説明

プレコートメタルの裏面用塗料組成物、及びこれを用いたプレコートメタル

【課題】 プレコートメタルの裏面に、塗装作業性、加工性、耐ブロッキング性などに優れた低光沢塗膜を形成することのできるプレコートメタルの裏面用塗料組成物を提供すること。および、この塗料組成物を用いて、裏面に低光沢塗膜を有する、加工性、耐ブロッキング性などに優れたプレコートメタルを提供すること。
【解決手段】 水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)とからなるバインダー成分100重量部に基いて、平均粒子径が5〜50μmの範囲内である樹脂微粒子(C)1〜30重量部を含有することを特徴とするプレコートメタルの裏面用塗料組成物、及び該塗料組成物を用いて、裏面に低光沢塗膜を形成したプレコートメタルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装作業性、加工性、耐ブロッキング性などに優れたプレコートメタルの裏面用塗料組成物、及びこの塗料組成物を用いたプレコートメタルに関する。
【背景技術】
【0002】
プレコートメタル(「PCM」と略称されることもある)は、成型加工に先立ちあらかじめ塗装を施してある金属平板(切板もしくはコイル巻き)のことで、目的とする製品に成形加工した後に塗装するポストコーティングと区別することがあり、屋根、壁などの建材用やオーディオ、冷蔵庫、パーテッションなどの器物加工用などに多く使用されており、ポストコーティングに比べ経済性、省エネルギー、省資源の諸点で有利と見られている。
【0003】
プレコートメタルの塗装は表裏両面に行われるのが一般的で、表面側は成型加工後の製品の外面となる部分であって、塗膜外観、物理的性能(硬度、付着性、耐スクラッチ性、折り曲げ加工性など)、防食性、耐候性などに優れた塗料が塗装されており、その塗装工程はプライマーおよび上塗塗料を用いた2コート2ベーク方式や、プライマー、中塗塗料および上塗塗料を用いた3コート3ベーク方式が採用されている。一方、裏面は成型加工後に製品の内側に位置するため、表面側ほどの塗膜外観や耐候性は要求されず、塗装は経済性を考慮して裏面用塗料のみを用いる1コート1ベーク方式が一般的である。しかしながら、表面と同等以上の物理的性能(付着性、折り曲げ加工性など)や防食性は必要であり、プレコートメタルの裏面用塗料として、例えば塗料中に有機溶剤に不溶もしくは難溶性の塩化ビニル樹脂粉末を配合することによって1コート1ベーク方式でも優れた物理的性能や防食性を有する塗膜を形成できる塗料が提案されている(特許文献1)。また、特に防食性が要求される用途では、プライマーと裏面用塗料を用いた2コート2ベーク方式も採用されている。
【0004】
プレコートメタルは、表面と裏面が同様の外観(光沢、色調)を有することが理想であるが、プレコートメタルの裏面は成型加工後に加工製品の内側となり、見られることがほとんどないため、高度な意匠性は求められず、裏面用塗料として、例えば、高光沢裏面用塗料と低光沢裏面用塗料の2種類のみを用意し、表面の光沢が比較的高い場合には、裏面に高光沢裏面用塗料を塗装し、表面の光沢が比較的低い場合には、裏面に低光沢裏面用塗料を塗装することにより、使用塗料の品数を減らし、経済性を向上させている場合が多い。
【0005】
このうち、低光沢裏面用塗料は、従来、光沢低下効果を有するシリカなどの無機質粉末を配合することによって製造されてきたが、粘度上昇による塗装作業性の低下、折り曲げ加工性の低下、耐ブロッキング性不良による光沢転写などの不具合が生じる場合があった。なお、耐ブロッキング性不良による光沢転写とは、表面の光沢と裏面の光沢が異なるプレコートメタルをコイル巻き状態にして、表面と裏面が接触した状態で強い圧力をかけた場合に、高光沢面の光沢が低下し、逆に低光沢面の光沢が上昇して、あたかも高光沢面から低光沢面へと光沢が転写されたように見える現象を指す。この現象は、比較的平滑な高光沢面に、微細な凹凸を有する低光沢面が押し付けられることによって、高光沢面に低光沢面の微細な凹凸が表面に食い込んで平滑性が低下し、同時に、低光沢面の微細な凹凸が平滑な高光沢表面に押しつぶされて平滑となるために生じると考えられる。この現象が生じると、プレコートメタルの表面光沢がコイル巻き状態で保管している間に変化したり、さらに局部的に荷重のかかる部分については特に光沢の変化が著しくなるため光沢転写がムラ状に発生する光沢転写ムラが発生したりするため、均質な製品を供給できなくなり問題となる。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−228069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、プレコートメタルの裏面に、塗装作業性、加工性、耐ブロッキング性などに優れた低光沢塗膜を形成することのできるプレコートメタルの裏面用塗料組成物を提供すること、及びこの塗料組成物を用いて、裏面に低光沢塗膜を有する、加工性、耐ブロッキング性などに優れたプレコートメタルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、水酸基含有樹脂と架橋剤とからなるバインダー成分に、平均粒子径が5〜50μmの範囲内である樹脂微粒子を含有した塗料組成物を用いることによって、塗装作業性、加工性、耐ブロッキング性などが著しく改善された低光沢塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)とからなるバインダー成分100重量部に基いて、平均粒子径が5〜50μmの範囲内である樹脂微粒子(C)1〜30重量部を含有することによって、塗装作業性、加工性、耐ブロッキング性などに優れた低光沢塗膜を形成することのできるプレコートメタルの裏面用塗料組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、表面及び/又は裏面に化成処理が施されていてもよい金属板の表面に、プライマー塗膜及び上塗塗膜、又はプライマー塗膜、中塗塗膜及び上塗塗膜を順次形成し、裏面に、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)とからなるバインダー成分100重量部に基いて、平均粒子径が5〜50μmの範囲内である樹脂微粒子(C)1〜30重量部を含有する塗料組成物を用いた低光沢塗膜を形成することによって、裏面に低光沢塗膜を有する、加工性、耐ブロッキング性などに優れたプレコートメタルを提供する。
【0011】
また、本発明は、表面及び/又は裏面に化成処理が施されていてもよい金属板の表面に、プライマー塗膜及び上塗塗膜、又はプライマー塗膜、中塗塗膜及び上塗塗膜を順次形成し、裏面に、プライマー塗膜及び、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)とからなるバインダー成分100重量部に基いて、平均粒子径が5〜50μmの範囲内である樹脂微粒子(C)1〜30重量部を含有する塗料組成物を用いた低光沢塗膜を順次形成することによって、裏面に低光沢塗膜を有する、加工性、耐ブロッキング性、防食性などに優れたプレコートメタルを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗料組成物は優れた塗装作業性を有し、さらにプレコートメタル用鋼板の裏面に、加工性、耐ブロッキング性などに優れた低光沢塗膜を形成することができるので、優れた加工性と耐ブロッキング性を有する低光沢プレコートメタルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の塗料組成物は、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)とからなるバインダー成分100重量部に基いて、平均粒子径が5〜50μmの範囲内である樹脂微粒子(C)1〜30重量部を含有することを特徴とするプレコートメタルの裏面用塗料組成物である。
【0014】
水酸基含有樹脂(A)
本発明の組成物における水酸基含有樹脂(A)は、分子中に水酸基を有する樹脂であって、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂など、通常、熱硬化性塗料に用いられている公知の樹脂を使用でき、これらの水酸基含有樹脂は単独もしくは2種以上を混合して使用する。なかでも水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の水酸基含有樹脂を好適に使用することができる。
【0015】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、分子中に水酸基を有するポリエステル樹脂であり、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、また、これらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0016】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物からなるものである。多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。
【0017】
アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸をそれ自体既知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。アルキド樹脂の油長は30%以下、特に5〜20%程度のものが好ましい。
【0018】
ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂の製造の際に用いられる酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる低分子量のオイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが挙げられる。また、ウレタン変性アルキド樹脂は、上記アルキド樹脂、又は上記アルキド樹脂製造の際に用いられる各成分を反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが包含される。ウレタン変性ポリエステル樹脂及びウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用しうるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどが挙げられる。上記のウレタン変性樹脂は、一般に、ウレタン変性樹脂を形成するポリイソシアネート化合物の量がウレタン変性樹脂に対して0.1〜30重量%の量となる変性度合のものを好適に使用することができる。
【0019】
エポキシ変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基とエポキシ基含有樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂中の水酸基とエポキシ樹脂中の水酸基とをポリイソシアネート化合物を介して結合した生成物などの、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との付加、縮合、グラフトなどの反応による反応生成物を挙げることができる。かかるエポキシ変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、エポキシ樹脂の量がエポキシ変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜30重量%となる量であることが好適である。
【0020】
以上に述べたポリエステル樹脂のうち、特に好適なものとしては、オイルフリーポリエステル樹脂とアルキド樹脂が挙げられる。
【0021】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂は、得られる塗膜の加工性、硬度、硬化性及び耐ワキ性などのバランスの点から、水酸基価が、40〜140mgKOH/g、特に60〜120mgKOH/gの範囲内であり、数平均分子量が、1,000〜20,000、特に3,000〜15,000の範囲内であり、ガラス転移温度(Tg点)が、−40℃〜100℃、特に−20〜80℃の範囲内が好ましい。
【0022】
前記水酸基含有エポキシ樹脂は、分子中に水酸基を有するエポキシ樹脂であり、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に各種変性剤が反応せしめられた変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。変性エポキシ樹脂の製造において、その変性剤による変性時期は、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂製造の途中段階に変性してもエポキシ樹脂製造の最終段階に変性してもよい。
【0023】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂のいずれであってもよい。
【0024】
上記ビスフェノールとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールFが好適に使用される。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0025】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、同812、同815、同820、同834、同1001、同1004、同1007、同1009、同1010;旭チバ社製のアラルダイトAER6099;及び三井化学社製のエポミックR−309などを挙げることができる。
【0026】
また、エポキシ樹脂として使用できるノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂など、各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0027】
前記変性エポキシ樹脂としては、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂に、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂;アクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分を反応させたエポキシアクリレート樹脂;イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂;上記ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂又は上記各種変性エポキシ樹脂中のエポキシ基にアミン化合物を反応させて、アミノ基又は4級アンモニウム塩を導入してなるアミン変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0028】
以上に述べたエポキシ樹脂のうち、特に好適なものとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0029】
また、水酸基含有エポキシ樹脂は、得られる塗膜の加工性、硬度、硬化性及び耐ワキ性などのバランスの点から、数平均分子量が、1,000〜20,000、特に2,000〜10,000の範囲内が好ましい。
本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析(DTA)によるものであり、また数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
【0030】
架橋剤(B)
架橋剤(B)としては、加熱により前記水酸基含有樹脂(A)と反応して硬化させることができるものであれば特に制限なく使用することができるが、なかでもアミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を好適に使用することができる。
【0031】
上記アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミドなどのアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。上記反応に用いられるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒドなどが挙げられる。また、上記メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものもアミノ樹脂として使用できる。エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0032】
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロック化剤によってブロック化してなる化合物である。
【0033】
上記ブロック化する前のポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネートもしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類の如き有機ジイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水などとの付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同士の環化重合体、更にはイソシアヌレート・ビウレット体などが挙げられる。
【0034】
イソシアネート基をブロックするブロック化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール系;ε−カプロラクタム;δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムなどラクタム系;メタノール、エタノール、n−,i−又はt−ブチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系などのブロック化剤を好適に使用することができる。上記ポリイソシアネート化合物と上記ブロック化剤とを混合することによって容易に上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロックすることができる。
【0035】
前記水酸基含有樹脂(A)と上記架橋剤(B)との配合割合は、水酸基含有樹脂(A)/架橋剤(B)=50/50〜95/5の範囲内であることが耐食性、耐水性、加工性、硬化性などの点から好ましく、特に水酸基含有樹脂(A)/架橋剤(B)=60/40〜90/10の範囲内であることが好ましい。
【0036】
樹脂微粒子(C)
樹脂微粒子(C)は、平均粒子径5〜50μm、好ましくは10〜40μmである樹脂微粒子であり、硬化塗膜の耐ブロッキング性向上に寄与するものである。樹脂微粒子(C)は、塗膜硬化時(塗膜の焼付け硬化条件)において、完全には溶融しないものが好ましいが、ここで「完全には溶融しない」とは、全く溶融していない状態、及び部分的に溶融して個々の微粒子の周囲表面が部分的に溶融物で覆われている状態を包含する。
【0037】
上記樹脂微粒子(C)の平均粒子径が5μm未満では、塗膜の耐ブロッキング性の向上効果が十分ではないが、その他の効果、例えば耐ワキ性向上などのために入れてもよい。一方、50μmを超えると、裏面の塗膜表面の凹凸が大きくなるため、光沢転写が発生しやすくなり、耐ブロッキング性が低下する。また、プレコートメタルの一般的な塗装方法であるロール塗装を行う際に、粒子径の大きな樹脂微粒子がロールの間隙を通過しきれず、塗装作業性不良となる場合がある。
【0038】
樹脂微粒子(C)の樹脂種としては、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができ、中でも、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましく、特にポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂の粒子であることが、耐ブロッキング性の向上効果が大きく好ましい。これらの樹脂微粒子(C)は、単独で又は組合せて使用することができる。
【0039】
樹脂微粒子(C)の配合量は、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)とからなるバインダー成分100重量部に基いて、1〜30重量部、好ましくは5〜20重量部の範囲内である。樹脂微粒子(C)の配合量が、1重量部未満では塗膜の耐ブロッキング性の向上効果が十分ではなく、一方、30重量部を超えると塗膜の加工性や塗装作業性が低下する。
【0040】
本発明の塗料組成物は、水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、樹脂微粒子(C)から実質的になることができるが、通常、有機溶剤が配合され、さらに必要に応じて、無機質粉末(D)、塗料用としてそれ自体既知の潤滑性付与剤(E)、硬化触媒、着色顔料、光輝性顔料、防錆顔料、有機樹脂繊維、ガラスビーズ、消泡剤、塗面調整剤、沈降防止剤などを含有していてもよい。
【0041】
前記有機溶剤は、本発明組成物の塗装性の改善などのために必要に応じて配合されるものであり、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、例えば、キシレン、高沸点芳香族石油系炭化水素溶剤などの芳香族炭化水素系溶剤;シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;n−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系溶剤などを挙げることができ、なかでも高沸点芳香族石油系炭化水素溶剤が好適である。これらの有機溶剤は、単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
無機質粉末(D)
上記無機質粉末(D)の種類としては、タルク、クレー、シリカ、マイカ、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどを挙げることができ、これらは、単独で又は組合せて使用することができる。なかでも該無機質粉末として好適なものとしては、シリカ及びタルクが挙げられる。
【0043】
無機質粉末(D)の配合量は、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)とからなるバインダー成分100重量部に基いて、1〜30重量部、好ましくは5〜25重量部、特に好ましくは10〜20重量部の範囲内である。無機質粉末(D)の配合量が1重量部以下では塗膜表面の耐タック性の向上効果が十分でなく、一方、30重量部を超えると塗膜の加工性や塗装作業性が低下する。
【0044】
潤滑性付与剤(E)
上記潤滑性付与剤(E)は、塗膜の耐傷つき性を向上させるため添加することが好ましく、バインダー成分100重量部に基いて0.05〜10重量部、特に0.1〜5重量部程度添加することが適しており、好ましい潤滑性付与剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素ワックス、カルナウバワックス、ラノリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックスなどを挙げることができる。
【0045】
前記硬化触媒は、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)との架橋反応を促進するため必要に応じて配合されるものである。
【0046】
例えば、架橋剤(B)としてアミノ樹脂を用いて、水酸基含有樹脂(A)とアミノ樹脂を架橋させる場合には、酸触媒が適しており、なかでも、スルホン酸化合物が好適に用いられる。スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などを挙げることができ、なかでもp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が好適である。上記酸触媒は、その酸の一部又は全部が第2級アミン又は第3級アミンで中和されていてもよく、塗料組成物の貯蔵安定性の点からは中和されている方が好ましい。
【0047】
また、架橋剤(B)としてブロック化ポリイソシアネートを用いて、水酸基含有樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネートを架橋させる場合には、ブロック剤の解離を促進する硬化触媒が好適であり、好適な硬化触媒として、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸鉛などの有機金属触媒などを挙げることができる。
【0048】
前記必要に応じて使用できる着色顔料としては、塗料分野で通常使用されている着色顔料、例えば、チタン白、亜鉛華などの白色顔料;シアニンブルー;シアニングリーン;アゾ系やキナクリドン系などの有機赤色顔料;ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系などの有機黄色顔料;チタンイエロー、ベンガラ、カーボンブラック、黄鉛及び各種焼成顔料などの無機着色顔料などが挙げられる。
【0049】
前記必要に応じて使用できる光輝性顔料としては、塗料分野で通常使用されている光輝性顔料、例えば、アルミニウム粉、銅粉、ニッケル粉、真珠状光沢を有する被覆マイカ粉及び光輝性グラファイトなどが挙げられる。
【0050】
前記必要に応じて使用できる防錆顔料としては、例えば、クロム酸ストロンチウム、クロム酸カルシウム、クロム酸亜鉛、クロム酸亜鉛カリウム、クロム酸バリウムなどのクロム系防錆顔料;カルシウムイオン交換シリカなどのイオン交換シリカ、燐酸亜鉛、燐酸マグネシウム、亜燐酸亜鉛、亜燐酸アルミニウム、亜燐酸カルシウム、トリポリ燐酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、吸油量が30〜200ml/100g、好ましくは60〜180ml/100gの範囲内で且つ細孔容積が0.05〜1.2ml/g、好ましくは0.2〜1ml/gの範囲内である小吸油量シリカ微粉末などの非クロム系防錆顔料を挙げることができる。
【0051】
本発明の塗料組成物の被塗物として使用される金属板としては、例えば、冷延鋼板、亜鉛系メッキ鋼板、アルミニウム板などの無処理の金属板;これらの無処理の金属板に、リン酸塩処理、クロメート処理、リン酸クロム処理、ジルコニウム処理などの化成処理を施してなる金属板を挙げることができ、なかでも無処理又は化成処理を施した亜鉛系メッキ鋼板を好適に使用することができる。
【0052】
亜鉛系メッキ鋼板としては、例えば、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、鉄−亜鉛合金メッキ鋼板、ニッケル−亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板など、及びこれらの亜鉛系メッキ鋼板に化成処理を施してなる化成処理亜鉛系メッキ鋼板などを挙げることができる。該化成処理としては、リン酸亜鉛処理又はクロメート処理が一般的であるが、ジルコニウム処理などを施した化成処理亜鉛系メッキ鋼板を使用してもよい。
【0053】
化成処理は金属板の表裏両面に施されることが一般的であるが、表面または裏面いずれか一面にのみ施されていてもよい。
【0054】
上記化成処理が施されていてもよい金属板の、表面にプライマー塗膜を形成し、このプライマー塗膜上に必要に応じて中塗り塗膜を形成した後、このプライマー塗膜または中塗塗膜上に上塗塗膜を形成し、裏面に必要に応じてプライマー塗膜を形成した後、本発明の塗料組成物による塗膜を形成させることにより塗装金属板を得ることができる。
【0055】
プライマー塗膜としては、ポリエステル系プライマー塗料又はエポキシ系プライマー塗料から得られる塗膜が好適である。プライマー塗膜形成用のプライマー塗料としては、ストロンチウムクロメート、ジンククロメート、カルシウムクロメートなどのクロム系防錆顔料を含むクロム系プライマーを用いてもよいし、これらのクロム系防錆顔料を含有しない低公害の非クロム系プライマー塗料を用いてもよい。非クロム系プライマー塗料に使用される防錆顔料としては、例えば、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、リン・ケイ酸亜鉛、リン酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、シアナミド亜鉛カルシウム、亜鉛処理されたポリリン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛カルシウム、モリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、カルシウムイオン交換された非晶質シリカ微粒子などを挙げることができ、これらは1種で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0056】
特にノンクロム系化成処理を施した化成処理亜鉛系メッキ鋼板と低公害の非クロム系プライマー塗膜を組合わせることにより低公害型の塗装鋼板を得ることができる。
【0057】
プライマー塗料の塗装は、特に制限されるものではなく、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、浸漬塗装、スプレー塗装などを用いて行うことができ、その際の塗装膜厚も特に限定されるものではないが、乾燥膜厚として0.5〜10μm、好ましくは1〜8μm程度が適している。ロール塗装を行う場合には、焼付け条件として素材最高到達温度(PMT)が150〜260℃になるようにして10〜120秒間程度が適している。
【0058】
また、プライマー塗膜と上塗り塗膜の間に中塗り塗膜を挟んだ3コート塗膜とすることで耐食性および加工性がさらに向上する。
【0059】
上記中塗り塗膜は、加工性に優れたものであることが好ましく、且つ、プライマー塗膜や上塗り塗膜との密着性に優れていることが必要であるため、中塗り塗料としてはポリエステル樹脂及び/又はエポキシ樹脂100重量部に対してメラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物などの架橋剤を1〜50重量部程度を配合したものをバインダー成分としたものが適している。中でも特に加工性及びコストの面で適しているものを例示すると、ポリエステル樹脂とメラミン樹脂をバインダー成分としたもので、該ポリエステル樹脂が、ガラス転移温度−40〜40℃、数平均分子量5,000〜50,000及び水酸基価2〜100mgKOH/gのポリエステル樹脂を全ポリエステル樹脂成分中の50重量%以上含有するものなどが挙げられる。
【0060】
中塗り塗料にはバインダー成分以外に、通常、有機溶剤が配合され、さらに必要に応じて、有機樹脂微粒子、無機質粉末、硬化触媒、着色顔料、無機顔料、防錆顔料、消泡剤、塗面調整剤、沈降防止剤などを含有していてもよい。
【0061】
中塗り塗膜の膜厚は乾燥膜厚として10〜45μm、好ましくは15〜40μm程度が塗装作業性の点から適しているが、特に厚膜を要求される場合には、中塗り塗膜を2層以上塗り重ねてもよい。
【0062】
中塗り塗料の塗装は、特に制限されるものではなく、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、浸漬塗装、スプレー塗装などを用いて行うことができるが、ロール塗装を行う場合には、焼付け条件として素材最高到達温度(PMT)が150〜260℃になるようにして10〜120秒間程度が適している。
【0063】
上記上塗り塗膜は、塗膜外観、耐候性、加工性に優れたものであることが好ましく、且つ、プライマー塗膜や中塗り塗膜との密着性に優れたものであることが好ましい。上塗り塗料としては、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂などの水酸基含有樹脂と、メラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物などの架橋剤を配合してバインダー成分としたものが適しており、中でも、水酸基含有ポリエステル樹脂100重量部に対してメラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物などの架橋剤1〜100重量部程度を配合したものが適している。また、通常、このバインダー成分以外に有機溶剤が配合され、さらに必要に応じて、有機樹脂微粒子、有機樹脂繊維、無機質粉末、着色顔料、光輝性顔料、防錆顔料、ガラスビーズ、潤滑性付与剤、硬化触媒、消泡剤、塗面調整剤、沈降防止剤などを含有していてもよい。
【0064】
プライマー塗膜又は中塗り塗膜の上への上塗り塗料の塗装は、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、浸漬塗装、スプレー塗装などを用いて行うことができ、その際の塗装膜厚も特に限定されるものではないが、ロール塗装などによって連続的に塗装するコイルコーティングの場合には、通常、素材到達最高温度(PMT)が160〜260℃になるようにして15〜120秒間程度が適しており、特にPMT190〜250℃で20〜90秒間の範囲内の焼付け条件が好適であり、その際の膜厚は、乾燥膜厚として10〜45μm、好ましくは15〜35μm程度が適している。
【0065】
本発明において、塗膜の光沢は、JIS K5600−4−7(1999)の60°鏡面光沢度に従い、評価した。本発明の低光沢塗料組成物は、プレコートメタルの表面に比較的低光沢な塗膜(例えば60°鏡面光沢度が35以下)を形成する際に、裏面に塗装する塗料として適しており、表面と裏面の違和感が少なく、加工性、耐ブロッキング性などに優れたプレコートメタルを得ることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0067】
ポリエステル樹脂の合成
合成例1
加熱装置、撹拌機、還流装置、水分離器、精留塔、温度計などを備えた通常のポリエステル樹脂製造装置を用い反応槽に無水フタル酸740部、イソフタル酸498部、アジピン酸145部、ネオペンチルグリコール735部および1.6−ヘキサンジオール236部を仕込み加熱した。原料が融解後、撹拌を開始し、反応温度を230℃まで昇温させ、230℃に2時間保持して生成する縮合水は精留塔を通じて系外へ留去した。ついで反応槽にキシロールを90部添加し溶剤縮合法に切り替えて反応を続け、酸価が5mgKOH/gに達した時点で反応を終了し冷却した。冷却後キシロールを1414部加えて固形分含量60%のポリエステル樹脂溶液A1を得た。得られた樹脂は水酸基価79mgKOH/g及び数平均分子量約1,300であった。
【0068】
合成例2
合成例1において、反応槽に最初に仕込む原料組成を無水フタル酸592部、イソフタル酸747部、アジピン酸145部、ネオペンチルグリコール735部、1.6−ヘキサンジオール295部およびトリメチロールプロパン68部の組成とする以外、同様に行ない、固形分60%のポリエステル樹脂溶液A2を得た。得られた樹脂は水酸基価42mgKOH/g及び数平均分子量約2,100であった。
【0069】
裏面用塗料の製造
製造例1
合成例1で合成したポリエステル樹脂溶液A1を133部及びユーバン20SE60(三井東圧化学社製、ブチルエーテル化メラミン樹脂溶液、固形分60%)33部の樹脂混合物中にソルベッソ100(エッソ石油社製、高沸点石油系溶剤)30部及びブタノール5部を混合してなる溶液中に、チタン白JR−701(テイカ社製、チタン白顔料)79部、カーボンブラック顔料1部、ストロンチウムクロメート顔料20部、沈降性硫酸バリウム30部を顔料分散させ、タフチックAR650M(東洋紡績社製、アクリル樹脂微粒子、平均粒子径約30μm。)10部及びハイフラットT−15P(岐阜セラック製造所社製、ポリエチレンワックス、平均粒子径4μm、固形分15%)10部を加え、さらにサイリシア445(富士シリシア社製、シリカ微粉末)を添加して60°鏡面光沢度が10になるよう調整を行い、裏面用塗料ベースR1を得た。
【0070】
なお、60°鏡面光沢度の測定は、ジルコニウム処理された板厚0.35mmの溶融亜鉛鋼板に、裏面用塗料ベースをバーコーターにて乾燥塗布量が9g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が220℃になる条件で30秒間焼付を行なって得られた塗膜について、JIS K5600−4−7(1999)に規定された60°鏡面光沢度の測定方法に従い、行なった。
【0071】
製造例2
合成例1で合成したポリエステル樹脂溶液A1を133部及びユーバン20SE60(三井東圧化学社製、ブチルエーテル化メラミン樹脂溶液、固形分60%)33部の樹脂混合物中にソルベッソ100(エッソ石油社製、高沸点石油系溶剤)30部及びブタノール5部を混合してなる溶液中に、チタン白JR−701(テイカ社製、チタン白顔料)79部、カーボンブラック顔料1部、沈降性硫酸バリウム30部を顔料分散させ、タフチックAR650M(東洋紡績社製、アクリル樹脂微粒子、平均粒子径約30μm。)10部及びハイフラットT−15P(岐阜セラック製造所社製、ポリエチレンワックス、平均粒子径4μm、固形分15%)10部を加え、さらにサイリシア445(富士シリシア社製、シリカ微粉末)を添加して60°鏡面光沢度が10になるよう調整を行い、裏面用塗料ベースR2を得た。
【0072】
製造例3
製造例1において、タフチックAR650Mの添加量 10部から30部に変更し、サイリシア445により60°鏡面光沢度を2に調整した以外は製造例1と同様に製造を行い、裏面用塗料ベースR3を得た。
【0073】
製造例4
製造例1において、タフチックAR650Mの添加量 10部の替わりに、PERGOPAK M3(アルベマール(ALBEMARLE)社製、尿素−ホルムアルデヒド樹脂粒子、平均粒子径約6〜8.5μm)を20部配合し、サイリシア445により60°鏡面光沢度を5に調整した以外は製造例1と同様に製造を行い、裏面用塗料ベースR4を得た。
【0074】
製造例5
製造例1において、タフチックAR650Mの添加量 10部の替わりに、オルガソル2002ES−3(アルケマ(ARKEMA)社製、ナイロン12の樹脂微粒子、平均粒子径約30μm)を5部配合し、サイリシア445により60°鏡面光沢度を22に調整した以外は製造例1と同様に製造を行い、裏面用塗料ベースR5を得た。
【0075】
製造例6
製造例1において、タフチックAR650M 10部の替わりに、TEXTURE5380W(シャムロック テクノロジイズ社製、ポリプロピレン樹脂微粒子、平均粒子径約40μm)1部及びタフチックAR650M 5部配合し、サイリシア445により60°鏡面光沢度を8に調整した以外は製造例1と同様に製造を行い、裏面用塗料ベースR6を得た。
【0076】
製造例7
エピコート1007(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、数平均分子量2900、エポキシ当量約2250)に無水トリメリット酸を付加反応させてなる、水酸基価約190mgKOH/g、酸価約40mgKOH/gのエポキシ樹脂の固形分40%のメチルエチルケトン溶液75部、バイロンKS−1480V(東洋紡績社製のポリエステル樹脂、数平均分子量8,200、ガラス転移温度5℃、水酸基価28mgKOH/g)をシクロヘキサノン/スワゾール1500=50/50の混合溶剤に溶解して固形分を40%に調整した樹脂溶液138部及び固形分60%ユーバン20SE60の25部の樹脂混合物中にソルベッソ100の20部及びブタノール5部を混合してなる溶液中に、チタン白JR−701 61部、カーボンブラック顔料0.8部、トリポリ燐酸アルミニウム15部、沈降性硫酸バリウム23部を顔料分散させ、オルガソル2002ES−3(アルケマ(ARKEMA)社製、ナイロン12の樹脂微粒子、平均粒子径約30μm)5部及びハイフラットT−15P(岐阜セラック製造所社製、ポリエチレンワックス、平均粒子径4μm、固形分15%)10部を加え、さらにサイリシア445(富士シリシア社製、シリカ微粉末)を添加して60°鏡面光沢度が5になるよう調整を行い、裏面用塗料ベースR7を得た。
【0077】
製造例8(比較例用)
合成例1で合成したポリエステル樹脂溶液A1を133部及びユーバン20SE60(三井東圧化学社製、ブチルエーテル化メラミン樹脂溶液、固形分60%)33部の樹脂混合物中にソルベッソ100(エッソ石油社製、高沸点石油系溶剤)30部及びブタノール5部を混合してなる溶液中に、チタン白JR−701(テイカ社製、チタン白顔料)79部、カーボンブラック顔料1部、ストロンチウムクロメート顔料20部、沈降性硫酸バリウム30部を顔料分散させ、ハイフラットT−15P(岐阜セラック製造所社製、ポリエチレンワックス、平均粒子径4μm、固形分15%)10部を加え、さらにサイリシア445(富士シリシア社製、シリカ微粉末)を添加して60°鏡面光沢度が10になるよう調整を行い、裏面用塗料ベースR8を得た。
【0078】
製造例9(比較例用)
合成例1で合成したポリエステル樹脂溶液A1を133部及びユーバン20SE60(三井東圧化学社製、ブチルエーテル化メラミン樹脂溶液、固形分60%)33部の樹脂混合物中にソルベッソ100(エッソ石油社製、高沸点石油系溶剤)30部及びブタノール5部を混合してなる溶液中に、チタン白JR−701(テイカ社製、チタン白顔料)79部、カーボンブラック顔料1部、ストロンチウムクロメート顔料20部、沈降性硫酸バリウム30部を顔料分散させ、タフチックAR650M(東洋紡績社製、アクリル樹脂微粒子、平均粒子径約30μm。)0.5部及びハイフラットT−15P(岐阜セラック製造所社製、ポリエチレンワックス、平均粒子径4μm、固形分15%)10部を加え、さらにサイリシア445(富士シリシア社製、シリカ微粉末)を添加して60°鏡面光沢度が10になるよう調整を行い、裏面用塗料ベースR9を得た。
【0079】
製造例10(比較例用)
合成例1で合成したポリエステル樹脂溶液A1を133部及びユーバン20SE60(三井東圧化学社製、ブチルエーテル化メラミン樹脂溶液、固形分60%)33部の樹脂混合物中にソルベッソ100(エッソ石油社製、高沸点石油系溶剤)30部及びブタノール5部を混合してなる溶液中に、チタン白JR−701(テイカ社製、チタン白顔料)79部、カーボンブラック顔料1部、ストロンチウムクロメート顔料20部及び沈降性硫酸バリウム30部を混合し、シェーカーで顔料分散させ、タフチックAR650MZ(東洋紡績社製、アクリル樹脂微粒子、平均粒子径約60μm。)10部及びハイフラットT−15P(岐阜セラック製造所社製、ポリエチレンワックス、平均粒子径4μm、固形分15%)10部を加え、さらにサイリシア445(富士シリシア社製、シリカ微粉末)を添加して60°鏡面光沢度が10になるよう調整を行い、裏面用塗料ベースR10を得た。
【0080】
プライマー塗料
製造例11
バイロンEP−2940(注1)266.7部(固形分量で80部)をシクロヘキサノン/スワゾール1500(丸善石油化学社製、芳香族石油系高沸点溶剤)=50/50の混合溶剤20部に溶解してなる樹脂溶液中に、トリポリ燐酸アルミニウム30部及びチタン白JR−701(テイカ社製、チタン白顔料)20部を混合し、シェーカーで顔料分散させ、サイメル303(注2)20部及びネイキュア5225(注3)2.0部を添加して、プライマー塗料P1を得た。
(注1)バイロンEP−2940:東洋紡績社製、固形分30%のエポキシ変性ポリエステル樹脂溶液、樹脂の数平均分子量は約10,000、ガラス転移温度は約72℃。
(注2)サイメル303:日本サイテックインダストリーズ社製、低核体メチル化メラミン樹脂、固形分約100%。
(注3)ネイキュア5225:米国、キング インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和溶液、硬化触媒。
【0081】
中塗り塗料
製造例12
バイロンKS−1460V(東洋紡績社製のポリエステル樹脂、数平均分子量15,000、ガラス転移温度7℃、水酸基価11mgKOH/g)75部をシクロヘキサノン/スワゾール1500=50/50の混合溶剤112.5部に溶解し、固形分40%の樹脂溶液pを得た。該樹脂溶液p75部に、タイペークCR−95(石原産業社製、チタン白顔料)50部、カーボンブラック顔料4部及び上記混合溶剤25部を混合し、顔料分散を行い顔料ペーストを得た。
【0082】
得られた顔料ペースト154部に、樹脂溶液pを112.5部、サイメル303(日本サイテックインダストリーズ社製、低核体メチル化メラミン樹脂、固形分約100%)25部、ネイキュア5225(米国、キング インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和溶液、硬化触媒、有効成分25%)2部を加えて攪拌し中塗り塗料B1を得た。
【0083】
上塗り塗料
製造例13
合成例2で得られた固形分60%のポリエステル樹脂溶液A2を50部に、タイペークCR−95(石原産業社製、チタン白顔料)50部、カーボンブラック顔料4部及びシクロヘキサノン/スワゾール1500(丸善石油化学社製、芳香族石油系高沸点溶剤)=50/50の混合溶剤25部を混合し、顔料分散を行い顔料ペーストを得た。
【0084】
得られた顔料ペースト154部に、ポリエステル樹脂溶液A2を75部、サイメル303(日本サイテックインダストリーズ社製、低核体メチル化メラミン樹脂、固形分約100%)25部、ネイキュア5225(米国、キング インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和溶液、硬化触媒、有効成分25%)2部及びサイリシア445(富士シリシア社製、シリカ微粉末)15部を添加して上塗り塗料T1を得た。
【0085】
製造例14
合成例2で得られた固形分60%のポリエステル樹脂溶液A2を50部に、タイペークCR−95(石原産業社製、チタン白顔料)50部、カーボンブラック顔料4部及びシクロヘキサノン/スワゾール1500(丸善石油化学社製、芳香族石油系高沸点溶剤)=50/50の混合溶剤25部を混合し、顔料分散を行い顔料ペーストを得た。
【0086】
得られた顔料ペースト154部に、ポリエステル樹脂溶液A2を75部、サイメル303(日本サイテックインダストリーズ社製、低核体メチル化メラミン樹脂、固形分約100%)25部、ネイキュア5225(米国、キング インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和溶液、硬化触媒、有効成分25%)2部、オルガソル2002ES−3(アルケマ(ARKEMA)社製、ナイロン12の樹脂微粒子、平均粒子径約30μm)12部、ハイフラットT−15P(岐阜セラック製造所社製、ポリエチレンワックス、平均粒子径4μm、固形分15%)2部及びサイリシア445(富士シリシア社製、シリカ微粉末)7部を添加して上塗り塗料T2を得た。
【0087】
製造例15
合成例2で得られた固形分60%のポリエステル樹脂溶液A2を100部に、キシロール10部、チタン白70部及びフタロシアニンブルー5部を混合し、シェーカーで顔料分散した。ついで、このものにポリエステル樹脂溶液A2を42部、サイメル303(日本サイテックインダストリーズ社製、低核体メチル化メラミン樹脂、固形分約100%)を15部、ネイキュア5225(米国キング インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸の第2級アミン中和物)2部、ジノルマルブチルアミン3.5部及びサイリシア445(富士シリシア社製、シリカ微粉末)10部を加え、均一に撹拌して上塗り塗料T3を得た。
【0088】
試験塗板の作成
裏面用塗料塗装板の作成
実施例1〜7及び比較例1〜3
ジルコニウム処理された板厚0.35mmの溶融亜鉛鋼板に、裏面用塗料R1,R3〜R10をバーコーターにて乾燥塗布量が9g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が220℃になる条件で30秒間焼付けを行い、各試験塗板を得た。また、ジルコニウム処理された板厚0.35mmの溶融亜鉛鋼板に、プライマー塗料P1を乾燥塗布量が9g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が210℃になる条件で25秒間焼付けを行なった後、裏面用塗料R2をバーコーターにて乾燥塗布量が9g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が220℃になる条件で30秒間焼付けを行い、試験塗板を得た。
【0089】
各試験塗板について下記試験方法に従って試験を行った。得られた結果を後記表1に示す。
【0090】
試験方法
60°鏡面光沢度:JIS K5600−4−7(1999)に従い、測定した。
【0091】
塗膜外観:塗装板を目視にて評価した。
◎:塗膜表面の凹凸が均一であり粗粒が認められない。
○:塗膜表面の凹凸が均一であるが粗粒が僅かに認められる。
△:塗膜表面の凹凸が不均一で粗粒がかなり認められる。
×:塗膜表面の凹凸が不均一で粗粒が著しく認められる。
【0092】
加工性:塗装板を70×150mmの大きさに切断し、20℃の室温において、塗装板の表面を外側にして、折曲げ部分の内側に厚さ0.35mm鋼板を2枚挟んで上記塗装板を万力にて180度折曲げ(2T加工)、折曲げ部分における塗膜の状態を目視観察し、下記基準にて評価した。塗装板としては、塗装後、処理を行っていない塗装板(初期)及び塗装後、沸騰水中に20時間浸漬した塗装板(二次)の2種類を用いた。下記の加工密着性、耐衝撃性及び耐スクラッチ性の試験においても初期と二次との2種類の塗装板を用いた。
◎:加工部に塗膜のワレ、剥がれが認められない、
○:加工部に塗膜のワレ又は剥がれがわずかに認められる、
△:加工部に塗膜のワレ又は剥がれがかなり認められる、
×:加工部に塗膜のワレ又は剥がれが著しく認められる。
【0093】
加工密着性:上記加工性の試験において、2T加工した塗装板の折曲げ部分にセロハン粘着テープを貼り付け、そのテープを瞬時に剥がしたときの、折り曲げ加工部の塗膜の剥がれ程度を下記基準により評価した。
◎:加工部に塗膜の剥がれが認められない、
○:加工部に塗膜の剥がれがわずかに認められる、
△:加工部に塗膜の剥がれがかなり認められる、
×:加工部に塗膜の剥がれが著しく認められる。
【0094】
耐衝撃性:JIS K5600−5−3−6(1999)デュポン式耐衝撃性試験に準じて、落錘重量500g、撃芯の先端直径1/2インチ、落錘高さ50cmの条件にて塗装板の塗面に衝撃を与えた。ついで塗面の衝撃を加えた部分にセロハン粘着テープを貼着させ瞬時にテープを剥がしたときの塗膜の剥がれ状態を評価した。
◎:塗面に塗膜の剥がれが認められない、
○:塗面に塗膜の剥がれがわずかに認められる、
△:塗面に塗膜の剥がれがかなり認められる、
×:塗面に塗膜の剥がれが著しく認められる。
【0095】
耐スクラッチ性:20℃の室温において、コインスクラッチテスター(自動化技研工業社製)を用いて、塗装板の塗面に10円銅貨の縁を45度の角度で、3kgの荷重をかけて押し付けながら10円銅貨を10mm/秒の速度で約30mm引っ張って塗面に傷を付けた時の傷の程度を評価した。
◎:傷の部分に金属の素地は見られない
○:傷の部分に金属の素地がわずかに見られる
△:傷の部分に金属の素地がかなり見られる
×:傷の部分に塗膜がほとんど残らず金属の素地がきれいに見られる。
【0096】
耐食性:塗装板を70×150mmの大きさに切断した後、裏面及び切断面を防錆塗料にてシールした。次いで、この塗装板のほぼ中央部に素地に到達するクロスカットを入れ、塗装板の端から約1cmの箇所に2T折り曲げ加工を行ったものを試験板とし、この試験板をJISZ−2371に準じて塩水噴霧試験に供した。塩水噴霧試験時間を500時間とし、加工部については錆の発生程度を、クロスカット部については平均のフクレ幅を、目視により下記基準にて評価した。
加工部における錆の発生程度
◎:加工部に錆の発生が認められない、
○:錆の発生程度が加工部の長さの10%未満であるが認められる、
△:錆の発生程度が加工部の長さの10%以上、30%未満である、
×:錆の発生程度が加工部の長さの30%以上である、
クロスカット部の平均のフクレ幅
◎:クロスカット部にフクレが認められない、
○:カット傷からの片側の平均フクレ幅が1mm未満である、
△:カット傷からの片側の平均フクレ幅が1mm以上で5mm未満である、
×:カット傷からの片側の平均フクレ幅が5mm以上である。
【0097】
【表1】

【0098】
実施例1〜7の一般塗膜性能は、比較例1〜3に示す従来型裏面塗膜の性能に比較して加工性や耐衝撃性、塗膜外観に優れ、その他の性能は問題のないレベルであった。
【0099】
表面用塗装板の作成
製造例13
ジルコニウム処理された板厚0.35mmの溶融亜鉛鋼板に、プライマー塗料P1を乾燥塗布量が9g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が210℃になる条件で25秒間焼付けを行なった後、該プライマー塗膜上に上塗り塗料T1を乾燥塗布量が30g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が220℃になる条件で30秒間焼付けを行なない塗装鋼板K1を得た。塗膜の光沢は、20であった。
【0100】
製造例14
ジルコニウム処理された板厚0.35mmの溶融亜鉛鋼板に、プライマー塗料P1を乾燥塗布量が9g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が210℃になる条件で25秒間焼付けを行なった後、該プライマー塗膜上に中塗り塗料B1を乾燥塗布量が34g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が210℃になる条件で25秒間焼付けを行なった後、該中塗り塗膜上に上塗り塗料T2を乾燥塗布量が34g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が230℃になる条件で30秒間焼付けを行ない塗装鋼板K2を得た。塗膜は微小な凹凸を有する意匠性のある艶消し塗膜であり、塗膜の光沢は、5.8であった。
【0101】
製造例15
ジルコニウム処理された板厚0.35mmの溶融亜鉛鋼板に、プライマー塗料P1を乾燥塗布量が9g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が210℃になる条件で25秒間焼付けを行なった後、該プライマー塗膜上に中塗り塗料B1を乾燥塗布量が34g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が210℃になる条件で25秒間焼付けを行なった後、該中塗り塗膜上に上塗り塗料T3を乾燥塗布量が38g/mになるようにして塗布し、PMT(素材到達最高温度)が230℃になる条件で30秒間焼付けを行い塗装鋼板K3を得た。塗膜はちぢみ模様を有する意匠性のある艶消し塗膜であり、塗膜の光沢は、1.5であった。
【0102】
耐ブロッキング性試験
上記で得られた表面用塗装板及び実施例1〜6及び比較例1で作成された裏面塗料が塗装された塗装板を各々5cm×5cmの大きさに切断し、表面用塗装板の上塗り塗膜と裏面塗料による塗膜が形成された塗装板の裏面塗膜が互いに接するようにして板を重ね合わせ温度40℃、加重80kg/cmの条件で24時間密着させた後、2枚の試験板を剥がした後、上塗り塗膜の状態を観察し、以下の基準に従って評価した。結果を後記表2に示す。
◎:塗面に異常が認められない。
○:わずかに塗面に光沢ムラが認められるが、室温で1日以内に回復する。
△:塗面に光沢ムラが認められ、室温で1日放置しても回復しない。
×:試験前の光沢とは著しく異なるか、塗面に著しい光沢ムラが認められ、室温で1日放置しても回復しない。
【0103】
【表2】

【0104】
実施例1〜7の耐ブロッキング性は、比較例1〜3に示す従来型裏面塗膜と比較して優れており、問題のないレベルであった。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)とからなるバインダー成分100重量部に基いて、平均粒子径が5〜50μmの範囲内である樹脂微粒子(C)1〜30重量部を含有することを特徴とするプレコートメタルの裏面用塗料組成物。
【請求項2】
水酸基含有樹脂(A)が、水酸基価40〜140mgKOH/gの水酸基含有ポリエステル樹脂である請求項1に記載のプレコートメタルの裏面用塗料組成物。
【請求項3】
水酸基含有樹脂(A)が、数平均分子量1,000〜20,000及びガラス転移温度−40〜100℃の範囲内である請求項1または2に記載のプレコートメタルの裏面用塗料組成物。
【請求項4】
架橋剤(B)が、ブロック化ポリイソシアネート化合物及びアミノ樹脂から選ばれる少なくとも1種の架橋剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレコートメタルの裏面用塗料組成物。
【請求項5】
樹脂微粒子(C)が、ポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂の粒子である請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレコートメタルの裏面用塗料組成物。
【請求項6】
さらに、無機質粉末(D)を、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)とからなるバインダー成分100重量部に基いて、1〜30重量部含有するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレコートメタルの裏面用塗料組成物。
【請求項7】
無機質粉末(D)が、シリカである請求項6に記載のプレコートメタルの裏面用塗料組成物。
【請求項8】
さらに、潤滑性付与剤(E)を、水酸基含有樹脂(A)と架橋剤(B)とからなるバインダー成分100重量部に基いて、0.05〜10重量部含有するものである請求項1〜7のいずれか1項に記載のプレコートメタルの裏面用塗料組成物。
【請求項9】
表面及び/又は裏面に化成処理が施されていてもよい金属板の表面にプライマー塗膜及び上塗塗膜が順次形成され、裏面に請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗料組成物による皮膜が形成されてなることを特徴とするプレコートメタル。
【請求項10】
表面及び/又は裏面に化成処理が施されていてもよい金属板の表面にプライマー塗膜及び上塗塗膜が順次形成され、裏面にプライマー塗膜及び請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗料組成物による皮膜が順次形成されてなることを特徴とするプレコートメタル。
【請求項11】
表面及び/又は裏面に化成処理が施されていてもよい金属板の表面にプライマー塗膜、中塗塗膜及び上塗塗膜が順次形成され、裏面に請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗料組成物による皮膜が形成されてなることを特徴とするプレコートメタル。
【請求項12】
表面及び/又は裏面に化成処理が施されていてもよい金属板の表面にプライマー塗膜、中塗塗膜及び上塗塗膜が順次形成され、裏面にプライマー塗膜及び請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗料組成物による皮膜が順次形成されてなることを特徴とするプレコートメタル。
【請求項13】
中塗塗膜を形成する中塗塗料が、ポリエステル樹脂と、メラミン樹脂又はブロック化ポリイソシアネート化合物をバインダー成分とし、該ポリエステル樹脂が、ガラス転移温度−40〜40℃、数平均分子量5,000〜50,000及び水酸基価2〜100mgKOH/gのポリエステル樹脂を全ポリエステル樹脂成分中の50重量%以上含有するものである請求項11または12に記載のプレコートメタル。
【請求項14】
表面の上塗塗膜の光沢値が、60°鏡面光沢度で1〜35であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載のプレコートメタル。





【公開番号】特開2006−219731(P2006−219731A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34871(P2005−34871)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】