プレート反応器における充填物の充填方法
【課題】プレート式反応器に粒子状の充填物を充填する際に、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一に充填することができる方法を提供する。
【解決手段】プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に充填物を投入するにあたり、前記充填物の安息角をθ(°)、前記伝熱管の軸方向における前記充填物の投入位置から前記充填区画の端までの距離をB(m)、前記充填層の最高点の高さの設計値の10%(m)をEとしたときに、BがE/tanθ以下となる投入位置から充填物を前記隙間に投入する。
【解決手段】プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に充填物を投入するにあたり、前記充填物の安息角をθ(°)、前記伝熱管の軸方向における前記充填物の投入位置から前記充填区画の端までの距離をB(m)、前記充填層の最高点の高さの設計値の10%(m)をEとしたときに、BがE/tanθ以下となる投入位置から充填物を前記隙間に投入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に、粒子状の触媒や不活性粒子等の充填物を充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子状の触媒の存在下においてガス状の原料物質から気相接触反応によって反応生成物を得るための反応器としては、多管式反応器やプレート式反応器が知られている。このうち、プレート式反応器としては、例えば、ガス状の原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられるプレート式反応器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
前記多管式反応器では、反応管に粒子状の触媒が充填される。多管式反応器では比較的細い管に触媒を充填するため、触媒はその流動性に関わらず反応管内に十分均一に充填されやすい。
【0004】
一方、前記プレート式反応器では、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒が充填される。プレート式反応器では、伝熱プレート間の隙間に触媒が充填されることから、充填の際に触媒が伝熱管の軸方向に流動する。このため、伝熱プレート間の隙間において、伝熱管の軸方向における複数の位置から触媒を投入すると、投入位置の間隔によっては、伝熱プレート間の隙間に触媒が均一に充填されず、一つの隙間における充填層の頂面の位置のばらつきが大きくなることがある。このようなばらつきは、プレート式反応器を気相接触反応に用いたときの反応の制御に影響を及ぼすことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−202430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プレート式反応器に粒子状の充填物を充填する際に、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一に充填することができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行い、充填する粒子状の充填物の安息角と、伝熱管の軸方向における充填物の投入位置の間隔との関係に着目し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
より詳しくは、プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間への充填物の投入位置の間隔は、充填する充填物の流動性による。充填物の流動性を充填物の安息角で規定すると、充填物の投入位置の間隔は、充填する充填物の安息角に関係する。
【0009】
例えば図1に示すように、安息角が小さい充填物を適当な間隔で伝熱プレート間の隙間に投入すると、充填物は均一に充填される。また図2に示すように、安息角が大きい充填物を比較的狭い間隔で伝熱プレート間の隙間に投入すると、やはり充填物は均一に充填される。一方で、安息角が小さくとも、充填物の投入位置の間隔を広くしすぎると、図3に
示すように、充填物は不均一に充填される。また図4に示すように、充填物の安息角が大きい場合では、充填物の投入位置の間隔をさほど広くしなくても、充填物は不均一に充填される。なお、図1〜図4中の矢印は前記隙間への充填物の投入位置を表す。
【0010】
そこで、本発明では、プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間への充填物の充填において、安息角で規定される充填物の流動性に基づき、前記隙間に投入されて流動する充填物によって十分に均一な充填層が形成される特定の位置から前記隙間へ充填物を投入する。
【0011】
すなわち本発明は、原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の充填物を投入して前記隙間に充填層を形成する、プレート式反応器における充填物の充填方法であって、一箇所の投入位置から前記隙間へ前記充填物を充填したときに前記隙間において充填層が形成される区画を充填区画とし、前記充填物の安息角をθ(°)、前記伝熱管の軸方向における前記充填物の投入位置から前記充填区画の端までの距離をB(m)、前記充填層の最高点の高さの設定値の10%をE(m)としたときに、下記式(1)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入する、プレート式反応器における充填物の充填方法を提供する。
B≦E/tanθ (1)
【0012】
また本発明は、前記伝熱管の軸方向における複数の位置から一つの前記充填区画に前記充填物を充填する方法であって、隣り合う前記投入位置間の距離をA(m)としたときに、さらに下記式(2)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入する、前記充填方法を提供する。
A≦2×E/tanθ (2)
【0013】
また本発明は、前記プレート式反応器が、前記隙間に鉛直方向に沿って配置されて前記隙間を鉛直方向に区切る仕切りをさらに有し、前記充填区画が前記仕切りによって形成される区画である前記充填方法を提供する。
【0014】
また本発明は、前記伝熱管の軸方向における前記充填区画の長さが0.05m〜2mである前記充填方法を提供する。
【0015】
また本発明は、前記充填物が粒子状の触媒及び不活性粒子の一方又は両方である前記充填方法を提供する。
【0016】
また本発明は、原料を反応させるための反応容器に並んで設けられる複数の伝熱プレートを有し、前記伝熱プレートが断面形状の周縁又は端縁で鉛直方向に連結している複数の伝熱管を含むプレート式反応器を用いて、原料から接触反応によって反応生成物を製造する方法であって、隣り合う伝熱プレート間の隙間に触媒を落下させることによって形成される触媒層に前記原料を通す工程と、前記伝熱管に所望の温度の熱媒を供給する工程とを含み、前記原料が、エチレン;炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種;炭素数4以上の脂肪族炭化水素;o−キシレン;オレフィン;カルボニル化合物;クメンハイドロパーオキサイド;ブテン;又はエチルベンゼン;であり、得られる前記反応生成物が、酸化エチレン;炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方;マレイン酸;フタル酸;パラフィン;アルコール;アセトン及びフェノール;ブタジエン;又はスチレン;である方法において、前記プレート式反応器に、前記の本発明の充填方法を用いる生
成物の製造方法を提供する。
【0017】
また本発明は、前記原料がプロピレン又はイソブチレンであり、分子状酸素含有ガスを用いてプロピレン又はイソブチレンを酸化し、(メタ)アクロレイン及び(メタ)アクリル酸の一方又は両方を製造する前記反応生成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、前記式(1)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入することから、プレート式反応器に充填物を充填する際に、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一に充填することができる。
【0019】
また本発明は、前記伝熱管の軸方向における複数の位置から一つの前記充填区画に前記充填物を充填する場合に、前記式(2)をさらに満たすように前記充填物を前記隙間に投入することから、一充填区画に複数の投入位置から充填物を充填するプレート式反応器に充填物を充填する場合でも、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一に充填することができる。
【0020】
また本発明では、前記プレート式反応器が、前記隙間に鉛直方向に沿って配置されて前記隙間を鉛直方向に区切る仕切りをさらに有し、前記充填区画が前記仕切りによって形成される区画であることが、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一かつ容易に充填する観点からより効果的である。
【0021】
また本発明では、前記伝熱管の軸方向における前記充填区画の長さが0.05m〜2mであることが、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一かつ容易に充填する観点からより効果的である。
【0022】
また本発明では、前記充填物が粒子状の触媒及び不活性粒子の一方又は両方であることが、均一な充填層による気相接触反応を行う観点からより効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に適当な間隔で充填物が充填されてなる充填層の一例を伝熱プレート側から見たときの概略図である。
【図2】プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に適当な間隔で充填物が充填されてなる充填層の他の例を伝熱プレート側から見たときの概略図である。
【図3】プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に不適当な間隔で充填物が充填されてなる充填層の一例を伝熱プレート側から見たときの概略図である。
【図4】プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に不適当な間隔で充填物が充填されてなる充填層の他の例を伝熱プレート側から見たときの概略図である。
【図5】本発明のプレート式反応器の一例の要部を概略的に示す図である。
【図6】図5のプレート式反応器における伝熱プレートの間隔及び伝熱管の管径を説明する図である。
【図7】本発明のプレート式反応器の一実施の形態における構成を概略的に示す図である。
【図8】図7のプレート式反応器をA−A’線に沿って切断したときの断面を示す図である。
【図9】図7のプレート式反応器をB−B’線に沿って切断したときの断面を示す図である。
【図10】図7のプレート式反応器における熱媒混合装置の構成を概略的に示す図である。
【図11】図7のプレート式反応器における仕切り7を示す図である。
【図12】図7のプレート式反応器における通気栓8の斜視図である。
【図13】仕切り7への通気栓8の係止状態を示す図である。
【図14】本発明に用いられる充填用器具の一例を概略的に示す図である。
【図15】本発明に用いられる充填用器具の他の例を概略的に示す図である。
【図16】本発明に用いられる充填用装置の一例を概略的に示す図である。
【図17】本発明に用いられる充填用装置の一例を概略的に示す図である。
【図18】複数の投入位置から伝熱プレート間の隙間に充填物が投入されてなる充填層の頂部を概略的に示す図である。
【図19】本発明に用いられる分配装置の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のプレート式反応器における充填物の充填方法は、一箇所の投入位置から前記隙間へ前記充填物を充填したときに前記隙間において充填層が形成される区画を充填区画とし、前記充填物の安息角をθ(°)、前記伝熱管の軸方向における前記充填物の投入位置から前記充填区画の端までの距離をB(m)、前記充填層の最高点の高さの設定値の10%をE(m)としたときに、下記式(1)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入する方法である。
B≦E/tanθ (1)
【0025】
前記投入位置は、前記隙間に投入される前記充填物の流れにおける前記端部側の側縁である。前記充填物の流れの幅が0.05m以下である場合は前記充填物の流れの中心としてもよい。前記充填物の流れの幅は、狭いと充填物の投入作業が容易になりやすく、広いと充填された充填物の均一性を高め易い。前記充填物の流れの幅は、投入作業の作業性の観点から、0.05m以下であることが好ましい。また、前記充填物の流れの幅は、充填された充填物の均一性の向上の観点から、0.1m以上であることが好ましく、0.15m以上であることがより好ましい。
【0026】
前記充填層の最高点とは、一充填区画に充填物が充填されたときの天面のうち最も高い位置である。一充填区画当たりにおける充填物の投入位置が一箇所である場合では、前記充填層の最高点の高さは投入位置における充填層の高さであり、一充填区画当たりにおける充填物の投入位置が複数である場合では、前記充填層の最高点の高さは、投入位置における充填層の高さのうちの最大値である。本発明では、充填層の高さの設定値は充填層の最高点の高さで設定する。例えば本発明において、充填層の高さの設定値を1.7mとすることは、充填層の最高点の高さを1.7mに設定していることを意味する。本発明では、充填物の充填は、充填層の最高点の高さの設定値と充填層の最高点の高さの実測値との差が、充填層の最高点の高さの設定値の5%以下となるように行われることが好ましく、3%以下となるように行われることがより好ましい。
【0027】
前記Eは、前記充填層の最高点の高さの設定値の10%である。本発明におけるプレート式反応器は、例えば気相接触反応に好ましく用いられ、充填物には、通常、粒子状の触媒、又は粒子の触媒と不活性粒子との混合物が用いられる。前記の用途及び充填物においては、前記充填層の最高点の高さの設定値と充填層の高さの実測値との差は、充填物のさらなる均一な充填による使用時の圧力の均一化及び触媒性能の低下の抑制の観点から、前記設定値の5%以下の値であることが好ましく、3%以下の値であることがより好ましい。なお、前記Eが10%より大きくなると、前記の用途において、反応時の触媒層の圧力が不均一になり、局所的な反応物の吹き抜けが起こって反応物の転化率が低下し、目的物の収率が低下することがある。
【0028】
前記Bは、E/tanθよりも大きいと、充填層の高さの実測値が前記Eよりも大きくなるおそれがある。前記BはE/tanθ以下であればよいが、Bが小さいと、充填され
た充填物の均一性の向上の観点から好ましいが、前記投入位置の数が多くなり、充填物の投入作業が煩雑になることがある。前記Bは、充填物の投入作業の作業性の観点から、0.5×E/tanθ以上であることが好ましく、0.75×E/tanθ以上であることがより好ましい。
【0029】
前記充填区画への充填物の投入は、前記設定値の充填層を得るように行うことができる。このような充填区画への充填物の投入は、一充填区画において前記投入位置から充填物を投入したときに、前記投入位置において前記設定値の高さとなる充填物の投入量を求め、求められた投入量の充填物を前記投入位置から投入することによって行うことができる。前記投入量は、例えば前記充填区画の容積、触媒の空間密度、触媒の安息角、及び一充填区画における投入位置の数から求めることができる。
【0030】
又は、前記充填区画への充填物の投入は、実際の充填層の最高点の高さが前記設定値の高さになるまで充填物を前記投入位置から投入することによって行うことができる。このような充填区画への充填物の投入の終点は、伝熱プレートにおいて、前記設定値の高さとなる位置に印をつけ、伝熱プレートの上方から目視で、又は前記隙間へカメラを挿入して充填中の充填層の高さを観察することによって、又は充填物の投入に伴い上昇する充填層の天面の位置を検出する接触式のセンサを用いて、又は上方から棒状のものを充填層の天面に接触させて天面の位置を測定することで決定することができる。
【0031】
形成された充填層の良否は、前記設定値と実測値との比較や、各充填区画内での充填物の充填高さの比較によって評価することができる。例えば形成された充填層は、充填層の最高点の高さの設定値に対する実測値の誤差が0〜10%以内であればよく、0〜5%以内であることがより好ましい。
【0032】
前記充填物を前記充填区画に投入する方法は、特に限定されない。このような方法としては、例えば、作業員による投入位置からの充填物の投入、及び、充填用の器具や装置を用いる投入位置からの充填物の投入が挙げられる。充填用の器具や装置には、多管式反応器の反応管への充填物の充填に用いられる器具や装置をそのまま、又は改良して用いることができる場合もある。
【0033】
前記充填物を前記充填区画に投入する方法は、前記充填区画への充填物の供給速度を制御することができる方法であることが好ましく、また前記充填区画への充填物の供給量を制御することができる方法であることが好ましい。これらの観点から、ホッパのような容器とベルトコンベアのような速度を自在に調整することができる搬送装置とを有する充填用装置を用いて前記充填物を充填区画に投入することが好ましい。
【0034】
本発明において、一つの前記充填区画に複数の投入位置から前記充填物を充填する場合では、前記の式(1)に加えて以下の式(2)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入する。ここで下記式(2)中、Aは隣り合う前記投入位置間の距離(m)であり、隣り合う前記充填物の流れにおける隣り合う側縁間の距離を表す。
A≦2×E/tanθ (2)
【0035】
前記Aが2×E/tanθよりも大きいと、充填層の高さの実測値が前記Eよりも大きくなるおそれがある。前記Aは2×E/tanθ以下であればよいが、Aが小さいと、Bと同様に、充填された充填物の均一性の向上の観点から好ましいが、前記投入位置の数が多くなり、充填物の投入作業が煩雑になることがある。前記Aは、充填物の投入作業の作業性の観点から、1×E/tanθ以上であることが好ましく、1.5×E/tanθ以上であることがより好ましい。
【0036】
本発明において、一つの充填区画に複数の投入位置から充填物を充填する場合では、充填物は一つの充填区画へ同時に投入される。ここで同時に投入とは、各投入位置において、同じ量の充填物が同じ速度で同時に投入され始めることを言う。各投入位置における充填物の投入量及び投入速度は、実質的に同じであればよく、例えば投入量は各投入位置における投入量の平均値に対して±10%以内であればよく、投入速度は、最も早く投入が終了した投入位置における投入時間に対して、最も遅く投入が終了した投入位置における投入時間が+10%以内であればよい。
【0037】
前記充填区画は、前記伝熱プレート間の隙間における前記充填物を収容し得る一室である。前記充填区画は、前記隙間を鉛直方向に仕切る仕切りが前記隙間に設けられていない場合には前記隙間であり、前記仕切りが前記隙間に設けられている場合では、前記仕切りによって形成される一区画である。前記充填区画は、前記仕切りを前記隙間に設けることによって、伝熱管の軸方向における長さを調整することができる。伝熱管の軸方向における充填区画の長さは、短いと、充填物の投入位置を少なくしやすく、また容易に充填物を均一に充填しやすい。このように、伝熱管の軸方向における前記充填区画の長さは、充填物の均一な充填の作業性の観点から、0.05m〜2mであることが好ましく、0.1〜1mであることがより好ましく、0.2〜0.5mであることがさらに好ましい。
【0038】
伝熱プレートと仕切りによる充填区画の容積は、隙間への充填物の充填を区画単位で行い、充填物の正確かつ容易な充填を行う観点から、1〜100Lが好ましく、1.5〜30Lであることがより好ましく、2〜15Lであることが特に好ましい。
【0039】
前記充填物には、粒子状の充填物が用いられる。充填物は一種でも二種以上でもよい。二種以上の場合は混合もしくは積層して充填することができる。充填物は、プレート式反応器の用途に応じて選ばれる。充填物としては、例えば、一般に気相接触反応に用いられる粒子状の触媒及び不活性粒子が挙げられる。前記触媒としては、例えば特開2005−336142号公報に記載されているような、Mo−Bi系複合酸化物触媒、及びMo−V系複合酸化物触媒が挙げられる。また、前記不活性粒子としては、例えば、ムライト、アルミナ、シリコンカーバイド、シリカ、酸化ジルコニア、酸化チタン等の、プレート式反応器の使用条件において不活性な物質による粒子が挙げられる。
【0040】
前記充填物の形状及び大きさは、前記伝熱プレートの隙間に充填可能な範囲から適宜に選ばれる。充填物の形状としては、例えば、球状、円柱状、円筒状、星型状、リング状、小片状、網状、及び不定形が挙げられる。充填物の大きさは、例えば充填物が触媒又は不活性粒子である場合では、最大粒径で1〜20mmであることが好ましく、3〜10mmであることがより好ましく、4〜8mmであることがさらに好ましい。
【0041】
安息角とは、充填物の流動性の指標のひとつで、流動した又は流動直前の充填物の表面の水平面に対する角度によって表される。安息角が小さいほど充填物の流動性が高く、充填区画において充填物を均一に充填する観点から好ましい。このような観点から、充填物の安息角は60°以下であることが好ましく、55°以下であることがより好ましい。
【0042】
充填物の安息角は、流動性の異なる粒子の混合によって調整することができる。例えば充填物が粒子状の触媒や不活性粒子である場合では、流動性に優れるムライトボールのような不活性粒子を混合することによって充填物の流動性を高めることができる。
【0043】
充填物の安息角は、例えば十分量の充填物が収容された円筒状の容器を、適当な速度で転がした後に容器の回転を止めて、円筒内における充填物の一群の表面が水平面に対して形成する角度を安息角として求める、いわゆる傾斜法によって測定することができる。
【0044】
本発明の充填方法によって充填物が充填されたプレート式反応器は、粒子状の触媒を含む充填層を通過する流動性を有する原料を前記触媒の存在下で反応させる接触反応に用いることができる。原料としては、例えば液体や気体が挙げられる。またこのような接触反応は、使用する触媒や原料、及び反応条件に係る公知の技術に基づいて行うことができる。
【0045】
本発明によるプレート式反応器は、特に、原料が液である場合に比べて除熱のしにくいガスである場合に好適に用いることができる。また、本発明は、粒子状の触媒の存在下であって、伝熱管を流れる熱媒によって制御することができる、発熱を伴う気相接触反応又は吸熱を伴う気相接触反応によって生成物を生成する方法に適用することができる。
【0046】
前記発熱を伴う気相接触反応としては、例えば、不飽和炭化水素及びそれに対応する不飽和アルデヒドの一方又は両方から前記不飽和アルデヒド及びそれに対応する不飽和カルボン酸の一方又は両方を生成する気相接触酸化反応が挙げられ、さら具体的には、例えば、プロピレン又はイソブチレンからアクロレイン及びアクリル酸又はメタクロレイン及びメタクリル酸を生成する気相接触酸化反応、及びアクロレイン又はメタクロレインからアクリル酸又はメタクリル酸を生成する気相接触酸化反応が挙げられる。
【0047】
また前記発熱を伴う接触反応で気相接触反応としては、例えば、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種と酸素から、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方を生成する反応。炭素数4以上の脂肪族炭化水素と酸素からマレイン酸を生成する反応、o−キシレンと酸素からフタル酸を生成する反応、オレフィンの水素化によりパラフィンを生成する反応、ブテンの酸化脱水素によってブタジエンの生成する反応、エチレンと酸素から酸化エチレンを生成する反応、及び、カルボニル化合物の水素化によりアルコールを生成する反応が挙げられ、液相接触反応としてはクメンハイドロパーオキサイドの酸分解によりアセトンとフェノールを生成する反応、が挙げられる。
【0048】
また前記吸熱を伴う気相接触反応としては、例えば、エチルベンゼンの脱水素によりスチレンを生成する反応、が挙げられる。
【0049】
本発明における反応生成物の製造方法は、前述した気相接触反応において本発明のプレート式反応器を用い、粒子状の触媒の存在下における気相接触反応によってメタクロレイン、アクロレイン、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、フタル酸、スチレン、n−ブテン、イソブテン、n−ブタン、イソブタン、ブタジエン又は酸化エチレンを製造する。
【0050】
特に、気相接触反応であり、発熱が大きく除熱が重要であり、触媒の割れ・粉化等による差圧上昇によって反応収率の低下が著しい、プロピレン又はイソブチレンからアクロレイン及びアクリル酸又はメタクロレイン及びメタクリル酸を生成する気相接触酸化反応、及びアクロレイン又はメタクロレインからアクリル酸又はメタクリル酸を生成する気相接触酸化反応に、本発明によるプレート式反応器を用いることが好ましい。
【0051】
前記プレート式反応器には、ガス状の原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の充填物が投入されることによって前記隙間に充填層が形成されるプレート式反応器を用いることができる。
【0052】
前記プレート式反応器は、例えば図5に示す構造を有する。すなわち前記プレート式反応器は、対向して並ぶ伝熱プレート1を有する。伝熱プレート1は、伝熱プレート1の軸が鉛直方向に沿うように配置され、一方の伝熱プレート1の表面における凸縁が、他方の伝熱プレート1の表面における凹縁に対向するように配置されている。伝熱プレート1間の隙間には、触媒又は触媒及び不活性粒子の混合物が充填されることによって触媒層2が形成される。触媒層2には、上方から下方に向けて原料ガスが供給される。よって、対向する伝熱プレート1間の隙間の上端がガス入り口3であり、前記隙間の下端がガス出口4である。
【0053】
伝熱プレート1は、複数の伝熱管がその断面形状の周縁で連結する形状に形成されている。前記伝熱管には、水平方向の半径が異なる三種の伝熱管5−1〜5−3が用いられている。伝熱プレート1の軸方向において、前記半径が最も大きな伝熱管5−1は伝熱プレート1の上部に配置され、前記半径が二番目に大きな伝熱管5−2は伝熱プレート1の中部に配置され、前記半径が最も小さな伝熱管5−3は伝熱プレート1の下部に配置されている。
【0054】
そして、触媒層2には、伝熱管5−1で挟まれ、幅が最も狭く、供給された原料ガスが最初に到達する第一反応帯域と、伝熱管5−2で挟まれ、幅が二番目に狭く、第一反応帯域を通ったガスが到達する第二反応帯域と、伝熱管5−3で挟まれ、幅が最も広く、第二反応帯域を通ったガスが到達する第三反応帯域とが形成される。
【0055】
図5において、対向する伝熱プレート1はそれぞれ同じ構造である。また伝熱プレート1について、図6に示すように、Pは伝熱プレートの軸間の距離を表し、Hは伝熱管の水平方向における直径(波形に成形された板の貼り合わせによって形成されている伝熱管では波形の高さ)を表し、Lは伝熱管の鉛直方向における直径(波形に成形された板の貼り合わせによって形成されている伝熱管では波形の周期長)を表している。
【0056】
前記反応容器には、ガス状の原料(原料ガス)が供給され、生成ガスが排出され、かつ複数の伝熱プレートが並んで収容される容器を用いることができる。プレート式反応器は一般に加圧条件下の雰囲気での反応に用いられることから、前記反応容器は常圧から3MPa(メガパスカル)、好ましくは常圧から1,000kPa(キロパスカル)、より好ましくは常圧から300kPaの内圧に耐えられる耐圧性の容器であることが好ましい。このような反応容器としては、例えば円筒又は円筒の一部を組み合わせてなるシェル、複数の伝熱プレートが収容されるように板部材によって内部が区切られたシェル、及び、複数の伝熱プレートが収容されるように平面の内面を構成する部材によって囲まれてなる筐体状の内部を有する容器等が挙げられる。
【0057】
伝熱プレートの枚数は、反応に用いられる触媒量によって決めることができ、反応生成物の工業的な製造の観点から、10〜300枚であることが好ましい。また対向する伝熱プレートの間隔は、充填物の大きさやプレート式反応器の用途に基づいて決めることができる。例えば伝熱プレートの間隔は、プレート式反応器が気相接触反応に用いられる場合では、気相接触反応に用いられる粒子状の触媒の一般的な大きさを考慮すると、伝熱プレート間の距離で10〜50mmであることが好ましく、20〜35mmであることがより好ましい。ここで、伝熱プレートの軸とは、伝熱プレートにおいて全ての伝熱管が一鉛直線上で連結している場合はこの鉛直線を言い、全ての伝熱管の連結部が一鉛直線上にない場合は、それらの水平方向における中点を通る鉛直線を言う。
【0058】
前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含む。このように伝熱プレートは、並列する複数の伝熱管を含む板状体である。伝熱プレートにおいて、伝熱管は直接連結されていてもよいし、プレートやヒンジ等の適当な部材を介して
間接的に連結されていてもよい。伝熱プレートは、伝熱管の断面形状を二分割した形状が直接又は間接的に連結してなる形状に、プレス成形やロール成形によって二枚の鋼板を成形し、それぞれの鋼板を接合することによって形成されることが、高い精度で安価に伝熱プレートを得る観点から好ましい。また伝熱プレートは、単一の種類の伝熱管のみを含んでいてもよいし、断面形状が異なる複数種の伝熱管を含んでいてもよい。
【0059】
前記伝熱プレートは、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられる。前記伝熱プレートにおいて、前記伝熱管の軸と鉛直方向とが形成する角度は、気相接触反応に用いたときの伝熱プレート間の隙間における反応状態を揃える観点から、120〜60°であることが好ましく、100〜80°であることがより好ましく、90°であることがさらに好ましい。
【0060】
伝熱プレート間の隙間を流れるガスと伝熱管との間の熱伝達は、伝熱管による伝熱プレートの表面の凹凸がガスの流れの乱れの原因となり促進する。前記角度は、熱伝達の観点から90°付近であることが最も好ましい。しかし、流れるガスの圧力損失は、前記角度が90°のときに最も大きくなる。ガスの圧力損失を低く抑えたいときには、前記角度を90°以外の角度とすることが好ましい。この場合、隣り合った伝熱プレートで角度を反転させることが、ガスの流れや充填時の触媒を均等化する観点から好ましい。
【0061】
前記反応容器に設けられたときの伝熱プレートの鉛直方向における長さ(原料の通過する方向)は、プレート式反応器の用途に応じて決めることができ、例えば気相接触反応に用いる場合では、反応生成物の生成に十分な長さとする観点から、一般に0.5〜10mであることが好ましく、0.5〜5mであることがより好ましく、0.5〜3mであることがさらに好ましい。通常入手できる薄板鋼板のサイズから、1.5m以上の時は2枚のプレートを接合するか、組み合わせて用いることもできる。
【0062】
前記伝熱プレートの幅(すなわち伝熱管の長さ)は、気相接触反応における反応条件に基づいて決めることができる。例えば伝熱プレートの幅は、伝熱管を流れる熱媒による反応温度の制御の観点から、0.5〜20mであることが好ましく、3〜15mであることがより好ましく、6〜10mであることがさらに好ましい。
【0063】
伝熱プレートは、伝熱性を有する材料で形成される。このような材料としては、例えばステンレス及びカーボンスチール、ハステロイ、チタン、アルミニウム、エンジニアリングプラスチック及び銅が挙げられる。好ましくはステンレスが用いられる。ステンレスでは、304、304L、316、及び316Lが好ましい。
【0064】
伝熱プレートを構成する薄板の板厚は、2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
【0065】
前記伝熱管は、熱媒が流通することができ、伝熱性を有する管である。伝熱管の断面形状は特に限定されないが、伝熱管の断面形状としては、例えば、円形、楕円形やラグビーボール型等の略円形、円弧を対称に接続してなる葉形、及び矩形等の多角形が挙げられる。伝熱管の断面形状における周縁とは、円形における周縁を意味し、伝熱管の断面形状における端縁とは、略円形における長軸端の縁や、多角形における一角の縁を意味する。
【0066】
伝熱管の管径は、伝熱管と充填物との接触性の観点から決めることができる。伝熱管の管径は、例えば、気相接触反応に用いられる粒子状の触媒の一般的な粒径を考慮すると、伝熱管の管径は5〜100mmであることが好ましく、伝熱管の短径は5〜50mmであることが好ましく、10〜30mmであることがより好ましい。伝熱管の長径は10〜100mmであることが好ましく、20〜50mmであることがより好ましい。
【0067】
このような伝熱プレートを用いたプレート式反応器としては、円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレートを、複数配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と波板凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成した反応器が好適に例示できる。
【0068】
本発明のプレート式反応器は、前述した構成要素以外の他の構成要素をさらに有していてもよい。このような他の構成要素としては、例えば、伝熱管に熱媒を供給するための熱媒供給装置、前記隙間に鉛直方向に沿って配置されて前記隙間を鉛直方向に区切る仕切り、及び、通気性を有し、前記区画の端部を着脱自在に塞ぐ通気栓が挙げられる。
【0069】
前記熱媒供給装置は、前記反応容器に収容された伝熱プレートの伝熱管に、所望の温度の熱媒を供給するための装置である。熱媒供給装置は、気相接触反応を精密に制御する観点から好ましい。このような熱媒供給装置としては、例えば伝熱管とその外部との間で熱媒を循環させる循環流路と、この循環流路中の熱媒の温度を調整する温度調整装置とを有する装置が挙げられる。温度調整装置としては、例えば、熱交換器、及び前記循環流路中の熱媒に異なる温度の熱媒を混合するための熱媒混合装置が挙げられる。
【0070】
前記仕切りは、伝熱プレート間の隙間に鉛直方向に沿って設けられ、仕切りによって形成される区画からの充填物の漏れを防止するための部材である。仕切りは、区画毎に充填物を均一に充填することによって前記隙間に充填物を均一かつ容易に充填する観点から好ましい。仕切りは、充填物が区画に充填されたときに形状が保たれる程度の剛性をさらに有すると、伝熱プレート間の距離を保つスペーサとして用いることができる。前記仕切りとしては、例えば、ステンレス、カーボンスチール、ハステロイ、チタン、アルミニウム、エンジニアリングプラスチック及び銅製の板、角棒、丸棒、網;グラスウール;及びセラミック板;が挙げられる。
【0071】
前記通気栓は、前記区画の鉛直方向における端部を前記区画毎に自在に開閉するための部材である。通気栓は、区画毎に充填物を容易に抜き出す観点から好ましい。前記通気栓としては、例えば、前記区画の端部を覆う通気板と、この通気板に設けられ、伝熱プレート又は仕切りに着脱自在に係止し、前記区画の上方又は下方からこの係止を解除することができる係止部材とを有する部材が挙げられる。
【0072】
前記プレート式反応器としては、例えば図7〜9に示すように、矩形のケーシング6と、伝熱管5を有し、ケーシング6内に対向して並んで設けられる複数の伝熱プレート1と、伝熱管5に熱媒を供給するための熱媒供給装置と、隣り合う伝熱プレート1間の隙間をケーシング6内の通気方向に沿って、充填物が充填され保持される複数の区画に仕切る複数の仕切り7と、通気性を有し各区画の下端部を塞ぐ複数の通気栓8と、伝熱プレート1の上部に設けられる穴あき板9とを有するプレート式反応器が挙げられる。
【0073】
ケーシング6は、断面形状が矩形の通気路を形成しており、前記反応容器に相当する。ケーシング6は、ケーシング6の上端及び下端に、対向する一対の通気口10、10’を有しており、通気口10を含むケーシング端部11と、通気口10’を含むケーシング端部11’と、伝熱プレート1が収容されるケーシング本体とから構成されている。ケーシング端部11、11’は、ケーシング本体に対して着脱自在にそれぞれ接続されている。
【0074】
伝熱プレート1は前述した伝熱プレートである。伝熱管5も前述した伝熱管であり、二つの円弧が対称に両端で接続してなる葉形の断面形状と伝熱性を有する管である。伝熱管5には、前述したように、三種の伝熱管5−1〜5−3が用いられている。
【0075】
前記熱媒供給装置は、ケーシング6の対向する一対の壁に設けられている。この壁には各伝熱管5に熱媒を供給するための供給口が形成されている。熱媒供給装置は、例えば図7に示すように、一対のジャケット12と、一方のジャケット12の内外で熱媒を循環させる循環流路13と、循環流路13に設けられるポンプ14と、循環流路13中の熱媒の温度を調整するための熱交換器15と、ジャケット4中の熱媒にさらに熱媒を混合するための熱媒混合装置とから構成される。ジャケット12は、例えば反応容器全体において、熱媒が伝熱管5を介してジャケット12間を蛇行するように、所定の高さにおいて複数に区切られている。
【0076】
前記熱媒混合装置は、例えば図8に示すように、ジャケット12内外を連通するノズル16と、ジャケット12内部においてノズル16に連結し、ジャケット12内の熱媒の流れ方向に対して直交する方向に延出する分配管17とを有する。分配管17は、先端が塞がれており、分配管の長手方向の全体にわたって複数の孔が設けられている管である。
【0077】
仕切り7は、図11に示すように、伝熱プレート1の表面の凹凸に密着する側縁を有する形状のステンレス製の板であり、下端部に横長の矩形の窓18を有している。仕切り7は、対向する伝熱プレート1間の隙間に鉛直方向に沿って設けられている。仕切り7は、所定の容積の区画を前記隙間に形成するように等間隔で設けられている。
【0078】
通気栓8は、図12に示すように、各区画の断面形状の同じ矩形の通気板19と、通気板19の短辺から下方に垂設される第一のスカート部20と、通気板19の長辺から下方に垂設される第二のスカート部21とを有している。第一のスカート部20には、矩形の係止窓22と、その隣に併設される係止爪23とが形成されている。
【0079】
通気板19は例えば2mmの円形の孔が開口率30%で形成された板である。係止窓22は、係止爪23を収容する幅と高さを有する大きさで形成されている。また係止爪23は、第一のスカート部20の下端縁からの平行な二本の切り込みを外側に凸に折り曲げて形成されている。対向する一対の第一のスカート部20において、一方の係止窓22と他方の係止爪23とが対向し、一方の係止爪23と他方の係止窓22とが対向している。仕切り7の窓18は、係止窓22と係止爪23とが同時に含まれる幅及び高さを有する大きさで形成されている。
【0080】
通気栓8は、各区画の下端から通気板19を上に各区画に挿入されている。通気栓8の挿入時において、係止爪23は、外側への付勢に抗して仕切り7に押さえられるが、窓18に到達したときに、図13に示すように、仕切り7の押さえ付けから開放されて窓18に向けて進出し、窓18に係止する。
【0081】
穴あき板9は、例えば、充填される充填物の最長径に対して0.3〜0.8倍の径を有する孔が20〜40%の開口率で設けられている板である。穴あき板9は、最も外側に配置される伝熱プレート1とケーシング6の壁との間の隙間への通気を防止するために、図7に示すように、最も外側に配置されている伝熱プレート1の端縁からケーシング6の壁までの隙間を塞ぐように形成されている。
【0082】
このプレート式反応器において、伝熱プレート1間の隙間への充填物の充填は、伝熱プレート1の上方から各区画へ充填することによって行われる。この充填物の充填は、鉛直方向に対する区画の端部からの距離に応じた所望の位置である投入位置から行われる。この充填物の充填において、区画の容積とその区画への充填物の投入位置の数とに応じた量の充填物が区画に投入される。
【0083】
前記充填物には、例えばプロパン及びプロピレン等の炭化水素の気相接触酸化反応によってアクロレインやアクリル酸を製造するためのMo−Bi系複合酸化物触媒、Mo−V系複合酸化物触媒や、ムライト、アルミナ、シリコンカーバイド、シリカ、酸化ジルコニア、酸化チタン等の不活性粒子が用いられる。触媒と不活性粒子を用いる場合は触媒と不活性物質を混合もしくは積層して使用される。この混合もしくは積層における不活性粒子の含有量は、例えば前記触媒100質量部に対して1〜400質量部である。また例えば触媒の形状は球状、円柱状、リング状、星形等であり、不活性粒子の形状は球状、円柱状、リング状、星形等である。
【0084】
伝熱管5の軸方向(水平方向)における充填物の投入位置から区画の端までの距離をB(m)とし、充填物の安息角をθ(°)とし、区画に形成される充填層の高さの基準値(触媒層の最高点の高さの設定値)の10%をE(m)とすると、区画の幅が2B以下、すなわち2×tanθ/E以下である場合は、投入位置は、水平方向における区画のそれぞれの端からの距離がtanθ/E以下となる任意の一箇所に決めることができる。
【0085】
このように一充填区画に対して投入位置が一箇所である場合は、充填区画の容積に応じた量の充填物を充填区画ごとに充填することができる。例えばこのような充填物の充填では、ビーカー等の容器から50〜5,000mL/minの適当な速度で充填物を充填することができる。
【0086】
又は、このような充填物の充填は、例えば図14に示すように、矩形の板31と、この板31の三辺からそれぞれ起立する枠32と、前記三辺の中央の辺の枠32に設けられる取っ手33とを有する充填用器具を用いて行うことができる。この充填用器具の材料としては、例えばステンレスが挙げられる。
【0087】
前記充填用器具は、図15に示すように、前記中央の辺から、対向する、枠を有さない辺に向けて充填物を案内するための、充填物の最大粒径よりも低い高さのガイド板34をさらに有していてもよい。ガイド板34は一枚でもよいし二枚以上でもよい。このようなガイド板34を有する充填用器具は、充填区画に投入される充填物の流れの幅を、この器具の開口部(枠を有さない辺)の幅とする観点から、図14に示す充填用器具よりも好ましい。
【0088】
これら充填用器具を用いて充填物を充填する場合は、板31の上に充填物を乗せた後に、取っ手33を持って左右に振って乗せた充填物を均して上下に重なりなく分散し、次いで、前記開口部の幅一杯から充填物が上下方向に重なり合わないようにして、50〜5,000mL/minの適当な速度で充填物を充填区画へ投入することができる。
【0089】
又は、このような充填物の充填は、例えば図16に示すように、充填物を収容するためのホッパ35と、ホッパ35から充填物が供給される矩形の搬送面36と、搬送面36の三辺からそれぞれ起立するように設けられる枠37と、搬送面36上で搬送される充填物の高さを所望の高さに規制する規制部材38と、搬送面36上の充填物を搬送面36の開口部(搬送面36における枠を有さない辺)に向けて搬送する搬送装置とを有する充填用装置を用いて行うことができる。
【0090】
前記搬送装置には、図16に示すような、搬送面36を構成し、かつホッパ35が設けられている前記三辺のうちの中央の辺から前記開口部に向けて駆動するベルトコンベア39や、図17に示すように、ホッパ35から開口部に向けて傾斜する滑らかな搬送面36を構成する板に振動を与えるバイブレータ40が挙げられる。
【0091】
前記充填用装置は、図16に示すように、充填物の搬送方向に沿って搬送面36を仕切
る仕切り板41をさらに有していてもよい。このような仕切り板41は、搬送面36上で充填物を前記開口部の幅方向に均す観点から好ましい。
【0092】
前記充填用装置において、搬送面36上を開口部に向けて搬送される充填物は、重なり合っている場合では規制部材38によって規制されて前記開口部の幅方向に均され、開口部と同じ幅で開口部から充填区画に投入される。図16に示す充填用装置は、ベルトコンベアによって充填物を搬送することから、搬送による充填物の割れや粉化等の損壊を防止する観点から好ましい。また図17に示す充填用装置は、バイブレータによって充填物を搬送することから、充填用装置の構成がより簡略となり、プレート式反応器内における充填物の充填作業の作業性の観点から好ましい。
【0093】
なお、図14〜図17における開口部について、開口部から投入される充填物の流れの幅は、通常は開口部の幅である。このように、充填物の流れの幅は、充填方法や、前記開口部の幅の調整によって変えることができる。充填物の流れの幅が0.05m以下である場合は、伝熱管の軸方向における充填物の流れの幅の中心が前記投入位置であり、充填物の流れの幅が0.05mを超える場合は、伝熱管の軸方向における充填物の流れの側縁のうち、対象となる充填区画の端又は隣り合う充填物の流れ側の側縁の位置が投入位置である。
【0094】
区画の幅が区画の幅が2B以上、すなわち2×tanθ/E以上である場合は、投入位置は、水平方向における区画のそれぞれの端からの距離がtanθ/E以下となり、かつ、隣り合う前記投入位置間の距離をA(m)としたときに、Aが2×E/tanθ以下となる二以上の任意の箇所に決めることができる。
【0095】
例えば、図18に示すように、投入位置の間隔をA、充填物の安息角をθ、形成される充填層の天面に形成される高低差をdとすると、dはA/2×tanθで表される。ここで、充填層の最高点の高さの設定値をLとし、充填層の最高点の高さに対して10%以下の高低差を許容するならば、dは0.1×L以下である。したがってAは0.1×L×2/tanθ以下である。例えば充填層の最高点の高さの設定値を1.7mとすると、θが40°のときはAは0.41m以下となり、θが50°のときはAは0.29m以下となる。そして、区画の端から最も近い投入位置と区画の端との距離BはA/2以下とする。
【0096】
一充填区画に対して投入位置が二以上である場合は、各投入位置から同時に充填物が充填される。このような充填において、充填物は、充填区画の容積が一定である場合では充填区画の容積を投入位置の数で除した量の充填物を各投入位置から同時に充填区画に投入することができるし、又は、50〜5,000mL/minの適当な任意の速度で各投入位置から同時に充填区画に投入することもできる。
【0097】
このような充填物の充填は、例えば図16や図17で示した充填用装置に、図19に示すような分配装置を併用することによって行うことができる。この分配装置は、搬送面36の開口部を幅方向に均等に分割する複数の分割板42と、分割板42で分割された充填物が供給される複数の漏斗43と、分割された充填物を各漏斗43から所望の充填区画の所望の投入位置まで供給するための複数の供給管44とを有する。供給管44は、エルボ45の使用によって水平方向に自在に回転することができ、さらに伸縮管の使用や継ぎ手による適当な長さの管の連結によって長さを自在に設定することができる。
【0098】
このような充填物の充填によれば、充填層の天面の高さが、充填層の最高点の高さの実測値の90〜100%の範囲に全て含まれる均一な充填層を容易に形成することができる。
【0099】
なお、充填層の設定値を、充填層の最低点や最低点と最高点との中点のような、充填層における最高点以外の任意の高さに設定し、この異なる設定値に基づいて前述した(1)式や(2)式を変換した式に基づいて充填物を充填した場合でも、上記のような、充填層の天面の高さが、充填層の最高点の高さの実測値の90〜100%の範囲に全て含まれる均一な充填層を容易に形成することが可能である。
【0100】
また、前述した充填物の充填によれば、一充填区画に対して投入位置が二以上である場合に各区画において、充填物の天面の位置が許容範囲内となる充填層が形成されるように、充填物を均一に充填することができる。なお、前記分配装置は、一充填区画に対して一投入箇所である場合の複数の充填区画への充填物の投入にも用いることができる。
【0101】
また、前記プレート式反応器は仕切り7を有することから、この仕切り7によって形成される各区画の容積は前記隙間に比べて十分に小さいので、容易に充填物を均等に充填しやすく、その結果、全隙間に充填物を容易かつ均等に充填する観点からより効果的である。
【0102】
なお、図示したプレート式反応器は、仕切り7を有しているが、仕切り7を有さないプレート式反応器では、伝熱プレート1間の一隙間を一充填区画として、前述のプレート式反応器の区画への充填物の充填と同様に、充填物を充填区画に投入することができる。
【0103】
充填物は、通気栓8を前記隙間から外すことによって区画毎に抜き出すことができる。通気栓8は、隣の区画の下端から係止爪23を押して、係止爪23の窓18への係止を解除することによって外される。このように、充填物の充填は区画毎に容易にやり直すことができ、充填物を均等かつ容易に充填する観点からより一層効果的である。
【0104】
充填物が充填されたプレート式反応器では、例えば前記隙間に上方から下方へ原料ガスが供給され、伝熱管5に熱媒が供給されることによって、反応生成物が製造される。例えば、プロピレン、空気、及び水蒸気からなる原料ガスを通気口10から供給し、300〜350℃の熱媒を熱媒供給装置から伝熱管5へ、例えば下から上に向けて供給することによって、アクロレイン及びアクリル酸が生成し、生成したアクロレイン及びアクリル酸は通気口10’から排出される。反応時におけるプレート式反応器の内圧は例えば150〜200kPa(キロパスカル)である。酸化に伴う発熱は伝熱管5内を流れる熱媒に吸収される。
【0105】
アクロレイン及びアクリル酸の製造において、熱媒の温度は、伝熱管5に熱媒が順次通ることによって、また熱交換器15によって、さらに前記熱媒混合装置からジャケット12内の熱媒に所定の温度の熱媒を混合することによって調節され、反応原料が、プロピレンの場合は、複数の反応帯域に供給される熱媒体の温度が250〜400℃であることが好ましく、320〜400℃であることがより好ましい。一方、該反応原料がアクロレインの場合は、複数の反応帯域に供給される熱媒体の温度が200〜350℃であることが好ましく、250〜320℃であることがより好ましい。
【0106】
前記プレート式反応器では、前記隙間において、充填物が均一に充填されてなる充填層が形成されることから、充填層における圧力損失の発生や充填層の部分的な通気量の偏り等の、触媒層2における充填物の充填状態の粗密に起因する現象が抑制され、アクロレイン及びアクリル酸の製造を所期の高い効率で長期間安定して行うことができる。
【実施例】
【0107】
[プレート式反応器の製作]
プレート式反応器には図5に示す構造を有する反応器を用いた。伝熱プレートについて
は、伝熱プレートが配置されたときに原料ガスの流れる方向に沿って、上流側から第一、第二、及び第三反応帯域を形成する三種の波形を有するように厚さ1mmのステンレスプレートを成形し、得られた波型形状のステンレスプレートを2枚接合して、反応温度調節用の熱媒体流路となる伝熱管が複数連なってなる伝熱プレートを形成した。伝熱プレートにおける、図6に示す波形の周期長(L)、高さ(H)及び波の数を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
表1に示した伝熱プレートの一対を、図5及び図6に示すように、一方の伝熱プレートの凸縁と他方の伝熱プレートの凹縁とが対向するように互いに平行に、かつ26mmの間隔(図6に示すP)で配置し、反応器を製作した。伝熱プレートの幅(伝熱管の長さ)は1,000mmであった。
【0110】
[触媒の調製]
プロピレンを分子状酸素により接触気相酸化し、アクロレイン及びアクリル酸に転換するのに用いられる触媒として、Mo12Bi5Co3Ni2Fe0.4Na0.4B0.2K0.08Si24Oxの組成の金属酸化物粉末を調製した。ここでOxのxは各金属酸化物の酸化状態により決まる数である。得られた粉末を成形して外径4mm、高さ3mmの円柱状の成形品を得た。得られた成形品を空気存在下で510℃、4時間焼成を行い、複合酸化物触媒Aを得た。また前記粉末を成形して外径6mm、内径2mm、高さ6mmのリング形状の成形品を得た。得られた成形品を同様に焼成して触媒Bを得た。得られた触媒の安息角を以下に示す方法によって求めた。
【0111】
[安息角の測定方法]
測定装置には、筒井理化学機械株式会社製 三輪式円筒回転形表面角測定装置GFL−68を用いた。500mLの容器に触媒250gを入れて台座に乗せ、円筒を10rpmで60秒回転させた後、2rpmに前記円筒の回転数を下げて10秒間回転させてスイッチを切り、円筒の軸方向を横断する断面における触媒の表面が水平方向に対して形成する角度を安息角として測定した。触媒Aの安息角は45°であった。また、触媒Bの安息角は52°であった。
【0112】
[実施例1]
前記プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に触媒Aを充填した。伝熱プレートの端から伝熱管の軸方向に沿って0.17m、0.50m、0.83mの位置を投入位置とし(すなわち伝熱プレートの両端から最も近い投入位置までの距離を0.17m、それ以外の隣り合う投入位置同士の距離が0.33mとなるよう投入位置を設定し)、充填層の最高点の高さが1.73mとなるように、それぞれの投入位置から同時にビーカーを用いて毎分200mLで合計24.9Lの触媒を前記隙間に充填した。充填後、伝熱プレートの端から0m、0.17m、0.335m、0.50m、0.665m、0.83m、1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0113】
測定された触媒層の高さのうち、0.5mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.50mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。なお触媒層の高さは、上方からステンレス棒を充填層の天面に接触させて天面の位置を測定することによって求めた。その結果を表2に示す。それぞれの測定位置において、0.50mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差は、0.50mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲に収まった。
【0114】
【表2】
【0115】
[比較例1]
投入位置を伝熱プレートの一端から0.25m及び0.75mの位置に設定し(すなわち伝熱プレートの両端から最も近い投入位置までの距離を0.25m、それ以外の隣り合う投入位置同士の距離が0.50mとなるよう投入位置を設定し)た以外は、実施例1と同様に、それぞれの投入位置から同時にビーカーを用いて毎分200mLで合計24.1Lの触媒Aを前記隙間に充填した。充填後、伝熱プレートの端から0m、0.25m、0.50m、0.75m、1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0116】
測定された触媒層の高さのうち、0.25mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.25mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表3に示す。0m、0.50m、及び1mの測定位置において、0.25mの測定位置の触媒層の高さに対するこれらの測定位置の触媒層の高さの差は、0.25mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲には収まらなかった。
【0117】
【表3】
【0118】
[実施例2]
前記プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間に、0.5mの間隔で仕切りを入れ、その仕切られた区画の一つに触媒Aを充填した。充填の際には投入位置を区画の端から0.17m、0.33mの位置に設定し、区画の両端から0.17m、投入位置同士の距離が0.16mとなるよう投入位置を設定した。それぞれの投入位置から同時にビーカーを用いて毎分200mLで合計12.4Lの触媒を前記区画に充填した。区画の端から0m、0.17m、0.25m、0.33m、0.50mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0119】
測定された触媒層の高さのうち、0.17mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.17mの測
定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表4に示す。それぞれの測定位置において、0.17mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差は、0.17mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲に収まった。
【0120】
【表4】
【0121】
[比較例2]
前記プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間に、0.5mの間隔で仕切りを入れ、その仕切られた区画の一つに触媒Aを充填した。充填の際には投入位置を前記区画の一端から0.25mの位置に設定し、投入位置を両端から0.25mとなるよう投入位置を設定し、この投入位置からビーカーを用いて毎分200mLで合計11.9Lの触媒を前記区画に充填した。区画の端から0m、0.25m、0.50mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0122】
前記測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、この触媒層の高さを基準(最高点)として、この測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表5に示す。0m、及び0.50mの測定位置において、0.25mの測定位置の触媒層の高さに対するこれらの測定位置の触媒層の高さの差は、0.25mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲には収まらなかった。
【0123】
【表5】
【0124】
[実施例3]
前記プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間に、触媒Aを充填した。充填は、ビーカーに代えて、図15に示す、開口部の幅が0.10mである充填用器具を用いて行った。
【0125】
投入位置を、前記隙間の一端から0.116〜0.216m、0.450〜0.550m、0.784〜0.884mの位置に設定し、それぞれの投入位置から同時に毎分200mLで合計25.1Lの触媒を前記隙間に充填した。前記隙間の端から0m、0.166m、0.333m、0.500m、0.666m、0.834m、及び1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0126】
測定された触媒層の高さのうち、0.500mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.500mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表6に示す。それぞれの測定位置において、0.500mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差は、0.500mの測定位置における触媒層の高
さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲に収まった。
【0127】
【表6】
【0128】
[比較例3]
前記プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間に、触媒Aを、実施例3と同様の充填用器具を用いて充填した。投入位置を、前記隙間の端から0.2〜0.3m及び0.7〜0.8mの位置に設定し、それぞれの投入位置から同時に毎分200mLで合計24.3Lの触媒を前記隙間に充填した。前記隙間の端から0m、0.25m、0.50m、0.75m、及び1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0129】
測定された触媒層の高さのうち、0.25mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さ(最高点)を基準として、0.25mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表7に示す。0m、0.50m、及び1mの測定位置において、0.25mの測定位置の触媒層の高さに対するこれらの測定位置の触媒層の高さの差は、0.25mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲には収まらなかった。
【0130】
【表7】
【0131】
[実施例4]
前記プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に触媒Bを充填した。伝熱プレートの端から伝熱管の軸方向に沿って0.125m、0.375m、0.625m、0.875mの位置を投入位置とし(すなわち伝熱プレートの両端から最も近い投入位置までの距離を0.125m、それ以外の隣り合う投入位置同士の距離が0.25mとなるよう投入位置を設定し)、充填層の最高点の高さが1.73mとなるように、それぞれの投入位置から同時にビーカーを用いて毎分200mLで合計25.0Lの触媒を前記隙間に充填した。充填後、伝熱プレートの端から0m、0.125m、0.250m、0.375m、0.500m、0.625m、0.750m、0.875m、1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0132】
測定された触媒層の高さのうち、0.875mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.875mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表8に示す。それぞれの測定位置において、0.875mmの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差は、0.875mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲に収まった。
【0133】
【表8】
【0134】
[比較例4]
前記プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に触媒Bを充填した。伝熱プレートの端から伝熱管の軸方向に沿って0.17m、0.50m、0.83mの位置を投入位置とし(すなわち伝熱プレートの両端から最も近い投入位置までの距離を0.17m、それ以外の隣り合う投入位置同士の距離が0.33mとなるよう投入位置を設定し)、充填層の最高点の高さが1.73mとなるように、それぞれの投入位置から同時にビーカーを用いて毎分200mLで合計24.2Lの触媒を前記隙間に充填した。充填後、伝熱プレートの端から0m、0.170m、0.335m、0.500m、0.665m、0.830m、1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0135】
測定された触媒層の高さのうち、0.500mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.500mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表9に示す。0m、0.335m、0.665及び1mの測定位置において、0.500mの測定位置の触媒層の高さに対するこれらの測定位置の触媒層の高さの差は、0.500mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲には収まらなかった。
【0136】
【表9】
【0137】
以上の実施例及び比較例から、前記式(1)及び式(2)を満たす複数の位置から前記隙間に触媒を充填した場合では、伝熱管の軸方向において、触媒層の高さの高低差を小さくすることができ、触媒層を均一に充填することができる一方で、前記式(1)及び式(2)を満たさない位置から前記隙間に触媒を充填すると、伝熱管の軸方向において、触媒層の高さの高低差が大きくなり、触媒が均一に充填されないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間は一般に小さく、また扁平かつ複雑な形状を有している。このため、伝熱プレート間の隙間への充填物の充填において、充填の状態の確認や修正は一般に困難であるが、本発明によれば、伝熱プレート間の隙間への充填物の充填を適切に行うことができ、またその適切な充填状態を容易に判断することができることから、保安点検作業のような、プレート式反応器の定期的な作業における作業性の向上が期待され、プレート式反応器を用いる生成物の製造において、このような定期的な作業を含む長期的な生産性のさらなる向上が期待される。
【符号の説明】
【0139】
1 伝熱プレート
2 触媒層
3 ガス入り口
4 ガス出口
5、5−1、5−2、5−3 伝熱管
6 ケーシング
7 仕切り
8 通気栓
9 穴あき板
10、10’ 通気口
11、11’ ケーシング端部
12 ジャケット
13 循環流路
14 ポンプ
15 熱交換器
16 ノズル
17 分配管
18 窓
19 通気板
20 第一のスカート部
21 第二のスカート部
22 係止窓
23 係止爪
31 板
32、37 枠
33 取っ手
34 ガイド板
35 ホッパ
36 搬送面
38 規制部材
39 ベルトコンベア
40 バイブレータ
41 仕切り板
42 分割板
43 漏斗
44 供給管
45 エルボ
P 一対の伝熱プレートの軸間の間隔
L 波形の周期長
H 波形の高さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に、粒子状の触媒や不活性粒子等の充填物を充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子状の触媒の存在下においてガス状の原料物質から気相接触反応によって反応生成物を得るための反応器としては、多管式反応器やプレート式反応器が知られている。このうち、プレート式反応器としては、例えば、ガス状の原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられるプレート式反応器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
前記多管式反応器では、反応管に粒子状の触媒が充填される。多管式反応器では比較的細い管に触媒を充填するため、触媒はその流動性に関わらず反応管内に十分均一に充填されやすい。
【0004】
一方、前記プレート式反応器では、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒が充填される。プレート式反応器では、伝熱プレート間の隙間に触媒が充填されることから、充填の際に触媒が伝熱管の軸方向に流動する。このため、伝熱プレート間の隙間において、伝熱管の軸方向における複数の位置から触媒を投入すると、投入位置の間隔によっては、伝熱プレート間の隙間に触媒が均一に充填されず、一つの隙間における充填層の頂面の位置のばらつきが大きくなることがある。このようなばらつきは、プレート式反応器を気相接触反応に用いたときの反応の制御に影響を及ぼすことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−202430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プレート式反応器に粒子状の充填物を充填する際に、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一に充填することができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行い、充填する粒子状の充填物の安息角と、伝熱管の軸方向における充填物の投入位置の間隔との関係に着目し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
より詳しくは、プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間への充填物の投入位置の間隔は、充填する充填物の流動性による。充填物の流動性を充填物の安息角で規定すると、充填物の投入位置の間隔は、充填する充填物の安息角に関係する。
【0009】
例えば図1に示すように、安息角が小さい充填物を適当な間隔で伝熱プレート間の隙間に投入すると、充填物は均一に充填される。また図2に示すように、安息角が大きい充填物を比較的狭い間隔で伝熱プレート間の隙間に投入すると、やはり充填物は均一に充填される。一方で、安息角が小さくとも、充填物の投入位置の間隔を広くしすぎると、図3に
示すように、充填物は不均一に充填される。また図4に示すように、充填物の安息角が大きい場合では、充填物の投入位置の間隔をさほど広くしなくても、充填物は不均一に充填される。なお、図1〜図4中の矢印は前記隙間への充填物の投入位置を表す。
【0010】
そこで、本発明では、プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間への充填物の充填において、安息角で規定される充填物の流動性に基づき、前記隙間に投入されて流動する充填物によって十分に均一な充填層が形成される特定の位置から前記隙間へ充填物を投入する。
【0011】
すなわち本発明は、原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の充填物を投入して前記隙間に充填層を形成する、プレート式反応器における充填物の充填方法であって、一箇所の投入位置から前記隙間へ前記充填物を充填したときに前記隙間において充填層が形成される区画を充填区画とし、前記充填物の安息角をθ(°)、前記伝熱管の軸方向における前記充填物の投入位置から前記充填区画の端までの距離をB(m)、前記充填層の最高点の高さの設定値の10%をE(m)としたときに、下記式(1)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入する、プレート式反応器における充填物の充填方法を提供する。
B≦E/tanθ (1)
【0012】
また本発明は、前記伝熱管の軸方向における複数の位置から一つの前記充填区画に前記充填物を充填する方法であって、隣り合う前記投入位置間の距離をA(m)としたときに、さらに下記式(2)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入する、前記充填方法を提供する。
A≦2×E/tanθ (2)
【0013】
また本発明は、前記プレート式反応器が、前記隙間に鉛直方向に沿って配置されて前記隙間を鉛直方向に区切る仕切りをさらに有し、前記充填区画が前記仕切りによって形成される区画である前記充填方法を提供する。
【0014】
また本発明は、前記伝熱管の軸方向における前記充填区画の長さが0.05m〜2mである前記充填方法を提供する。
【0015】
また本発明は、前記充填物が粒子状の触媒及び不活性粒子の一方又は両方である前記充填方法を提供する。
【0016】
また本発明は、原料を反応させるための反応容器に並んで設けられる複数の伝熱プレートを有し、前記伝熱プレートが断面形状の周縁又は端縁で鉛直方向に連結している複数の伝熱管を含むプレート式反応器を用いて、原料から接触反応によって反応生成物を製造する方法であって、隣り合う伝熱プレート間の隙間に触媒を落下させることによって形成される触媒層に前記原料を通す工程と、前記伝熱管に所望の温度の熱媒を供給する工程とを含み、前記原料が、エチレン;炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種;炭素数4以上の脂肪族炭化水素;o−キシレン;オレフィン;カルボニル化合物;クメンハイドロパーオキサイド;ブテン;又はエチルベンゼン;であり、得られる前記反応生成物が、酸化エチレン;炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方;マレイン酸;フタル酸;パラフィン;アルコール;アセトン及びフェノール;ブタジエン;又はスチレン;である方法において、前記プレート式反応器に、前記の本発明の充填方法を用いる生
成物の製造方法を提供する。
【0017】
また本発明は、前記原料がプロピレン又はイソブチレンであり、分子状酸素含有ガスを用いてプロピレン又はイソブチレンを酸化し、(メタ)アクロレイン及び(メタ)アクリル酸の一方又は両方を製造する前記反応生成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、前記式(1)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入することから、プレート式反応器に充填物を充填する際に、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一に充填することができる。
【0019】
また本発明は、前記伝熱管の軸方向における複数の位置から一つの前記充填区画に前記充填物を充填する場合に、前記式(2)をさらに満たすように前記充填物を前記隙間に投入することから、一充填区画に複数の投入位置から充填物を充填するプレート式反応器に充填物を充填する場合でも、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一に充填することができる。
【0020】
また本発明では、前記プレート式反応器が、前記隙間に鉛直方向に沿って配置されて前記隙間を鉛直方向に区切る仕切りをさらに有し、前記充填区画が前記仕切りによって形成される区画であることが、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一かつ容易に充填する観点からより効果的である。
【0021】
また本発明では、前記伝熱管の軸方向における前記充填区画の長さが0.05m〜2mであることが、伝熱プレート間の隙間に充填物を均一かつ容易に充填する観点からより効果的である。
【0022】
また本発明では、前記充填物が粒子状の触媒及び不活性粒子の一方又は両方であることが、均一な充填層による気相接触反応を行う観点からより効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に適当な間隔で充填物が充填されてなる充填層の一例を伝熱プレート側から見たときの概略図である。
【図2】プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に適当な間隔で充填物が充填されてなる充填層の他の例を伝熱プレート側から見たときの概略図である。
【図3】プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に不適当な間隔で充填物が充填されてなる充填層の一例を伝熱プレート側から見たときの概略図である。
【図4】プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に不適当な間隔で充填物が充填されてなる充填層の他の例を伝熱プレート側から見たときの概略図である。
【図5】本発明のプレート式反応器の一例の要部を概略的に示す図である。
【図6】図5のプレート式反応器における伝熱プレートの間隔及び伝熱管の管径を説明する図である。
【図7】本発明のプレート式反応器の一実施の形態における構成を概略的に示す図である。
【図8】図7のプレート式反応器をA−A’線に沿って切断したときの断面を示す図である。
【図9】図7のプレート式反応器をB−B’線に沿って切断したときの断面を示す図である。
【図10】図7のプレート式反応器における熱媒混合装置の構成を概略的に示す図である。
【図11】図7のプレート式反応器における仕切り7を示す図である。
【図12】図7のプレート式反応器における通気栓8の斜視図である。
【図13】仕切り7への通気栓8の係止状態を示す図である。
【図14】本発明に用いられる充填用器具の一例を概略的に示す図である。
【図15】本発明に用いられる充填用器具の他の例を概略的に示す図である。
【図16】本発明に用いられる充填用装置の一例を概略的に示す図である。
【図17】本発明に用いられる充填用装置の一例を概略的に示す図である。
【図18】複数の投入位置から伝熱プレート間の隙間に充填物が投入されてなる充填層の頂部を概略的に示す図である。
【図19】本発明に用いられる分配装置の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のプレート式反応器における充填物の充填方法は、一箇所の投入位置から前記隙間へ前記充填物を充填したときに前記隙間において充填層が形成される区画を充填区画とし、前記充填物の安息角をθ(°)、前記伝熱管の軸方向における前記充填物の投入位置から前記充填区画の端までの距離をB(m)、前記充填層の最高点の高さの設定値の10%をE(m)としたときに、下記式(1)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入する方法である。
B≦E/tanθ (1)
【0025】
前記投入位置は、前記隙間に投入される前記充填物の流れにおける前記端部側の側縁である。前記充填物の流れの幅が0.05m以下である場合は前記充填物の流れの中心としてもよい。前記充填物の流れの幅は、狭いと充填物の投入作業が容易になりやすく、広いと充填された充填物の均一性を高め易い。前記充填物の流れの幅は、投入作業の作業性の観点から、0.05m以下であることが好ましい。また、前記充填物の流れの幅は、充填された充填物の均一性の向上の観点から、0.1m以上であることが好ましく、0.15m以上であることがより好ましい。
【0026】
前記充填層の最高点とは、一充填区画に充填物が充填されたときの天面のうち最も高い位置である。一充填区画当たりにおける充填物の投入位置が一箇所である場合では、前記充填層の最高点の高さは投入位置における充填層の高さであり、一充填区画当たりにおける充填物の投入位置が複数である場合では、前記充填層の最高点の高さは、投入位置における充填層の高さのうちの最大値である。本発明では、充填層の高さの設定値は充填層の最高点の高さで設定する。例えば本発明において、充填層の高さの設定値を1.7mとすることは、充填層の最高点の高さを1.7mに設定していることを意味する。本発明では、充填物の充填は、充填層の最高点の高さの設定値と充填層の最高点の高さの実測値との差が、充填層の最高点の高さの設定値の5%以下となるように行われることが好ましく、3%以下となるように行われることがより好ましい。
【0027】
前記Eは、前記充填層の最高点の高さの設定値の10%である。本発明におけるプレート式反応器は、例えば気相接触反応に好ましく用いられ、充填物には、通常、粒子状の触媒、又は粒子の触媒と不活性粒子との混合物が用いられる。前記の用途及び充填物においては、前記充填層の最高点の高さの設定値と充填層の高さの実測値との差は、充填物のさらなる均一な充填による使用時の圧力の均一化及び触媒性能の低下の抑制の観点から、前記設定値の5%以下の値であることが好ましく、3%以下の値であることがより好ましい。なお、前記Eが10%より大きくなると、前記の用途において、反応時の触媒層の圧力が不均一になり、局所的な反応物の吹き抜けが起こって反応物の転化率が低下し、目的物の収率が低下することがある。
【0028】
前記Bは、E/tanθよりも大きいと、充填層の高さの実測値が前記Eよりも大きくなるおそれがある。前記BはE/tanθ以下であればよいが、Bが小さいと、充填され
た充填物の均一性の向上の観点から好ましいが、前記投入位置の数が多くなり、充填物の投入作業が煩雑になることがある。前記Bは、充填物の投入作業の作業性の観点から、0.5×E/tanθ以上であることが好ましく、0.75×E/tanθ以上であることがより好ましい。
【0029】
前記充填区画への充填物の投入は、前記設定値の充填層を得るように行うことができる。このような充填区画への充填物の投入は、一充填区画において前記投入位置から充填物を投入したときに、前記投入位置において前記設定値の高さとなる充填物の投入量を求め、求められた投入量の充填物を前記投入位置から投入することによって行うことができる。前記投入量は、例えば前記充填区画の容積、触媒の空間密度、触媒の安息角、及び一充填区画における投入位置の数から求めることができる。
【0030】
又は、前記充填区画への充填物の投入は、実際の充填層の最高点の高さが前記設定値の高さになるまで充填物を前記投入位置から投入することによって行うことができる。このような充填区画への充填物の投入の終点は、伝熱プレートにおいて、前記設定値の高さとなる位置に印をつけ、伝熱プレートの上方から目視で、又は前記隙間へカメラを挿入して充填中の充填層の高さを観察することによって、又は充填物の投入に伴い上昇する充填層の天面の位置を検出する接触式のセンサを用いて、又は上方から棒状のものを充填層の天面に接触させて天面の位置を測定することで決定することができる。
【0031】
形成された充填層の良否は、前記設定値と実測値との比較や、各充填区画内での充填物の充填高さの比較によって評価することができる。例えば形成された充填層は、充填層の最高点の高さの設定値に対する実測値の誤差が0〜10%以内であればよく、0〜5%以内であることがより好ましい。
【0032】
前記充填物を前記充填区画に投入する方法は、特に限定されない。このような方法としては、例えば、作業員による投入位置からの充填物の投入、及び、充填用の器具や装置を用いる投入位置からの充填物の投入が挙げられる。充填用の器具や装置には、多管式反応器の反応管への充填物の充填に用いられる器具や装置をそのまま、又は改良して用いることができる場合もある。
【0033】
前記充填物を前記充填区画に投入する方法は、前記充填区画への充填物の供給速度を制御することができる方法であることが好ましく、また前記充填区画への充填物の供給量を制御することができる方法であることが好ましい。これらの観点から、ホッパのような容器とベルトコンベアのような速度を自在に調整することができる搬送装置とを有する充填用装置を用いて前記充填物を充填区画に投入することが好ましい。
【0034】
本発明において、一つの前記充填区画に複数の投入位置から前記充填物を充填する場合では、前記の式(1)に加えて以下の式(2)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入する。ここで下記式(2)中、Aは隣り合う前記投入位置間の距離(m)であり、隣り合う前記充填物の流れにおける隣り合う側縁間の距離を表す。
A≦2×E/tanθ (2)
【0035】
前記Aが2×E/tanθよりも大きいと、充填層の高さの実測値が前記Eよりも大きくなるおそれがある。前記Aは2×E/tanθ以下であればよいが、Aが小さいと、Bと同様に、充填された充填物の均一性の向上の観点から好ましいが、前記投入位置の数が多くなり、充填物の投入作業が煩雑になることがある。前記Aは、充填物の投入作業の作業性の観点から、1×E/tanθ以上であることが好ましく、1.5×E/tanθ以上であることがより好ましい。
【0036】
本発明において、一つの充填区画に複数の投入位置から充填物を充填する場合では、充填物は一つの充填区画へ同時に投入される。ここで同時に投入とは、各投入位置において、同じ量の充填物が同じ速度で同時に投入され始めることを言う。各投入位置における充填物の投入量及び投入速度は、実質的に同じであればよく、例えば投入量は各投入位置における投入量の平均値に対して±10%以内であればよく、投入速度は、最も早く投入が終了した投入位置における投入時間に対して、最も遅く投入が終了した投入位置における投入時間が+10%以内であればよい。
【0037】
前記充填区画は、前記伝熱プレート間の隙間における前記充填物を収容し得る一室である。前記充填区画は、前記隙間を鉛直方向に仕切る仕切りが前記隙間に設けられていない場合には前記隙間であり、前記仕切りが前記隙間に設けられている場合では、前記仕切りによって形成される一区画である。前記充填区画は、前記仕切りを前記隙間に設けることによって、伝熱管の軸方向における長さを調整することができる。伝熱管の軸方向における充填区画の長さは、短いと、充填物の投入位置を少なくしやすく、また容易に充填物を均一に充填しやすい。このように、伝熱管の軸方向における前記充填区画の長さは、充填物の均一な充填の作業性の観点から、0.05m〜2mであることが好ましく、0.1〜1mであることがより好ましく、0.2〜0.5mであることがさらに好ましい。
【0038】
伝熱プレートと仕切りによる充填区画の容積は、隙間への充填物の充填を区画単位で行い、充填物の正確かつ容易な充填を行う観点から、1〜100Lが好ましく、1.5〜30Lであることがより好ましく、2〜15Lであることが特に好ましい。
【0039】
前記充填物には、粒子状の充填物が用いられる。充填物は一種でも二種以上でもよい。二種以上の場合は混合もしくは積層して充填することができる。充填物は、プレート式反応器の用途に応じて選ばれる。充填物としては、例えば、一般に気相接触反応に用いられる粒子状の触媒及び不活性粒子が挙げられる。前記触媒としては、例えば特開2005−336142号公報に記載されているような、Mo−Bi系複合酸化物触媒、及びMo−V系複合酸化物触媒が挙げられる。また、前記不活性粒子としては、例えば、ムライト、アルミナ、シリコンカーバイド、シリカ、酸化ジルコニア、酸化チタン等の、プレート式反応器の使用条件において不活性な物質による粒子が挙げられる。
【0040】
前記充填物の形状及び大きさは、前記伝熱プレートの隙間に充填可能な範囲から適宜に選ばれる。充填物の形状としては、例えば、球状、円柱状、円筒状、星型状、リング状、小片状、網状、及び不定形が挙げられる。充填物の大きさは、例えば充填物が触媒又は不活性粒子である場合では、最大粒径で1〜20mmであることが好ましく、3〜10mmであることがより好ましく、4〜8mmであることがさらに好ましい。
【0041】
安息角とは、充填物の流動性の指標のひとつで、流動した又は流動直前の充填物の表面の水平面に対する角度によって表される。安息角が小さいほど充填物の流動性が高く、充填区画において充填物を均一に充填する観点から好ましい。このような観点から、充填物の安息角は60°以下であることが好ましく、55°以下であることがより好ましい。
【0042】
充填物の安息角は、流動性の異なる粒子の混合によって調整することができる。例えば充填物が粒子状の触媒や不活性粒子である場合では、流動性に優れるムライトボールのような不活性粒子を混合することによって充填物の流動性を高めることができる。
【0043】
充填物の安息角は、例えば十分量の充填物が収容された円筒状の容器を、適当な速度で転がした後に容器の回転を止めて、円筒内における充填物の一群の表面が水平面に対して形成する角度を安息角として求める、いわゆる傾斜法によって測定することができる。
【0044】
本発明の充填方法によって充填物が充填されたプレート式反応器は、粒子状の触媒を含む充填層を通過する流動性を有する原料を前記触媒の存在下で反応させる接触反応に用いることができる。原料としては、例えば液体や気体が挙げられる。またこのような接触反応は、使用する触媒や原料、及び反応条件に係る公知の技術に基づいて行うことができる。
【0045】
本発明によるプレート式反応器は、特に、原料が液である場合に比べて除熱のしにくいガスである場合に好適に用いることができる。また、本発明は、粒子状の触媒の存在下であって、伝熱管を流れる熱媒によって制御することができる、発熱を伴う気相接触反応又は吸熱を伴う気相接触反応によって生成物を生成する方法に適用することができる。
【0046】
前記発熱を伴う気相接触反応としては、例えば、不飽和炭化水素及びそれに対応する不飽和アルデヒドの一方又は両方から前記不飽和アルデヒド及びそれに対応する不飽和カルボン酸の一方又は両方を生成する気相接触酸化反応が挙げられ、さら具体的には、例えば、プロピレン又はイソブチレンからアクロレイン及びアクリル酸又はメタクロレイン及びメタクリル酸を生成する気相接触酸化反応、及びアクロレイン又はメタクロレインからアクリル酸又はメタクリル酸を生成する気相接触酸化反応が挙げられる。
【0047】
また前記発熱を伴う接触反応で気相接触反応としては、例えば、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種と酸素から、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方を生成する反応。炭素数4以上の脂肪族炭化水素と酸素からマレイン酸を生成する反応、o−キシレンと酸素からフタル酸を生成する反応、オレフィンの水素化によりパラフィンを生成する反応、ブテンの酸化脱水素によってブタジエンの生成する反応、エチレンと酸素から酸化エチレンを生成する反応、及び、カルボニル化合物の水素化によりアルコールを生成する反応が挙げられ、液相接触反応としてはクメンハイドロパーオキサイドの酸分解によりアセトンとフェノールを生成する反応、が挙げられる。
【0048】
また前記吸熱を伴う気相接触反応としては、例えば、エチルベンゼンの脱水素によりスチレンを生成する反応、が挙げられる。
【0049】
本発明における反応生成物の製造方法は、前述した気相接触反応において本発明のプレート式反応器を用い、粒子状の触媒の存在下における気相接触反応によってメタクロレイン、アクロレイン、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、フタル酸、スチレン、n−ブテン、イソブテン、n−ブタン、イソブタン、ブタジエン又は酸化エチレンを製造する。
【0050】
特に、気相接触反応であり、発熱が大きく除熱が重要であり、触媒の割れ・粉化等による差圧上昇によって反応収率の低下が著しい、プロピレン又はイソブチレンからアクロレイン及びアクリル酸又はメタクロレイン及びメタクリル酸を生成する気相接触酸化反応、及びアクロレイン又はメタクロレインからアクリル酸又はメタクリル酸を生成する気相接触酸化反応に、本発明によるプレート式反応器を用いることが好ましい。
【0051】
前記プレート式反応器には、ガス状の原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の充填物が投入されることによって前記隙間に充填層が形成されるプレート式反応器を用いることができる。
【0052】
前記プレート式反応器は、例えば図5に示す構造を有する。すなわち前記プレート式反応器は、対向して並ぶ伝熱プレート1を有する。伝熱プレート1は、伝熱プレート1の軸が鉛直方向に沿うように配置され、一方の伝熱プレート1の表面における凸縁が、他方の伝熱プレート1の表面における凹縁に対向するように配置されている。伝熱プレート1間の隙間には、触媒又は触媒及び不活性粒子の混合物が充填されることによって触媒層2が形成される。触媒層2には、上方から下方に向けて原料ガスが供給される。よって、対向する伝熱プレート1間の隙間の上端がガス入り口3であり、前記隙間の下端がガス出口4である。
【0053】
伝熱プレート1は、複数の伝熱管がその断面形状の周縁で連結する形状に形成されている。前記伝熱管には、水平方向の半径が異なる三種の伝熱管5−1〜5−3が用いられている。伝熱プレート1の軸方向において、前記半径が最も大きな伝熱管5−1は伝熱プレート1の上部に配置され、前記半径が二番目に大きな伝熱管5−2は伝熱プレート1の中部に配置され、前記半径が最も小さな伝熱管5−3は伝熱プレート1の下部に配置されている。
【0054】
そして、触媒層2には、伝熱管5−1で挟まれ、幅が最も狭く、供給された原料ガスが最初に到達する第一反応帯域と、伝熱管5−2で挟まれ、幅が二番目に狭く、第一反応帯域を通ったガスが到達する第二反応帯域と、伝熱管5−3で挟まれ、幅が最も広く、第二反応帯域を通ったガスが到達する第三反応帯域とが形成される。
【0055】
図5において、対向する伝熱プレート1はそれぞれ同じ構造である。また伝熱プレート1について、図6に示すように、Pは伝熱プレートの軸間の距離を表し、Hは伝熱管の水平方向における直径(波形に成形された板の貼り合わせによって形成されている伝熱管では波形の高さ)を表し、Lは伝熱管の鉛直方向における直径(波形に成形された板の貼り合わせによって形成されている伝熱管では波形の周期長)を表している。
【0056】
前記反応容器には、ガス状の原料(原料ガス)が供給され、生成ガスが排出され、かつ複数の伝熱プレートが並んで収容される容器を用いることができる。プレート式反応器は一般に加圧条件下の雰囲気での反応に用いられることから、前記反応容器は常圧から3MPa(メガパスカル)、好ましくは常圧から1,000kPa(キロパスカル)、より好ましくは常圧から300kPaの内圧に耐えられる耐圧性の容器であることが好ましい。このような反応容器としては、例えば円筒又は円筒の一部を組み合わせてなるシェル、複数の伝熱プレートが収容されるように板部材によって内部が区切られたシェル、及び、複数の伝熱プレートが収容されるように平面の内面を構成する部材によって囲まれてなる筐体状の内部を有する容器等が挙げられる。
【0057】
伝熱プレートの枚数は、反応に用いられる触媒量によって決めることができ、反応生成物の工業的な製造の観点から、10〜300枚であることが好ましい。また対向する伝熱プレートの間隔は、充填物の大きさやプレート式反応器の用途に基づいて決めることができる。例えば伝熱プレートの間隔は、プレート式反応器が気相接触反応に用いられる場合では、気相接触反応に用いられる粒子状の触媒の一般的な大きさを考慮すると、伝熱プレート間の距離で10〜50mmであることが好ましく、20〜35mmであることがより好ましい。ここで、伝熱プレートの軸とは、伝熱プレートにおいて全ての伝熱管が一鉛直線上で連結している場合はこの鉛直線を言い、全ての伝熱管の連結部が一鉛直線上にない場合は、それらの水平方向における中点を通る鉛直線を言う。
【0058】
前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含む。このように伝熱プレートは、並列する複数の伝熱管を含む板状体である。伝熱プレートにおいて、伝熱管は直接連結されていてもよいし、プレートやヒンジ等の適当な部材を介して
間接的に連結されていてもよい。伝熱プレートは、伝熱管の断面形状を二分割した形状が直接又は間接的に連結してなる形状に、プレス成形やロール成形によって二枚の鋼板を成形し、それぞれの鋼板を接合することによって形成されることが、高い精度で安価に伝熱プレートを得る観点から好ましい。また伝熱プレートは、単一の種類の伝熱管のみを含んでいてもよいし、断面形状が異なる複数種の伝熱管を含んでいてもよい。
【0059】
前記伝熱プレートは、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられる。前記伝熱プレートにおいて、前記伝熱管の軸と鉛直方向とが形成する角度は、気相接触反応に用いたときの伝熱プレート間の隙間における反応状態を揃える観点から、120〜60°であることが好ましく、100〜80°であることがより好ましく、90°であることがさらに好ましい。
【0060】
伝熱プレート間の隙間を流れるガスと伝熱管との間の熱伝達は、伝熱管による伝熱プレートの表面の凹凸がガスの流れの乱れの原因となり促進する。前記角度は、熱伝達の観点から90°付近であることが最も好ましい。しかし、流れるガスの圧力損失は、前記角度が90°のときに最も大きくなる。ガスの圧力損失を低く抑えたいときには、前記角度を90°以外の角度とすることが好ましい。この場合、隣り合った伝熱プレートで角度を反転させることが、ガスの流れや充填時の触媒を均等化する観点から好ましい。
【0061】
前記反応容器に設けられたときの伝熱プレートの鉛直方向における長さ(原料の通過する方向)は、プレート式反応器の用途に応じて決めることができ、例えば気相接触反応に用いる場合では、反応生成物の生成に十分な長さとする観点から、一般に0.5〜10mであることが好ましく、0.5〜5mであることがより好ましく、0.5〜3mであることがさらに好ましい。通常入手できる薄板鋼板のサイズから、1.5m以上の時は2枚のプレートを接合するか、組み合わせて用いることもできる。
【0062】
前記伝熱プレートの幅(すなわち伝熱管の長さ)は、気相接触反応における反応条件に基づいて決めることができる。例えば伝熱プレートの幅は、伝熱管を流れる熱媒による反応温度の制御の観点から、0.5〜20mであることが好ましく、3〜15mであることがより好ましく、6〜10mであることがさらに好ましい。
【0063】
伝熱プレートは、伝熱性を有する材料で形成される。このような材料としては、例えばステンレス及びカーボンスチール、ハステロイ、チタン、アルミニウム、エンジニアリングプラスチック及び銅が挙げられる。好ましくはステンレスが用いられる。ステンレスでは、304、304L、316、及び316Lが好ましい。
【0064】
伝熱プレートを構成する薄板の板厚は、2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
【0065】
前記伝熱管は、熱媒が流通することができ、伝熱性を有する管である。伝熱管の断面形状は特に限定されないが、伝熱管の断面形状としては、例えば、円形、楕円形やラグビーボール型等の略円形、円弧を対称に接続してなる葉形、及び矩形等の多角形が挙げられる。伝熱管の断面形状における周縁とは、円形における周縁を意味し、伝熱管の断面形状における端縁とは、略円形における長軸端の縁や、多角形における一角の縁を意味する。
【0066】
伝熱管の管径は、伝熱管と充填物との接触性の観点から決めることができる。伝熱管の管径は、例えば、気相接触反応に用いられる粒子状の触媒の一般的な粒径を考慮すると、伝熱管の管径は5〜100mmであることが好ましく、伝熱管の短径は5〜50mmであることが好ましく、10〜30mmであることがより好ましい。伝熱管の長径は10〜100mmであることが好ましく、20〜50mmであることがより好ましい。
【0067】
このような伝熱プレートを用いたプレート式反応器としては、円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレートを、複数配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と波板凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成した反応器が好適に例示できる。
【0068】
本発明のプレート式反応器は、前述した構成要素以外の他の構成要素をさらに有していてもよい。このような他の構成要素としては、例えば、伝熱管に熱媒を供給するための熱媒供給装置、前記隙間に鉛直方向に沿って配置されて前記隙間を鉛直方向に区切る仕切り、及び、通気性を有し、前記区画の端部を着脱自在に塞ぐ通気栓が挙げられる。
【0069】
前記熱媒供給装置は、前記反応容器に収容された伝熱プレートの伝熱管に、所望の温度の熱媒を供給するための装置である。熱媒供給装置は、気相接触反応を精密に制御する観点から好ましい。このような熱媒供給装置としては、例えば伝熱管とその外部との間で熱媒を循環させる循環流路と、この循環流路中の熱媒の温度を調整する温度調整装置とを有する装置が挙げられる。温度調整装置としては、例えば、熱交換器、及び前記循環流路中の熱媒に異なる温度の熱媒を混合するための熱媒混合装置が挙げられる。
【0070】
前記仕切りは、伝熱プレート間の隙間に鉛直方向に沿って設けられ、仕切りによって形成される区画からの充填物の漏れを防止するための部材である。仕切りは、区画毎に充填物を均一に充填することによって前記隙間に充填物を均一かつ容易に充填する観点から好ましい。仕切りは、充填物が区画に充填されたときに形状が保たれる程度の剛性をさらに有すると、伝熱プレート間の距離を保つスペーサとして用いることができる。前記仕切りとしては、例えば、ステンレス、カーボンスチール、ハステロイ、チタン、アルミニウム、エンジニアリングプラスチック及び銅製の板、角棒、丸棒、網;グラスウール;及びセラミック板;が挙げられる。
【0071】
前記通気栓は、前記区画の鉛直方向における端部を前記区画毎に自在に開閉するための部材である。通気栓は、区画毎に充填物を容易に抜き出す観点から好ましい。前記通気栓としては、例えば、前記区画の端部を覆う通気板と、この通気板に設けられ、伝熱プレート又は仕切りに着脱自在に係止し、前記区画の上方又は下方からこの係止を解除することができる係止部材とを有する部材が挙げられる。
【0072】
前記プレート式反応器としては、例えば図7〜9に示すように、矩形のケーシング6と、伝熱管5を有し、ケーシング6内に対向して並んで設けられる複数の伝熱プレート1と、伝熱管5に熱媒を供給するための熱媒供給装置と、隣り合う伝熱プレート1間の隙間をケーシング6内の通気方向に沿って、充填物が充填され保持される複数の区画に仕切る複数の仕切り7と、通気性を有し各区画の下端部を塞ぐ複数の通気栓8と、伝熱プレート1の上部に設けられる穴あき板9とを有するプレート式反応器が挙げられる。
【0073】
ケーシング6は、断面形状が矩形の通気路を形成しており、前記反応容器に相当する。ケーシング6は、ケーシング6の上端及び下端に、対向する一対の通気口10、10’を有しており、通気口10を含むケーシング端部11と、通気口10’を含むケーシング端部11’と、伝熱プレート1が収容されるケーシング本体とから構成されている。ケーシング端部11、11’は、ケーシング本体に対して着脱自在にそれぞれ接続されている。
【0074】
伝熱プレート1は前述した伝熱プレートである。伝熱管5も前述した伝熱管であり、二つの円弧が対称に両端で接続してなる葉形の断面形状と伝熱性を有する管である。伝熱管5には、前述したように、三種の伝熱管5−1〜5−3が用いられている。
【0075】
前記熱媒供給装置は、ケーシング6の対向する一対の壁に設けられている。この壁には各伝熱管5に熱媒を供給するための供給口が形成されている。熱媒供給装置は、例えば図7に示すように、一対のジャケット12と、一方のジャケット12の内外で熱媒を循環させる循環流路13と、循環流路13に設けられるポンプ14と、循環流路13中の熱媒の温度を調整するための熱交換器15と、ジャケット4中の熱媒にさらに熱媒を混合するための熱媒混合装置とから構成される。ジャケット12は、例えば反応容器全体において、熱媒が伝熱管5を介してジャケット12間を蛇行するように、所定の高さにおいて複数に区切られている。
【0076】
前記熱媒混合装置は、例えば図8に示すように、ジャケット12内外を連通するノズル16と、ジャケット12内部においてノズル16に連結し、ジャケット12内の熱媒の流れ方向に対して直交する方向に延出する分配管17とを有する。分配管17は、先端が塞がれており、分配管の長手方向の全体にわたって複数の孔が設けられている管である。
【0077】
仕切り7は、図11に示すように、伝熱プレート1の表面の凹凸に密着する側縁を有する形状のステンレス製の板であり、下端部に横長の矩形の窓18を有している。仕切り7は、対向する伝熱プレート1間の隙間に鉛直方向に沿って設けられている。仕切り7は、所定の容積の区画を前記隙間に形成するように等間隔で設けられている。
【0078】
通気栓8は、図12に示すように、各区画の断面形状の同じ矩形の通気板19と、通気板19の短辺から下方に垂設される第一のスカート部20と、通気板19の長辺から下方に垂設される第二のスカート部21とを有している。第一のスカート部20には、矩形の係止窓22と、その隣に併設される係止爪23とが形成されている。
【0079】
通気板19は例えば2mmの円形の孔が開口率30%で形成された板である。係止窓22は、係止爪23を収容する幅と高さを有する大きさで形成されている。また係止爪23は、第一のスカート部20の下端縁からの平行な二本の切り込みを外側に凸に折り曲げて形成されている。対向する一対の第一のスカート部20において、一方の係止窓22と他方の係止爪23とが対向し、一方の係止爪23と他方の係止窓22とが対向している。仕切り7の窓18は、係止窓22と係止爪23とが同時に含まれる幅及び高さを有する大きさで形成されている。
【0080】
通気栓8は、各区画の下端から通気板19を上に各区画に挿入されている。通気栓8の挿入時において、係止爪23は、外側への付勢に抗して仕切り7に押さえられるが、窓18に到達したときに、図13に示すように、仕切り7の押さえ付けから開放されて窓18に向けて進出し、窓18に係止する。
【0081】
穴あき板9は、例えば、充填される充填物の最長径に対して0.3〜0.8倍の径を有する孔が20〜40%の開口率で設けられている板である。穴あき板9は、最も外側に配置される伝熱プレート1とケーシング6の壁との間の隙間への通気を防止するために、図7に示すように、最も外側に配置されている伝熱プレート1の端縁からケーシング6の壁までの隙間を塞ぐように形成されている。
【0082】
このプレート式反応器において、伝熱プレート1間の隙間への充填物の充填は、伝熱プレート1の上方から各区画へ充填することによって行われる。この充填物の充填は、鉛直方向に対する区画の端部からの距離に応じた所望の位置である投入位置から行われる。この充填物の充填において、区画の容積とその区画への充填物の投入位置の数とに応じた量の充填物が区画に投入される。
【0083】
前記充填物には、例えばプロパン及びプロピレン等の炭化水素の気相接触酸化反応によってアクロレインやアクリル酸を製造するためのMo−Bi系複合酸化物触媒、Mo−V系複合酸化物触媒や、ムライト、アルミナ、シリコンカーバイド、シリカ、酸化ジルコニア、酸化チタン等の不活性粒子が用いられる。触媒と不活性粒子を用いる場合は触媒と不活性物質を混合もしくは積層して使用される。この混合もしくは積層における不活性粒子の含有量は、例えば前記触媒100質量部に対して1〜400質量部である。また例えば触媒の形状は球状、円柱状、リング状、星形等であり、不活性粒子の形状は球状、円柱状、リング状、星形等である。
【0084】
伝熱管5の軸方向(水平方向)における充填物の投入位置から区画の端までの距離をB(m)とし、充填物の安息角をθ(°)とし、区画に形成される充填層の高さの基準値(触媒層の最高点の高さの設定値)の10%をE(m)とすると、区画の幅が2B以下、すなわち2×tanθ/E以下である場合は、投入位置は、水平方向における区画のそれぞれの端からの距離がtanθ/E以下となる任意の一箇所に決めることができる。
【0085】
このように一充填区画に対して投入位置が一箇所である場合は、充填区画の容積に応じた量の充填物を充填区画ごとに充填することができる。例えばこのような充填物の充填では、ビーカー等の容器から50〜5,000mL/minの適当な速度で充填物を充填することができる。
【0086】
又は、このような充填物の充填は、例えば図14に示すように、矩形の板31と、この板31の三辺からそれぞれ起立する枠32と、前記三辺の中央の辺の枠32に設けられる取っ手33とを有する充填用器具を用いて行うことができる。この充填用器具の材料としては、例えばステンレスが挙げられる。
【0087】
前記充填用器具は、図15に示すように、前記中央の辺から、対向する、枠を有さない辺に向けて充填物を案内するための、充填物の最大粒径よりも低い高さのガイド板34をさらに有していてもよい。ガイド板34は一枚でもよいし二枚以上でもよい。このようなガイド板34を有する充填用器具は、充填区画に投入される充填物の流れの幅を、この器具の開口部(枠を有さない辺)の幅とする観点から、図14に示す充填用器具よりも好ましい。
【0088】
これら充填用器具を用いて充填物を充填する場合は、板31の上に充填物を乗せた後に、取っ手33を持って左右に振って乗せた充填物を均して上下に重なりなく分散し、次いで、前記開口部の幅一杯から充填物が上下方向に重なり合わないようにして、50〜5,000mL/minの適当な速度で充填物を充填区画へ投入することができる。
【0089】
又は、このような充填物の充填は、例えば図16に示すように、充填物を収容するためのホッパ35と、ホッパ35から充填物が供給される矩形の搬送面36と、搬送面36の三辺からそれぞれ起立するように設けられる枠37と、搬送面36上で搬送される充填物の高さを所望の高さに規制する規制部材38と、搬送面36上の充填物を搬送面36の開口部(搬送面36における枠を有さない辺)に向けて搬送する搬送装置とを有する充填用装置を用いて行うことができる。
【0090】
前記搬送装置には、図16に示すような、搬送面36を構成し、かつホッパ35が設けられている前記三辺のうちの中央の辺から前記開口部に向けて駆動するベルトコンベア39や、図17に示すように、ホッパ35から開口部に向けて傾斜する滑らかな搬送面36を構成する板に振動を与えるバイブレータ40が挙げられる。
【0091】
前記充填用装置は、図16に示すように、充填物の搬送方向に沿って搬送面36を仕切
る仕切り板41をさらに有していてもよい。このような仕切り板41は、搬送面36上で充填物を前記開口部の幅方向に均す観点から好ましい。
【0092】
前記充填用装置において、搬送面36上を開口部に向けて搬送される充填物は、重なり合っている場合では規制部材38によって規制されて前記開口部の幅方向に均され、開口部と同じ幅で開口部から充填区画に投入される。図16に示す充填用装置は、ベルトコンベアによって充填物を搬送することから、搬送による充填物の割れや粉化等の損壊を防止する観点から好ましい。また図17に示す充填用装置は、バイブレータによって充填物を搬送することから、充填用装置の構成がより簡略となり、プレート式反応器内における充填物の充填作業の作業性の観点から好ましい。
【0093】
なお、図14〜図17における開口部について、開口部から投入される充填物の流れの幅は、通常は開口部の幅である。このように、充填物の流れの幅は、充填方法や、前記開口部の幅の調整によって変えることができる。充填物の流れの幅が0.05m以下である場合は、伝熱管の軸方向における充填物の流れの幅の中心が前記投入位置であり、充填物の流れの幅が0.05mを超える場合は、伝熱管の軸方向における充填物の流れの側縁のうち、対象となる充填区画の端又は隣り合う充填物の流れ側の側縁の位置が投入位置である。
【0094】
区画の幅が区画の幅が2B以上、すなわち2×tanθ/E以上である場合は、投入位置は、水平方向における区画のそれぞれの端からの距離がtanθ/E以下となり、かつ、隣り合う前記投入位置間の距離をA(m)としたときに、Aが2×E/tanθ以下となる二以上の任意の箇所に決めることができる。
【0095】
例えば、図18に示すように、投入位置の間隔をA、充填物の安息角をθ、形成される充填層の天面に形成される高低差をdとすると、dはA/2×tanθで表される。ここで、充填層の最高点の高さの設定値をLとし、充填層の最高点の高さに対して10%以下の高低差を許容するならば、dは0.1×L以下である。したがってAは0.1×L×2/tanθ以下である。例えば充填層の最高点の高さの設定値を1.7mとすると、θが40°のときはAは0.41m以下となり、θが50°のときはAは0.29m以下となる。そして、区画の端から最も近い投入位置と区画の端との距離BはA/2以下とする。
【0096】
一充填区画に対して投入位置が二以上である場合は、各投入位置から同時に充填物が充填される。このような充填において、充填物は、充填区画の容積が一定である場合では充填区画の容積を投入位置の数で除した量の充填物を各投入位置から同時に充填区画に投入することができるし、又は、50〜5,000mL/minの適当な任意の速度で各投入位置から同時に充填区画に投入することもできる。
【0097】
このような充填物の充填は、例えば図16や図17で示した充填用装置に、図19に示すような分配装置を併用することによって行うことができる。この分配装置は、搬送面36の開口部を幅方向に均等に分割する複数の分割板42と、分割板42で分割された充填物が供給される複数の漏斗43と、分割された充填物を各漏斗43から所望の充填区画の所望の投入位置まで供給するための複数の供給管44とを有する。供給管44は、エルボ45の使用によって水平方向に自在に回転することができ、さらに伸縮管の使用や継ぎ手による適当な長さの管の連結によって長さを自在に設定することができる。
【0098】
このような充填物の充填によれば、充填層の天面の高さが、充填層の最高点の高さの実測値の90〜100%の範囲に全て含まれる均一な充填層を容易に形成することができる。
【0099】
なお、充填層の設定値を、充填層の最低点や最低点と最高点との中点のような、充填層における最高点以外の任意の高さに設定し、この異なる設定値に基づいて前述した(1)式や(2)式を変換した式に基づいて充填物を充填した場合でも、上記のような、充填層の天面の高さが、充填層の最高点の高さの実測値の90〜100%の範囲に全て含まれる均一な充填層を容易に形成することが可能である。
【0100】
また、前述した充填物の充填によれば、一充填区画に対して投入位置が二以上である場合に各区画において、充填物の天面の位置が許容範囲内となる充填層が形成されるように、充填物を均一に充填することができる。なお、前記分配装置は、一充填区画に対して一投入箇所である場合の複数の充填区画への充填物の投入にも用いることができる。
【0101】
また、前記プレート式反応器は仕切り7を有することから、この仕切り7によって形成される各区画の容積は前記隙間に比べて十分に小さいので、容易に充填物を均等に充填しやすく、その結果、全隙間に充填物を容易かつ均等に充填する観点からより効果的である。
【0102】
なお、図示したプレート式反応器は、仕切り7を有しているが、仕切り7を有さないプレート式反応器では、伝熱プレート1間の一隙間を一充填区画として、前述のプレート式反応器の区画への充填物の充填と同様に、充填物を充填区画に投入することができる。
【0103】
充填物は、通気栓8を前記隙間から外すことによって区画毎に抜き出すことができる。通気栓8は、隣の区画の下端から係止爪23を押して、係止爪23の窓18への係止を解除することによって外される。このように、充填物の充填は区画毎に容易にやり直すことができ、充填物を均等かつ容易に充填する観点からより一層効果的である。
【0104】
充填物が充填されたプレート式反応器では、例えば前記隙間に上方から下方へ原料ガスが供給され、伝熱管5に熱媒が供給されることによって、反応生成物が製造される。例えば、プロピレン、空気、及び水蒸気からなる原料ガスを通気口10から供給し、300〜350℃の熱媒を熱媒供給装置から伝熱管5へ、例えば下から上に向けて供給することによって、アクロレイン及びアクリル酸が生成し、生成したアクロレイン及びアクリル酸は通気口10’から排出される。反応時におけるプレート式反応器の内圧は例えば150〜200kPa(キロパスカル)である。酸化に伴う発熱は伝熱管5内を流れる熱媒に吸収される。
【0105】
アクロレイン及びアクリル酸の製造において、熱媒の温度は、伝熱管5に熱媒が順次通ることによって、また熱交換器15によって、さらに前記熱媒混合装置からジャケット12内の熱媒に所定の温度の熱媒を混合することによって調節され、反応原料が、プロピレンの場合は、複数の反応帯域に供給される熱媒体の温度が250〜400℃であることが好ましく、320〜400℃であることがより好ましい。一方、該反応原料がアクロレインの場合は、複数の反応帯域に供給される熱媒体の温度が200〜350℃であることが好ましく、250〜320℃であることがより好ましい。
【0106】
前記プレート式反応器では、前記隙間において、充填物が均一に充填されてなる充填層が形成されることから、充填層における圧力損失の発生や充填層の部分的な通気量の偏り等の、触媒層2における充填物の充填状態の粗密に起因する現象が抑制され、アクロレイン及びアクリル酸の製造を所期の高い効率で長期間安定して行うことができる。
【実施例】
【0107】
[プレート式反応器の製作]
プレート式反応器には図5に示す構造を有する反応器を用いた。伝熱プレートについて
は、伝熱プレートが配置されたときに原料ガスの流れる方向に沿って、上流側から第一、第二、及び第三反応帯域を形成する三種の波形を有するように厚さ1mmのステンレスプレートを成形し、得られた波型形状のステンレスプレートを2枚接合して、反応温度調節用の熱媒体流路となる伝熱管が複数連なってなる伝熱プレートを形成した。伝熱プレートにおける、図6に示す波形の周期長(L)、高さ(H)及び波の数を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
表1に示した伝熱プレートの一対を、図5及び図6に示すように、一方の伝熱プレートの凸縁と他方の伝熱プレートの凹縁とが対向するように互いに平行に、かつ26mmの間隔(図6に示すP)で配置し、反応器を製作した。伝熱プレートの幅(伝熱管の長さ)は1,000mmであった。
【0110】
[触媒の調製]
プロピレンを分子状酸素により接触気相酸化し、アクロレイン及びアクリル酸に転換するのに用いられる触媒として、Mo12Bi5Co3Ni2Fe0.4Na0.4B0.2K0.08Si24Oxの組成の金属酸化物粉末を調製した。ここでOxのxは各金属酸化物の酸化状態により決まる数である。得られた粉末を成形して外径4mm、高さ3mmの円柱状の成形品を得た。得られた成形品を空気存在下で510℃、4時間焼成を行い、複合酸化物触媒Aを得た。また前記粉末を成形して外径6mm、内径2mm、高さ6mmのリング形状の成形品を得た。得られた成形品を同様に焼成して触媒Bを得た。得られた触媒の安息角を以下に示す方法によって求めた。
【0111】
[安息角の測定方法]
測定装置には、筒井理化学機械株式会社製 三輪式円筒回転形表面角測定装置GFL−68を用いた。500mLの容器に触媒250gを入れて台座に乗せ、円筒を10rpmで60秒回転させた後、2rpmに前記円筒の回転数を下げて10秒間回転させてスイッチを切り、円筒の軸方向を横断する断面における触媒の表面が水平方向に対して形成する角度を安息角として測定した。触媒Aの安息角は45°であった。また、触媒Bの安息角は52°であった。
【0112】
[実施例1]
前記プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に触媒Aを充填した。伝熱プレートの端から伝熱管の軸方向に沿って0.17m、0.50m、0.83mの位置を投入位置とし(すなわち伝熱プレートの両端から最も近い投入位置までの距離を0.17m、それ以外の隣り合う投入位置同士の距離が0.33mとなるよう投入位置を設定し)、充填層の最高点の高さが1.73mとなるように、それぞれの投入位置から同時にビーカーを用いて毎分200mLで合計24.9Lの触媒を前記隙間に充填した。充填後、伝熱プレートの端から0m、0.17m、0.335m、0.50m、0.665m、0.83m、1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0113】
測定された触媒層の高さのうち、0.5mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.50mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。なお触媒層の高さは、上方からステンレス棒を充填層の天面に接触させて天面の位置を測定することによって求めた。その結果を表2に示す。それぞれの測定位置において、0.50mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差は、0.50mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲に収まった。
【0114】
【表2】
【0115】
[比較例1]
投入位置を伝熱プレートの一端から0.25m及び0.75mの位置に設定し(すなわち伝熱プレートの両端から最も近い投入位置までの距離を0.25m、それ以外の隣り合う投入位置同士の距離が0.50mとなるよう投入位置を設定し)た以外は、実施例1と同様に、それぞれの投入位置から同時にビーカーを用いて毎分200mLで合計24.1Lの触媒Aを前記隙間に充填した。充填後、伝熱プレートの端から0m、0.25m、0.50m、0.75m、1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0116】
測定された触媒層の高さのうち、0.25mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.25mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表3に示す。0m、0.50m、及び1mの測定位置において、0.25mの測定位置の触媒層の高さに対するこれらの測定位置の触媒層の高さの差は、0.25mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲には収まらなかった。
【0117】
【表3】
【0118】
[実施例2]
前記プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間に、0.5mの間隔で仕切りを入れ、その仕切られた区画の一つに触媒Aを充填した。充填の際には投入位置を区画の端から0.17m、0.33mの位置に設定し、区画の両端から0.17m、投入位置同士の距離が0.16mとなるよう投入位置を設定した。それぞれの投入位置から同時にビーカーを用いて毎分200mLで合計12.4Lの触媒を前記区画に充填した。区画の端から0m、0.17m、0.25m、0.33m、0.50mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0119】
測定された触媒層の高さのうち、0.17mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.17mの測
定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表4に示す。それぞれの測定位置において、0.17mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差は、0.17mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲に収まった。
【0120】
【表4】
【0121】
[比較例2]
前記プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間に、0.5mの間隔で仕切りを入れ、その仕切られた区画の一つに触媒Aを充填した。充填の際には投入位置を前記区画の一端から0.25mの位置に設定し、投入位置を両端から0.25mとなるよう投入位置を設定し、この投入位置からビーカーを用いて毎分200mLで合計11.9Lの触媒を前記区画に充填した。区画の端から0m、0.25m、0.50mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0122】
前記測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、この触媒層の高さを基準(最高点)として、この測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表5に示す。0m、及び0.50mの測定位置において、0.25mの測定位置の触媒層の高さに対するこれらの測定位置の触媒層の高さの差は、0.25mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲には収まらなかった。
【0123】
【表5】
【0124】
[実施例3]
前記プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間に、触媒Aを充填した。充填は、ビーカーに代えて、図15に示す、開口部の幅が0.10mである充填用器具を用いて行った。
【0125】
投入位置を、前記隙間の一端から0.116〜0.216m、0.450〜0.550m、0.784〜0.884mの位置に設定し、それぞれの投入位置から同時に毎分200mLで合計25.1Lの触媒を前記隙間に充填した。前記隙間の端から0m、0.166m、0.333m、0.500m、0.666m、0.834m、及び1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0126】
測定された触媒層の高さのうち、0.500mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.500mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表6に示す。それぞれの測定位置において、0.500mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差は、0.500mの測定位置における触媒層の高
さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲に収まった。
【0127】
【表6】
【0128】
[比較例3]
前記プレート式反応器の伝熱プレート間の隙間に、触媒Aを、実施例3と同様の充填用器具を用いて充填した。投入位置を、前記隙間の端から0.2〜0.3m及び0.7〜0.8mの位置に設定し、それぞれの投入位置から同時に毎分200mLで合計24.3Lの触媒を前記隙間に充填した。前記隙間の端から0m、0.25m、0.50m、0.75m、及び1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0129】
測定された触媒層の高さのうち、0.25mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さ(最高点)を基準として、0.25mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表7に示す。0m、0.50m、及び1mの測定位置において、0.25mの測定位置の触媒層の高さに対するこれらの測定位置の触媒層の高さの差は、0.25mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲には収まらなかった。
【0130】
【表7】
【0131】
[実施例4]
前記プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に触媒Bを充填した。伝熱プレートの端から伝熱管の軸方向に沿って0.125m、0.375m、0.625m、0.875mの位置を投入位置とし(すなわち伝熱プレートの両端から最も近い投入位置までの距離を0.125m、それ以外の隣り合う投入位置同士の距離が0.25mとなるよう投入位置を設定し)、充填層の最高点の高さが1.73mとなるように、それぞれの投入位置から同時にビーカーを用いて毎分200mLで合計25.0Lの触媒を前記隙間に充填した。充填後、伝熱プレートの端から0m、0.125m、0.250m、0.375m、0.500m、0.625m、0.750m、0.875m、1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0132】
測定された触媒層の高さのうち、0.875mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.875mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表8に示す。それぞれの測定位置において、0.875mmの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差は、0.875mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲に収まった。
【0133】
【表8】
【0134】
[比較例4]
前記プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に触媒Bを充填した。伝熱プレートの端から伝熱管の軸方向に沿って0.17m、0.50m、0.83mの位置を投入位置とし(すなわち伝熱プレートの両端から最も近い投入位置までの距離を0.17m、それ以外の隣り合う投入位置同士の距離が0.33mとなるよう投入位置を設定し)、充填層の最高点の高さが1.73mとなるように、それぞれの投入位置から同時にビーカーを用いて毎分200mLで合計24.2Lの触媒を前記隙間に充填した。充填後、伝熱プレートの端から0m、0.170m、0.335m、0.500m、0.665m、0.830m、1mの位置の触媒層の高さを測定した。
【0135】
測定された触媒層の高さのうち、0.500mの測定位置における触媒層の高さが1.73mであり、最も高かった。この触媒層の高さを基準(最高点)として、0.500mの測定位置の触媒層の高さに対する他の測定位置の触媒層の高さの差を求めた。その結果を表9に示す。0m、0.335m、0.665及び1mの測定位置において、0.500mの測定位置の触媒層の高さに対するこれらの測定位置の触媒層の高さの差は、0.500mの測定位置における触媒層の高さ1.73mの10%以内である0.173m以内の範囲には収まらなかった。
【0136】
【表9】
【0137】
以上の実施例及び比較例から、前記式(1)及び式(2)を満たす複数の位置から前記隙間に触媒を充填した場合では、伝熱管の軸方向において、触媒層の高さの高低差を小さくすることができ、触媒層を均一に充填することができる一方で、前記式(1)及び式(2)を満たさない位置から前記隙間に触媒を充填すると、伝熱管の軸方向において、触媒層の高さの高低差が大きくなり、触媒が均一に充填されないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間は一般に小さく、また扁平かつ複雑な形状を有している。このため、伝熱プレート間の隙間への充填物の充填において、充填の状態の確認や修正は一般に困難であるが、本発明によれば、伝熱プレート間の隙間への充填物の充填を適切に行うことができ、またその適切な充填状態を容易に判断することができることから、保安点検作業のような、プレート式反応器の定期的な作業における作業性の向上が期待され、プレート式反応器を用いる生成物の製造において、このような定期的な作業を含む長期的な生産性のさらなる向上が期待される。
【符号の説明】
【0139】
1 伝熱プレート
2 触媒層
3 ガス入り口
4 ガス出口
5、5−1、5−2、5−3 伝熱管
6 ケーシング
7 仕切り
8 通気栓
9 穴あき板
10、10’ 通気口
11、11’ ケーシング端部
12 ジャケット
13 循環流路
14 ポンプ
15 熱交換器
16 ノズル
17 分配管
18 窓
19 通気板
20 第一のスカート部
21 第二のスカート部
22 係止窓
23 係止爪
31 板
32、37 枠
33 取っ手
34 ガイド板
35 ホッパ
36 搬送面
38 規制部材
39 ベルトコンベア
40 バイブレータ
41 仕切り板
42 分割板
43 漏斗
44 供給管
45 エルボ
P 一対の伝熱プレートの軸間の間隔
L 波形の周期長
H 波形の高さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、
前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、
隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の充填物を投入して前記隙間に充填層を形成する、プレート式反応器における充填物の充填方法であって、
一箇所の投入位置から前記隙間へ前記充填物を充填したときに前記隙間において充填層が形成される区画を充填区画とし、前記充填物の安息角をθ(°)、前記伝熱管の軸方向における前記充填物の投入位置から前記充填区画の端までの距離をB(m)、前記充填層の最高点の高さの設定値の10%をE(m)としたときに、下記式(1)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入する、プレート式反応器における充填物の充填方法。
B≦E/tanθ (1)
【請求項2】
前記伝熱管の軸方向における複数の位置から一つの前記充填区画に前記充填物を充填する方法であって、
隣り合う前記投入位置間の距離をA(m)としたときに、さらに下記式(2)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入することを特徴とする請求項1に記載のプレート式反応器における充填物の充填方法。
A≦2×E/tanθ (2)
【請求項3】
前記プレート式反応器は、前記隙間に鉛直方向に沿って配置されて前記隙間を鉛直方向に区切る仕切りをさらに有し、
前記充填区画が前記仕切りによって形成される区画であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレート式反応器における充填物の充填方法。
【請求項4】
前記伝熱管の軸方向における前記充填区画の長さが0.05m〜2mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレート式反応器における充填物の充填方法。
【請求項5】
前記充填物が粒子状の触媒及び不活性粒子の一方又は両方であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレート式反応器における充填物の充填方法。
【請求項6】
原料を反応させるための反応容器に並んで設けられる複数の伝熱プレートを有し、前記伝熱プレートが断面形状の周縁又は端縁で鉛直方向に連結している複数の伝熱管を含むプレート式反応器を用いて、原料から接触反応によって反応生成物を製造する方法であって、隣り合う伝熱プレート間の隙間に触媒を落下させることによって形成される触媒層に前記原料を通す工程と、前記伝熱管に所望の温度の熱媒を供給する工程とを含み、
前記原料が、エチレン;炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種;炭素数4以上の脂肪族炭化水素;o−キシレン;オレフィン;カルボニル化合物;クメンハイドロパーオキサイド;ブテン;又はエチルベンゼン;であり、
得られる前記反応生成物が、酸化エチレン;炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方;マレイン酸;フタル酸;パラフィン;アルコール;アセトン及びフェノール;ブタジエン;又はスチレン;である方法において、
前記プレート式反応器に、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプレート式反応器を用いることを特徴とする生成物の製造方法。
【請求項7】
前記原料がプロピレン又はイソブチレンであり、分子状酸素含有ガスを用いてプロピレン又はイソブチレンを酸化し、(メタ)アクロレイン及び(メタ)アクリル酸の一方又は両方を製造することを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項1】
原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、
前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、
隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の充填物を投入して前記隙間に充填層を形成する、プレート式反応器における充填物の充填方法であって、
一箇所の投入位置から前記隙間へ前記充填物を充填したときに前記隙間において充填層が形成される区画を充填区画とし、前記充填物の安息角をθ(°)、前記伝熱管の軸方向における前記充填物の投入位置から前記充填区画の端までの距離をB(m)、前記充填層の最高点の高さの設定値の10%をE(m)としたときに、下記式(1)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入する、プレート式反応器における充填物の充填方法。
B≦E/tanθ (1)
【請求項2】
前記伝熱管の軸方向における複数の位置から一つの前記充填区画に前記充填物を充填する方法であって、
隣り合う前記投入位置間の距離をA(m)としたときに、さらに下記式(2)を満たすように前記充填物を前記隙間に投入することを特徴とする請求項1に記載のプレート式反応器における充填物の充填方法。
A≦2×E/tanθ (2)
【請求項3】
前記プレート式反応器は、前記隙間に鉛直方向に沿って配置されて前記隙間を鉛直方向に区切る仕切りをさらに有し、
前記充填区画が前記仕切りによって形成される区画であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレート式反応器における充填物の充填方法。
【請求項4】
前記伝熱管の軸方向における前記充填区画の長さが0.05m〜2mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレート式反応器における充填物の充填方法。
【請求項5】
前記充填物が粒子状の触媒及び不活性粒子の一方又は両方であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレート式反応器における充填物の充填方法。
【請求項6】
原料を反応させるための反応容器に並んで設けられる複数の伝熱プレートを有し、前記伝熱プレートが断面形状の周縁又は端縁で鉛直方向に連結している複数の伝熱管を含むプレート式反応器を用いて、原料から接触反応によって反応生成物を製造する方法であって、隣り合う伝熱プレート間の隙間に触媒を落下させることによって形成される触媒層に前記原料を通す工程と、前記伝熱管に所望の温度の熱媒を供給する工程とを含み、
前記原料が、エチレン;炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種;炭素数4以上の脂肪族炭化水素;o−キシレン;オレフィン;カルボニル化合物;クメンハイドロパーオキサイド;ブテン;又はエチルベンゼン;であり、
得られる前記反応生成物が、酸化エチレン;炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方;マレイン酸;フタル酸;パラフィン;アルコール;アセトン及びフェノール;ブタジエン;又はスチレン;である方法において、
前記プレート式反応器に、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプレート式反応器を用いることを特徴とする生成物の製造方法。
【請求項7】
前記原料がプロピレン又はイソブチレンであり、分子状酸素含有ガスを用いてプロピレン又はイソブチレンを酸化し、(メタ)アクロレイン及び(メタ)アクリル酸の一方又は両方を製造することを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−167406(P2010−167406A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226718(P2009−226718)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
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