体パッケージ14a,14b,14c,14d,14eのうち、半導体パッケージ14aは、プリント配線板12に面する側に、一定の間隔ではんだボールからなるはんだバンプを複数備える。各はんだバンプは、半導体パッケージ14aの接続端子として、プリント配線板12の搭載パッドとはんだ接合され電気的には接続される。半導体パッケージ14aは、例えば、BGA(ボールグリッドアレイ)方式のパッケージである。半導体パッケージ14aは、LGA(ランドグリッドアレイ)方式やCSP(チップサイズパッケージ)方式等のパッケージであってもよい。したがって、半導体パッケージ14aのはんだバンプは半導体パッケージ14aの本体およびプリント配線板12の間に位置する。半導体パッケージ14b〜14eも図示されないバンプとプリント配線板12に設けられた搭載パッド等と接続される。
このような半導体パッケージ14aでは、以下に説明するように、はんだ接合補強用樹脂がプリント配線板12との間に設けられている。このようなはんだ接合補強用樹脂を設けるのは、半導体パッケージ14aが大きなストレスや衝撃を受けても、半導体パッケージ14aのはんだ接合が十分に維持される程度にはんだ接合を補強するためである。
【0015】
(半導体パッケージの第1実施形態)
図2(a),(b)は、第1実施形態である矩形形状の実装面を備える半導体パッケージ14aのプリント配線板12への実装を説明する図である。図2(a)は、プリント配線板12に実装された半導体パッケージ14aの本体の実装位置(点線で囲まれた位置)と、接着層の配置を示す。
【0016】
図2(a)に示すように、半導体パッケージ14aのプリント配線板12側(以降、背面側という)には、はんだバンプ16が一定間隔で複数設けられている。
図2(b)は、図2(a)に示すプリント配線板12へ実装された半導体パッケージ14aのX−X’矢視断面図である。
半導体パッケージ14aは、プリント配線板12の所定位置にはんだ接合により電気的に接続され、かつ、第1補強用樹脂層30および第2補強用樹脂層32によりプリント配線板12と接着されている。プリント配線板12と半導体パッケージ14aとの間の接着層の一部の領域が、第1補強用樹脂層30をプリント配線板12の側に、第1補強用樹脂層30に比べて接着強度が高い第2補強用樹脂層32を半導体パッケージ14aの側に、備える多層積層領域34となっている。以降、プリント配線板12と半導体パッケージ14aとの間の接着層のうち、プリント配線板12の側にある層を下層といい、半導体パッケージ14aの側にある層を上層という。多層積層領域34は、半導体パッケージ14aの実装位置を示す領域(点線で囲まれた領域)内のうち、この領域の縁部を避けるように、この縁部の内側に設けられている。なお、接着強度とは、例えばJIS K6833により規定される剥離強度をいう。
【0017】
多層積層領域34の周辺の領域では、第2補強用樹脂層32が多層積層領域34における第1補強用樹脂層30の周りを取り囲むように、第2補強用樹脂層32が形成されている。
なお、第1補強用樹脂層30は熱可塑性樹脂を含む接着層であり、第2補強用樹脂層32は熱硬化性樹脂を含む接着層であることが好ましい。ここで、熱可塑性樹脂を含む接着層とは、熱可塑性樹脂からなる樹脂の他、熱可塑性樹脂に熱硬化性樹脂がブレンドされた樹脂も含まれる。少なくとも熱可塑性を有していれば、どのようにブレンドされた樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂を含む接着層とは、熱硬化性樹脂からなる樹脂の他、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂がブレンドされた樹脂も含まれる。少なくとも熱硬化が可能なものであれば、どのようにブレンドをした樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂として、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニール系樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂として、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂が用いられる。
【0018】
このように、半導体パッケージ14aの実装位置を示す領域の内側に第1補強用樹脂層30を下層とし、第2補強用樹脂層32を上層とする多層積層領域34が設けられることにより、半導体パッケージ14aの背面が全面において接着強度が高い第2補強用樹脂層32を通してプリント配線板12と接合される。このため、プリント配線板ユニット10では、半導体パッケージ14aとプリント配線板12との接合の補強が十分に実現される。
さらに、半導体パッケージ14aの多層積層領域34の周辺の領域では、第2補強用樹脂層32が多層積層領域34における第1補強用樹脂層30の周りを取り囲むように形成されているので、補強がより確実に実現される。
【0019】
これに対して、従来の接合方法を半導体パッケージとプリント配線板との接合に適用した場合、半導体パッケージとプリント配線板との接合の補強が十分でない。
図8(a),(b)は、従来の接合方法を半導体パッケージ100とプリント配線板102との接合に適用した場合の例が示されている。
従来の接合方法において、第1アンダーフィルには、例えば熱硬化性樹脂が用いられ、第2アンダーフィルには、例えば熱可塑性樹脂が用いられる。このとき、プリント配線板102では、未硬化状態の熱可塑性樹脂とソルダーペーストを領域に応じて塗り分けることになる。図8(a),(b)に示すように、半導体パッケージ100のプリント配線板102側に設けられた複数のはんだバンプ104の一部は、熱可塑性樹脂の接着層106の領域に設けられる。接着層106の周りを囲むように熱硬化性樹脂の接着層108が設けられる。この場合、接着層108が第1アンダーフィルであり、接着層106が第2アンダーフィルである。
【0020】
しかし、半導体パッケージ100とプリント配線板102との接合前、熱可塑性樹脂およびソルダーペーストはいずれもペースト状であるため、領域に応じて熱可塑性樹脂とソルダーペーストを塗り分けることは難しい。一方、熱可塑性樹脂を硬化させた後、ソルダーペーストを所定の領域に印刷することはできるが、一度硬化した熱可塑性樹脂を再加熱した場合接着強度が低下するため、電子部品と熱可塑性樹脂との接着による接合の補強が十分に期待できない。
さらに、半導体パッケージ100の背面の多くの部分は、接着強度が接着層108に比べて低い接着層106を通してプリント配線板102と接合されている。このため、従来の接合方法では、半導体パッケージ100とプリント配線板102との接合の補強が十分でない。
以上のように、従来の方法を適用した場合、半導体パッケージとプリント配線板との接合の補強が十分でないのに対し。第1実施形態は、接着層に多層積層領域34を設けることにより、半導体パッケージとプリント配線板との接合の補強が十分に行える。
【0021】
また、第1実勢形態における第1補強用樹脂層30は熱可塑性樹脂を含む接着層であり、第2補強用樹脂層32は熱硬化性樹脂を含む接着層であるので、第1補強用樹脂層30は、リペア時、加熱により接着強度が低下する。このため、略第2補強用樹脂層32のみが接着機能を有することになる。第2補強用樹脂層32の接着面積は、第1補強用樹脂層30および第2補強用樹脂層32を合わせた接着面積に比べて小さいので接着層全体の接着強度は低くなる。このため、図3に示すように、第2補強用樹脂層32を物理的に破断させながら半導体パッケージ14aを引き剥がすことにより半導体パッケージ14aをプリント配線板12から容易に取り外すことができる。
また、後述するように、熱可塑性樹脂を含む第1補強用樹脂層30は、半導体パッケージ14aを取り付けるとき、プリント配線板12に硬化したあるいは半硬化した状態で形成することができるので、接合パッドにはんだペーストを塗布することも容易に行うことができる。
【0022】
(半導体パッケージの第2実施形態)
図4(a),(b)は、第2実施形態の半導体パッケージ14aの実装を説明する図である。第2実施形態の半導体パッケージ14aは矩形形状の実装面を備える。この半導体パッケージ14aについても、第1実施形態と同様に、半導体パッケージ14aの背面側には、はんだバンプ16が一定間隔で複数設けられている。
図4(b)は、図4(a)に示すプリント配線板12へ実装された半導体パッケージ14aのX−X’矢視断面図である。
【0023】
半導体パッケージ14aは、プリント配線板12の所定位置にはんだ接合により電気的に接続され、かつ、第1補強用樹脂層30および第2補強用樹脂層32によりプリント配線板と接合されている。プリント配線板12と半導体パッケージ14aとの間の接着層の一部の領域が、第1補強用樹脂層30を下層とし、第1補強用樹脂層30に比べて接着強度が高い第2補強用樹脂層32を上層として備える多層積層領域34となっている。勿論、第1補強用樹脂層30は熱可塑性樹脂を含む接着層であり、第2補強用樹脂層32は熱硬化性樹脂を含む接着層であることが好ましい。
第2実施形態の半導体パッケージ14aでは、第1の実施形態に比べて多層積層領域34の面積が広く、多層積層領域34は、点線で示す半導体パッケージ14aの実装位置を示す領域の4辺の近傍まで延びている。一方、実装領域の4つの角部には、接着強度の高い第2補強用樹脂層32が形成されている。このように、4つの角部に多層積層領域34を設けず、接着強度の高い第2補強用樹脂層32を設けるのは、実装領域の角部が大きな衝撃やストレスを受けやすいからである。
【0024】
(半導体パッケージの第3実施形態)
図5(a),(b)は、第3実施形態の半導体パッケージ14aの実装を説明する図である。第3実施形態の半導体パッケージ14aは矩形形状の実装面を備える。この半導体パッケージ14aについても、第1実施形態と同様に、半導体パッケージ14aの背面側には、はんだバンプ16が一定間隔で複数設けられている。
図5(b)は、図5(a)に示すプリント配線板12へ実装された半導体パッケージ14aのX−X’矢視断面図である。
【0025】
第3実施形態の半導体パッケージ14aは、プリント配線板12の所定位置にはんだ接合により電気的に接続され、かつ、第1補強用樹脂層30および第2補強用樹脂層32によりプリント配線板12と接合されている。プリント配線板12と半導体パッケージ14aとの間の接着層の一部の領域が、第1補強用樹脂層30を下層とし、第1補強用樹脂層30に比べて接着強度が高い第2補強用樹脂層32を上層とする多層積層領域34となっている。勿論、第1補強用樹脂層30は熱可塑性樹脂を含む接着層であり、第2補強用樹脂層32は熱硬化性樹脂を含む接着層であることが好ましい。
【0026】
半導体パッケージ14aは、半導体チップを搭載している。図5(a)中の点線Aで囲まれる領域は、半導体チップの実装領域に対応する接着層上の対応領域である。図5(a)中の点線Bで囲まれた領域は、半導体パッケージ14aの実装位置を示す接着層上の領域である。
図5(a)に示すように、多層積層領域34は、半導体チップの実装領域に対応する接着層上の対応領域(点線Aで囲まれる領域)の縁部を避けるように、この対応領域の外側に多層積層領域34が4つ設けられている。すなわち、多層積層領域34は、上記対応領域の縁部の外側であって、半導体パッケージ14aの実装位置を示す領域(点線Bで囲まれた領域)の縁部とで挟まれた領域に設けられている。また、4つの多層積層領域34は、半導体パッケージ14aの実装位置を示す領域の対角線を避けるように、2つの対角線に挟まれて設けられている。
【0027】
このように、多層積層領域34が、点線Bで囲まれる領域の縁部と、点線Aで囲まれる領域の縁部で挟まれた領域内に設けられるのは、この領域の受けるストレスおよび衝撃力が比較的小さいためである。この領域に、接着強度が低い第1補強用樹脂層30を用いても、半導体パッケージ14aとプリント配線板12との接合の補強に影響を与えないからである。
半導体チップの上記対応領域(点線Aで囲まれる領域)の縁部は、半導体チップの発熱による熱ストレスが発生しやすい。また、半導体パッケージ14aの実装位置を示す領域(点線Bで囲まれた領域)の縁部は、物理的な外力に起因するストレスや衝撃を受けやすい。したがって、これらの縁部は、接着強度が高い第2補強用樹脂層32により確実に補強される。
また、4つの多層積層領域34が、半導体パッケージ14aの実装位置を示す領域の対角線を避けるように設けられるのは、対角線近傍の領域においてもストレスや衝撃を受け易く、確実な補強をするためである。
【0028】
(半導体パッケージの第4実施形態)
図6(a),(b)は、第4実施形態の半導体パッケージ14aの実装を説明する図である。第4実施形態の半導体パッケージ14aは矩形形状の実装面を備える。この半導体パッケージ14aについても、第1実施形態と同様に、半導体パッケージ14aの背面側には、はんだバンプ16が一定間隔で複数設けられている。
図6(b)は、図6(a)に示すプリント配線板12へ実装された半導体パッケージ14aのX−X’矢視断面図である。
【0029】
第4実施形態の半導体パッケージ14aは、第3の実施形態に対して多層積層領域34が半導体チップの実装領域に対応する接着層上における対応領域(点線Aで囲まれる領域)の縁部を避けるように、上記対応領域の内側に設けられている点が異なる。
4つの多層積層領域34は上記対応領域の縁部の外側であって、この縁部を避けるように、この縁部と、半導体パッケージ14aの実装位置を示す接着層上の領域(点線Bで囲まれた領域)の縁部との間に挟まれるように設けられている点は、実施形態3と同じであるので、その説明は省略する。
【0030】
このように、多層積層領域34が、上記対応領域(点線Aで囲まれる領域)の縁部を避けるように、上記対応領域の内側に設けられるのは、この内側の領域の受けるストレスや衝撃が比較的小さいからである。したがって、上記対応領域の内側の領域に接着強度が低い第1補強用樹脂層30が用いられても、半導体パッケージ14aとプリント配線板12との接合の補強に影響を与えない。
【0031】
(半導体パッケージの実装方法)
次に、半導体パッケージ14aをプリント配線板12に実装するプリント配線板ユニット10の作製方法を説明する。
図7は、プリント配線板ユニット10の作製方法に関して、半導体パッケージ14aのプリント配線板12への実装を中心としたフローを説明するフローチャートである。
まず、プリント配線板12が公知の方法により作製される(ステップS10)。
例えば、プリント配線板の作製の最終工程として基板の表面処理が施されてプリント配線板12が作製される。
【0032】
この後、半導体パッケージ14aの実装しようとする位置に対応して、多層積層領域34を定め、定めた多層積層領域34の位置に、熱可塑性樹脂を塗布、印刷等することにより熱可塑性樹脂層が形成される(ステップS20)。熱可塑性樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニール系樹脂等が用いられる。
【0033】
次に、形成された熱可塑性樹脂層は硬化又は半硬化(Bステージ化)される(ステップS30)。これにより、熱可塑性樹脂を含む第1補強用樹脂層30が形成される。硬化方法は、用いる熱可塑性樹脂により異なるが、例えば、熱可塑性樹脂が感光性樹脂、より具体的には紫外線硬化樹脂の場合紫外線を照射することにより熱可塑性樹脂は硬化あるいは半硬化される。この場合、プリント配線板12の搭載パッドが半導体パッケージ14aのはんだバンプ16と接続されるように、搭載パッドには第1補強用樹脂層30は設けられない。このため、搭載パッドの部分の熱可塑性樹脂には、紫外線が照射されないように露光マスクを用いて部分的に露光される。この後、未硬化状態の部分は除去される。
形成される熱可塑性樹脂の厚さは、後述する半導体パッケージ14aとプリント配線板12との間にできるはんだバンプの高さに比べて薄い。
【0034】
第1補強用樹脂層30の形成は、紫外線硬化樹脂の印刷の代わりに、搭載パッドの部分を避けるように形成された印刷パターンに合わせて液状樹脂を印刷した後、硬化あるいは半硬化することにより形成することもできる。あるいは、搭載パッドの部分に対応するように孔のあいた熱可塑性樹脂シートを熱圧着により貼り付けることにより、熱可塑性樹脂層を形成することもできる。これにより、熱可塑性樹脂を含む第1補強用樹脂層30が形成される。
【0035】
この後、第1補強用樹脂層30が形成されたプリント配線板12の搭載パッドにソルダーペーストが印刷される(ステップS40)。ソルダーペーストの形成は、クリームはんだ印刷機およびメタルマスクを用いて行われる。
さらに、はんだリペア装置を用いて、半導体パッケージ14はプリント配線板12に載置された(ステップS50)後、ソルダーペーストが形成されたプリント配線板12の搭載パッドと半導体パッケージ14aのはんだバンプ16とがはんだの溶融によって接合される。(ステップS60)。
【0036】
この後、半導体パッケージ14aが接合されたプリント配線板12は、導通試験、および半導体パッケージ14aが正常に機能するかを確認するファンクション試験が施される(ステップS70)。
試験の確認後、半導体パッケージ14aとプリント配線板12との間の隙間に熱硬化性樹脂が充填されて硬化される(ステップS80)。試験の結果、不合格の場合、半導体パッケージ14aは取り外され、別の半導体パッケージ14aに取り替えられる。この場合、熱硬化性樹脂は充填されていないので、不合格となった半導体パッケージ14aは、熱可塑性樹脂を含む第1補強用樹脂層30を加熱し、はんだバンプ16を溶融することにより、容易に取り外すことができる。
なお、熱硬化性樹脂として、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂の硬化は、加熱により行われる。熱硬化性樹脂は、加熱されることにより、重合反応を起こし高分子の網目構造を形成する。
【0037】
また、第1補強用樹脂層30の厚さは、半導体パッケージ14aとプリント配線板12との間の隙間よりも薄いため、熱硬化性樹脂を充填する前の第1補強用樹脂層32の上には、半導体パッケージ14aの面との間に隙間がある。勿論、第1補強用樹脂層32の形成されていない領域にも半導体パッケージ14aとプリント配線板12との間に隙間がある。熱硬化性樹脂は、これらの隙間に充填され、図2(a),(b)、図4(a),(b)、図5(a),(b)、図6(a),(b)に示すような第2補強用樹脂層32が形成される。これにより、第1補強用樹脂層30の上層として、第2補強用樹脂層32が形成された領域が形成され、この領域が多層積層領域34となる。
この他、半導体パッケージ14b〜14eが実装されて、プリント配線板ユニット10が作製される。
【0038】
作製されたプリント配線板ユニット10は、携帯電子機器20に組み込まれ(ステップS90)、携帯電子機器20のファンクション試験が行われる(ステップS100)。
【0039】
以上のように、多層積層領域34を形成する際、熱可塑性樹脂を含む第1補強用樹脂層30をプリント配線板12上で硬化させた後、ソルダーペーストを塗布する。このため、ソルダーペーストと未硬化状態の第1補強用樹脂層30とが混ざらないようにすることができ、効率よくはんだ接合を行うことができる。
【0040】
また、はんだ接合の際の再加熱により第1補強用樹脂層30の接着強度が低下しても、半導体パッケージ14aの接着面は、はんだ接合後に充填されて硬化される熱硬化性樹脂を含む第2補強用樹脂層32により接着されるので、第2補強用樹脂層32を通して、半導体パッケージ14aとプリント配線板12との接合の補強は十分に行われる。
【0041】
第1補強用樹脂層30は、熱可塑性樹脂を含んでいるので、加熱することにより、第1補強用樹脂層30とプリント配線板12との接着強度は低くなる。したがって、図3に示すように、半導体パッケージ14aの取り外しが容易にできる。
以上のように、本実施形態は、リペア性を確保しつつ半導体パッケージをプリント配線板に実装するとき、半導体パッケージのプリント配線板への接合の補強を十分に行なうことができる。
【0042】
上記実施形態は、以下に示す内容を開示する。
(付記1)
電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニットであって、
プリント配線板と、
前記プリント配線板の所定位置にはんだにより電気的に接続され、かつ、接着層により前記プリント配線板と接合された電子部品と、を有し、
前記プリント配線板と前記電子部品との間の前記接着層の一部の領域が、第1補強用樹脂層を前記プリント配線板の側に、前記第1補強用樹脂層に比べて接着強度が高い第2補強用樹脂層を前記電子部品の側に備える多層積層領域である、ことを特徴とするプリント配線板ユニット。
【0043】
(付記2)
前記多層積層領域の周辺の領域では、前記第2補強用樹脂層が前記多層積層領域における前記第1補強用樹脂層の周りを取り囲むように、前記第2補強用樹脂層が形成されている、付記1に記載のプリント配線板ユニット。
【0044】
(付記3)
前記第1補強用樹脂層は熱可塑性樹脂を含む層であり、前記第2補強用樹脂層は熱硬化性樹脂を含む層である、付記1または2に記載のプリント配線板ユニット。
【0045】
(付記4)
前記電子部品は、半導体チップを搭載した半導体パッケージであり、
前記半導体チップの実装領域に対応する前記接着層上の領域を対応領域というとき、前記対応領域の縁部を避けるように、前記対応領域の外側に前記多層積層領域が設けられる、付記1〜3のいずれか1項に記載のプリント配線板ユニット。
【0046】
(付記5)
電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニットであって、
プリント配線板と、
前記プリント配線板の所定位置にはんだにより電気的に接続され、かつ、接着剤により前記プリント配線板と接合された電子部品と、を有し、
前記プリント配線板と前記電子部品との間の接着剤で形成される接着層の一部の複数の領域が、第1補強用樹脂層を前記プリント配線板の側に、前記第1補強用樹脂層に比べて接着強度が高い第2補強用樹脂層を前記電子部品の側に、備える多層積層領域であり、
前記電子部品は、半導体チップを搭載した半導体パッケージであり、
前記半導体チップの実装領域に対応する前記接着層上の領域を対応領域というとき、前記対応領域の縁部を避けるように、前記対応領域の内側に前記多層積層領域の1つが設けられ、
さらに、前記対応領域の縁部を避けるように、前記対応領域の外側に、前記多層積層領域の少なくとも1つが設けられる、ことを特徴とするプリント配線板ユニット。
【0047】
(付記6)
前記電子部品の実装領域に対応する前記接着層上の領域は矩形形状であり、前記矩形形状の2つの対角線を避けるように、前記対角線に挟まれた前記多層積層領域が設けられている、請求項4または5に記載のプリント配線板ユニット。
【0048】
(付記7)
付記1〜6のいずれか1項に記載のプリント配線板ユニットを搭載したことを特徴とする電子機器。
【0049】
(付記8)
電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニットの作製方法であって、
プリント配線板に熱可塑接着剤を含む、硬化したあるいは半硬化した第1補強用樹脂層を形成するステップと、
前記第1補強用樹脂層が形成された前記プリント配線板の搭載パッドにソルダーペーストを設けるステップと、
ソルダーペーストが形成された前記プリント配線板の搭載パッドと実装する電子部品のはんだバンプとを接合するステップと、
前記電子部品と前記プリント配線板との隙間および前記第1補強用樹脂層と前記電子部品との間の隙間に、前記熱可塑性接着剤に比べて接着強度が高い第2接着剤を充填して硬化した第2補強用樹脂層を形成することにより、電子部品のプリント配線板への接合を補強するステップと、を有することを特徴とするプリント配線板ユニットの作製方法。
【0050】
(付記9)
前記第2補強用樹脂層が前記第1補強用樹脂層の周りを取り囲むように、前記第2補強用樹脂層が形成される、付記8に記載のプリント配線板ユニットの作製方法。
【0051】
(付記10)
前記第2補強用樹脂層は熱硬化性接着剤を含む、付記8または9に記載のプリント配線板ユニットの作製方法。
【0052】
(付記11)
前記電子部品は、半導体チップを搭載した半導体パッケージであり、
前記半導体チップの実装予定領域に対応する前記接着層上の領域を対応領域というとき、前記対応領域の縁部を避けるように、前記対応領域の外側に前記第1補強用樹脂層が形成される、付記8〜10のいずれか1項に記載のプリント配線板ユニット。
【0053】
(付記12)
さらに、前記第1補強用樹脂層は、前記対応領域の縁部を避けるように、前記対応領域の内側に形成される、付記11に記載のプリント配線板ユニットの作製方法。
【0054】
(付記13)
前記電子部品の実装予定領域は矩形形状であり、
さらに、前記第1補強用樹脂層は、前記矩形形状の2つの対角線を避けるように、前記対角線に挟まれた領域に形成される、付記8〜12のいずれか1項に記載のプリント配線板ユニットの作製方法。
【0055】
以上、本発明のプリント配線板ユニット、電子機器およびプリント配線板ユニットの作製方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0056】
10 プリント配線板ユニット
12 プリント配線板
14a,14b,14c,14d,14e 半導体パッケージ
16 はんだバンプ
22,24 ユニット
26 ディスプレイ
30 第1補強用樹脂層
32 第2補強用樹脂層
34 多層積層領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニットであって、
プリント配線板と、
前記プリント配線板の所定位置にはんだにより電気的に接続され、かつ、接着層により前記プリント配線板と接合された電子部品と、を有し、
前記プリント配線板と前記電子部品との間の前記接着層の一部の領域が、第1補強用樹脂層を前記プリント配線板の側に、前記第1補強用樹脂層に比べて接着強度が高い第2補強用樹脂層を前記電子部品の側に、備える多層積層領域である、ことを特徴とするプリント配線板ユニット。
【請求項2】
前記多層積層領域の周辺の領域では、前記第2補強用樹脂層が前記多層積層領域における前記第1補強用樹脂層の周りを取り囲むように、前記第2補強用樹脂層が形成されている、請求項1に記載のプリント配線板ユニット。
【請求項3】
前記第1補強用樹脂層は熱可塑性樹脂を含む層であり、前記第2補強用樹脂層は熱硬化性樹脂を含む層である、請求項1または2に記載のプリント配線板ユニット。
【請求項4】
前記電子部品は、半導体チップを搭載した半導体パッケージであり、
前記半導体チップの実装領域に対応する前記接着層上の領域を対応領域というとき、前記対応領域の縁部を避けるように、前記対応領域の外側に前記多層積層領域が設けられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリント配線板ユニット。
【請求項5】
電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニットであって、
プリント配線板と、
前記プリント配線板の所定位置にはんだにより電気的に接続され、かつ、接着剤により前記プリント配線板と接合された電子部品と、を有し、
前記プリント配線板と前記電子部品との間の接着剤で形成される接着層の一部の複数の領域が、第1補強用樹脂層を前記プリント配線板の側に、前記第1補強用樹脂層に比べて接着強度が高い第2補強用樹脂層を前記電子部品の側に、備える多層積層領域であり、
前記電子部品は、半導体チップを搭載した半導体パッケージであり、
前記半導体チップの実装領域に対応する前記接着層上の領域を対応領域というとき、前記対応領域の縁部を避けるように、前記対応領域の内側に前記多層積層領域の1つが設けられ、
さらに、前記対応領域の縁部を避けるように、前記対応領域の外側に、前記多層積層領域の少なくとも1つが設けられる、ことを特徴とするプリント配線板ユニット。
【請求項6】
前記電子部品の実装領域に対応する前記接着層上の領域は矩形形状であり、前記矩形形状の2つの対角線を避けるように、前記対角線に挟まれた前記多層積層領域が設けられている、請求項4または5に記載のプリント配線板ユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のプリント配線板ユニットを搭載したことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
電子部品をプリント配線板に実装したプリント配線板ユニットの作製方法であって、
プリント配線板に熱可塑性樹脂を含む、硬化したあるいは半硬化した第1補強用樹脂層を形成するステップと、
前記第1補強用樹脂層が形成された前記プリント配線板の搭載パッドにソルダーペーストを設けるステップと、
ソルダーペーストが形成された前記プリント配線板の搭載パッドと実装する電子部品のはんだバンプとを接合するステップと、
前記電子部品と前記プリント配線板との隙間および前記第1補強用樹脂層と前記電子部品との間の隙間に、前記熱可塑性樹脂に比べて接着強度が高い第2接着剤を充填して硬化した第2補強用樹脂層を形成することにより、電子部品のプリント配線板への接合を補強するステップと、を有することを特徴とするプリント配線板ユニットの作製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−211002(P2011−211002A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78070(P2010−78070)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】