説明

プログラム可能な透過アレイを使用するマイクロ波撮像システム及び方法

【課題】可動部品を必要としない、人間および他の物品のセキュリティ検査に使用可能なマイクロ波撮像システムを提供する。
【解決手段】
マイクロ波撮像システム(10)は、マイクロ波源(60a)により提供されるマイクロ波放射を使用して、ターゲット(420)を撮像する。該システムは、マイクロ波源からターゲットの位置にマイクロ波放射を向かわせるよう、対応する透過係数でプログラム可能であるアンテナ要素(200)のアレイを含む。アンテナ要素は、さらに、ターゲットの位置から反射した反射マイクロ波放射を受信し、該反射マイクロ波放射をマイクロ波レシーバ(60b)に向かわせるよう、対応する追加の透過係数でプログラム可能である。プロセッサは、反射マイクロ波放射の強度を測定するよう動作可能であり、ターゲットの画像内のピクセル値を求める。複数のビームをターゲットに向けて、画像を構成する際のピクセル値を取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
テロの脅威が増大するに伴って、空港、コンサート、スポーツ行事、法廷、連邦政府の建物、学校、並びに、テロリストの攻撃のリスクに潜在的に晒されているその他の公的及び私的な施設などのセキュリティチェックポイントにおいて、武器やその他のタイプの禁制品に関する人間やその他の物品の検査が非常に重要になっている。現在、セキュリティチェックポイントに配備されている従来のセキュリティ検査システムには、セキュリティ要員、金属検知器、及びX線システムによって実行される視覚的及び/又は触覚的な検査などの物理的な検査が含まれる。しかしながら、セキュリティ要員による物理的な検査は、冗長であって、信頼性が低く、出過ぎた行為となりうる。又、金属検知器は、誤警報を発しやすく、プラスチックや液体性の爆発物、プラスチックやセラミック製のピストル又はナイフ、並びに薬物などの非金属物体を検出する能力を有していない。又、X線システムの場合にも、空港の要員など、特にX線の放射に繰り返し晒される人々に対して健康上のリスクをもたらすと共に、セラミックナイフなどの特定の材料/形状を検出することができない。
【0002】
改善されたセキュリティ検査システムに対するニーズに応えるべく、既存のシステムに対する代替として、様々なマイクロ波撮像システムが既に提案されている。マイクロ波放射とは、一般に、高周波と赤外波の間の波長を有する電磁放射として定義される。X線放射と比べた場合のマイクロ波放射の利点は、マイクロ波放射の場合には、非電離放射であり、従って、パワーレベルが適度であれば、既知の健康上のリスクを人間にもたらさないという点にある。又、マイクロ波放射のスペクトル帯域においては、衣服、紙、プラスチック、及び皮革などの大部分の誘電材料が、ほぼ透過である。従って、マイクロ撮像システムは、衣服を透過し、衣服によって隠されている品を撮像する能力を具備している。
【0003】
現在、利用可能なマイクロ波撮像法がいくつか存在する。例えば、1つの手法においては、マイクロ波検出器のアレイを使用することにより、ターゲット(目標物)に対する能動的なマイクロ波照射に応答して、該ターゲットから発せられる受動的なマイクロ波エネルギー又は該ターゲットから反射される反射マイクロ波のエネルギーのいずれかを捕捉する。そして、人間又はその他の物品の位置に対して該検出器のアレイをスキャンさせる(移動させる)と共に/又は、送信又は検出されているマイクロ波エネルギーの周波数(又は、波長)を調節することにより、該人間又はその他の物品の二次元又は三次元画像を構成する。例えば、下記の非特許文献1は、スキャニングバー(scanning bar)を使用して、検出器の線形アレイを機械的に移動させることにより、物品又は人間をスキャンする三次元のホログラフィックマイクロ波撮像手法について記述している。この場合には、結果的に得られた計測データを使用して、物品のホログラフィック画像を再構成する。しかしながら、このようなスキャニングシステムは、通常、機械的に動く部品及び/又は集約的な事後処理の画像の再構成を必要とし、これらはいずれも、マイクロ波撮像システムのコストおよび複雑さを増大させる。
【0004】
別の手法においては、レンズを使用して、マイクロ波検出器のアレイ上にマイクロ波照射ビームを合焦する。このタイプの手法については、例えば、下記非特許文献2に記述されている。しかしながら、レンズを使用してマイクロ波エネルギーを合焦させるマイクロ波撮像システムの場合、通常、視野が限定されると共に、アパーチャサイズが小さい。又、このレンズシステムのコストは、多くのアプリケーションにおいて、かなり大きくなる。
【非特許文献1】David M. Sheen他著、「Three−Dimensional Millimeter−Wave Imaging for Concealed Weapon Detection」(IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques、第49巻、第9号、2001年9月、1581〜1592頁)
【非特許文献2】P. F. Goldsmith他著、「Focal Plane Imaging Systems for Millimeter Wavelengths」(IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques、第41巻、第10号、1993年10月、1664〜1675頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、可動部品を必要としない、人間およびその他の物品のセキュリティ検査に使用可能な、費用対効果が優れた簡単なマイクロ波撮像システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例によれば、マイクロ波放射を使用してターゲットを撮像するマイクロ波撮像システムが提供される。このシステムは、ターゲットを照射するマイクロ波照射を提供するマイクロ波源と、ターゲットから反射した反射マイクロ波照射を受信するマイクロ波レシーバと、アンテナ要素のアレイと、を備える。アンテナ要素は、マイクロ波照射をマイクロ波源からターゲット上の位置に向かわせるよう、対応する透過係数によってプログラムされることができる。アンテナ要素は、さらに、ターゲット上の位置から反射した反射マイクロ波照射を受信し、この反射マイクロ波照射をマイクロ波レシーバに向かわせるよう、対応する追加の透過係数によってプログラムされることができる。プロセッサは、該反射マイクロ波照射の強度を測定して、ターゲットの画像内のピクセルの値を求めるよう、動作可能である。複数のビームをターゲットに向けることにより、画像を構成する際にプロセッサが使用する対応したピクセル値を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明を説明する。これらの図面には、本発明の重要な実施例が示されており、この内容は、本明細書に包含される。
【0008】
本明細書において使用する「マイクロ波放射(Microwave radiation)」及び「マイクロ波照射(Microwave Illumination)」という用語は、それぞれ、約1GHz〜約1,000GHzの周波数に対応する0.3mm〜30cmの波長を有する電磁放射の帯域を示す。従って、この「マイクロ波放射」及び「マイクロ波照射」という用語には、それぞれ、従来のマイクロ波放射に加えて、ミリメートル波放射と一般に呼ばれているものも含まれる。
【0009】
図1は、本発明の実施例による、単純化された典型的なマイクロ波セキュリティ検査システム10の概略図である。マイクロ波セキュリティ検査システム10は、被検者30が歩いて通過可能なゲート20を備える。ゲート20は、可動部品を含んでおらず、従って、被検者30は、単一の方向40に通常のペースで歩いてゲート20を通過することができる。被検者30が歩いてゲート20を通過できるようにすることにより、システム10のスループットが最大にされると共に、被検者30が感じる不便さを最小にすることができる。尚、他の実施例においては、ゲート20は、手荷物、財布、書類カバン、ラップトップコンピュータ、バッグ、又は他のタイプの物品などの物品が通過することのできる領域である。物品は、ゲート20内に配置することもできるし、または、コンベアベルトに載せてゲート20を通過させることもできる。
【0010】
マイクロ波セキュリティ検査システム10は、さらに、1つ又は複数のスキャニングパネル50と、1つ又は複数のマイクロ波アンテナ60を備える。マイクロ波アンテナ60のそれぞれは、マイクロ波放射の送信及び/又はマイクロ波放射の受信の能力を有している。一実施例においては、スキャニングパネル50の1つ又は複数のものは、反射アンテナ要素から構成されたプログラム可能な受動反射器アレイを含む。反射アンテナ要素のそれぞれは、被検者30に向かって(及び/又は、マイクロ波アンテナ60のちの1つに向かって)マイクロ波照射を向けるよう、対応するそれぞれの位相遅延でプログラム可能である。又、この位相遅延は、2値でもよいし、連続的なものであってもよい。
【0011】
例えば、一実施例においては、マイクロ波アンテナ60のうちの1つは、所定の空間的位置に配置された受信マイクロ波アンテナ60である。個々の反射アンテナ要素のそれぞれを対応する位相遅延によってプログラムすることにより、スキャニングパネル50のうちの1つによって被検者30上のターゲット位置から受信されたマイクロ波照射は、受信マイクロ波アンテナ60に向かって反射される。送信マイクロ波アンテナ60を、別個のアンテナ又は受信マイクロ波アンテナの一部として、受信マイクロ波アンテナ60と同一の空間位置に配置し、スキャニングパネル50を通じてターゲット位置を照射することができ、或いは、これを、受信マイクロ波アンテナ60とは異なる空間的位置に配置し、直接的に、又はスキャニングパネル50のうちの1つを通じて(例:受信マイクロ波アンテナ60と同一のスキャニングパネル50又は異なるスキャニングパネル50)、被検者30上のターゲット位置を照射することもできる。
【0012】
別の実施例においては、スキャニングパネル50のうちの1つ又は複数は、マイクロ波照射を生成して送信し、反射したマイクロ波照射を受信して捕捉する能力を有する能動的アンテナ要素から構成された能動的トランスミッタ/レシーバアレイを含む。例えば、この能動的アレイは、透過アレイの形態であってよい。この実施例においては、スキャニングパネル50がマイクロ波放射源として動作するため、マイクロ波アンテナ60は使用されない。そして、被検者30上のターゲット位置にマイクロ波照射のビームを向けるべく、該能動的トランスミッタ/レシーバアレイ内の能動的アンテナ要素のそれぞれを、対応する位相シフトによって個別にプログラムすることができる。
【0013】
マイクロ波撮像システム10は、さらに、プロセッサ100、コンピュータ可読媒体110、及びディスプレイ120を含む。プロセッサ100は、スキャニングパネル50及びマイクロ波アンテナ60を制御すると共に、被検者30から反射した受信マイクロ波照射を処理して、被検者30のマイクロ波画像を構成するハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせを含む。例えば、プロセッサ100は、コンピュータプログラム命令を実行するよう構成された、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラム可能ロジックデバイス、デジタル信号プロセッサ、又は他のタイプの処理デバイスを含むことができ、さらに、プロセッサ100により使用される命令及びその他のデータを保存する1つ又は複数のメモリ(例:キャッシュメモリ)を含むことができる。但し、プロセッサ100のその他の実施例も使用することができることを理解されたい。メモリ110は、ハードドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、コンパクトディスク、フロッピーディスク、ZIP(商標)ドライブ、テープドライブ、データベース、或いは、その他のタイプの記憶デバイス又は記憶媒体を含む(但し、これらに限定されない)任意のタイプのデータ記憶装置である。
【0014】
プロセッサ100は、スキャニングパネル50内の個々のアンテナ要素のそれぞれの位相遅延又は位相シフトをプログラムすることにより、マイクロ波放射によって被検者30上の複数のターゲット位置を照射すると共に/又は、被検者30上の複数のターゲット位置から反射したマイクロ波照射を受信するよう動作する。このように、プロセッサ100は、スキャニングパネル50と協働して、被検者30をスキャンするよう動作する。
【0015】
プロセッサ100は、さらに、受信マイクロ波アンテナ60によって被検者30上のそれぞれのターゲット位置から受信された反射マイクロ波照射の強度を使用し、被検者30のマイクロ波画像を構成することができる。それぞれの受信マイクロ波アンテナ60は、スキャニングパネル50のうちの1つのそれぞれのアンテナ要素から反射した反射マイクロ波照射を組み合わせることにより、被検者30上のターゲット位置における反射マイクロ波照射の有効な強度値を生成することができる。この強度値は、プロセッサ110に伝達され、該プロセッサが、この強度値を、被検者30上のターゲット位置に対応するピクセルの値として使用する。
【0016】
プロセッサ100は、受信マイクロ波アンテナ60のそれぞれから複数の強度値を受信し、これらの強度値を組み合わせて被検者30のマイクロ波画像を生成する。例えば、プロセッサ100は、受信した強度値を、被検者上のターゲット位置と関連付けると共に、この受信した強度値を、マイクロ波画像内のピクセルの値に入れる。このマイクロ波画像内の入力されるピクセルの場所は、被検者30上のターゲット位置に対応している。動作の際には、マイクロ波セキュリティ検査システム10は、被検者30上の数百万個のターゲット位置を毎秒スキャンすることができる周波数で動作することができる。
【0017】
結果として得られた被検者30のマイクロ波画像を、プロセッサ100からディスプレイ120に伝達し、被検者30のマイクロ波画像を表示することができる。一実施例においては、ディスプレイ120は、被検者30の三次元マイクロ波画像又は被検者30の1つ又は複数の二次元マイクロ波画像を表示する二次元ディスプレイである。別の実施例においては、ディスプレイ120は、被検者30の三次元マイクロ波画像を表示することができる三次元ディスプレイである。
【0018】
図2は、本発明の実施例による、図1の検査システムにおいて使用する、単純化された典型的なスキャニングパネル50の概略図である。図2のスキャニングパネル50は、米国特許出願第10/997,422号(代理人ドケット番号第10040151号)明細書に記述されているように、そのインピーダンスの状態に応じて異なる位相を有する電磁放射を反射する別個の反射アンテナ要素200を含む反射器アンテナアレイである。これらの反射アンテナ要素200は、理想的には、そのインピーダンスが低い場合に比べて、そのインピーダンスが高い場合に、180度の位相シフトを有する(2値位相シフトされた)電磁放射を反射する。これらの反射アンテナ要素200は、個別に制御可能であり、反射器アンテナアレイは、通常、ドライバ電子回路(図2には図示されてはいない)によって支持される。反射器アンテナアレイは、プリント回路基板などの基板上(及び/又は、基板内)に形成されている。一実施例においては、反射器アンテナアレイは、ほぼ1平方メートルの表面面積を有し、行210及び列220に配列された10,000個〜100,000個の個別に制御可能な反射アンテナ要素200によって覆われている。
【0019】
それぞれの反射アンテナ要素200は、アンテナと、非理想的なスイッチングデバイスとを含む。このアンテナは、反射アンテナ要素200のインピーダンスレベルに従って程度の差はあるが、電磁放射ビームを吸収又は反射するよう機能する。このような反射器アンテナアレイに内蔵可能なアンテナタイプの例には、パッチ、ダイポール、モノポール、ループ、及び誘電体共振器タイプのアンテナが含まれる。反射器アンテナアレイのアプリケーションにおいては、これらのアンテナは、多くの場合、反射器アンテナアレイ基板の表面上の単一平面内に形成されている。これらのアンテナは、アンテナ設計パラメータの関数であるインピーダンス特性を有している。このようなアンテナの設計パラメータには、その構造の誘電材料、誘電材料の厚さ、アンテナの形状、アンテナの長さ及び幅、供給(feed)場所、及びアンテナ金属レイヤの厚さなどの物理的な属性が含まれる(但し、これらに限定されない)。
【0020】
非理想的なスイッチング装置は、その抵抗の状態を変化させることにより、反射アンテナ要素200のインピーダンスの状態を変更する。低抵抗状態(例:閉じた状態すなわち「短絡」)は、低インピーダンス状態となる。逆に、高抵抗状態(例:開いた状態)は、高インピーダンスとなる。理想的な性能特性を有するスイッチング装置(本明細書においては、これを「理想的」スイッチング装置と呼ぶ)は、その抵抗がその最低状態にある際には、事実上ゼロのインピーダンス(Z=0)を、そして、その抵抗がその最大状態にある際には、事実上無限大のインピーダンス(Z=∞)を生成する。本明細書に記述されているように、スイッチング装置は、そのインピーダンスがその最低状態(例:Zon=0)にある場合には「オン」であり、そのインピーダンスがその最大状態(例:Zoff=∞)にある場合には「オフ」である。理想的スイッチング装置のオン及びオフのインピーダンス状態は、事実上、Zon=0及びZoff=∞であるため、理想的なスイッチング装置は、オンとオフ状態間において電磁放射の吸収を伴うことなしに、最大位相シフトを提供することができる。即ち、理想的スイッチング装置は、0及び180度の位相状態間におけるスイッチングを提供することができる。理想的スイッチング装置の場合には、有限な非ゼロのインピーダンスを示すアンテナにより、最大の位相−振幅性能を実現することができる。
【0021】
一方、理想的スイッチング装置とは対照的に、「非理想的」スイッチング装置は、Zon=0とZoff=∞のオン及びオフのインピーダンス状態を示さないスイッチング装置である。即ち、非理想的スイッチング装置のオン及びオフのインピーダンス状態は、例えば、Zon=0とZoff=4の間のどこかに位置することになる。非理想的スイッチング装置は、或る周波数レンジ(例:<10GHz)内においては、理想的なインピーダンス特性を、そして、他の周波数レンジ(例:>20GHz)においては、非常に非理想的なインピーダンス特性を示すことになる。
【0022】
非理想的スイッチング装置のオン及びオフのインピーダンス状態は、Zon=0とZoff=4の間のどこかに位置しているため、非理想的スイッチング装置によれば、必ずしも、対応するアンテナのインピーダンスとは無関係に、最大位相状態性能を得ることはできない。ここで、最大位相状態性能は、0及び180度の位相状態間におけるスイッチングを必要とするものである。本発明によれば、非理想的スイッチング装置を利用した反射器アンテナアレイのアンテナは、最適な位相性能を提供するよう特別に設計されており、この反射アンテナ要素の最適な位相状態性能とは、反射要素が0及び180度の位相−振幅状態間におけるスイッチングに最も近接している地点のことである。一実施例においては、このような最適な位相状態性能を実現するべく、非理想的スイッチング装置のインピーダンスの関数としてアンテナが構成される。例えば、アンテナのインピーダンスが、非理想的スイッチング装置のインピーダンス特性の関数となるように、これらのアンテナが設計される。
【0023】
さらに、これらのアンテナは、オン状態における非理想的スイッチング装置のインピーダンスZonと、オフ状態における非理想的スイッチング装置のインピーダンスZoffの関数として構成される。特定の実施例においては、オン及びオフのインピーダンス状態Zon及びZoffにある際に、それぞれのアンテナのインピーダンスが非理想的スイッチング装置のインピーダンスの平方根と共役の関係を有するようにアンテナを構成した場合に、反射要素の位相状態性能が最適化される。具体的には、それぞれのアンテナのインピーダンスは、対応する非理想的スイッチング装置のオン及びオフのインピーダンス状態Zon及びZoffの相乗平均(geometric mean)の複素共役である。この関係は、次のように表される。
【数1】

【0024】
この関係は、電源インピーダンス(source impedance)と負荷インピーダンスの間における複素反射係数に関する周知の式を使用することによって導出される。即ち、ソース(電源)をアンテナとして選択すると共に、負荷を非理想的スイッチング装置として選択し、オン状態の反射係数を、オフ状態の反射係数の反対に等しくなるよう設定することにより、式(1)が得られる。
【0025】
最適な位相−振幅性能を示すアンテナを設計するには、反射アンテナ要素200内において使用される特定の非理想的スイッチング装置のオン及びオフのインピーダンスZon及びZoffを求めることが必要である。次いで、そのアンテナの設計パラメータを操作することにより、前述の式(1)で表される関係と整合したインピーダンスを有するアンテナを生成する。尚、この式(1)を満足するアンテナは、Zon及びZoffが別個の値として求められる限り、設計可能である。
【0026】
この対象とする周波数帯域にわたって非理想的なインピーダンス特性を示すスイッチング装置のタイプには、表面実装FET(Field Effect Transistor)および表面実装ダイオードなどの低コストの表面実装デバイスが含まれる。表面実装FETは、この対象とする周波数帯域にわたって非理想的なインピーダンス特性を示すが、これらは、相対的に廉価であり、反射器アンテナアレイのアプリケーションに使用するよう別個にパッケージ化されることができる。
【0027】
一実施例においては、反射器アンテナアレイ内のアンテナは、平面パッチアンテナ(planar patch antenna)である。図3は、本発明の実施例による、非理想的スイッチング装置として表面実装FET322を有する平面パッチアンテナ320aを利用したアンテナ要素200の断面図である。反射アンテナ要素200は、プリント回路ボード基板314の上および内に形成されており、表面実装FET322、パッチアンテナ320a、ドレイン・バイア332、接地面336、及びソース・バイア338を含む。表面実装FET322は、平面パッチアンテナ320aとは反対側のプリント回路ボード基板314の面上に取付けられており、接地面336は、該平面パッチアンテナ320aと表面実装FET322の間に配置されている。ドレイン・バイア332は、表面実装FET322のドレイン328を、平面パッチアンテナ320aに接続し、ソース・バイア338は、表面実装FET322のソース326を、接地面336に接続している。一実施例においては、表面実装FET322は、ロボットによる「ピックアンドプレース(pick and place)」プロセスを使用して、プリント回路ボード基板314上に配置された後に、プリント回路ボード314に流動はんだ付け(wave solder)される。
【0028】
最終製品においては、この反射器アンテナアレイは、ドライバ電子回路を含むコントローラボード340に接続されることができる。図3には、コントローラボードの例340も示されており、これには、接地面344、駆動信号バイア346、及びドライバ電子回路342が含まれている。又、コントローラボード340は、反射器アンテナアレイのコネクタ350に対応したコネクタ348をも含む。この2つのボードのコネクタ348は、例えば、流動はんだ付けを使用して相互に接続可能である。他の実施例においては、平面パッチアンテナ320aと同一側のプリント回路ボード基板314の面上に、FET322を表面実装することができることを理解されたい。又、反射アンテナ要素200が構築されている同一のプリント回路ボードに、ドライバ電子回路342を直接はんだ付けすることもできる。
【0029】
非理想的スイッチング装置としてFETを利用した反射器アンテナアレイにおいては、実現可能なビームスキャニング速度は、信号対雑音比、クロストーク、及びスイッチング時間を含むいくつかの要因によって左右される。FETの場合には、スイッチング時間は、ゲート容量、ドレイン/ソース容量、及びチャネル抵抗(即ち、ドレイン/ソース抵抗)によって左右される。チャネル抵抗は、実際には、空間及び時間の両方に依存している。インピーダンス状態間のスイッチング時間を最小にするには、FETのドレインを常にDC短絡状態にしておく。ドレインをフローティング状態にしておくと、パッチアンテナの非常に大きな平行プレート面積により、オフ状態のチャネル抵抗値とドレイン/ソース容量が大きくなるため、常にドレインをDC短絡状態としておくのである。これは、アンテナはDC短絡状態にあるが、ソースにおいて、アンテナから「高周波短絡」のみが見えるようにすることを意味している。従って、この付加的なアンテナ/ドレイン短絡は、アンテナの混乱を最小限にするよう、最適に配置されなければならない。
【0030】
他の実施例においては、反射器アンテナアレイは、FETを可変コンデンサ(例:BST(Barium Strontium Titanate)コンデンサ)によって置換することにより、連続的に位相シフトされたアンテナ要素200を含むことができる。この可変コンデンサを有するパッチによれば、FETで負荷されたパッチによって生成される2値位相シフトの代わりに、連続的な位相シフトをそれぞれのアンテナ要素200について実現することができる。このような連続位相シフトアレイを調節して所望の位相シフトを提供することにより、ビームスキャニングパターンにおいてマイクロ波ビームを任意の方向に向けることができる。
【0031】
更なる実施例においては、スキャニングパネルは、能動的アンテナ要素を含む能動的トランスミッタ/レシーバアレイである。図12には、トランスミッタ/レシーバアレイ内において使用する能動的アンテナ要素1200の例が示されており、これについては、同時係属中の本出願人に譲渡された米国特許出願第10/997,583号(代理人ドケット番号第10040580号)明細書に記述されている。この能動的アンテナ要素1200は、対応するスイッチ1215に接続されたアンテナ1210を含む広帯域2値位相アンテナ要素である。スイッチ1215は、例えば、SPDT(Single−Pole Double−Throw)スイッチ又はDPDT(Double−Pole Double−Throw)スイッチであってよい。このスイッチ1215の動作状態により、対応するアンテナ要素1200の位相を制御する。例えば、スイッチ1215の第1の動作状態においては、アンテナ要素1200は、第1の2値状態(例:0度)となり、スイッチ1215の第2の動作状態においては、アンテナ要素1200は、第2の2値状態(例:180度)となる。スイッチ1215の動作状態は、スイッチ1215の端子の接続を規定している。例えば、第1の動作状態においては、端子1218は、アンテナ1210とスイッチ1215間のフィード線1216を接続するよう閉じた(短絡)位置にあり、端子1219は、開いた位置にある。それぞれのスイッチ1215の動作状態は、それぞれのアンテナ要素1200の位相を個別に設定するよう、制御回路(図示されてはない)によって独立に制御される。
【0032】
本明細書において使用する「対称アンテナ(symmetric antenna)」1210という用語は、2つの反対の対称的な電界分布(又は、電流)のいずれかを生成するよう、2つのフィード点1211又は1213のいずれかにおいて供給される、または引き出されることのできるアンテナを示す。図12に示されるように、ミラー軸1250を中心として対称的な形状の対称アンテナ1210を使用することにより、2つの反対の対称的な電界分布が生成される。ミラー軸1250がアンテナ1210を通過することにより、2つの対称的なサイド1252及び1254が生成される。フィード点1211及び1213は、アンテナ1210のミラー軸1250のいずれかのサイド1252及び1254上に配置される。一実施例においては、フィード点1211及び1213は、ミラー軸1250を中心とした実質的に対称的なアンテナ1210上に配置される。例えば、ミラー軸1250は、アンテナ1210の1つ次元(寸法)1260(例:長さ、幅、高さなど)に平行に延長可能であり、フィード点1211及び1213は、寸法1260の中点1270の近くに配置されることができる。図12においては、フィード点1211及び1213は、ミラー軸1250のそれぞれのサイド1252及び1254上のアンテナ1210の中点1270の近くに配置された状態で示されている。
【0033】
対称アンテナ1210は、A及びBというラベルが付けられた2つの反対の対称的な電界分布を生成する能力を有している。電界分布Aの大きさ(例:パワー)は、電界分布Bの大きさと実質的に同一であるが、電界分布Aの位相と電界分布Bの位相は、180度異なっている。このように、電界分布Aは、電気サイクルにおいて±180°に位置する電界分布Bに似ている。
【0034】
対称アンテナ1210は、フィード線1216及び1217を介して、対称スイッチ1215に接続されている。フィード点1211は、フィード線1216を介して対称スイッチ1215の端子1218に接続されており、フィード点1213は、フィード線1217を介して対称スイッチ1215の端子1219に接続されている。尚、本明細書において使用するこの「対称スイッチ」という用語は、スイッチの2つの動作状態が端子1218及び1219を中心として対称であるSPDT又はDPDTスイッチを示している。
【0035】
例えば、SPDTスイッチの第1の動作状態にある場合には、チャネルαのインピーダンスは10Ωであって、チャネルβのインピーダンスは1kΩであり、SPDTスイッチの第2の動作状態においては、チャネルαのインピーダンスは1kΩであり、チャネルβのインピーダンスは10Ωである。これらのチャネルインピーダンスは、完全に開いた状態(オープン)でも、短絡でも、ましてや実数でもある必要はないことを理解されたい。さらに、クロストークが状態に関して対称である限り、チャネル間にクロストークが存在してもよい。通常、スイッチは、該スイッチのSパラメータマトリクスがスイッチの2つの動作状態間において(例:2つの端子1218及び1219間において)同一である場合に、対称である。
【0036】
他のタイプのアンテナ要素及びスキャニングパネルを使用することにより、スキャン対象の被検者又は他の物品との間において、マイクロ波照射を送信、受信、及び/又は反射させることも可能であることを理解されたい。さらに、複数のスキャニングパネルを使用して、被検者又は他の物品の様々な部分をスキャンすることも可能である。例えば、被検者の半分をスキャンするアンテナ要素の1m×1mアレイをそれぞれが含む2つのスキャニングパネルにより、マイクロ波セキュリティ検査システムを実現することができる。別の例においては、被検者の四半分(象限)をスキャンする能力を有するアンテナ要素の0.5m×0.5mアレイをそれぞれが含む4つのスキャニングパネルによって、マイクロ波セキュリティ検査システムを実現することができる。
【0037】
図4は、本発明の実施例による、マイクロ波照射を反射する典型的なスキャニングパネル50の平面図の概略図である。図4において、マイクロ波アンテナ60から送信されたマイクロ波照射400は、スキャニングパネル50内の様々なアンテナ要素200によって受信される。アンテナ要素200は、反射されたマイクロ波照射410をターゲット420に向けるよう、対応する位相遅延によってそれぞれがプログラムされる。これらの位相遅延は、アンテナ要素200のそれぞれからの反射されたマイクロ波照射410の正の干渉をターゲット420において生成するよう、選択される。理想的には、アンテナ要素200のそれぞれの位相シフトは、ソース(アンテナ要素200)からターゲット420への反射されたマイクロ波照射410のそれぞれの経路について、同じ位相遅延を提供するよう調節される。
【0038】
図13は、本発明の一実施例による、マイクロ波照射を向けるため、透過的な(transmissive)スキャニングパネル50a及び50bを使用した典型的な検査システムの概略図である。図13において、スキャニングパネル50a及び50bは、透過アレイを含んでおり、マイクロ波アンテナ(例:ホーン(horn))60a及び60bが、スキャニングパネル50a及び50bの背後に位置しており、背後から、送信及び受信アレイを照射する(即ち、ターゲットとホーン60a及び60bの間に、これらのアレイが位置している)。
【0039】
動作の際には、マイクロ波アンテナ60aから送信されたマイクロ波照射1310は、スキャニングパネル50a内の様々なアンテナ要素200によって受信される。スキャニングパネル50a内のアンテナ要素200は、ターゲット1300上の位置420にマイクロ波照射1320を向けるよう、対応する透過係数(transmission coefficient)によってそれぞれプログラムされる。これらの透過係数は、アンテナ要素200のそれぞれからの反射されたマイクロ波照射1320の正の干渉(positive interference)を位置420において生成するよう選択される。ターゲット1300上の位置420から反射された反射マイクロ波照射1330は、スキャニングパネル50b内の様々アンテナ要素200によって受信される。スキャニングパネル50b内のアンテナ要素200は、ホーン60bに反射マイクロ波照射1340を向けるよう、対応する透過係数によってそれぞれプログラムされる。
【0040】
図13には、2つの別個のスキャニングパネル50a及び50bが示されているが、他の実施例においては、単一のスキャニングパネルを使用して、マイクロ波照射1320をターゲット1300に向け、ターゲット1300から反射マイクロ波照射1330を受信する。さらに、図13には、2つのホーン60a及び60bが示されているが、他の実施例においては、単一のホーンを使用して、マイクロ波照射1310の送信と反射マイクロ波照射1340の受信の両方を実行する。更なる実施例においては、ハイブリッド設計が可能であり、この場合には、スキャニングパネル50a又は50bのいずれか1つが、前面において照射される反射器アレイであり、もう1つのスキャニングパネル50a又は50bが、背後から照射される透過アレイになっている。更に別の実施例においては、単一のスキャニングパネル50a又は50bを使用する非共焦(non-confocal)設計が可能であり、この場合には、ホーン60aのブランケット(blanket)が、ターゲット1300をマイクロ波照射1310によって照射するか、又は、ホーン60bのブランケットが、ターゲット1300から反射マイクロ波照射1330を受信する。
【0041】
図5は、本発明の実施例による、被検者30上の1つのターゲット420を照射する典型的なマイクロ波セキュリティ検査システム10の概略図である。この図示のマイクロ波検査システム10は、4つのスキャニングパネル50a、50b、50c、及び50dと、4つのマイクロ波アンテナ60a、60b、60c、及び60dを含む。被検者30上の特定の地点(ターゲット420)をアドレスするため、マイクロ波照射500が、特定のマイクロ波アンテナ(例:マイクロ波アンテナ60d)から特定のスキャニングパネル(例:スキャニングパネル50d)に向かって放射される。スキャニングパネル50d内のアンテナ要素は、マイクロ波照射500を反射し、反射マイクロ波照射510をターゲット420に向かわせるよう、対応する位相遅延によってそれぞれプログラムされる。この位相遅延により、ターゲット420から受信アンテナ60dに向かう反射波の合焦も確保されることになる。
【0042】
図6は、本発明の実施例による、被検者30上の複数のターゲット420a及び420bを照射する典型的なマイクロ波セキュリティ検査システム10の概略図である。図6において、マイクロ波照射620は、特定のマイクロ波アンテナ(例:マイクロ波アンテナ60c)から特定のスキャニングパネル(例:スキャニングパネル50c)に向かって放射される。スキャニングパネル50c内のアンテナ要素は、マイクロ波照射620を反射し、反射マイクロ波照射630を特定のターゲット420aに向かわせるよう、対応する位相遅延によってそれぞれプログラムされる。さらに、マイクロ波照射600も、特定のマイクロ波アンテナ(例:マイクロ波アンテナ60d)から、特定のスキャニングパネル(例:スキャニングパネル50d)に向かって放射される。スキャニングパネル50d内のアンテナ要素は、マイクロ波照射600を反射し、反射マイクロ波照射610を特定のターゲット420bに向かわせるよう、対応する位相遅延によってそれぞれプログラムされる。さらに、具体的には図示されてはいないが、ターゲット420a及び420bから反射したマイクロ波照射を対応するマイクロ波アンテナ60c及び60dに向かわせるよう、それぞれのスキャニングパネル50c及び50d内のアンテナ要素を交互に配置することも可能である。一度に複数のスキャニングパネル50a〜50dを動作させることにより、時間多重化を実現することができる。
【0043】
図7は、本発明の実施例による、典型的なマイクロ波セキュリティ検査システム10におけるそれぞれのスキャニングパネル50a、50b、50c、及び50dの典型的なカバレージ領域700、710、720、及び730を示す概略図である。それぞれのスキャニングパネル50a、50b、50c、及び50dのカバレージ領域700、710、720、及び730は、それぞれ、被検者30の異なる部分を含む。例えば、図7に示されるように、被検者30は、象限に分割されており、それぞれのスキャニングパネル50a、50b、50c、及び50dのカバレージ領域700、710、720、及び730が、これらの象限のうちの1つを含む。従って、それぞれのスキャニングパネル50a、50b、50c、及び50dを同時に動作させて被検者30のすべての象限をスキャンすることにより、マイクロ波画像の時間多重化が達成される。時間多重化に加えて(又は、この代わりに)、異なる周波数を使用して、被検者30のうちの1つの象限内において複数のターゲットを同時にスキャニングするため、周波数多重化に対応するように、それぞれのスキャニングパネル50a〜50dとそれぞれのマイクロ波アンテナ60a〜60dをプログラムすることも可能である。
【0044】
図8は、本発明の実施例による、マイクロ波セキュリティ検査システムによって生成されるマイクロ波照射の様々な可能なビームの図式的な表現である。それぞれのスキャニングパネル50a及び50bが、ターゲット420におけるマイクロ波照射の放射パターン800及び810をそれぞれ生成している。それぞれの放射パターン800及び810は、画像の分解能を決定する特定のビーム幅を有するマイクロ波照射のビームを表しており、ビーム幅が大きいほど、生成される分解能は乏しくなる。ビーム幅は、マイクロ波照射の波長と、それぞれのスキャニングパネル50a及び50bのサイズ及びプログラミングによって左右される。
【0045】
マイクロ波画像の分解能を改善するため、送信及び受信用に異なるスキャニングパネル50a及び50bと異なるマイクロ波アンテナ60a及び60bを使用することができる。例えば、図8に示されるように、マイクロ波アンテナ60aは、送信マイクロ波アンテナであり、マイクロ波アンテナ60bは、受信マイクロ波アンテナである。送信マイクロ波アンテナ60aは、マイクロ波照射をスキャニングパネル50aに向かって送信する。このマイクロ波照射を、スキャニングパネル50aが、マイクロ波照射ビーム800として、ターゲット420に向かって反射する。ターゲット420から反射したマイクロ波照射は、マイクロ波照射ビーム820として、スキャニングパネル50bによって受信され、受信マイクロ波アンテナ60bに向かって反射される。それぞれのマイクロ波ビーム800及び810のビーム幅に関する知識を使用することにより、マイクロ波画像の分解能を、2つの放射パターン800及び810の交差部分(即ち、乗算)820にまとめることができる。
【0046】
図9は、本発明の実施例による、送信及び受信用の異なるマイクロ波アンテナ及びスキャニングパネルの使用を示す概略図である。図9において、マイクロ波アンテナ60aが、送信マイクロ波アンテナとして使用され、マイクロ波アンテナ60cが、受信マイクロ波アンテナとして使用され、被検者30の前面におけるターゲット420を撮像する。送信マイクロ波アンテナ60aは、マイクロ波照射900をスキャニングパネル50aに送信する。このマイクロ波照射を、スキャニングパネル50aが、ターゲット420に向かって、マイクロ波照射ビーム910として反射する。ターゲット420から反射したマイクロ波照射は、スキャニングパネル50cによって、マイクロ波照射ビーム920として受信され、受信マイクロ波アンテナ60cに向かって反射される。
【0047】
図10は、本発明の実施例による、送信及び受信用の他のマイクロ波アンテナ及びスキャニングパネルの使用を示す概略図である。図10において、マイクロ波アンテナ60cが、送信マイクロ波アンテナとして使用され、マイクロ波アンテナ60dが、受信マイクロ波アンテナとして使用され、被検者30の側部上におけるターゲット420を撮像する。送信マイクロ波アンテナ60cが、マイクロ波照射1000をスキャニングパネル50cに向かって送信している。スキャニングパネル50cが、このマイクロ波照射を、マイクロ波照射ビーム1010として、ターゲット420に向かって反射する。ターゲット420から反射したマイクロ波照射が、スキャニングパネル50dによって、マイクロ波照射ビーム1020として受信され、受信マイクロ波アンテナ60dに向かって反射される。
【0048】
図11は、本発明の実施例による、被検者又は他の物品のマイクロ波セキュリティ検査を実行する典型的なプロセス1100を示すフローチャートである。最初に、ブロック1110において、複数のアンテナ要素を含む反射器アンテナアレイを提供する。ブロック1120において、アンテナ要素のそれぞれを、対応する位相遅延によってプログラムする。その後、ブロック1130において、マイクロ波源により、反射器アンテナアレイをマイクロ波放射によって照射し、ブロック1140において、反射器アンテナアレイにより、アンテナ要素のそれぞれのプログラムされた位相遅延に基づいて、このマイクロ波照射を被検者又は他の物品上のターゲットに向かって反射する。ブロック1150において、被検者又は他の物品上のターゲットから反射したマイクロ波照射を、反射器アンテナアレイが受信する。
【0049】
ブロック1160において、反射器アンテナアレイが被検者又は物品上のターゲットから受信した反射マイクロ波照射の強度を測定し、被検者又は物品の画像内のピクセルの値を求める。ブロック1170において、スキャン対象の被検者又は物品上のターゲットが更に存在する場合には、ブロック1120において、被検者又は物品上の新しいターゲットに向かってマイクロ波照射を反射するよう、アンテナ要素を新しい対応する位相遅延によって再プログラムする。被検者又は物品上のターゲットのすべてのスキャンが完了したら、ブロック1180において、被検者又は物品上のそれぞれのターゲット(地点)において測定されたピクセル値から、被検者又は物品のマイクロ波画像を構成する。
【0050】
当業者であれば、様々なアプリケーションにおいて、本出願に記述されている革新的な概念を変更及び変形可能であることを認識するであろう。従って、本発明の範囲は、記述されている特定の典型的な開示内容のいずれにも限定されるものではなく、特許請求の範囲により規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例による、簡略化された典型的なマイクロ波セキュリティ検査システムの概略図。
【図2】本発明の実施例による、図1の検査システムにおいて使用する簡略化された典型的なスキャニングパネルの概略図。
【図3】本発明の実施例による、図2のスキャニングパネルのアンテナ要素の断面図。
【図4】本発明の実施例による、マイクロ波照射を反射する典型的なスキャニングパネルの平面図の概略図。
【図5】本発明の実施例による、被検者上の1つのターゲットを照射する典型的なマイクロ波セキュリティ検査システムの概略図。
【図6】本発明の実施例による、被検者上の複数のターゲットを照射する典型的なマイクロ波セキュリティ検査システムの概略図。
【図7】本発明の実施例による、典型的なマイクロ波セキュリティ検査システム内におけるそれぞれのスキャニングパネルのカバレージ領域を示す概略図。
【図8】本発明の実施例による、マイクロ波セキュリティ検査システムによって生成されるマイクロ波照射の様々な可能なビームの図式的表現。
【図9】本発明の実施例による、送信及び受信用の異なるマイクロ波アンテナ及びスキャニングパネルの使用法を示す概略図。
【図10】本発明の実施例による、送信及び受信用の他のマイクロ波アンテナ及びスキャニングパネルの使用法を示す概略図。
【図11】本発明の実施例による、被検者又は他の物品のマイクロ波セキュリティ検査を実行する典型的なプロセスを示すフローチャート。
【図12】送受信アレイにおいて使用する典型的な能動的アンテナ要素を示す図。
【図13】本発明の実施例による、マイクロ波照射を誘導する典型的な透過的スキャニングパネルを示す概略図。
【符号の説明】
【0052】
50a 第1アンテナアレイ
50b 第2アンテナアレイ
60a マイクロ波源
60b マイクロ波レシーバ
100 プロセッサ
200 アンテナ要素
420 ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波撮像システムであって、
マイクロ波照射を提供して、ターゲット(420)を照射するマイクロ波源(60a)と、
前記ターゲット(420)から反射した反射マイクロ波照射を受信するマイクロ波レシーバ(60b)と、
複数のアンテナ要素(200)含むアンテナアレイ(50)であって、該アンテナ要素(200)のそれぞれは、前記マイクロ波照射を前記ターゲット(420)上の位置に向かわせるよう対応する透過係数によってプログラム可能であり、該アンテナ要素(200)は、さらに、前記ターゲット(420)上の位置から反射した反射マイクロ波照射を受信し、該反射マイクロ波照射を前記マイクロ波レシーバ(60b)に向かわせるよう対応する追加の透過係数によってプログラム可能である、アンテナアレイ(50)と、
前記反射マイクロ波照射の強度を測定するよう動作可能なプロセッサであって、該プロセッサ(100)によって構成される前記ターゲット(420)の画像内のピクセルの値を求める、プロセッサ(100)と、
を備える、マイクロ波撮像システム。
【請求項2】
前記アンテナアレイ(50)は、前記ターゲット(420)上の前記位置から反射した前記反射マイクロ波照射を受信し、前記アンテナ要素(200)のそれぞれと関連付けられた前記対応する透過係数に基づいて、該反射マイクロ波照射を前記マイクロ波レシーバ(60b)に向かわせるよう構成されている、
請求項1に記載のマイクロ波撮像システム。
【請求項3】
前記アンテナアレイ(50)は、前記マイクロ波源(60a)から前記マイクロ波照射を受信し、前記アンテナ要素(200)のそれぞれと関連付けられた前記対応する透過係数に基づいて、該マイクロ波照射を前記ターゲット(420)の前記位置に向かわせるよう構成されている、
請求項1に記載のマイクロ波撮像システム。
【請求項4】
前記アンテナアレイ(50)は、前記ターゲット(420)上の前記位置から反射した前記反射マイクロ波照射を受信し、前記アンテナ要素(200)のそれぞれと関連付けられた前記対応する追加の透過係数に基づいて、該反射マイクロ波照射を前記マイクロ波レシーバ(60b)に向かわせるよう構成されている、
請求項3に記載のマイクロ波撮像システム。
【請求項5】
前記アンテナアレイ(50)は、第1のアンテナアレイ(50a)および第2のアンテナアレイ(50b)を含んでおり、
前記第1のアンテナアレイ(50a)は、前記マイクロ波照射を前記ターゲット(420)上の前記位置に向かわせ、前記第2のアンテナアレイ(50b)は、前記反射マイクロ波照射を前記マイクロ波レシーバ(60b)に向かわせる、
請求項4に記載のマイクロ波撮像システム。
【請求項6】
ターゲットのマイクロ波画像を撮像するための方法であって、
複数のアンテナ要素(200)を含むアンテナアレイ(50)を提供するステップであって、前記アンテナ要素(200)のそれぞれは、対応する透過係数によってプログラム可能である、ステップと、
前記アンテナアレイ(50)において、マイクロ波源(60a)からマイクロ波照射を受信するステップと、
前記アンテナ要素(200)のそれぞれに関連付けられた前記対応する透過係数に基づいて、前記ターゲット(420)上の位置に前記マイクロ波照射を向かわせるステップと、
前記ターゲット(420)上の前記位置から反射した反射マイクロ波照射を受信するステップと、
前記反射マイクロ波照射の強度を測定して、ピクセルを求めるステップと、
前記ターゲット(420)上の複数の位置に関連付けられた複数のピクセル値を含む画像を構成するステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記反射マイクロ波照射を受信するステップは、
前記アンテナアレイ(50)において、前記ターゲット(420)上の前記位置から反射した反射マイクロ波照射を受信するステップと、
前記アンテナ要素(200)のそれぞれに関連付けられた対応する追加の透過係数に基づいて、前記ターゲット(420)上の前記位置から反射した前記反射マイクロ波照射をマイクロ波レシーバ(60b)に向かわせるステップと、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アンテナアレイ(50)は、第1のアンテナアレイ(50a)および第2のアンテナアレイ(50b)を含んでおり、
前記マイクロ波源(60a)から前記マイクロ波照射を受信する前記ステップは、前記第1のアンテナアレイ(50a)において、前記マイクロ波源(60a)から前記マイクロ波照射を受信するステップをさらに含み、
前記反射マイクロ波照射を受信する前記ステップは、前記第2のアンテナアレイ(50b)において、前記ターゲット(420)上の前記位置から反射した前記反射マイクロ照射を受信するステップをさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ターゲットのマイクロ波画像を撮像するための方法であって、
複数のアンテナ要素(200)を含むアンテナアレイ(50)を提供するステップであって、前記アンテナ要素(200)のそれぞれは、対応する透過係数によってプログラム可能である、ステップと、
マイクロ波源(60a)からのマイクロ波照射によって前記ターゲット(420)上の位置を照射するステップと、
前記アンテナアレイ(50)において、前記ターゲット(420)上の前記位置から反射した反射マイクロ波照射を受信するステップと、
前記アンテナ要素(200)のそれぞれに関連付けられた前記対応する透過係数に基づいて、前記ターゲット(420)上の前記位置から反射した前記反射マイクロ波照射を、マイクロ波レシーバ(60b)に向かわせるステップと、
前記反射マイクロ波照射の強度を測定して、ピクセルを求めるステップと、
前記ターゲット(420)上の複数の位置に関連付けられた複数のピクセル値を含む画像を構成するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記照射するステップは、
前記アンテナアレイ(50)において、前記マイクロ波源(60a)から前記マイクロ波照射を受信するステップと、
前記アンテナ要素(200)のそれぞれに関連付けられた対応する追加の透過係数に基づいて、前記ターゲット(420)上の前記位置に前記マイクロ波照射を向かわせるステップと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−184277(P2006−184277A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337647(P2005−337647)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】