説明

プレーナー半極性(Al,In,Ga,B)Nベースの発光ダイオード向けMOCVD成長技術

500nmよりも長いピーク放射波長を有する発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオードを含む、III族窒化物の光電子デバイス。該III族窒化物の光電子デバイスは、インジウム含有井戸層とバリア層との間における、9×10cm−2よりも小さい境界面から生じる、転位密度を有する。該III族窒化物の光電子デバイスは、井戸層の成長とバリア層の成長との間において、1分間よりも長い中断時間を有して成長される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、Hitoshi Sato、Roy B. Chung、Feng Wu、James S.Speck、Steven P.DenBaarsおよびShuji Nakamuraにより、「MOCVD GROWTH TECHNIQUE FOR PLANAR SEMIPOLAR (Al,In,Ga,B)N BASED LIGHT EMITTING DIODES」と題され、代理人整理番号30794.274−US−P1(2008−534)、2008年4月4日出願の同時係属中かつ同一人に譲渡された米国仮特許出願第61/042,639号の35 U.S.C.セクション119(e)に基づく利益を主張し、当該出願は本明細書において参照により援用される。
【0002】
本出願は、Hitoshi Sato、Hirohiko Hirasawa、Roy B.Chung、Steven P.DenBaars、James S.SpeckおよびShuji Nakamuraにより、「METHOD FOR FABRICATION OF SEMIPOLAR (Al,In,Ga,B)N BASED LIGHT EMITTING DIODES」と題され、代理人整理番号30794.264−US−P1(2008−415−1)、本願と同日出願の同時係属中かつ同一人に譲渡された米国特許出願第xx/xxx,xxxに関連し、当該出願は、Hitoshi Sato、Hirohiko Hirasawa、Roy B.Chung、Steven P.DenBaars、James S.SpeckおよびShuji Nakamuraにより、「METHOD FOR FABRICATION OF SEMIPOLAR (Al,In,Ga,B)N BASED LIGHT EMITTING DIODES」と題され、代理人整理番号30794.264−US−P1(2008−415−1)、2008年4月4日出願の米国仮出願第61/042,644号の35 U.S.C.セクション119(e)に基づく利益を主張し、これらの出願は本明細書において参照により援用される。
【0003】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、特に560nmから680nmの波長の範囲における、高出力かつ高効率の窒化物発光ダイオード(LED)、および窒化物ベースの白色LEDの製造に関する。
【背景技術】
【0004】
(2.関連技術の説明)
(注:本出願は明細書全体にわたって指し示されている通り、例えば[参考文献x]のようなブラケット内の一つ以上の参照番号によって、多数の異なる出版物を参照する。これらの参照番号に従って並べられたこれらの異なる出版物のリストは、以下の「参考文献」と題するセクションで見られる。これらの出版物のそれぞれは本明細書において参照により援用される。)
現在の電子および光電子デバイス向けの窒化物技術は極性のc方向に沿って成長される窒化物膜を利用する。しかしながら、III族窒化物ベースの光電子および電子デバイスにおける従来のc面量子井戸構造は、強い圧電性かつ自発性の分極の存在に起因して、望ましくない量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を受ける。c方向に沿った強い固有の電場は電子とホールの空間的隔離を引き起こし、ひいては制限されたキャリア再結合効率、低減された振動子強度、および赤方偏移した放射をもたらす。
【0005】
GaN光電子デバイスにおける自発性かつ圧電性の分極効果を除去する一つのアプローチは、デバイスを結晶の無極性面上に成長させることである。このような面は同数のGa原子とN原子を含み、電荷的中性である。さらには、その後の無極性の層は結晶学的に互いに同等であり、結晶が成長方向に沿って分極されない。GaN内のこのような2つのファミリーの対称性の同等な無極性面は、集合名詞的にa面として知られる{11−20}ファミリーと、集合名詞的にm面として知られる{1−100}ファミリーである。残念ながら、カリフォルニア大学の研究者によってもたらされた進歩にもかかわらず、無極性窒化物の成長は困難なままであり、III族窒化物産業において未だ広く採用されていない。
【0006】
GaN光電子デバイスにおける分極効果を低減し、あるいは可能ならば除去するための別のアプローチは、デバイスを結晶の半極性面上に成長させることである。半極性面の用語は、2つの零でないh、i、またはkミラー指数、および零でないlミラー指数を有する広範な面を参照するのに使われ得る。c面GaNヘテロエピタキシーにおける半極性面の一部のよく見られる例は、ピットのファセットで見られる、{11−22}、{10−11}、および{10−13}面である。これらの面はまた、たまたま、著者らがプレーナー膜の形で成長させた面とちょうど同じである。ウルツ鉱型結晶構造における他の半極性面の例には、{10−12}、{20−21}および{10−14}面があるが、これに限定されない。窒化物結晶の分極ベクトルはこれらの面内に横たわるのでもなく、これらの面に垂直でもなく、寧ろ面の表面の法線に対して幾らかの角度で傾いている。例えば、{10−11}および{10−13}面はc面に対してそれぞれ62.98°および32.06°である。
【0007】
自発性の分極に加えて、窒化物に内在する第2の分極は圧電性の分極である。これは、異なる組成(およびそれゆえ異なる格子定数)の(Al,In,Ga,B)N層が窒化物へテロ構造において成長されるときに起こり得るのと同様に、材料が圧縮歪みまたは引っ張り歪みを被るときに起こる。例えば、GaNテンプレート上の薄いAlGaN層は面内引っ張り歪みを有し、GaNテンプレート上の薄いInGaN層は面内圧縮歪みを有し、どちらもGaNとの格子整合に起因する。それゆえ、GaN上のInGaN量子井戸については、圧電性の分極はInGaNおよびGaNの自発性の分極とは逆方向を向く。GaNと格子整合したAlGaN層については、圧電性の分極はAlGaNおよびGaNの自発性の分極と同じ方向を向く。
【0008】
c面窒化物上の半極性または無極性面を使用することの利点は、総計的な分極が低減されることである。特定の面上の特定の合金組成については零の分極すらあり得る。このような論議は将来の科学文献で詳細が議論されよう。重要な点はc面窒化物構造の分極と比べて分極が低減されることである。低減された分極場はより厚い量子井戸の成長を可能にする。これにより、より高いインジウム組成と、ひいてはより長い波長の放射が、窒化物LEDにより実現され得る。より長い波長の放射領域における半極性/無極性ベースの窒化物LEDを製造するために多くの努力がなされている[参考文献1−4]。
【0009】
本明細書により半極性または無極性(Al,In,Ga,B)N半導体結晶上に青色、緑色、黄色、およびアンバー色のLEDを製造することを可能にする発明を開示する。これまでのところ、黄色およびアンバー色領域でのより長い波長の放射で成功した窒化物LEDは無い。しかしながら、次節以降でより詳細が議論される本発明は、窒化物ベースの黄色およびアンバー色LEDの商用化に有望な結果を明示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、{10−1−1}、{11−22}、{1100}、およびその他の面のようなバルク半極性および無極性GaN基板を有する青色、緑色、黄色、白色、およびその他の色のプレーナー発光ダイオード(LED)を成長させるための方法を記載する。半極性および無極性(Al,In,Ga,B)N半導体結晶は、前述で開示したように、構造内の内部分極の不連続性に起因する、零あるいは低減された内部電場を有する多層構造の製造を可能にする。本発明は、有機金属化学気相成長法(MOCVD)技術による、多重量子井戸(MQW)または単一量子井戸(SQW)の、インジウム含有井戸層の成長とバリア層成長との間に意図的な中断時間を使用する、LEDまたはレーザーダイオード構造の高品質な結晶の成長を記載する。これにより、半極性または無極性ベースのプレーナーLEDまたはレーザーダイオードの、インジウム含有層(一つ以上)の井戸層へのインジウム混入に対する制御性を可能にする。半極性または無極性(Al,In,Ga,B)N半導体の配向の使用により、低減された内部電場と、ひいては[0001]窒化物半導体に比べてより長い波長放射のための、より厚い量子井戸とより高いインジウム組成が得られる。
【0011】
上述の先行技術における制限を克服し、および本明細書を読解することで明確になる他の制限を克服するために、本発明は無極性または半極性面の基板上に成長されたIII族窒化物ベースの光電子デバイスを開示し、そのようなデバイスは、インジウム含有III族窒化物量子井戸層(例えばInGaN)を有するLEDまたはレーザーダイオードを含み、量子井戸層とバリア層との間の9×10cm−2より小さい(例えば1×10cm−2より小さい)境界面から生じる、500nmより長い(例えば550nmより長い)ピーク放射波長と、転位密度とを有する。
【0012】
あるいは、転位密度は20mAの動作電流において少なくとも3.5mWの光の出力パワーを得るのに十分に低い。
【0013】
LEDは、量子井戸層が500nmより長いピーク放射波長を有する光を放射することができるような、量子井戸層のインジウム組成および/または厚みを可能にする、基板の無極性または半極性面の上に成長され得る。
【0014】
LEDまたはレーザーダイオードは、例えば半極性の配向を有し得る。量子井戸層が半極性(または無極性)の場合は、井戸層の圧電性かつ自発性の分極の量は、c面のインジウム含有量子井戸層の圧電性かつ自発性の分極に比べて低減され得る。あるいは、インジウム含有量子井戸層の圧電性かつ自発性の分極ベクトルは、インジウム含有井戸層とバリア層との境界面の面内に横たわるか、境界面に対して90°未満の角度で傾くか、c軸に沿った圧電性かつ自発性の分極ベクトルによって生成されるQCSEと比べると低減されるようなQCSEを引き起こす方向に横たわり、それによって光が500nmより長い波長を有することを可能にする。
【0015】
LEDまたはレーザーダイオードはミスカットした無極性または半極性面の基板である基板上に成長され得る。例えば、光電子デバイスは基板の表面上に成長され得、ここで、その表面は、量子井戸層の半極性または無極性の特性を保持する、無極性または半極性面に対する角度にある。例えば、その表面はミスカット表面であり、その角度はミスカット角度である。
【0016】
上述したように、より一般的に、本発明は半極性または無極性の発光デバイスを開示し、そのようなデバイスは[0001]III族窒化物半導体と比べて、より長い波長の放射のための低減された内部電場とより高いインジウム組成を有するIII族窒化物量子井戸層を含む。
【0017】
本発明はさらに、第1のクラッド層エネルギーバンドを有する第1のクラッド層材料、第2のクラッド層エネルギーバンドを有する第2のクラッド層材料、500nmより長い波長を有する光を放射しアクティブ層エネルギーバンドを有するアクティブ層材料を含む発光デバイスを開示し、ここで、アクティブ層材料は第1のクラッド層材料と第2のクラッド層材料との間にあり、そして第1のクラッド材料、第2のクラッド材料、およびアクティブ層材料は、AlInGaP発光デバイスからの光出力パワーほどではないが、発光デバイスの温度が上昇するにつれて光出力パワーが減少するような材料である。
【0018】
本発明はさらに、井戸層とバリア層の間に5秒よりも長い(例えば1分よりも長い)中断時間の期間を有する無極性または半極性デバイスの成長を含む、III族窒化物光電子デバイスを製造する方法を開示する。中断時間の期間の間のキャリアガスは、例えば窒素(N)または水素(H)であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
ここでは図面を参照し、図中では、全体にわたって、同一の参照番号は対応する部分を表わす。
【図1】図1は本発明の好ましい実施形態のフローチャートである。
【図2a】図2(a)および図2(b)は、c面(c−LED)および半極性面GaN基板((11−22)LED)上に成長されたLEDの放射波長に対する、中断時間の依存性のグラフであり、ここで、図2(a)および図2(b)共に、それぞれ5秒(sec)の中断時間および10分(min)の中断時間について、LEDからの放射波長(nm)の関数としてエレクトロルミネセンス(EL)強度(任意単位、a..u.)を示し、図2(a)のc−LEDは497nmのピーク放射波長および1.06mWの出力パワーで放射し、図2(b)のc−LEDは433nmのピーク放射波長および0.32mWの出力パワーで放射し、図2(a)の(11−22)LEDは493nmのピーク放射波長および1.34mWの出力パワーで放射し、図2(b)の(11−22)LEDは589nmのピーク波長および0.13mWの出力パワーで放射し、図2(a)のLEDの動作電流は20mAの直流(DC)であり、図2(b)のc−LEDは(0001)面上に成長され、図2(b)の(11−22)LEDは(11−22)面上に成長され、図2(a)のc−LEDはc−GaNバルク上に成長され、図2(a)の(11−22)LEDは(11−22)配向のGaNバルクの(11−22)面上に成長される。
【図2b】図2(a)および図2(b)は、c面(c−LED)および半極性面GaN基板((11−22)LED)上に成長されたLEDの放射波長に対する、中断時間の依存性のグラフであり、ここで、図2(a)および図2(b)共に、それぞれ5秒(sec)の中断時間および10分(min)の中断時間について、LEDからの放射波長(nm)の関数としてエレクトロルミネセンス(EL)強度(任意単位、a..u.)を示し、図2(a)のc−LEDは497nmのピーク放射波長および1.06mWの出力パワーで放射し、図2(b)のc−LEDは433nmのピーク放射波長および0.32mWの出力パワーで放射し、図2(a)の(11−22)LEDは493nmのピーク放射波長および1.34mWの出力パワーで放射し、図2(b)の(11−22)LEDは589nmのピーク波長および0.13mWの出力パワーで放射し、図2(a)のLEDの動作電流は20mAの直流(DC)であり、図2(b)のc−LEDは(0001)面上に成長され、図2(b)の(11−22)LEDは(11−22)面上に成長され、図2(a)のc−LEDはc−GaNバルク上に成長され、図2(a)の(11−22)LEDは(11−22)配向のGaNバルクの(11−22)面上に成長される。
【図3】図3(a)および3(b)は、短い中断時間(1分)を有する半極性LEDサンプルS071212DB(左の図3(a)、ピーク放射波長λ=680nm)および長い中断時間(10分)を有する半極性LEDサンプルS071216DA(右の図3(b)、ピーク放射波長λ=540nm)の断面透過型電子顕微鏡(TEM)の画像であり、ここで、挿入図のバーの長さはサンプルの実際の長さスケールにおける160nmに等しい。
【図4】図4は、LEDの量子井戸構造のアクティブ領域における放射波長に対する、中断時間の依存性のグラフであり、ここで、EL強度(a.u.)はLEDからの放射波長(nm)の関数としてプロットされ、10分の中断時間を有して成長されたサンプルS071216DAは0.57mWの出力パワーで556nmのピーク放射波長を有する光を放射し、1分の中断時間を有して成長されたサンプルS071212DBはおよそ〜20マイクロワット(μW)の出力パワーで680nmのピーク波長を有する光を放射し、どちらのサンプルも20mAのDC動作電流で駆動される。
【図5a】図5(a)は、InGaNベースのLED(S071020DE No.2)およびAlInGaPベースの5ミリメートル(mm)ランプについての、出力パワー(mW)対動作電流(mA)のグラフであり、図5(b)は、AlInGaPおよびInGaN LEDの相対出力パワー(正規化強度)の温度依存性(摂氏、℃)のグラフであり、ここで、この比較は本発明によって製造された商用のAlInGaP黄色LEDおよびInGaN黄色LEDで行なわれ、どちらのLEDも0℃の温度で1になるように正規化され、1mAの動作電流でのAlInGaP LEDの黄色放射光(塗り潰しのダイヤモンド)、20mAの動作電流でのAlInGaP LEDの黄色放射光(中空の三角)、1mAの動作電流でのInGaN LEDの黄色放射光(塗り潰しの四角)、および20mAの動作電流でのInGaN LEDの黄色放射光(中空の四角)について、正規化強度対温度がプロットされている。
【図5b】図5(a)は、InGaNベースのLED(S071020DE No.2)およびAlInGaPベースの5ミリメートル(mm)ランプについての、出力パワー(mW)対動作電流(mA)のグラフであり、図5(b)は、AlInGaPおよびInGaN LEDの相対出力パワー(正規化強度)の温度依存性(摂氏、℃)のグラフであり、ここで、この比較は本発明によって製造された商用のAlInGaP黄色LEDおよびInGaN黄色LEDで行なわれ、どちらのLEDも0℃の温度で1になるように正規化され、1mAの動作電流でのAlInGaP LEDの黄色放射光(塗り潰しのダイヤモンド)、20mAの動作電流でのAlInGaP LEDの黄色放射光(中空の三角)、1mAの動作電流でのInGaN LEDの黄色放射光(塗り潰しの四角)、および20mAの動作電流でのInGaN LEDの黄色放射光(中空の四角)について、正規化強度対温度がプロットされている。
【図6】図6は、本発明の発光デバイスの断面の概略図である。
【図7】図7は、本発明のデバイスのバンド構造であり、デバイス層を横切る位置の関数としてバンドエネルギーをプロットしている。
【図8a】図8(a)は、極性、無極性、および半極性面を図示する概略図である。
【図8b】図8(b)は、[参考文献5]に従って、GaNに対してコヒーレントに歪みをもったInGaNについて計算された分極の不連続性を示し、ここで、曲線(1)、(2)、(3)、および(4)はそれぞれInGaN中のインジウム組成0.05、0.10、0.15、および0.20についてである。
【図9】図9(a)はc面GaNおよびInGaNの概略図であり、図9(b)は図9(a)の構造のエネルギーバンドのダイヤグラムであり、図9(c)はa面GaNおよびInGaNの概略図であり、図9(d)は図9(c)の構造のエネルギーバンドのダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の好ましい実施形態の記載では、本明細書の一部分を成し、かつ例示を目的として発明が実施され得る特定の実施形態が示される添付図面への参照がされている。本発明の範囲を逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、構造上の変更がされ得ると解されるべきである。
【0021】
(概要)
本発明は、MOCVDまたはMBE成長技術を使用して、MQWまたはSQWの井戸層(InGa1−xN)にインジウムをより混入することにより、より長い波長の放射(500nm以上)を有するプレーナーLEDの成長を可能にする。これは、高出力かつ高効率(特に560nmから680nmの波長領域おいて)の窒化物LED、および窒化物ベースの白色LEDを製造および商用化するための重要な方法である。
【0022】
現在のAlInGaPベースの黄色およびアンバー色LEDは、アクティブ領域とクラッド層との間の小さな伝導バンドオフセットに起因したキャリアオーバーフローに起因して、高温かつ高い注入電流の動作に向いていない。InGaNベースのLEDの出力パワーの温度依存性はより鈍感であり、それゆえ、より効率的でより安定性を有して動作する。
【0023】
(技術的説明)
(プロセスステップ)
本発明はMOCVDを介した半極性{10−1−1}および/または{11−22}GaN上のプレーナーLED構造の成長の方法を記載する。図1は後続の段落に記載される本発明の好ましい実施形態に従って、{10−1−1}および{11−22}バルクGaN基板上に半極性GaN薄膜を堆積するMOCVDプロセスのステップを図解したフローチャートである。
【0024】
ブロック100は基板の装填を表わす。半極性LED構造の成長のため、バルク{10−1−1}または{11−22}GaN基板がMOCVD反応炉へ装填される。
【0025】
ブロック102は水素および/または窒素および/またはアンモニア下で基板を加熱するステップを表わす。次に反応炉のヒーターがオンされ、水素および/または窒素下で設定温度に近づけられる。一般的に、窒素および/または水素は大気圧下で基板上を流れる。
【0026】
ブロック104は基板上へのn型窒化物半導体膜(例えばn型GaN)の堆積を表わす。ブロック102の加熱ステップの後、温度が1100℃に設定され、n型GaNの成長を開始するため毎分54μmolのトリメチルガリウム(TMGa)がジシランと共に30分間反応炉へ導入される。4slmのアンモニア(NH)もこの段階で導入され、成長の終了までアンモニアのレベルが一定のレベルに保たれる。
【0027】
ブロック106は窒化物アクティブ層の堆積を表わす。ブロック104にて所望のn型GaNの厚さが達成されたら、反応炉の温度設定ポイントが815℃に下げられ、毎分6.9μmolのトリエチルガリウム(TEGa)が反応炉へ導入されて20nmの厚さのGaNバリア層が成長される。所望の厚さのGaNバリアが達成されたら、3nmの厚さの量子井戸を堆積するため毎分10.9μmolのTMInが反応炉へ導入される。InGaN層の堆積後、量子井戸構造を完了させるGaNバリアの成長のため、毎分6.9μmolのTEGaが再び反応炉へ導入される。InGaN井戸成長とGaNバリア成長の間に、意図的な中断が導入され、その期間は所望のインジウム組成に応じて1分から10分の間で変化する。このステップは複数のMQWを形成するために複数回繰り返され得る。以上のように、井戸層とバリア層の間に5秒よりも長い中断時間の期間での無極性あるいは半極性デバイスの成長を含むIII族窒化物光電子デバイスを製造する方法を本発明は開示する。中断時間の期間は1分より長くなり得、その中断時間の期間の間、窒素(N)または水素(H)などのキャリアガスを使用し得る。
【0028】
ブロック108はブロック106のアクティブ層上への電子ブロック層の堆積を表わす。SQW/MQWが堆積されたら、Mgが僅かにドープされた10nmの厚さのAlGaN電子ブロック層を形成するために、毎分3.6μmolのTMGa、毎分0.7μmolのトリメチルアルミニウム(TMAl)、および毎分2.36×10−2μmolのCpMgが反応炉へ導入される。
【0029】
ブロック110はブロック層上への低温窒化物p型半導体(例えばp型GaN、すなわちp−GaN)の堆積を表わす。ブロック108にて所望のAlGaNの厚さが達成されたら、反応炉の設定温度が10分間820℃に保たれる。この期間の最初の3分間は、毎分12.6μmolのTMGaと毎分9.8×10−2μmolのCpMgが反応炉へ導入される。最後の7分間は、CpMgの流れが2倍にされる。それから温度が1分内に875℃に近づけられ、この近づける時間の間にTMGaの流れは同じ一定レベルに保たれ、CpMgは元の毎分9.8×10−2μmolへ低減される。p−GaNの成長は875℃においてもう1分間継続される。その結果物がより長い波長の放射を有する窒化物ダイオードである。
【0030】
ブロック112は水素欠乏雰囲気ガス内でのブロック110のp型膜のアニーリングを表わす。反応炉が冷却したら、ブロック100−110で成長された窒化物ダイオードのエピタキシャルウェハが取り除かれ、MgがドープされたGaNを活性化するために700℃の温度で15分間水素欠乏雰囲気内でアニールされる。
【0031】
ブロック114は結果物を表わし、例えば半極性または無極性の発光デバイスなど、[0001]III族窒化物半導体と比べてより長い波長の放射のために低減された内部電場、増加された厚さ、および/またはより高いインジウム組成を有するIII族窒化物量子井戸を含むより長い波長の放射をする窒化物(Al,In,Ga,B)Nダイオードである。一例に、そのようなデバイスとして無極性または半極性基板上に成長されたIII族窒化物ベースの光電子デバイスがあり、そのようなデバイスはインジウム含有III族窒化物量子井戸層を有するLEDまたはレーザーダイオードを含み、インジウム含有III族窒化物量子井戸層とIII族窒化物バリア層との間の9×10cm−2より小さい境界面から生じる、500nmより長いピーク放射波長と、転位密度を有する。
【0032】
(実験の結果)
中断時間の効果を観察するために、LEDは同一のMOCVD反応炉の中で異なる配向(c面と半極性面)の2つのバルクGaN基板の上に成長される。図2(a)と図2(b)は中断時間とバルクc面上に成長したLEDおよび半極性バルクGaN基板上に成長した半極性プレーナーLEDからの放射波長との関係を示す。左側にある図2(a)はc面および半極性面のどちらも495nm付近のピーク放射波長を放射するLEDを達成することができることを示す。しかしながら、中断時間が長くなると(例えば図2(b)に示すように10分間)、c面のサンプル(c−LED)のピーク放射波長は深刻なインジウム脱着のために短くなっている。その一方で、半極性サンプル((11−22)LED)は長い(例えば10分間)中断条件の下で589nmでの放射を示す。物理的な説明については未だ調査中であるが、量子井戸とバリア層の成長の間の長い中断時間が、ある配向のバルクGaN基板を使って長い波長領域で強度の放射を得るのに効果的であるように見える。よって、黄色のLEDまたはレーザーダイオードのような長い波長の放射を得るためには、井戸の成長とバリア層の成長の間にある中断時間を有するバルク半極性または無極性GaN基板上の成長が必要である。
【0033】
(可能な改変および変形)
図3(a)と図3(b)に示す画像は透過型電子顕微鏡法で撮られたもので、680nmのピーク放射波長の光を放射するプレーナーLEDサンプル(S071212DB)(図3(a))、および540nmのピーク放射波長の光を放射するほぼ無転位のプレーナーLED(S071216DA)(図3(b))についての量子井戸構造の貫通転位を示す。サンプルS071212DBはより短い中断時間(1分間、図4参照)で成長され、InGaN量子井戸306とGaNバリア層308、310の間の境界面302、304から生じる膨大な数の転位300を示している。サンプルS071212DBの転位300の密度はおおよそ9×10cm−2であった。その一方で、サンプルS071216DAの転位密度312(GaNバリア316、318の間のInGaN量子井戸314内)は1×10cm−2未満であった。本発明は、S071212DBで観察された転位300は、後続のGaNバリア308またはp−AlGaNあるいはp−GaNの成長の期間の間に解離するInGaN井戸層306内の過剰なインジウムに起因するか、あるいは例えば308のような後続の層に歪みをもたらす過剰なインジウムに起因することを信じさせる。
【0034】
黄色およびアンバー色のLED(S071216DA)と赤色LED(S071212DB)の出力パワーが測定され、図4に示されている。長い中断時間(例えば図4での10分間)と低い転位密度を有する黄色LED(S071216DA)の出力パワーは、短い中断時間(例えば図4での1分間)と多数の転位を有する赤色LED(S071212DB)より約30倍大きかった。
【0035】
(利点と改善点)
既存の実用化はより長い波長(500nmまたはそれ以上)の光を放射する窒化物ベースのプレーナー高出力LEDを生産できていない。より長い波長で商業利用が可能な唯一のLEDはアンバー色領域のAlInGaPベースのLEDである。しかしながら、AlInGaPベースのLEDの不利な点は、図5(a)と図5(b)に示されるように、アクティブ領域からのキャリアのオーバーフローに起因した温度に敏感な動作である。周囲温度が高くなると、図5(b)に示すように、AlInGaP LEDの出力パワーはアクティブ層からクラッド層への増加したキャリアのオーバーフロー(そこでのキャリアのオーバーフローはアクティブ層とクラッド層の間の小さなエネルギーバンドオフセットのため)に起因して劇的に減少される。また、図5(a)に示すように、AlInGaP LEDの出力パワーは、動作電流が増加すると同じ理由(キャリアのオーバーフローのために)で容易に飽和する。その一方で、InGaNベースのLEDの出力パワーは動作電流が増加してもより少ない出力パワーの温度依存性および少ない出力パワーの飽和(アクティブ層とクラッド層の間の比較的大きなエネルギーバンドオフセットのため)を示す。
【0036】
AlInGaP技術の別の不利な点は、InGaN量子井戸が近紫外からマイクロ波領域までをカバーできるのに対し、(Al,In,Ga)P合金は青色および近紫外の領域のより短い波長のLEDを生産できないことである。それゆえ、窒化物LED用のインジウム組成の制御性を有することは半極性および無極性ベースの窒化物LEDのスペクトルを拡幅し得、より長い波長域で現在のAlInGaPベースのLEDにとってかわり得る。
【0037】
前節で述べたように、井戸層(InGaN)とバリア層(GaN)の成長の間の中断時間は、黄色およびアンバー色領域での高出力の半極性ベースの窒化物LEDを製造するために、より低い転位密度を有する有望な結果を示した。アクティブ層のバンドギャップを設計することにより、異なるバンドギャップを有する2より多い層の組み合わせによって多色LEDを製造することができ、それは多数のチップを一つに結合させるのではない、単一のチップ上の白色LEDを含む。以上のようにして、専ら半極性GaN基板上に成長された窒化物LEDをベースとした、高出力かつ高効率のプレーナー白色およびその他の色のLEDを製造することが可能になる。
【0038】
(LED構造)
図6は基板(例えばIII族窒化物またはその他の適当な基板)604の無極性または半極性面602上、あるいは無極性または半極性基板604上に成長したIII族窒化物ベースの光電子デバイス600を図示しており、そのようなデバイスは、インジウム含有III族窒化物量子井戸層(例えばInGaN)606を有するLEDまたはレーザーダイオードを含み、そのインジウム含有III族窒化物量子井戸層606とIII族窒化物バリア層(例えばGaN)612、614の間の9×10cm−2より小さい境界面608、610から生じる、500nmより長い(または例えば550nmより長い)ピーク放射波長と転位密度を有する。
【0039】
一つの実施形態において、LED600またはレーザーダイオードは、例えばLED600を基板604の半極性面602であるトップ表面618上の半極性方向616に沿ってエピタキシャル成長させることによって、半極性の配向616を有する。井戸層606が半極性である場合、その井戸はc面のインジウム含有III族窒化物量子井戸層の圧電性かつ自発性の分極に比べて、ある量の圧電性かつ自発性の分極を低減させ得る。
【0040】
LEDまたはレーザーダイオード600はミスカットした無極性または半極性面の基板604である基板上に成長され得る。例えば、光電子デバイス600は基板604の表面618上に成長され得、ここで、その表面618は無極性または半極性面622に対して角度620であり、表面618は量子井戸606の半極性または無極性の特性を保持する。この場合、表面618はミスカット表面であり、角度620はミスカット角度である。しかしながら、表面618はミスカット表面に限定されず、他の手段によって得られる角度付きの表面を含み得る。
【0041】
バリア層612は典型的にはn型III族窒化物(例えばn型GaN)の層である。併せて示されているのはp型III族窒化物層(例えばMgがドープされたGaN)624、電子ブロック層626(例えばMgがドープされたAlGaN)、p型コンタクト層(例えばITO)628、n型コンタクト(例えばTi/Al/Ni/Au)630、およびメタライゼーション632、634(例えばAu)である。n型の層612のトップまたは成長表面636a、または量子井戸606のトップ表面636b、および/または境界面608、610は、量子井戸606が半極性または無極性の特性を保持する限り、半極性面であるか半極性面に対して角度が付けられ得る。また追加的な量子井戸(例えばInGaN)638およびバリア層640(例えばGaN)が示されており、これによってMQWを形成している。
【0042】
図6はまた、インジウム含有量子井戸層606の圧電性かつ自発性の分極ベクトル方向642は、インジウム含有井戸層606とバリア層612、614との境界面608、610の面内に横たわるか、境界面608、610に対して90°未満の角度644で傾き得ることを示す。このように、インジウム含有井戸量子層606の圧電性かつ自発性の分極ベクトル方向642は、c軸に沿った圧電性かつ自発性の分極ベクトル642によって生成されるQCSEと比べると低減されるようなQCSEを引き起こす方向に横たわり得、それによって光が500nmより長いピーク波長を有することを可能にする。
【0043】
LEDは550nmより長いピーク放射波長を有する光を放射(井戸層606から)し得る。無極性または半極性面602、または配向618、または分極ベクトル642の配向は、インジウム含有量子井戸層606が500nmより長い、あるいは550nmより長いピーク放射波長を有する光を放射することができるような、インジウム含有井戸層606のインジウム組成、インジウム含有井戸層606の厚み646、および/またはインジウム含有井戸層606の中のQCSE(あるいは分極場)を可能にする。
【0044】
図7は本発明によるLEDデバイス700のバンド構造であり、伝導エネルギーバンドE、価電子エネルギーバンドE、半極性n型GaN(n−GaN)層704と半極性p型GaN(p−GaN)層706との間のMQW構造702を示しており、ここで、MQW構造702は一つ以上の量子井戸あるいはアクティブ層708、710、712(例えばInGaN)、およびバリア層あるいはクラッド層714、716、704、706(例えばGaN)を含む。このようにデバイス700は、第1のクラッド層エネルギーバンドを有する第1のクラッド層材料714、第2のクラッド層エネルギーバンドを有する第2のクラッド層材料716(典型的には第1のクラッド材料714と第2のクラッド材料716は同じ)、500nmより長い波長を有する光718を放射しアクティブ層エネルギーバンドを有するアクティブ層材料708、710、712を含み、ここで、アクティブ層材料708、710、712は第1のクラッド層材料714と第2のクラッド層材料716との間にあり、そして第1のクラッド材料714、第2のクラッド材料716、およびアクティブ層材料710は、AlInGaP発光デバイスからの光出力パワーほどではないが、動作電流が増加するにつれて光の出力パワーが飽和し(図5(a))、AlInGaP発光デバイスからの光出力パワーほどではないが、発光デバイスの温度が上昇するにつれて光出力パワーが減少するような材料である(図5(b))。
【0045】
さらには、第1のクラッド材料714、第2のクラッド材料716、およびアクティブ層材料710は、アクティブ層エネルギーバンドと第1のクラッド層エネルギーバンドとの間の第1のエネルギーバンドオフセット720、およびアクティブ層エネルギーバンドと第2のクラッド層エネルギーバンドとの間の第2のエネルギーバンドオフセット722が、AlInGaP発光デバイスにおけるAlInGaPアクティブ層エネルギーバンドとAlInGaPクラッド層エネルギーバンドとの間のAlInGaPエネルギーバンドオフセットよりも小さくなり得るようなものであり得る。典型的には第1のエネルギーバンドオフセット720と第2のエネルギーバンドオフセット722は同じである。
【0046】
図6と図7はまた、[0001]III族窒化物半導体に比べて、低減された内部電場
、増加された厚み646、およびより長い波長の放射のためのより高いインジウム組成を有するIII族窒化物量子井戸層606、710を含む発光デバイス600、700の実施形態を示す。デバイス600はさらに、電子とホールがある方向、例えばバリア層612、614、714、716の間の648、724に沿って、量子井戸層606内に量子力学的に閉じ込められるような、量子井戸層606より大きなバンドギャップを有するIII族窒化物バリア層612、614の間のIII族窒化物量子井戸層606と、III族原子上の正イオン電荷と窒素原子上の負電荷とによって引き起こされる量子井戸層の圧電性かつ自発性の分極ベクトル642、726が、バリア層612、614間の方向648、724に対して零でない角度728で横たわり、それによってc軸に沿った分極ベクトルによって生成されるQCSEと比べてQCSEを低減させるような、量子井戸層606内のIII族原子と窒素原子の相対的な位置または配向と、を含み得る。
【0047】
図8(a)はウルツ鉱型III族窒化物結晶内の極性面、無極性面、および半極性面を示し、図8(b)は異なるインジウム組成x=0.05、0.10、0.15、および0.20について、InGaNが成長されるGaN面の配向の関数として、バリア層612、614間の方向648に沿ったInGa1−xN(0≦x≦1)内の計算された分極ΔPを示すグラフである。
【0048】
図9(a)は量子井戸層(InGaN900)およびバリア層(GaN902、904)内のIII族原子と窒素原子の相対的な位置または配向を示し、ここで、InGaN900およびGaN902、904はc面すなわちGa面の配向(図9(a)の[0001]方向で示される)に成長される。併せて示されているのは、III族原子上の正イオン電荷906と窒素原子上の負電荷908とによって引き起こされ、GaN902、904とInGaN900との間の境界面910、912にそれぞれ正シート電荷+σ、負シート電荷−σ、境界面914、916にそれぞれ正シート電荷+σ、負シート電荷−σを導く、自発性の分極PSPの方向と、圧電性の分極PPEの方向である。
【0049】
図9(b)は図9(a)のGaN/InGaN/GaN構造を横切る価電子バンドEおよび伝導バンドEを示し、PSPおよびPPEから由来するInGaN内の電子とホールの波動関数の位置を示している。
【0050】
図9(c)は、量子井戸層(InGaN914)およびバリア層(GaN916、918)内のIII族原子と窒素原子の相対的な位置または配向を示し、ここで、InGaN914およびGaN916、918はa面(11−20方向によって示される無極性面)上に成長される。III族原子上の正イオン電荷906および窒素原子上の負電荷908が示されている。
【0051】
図9(d)は図9(c)のGaN/InGaN/GaN構造を横切る価電子バンドEおよび伝導バンドEを示し、無極性に起因した、InGaN914内の電子とホールの波動関数の非摂動位置を示している。
【0052】
(参考文献)
以下の参考文献は本明細書において参照により援用される。
【0053】
【表1】

(結び)
ここでは本発明の好ましい実施形態の記載を締め括る。前述の一つ以上の発明の実施形態の記載は図示および記載の目的のために提示された。それは網羅的であったり正確な開示形態で発明を限定することを意図したものではない。先述の教示に照らして様々な改変および変形が可能である。発明の範囲はこの詳細な説明によるのではなく、寧ろ添付の特許請求の範囲によって限定されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無極性または半極性基板上に成長されるIII族窒化物ベースの光電子デバイスであって、該デバイスは、発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD)を備え、
該LEDまたは該LDは、
インジウム含有III族窒化物量子井戸層と、
該インジウム含有III族窒化物量子井戸層とIII族窒化物バリア層との間の9×10cm−2より小さい境界面から生じる、500nmより長いピーク放射波長および転位密度と
を有する、デバイス。
【請求項2】
前記LEDまたは前記LDは、ミスカットした無極性面または半極性面の基板である前記基板上に成長される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記LEDまたは前記LDは、前記基板の表面上に成長され、該表面は、前記量子井戸層の半極性または無極性の特性を保持する無極性面または半極性面に対してある角度を成す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記表面はミスカット表面であり、前記角度はミスカット角度である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記LEDまたは前記LDは、前記基板の無極性面または半極性面上に成長され、該無極性面または半極性面は、前記量子井戸層が500nmよりも長いピーク放射波長を有する光を放射することができるように、該量子井戸層のインジウム組成と厚みを可能にする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記LEDまたは前記LDは半極性の配向を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記量子井戸層は、c面のインジウム含有量子井戸層の圧電性かつ自発性の分極に比べて、圧電性かつ自発性の分極の量が低減された半極性である、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記量子井戸層の圧電性かつ自発性の分極ベクトルは、前記境界面の面内に横たわるか、あるいは該境界面に対して90°よりも小さい角度で傾いている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記量子井戸層の圧電性かつ自発性の分極ベクトルは、c軸に沿った圧電性かつ自発性の分極ベクトルによって生成される量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)と比べて低減されたQCSEを引き起こす方向に横たわり、それにより光が500nmより長い波長を有することを可能にする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ピーク放射波長は550nmよりも長い、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記量子井戸層はInGaN量子井戸層である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
III族窒化物光電子デバイスを製造する方法であって、該方法は、
井戸層とバリア層の間において5秒よりも長い中断時間の期間を有する無極性または半極性デバイスを成長させることを包含する、方法。
【請求項13】
前記中断時間の期間は1分よりも長い、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記中断時間の期間の間のキャリアガスはNである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記中断時間の期間の間のキャリアガスは水素(H)である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
発光デバイスであって、該デバイスは、
第1のクラッド層材料と、
第2のクラッド層材料と、
該第1のクラッド層材料と該第2のクラッド層材料との間の、500nmより長い波長を有する光を放射するためのアクティブ層材料であって、該第1のクラッド材料、該第2のクラッド層材料、および該アクティブ層材料は、AlInGaP発光デバイスからの光出力パワーほどではないが、該発光デバイスの温度が上昇するにつれ、光出力パワーが減少する、アクティブ層材料と
を備えている、デバイス。
【請求項17】
半極性または無極性の発光デバイスであって、該デバイスは、III族窒化物量子井戸層を備え、
該井戸層は、
[0001]III族窒化物半導体と比較して、
低減された内部電場と、
より長い波長の放射のためのより高いインジウム組成と
を有する、デバイス。

【図1】
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【図2b】
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【図3(a)−3(b)】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図2a】
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【図4】
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【図8b】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−517099(P2011−517099A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503245(P2011−503245)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/039671
【国際公開番号】WO2009/124317
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】