説明

プレスフィット端子、コネクタ、及びプレスフィット端子の製造方法

【課題】材料歩留りの向上が図れ、プレスフィット端子に対応する部材が分離された後におけるめっき処理工程が不要となり、更に、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程における制約を緩和できるプレスフィット端子を提供する。
【解決手段】拡幅部分12は、軸状部分11の胴部よりも幅方向の寸法が拡大されるように側方に広がって形成されるとともに、軸状部分11と一体に形成される。段状部分13は、軸状部分11において段状に形成されるとともに軸状部分11と一体に形成され、拡幅部分12が基板100に圧入されるときに付勢力が付加される。軸状部分11及び拡幅部分12の周囲側面には、拡幅部分12が形成される前に表面を被覆しためっき層が設けられ、軸状部分11は、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材20から分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に圧入されることで基板に対して固定されるとともに電気的に接続されるプレスフィット端子、プレスフィット端子を備えるコネクタ、及びプレスフィット端子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸状に形成された部分である軸状部分を有し、基板のスルーホールに対して端部が圧入されることで、基板に固定されるとともに基板の導電部に対して電気的に接続されるプレスフィット端子が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたプレスフィット端子は、軸状部分を有する棒状部材として設けられ、その両端のうちの一方において、基板に対して圧入される部分が設けられている。また、このプレスフィット端子には、その中途部分において、ケーシングに対してプレスフィット端子を固定するための抜け止め部が設けられている。そして、このプレスフィット端子における基板に圧入される部分は、撓み空間を挟んだ対の弾性当接部として設けられ、抜け止め部とともにプレス加工によって形成される。
【0004】
また、特許文献1に開示されたプレスフィット端子となる棒状部材は、平板からの打ち抜きによって、又はブロック状の部材からの引き抜きによって形成される(特許文献1の図4及び図5を参照)。そして、棒状部材が、平板から打ち抜かれて分離された後、又は引き抜きによって分離された後、プレス加工によって、基板に圧入される部分などが形成される。
【0005】
また、特許文献1に開示されたプレスフィット端子の端部が基板のスルーホールに圧入される場合は、抜け止め部でケーシングに対して固定されたプレスフィット端子に対して基板が取り付けられる(特許文献1の図3及び図10を参照)。即ち、プレスフィット端子の端部がスルーホールに対して圧入された状態となるように、プレスフィット端子が固定されたケーシングに対して基板の方が装填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−156350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたプレスフィット端子は、前述のように、平板からの打ち抜きによって又はブロック状の部材からの引き抜きによって分離された後、プレス加工によって、基板に圧入される部分などが形成される。このため、材料歩留りの向上を図ることができる。
【0008】
一方、プレスフィット端子においては、通常、基板のスルーホールに圧入されて基板の導電部に対して電気的に接続される接点部の表面には、導電性、耐食性の向上等の目的から、めっき層が形成される。しかしながら、特許文献1に開示のプレスフィット端子は、平板からの打ち抜きによって又はブロック状の部材からの引き抜きによって棒状部材が分離された後に、初めて、基板に圧入される接点部を構成する部分が外部に露出されることになる。このため、打ち抜き又は引き抜きによって、平板又はブロック状の部材から棒状部材が分離された後に、接点部の表面にめっき層を形成する工程が必要となる。よって、プレスフィット端子に対応する部材が分離された後に、小さな部材に個別にめっき処理を施すめっき処理工程が必要となるため、製造工数の増大を招き、製造コストも増大することになる。
【0009】
また、特許文献1に開示のプレスフィット端子は、前述のように、プレスフィット端子の端部がスルーホールに対して圧入された状態となるように、プレスフィット端子が固定されたケーシングに対して基板の方が装填される必要がある。このため、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程が大幅に制約を受けてしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、材料歩留りの向上を図ることができるとともに、プレスフィット端子に対応する部材が分離された後におけるめっき処理工程が不要となり、更に、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程における制約を緩和することができる、プレスフィット端子を提供することを目的とする。また、そのプレスフィット端子を備えるコネクタ、及び、そのプレスフィット端子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための第1発明に係るプレスフィット端子は、軸状に形成された部分である軸状部分を有し、基板のスルーホールに対して端部が圧入されることで、前記基板に固定されるとともに当該基板の導電部に対して電気的に接続されるプレスフィット端子に関する。そして、第1発明に係るプレスフィット端子は、前記軸状部分の一方の端部側又は両方の端部側に設けられ、当該軸状部分の胴部よりも当該軸状部分の軸方向と垂直な幅方向の寸法が拡大されるように側方に広がって形成されるとともに、当該軸状部分と一体に形成された拡幅部分と、前記軸状部分において段状に形成されるとともに当該軸状部分と一体に形成され、前記拡幅部分が前記基板に圧入されるときに付勢力が付加される段状部分と、を備え、前記軸状部分及び前記拡幅部分の周囲側面には、前記拡幅部分が形成される前に表面を被覆しためっき層が設けられ、前記軸状部分は、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材から分離されることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、軸状部分及び拡幅部分の周囲側面には、拡幅部分が形成される前に表面を被覆しためっき層が形成され、軸状部分は、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材から分離される。このため、プレスフィット端子に対応する部材が分離された後におけるめっき処理工程が不要となる。よって、小さな部材に個別にめっき処理を施すめっき処理工程が不要となるため、製造工数の増大を抑制でき、製造コストも低減することができる。また、本発明のプレスフィット端子においては、拡幅部分及び段状部分が一体に形成される軸状部分が、線材又は棒材として構成された軸状の部材から分離されるため、材料歩留りの向上が図られることになる。
【0013】
更に、本発明のプレスフィット端子は、軸状部分において段状に形成されるとともに軸状部分と一体に形成された段状部分が設けられている。そして、段状部分に付勢力が付加されることで、軸状部分に一体に形成された拡幅部分が、基板に対して圧入されることになる。このため、プレスフィット端子に対して直接に付勢力を付加して容易にプレスフィット端子を基板に圧入することができる。よって、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程における制約を緩和することができる。
【0014】
従って、本発明によると、材料歩留りの向上を図ることができるとともに、プレスフィット端子に対応する部材が分離された後におけるめっき処理工程が不要となり、更に、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程における制約を緩和することができる。尚、本発明においては、拡幅部分の形成は、軸状部分が軸状の部材から分離される前に行われてもよく、或いは、軸状部分が軸状の部材から分離された後に行われてもよい。
【0015】
第2発明に係るプレスフィット端子は、第1発明のプレスフィット端子において、前記軸状の部材に対して前記拡幅部分が形成された後、前記軸状部分が前記軸状の部材から分離されることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材に拡幅部分が形成され、その後に、拡幅部分が一体に形成された軸状部分が軸状の部材から分離される。このため、軸状の部材を順次繰り出すようにしながら、拡幅部分の形成作業と軸状部分の分離作業とを連続的に効率よく処理することができる。よって、プレスフィット端子の製造効率を向上させることができる。
【0017】
第3発明に係るプレスフィット端子は、第2発明のプレスフィット端子において、前記拡幅部分は、前記軸状の部材に対してプレス加工が行われることで形成されることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、軸状の部材を順次繰り出すようにしながら、プレス加工によって容易に効率よく拡幅部分を形成することができる。よって、プレスフィット端子の製造効率を更に向上させることができる。
【0019】
第4発明に係るプレスフィット端子は、第3発明のプレスフィット端子において、前記拡幅部分は、前記プレス加工が行われた後に、中心部において、切込みが形成されるとともに切り込まれた箇所が広げられることで、孔が形成されることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、拡幅部分の中心部において、切込みが形成されて更にそれが広げられることで孔が設けられる。このため、プレス加工によって形成される拡幅部分において、基板のスルーホールに対して圧入された際における取付性を向上させるための弾性変形量を多く確保できる構造を、簡素な構成で容易に実現することができる。
【0021】
第5発明に係るプレスフィット端子は、第1発明乃至第4発明のいずれかのプレスフィット端子において、前記段状部分は、前記軸状部分の胴部において屈曲した部分を含んで構成されていることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、段状部分が、軸状部分の胴部における屈曲した部分を含んで構成される。このため、付勢力を容易に付加し易い段状部分を簡素な構造で実現でき、更に、段状部分を軸状部分の胴部における所望の箇所に容易に形成することができる。よって、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程における制約を更に緩和することができる。
【0023】
第6発明に係るプレスフィット端子は、第5発明のプレスフィット端子において、前記段状部分における屈曲した部分は、前記軸状部分に対して折り曲げ加工が行われることで形成されることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、軸状部分に対して折り曲げ加工が行われるだけで段状部分が形成されるため、段状部分を更に容易に形成することができる。
【0025】
第7発明に係るプレスフィット端子は、第1発明乃至第4発明のいずれかのプレスフィット端子において、前記段状部分は、前記軸状部分が軸方向に圧縮されることで、当該軸状部分の側方に向かって張り出すように広がって形成されたフランジ状の部分として設けられていることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、軸状部分が軸方向に圧縮されることで、フランジ状の段状部分が形成される。このため、付勢力を軸方向に沿って容易に付加し易い段状部分を簡素な構造で実現でき、更に、段状部分を軸状部分における所望の箇所に容易に形成することができる。よって、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程における制約を更に緩和することができる。
【0027】
第8発明に係るプレスフィット端子は、第1発明乃至第4発明のいずれかのプレスフィット端子において、前記段状部分は、前記軸状部分における前記拡幅部分に連続する部分が段状に切り欠かれることで形成されていることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、軸状部分における拡幅部分に連続する部分が段状に切り欠かれることで、段状部分が形成される。このため、付勢力を拡幅部分近傍において容易に付加し易い段状部分を簡素な構造で実現でき、更に、切欠き形状を種々に設定することで段状部分を所望の形状に容易に形成することができる。よって、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程における制約を更に緩和することができる。
【0029】
また、前述の目的を達成するための第9発明に係るプレスフィット端子の製造方法は、軸状に形成された部分である軸状部分を有し、基板のスルーホールに対して端部が圧入されることで、前記基板に固定されるとともに当該基板の導電部に対して電気的に接続されるプレスフィット端子を製造する、プレスフィット端子の製造方法に関する。そして、第9発明に係るプレスフィット端子の製造方法は、前記軸状部分の一方の端部側又は両方の端部側において、当該軸状部分の胴部よりも当該軸状部分の軸方向と垂直な幅方向の寸法を拡大して側方に広げることで形成する拡幅部分を当該軸状部分と一体に形成する拡幅部分形成工程と、前記軸状部分において段状の部分を形成することで、前記拡幅部分が前記基板に圧入されるときに付勢力が付加される段状部分を当該軸状部分と一体に形成する段状部分形成工程と、を備え、前記軸状部分及び前記拡幅部分の周囲側面には、前記拡幅部分が形成される前に表面を被覆しためっき層が設けられ、前記軸状部分は、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材から分離されることを特徴とする。
【0030】
この発明によると、第1発明のプレスフィット端子を製造することができる。よって、本発明によると、材料歩留りの向上を図ることができるとともに、プレスフィット端子に対応する部材が分離された後におけるめっき処理工程が不要となり、更に、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程における制約を緩和することができる。尚、本発明においては、拡幅部分形成工程は、軸状部分が軸状の部材から分離される前に行われてもよく、軸状部分が軸状の部材から分離された後に行われてもよい。
【0031】
また、前述の目的を達成するための第10発明に係るコネクタは、第1発明乃至第8発明のいずれかのプレスフィット端子と、平行に配置された状態で複数の前記プレスフィット端子を保持するハウジングと、を備えていることを特徴とする。
【0032】
この発明によると、第1発明乃至第8発明のプレスフィット端子と同様の効果を奏するコネクタを実現することができる。即ち、本発明によると、材料歩留りの向上を図ることができるとともに、プレスフィット端子に対応する部材が分離された後におけるめっき処理工程が不要となり、更に、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程における制約を緩和することができる。
【0033】
第11発明に係るコネクタは、第10発明のコネクタにおいて、複数の前記プレスフィット端子のそれぞれは、前記基板に対して垂直に圧入される前記拡幅部分が前記軸状部分の一方の端部側に設けられ、前記軸状部分の他方の端部側が前記基板と平行に延びるように、屈曲して形成され、複数の前記プレスフィット端子は、互いに平行に延びる前記軸状部分の他方の端部側が前記基板に平行な方向となる前記ハウジングの幅方向に沿って並んで配置されるとともに、当該幅方向に並んで配置された複数の前記プレスフィット端子における前記軸状部分の他方の端部側が、前記基板に垂直な方向となる前記ハウジングの高さ方向においても並んで配置され、前記高さ方向において前記軸状部分の他方の端部側が互いに隣り合う位置で前記幅方向に並んで配置される複数の前記プレスフィット端子が、当該高さ方向と平行な方向において互いに重ならないように前記幅方向にずれた位置に配置されていることを特徴とする。
【0034】
この発明によると、各プレスフィット端子は、拡幅部分にて基板に対して垂直に圧入され、基板と平行な方向においてハウジングに嵌合する他のコネクタの端子に対して拡幅部分と反対側の端部が接続可能となる。そして、複数のプレスフィット端子がハウジングの幅方向及び高さ方向に密集してコンパクトに保持されたコネクタを実現できる。更に、本発明のコネクタでは、ハウジングの高さ方向において軸状部分の他方の端部側が互いに隣り合う位置でハウジングの幅方向に並んで配置される複数のプレスフィット端子が、ハウジングの高さ方向と平行な方向において互いに重ならないようにハウジングの幅方向にずれた位置に配置される。このため、各プレスフィット端子の拡幅部分を基板に圧入させるための付勢力を段状部分に付加する際に、軸状部分の他方の端部側がハウジングの高さ方向で隣り合う位置に配置されたプレスフィット端子同士が邪魔となり難く、付勢力を段状部分に付加するためのスペースを容易に確保することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、材料歩留りの向上を図ることができるとともに、プレスフィット端子に対応する部材が分離された後におけるめっき処理工程が不要となり、更に、プレスフィット端子を基板に対して圧入する作業工程における制約を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプレスフィット端子と、このプレスフィット端子を複数備える本発明の第1実施形態に係るコネクタとを示す斜視図である。
【図2】図1に示すコネクタについて基板の一部とともに示す正面図である。
【図3】図1に示すコネクタの平面図である。
【図4】図1に示すコネクタの背面図である。
【図5】図1に示すプレスフィット端子の側面図及び正面図である。
【図6】図1に示すプレスフィット端子が基板に対して取り付けられる形態を説明するための図であり、基板の一部の断面とプレスフィット端子における拡幅部分の近傍とを模式的に示す図である。
【図7】図1に示すプレスフィット端子が基板に対して取り付けられる形態を説明するための図であり、基板の一部の断面とプレスフィット端子における拡幅部分の近傍とを模式的に示す図である。
【図8】図1に示すコネクタの側面図及び図2のE−E線矢視位置から見た断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るプレスフィット端子の製造方法を示す工程図である。
【図10】図9に示す製造方法における一部の工程について模式的に説明するための図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るプレスフィット端子と、このプレスフィット端子を複数備える本発明の第2実施形態に係るコネクタとを示す斜視図である。
【図12】図11に示すコネクタについて基板の一部とともに示す正面図である。
【図13】図11に示すコネクタの平面図である。
【図14】図11に示すコネクタの背面図である。
【図15】図11に示すプレスフィット端子の側面図及び正面図である。
【図16】図11に示すコネクタの側面図及び図12のF−F線矢視位置から見た断面図である。
【図17】変形例に係るプレスフィット端子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、基板に圧入されることで基板に対して固定されるとともに電気的に接続されるプレスフィット端子、プレスフィット端子を備えるコネクタ、及びプレスフィット端子の製造方法として、種々の用途に広く適用することができるものである。
【0038】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るプレスフィット端子2と、プレスフィット端子2を複数備える本発明の第1実施形態に係るコネクタ1とを示す斜視図である。また、図2は、コネクタ1について基板100の一部とともに示す正面図である。また、図3は、コネクタ1の平面図である。また、図4は、コネクタ1の背面図である。
【0039】
図1乃至図4に示すように、コネクタ1は、複数のプレスフット端子2と、複数のプレスフィット端子2が平行に配置された状態でこれらの複数のプレスフィット端子2を保持するハウジング3とを備えて構成されている。
【0040】
ハウジング3は、薄型のブロック状の部材として設けられている。そして、このハウジング3には、略直方体状の本体部分3aと、この本体部分3aの幅方向両側の端部において同方向に突出する一対の壁部(3b、3b)とが設けられている。尚、本体部分3aの幅方向、即ち、ハウジング3の幅方向は、ハウジング3が基板100に対して取り付けられた状態で基板100に対して平行な方向であり、図2乃至図4にて両端矢印Aで示している。また、ハウジング3は、絶縁性材料である樹脂材料で形成されている。このハウジング3を形成するための樹脂材料としては、例えば、PA(ポリアミド、polyamide)等の材料を用いることができる。
【0041】
ハウジング3においては、複数のプレスフィット端子2のそれぞれが、両方の端部が外部に露出した状態で、保持されている。また、ハウジング3は、複数のプレスフィット端子2の一方の端部が基板100に対して圧入された状態で、基板100に対して固定される。そして、ハウジング3は、複数のプレスフィット端子2の他方の端部が露出する側において、図示しない他のコネクタと嵌合することになる。尚、他のコネクタがハウジング3に対して嵌合して接続される嵌合方向は、基板100に平行な方向であって且つハウジング3の幅方向に垂直な方向であり、図3にて矢印Bで示している。
【0042】
図5は、1つのプレスフィット端子2を示す側面図(図5(a))及び正面図(図5(b))である。図1乃至図5に示すプレスフィット端子2は、基板100のスルーホールに対して端部が圧入されることで、基板100に対して固定されるとともに基板100の導電部に対して電気的に接続される端子として設けられている。
【0043】
プレスフィット端子2は、導電性の金属材料で形成されており、前述のように、ハウジング3に対して複数保持される。このプレスフィット端子2を形成するための金属材料としては、例えば、リン青銅などの銅合金等を用いることができる。また、リン青銅等を素材として構成されるプレスフィット端子2の表面には、金属材料が被覆されて形成されためっき層が設けられている。このめっき層は、例えば、すずめっき層、銅下地付きすずめっき層、或いは金めっき層、等のめっき層として構成されている。
【0044】
また、プレスフィット端子2は、一体に形成された軸状部分11、拡幅部分12、段状部分13を備えて構成されている。軸状部分11は、長方形断面又は正方形断面としての矩形断面を有し、細長く軸状に形成された部分として設けられている。そして、この軸状部分11は、表面を被覆する前述のめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材から分離されることで形成されている。尚、軸状部分11の断面形状は、矩形断面に限らず、円形断面、楕円状断面、六角形断面、等であってもよい。
【0045】
拡幅部分12は、軸状部分11の一方の端部側に設けられている。そして、拡幅部分12は、軸状部分11の軸方向と垂直な幅方向(図5(b)にて両端矢印Cで示す方向)の寸法が軸状部分11の胴部よりも拡大されるように、軸状部分11の胴部から側方に広がって形成されている。尚、この拡幅部分12は、前述のように、軸状部分11と一体に形成されている。
【0046】
また、拡幅部分12は、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された前述の軸状の部材に対してプレス加工が行われることで、形成される。そして、拡幅部分12は、上記のプレス加工が行われた後に、中心部において、切込みが形成されるとともに切り込まれた箇所が広げられることで、孔12aが形成される。本実施形態では、中心部に楕円状の孔12aが形成されるとともに外形が楕円状に形成された拡幅部分12の形状を例示している。
【0047】
尚、本実施形態のプレスフィット端子2においては、上記の軸状の部材に対して拡幅部分12が形成された後、軸状部分11が軸状の部材から分離される。また、軸状部分11及び拡幅部分12の周囲側面には、拡幅部分12が形成される前に表面を被覆した前述のめっき層が設けられている。
【0048】
また、拡幅部分12は、基板100のスルーホールに圧入されて基板100の導電部に対して電気的に接続される接点部を構成している。図6及び図7は、基板100に対してプレスフィット端子2が取り付けられる形態を説明するための図であり、基板100の一部の断面とプレスフィット端子2における拡幅部分100の近傍とを模式的に示す図である。また、図6及び図7は、ハウジング3に保持された複数のプレスフィット端子2のうちの1つのプレスフィット端子2のみについて示している。そして、図6は、プレスフィット端子2が基板100に取り付けられる前の状態を示しており、図7は、プレスフィット端子2が基板100に取り付けられた状態を示している。尚、ハウジング3に保持された複数のプレスフィット端子2は、同じタイミングで、基板100に対して取り付けられることになる。
【0049】
プレスフィット端子2が基板100に対して取り付けられる際には、図6において矢印Dで示すように、拡幅部分12が基板100のスルーホール100aに対して挿入される。そして、図7に示すように、拡幅部分12がスルーホール100aに対して圧入される。拡幅部分12がスルーホール100aに圧入されることで、基板100の表面からスルーホール100aの内壁に亘って設けられた導電部100bに対して拡幅部分12が接触した状態で、拡幅部分12がスルーホール100aに対して係止する。これにより、プレスフィット端子2が、拡幅部分12において、基板100に固定されるとともに基板100の導電部100bに対して電気的に接続されることになる。
【0050】
図1乃至図3、図5に示す段状部分13は、拡幅部分12が基板100に圧入されるときに付勢力が付加される部分として設けられている。そして、この段状部分13は、軸状部分11において段状に形成されるとともに軸状部分11と一体に形成されている。また、本実施形態では、段状部分13は、軸状部分11において屈曲した部分13aを含んで構成されている。そして、段状部分13における屈曲した部分13aは、軸状部分11に対して折り曲げ加工が行われることで形成されている。尚、段状部分13は、軸状部分11において、拡幅部分12に近接した位置に形成されている。また、屈曲した部分13aは、略90°に屈曲している。
【0051】
ここで、コネクタ1において複数のプレスフィット端子2が保持される形態について更に説明する。図8は、コネクタ1の側面図(図8(a))及び図2のE−E線矢視位置から見た断面図(図8(b))である。図1乃至図4、図8に示すように、コネクタ1に保持された複数のプレスフィット端子2のそれぞれは、基板100に対して垂直に圧入される拡幅部分12が軸状部分11の一方の端部側に設けられ、軸状部分11の他方の端部11a側が基板100と平行に延びるように、屈曲して形成されている。
【0052】
尚、図8(b)によく示すように、ハウジング3には、その高さ方向に対して斜めに延びるように貫通形成された貫通孔が設けられている。そして、この貫通孔に対して、各プレスフィット端子2の軸状部分11が、他方の端部11a側から挿入され、圧入されて固定された状態となる。これにより、各プレスフィット端子2がハウジング3に保持される。また、各プレスフィット端子2は、ハウジング3の貫通孔に圧入された後、他方の端部11a側が基板100に対して平行に延びる状態となるように、軸状部分11におけるハウジング3に保持された部分に対して他方の端部11a側が折り曲げられる。
【0053】
また、複数のプレスフィット端子2は、互いに平行に延びる軸状部分11の他方の端部11a側が基板100に平行な方向となるハウジング3の幅方向に沿って並んで配置されるとともに、この幅方向に並んで配置された複数のプレスフィット端子2における軸状部分11の他方の端部11a側が、基板100に垂直な方向となるハウジング3の高さ方向においても並んで配置される。更に、ハウジング3の高さ方向において軸状部分11の他方の端部11a側が互いに隣り合う位置で幅方向に並んで配置される複数のプレスフィット端子2が、ハウジング3の高さ方向と平行な方向において互いに重ならないようにハウジング3の幅方向にずれた位置に配置されている。
【0054】
また、ハウジング3の幅方向に並んで配置された複数のプレスフィット端子2における軸状部分11の他方の端部11a側は、ハウジング3の高さ方向において3段以上の複数段(本実施形態では、3段)に亘って並んで配置されている。そして、軸状部分11の他方の端部11a側がハウジング3の高さ方向において複数段(本実施形態では、3段)に亘って並んで配置された全ての複数のプレスフィット端子2が、ハウジング3の高さ方向と平行な方向において互いに重ならないようにハウジング3の幅方向にずれた位置に配置されている。
【0055】
尚、上記のように、コネクタ1においては、複数のプレスフィット端子2における軸状部分11の他方の端部11a側が、ハウジング3の高さ方向において複数段に亘って並んで配置されている。このため、軸状部分11の他方の端部11a側の高さが異なるプレスフィット端子2同士においては、軸状部分11の長さが互いに異なるように構成されている。
【0056】
次に、本発明の一実施の形態に係るプレスフィット端子の製造方法(以下、単に「本製造方法」ともいう)について説明する。本製造方法が実施されることで、プレスフィット端子2が製造される。図9は、本製造方法を示す工程図である。また、図10(図10(a)、図10(b)、図10(c)、図10(d))は、本製造方法における一部の工程について模式的に説明するための図である。
【0057】
図9に示すように、本製造方法は、拡幅部分形成工程S101と、孔開け工程S102と、測長工程S103と、切断工程S104と、段状部分形成工程S105とを備えて構成されている。これらの各工程(S101〜S105)が行われることでプレスフィット端子2が製造され、更に、これらの工程(S101〜S105)が連続して繰り返し行われることで、複数のプレスフィット端子2が連続して製造されることになる。
【0058】
本製造方法においては、図10(a)に示すように、表面を被覆する前述のめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材20を素材として、プレスフィット端子2が製造される。軸状の部材20は、例えば、リール21に巻かれた状態で準備される。そして、リール21から軸状の部材20が順次繰り出されながら、複数のプレスフィット端子2が順番に製造されることになる。
【0059】
拡幅部分形成工程S101は、軸状部分11の一方の端部側において、軸状部分11の胴部よりも軸状部分11の軸方向と垂直な幅方向の寸法を拡大して側方に広げることで形成する拡幅部分12を軸状部分11と一体に形成する工程として構成されている。そして、この拡幅部分形成工程S101では、図10(b)に示すように、リール21から繰り出された軸状の部材20の先端側の端部において、プレス加工が施され、楕円状の外形で平たくつぶれた状態であって孔12aが形成されていない状態の拡幅部分12が形成される。
【0060】
孔開け工程S102においては、図10(c)に示すように、軸状の部材20の先端側の端部に形成されて楕円状に平たくつぶれた状態の拡幅部分12に対して、孔12aの加工が行われる。この孔12aは、楕円状に平たくつぶれた状態の拡幅部分12の中心部に対して切込みが形成されるとともに切り込まれた箇所が広げられることで、形成される。
【0061】
測長工程S103においては、先端側の端部に拡幅部分12が形成された軸状の部材20において、その先端側の端部からプレスフィット端子2として必要な長さ寸法が測定される。
【0062】
切断工程S104においては、測長工程S103で測定された長さ寸法のプレスフィット端子2が得られるように、軸状の部材20の切断処理が行われる。これにより、図10(d)に示すように、軸状部分11が、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材20から分離されることになる。そして、軸状部分11及び拡幅部分12の周囲側面には、拡幅部分12が形成される前に表面を被覆しためっき層が設けられていることになる。尚、軸状の部材20から切断された軸状部分11の端部が、前述の他方の端部11aを構成することになる。
【0063】
段状部分形成工程S105は、軸状部分11において段状の部分を形成することで、拡幅部分12が基板100に圧入されるときに付勢力が付加される段状部分13を軸状部分11と一体に形成する工程として構成されている。この段状部分形成工程S105では、軸状部分11における拡幅部分12に近接した位置において、折り曲げ加工が行われることで、屈曲した部分13aを含む段状部分13が形成される。
【0064】
上述した各工程(S101〜S105)が繰り返されることで、複数のプレスフィット端子2が製造されることになる。そして、リール21に巻かれた軸状の部材20は、リール21から順次繰り出され、拡幅部分形成工程S101から切断工程S104までの各工程(S101〜S104)が繰り返し施されることになる。尚、複数のプレスフィット端子2は、前述のように、ハウジング3の各貫通孔に圧入され、ハウジング3に保持されることになる。そして、ハウジング3の各貫通孔に圧入された各プレスフィット端子2における軸状部分11の他方の端部11a側が折り曲げられ、コネクタ1が完成することになる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によると、軸状部分11及び拡幅部分12の周囲側面には、拡幅部分12が形成される前に表面を被覆しためっき層が形成され、軸状部分11は、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材20から分離される。このため、プレスフィット端子2に対応する部材が分離された後におけるめっき処理工程が不要となる。よって、小さな部材に個別にめっき処理を施すめっき処理工程が不要となるため、製造工数の増大を抑制でき、製造コストも低減することができる。また、プレスフィット端子2においては、拡幅部分12及び段状部分13が一体に形成される軸状部分11が、線材又は棒材として構成された軸状の部材20から分離されるため、材料歩留りの向上が図られることになる。
【0066】
更に、プレスフィット端子2は、軸状部分11において段状に形成されるとともに軸状部分11と一体に形成された段状部分13が設けられている。そして、段状部分13に付勢力が付加されることで、軸状部分11に一体に形成された拡幅部分12が、基板に対して圧入されることになる。このため、プレスフィット端子2に対して直接に付勢力を付加して容易にプレスフィット端子2を基板100に圧入することができる。よって、プレスフィット端子2を基板100に対して圧入する作業工程における制約を緩和することができる。
【0067】
従って、本実施形態のプレスフィット端子2、本実施形態のコネクタ1、及び本製造方法によると、材料歩留りの向上を図ることができるとともに、プレスフィット端子2に対応する部材が分離された後におけるめっき処理工程が不要となり、更に、プレスフィット端子2を基板100に対して圧入する作業工程における制約を緩和することができる。
【0068】
また、プレスフィット端子2によると、段状部分13が拡幅部分12に近接した箇所に設けられているため、拡幅部分12の基板100への圧入の際に、付勢力を効率よく付加することができる。
【0069】
また、プレスフィット端子2によると、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材20に拡幅部分12が形成され、その後に、拡幅部分12が一体に形成された軸状部分11が軸状の部材20から分離される。このため、軸状の部材20を順次繰り出すようにしながら、拡幅部分12の形成作業と軸状部分11の分離作業とを連続的に効率よく処理することができる。よって、プレスフィット端子2の製造効率を向上させることができる。
【0070】
また、プレスフィット端子2によると、軸状の部材20を順次繰り出すようにしながら、プレス加工によって容易に効率よく拡幅部分12を形成することができる。よって、プレスフィット端子2の製造効率を更に向上させることができる。
【0071】
また、プレスフィット端子2によると、拡幅部分12の中心部において、切込みが形成されて更にそれが広げられることで孔12aが設けられる。このため、プレス加工によって形成される拡幅部分12において、基板100のスルーホール100aに対して圧入された際における取付性を向上させるための弾性変形量を多く確保できる構造を、簡素な構成で容易に実現することができる。
【0072】
また、プレスフィット端子2によると、段状部分13が、軸状部分11の胴部における屈曲した部分13aを含んで構成される。このため、付勢力を容易に付加し易い段状部分13を簡素な構造で実現でき、更に、段状部分13を軸状部分11の胴部における所望の箇所に容易に形成することができる。よって、プレスフィット端子2を基板100に対して圧入する作業工程における制約を更に緩和することができる。
【0073】
また、プレスフィット端子2によると、軸状部分11に対して折り曲げ加工が行われるだけで段状部分13が形成されるため、段状部分13を更に容易に形成することができる。
【0074】
また、コネクタ1によると、各プレスフィット端子2は、拡幅部分12にて基板100に対して垂直に圧入され、基板100と平行な方向においてハウジング3に嵌合する他のコネクタの端子に対して拡幅部分12と反対側の端部(他方側の端部11a)が接続可能となる。そして、複数のプレスフィット端子2がハウジング3の幅方向及び高さ方向に密集してコンパクトに保持されたコネクタ1を実現できる。更に、コネクタ1では、ハウジング3の高さ方向において軸状部分11の他方の端部11a側が互いに隣り合う位置でハウジング3の幅方向に並んで配置される複数のプレスフィット端子2が、ハウジング3の高さ方向と平行な方向において互いに重ならないようにハウジング3の幅方向にずれた位置に配置される。このため、各プレスフィット端子2の拡幅部分12を基板100に圧入させるための付勢力を段状部分13に付加する際に、軸状部分11の他方の端部11a側がハウジング3の高さ方向で隣り合う位置に配置されたプレスフィット端子2同士が邪魔となり難く、付勢力を段状部分13に付加するためのスペースを容易に確保することができる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図11は、本発明の第2実施形態に係るプレスフィット端子5と、プレスフィット端子5を複数備える本発明の第2実施形態に係るコネクタ4とを示す斜視図である。また、図12は、コネクタ4について基板100の一部とともに示す正面図である。また、図13は、コネクタ4の平面図である。また、図14は、コネクタ4の背面図である。尚、以下の説明においては、第1実施形態と同様に構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、又は、同一の符号を引用して説明することで、説明を省略する。
【0076】
図11乃至図14に示すように、コネクタ4は、複数のプレスフット端子5と、複数のプレスフット端子5が平行に配置された状態でこれらの複数のプレスフィット端子5を保持するハウジング6とを備えて構成されている。
【0077】
ハウジング6は、略直方体状の部材として設けられている。尚、ハウジング6の幅方向は、ハウジング6が基板100に取り付けられた状態で基板100に対して平行な方向であり、図12乃至図14にて両端矢印Aで示している。また、ハウジング6は、絶縁性材料である樹脂材料で形成されている。このハウジング6を形成するための樹脂材料としては、例えば、PA(ポリアミド、polyamide)等の材料を用いることができる。
【0078】
ハウジング6においては、複数のプレスフィット端子5のそれぞれが、一方の端部が外部に露出した状態で保持されている。そして、ハウジング6における複数のプレスフィット端子5の一方の端部が外部に露出する側と反対側の端部は、内部空間を区画するとともに外部に対して開口する筒状に形成されている。複数のプレスフィット端子5のそれぞれは、他方の端部がハウジング6における上記の内部空間で露出した状態で、ハウジング6に保持されている。
【0079】
また、ハウジング6は、複数のプレスフィット端子5の一方の端部が基板100に対して圧入された状態で、基板100に対して固定される。そして、ハウジング6は、複数のプレスフィット端子5の他方の端部が前述の内部空間にて露出する側において、図示しない他のコネクタと嵌合することになる。尚、他のコネクタがハウジング6に対して嵌合して接続される嵌合方向は、基板100に平行な方向であって且つハウジング6の幅方向に垂直な方向であり、図13にて矢印Bで示している。
【0080】
図15は、1つのプレスフィット端子5を示す側面図(図15(a))及び正面図(図15(b))である。図11乃至図15に示すプレスフィット端子5は、基板100のスルーホール100a(図6を参照)に対して端部が圧入されることで、基板100に対して固定されるとともに基板100の導電部100b(図6を参照)に対して電気的に接続される端子として設けられている。
【0081】
プレスフィット端子5は、導電性の金属材料で形成されており、前述のように、ハウジング3に対して複数保持される。このプレスフィット端子5を形成するための金属材料としては、例えば、リン青銅などの銅合金等を用いることができる。また、リン青銅等を素材として構成されるプレスフィット端子5の表面には、金属材料が被覆されて形成されためっき層が設けられている。このめっき層は、例えば、すずめっき層、銅下地付きすずめっき層、或いは金めっき層、等のめっき層として構成されている。
【0082】
また、プレスフィット端子5は、第1実施形態のプレスフィット端子2と同様に、一体に形成された軸状部分11、拡幅部分12、段状部分13を備えて構成されている。プレスフィット端子5の軸状部分11、拡幅部分12、及び段状部分13は、第1実施形態のプレスフィット端子2の軸状部分11、拡幅部分12、及び段状部分13と同様に構成されている。
【0083】
また、プレスフィット端子5においては、第1実施形態のプレスフィット端子2と同様に、軸状の部材20(図10を参照)に対して拡幅部分12が形成された後、軸状部分11が軸状の部材20から分離される。そして、プレスフィット端子5の軸状部分11及び拡幅部分12の周囲側面には、拡幅部分12が形成される前に表面を被覆した前述のめっき層が設けられている。また、プレスフィット端子5の拡幅部分12は、基板100のスルーホール100aに圧入されて基板100の導電部100bに対して電気的に接続される接点部を構成している。
【0084】
尚、図15(a)に示すように、プレスフィット端子5の軸状部分11における拡幅部分12が一体に設けられる一方の端部側と反対の他方の端部11a側には、係止部21が設けられている。この係止部21は、プレスフィット端子5がハウジング6に圧入されて保持される際にハウジング6に対して係止する突起状の部分として設けられている。この係止部21は、例えば、軸状部分11に対するプレス加工によって形成される。また、係止部21のプレス加工は、例えば、軸状の部材20に対して拡幅部分12が形成された後であって、軸状部分11が軸状の部材20から分離される前のタイミングで、軸状の部材20に対して行われる。
【0085】
ここで、コネクタ4において複数のプレスフィット端子5が保持される形態について更に説明する。図16は、コネクタ1の側面図(図16(a))及び図12のF−F線矢視位置から見た断面図(図16(b))である。図11乃至図14、図16に示すように、コネクタ4に保持された複数のプレスフィット端子5のそれぞれは、基板100に対して垂直に圧入される拡幅部分12が軸状部分11の一方の端部側に設けられ、軸状部分11の他方の端部11a側が基板100と平行に延びるように、屈曲して形成されている。
【0086】
尚、図16(b)によく示すように、ハウジング6には、前述の嵌合方向と平行に延びるように貫通形成された貫通孔が設けられている。そして、この貫通孔に対して、各プレスフィット端子5の軸状部分11が、他方の端部11a側から挿入され、圧入されて固定された状態となる。このとき、軸状部分11に設けられた係止部21が、ハウジング6の貫通孔の内壁に対して食い込むように係止することになる。これにより、各プレスフィット端子5がハウジング6に保持される。尚、プレスフィット端子5は、第1実施形態とは異なり、ハウジング6の貫通孔に圧入される前から、他方の端部11a側が基板100に対して平行に延びる状態となるように、軸状部分11におけるハウジング3に保持される他方の端部11a側が折り曲げられている。
【0087】
また、複数のプレスフィット端子5は、互いに平行に延びる軸状部分11の他方の端部11a側が基板100に平行な方向となるハウジング6の幅方向に沿って並んで配置されるとともに、この幅方向に並んで配置された複数のプレスフィット端子5における軸状部分11の他方の端部11a側が、基板100に垂直な方向となるハウジング3の高さ方向においても並んで配置される。更に、ハウジング6の高さ方向において軸状部分11の他方の端部11a側が互いに隣り合う位置で幅方向に並んで配置される複数のプレスフィット端子5が、ハウジング6の高さ方向と平行な方向において互いに重ならないようにハウジング6の幅方向にずれた位置に配置されている。
【0088】
また、ハウジング6の幅方向に並んで配置された複数のプレスフィット端子5における軸状部分11の他方の端部11a側は、ハウジング6の高さ方向において3段以上の複数段(本実施形態では、3段)に亘って並んで配置されている。そして、軸状部分11の他方の端部11a側がハウジング6の高さ方向において複数段(本実施形態では、3段)に亘って並んで配置された全ての複数のプレスフィット端子5が、ハウジング6の高さ方向と平行な方向において互いに重ならないようにハウジング6の幅方向にずれた位置に配置されている。
【0089】
尚、上記のように、コネクタ4においては、複数のプレスフィット端子5における軸状部分11の他方の端部11a側が、ハウジング6の高さ方向において複数段に亘って並んで配置されている。このため、軸状部分11の他方の端部11a側の高さが異なるプレスフィット端子5同士においては、軸状部分11の長さが互いに異なるように構成されている。
【0090】
上述したプレスフィット端子5及びコネクタ4においても、第1実施形態のプレスフィット端子2及びコネクタ1と同様の効果を奏することができる。即ち、本実施形態によると、材料歩留りの向上を図ることができるとともに、プレスフィット端子5に対応する部材が分離された後におけるめっき処理工程が不要となり、更に、プレスフィット端子5を基板100に対して圧入する作業工程における制約を緩和することができる。
【0091】
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0092】
(1)前述の実施形態では、プレスフィット端子において、拡幅部分が軸状部分の一方の端部側に設けられている形態を例にとって説明したが、この通りでなくもよい。拡幅部分が軸状部分の両方の端部側に設けられているプレスフィット端子を実施してもよい。
【0093】
(2)前述の実施形態では、他のコネクタに対して基板と平行な方向で嵌合して接続するコネクタを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、第1の基板に対して圧入されるプレスフィット端子及びこのプレスフィット端子を備えるコネクタとして、他のコネクタ又は他の第2の基板に対して、第1の基板と垂直な方向で接続される形態のプレスフィット端子及びコネクタを実施してもよい。
【0094】
(3)プレスフィット端子における拡幅部分及び段状部分の形状については、前述の実施形態で例示した形状に限らず、種々変更して実施してもよい。
【0095】
(4)前述の実施形態では、軸状部分の胴部において屈曲した部分を含んで構成された段状部分を備えたプレスフィット端子を例にとって説明したが、段状部分の形態については、この通りでなくてもよい。図17(図17(a)、図17(b)、図17(c))は、段状部分に関する変形例に係るプレスフィット端子を示す図である。
【0096】
図17(a)に示す変形例に係るプレスフィット端子7、図17(b)に示す変形例に係るプレスフィット端子8、及び、図17(c)に示す変形例に係るプレスフィット端子9は、いずれも、第1実施形態のプレスフィット端子2と同様に、軸状部分11、拡幅部分12、段状部分を備えて構成されている。ただし、プレスフィット端子(7、8、9)は、第1実施形態のプレスフィット端子2とは、段状部分の構成において異なっている。尚、図17(a)乃至図17(c)に示す変形例の説明では、第1実施形態と同様に構成される要素については、同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0097】
図17(a)に示すプレスフィット端子7には段状部分22が設けられ、図17(b)に示すプレスフィット端子8には段状部分23が設けられている。そして、段状部分22及び段状部分23は、軸状部分11における拡幅部分12に連続する部分が段状に切り欠かれることで形成されている。このため、プレスフィット端子(7、8)によると、付勢力を拡幅部分12の近傍において容易に付加し易い段状部分(22、23)を簡素な構造で実現でき、更に、切欠き形状を種々に設定することで段状部分を所望の形状に容易に形成することができる。よって、プレスフィット端子(7、8)を基板に対して圧入する作業工程における制約を更に緩和することができる。尚、プレスフィット端子7とプレスフィット端子8とにおいては、拡幅部分12の形状が異なっている。
【0098】
図17(c)に示すプレスフィット端子9には、段状部分24が設けられている。そして、段状部分24は、軸状部分11が軸方向に圧縮されることで、軸状部分11の側方に向かって張り出すように広がって形成されたフランジ状の部分として設けられている。このため、プレスフィット端子9によると、付勢力を軸方向に沿って容易に付加し易い段状部分24を簡素な構造で実現でき、更に、段状部分24を軸状部分11における所望の箇所に容易に形成することができる。よって、プレスフィット端子9を基板に対して圧入する作業工程における制約を更に緩和することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、基板に圧入されることで基板に対して固定されるとともに電気的に接続されるプレスフィット端子、プレスフィット端子を備えるコネクタ、及びプレスフィット端子の製造方法として、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0100】
1 コネクタ
2 プレスフィット端子
11 軸状部分
12 拡幅部分
13 段状部分
20 軸状の部材
100 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状に形成された部分である軸状部分を有し、基板のスルーホールに対して端部が圧入されることで、前記基板に固定されるとともに当該基板の導電部に対して電気的に接続されるプレスフィット端子であって、
前記軸状部分の一方の端部側又は両方の端部側に設けられ、当該軸状部分の胴部よりも当該軸状部分の軸方向と垂直な幅方向の寸法が拡大されるように側方に広がって形成されるとともに、当該軸状部分と一体に形成された拡幅部分と、
前記軸状部分において段状に形成されるとともに当該軸状部分と一体に形成され、前記拡幅部分が前記基板に圧入されるときに付勢力が付加される段状部分と、
を備え、
前記軸状部分及び前記拡幅部分の周囲側面には、前記拡幅部分が形成される前に表面を被覆しためっき層が設けられ、
前記軸状部分は、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材から分離されることを特徴とする、プレスフィット端子。
【請求項2】
請求項1に記載のプレスフィット端子であって、
前記軸状の部材に対して前記拡幅部分が形成された後、前記軸状部分が前記軸状の部材から分離されることを特徴とする、プレスフィット端子。
【請求項3】
請求項2に記載のプレスフィット端子であって、
前記拡幅部分は、前記軸状の部材に対してプレス加工が行われることで形成されることを特徴とする、プレスフィット端子。
【請求項4】
請求項3に記載のプレスフィット端子であって、
前記拡幅部分は、前記プレス加工が行われた後に、中心部において、切込みが形成されるとともに切り込まれた箇所が広げられることで、孔が形成されることを特徴とする、プレスフィット端子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のプレスフィット端子であって、
前記段状部分は、前記軸状部分の胴部において屈曲した部分を含んで構成されていることを特徴とする、プレスフィット端子。
【請求項6】
請求項5に記載のプレスフィット端子であって、
前記段状部分における屈曲した部分は、前記軸状部分に対して折り曲げ加工が行われることで形成されることを特徴とする、プレスフィット端子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のプレスフィット端子であって、
前記段状部分は、前記軸状部分が軸方向に圧縮されることで、当該軸状部分の側方に向かって張り出すように広がって形成されたフランジ状の部分として設けられていることを特徴とする、プレスフィット端子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のプレスフィット端子であって、
前記段状部分は、前記軸状部分における前記拡幅部分に連続する部分が段状に切り欠かれることで形成されていることを特徴とする、プレスフィット端子。
【請求項9】
軸状に形成された部分である軸状部分を有し、基板のスルーホールに対して端部が圧入されることで、前記基板に固定されるとともに当該基板の導電部に対して電気的に接続されるプレスフィット端子を製造する、プレスフィット端子の製造方法であって、
前記軸状部分の一方の端部側又は両方の端部側において、当該軸状部分の胴部よりも当該軸状部分の軸方向と垂直な幅方向の寸法を拡大して側方に広げることで形成する拡幅部分を当該軸状部分と一体に形成する拡幅部分形成工程と、
前記軸状部分において段状の部分を形成することで、前記拡幅部分が前記基板に圧入されるときに付勢力が付加される段状部分を当該軸状部分と一体に形成する段状部分形成工程と、
を備え、
前記軸状部分及び前記拡幅部分の周囲側面には、前記拡幅部分が形成される前に表面を被覆しためっき層が設けられ、
前記軸状部分は、表面を被覆するめっき層が形成された線材又は棒材として構成された軸状の部材から分離されることを特徴とする、プレスフィット端子の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の複数のプレスフィット端子と、平行に配置された状態で複数の前記プレスフィット端子を保持するハウジングと、を備えていることを特徴とする、コネクタ。
【請求項11】
請求項10に記載のコネクタであって、
複数の前記プレスフィット端子のそれぞれは、前記基板に対して垂直に圧入される前記拡幅部分が前記軸状部分の一方の端部側に設けられ、前記軸状部分の他方の端部側が前記基板と平行に延びるように、屈曲して形成され、
複数の前記プレスフィット端子は、互いに平行に延びる前記軸状部分の他方の端部側が前記基板に平行な方向となる前記ハウジングの幅方向に沿って並んで配置されるとともに、当該幅方向に並んで配置された複数の前記プレスフィット端子における前記軸状部分の他方の端部側が、前記基板に垂直な方向となる前記ハウジングの高さ方向においても並んで配置され、
前記高さ方向において前記軸状部分の他方の端部側が互いに隣り合う位置で前記幅方向に並んで配置される複数の前記プレスフィット端子が、当該高さ方向と平行な方向において互いに重ならないように前記幅方向にずれた位置に配置されていることを特徴とする、コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−174400(P2012−174400A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33069(P2011−33069)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】